三次元プリント投薬形態のような物品の一軸圧縮のためのシステムおよび方法
【課題】所望の程度まで空隙を実質的に排除するか、または減少させ;より多くAPIの充填を可能にし;大量製造に十分に適合し;内部構造および設計された放出プロファイルを維持し;そして三次元プリント経口投薬形態のために商業的に受容可能な表面仕上げを提供する技術を提供すること。
【解決手段】投薬形態の所定の内部構造を保存し、改善された表面仕上げを作り出す3次元プリントによって製造される一軸圧縮投薬形態。圧縮は、投薬形態を圧縮し、従来の3次元プリントの最後に残る空隙スペースの少なくともいくらかを除去する。一軸圧縮プロセスの結果として得られる表面仕上げは、従来の圧縮から得られる表面仕上げと本質的に等しくあり得る。
【解決手段】投薬形態の所定の内部構造を保存し、改善された表面仕上げを作り出す3次元プリントによって製造される一軸圧縮投薬形態。圧縮は、投薬形態を圧縮し、従来の3次元プリントの最後に残る空隙スペースの少なくともいくらかを除去する。一軸圧縮プロセスの結果として得られる表面仕上げは、従来の圧縮から得られる表面仕上げと本質的に等しくあり得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
(発明の分野)
本発明は、物品の一軸圧縮に関し、そしてより具体的には、経口投薬形態のような三次元プリントされた物体の一軸圧縮に関する。
【背景技術】
【0002】
(関連技術の説明)
経口投薬形態を製造するための最も一般的な方法の1つは、ダイおよび圧縮を用いて所望の形状へと粉末を圧縮することによる。この方法は、安価であり、多くの薬学に適している。圧縮される粉末は、代表的に、1つ以上の活性薬学成分(API)、薬学賦形剤(食用の不活性な物質)、および圧縮完了後に錠剤を一緒に保持するのに役立つ物質を含む。この方法により生成される投薬形態は、代表的に、均質な組成物であり、または、それらが任意の不均質性を有する場合、投薬形態は、それらが圧縮される前に粉末粒子上にコーティングを有するか、または圧縮された後に錠剤全体の周りにコーティングを有するかで構成される。このような錠剤の内部の詳細な設計または決定的な設計は存在せず、このような設計は、先行技術の圧縮された錠剤製造プロセスでは可能ではなかった。
【0003】
ときどき、薬学投薬形態を製造するために適用されるより新しい技術(これによって、投薬形態内の詳細な所定の組成のバリエーションの生成が可能になる)は、三次元プリント(3DP)である。基礎技術が、特許文献1に記載されている。図1に示される三次元プリント装置100が示される、三次元プリントにおいて、粉末の層が生成され、次いで、結合剤液と呼ばれる液滴が、インクジェットプリントと類似する技術によって粉末に対して調合される。結合剤液により濡れた場所において、粉末粒子は、互いに、そして他の固体領域と結合される。次いで、粉末の別の層が、堆積され、このプロセスが、所望の三次元物体が生成されるまで、連続層のために繰り返される。非結合粉末は、物品が十分に乾燥するまで、プリント領域を支持し、次いで、この非結合粉末は、取り除かれる。三次元プリントによる投薬形態の作製において、活性薬学成分は、プリント物品に含まれ、最も一般的には、薬学賦形剤粉末に対して調合された結合剤液に含まれる。三次元プリントは、投薬形態内の制御された物質の配置を可能にし、そしてこれを使用して、1以上のAPIの時間依存性放出、特定のpH環境などにおいてのみのAPI放出を達成する。複雑な放出プロファイルおよび/または複数のAPIを必要とする三次元プリント投薬形態は、同一人に譲渡された特許文献2に記載される。
【0004】
しかし、3DPによって作製された経口投薬形態に、幾つかの欠点が明らかとなった。1つの制限は、三次元プリント部分の表面が、代表的に、従来製造されてきた圧縮錠剤と比較して受け入れられないほど粗いというものであった。表面構造の寸法スケールは、その製造に使用される粉末層の厚さに対応する。代表的な最小粉末層厚さは、ローラーによって分散された乾燥粉末の場合で、0.04〜0.08インチ(100〜200ミクロン)である。これは、錠剤圧縮によって作製された滑らかな表面の経口投薬形態であるという消費者の予想と一致しない。粗い表面を有する経口投薬形態は、滑らかな形態よりも嚥下がより困難であり、そしてまた、粗い表面は、脆い、すなわち、粒子が取り扱いの間に破壊するという可能性を提示する。
【0005】
別の制限は、APIが、結合剤液に含まれることによって投薬形態に堆積された場合に、どれほどの量のAPIが投薬形態中に送達され得るかという点において制限があるということである。通常、APIは、結合剤液に含まれることによって送達され、そして粉末は、APIを含まない薬学賦形剤である。
【0006】
3DPにおいて、粉末は、代表的に、約50%の固体および50%の空隙率という全体の充填密度で分散される。この充填密度は、APIの最大50容量%のみ含み得る投薬形態をもたらす。APIは、溶液プリントによって投薬形態の間隙に送達され得、すなわち、APIは、粉末に調合される結合剤液中に溶解される。結合剤液が、空隙を正確に充填する場合、および例として、APIが、容量基準で20%の程度まで結合剤液に溶解する場合(実施の目的の物質のうちでかなり高可溶性である)に、結合剤液で空の空間を完全に充填し、結合剤液の揮発分の蒸発が可能になることによって、空の空間の20%は、結合剤液に溶解したAPIで充填され得る。
【0007】
結果としては、この第1のプリント後の容量分布は、50%の賦形剤、10%のAPIおよび40%の空隙である。同じ領域を再プリントすることは可能である。残りの空隙の全てが、調合された液体に到達可能であると楽観的に予想される場合、結果としては、残る40%の空隙の容量のうちの20%を充填し、蒸発後、投薬形態の容量の配分は、50%の賦形剤、18%のAPI、および空隙32%という結果となる。さらに別の再プリントが実施される場合、残る空隙の容量の別の20%が、充填され得、これにより、50%の賦形剤、24.4%のAPI含有量、および25.6%の空隙という容量配分をもたらす。このような計算は、図3にさらに示され、特定の投薬を達成するために、API濃度および飽和パラメータの対応する組が、必要であるということを一般的に示す。
【0008】
3DPにおいて、飽和パラメータは、プリント過程の間にどれほどの空隙容量が液で堆積されるかを記述し、代表的に、それは約100%以下である。かなりの量のAPIを堆積する必要があるため、図2は、所定の粉末層に対する複数回過程プリントと称するパラメータを用いて、飽和度の定義を拡張し、100%より高い値にまで拡張するように見かけの飽和度を規定する。
【0009】
図3は、5mmの直径×5mmの高さの寸法を有すると想定された投薬形態に基づく。20重量%のAPI濃度を有するAPI溶液を用いて、これらの寸法の3DPプリント物品へ100mgのAPIを堆積することが望まれる場合、図2に従って、250%の見かけの飽和度までプリントする必要がある。このことは、各領域または各層は、100%の飽和度を用いると実際に約2.5回、83%の飽和度では実際に3回プリントされ、そして結合剤液の揮発分の蒸発を間に挟む必要があることを意味する。図3は、図2と同様に計算された結果であるが、API含有領域の単位容量あたりに堆積されたAPIの集団として、正規化された様式で示された結果を示す。
3DPプリントAPI含有物品における空隙を排除するための1つの方法は、冷間等方加工プレスである。(Formulation of Oral Dosage Forms by Three−Dimensional Printing、1998年2月、Robert Palazzoloによる、Massachusetts Institute of Technologyでの修士学位論文)これは、一時的に弾性の袋またはダイに封入される物品に対して、全方向から同時に圧縮するための静水圧の使用に関する。三次元ODFの三次元圧縮は、三次元内部構造を維持し、そして三次元投薬形態の放出プロファイルを保存するために必要であると理解された。冷間等方加工プレスは、幾分かの空隙を減少させたが、これらの他の関心事に満足するほど対処できなかった。さらに、冷間等方加工プレスは、多数の不便な処理工程(例えば、プリント物品を取り囲む一時的に弾性のダイまたは袋の作製、圧力を適用するための閉じ込められた液体へのダイまたは袋の浸漬、およびダイまたは袋の取り出し)を含む。従って、冷間等方加工プレスは、大量製造には十分に適さない。また、それは、3DPの完了後に、一部の表面仕上げと比較して、改善された表面仕上げを有し、図4に示されるような表面仕上げを生じるが、表面粗さを受容可能なレベルにまでは排除していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第5,204,055号明細書
【特許文献2】米国特許第6,280,771号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、所望の程度まで空隙を実質的に排除するか、または減少させ;より多くAPIの充填を可能にし;大量製造に十分に適合し;内部構造および設計された放出プロファイルを維持し;そして三次元プリント経口投薬形態のために商業的に受容可能な表面仕上げを提供する技術がなお必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1)
投薬形態の製造の方法であって、以下:
3次元プリントプロセスを使用して投薬形態を製造する工程;および
該投薬形態を一軸圧縮する工程、
を包含する、方法。
(項目2)
前記一軸圧縮が、1方向を除く全方向から実質的に前記投薬形態を囲む制限された表面を有し、そしてその方向において圧縮軸を規定する開口部を有するダイアセンブリにおいて、製造された投薬形態を配置する工程を包含する、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記3次元プリントを使用する製造工程が、前記圧縮軸に沿って開口部にラムを動かして前記投薬形態を一軸圧縮する工程を包含する、項目2に記載の方法。
(項目4)
前記3次元プリントプロセスにおいて使用される結合剤液へ、少なくとも1つの活性薬学成分(API)を溶解する工程をさらに包含する、項目1に記載の方法。
(項目5)
空間的に不均一な組成物を作製するために、前記3次元プリントプロセスの間、前記投薬形態において、変化させた濃度または異なる量のAPIまたは他の物質を異なる場所に施与する工程を包含する、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記調剤の工程が、可変滴容量プリントを含む、項目5に記載の方法。
(項目7)
前記3次元プリントプロセスの間、前記投薬形態において内部領域(シェル組成物を有するシェルにより囲まれた内部組成物を有する該内部領域)を作製する工程をさらに包含する、項目5に記載の方法。
(項目8)
前記3次元プリントプロセスの間、結合剤液を施与する工程をさらに包含する項目7に記載の方法であって、ここで、シェルはシェル空隙率を有し、そして内部は内部空隙率を有し、そして該シェル空隙率および該内部空隙率は互いにおよそ等しい、方法。
(項目9)
各々が前記投薬形態中に個々の組成物を有する複数の領域を作製するために結合剤液を施与する工程をさらに包含する、項目5に記載の方法。
(項目10)
前記結合剤液を施与する工程が、前記投薬形態において互いの中に入れ子状である複数の領域を作製する工程を含む、項目9の方法。
(項目11)
前記投薬形態の各々の領域が空隙率を有し、そして、それら空隙率の全てが、互いにおよそ等しい、項目9に記載の方法。
(項目12)
前記投薬形態において1つ以上の物質の段階的な濃度を作製するための結合剤液を施与する工程をさらに包含する、項目5に記載の方法。
(項目13)
前記投薬形態が、幾何学的中心を有し、該投薬形態の幾何学的中心からの距離の関数として1以上の物質の濃度が変化するように、前記結合剤液が施与される、項目12に記載の方法。
(項目14)
前記投薬形態における前記空隙率が、あらゆる箇所でほぼ同じであるように、前記結合剤液が施与される、項目12に記載の方法。
(項目15)
3次元プリントによる前記投薬形態の作製工程が、粉末層の上に1つ以上の結合剤液を施与する工程を包含する、項目1に記載の方法。
(項目16)
粉末の次の層が撒かれる前に1回以上粉末層の上に少なくとも1つの結合剤液が施与され、該結合剤液が揮発性成分(結合剤液が層上に再施与される前に実質的に揮発する該揮発性成分)を含む、項目15に記載の方法。
(項目17)
前記投薬形態をコートするかまたは、カプセル中に該投薬形態を封入する工程を包含する、項目1に記載の方法。
(項目18)
前記投薬形態が、移植可能送達デバイスである、項目1に記載の方法。
(項目19)
前記投薬形態が、経口投薬形態である、項目1に記載の方法。
(項目20)
あらかじめ決定された空間的に不均な内部成分を有し、5%未満の空隙率を有する、投薬形態。
(項目21)
前記投薬形態が、3次元プリントにより製造される、項目20に記載の投薬形態。
(項目22)
前記投薬形態が、ピーク対くぼみ寸法を有する表面仕上げを有し、該ピーク対くぼみ寸法が、およそ3μm以下である、項目20に記載の投薬形態。
(項目23)
さらに、1つ以上の表面に、押し付けられた印または、浮き上げられた印を含む、項目20に記載の投薬形態。
(項目24)
前記投薬形態が、平坦末端を有する円筒状、湾曲末端を有する円筒状、平坦末端の四角柱、湾曲末端を有する四角柱、平坦末端を有する楕円柱、湾曲末端を有する楕円柱、楕円球および球からなる群から選択された形状を有する、項目20に記載の投薬形態。
(項目25)
前記投薬形態が、結合物質により共に結合する粉末粒子を含む、項目25に記載の投薬形態。
(項目26)
前記粉末が、メタクリル酸コポリマー、微晶質セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、マンニトール、キシリトール、ソルビトール、ジカルシウムホスフェ―ト、ラクトース、グルコース、ブドウ糖、フルクトースおよび他の糖からなる群より選択される1つ以上の物質を含む、項目25に記載の投薬形態。
(項目27)
前記結合物質が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、Eudragit L−100、Eudragit E−100、Eudragit RSPO、Eudragit RLPOおよびポリビニルピロリドンからなる群より選択される1つ以上の物質である、項目25に記載の投薬形態。
(項目28)
癌についての疼痛開放因子、関節炎についての疼痛開放因子;他の疾患についての疼痛開放因子;ホルモン;高血圧と闘うためのAPI;パーキンソン病と闘うためのAPI;注意欠陥障害と闘うためのAPI;喘息と闘うためのAPI;および他の疾患と闘うためのAPIからなる群から選択されるAPIを含む、項目20に記載の投薬形態。
(項目29)
前記投薬形態が、粉末粒子の大きさよりも大きなスケールのあらかじめ決定された組成物不均一性を含む、項目20に記載の投薬形態。
(項目30)
前記投薬形態が、シェル組成物を有するシェルに囲まれた内部組成物を有する内部領域を含む、項目20に記載の投薬形態。
(項目31)
前記シェルが、前記APIの放出特性に影響を与えるために選択される物質を含む、項目30に記載の投薬形態。
(項目32)
前記シェルが、非粒子画分を有し、そして前記内部は、内部非粒子性画分を有し、そして該シェルの非粉末画分および該内部非粒子性画分は、互いにおよそ等しい、項目30に記載の投薬形態。
(項目33)
各々がそれら自体の組成物を有する複数の領域を含む、項目29に記載の投薬形態。
(項目34)
前記領域が、互いの中に入れ子状である、項目33に記載の投薬形態。
(項目35)
前記投薬形態の各々の領域が、それぞれ非粉末画分を有し、それら非粉末画分の全てが、互いにおよそ等しい、項目32に記載の投薬形態。
(項目36)
前記投薬形態が、前記粉末粒子の大きさよりも大きなスケールで1つ以上の成分の組成物における勾配を含む、項目30に記載の投薬形態。
(項目37)
前記投薬形態が、幾何学的中心を有し、該投薬形態の幾何学的中心からの距離の関数として1つ以上の物質の濃度が変化する、項目36に記載の投薬形態。
(項目38)
前記投薬形態における各々の局所位置が、各々非粉末画分を含みまた、それら非粉末画分は全て、互いにおよそ等しい、項目36に記載の投薬形態。
(項目39)
前記投薬形態を覆うコーティングまたは、該投薬形態を封入するカプセルをさらに含む、項目20に記載の投薬形態。
(項目40)
前記投薬形態が、移植可能API送達デバイスである、項目20に記載の投薬形態。
(項目41)
前記投薬形態が、経口投薬形態である、項目20に記載の投薬形態。
(項目42)
3次元プリントにより作製される、一軸圧縮投薬形態。
(項目43)
前記投薬形態が、APIの所望の放出特性を生じるよう選択される空隙率を有する、項目42に記載の投薬形態。
(項目44)
前記投薬形態が、低ダイ外部形状を有するより低ダイおよびスリーブ内部形状を有するスリーブを有するダイアセンブリによって一軸圧縮され、そしてラム外部形状を有するラム、該低ダイ外部形状および該ラム外部形状の両方が、該スリーブ内部形状に関して非常にぴったり一致する、項目42に記載の投薬形態。
(項目45)
前記ラム外部形状、前記低ダイ外部形状および前記スリーブ内部形状が全て、円柱状である項目44に記載の投薬形態。
(項目46)
前記ダイが、前記投薬形態に面した低ダイ表面および該投薬形態に面した前記ラム表面、ならびに該低ダイ表面または該ラム表面あるいは両方が一般的に湾曲している、項目44に記載の投薬形態。
(項目47)
前記低ダイが、前記投薬形態に面した低ダイ表面を有し、そして前記ラムが前記投薬形態に面したラムを有し、そして該低ダイ表面または該ラム表面あるいは両方が一般的に平坦である、項目44に記載の投薬形態。
(項目48)
前記低ダイ表面および前記スリーブ内部表面ならびに前記ラムが、およそ2ミクロンのrmsに等しいかそれ以上の滑らかさである表面仕上げを有する、項目44に記載の投薬形態。
(項目49)
前記低ダイ表面またはラム表面あるいはその両方上に印を押し付けるかまたは、印を浮き上がらされる、項目44に記載の投薬形態。
(項目50)
前記投薬形態が、平坦末端を有する円筒、湾曲末端を有する円筒、平坦末端の四角柱、湾曲末端を有する四角柱、平坦末端を有する楕円柱、湾曲末端を有する円柱、楕円球および球からなる群から選択された形状を有する、項目44に記載の投薬形態。
(項目51)
前記ダイおよび前記ラムならびに前記スリーブが、すべて各々硬度を有し、投薬形態が硬度を有し、該ダイ、該ラムおよび該スリーブがすべて投薬形態の硬度よりも大きい、項目44に記載の投薬形態。
(項目52)
前記低ダイが、低ダイ表面を有し、前記ラムが、ラム表面を有し、前記投薬形態が、投薬形態上表面および投薬形態底表面を有し、該低ダイ表面が、およそ該投薬形態底表面に一致し、そして該ラム表面が、およそ該投薬形態上表面に一致する、項目44に記載の投薬形態。
(項目53)
前記低ダイおよび前記スリーブが、一体的な成分である、項目44に記載の投薬形態。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本発明は、以下の図面に記載される。
【図1】図1は、先行技術に従った三次元プリントプロセスを概略的に示す。
【図2】図2は、先行技術に従った種々のプリントパラメータの関数として、特定の寸法の圧縮されていない3DPプリント投薬形態におけるAPIの達成可能な充填を示すグラフである。
【図3】図3は、図3と同様のAPI充填データであるが、先行技術に従った、API含有容量によって正規化された形態におけるデータを示すグラフである。
【図4】図4は、先行技術に従った冷間等方加工プレスプロセスによって生成された表面の拡大断面図を示す。
【図5】図5は、本発明の原理に従った投薬形態の代表的な形状のための、3DPプリントの間に使用される層構造を示す。
【図6】図6A〜6Cは、本発明の一軸圧縮を実施するのに適したプレス、本発明の原理に従った圧縮前の錠剤形状3Dプリント物品および圧縮後に得られる投薬形態を示す。
【図7】図7A〜7Bは、本発明の原理に従った一軸圧縮前の3Dプリント物品および一軸圧縮後の対応する投薬形態の断面図を示す。
【図8A】図8Aは、本発明の原理に従った1つ以上の内部領域を含む圧縮された投薬形態の設計図を示す。
【図8B】図8Bは、本発明の原理に従った1つ以上の内部領域を含む圧縮された投薬形態の設計図を示す。
【図8C】図8Cは、本発明の原理に従った1つ以上の内部領域を含む圧縮された投薬形態の設計図を示す。
【図9】図9は、本発明の原理に従った図4と同じ軸上にプロットされた、2つの特定の実験についての一軸圧縮操作より前の、API充填の濃度を示すグラフである。
【図10】図10は、本発明の原理に従った一軸圧縮前後の2つの特定の実験についてのAPI充填の濃度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(発明の詳細な説明)
本発明において、所定の内部構造を有する三次元プリント物品は、一軸的に圧縮され、設計された内部構造を維持しながら、改善された表面特性および増加した活性薬学成分(API)の充填を提供する。本発明の局面は、改善された3DP経口投薬形態を提供し、設計された内部構成を有する完全に密な経口投薬形態を含み、所定の放出プロファイルを提供し、現在の3DP経口投薬形態と比較して増加したAPI充填をさらに含む。
(三次元プリント経口投薬形態)
三次元プリンターは、図1に示される。粉末層を拡散し、所定の位置において、結合剤液と呼ばれる液体をプリントヘッドによって粉末に対して施与させる。経口投薬形態のような投薬を作製するために、粉末は、代表的に、薬学賦形剤(すなわち、食用の不活性物質)である。図1はさらに、低速軸110上に作動可能に取り付けられた高速軸120上に作動可能に取付けられたプリントヘッド180を示す。各々がそれ自体の結合剤液140および142を分散し得る2つのディスペンサー130および132を備えるプリンタヘッド180が、示される。
【0015】
所定の位置の物品中に活性薬学成分(API)が含まれ、これは、少なくとも1つの施与される結合剤液に含まれることによって(例えば、結合剤液に溶解されることによって)施与され得る。任意の適切な型のディスペンサー(マイクロバルブ、需要ごとの圧電滴下、偏向を有する持続的ジェットが挙げられる)または他のディスペンサーが当該分野で公知であり、結合剤液を施与し得る。
本明細書に記載される特定の投薬形態設計のための2つ以上の異なる施与される結合剤液の使用は、物品および最終の投薬形態内の複数の異なる組成物または領域を可能にする。各結合剤液は、結合物質および1つ以上のAPIのいずれか、または両方を含み得る。異なる結合剤液は、1つ以上のAPIの存在下あるいは非存在下、または結合剤物質の組成または濃度、他の不活性な物質の含有量、色などで互いに異なり得る。結合剤物質は、粉末粒子を互いに結合させる物質である。
【0016】
結合を生じさせ得る1つの方法は、結合剤液の揮発分が蒸発した場合に、結合剤物質が凝固し、複数の粉末粒子に接触するか、または封入する固体を形成する方法である。結合剤液に溶解し得る可能な結合剤物質としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、Eudragit L−100(メタクリル酸およびメチルメタクリレートを基礎とするアニオン性ポリマー)、Eudragit E−100(ジメチルアミノエチルメタクレートおよび中性のメタクリル酸エステルを基礎とするカチオン性アクリル樹脂)、Eudragit RSPO(低い割合のトリメチルアンモニオエチルメタクリレートクロライドを有する中性のメタクリル酸エステルを基礎とするフィルム形成剤であり、中性エステル基に対する4級アンモニウム基の比が1:40である)、およびEudragit RLPO(同様に、1:20の比を有する)(全てRohm−Pharmaから入手可能)が挙げられる。
【0017】
結合剤液の揮発分として使用され得る可能な溶媒はとしては、水、エタノール、メタノール、イソプロパノ−ル、他のアルコール、クロロホルム、およびアセトンが挙げられる。可能な賦形剤としてはEudragit RSPO、微結晶セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、マンニトール、キシリトール、ソルビトール、リン酸二カルシウム、ラクトース、グルコース、デキストロース、フルクトースおよび他の糖類が挙げられる。さらなる例は、Arthur H.KibbeによるHandbook of Pharmaceutical Excipients、第3版、(2000)に列挙されている。粉末粒子サイズの適切な範囲は、篩によって決定され得る。
【0018】
投薬形態の可能な外部形状は、円柱状領域の各端部に円い凸面状の表面を有する円柱状であり得る。3Dプリント物品は、個々の層に対するプリントについての適切なパターンをプログラムすることでこの形状を達成し得る。この操作のための1つの構築パターンが、図5に示され、複数の層から構成される物品、この実施形態において、1つの曲面キャップ510についての9層、円柱状領域520についての25層、および他の曲面キャップ530についての9層を示す。
【0019】
図5において、円柱状に対称な投薬形態および対応する物品の対称軸は、必ずしも必要でないが、3DPプロセスにおける垂直に構築された方向に一致する。一般的に、3DPプリント物品のような投薬形態および対応する物品は、平らかもしくは円い頂部表面および底部表面のいずれかを有する円柱状、または平らな表面あるいは円い表面を有する矩形柱、または平らな表面あるいは円い表面を有する楕円柱、楕円形、球形であり得、あるいは断面の一般的な任意の形状および端部またはキャップの一般的な任意の形状を有し得る。
【0020】
3DPのようなプロセスが、物品を生成した後に、回収操作(示さず)を実施し、プリントベッド全体から物品を分離し得、これらの幾つかは、緩い粉末のままであり得る。回収工程は、例えば、ブレードによる、例えば、構築ベッドの底部付近での廃棄工程または分離工程のような操作を包含する。このことを容易にするため、緩いプリントされていない粉末の幾つかの層は、物品が、当該分野で公知のように、下にある固体表面へと突き出さないように、構築ベッドの底部に提供され得る。次いで、脱塵を実施し得る。
【0021】
脱塵工程は、3DPプロセスの終りに回収される物品の表面に緩く被着され得る粉末粒子のより細かくそして小さいスケールでの除去である。脱塵工程は、例えば、当該分野で公知のように、物品をひっくり返す工程またはそれらをガスまたは粒子保有ガスのジェットに曝す工程を包含し得る。脱塵操作は、より良い滑らかさおよび一軸圧縮の後の工程後に、投薬形態の表面仕上げの質をもたらし得る。
【0022】
回収工程後、物品は、例えば、ラム(ram)によって1方向からのプリントされた物品に対してかなりの圧縮力を作動させるのに適したプレス中の空洞へと別々に配置され得、一方、実質的に、他の全方向のプリント物品は、硬い表面に対して閉じ込められる。円柱状部分およびあるいは曲面の端部分を含む投薬形態の形状について、円柱状に対称性を有する形状全てについて、物品(例えば、3DPプリント物品)に対して一軸圧縮を実施する最も容易な軸は、円柱状軸である。物品は、円柱状の対称性または任意の対称性を欠く場合でさえ、なお、本発明に従って圧縮され得る。
【0023】
物品は、圧縮軸に沿った寸法でもって製造され得、この寸法は、予想される圧縮の程度により決定される因子によって、投薬形態の所望の最終寸法より大きくされる。圧縮軸に対して垂直な断面における物品の寸法は、ダイアセンブリの内部寸法よりほんのわずかに小さく、物品のダイ空洞への挿入を容易にし得る。圧縮軸は、3DPプリントプロセスの垂直(層−対−層)構築方向に一致し得る。
【0024】
(三次元プリント経口投薬形態の一軸圧縮)
本発明の局面に従って、改善された三次元プリント経口投薬形態が、本明細書に記載される。完全に密なODFは、所定の内部構造を予想される程度まで保持し、従って、放出プロファイル(多面的放出プロファイルを含む)が、得られ得る。さらに、ODFの一軸圧縮は、ODFの内部構造を保持しながらも、増加したAPI濃度を可能にする。
【0025】
従って、図6に示されるように、一軸圧縮の1つの実施形態は、受け入れ空洞612を有するダイ610を備え、受け入れ空洞のより低い特性は、圧縮された投薬形態の底部の所望の形状に対応する。ダイ610は、2つの密閉嵌合部、すなわち、下方ダイ620およびスリーブ630から構成され得る。下方ダイ620が、スリーブ630から分離している設計は、下方ダイ620およびスリーブ630を互いに移動させることによるプレス後に、投薬形態の突き出しを可能にする。代替的な実施形態において、一体型下方ダイ620およびスリーブ630を有する単一部品空洞を使用して、投薬形態を一軸方向に圧縮する。
【0026】
下方ダイ620は、物品660と面する下方ダイ表面622を有する。物品660に面するラム表面642を有するラム640は、下方ダイ620から離れて物品660の表面をプレスする。ダイまたは受け入れ空洞612は、その少なくとも一部の距離にわたって、一定の断面の空孔を有し得る。ラム640は、ダイ610の空孔へと密閉嵌合様式でスライドするように適合され得る。空孔およびラムは、作動軸に対して平行である円柱状対称性軸を有する円柱状対称性を有し得る。
【0027】
下方ダイ620、スリーブ630およびラム640は、重大な穴または漏れを伴うことなく、全方向からプリント物品660を密接に閉じ込め得る。
ラム640の外径または形状、およびスリーブ630の内径または形状は、密接したスライドの一致を提供するようであり得、そして、下方ダイ620およびスリーブ630が互いに別個の部分である場合、同じことが、下方ダイ620の外径または形状、およびスリーブ630の内径または形状に対して当てはまり得る。
【0028】
ラムおよびダイの非円形断面部は、対称性を有さない形状であることを含む可能性がある。ラム、ダイおよびスリーブは、互いに関して密接に一致し得、スライド動作が、近接一致部分の間で生じた場合、完全には固体でないプリント物品に面した場所のみがそれらの小さな隙間を生じる。
【0029】
表面622および表面642は、結果として圧縮投薬形態670の下表面および上表面を規定し、そして投薬形態の所望の最終形状に従って形成され得る。それらの表面のどちらかまたは両方は、投薬形態の湾曲表面を形成するために湾曲を形成され得る。あるいは、それらの表面のどちらかまたは両方は、平坦にされ得る。
【0030】
下方ダイ620、スリーブ630およびラム640、あるいは物品と接触する少なくともそれらの表面622、632および642は、3DPプロセスによって産生される物品の硬度よりもより硬くなるよう作製され得る。圧縮の間、プリント物品に接触する表面622、表面632および表面642の全ては、特定の表面仕上げの滑らかさであり得、圧縮の後、投薬形態の表面が、所望の度合または滑らかさと同様の滑らかさを生じる。
【0031】
非平滑表面は、従来の錠剤化において時々なされるように圧縮操作によって錠剤のある表面上に、識別する特徴または類似の印(商業上の仕上げとして公知)を作製するために、所望され得る。これを成し遂げるために、凸所または凹所のような形状は、下方ダイ表面622またはラム表面642あるいはその両方に組み込まれ得る。物品660は、3次元プリント命令からプリントされ得、その形状および寸法は、下方ダイ表面622およびラム表面642の形状および寸法に一致し、圧縮の間、生じるプリント材料の比較的微小な再配置を生じる。
【0032】
3DPプリント物品のような物品660が、空洞612において、配置された後、ラム640は、物品660の上に置かれ得る。本質的に全ての無駄な空間を取り除くための3DPプリントのような物品を圧縮するために適した圧力は、およそ15,000 lbf/inch2であり、圧縮軸に対して垂直な任意の断面において、空洞612の穴の断面積またはプリント物品660の最大断面積によって除算された圧縮力Pとして規定される。
【0033】
典型的な賦形剤粉末結合剤物質などについて、このような圧力は、3DPの後に残っている空隙スペースのほとんどを圧縮し得、粒子および堆積された物質の互いに対する維持または付着を生じ、ほぼ完全な密度の投薬形態を生じる。約5,000psiの範囲の低い圧縮圧力でさえこの圧力範囲は、少なくともいくつかの粉末について表面を滑らかにするのに適し、またほぼ全ての空隙を取り除くのに適すると考えられている。秒単位の圧縮時間は、所望の圧縮を達成するのに適した時間よりも大きい。空隙スペースのいくらかのみを取り除く程の圧縮は、また後に考察される。この圧縮操作は、3DPプリント物品のような物品660を投薬形態670に変換する。
【0034】
本発明は、以下の実施例によってさらに例証されるが、これに限定されない。
【実施例】
【0035】
(実施例1)
(一軸圧縮を用いた3DPの外表面平滑性の改善)
この実施例は、初めに3Dプリントによって作製された後、一軸的に圧縮される3次元プリント投薬形態の外表面を示す。物品は、既に記載されたような3次元プリント系を用いてプリントされた。薬学的賦形剤粉末、結合剤および内部プリント構造ならびにプリントヘッドは、本明細書にさらに記載される。
【0036】
3DP操作の後、3DPプリント工程において、使用される粉末層の厚さに一致するステップを含む粗表面が残され、3DPプリント物品のいくらかは、15,000psiの圧力で一軸的に圧縮される。この圧縮は、内径11mmのステンレス鋼性錠剤ダイ、および意図した輪郭の錠剤キャップ(図6に表されるものに似た1.32cmの曲率半径を有する)に一致する凹表面を有するあつらえたプランジーを用いて行われる。
【0037】
3DPプリント物品のような物品の上表面および底表面の形状は、ダイの上表面および低表面の形状に密接に一致した。3DPプリント物品のような物品に接触するダイ表面は、約1マイクロインチrmsより滑らかな表面を達成するために、2400グリット(grit)の研磨剤で研磨された。プリント物品上に押し付けられる表面622、632、642(ステンレス鋼で作製された)は全て、実質的にプリント物品またはプリント物品中に存在する任意の物質よりも実質的に硬かった。
【0038】
圧縮後の投薬形態の外部表面は、3DPプロセス単独の後に存在するものと比較して非常に改善された滑らかさを示した。実際に、圧縮後の表面仕上げは、一段階でルース粉末を押圧することにより作製された従来法で加圧成形された錠剤のような市販の代替品から得られるものと本質的に同等であった。
【0039】
図7Aは、3DPの間に使用された粉末層の厚さのサイズスケールのステップを有する、押圧前の錠剤表面の代表的な断面を示す。図7Bは、圧縮後表面に対応するODFの外部表面の断面を示す。
【0040】
未圧縮サンプルおよび圧縮サンプルの外部寸法が、デジタルカリパスで測定され、これらの測定値は表1に示された。ガードルとは、曲線状のエンドキャップを除外した軸方向における、物品または投薬形態の円筒型部分の高さをいう。
【0041】
【表1】
一軸性圧縮の間に起こった容積収縮および寸法収縮は、容積および寸法(例えば圧縮の軸に沿って測定される全高およびガードルの高さ)において約50%であった。このことは、3Dプリント物品に存在した空隙容積の圧漬に起因し得る。
【0042】
表面仕上げの改善は、加圧成形の間の粉末粒子の非常に局在的な再配列に起因し得る。本発明の圧縮された投薬形態の表面のrms(平方自乗平均)粗度は、圧縮プロセスの間に物品について加圧する表面622、632および642のrms粗度に類似すると考えられる。図7Bは、圧縮後の本発明の投薬形態の表面仕上げを示す。
【0043】
圧縮されたODFの実際の写真から、表面粗度は約2ミクロンrms(平方自乗平均)よりなめらかであると推定され得る。この表面粗度は、2〜3ミクロンの間のピーク対くぼみ寸法に相当する。これらの記述子は、投薬形態について加圧されたダイ表面およびラム表面の表面仕上げにおおよそ匹敵すると考えられる。本発明の投薬形態のこの表面仕上げは、約200ミクロンの粉末層の厚さのステップを有した、一軸性圧縮前のプリント物品の表面状態よりも顕著に優れている。
【0044】
本発明の投薬形態のこの表面仕上げは、冷間等方加工プレスよりも顕著に改善される。さらに、一軸圧縮は、優れた表面仕上げおよび増大した密度を提供する一方で、ODFの内部構造を保存する。図4のアイソスタティック(等方的)に加圧された表面の従来技術の写真において、表面の局所的なピークからくぼみ近隣の最深部までの高さの差異は、83ミクロンであると推定され得る。対応するrms(平方自乗平均)差異は、60ミクロンであると推定され得る。
【0045】
冷間等方加工プレスは、部分的に適切な表面仕上げを作製し損なう。これは、冷間等方加工プレスが、物品表面を加圧成形する、コンプライアントなエラストマーバッグまたは鋳型を含むためであり、ここで、エラストマーバッグまたは鋳型の硬度は、物品および物品に含まれる粉末粒子の硬度に満たなかった。対照的に、本発明の技術は、3DPプリント物品およびその粉末粒子のような物品よりも硬質であり得る、滑らかな超硬合金の加圧成形表面を使用する。従って、本発明の技術は、粉末粒子を加圧して、極度に滑らかな表面を与える構造にするのにより適している。
【0046】
(実施例2)
(一軸圧縮の観点で維持された、3DF ODPの内部構造の一体性)
三次元プリントは、内部構造および投薬形態の組成変動を生じる能力を提供する。従って、この実施例は、投薬形態が一軸圧縮を受けながら、3Dプリントされた投薬形態の内部構造がどのように維持され得るかを説明することを意図される。この実施例における錠剤は、実施例1における錠剤と同じであった。これらの投薬形態の外形は、湾曲した端部キャップを有する円筒形であった。
【0047】
内部組成に関する限り、これらの投薬形態は、内側API含有領域を備え、これは、図示される断面において、矩形の断面を有し、そしてその完全三次元形状は、円筒形であった。この円筒形のAPI含有領域は、外側の非API含有領域で完全に囲まれており、この非API含有領域は、内側領域によって占有されない投薬形態の残りの部分を占有した。この物品は、中心面の周りで上下の対称性および中心軸の周りでの円筒対称性を有する層状構造で構成された。図5は、例示的なODFの断面を示す。先に言及されたように、9の層が、頂部の湾曲表面510を形成し、25の中間層が、形状のガードル(girdle)520を形成し、そして9の層が、底部の湾曲表面530を形成し、合計43の層(すなわち、8.6mm)が、プリントされた高さである。中央の25の層は、最大外径、すなわち約11mmの外径を有する円筒形部分を形成する。これらの中央の25の層の各々に、外壁領域のリング(外径=11mm、内径=7mm)をまずプリントし、次いで、API含有領域(外径=7mm)の円形領域をプリントした。
【0048】
これらのサンプルを作製する際に使用した粉末は、50重量%のラクトース(53ミクロンと74ミクロンとの間の粒子サイズ)と混合した50重量%の微晶質セルロース(38ミクロンと53ミクロンとの間の粒子サイズ)であり、広げた場合の充填割合は0.428であり、そして200ミクロンの層高さを使用した。液体を、50ミクロンのオリフィス直径のオリフィスを有する連続ジェットプリントヘッドによって分配し、そして液滴を、必要に応じて荷電させて偏向させ、個々の液滴が粉末床上にプリントされるか否かを制御した。
【0049】
25層の厚さの中央部の外側領域すなわちリング領域を、5重量%のEudragit L 100のエタノール溶液でプリントした。湾曲した端部キャップ領域もまた、この結合剤液体を用いてプリントした。Eudragit L 100は、結合剤物質として働いた。この場合は、揮発性溶媒の蒸発の際に、隣接する粒子の周りで固化することによって、あるいは隣接する粒子の接触点またはその近くでネックを形成するように固化することによって、粒子を一緒に結合する物質である。1.3の飽和パラメータが、この外側領域において達成され、θ(L 100)=0.024の体積割合L 100を与えた。従って、このセクションでの空隙スペースまたは多孔性は、1−(粉末の広げた場合の充填割合)−(堆積した固体物質によって充填される割合)、すなわち、1−0.428−0.024=0.548であり、外側領域が54.8%多孔性であることを意味した。
【0050】
内側API含有領域を、API(22%濃度)を非常に低濃度のマーカー物質と共に含有する結合剤液体でプリントした。このAPI含有領域において、結合剤液体は、結合物質を実際には含有しなかった。なぜなら、粉末を実際に一緒に結合することは必要なかったからであり、これはなぜなら、物品の外側は、周囲の外側領域をプリントするために使用される結合剤物質によって、一緒に保持されたからである。
【0051】
マーカー物質は、APIの時間放出のために必要とされ得る、異なる組成の領域間の境界の容易な同定を可能にした。マーカー物質は、0.05重量%のフルオレセインナトリウム塩(Sigma Chemical Co.)であり、これは、紫外光によって照射される場合に緑色光を発光する、容易に検出可能な蛍光色素である。API含有領域についてのプリントパラメータは、25層、200ミクロンの層高さ、120ミクロンの線から線の間隔、直径7mmのAPIプリント領域、1.0の飽和パラメータまでの飽和であった。この領域のAPIの体積割合は、θ(API)=0.107によって与えられた。従って、この内側領域に残る空隙スペースまたは多孔性は、1−0.428−0.107=0.465であり、この内側領域が、46.5%多孔性であることを意味した。
【0052】
プリント後、投薬形態を完全に乾燥させ、次いで、これらのサンプルのうちのいくつかを、先に記載された11mmの直径を有するステンレス鋼錠剤ダイおよび曲率半径=1.32cmを有する凸状表面を有するカスタムプランジャーを使用して、15,000psiの圧力で一軸圧縮して、錠剤の輪郭をキャップに適合させた。次いで、全てのサンプルを、低粘度エポキシに取り付け、そして横に切り、内部の細部および表面仕上げを観察した。この材料でプリントした断面のフルオレセインは、紫外光のもとで蛍光を発し、従って、この錠剤の2つの領域間を容易に区別することを可能にする。横に切った投薬形態を、紫外光のもとで撮影し、そして蛍光特徴と非蛍光特徴との間の境界の寸法、または全体の寸法を、蛍光波長において、これらの断面の写真のピクセルの光強度のデジタル分析によって測定した。
【0053】
図7Aおよび7Bは、圧縮されていない物品および圧縮された投薬形態の断面を示す。実際の写真において、圧縮前は、明らかな境界が、1つの結合剤でプリントされた領域と他の結合剤でプリントされた領域との間に存在し、そして圧縮後は、明らかな境界がなお存在したが、わずかに異なる位置であることが見出され得た。圧縮されていない物品および圧縮された投薬形態の内部特徴を、表2に与えられるように、それらの圧縮前および圧縮後の寸法によって特徴付けた。
【0054】
【表2】
圧縮から生じる内部特徴の寸法における主要な変化は、圧縮軸に沿った寸法(例えば、蛍光領域の高さ)の収縮であった。この標準化した結果は、表1において報告されたような、外部ガードルおよび外部高さ寸法全体の標準化した変化に非常に類似する。他の主要な方向(すなわち、半径方向)において、境界が、半径方向にわずかに外向きに移動したことが見られ得、このことは、プレス操作の間に材料の再配置が存在したことを示す。
【0055】
実施例1と実施例2との両方において、内部構造は、内部構造を保存しないと推定される技術にかかわらず、内部構造が保存された。実施例1および2に示される1つの実施形態において、コア領域は、十分に堆積されたAPIでプリントされ、この領域は、シェル領域が有したよりいくらか高い固体含有量(いくらか低い空隙割合)を有した。API領域と賦形剤領域との間の境界が、圧縮の結果として半径方向にわずかに移動することを生じた。図7Aと比較して、図7Bにおいて、この境界は、同じ半径方向位置にない。それにもかかわらず、この境界は、およそ、以前にそうであったものとは、後には異なる。この圧縮プロセスの間の投薬形態の内側の材料の運動は、ちょうど一次元より大きかった。すなわち、少なくとも少しの半径方向運動が存在した。
【0056】
別の実施形態において、端部キャップ領域の形状が平坦ではない場合、一軸圧縮プロセスの間に、局所的な粉末粒子の運動のいくらかの多次元性が存在するようである。このことは、端部キャップの3DPプリントされた形状が、それが適合するダイの形状と同じであるか否かにかかわらず、事実である。従って、端部キャップの領域内であってさえも、一軸圧縮プロセスの間に、局所的な粒子運動のいくらかの二次元性が、ほぼ確実に存在し、投薬形態の主要な部分(これは、圧縮プロセスの間に起こると予測され得る限りでは、理想的な一次元形状により近い)において、領域から領域への境界のいかなる有意な乱れも存在しなかった。すなわち、この境界は、十分に維持されていた。
【0057】
表2に示されるように、材料は、高密度かつ低空隙割合の領域から、低密度かつ高空隙割合の領域へと移動した。より大きい初期多孔性を有する領域において、より多くの空隙スペースが、圧縮によってつぶされなければならず、このことは、より高密度の領域からのこの領域への材料の移動を引き起こした。プレスする前に、中央領域は、外側領域より高い密度を有した。なぜなら、中央領域の空隙スペースは、かなりの組み合わせられた濃度の種々の物質(主として、API)を含有する結合剤液体によって部分的に充填されているからであり、そしてそこの空隙割合は、46.5%であった。外側領域において、空隙空洞は、さほど充填されなかった。なぜなら、この領域は、比較的低濃度の結合剤物質のみを含有する結合剤液体によってプリントされたからであり、そしてそこの空隙割合は、54.8%であった。
【0058】
従って、一軸圧縮の軸以外の方向での材料の再配置は、圧縮の軸に沿った寸法変化よりずっと小さかったが、実際に起こった。このことは、個々の領域のそれぞれの空隙割合の理解に基づいて、説明可能である。湾曲した端部キャップの領域(これは、いくらかより複雑であり、そして多次元構造であった)において、材料のいくらかの再配置が存在したようである。これは、1方向での構造の圧縮は、より多次元の構造に起因して、他の次元での材料のいくらかの運動を付随しなければならないという点に起因する。少なくとも、いくらか一次元の円筒領域において、主要な圧縮方向以外の方向であってさえも、材料のわずかな再配置および境界の位置の移動が存在し、この境界自体は、本質的に、圧縮前の形状のままであることが観察された。
【0059】
空隙割合は、固体によって占有されていない体積の関数として定義され得る。3DPプリントされた物品のような部分は密度を有し、この密度は、その重量をその体積で除算したものである。その固体密度がいかなるものであるか(すなわち、完全に固体であり間隙を含まない場合の、その密度)を決定することもまた、可能である。純粋な物質については、固体密度は、一般的に公知であり、そして物質の混合物または組み合わせについては、固体密度は、当該分野において公知であるように、個々の成分の固体密度およびそれらのそれぞれの組成割合から、計算され得る。
【0060】
例えば、3DPプリントされた物品のような物品(粉末、何らかの結合剤物質および何らかのAPIを含み得、これらの各々は、その独自の固体密度を有する)において、理論的固体密度を計算するために、これらを合わせるための秤量平均を使用することが必要である。観察される密度と理論的な固体密度との間の差異は、何であれ、空隙を表す。空隙割合は、通常、無次元形態で表現される。すなわち、投薬形態の体積全体のどの部分も、空の空間である。この実施例の投薬形態において、記載される圧縮後に、空隙割合は、5%未満であった。
【0061】
この実施例においては、外側領域は、APIを含まず、一般に、外側領域は、内側領域の組成とは異なる任意の組成であり得る。すなわち、APIを含まなくても、または異なる濃度の同じAPIを含んでも、異なるAPIを含んでもよい。
【0062】
(実施例3)
(内部アーキテクチャに対する一軸圧縮の影響を最小にするための均一な初期空隙割合)
先の実施例において、圧縮の間、圧縮の軸に対して垂直な方向での、2つの領域間の界面または境界の、何らかの運動(この場合には、半径方向の運動)が存在した。このような運動は、投薬形態の設計段階の間に予測され得、そして投薬形態は、圧縮の間の界面または境界のこのような予測される運動を補償するように、設計され得る。先の実施例において、API/非API界面の、半径方向外向きの運動は、プリントされたAPI含有領域が比較的少ない空隙を有し、そしてプリントされた外側領域が比較的多くの空隙を有したことに起因して、両方の領域が圧縮後に結局本質的に完全に濃密になった場合でさえも、起こった。従って、内側領域より外側領域において、空隙体積のより多くの除去が起こらなければならず、そしてこのように、材料が、より濃密な領域からより密度が低い領域へと押し込まれ、そして移動しなければならなかった。しかし、境界のこのような運動が存在しないこと、および投薬形態の設計における寸法補償の必要性が存在しないことが望ましくあり得る。3DPプリントされた物品のような物品において、両方の領域が同じ初期空隙割合を有する場合、圧縮の間に、その界面または境界は、本質的に、圧縮の軸に対して垂直な方向(例えば、半径方向)で、その位置を変化させなかったと考えられた。
【0063】
従って、この実施例は、両方の領域が、プリントされる際に等しい空隙割合であるようにプリントされる場合である。内側領域は、粉末上にプリントされたAPIを含み、そして外側領域は、粉末上にプリントされた、不活性なプリント物質または結合剤物質を含む。外側領域を充填する目的は、単に結合する目的(より多くの固体物質がこの領域に堆積されることが必要とされないかもしれない)であってさえも、API領域においてと同程度まで空隙を充填することである。空隙割合のこの同等性または一致は、一軸圧縮後の界面または領域間境界を、プリント前に占有した半径方向位置または圧縮の軸を横断する平面内での位置と本質的に同じ位置に維持させることが予測される。なぜなら、空隙割合の同等性とは、圧縮の間、少なくとも極度に複雑ではない構造に対して、一軸圧縮の方向に沿った以外の任意の方向での材料の再配置または運動を本質的に必要としないはずであることを意味するからである。
【0064】
圧縮後に見られる投薬形態において、物品が3DPプリントされた場合に内側領域の界面または境界がどこであったか、あるいは圧縮の間、圧縮の軸に対して垂直な方向(例えば、半径方向)に界面または境界が移動したか否かを直接知る方法は、存在しない。圧縮後、本質的に全ての空隙スペースは、全ての領域からなくなり、そして個々の領域の空隙割合が圧縮前には何であったかは、すぐには明らかにならない。しかし、本実施例の技術が使用されたか否か、および個々の領域のこれらの空隙割合が互いに等しかったか否かを推定することは、なお可能である(すなわち、圧縮された投薬形態のそれぞれの領域の組成の測定によって)。
【0065】
圧縮後、各領域は、元の粉末である内容物の部分を有し、そしてまた、1つ以上の結合剤液体によって粉末に送達された他の固体物質の内容物の部分を有する。物品の先の段階であって、3DPの完了後であって圧縮前の段階に、各領域は、元の粉末、送達された固体物質および空隙の組み合わせを含んだ。広がった粉末床において、粉末の割合は、どこにおいても本質的に一定である。これは、粉末の一般的な広がりおよび沈降の特性、あるいは使用される特定の粉末に起因する。従って、3つの部分が均一にならなければならないので、空隙割合および送達される固体物質の割合は、互いに直接関係しなければならない。
【0066】
圧縮が全ての空隙を排除する、後の状況において、種々の領域における送達される固体物質の割合が互いに等しい場合、このことは、圧縮前には、これらの種々の領域における空隙割合もまた互いに等しかったことを示す。このことは、次に、物品を圧縮して投薬形態を形成することが、領域間の界面または境界が、圧縮の軸に対して垂直な方向で、本質的に移動することなく起こったことを意味する。このことは、圧縮プロセスの間に、界面が、圧縮の軸に対して垂直な方向で本質的に移動しないままであるという知見により生じる、設計の特別な便利さを提供する。API含有領域の場合、送達される固体物質は、少なくとも部分的にAPIであり得る。APIを含有しない領域の場合は、送達される固体物質は、結合剤物質または他の不活性物質であり得る。圧縮された投薬形態における成分の割合の一致を観察することによって、空隙の割合の一致が物品において使用されることを決定する能力は、いかに多くの領域または区画が物品中に設計されても、事実である。
【0067】
(実施例4)
(複雑な内部構造を有する3DP経口投薬形態)
この実施形態は、同様に3DPによって製造され、そして一軸圧縮によって圧縮され得るより複雑な形状を示す。1つのこのような実施例は、領域の組み合わせであり、これらの領域の各々が、入れ子の形態で、他のものの中に収容される。全ての入れ子領域は、例えば、同軸であり得る。これは、図8A〜8Cに示されている。
【0068】
図8Aは、立方体または矩形の平行六面体の形状の経口投薬形態を、頂部層820の分解図で図示する。頂部層820は、いくつかのプリントされた層を備え得るか、または単一粉末層の厚さであり得る。ODSの壁830はまた、粉末の層および結合剤液体によって作製され、従って、任意の予め決定された厚さであり得、そして様々な厚さでさえあり得る。内部構造は、入れ子状領域840および850を備える。これらの領域は、任意の予め決定された形状であり得るか、APIを含んでも含まなくてもよいか、最も近い入れ子状成分とは異なるAPIを含み得るか、またはこれらの何らかのバリエーションであり得る。
【0069】
別の可能な多領域構造は、複数の区画(この場合、2つの区画)を備え、これらの区画は、互いに入れ子になっていない。これらの各々は、異なる組成または異なる量のAPIを含有し得る。図8Bは、2つの入れ子になっていない区画860および870(これらは、矩形の平行六面体形状であり得る)を備えるような、多区画投薬形態815を示す。これらは、周囲領域836によってさらに囲まれているように示される。他の幾何学的設計(例えば、投薬形態内の、入れ子にされている配置の領域、および入れ子にされていない配置の領域の両方が挙げられる)もまた可能である。図8Cは、図8Bの線8C−8Cに沿った断面図を示す。様々な組成の隣接する領域860、870が、カプセル化領域830と共に示される。全ての場合において、3DPプリントされた物品のような物品の製造後、この物品は、複雑な内部構造を維持しながら、一軸圧縮によってなどで圧縮され得る。
【0070】
(実施例5)
(組成の内部勾配を有する3DP経口投薬形態)
これまでの実施形態は、プリントされた物品または投薬形態の内部を、不連続な領域を含み、これらの領域の各々の内部において、組成物が本質的に均一であるように記載した。3DPによって製造され得る他の可能な組成のバリエーションは、1つ以上の物質の、任意の方向での勾配を含む。
【0071】
用語均一な組成および不均一な組成および勾配は、3DPのような粉末アセンブリ製造プロセスに関して使用される場合、個々の粉末粒子の大きさより大きい大きさ規模に対して意味を有する。物品を均一な組成であると記載する際に、粉末粒子から開始して三次元プリント(3DP)によって製造される場合、この物品は、組成が個々の粉末粒子(これから物品が作製される)の大きさよりいくらか大きい大きさの規模にわたって平均される場合、均一な組成を有することを意味する。この理解は必要である。なぜなら、3DPにおいて、個々の粉末粒子は、その同一性を維持し得、一方で個々の粉末粒子間に堆積された結合剤物質もまた、例えば、揮発性液体物質の気化によって、その独自の同一性を維持し得るからである。
【0072】
従って、粒子サイズに匹敵する大きさの規模で、3DPプリントされた物品は、1つが粉末粒子から結合剤物質へ、次いで別の粉末粒子へと移動するので、不均一性を示し得るが、いくらか大きい大きさの規模において、物品は、全体が同様に製造される場合、均一な組成であるといえる。異なる区別可能な領域を有して、投薬形態が、粉末粒子より大きい大きさ規模で不均一である組成を有することもまた、可能である。不均一性は、堆積した物質の濃度または組成によって、粒子サイズより大きい大きさの規模で、投薬形態内の位置の関数として決定される。これは、後に記載される三次元プリントプロセスにおける結合剤液体の堆積の適切なプログラミングによって達成され得、そして本発明の投薬形態が特定のセットの指示に従って製造される各時点で繰り返し作製され得る。
【0073】
1つ以上の物質の組成の勾配を有する投薬形態を設計する観点で、この勾配は、APIの結合物質、または一般には、堆積した固体物質の、局所的な組成または濃度が、位置の関数としてどのように変動するかの観点で存在し得、ここで局所的な組成は、個々の粉末粒子の大きさよりいくらか大きい大きさの規模にわたって、平均されると理解される。
【0074】
任意の投薬形態は、幾何学的中心を有し、そして1つ以上の成分の濃度は、球対称を有する投薬形態の使用によってか、球対称を欠くが合理的に単純な形状(例えば、さほど極端ではないアスペクト比の円筒形または矩形の平行六面体)を有する投薬形態の使用によってかのいずれかで、この投薬形態の幾何学的中心からの距離の関数であり得る。濃度は、いくつかの可能な結合剤液体のどれが所定の位置で分散されるか、所定の結合剤液体のどれくらいが所定の位置において分散されるかなどによって、影響を受ける。組成の非類似性が作製され得る空間の寸法は、1つの分散された液滴、または類似の単位の分散された結合剤液体によって占有される体積の寸法に関連する。
【0075】
組成の勾配を達成することは、3DPプリントされた物品を構築するための指示の適切なプログラミングによって、達成され得る。このことは、特定されたディスペンサーから特定された流体を分配する工程を包含し得る。これは、ディスペンサーまたはプリントヘッドにおいて可能である場合、流体の可変液滴体積分配の使用を包含し得る。例えば、いくつかの圧電式の要求に応じた滴下(drop−on−demand)のディスペンサーは、このディスペンサーを駆動するために供給される電子波形に依存して、可変の分配体積が可能である。
【0076】
APIの勾配を含む、3DPプリントされた物品のような物品は、次いで、本発明の技術を使用して一軸圧縮され得、そして圧縮の軸に沿って既に経験した収縮を条件として、そしておそらく、圧縮の軸に対して垂直な方向で既に経験した材料の小さな再配置を条件として、組成のその空間的分布を維持する。
【0077】
圧縮の軸に対して垂直な方向での材料の小さな再配置の経験が望ましくない場合、種々の領域の空隙割合または物品全体にわたって非常に連続的な基礎での空隙割合を、実施例3においてなされたものと類似させて適合させることが可能である。このことは、どこであっても堆積されたAPIの濃度が比較的大きく、他の堆積された固体の濃度が比較的小さく、そして堆積されたAPIの濃度が特定の場所においてより小さくなるように、3DP指示をプログラミングすることによってなされ、他の堆積された固体の濃度は、堆積された固体の全濃度がおよそ一定になるように、これらの同じ位置において比較的大きいように設定される。堆積された全固体の濃度が、3DPプリントされた物品のような物品の全体にわたって全ての位置で、または3DPプリントされた物品のような物品のかなりの領域において、およそ一定である状況を達成することは、圧縮の間、この物品は、圧縮の軸に沿ってのみ本質的に収縮すること、および圧縮の軸に対して垂直な方向での材料の局所的な再配置がほぼ0であるはずであることを意味する。
【0078】
(実施例6)
(3DP経口投薬形態の一軸圧縮からのAPI濃度の増加)
実施例6は、投薬形態にパッケージされ得る活性薬学的成分の品質に焦点を当てる。この含有量は、標準化された意味で、投薬形態のAPI含有領域1ccあたりのAPIのmg(mg/cc)として表現され得る。実施例6を、結合剤液体に非常に可溶性のAPIを使用して実施した。このAPIは、ジクロフェナクナトリウム(Sigma Chemical Co.)であった。これは、結合剤液体の溶媒部分として使用されたメタノールに非常に可溶性である。この実施例の実験において、3DPプリントされる物品のような物品全体がAPIを含有し、これは、実施例2の、より複雑な2領域構成とは対照的である。この投薬形態はまた、先の実施例より単純なの形状(すなわち、平坦な端部を有する円筒形)のものであった。
【0079】
粉末床は、比重量偏差0.412の、70重量%のラクトースおよび30重量%のヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)(Methocel K4M、Dow Chemical Co.)からなるものであった。これらの錠剤にプリントされたAPI溶液は、メタノールに溶解された18重量%のジクロフェナクであり、1重量%のポリビニルピロリドン(PVP)(これは、結合剤物質として働いた)を含んだ。このAPI含有結合剤液体を、これらのプリントされた物品の全ての位置にプリントした。この物品を、16層を使用して、直径10.42mmの平坦な末端の円筒形状でプリントして、全体の高さ4.8mmを得た。
【0080】
ジクロフェナクナトリウム溶液のプリントのためのプリントパラメータは、120ミクロンの線間隔、300ミクロンの層高さ、0.97g/分の流速、50.4ミクロンのノズルオリフィス直径、150cm/秒のラスター速度、および圧電素子に対して42.0kHzの変調周波数(これは、偏向プリントヘッドを用いる連続ジェットにおける液滴の分断を刺激する)であった。飽和パラメータとは、速い軸方向での1つの液滴から液滴の間隔、遅い軸方向での1つの線から線の間隔、および垂直方向での1つの層の厚さによって規定される、単位体積をいう。飽和パラメータは、この単位体積内のどのくらいの空隙スペースが、分散された液体によって占有されているかを記載する。上記プリントパラメータが組み合わせられて、0.57の飽和パラメータを達成する。各プリントの通過には、約2分かかった。
【0081】
API物質であるジクロフェナクナトリウムを含有する4セットの物品または投薬形態を作製した。
【0082】
セット1:1回のプリント通過を使用した。各錠剤にプリントされた投薬量を、プリントパラメータに基づいて、22.08mgのジクロフェナクであると計算した。
【0083】
セット2:次いで、第一のセットの錠剤のいくつかを、15,000ポンド/インチ2(psi)の一軸圧縮下で、平坦な端部ダイを備える、内径11mmの円筒形錠剤ダイ中で、プレスした。得られたプレス錠剤は、直径11.17mmおよび高さ1.78mmであった。
【0084】
セット3:次いで、同じプリント条件を使用して、各層にAPI溶液を、第一のセットのように1回ではなく4回プリントすることによって、第三のセットの錠剤を作製した。各プリントの通過の後に、プリント通過の間に、床を約3分間乾燥させた。各層は、構築するために約15分かかった。見かけの飽和と称されるパラメータを、1層あたりのプリント通過の回数に、各個々のプリント通過の間にプリントされる飽和を乗算したものとして規定した。ここで、4×0.566、すなわち2.26の値を有した。各錠剤にプリントされた投薬量を、プリントパラメータに基づいて、88.16mgのジクロフェナクであると計算した。
【0085】
セット4:第三のセットの錠剤のいくつかを、15,000psiの一軸圧縮下で、記載されたようにプレスした。得られた錠剤は、直径11.17mmおよび高さ2.33mmであった。
【0086】
API含有量を測定するために、各錠剤を、900mLのリン酸緩衝溶液(pH7.4)に、37℃で完全に溶解させた。吸光度を、分光光度計(Beckman DU 640)を使用して、ジクロフェナクナトリウムに対する極大吸収波長(これは、275nmであった)を使用して、測定した。リン酸緩衝溶液中のジクロフェナクナトリウムの吸光度について実施した吸光度/濃度較正実験は、目的の範囲を含む広範な濃度にわたって、APIの濃度に対する吸光度の線形依存性を示した。
【0087】
この方法によって、0.57の飽和でプリントした第一のセットおよび第二のセットのジクロフェナク錠剤は、21.98mg±0.22mgのAPIを、各錠剤に含有すると測定された。この測定されたAPI量を、圧縮された錠剤または圧縮されていない錠剤の測定された外部寸法と組み合わせて、API濃度またはAPIの密度「デルタ」を、圧縮されていない物品(例えば、3DPプリントされた物品)または圧縮された投薬形態のいずれかにおいて得た。圧縮されていない単一通過錠剤は、δ=53.74mg/ccのAPI濃度を含み、そして圧縮された単一通過錠剤は、δ=115.08mg/ccのAPI濃度を含んだ。
【0088】
API濃度は圧縮によって2倍以上になった。なぜなら、圧縮前に空隙率は、半分よりわずかに少なかったからである。4回通過のプリンティングの結果として2.26の見かけの飽和でプリントされたジクロフェナク錠剤の第3および第4のセットは、同様に、各錠剤中に87.98mg±0.28mgを含むと測定された。予期され得るように、これらの錠剤は、1回通過よりむしろ4回通過でプリントされたので、API含量のこの大きさは、単回通過でプリントされた錠剤のそれのほぼ正確に4倍であった。API濃度に関する限り、非圧縮錠剤は、215.11mg/ccのAPI濃度を含み、そして圧縮錠剤は、350.52mg/ccのAPI濃度を含んでいた。
【0089】
この実験では、圧縮の結果としてのAPI濃度における改善は完全には2倍ではなかった。恐らく、この事例では、空隙スペースが、複数回通過のプリンティングによって既に幾分充填され、そしてそれ故、圧縮の前の実際の空隙率は、半分より少なかったからである。圧縮された4回通過プリントされた投薬形態を、圧縮された1回通過プリントされた投薬形態と比較すると、4回通過プリントされた投薬形態についてのAPI濃度は、圧縮された1回通過プリントされた投薬形態に対するそれの約3倍であった。従って、複数回通過の溶液プリンティングにおいて利点がある。なぜなら、圧縮によって空隙容積が除去される前に、初期空隙容積のより多くをAPIで充填することを可能にするからである。あるいは、換言すれば、所定量の賦形剤粉末に対してより多くのAPIが堆積される。
【0090】
表3は、ジクロフェナク溶液を用いる投薬形態の製作からの結果を要約する。
【0091】
【表3】
図9は、図3に提示されたように算出されたδ輪郭をもつ同じ形態上に付加された、この実施例中の実験における非圧縮錠剤に対する、単位容積あたりの実験的に測定された用量(δ)の結果を示す。図9は、この実施例で記載される実験について圧縮前後の両方で達成されたδ値を示す。圧縮することは、同じ用量について容積を低減することによりAPI濃度を増加する。図10中の矢印は、錠剤が圧縮されるとき、各実験でどのようにδの値が変化するかを示す。
【0092】
当初は3DPにより作製された物品の一軸圧縮が、固定された用量に対する錠剤容積を減少することによりAPI濃度の値(デルタ)が多いに増加したことが観察され得る。溶液プリントされた用量について得られた「デルタ」の最高値は、4×プリントおよび一軸圧縮された両方の投薬形態について351mg/ccであった。粉末の初期空隙率およびAPI物質の物理的性質のような、この実験で用いた条件について、達成可能なAPI濃度の理論的限度は、580mg/ccであった。この理論的限度は、当初に分与された粉末粒子間の空隙スペースのすべてがAPIで充填された場合に起こることを示し、次いで、これが、圧縮を不必要にし得る。なぜなら、除去すべき空隙スペースがないであろうからである。圧縮された投薬形態ではまた、本質的に空隙がないが、より小さな%の堆積されたAPIが存在する。なぜなら、不完全な充填があり、そしてそれ故、より大きな%の、そして理論的に制限される事例におけるより粉末が存在したからである。従って、この事例の最高に達成された「デルタ」は、理論的限度の約60%であるAPI濃度を達成したことを示す。
【0093】
(実施例7)
(ODFの放出プロフィールの一貫性の改良)
目的であり得る、本発明の投薬形態は、図5および図10中に示されるように、シェルによって取り囲まれるAPIを含む内部領域を含み得る。このシェルは、この内部領域に含まれるAPIの放出プロフィールに影響し得る。患者によって心地よく受入れられ得る投薬の全体の寸法に対する制限を考慮すると、このシェルは、約1mmまたは恐らく2mmの最大厚さのようなその厚さに関する制限を有し得る。
【0094】
非圧縮3DP ODFにおいて、このシェル厚さに対応する滴またはボキセル(voxel)の数は、2〜10滴またはボキセルの範囲のある点であり得る。非圧縮3DP ODFにおいて、特に、滴またはボキセルの数がこの範囲の下限にある場合、製造の時、または胃腸管におけるある長さの滞留時間の後のいずれかにおいてシェルを通じるピンホール漏れの可能性がある。ピンホール漏れは、シェルの1つの側面から他の側面までのシェルの厚さを横切る経路を形成する本質的に連結された空隙スペースである。シェル中の任意の場所における1つまたは小数のピンホール漏れでさえ、意図した放出プロフィールとは異なる特定の投薬形態からのAPIの放出プロフィールを引き起こし得る。高圧、例えば、5%より小さい最終空隙率まで物品を圧縮するに十分な圧力を用いて、3DPプリント物品のような物品の圧縮が、存在し得る本質的にすべてのピンホール漏れまたは可能なピンホール漏れを圧縮およびなくすに十分にシェル領域を圧縮し得る。
【0095】
従って、3DPのような詳細な製造プロセス後の一軸圧縮のような圧縮は、投薬形態の薬物放出プロフィールの一貫性を改善し得ると考えられる。圧縮はまた、APIへの体液の低減した接近に起因して、非圧縮状況に対応するより遅い全体の放出速度を生じ得る。シェルは、所望の速度で消化液中に溶解または分解する物質、または特定pHの流体中でのみ溶解または分解する物質を含み得る。
【0096】
(実施例8)
(3DP経口投薬形態の部分的圧縮の効果)
ここまでの実施例は、既に記載されているように、3DPプリントされた物品のような物品の製造後、物品を、本質的にすべての空隙スペースをなくし、かつ本質的に完全に密である投薬形態を生じるに十分大きな圧縮力を用いて圧縮され得ることを記載している。しかし、これは、3DPのような製作プロセスの後に圧縮を用いる唯一の可能な方法ではない。一般に、任意の型の投薬形態からの任意のAPIの放出速度は、投薬形態の間隙率、または特に投薬形態がシェルを含む場合シェルの間隙率により顕著に影響される。孔は、体液が投薬形態の部分に接近し、かつそれを溶解する経路を提供する。
【0097】
一軸圧縮プロセスは、物品または投薬形態の間隙率が、広範な範囲内で任意の所望の値を有し得るように調節され得る調節可能なパラメーターを提供する。最終の間隙率は、多くても、3DPプリント物品のような物品中の間隙率である間隙率を有さなければならない。圧縮後の最小の間隙率の可能な値は、本質的にゼロの間隙率であり得る。特定の目的には、完全な厚密よりむしろ、中間の値の間隙率が所望され得る可能性がある。この中間の値は、圧縮のいくつかの利点が得られ、そして投薬形態の得られる放出プロフィールが、所望の放出プロフィールであるように選択され得る。部分的に厚密された投薬形態の放出プロフィールは、完全厚密について生じるより速いと予期され得る。圧縮が完全密度より小さく実施されるだけであっても、恐らくは表面仕上がりにおける有意な改善がなお存在する。
【0098】
(さらなる論議)
本発明により製造された投薬形態は、経口投薬形態であり得る。これはまた、一般に、移植可能なデバイスを含む任意のタイプの投薬形態であり得るが、これに限定されるわけではない。本発明により作製される投薬形態はまた、嚥下の容易さのために湿っているとき滑り易いようになる表面を提供するコーティング、マーキング、ゼラチンカプセルなど中にパッケージされるような、加工後ステップを与えられ得る。
【0099】
本発明の投薬形態で用いられ得るAPIは、現存する投薬形態による投与に適切な本質的に任意のタイプのAPIを含む。特に、APIは、癌の鎮痛剤、関節炎の鎮痛剤およびその他の疾患用の鎮痛剤;ホルモン;高血圧、パーキンソン病、注意欠陥障害、喘息およびその他の疾患と戦うAPIを含む、すべてがAPIの放出プロフィールの詳細な制御から利益を受け得る種々のタイプの鎮痛APIを含み得る。単一の投薬形態中に1つより多くの活性薬学的成分を取り込むことが可能である。1つより多くのAPIをバインダー液体中に溶解することが可能である。
【0100】
分散バインダー液体で活性薬学的成分を分散する代わりに、活性薬学的成分を拡散される粉末と混合し、そしてバインダー液体によって結合することが可能であり得る。次いで、一軸圧縮工程がこれに続く。これは、投薬形態の内部内で組成の変動が必要でない状況に主に適切であり得、そしてこの薬剤は実際に高価ではない。
【0101】
任意の複数回通過プリンティングにおいて、同じ層上への液体の次の分与前に分与された液体の完全な乾燥を有することが所望され得るけれども、次の層の拡散前に完全な乾燥よりもほぼ完全な乾燥を提供することがより時間的に効率が良いであろうし、そして実際、それは、より良好な層と層との接着を促進することによりなおより良好であり得る。次のプリンティングのために飽和パラメーターの適切な選択が、適切なタイミングに沿ってなされ得る。
【0102】
一般に、任意のタイプのプリントヘッドが本発明とともに用いられ得る。これには、マイクロバルブ、圧電ドロップオンデマンド、偏向を備えた連続ジェット、そしてまた含まれる物質が熱的に損傷されない場合、沸騰(バブル−ジェット)プリントヘッドが含まれる。バインダー液体の分与は、しばしば、別個の滴の分散により生じると考えられ得るが、これは実際にそうである必要はない。分与は、別個の滴、または接続された滴、また連続流れ、または一般に任意の外観の液体流れである流体流れで実施され得る。
【0103】
一軸圧縮の技法は、従前に可能であったより、3Dプリントされた投薬形態におけるAPI濃度のより大きな値を達成する可能性を与え、そしてそれ故、3DPを、この目的のためにそれが従前あったより魅力的にする。API充填に関する制限は、長年、経口投薬形態を作製するための3DPの使用に関する制限として考えられてきた。APIは、それらの効目、または投薬形態中にパッケージされなければならないAPIの量が広範に変動するが、いくつかのAPIについて、API充填における改良、または本発明により達成可能な濃度は、そのAPIについて、実施可能な3DPと実施不能な3DPとの間の差異をなし得る。さらに、本発明は、投薬形態内に組成変動の配置に関する3DPのすべての利点を維持しながら、乏しい表面仕上げの問題を完全に解決し得る。本発明の一軸圧縮プロセスはまた、大量生産に迅速かつ良好に適合している。
【0104】
本明細書に引用されるすべての参考文献は、それらの全体が参考として本明細書に援用される。
【0105】
先行する記載から、本発明の詳細な実施形態が例示の目的のために本明細書に記載されているが、その種々の改変および組み合わせが、本発明の思想および範囲から偏移することなくなされ得ることが認識される。従って、本発明は、添付の請求項によることを除いて制限されない。
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
(発明の分野)
本発明は、物品の一軸圧縮に関し、そしてより具体的には、経口投薬形態のような三次元プリントされた物体の一軸圧縮に関する。
【背景技術】
【0002】
(関連技術の説明)
経口投薬形態を製造するための最も一般的な方法の1つは、ダイおよび圧縮を用いて所望の形状へと粉末を圧縮することによる。この方法は、安価であり、多くの薬学に適している。圧縮される粉末は、代表的に、1つ以上の活性薬学成分(API)、薬学賦形剤(食用の不活性な物質)、および圧縮完了後に錠剤を一緒に保持するのに役立つ物質を含む。この方法により生成される投薬形態は、代表的に、均質な組成物であり、または、それらが任意の不均質性を有する場合、投薬形態は、それらが圧縮される前に粉末粒子上にコーティングを有するか、または圧縮された後に錠剤全体の周りにコーティングを有するかで構成される。このような錠剤の内部の詳細な設計または決定的な設計は存在せず、このような設計は、先行技術の圧縮された錠剤製造プロセスでは可能ではなかった。
【0003】
ときどき、薬学投薬形態を製造するために適用されるより新しい技術(これによって、投薬形態内の詳細な所定の組成のバリエーションの生成が可能になる)は、三次元プリント(3DP)である。基礎技術が、特許文献1に記載されている。図1に示される三次元プリント装置100が示される、三次元プリントにおいて、粉末の層が生成され、次いで、結合剤液と呼ばれる液滴が、インクジェットプリントと類似する技術によって粉末に対して調合される。結合剤液により濡れた場所において、粉末粒子は、互いに、そして他の固体領域と結合される。次いで、粉末の別の層が、堆積され、このプロセスが、所望の三次元物体が生成されるまで、連続層のために繰り返される。非結合粉末は、物品が十分に乾燥するまで、プリント領域を支持し、次いで、この非結合粉末は、取り除かれる。三次元プリントによる投薬形態の作製において、活性薬学成分は、プリント物品に含まれ、最も一般的には、薬学賦形剤粉末に対して調合された結合剤液に含まれる。三次元プリントは、投薬形態内の制御された物質の配置を可能にし、そしてこれを使用して、1以上のAPIの時間依存性放出、特定のpH環境などにおいてのみのAPI放出を達成する。複雑な放出プロファイルおよび/または複数のAPIを必要とする三次元プリント投薬形態は、同一人に譲渡された特許文献2に記載される。
【0004】
しかし、3DPによって作製された経口投薬形態に、幾つかの欠点が明らかとなった。1つの制限は、三次元プリント部分の表面が、代表的に、従来製造されてきた圧縮錠剤と比較して受け入れられないほど粗いというものであった。表面構造の寸法スケールは、その製造に使用される粉末層の厚さに対応する。代表的な最小粉末層厚さは、ローラーによって分散された乾燥粉末の場合で、0.04〜0.08インチ(100〜200ミクロン)である。これは、錠剤圧縮によって作製された滑らかな表面の経口投薬形態であるという消費者の予想と一致しない。粗い表面を有する経口投薬形態は、滑らかな形態よりも嚥下がより困難であり、そしてまた、粗い表面は、脆い、すなわち、粒子が取り扱いの間に破壊するという可能性を提示する。
【0005】
別の制限は、APIが、結合剤液に含まれることによって投薬形態に堆積された場合に、どれほどの量のAPIが投薬形態中に送達され得るかという点において制限があるということである。通常、APIは、結合剤液に含まれることによって送達され、そして粉末は、APIを含まない薬学賦形剤である。
【0006】
3DPにおいて、粉末は、代表的に、約50%の固体および50%の空隙率という全体の充填密度で分散される。この充填密度は、APIの最大50容量%のみ含み得る投薬形態をもたらす。APIは、溶液プリントによって投薬形態の間隙に送達され得、すなわち、APIは、粉末に調合される結合剤液中に溶解される。結合剤液が、空隙を正確に充填する場合、および例として、APIが、容量基準で20%の程度まで結合剤液に溶解する場合(実施の目的の物質のうちでかなり高可溶性である)に、結合剤液で空の空間を完全に充填し、結合剤液の揮発分の蒸発が可能になることによって、空の空間の20%は、結合剤液に溶解したAPIで充填され得る。
【0007】
結果としては、この第1のプリント後の容量分布は、50%の賦形剤、10%のAPIおよび40%の空隙である。同じ領域を再プリントすることは可能である。残りの空隙の全てが、調合された液体に到達可能であると楽観的に予想される場合、結果としては、残る40%の空隙の容量のうちの20%を充填し、蒸発後、投薬形態の容量の配分は、50%の賦形剤、18%のAPI、および空隙32%という結果となる。さらに別の再プリントが実施される場合、残る空隙の容量の別の20%が、充填され得、これにより、50%の賦形剤、24.4%のAPI含有量、および25.6%の空隙という容量配分をもたらす。このような計算は、図3にさらに示され、特定の投薬を達成するために、API濃度および飽和パラメータの対応する組が、必要であるということを一般的に示す。
【0008】
3DPにおいて、飽和パラメータは、プリント過程の間にどれほどの空隙容量が液で堆積されるかを記述し、代表的に、それは約100%以下である。かなりの量のAPIを堆積する必要があるため、図2は、所定の粉末層に対する複数回過程プリントと称するパラメータを用いて、飽和度の定義を拡張し、100%より高い値にまで拡張するように見かけの飽和度を規定する。
【0009】
図3は、5mmの直径×5mmの高さの寸法を有すると想定された投薬形態に基づく。20重量%のAPI濃度を有するAPI溶液を用いて、これらの寸法の3DPプリント物品へ100mgのAPIを堆積することが望まれる場合、図2に従って、250%の見かけの飽和度までプリントする必要がある。このことは、各領域または各層は、100%の飽和度を用いると実際に約2.5回、83%の飽和度では実際に3回プリントされ、そして結合剤液の揮発分の蒸発を間に挟む必要があることを意味する。図3は、図2と同様に計算された結果であるが、API含有領域の単位容量あたりに堆積されたAPIの集団として、正規化された様式で示された結果を示す。
3DPプリントAPI含有物品における空隙を排除するための1つの方法は、冷間等方加工プレスである。(Formulation of Oral Dosage Forms by Three−Dimensional Printing、1998年2月、Robert Palazzoloによる、Massachusetts Institute of Technologyでの修士学位論文)これは、一時的に弾性の袋またはダイに封入される物品に対して、全方向から同時に圧縮するための静水圧の使用に関する。三次元ODFの三次元圧縮は、三次元内部構造を維持し、そして三次元投薬形態の放出プロファイルを保存するために必要であると理解された。冷間等方加工プレスは、幾分かの空隙を減少させたが、これらの他の関心事に満足するほど対処できなかった。さらに、冷間等方加工プレスは、多数の不便な処理工程(例えば、プリント物品を取り囲む一時的に弾性のダイまたは袋の作製、圧力を適用するための閉じ込められた液体へのダイまたは袋の浸漬、およびダイまたは袋の取り出し)を含む。従って、冷間等方加工プレスは、大量製造には十分に適さない。また、それは、3DPの完了後に、一部の表面仕上げと比較して、改善された表面仕上げを有し、図4に示されるような表面仕上げを生じるが、表面粗さを受容可能なレベルにまでは排除していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第5,204,055号明細書
【特許文献2】米国特許第6,280,771号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、所望の程度まで空隙を実質的に排除するか、または減少させ;より多くAPIの充填を可能にし;大量製造に十分に適合し;内部構造および設計された放出プロファイルを維持し;そして三次元プリント経口投薬形態のために商業的に受容可能な表面仕上げを提供する技術がなお必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1)
投薬形態の製造の方法であって、以下:
3次元プリントプロセスを使用して投薬形態を製造する工程;および
該投薬形態を一軸圧縮する工程、
を包含する、方法。
(項目2)
前記一軸圧縮が、1方向を除く全方向から実質的に前記投薬形態を囲む制限された表面を有し、そしてその方向において圧縮軸を規定する開口部を有するダイアセンブリにおいて、製造された投薬形態を配置する工程を包含する、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記3次元プリントを使用する製造工程が、前記圧縮軸に沿って開口部にラムを動かして前記投薬形態を一軸圧縮する工程を包含する、項目2に記載の方法。
(項目4)
前記3次元プリントプロセスにおいて使用される結合剤液へ、少なくとも1つの活性薬学成分(API)を溶解する工程をさらに包含する、項目1に記載の方法。
(項目5)
空間的に不均一な組成物を作製するために、前記3次元プリントプロセスの間、前記投薬形態において、変化させた濃度または異なる量のAPIまたは他の物質を異なる場所に施与する工程を包含する、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記調剤の工程が、可変滴容量プリントを含む、項目5に記載の方法。
(項目7)
前記3次元プリントプロセスの間、前記投薬形態において内部領域(シェル組成物を有するシェルにより囲まれた内部組成物を有する該内部領域)を作製する工程をさらに包含する、項目5に記載の方法。
(項目8)
前記3次元プリントプロセスの間、結合剤液を施与する工程をさらに包含する項目7に記載の方法であって、ここで、シェルはシェル空隙率を有し、そして内部は内部空隙率を有し、そして該シェル空隙率および該内部空隙率は互いにおよそ等しい、方法。
(項目9)
各々が前記投薬形態中に個々の組成物を有する複数の領域を作製するために結合剤液を施与する工程をさらに包含する、項目5に記載の方法。
(項目10)
前記結合剤液を施与する工程が、前記投薬形態において互いの中に入れ子状である複数の領域を作製する工程を含む、項目9の方法。
(項目11)
前記投薬形態の各々の領域が空隙率を有し、そして、それら空隙率の全てが、互いにおよそ等しい、項目9に記載の方法。
(項目12)
前記投薬形態において1つ以上の物質の段階的な濃度を作製するための結合剤液を施与する工程をさらに包含する、項目5に記載の方法。
(項目13)
前記投薬形態が、幾何学的中心を有し、該投薬形態の幾何学的中心からの距離の関数として1以上の物質の濃度が変化するように、前記結合剤液が施与される、項目12に記載の方法。
(項目14)
前記投薬形態における前記空隙率が、あらゆる箇所でほぼ同じであるように、前記結合剤液が施与される、項目12に記載の方法。
(項目15)
3次元プリントによる前記投薬形態の作製工程が、粉末層の上に1つ以上の結合剤液を施与する工程を包含する、項目1に記載の方法。
(項目16)
粉末の次の層が撒かれる前に1回以上粉末層の上に少なくとも1つの結合剤液が施与され、該結合剤液が揮発性成分(結合剤液が層上に再施与される前に実質的に揮発する該揮発性成分)を含む、項目15に記載の方法。
(項目17)
前記投薬形態をコートするかまたは、カプセル中に該投薬形態を封入する工程を包含する、項目1に記載の方法。
(項目18)
前記投薬形態が、移植可能送達デバイスである、項目1に記載の方法。
(項目19)
前記投薬形態が、経口投薬形態である、項目1に記載の方法。
(項目20)
あらかじめ決定された空間的に不均な内部成分を有し、5%未満の空隙率を有する、投薬形態。
(項目21)
前記投薬形態が、3次元プリントにより製造される、項目20に記載の投薬形態。
(項目22)
前記投薬形態が、ピーク対くぼみ寸法を有する表面仕上げを有し、該ピーク対くぼみ寸法が、およそ3μm以下である、項目20に記載の投薬形態。
(項目23)
さらに、1つ以上の表面に、押し付けられた印または、浮き上げられた印を含む、項目20に記載の投薬形態。
(項目24)
前記投薬形態が、平坦末端を有する円筒状、湾曲末端を有する円筒状、平坦末端の四角柱、湾曲末端を有する四角柱、平坦末端を有する楕円柱、湾曲末端を有する楕円柱、楕円球および球からなる群から選択された形状を有する、項目20に記載の投薬形態。
(項目25)
前記投薬形態が、結合物質により共に結合する粉末粒子を含む、項目25に記載の投薬形態。
(項目26)
前記粉末が、メタクリル酸コポリマー、微晶質セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、マンニトール、キシリトール、ソルビトール、ジカルシウムホスフェ―ト、ラクトース、グルコース、ブドウ糖、フルクトースおよび他の糖からなる群より選択される1つ以上の物質を含む、項目25に記載の投薬形態。
(項目27)
前記結合物質が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、Eudragit L−100、Eudragit E−100、Eudragit RSPO、Eudragit RLPOおよびポリビニルピロリドンからなる群より選択される1つ以上の物質である、項目25に記載の投薬形態。
(項目28)
癌についての疼痛開放因子、関節炎についての疼痛開放因子;他の疾患についての疼痛開放因子;ホルモン;高血圧と闘うためのAPI;パーキンソン病と闘うためのAPI;注意欠陥障害と闘うためのAPI;喘息と闘うためのAPI;および他の疾患と闘うためのAPIからなる群から選択されるAPIを含む、項目20に記載の投薬形態。
(項目29)
前記投薬形態が、粉末粒子の大きさよりも大きなスケールのあらかじめ決定された組成物不均一性を含む、項目20に記載の投薬形態。
(項目30)
前記投薬形態が、シェル組成物を有するシェルに囲まれた内部組成物を有する内部領域を含む、項目20に記載の投薬形態。
(項目31)
前記シェルが、前記APIの放出特性に影響を与えるために選択される物質を含む、項目30に記載の投薬形態。
(項目32)
前記シェルが、非粒子画分を有し、そして前記内部は、内部非粒子性画分を有し、そして該シェルの非粉末画分および該内部非粒子性画分は、互いにおよそ等しい、項目30に記載の投薬形態。
(項目33)
各々がそれら自体の組成物を有する複数の領域を含む、項目29に記載の投薬形態。
(項目34)
前記領域が、互いの中に入れ子状である、項目33に記載の投薬形態。
(項目35)
前記投薬形態の各々の領域が、それぞれ非粉末画分を有し、それら非粉末画分の全てが、互いにおよそ等しい、項目32に記載の投薬形態。
(項目36)
前記投薬形態が、前記粉末粒子の大きさよりも大きなスケールで1つ以上の成分の組成物における勾配を含む、項目30に記載の投薬形態。
(項目37)
前記投薬形態が、幾何学的中心を有し、該投薬形態の幾何学的中心からの距離の関数として1つ以上の物質の濃度が変化する、項目36に記載の投薬形態。
(項目38)
前記投薬形態における各々の局所位置が、各々非粉末画分を含みまた、それら非粉末画分は全て、互いにおよそ等しい、項目36に記載の投薬形態。
(項目39)
前記投薬形態を覆うコーティングまたは、該投薬形態を封入するカプセルをさらに含む、項目20に記載の投薬形態。
(項目40)
前記投薬形態が、移植可能API送達デバイスである、項目20に記載の投薬形態。
(項目41)
前記投薬形態が、経口投薬形態である、項目20に記載の投薬形態。
(項目42)
3次元プリントにより作製される、一軸圧縮投薬形態。
(項目43)
前記投薬形態が、APIの所望の放出特性を生じるよう選択される空隙率を有する、項目42に記載の投薬形態。
(項目44)
前記投薬形態が、低ダイ外部形状を有するより低ダイおよびスリーブ内部形状を有するスリーブを有するダイアセンブリによって一軸圧縮され、そしてラム外部形状を有するラム、該低ダイ外部形状および該ラム外部形状の両方が、該スリーブ内部形状に関して非常にぴったり一致する、項目42に記載の投薬形態。
(項目45)
前記ラム外部形状、前記低ダイ外部形状および前記スリーブ内部形状が全て、円柱状である項目44に記載の投薬形態。
(項目46)
前記ダイが、前記投薬形態に面した低ダイ表面および該投薬形態に面した前記ラム表面、ならびに該低ダイ表面または該ラム表面あるいは両方が一般的に湾曲している、項目44に記載の投薬形態。
(項目47)
前記低ダイが、前記投薬形態に面した低ダイ表面を有し、そして前記ラムが前記投薬形態に面したラムを有し、そして該低ダイ表面または該ラム表面あるいは両方が一般的に平坦である、項目44に記載の投薬形態。
(項目48)
前記低ダイ表面および前記スリーブ内部表面ならびに前記ラムが、およそ2ミクロンのrmsに等しいかそれ以上の滑らかさである表面仕上げを有する、項目44に記載の投薬形態。
(項目49)
前記低ダイ表面またはラム表面あるいはその両方上に印を押し付けるかまたは、印を浮き上がらされる、項目44に記載の投薬形態。
(項目50)
前記投薬形態が、平坦末端を有する円筒、湾曲末端を有する円筒、平坦末端の四角柱、湾曲末端を有する四角柱、平坦末端を有する楕円柱、湾曲末端を有する円柱、楕円球および球からなる群から選択された形状を有する、項目44に記載の投薬形態。
(項目51)
前記ダイおよび前記ラムならびに前記スリーブが、すべて各々硬度を有し、投薬形態が硬度を有し、該ダイ、該ラムおよび該スリーブがすべて投薬形態の硬度よりも大きい、項目44に記載の投薬形態。
(項目52)
前記低ダイが、低ダイ表面を有し、前記ラムが、ラム表面を有し、前記投薬形態が、投薬形態上表面および投薬形態底表面を有し、該低ダイ表面が、およそ該投薬形態底表面に一致し、そして該ラム表面が、およそ該投薬形態上表面に一致する、項目44に記載の投薬形態。
(項目53)
前記低ダイおよび前記スリーブが、一体的な成分である、項目44に記載の投薬形態。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本発明は、以下の図面に記載される。
【図1】図1は、先行技術に従った三次元プリントプロセスを概略的に示す。
【図2】図2は、先行技術に従った種々のプリントパラメータの関数として、特定の寸法の圧縮されていない3DPプリント投薬形態におけるAPIの達成可能な充填を示すグラフである。
【図3】図3は、図3と同様のAPI充填データであるが、先行技術に従った、API含有容量によって正規化された形態におけるデータを示すグラフである。
【図4】図4は、先行技術に従った冷間等方加工プレスプロセスによって生成された表面の拡大断面図を示す。
【図5】図5は、本発明の原理に従った投薬形態の代表的な形状のための、3DPプリントの間に使用される層構造を示す。
【図6】図6A〜6Cは、本発明の一軸圧縮を実施するのに適したプレス、本発明の原理に従った圧縮前の錠剤形状3Dプリント物品および圧縮後に得られる投薬形態を示す。
【図7】図7A〜7Bは、本発明の原理に従った一軸圧縮前の3Dプリント物品および一軸圧縮後の対応する投薬形態の断面図を示す。
【図8A】図8Aは、本発明の原理に従った1つ以上の内部領域を含む圧縮された投薬形態の設計図を示す。
【図8B】図8Bは、本発明の原理に従った1つ以上の内部領域を含む圧縮された投薬形態の設計図を示す。
【図8C】図8Cは、本発明の原理に従った1つ以上の内部領域を含む圧縮された投薬形態の設計図を示す。
【図9】図9は、本発明の原理に従った図4と同じ軸上にプロットされた、2つの特定の実験についての一軸圧縮操作より前の、API充填の濃度を示すグラフである。
【図10】図10は、本発明の原理に従った一軸圧縮前後の2つの特定の実験についてのAPI充填の濃度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(発明の詳細な説明)
本発明において、所定の内部構造を有する三次元プリント物品は、一軸的に圧縮され、設計された内部構造を維持しながら、改善された表面特性および増加した活性薬学成分(API)の充填を提供する。本発明の局面は、改善された3DP経口投薬形態を提供し、設計された内部構成を有する完全に密な経口投薬形態を含み、所定の放出プロファイルを提供し、現在の3DP経口投薬形態と比較して増加したAPI充填をさらに含む。
(三次元プリント経口投薬形態)
三次元プリンターは、図1に示される。粉末層を拡散し、所定の位置において、結合剤液と呼ばれる液体をプリントヘッドによって粉末に対して施与させる。経口投薬形態のような投薬を作製するために、粉末は、代表的に、薬学賦形剤(すなわち、食用の不活性物質)である。図1はさらに、低速軸110上に作動可能に取り付けられた高速軸120上に作動可能に取付けられたプリントヘッド180を示す。各々がそれ自体の結合剤液140および142を分散し得る2つのディスペンサー130および132を備えるプリンタヘッド180が、示される。
【0015】
所定の位置の物品中に活性薬学成分(API)が含まれ、これは、少なくとも1つの施与される結合剤液に含まれることによって(例えば、結合剤液に溶解されることによって)施与され得る。任意の適切な型のディスペンサー(マイクロバルブ、需要ごとの圧電滴下、偏向を有する持続的ジェットが挙げられる)または他のディスペンサーが当該分野で公知であり、結合剤液を施与し得る。
本明細書に記載される特定の投薬形態設計のための2つ以上の異なる施与される結合剤液の使用は、物品および最終の投薬形態内の複数の異なる組成物または領域を可能にする。各結合剤液は、結合物質および1つ以上のAPIのいずれか、または両方を含み得る。異なる結合剤液は、1つ以上のAPIの存在下あるいは非存在下、または結合剤物質の組成または濃度、他の不活性な物質の含有量、色などで互いに異なり得る。結合剤物質は、粉末粒子を互いに結合させる物質である。
【0016】
結合を生じさせ得る1つの方法は、結合剤液の揮発分が蒸発した場合に、結合剤物質が凝固し、複数の粉末粒子に接触するか、または封入する固体を形成する方法である。結合剤液に溶解し得る可能な結合剤物質としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、Eudragit L−100(メタクリル酸およびメチルメタクリレートを基礎とするアニオン性ポリマー)、Eudragit E−100(ジメチルアミノエチルメタクレートおよび中性のメタクリル酸エステルを基礎とするカチオン性アクリル樹脂)、Eudragit RSPO(低い割合のトリメチルアンモニオエチルメタクリレートクロライドを有する中性のメタクリル酸エステルを基礎とするフィルム形成剤であり、中性エステル基に対する4級アンモニウム基の比が1:40である)、およびEudragit RLPO(同様に、1:20の比を有する)(全てRohm−Pharmaから入手可能)が挙げられる。
【0017】
結合剤液の揮発分として使用され得る可能な溶媒はとしては、水、エタノール、メタノール、イソプロパノ−ル、他のアルコール、クロロホルム、およびアセトンが挙げられる。可能な賦形剤としてはEudragit RSPO、微結晶セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、マンニトール、キシリトール、ソルビトール、リン酸二カルシウム、ラクトース、グルコース、デキストロース、フルクトースおよび他の糖類が挙げられる。さらなる例は、Arthur H.KibbeによるHandbook of Pharmaceutical Excipients、第3版、(2000)に列挙されている。粉末粒子サイズの適切な範囲は、篩によって決定され得る。
【0018】
投薬形態の可能な外部形状は、円柱状領域の各端部に円い凸面状の表面を有する円柱状であり得る。3Dプリント物品は、個々の層に対するプリントについての適切なパターンをプログラムすることでこの形状を達成し得る。この操作のための1つの構築パターンが、図5に示され、複数の層から構成される物品、この実施形態において、1つの曲面キャップ510についての9層、円柱状領域520についての25層、および他の曲面キャップ530についての9層を示す。
【0019】
図5において、円柱状に対称な投薬形態および対応する物品の対称軸は、必ずしも必要でないが、3DPプロセスにおける垂直に構築された方向に一致する。一般的に、3DPプリント物品のような投薬形態および対応する物品は、平らかもしくは円い頂部表面および底部表面のいずれかを有する円柱状、または平らな表面あるいは円い表面を有する矩形柱、または平らな表面あるいは円い表面を有する楕円柱、楕円形、球形であり得、あるいは断面の一般的な任意の形状および端部またはキャップの一般的な任意の形状を有し得る。
【0020】
3DPのようなプロセスが、物品を生成した後に、回収操作(示さず)を実施し、プリントベッド全体から物品を分離し得、これらの幾つかは、緩い粉末のままであり得る。回収工程は、例えば、ブレードによる、例えば、構築ベッドの底部付近での廃棄工程または分離工程のような操作を包含する。このことを容易にするため、緩いプリントされていない粉末の幾つかの層は、物品が、当該分野で公知のように、下にある固体表面へと突き出さないように、構築ベッドの底部に提供され得る。次いで、脱塵を実施し得る。
【0021】
脱塵工程は、3DPプロセスの終りに回収される物品の表面に緩く被着され得る粉末粒子のより細かくそして小さいスケールでの除去である。脱塵工程は、例えば、当該分野で公知のように、物品をひっくり返す工程またはそれらをガスまたは粒子保有ガスのジェットに曝す工程を包含し得る。脱塵操作は、より良い滑らかさおよび一軸圧縮の後の工程後に、投薬形態の表面仕上げの質をもたらし得る。
【0022】
回収工程後、物品は、例えば、ラム(ram)によって1方向からのプリントされた物品に対してかなりの圧縮力を作動させるのに適したプレス中の空洞へと別々に配置され得、一方、実質的に、他の全方向のプリント物品は、硬い表面に対して閉じ込められる。円柱状部分およびあるいは曲面の端部分を含む投薬形態の形状について、円柱状に対称性を有する形状全てについて、物品(例えば、3DPプリント物品)に対して一軸圧縮を実施する最も容易な軸は、円柱状軸である。物品は、円柱状の対称性または任意の対称性を欠く場合でさえ、なお、本発明に従って圧縮され得る。
【0023】
物品は、圧縮軸に沿った寸法でもって製造され得、この寸法は、予想される圧縮の程度により決定される因子によって、投薬形態の所望の最終寸法より大きくされる。圧縮軸に対して垂直な断面における物品の寸法は、ダイアセンブリの内部寸法よりほんのわずかに小さく、物品のダイ空洞への挿入を容易にし得る。圧縮軸は、3DPプリントプロセスの垂直(層−対−層)構築方向に一致し得る。
【0024】
(三次元プリント経口投薬形態の一軸圧縮)
本発明の局面に従って、改善された三次元プリント経口投薬形態が、本明細書に記載される。完全に密なODFは、所定の内部構造を予想される程度まで保持し、従って、放出プロファイル(多面的放出プロファイルを含む)が、得られ得る。さらに、ODFの一軸圧縮は、ODFの内部構造を保持しながらも、増加したAPI濃度を可能にする。
【0025】
従って、図6に示されるように、一軸圧縮の1つの実施形態は、受け入れ空洞612を有するダイ610を備え、受け入れ空洞のより低い特性は、圧縮された投薬形態の底部の所望の形状に対応する。ダイ610は、2つの密閉嵌合部、すなわち、下方ダイ620およびスリーブ630から構成され得る。下方ダイ620が、スリーブ630から分離している設計は、下方ダイ620およびスリーブ630を互いに移動させることによるプレス後に、投薬形態の突き出しを可能にする。代替的な実施形態において、一体型下方ダイ620およびスリーブ630を有する単一部品空洞を使用して、投薬形態を一軸方向に圧縮する。
【0026】
下方ダイ620は、物品660と面する下方ダイ表面622を有する。物品660に面するラム表面642を有するラム640は、下方ダイ620から離れて物品660の表面をプレスする。ダイまたは受け入れ空洞612は、その少なくとも一部の距離にわたって、一定の断面の空孔を有し得る。ラム640は、ダイ610の空孔へと密閉嵌合様式でスライドするように適合され得る。空孔およびラムは、作動軸に対して平行である円柱状対称性軸を有する円柱状対称性を有し得る。
【0027】
下方ダイ620、スリーブ630およびラム640は、重大な穴または漏れを伴うことなく、全方向からプリント物品660を密接に閉じ込め得る。
ラム640の外径または形状、およびスリーブ630の内径または形状は、密接したスライドの一致を提供するようであり得、そして、下方ダイ620およびスリーブ630が互いに別個の部分である場合、同じことが、下方ダイ620の外径または形状、およびスリーブ630の内径または形状に対して当てはまり得る。
【0028】
ラムおよびダイの非円形断面部は、対称性を有さない形状であることを含む可能性がある。ラム、ダイおよびスリーブは、互いに関して密接に一致し得、スライド動作が、近接一致部分の間で生じた場合、完全には固体でないプリント物品に面した場所のみがそれらの小さな隙間を生じる。
【0029】
表面622および表面642は、結果として圧縮投薬形態670の下表面および上表面を規定し、そして投薬形態の所望の最終形状に従って形成され得る。それらの表面のどちらかまたは両方は、投薬形態の湾曲表面を形成するために湾曲を形成され得る。あるいは、それらの表面のどちらかまたは両方は、平坦にされ得る。
【0030】
下方ダイ620、スリーブ630およびラム640、あるいは物品と接触する少なくともそれらの表面622、632および642は、3DPプロセスによって産生される物品の硬度よりもより硬くなるよう作製され得る。圧縮の間、プリント物品に接触する表面622、表面632および表面642の全ては、特定の表面仕上げの滑らかさであり得、圧縮の後、投薬形態の表面が、所望の度合または滑らかさと同様の滑らかさを生じる。
【0031】
非平滑表面は、従来の錠剤化において時々なされるように圧縮操作によって錠剤のある表面上に、識別する特徴または類似の印(商業上の仕上げとして公知)を作製するために、所望され得る。これを成し遂げるために、凸所または凹所のような形状は、下方ダイ表面622またはラム表面642あるいはその両方に組み込まれ得る。物品660は、3次元プリント命令からプリントされ得、その形状および寸法は、下方ダイ表面622およびラム表面642の形状および寸法に一致し、圧縮の間、生じるプリント材料の比較的微小な再配置を生じる。
【0032】
3DPプリント物品のような物品660が、空洞612において、配置された後、ラム640は、物品660の上に置かれ得る。本質的に全ての無駄な空間を取り除くための3DPプリントのような物品を圧縮するために適した圧力は、およそ15,000 lbf/inch2であり、圧縮軸に対して垂直な任意の断面において、空洞612の穴の断面積またはプリント物品660の最大断面積によって除算された圧縮力Pとして規定される。
【0033】
典型的な賦形剤粉末結合剤物質などについて、このような圧力は、3DPの後に残っている空隙スペースのほとんどを圧縮し得、粒子および堆積された物質の互いに対する維持または付着を生じ、ほぼ完全な密度の投薬形態を生じる。約5,000psiの範囲の低い圧縮圧力でさえこの圧力範囲は、少なくともいくつかの粉末について表面を滑らかにするのに適し、またほぼ全ての空隙を取り除くのに適すると考えられている。秒単位の圧縮時間は、所望の圧縮を達成するのに適した時間よりも大きい。空隙スペースのいくらかのみを取り除く程の圧縮は、また後に考察される。この圧縮操作は、3DPプリント物品のような物品660を投薬形態670に変換する。
【0034】
本発明は、以下の実施例によってさらに例証されるが、これに限定されない。
【実施例】
【0035】
(実施例1)
(一軸圧縮を用いた3DPの外表面平滑性の改善)
この実施例は、初めに3Dプリントによって作製された後、一軸的に圧縮される3次元プリント投薬形態の外表面を示す。物品は、既に記載されたような3次元プリント系を用いてプリントされた。薬学的賦形剤粉末、結合剤および内部プリント構造ならびにプリントヘッドは、本明細書にさらに記載される。
【0036】
3DP操作の後、3DPプリント工程において、使用される粉末層の厚さに一致するステップを含む粗表面が残され、3DPプリント物品のいくらかは、15,000psiの圧力で一軸的に圧縮される。この圧縮は、内径11mmのステンレス鋼性錠剤ダイ、および意図した輪郭の錠剤キャップ(図6に表されるものに似た1.32cmの曲率半径を有する)に一致する凹表面を有するあつらえたプランジーを用いて行われる。
【0037】
3DPプリント物品のような物品の上表面および底表面の形状は、ダイの上表面および低表面の形状に密接に一致した。3DPプリント物品のような物品に接触するダイ表面は、約1マイクロインチrmsより滑らかな表面を達成するために、2400グリット(grit)の研磨剤で研磨された。プリント物品上に押し付けられる表面622、632、642(ステンレス鋼で作製された)は全て、実質的にプリント物品またはプリント物品中に存在する任意の物質よりも実質的に硬かった。
【0038】
圧縮後の投薬形態の外部表面は、3DPプロセス単独の後に存在するものと比較して非常に改善された滑らかさを示した。実際に、圧縮後の表面仕上げは、一段階でルース粉末を押圧することにより作製された従来法で加圧成形された錠剤のような市販の代替品から得られるものと本質的に同等であった。
【0039】
図7Aは、3DPの間に使用された粉末層の厚さのサイズスケールのステップを有する、押圧前の錠剤表面の代表的な断面を示す。図7Bは、圧縮後表面に対応するODFの外部表面の断面を示す。
【0040】
未圧縮サンプルおよび圧縮サンプルの外部寸法が、デジタルカリパスで測定され、これらの測定値は表1に示された。ガードルとは、曲線状のエンドキャップを除外した軸方向における、物品または投薬形態の円筒型部分の高さをいう。
【0041】
【表1】
一軸性圧縮の間に起こった容積収縮および寸法収縮は、容積および寸法(例えば圧縮の軸に沿って測定される全高およびガードルの高さ)において約50%であった。このことは、3Dプリント物品に存在した空隙容積の圧漬に起因し得る。
【0042】
表面仕上げの改善は、加圧成形の間の粉末粒子の非常に局在的な再配列に起因し得る。本発明の圧縮された投薬形態の表面のrms(平方自乗平均)粗度は、圧縮プロセスの間に物品について加圧する表面622、632および642のrms粗度に類似すると考えられる。図7Bは、圧縮後の本発明の投薬形態の表面仕上げを示す。
【0043】
圧縮されたODFの実際の写真から、表面粗度は約2ミクロンrms(平方自乗平均)よりなめらかであると推定され得る。この表面粗度は、2〜3ミクロンの間のピーク対くぼみ寸法に相当する。これらの記述子は、投薬形態について加圧されたダイ表面およびラム表面の表面仕上げにおおよそ匹敵すると考えられる。本発明の投薬形態のこの表面仕上げは、約200ミクロンの粉末層の厚さのステップを有した、一軸性圧縮前のプリント物品の表面状態よりも顕著に優れている。
【0044】
本発明の投薬形態のこの表面仕上げは、冷間等方加工プレスよりも顕著に改善される。さらに、一軸圧縮は、優れた表面仕上げおよび増大した密度を提供する一方で、ODFの内部構造を保存する。図4のアイソスタティック(等方的)に加圧された表面の従来技術の写真において、表面の局所的なピークからくぼみ近隣の最深部までの高さの差異は、83ミクロンであると推定され得る。対応するrms(平方自乗平均)差異は、60ミクロンであると推定され得る。
【0045】
冷間等方加工プレスは、部分的に適切な表面仕上げを作製し損なう。これは、冷間等方加工プレスが、物品表面を加圧成形する、コンプライアントなエラストマーバッグまたは鋳型を含むためであり、ここで、エラストマーバッグまたは鋳型の硬度は、物品および物品に含まれる粉末粒子の硬度に満たなかった。対照的に、本発明の技術は、3DPプリント物品およびその粉末粒子のような物品よりも硬質であり得る、滑らかな超硬合金の加圧成形表面を使用する。従って、本発明の技術は、粉末粒子を加圧して、極度に滑らかな表面を与える構造にするのにより適している。
【0046】
(実施例2)
(一軸圧縮の観点で維持された、3DF ODPの内部構造の一体性)
三次元プリントは、内部構造および投薬形態の組成変動を生じる能力を提供する。従って、この実施例は、投薬形態が一軸圧縮を受けながら、3Dプリントされた投薬形態の内部構造がどのように維持され得るかを説明することを意図される。この実施例における錠剤は、実施例1における錠剤と同じであった。これらの投薬形態の外形は、湾曲した端部キャップを有する円筒形であった。
【0047】
内部組成に関する限り、これらの投薬形態は、内側API含有領域を備え、これは、図示される断面において、矩形の断面を有し、そしてその完全三次元形状は、円筒形であった。この円筒形のAPI含有領域は、外側の非API含有領域で完全に囲まれており、この非API含有領域は、内側領域によって占有されない投薬形態の残りの部分を占有した。この物品は、中心面の周りで上下の対称性および中心軸の周りでの円筒対称性を有する層状構造で構成された。図5は、例示的なODFの断面を示す。先に言及されたように、9の層が、頂部の湾曲表面510を形成し、25の中間層が、形状のガードル(girdle)520を形成し、そして9の層が、底部の湾曲表面530を形成し、合計43の層(すなわち、8.6mm)が、プリントされた高さである。中央の25の層は、最大外径、すなわち約11mmの外径を有する円筒形部分を形成する。これらの中央の25の層の各々に、外壁領域のリング(外径=11mm、内径=7mm)をまずプリントし、次いで、API含有領域(外径=7mm)の円形領域をプリントした。
【0048】
これらのサンプルを作製する際に使用した粉末は、50重量%のラクトース(53ミクロンと74ミクロンとの間の粒子サイズ)と混合した50重量%の微晶質セルロース(38ミクロンと53ミクロンとの間の粒子サイズ)であり、広げた場合の充填割合は0.428であり、そして200ミクロンの層高さを使用した。液体を、50ミクロンのオリフィス直径のオリフィスを有する連続ジェットプリントヘッドによって分配し、そして液滴を、必要に応じて荷電させて偏向させ、個々の液滴が粉末床上にプリントされるか否かを制御した。
【0049】
25層の厚さの中央部の外側領域すなわちリング領域を、5重量%のEudragit L 100のエタノール溶液でプリントした。湾曲した端部キャップ領域もまた、この結合剤液体を用いてプリントした。Eudragit L 100は、結合剤物質として働いた。この場合は、揮発性溶媒の蒸発の際に、隣接する粒子の周りで固化することによって、あるいは隣接する粒子の接触点またはその近くでネックを形成するように固化することによって、粒子を一緒に結合する物質である。1.3の飽和パラメータが、この外側領域において達成され、θ(L 100)=0.024の体積割合L 100を与えた。従って、このセクションでの空隙スペースまたは多孔性は、1−(粉末の広げた場合の充填割合)−(堆積した固体物質によって充填される割合)、すなわち、1−0.428−0.024=0.548であり、外側領域が54.8%多孔性であることを意味した。
【0050】
内側API含有領域を、API(22%濃度)を非常に低濃度のマーカー物質と共に含有する結合剤液体でプリントした。このAPI含有領域において、結合剤液体は、結合物質を実際には含有しなかった。なぜなら、粉末を実際に一緒に結合することは必要なかったからであり、これはなぜなら、物品の外側は、周囲の外側領域をプリントするために使用される結合剤物質によって、一緒に保持されたからである。
【0051】
マーカー物質は、APIの時間放出のために必要とされ得る、異なる組成の領域間の境界の容易な同定を可能にした。マーカー物質は、0.05重量%のフルオレセインナトリウム塩(Sigma Chemical Co.)であり、これは、紫外光によって照射される場合に緑色光を発光する、容易に検出可能な蛍光色素である。API含有領域についてのプリントパラメータは、25層、200ミクロンの層高さ、120ミクロンの線から線の間隔、直径7mmのAPIプリント領域、1.0の飽和パラメータまでの飽和であった。この領域のAPIの体積割合は、θ(API)=0.107によって与えられた。従って、この内側領域に残る空隙スペースまたは多孔性は、1−0.428−0.107=0.465であり、この内側領域が、46.5%多孔性であることを意味した。
【0052】
プリント後、投薬形態を完全に乾燥させ、次いで、これらのサンプルのうちのいくつかを、先に記載された11mmの直径を有するステンレス鋼錠剤ダイおよび曲率半径=1.32cmを有する凸状表面を有するカスタムプランジャーを使用して、15,000psiの圧力で一軸圧縮して、錠剤の輪郭をキャップに適合させた。次いで、全てのサンプルを、低粘度エポキシに取り付け、そして横に切り、内部の細部および表面仕上げを観察した。この材料でプリントした断面のフルオレセインは、紫外光のもとで蛍光を発し、従って、この錠剤の2つの領域間を容易に区別することを可能にする。横に切った投薬形態を、紫外光のもとで撮影し、そして蛍光特徴と非蛍光特徴との間の境界の寸法、または全体の寸法を、蛍光波長において、これらの断面の写真のピクセルの光強度のデジタル分析によって測定した。
【0053】
図7Aおよび7Bは、圧縮されていない物品および圧縮された投薬形態の断面を示す。実際の写真において、圧縮前は、明らかな境界が、1つの結合剤でプリントされた領域と他の結合剤でプリントされた領域との間に存在し、そして圧縮後は、明らかな境界がなお存在したが、わずかに異なる位置であることが見出され得た。圧縮されていない物品および圧縮された投薬形態の内部特徴を、表2に与えられるように、それらの圧縮前および圧縮後の寸法によって特徴付けた。
【0054】
【表2】
圧縮から生じる内部特徴の寸法における主要な変化は、圧縮軸に沿った寸法(例えば、蛍光領域の高さ)の収縮であった。この標準化した結果は、表1において報告されたような、外部ガードルおよび外部高さ寸法全体の標準化した変化に非常に類似する。他の主要な方向(すなわち、半径方向)において、境界が、半径方向にわずかに外向きに移動したことが見られ得、このことは、プレス操作の間に材料の再配置が存在したことを示す。
【0055】
実施例1と実施例2との両方において、内部構造は、内部構造を保存しないと推定される技術にかかわらず、内部構造が保存された。実施例1および2に示される1つの実施形態において、コア領域は、十分に堆積されたAPIでプリントされ、この領域は、シェル領域が有したよりいくらか高い固体含有量(いくらか低い空隙割合)を有した。API領域と賦形剤領域との間の境界が、圧縮の結果として半径方向にわずかに移動することを生じた。図7Aと比較して、図7Bにおいて、この境界は、同じ半径方向位置にない。それにもかかわらず、この境界は、およそ、以前にそうであったものとは、後には異なる。この圧縮プロセスの間の投薬形態の内側の材料の運動は、ちょうど一次元より大きかった。すなわち、少なくとも少しの半径方向運動が存在した。
【0056】
別の実施形態において、端部キャップ領域の形状が平坦ではない場合、一軸圧縮プロセスの間に、局所的な粉末粒子の運動のいくらかの多次元性が存在するようである。このことは、端部キャップの3DPプリントされた形状が、それが適合するダイの形状と同じであるか否かにかかわらず、事実である。従って、端部キャップの領域内であってさえも、一軸圧縮プロセスの間に、局所的な粒子運動のいくらかの二次元性が、ほぼ確実に存在し、投薬形態の主要な部分(これは、圧縮プロセスの間に起こると予測され得る限りでは、理想的な一次元形状により近い)において、領域から領域への境界のいかなる有意な乱れも存在しなかった。すなわち、この境界は、十分に維持されていた。
【0057】
表2に示されるように、材料は、高密度かつ低空隙割合の領域から、低密度かつ高空隙割合の領域へと移動した。より大きい初期多孔性を有する領域において、より多くの空隙スペースが、圧縮によってつぶされなければならず、このことは、より高密度の領域からのこの領域への材料の移動を引き起こした。プレスする前に、中央領域は、外側領域より高い密度を有した。なぜなら、中央領域の空隙スペースは、かなりの組み合わせられた濃度の種々の物質(主として、API)を含有する結合剤液体によって部分的に充填されているからであり、そしてそこの空隙割合は、46.5%であった。外側領域において、空隙空洞は、さほど充填されなかった。なぜなら、この領域は、比較的低濃度の結合剤物質のみを含有する結合剤液体によってプリントされたからであり、そしてそこの空隙割合は、54.8%であった。
【0058】
従って、一軸圧縮の軸以外の方向での材料の再配置は、圧縮の軸に沿った寸法変化よりずっと小さかったが、実際に起こった。このことは、個々の領域のそれぞれの空隙割合の理解に基づいて、説明可能である。湾曲した端部キャップの領域(これは、いくらかより複雑であり、そして多次元構造であった)において、材料のいくらかの再配置が存在したようである。これは、1方向での構造の圧縮は、より多次元の構造に起因して、他の次元での材料のいくらかの運動を付随しなければならないという点に起因する。少なくとも、いくらか一次元の円筒領域において、主要な圧縮方向以外の方向であってさえも、材料のわずかな再配置および境界の位置の移動が存在し、この境界自体は、本質的に、圧縮前の形状のままであることが観察された。
【0059】
空隙割合は、固体によって占有されていない体積の関数として定義され得る。3DPプリントされた物品のような部分は密度を有し、この密度は、その重量をその体積で除算したものである。その固体密度がいかなるものであるか(すなわち、完全に固体であり間隙を含まない場合の、その密度)を決定することもまた、可能である。純粋な物質については、固体密度は、一般的に公知であり、そして物質の混合物または組み合わせについては、固体密度は、当該分野において公知であるように、個々の成分の固体密度およびそれらのそれぞれの組成割合から、計算され得る。
【0060】
例えば、3DPプリントされた物品のような物品(粉末、何らかの結合剤物質および何らかのAPIを含み得、これらの各々は、その独自の固体密度を有する)において、理論的固体密度を計算するために、これらを合わせるための秤量平均を使用することが必要である。観察される密度と理論的な固体密度との間の差異は、何であれ、空隙を表す。空隙割合は、通常、無次元形態で表現される。すなわち、投薬形態の体積全体のどの部分も、空の空間である。この実施例の投薬形態において、記載される圧縮後に、空隙割合は、5%未満であった。
【0061】
この実施例においては、外側領域は、APIを含まず、一般に、外側領域は、内側領域の組成とは異なる任意の組成であり得る。すなわち、APIを含まなくても、または異なる濃度の同じAPIを含んでも、異なるAPIを含んでもよい。
【0062】
(実施例3)
(内部アーキテクチャに対する一軸圧縮の影響を最小にするための均一な初期空隙割合)
先の実施例において、圧縮の間、圧縮の軸に対して垂直な方向での、2つの領域間の界面または境界の、何らかの運動(この場合には、半径方向の運動)が存在した。このような運動は、投薬形態の設計段階の間に予測され得、そして投薬形態は、圧縮の間の界面または境界のこのような予測される運動を補償するように、設計され得る。先の実施例において、API/非API界面の、半径方向外向きの運動は、プリントされたAPI含有領域が比較的少ない空隙を有し、そしてプリントされた外側領域が比較的多くの空隙を有したことに起因して、両方の領域が圧縮後に結局本質的に完全に濃密になった場合でさえも、起こった。従って、内側領域より外側領域において、空隙体積のより多くの除去が起こらなければならず、そしてこのように、材料が、より濃密な領域からより密度が低い領域へと押し込まれ、そして移動しなければならなかった。しかし、境界のこのような運動が存在しないこと、および投薬形態の設計における寸法補償の必要性が存在しないことが望ましくあり得る。3DPプリントされた物品のような物品において、両方の領域が同じ初期空隙割合を有する場合、圧縮の間に、その界面または境界は、本質的に、圧縮の軸に対して垂直な方向(例えば、半径方向)で、その位置を変化させなかったと考えられた。
【0063】
従って、この実施例は、両方の領域が、プリントされる際に等しい空隙割合であるようにプリントされる場合である。内側領域は、粉末上にプリントされたAPIを含み、そして外側領域は、粉末上にプリントされた、不活性なプリント物質または結合剤物質を含む。外側領域を充填する目的は、単に結合する目的(より多くの固体物質がこの領域に堆積されることが必要とされないかもしれない)であってさえも、API領域においてと同程度まで空隙を充填することである。空隙割合のこの同等性または一致は、一軸圧縮後の界面または領域間境界を、プリント前に占有した半径方向位置または圧縮の軸を横断する平面内での位置と本質的に同じ位置に維持させることが予測される。なぜなら、空隙割合の同等性とは、圧縮の間、少なくとも極度に複雑ではない構造に対して、一軸圧縮の方向に沿った以外の任意の方向での材料の再配置または運動を本質的に必要としないはずであることを意味するからである。
【0064】
圧縮後に見られる投薬形態において、物品が3DPプリントされた場合に内側領域の界面または境界がどこであったか、あるいは圧縮の間、圧縮の軸に対して垂直な方向(例えば、半径方向)に界面または境界が移動したか否かを直接知る方法は、存在しない。圧縮後、本質的に全ての空隙スペースは、全ての領域からなくなり、そして個々の領域の空隙割合が圧縮前には何であったかは、すぐには明らかにならない。しかし、本実施例の技術が使用されたか否か、および個々の領域のこれらの空隙割合が互いに等しかったか否かを推定することは、なお可能である(すなわち、圧縮された投薬形態のそれぞれの領域の組成の測定によって)。
【0065】
圧縮後、各領域は、元の粉末である内容物の部分を有し、そしてまた、1つ以上の結合剤液体によって粉末に送達された他の固体物質の内容物の部分を有する。物品の先の段階であって、3DPの完了後であって圧縮前の段階に、各領域は、元の粉末、送達された固体物質および空隙の組み合わせを含んだ。広がった粉末床において、粉末の割合は、どこにおいても本質的に一定である。これは、粉末の一般的な広がりおよび沈降の特性、あるいは使用される特定の粉末に起因する。従って、3つの部分が均一にならなければならないので、空隙割合および送達される固体物質の割合は、互いに直接関係しなければならない。
【0066】
圧縮が全ての空隙を排除する、後の状況において、種々の領域における送達される固体物質の割合が互いに等しい場合、このことは、圧縮前には、これらの種々の領域における空隙割合もまた互いに等しかったことを示す。このことは、次に、物品を圧縮して投薬形態を形成することが、領域間の界面または境界が、圧縮の軸に対して垂直な方向で、本質的に移動することなく起こったことを意味する。このことは、圧縮プロセスの間に、界面が、圧縮の軸に対して垂直な方向で本質的に移動しないままであるという知見により生じる、設計の特別な便利さを提供する。API含有領域の場合、送達される固体物質は、少なくとも部分的にAPIであり得る。APIを含有しない領域の場合は、送達される固体物質は、結合剤物質または他の不活性物質であり得る。圧縮された投薬形態における成分の割合の一致を観察することによって、空隙の割合の一致が物品において使用されることを決定する能力は、いかに多くの領域または区画が物品中に設計されても、事実である。
【0067】
(実施例4)
(複雑な内部構造を有する3DP経口投薬形態)
この実施形態は、同様に3DPによって製造され、そして一軸圧縮によって圧縮され得るより複雑な形状を示す。1つのこのような実施例は、領域の組み合わせであり、これらの領域の各々が、入れ子の形態で、他のものの中に収容される。全ての入れ子領域は、例えば、同軸であり得る。これは、図8A〜8Cに示されている。
【0068】
図8Aは、立方体または矩形の平行六面体の形状の経口投薬形態を、頂部層820の分解図で図示する。頂部層820は、いくつかのプリントされた層を備え得るか、または単一粉末層の厚さであり得る。ODSの壁830はまた、粉末の層および結合剤液体によって作製され、従って、任意の予め決定された厚さであり得、そして様々な厚さでさえあり得る。内部構造は、入れ子状領域840および850を備える。これらの領域は、任意の予め決定された形状であり得るか、APIを含んでも含まなくてもよいか、最も近い入れ子状成分とは異なるAPIを含み得るか、またはこれらの何らかのバリエーションであり得る。
【0069】
別の可能な多領域構造は、複数の区画(この場合、2つの区画)を備え、これらの区画は、互いに入れ子になっていない。これらの各々は、異なる組成または異なる量のAPIを含有し得る。図8Bは、2つの入れ子になっていない区画860および870(これらは、矩形の平行六面体形状であり得る)を備えるような、多区画投薬形態815を示す。これらは、周囲領域836によってさらに囲まれているように示される。他の幾何学的設計(例えば、投薬形態内の、入れ子にされている配置の領域、および入れ子にされていない配置の領域の両方が挙げられる)もまた可能である。図8Cは、図8Bの線8C−8Cに沿った断面図を示す。様々な組成の隣接する領域860、870が、カプセル化領域830と共に示される。全ての場合において、3DPプリントされた物品のような物品の製造後、この物品は、複雑な内部構造を維持しながら、一軸圧縮によってなどで圧縮され得る。
【0070】
(実施例5)
(組成の内部勾配を有する3DP経口投薬形態)
これまでの実施形態は、プリントされた物品または投薬形態の内部を、不連続な領域を含み、これらの領域の各々の内部において、組成物が本質的に均一であるように記載した。3DPによって製造され得る他の可能な組成のバリエーションは、1つ以上の物質の、任意の方向での勾配を含む。
【0071】
用語均一な組成および不均一な組成および勾配は、3DPのような粉末アセンブリ製造プロセスに関して使用される場合、個々の粉末粒子の大きさより大きい大きさ規模に対して意味を有する。物品を均一な組成であると記載する際に、粉末粒子から開始して三次元プリント(3DP)によって製造される場合、この物品は、組成が個々の粉末粒子(これから物品が作製される)の大きさよりいくらか大きい大きさの規模にわたって平均される場合、均一な組成を有することを意味する。この理解は必要である。なぜなら、3DPにおいて、個々の粉末粒子は、その同一性を維持し得、一方で個々の粉末粒子間に堆積された結合剤物質もまた、例えば、揮発性液体物質の気化によって、その独自の同一性を維持し得るからである。
【0072】
従って、粒子サイズに匹敵する大きさの規模で、3DPプリントされた物品は、1つが粉末粒子から結合剤物質へ、次いで別の粉末粒子へと移動するので、不均一性を示し得るが、いくらか大きい大きさの規模において、物品は、全体が同様に製造される場合、均一な組成であるといえる。異なる区別可能な領域を有して、投薬形態が、粉末粒子より大きい大きさ規模で不均一である組成を有することもまた、可能である。不均一性は、堆積した物質の濃度または組成によって、粒子サイズより大きい大きさの規模で、投薬形態内の位置の関数として決定される。これは、後に記載される三次元プリントプロセスにおける結合剤液体の堆積の適切なプログラミングによって達成され得、そして本発明の投薬形態が特定のセットの指示に従って製造される各時点で繰り返し作製され得る。
【0073】
1つ以上の物質の組成の勾配を有する投薬形態を設計する観点で、この勾配は、APIの結合物質、または一般には、堆積した固体物質の、局所的な組成または濃度が、位置の関数としてどのように変動するかの観点で存在し得、ここで局所的な組成は、個々の粉末粒子の大きさよりいくらか大きい大きさの規模にわたって、平均されると理解される。
【0074】
任意の投薬形態は、幾何学的中心を有し、そして1つ以上の成分の濃度は、球対称を有する投薬形態の使用によってか、球対称を欠くが合理的に単純な形状(例えば、さほど極端ではないアスペクト比の円筒形または矩形の平行六面体)を有する投薬形態の使用によってかのいずれかで、この投薬形態の幾何学的中心からの距離の関数であり得る。濃度は、いくつかの可能な結合剤液体のどれが所定の位置で分散されるか、所定の結合剤液体のどれくらいが所定の位置において分散されるかなどによって、影響を受ける。組成の非類似性が作製され得る空間の寸法は、1つの分散された液滴、または類似の単位の分散された結合剤液体によって占有される体積の寸法に関連する。
【0075】
組成の勾配を達成することは、3DPプリントされた物品を構築するための指示の適切なプログラミングによって、達成され得る。このことは、特定されたディスペンサーから特定された流体を分配する工程を包含し得る。これは、ディスペンサーまたはプリントヘッドにおいて可能である場合、流体の可変液滴体積分配の使用を包含し得る。例えば、いくつかの圧電式の要求に応じた滴下(drop−on−demand)のディスペンサーは、このディスペンサーを駆動するために供給される電子波形に依存して、可変の分配体積が可能である。
【0076】
APIの勾配を含む、3DPプリントされた物品のような物品は、次いで、本発明の技術を使用して一軸圧縮され得、そして圧縮の軸に沿って既に経験した収縮を条件として、そしておそらく、圧縮の軸に対して垂直な方向で既に経験した材料の小さな再配置を条件として、組成のその空間的分布を維持する。
【0077】
圧縮の軸に対して垂直な方向での材料の小さな再配置の経験が望ましくない場合、種々の領域の空隙割合または物品全体にわたって非常に連続的な基礎での空隙割合を、実施例3においてなされたものと類似させて適合させることが可能である。このことは、どこであっても堆積されたAPIの濃度が比較的大きく、他の堆積された固体の濃度が比較的小さく、そして堆積されたAPIの濃度が特定の場所においてより小さくなるように、3DP指示をプログラミングすることによってなされ、他の堆積された固体の濃度は、堆積された固体の全濃度がおよそ一定になるように、これらの同じ位置において比較的大きいように設定される。堆積された全固体の濃度が、3DPプリントされた物品のような物品の全体にわたって全ての位置で、または3DPプリントされた物品のような物品のかなりの領域において、およそ一定である状況を達成することは、圧縮の間、この物品は、圧縮の軸に沿ってのみ本質的に収縮すること、および圧縮の軸に対して垂直な方向での材料の局所的な再配置がほぼ0であるはずであることを意味する。
【0078】
(実施例6)
(3DP経口投薬形態の一軸圧縮からのAPI濃度の増加)
実施例6は、投薬形態にパッケージされ得る活性薬学的成分の品質に焦点を当てる。この含有量は、標準化された意味で、投薬形態のAPI含有領域1ccあたりのAPIのmg(mg/cc)として表現され得る。実施例6を、結合剤液体に非常に可溶性のAPIを使用して実施した。このAPIは、ジクロフェナクナトリウム(Sigma Chemical Co.)であった。これは、結合剤液体の溶媒部分として使用されたメタノールに非常に可溶性である。この実施例の実験において、3DPプリントされる物品のような物品全体がAPIを含有し、これは、実施例2の、より複雑な2領域構成とは対照的である。この投薬形態はまた、先の実施例より単純なの形状(すなわち、平坦な端部を有する円筒形)のものであった。
【0079】
粉末床は、比重量偏差0.412の、70重量%のラクトースおよび30重量%のヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)(Methocel K4M、Dow Chemical Co.)からなるものであった。これらの錠剤にプリントされたAPI溶液は、メタノールに溶解された18重量%のジクロフェナクであり、1重量%のポリビニルピロリドン(PVP)(これは、結合剤物質として働いた)を含んだ。このAPI含有結合剤液体を、これらのプリントされた物品の全ての位置にプリントした。この物品を、16層を使用して、直径10.42mmの平坦な末端の円筒形状でプリントして、全体の高さ4.8mmを得た。
【0080】
ジクロフェナクナトリウム溶液のプリントのためのプリントパラメータは、120ミクロンの線間隔、300ミクロンの層高さ、0.97g/分の流速、50.4ミクロンのノズルオリフィス直径、150cm/秒のラスター速度、および圧電素子に対して42.0kHzの変調周波数(これは、偏向プリントヘッドを用いる連続ジェットにおける液滴の分断を刺激する)であった。飽和パラメータとは、速い軸方向での1つの液滴から液滴の間隔、遅い軸方向での1つの線から線の間隔、および垂直方向での1つの層の厚さによって規定される、単位体積をいう。飽和パラメータは、この単位体積内のどのくらいの空隙スペースが、分散された液体によって占有されているかを記載する。上記プリントパラメータが組み合わせられて、0.57の飽和パラメータを達成する。各プリントの通過には、約2分かかった。
【0081】
API物質であるジクロフェナクナトリウムを含有する4セットの物品または投薬形態を作製した。
【0082】
セット1:1回のプリント通過を使用した。各錠剤にプリントされた投薬量を、プリントパラメータに基づいて、22.08mgのジクロフェナクであると計算した。
【0083】
セット2:次いで、第一のセットの錠剤のいくつかを、15,000ポンド/インチ2(psi)の一軸圧縮下で、平坦な端部ダイを備える、内径11mmの円筒形錠剤ダイ中で、プレスした。得られたプレス錠剤は、直径11.17mmおよび高さ1.78mmであった。
【0084】
セット3:次いで、同じプリント条件を使用して、各層にAPI溶液を、第一のセットのように1回ではなく4回プリントすることによって、第三のセットの錠剤を作製した。各プリントの通過の後に、プリント通過の間に、床を約3分間乾燥させた。各層は、構築するために約15分かかった。見かけの飽和と称されるパラメータを、1層あたりのプリント通過の回数に、各個々のプリント通過の間にプリントされる飽和を乗算したものとして規定した。ここで、4×0.566、すなわち2.26の値を有した。各錠剤にプリントされた投薬量を、プリントパラメータに基づいて、88.16mgのジクロフェナクであると計算した。
【0085】
セット4:第三のセットの錠剤のいくつかを、15,000psiの一軸圧縮下で、記載されたようにプレスした。得られた錠剤は、直径11.17mmおよび高さ2.33mmであった。
【0086】
API含有量を測定するために、各錠剤を、900mLのリン酸緩衝溶液(pH7.4)に、37℃で完全に溶解させた。吸光度を、分光光度計(Beckman DU 640)を使用して、ジクロフェナクナトリウムに対する極大吸収波長(これは、275nmであった)を使用して、測定した。リン酸緩衝溶液中のジクロフェナクナトリウムの吸光度について実施した吸光度/濃度較正実験は、目的の範囲を含む広範な濃度にわたって、APIの濃度に対する吸光度の線形依存性を示した。
【0087】
この方法によって、0.57の飽和でプリントした第一のセットおよび第二のセットのジクロフェナク錠剤は、21.98mg±0.22mgのAPIを、各錠剤に含有すると測定された。この測定されたAPI量を、圧縮された錠剤または圧縮されていない錠剤の測定された外部寸法と組み合わせて、API濃度またはAPIの密度「デルタ」を、圧縮されていない物品(例えば、3DPプリントされた物品)または圧縮された投薬形態のいずれかにおいて得た。圧縮されていない単一通過錠剤は、δ=53.74mg/ccのAPI濃度を含み、そして圧縮された単一通過錠剤は、δ=115.08mg/ccのAPI濃度を含んだ。
【0088】
API濃度は圧縮によって2倍以上になった。なぜなら、圧縮前に空隙率は、半分よりわずかに少なかったからである。4回通過のプリンティングの結果として2.26の見かけの飽和でプリントされたジクロフェナク錠剤の第3および第4のセットは、同様に、各錠剤中に87.98mg±0.28mgを含むと測定された。予期され得るように、これらの錠剤は、1回通過よりむしろ4回通過でプリントされたので、API含量のこの大きさは、単回通過でプリントされた錠剤のそれのほぼ正確に4倍であった。API濃度に関する限り、非圧縮錠剤は、215.11mg/ccのAPI濃度を含み、そして圧縮錠剤は、350.52mg/ccのAPI濃度を含んでいた。
【0089】
この実験では、圧縮の結果としてのAPI濃度における改善は完全には2倍ではなかった。恐らく、この事例では、空隙スペースが、複数回通過のプリンティングによって既に幾分充填され、そしてそれ故、圧縮の前の実際の空隙率は、半分より少なかったからである。圧縮された4回通過プリントされた投薬形態を、圧縮された1回通過プリントされた投薬形態と比較すると、4回通過プリントされた投薬形態についてのAPI濃度は、圧縮された1回通過プリントされた投薬形態に対するそれの約3倍であった。従って、複数回通過の溶液プリンティングにおいて利点がある。なぜなら、圧縮によって空隙容積が除去される前に、初期空隙容積のより多くをAPIで充填することを可能にするからである。あるいは、換言すれば、所定量の賦形剤粉末に対してより多くのAPIが堆積される。
【0090】
表3は、ジクロフェナク溶液を用いる投薬形態の製作からの結果を要約する。
【0091】
【表3】
図9は、図3に提示されたように算出されたδ輪郭をもつ同じ形態上に付加された、この実施例中の実験における非圧縮錠剤に対する、単位容積あたりの実験的に測定された用量(δ)の結果を示す。図9は、この実施例で記載される実験について圧縮前後の両方で達成されたδ値を示す。圧縮することは、同じ用量について容積を低減することによりAPI濃度を増加する。図10中の矢印は、錠剤が圧縮されるとき、各実験でどのようにδの値が変化するかを示す。
【0092】
当初は3DPにより作製された物品の一軸圧縮が、固定された用量に対する錠剤容積を減少することによりAPI濃度の値(デルタ)が多いに増加したことが観察され得る。溶液プリントされた用量について得られた「デルタ」の最高値は、4×プリントおよび一軸圧縮された両方の投薬形態について351mg/ccであった。粉末の初期空隙率およびAPI物質の物理的性質のような、この実験で用いた条件について、達成可能なAPI濃度の理論的限度は、580mg/ccであった。この理論的限度は、当初に分与された粉末粒子間の空隙スペースのすべてがAPIで充填された場合に起こることを示し、次いで、これが、圧縮を不必要にし得る。なぜなら、除去すべき空隙スペースがないであろうからである。圧縮された投薬形態ではまた、本質的に空隙がないが、より小さな%の堆積されたAPIが存在する。なぜなら、不完全な充填があり、そしてそれ故、より大きな%の、そして理論的に制限される事例におけるより粉末が存在したからである。従って、この事例の最高に達成された「デルタ」は、理論的限度の約60%であるAPI濃度を達成したことを示す。
【0093】
(実施例7)
(ODFの放出プロフィールの一貫性の改良)
目的であり得る、本発明の投薬形態は、図5および図10中に示されるように、シェルによって取り囲まれるAPIを含む内部領域を含み得る。このシェルは、この内部領域に含まれるAPIの放出プロフィールに影響し得る。患者によって心地よく受入れられ得る投薬の全体の寸法に対する制限を考慮すると、このシェルは、約1mmまたは恐らく2mmの最大厚さのようなその厚さに関する制限を有し得る。
【0094】
非圧縮3DP ODFにおいて、このシェル厚さに対応する滴またはボキセル(voxel)の数は、2〜10滴またはボキセルの範囲のある点であり得る。非圧縮3DP ODFにおいて、特に、滴またはボキセルの数がこの範囲の下限にある場合、製造の時、または胃腸管におけるある長さの滞留時間の後のいずれかにおいてシェルを通じるピンホール漏れの可能性がある。ピンホール漏れは、シェルの1つの側面から他の側面までのシェルの厚さを横切る経路を形成する本質的に連結された空隙スペースである。シェル中の任意の場所における1つまたは小数のピンホール漏れでさえ、意図した放出プロフィールとは異なる特定の投薬形態からのAPIの放出プロフィールを引き起こし得る。高圧、例えば、5%より小さい最終空隙率まで物品を圧縮するに十分な圧力を用いて、3DPプリント物品のような物品の圧縮が、存在し得る本質的にすべてのピンホール漏れまたは可能なピンホール漏れを圧縮およびなくすに十分にシェル領域を圧縮し得る。
【0095】
従って、3DPのような詳細な製造プロセス後の一軸圧縮のような圧縮は、投薬形態の薬物放出プロフィールの一貫性を改善し得ると考えられる。圧縮はまた、APIへの体液の低減した接近に起因して、非圧縮状況に対応するより遅い全体の放出速度を生じ得る。シェルは、所望の速度で消化液中に溶解または分解する物質、または特定pHの流体中でのみ溶解または分解する物質を含み得る。
【0096】
(実施例8)
(3DP経口投薬形態の部分的圧縮の効果)
ここまでの実施例は、既に記載されているように、3DPプリントされた物品のような物品の製造後、物品を、本質的にすべての空隙スペースをなくし、かつ本質的に完全に密である投薬形態を生じるに十分大きな圧縮力を用いて圧縮され得ることを記載している。しかし、これは、3DPのような製作プロセスの後に圧縮を用いる唯一の可能な方法ではない。一般に、任意の型の投薬形態からの任意のAPIの放出速度は、投薬形態の間隙率、または特に投薬形態がシェルを含む場合シェルの間隙率により顕著に影響される。孔は、体液が投薬形態の部分に接近し、かつそれを溶解する経路を提供する。
【0097】
一軸圧縮プロセスは、物品または投薬形態の間隙率が、広範な範囲内で任意の所望の値を有し得るように調節され得る調節可能なパラメーターを提供する。最終の間隙率は、多くても、3DPプリント物品のような物品中の間隙率である間隙率を有さなければならない。圧縮後の最小の間隙率の可能な値は、本質的にゼロの間隙率であり得る。特定の目的には、完全な厚密よりむしろ、中間の値の間隙率が所望され得る可能性がある。この中間の値は、圧縮のいくつかの利点が得られ、そして投薬形態の得られる放出プロフィールが、所望の放出プロフィールであるように選択され得る。部分的に厚密された投薬形態の放出プロフィールは、完全厚密について生じるより速いと予期され得る。圧縮が完全密度より小さく実施されるだけであっても、恐らくは表面仕上がりにおける有意な改善がなお存在する。
【0098】
(さらなる論議)
本発明により製造された投薬形態は、経口投薬形態であり得る。これはまた、一般に、移植可能なデバイスを含む任意のタイプの投薬形態であり得るが、これに限定されるわけではない。本発明により作製される投薬形態はまた、嚥下の容易さのために湿っているとき滑り易いようになる表面を提供するコーティング、マーキング、ゼラチンカプセルなど中にパッケージされるような、加工後ステップを与えられ得る。
【0099】
本発明の投薬形態で用いられ得るAPIは、現存する投薬形態による投与に適切な本質的に任意のタイプのAPIを含む。特に、APIは、癌の鎮痛剤、関節炎の鎮痛剤およびその他の疾患用の鎮痛剤;ホルモン;高血圧、パーキンソン病、注意欠陥障害、喘息およびその他の疾患と戦うAPIを含む、すべてがAPIの放出プロフィールの詳細な制御から利益を受け得る種々のタイプの鎮痛APIを含み得る。単一の投薬形態中に1つより多くの活性薬学的成分を取り込むことが可能である。1つより多くのAPIをバインダー液体中に溶解することが可能である。
【0100】
分散バインダー液体で活性薬学的成分を分散する代わりに、活性薬学的成分を拡散される粉末と混合し、そしてバインダー液体によって結合することが可能であり得る。次いで、一軸圧縮工程がこれに続く。これは、投薬形態の内部内で組成の変動が必要でない状況に主に適切であり得、そしてこの薬剤は実際に高価ではない。
【0101】
任意の複数回通過プリンティングにおいて、同じ層上への液体の次の分与前に分与された液体の完全な乾燥を有することが所望され得るけれども、次の層の拡散前に完全な乾燥よりもほぼ完全な乾燥を提供することがより時間的に効率が良いであろうし、そして実際、それは、より良好な層と層との接着を促進することによりなおより良好であり得る。次のプリンティングのために飽和パラメーターの適切な選択が、適切なタイミングに沿ってなされ得る。
【0102】
一般に、任意のタイプのプリントヘッドが本発明とともに用いられ得る。これには、マイクロバルブ、圧電ドロップオンデマンド、偏向を備えた連続ジェット、そしてまた含まれる物質が熱的に損傷されない場合、沸騰(バブル−ジェット)プリントヘッドが含まれる。バインダー液体の分与は、しばしば、別個の滴の分散により生じると考えられ得るが、これは実際にそうである必要はない。分与は、別個の滴、または接続された滴、また連続流れ、または一般に任意の外観の液体流れである流体流れで実施され得る。
【0103】
一軸圧縮の技法は、従前に可能であったより、3Dプリントされた投薬形態におけるAPI濃度のより大きな値を達成する可能性を与え、そしてそれ故、3DPを、この目的のためにそれが従前あったより魅力的にする。API充填に関する制限は、長年、経口投薬形態を作製するための3DPの使用に関する制限として考えられてきた。APIは、それらの効目、または投薬形態中にパッケージされなければならないAPIの量が広範に変動するが、いくつかのAPIについて、API充填における改良、または本発明により達成可能な濃度は、そのAPIについて、実施可能な3DPと実施不能な3DPとの間の差異をなし得る。さらに、本発明は、投薬形態内に組成変動の配置に関する3DPのすべての利点を維持しながら、乏しい表面仕上げの問題を完全に解決し得る。本発明の一軸圧縮プロセスはまた、大量生産に迅速かつ良好に適合している。
【0104】
本明細書に引用されるすべての参考文献は、それらの全体が参考として本明細書に援用される。
【0105】
先行する記載から、本発明の詳細な実施形態が例示の目的のために本明細書に記載されているが、その種々の改変および組み合わせが、本発明の思想および範囲から偏移することなくなされ得ることが認識される。従って、本発明は、添付の請求項によることを除いて制限されない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書中に記載の発明。
【請求項1】
本明細書中に記載の発明。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2010−227590(P2010−227590A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−126354(P2010−126354)
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【分割の表示】特願2003−539924(P2003−539924)の分割
【原出願日】平成14年10月29日(2002.10.29)
【出願人】(596060697)マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジー (233)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【分割の表示】特願2003−539924(P2003−539924)の分割
【原出願日】平成14年10月29日(2002.10.29)
【出願人】(596060697)マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジー (233)
【Fターム(参考)】
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