説明

一酸化炭素シフト反応触媒

【課題】 本発明は、低温度域での高い触媒活性、と温度変化に対する高い安定性を併せ持つ触媒を一酸化炭素シフト反応触媒として提供する。
【解決手段】 化学式La2−xCu1−y4−δ(式中のAはアルカリ土類金属元素、アルカリ金属元素よりなる群から選ばれた、少なくとも1種類以上の元素を示し、BはLi、Mgより選ばれた少なくとも1種類以上の元素を示しており、xは0≦x≦0.2であり、yは0≦y≦0.2であり、δは酸素欠損量または酸素過剰量を表す。)で表され、層状ペロブスカイト構造を有する複合酸化物を用いてなることを特徴とする、炭化水素、酸素および水蒸気を含むガスを改質して得られた水素燃料を中に残存する一酸化炭素を、少なくともシフト反応を用いて改質する、一酸化炭素シフト反応触媒。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくともシフト反応を用いて燃料改質を行い、高純度の水素ガスを得るための燃料改質触媒および燃料改質器に関する。
【背景技術】
【0002】
固体高分子型燃料電池は、水素と酸素を燃料として電気エネルギーを取り出す電池であり、高い出力密度、低温での動作、排気ガスに有害物質をほとんど含まないといった、特長を持ち合わせていながら、そのサイズや形状を、定置型、車載型などに対して、柔軟にコントロールできる新しい電力源として実用化が始まっている。
【0003】
固体高分子型燃料電池のアノード極、すなわち水素反応極の燃料源には、高純度の水素ガスだけでなく、炭化水素ガス、アルコール等の水素を含む有機物質を燃料改質器に通して得られた水素富化ガスが使用されている。しかしながら、改質して得られる水素富化ガス中には、未改質の原料ガス、副生成物としての一酸化炭素が一般に0.5〜1%含まれており、低水素濃度の水素富化ガス中では、それら、水素以外のガスによってアノード電極が被毒され、燃料電池の性能の低下につながる。
【0004】
また、水素富化ガス中の水素濃度が低いことは、燃料源から得られる最終的なエネルギーのロスが多いことを意味する。
【0005】
燃料の改質工程は、大きく分けて、原料の脱硫工程、燃料ガスの改質工程、改質ガス中の一酸化炭素除去工程を含んでいる。一酸化炭素の除去には、シフト反応と選択酸化反応を組み合わせて行うのが一般的であり、初めに一酸化炭素シフト反応を用いてCO濃度を数千ppmまで低減し、この工程で除去出来なかった一酸化炭素は、さらに一酸化炭素選択酸化反応により除去され、最終的にはCO濃度を10ppm以下にし、燃料電池の劣化を防いでいる。一酸化炭素の除去工程のうち、一酸化炭素シフト反応による除去工程には、燃料ガスに含まれる一酸化炭素と等量以上の水蒸気を高温で反応させて一酸化炭素を二酸化炭素へ改質するシフト反応を用いた燃料改質法が用いられるが、この工程での改質効率が、最終的な水素富化ガス中の一酸化炭素濃度に対して、非常に大きな影響を与えることが知られている。
【0006】
シフト反応を利用した一酸化炭素改質触媒としては、Cu−Zn系の合金が実用化されているが、改質器の大きさに制約があり、空間速度が大きな反応条件下において触媒活性が低下するという問題がある。
【0007】
一方、アナターゼ型のTiOにPtを担持した触媒、γ−Alに貴金属を担持した触媒などの酸化物と貴金属を組み合わせた触媒が合金系に比べて、より高い触媒活性が得られることが報告されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2002−66320号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このような酸化物触媒も、高い触媒活性を得るためには300℃程度の高い温度を要する上、動作条件による大きな温度変動に対する安定性が十分なものではない。
【0009】
本発明は、低温度域での高い触媒活性と、温度変化に対する高い安定性を併せ持つ触媒を一酸化炭素シフト反応触媒として提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題を解決するために、本発明では低温においても金属の触媒活性を向上させる効果のある複合酸化物と、Ptなどの貴金属から構成される触媒を一酸化炭素シフト反応触媒として用いることを提案するものである。
【0011】
提案する複合酸化物は、化学式La1−xCu1−y4−δで表され、層状ペロブスカイト構造を有する複合酸化物であり、式中のAはアルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素よりなる群から選ばれた、少なくとも1種類以上の元素である必要があり、xは0≦x≦0.2である必要があり、BはLi、Mgより選ばれた少なくとも1種類以上の元素であり、yは0≦y≦0.2である必要がある。xが上記に規定する範囲を外れると酸素が過剰に欠損する、また、層状ペロブスカイト構造を保てなくなる。
【0012】
yが上記に規定する範囲を外れると、請求項4および請求項5に示したようなp型半導体とする電子的特性および空間群I4/mmmまたはFmmmに属する結晶系を保てなくなる。
【0013】
上記の化学式におけるδに特に規定はないが、層状ペロブスカイト構造を維持するために、δ<0.5であることが望ましい。δの範囲としては、好ましくは−0.15<δ<0.5である。また特に好ましくは−0.05<δ<0.2である。すなわち、上記化学式で表される複合酸化物では、酸素が欠損している必要はなく(すなわち、0<δである必要はなく、0>δであってもよいし、δ=0であってもよい。)、δは層状ペロブスカイト構造を維持するためだけにその範囲を限定されるものである。逆に言えば層状ペロブスカイト構造が維持される限りδはその条件を満たしているとも言える。よって、δが上記に規定するδ<0.5の範囲を多少外れても複合酸化物が層状ペロブスカイト構造を有するものであれば、本発明の範囲に含まれるものである。この酸素欠損量または酸素過剰量δは、化学滴定によって調べることができる(後述する実施例でも当該測定法により調べた)。また、複合酸化物のペロブスカイト構造の確認は粉末X線回折(XRD)測定によって行うことができる(後述する実施例でも当該測定法により調べた)。
【0014】
上記複合酸化物において、その電子特性は、電子が伝導を担うn型半導体とホールが伝導を担うp型半導体に分類されるが、p型半導体について、高い触媒活性が得られることが見出された(F.Munakata et.al. Physical Review B, 56巻 3号 979〜982ページ (1997))。かかる複合酸化物の電子特性は、陽イオン元素の置換によってp型半導体となるように制御することができ、n型半導体とp型半導体の違いは、ホール効果、または熱起電力測定を用いて観測することができる(後述する実施例ではホール効果測定により調べた)。
【0015】
層状ペロブスカイト構造である複合酸化物において、その結晶系が属する空間群によって、電子構造が変化し、電子特性が変化する場合があるが、本発明における複合酸化物は、その空間群がI4/mmm、またはFmmmのいずれかであることが望ましい。空間群の決定は粉末X線回折測定によって行うことが出来る。
【0016】
上記複合酸化物が単相の層状ペロブスカイト構造を有するものであることが望ましい。単相であることのメリットは、(1)層状ペロブスカイトだけである点(よって、化合物自体の再現性に優れる)、(2)完全に固溶している点(よって、単一サンプル内での不純物相(第2相)がなく、この不純物相(第2相)の分布が異なることもないので製品の性能・品質面の安定性に優れる)、(3)化学的に安定している相だけが存在している点(よって、製造に用いる粉ごと(製造ロットごと)に性能が変わってしまう問題が無く工業的にも安定である)などである。また単相でないもののデメリットである(1)化合物自体の再現性に乏しい点、(2)単一サンプル内で不純物相(第2相)の分布が異なる可能性が大きい点、(3)サンプリングに用いる粉ごとに性能が変わってしまうので工業的に不安定である点を解消できる点で優れている。さらに、本発明の一酸化炭素シフト反応触媒では、上記したように電子状態が触媒能に影響する。そのため、第2相があると固体の電子状態を著しく乱すので、単相でないと性能が低下するというデメリットもある。
【0017】
本発明において、単相の層状ペロブスカイト構造を有する複合酸化物とは、層状ペロブスカイト構造以外の酸化物を含まないことを意味する。層状ペロブスカイト構造以外の酸化物とは、例えば、La、元素A、元素Bあるいは銅の単独酸化物、元素Aと元素Bからなる複合酸化物等を意味する。なお、単相であることは、例えば、XRDのデータから判断することができる。即ち、XRDのデータから不純物相(第2相)のピークが出てこないことは多くても第2相のボリュームが10%に満たないことを示しているので、このような場合には、単相であると判断することができる。なお、こうした判断基準は、既に特許公報だけでなく論文でも市販のXRD装置を用いた分析結果、即ち、第2相のピークが無い=単相であるとの判断基準と同様であるといえる。さらに、リートベルト解析をして、そのR因子(RWPなど)から判断することもできる。即ち、市販の装置を使っている場合、RWPが10%以下であれば十分に単相であると判断することができる。なお、こうした判断基準は、既に論文などで単相としているものには、12〜18%の場合もあり、実際には、RWPが18%以下であれば単相であると判断してもよいといえる。
【0018】
この一酸化炭素シフト反応触媒用複合酸化物は、一般的な固相反応法を用いても作製できる。粒径制御、高比表面積化、組成の均一性が活性の高い粉末に影響することから、より活性の高い粉末を得るためには、クエン酸塩法、シュウ酸塩法のような液相法を用いることが望ましく、得られた二次粒子の平均粒径は、5μm以下であることが好ましく、1μm以下であることがより望ましい。得られた二次粒子の平均粒径が5μmを超える場合には比表面積が減少し、活性が低下する。なお、一酸化炭素シフト反応触媒用複合酸化物の二次粒子の平均粒径は、光散乱方式の粒度分布計によって測定することができる。すなわち、得られる一酸化炭素シフト反応触媒用複合酸化物の微粉末は、凝集等して二次粒子を形成する、もしくは凝集等してアグロマレート(集塊物)を形成し、それが二次的に集まって二次粒子を形成したものである。
【0019】
この複合酸化物と組み合わせて用いられる金属は、少なくとも1種の貴金属である必要があり、複合酸化物に対して、重量比として、少なくとも0.1wt%、好ましくは0.5〜10wt%の範囲で用いられることが望ましい。ここで、この複合酸化物と組み合わせて用いられる貴金属の使用量が、0.1wt%未満の場合には十分な活性が得られないおそれがある。なお、貴金属の使用量の上限値については、特に制限されるものではないが、凝集による比表面積低下を防止する観点から、15wt%とするのが望ましい。この複合酸化物と組み合わせて用いられる貴金属(合金を含む)の使用の方法、形状、形態は問わないが、それら貴金属の微粒子が、複合酸化物の二次粒子中に含浸、または二次粒子の表面に担持されるなどして分布していることが望ましい。複合酸化物の二次粒子中に含浸したり、二次粒子の表面に貴金属微粒子を存在させると反応活性を高く出来る効果がある。かかる貴金属を微粒子の形態で用いる場合には、該貴金属微粒子の平均粒径は100nm以下、好ましくは10nm以下である。該貴金属微粒子の平均粒径が200nmを超える場合には、貴金属微粒子の表面積(触媒としての作用面積)が十分でなく、また複合酸化物の二次粒子中の間隙に含浸させるのが困難となったり、複合酸化物の二次粒子表面への担持等による均一な分布が困難となる。なお、貴金属微粒子の平均粒径の下限値は特に制限されるべきものではない。この貴金属の微粒子の平均粒径は、例えば、透過型電子顕微鏡などを用いて測定することができる。貴金属微粒子の粒径は、絶対最大長を用いるものとする。貴金属微粒子の粒径は、絶対最大長(輪郭線上の任意の2点間の距離のうち、最大の長さをとるもの)を用いるものとする。
【0020】
本発明において、上記複合酸化物と組み合わせて用いられる貴金属(合金を含む)は、Au、Ag、白金族元素(Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt)の金属及びこれらの合金の中から使用目的に応じて、最適なものを適宜選択して使用することができるものであるが、耐久性、安定性という観点から、Pt、Rh、Pd、Ru、Agからなる群より選ばれてなる少なくとも1種のものが望ましく、より好ましくはPtである。
【0021】
この一酸化炭素シフト反応触媒を用いることで、燃料ガスに対するシフト反応がスムーズに進行し、燃料の改質効率が向上し、かつこの触媒がp型半導体であるために、耐久性に優れ、低温(200〜300℃程度)での動作時、動作温度の変化(変動幅150〜600℃程度)において、安定な触媒作用を提供することになる。
【発明の効果】
【0022】
本発明における一酸化炭素シフト反応触媒材料において、上記化学式で表され、層状ペロブスカイト構造を有する複合酸化物を、炭化水素、酸素および水蒸気を含むガスを改質して得られた水素燃料から、少なくとも一酸化炭素シフト反応を利用して一酸化炭素を二酸化炭素に改質、除去する一酸化炭素シフト反応触媒として用いることにより、好ましくは上記化学式と少なくとも1種の貴金属から構成されるものを該一酸化炭素シフト反応触媒として用いることにより、より好ましくは、その電子特性がp型半導体に分類され、その結晶系が空間群I4/mmm、もしくはFmmmのいずれかに属するものと、少なくとも1種の貴金属を、上記複合酸化物に対して、重量比として、少なくとも0.1wt%の範囲で用いて構成されたことを特徴とする該一酸化炭素シフト反応触媒を用いることにより、金属または単純な酸化物にPtなどを担持させた場合(比較例1〜3参照のこと)に比べて、温度変化に対しても高い安定性を保ちながら、低温でも燃料ガス中の一酸化炭素の二酸化炭素への反応改質率を高め、高い効率で高純度の水素を回収できる。そのため、一酸化炭素シフト反応触媒として上記触媒材料を用いることにより一酸化炭素シフト反応を含む水素燃料改質器の性能を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の一酸化炭素シフト反応触媒は、上記化学式で表され、層状ペロブスカイト構造を有する複合酸化物を用いてなることを特徴とするものであって、改質された水素富化ガス中に一酸化炭素および水蒸気を含むガスから、少なくとも一酸化炭素シフト反応を利用して一酸化炭素を改質、除去し得るものである。好ましくは上記化学式で表され、単相の層状ペロブスカイト構造を有し、その電子特性がp型半導体であり、その結晶系が空間群I4/mmm、もしくはFmmmのいずれかに属することを特徴とする複合酸化物であり、より好ましくはこれらの複合酸化物とPt等の貴金属から構成されてなるものであり、特にこれらの複合酸化物と、少なくとも1種の貴金属を、該複合酸化物に対して、重量比として、少なくとも0.1wt%用いて構成されてなるものであって、改質された水素富化ガス中に一酸化炭素および水蒸気を含むガスから、少なくとも一酸化炭素シフト反応を利用して一酸化炭素を改質、除去し得るものである。これにより、炭化水素ガス、アルコール等、水素を含む燃料ガスを、固体高分子型燃料電池のアノード極、すなわち水素反応極の燃料源に適した水素富化ガスに改質することができるものである。
【0024】
上記一酸化炭素シフト反応を用いて改質するのに利用される水素燃料は、炭化水素、酸素および水蒸気を含むガスを改質して得られた改質ガス(水素燃料)であって、該改質ガス中に一酸化炭素が残存するものが対象となる。すなわち、背景技術で説明したように燃料の改質工程中のうち、一酸化炭素除去工程の前工程である燃料ガスの改質工程により得られた改質ガス(水素燃料)と言える。なお、上記炭化水素、酸素および水蒸気を含む原料ガスとしては、従来公知のものが幅広く適用できるなど、特に制限されるものではない。例えば、原料ガスを構成する炭化水素の場合、メタン、ガソリン、天然ガス、ケミカル・ハイドライトなどの炭化水素ガス、エタノールなどのアルコール、バイオガス等が挙げられる、これらに何ら制限されるものではない。
【0025】
次に、本発明の一酸化炭素シフト反応触媒用複合酸化物は、化学式;La1−xCu1−y4−δ(式中のAはアルカリ土類金属元素、アルカリ金属元素よりなる群から選ばれた少なくとも1種の元素を示し、xは0≦x≦0.2、好ましくは0≦x≦0.1であり、BはLi、Mgより選ばれた少なくとも1種の元素を示し、yは0≦y≦0.2、好ましくは0≦y≦0.1であり、δは酸素欠損量または酸素過剰量を表す。δに特に規定はないが、層状ペロブスカイト構造を維持するために、δ<0.5であることが望ましい。)で表され、層状ペロブスカイト構造を有する複合酸化物であり、その電子特性がp型半導体に分類され、その結晶系が空間群I4/mmm、もしくはFmmmのいずれかに属するものであり、単相のものである。かかる一酸化炭素シフト反応触媒用複合酸化物は、固相反応法、クエン塩酸法やシュウ酸塩法などの液相法やペチニ(Pechini)法といったほとんどすべての酸化物の合成法を用いて得ることが出来、その粉末は、二次粒子径の平均値において、大きくとも5μm以下の微粉末であり、粉末としてのみならず、粒状やペレット状の形状に成型して用いること、スラリーやペーストにして、一酸化炭素を除去するための一酸化炭素シフト反応触媒(燃料改質触媒)として燃料改質器のハニカム等の担体(担持体ないし基材)等に塗布するなどして用いることも出来る。
【0026】
上記化学式におけるδは、層状ペロブスカイト構造を維持するために、δ<0.5であることが望ましい。δの範囲としては、好ましくは−0.15<δ<0.5である。また特に好ましくは−0.05<δ<0.2である。
【0027】
この一酸化炭素シフト反応触媒用の複合酸化物は、一般的な固相反応法を用いても作製できるが、より活性の高い粉末を得るためには、クエン酸塩法、シュウ酸塩法のような液相法を用いることが望ましく、得られた二次粒子径は5μm以下である必要があり、1μm以下であることが望ましい。これら液相法の製造方法は、既に公知な製法として確立されており、クエン酸塩法は、後述する実施例に記載した特開平2−74505号公報に記載された方法と同様にして製造することができるものであり、シュウ酸塩法に関しても、同様に従来公知の製法を用いて製造することができる。また、この一酸化炭素シフト反応触媒用の複合酸化物の合成法の1つであるペチニ(Pechini)法を用いても製造することができる。本発明では、特定の合成法に制約されることなく、従来公知の合成法の中から適宜選択して利用することができるものであり、その時々で最も性能及び経済性、利便性等に優れた組成及び合成法を選択することができる点で優れている。
【0028】
上記一酸化炭素シフト反応触媒用複合酸化物において、その電子的特性は、ホールが伝導を担うp型半導体に分類されるものが望ましい(p型半導体に分類される必要があるともいえる)。
【0029】
上記一酸化炭素シフト反応触媒用複合酸化物において、その結晶系が属する空間群は、I4/mmm(体心正方晶系)またはFmmm(面心斜方晶系)のいずれかであるものが望ましい(I4/mmmまたはFmmmのいずれかである必要があるともいえる)。
【0030】
上記一酸化炭素シフト反応触媒用複合酸化物においては、不純物相(第2相)があると固体の電子状態を著しく乱し、性能を低下するおそれがあることから、単相の層状ペロブスカイト構造を有するものが望ましい(単相の層状ペロブスカイト構造を有するものである必要があるともいえる)。
【0031】
この一酸化炭素シフト反応触媒用の複合酸化物と組み合わせて用いられる金属は、少なくとも1種の貴金属(合金を含む)からなる必要があり、該複合酸化物に対して、重量比として、少なくとも0.1wt%、好ましくは0.5〜10wt%の範囲で用いるのが望ましい。上記複合酸化物と組み合わせて用いられる貴金属の使用の方法、形状、形態は問わないが、それら貴金属の微粒子が、複合酸化物の二次粒子中に含浸、または二次粒子の表面に分布していることが望ましい。該貴金属としては、特に制限されるものではないが、Pt、Rh、Pd、RuおよびAgよりなる群から選ばれた少なくとも1種の金属(合金を含む)が耐久性、安定性という観点から望ましく、特に望ましくはPtである。
【0032】
このように、p型半導体の電子的特性を持ち、空間群I4/mmm、またはFmmmに属するような結晶系にあり、低温でも高触媒活性を持つ複合酸化物、更に好ましくは該複合酸化物と、Ptなどの貴金属を組み合わせることによって、Ptなどの貴金属の電子状態に変化を与え、低温でも酸素の活性を高めるため、高い一酸化炭素シフト反応触媒活性を維持できると考えられる。この作用に基づいて、本発明を実施するに至ったものである。
【0033】
こうした複合酸化物と貴金属を組み合わせた一酸化炭素シフト反応触媒は、複合酸化物粉末に、従来公知の方法により貴金属微粒子を担持させることにより得ることができるなど、特に制限されるものではない。
【0034】
例えば、クエン酸塩法による合成法を例に挙げて説明すれば、上記化学式に用いられる、ランタン化合物と元素Aからなる化合物と銅化合物と元素Bからなる化合物(元素A及びBは共に上記化学式中の元素A及びBで規定したもの同一である)とからなる混合物をクエン酸と反応せしめて複合クエン酸塩を合成し、該複合クエン酸塩を焼成することにより、上記化学式で表され、単相の層状ペロブスカイト構造を有する複合酸化物粉末を製造する。該複合酸化物に貴金属化合物溶液を含浸、焼成するなどして貴金属を坦持せしめてなる一酸化炭素シフト反応触媒を製造することができるものである。より詳しくは、ランタン化合物と元素Aからなる化合物と銅化合物と元素Bからなる化合物とからなる混合物として、ランタン、元素A、銅及び元素Bの炭酸塩もしくは水酸化物を出発原料とし、組成比(原子比)がLa:A:Cu:B=2−x:x:1−y:y(0≦x≦0.2、0≦y≦0.2)となるように加えて調整した混合物を、クエン酸と反応させ複合クエン酸塩粉末を合成する。その後、該複合クエン酸塩を200〜600℃で1〜48時間仮焼する。更に400〜1200℃で1〜48時間の焼成を大気中で行う。これにより、上記化学式で表され、単相の層状ペロブスカイト構造を有する複合酸化物粉末を得ることができる。本発明では、得られた複合酸化物粉末を、さらに必要に応じて、適当な粒度になるよう粒度調整する、具体的には、ボールミル等の粉砕機を用いて粉砕し、平均粒径10μm以下に粒度調整する。これにより、上記化学式で表され、単相の層状ペロブスカイト構造を有する複合酸化物微粉末を得ることができる。上記に示したクエン酸塩法などの合成法により得られた複合酸化物微粉末に、貴金属の重量が該複合酸化物微粉末に対して少なくとも0.1wt%となるように調整してなる貴金属化合物、例えば、中和したジニトロジアミン白金硝酸溶液やジニトロジアミンルテニウム硝酸溶液等を含浸させ、焼成を行い、さらに粉砕し、貴金属を担持した複合酸化物微粉末を得ることができるものである。この際、担持される貴金属微粒子の平均粒径は、100nm以下、好ましくは10nm以下になるように、上記貴金属化合物の濃度や焼成条件等を適宜調整するのが望ましい。ここで、上記貴金属化合物としては、上記した中和したジニトロジアミン白金硝酸溶液やジニトロジアミンルテニウム硝酸溶液等が挙げられるが、これらに何ら制限されるものでない。
【0035】
次に、本発明の水素燃料改質器では、上述した本発明の一酸化炭素シフト反応触媒を用い、少なくとも一酸化炭素シフト反応を用いて燃料改質を行うことを特徴とするものである。また、本発明の燃料電池用水素燃料改質器では、上述した本発明の一酸化炭素シフト反応触媒を用い、シフト反応を用いて燃料改質を行うことを特徴とするものである。
【0036】
上記水素燃料改質器としては、燃料電池用水素燃料改質器のほか、少なくとも一酸化炭素シフト反応を用いて燃料改質を行うことのできる従来公知の各種水素燃料改質器に適用しえるものである。
【0037】
また、燃料電池用水素燃料改質器としては、定置型、車載型などの各種固体高分子型燃料電池用水素燃料改質器のほか、一酸化炭素シフト反応を用いて燃料改質を行うことのできる従来公知の各種燃料電池用水素燃料改質器に適用しえるものである。
【実施例】
【0038】
以下に本発明を実施例、比較例によって詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではなく、金属を複合酸化物中に含浸させることは、必ずしも必要ではない。
【0039】
(実施例1)LaCuO4−δ+0.5%Pt
ランタンの炭酸塩もしくは水酸化物、銅の炭酸塩もしくは水酸化物を出発原料とし、組成比(原子比)がLa:Cu=2.0:1.0となるように加え、特開平2−74505号公報に記載された方法と同様にして、クエン酸と反応させ複合クエン酸塩粉末を製造後、600℃で10時間の仮焼、800℃で10時間の焼成を大気中で行って得られた粉末をボールミルで粉砕し、平均粒径5μm以下に粒度調整された複合酸化物微粉末を得た。
【0040】
得られた複合酸化物微粉末の酸素欠損量または酸素過剰量δは化学滴定によって調べたところ0.03であった。この複合酸化物微粉末の層状ペロブスカイト構造の確認、および空間群の確認は粉末X線回折測定によった。その結果、空間群はFmmmであり、層状ペロブスカイト構造のみが観察され、単独酸化物等の不純物に基づく回折線は認められなかったことから、単相の層状ペロブスカイト構造であることが確認された。なお、得られた粉末X線回折スペクトルのパターンとそのリートベルト解析結果を図1及び表1に示す。また、該複合酸化物の電子的特性は、ホール効果測定を用いて観測し、p型半導体であることを確認した。更に、この複合酸化物微粉末の二次粒子の平均粒径は、光散乱方式の粒度分布計によって測定した結果、1μmであった。
【0041】
この複合酸化物微粉末に、Ptの重量が担体である該複合酸化物微粉末に対して0.5wt%となるように調整し、中和したジニトロジアミン白金硝酸溶液を含浸させ、450℃で6時間の焼成を行い、さらに粉砕し、Ptを担持した複合酸化物微粉末を得た。このPt担持複合酸化物微粉末のPt微粒子の平均粒径は、透過型電子顕微鏡を用いて測定した結果、5nmであった。このPt担持複合酸化物微粉末を一酸化炭素シフト反応触媒として石英反応菅内に配置し、流量調整された水素と一酸化炭素と水蒸気を含む混合ガスを反応菅に流し、排出されたガスをガスクロマトグラフィーによって成分分析を行い、該一酸化炭素シフト反応触媒の性能評価を行った。
【0042】
(実施例2)La1.9Ba0.1CuO4−δ+0.5%Pt
ランタンの炭酸塩もしくは水酸化物、バリウムの炭酸塩もしくは水酸化物、銅の炭酸塩もしくは水酸化物を出発原料とし、組成比(原子比)がLa:Ba:Cu=1.9:0.1:1.0となるように加え、特開平2−74505号公報に記載された方法と同様にして、クエン酸と反応させ複合クエン酸塩粉末を製造後、600℃で10時間の仮焼、800℃で10時間の焼成を大気中で行って得られた粉末をボールミルで粉砕し、平均粒径5μm以下に粒度調整された複合酸化物微粉末を得た。
【0043】
得られた複合酸化物微粉末の酸素欠損量または酸素過剰量δは化学滴定によって調べたところ0.11であった。この複合酸化物微粉末の層状ペロブスカイト構造の確認、および空間群の確認は粉末X線回折測定によった。その結果、空間群はFmmmであり、層状ペロブスカイト構造のみが観察され、単独酸化物等の不純物に基づく回折線は認められなかったことから、単相の層状ペロブスカイト構造であることが確認された。また、該複合酸化物の電子特性は、ホール効果測定を用いて観測し、p型半導体であることを確認した。更に、この複合酸化物微粉末の二次粒子の平均粒径は、光散乱方式の粒度分布計によって測定した結果、1μmであった。
【0044】
この複合酸化物微粉末に、Ptの重量が担体である該複合酸化物微粉末に対して0.5wt%となるように調整し、中和したジニトロジアミン白金硝酸溶液を含浸させ、450℃で6時間の焼成を行い、さらに粉砕し、Ptを担持した複合酸化物微粉末を得た。このPt担持複合酸化物微粉末のPt微粒子の平均粒径は、透過型電子顕微鏡を用いて測定した結果、5nmであった。このPt担持複合酸化物微粉末を一酸化炭素シフト反応触媒として石英反応菅内に配置し、流量調整された水素と一酸化炭素と水蒸気を含む混合ガスを反応菅に流し、排出されたガスをガスクロマトグラフィーによって成分分析を行い、該一酸化炭素シフト反応触媒の性能評価を行った。
【0045】
(実施例3)LaCu0.95Li0.054−δ+0.5%Pt
ランタンの炭酸塩もしくは水酸化物、銅の炭酸塩もしくは水酸化物、リチウムの炭酸塩もしくは水酸化物を出発原料とし、組成比(原子比)がLa:Cu:Li=2.0:0.95:0.05となるように加え、特開平2−74505号公報に記載された方法と同様にして、クエン酸と反応させ複合クエン酸塩粉末を製造後、600℃で10時間の仮焼、800℃で10時間の焼成を大気中で行って得られた粉末をボールミルで粉砕し、平均粒径5μm以下に粒度調整された複合酸化物微粉末を得た。
【0046】
得られた複合酸化物微粉末の酸素欠損量または酸素過剰量δは化学滴定によって調べたところ0.08であった。この複合酸化物微粉末の層状ペロブスカイト構造の確認、および空間群の確認は粉末X線回折測定によった。その結果、空間群はFmmmであり、層状ペロブスカイト構造のみが観察され、単独酸化物等の不純物に基づく回折線は認められなかったことから、単相の層状ペロブスカイト構造であることが確認された。また、該複合酸化物の電子特性は、ホール効果測定を用いて観測し、p型半導体であることを確認した。更に、この複合酸化物微粉末の二次粒子の平均粒径は、光散乱方式の粒度分布計によって測定した結果、1μmであった。
【0047】
この複合酸化物微粉末に、Ptの重量が担体である該複合酸化物微粉末に対して0.5wt%となるように調整し、中和したジニトロジアミン白金硝酸溶液を含浸させ、450℃で6時間の焼成を行い、さらに粉砕し、Ptを担持した複合酸化物微粉末を得た。このPt担持複合酸化物微粉末のPt微粒子の平均粒径は、透過型電子顕微鏡を用いて測定した結果、5nmであった。このPt担持複合酸化物微粉末を一酸化炭素シフト反応触媒として石英反応菅内に配置し、流量調整された水素と一酸化炭素と水蒸気を含む混合ガスを反応菅に流し、排出されたガスをガスクロマトグラフィーによって成分分析を行い、該一酸化炭素シフト反応触媒の性能評価を行った。
【0048】
(実施例4)La1.95Sr0.05Cu0.98Mg0.024−δ+0.5%Pt
ランタンの炭酸塩もしくは水酸化物、ストロンチウムの炭酸塩もしくは水酸化物、銅の炭酸塩もしくは水酸化物、マグネシウムの炭酸塩もしくは水酸化物を出発原料とし、組成比(原子比)がLa:Sr:Cu:Mg=1.95:0.05:0.98:0.02となるように加え、特開平2−74505号公報に記載された方法と同様にして、クエン酸と反応させ複合クエン酸塩粉末を製造後、600℃で10時間の仮焼、800℃で10時間の焼成を大気中で行って得られた粉末をボールミルで粉砕し、平均粒径5μm以下に粒度調整された複合酸化物微粉末を得た。
【0049】
得られた複合酸化物微粉末の酸素欠損量または酸素過剰量δは化学滴定によって調べたところ0.12であった。この複合酸化物微粉末の層状ペロブスカイト構造の確認、および空間群の確認は粉末X線回折測定によった。その結果、空間群はFmmmであり、層状ペロブスカイト構造のみが観察され、単独酸化物等の不純物に基づく回折線は認められなかったことから、単相の層状ペロブスカイト構造であることが確認された。また、該複合酸化物の電子特性は、ホール効果測定を用いて観測し、p型半導体であることを確認した。更に、この複合酸化物微粉末の二次粒子の平均粒径は、光散乱方式の粒度分布計によって測定した結果、1μmであった。
【0050】
この複合酸化物微粉末に、Ptの重量が担体である該複合酸化物微粉末に対して0.5wt%となるように調整し、中和したジニトロジアミン白金硝酸溶液を含浸させ、450℃で6時間の焼成を行い、さらに粉砕し、Ptを担持した複合酸化物微粉末を得た。このPt担持複合酸化物微粉末のPt微粒子の平均粒径は、透過型電子顕微鏡を用いて測定した結果、5nmであった。このPt担持複合酸化物微粉末を一酸化炭素シフト反応触媒として石英反応菅内に配置し、流量調整された水素と一酸化炭素と水蒸気を含む混合ガスを反応菅に流し、排出されたガスをガスクロマトグラフィーによって成分分析を行い、該一酸化炭素シフト反応触媒の性能評価を行った。
【0051】
(実施例5)La1.93Ca0.07CuO4−δ+1.0%Pt
ランタンの炭酸塩もしくは水酸化物、カルシウムの炭酸塩もしくは水酸化物、銅の炭酸塩もしくは水酸化物を出発原料とし、組成比(原子比)がLa:Ca:Cu=1.93:0.07:1.0となるように加え、特開平2−74505号公報に記載された方法と同様にして、クエン酸と反応させ複合クエン酸塩粉末を製造後、600℃で10時間の仮焼、800℃で10時間の焼成を大気中で行って得られた粉末をボールミルで粉砕し、平均粒径5μm以下に粒度調整された複合酸化物微粉末を得た。
【0052】
得られた複合酸化物微粉末の酸素欠損量または酸素過剰量δは化学滴定によって調べたところ0.09であった。この複合酸化物微粉末の層状ペロブスカイト構造の確認、および空間群の確認は粉末X線回折測定によった。その結果、空間群はFmmmであり、層状ペロブスカイト構造のみが観察され、単独酸化物等の不純物に基づく回折線は認められなかったことから、単相の層状ペロブスカイト構造であることが確認された。また、該複合酸化物の電子特性は、ホール効果測定を用いて観測し、p型半導体であることを確認した。更に、この複合酸化物微粉末の二次粒子の平均粒径は、光散乱方式の粒度分布計によって測定した結果、1μmであった。
【0053】
この複合酸化物微粉末に、Ptの重量が担体である該複合酸化物微粉末に対して0.5wt%となるように調整し、中和したジニトロジアミン白金硝酸溶液を含浸させ、450℃で6時間の焼成を行い、さらに粉砕し、Ptを担持した複合酸化物微粉末を得た。このPt担持複合酸化物微粉末のPt微粒子の平均粒径は、透過型電子顕微鏡を用いて測定した結果、5nmであった。このPt担持複合酸化物微粉末を一酸化炭素シフト反応触媒として石英反応菅内に配置し、流量調整された水素と一酸化炭素と水蒸気を含む混合ガスを反応菅に流し、排出されたガスをガスクロマトグラフィーによって成分分析を行い、該一酸化炭素シフト反応触媒の性能評価を行った。
【0054】
(実施例6)La1.95Ba0.05Cu0.95Mg0.054−δ+0.5%Ru
ランタンの炭酸塩もしくは水酸化物、バリウムの炭酸塩もしくは水酸化物、銅の炭酸塩もしくは水酸化物、マグネシウムの炭酸塩もしくは水酸化物を出発原料とし、組成比(原子比)がLa:Ba:Cu:Mg=1.95:0.05:0.95:0.05となるように加え、特開平2−74505号公報に記載された方法と同様にして、クエン酸と反応させ複合クエン酸塩粉末を製造後、600℃で10時間の仮焼、800℃で10時間の焼成を大気中で行って得られた粉末をボールミルで粉砕し、平均粒径5μm以下に粒度調整された複合酸化物微粉末を得た。
【0055】
得られた複合酸化物微粉末の酸素欠損量または酸素過剰量δは化学滴定によって調べたところ0.15であった。この複合酸化物微粉末の層状ペロブスカイト構造の確認、および空間群の確認は粉末X線回折測定によった。その結果、空間群はFmmmであり、層状ペロブスカイト構造のみが観察され、単独酸化物等の不純物に基づく回折線は認められなかったことから、単相の層状ペロブスカイト構造であることが確認された。また、該複合酸化物の電子特性は、ホール効果測定を用いて観測し、p型半導体であることを確認した。更に、この複合酸化物微粉末の二次粒子の平均粒径は、光散乱方式の粒度分布計によって測定した結果、1μmであった。
【0056】
この複合酸化物微粉末に、Ruの重量が担体である該複合酸化物微粉末に対して0.5wt%となるように調整し、中和したジニトロジアミンルテニウム硝酸溶液を含浸させ、450℃で6時間の焼成を行い、さらに粉砕し、Ruを担持した複合酸化物微粉末を得た。このRu担持複合酸化物微粉末のRu微粒子の平均粒径は、透過型電子顕微鏡を用いて測定した結果、5nmであった。このRu担持複合酸化物微粉末を一酸化炭素シフト反応触媒として石英反応菅内に配置し、流量調整された水素と一酸化炭素と水蒸気を含む混合ガスを反応菅に流し、排出されたガスをガスクロマトグラフィーによって成分分析を行い、該一酸化炭素シフト反応触媒の性能評価を行った。
【0057】
(比較例1)TiO+0.5%Pt
市販品のチタニア(TiO)に、Ptの重量が担体であるチタニアに対して0.5wt%となるように調整したジニトロジアミン白金硝酸溶液を含浸させ、450℃で6時間の焼成を行い、さらに粉砕し、Ptを担持した酸化物微粉末を得た。このPt担持酸化物微粉末のPt微粒子の平均粒径も、透過型電子顕微鏡を用いて測定した結果、5nmであった。このPt担持酸化物微粉末を一酸化炭素シフト反応触媒として石英反応菅内に配置し、流量調整された水素と一酸化炭素と水蒸気を含む混合ガスを反応菅に流し、排出されたガスをガスクロマトグラフィーによって成分分析を行い、該一酸化炭素シフト反応触媒の性能評価を行った。
【0058】
(比較例2)CeO+0.5%Pt
市販品のセリア(CeO)に、Ptの重量が担体であるセリアに対して0.5wt%となるように調整したジニトロジアミン白金硝酸溶液を含浸させ、450℃で6時間の焼成を行い、さらに粉砕し、Ptを担持した酸化物微粉末を得た。このPt担持酸化物微粉末のPt微粒子の平均粒径も、透過型電子顕微鏡を用いて測定した結果、5nmであった。このPt担持酸化物微粉末を一酸化炭素シフト反応触媒として石英反応菅内に配置し、流量調整された水素と一酸化炭素と水蒸気を含む混合ガスを反応菅に流し、排出されたガスをガスクロマトグラフィーによって成分分析を行い、該一酸化炭素シフト反応触媒の性能評価を行った。
【0059】
(比較例3)Al+0.5%Pt
市販品のアルミナ(Al)に、Ptの重量が担体であるアルミナに対して0.5wt%となるように調整したジニトロジアミン白金硝酸溶液を含浸させ、450℃で6時間の焼成を行い、さらに粉砕し、Ptを担持した酸化物微粉末を得た。このPt担持酸化物微粉末のPt微粒子の平均粒径も、透過型電子顕微鏡を用いて測定した結果、5nmであった。このPt担持酸化物微粉末を一酸化炭素シフト反応触媒として石英反応菅内に配置し、流量調整された水素と一酸化炭素と水蒸気を含む混合ガスを反応菅に流し、排出されたガスをガスクロマトグラフィーによって成分分析を行い、該一酸化炭素シフト反応触媒の性能評価を行った。
【0060】
(試験例)
実施例1〜6で得られた複合酸化物微粉末の結晶系を含む結晶構造および電子的特性、並びに実施例1〜6および比較例1〜3で得られた一酸化炭素シフト反応触媒性能を、下記の条件下で評価を行うことにより判断した。
【0061】
(1)結晶系評価
結晶系を含む結晶構造の評価は、粉末X線回折法を用いて測定したデータとリートベルト解析を組み合わせることによって行った。
【0062】
ここで、X線回折(XRD)測定条件は下記の通りとした。
【0063】
・使用機器:Rigaku RINT2200V
・X線:CuKα線(Kα1=1.540562、Kα2=1.544390)モノクロメータで単色化
・出力:40mA、40kV(=1.6kW)
・測定レンジ:10度から90度
・測定ステップ:0.02度
・計数時間:2S
また、得られた粉末X線回折データから、リートベルト解析をプログラム(解析用ソフト)RIETAN−2000を用いて行なった。リートベルト解析法は、粉末X線回折データから結晶構造を精密化する方法で、図1に、実施例1の複合酸化物粉末のLaCuO4−δに対して行ったリートベルト解析パターンを示す。図1では、実験値を・印で,計算値を実線で、実験値と計算値の誤差を破線で示した。なお、結晶構造モデルは、粉末X線回折実験の結果から斜方晶系と仮定した。図1に示すように、得られた計算値(実線)が実測値(・)と良く一致した。また、粉末X線回折データ、リートベルト解析により得られた実施例1の複合酸化物粉末の結晶系の評価結果(結晶データ)を表1に示す。
【0064】
【表1】

【0065】
これらの結果から、実施例1の複合酸化物粉末のLaCuO4−δでは、空間群はFmmmであり、層状ペロブスカイト構造のみが観察され、単独酸化物等の不純物に基づく回折線は認められなかったことから、単相の層状ペロブスカイト構造であることが確認された。なお、本実施例では、単相であることは、XRDのデータ及びリートベルト解析によるR因子から総合的に判断した。即ち、XRDのデータから不純物相(第2相)のピークが出ていない場合であって、なおかつリートベルト解析によるR因子のうち、RWPが10%以下である場合に単相であると判断した。実施例2〜6の複合酸化物粉末についても、同様にして確認した。
【0066】
(2)電子的特性評価
電子的特性は、複合酸化物粉末を静水圧プレスによって成型し1300℃で焼成した焼結体を5mm×5mm×0.1mmに加工した薄板状のサンプルについて室温でのホール係数を測定することによって評価した。
【0067】
実施例1〜6の複合酸化物に対して行った電子的特性評価の結果は、各実施例中に示した通りであり、いずれもp型半導体であった。
【0068】
(3)一酸化炭素シフト反応触媒性能
一酸化炭素シフト反応触媒性能は、触媒反応前の入力ガス中の一酸化炭素濃度、二酸化炭素濃度、水蒸気濃度、水素濃度、触媒反応後の出力ガス中の一酸化炭素濃度、二酸化炭素濃度、水蒸気濃度、水素濃度をガスクロマトグラフィーによって分析することで評価した。
【0069】
ここで、ガス分析反応条件は、下記の通りとした。
【0070】
一酸化炭素と水蒸気を0.5%:5%の割合(質量比)で含み、表2のように組成を調整した擬似燃料ガスを200℃に予熱しながら、流量20L/hrにて、0.5ccの触媒を設置した石英反応菅に流通させて、水素、二酸化炭素を含むガスを得た。反応前と反応後のガスに含まれる一酸化炭素濃度、水蒸気濃度、水素濃度から、触媒の一酸化炭素改質率(CO改質率)を求めた。測定に用いた擬似燃料ガスの組成(質量比)を表2に示す。
【0071】
以上のようにして得られたガス分析による一酸化炭素改質率(CO改質率)を実施例1〜6および比較例1〜3について表3に示す。
【0072】
【表2】

【0073】
【表3】

【0074】
これらの結果から明らかなように、本発明における一酸化炭素シフト反応触媒材料において、化学式La2−xCu1−y4−δ(式中のAはアルカリ土類金属元素、アルカリ金属元素よりなる群から選ばれた、少なくとも1種類以上の元素を示し、BはLi、Mgより選ばれた少なくとも1種類以上の元素を示しており、δは酸素欠損量または酸素過剰量を表す。)で表され、層状ペロブスカイト構造を有する複合酸化物を用いてなることを特徴とする、炭化水素、酸素および水蒸気を含むガスを改質して得られた水素燃料を中に残存する一酸化炭素を、少なくともシフト反応を用いて改質する、一酸化炭素シフト反応触媒を用いることによりシフト反応によって一酸化炭素を高効率に改質し、炭化水素ガス、アルコールなどの水蒸気改質反応率を高め、高い効率で水素を回収でき、一酸化炭素シフト反応触媒として、上記触媒材料が有用であることが示された。また、上記触媒材料を用いることにより、一酸化炭素シフト反応を含む水素燃料改質器の性能が向上した。特に、比較例1〜3で用いた既存のPt担持酸化物担体を用いた一酸化炭素シフト反応触媒では、高い触媒活性を得るために250〜300℃程度の高い温度を要するため、今回の試験で行った200℃という低温度域では、十分な触媒活性が得られなかったが、本実施例1〜6で用いた本発明のPtやRu等の貴金属担持複合酸化物担体を用いた一酸化炭素シフト反応触媒では、200℃という低温度域でも高い触媒活性を有することが確認できた。このことから、動作条件による温度変動に対する安定性にも優れていることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】実施例1で製造した複合酸化物LaCuO4−δの粉末XRDパターンとそのリートベルト解析結果を示す図面である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式La2−xCu1−y4−δ(式中のAはアルカリ土類金属元素、アルカリ金属元素よりなる群から選ばれた、少なくとも1種類以上の元素を示し、BはLi、Mgより選ばれた少なくとも1種類以上の元素を示しており、δは酸素欠損量または酸素過剰量を表す。)で表され、層状ペロブスカイト構造を有する複合酸化物を用いてなることを特徴とする、炭化水素、酸素および水蒸気を含むガスを改質して得られた水素燃料中に残存する一酸化炭素を、少なくともシフト反応を用いて改質する、一酸化炭素シフト反応触媒。
【請求項2】
前記複合酸化物と、少なくとも1種の貴金属から構成されることを特徴とする請求項1に記載の一酸化炭素シフト反応触媒。
【請求項3】
前記複合酸化物において、その電子的特性がp型半導体であることを特徴とする請求項1または2に記載の一酸化炭素シフト反応触媒。
【請求項4】
前記複合酸化物において、その結晶系が空間群I4/mmm、またはFmmmのいずれかに属することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の一酸化炭素シフト反応触媒。
【請求項5】
前記複合酸化物が、単相であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の一酸化炭素シフト反応触媒。
【請求項6】
前記複合酸化物と、少なくとも1種の貴金属を、複合酸化物に対して、重量比として、少なくとも0.1wt%用いて構成されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の一酸化炭素シフト反応触媒。
【請求項7】
請求項1〜6で示される一酸化炭素シフト反応触媒を用い、少なくともシフト反応を用いて燃料改質を行う水素燃料改質器。
【請求項8】
請求項1〜6で示される一酸化炭素シフト反応触媒を用い、改質用の燃料として炭化水素、酸素および水蒸気を含むガスを改質して得られた水素燃料を用い、シフト反応を用いて燃料改質を行う燃料電池用水素燃料改質器。

【図1】
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【公開番号】特開2006−116370(P2006−116370A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−303763(P2004−303763)
【出願日】平成16年10月19日(2004.10.19)
【出願人】(000108030)セイミケミカル株式会社 (130)
【Fターム(参考)】