説明

一液型熱硬化性エポキシ樹脂組成物

【課題】貯蔵安定性に優れ、ガラス転移温度が高い硬化物となることができる一液型熱硬化性エポキシ樹脂組成物の提供。
【解決手段】エポキシ樹脂(A)と、分子内にメルカプト基を2個以上有するメルカプト基含有シリコーン(B)と、下記式(I)で表されるホスフィン化合物(C)とを含む一液型熱硬化性エポキシ樹脂組成物。


(式中、R1、R2はそれぞれ水素原子、アルキル基を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一液型熱硬化性エポキシ樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エポキシ樹脂の硬化剤としてチオール化合物と塩基性化合物を併用した組成物が提案されている(例えば、特許文献1)。エポキシ樹脂の硬化剤としてチオール化合物と塩基性化合物(例えば、トリフェニルホスフィン)とを併用した組成物は低温硬化性に優れる。
【0003】
【特許文献1】特開平11−209459号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明者は、チオール化合物と塩基性化合物としてアミン類またはトリフェニルホスフィンとをエポキシ樹脂の硬化剤として用いて一液型の組成物とする場合、そのような組成物はポットライフが短く貯蔵安定性に劣り、得られる硬化物はガラス転移温度が低いという問題があることを見出した。
そこで、本発明は、貯蔵安定性に優れ、ガラス転移温度が高い硬化物となることができる一液型熱硬化性エポキシ樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、エポキシ樹脂(A)と、分子内にメルカプト基を2個以上有するメルカプト基含有シリコーン(B)と、特定の式で表されるホスフィン化合物(C)とを含む一液型熱硬化性エポキシ樹脂組成物が、貯蔵安定性に優れ、ガラス転移温度が高い硬化物となることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
すなわち、本発明は、下記1〜5を提供する。
1. エポキシ樹脂(A)と、分子内にメルカプト基を2個以上有するメルカプト基含有シリコーン(B)と、下記式(I)で表されるホスフィン化合物(C)とを含む一液型熱硬化性エポキシ樹脂組成物。
【化1】


(式中、R1、R2はそれぞれ水素原子、アルキル基を示す。)
2. さらに、ホウ酸エステルおよび/またはイミダゾール塩を含む上記1に記載の一液型熱硬化性エポキシ樹脂組成物。
3. 前記メルカプト基含有シリコーン(B)が、下記式(1)で表される上記1または2に記載の一液型熱硬化性エポキシ樹脂組成物。
【化2】


(式中、R1はアルキル基であり、Rはアルキレン基であり、R2はアルキル基またはアルコキシ基であり、R3はアルキル基であり、nは2以上の整数である。)
4. 前記ホウ酸エステルが、トリメチルボレート、トリエチルボレート、トリフェニルボレート、トリイソプロピルボレート、トリ−n−ブチルボレートおよびトリペンチルボレートからなる群から選ばれる少なくとも1種である上記2または3に記載の一液型熱硬化性エポキシ樹脂組成物。
5. 前記エポキシ樹脂(A)が有するエポキシ基に対する前記メルカプト基の比(前記メルカプト基のモル数/前記エポキシ基のモル数)が、0.5〜1.2であり、前記ホスフィン化合物(C)の量が、前記エポキシ樹脂(A)100質量部に対して、1〜30質量部であり、前記ホウ酸エステルおよび/またはイミダゾール塩の量が、前記エポキシ樹脂(A)100質量部に対して、0.1〜10質量部である上記2〜4のいずれかに記載の一液型熱硬化性エポキシ樹脂組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一液型熱硬化性エポキシ樹脂組成物は、貯蔵安定性に優れ、ガラス転移温度が高い硬化物となることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明について以下詳細に説明する。
本発明の一液型熱硬化性エポキシ樹脂組成物は、
エポキシ樹脂(A)と、分子内にメルカプト基を2個以上有するメルカプト基含有シリコーン(B)と、下記式(I)で表されるホスフィン化合物(C)とを含む一液型熱硬化性エポキシ樹脂組成物である。
【化3】


(式中、R1、R2はそれぞれ水素原子、アルキル基を示す。)
本発明の一液型熱硬化性エポキシ樹脂組成物を以下「本発明の組成物」ということがある。
【0009】
エポキシ樹脂(A)について以下に説明する。
本発明の組成物に含まれるエポキシ樹脂(A)は、1分子中平均してエポキシ基を2個以上有する化合物であれば特に制限されない。例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、カテコール、レゾルシノール等の多価フェノール、グリセリンやポリエチレングリコール等の多価アルコールとエピクロロヒドリンを反応させて得られるポリグリシジルエーテル;p−ヒドロキシ安息香酸、β−ヒドロキシナフトエ酸のようなヒドロキシカルボン酸と、エピクロロヒドリンを反応させて得られるグリシジルエーテルエステル;フタル酸、テレフタル酸のようなポリカルボン酸とエピクロロヒドリンを反応させて得られるポリグリシジルエステル;エポキシ化フェノールノボラック樹脂、エポキシ化クレゾールノボラック樹脂、エポキシ化ポリオレフィン、環式脂肪族エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、4,4ジアミノジフェニルメタンやm−アミノフェノールなどから得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、等が挙げられる。
エポキシ樹脂(A)は、貯蔵安定性により優れ、より高いガラス転移温度を有する硬化物となることができ、速硬化性に優れるという観点から、ビスフェノールA、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂が好ましい。
エポキシ樹脂(A)はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0010】
メルカプト基含有シリコーン(B)について以下に説明する。
本発明の組成物に含まれるメルカプト基含有シリコーン(B)は、分子内にメルカプト基(−SH)を2個以上有し、主鎖がシリコーン骨格である化合物である。
本発明においてメルカプト基含有シリコーン(B)はエポキシ樹脂(A)の硬化剤として使用される。
【0011】
1分子のメルカプト基含有シリコーン(B)が有するメルカプト基の数は、貯蔵安定性により優れ、より高いガラス転移温度を有する硬化物となることができ、速硬化性に優れるという観点から、5〜10個であるのが好ましく、6〜8個であるのがより好ましい。
メルカプト基は、メルカプト基含有シリコーン(B)の主鎖に直接結合することができる。また、メルカプト基は、メルカプト基含有シリコーン(B)の主鎖に有機基を介して結合することができる。
【0012】
メルカプト基とメルカプト基含有シリコーン(B)の主鎖とを介する有機基は、2価の炭化水素基であれば特に制限されない。2価の炭化水素基は、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子のようなヘテロ原子を有することができる。2価の炭化水素基としては、例えば、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、これらの組み合わせによる炭化水素基が挙げられる。なかでも、硬化物のガラス転移温度(ガラス転移点)がより高く、速硬化性、貯蔵安定性に優れるという観点から、脂肪族炭化水素基が好ましい。脂肪族炭化水素基は、炭素原子数1〜6であるものが挙げられる。具体的には例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基が挙げられる。
【0013】
メルカプト基含有シリコーン(B)の主鎖は、メルカプト基以外に、例えば、メトキシ基、エトキシ基のようなアルコキシ基;メチル基、エチル基のようなアルキル基を有することができる。
【0014】
メルカプト基含有シリコーン(B)としては、例えば、下記式(1)で表される化合物が挙げられる。メルカプト基含有シリコーン(B)は、貯蔵安定性により優れ、より高いガラス転移温度を有する硬化物となることができ、速硬化性に優れるという観点から、式(1)で表される化合物であるのが好ましい。
【化4】


式中、R1はアルキル基であり、Rはアルキレン基であり、R2はアルキル基またはアルコキシ基であり、R3はアルキル基であり、nは2以上の整数である。
【0015】
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基が挙げられる。
アルキレン基としては、炭素原子数2〜6のものが挙げられ、具体的には例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基が挙げられる。
2であるアルキル基またはアルコキシ基としては、例えば、メチル基またはメトキシ基が挙げられる。R3であるアルキル基としては、例えば、メチル基が挙げられる。
nは2以上の整数であり、硬化物のガラス転移温度(ガラス転移点)がより高く、速硬化性、貯蔵安定性に優れるという観点から、5〜10であるのが好ましく、6〜8であるのがより好ましい。
【0016】
式(1)で表される化合物としては、例えば、下記式(2)で表される化合物が挙げられる。式(1)で表される化合物は、貯蔵安定性により優れ、より高いガラス転移温度を有する硬化物となることができ、速硬化性に優れるという観点から、式(2)で表される化合物が好ましい。
【化5】


式中、R1はアルキル基であり、R2はアルキル基またはアルコキシ基であり、R3はアルキル基であり、nは2以上の整数である。R1、R2、R3、nは、それぞれ上記と同義である。
メルカプト基含有シリコーン(B)は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0017】
メルカプト基含有シリコーン(B)はその製造について特に制限されない。例えば、メルカプト基含有アルキコシシラン化合物を縮合させることによって製造することができる。
メルカプト基含有アルコキシシラン化合物は、少なくとも1個のメルカプト基と少なくとも2個のアルコキシ基とを有するシラン化合物である。メルカプト基含有アルコキシシラン化合物は、メルカプト基およびアルコキシ基以外に、例えばメチル基、エチル基のようなアルキル基を有することができる。
メルカプト基は、有機基を介してケイ素原子に結合することができる。有機基は上記と同義である。
【0018】
メルカプト基含有アルコキシシラン化合物としては、例えば、下記式(3)で表される化合物が挙げられる。
【化6】


式中、R1、R4はそれぞれ独立にアルキル基であり、Rはアルキレン基であり、mは2または3であり、nは1または2であり、m+nは3または4である。
1、Rは、それぞれ上記と同義である。R4としてのアルキル基は例えば、メチル基、エチル基が挙げられる。
【0019】
メルカプト基含有アルコキシシラン化合物としては、例えば、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシランのような3−メルカプトプロピルトリアルコキシシラン;3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジエトキシシランのような3−メルカプトプロピルアルキルジアルコキシシランが挙げられる。
【0020】
メルカプト基含有アルコキシシラン化合物を縮合させる方法は特に制限されない。例えば、メルカプト基含有アルコキシシラン化合物を少なくとも含む組成物を加水分解し縮合する方法が挙げられる。
メルカプト基含有アルコキシシラン化合物を少なくとも含む組成物は、メルカプト基含有アルコキシシラン以外のアルコキシシランを含むことができる。メルカプト基含有アルコキシシラン以外のアルコキシシランは特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
【0021】
メルカプト基含有シリコーン(B)の量は、貯蔵安定性により優れ、より高いガラス転移温度を有する硬化物となることができ、硬化性、低温硬化性に優れるという観点から、エポキシ樹脂(A)が有するエポキシ基に対する、メルカプト基含有シリコーン(B)が有するメルカプト基の比(メルカプト基のモル数/前記エポキシ基のモル数)が、0.5〜1.2となる量であるのが好ましく、0.7〜0.9であるのがより好ましい。
【0022】
ホスフィン化合物(C)について以下に説明する。
本発明の組成物に含まれるホスフィン化合物(C)は、下記式(I)で表される化合物である。
【化7】


式中、R1、R2はそれぞれ水素原子、アルキル基を示す。
1は水素原子、アルキル基を示す。R2は水素原子、アルキル基を示す。
1、R2は同じでも異なっていてもよい。複数のR1は同じでも異なっていてもよい。複数のR2は同じでも異なっていてもよい。
本発明において、ホスフィン化合物(C)は硬化促進剤として使用される。
【0023】
式(I)中、アルキル基は、貯蔵安定性により優れ、より高いガラス転移温度を有する硬化物になることができるという観点から、炭素原子数1〜6であるのが好ましい。
また、アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基が挙げられる。
アルキル基は、貯蔵安定性により優れ、より高いガラス転移温度を有する硬化物になることができるという観点から、ベンゼン環のパラ位に結合しているのが好ましい。
【0024】
ホスフィン化合物(C)としては、例えば、トリフェニルホスフィントリフェニルボレート、トリパラメチルフェニルホスフィントリフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラキス(4−メチルフェニル)ボレートが挙げられる。
ホスフィン化合物(C)は、貯蔵安定性により優れ、速硬化性に優れるという観点から、トリフェニルホスフィントリフェニルボレートおよび/またはトリパラメチルフェニルホスフィントリフェニルボレートであるのが好ましい。
ホスフィン化合物(C)は、貯蔵安定性により優れ、低温硬化性に優れるという観点から、トリフェニルホスフィントリフェニルボレートが好ましい。
【0025】
トリフェニルホスフィントリフェニルボレートは下記式(II)で表される化合物である。トリフェニルホスフィントリフェニルボレートの市販品としては、例えば、商品名TPP−S(北興化学工業株式会社社製)が挙げられる。
トリパラメチルフェニルホスフィントリフェニルボレートは下記式(III)で表される化合物である。トリパラメチルフェニルホスフィントリフェニルボレートの市販品としては、例えば、商品名TPTP−S(北興化学工業株式会社社製)が挙げられる。
【化8】

【0026】
ホスフィン化合物(C)はその製造について特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
ホスフィン化合物(C)は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0027】
ホスフィン化合物(C)の量は、貯蔵安定性により優れ、低温硬化性に優れるという観点から、エポキシ樹脂(A)100質量部に対して、1〜30質量部であるのが好ましく、2〜10質量部であるのがより好ましい。
【0028】
本発明の組成物は、貯蔵安定性により優れ、より高いガラス転移温度を有する硬化物となることができ、速硬化性に優れるという観点から、さらに、ホウ酸エステルおよび/またはイミダゾール塩を含むのが好ましい。
本発明の組成物において、ホウ酸エステルおよび/またはイミダゾール塩は、メルカプト基含有シリコーン、ホスフィン化合物に対する保存安定剤として使用される。
【0029】
本発明の組成物が含むことができるホウ酸エステルとしては、例えば、トリメチルボレート、トリエチルボレート、トリ−n−プロピルボレート、トリイソプロピルボレート、トリ−n−ブチルボレート、トリペンチルボレート、トリヘキシルボレート、トリオクチルボレート、トリノニルボレート、トリデシルボレート、トリドデシルボレート、トリヘキサデシルボレート、トリオクタデシルボレート、ビス(1,4,7,10−テトラオキサウンデシル)(1,4,7,10,13−ペンタオキサテトラデシル)(1,4,7−トリオキサウンデシル)ボラン、トリス(2−エチルヘキシロキシ)ボランのような飽和脂肪族炭化水素基を有するホウ酸エステル;トリアリルボレートのような不飽和脂肪族炭化水素基を有するホウ酸エステル;トリシクロヘキシルボレートのような脂環式脂肪族炭化水素基を有するホウ酸エステル;トリベンジルボレート、トリフェニルボレート、トリ−o−トリルボレート、トリ−m−トリルボレートのような芳香族炭化水素基を有するホウ酸エステル;トリエタノールアミンボレートが挙げられる。
【0030】
なかでも、貯蔵安定性により優れ、より高いガラス転移温度を有する硬化物となることができるという観点から、トリメチルボレート、トリエチルボレート、トリフェニルボレート、トリイソプロピルボレート、トリ−n−ブチルボレート、トリペンチルボレートが好ましい。
ホウ酸エステルはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0031】
本発明の組成物が含むことができるイミダゾール塩は、イミダゾールを有する塩であれば特に制限されない。例えば、下記式(4)で表される化合物が挙げられる。
【化9】


式中、R1、R2はそれぞれ独立に炭素原子数1〜6のアルキル基を示す。アルキル基としては例えば、メチル基、エチル基が挙げられる。
アニオン種であるX-は特に制限されない。例えば、BPh4-(Phはフェニル基を示す。)、ハロゲン原子のイオン、CF3SO3-、(CF3SO22-、PF6-、SbF6-が挙げられる。
【0032】
なかでも、貯蔵安定性により優れ、より高いガラス転移温度を有する硬化物となることができ、速硬化性に優れるという観点から、下記式(5)で表される化合物が好ましい。
【化10】


式(5)で表される化合物の市販品として、商品名EMZ−K(北興化学工業株式会社社製)が挙げられる。
イミダゾール塩はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0033】
ホウ酸エステルおよび/またイミダゾール塩の量は、貯蔵安定性により優れ、より高いガラス転移温度を有する硬化物となることができ、速硬化性に優れるという観点から、エポキシ樹脂(A)100質量部に対して、0.1〜10質量部であるのが好ましく、1〜6質量部であるのがより好ましい。
【0034】
本発明の組成物は、エポキシ樹脂(A)、メルカプト基含有シリコーン(B)、ホスフィン化合物(C)、ならびにホウ酸エステルおよび/またはイミダゾール塩のほかに、必要に応じて添加剤を含むことができる。添加剤としては、例えば、充填剤(例えば、シリカ、炭酸カルシウムなど)、希釈剤、溶剤、顔料、可撓性付与剤、カップリング剤、酸化防止剤、チキソ性付与剤、分散剤が挙げられる。
【0035】
本発明の組成物は、その製造について特に制限されない。例えば、エポキシ樹脂(A)、メルカプト基含有シリコーン(B)、ホスフィン化合物(C)、ならびに必要に応じて使用することができる、ホウ酸エステルおよび/またはイミダゾール塩、添加剤を、撹拌装置を使用して均一に混合することによって、一液型のエポキシ樹脂組成物として製造することができる。
【0036】
本発明の組成物は熱硬化性であり、本発明の組成物は80〜200℃の条件下において硬化することができる。本発明の組成物を加熱すると、ホスフィン化合物(C)が溶解し、溶解したホスフィン化合物(C)がメルカプト基含有シリコーン(B)が有するメルカプト基を活性化しメルカプト基含有シリコーン(B)とエポキシ樹脂(A)とが反応することによって、本発明の組成物は硬化することができる。
また、本発明の組成物は上記のような温度で硬化することができるので低温硬化性に優れる。
【0037】
本発明の組成物は、例えば、接着剤用、塗料用、土木建築用、電気用、輸送機用、医療用、包装用、繊維用、スポーツ・レジャー用として使用することができる。
本発明の組成物を適用することができる被着体としては、例えば、金属、ガラス、プラスチック、モルタル、コンクリート、ゴム、木材、皮、布、紙が挙げられる。
【実施例】
【0038】
以下に、実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されない。
1.評価
下記のようにして得られた組成物について、貯蔵安定性、硬化性、ガラス転移温度を以下に示す方法で評価した。結果を第1表に示す。
【0039】
(1)貯蔵安定性
下記のようにして得られた組成物を25℃の恒温槽に保存し、組成物に流動性がなくなるまでの日数を測定した。
(2)硬化性
JIS C2161:1997の熱板法に準じて、100℃および150℃でのゲルタイムをホットプレート上で測定した。
【0040】
(3)ガラス転移温度
下記のようにして得られた組成物を150℃のオーブンにて1時間硬化させ、硬化物について動的粘弾性測定(Dynamic Mechanical Analysis)を歪み0.01%、周波数10Hz、昇温速度5℃/minの条件で、室温から200℃までの温度領域において、強制伸長加振を行って貯蔵弾性率(G′)を測定した。
【0041】
2.組成物の製造
第1表に示す成分を同表に示す量(質量部)で使用し撹拌機で撹拌して均一に混合し組成物を製造した。
なお、メルカプト基含有シリコーン(B)のかっこ内の数値は、エポキシ樹脂(A)のエポキシ基に対する、メルカプト基含有シリコーン(B)が有するSH基(メルカプト基)の当量比である。
【0042】
【表1】

【0043】
【表2】

【0044】
【表3】

【0045】
第1表に示されている各成分は、以下のとおりである。
・エポキシ樹脂(A)1商品名EP4100E、ADEKA社製エポキシ樹脂、エポキシ当量188g/mol
・エポキシ樹脂(A)2:HP7200(DIC社製) ジシクロペンタジエン型固形エポキシ樹脂 エポキシ当量258g/mol
・エポキシ樹脂(A)3:MY721(ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製) ジアミノジフェニルメタン型エポキシ樹脂 エポキシ当量112g/mol
・エポキシ樹脂(A)4:MY0510(ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製)アミノフェノール型エポキシ樹脂 エポキシ当量101g/mol
・エポキシ樹脂(A)5:HP4032D(DIC社製) ナフタレン型エポキシ樹脂 エポキシ当量135-165g/mol
・エポキシ樹脂(A)6:Ep152(JER社製) フェノールノボラック型エポキシ樹脂 エポキシ当量176g/mol
・エポキシ樹脂(A)7:Ep154(JER社製) フェノールノボラック型固形エポキシ樹脂 エポキシ当量176g/mol
・エポキシ樹脂(A)8:YX4000(JER社製) ビフェニル型固形エポキシ樹脂 エポキシ当量180-192g/mol
・エポキシ樹脂(A)9:YL6800(JER社製) 水添ビフェノール型エポキシ樹脂 エポキシ当量193g/mol
・エポキシ樹脂(A)10:NC3000L(日本化薬社製) ビフェニル型固形エポキシ樹脂 エポキシ当量269g/mol
・メルカプト基含有シリコーン(B):商品名Z6062H、東レダウコーニング社製、下記式で表される、メルカプト基含有シラン化合物の縮合物、SH当量139g/mol
【化11】


式中、nは6〜8である。
・チオール化合物:下記式で表されるトリメチロールプロパントリスチオグリコレート(TMTG)、淀化学社製
【化12】


・フェノール樹脂:MEH-7851SS、明和化成株式会社社製
・ホスフィン化合物(C)1:TPP−S、北興化学工業株式会社社製
・ホスフィン化合物(C)2:TPTP−S、北興化学工業株式会社社製
・TPP:トリフェニルホスフィン、東京化成工業株式会社社製
・アミン:商品名DMP-30、東京化成工業株式会社社製
・ホウ酸エステル:B(OEt)3、東京化成工業株式会社社製
・イミダゾール塩:商品名EMZ−K、北興化学工業株式会社社製
【0046】
第1表に示す結果から明らかなように、メルカプト基含有シリコーン(B)を含まず代わりにチオール化合物を含みホスフィン化合物(C)を含まず代わりにTPPまたはアミンを硬化促進剤として含む比較例1〜3は、貯蔵安定性に劣り、得られる硬化物のガラス転移温度が50℃未満と低かった。
メルカプト基含有シリコーン(B)を含まず代わりにフェノール樹脂を含み、ホスフィン化合物(C)を含まず代わりにTPPを含む比較例4、5はゲルタイムが長く硬化性に劣った。
ホスフィン化合物(C)を含まず代わりにTPPを含む比較例6はゲルタイムが長く硬化性、貯蔵安定性に劣った。
これに対して、実施例1〜21は、貯蔵安定性に優れ、得られる硬化物のガラス転移温度が高く、ガラス転移温度はいずれも69℃以上であった。
また、実施例1〜21は従来と同等またはそれより優れる低温硬化性を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂(A)と、分子内にメルカプト基を2個以上有するメルカプト基含有シリコーン(B)と、下記式(I)で表されるホスフィン化合物(C)とを含む一液型熱硬化性エポキシ樹脂組成物。
【化1】


(式中、R1、R2はそれぞれ水素原子、アルキル基を示す。)
【請求項2】
さらに、ホウ酸エステルおよび/またはイミダゾール塩を含む請求項1に記載の一液型熱硬化性エポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
前記メルカプト基含有シリコーン(B)が、下記式(1)で表される請求項1または2に記載の一液型熱硬化性エポキシ樹脂組成物。
【化2】


(式中、R1はアルキル基であり、Rはアルキレン基であり、R2はアルキル基またはアルコキシ基であり、R3はアルキル基であり、nは2以上の整数である。)
【請求項4】
前記ホウ酸エステルが、トリメチルボレート、トリエチルボレート、トリフェニルボレート、トリイソプロピルボレート、トリ−n−ブチルボレートおよびトリペンチルボレートからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項2または3に記載の一液型熱硬化性エポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
前記エポキシ樹脂(A)が有するエポキシ基に対する前記メルカプト基の比(前記メルカプト基のモル数/前記エポキシ基のモル数)が、0.5〜1.2であり、前記ホスフィン化合物(C)の量が、前記エポキシ樹脂(A)100質量部に対して、1〜30質量部であり、前記ホウ酸エステルおよび/またはイミダゾール塩の量が、前記エポキシ樹脂(A)100質量部に対して、0.1〜10質量部である請求項2〜4のいずれかに記載の一液型熱硬化性エポキシ樹脂組成物。

【公開番号】特開2010−84096(P2010−84096A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−257541(P2008−257541)
【出願日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】