説明

三次元形状測定装置用プローブ及び三次元形状測定装置

【課題】鉛直面及び水平面いずれについても小さい測定力による測定を可能とする。
【解決手段】三次元形状測定装置用プローブ1は、取付用部材2、揺動部3、連結機構、アーム取付部120、及び板バネ9A,9B、及び取付用部材2を備える。アーム取付部120にはスタイラス121が下端に配置されたアーム122が垂下して取り付けられている。アーム取付部120は板バネ9A,9Bを介して揺動部3に保持されている。揺動部3は連結機構によって水平方向に傾動可能に取付用部材2に連結されている。揺動部3の可動側磁石と取付用部材2の固定側磁石との間の磁気的吸引力によりアーム122が鉛直方向に延びる中立位置に揺動部3を復元させる復元力が作用する。鉛直面測定時の測定力は可動側磁石との間の固定側磁石の磁気的吸引力により得られる。水平面測定時の測定力は板バネ9A,9Bが鉛直方向に撓むことで得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元の形状を高精度及び低測定力にて走査測定する三次元形状測定装置用プローブ及びそれを備える三次元形状測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
測定物の外側面、内側面、及び穴径等を測定可能な従来の三次元形状測定装置用プローブ(以下、プローブという。)としては、特許文献1に開示されたものがある。図24及び図25は、特許文献1に開示されたプローブの構成を示す。
【0003】
図24及び図25のプローブ301は、三次元形状測定装置(以下、形状測定装置という。)401に取り付けられる取付用部材302、揺動部303、及び連結機構304を有する。揺動部303は下端にスタイラス321を有するアーム322を備える。また、揺動部303の中心部には、形状測定装置401が発する測定用レーザ光411を受けるミラー323が固定されている。連結機構304によって、固定された部材である取付用部材302に対して揺動部303が揺動可能に連結されている。連結機構304は、取付用部材302が備える載置台341と、この載置台341に形成された円錐溝341aに尖端が嵌入される揺動部303側の支点部材342とを備える。揺動部303は、支点部材342の尖端と円錐溝341aとの接触部分を揺動中心として揺動可能である。揺動部303が揺動することで、アーム322が水平方向(図においてX,Y方向)に自在に傾斜可能となっている。
【0004】
揺動部303の上部には、4個の可動側磁石351が同一半径上に等間隔に取り付けられている。また、取付用部材302には、4個の固定側磁石352がそれぞれ可動側磁石351の鉛直方向下側に位置して対をなすように取り付けられている。可動側磁石351と固定側磁石352は、個々の対について互いに吸引力が働く向きに固定される。揺動部303が水平方向に傾いた場合、可動側磁石351と固定側磁石352の距離が遠ざかることになり、磁石の性質により、一対の磁石を互いに近づける方向に復元力が働く。その結果、揺動部303全体に対して傾きを戻す方向の復元力が働く。同様に、揺動部303が支点部材342の尖端を中心として鉛直軸まわりに回転した場合、可動側磁石351と固定側磁石352間の磁力により、揺動部303に対して回転を戻す方向の復元力が働く。これらの磁気的な復元力により、非測定時の揺動部303は、アーム322の延在方向が鉛直方向に一致する姿勢で保持される。
【0005】
測定物360の被測定面361の形状測定は、スタイラス321の先端を被測定面361に対して微小な押圧力(測定力)で押し付けて行われる。この測定力は以下のようにして生じさせる。スタイラス321を被測定面361に接触させた状態で取付用部材302を測定物360側へ僅かに移動させると、揺動部303が傾斜する。揺動部303が傾斜すると、可動側磁石351と固定側磁石352の吸引力により、アーム322が鉛直方向に延在する初期状態の中立位置へ揺動部303を復元させる復元力が生じる。この磁気的な復元力により、スタイラス321を被測定面361に対して押し付ける測定力が生じる。
【0006】
一般に、形状測定装置は、スタイラス321を測定物360の被測定面361に接触させ、測定力がほぼ一定となるように制御しつつ、プローブ301を測定物360の被測定面361に沿って相対的に移動させて、被測定面361の表面形状を測定、演算する。図24及び図25に示すプローブ301を備える形状測定装置401の場合、プローブ301を被測定面361に沿って移動させつつ、測定用レーザ光411を揺動部303に固定されたミラー323に照射し、その反射光からミラー323の僅かな傾き、すなわちスタイラス321の位置変化を測定する。
【0007】
図24及び図25に示すプローブ301により、測定物360の鉛直方向又は略鉛直方向に延在する面(鉛直面)を高精度で測定できる。しかし、このプローブ301が備えるスタイラス321を含む揺動部303は、水平方向には揺動可能であるが、鉛直方向には可動ではない。前述のように、このプローブ301では揺動部303を傾けることで測定力を生じさせている。従って、図24に示す測定物360の頂端面のように測定物360の水平方向又は略水平方向に延在する面(水平面)に対して、測定力を働かせた状態でスタイラス321を接触させることができない。このように、図24及び図25に示すプローブ301では、測定物360の水平面の形状測定は不可能である。
【0008】
水平面と鉛直面の両方を測定可能なプローブとしては、特許文献2に開示されたものがある。図26は特許文献2に開示されたプローブの構成を示す。
【0009】
図26に示すプローブ403は、形状測定装置に取り付けられる取付部402、この取付部402に外周が固定された2枚の薄板423、上端側が2枚の薄板423の中央に固定されて下端にスタイラス421を備えるアーム422、及びアーム422の上端面に固定されたミラー423を有する。アーム422は、薄板423が弾性的に撓むことで水平方向の揺動と鉛直方向の移動の両方が可能である。従って、このプローブ403では、鉛直面と水平面のいずれに対しても、測定力を働かせた状態でスタイラス421を接触させることができる。形状測定装置から照射される測定用レーザ光411の反射光からミラー423の揺動角度と移動量を測定することで、水平面及び鉛直面のいずれであっても形状測定が可能である。
【0010】
高精度の形状測定のためには、被測定面に対してスタイラスを押圧する測定力を小さくする必要がある。図26に示すプローブ403の場合、測定力を小さくするためには、薄板423の厚みを薄くし、アーム422の揺動及び鉛直方向の移動に対する薄板423の剛性を小さくする必要がある。しかし、薄板423の厚みを薄くして低剛性とすると、鉛直面測定時にスタイラス421に作用する測定力の反力の水平成分で薄板423が水平方向に変形する。この薄板423の水平方向の変形に伴ってアーム422の上端面に固定されたミラー423も水平方向に変位して測定誤差となる。測定力を小さくするために薄板423を薄くする程、薄板423の剛性不足に起因する鉛直面測定時のミラー423の水平方向の変位も大きくなる。このように図26のプローブ403では、高精度の形状測定のために押圧力を小さくすることと、鉛直面測定時の測定誤差防止とを両立させることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第2007/135857号
【特許文献2】特開2008−292236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、三次元形状測定装置用プローブ及び三次元形状測定装置において、鉛直面及び水平面のいずれについても小さい測定力による測定を可能とすると共に、鉛直面測定時の測定力の反力の水平成分によるプローブ自体の変形を低減し、高精度での測定物の形状測定を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の三次元形状測定装置用プローブは、測定物の被測定面に接触するスタイラスが下端に配置されたアームが垂下して取り付けられ、かつミラーが取り付けられたアーム支持部と、前記アーム支持部が取り付けられ、弾性変形によって前記アーム支持部を鉛直方向に微小移動させ、鉛直方向の剛性よりも水平方向の剛性が大きい弾性部と、前記弾性体を保持する揺動部と、三次元形状測定装置に取り付けられる取付部と、前記揺動部に設けられた支点部と、前記取付部に設けられて前記支点部が載置される載置部とを備え、前記支点部を支点として揺動可能に前記揺動部を前記取付部に連結する連結機構と、前記揺動部に設けられた可動側部材と、前記取付部に設けられて前記可動側部材に対して鉛直方向に間隔を隔てて対向する固定側部材とを備え、前記可動側部材と前記固定側部材は磁気的吸引力を発生するように構成され、当該磁気的吸引力により前記アームが鉛直方向を向くように前記揺動部を付勢する付勢機構とを備える。
【0014】
スタイラスを備えるアームが取り付けられたアーム支持部は、弾性部を介して揺動部に保持されている。揺動部は連結機構により取付部に連結されている。揺動部は連結機構により揺動可能であり、付勢機構によってアームが鉛直方向を向くように磁気的に付勢されている。測定物の鉛直方向又は略鉛直方向に延在する面(鉛直面)の測定時には、揺動部が揺動することでアーム支持部と共にアームが傾き、付勢機構が生じる磁気的吸引力が揺動部に働くことでスタイラスから被測定面に対して測定力が作用する。一方、測定物の水平方向又は略水平方向に延在する面(水平面)の測定時には、弾性部が弾性変形することでアーム支持部と共にアームが鉛直方向上向きに移動し、弾性部が生じる弾性的な付勢力がアーム支持部に働くことでスタイラスから被測定面に対して測定力が作用する。従って、本発明の三次元形状測定装置用プローブは、鉛直面と水平面の両方の形状測定が可能である。
【0015】
鉛直面測定時の測定力は、連結部によって取付部に揺動可能に連結された揺動部が付勢機構の磁気的吸引力で付勢されることで生じる。従って、小さい測定力により鉛直面の形状測定が可能である。
【0016】
水平面測定時の測定力は、弾性部が弾性変形することで生じる弾性的な力がアーム支持部を付勢することで生じる。弾性部の鉛直方向の剛性は下端にスタイラスが配置されたアームとアーム支持部の重量とを支持できる程度あればよい。つまり、弾性部が支持する必要がある重量が軽い。そのため、弾性部の鉛直方向の剛性を小さくして、弾性部の弾性変形によって生じる付勢力を小さくできる。従って、小さい測定力で水平面の形状測定が可能である。
【0017】
以上のように、本発明の三次元形状測定装置用プローブは、鉛直面及び水平面のいずれについても小さい測定力による高精度の測定が可能である。
【0018】
弾性部は鉛直方向の剛性よりも水平方向の剛性が大きい。水平方向の剛性を十分大きく設定することで、鉛直面測定時にスタイラスに作用する測定力の反力の水平成分による弾性部の水平方向の変形を低減し、測定物の鉛直面の形状を高精度で測定できる。
【0019】
例えば、前記弾性部は単一の板バネで構成される。
【0020】
弾性部を板バネで構成することで、鉛直方向の剛性に対して水平方向の剛性を大きく設定できる。
【0021】
好ましくは、前記弾性部は上下方向に間隔を隔てて配置された2枚以上の板バネを備える。
【0022】
弾性部を2枚以上の板バネで構成することで、鉛直方向の剛性に対して水平方向の剛性を十分大きく設定できる。
【0023】
特に、前記スタイラス、前記支点部、及び前記ミラーは同一軸上に配置され、前記ミラーは前記スタイラス及び前記前記支点部よりも上方に配置され、前記弾性部を構成する前記2枚の板バネは、前記支点部が前記載置部に載置された位置に対して一方が下方に配置されて他方が上方に配置されることが好ましい。
【0024】
鉛直面測定時にスタイラスに作用する測定力の反力の水平成分によって弾性部を構成する2枚の板バネに水平方向の微小な変形が生じた場合、アーム長さに応じて2枚の板バネの変形によるスタイラスの回転中心の位置は異なる。しかし、支点部を上下に挟むように2枚の板バネを配置することで、2枚の板バネの変形による回転中心が支点部の尖端近傍となる。その結果、測定力の反力の水平成分による2枚の板バネの変形に起因する測定誤差を低減できる。特に、弾性部を構成する2枚の板バネを支点部の尖端をほぼ均等な位置で上下に挟むように配置することが好ましい。
【0025】
前記板バネは、前記アーム支持部が取り付けられる中心部と、この中心部から放射状に延びて先端が前記揺動部に固定される複数の梁状部とを備える。
【0026】
この構成により、水平方向の複数の向きの弾性部の剛性を大きくできる。特に、複数の梁状部を等角度間隔で設けることで、水平方向のすべての向きについて弾性部の剛性を大きく設定できる。例えば、平面視で十字形状をなすように4個の梁状部を中心部から放射状に設ける。
【0027】
あるいは、前記板バネは、前記アーム支持部が取り付けられる中心部と、前記揺動部に固定される外周部と、それぞれ前記中心部と前記外周部を連結する非直線状の連結部とを備える。
【0028】
この構成により、前記アーム支持部が取り付けられる中心部と、この中心部から揺動部までの経路を長くすることにより、鉛直方向の剛性をより小さく設定できる。
【0029】
前記板バネに取り付けられ、かつ前記板バネの振動特性に合わせた形状を有する粘弾性体を備えてもよい。
【0030】
測定面の性状や測定装置自体の振動等の影響により、弾性部の剛性が低いことに起因した振動が発生し、測定誤差を生じる場合がある。粘弾性体を板バネに取り付けることで、測定誤差の原因となる振動を抑制できる。
【0031】
前記可動側部材と前記固定側部材はいずれも永久磁石で構成され、異極が互いに対向するように配置される。
【0032】
代案としては、前記可動側部材と前記固定側部材は、一方が永久磁石で構成され、他方が磁性体で構成される。
【0033】
前記連結機構の前記載置部は上部に円錐溝を備え、前記連結機構の前記支点部は鉛直方向下向きに突出する針状の突起で構成され、前記円錐溝の最深部と前記支点部の尖端との接触部を揺動中心として前記揺動部が前記取付部に揺動可能に連結されている。
【0034】
前記アーム支持部は中央に横方向に延在する貫通穴が設けられ、前記連結機構の前記載置部は前記貫通穴を貫通して延在する。
【0035】
前記揺動部は、前記支点部に対して前記スタイラスと反対側に延在する延伸部と、前記延伸部の先端側に設けられて前記可動側部材を保持する可動側保持部とを備え、前記取付部は、筒状の本体と、この本体内に前記可動側保持部に対して前記支点部側に設けられて前記固定側部材を保持する固定側保持部とを備える。
【0036】
具体的には、前記可動側保持部はリング状に構成され、その下面側に複数の前記可動側部材を互いに間隔をあけて保持し、前記固定側保持部は、個々の前記可動側部材と鉛直方向に対向する位置にそれぞれ配置された複数の前記固定側部材を保持する。
【0037】
本発明の三次元形状測定装置は、測定用レーザ光を反射するミラーを前記アーム支持部に有する上述の三次元形状測定装置用プローブと、前記測定用レーザ光を発生するレーザ光発生部と、前記測定用レーザ光が前記ミラーで反射された反射光に基づいて測定物の被測定面における測定点の位置情報を求める測定点情報決定部とを備える。
【0038】
前記測定点情報決定部は、前記揺動部の傾斜角度を前記反射光から検出する傾斜角度検出部と、前記傾斜角度検出部から得られた角度信号を前記取付部に対する前記スタイラスの変位量に変換するスタイラス位置演算部と、前記測定点の前記取付部に対する位置座標値を前記反射光から求める位置座標測定部と、前記位置座標値に前記スタイラスの変位量を加算して前記測定点の位置情報を求める加算部とを備える。
【0039】
前記傾斜角度検出部は、前記反射光を受光する光検出器を有し、この光検出器は、それぞれ独立して光電変換を行う複数の受光領域に区画された一つの受光面を有する。
【発明の効果】
【0040】
本発明の三次元形状測定装置用プローブ及び三次元形状測定装置によれば、鉛直面及び水平面のいずれについても小さい測定力による測定が可能であり、かつ測定力の反力の水平成分による弾性部の水平方向の変形を低減できるので、高精度で測定物の形状を測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施の形態における三次元形状測定用プローブの斜視図。
【図2】図1における三次元形状測定用プローブの下面図。
【図3】図1における三次元形状測定用プローブをB−B面で切断したときの斜視図。
【図4】図1における三次元形状測定用プローブをA−A面で切断したときの斜視図。
【図5】図1における三次元形状測定用プローブの平面図。
【図6】固定側保持部材の構成を示す図。
【図7】図1における三次元形状測定用プローブをC面で切断したときの斜視図。
【図8】長方形の板バネを使用したときの三次元形状測定用プローブをC面で切断したときの斜視図。
【図9】代案の三次元形状測定用プローブの斜視図。
【図10】図9の縦断面図。
【図11】図9における代案の三次元形状測定用プローブをA−A面で切断したときの斜視図。
【図12】図11における代案の三次元測定用プローブをB−B面で切断したときの斜視図。
【図13】図1に示すプローブを備えた形状測定装置の一例を示す図。
【図14】図13に示す形状測定装置に備わる測定点情報決定部の構成を示す図。
【図15】図13に示す測定点情報決定部に備わる傾斜角度検出部の平面図。
【図16】前記傾斜角度検出部に対してプローブからの反射光が照射される状態を説明するための図。
【図17】図1に示すプローブにて被測定面の測定を行うときのプローブの傾斜角度を説明するための図であり、測定物を平面図にて表した図。
【図18】図1に示すプローブにて被測定面の測定を行うときのプローブの傾斜角度を説明するための図であり、測定物を側面図にて表した図。
【図19】図1に示すプローブの板バネが1枚の時の撓みの模式図。
【図20】図1に示すプローブの板バネが2枚の時の撓みの模式図。
【図21A】2枚の板バネがいずれも支点部材の尖端より上方に位置する構成を示す模式図。
【図21B】2枚の板バネが支点部材の尖端を上下方向に挟むように位置する構成を示す模式図。
【図22】図1に示すプローブにて測定可能な測定物の一例の斜視図。
【図23】図22に示す測定物の断面図。
【図24】従来の形状測定装置用プローブの一例の斜視図。
【図25】図24の形状測定装置用プローブを対称面で切断したときの斜視図。
【図26】従来の形状測定装置用プローブの他の例の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明の実施の形態における三次元形状測定装置用プローブ(以下、プローブという)と、三次元形状測定装置(以下、形状測定装置という)について、図を参照しながら詳細に説明する。
【0043】
まず、図1から図8を参照してプローブ1について説明する。図1はプローブ1の外観を示す斜視図である。図2は、図1を鉛直下方向から見た図である。図3は、図1のB−B面でプローブ1を切断したときの斜視図である。図4は、図1のA−A面でプローブ1を切断した斜視図である。図5は図1を鉛直上方向から見た図である。図6から図8はプローブ1の一部の詳細を示す図である。
【0044】
プローブ1は形状測定装置201に備わり、測定対象となる測定物60の被測定面61a,61bに接触する部分を有する。図24及び図25に示す従来のプローブ301では、アーム322がX,Y方向を問わずいずれの水平方向にも傾斜可能とする構成を有するが、鉛直上下方向に移動が不可能であるのに対し、本実施形態のプローブ1は、アーム122が鉛直上下方向にも移動可能とする構成を有する。
【0045】
プローブ1は、取付用部材(取付部)2、揺動部3、及び連結機構4を備える。
【0046】
取付用部材2は、形状測定装置201に固定され、又は着脱可能に取り付けられるブロック部材である。取付用部材2は、揺動部3が揺動するのに対し、固定された部材であり、形状測定装置201から照射される測定用レーザ光211を通過可能とし、当該取付用部材2を貫通するレーザ光用開口111を中央部に有する。取付用部材2は図において上部の小径部2aとその下側の大径部2bを備える。レーザ光用開口111は小径部2aと大径部2bを貫通するように設けられている。大径部2bの最下端は閉鎖板5によって閉鎖されている。閉鎖板5には1個のレーザ用貫通孔5aと2個の揺動用貫通孔5bが形成されている。また、閉鎖板5の下面から下向きに突出する一対の支持軸6が設けられている。支軸部6の下端側には、水平方向に延びる角柱である載置台41の端部がねじ43によって固定されている。
【0047】
揺動部3と取付用部材2は、連結機構4により連結されている。連結機構4は、後述するミラー123に照射される測定用レーザ光211の光軸211aに対して交差するいずれの方向にも揺動部3を傾斜させて揺動可能となるように、揺動部3を取付用部材2に支持する機構である。なお、本実施形態では、光軸211aは、鉛直方向であるZ軸方向に一致する。
【0048】
本実施形態において、連結機構4は、支持軸6と閉鎖板5を介して取付用部材3に固定された載置台41と、揺動部3が備える支点部材42とにより構成されている。載置台41は、その上面に円錐形の溝41aが形成されており、鉛直方向下向きに突出する針状の突起で構成された支点部材42の尖端が当該溝41aに嵌入する。両者の嵌入時においては、載置台41の円錐溝最下点に支点部材42の尖端位置が接触するように構成される。このような構成とすることによって、揺動部3と取付用部材2とは、支点部材42と円錐溝41aとの接触部分を揺動中心として、揺動可能に連結される。なお、揺動部3は、支点部材42が載置台41の溝41aに嵌入して連結した場合、アーム122が鉛直方向を向くように、重心が支点部材42の先端を通る鉛直軸に位置するように構成されていることが好ましい。
【0049】
揺動部3はアーム取付部(アーム支持部)120を取り付けた2枚の板バネ(弾性部)9A,9Bを保持する。つまり、アーム取付部120と揺動部3の間に板バネ9A,9Bが介在している。
【0050】
本実施形態におけるアーム取付部120は、下梁部120a、この下梁部120aの上方に間隔を隔てて配置された上梁部120b、下梁部120aと上梁部120bの両端を連結する一対の縦梁部120cを備える。アーム取付部120の下梁部120aの下面には、測定物60の被測定面61a、61bに接触するスタイラス121を下端に有するアーム122が垂下して取り付けられている。また、アーム取付部120の上梁部120bの上面には、取付用部材2を通過した測定用レーザ光211を反射するミラー123が取り付けられている。スタイラス121、支点部材42の尖端、及びミラー123は同一軸(アーム122の軸線)上に配置されている。測定用レーザ光211は、取付用部材2のレーザ用開口111、レーザ用貫通穴5aと、後述する貫通穴12a,9cとを介してミラー123に入射し、その反射光は逆の経路をたどる。後に詳述するように、アーム取付部120は、被測定面61a,61bの形状に応じたスタイラス121の変位に対応して、取付用部材2に対して揺動及び鉛直方向に上下動する部材である。
【0051】
アーム取付部120の中央には、下梁部120a、上梁部120b、及び縦梁部120cで囲まれた水平方向の貫通穴124が形成されている。連結機構4の載置台41はこの貫通穴124を水平方向に貫通して延在している。
【0052】
なお、本実施形態では、スタイラス121は、例えば約0.03mm〜約2mmの直径を有する球状体であり、アーム122は、一例として、太さが約0.7mmで、アーム取付部120の下面からスタイラス121の中心までの長さが約10mmである棒状の部材である。これらの値は、被測定面61の形状により適宜変更される。
【0053】
揺動部3は、下部材11、上部材12、延伸部127、及び可動側保持部128を備える。
【0054】
揺動部3の下部材11はアーム取付部120の貫通穴124を貫通し、かつアーム取付部120に対して非接触となるように配置されている。また、下部材11は同様に貫通穴124を貫通している載置台41の上方に間隔を隔てて配置されている。上部材12は下部材11の上方に間隔を隔てて配置されており、アーム取付部120の上梁部120bに対して間隔を隔てて上方に位置している。本実施形態における下部材11と上部材12は平面視で十字形状である。下部材11の下面には、尖端が鉛直方向下向きとなる姿勢で支点部材42が取り付けられている。貫通穴124を貫通して延びる載置台41の円錐溝341aに支点部材42の尖端が嵌り込んでいる。
【0055】
揺動部3の下部材11と上部材12の間に、それぞれ水平方向に延在する2枚の板バネ9A,9Bが保持されている。図1におけるC面で切断した斜視図である図7を併せて参照すると、板バネ9A,9Bは中心部9aと、この中心部9aから平面視で90度の角度間隔で放射状に延びる4個の梁状部9bとを備える。板バネ9A,9Bの個々の梁状部9bの先端間にはスペーサ13Aが介在している。また、下側の板バネ9Aの梁状部9bの先端の下面と揺動部3の下部材11との間、及び上側の板バネ9Bの梁状部9bの先端の上面と揺動部3の上部材12との間にも、それぞれスペーサ13Bが介在している。4本のねじ14で下部材11が上部材12に固定されている。板バネ9A,9Bは梁状部9bの先端がスペーサ13A,13Bを介して下部材11と上部材12に対してねじ14で共締めされている。板バネ9A,9Bは梁状部9bの先端を除いて下部材11と上部材12のいずれにも接触せず、かつ板バネ2A,2Bどうしも互いに接触しない。つまり、板バネ9A,9Bは、梁状部9bの先端を除いていわゆるフローティング状態で揺動部3に保持されている。
【0056】
下側の板バネ9Aはアーム取付部120の貫通穴124を貫通するように配置されているが、上側の板バネ9Bはアーム取付部120の上梁部120bの上方に位置している。これら板バネ9A,9Bの中心部9aにアーム取付部120が固定されている。具体的には、アーム取付部120の上梁部120bは、下面が下側の板バネ9Aの中心部9aの上面に固定され、上面が上側の板バネ9Bの中心部9aの下面に固定されている。板バネ9A,9Bが弾性的に撓むことで、アーム取付部120は揺動部3に対して鉛直方向に微小移動できる。揺動部3の上部材12と上側の板バネ9Bの中心部9aには、アーム取付部120の上枠部120bに取り付けられたミラー123へ測定用レーザ光211を入射されるための貫通穴12a,9cが形成されている。
【0057】
板バネ9A,9Bは図8に示すように水平方向に延在する長方形状でもよい。また、水平方向に延びる単一の板バネであってもよい。また、直線、曲線を組み合わせ、板バネの中心部9aから外周の固定部まで経路を長く取った形状であってもよい。さらに、3枚以上の板バネを鉛直方向に互いに間隔を隔てて配置した構成でもよい。さらに、板バネに代えて、水平方向に延びるワイヤを採用してもよい。このように揺動部3とアーム取付部120との間に介在させる弾性部(本実施形態では板バネ9A,9B)は、弾性的に撓むことでアーム支持部を鉛直方向に微小移動させ、かつ鉛直方向の剛性よりも水平方向の剛性が十分大きいものであれば、種々の態様を採用し得る。
【0058】
上部材12の上面には鉛直上方向に伸びる一対の延伸部127が設けられている。これらの延伸部127は閉鎖板5の揺動用貫通穴5bを通って取付用部材2内に延びている。揺動用貫通穴5bの穴径は延伸部127の外径よりも十分大きく設定されており、揺動部3が傾斜しても延伸部127が閉鎖板5に接触しないようになっている。
【0059】
取付用部材2内に位置している延伸部127の上端には、本実施形態ではリング状の部材である可動側保持部128が設けられている。図5に示すように、可動側保持部128には、可動側部材の一例である可動側磁石51が4箇所に同一半径上に等間隔に設けられている。一方、取付用部材2の大径部2bの内部には、固定側部材の一例である固定側磁石52を取り付ける固定側保持部材133が収容されている。図6に示すように、固定側保持部材133は、リング状に構成されたリング部1331と、リング部1331の内周部に設けられた4個の突出部1332とを備える。突出部1332は、固定側磁石52を保持するものであり、等間隔にかつ同心円状に設けられる。また、突出部1332は可動側保持部128に対して鉛直方向下側に位置している。
【0060】
揺動部3の可動側保持部128に保持された個々の可動側磁石51と取付用部材2の固定側保持部材133に保持された個々の固定側磁石52とは、鉛直方向であるZ軸方向に間隔を隔てて対向して対をなす位置関係で配置されている。可動側磁石51と固定側磁石52は、個々の対について、互いに吸引力が働く向きに固定される。本実施形態においては、全ての磁石51,52の上がN極、下がS極になるように固定されている。なお、隣り合う可動側磁石51と固定側磁石52の対の間で、磁石の向きを異ならせるようにしてもよい。例えば、一つの可動側磁石51と固定側磁石52の対で上がN極、下がS極とした場合、それに隣接する可動側磁石51と固定側磁石52の対で上がS極、下がN極としてもよい。
【0061】
固定側保持部材133は水平方向に移動可能に取付用部材2の大径部2b内に収容されている。具体的には、固定側保持部材133は、上端面が小径部2aの下端面に摺接する一方、下端面が閉鎖板5の上面に摺接する。取付用部材2の大径部2bには、それぞれY方向及びX方向に固定側保持部材133を付勢する2個の押さえばね15が収容されている(図3にY方向の押さえばね15のみを示す。)。また、取付用部材2の大径部2bには、押さえばね15と対向する2個のマイクロメータ16が取り付けられている。これらのマクロメータ16のスピンドルの先端には固定側保持部材133の外周が押さえばね15によって弾性的に押し付けられている。マイクロメータ16のスピンドルを進退させることで、取付用部材2の大径部2b内で固定側保持部材133の水平方向(X,Y方向)の位置を微調整できる。
【0062】
以上のように構成された本実施形態のプローブ1は、以下のように動作する。
【0063】
揺動部3が備える可動側磁石51と取付用部材2が備える固定側磁石52の吸引力により、揺動部3には鉛直方向下向きに磁気的な付勢される。そのため、揺動部3が備える鉛直方向下向きの支点部材42の尖端は、載置台41の円錐溝41a中心に接した状態を維持し、取付用部材2に対する揺動部3の位置ずれなどが防止される。
【0064】
揺動部3が支点部材42の尖端を中心として水平方向に傾いた場合、可動側磁石51と固定側磁石52の距離が遠ざかることになり、磁石の性質により、一対の磁石51,52を互いに近づける方向に復元力が働く。その結果、揺動部3全体に対して傾きを戻す方向(アーム122が鉛直方向に延在する中立位置となる方向)の磁気的な復元力が働く。同様に、揺動部3が支点部材42の尖端を中心として鉛直軸まわりに回転した場合、可動側磁石51と固定側磁石52の間の磁力により、揺動部3に対して回転を戻す方向の磁気的な復元力が働く。これらの磁気的な復元力により、非測定時の揺動部3はアーム122の延在方向が鉛直方向に一致する姿勢で保持される。
【0065】
水平方向に延びる板バネ9A,9Bを介して揺動部3に取り付けられたアーム取付部120は、板バネ9A,9Bが弾性変形することで、鉛直方向に微小移動可能である。非測定時には、アーム取付部120、アーム122、及びスタイラス121の重量により、板バネ9A,9Bは重力方向に撓んだ状態にあり、この撓んだ状態にある板バネ9A,9Bから、アーム取付部120を介してアーム122が鉛直方向下向きに延びている。
【0066】
測定物の鉛直方向又は略鉛直方向に延在する面(鉛直面:図1の測定物60の場合、被測定面61a)の形状を測定する際には、スタイラス121を被測定面に押し付ける測定力が以下のようにして得られる。スタイラス121を被測定面61aに接触させた状態で取付用部材2を測定物60側へ水平方向に僅かに移動させると、支点部材42の尖端を中心にして揺動部3が傾くことで、アーム122が水平方向に傾斜する。揺動部3が傾くと、揺動部3に設けた可動側磁石51と取付用部材2に設けた固定側磁石52との間の磁気的吸引力により、アーム122が鉛直方向に延在するような初期状態の中立位置へ揺動部3を復元させる復元力を生じる。この磁気的な復元力により、スタイラス121は被測定面61に対して所定の測定力で押圧される。
【0067】
このように、鉛直面測定時の測定力は、連結機構4によって取付用部材2に揺動可能に連結された揺動部3が可動側及び固定側磁石51,52の磁気的吸引力で付勢されることで生じる。従って、本実施形態のプローブ1は、小さい測定力により鉛直面の形状測定が可能である。また、鉛直面測定時の測定力は、可動側磁石51と固定側磁石52の磁力及び、両者の間隔により調整することができる。例えば可動側磁石51と固定側磁石52の磁力は、0.3mNに設定される。本実施形態においては、スタイラス121の先端を0.3mNで押したときに、先端の変位が10μmになるように、可動側磁石51と固定側磁石52の磁力と距離を設定している。
【0068】
測定物の水平方向又は略水平方向に延在する面(水平面:図1の測定物60の場合、被測定面61b)の形状を測定する際には、スタイラス121を被測定面に押し付ける測定力は以下のようにして得られる。前述のように、被測定時にはアーム取付部120を取り付けた板バネ9A,9Bはアーム取付部120の重量により鉛直方向下向きに撓んでいる。スタイラス121を被測定面61aに接触させた状態で取付用部材2を測定物60側へ鉛直方向に僅かに移動させると、板バネ9A,9Bの撓み量が小さくなる。この板バネ9A,9Bの撓み量の変化分に板バネ9A,9Bの鉛直方向のバネ定数を乗じた測定力で、スタイラス121が被測定面61bに押し付けられる。
【0069】
このように、水平面測定時の測定力は、板バネ9A,9Bが撓むことで生じる弾性的な力がアーム取付部120を付勢することで生じる。板バネ9A,9Bの鉛直方向の剛性は、板バネ9A,9Bが支持するアーム取付部120、アーム122、及びスタイラス121の重量を支持できる程度であればよい。つまり、板バネ9A,9Bが支持する必要がある重量が軽い。そのため、板バネ9A,9Bの鉛直方向の剛性を小さくして、板バネ9A,9Bの弾性変形によって生じる付勢力を小さくできる。従って、本実施形態のプローブ1は、小さい測定力で水平面の形状測定が可能である。
【0070】
以上のように、本実施形態のプローブ1は、鉛直面及び水平面のいずれについても小さい測定力による高精度の測定が可能である。
【0071】
水平方向に延在する板バネ9A,9Bは、鉛直方向の剛性よりも水平方向の剛性が十分に大きい。従って、鉛直面測定時にスタイラス121に作用する測定力の反力の水平成分による板バネ9A,9Bの水平方向の変形及びそれに伴うミラー123の水平方向の変位を実質的になくすことができる。このように、本実施形態のプローブ1は、測定力の反力の水平成分によるミラー123の変位を実質的になくすことで、測定物60の鉛直面の形状を高精度で測定できる。
【0072】
図9から図12はプローブ1の代案を示す。図9は代案のプローブ1の外観を示す斜視図であり、図10はその縦断面である。図11は代案のプローブ1の下側部分(図9のA−A面よりも下側部分)を示す。図12は図11のB−B面で切断した状態を示す。代案のプローブの構造のうち図9から図12に図示されていない部分は、図1から図7に示すプローブ1と同様である。図9から図12において図1から図7と同一の要素には同一の符号を付している。図10及び図11では、粘弾性体330A,330Bの図示は省略している。
【0073】
2枚の板バネ309A,309Bは多数の打ち抜きが形成された薄厚の円板状である。具体的には、個々の板バネ309A,309Bは、概ね円板状の中心部309a、この中心部309aの周囲を間隔をあけて取り囲む円環帯状の外周部309b、及び中心部309aと外周部309bを連結する連結部309cにより連結されている。図9から図12における連結部309cは、中心部309aと外周部309bとの間に配置された円環帯状部309d、円環帯状部309dと中心部309aと接続する架橋部309e、及び円環帯状部309dと外周部309bとを接続する架橋部309fを備える。架橋部309eの対が平面視で90度間隔で配置されている。また、架橋部309fも平面視で90度間隔で配置されている。従って、図9から図12における連結部309cは、平面視で概ね十字形状と円形状を組み合わせた形状を有する。ただし、連結部309cの具体的な構成は図9から図12のものに限定されず、中心部309aと外周部309bとを、非直線状とすることで経路長を長く設定した複数の経路で連結するものであればよい。
【0074】
図9から図12のプローブ1が備えるアーム取付部320は、下側板部320a、この下側板部320aの上方に間隔を隔てて配置された上側板部320b、下側板部320aと上側板部320bの両端を連結する一対の縦ロッド320cを備える。下側板部320a、上側板部320b、及び縦ロッド320cは、図1から図7のプローブ1のアーム取付部120における下梁部120a、上梁部120b、及び縦梁部120cにそれぞれ相当する。下側板部320aの下面には、スタイラス121を下端に有するアーム122が垂下して取り付けられている。上側板部320bの上面にはミラー123が取り付けられている。スタイラス121、支点部材42の尖端、及びミラー123は同一軸(アーム122の軸線)上に配置されている。
【0075】
互いに平行に配置された板バネ309A,309Bがアーム取付部320と揺動部3の間に介在する点では、図9から図12のプローブ1は図1から図7と同様である。しかし、図9から図12のプローブ1は、揺動部3が備える支点部材42に対する2枚の板バネの上下方向の配置が図1から図7のプローブ1とは異なる。具体的には、図1から図7のプローブ1では、2枚の板バネ9A,9Bはいずれも揺動部3が備える支点部材42に対して上方に位置している。これに対し、図9から図12のプローブ1では、一方の板バネ309Aは支点部材42よりも下方に位置し、他方の板バネ309Bは支点部材42よりも上方に位置している。
【0076】
アーム取付部320の上側板部320bの上面に板バネ309Bの中心部309aが固定されている。一方、アーム取付部320の下側板部320aの下面に板バネ309Aの中心部309aが固定されている。この例では、板バネ309A,309Bは円環帯状のバネ押さえ325A,325Bをねじ326で固定することでアーム取付部320に固定されている。ただし、必要な取付強度が確保できる限り、板バネ309A,309Bをアーム取付部320へ固定する態様は特に限定されない。上側の板バネ309Bは揺動部3の下部材11に固定され、下側の板バネ309Aは上側の板バネ309Bに固定されている。具体的には、平面視でアーム122を挟んで対向する2箇所において、上側の板バネ309Bの外周部309bの下面と下部材11の上面との間に短円筒状のスペーサ313Aが介在し、下部材11の下面と下側の板バネ309Aの上面との間に長円筒状のスペーサ313Bが介在している。そして、2枚の板バネ309A,309B、下部材11、及び2個のスペーサ313A,313Bが、ねじ327によって共締めされている。また、平面視でアーム122を挟んで対向する別の2箇所では、上側の板バネ309Bの下面と下側の板バネ309Aの上面との間に長円筒状のスペーサ313Cが介在している。スペーサ313Cはスペーサ313A,313Bの長さと下部材11の厚みの和に相当する長さを有する。そして、2枚の板バネ309A,309Bとスペーサ313Cはねじ328によって共締めされている。
【0077】
図9から図12に示す代案のプローブ1には以下の特徴がある。まず、板バネ309Aの中心部309aが下側板部320aに固定され、板バネ309Bの中心部309aが上側板部320bに固定されている。かかる板バネ309A,309Bのアーム取付部12に対する取付構造により、プローブ1全体としての水平方向の剛性を大きくでき、より高精度の測定が可能となる。また、個々の板バネ309A,309Bの中心部309aと外周部309bを連結する連結部309cを非直線状とすることで、板バネ309A,309Bの中心部309aから揺動部3までの経路を長く設定でき、その結果板バネ309A,309Bの剛性をより小さく設定できる。さらに、2枚の板バネ309A,309Bを支点部材42を上下に挟むように配置したことで、測定力の反力の水平成分による2枚の板バネの変形に起因する測定誤差を低減できる。この点については後に詳述する
【0078】
図9から図12に示す代案のプローブ1では、板バネ309A,309Bに粘弾性体330B,330Aを取り付けている(特に図9参照)。粘弾性体330A,330Bは、各種ゴム、スポンジ、制振材等の振動減衰性を有する材料からなる。この代案では、粘弾性体330A,330Bは、板バネ309A,309Bと同様の形状を有する板状であり、両面テープによって板バネ308A,309Bの片側の面に固定されている。接着等の他の固定方法も採用できる。また、板バネ308A,309Bに適切な材料をコーティングすることにより粘弾性体330A,330Bを形成してもよい。図9を参照すると、粘弾性体330Aは、下側の板バネ309Aの下面にねじ43等との他の要素との干渉を生じない領域全体に配置されている。一方、粘弾性体330Bは、上側の板バネ309Bの上面に他の要素との干渉を生じない領域全体に配置されている。板バネ309A,309Bの鉛直方向の剛性を小さくしたことにより、装置自体の振動の伝播や測定物の面性状の影響による振動が板バネ309A,309Bに発生するおそれがある。この板バネ309A,309Bの振動にスタイラス121に意図しない変位が生じ、測定精度の低下の原因となる。しかし、板バネ309A,309Bに粘弾性体330A,330Bを固定しておくことで、板バネ309A,309Bの振動を吸収して速やかに減衰させ、振動に起因するスタイラス121の意図しない変位を防止し、測定精度を向上できる。粘弾性体の固定位置は図9に限定されず、板バネの振動特性に応じた適切な位置に取り付けれは、振動吸収の効果が得られる。
【0079】
次に、本実施形態のプローブ1を備えた形状測定装置について説明する。
【0080】
一般に、形状測定装置は、プローブを測定物60に接触させ、スタイラスを被測定面61a、61bに押し付ける測定力がほぼ一定になるように前記プローブの移動を制御しつつ、被測定面61a、61bに沿って移動させて、レーザ測長器と基準平面ミラーとを利用して、プローブと基準面との位置関係に基づき、被測定面61a,61bの表面形状を測定、演算するものである。
【0081】
このような形状測定装置の一例として、図13に示すように、測定物60を定盤上に固定して、プローブをX軸、Y軸、及びZ軸の全方向に移動させるタイプがある。
【0082】
図13に示す形状測定装置201は、石定盤292上に設置されX軸及びY軸方向に可動なX−ステージ2951及びY−ステージ2952を有するステージ295を備える。このステージ295に、Z−テーブル293、He−Neレーザ(レーザ光発生部)210、及び測定点情報決定部220を載置している。よって、ステージ295は、Z−テーブル293、He−Neレーザ210、及び測定点情報決定部220をX軸及びY軸方向に移動させることができる。
【0083】
測定点情報決定部220について、図13及び図14を参照して詳しく説明する。図14に示すように、測定点情報決定部220は、測定面61a、61bの位置情報を得るための光学系221と、ミラー位置傾き検出部226と、スタイラス位置演算部223と、位置座標測定部224と、加算部225とを有する。これらのうち、ミラー位置傾き検出部226と光学系221の一部を構成するダイクロイックミラー2211aは、プローブ1とともに、Z−テーブル293の可動側に取り付けられる。これらのミラー位置傾き検出部226、スタイラス位置演算部223、位置座標測定部224、及び加算部225は、前述したレーザ測長器に相当する部分であり、光学系221に接続され実際に位置情報を求めるための構成部分である。
【0084】
He−Neレーザ210が発生した測定用レーザ光211は、測定物60の測定面61a,61b(図1参照)の3次元座標位置を求めるため、光学系221にて4つに分光される。第1光学系221aは、ステージ295のX軸方向及びY軸方向における移動量、つまり被測定面61a,61bのX軸方向及びY軸方向における座標値を検出するため、図示を省略しているがX軸方向に直交する鏡面からなる基準面を有するX軸基準板、及びY軸方向に直交する鏡面にてなる基準面を有するY軸基準板を有する。また、さらに、第1光学系221aには、Z軸方向に直交する鏡面からなるZ基準板229も設けられている。各基準板の基準面は、平坦度が0.01ミクロンオーダーに構成されている。
【0085】
被測定面61a,61bの形状測定方法では、例えば特開平10−170243号公報に記載されるように、X軸、Y軸、及びZ軸の各基準面にレーザ光を照射し、照射するレーザ光と各基準面で反射されたレーザ光との干渉信号を計数することで、反射されたレーザ光の位相の変化を検出する公知のレーザ測長方法を用いる。より具体的には、このレーザ測長方法では、例えば特開平4−1503号公報に開示されるように、各基準面へ照射されるレーザ光をプリズム等の分岐部材にて参照光と測定光とに分け、かつ参照光と測定光との位相を90度ずらす。そして測定光を基準面へ照射し反射させ、戻って来た反射光と参照光の位相のずれによる干渉光を電気的に検出して、得られた干渉縞信号から作成するリサージュ図形に基づき基準点と前記基準面との距離が測定される。
【0086】
位置座標測定部224は、このような測長方法を実行する部分であり、被測定面61a,61bにおける測定点のX座標値、Y座標値、及びZ座標値の測長を行う検出部224a〜224cを有する。本実施形態では、図13に示すように、石定盤292上に載置された測定物60に対してステージ295が移動することから、上述の測定点におけるX座標値、Y座標値、及びZ座標値は、Z−テーブル293に取り付けられているプローブ1の取付用部材2の絶対位置座標値と換言することができる。
【0087】
本実施形態では、検出部224cは、プローブ1のスタイラス121のZ座標値の測長を行う部分であり、スタイラス位置測定器として機能する。以下、この点について詳述する。図14に示すように、Z−テーブル293の下端に取り付けられているプローブ1のアーム取付部120に取り付けられているミラー123の中心点へ、測定用レーザ光211の一部がフォーカスレンズ17を介して照射される。照射されたレーザ光211は、ミラー123にて反射し、該反射光211bは、光分離部2211に備わるダイクロイックミラー2211aにて反射されること無く、透過し、ハーフミラー2211bで反射し、検出部224cに照射され、スタイラス121のZ座標値の測長を行うことができる。
【0088】
位置検出部224a〜224cの検出結果に基づく位置座標測定部224の演算結果(本実施形態では取付用部材2のX軸及びY軸座標値とスタイラス121のZ軸座標値)と、ミラー位置傾き検出部226の検出結果に基づくスタイラス位置演算部223の演算結果を加算部225で加算することで被測定面61の形状が演算される。ミラー位置傾き検出部226は、揺動部3の傾斜に伴うスタイラス121の変位(X軸及びY軸方向)とアーム取付部120の鉛直方向の変位に伴うスタイラス121の変位(Z軸方向)を検出する。
【0089】
以下、ミラー位置傾き検出部226及びスタイラス位置演算部223について説明する。ミラー位置傾き検出部226は、ミラー123へ照射する半導体レーザ227、傾斜角度検出部222、上下位置検出部228を備える。He−Neレーザ210と異なる波長の半導体レーザ(レーザ光発生部)227のレーザ光229は、ダイクロイックミラー2211aを介してミラー123へ照射される。レーザ光229のミラー123による反射された反射光229bは、ダイクロイックミラー2211aで反射された後、傾斜角度算出部222と上下位置検出部228に入射する。
【0090】
傾斜角度検出部222は、反射光229bを受光し電気信号に変換する傾き検出受光面2221を有する光検出器にて構成され、傾き検出受光面2221は、それぞれ独立して光電変換を行う複数の受光領域に区画されている。本実施形態では図15に示すように、傾き検出受光面2221を格子状、つまり十字状に4つの受光領域222a〜222dに区画している。なお、受光領域の数、及び形状は、図示の形態に限定されるものではなく、測定精度等との関係に基づいて適宜設定することができる。
【0091】
非測定時には、プローブ1のアーム122は鉛直方向に沿って配置されている。よって非測定時には、反射光229bは、鉛直方向に沿ってミラー123へ照射される半導体レーザ光227のレーザ光229の光軸に平行に進み、ダイクロイックミラー2211aにて反射して傾斜角度検出部222の傾き検出受光面2221の中央部へ照射される。この場合の傾き検出受光面2221における反射光226bの照射領域を、図16に点線にて示し非測定時照射領域2222とする。
【0092】
一方、プローブ1の説明で述べたように、鉛直面である被測定面61aの測定は、ほぼ一定の測定力にてスタイラス121を被測定面61aへ押圧して行われることから、上述したようにプローブ1の揺動部3は、取付用部材2に対して傾斜する。揺動部3が傾斜していると、反射光229bは、レーザ光229の光軸と交差してミラー2211aへ進み、傾斜角度検出部222の傾き検出受光面2221では中央部から外れた基準照射領域2223へ照射される。また、上述したように測定時において、揺動部3は、支点部材42の尖端を支点として、特定方向に限定されることなくいずれの方向にも揺動可能である。よって、測定対象となるような例えばナノオーダーでの微細な凹凸が被測定面61aに全く存在しないとすると、基準照射領域2223は、図16に示すように、傾き検出受光面2221の中心点2221aを中心とした一定半径にてなる円の円周2224に沿って位置することになる。
【0093】
傾き検出受光面2221への反射光229bの照射に応じて傾斜角度検出部222は、電気信号を生成するが、傾き検出受光面2221が4つの受光領域222a〜222dに区画されていることから、反射光229bの照射場所から揺動部3の傾斜角度を検出することができる。即ち、受光領域222aを「A」、受光領域222bを「B」、受光領域222cを「C」、受光領域222dを「D」とすると、各受光領域222a〜222dから得られる電気信号について、(A+B)−(C+D)を行うことでX軸方向における揺動部3の傾斜角度を求めることができ、(A+D)−(B+C)を行うことでY軸方向における傾斜角度を求めることができる。このように傾斜角度検出部222は、各受光領域222a〜222dから得られる電気信号について、(A+B)−(C+D)、及び(A+D)−(B+C)を行い、これらを角度信号として、前記スタイラス位置演算部223へ送出する。
【0094】
スタイラス位置演算部223は、前記角度信号をプローブ1に備わるスタイラス121の変位量に変換する。
【0095】
一方、実際には、被測定面61aには前記微細凹凸が存在することから、図16に変位照射領域2225として示すように、前記微細凹凸に対応して、円周2224から外れた位置に反射光229bが照射される。そして、上述した基準照射領域2223の場合と同様に、変位照射領域2225への反射光229bの照射により、傾斜角度検出部222は角度信号を送出し、スタイラス位置演算部223は、スタイラス121における前記微細凹凸に対応した変位量を求める。従って、基準照射領域2223に対応する、スタイラス121の基準変位量と、変位照射領域2225に対応する凹凸変位量との差を求めることで、前記微細凹凸の大きさを求めることができる。
【0096】
なお、この測定方法の前提として、支点部材42の尖端を支点として、揺動部3がいずれの方向にも首振りして傾斜可能な構成において、前記基準変位量を一定若しくはほぼ一定とする必要がある。すなわち、揺動部3がいずれの方向にも揺動することから、傾き検出受光面2221における反射光229bの照射領域は、測定時には、例えば前記円周2224に沿って移動することになる。このような状況において、反射光229bが基本的に常に基準照射領域2223に照射される、つまりいずれの方向に揺動部3が揺動した場合でも揺動部3の傾斜角度αが一定若しくはほぼ一定である必要がある。従って、測定時には、制御装置280にてステージ295の駆動部294を制御して、図17及び図18に示すように、スタイラス121の走査方向121aに垂直な方向12lbに対する揺動部3の傾きβが一定になるようにステージ295の移動量及び移動方向を制御し走査方向121aを修正する必要がある。
【0097】
上述のようにしてスタイラス位置演算部223にて、被測定面61aの測定点の前記微細凹凸の大きさを求めると同時に、上述したように前記位置座標測定部224にて、測定面61aの測定点におけるX座標値、Y座標値、及びZ座標値が求められている。よって、加算部225は、位置座標測定部224にて求まる、測定面61aの測定点におけるX座標値、Y座標値、及びZ座標値と、スタイラス位置演算部223にて求まるスタイラス121の変位とを加算して、測定面61a上の測定点における測定X座標値、測定Y座標値、及び測定Z座標値を求める。すなわち、位置座標測定部224にて求まる測定点61aにおけるX座標値、Y座標値、及びZ座標値をXl,Yl,Z1とし、スタイラス位置演算部223にて求まる測定点におけるスタイラス121の変位のX座標値を(A+B)−(C+D)、及びY座標値を(A+D)−(B+C)とすると、加算部225にて求まる前記測定X座標値、測定Y座標値、及び測定Z座標値は、Xl+{(A+B)−(C+D)}、Yl+{(A+D)−(B+C)}、Z1 となる。
【0098】
スタイラス121は図示のように球状であることから、前記測定X座標値、測定Y座標値、及び測定Z座標値は、スタイラス121の中心座標である。従って、測定点61aの真の座標値は、プローブ1の走査方向に垂直な方向に、スタイラス121の半径値だけずらした値となる。
【0099】
ミラー位置傾き検出部226が備える上下位置検出部228は、ミラー123からの反射光229bから、取付用部材2に対するミラー123の上下方向の変位を検出する。検出方法は、特開2008−292236に示されるようなホログラムを用いた方法等、公知の技術で可能である。
【0100】
以上のように構成される形状測定装置201における動作、すなわち、測定物60の被測定面61a,61bに対する形状測定方法について、以下に説明する。この形状測定方法は、制御装置280の動作制御にて実行される。
【0101】
まず、鉛直面である被測定面61aを測定する場合について説明する。上述したように、スタイラス121を被測定面61aに接触させ、さらに例えば約0.3mN(=30mgf)の測定力にてスタイラス121が被測定面61aを押圧するように、測定物60に対して、三次元形状測定用プローブ1を取り付けたZ−テーブル293を有するステージ295を相対的に配置する。これにて、ミラー位置傾き検出部226の傾き検出受光面2221には、反射光226bが基準照射領域2223に照射され、上述したように、スタイラス位置演算部223及び位置座標測定部224を介して、加算部225により、被測定面61aの測定点における基準となるX座標値、Y座標値、及びZ座標値が求められる。
【0102】
例えば、測定物60が円筒形で、その外周面を一周測定する場合を例に採ると、上述のように、図17及び図18に示す垂直方向121bに対する揺動部3の傾きβが一定若しくはほぼ一定に維持されるように、すなわち、いずれの方向にも揺動部3を傾斜させ、かつ鉛直方向に対する揺動部3の傾きαが一定若しくはほぼ一定に維持されるように、制御装置280にてステージ295の駆動部294を制御して、X軸方向及びY軸方向へのステージ295の移動量及び移動方向を制御する。なお、本実施例ではスタイラス121先端の変位が10μmを保つような角度に調整することにより、測定力を0.3mNに保つ
ことができる。
【0103】
このようにして被測定面61aの全周について、揺動部3がいわゆる首振り運動や味噌すり運動するようにして、被測定面61aの測定を行う。これにより、反射光226bは、傾斜角度検出部222の傾き検出受光面2221における各受光領域222a〜222dを、例えば前記円周2224に沿うようにして一周する。このとき、被測定面61aの前記凹凸に対応して反射光211bの照射領域は、基準照射領域2223から変位照射領域2225へ移動する。
【0104】
このような測定動作に基づき、上述したように、スタイラス位置演算部223及び位置座標測定部224を介して、加算部225により、被測定面61aの測定点における、前記凹凸も含めて、前記測定X座標値、測定Y座標値、及び測定Z座標値が求められる。
【0105】
次に、水平面である被測定面61bを測定する場合について説明する。この場合、スタイラス121を被測定面61bに押し付ける測定力は、鉛直方向下向きに発生させる必要がある。また、高精度に測定するためには、鉛直方向下向きの測定力を一定にする必要がある。制御装置280にて駆動部294を駆動してステージ295を水平方向に移動させると共に、ミラー位置傾き検出部226の上下位置検出部228の検出結果に基づいてミラー123の鉛直方向の変位量が一定となるようにZ−テーブル293を動作させる。例えば、非測定時の板バネ9A,9Bの撓みが100μmのとき、測定時には90μmの撓みになるように、制御を行うことにより、測定力を5mNに保つことができる。また、被測定面61bの微小な変位に追従してスタイラス121も上下移動するため、スタイラス121と一体となって移動するミラー123のZ座標の測長部として機能する検出部224cの検出値により、測定物の微小変位も測定できることになる。
【0106】
また、完全な水平面から傾斜が大きくなった場合、例えば45度程度の傾斜の測定時には、鉛直下方向に押圧力を発生させた場合には、スタイラス121のアーム122に傾きが発生するが、傾斜角度検出部222でアームの傾きを検出しているので、その傾き量をスタイラス変位に換算して補正を加えることにより、高精度な測定が可能となる。
【0107】
ただし、以上のような方法で測定した場合、アーム取付部120と揺動部3の間に介在する弾性部(本実施形態では板バネ9A,9B)のねじれや水平方向変位は検出できず、測定誤差となる。弾性部の水平方向の剛性が小さいと、弾性部のねじれや水平方向の変位が生じやすい。図19に示すように、弾性部9を1枚の板バネ9で構成できる。しかし、この構成では、スタイラス121に作用する測定力の反力の水平の水平成分により板バネ9にねじれが生じやすく、このねじれはアーム取付部120の水平方向の変位や、揺動中心のずれとなる。これに対して、本実施の形態では、2枚の板バネ9A,9Bで弾性部を構成しているので、鉛直方向の剛性に対して水平方向の剛性が十分大きく、弾性部のねじれや水平方向の変位が低減されている。換言すれば、図20に概念的に示すように、アーム取付部120は可能な限り鉛直方向にのみ変位して水平方向には変位しない構成としている。3枚以上の板バネを鉛直方向に互いに間隔を隔てて配置した構成とすれば、水平方向の剛性をさらに高めて、弾性部のねじれや水平方向の変位を低減できる。なお、図8を参照して説明したように、板バネ9A,9Bを長方形状としてもよいが、この場合には長方形の短辺方向の剛性が小さくなるので、本実施形態の板バネ9A,9Bのように中心部9aから複数の梁状部9bが放射状に延びる構成(十字形状)がより好ましい。
【0108】
前述した図9から図12に示す代案のように非直線状の連結部309cで連結することで板バネ309A,30Bの中心部9aから外周部9bまでの経路長を長く設定することにより水平方向の剛性を確保しつ鉛直方向の剛性を小さくすることで測定力の低減が可能である。板バネの剛性を小さくしたことにより、装置自体の振動の伝播や測定物の面性状の影響による振動が発生する場合があるが、板バネの振動特性に応じた適切な位置に粘弾性体を取り付けると、振動の吸収に対して効果的である。
【0109】
鉛直面測定時にスタイラス121に作用する測定力の反力の水平成分によって弾性部を構成する2枚の板バネに水平方向の微小な変形が生じた場合、アーム122の長さに応じて2枚の板バネの変形によるスタイラス121の回転中心の位置は異なる。しかし、前述した図9から図12の代案のように、支点部材42を上下に挟むように2枚の板バネ30A,309Bを配置することで、測定力の反力の水平成分による2枚の板バネ309A,309Bの変形に起因する測定誤差を低減できる。特に、図10において符号Lで示すように、2枚の板バネ309A,309Bを支点部材42の尖端をほぼ均等な位置で上下に挟むように配置することで、スタイラス121に作用する測定力の反力の水平成分による2枚の板バネ309A,309Bの変形に起因する測定誤差をより効果的に低減できる。
【0110】
図21Aのように2枚の板バネ309A,309Bがいずれも支点部材42のよりも上方にあり両者の間隔が狭い場合(図1から図8に相当)でも、図22Aのように2枚の板バネ309A,309Bがいずれも支点部材42の上方にあり両者の間隔が広い場合(図9から図12に相当)でも、測定力の反力の垂直成分(垂直力Fv)に対する2枚の板バネ309A,309Bの抗力よりも、測定力の水平成分(水平力Fh)に対する2枚の板バネ309A,309Bの抗力は大きい。しかし、図21Aのように板バネ309A,309B間の間隔が狭い場合、水平力Fhに対する抗力は垂直力Fvに対する抗力よりも十分に大きくわけではなく、水平力Fhにより板バネ309A,309Bにねじれが生じやすい。これに対して、図21Bのように板バネ309A,309B間の間隔が広いと、水平力Fhに対する抗力は垂直力Fvに対する抗力よりも十分に大きくなり、板バネ309A,309Bにねじれが生じにくい。また、この場合、水平力Fhによる2枚の板バネ309A,308Bのたわみに起因するスタイラス121の回転中心が支点部材42の尖端近傍となるため、板バネ309A,309Bのたわみが測定精度に及ぼす影響が小さい。以上の理由より、2枚の板バネ309A,309Bを支点部材42を上下に挟むように配置することで、測定誤差をより効果的に低減できる。
【0111】
以上のように、前記構成の三次元形状測定装置用プローブ1によれば、水平な任意の方向に傾斜可能な揺動部3を、磁石による磁力を用い非接触で中立位置に保持するとともに、スタイラス121が測定物60を押圧する力、すなわち測定力を微小に発生させるため、不慮の衝撃による破損もしづらい。かつ可動側磁石51、固定側磁石52の吸引力により、連結機構4における円錐溝41aと尖端で構成された支点部材42を押えつける構造のため、支点の位置ずれが少ない。これにより、本プローブ1はスタイラス121の軸は鉛直方向に限定されず、傾いた状態での使用も可能になる。また、電磁石のように電流を流すことが無いので、構成が簡単になり、電気熱による影響もない。
【0112】
また、本実施形態にかかる形状測定装置201によれば、三次元形状測定用プローブ1において、スタイラス121を有する揺動部3は、いわゆる首振り運動や味噌すり運動をすることができる。従って、測定物60の例えば内周面の測定を行う場合、測定物60を回転させることなく、プローブ1をX軸方向及びY軸方向に移動させることで、前記内周面の測定を行うことができる。よって、測定装置において複雑な構成を採ることなく、測定物60の側面の傾斜方向を問わずに形状測定が可能となる。また、測定物60を回転させる必要がないことから、測定物60の中心軸の芯ぶれが発生するというような問題も生じず、被測定面の測定誤差の低減を図ることもできる。よって、例えばレンズの外径や穴径等が測定可能であり、また、例えば図22及び図23に示す流体軸受けのような測定物60に形成され潤滑剤を収容する溝部55の形状を測定することも可能となる。さらに、同時に水平面の測定も可能になるため、穴の水平面に対する直角度も高精度に測定可能となる。よって、形状測定装置201は、精密及び微細化に向かう産業の発展に幅広く貢献できる。
【0113】
本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施可能である。以下、他の態様について例示する。
【0114】
揺動部3の構成は、支点により載置台41に揺動可能に配置される構成であれば、上述の構成に限定するものではない。例えば、前記実施形態では、支点部材は、突起状に設けられた部材であり、当該突起の先端が円錐形の溝に陥入するように構成されているが、載置台に上向きに突起状の部材が設けられ、揺動部材に設けられた円錐溝を支点部材としてもよい。
【0115】
前記実施形態では、可動側磁石51と固定側磁石52による吸引力を用いたが、固定側、可動側のどちらか一方が磁石ではなく、磁性体としても同じ効果が得られる。
【0116】
前記実施形態では、板バネ9A,9Bの端部(梁状部9bの先端)を揺動部3に固定し、中心部9aにアーム取付部120を固定したが、逆に板バネの端部にアーム取付部120に固定し、中心部を揺動部3に固定してもよい。
【0117】
前記実施形態においてアーム122の傾き検出として、非接触変位センサを設けてもよい。センサの種類としては静電容量型のものが考えられる。これにより、揺動部3の支点を中心としたXY2方向の傾きを検出できる。
【0118】
前記実施形態の形状測定装置201では、測定物60を石定盤292上に固定し、三次元形状測定用プローブ1をX,Y,Z軸方向に移動させたが、逆に、三次元形状測定用プローブ1を固定して測定物60を移動させてもよい。要するに、測定物60とプローブ1とを相対的に移動させればよい。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明は、鉛直面の測定時だけでなく、水平面の測定時にも、小さい押圧力で測定でき、また、プローブ内のミラーの水平方向の変位を低減することにより、高精度に測定物の形状を測定できる。任意形状の穴の内面や穴径の測定、及び任意形状の外側面の鉛直面の形状測定だけでなく、水平面の形状測定を高精度及び低測定力にて走査測定する形状測定装置の形状測定用プローブに適用できる。
【符号の説明】
【0120】
1 三次元形状測定装置用プローブ
2 取付用部材
2a 小径部
2b 大径部
3 揺動部
4 連結機構
5 閉鎖板
5a レーザ用貫通穴
5b 揺動用貫通穴
6 支持軸
9,9A,9B 板バネ
9a 中心部
9b 梁状部
9c 貫通穴
11 下部材
12 上部材
12a 貫通穴
13A,13B スペーサ
14 ねじ
15 押さえばね
16 マイクロメータ
17 フォーカスレンズ
41 載置台
41a 円錐
42 支点部材
43 ねじ
51 可動側磁石
52 固定側磁石
60 測定物
120 アーム取付部
120a 下梁部
120b 上梁部
120c 縦梁部
121 スタイラス
122 アーム
123 ミラー
128 可動側保持部
133 固定側保持部材
201 三次元形状測定装置
211 He−Neレーザ
220 測定点情報決定部
222 傾斜角度検出部
223 スタイラス位置演算部
224 位置座標測定部
225 加算部
226 ミラー位置傾き検出部
227 半導体レーザ
228 上下位置検出部
229 レーザ光
309A,309B 板バネ
309a 中心部
309b 外周部
309c 連結部
309d 円環帯状部
309e,309f 架橋部
313A,313B,313C スペーサ
320 アーム取付部
320a 下側板部
320b 上側板部
320c 縦ロッド
325A,325B バネ押さえ
326,327,328 ねじ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定物の被測定面に接触するスタイラスが下端に配置されたアームが垂下して取り付けられ、かつミラーが取り付けられたアーム支持部と、
前記アーム支持部が取り付けられ、弾性変形によって前記アーム支持部を鉛直方向に微小移動させ、鉛直方向の剛性よりも水平方向の剛性が大きい弾性部と、
前記弾性体を保持する揺動部と、
三次元形状測定装置に取り付けられる取付部と、
前記揺動部に設けられた支点部と、前記取付部に設けられて前記支点部が載置される載置部とを備え、前記支点部を支点として揺動可能に前記揺動部を前記取付部に連結する連結機構と、
前記揺動部に設けられた可動側部材と、前記取付部に設けられて前記可動側部材に対して鉛直方向に間隔を隔てて対向する固定側部材とを備え、前記可動側部材と前記固定側部材は磁気的吸引力を発生するように構成され、当該磁気的吸引力により前記アームが鉛直方向を向くように前記揺動部を付勢する付勢機構と
を備える、三次元形状測定装置用プローブ。
【請求項2】
前記弾性部は単一の板バネで構成される、請求項1に記載の三次元形状測定装置用プローブ。
【請求項3】
前記弾性部は上下方向に間隔を隔てて配置された2枚以上の板バネを備える、請求項1に記載の三次元形状測定装置用プローブ。
【請求項4】
前記スタイラス、前記支点部、及び前記ミラーは同一軸上に配置され、
前記ミラーは前記スタイラス及び前記前記支点部よりも上方に配置され、
前記弾性部を構成する前記2枚の板バネは、前記支点部が前記載置部に載置された位置に対して一方が下方に配置されて他方が上方に配置されている、請求項3に記載の三次元形状測定装置用プローブ。
【請求項5】
前記板バネは、前記アーム支持部が取り付けられる中心部と、この中心部から放射状に延びて先端が前記揺動部に固定される複数の梁状部とを備える、請求項2から請求項3のいずれか1項に記載の三次元形状測定装置用プローブ。
【請求項6】
前記板バネは、前記アーム支持部が取り付けられる中心部と、前記揺動部に固定される外周部と、それぞれ前記中心部と前記外周部を連結する非直線状の複数の連結部とを備える、請求項2から請求項3のいずれか1項に記載の三次元形状測定装置用プローブ。
【請求項7】
前記板バネに取り付けられ、かつ前記板バネの振動特性に合わせた形状を有する粘弾性体を備える、請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の三次元形状測定装置用プローブ。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の三次元形状測定装置用プローブと、
測定用レーザ光を発生するレーザ光発生部と、
前記測定用レーザ光が前記ミラーで反射された反射光に基づいて測定物の被測定面における測定点の位置情報を求める測定点情報決定部と
を備える、三次元形状測定装置。
【請求項9】
前記測定点情報決定部は、
前記揺動部の傾斜角度を前記反射光から検出する傾斜角度検出部と、
前記傾斜角度検出部から得られた角度信号を前記取付部に対する前記スタイラスの変位量に変換するスタイラス位置演算部と、
前記測定点の前記取付部に対する位置座標値を前記反射光から求める位置座標測定部と、
前記位置座標値に前記スタイラスの変位量を加算して前記測定点の位置情報を求める加算部と
を備える、請求項8に記載の三次元形状測定装置。
【請求項10】
前記傾斜角度検出部は、前記反射光を受光する光検出器を有し、この光検出器は、それぞれ独立して光電変換を行う複数の受光領域に区画された一つの受光面を有する、請求項9に記載の三次元形状測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21A】
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【図21B】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2010−286475(P2010−286475A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−98865(P2010−98865)
【出願日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】