説明

ワーク切断装置及びワーク切断方法

【課題】接着剤を用いることなくても複数段のブロック状ワークの摺動状態又は保持状態が安定し、切断精度が向上するワーク切断装置及びワーク切断方法を提供する。
【解決手段】ワーク切断装置は、複数のブロック状ワークの端面同士を押し当てて重ねた集合体であるワークを同時に複数の片状ワークに切断する複数のワイヤを有するワーク切断部と、ワーク切断部のワイヤによる切断面に平行でワイヤとの位置関係が設定された位置決め用基準面を有する位置決め用基準板と、位置決め用基準面にワークを押し当てる状態で位置決め用基準面に直交する方向にずれないようにワークを位置決めする位置決め用保持部材と、を有するワーク位置決め体と、ワークを位置固定されたワーク切断部に対して切断方向に押し出す押出手段と、を含み、位置決め用保持部材は、ワーク切断部により切断されているブロック状ワークに対して押圧可能な押圧部を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチワイヤ方式のワーク切断部を用いて切断対象となるワークを同時に複数の薄片状ワークに切断するワーク切断装置及びワーク切断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体材料、ガラス材料、セラミックス、磁性材料等の硬質で脆い材料からなるワークに、細線ワイヤを等ピッチで多数列状態に配列させたマルチワイヤ方式のワーク切断部を用いて同時に複数の薄片状ワークに切断するようにしたマルチワイヤソーがある。
【0003】
例えば、従来のマルチワイヤソーは、同時に切断を行う複数のワークをワイヤソーにセットするために、隣接して直交する2枚の位置決め用基準板を用いてワークを位置決めしつつガラス板等のベースに接着剤で貼り付けるようにしている。そして、ガラス板上に固定されたワークをマルチワイヤソーに対してセットし、ガラス板側をマルチワイヤソー側に向けて上昇移動させることで、ワークをマルチワイヤソーの等ピッチ配列の各ワイヤによってガラス板ごと切断するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1の装置では、位置決め用基準板を用いて位置決めしながらワークの固定作業を行っても、接着剤の塗布量や硬化時の状況により、ワークの固定位置に傾きやずれが生じてしまう。この結果、マルチワイヤソーによる切断に際して切断精度が低下してしまう。特に、ワーク同士の繋ぎ目部の両端においては、切断位置精度が出せない。このため、両端部の薄片状ワークは不良品として廃棄しているものであり、ワーク材料に無駄が生じてしまう。あるいは、両端部の薄片状ワークをリサイクル材料として活用することもありえるが、両端部の薄片状ワークを原材料へ戻すことになり、効率の良い再利用ではない。また、ワークの固定に接着剤を用いているため、必然的に、切断前の接着工程と切断後の剥離工程とを必要とする。接着工程の接着作業時間や接着剤硬化時間には、例えば6時間にも及ぶ多大な時間がかかり、剥離工程の選別作業時間や剥離時間にも、例えば2時間ほどの時間がかかっている現状にあり、効率が悪く、工程・時間の無駄の多いものである。さらに、特許文献1の装置は接着剤やガラス板などの副部材をも切断することとなるので、これらの切削くずが、薄片状ワークの表面性状(表面平滑性、表面抵抗、めっき製膜性)を悪化させる場合もある。
【0005】
そこで、接着剤を用いることなくワークを位置決め固定して切断精度を向上させることが望まれている。例えば、特許文献2には、接着工程や剥離工程が不要なワーク切断装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−128649号公報
【特許文献2】特許第4355029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2の図2には、挟持用基準板の下部側にワイヤの切断部を配置させ、上方よりワークを押出手段としての押出プッシャにより下方のワイヤに向けて押し出すことで切断させるダウンカット可能なワーク切断装置が記載されている。ダウンカット可能なワーク切断装置では、位置決め用基準板に対向配置させた位置決め用押え板を位置決め用押え部材として備え、位置決め用基準板とによりワーク位置決め体を構成している。位置決め用押え板は、例えば縦長棒状に形成されたもので、位置決め対象となるワークを位置決め用基準面に押圧接触させて弾性的かつ切断方向(上下方向)に摺動自在に位置決めする。ここで、位置決め用押え板は、複数段のブロック状ワークを含むワーク集合体に対する押圧のばらつきをなくすために、複数段のブロック状ワークを一様に押さえている。
【0008】
このワーク切断装置は、接着剤を用いることなく複数段のブロック状ワークを位置決め固定している。このため、複数段のブロック状ワークが個々に積み重なっているだけで、ブロック状ワークは押出プッシャにより下方のワイヤに向けて押しだされ、切断される。これにより、1つ1つのブロック状ワークがばらついても許容範囲内であるが、ブロック状ワークが複数段に積み重なると、寸法ばらつき又は位置ばらつきの累積が生じる。その結果、位置決め用押え板で押さえられるワーク集合体への押圧力は、部分的なばらつきが生じ、複数段にわたるブロック状ワークの摺動状態が安定せず、切断精度に影響が生じることがある。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、接着剤を用いることがなくても複数段のブロック状ワークの摺動状態又は保持状態が安定し、切断精度が向上するワーク切断装置及びワーク切断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するためにワーク切断装置は、複数のブロック状ワークの端面同士を押し当てて重ねた集合体であるワークを同時に複数の片状ワークに切断する複数のワイヤを有するワーク切断部と、前記ワーク切断部の前記ワイヤによる切断面に平行で前記ワイヤとの位置関係が設定された位置決め用基準面を有する位置決め用基準板と、前記位置決め用基準面に前記ワークを押し当てる状態で前記位置決め用基準面に直交する方向にずれないように前記ワークを位置決めする位置決め用保持部材と、を有するワーク位置決め体と、前記ワーク位置決め体により位置決めされて、かつワイヤ長手方向に位置する前記ワークの両端を挟持するワーク挟持体と、前記ワークを、位置固定された前記ワーク切断部に対して前記切断方向に押し出す押出手段と、を含み、前記位置決め用保持部材は、前記ワーク切断部により切断されているブロック状ワークに対して押圧可能な押圧部を有することを特徴とする。
【0011】
これにより、ブロック状ワークの寸法ばらつきの累積によって位置ばらつきが生じることがある場合でも、ワーク切断部により切断されているブロック状ワークに対して押圧が加わるので、押圧力は部分的なばらつきを低減することができる。このため、部分的にブロック状ワークが抜け落ちるおそれも低減できる。その結果、ワークに接着剤を用いることなく位置決め固定して切断することができる。そして、ワークの固定される位置が安定となりワーク切断装置がワークを切断する精度を向上させることができる。また、接着剤を用いていないため、多大な時間を要する接着工程や剥離工程が不要となり、切断工程全体の時間を大幅に短縮させることができる。
【0012】
本発明の望ましい態様として、前記位置決め用保持部材は、前記ワークを前記位置決め用基準面に押圧接触させて摺動自在に位置決めする摺動ユニットを有することが好ましい。これにより、摺動ユニットが複数のブロック状ワークを押圧し、保持することができる。また、摺動ユニットが押出手段によって押し出される複数のブロック状ワークの姿勢をガイドすることができる。
【0013】
本発明の望ましい態様として、前記位置決め用保持部材は、前記押圧部が前記摺動ユニットに挟まれていることが好ましい。これにより、前記摺動ユニットが押出手段によって押し出される複数のブロック状ワークの姿勢をガイドしつつ、前記位置決め用保持部材が部分的なブロック状ワークの位置ばらつきを修正できる。その結果、ワークの固定される位置が安定となりワーク切断装置がワークを切断する精度を向上させることができる。
【0014】
本発明の望ましい態様として、前記位置決め用保持部材は、前記押圧部が複数あり、複数の前記押圧部が一対の前記摺動ユニットに挟まれていることが好ましい。これにより、複数の押圧部が部分的なブロック状ワークの位置ばらつきを修正できる。その結果、ブロック状ワークの位置ばらつきの修正精度が向上できる。
【0015】
本発明の望ましい態様として、前記位置決め用保持部材は、前記押圧部と前記摺動ユニットとが交互に配列されていることが好ましい。これにより、複数の押圧部が部分的なブロック状ワークの位置ばらつきを修正できる。その結果、ブロック状ワークの位置ばらつきの修正精度が向上できる。
【0016】
本発明の望ましい態様として、前記ワークが切断される方向の前記押圧部の長さは、前記ワークが切断される方向の前記ブロック状ワークの長さよりも短く設定されることが好ましい。これにより、押圧部が積み重なる1又は2個のブロック状ワークを保持できる。
【0017】
本発明の望ましい態様として、前記ワークを構成するブロック状ワークのうち前記押圧部が押圧可能なブロック状ワークと異なるブロック状ワークに対して押圧可能な第2の押圧部を有することが好ましい。これにより、第2の押圧部が複数のブロック状ワークの端面同士を押し当てて重ねた集合体であるワークを保持できる。このため、第2の押圧部が複数のブロック状ワークを分散した押圧箇所で保持することができる。その結果、ワーク切断装置の保持できる複数のブロック状ワークの数を増やすことができる。
【0018】
本発明の望ましい態様として、前記ワークが切断される方向の前記第2の押圧部の長さは、前記ワークが切断される方向の前記ブロック状ワークの長さよりも短く設定されることが好ましい。これにより、押圧部が積み重なる1又は2個のブロック状ワークを保持できる。
【0019】
上述した課題を解決し、目的を達成するためにワーク切断方法は、複数のブロック状ワークの端面同士を押し当てて重ねた集合体としてワークを準備し、前記ワークをワーク切断装置に投入するワーク投入工程と、前記ワークを同時に複数の片状ワークに切断する複数のワイヤを有するワーク切断部に対して、前記ワークが保持された状態で押し出す切断工程と、を含み、前記ワーク切断部により切断されるブロック状ワークの位置が調整されることを特徴とする。
【0020】
これにより、ブロック状ワークの寸法ばらつきの累積によって位置ばらつきが生じることがある場合でも、ワークを構成するブロック状ワークのうち前記ワーク切断部に最も近いブロック状ワークに対して押圧力が加わるので、この押圧力は部分的なばらつきを低減することができる。このため、部分的にブロック状ワークの位置ばらつきが修正され、ワーク切断部に対するブロック状ワークの位置を精度が向上することができる。その結果、ワークが接着剤を用いることなく位置決め固定して切断することができる。そして、ワークの固定される位置が安定となりワーク切断装置がワークを切断する精度を向上させることができる。また、接着剤を用いていないため、多大な時間を要する接着工程や剥離工程が不要となり、切断工程全体の時間を大幅に短縮させることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明のワーク切断装置及びワーク切断方法は、接着剤を用いることがなくても複数段のブロック状ワークの摺動状態又は保持状態が安定し、切断精度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、ワーク切断装置の概略図である。
【図2】図2は、本実施形態に係る位置決め用保持部材を説明する概略図である。
【図3】図3は、本実施形態に係る位置決め用保持部材の部材関係を説明するための説明図である。
【図4】図4は、図2に示すIV−IV断面で見たワークの保持状態を説明する説明図である。
【図5】図5は、図2に示すV−V断面で見たワークの保持状態を説明する説明図である。
【図6】図6は、本実施形態に係るワーク切断装置の切断工程を説明するフローチャートである。
【図7】図7は、ワーク切断装置の切断工程を説明する説明図である。
【図8】図8は、ワーク切断装置の切断工程を説明する説明図である。
【図9】図9は、ワーク切断装置の切断工程を説明する説明図である。
【図10】図10は、ワーク切断装置の切断工程を説明する説明図である。
【図11】図11は、実施形態2に係る位置決め用保持部材を説明する概略図である。
【図12】図12は、実施形態3に係る位置決め用保持部材を説明する概略図である。
【図13】図13は、実施形態4に係る位置決め用保持部材を説明する概略図である。
【図14】図14は、ワーク切断装置の具体的な構成を示す斜視図である。
【図15】図15は、変形例に係るワーク切断装置の具体的な構成を示す斜視図である。
【図16】図16は、ワーク集合体の変形例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0024】
(実施形態1)
図1は、ワーク切断装置の概略図である。ワーク切断装置100は、複数のワイヤ11を含むワーク切断部10と、位置決め用基準板21、挟持用基準板31と、位置決め用保持部材22、挟持用保持部材32と、押出プッシャ40と、を有している。また、位置決め用基準板21、挟持用基準板31と、位置決め用保持部材22、挟持用保持部材32と、により囲まれる空間がワーク集合体1の収納部(ワーク収納部)となる。
【0025】
ブロック状ワーク2は、複数段に積み上げられており、ブロック状ワーク2が集まって、ワーク集合体1となっている。また、ブロック状ワーク2は、複数列に並べられており、ブロック状ワーク2が集まって、ワーク集合体1となっている。ブロック状ワーク2同士は、接着剤を用いることなく位置決め固定されている。ブロック状ワーク2は矩形であり、例えば同一形状の直方体である。
【0026】
ブロック状ワーク2は、半導体材料、ガラス材料、セラミックス、磁性材料等の硬質で脆い材料とすることができる。また、ブロック状ワーク2は、高価な材料、例えば希土類焼結磁石とすることができる。
【0027】
ワーク切断部10は、所定の間隔で配列された複数本のワイヤ11と、これらのワイヤ11を安定走行させるためのガイド溝が形成された複数のガイドローラ12a、12bにより駆動されるマルチワイヤソー方式の切断手段である。
【0028】
ワイヤ11は、炭素鋼等の金属製のワイヤである。複数のワイヤ11を含むワーク切断部10は、ガイドローラ12a、12bにより、複数のワイヤ11を往復運動させる。複数のワイヤ11により、切断対象となるワーク集合体1が同時に複数の片状ワークに切断される。ワーク集合体1が同時に複数の片状ワークに切断されるため、ワーク切断装置100は、マルチワイヤ方式の切断装置である。なお、ワーク切断部10のワイヤ11は、例えば固定砥粒方式が用いられる。
【0029】
位置決め用基準板21は、ワーク切断部10のワイヤ11による切断面(切断時の相対移動によりワイヤ11が形成する垂直面)に平行でワイヤ11との位置関係が設定された位置決め用基準面21aを有する。
【0030】
位置決め用保持部材22は、切断に際して位置決め用基準面21aにワーク集合体1を矢印Aで示すように押し当てた状態で位置決め用基準面21aに直交する方向(前後方向)にずれないようにワーク集合体1を位置決めするための部材である。
【0031】
ワーク切断装置100は、位置決め用基準板21に位置決め用保持部材22を対向配置させる。位置決め用保持部材22は、例えば縦長棒状に形成されたもので、位置決め対象となるワーク集合体1を位置決め用基準面21aに押圧接触させて弾性的かつ切断方向(上下方向)に摺動自在に位置決めする。このため、位置決め用保持部材22は、後述する押圧手段を有する。そして、位置決め用基準板21及び位置決め用保持部材22は、ワーク位置決め体20Aとなる。ここで、位置決め用保持部材22は、複数のブロック状ワーク2からなるワーク集合体1に対する押圧のばらつきをなくすために、ブロック状ワーク2の左右方向の列毎にそれぞれ設けられている。
【0032】
挟持用基準板31は、ワーク切断部10のワイヤ11の長手方向と直交となる位置関係が設定された挟持用基準面31aを有する。図1に示すように、挟持用基準板31は、ワーク集合体1が切断される方向の端部が櫛歯状となっており、複数の空隙が形成されている。また、ワイヤ11は、挟持用基準板31の空隙を貫通している。
【0033】
挟持用保持部材32は、切断に際して挟持用基準面31aにワーク集合体1を矢印Bで示すように押し当てた状態で挟持用基準面31aに直交する方向(左右方向)にずれないようにワーク集合体1の両端を挟持するための部材である。
【0034】
ワーク切断装置100は、挟持用基準板31に挟持用保持部材32を対向配置させる。挟持用保持部材32は、例えば縦長棒状に形成されたもので、挟持対象となるワーク集合体1を挟持用基準面31aに押圧接触させて弾性的かつ切断方向(上下方向)に摺動自在に挟持する。このため、挟持用保持部材32は、バネ等による押圧手段を有する。挟持用基準板31及び挟持用保持部材32は、ワーク位置決め体20Aにより位置決めされ、かつワイヤ長手方向に位置するワーク集合体1の両端を挟持するワーク挟持体30Aとなる。ここで、挟持用保持部材32は、複数のブロック状ワーク2からなるワーク集合体1に対する押圧のばらつきをなくすために、ブロック状ワーク2の前後方向の列毎にそれぞれ設けられている。
【0035】
挟持用基準板31及び挟持用保持部材32が、位置決め用基準板21及び位置決め用保持部材22と共にワーク集合体1を囲むガイド枠形状に一体化されワーク集合体1の収納部となる。
【0036】
押出プッシャ40は、ワーク集合体1が切断される方向(矢印U方向)に押し出す押出手段である。押出プッシャ40は、ワーク集合体1の上面全体を均等に押圧できる面積を有することが好ましい。押出プッシャ40の面積は、位置決め用基準板21、位置決め用保持部材22と、挟持用基準板31と、挟持用保持部材32と、により囲まれる空間であるワーク集合体1の収納部の開口面積と等しいか、位置決め用基準板21、位置決め用保持部材22、挟持用基準板31、挟持用保持部材32に不接触な程度の面積である。なお、ワーク集合体1が切断される方向(矢印U方向)は、押出手段がワーク集合体1を押し出す方向と平行な方向である。
【0037】
次に本実施形態の位置決め用保持部材について詳細に説明する。図2は、本実施形態に係る位置決め用保持部材を説明する概略図である。図3は、本実施形態に係る位置決め用保持部材の部材関係を説明するための説明図である。
【0038】
上述した位置決め用保持部材22は、ワーク集合体1側の面からみると図2に示すように摺動ユニット51、51と、保持ユニット61と、保持ユニット62と、を含んでいる。保持ユニット61及び保持ユニット62は上下に配置され、保持ユニット60となる。図2に示すように、保持ユニット61及び保持ユニット62を有する保持ユニット60は、摺動ユニット51、51の間に配置されている。摺動ユニット51、51と、保持ユニット61と、保持ユニット62と、に囲まれた空間には、凹部63が形成されている。図3に示すように、摺動ユニット51の高さT1は、保持ユニット61の高さT2及び保持ユニット62の高さT3を加算した長さよりも長い。摺動ユニット51の厚さD1は、ワーク投入側からワイヤ11側に向かって、一定の摺動面51Aを含んでいる。摺動ユニット51は、ワーク投入側にテーパ部51Bを有している。
【0039】
図2に示す保持ユニット61は、押圧部61Aと、保持ユニット61のワーク投入側端面61Cから押圧部61Aにかけて厚みが増加して傾斜面を形成するテーパ部61Bとを含んでいる。保持ユニット61の押圧部61Aは、ワイヤ側に段差部61Dを有し、段差部61Dにより押圧部61Aより低くなった当接回避部61Eを含んでいる。図3に示すように、押圧部61Aの厚みD2は、摺動ユニット51の厚さD1と同じ又はD1よりも厚くなっている。図3には、ワーク集合体1が切断される方向(矢印U方向)が示されている。また、押圧部61Aのワーク集合体1が切断される方向の長さである高さt1は、投入されるブロック状ワークのワーク集合体1が切断される方向の長さである高さWTよりも短く設定されることが好ましい。これにより、押圧部61Aが積み重なる1又は2個のブロック状ワークを保持できる。当接回避部61Eの厚みは、ブロック状ワークと接触しない厚みになるよう段差部61Dが形成されている。
【0040】
保持ユニット62は、図2に示す押圧部(第2の押圧部)62Aと、保持ユニット62のワーク投入側端面62Cから押圧部62Aにかけて厚みが増加して傾斜面を形成するテーパ部62Bと、を含んでいる。図3に示すように、押圧部62Aの厚みD3は、摺動ユニット51の厚さD1と同じ又はD1よりも厚くなっている。また、押圧部62Aのワーク集合体1が切断される方向の長さである高さt2は、投入されるブロック状ワークの高さWTよりも短く設定されることが好ましい。これにより、押圧部62Aが積み重なる1又は2個のブロック状ワークを保持できる。
【0041】
図4は、図2に示すIV−IV断面で見たワークの保持状態を説明する説明図である。図4に示すように、ワーク切断装置100は、位置決め用基準板21と位置決め用保持部材22とで挟持し、ワーク集合体1を保持している。ワーク切断装置100は、保持ユニット61及び保持ユニット62をワーク集合体1側へ押圧する押圧手段70を有している。押圧手段70は、保持ユニット61又は保持ユニット62に接続する軸71と、バネ又はゴム等の弾性体72と、軸受け73とを有している。保持ユニット61及び保持ユニット62には、各々複数の押圧手段が設けられていることが好ましい。これにより、保持ユニット61及び保持ユニット62の押圧部61A及び62Aを独立に揺動させることが可能となる。その結果、押圧部61A及び62Aは、ブロック状ワークのばらつき及び搭載状態に応じ、適切な押圧力をブロック状ワークに加えることができる。
【0042】
図4では、ワーク集合体1がブロック状ワーク201〜208、211〜218、221〜228を含んでいる状態を示している。保持ユニット61の押圧部61Aは、ワイヤ11よりも上(押出手段側)にある。図4では、ワーク切断装置100のワイヤ11は保持ユニット61の段差部61Dよりも下(ワーク集合体1が切断される方向)に位置する。ここで、ワイヤ11は切断により多少たわむため、領域C内を上下に揺動するが、図3に示す押圧部61Aの高さt1は、領域Cよりも長いことがより好ましい。これにより、ワイヤの揺動により、意図しない力がブロック状ワーク201、211、221にかかった場合でも、ブロック状ワーク201、211、221の姿勢を一定に保つことができる。この結果、ブロック状ワーク201、211、221の切断精度が高くなる。
【0043】
図4では、保持ユニット62の押圧部62Aは、ワーク集合体1のうち、ブロック状ワーク206、216、226を押圧している。押圧部61Aと、押圧部62Aとは、ワーク集合体1が切断される方向に異なって配置されているので、押圧部62Aは、ワーク集合体1を構成するブロック状ワークのうち押圧部61Aが押圧可能なブロック状ワーク201、211、221と異なるブロック状ワーク206、216、226に対して押圧可能となる。これにより、ブロック状ワーク206、216、226以上のブロック状ワークが保持ユニット62の押圧部62Aを主として保持される。その結果、ブロック状ワークを多数積み上げても押圧部61Aに掛かる荷重の一部が押圧部62Aにより保持され、荷重を分散することができる。このため、衝撃等により、ワーク集合体1が抜け落ちるおそれを低減できる。つまり、保持ユニット62の押圧部62Aは、ブロック状ワークを積み上げる数を増やすことができる。なお、押圧部62Aをワーク集合体1が切断される方向に複数設ければ、さらにブロック状ワークを積み上げる数が増やせる。
【0044】
図4では、保持ユニット62の押圧部62Aを有しているので、保持ユニット61の押圧部61Aにかける押圧力を小さくしても、ワーク集合体1が脱落するおそれが低減される。このため、押出プッシャ40がワーク集合体1を押し出す動作を円滑にすることができる。
【0045】
図5は、図2に示すV−V断面で見たワークの保持状態を説明する説明図である。図5に示すように、ワーク切断装置100は、摺動ユニット51をワーク集合体1側へ押圧する上述した押圧手段70を有している。摺動ユニット51には、各々複数の押圧手段が設けられていることが好ましい。これにより、摺動ユニット51の摺動面51Aを一様にワーク集合体1へ押圧するとともに摺動させることが可能となる。その結果、摺動面51Aは、ブロック状ワーク201〜208へ適切な押圧力を加えることができる。
【0046】
上述したように本実施形態のワーク切断装置100は、複数のブロック状ワーク2の端面同士を押し当てて重ねたワーク集合体1を同時に複数の片状ワークに切断する複数のワイヤ11を有するワーク切断部10と、ワーク切断部10のワイヤ11による切断面に平行でワイヤ11との位置関係が設定された位置決め用基準面21aを有する位置決め用基準板22と、位置決め用基準面21aにワーク集合体1を押し当てる状態で位置決め用基準面21aに直交する方向にずれないようにワーク集合体1を位置決めする位置決め用保持部材22と、を有するワーク位置決め体と、前記ワーク位置決め体により位置決めされて、かつワイヤ長手方向に位置するワーク集合体1の両端を挟持するワーク挟持体と、ワーク集合体1を、位置固定されたワーク切断部10に対して押し出す押出手段と、を含み、位置決め用保持部材22は、ワーク切断部11により切断されているブロック状ワーク2に対して押圧可能な押圧部61Aを有する。
【0047】
1つ1つのブロック状ワークの寸法がばらついていて、1つ1つのブロック状ワークの寸法が許容範囲内である場合であっても、ブロック状ワークが複数段に積み重ねると、寸法ばらつきの累積によって位置ばらつきが生じることがある。本実施形態のワーク切断装置は、ワーク切断部により切断されているブロック状ワークに対して押圧が加わるので、押圧力は部分的なばらつきを低減することができる。このため、部分的にブロック状ワークが抜け落ちるおそれも低減できる。その結果、ワーク切断装置100は、ワークに接着剤を用いることなく位置決め固定して切断することができる。そして、ワークの固定される位置が安定し、ワーク切断装置がワークを切断する精度を向上させることができる。また、接着剤を用いていないため、多大な時間を要する接着工程や剥離工程が不要となり、切断工程全体の時間を大幅に短縮させることができる。
【0048】
また、押圧部61Aにより、部分的にブロック状ワークの位置ばらつきが修正され、ワーク切断部に対するブロック状ワークの位置も精度が向上できる。その結果、ワークが接着剤を用いることなく位置決め固定して切断することができる。
【0049】
位置決め用保持部材22は、ワーク集合体1を位置決め用基準面21aに押圧接触させて摺動自在に位置決めする摺動ユニット51を有することが好ましい。これにより、摺動ユニット51が複数のブロック状ワーク2を押圧し、保持することができる。また、摺動ユニット51が押出手段(押出プッシャ40)によって押し出される複数のブロック状ワーク2の姿勢をガイドすることができる。
【0050】
位置決め用保持部材22は、押圧部61Aが摺動ユニット51に挟まれていることが好ましい。これにより、摺動ユニット51が押出手段(押出プッシャ40)によって押し出される複数のブロック状ワーク2の姿勢をガイドしつつ、位置決め用保持部材22が部分的なブロック状ワーク2の位置ばらつきを修正できる。その結果、ワーク集合体1の固定される位置が安定し、ワーク切断装置がワークを切断する精度を向上させることができる。
【0051】
位置決め用保持部材22は、ワーク集合体1を構成するブロック状ワーク2のうちワーク切断部10に最も近いブロック状ワークと異なるブロック状ワークに対して押圧可能な第2の押圧部62Aを有することが好ましい。これにより、第2の押圧部62Aが複数のブロック状ワーク2の端面同士を押し当てて重ねたワーク集合体1を保持できる。このため、第2の押圧部62Aが複数のブロック状ワーク2を分散した押圧箇所で保持することができる。その結果、ワーク切断装置の保持できる複数のブロック状ワークの数を増やすことができる。
【0052】
次に、ワーク切断装置100の動作について説明する。図6は、ワーク切断装置の切断工程を説明するフローチャートである。図7から図10は、ワーク切断装置の切断工程を説明する説明図である。図6のフローチャートに沿って、ワーク切断装置100の切断工程を説明する。
【0053】
ワーク切断装置100は、ワーク受け板80を準備する(ステップS1)。例えば、図7に示すように、ワーク受け板80は、挟持用基準板31と、挟持用保持部材32と、ワイヤ11の位置より下側(押出手段がワーク集合体1を押し出す方向側)にリフト機構等により設置される。図示されていないが、ワーク受け板80は、位置決め用基準板21及び位置決め用保持部材22のワーク集合体1が切断される方向側の端部の位置よりも下側(押出手段がワーク集合体1を押し出す方向側)に設置される。ワーク受け板80は、ワーク集合体1のワーク進行方向に対して垂直な面の面積より大きい。
【0054】
次に、ワーク切断装置100は、ワーク切断装置100のワーク収納部にワーク投入する(ステップS2)。ワーク集合体1は、複数のブロック状ワークの端面同士を押し当てて重ねた集合体として、ワーク収納部へ投入される。図7に示すようにワーク集合体1は、ブロック状ワーク2A〜2Lを含む。ワーク集合体1は、図1に示すように位置決め用基準板21と、位置決め用保持部材22との間、及び挟持用基準板31と、挟持用保持部材32との間に保持される。
【0055】
次に、ワーク切断装置100は、ワーク切断する(ステップS3)。図1に示すワーク切断装置100は、ガイドローラ12a、12bにより、複数のワイヤ11が往復運動する。ワーク切断装置100は、接着剤を用いることなく複数段のブロック状ワーク2を位置決め固定している。このため、複数段のブロック状ワーク2が個々に積み重なっているだけで、ブロック状ワーク2は押出プッシャ40により下方のワイヤ11に向けて押しだされ、切断される。押出プッシャ40がワーク集合体1を押し出し、ブロック状ワークが押し出される。ここで、図5に示すように、摺動ユニット51の摺動面51Aがブロック状ワーク201から208に対して、いずれかと摺動する。摺動面51Aは、押出プッシャ40がワーク集合体1を押し出す方向(ワーク集合体1が切断される方向)のガイドの役割を果たすことになる。
【0056】
1つ1つのブロック状ワークの寸法がばらついて、1つ1つのブロック状ワークの寸法が許容範囲内である場合であっても、ブロック状ワークが複数段に積み重なると、寸法ばらつきの累積によって位置ばらつきが生じることがある。この場合、図2に示す摺動ユニット51の摺動面51Aがブロック状ワークを押圧する押圧力は部分的なばらつきが生じるおそれがある。例えば、摺動面51Aが当接するブロック状ワークの段と当接しないブロック状ワークの段が発生した場合、部分的にブロック状ワークが抜け落ちるおそれも生じる。
【0057】
保持ユニット61の押圧部61Aは、ブロック状ワークの寸法ばらつき又は位置ばらつきにより、摺動ユニット51の摺動面51Aが当接しないブロック状ワークを押圧し、保持することができる。保持ユニット61の押圧部61Aは、ワイヤ11で切断されるブロック状ワーク又は切断直前のブロック状ワークを保持する。これにより、ワイヤ11で切断されるまでは、ブロック状ワークの積み上げによる寸法ばらつきの累積による位置ばらつきを許容している。そして、図4に示すように押圧部61Aは、ワーク切断部10のワイヤ11により切断されているブロック状ワーク201、211、221に対して押圧可能となる。その結果、押出プッシャ40がワーク集合体1を押し出す動作を円滑にすることができる。また、摺動ユニット51の摺動面51Aが保持する押圧力を弱めてもよく、摺動ユニット51との摺動により、ワーク集合体1に傷がつくおそれも低減できる。
【0058】
図2に示す保持ユニット61のテーパ部61Bは、ブロック状ワークの積み上げによる寸法ばらつき又は位置ばらつきがあった場合に、個々のブロック状ワークを保持ユニット61の押圧部61Aの位置へ案内する。これにより、ワイヤ11で切断されるブロック状ワークは、所定の位置に案内される。そして、保持ユニット61の押圧部61Aが押圧することで、ブロック状ワークの位置が調整される。その結果、切断精度が向上する。なお、ブロック状ワークの積み上げによる寸法ばらつき又は位置ばらつきがない場合は、保持ユニット61の押圧部61Aは、ブロック状ワークを押圧しなくてもよい。図2に示すように、摺動ユニット51と、保持ユニット61とは、互いに干渉せず、個々のブロック状ワーク独立に押圧する。この結果、寸法ばらつき又は位置ばらつきがあるブロック状ワークが保持ユニット61の押圧部61Aにより保持される。
【0059】
ブロック状ワーク2A〜2Lを含むワーク集合体1は接着されていないので、図8に示すように、切断が終わると、片状ワーク2a等となり1つずつ矢印Y方向に落下し、ワーク受け板80上に移動する。ワイヤ11の状態によって、ワーク集合体1のうち、ワーク集合体1が切断される方向側の同じ段のブロック状ワーク2A、2B、2Cでも切断に時間差が生じることがある。例えば、図7に示すブロック状ワーク2Aが先ず切断され、図8に示す片状ワーク2aとなる。図8に示すワーク受け板80上に移動した片状ワーク2aは、挟持用保持部材32と片状ワーク2aの端面の一面が当接し、当接している距離はワーク集合体1が切断される方向の距離Z1である。なお、図8では、ワーク受け板80上に移動した片状ワーク2aは、挟持用保持部材32と片状ワーク2aの端面の一面が当接した例を説明しているが、挟持用保持部材32の代わりに、位置決め用基準板21、位置決め用保持部材22、挟持用基準板31のいずれかと片状ワーク2aの端面の一面が当接することがある。また、片状ワーク2aは、ワーク切断部10により切断中のブロック状ワーク2Bと片状ワーク2aの端面の一面が当接し、当接している距離はワーク集合体1が切断される方向の距離Z2である。ワーク集合体1が切断される方向に生じている空間距離Z3は、ワーク切断部10により切断中のブロック状ワーク2B、2Cとワーク受け板80との距離である。空間距離Z3は、ブロック状ワークの高さWTよりも小さい。また、片状ワーク2aがワーク受け板80上に移動することにより生じるワーク集合体1が切断される方向の空間高さZ4もブロック状ワークの高さWTよりも小さい。空間高さT4は、片状ワーク2aの落下高さである。これにより、片状ワーク2aの落下高さは、ワーク受け板80により、ワーク集合体1に含まれるブロック状ワーク2A〜2Lの個々の高さ以下となるように規制される。
【0060】
挟持用保持部材32又はブロック状ワーク2Bの端面をガイドとして片状ワーク2aの自重でワーク受け板80上に移動する。片状ワーク2aは、ワーク受け板80上に移動する間に上下の端面はフリーとなるが、左右前後の端面は、位置決め用基準板21、位置決め用保持部材22、挟持用基準板31、挟持用保持部材32、片状ワーク2aが隣接する切断されていないブロック状ワーク2Bの端面、切断された片状ワークのいずれか1つにより規制されている。つまり、切断工程では、ワーク切断部10のワイヤ11により切断される片状ワーク2aが落下高さ規制板80に載置された状態で、片状ワーク2aの端面のいずれかがブロック状ワーク2Aに隣接している切断されていないブロック状ワークの端面、例えばブロック状ワーク2Bの端面と接している状態を含むことになる。このため、落下する片状ワーク2aは姿勢が安定する。また、落下する片状ワーク2aが切断中のブロック状ワーク2Bの姿勢へ影響するおそれが低減される。その結果、落下する片状ワーク2a及び切断中のブロック状ワーク2B、2Cの姿勢によってワイヤ11に瞬間的な強いテンションが生じるおそれが低減される。ワイヤ11が一定のテンションでブロック状ワーク2B、2Cを切断するため、ブロック状ワーク2B、2Cの切断精度が向上する。
【0061】
ここで、切断に時間差が生じても、保持ユニット61が押圧力の変化に対応し、切断されているブロック状ワーク2B、2Cの姿勢を変えずに保持できる。ワーク切断装置100は、押出プッシャ40がワーク集合体1を押し出す所定押し出し量となる迄ワークを切断する(ステップS4、No;ステップS3)。
【0062】
次に、ワーク切断装置100は、押出プッシャ40がワーク集合体を押し出す所定押し出し量となる(ステップS4、Yes)場合、図9に示すように、安定して1段のブロック状ワーク2A、2B、2Cを片状ワーク2a、2b、2cとして切断できる。図9では、1段の片状ワーク2a、2b、2cがワーク受け板80に整列された状態で載置される状態を示している。
【0063】
次に、ワーク切断装置100は、ワーク搬出する(ステップS5)。ワーク受け板80は、図10に示すようにリフト機構等により押し下げられ、片状ワーク2a、2b、2cを取り出すことができる。ワーク切断装置100は、全ワーク切断完了していない場合(ステップS6、No)、ワーク受け板80を準備する(ステップS7)。そして、ワーク切断装置100では、ワーク切断が行われる(ステップS3)。ワーク切断装置100は、全ワーク切断完了した場合(ステップS6、Yes)、切断工程を終了する。
【0064】
上述したように、本実施形態のワーク切断方法は、複数のブロック状ワークの端面同士を押し当てて重ねたワーク集合体を準備し、前記ワークをワーク切断装置に投入するワーク投入工程(ステップS2)と、前記ワークを同時に複数の片状ワークに切断する複数のワイヤを有するワーク切断部に対して、前記ワークが保持された状態で押し出す切断工程(ステップS3)と、を含み、前記ワーク切断部により切断されるブロック状ワークの位置が調整される。
【0065】
これにより、ブロック状ワークの寸法ばらつきの累積により位置ばらつきが生じることがある場合でも、ワークを構成するブロック状ワークのうち切断されているブロック状ワークに対して押圧力が加わるので、この押圧力は部分的なばらつきを低減することができる。このため、部分的にブロック状ワークの位置ばらつきが修正され、ワーク切断部に対するブロック状ワークの位置も精度を向上することができる。その結果、ワークに接着剤を用いることなく位置決め固定して切断することができる。そして、ワークの固定される位置が安定し、ワーク切断装置がワークを切断する精度を向上させることができる。また、接着剤を用いていないため、多大な時間を要する接着工程や剥離工程が不要となり、切断工程全体の時間を大幅に短縮させることができる。
【0066】
(実施形態2)
図11は、実施形態2に係る位置決め用保持部材を説明する概略図である。本実施形態に係る位置決め用保持部材は、複数の保持ユニット61が摺動ユニット51、51の間に配置されることに特徴がある。次の説明においては、実施形態1で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0067】
本実施形態の位置決め用保持部材22は、ワーク集合体1側の面からみると図11に示すように摺動ユニット51、51と、複数の保持ユニット61と、複数の保持ユニット62と、を含んでいる。図11に示すように、複数の保持ユニット61は、摺動ユニット51、51の間に配置される。また、複数の保持ユニット62は、摺動ユニット51、51の間に配置される。
【0068】
保持ユニット61の押圧部61Aは、ブロック状ワークの寸法ばらつき又は位置ばらつきにより、摺動ユニット51の摺動面51Aが当接しないブロック状ワークを押圧し、保持することができる。保持ユニット61の押圧部61Aは、ワイヤ11で切断されるブロック状ワーク又は切断直前のブロック状ワークを保持する。本実施形態の位置決め用保持部材22は、複数の保持ユニット61が並んで配置されているので、ブロック状ワークの姿勢を精度よく修正できる。
【0069】
本実施形態の位置決め用保持部材22は、複数の保持ユニット62が並んで配置されている。また、押圧部61Aと、押圧部62Aとは、ワーク集合体1が切断される方向に異なって配置されているので、押圧部62Aは、ワーク集合体1を構成するブロック状ワークのうち押圧部61Aが押圧可能なブロック状ワークと異なるブロック状ワークに対して押圧可能となる。その結果、ブロック状ワークを多数積み上げても押圧部61Aに掛かる荷重の一部が押圧部62Aにより保持され、荷重を分散することができる。このため、衝撃等により、ワーク集合体1が抜け落ちるおそれを低減できる。これにより、複数の保持ユニット62が並んで配置され、押圧部62Aが複数あるので、ブロック状ワークを積み上げる数が増やせる。
【0070】
上述のように、本実施形態の位置決め用保持部材22は、押圧部61Aが複数あり、複数の押圧部61Aが一対の前記摺動ユニット51、51に挟まれている。これにより、複数の押圧部が部分的なブロック状ワークの位置ばらつきを修正できる。例えば、1つのブロック状ワークに対して複数の押圧部61Aを列方向(ワーク集合体1が切断される方向に直交する方向)に押圧させることができ、押圧されたブロック状ワークの姿勢が修正される。その結果、ブロック状ワークの位置ばらつきの修正精度が向上できる。
【0071】
(実施形態3)
図12は、実施形態3に係る位置決め用保持部材を説明する概略図である。本実施形態に係る位置決め用保持部材は、複数の保持ユニット60と摺動ユニット51とが交互に並んで配置されることに特徴がある。次の説明においては、上述した実施形態で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0072】
本実施形態の位置決め用保持部材22は、ワーク集合体1側の面からみると図12に示すように摺動ユニット51と、複数の保持ユニット61と、複数の保持ユニット62と、を含んでいる。図12に示すように、複数の保持ユニット60及び複数の摺動ユニット51は交互に並んで配置される。また、保持ユニット61及び保持ユニット62は、摺動ユニット51、51の間に配置される。
【0073】
保持ユニット61の押圧部61Aは、ブロック状ワークの寸法ばらつき又は位置ばらつきにより、摺動ユニット51の摺動面51Aが当接しないブロック状ワークを押圧し、保持することができる。保持ユニット61の押圧部61Aは、ワイヤ11で切断されるブロック状ワーク又は切断直前のブロック状ワークを保持する。本実施形態の位置決め用保持部材22は、複数の保持ユニット61が摺動ユニット51を介して並んで配置されているので、ブロック状ワークの姿勢を精度よく修正できる。
【0074】
本実施形態の位置決め用保持部材22は、複数の保持ユニット62が摺動ユニット51を介して並んで配置されている。また、押圧部61Aと、押圧部62Aとは、ワーク集合体1が切断される方向に異なって配置されているので、押圧部62Aは、ワーク集合体1を構成するブロック状ワークのうち押圧部61Aが押圧可能なブロック状ワークと異なるブロック状ワークに対して押圧可能となる。その結果、ブロック状ワークを多数積み上げても押圧部61Aに掛かる荷重の一部が押圧部62Aにより保持され、荷重を分散することができる。このため、衝撃等により、ワーク集合体1が抜け落ちるおそれを低減できる。これにより、複数の保持ユニット62が摺動ユニット51を介して並んで配置され、複数の押圧部62Aを有することにより、ブロック状ワークを積み上げる数が増やせる。
【0075】
上述のように、位置決め用保持部材22は、押圧部61Aと摺動ユニット51とが交互に配列されていることが好ましい。摺動ユニット51が押出手段によって押し出される複数のブロック状ワークの姿勢をガイドしつつ、摺動ユニット51の両側で押圧部がブロック状ワークの姿勢を修正できる。これにより、複数の押圧部が部分的なブロック状ワークの位置ばらつきを修正できる。その結果、ブロック状ワークの位置ばらつきの修正精度が向上できる。
【0076】
(実施形態4)
図13は、実施形態4に係る位置決め用保持部材を説明する概略図である。本実施形態に係る位置決め用保持部材22は、複数の保持ユニット60を有するが摺動ユニット51が省略されることに特徴がある。次の説明においては、上述した実施形態で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0077】
本実施形態の位置決め用保持部材22は、ワーク集合体1側の面からみると図13に示すように複数の保持ユニット61と、複数の保持ユニット62と、を含んでいる。図13に示すように、保持ユニット60が所定間隔をあけて並んで配置される。また、押圧部61Aと、押圧部62Aとは、ワーク集合体1が切断される方向に異なって配置されているので、押圧部62Aは、ワーク集合体1を構成するブロック状ワークのうち押圧部61Aが押圧可能なブロック状ワークと異なるブロック状ワークに対して押圧可能となる。その結果、ブロック状ワークを多数積み上げても押圧部61Aに掛かる荷重の一部が押圧部62Aにより保持され、荷重を分散することができる。このため、衝撃等により、ワーク集合体1が抜け落ちるおそれを低減できる。これにより、複数の保持ユニット62が摺動ユニット51を介して並んで配置され、複数の押圧部62Aを有することにより、ブロック状ワークを積み上げる数が増やせる。また、本実施形態の位置決め用保持部材22は、複数の保持ユニット60を有するが摺動ユニット51が省略される。このため、保持ユニット60間の所定間隔が小さくなることで、小さなブロック状ワークにも対応できる。また、保持ユニット60間の所定間隔をなくし、保持ユニット60が連続して並ぶように配置してもよい。
【0078】
挟持用保持部材32は、本実施形態の位置決め用保持部材22と同じ構成とすることができる。例えば、図13に示すように、複数の保持ユニット60を有するが摺動ユニット51が省略される。このため、保持ユニット60間の所定間隔に破線で示すワイヤ11を通し、ブロック状ワークを保持ユニット60で保持することができる。各押圧部61Aにより、切断された各片状ワークを保持することができる。
【0079】
上述のように、位置決め用保持部材22は、保持ユニット60が所定間隔をあけて並んで配置される。押圧部61Aが所定間隔をあけて並んで複数配列されていることが好ましい。これにより、複数の押圧部が部分的なブロック状ワークの位置ばらつきを修正できる。その結果、ブロック状ワークの位置ばらつきの修正精度を向上できる。
【0080】
(変形例)
図14は、ワーク切断装置の具体的な構成を示す斜視図である。上述した実施形態1、実施形態2、実施形態3、実施形態4のワーク切断装置100において、位置決め用基準板21、挟持用基準板31は、片面を位置決め用基準面21a、挟持用基準面31aとしている。図15は、変形例に係るワーク切断装置の具体的な構成を示す斜視図である。図15のワーク切断装置101では、位置決め用基準板21、挟持用基準板31は、両面を位置決め用基準面21a、挟持用基準面31aとしている。例えば、十字形状の仕切板90を設け、この仕切板90を位置決め用基準板21、挟持用基準板31として利用し、4箇所分のワーク収納部を設けることで、ワーク集合体1の収納量を増やすことができる。押出プッシャ40は、ワーク収納部毎の押出部40a〜40dを有する。図16は、ワーク集合体1の変形例を示す概略図である。ワーク集合体1としては、ブロック状ワークが直方体形状のものに限らず、例えば図16に示すような瓦状ワーク300を多段に積み重ねたものであってもよい。切断されてできる片状ワークに要求される厚みの整数倍の長さに形成されてその両端の端面が垂直状態で平行な形状のものであれば、同様に適用できる。
【0081】
上述した実施形態1、実施形態2、実施形態3、実施形態4の位置決め用保持部材22は、実施形態1、実施形態2、実施形態3、実施形態4の位置決め用保持部材22のいずれかを組み合わせて使用することができる。
【符号の説明】
【0082】
1 ワーク集合体
2、2A〜2L、201〜208、211〜218、221〜228 ブロック状ワーク
2a、2b、2c 片状ワーク
10 ワーク切断部
11 ワイヤ
12a、12b ガイドローラ
21 位置決め用基準板
21a 位置決め用基準面
22 位置決め用保持部材
31 挟持用基準板
31a 挟持用基準面
32 挟持用保持部材
40 押出プッシャ
60、61、62 保持ユニット
61A 押圧部
62A 押圧部(第2の押圧部)
70 押圧手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のブロック状ワークの端面同士を押し当てて重ねた集合体であるワークを同時に複数の片状ワークに切断する複数のワイヤを有するワーク切断部と、
前記ワーク切断部の前記ワイヤによる切断面に平行で前記ワイヤとの位置関係が設定された位置決め用基準面を有する位置決め用基準板と、前記位置決め用基準面に前記ワークを押し当てる状態で前記位置決め用基準面に直交する方向にずれないように前記ワークを位置決めする位置決め用保持部材と、を有するワーク位置決め体と、
前記ワーク位置決め体により位置決めされて、かつワイヤ長手方向に位置する前記ワークの両端を挟持するワーク挟持体と、
前記ワークを、位置固定された前記ワーク切断部に対して押し出す押出手段と、を含み、
前記位置決め用保持部材は、前記ワーク切断部により切断されているブロック状ワークに対して押圧可能な押圧部を有することを特徴とするワーク切断装置。
【請求項2】
前記位置決め用保持部材は、前記ワークを前記位置決め用基準面に押圧接触させて摺動自在に位置決めする摺動ユニットを有する請求項1に記載のワーク切断装置。
【請求項3】
前記位置決め用保持部材は、前記押圧部が前記摺動ユニットに挟まれている請求項2に記載のワーク切断装置。
【請求項4】
前記位置決め用保持部材は、前記押圧部が複数あり、複数の前記押圧部が一対の前記摺動ユニットに挟まれている請求項2又は3に記載のワーク切断装置。
【請求項5】
前記位置決め用保持部材は、前記押圧部と前記摺動ユニットが交互に配列されている請求項2から4のいずれか1つに記載のワーク切断装置。
【請求項6】
前記ワークが切断される方向の前記押圧部の長さは、前記ワークが切断される方向の前記ブロック状ワークの長さよりも短く設定される請求項1から5のいずれか1つに記載のワーク切断装置。
【請求項7】
前記位置決め用保持部材は、前記ワークを構成するブロック状ワークのうち前記押圧部が押圧可能なブロック状ワークと異なるブロック状ワークに対して押圧可能な第2の押圧部を有する請求項1から6のいずれか1つに記載のワーク切断装置。
【請求項8】
前記ワークが切断される方向の前記第2の押圧部の長さは、前記ワークが切断される方向の前記ブロック状ワークの長さよりも短く設定される請求項7に記載のワーク切断装置。
【請求項9】
複数のブロック状ワークの端面同士を押し当てて重ねた集合体としてワークを準備し、前記ワークをワーク切断装置に投入するワーク投入工程と、
前記ワークを同時に複数の片状ワークに切断する複数のワイヤを有するワーク切断部に対して、前記ワークが保持された状態で押し出す切断工程と、を含み、
前記ワーク切断部により切断されるブロック状ワークの位置が調整されることを特徴とするワーク切断方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−139782(P2012−139782A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−294195(P2010−294195)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】