説明

三次元造形用材料、三次元造形物の製造方法及び三次元造形物

【課題】インクジェット吐出適性が良好で、かつ、粉末材料に対する液浸透性が良好であり、さらに、高強度の三次元造形物が得られる三次元造形用材料、及び、三次元造形物の製造方法、並びに、前記製造方法により製造された三次元造形物を提供すること。
【解決手段】(A)粉末材料、及び、(B)前記(A)粉末材料を結合する結合剤を含み、前記結合剤が、複素芳香環基を有する単量体単位を有する重合体を含有することを特徴とする三次元造形用材料。また、支持体4上に粉末材料を所定の厚さを有する層1に形成する層形成工程、及び、造形対象物を平行な断面で切断した断面形状になるように前記層における粉末材料を結合剤により結合させる結合工程を順次繰り返すことを含み、前記粉末材料及び前記結合剤として前記三次元造形用材料を用いることを特徴とする三次元造形物10の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元造形用材料、三次元造形物の製造方法及び三次元造形物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、立体的な造形対象物を平行な複数の面で切断した断面形状とし、各断面形状に対応させて粉末材料の薄層を結合剤により結合し、この結合された薄層よりなる断面形状を順次積層させることによって、造形対象物の三次元モデルとなる造形物を作製する技術が知られている。
【0003】
このような技術は、ラピッドプロトタイピングと呼ばれ、部品試作及びデザイン確認用途などに利用することができる。近年、安価かつ高速、さらにはカラーモデリング作製に適するインクジェットを利用する方式のものが提案されており、例えば特許文献1及び特許文献2に開示されたものがある。この立体造形の具体的な手順を以下に説明する。
【0004】
特許文献1に記載された立体造形の手順について説明する。まず、ブレード機構により粉末材料を平らな表面上に均一な厚さを有する薄層に拡げ、この粉末材料の薄層表面に、インクジェットノズルヘッドを走査させて、造形対象物を平行な断面により切断した断面形状に対応させて、結合剤を吐出する。結合剤が吐出された領域の粉末材料は、必要な操作を施すことにより、粉末材料を接合状態にするとともに、既に形成済の下層の断面形状とも結合する。そして、造形物全体が完成するまで、粉末材料の薄層を上部に順次積層しながら、結合剤を吐出する工程を繰り返す。最終的に、結合剤が吐出されなかった領域は、粉末材料が個々に独立して互いに接合しない状態であるため、造形物を装置から取り出す際に、粉末材料は容易に除去することができ、目的とする造形物を分離できる。以上の操作により、所望の三次元造形物が製造できる。
特許文献2には、a)反応性構成材料を含む第1のインクジェット噴射可能組成物と、硬化剤を含む第2のインクジェット噴射可能組成物とを基板上へ別個にインクジェット噴射し、前記反応性構成材料と前記硬化剤とが接触し、その結果として反応が生じ、紫外線硬化を必要とすることなく固化組成物を形成し、b)前記固化組成物の複数の層が蓄積されるように前記インクジェット噴射ステップを繰り返すことにより、複数の層が固体の三次元物体を形成するために互いに連続的に結合される、固体の三次元物体を自由造形するための方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−531220号公報
【特許文献2】特開2005−35299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的はインクジェット吐出適性が良好で、かつ、粉末材料に対する液浸透性が良好であり、さらに、高強度の三次元造形物が得られる三次元造形用材料、及び、三次元造形物の製造方法、並びに、前記製造方法により製造された三次元造形物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題は、以下の<1>、<8>及び<10>に記載の手段により解決された。好ましい実施態様である<2>〜<7>及び<9>とともに以下に記載する。
<1> (A)粉末材料、及び、(B)前記(A)粉末材料を結合する結合剤を含み、前記結合剤が、複素芳香環基を有する単量体単位を有する重合体を含有することを特徴とする三次元造形用材料、
<2> 前記複素芳香環基を有する単量体単位が、下記式(1)で表される、<1>に記載の三次元造形用材料、
【0008】
【化1】

(式(1)中、R1は水素原子又は炭素数1〜6の炭化水素基を表し、Yは単結合又は炭素数1〜6のアルキレン基、エステル結合、エーテル結合、ウレタン結合、チオエーテル結合、及び、これらの組み合わせよりなる群から選択された二価の連結基を表し、R2は、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子よりなる群から選択された少なくとも1つのヘテロ原子を有する5員環又は6員環の複素芳香環基を表す。)
【0009】
<3> 式(1)においてYが単結合を表す、<2>に記載の三次元造形用材料、
<4> 式(1)においてR2がヘテロ原子として窒素原子を有する複素芳香環基を表す、<2>又は<3>に記載の三次元造形用材料、
<5> 式(1)において、R2がピリジル基、チエニル基、及び、フリル基よりなる群から選択される、<2>〜<4>いずれか1つに記載の三次元造形用材料、
<6> 式(1)において、R2がピリジル基である、<2>〜<5>いずれか1つに記載の三次元造形用材料、
<7> 前記複素芳香環基を有する単量体単位を有する重合体の分子量が3,000以上100,000以下である、<1>〜<6>いずれか1つに記載の三次元造形用材料、
<8> 支持体上に粉末材料を所定の厚さを有する層に形成する層形成工程、及び、造形対象物を平行な断面で切断した断面形状になるように前記層における粉末材料を結合剤により結合させる結合工程を順次繰り返すことを含み、前記粉末材料及び前記結合剤として<1>〜<7>いずれか1つに記載の三次元造形用材料を用いることを特徴とする三次元造形物の製造方法、
<9> 前記結合工程において、前記結合剤をインクジェットにより吐出する、<8>に記載の三次元造形物の製造方法、
<10> <8>又は<9>に記載の三次元造形物の製造方法により製造された三次元造形物。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、インクジェット吐出適性が良好で、かつ、液浸透性が良好であり、さらに、高強度の三次元造形物が得られる三次元造形用材料、及び、三次元造形物の製造方法、並びに、前記製造方法により製造された三次元造形物を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の三次元造形物の製造方法の一実施態様について主要な工程を示す模式図である。
【図2】三次元造形物の製造において隣接する各層に形成された断面形状を模式的に示す斜視図である。
【図3】第2ステップで生成される格子状に細分化された断面データの一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
I.三次元造形用材料
本発明の三次元造形用材料は、(A)粉末材料、及び、(B)前記(A)粉末材料を結合する結合剤を含み、前記結合剤が、複素芳香環基を有する単量体単位を有する重合体を含有することを特徴とする。
【0013】
特許文献1では粒子材料として無機化合物を用い、主たる硬化作用として造形用材料の溶媒である水と粒子材料が起こす水和結合力を用いているが、これら粒子素材は浸透の過程で非着色粒子を造形済モデル表面に付着させてしまい、造形物の色彩が低下してしまうという問題点がある。粒子材料として有機化合物を用いる場合、特許文献1に示される結合助剤としてのポリマー材料だけでは三次元造形物を形成するための強度が発現せず、また造形用材料中の結合助剤含有量を高めてしまうと粘度が向上するため、吐出適性が低下してしまうため、色彩を向上させながら高強度の造形物を得るという、双方を満足させられない問題点があった。また粘度の向上により粒子に対する液浸透性が低下し、インクジェットの吐出通りに液が浸透せず、造形精度が低下し、造形物の形状が悪化するという問題もあった。
【0014】
特許文献2では2液系とすることで有機化合物の硬化を可能にしているが、インクジェットノズルが複数となることによるシステムの複雑化、及び、反応性有機化合物を用いることによる経時安定性の低下という問題点があった。
【0015】
本発明においては鋭意研究を進めた結果、結合剤として複素芳香環基を有する単量体単位を有する重合体(ポリマー)を用いることで、水溶性ポリマー特有の物理結合力による粘度の向上を抑え、吐出安定性・液浸透性を維持しながら、水溶媒を含むことでノズル乾燥を防ぎ、高強度の三次元造形物を得ることができた。
以下それぞれの成分について詳述する。なお、以下の説明において、数値範囲を示す「A〜B」の記載は、特に断りのない限り、「A以上B以下」を意味する。すなわち、端点であるA及びBを含む数値範囲を意味する。
【0016】
(A)粉末材料
本発明に使用する粉末材料は、平均粒子径が100μm以下の微粉末であることが好ましく、平均粒子径が0.8〜50μmの微粉末であることがより好ましい。平均粒子径が上記範囲であると、得られる三次元造形物の表面光沢度が向上するので好ましい。
粉末の形状としては、無定型、球形、平板状、針状、多孔質状等どのようなものでも使用可能である。
粉末材料は有機粉末、無機粉末、無機・有機複合粉末のいずれも使用することができるが、有機粉末を用いることが好ましい。
【0017】
有機粉末としては、例えば合成樹脂粒子、天然高分子粒子等が挙げられる。合成樹脂粒子を用いることが好ましい。具体的にはアクリル樹脂、オレフィン樹脂、フェノール樹脂、スチレン樹脂、ジビニルベンゼン樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリアクリロニトリル、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、メラミンホルムアルデヒド、ポリカーボネート、スルホン重合体、ビニル重合体、カルボキシメチルセルロールス、ゼラチン、デンプン、キチン、キトサン等が挙げられる。この中で、アクリル樹脂、オレフィン樹脂、フェノール樹脂、スチレン樹脂、ジビニルベンゼン樹脂、及び、フッ素樹脂を好ましく用いることができる。また、前記樹脂は、単独で使用しても、又は、2種類以上を併用して使用してもよい。
【0018】
アクリル樹脂とは、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル等の(メタ)アクリルモノマーの単独重合又は共重合によって得られる樹脂をいう。ここで上記の(メタ)アクリル酸の表記はメタクリル酸又はアクリル酸の両方の構造をとり得ることを表す省略的表記である。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステラリル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル等が例示できる。また、アクリル樹脂として、ポリメタクリル酸メチルを好ましく用いることができる。その他のアクリル樹脂としては、例えば、三田達監訳「高分子大辞典」丸善(株)(1994年刊)6〜12頁に記載の樹脂等が挙げられる。
【0019】
オレフィン樹脂は、オレフィンの重合体を示し、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリ(1−ブテン)、ポリ(1−ペンテン)、ポリ(3−メチル−1−ブテン)、ポリ(1−ヘキセン)、ポリ(3−メチル−1−ペンテン)、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)、ポリ(1−ヘプテン)、ポリ(4−メチル−1−ヘキセン)、ポリ(5−メチル−1−ヘキセン)等が例示できる。ポリエチレン及びポリプロピレンを好ましく用いることができる。その他のオレフィン樹脂としては、例えば、三田達監訳「高分子大辞典」丸善(株)(1994年刊)102〜109頁に記載の樹脂等が挙げられる。
【0020】
フェノール樹脂は、フェノール類とアルデヒドの付加縮合より得られる樹脂を示す。付加縮合反応に酸触媒を用いるとノボラック型の樹脂が得られ、また塩基触媒を用いるとレゾール型の樹脂が得られる。フェノール類としては、フェノール、p−クレゾール、m−クレゾール、レゾルシノール等が例示できる。アルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、サリチルアルデヒド、s−トリオキサン等が例示できる。その他のフェノール類及びアルデヒド類としては、例えば、日本化学会編「第4版 実験科学講座28 高分子合成」(1992年刊)427〜430頁に記載された化合物等が挙げられる。
【0021】
スチレン樹脂は、スチレンモノマーの単独重合体又は共重合体を示す。スチレンモノマーとしては、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、α−メチルスチレン、o−クロロスチレン、p−クロロスチレン、クロロメチルスチレン等が例示できる。また、ポリスチレンを好ましく用いることができる。スチレンモノマーの共重合体については、例えば、三田達監訳「高分子大辞典」丸善(株)(1994年刊)506〜507頁に記載の共重合体等が挙げられる。
【0022】
ジビニルベンゼン樹脂は、ジビニルベンゼンモノマーの単独重合体又は共重合体を示す。ジビニルベンゼンモノマーとしては、ジビニルベンゼン、クロロジビニルベンゼン等が例示できる。また、ジビニルベンゼンモノマーと共重合させるモノマーとして、上記のスチレンモノマーが例示できる。ジビニルベンゼン樹脂として、ポリジビニルベンゼンを好ましく用いることができる。
【0023】
フッ素樹脂は、フッ素を含有する高分子である。フッ素樹脂としてはポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ペルフルオロビニルエーテル共重合体等が例示できる。この中で、ポリテトラフルオロエチレンを好ましく使用することができる。
【0024】
ウレタン樹脂は、多官能イソシアネートとポリオールの付加重合により得られるポリマーである。多官能イソシアネートとしては、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレン1,5−ジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等が例示できる。ポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、脂肪族ポリオール等が例示できる。
その他の多官能イソシアネート及びポリオールとしては、例えば、岩田敬治編「ポリウレタンハンドブック」(株)日刊工業新聞社(1987年刊)77〜81頁及び99〜117頁に記載の化合物等が挙げられる。
【0025】
無機粉末として、例えば、金属、酸化物、複合酸化物、水酸化物、炭酸塩、硫酸塩、ケイ酸塩、リン酸塩、窒化物、炭化物硫化物及びこれらの少なくとも2種以上の複合化物等を挙げることができる。具体的には、水酸化マグネシウム、シリカゲル、アルミナ、水酸化アルミニウム、硝子、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコン、酸化錫、チタン酸カリウム、硼酸アルミニウム、酸化マグネシウム、硼酸マグネシウム、水酸化カルシウム、塩基性硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム、窒化珪素、窒化チタン、窒化アルミ、炭化珪素、炭化チタン、硫化亜鉛及びこれらの少なくとも2種以上の複合化物等が挙げられる。好ましくは、水酸化マグネシウム、シリカゲル、アルミナ、水酸化アルミニウム、硝子、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム等が挙げられる。
【0026】
本発明において、これら粉末材料の中でもアクリル樹脂、ウレタン樹脂を使用することが好ましい。前記粉末材料は結合剤の浸透性が良好であるので好ましい。
【0027】
(B)結合剤
本発明の三次元造形用材料は、前記粉末材料を結合する(B)結合剤を含有する。
また、該結合剤は、複素芳香環基を有する単量体単位を有する重合体(以下、「複素芳香環基を有する単量体単位を有する重合体」を、「複素芳香環基を有するポリマー」又は「特定重合体」ともいう。)を含有する。
結合剤は前記特定重合体の他に、着色剤を含有することが好ましく、特定重合体以外のポリマー(重合体)を含有することもできる。また、さらにその他の成分を含有していてもよい。
以下、結合剤を構成する各成分について詳述する。
【0028】
<特定重合体(複素芳香環基を有する単量体単位を有する重合体)>
本発明において、三次元造形用材料を構成する結合剤は、複素芳香環基を有する単量体単位を有する重合体(複素芳香環基を有するポリマー、特定重合体)を含有する。
本発明で使用する複素芳香環基を有するポリマーとしては、下記式(1)に記載の単量体単位からなる単独重合体、及び、式(1)で表される単量体単位と、他の単量体単位とを有する共重合体が好適である。他の単量体単位は、エチレン性不飽和化合物(エチレン性不飽和モノマー)に由来するものであることが好ましい。
すなわち、特定重合体は下記式(1’)で表される単量体(モノマー)の単独重合体、又は、下記式(1’)で表される単量体(モノマー)と他の単量体(モノマー)との共重合体であることが好ましい。なお、以下の説明において、説明の便宜上、式(1’)で表される単量体(モノマー)を中心に説明を行うが、以下の記載から式(1’)で表される単量体から誘導される単量体単位(式(1)で表される単量体単位)についても、当業者であれば当然に理解できるものである。
【0029】
【化2】

【0030】
式(1)及び式(1’)中、R1は水素原子又は炭素数1〜6の炭化水素基を表し、Yは単結合又は二価の連結基を表し、R2は、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子よりなる群から選択された少なくとも1つのヘテロ原子を有する複素芳香環基を表す。
【0031】
上記式(1)及び式(1’)中、R1は水素原子又は炭素数1〜6の炭化水素基を表し、R1は水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基であることが好ましく、R1は水素原子又はメチル基であることがさらに好ましい。
【0032】
Yは単結合又は二価の連結基を表し、前記二価の連結基は、炭素数1〜6のアルキレン基、イミノ結合(−NH−)、エーテル結合(−O−)、カルボニル基(−C(=O)−)、チオエーテル結合(−S−)、及び、これらの組み合わせよりなる群から選択された二価の連結基であることが好ましい。前記のこれらを組み合わせた二価の連結基としては、エステル結合(−C(=O)−O−)、アミド結合(−NH−C(=O)−)、ウレタン結合(−NH−C(=O)−O−)、アルキレンオキシ基(例えば、エチレンオキシ基(−CH2CH2O−)、プロピレンオキシ基等)、アルキレンチオ基(例えば、エチレンチオ基(−CH2CH2S−))が例示できる。
これらの中でも、Yは単結合、又は、炭素数1〜6のアルキレン基、エステル結合、エーテル結合、ウレタン結合、チオエーテル結合、及び、これらの組み合わせよりなる群から選択された二価の連結基であることが好ましく、単結合、又は、炭素数1〜3のアルキレン基、エステル結合、アミド結合、アルキレンオキシ基、アルキレンチオ基及びこれらを組み合わせよりなる群から選択された二価の連結基であることがより好ましく、単結合であることがさらに好ましい。
【0033】
また、前記Yは、置換基を有していてもよく、該置換基としては、炭素数1〜6のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等)、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、炭素数1〜6のアルコキシ基、スルホニル基、カルボキシル基、チエニル基、アジド基等が例示でき、これらの置換基はさらに置換されていてもよい。
【0034】
2は窒素原子、酸素原子及び硫黄原子よりなる群から選択された少なくとも1つのヘテロ原子を有する複素芳香環基を表す。
2は、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子よりなる群から選択された少なくとも1つのヘテロ原子(X)を有していればよく、2つ以上のヘテロ原子を有していてもよい。また、ヘテロ原子は1種のみを有していてもよいし、窒素原子と酸素原子とを有する複素芳香環基や、窒素原子と硫黄原子とを有する複素環基のように、複数種のヘテロ原子を有していてもよい。
2は、4員環〜14員環であることが好ましく、4員環〜9員環であることがより好ましく、4員環〜6員環であることがさらに好ましく、5員環又は6員環であることが特に好ましい。
なお、R2は縮合多環を形成していてもよい。具体的には、5員環のピロリル基がさらに縮合多環を形成し、インドリル基、イソインドリル基を形成していてもよい。なお、R2がインドリル基である場合、本発明において、R2は5員環の複素芳香環基である。
【0035】
ヘテロ原子(X)は、窒素原子、硫黄原子、及び、酸素原子よりなる群から選択され、窒素原子又は酸素原子を含むこと好ましく、窒素原子を含むことがより好ましい。また、複数のヘテロ原子を有する場合には、窒素原子と硫黄原子との組み合わせ及び窒素原子と酸素原子との組み合わせが好ましく、窒素原子と酸素原子との組み合わせがより好ましい。
これらの中でも、ヘテロ原子として、窒素原子のみを有することが最も好ましい。
2におけるヘテロ原子(X)の数は、1〜4であることが好ましく、1〜2であることがより好ましく、1であることがさらに好ましい。
【0036】
2の具体例としては、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、インドール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、イソインドール、ピラゾール、ベンゾイミダゾール、プリン、オキサゾール、チアゾール、ピリジン、キノリン、ピラジン、キノキサリン、アクリジン、ピリジミン、ピリダジン及びシンノリン等から1つの水素原子を除いた基が例示できる。
これらの中でも、R2はピリジル基、チエニル基又はフリル基であることが好ましく、ピリジル基であることがより好ましい。
【0037】
式(1’)で示される単量体(モノマー)のより具体例を以下に示すが、本発明は以下の具体例に限定されるものではない。なお、本発明における化学式の一部においては、炭化水素鎖を炭素(C)及び水素(H)の記号を省略した簡略構造式で記載する。
【0038】
【化3】

【0039】
【化4】

【0040】
【化5】

【0041】
【化6】

【0042】
【化7】

【0043】
【化8】

【0044】
上記(M−1)〜(M−286)中、式(1’)で表されるモノマーとしては、(M−1)、(M−8)、(M−29)、(M−106)、(M−108)、(M−113)、(M−141)が好ましく、より好ましくは(M−1)、(M−29)、(M−106)、(M−108)であり、さらに好ましくは(M−106)、(M−108)である。
また、式(1’)で表される単量体は、分子量が50〜450であることが好ましく、より好ましくは80〜200であり、さらに好ましくは100〜150である。
【0045】
本発明の必須成分である複素芳香環基を有するポリマーは、前記式(1’)で表される単量体を水及び/又は非水溶媒中でラジカル重合することで得ることができる。また、ポリマーの粘度や表面張力等の物性を調整するために、他のラジカル重合性単量体(ラジカル重合性モノマー)と共重合することにより得ることができる。
【0046】
共重合させるラジカル重合性モノマーとしては式(1’)で表される単量体と共重合可能な化合物が用いられる。具体的にはポリマーハンドブック等に記載のラジカル重合可能な化合物であれば特に限定されないが、エチレン性不飽和結合を有する化合物であることが好ましく、例えばアクリレート、メタアクリレート、アクリルアミド類等が挙げられる。具体的には、トリルオキシエチル(メタ)アクリレート、フェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、メチレンビスアクリルアミド、1,6−ジ(メタ)アクリロイルオキシヘキサン等が例示され、好ましくは、トリルオキシエチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ジ(メタ)アクリロイルオキシヘキサン等が挙げられる。
【0047】
重合に用いる重合開始剤としては過酸化物系及びアゾ系開始剤が挙げられ、中でもアゾ系開始剤が好ましく、具体的には、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,3−ジメチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,3,3−トリメチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−イソプロピルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メチキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリン酸)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート等が挙げられる。
【0048】
重合に用いる溶媒としては極性の高い溶媒が好ましく、具体的には、水、N−メチルピロリドン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトニトリル、ジメチルスルホオキシド、メチルエチルケトン、1−メトキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。
【0049】
ポリマーの合成は前記式(1’)で表される単量体、任意に共重合可能なラジカル重合性モノマー、重合開始剤を使用することで得ることができる。具体的には、ラジカル重合性モノマー及び溶媒の混合物中に重合開始剤を添加する方法、ラジカル重合性モノマー及び重合開始剤を必要に応じて溶媒中に滴下していく方法があり、いずれの方法を用いて製造してもよい。ここで、前記「ラジカル重合性モノマー」は、式(1’)で表される化合物と、任意に共重合可能なラジカル重合性モノマーとを含む、ラジカル重合性モノマーの全体を意味する。
重合においてモノマー濃度は、重合に用いる全重合性モノマー、溶媒、重合開始剤の合計に対して5〜50重量%の範囲が好ましく、10〜40重量%がより好ましい。
【0050】
合成における加熱温度は、使用する重合開始剤の分解温度に応じて定めることが好ましく、30〜120℃が好ましく、50〜100℃がより好ましい。重合は、窒素等の不活性ガス気流下で行うことが好ましい。
【0051】
式(1’)で表される単量体と、共重合可能な他のラジカル重合性モノマーとの使用割合はモル比で、式(1’)で表される単量体とそれ以外のラジカル重合性モノマーの合計との比率が20/80〜100/0が好ましく50/50〜100/0がより好ましく、90/10〜100/0が最も好ましい。
【0052】
本発明において、複素芳香環基を有するポリマーの重量平均分子量は3,000〜300,000が好ましく、3,000〜200,000がより好ましく3,000〜100,000が最も好ましい。
【0053】
以下、複素芳香環基を有するポリマーの具体的な構造を示すがこの限りではない。なお式中の数字は各モノマー成分のモル比率を示す。Mwは重量平均分子量を示す。また、Meはメチル基を表し、Acはアセチル基を表す。
【0054】
【化9】

【0055】
【化10】

【0056】
【化11】

【0057】
【化12】

【0058】
<着色剤>
本発明において、(B)結合剤は、着色剤を含有することが好ましい。
本発明に使用できる着色剤は染料と顔料に大別され、染料が好ましく使用される。染料としては、減色法の3原色であるイエロー(Y)、マゼンタ(M)及びシアン(C)、並びに、ブラック(K)の染料を使用することにより広い範囲の色相を異なる彩度で再現することができる。以下に詳しく述べる。
【0059】
〔染料〕
本発明で用いる染料としては、ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー等の色相を有する染料が挙げられる。染料はカラーインデックス(COLOUR INDEX)に記載されている酸性染料、直接染料、塩基性染料、分散染料であれば特に限定はない。
染料をカラーインデックス(C.I.)ナンバーにて示すと、以下のものが例示できる。なお、本発明はこれらに限定されるものではない。
C.I.ダイレクトブラック:4、9、11、17、19、22、32、80、151、154、168、171、194、195等。
C.I.ダイレクトブルー:1、2、6、8、22、34、70、71、76、78、86、142、199、200、201、202、203、207、218、236、287等。
C.I.ダイレクトレッド:1、2、4、8、9、11、13、15、20、28、31、33、37、39、51、59、62、63、73、75、80、81、83、87、90、94、95、99、101、110、189、225、227等。
C.I.ダイレクトイエロー:1、2、4、8、11、12、26、27、28、33、34、41、44、48、86、87、88、132、135、142、144等。
【0060】
C.I.フードブラック:1、2等。
C.I.アシッドブラック1、2、7、16、24、26、28、31、48、52、63、107、112、118、119、121、172、194、208等。
C.I.アシッドブルー:1、7、9、15、22、23、27、29、40、43、55、59、62、78、80、81、90、102、104、111、185、254等。
C.I.アシッドレッド:1、4、8、13、14、15、18、21、26、35、37、52、249、257、289等。
C.I.アシッドイエロー:1、3、4、7、11、12、13、14、19、23、25、34、38、41、42、44、53、55、61、71、76、79等。
【0061】
C.I.リアクティブブルー:1、2、3、4、5、7、8、9、13、14、15、17、18、19、20、21、25、26、27、28、29、31、32、33、34、37、38、39、40、41、43、44、46等。
C.I.リアクティブレッド:1、2、3、4、5、6、7、8、11、12、13、15、16、17、19、20、21、22、23、24、28、29、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、45、46、49、50、58、59、63、64、180等。
C.I.リアクティブイエロー:1、2、3、4、6、7、11、12、13、14、15、16、17、18、22、23、24、25、26、27、37、42等。
C.I.リアクティブブラック:1、3、4、5、6、8、9、10、12、13、14、18等。
【0062】
プロジェットファストシアン2(Zeneca製)、プロジェットファストマゼンタ2(Zeneca製)、プロジェットファストイエロー2(Zeneca製)、プロジェットファストブラック2(Zeneca製)等。勿論、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0063】
前記染料としてはインクジェット吐出安定性の観点から、直接染料、アニオン性染料が好ましく、アニオン性染料が特に好ましい。
本発明において好適に使用できるアニオン性染料としては例えば以下のものを挙げることができる。
−イエロー用の染料−
C.I.ダイレクトイエロー 1、2、4、8、11、12、26、27、28、33、34、39、41、44、48、50、58、85、86、87、88、89、98、100、110、132、135、142、144
C.I.アシッドイエロー 1、3、4、7、11、12、13、14、17、19、23、25、29、34、36、38、40、41、42、44、53、55、61、76、79、98、99
C.I.リィアクティブイエロー 1、2、3、4、6、7、11、12、13、14、15、16、17、18、22、23、24、25、26、27、37、42
C.I.フードイエロー 3
【0064】
−マゼンタ用の染料−
C.I.ダイレクトレッド 1、2、4、8、9、11、13、15、20、23、24、28、31、33、37、39、46、51、59、62、63、73、75、79、80、81、83、87、89、90、95、99、101、110、189、197、201、218、220、224、225、226、227、228、229、230
C.I.アシッドレッド 1、4、6、8、9、13、14、15、18、21、26、27、32、35、37、42、51、52、80、83、87、89、92、106、114、115、133、134、145、158、198、249、257、265、289
C.I.リィアクティブレッド 1、2、3、4、5、6、7、8、11、12、13、15、17、19、20、21、22、23、24、28、29、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、58、59、63、64、180
C.I.フードレッド 87、92、94
【0065】
−シアン用の染料−
C.I.ダイレクトブルー 1、2、6、8、15、22、25、34、41、70、71、76、77、78、80、86、90、98、106、108、120、142、158、163、168、199、200、201、202、203、207、218、226、236、287
C.I.アシッドブルー 1、7、9、15、22、23、25、27、29、40、43、55、59、62、74、78、80、81、90、100、102、104、111、117、127、138、158、161、185、254
C.I.リィアクティブブルー 1、2、3、4、5、7、8、9、13、14、15、17、18、19、20、21、25、26、27、28、29、32、33、34、37、38、39、40、41、43、44、46、100
【0066】
−ブラック用の染料−
C.I.ダイレクトブラック 7、19、22、31、32、51、62、71、74、112、113、154、168、195
C.I.アシッドブラック 2、48、51、52、110、115、156
C.I.フードブラック 1、2
【0067】
本発明において好適に使用できる直接染料としては、例えば、以下のものを挙げることができる。
C.I.ダイレクトブラック 19、22、32、38、51
C.I.ダイレクトイエロー 1、4、26、37、44、50
C.I.ダイレクトレッド 1、4、23、31、37、39、75、81
C.I.ダイレクトブルー 1、6、15、78、86、106、199
【0068】
本発明において好適に使用できるカチオン性染料としては、例えば、以下のものを挙げることができる。
C.I.ベーシックイエロー 1、2、11、13、14、19、21、25、32、33、36、51
C.I.ベーシックレッド 1、2、9、12、13、37、38、39、92
C.I.ベーシックブルー 1、3、5、7、9、19、24、25、26、28、29、45、54、65
C.I.ベーシックブラック 2、8
【0069】
上記以外の染料としては、印刷の技術分野(例えば印刷インキ、感熱インクジェット記録、静電写真記録等のコピー用着色剤又は色校正版など)で一般に用いられるものを使用することができる。
例えば、有機合成化学協会編「染料便覧」(丸善(株)(1970年刊))、安部田貞治、今田邦彦「解説 染料化学」((株)色染社(1988年刊))、大河原信編「色素ハンドブック」(株)講談社(1986年刊)、「インクジェットプリンタ用ケミカルズ−材料の開発動向・展望調査−」((株)シーエムシー出版(1997年刊))、甘利武司「インクジェットプリンタ−技術と材料」等に記載の染料類が挙げられる。
【0070】
〔顔料〕
顔料としては、特に限定されるものではなく、一般に市販されているすべての有機顔料及び無機顔料のいずれか1以上を、分散媒としての不溶性の樹脂等に分散させたもの、あるいは顔料表面に樹脂をグラフト化したもの等を用いることができる。また、樹脂粒子を染料で染色したもの等も用いることができる。
【0071】
顔料は特に限定されず下記に挙げるようなものを使用可能である。
黒色顔料としては、特に、カーボンブラックが好適である。例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック顔料で、例えば、レイヴァン(Raven)7000、レイヴァン5750、レイヴァン5250、レイヴァン5000ULTRA、レイヴァン3500、レイヴァン2000、レイヴァン1500、レイヴァン1250、レイヴァン1200、レイヴァン1190ULTRA−II、レイヴァン1170、レイヴァン1255(以上、コロンビア社製)、ブラックパールズ(Black Pearls)L、リーガル(Regal)400R、リーガル330R、リーガル660R、モウグル(Mogul)L、モナク(Monarch)700、モナク800、モナク880、モナク900、モナク1000、モナク1100、モナク1300、モナク1400、モナク2000、ヴァルカン(Valcan)XC−72R(以上、キャボット社製)、カラーブラック(Color Black)FW1、カラーブラックFW2、カラーブラックFW2V、カラーブラックFW18、カラーブラックFW200、カラーブラックS150、カラーブラックS160、カラーブラックS170、プリンテックス(Printex)35、プリンテックスU、プリンテックスV、プリンテックス140U、プリンテックス140V、スペシャルブラック(Special Black)6、スペシャルブラック5、スペシャルブラック4A、スペシャルブラック4(以上、デグッサ社製)、No.25、No.33、No.40、No.47、No.52、No.900、No.2300、MCF−88、MA600、MA7、MA8、MA100(以上、三菱化学(株)製)等の市販品や、別途新たに調製されたものも使用することができる。しかし、本発明は、これらに限定されるものではなく、従来公知のカーボンブラックを何れも使用することができる。また、カーボンブラックに限定されず、マグネタイト、フェライト等の磁性体微粒子や、チタンブラック等を黒色顔料として用いてもよい。
【0072】
有機顔料としては、具体的には、例えば、トルイジンレッド、トルイジンマルーン、ハンザエロー、ベンジジンエロー、ピラゾロンレッド等の不溶性アゾ顔料、リトールレッド、ヘリオボルドー、ピグメントスカーレット、パーマネントレッド2B等の溶性アゾ顔料、アリザリン、インダントロン、チオインジゴマルーン等の建染染料からの誘導体、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系顔料、キナクリドンレッド、キナクリドンマゼンタ等のキナクリドン系顔料、ペリレンレッド、ペリレンスカーレット等のペリレン系顔料、イソインドリノンエロー、イソインドリノンオレンジ等のイソインドリノン系顔料、ベンズイミダゾロンエロー、ベンズイミダゾロンオレンジ、ベンズイミダゾロンレッド等のイミダゾロン系顔料、ピランスロンレッド、ピランスロンオレンジ等のピランスロン系顔料、インジゴ系顔料、縮合アゾ系顔料、チオインジゴ系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、フラバンスロンエロー、アシルアミドエロー、キノフタロンエロー、ニッケルアゾエロー、銅アゾメチンエロー、ペリノンオレンジ、アンスロンオレンジ、ジアンスラキノニルレッド、ジオキサジンバイオレット等が挙げられる。勿論、これらに限定されず、その他の有機顔料であってもよい。
【0073】
また、本発明で使用することのできる有機顔料を、カラーインデックス(C.I.)ナンバーにて示すと、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、17、20、24、74、83、86、93、97、109、110、117、120、125、128、137、138、147、148、150、151、153、154、166、168、180、185、C.I.ピグメントオレンジ16、36、43、51、55、59、61、71、C.I.ピグメントレッド9、48、49、52、53、57、97、122、123、149、168、175、176、177、180、192、215、216、217、220、223、224、226、227、228、238、240、254、255、272、C.I.ピグメントバイオレット19、23、29、30、37、40、50、C.I.ピグメントブルー15、15:1、15:3、15:4、15:6、22、60、64、C.I.ピグメントグリーン7、36、C.I.ピグメントブラウン23、25、26等が例示できる。
【0074】
<溶媒>
本発明において、結合剤は前記特定重合体及び必要に応じて着色剤、その他の添加剤を溶媒に溶解乃至分散させたものである。
前記溶媒としては、水/アルコール混合溶媒が好ましく、アルコール溶媒としてはC1〜C10の直鎖・非直鎖のアルコール、好ましくはC1〜C5の直鎖・非直鎖のアルコール(例えばメタノール・エタノール・プロパノール・イソプロパノール・ブタノール等)が用いられる。
【0075】
<その他の添加剤>
また前記成分に加えて、特性を向上させるために任意に界面活性剤等の、その他の添加剤を併用してもよい。
【0076】
本発明において、結合剤中の複素芳香環基を有するポリマーの含有量は、1重量%〜50重量%であることが好ましく、1重量%〜30重量%であることがより好ましく、1〜20重量%であることがさらに好ましい。
本発明において、結合剤の固形分濃度は三次元造形材料の全重量に対して1〜60重量%が好ましく、1〜40重量%がより好ましく、1〜30重量%が最も好ましい。
【0077】
II.三次元造形物の製造方法及び三次元造形物
本発明の三次元造形物の製造方法は、支持体上に粉末材料を所定の厚さを有する層に形成する層形成工程、及び、造形対象物を平行な断面で切断した断面形状になるように前記層における粉末材料を結合剤により結合させる結合工程を順次繰り返すことを含み、前記粉末材料及び前記結合剤として本発明の三次元造形用材料を用いることを特徴とする。
前記結合工程において、前記結合剤をインクジェットにより吐出することが好ましい。
以下、本発明の三次元造形物の製造方法を図面を参照しながら説明する。
【0078】
図1は、本発明の三次元造形物の製造方法の一実施態様について主要な工程を示す模式図である。
本発明の製造方法においては、粉末材料の薄層1が三次元造形部3に設けられた支持体(造形ステージ)4の上に形成される。支持体4は、垂直方向移動部5により支持されており、周囲を枠6により取り囲まれている。粉末供給部から支持体4上に供給された余分の粉末材料上を、Y方向(紙面と垂直な方向)に長く伸びたブレード7がX方向(紙面上左から右方向)に移動することにより薄層1が形成される。このように形成された薄層1の上に、結合剤付与部のインクジェットヘッド8から、断面形状データにしたがって、結合剤が粉末材料の薄層1上に供給され、結合剤付与領域2を形成する。この結合剤付与領域2は、乾燥手段により水分を蒸発させて硬化させることにより、粉末材料をその結合剤付与領域2において薄層全体の厚さにわたり結合して断面形状を形成し、かつそのすぐ下の断面形状とも結合する。なお、乾燥手段としては、三次元造形部全体を不図示のフードで覆い、温風器により、このフード内の温度調節を行っている。
引き続いて、垂直方向移動部5を1スライスピッチだけ下方に移動させ、新たな粉末材料層を形成する。
新たに形成された薄層の上に、結合剤付与部のインクジェットヘッド8から、隣接する次の断面形状データにしたがって、結合剤が供給され、新たな結合剤付与領域2が形成される。この領域を乾燥手段により乾燥させて硬化させることにより粉末材料を結合する。
粉末材料の薄層1の形成、結合剤の供給及び乾燥硬化を必要な回数順次繰り返した後、結合剤が付与されていない領域の粉末材料を分離することにより、三次元造形物10を得ることができる。
図2は、上記のような三次元造形物の製造において隣接する各層に形成された断面形状を模式的に示す斜視図である。
【0079】
本発明の三次元造形物の製造方法における好ましい一実施態様について、以下に説明する。以下の5ステップは、(粉末)層形成工程及び結合工程(以下、断面形状形成工程ともいう。)に先立って、三次元形状色彩データ作成工程及び断面毎の着色断面形状データ作成工程を実施するものである。
【0080】
第1ステップでは、コンピュータに、表面に着色模様等が施された三次元造形対象物を表現したモデルデータを作成させる。造形するための基になるモデルデータには、一般の3D−CADモデリングソフトウェアで作成されるカラー三次元モデルデータを使用することができる。また、三次元形状入力装置で計測された三次元着色形状のデータ及びテクスチャを利用することも可能である。
【0081】
第2ステップでは、コンピュータが上記のモデルデータから造形対象物を水平方向にスライスした各断面ごとの断面データを作成する。モデルデータから積層する粉末の一層分の厚みに相当するピッチ(層厚t)でスライスされた断面体を切り出し、断面の存在する領域を示す形状データ及び彩色データを断面データとして作成する。なお、本発明において、「形状データ」及び「彩色データ」を併せて「着色(断面)形状データ」ともいう。
続いて、造形対象物を造形する際における粉末層の厚さ(断面データ作成の際のスライスピッチ)及び積層数(着色形状データのセット数)に関する情報が、コンピュータからパターン作成装置の駆動制御部に入力される。
【0082】
第3ステップでは、造形ステージにおいて三次元造形物を製造する材料となる粉末材料の供給を行う。粉末材料のカウンター回転機構を用いて、粉末材料を均一な厚さを有する層状に敷き詰め、所定量の粉末を供給完了した後、粉末材料の供給を停止する。
なお、本発明において、「層形成工程及び断面形状形成工程を順次繰り返す」とは、(1)新たな層形成工程を完了した後にその新たな層全面に対して断面形状を形成する工程を実施する以外に、(2)新たな層形成工程を実施しながら、その新たな層の形成が完結する前に、新たに形成された層の領域に対して断面形状を形成することを含むものである。後者の例は、特開2002−307562号公報に例示されている。
【0083】
第4ステップでは、駆動制御部の制御の下に、切断面の着色形状データに基づき着色した断面形状を形成する工程である。この工程は非接触の方式を採用することが好ましい。代表例としてインクジェット方式を例にとり以下説明する。
第2ステップで作成された形状データ及び彩色データに基づき、格子状に細分化したCMY各色のビットマップ情報に変換して、インクジェットヘッドをXY平面内に移動させる。そして、移動中に彩色データに基づいて各インクジェット吐出ノズルから結合剤の吐出を適宜に行わせる。結合剤としては、少なくとも1種の着色された結合剤、白色の結合剤、及び、無色透明の結合剤よりなる群から選ばれた2種以上の結合剤を使用する。
【0084】
図3は第2ステップで生成される格子状に細分化された断面データの一例を示す平面図である。図3において、斜線を付した格子が結合剤の吐出される領域である。このとき、造形物の最外層に位置する格子点の吐出倍率を高くしてもよい。途中の断面形状では外表面に相当する輪郭格子点に内部格子点よりも多量の結合剤を吐出させることが好ましい。輪郭格子点に隣接する数格子分の隣接格子点にまで吐出倍率を高くしてもよい。隣接する数格子とは、1〜10格子分であることが好ましく、1〜5格子分とすることがより好ましい。
吐出倍率の調節は、1回の吐出量を変化すること、及び/又は、同じ格子点への吐出回数を多くすることにより、可能である。
【0085】
輪郭格子点のみの吐出倍率を大きくすることが、制御が単純であるため好ましい。例えば、輪郭格子点のみの吐出倍率を内部格子点の2倍にする等である。隣接格子点の1つおきに吐出倍率を2倍とすることも可能である。吐出回数のみの制御ですめば、1回の吐出量を調節するよりも簡便な制御で済むことになる。例えば、輪郭格子点及び1層の隣接格子点に対する吐出量を、1回、2回又は3回の吐出回数の調節により多くすることが、1つの好ましい実施態様である。
【0086】
結合剤の1回あたりの吐出量を0.66〜1.5倍に調節することにより、吐出倍率をさらに細かく調節できる。また、1格子点への吐出回数の調節と併用すると、さらに微妙な吐出倍率の調製が可能である。
【0087】
輪郭格子点への吐出量を増やすと、結合剤が所定の領域を超えて滲み出し、得られる三次元造形物の表面平滑性が損なわれる傾向もある。このような場合には、結合剤とは相溶しない滲み出し防止液を造形物断面形状の輪郭格子点の外側にこの輪郭に沿って配置する等の手段により結合剤の滲み出しを防止することもできる。
【0088】
着色された結合剤としては、減色法の3原色である、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の3色の組み合わせとすることが好ましい。本発明において、イエローに着色された結合剤を「イエロー結合剤」、マゼンタに着色された結合剤を「マゼンタ結合剤」、シアンに着色された結合剤を「シアン結合剤」という。M染料及びC染料は濃淡2種類に着色した結合剤としてもよい。無色の結合剤は、CMYの色濃度を調節するために使用することができる。また、チタンホワイト等の白色顔料を含む結合剤(白色結合剤)や黒(ブラック)染料で着色した結合剤(ブラック結合剤)を併用して所望の効果を発現させることができる。
着色した結合剤、無色の結合剤及び白色結合剤の吐出総量は単位面積あたり、例えば1格子点当たり、又は、隣接4格子点当たり、一定となるようにすることが好ましい。ただし、既に説明したように、輪郭格子点においては、これらの結合剤の総量を、内部格子点よりも多くする方が好ましい。
なお、着色した断面形状の別の形成工程例として、形状データに基づき無色のUV硬化性結合剤のみを粉末材料に吐出して紫外線照射により硬化した後に、その層の彩色データに基づき、結合剤を含まない通常のCMYインクジェットを結合した粉末材料層上に吐出する2段階の工程とすることもできる。この場合には、無色の結合剤の吐出倍率を輪郭格子点で高くすることにより、本発明の目的を達成することができる。
【0089】
結合剤の吐出と同時又は吐出後に乾燥手段により結合剤中の水分を蒸発させることにより、粉末材料の接合体である断面形状が生成される。
造形部を約35〜40℃に保つことにより、結合剤中に存在した水分を蒸発させて乾燥させることができる。
【0090】
第3ステップ〜第4ステップを順次繰り返すことにより、造形対象物を複数の面で切断した切断面に対応する粉末材料の着色した結合体を順次積層形成して三次元造形物を製造することができる。
なお、結合剤が塗布されない粉末材料の領域では粉末が個々に独立した状態を保持している。
【0091】
第5ステップでは、結合剤が付与されていない領域の粉末材料を分離して、結合剤により結合された粉末の結合体(三次元造形物)を取り出す。なお、結合されなかった粉末材料は回収して、再度材料として利用することが可能である。
【実施例】
【0092】
以下本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例において、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「重量%」を示す。
【0093】
合成例(1):複素芳香環基を持つポリマーFP−1の合成
4−ビニルピリジン(例示モノマーM−106)100部をN−メチルピロリドン溶液に20%となるように溶解し、窒素気流下で80℃に加温し、1時間撹拌を行った。これにジメチル2,2’−アゾビスイソブチラート1部を添加して2時間撹拌を行った。その後90℃に昇温し、ジメチル2,2’−アゾビスイソブチラート1部を入れて再度2時間撹拌を行った。反応後室温まで放冷し、酢酸エチルによって再沈・洗浄を行い、減圧乾燥を行うことで白色粉体としてポリマーFP−1を得た。得られた白色粉体は重合率97%で重量平均分子量は10,000であった。
【0094】
合成例(2):複素芳香環基を持つポリマーFP−2の合成
4−ビニルピリジン(例示モノマーM−106)100部の代わりに3−ビニルフラン(例示モノマーM−1)100部を使用した以外は合成例(1)と同様にして白色粉体としてポリマーFP−2を得た。得られた白色粉体は重合率97%で重量平均分子量は12,000であった。
【0095】
合成例(3):複素芳香環基を持つポリマーFP−3の合成
4−ビニルピリジン(例示モノマーM−106)100部の代わりにビニルチオフェン(例示モノマーM−29)100部を使用した以外は合成例(1)と同様にして白色粉体としてポリマーFP−3を得た。得られた白色粉体は重合率97%で重量平均分子量は11,000であった。
【0096】
合成例(4):複素芳香環基を持つポリマーFP−4の合成
ピリジン−4−アクリルアミド(例示モノマーM−111)90部、メタクリル酸メチル10部をN−メチルピロリドン溶液に30%となるように溶解し、窒素気流下で80℃に加温し、1時間撹拌を行った。これにジメチル2,2’−アゾビスイソブチラート1部を添加して2時間撹拌を行った。その後90℃に昇温し、ジメチル2,2’−アゾビスイソブチラート1部を入れて再度2時間撹拌を行った。反応後室温まで放冷し、酢酸エチルによって再沈・洗浄を行い、減圧乾燥を行うことで白色粉体としてポリマーFP−4を得た。得られた白色粉体は重合率96%で重量平均分子量は11,000であった。
【0097】
合成例(5):複素芳香環基を持つポリマーFP−5の合成
ピリジン−4−アクリルアミド(例示モノマーM−111)90部、メタクリル酸メチル10部の代わりに4−ビニルピリジン(例示モノマーM−106)50部、アクリルアミド50部を使用した以外は合成例(4)と同様にして、白色粉体としてポリマーFP−5を得た。得られた白色粉体は重合率99%で重量平均分子量は12,000であった。
【0098】
合成例(6):複素芳香環基を持つポリマーFP−6の合成
ピリジン−4−アクリルアミド(例示モノマーM−111)90部、メタクリル酸メチル10部の代わりに4−ビニルピリジン20部(例示モノマーM−106)、アクリルアミド80部を使用する以外は合成例(4)と同様にして、白色粉体としてポリマーFP−6を得た。得られた白色粉体は重合率99%で重量平均分子量は14,000であった。
【0099】
合成例(7):複素芳香環基を持つポリマーFP−7の合成
ピリジン−4−アクリルアミド(例示モノマーM−111)90部、メタクリル酸メチル10部の代わりに4−ビニルピリジン90部(例示モノマーM−106)、アクリルアミド8部、メタクリル酸メチル2部を使用した以外は合成例(4)と同様にして、白色粉体としてポリマーFP−7を得た。得られた白色粉体は重合率99%で重量平均分子量は12,000であった。
【0100】
合成例(8):複素芳香環基を持つポリマーFP−8の合成
4−ビニルピリジン(例示モノマーM−106)90部、アクリルアミド10部をN−メチルピロリドン溶液に40%となるように溶解し、窒素気流下で80℃に加温し、1時間撹拌を行った。これにジメチル2,2’−アゾビスイソブチラート1部を添加して2時間撹拌を行った。その後90℃に昇温し、ジメチル2,2’−アゾビスイソブチラート1部を入れて再度2時間撹拌を行った。反応後室温まで放冷し、酢酸エチルによって再沈・洗浄を行い、減圧乾燥を行うことで白色粉体としてポリマーFP−8を得た。得られた白色粉体は重合率99%で重量平均分子量は120,000であった。
【0101】
合成例(9):複素芳香環基を持つポリマーFP−9の合成
4−ビニルピリジン(例示モノマーM−106)90部、アクリルアミド10部をN−メチルピロリドン溶液に50%となるように溶解し、窒素気流下で80℃に加温し、1時間撹拌を行った。これにジメチル2,2’−アゾビスイソブチラート1部を添加して2時間撹拌を行った。その後90℃に昇温し、ジメチル2,2’−アゾビスイソブチラート1部を入れて再度2時間撹拌を行った。反応後室温まで放冷し、酢酸エチルによって再沈・洗浄を行い、減圧乾燥を行うことで白色粉体としてポリマーFP−9を得た。得られた白色粉体は重合率99%で重量平均分子量は200,000であった。
【0102】
合成例(10):複素芳香環基を持つポリマーFP−10の合成
ピリジン−4−アクリルアミド(例示モノマーM−111)90部、メタクリル酸メチル10部の代わりにフラン−3−アクリルアミド90部、メタクリル酸メチル10部を使用した以外は合成例(4)と同様にして、白色粉体としてポリマーFP−10を得た。得られた白色粉体は重合率99%で重量平均分子量は70,000であった。
【0103】
合成例(11):複素芳香環基を持つポリマーFP−11の合成
ピリジン−4−アクリルアミド(例示モノマーM−111)90部、メタクリル酸メチル10部の代わりチオフェン−3−アクリルアミド(M−34)100部を使用した以外は合成例(4)と同様にして、白色粉体としてポリマーFP−11を得た。得られた白色粉体は重合率99%で重量平均分子量は50,000であった。
【0104】
合成例(12):複素芳香環基を持つポリマーFP−12の合成
ピリジン−4−アクリルアミド(例示モノマーM−111)90部、メタクリル酸メチル10部の代わりに、例示モノマーM−268を90部、メタクリル酸メチル10部を使用した以外は合成例(4)と同様にして、白色粉体としてポリマーFP−12を得た。得られた白色粉体は重合率99%で重量平均分子量は58,000であった。
【0105】
合成例(13):複素芳香環基を持つポリマーFP−13の合成
ピリジン−4−アクリルアミド(例示モノマーM−111)90部、メタクリル酸メチル10部の代わりに、例示モノマーM−230を90部、メタクリル酸メチル10部を使用した以外は合成例(4)と同様にして、白色粉体としてポリマーFP−13を得た。得られた白色粉体は重合率99%で重量平均分子量は56,000であった。
【0106】
合成例(14):複素芳香環基を持つポリマーFP−14の合成
ピリジン−4−アクリルアミド(例示モノマーM−111)90部、メタクリル酸メチル10部の代わりに、例示モノマーM−192を90部、メタクリル酸メチル10部を使用した以外は合成例(4)と同様にして、白色粉体としてポリマーFP−14を得た。得られた白色粉体は重合率99%で重量平均分子量は61,000であった。
【0107】
合成例(15):複素芳香環基を持つポリマーFP−15の合成
ピリジン−4−アクリルアミド(例示モノマーM−111)90部、メタクリル酸メチル10部の代わりに、例示モノマーM−186 90部、メタクリル酸メチル10部を使用した以外は合成例(4)と同様にして、白色粉体としてポリマーFP−15を得た。得られた白色粉体は重合率99%で重量平均分子量は64,000であった。
【0108】
合成例(16):複素芳香環基を持つポリマーFP−16の合成
ピリジン−4−アクリルアミド(例示モノマーM−111)90部、メタクリル酸メチル10部の代わりに、例示モノマーM−283 90部、メタクリル酸メチル10部を使用した以外は合成例(4)と同様にして、白色粉体としてポリマーFP−16を得た。得られた白色粉体は重合率99%で重量平均分子量は62,000であった。
【0109】
合成例(17):複素芳香環基を持つポリマーFP−17の合成
ピリジン−4−アクリルアミド(例示モノマーM−111)90部、メタクリル酸メチル10部の代わりに、例示モノマーM−281を90部、メタクリル酸メチル10部を使用した以外は合成例(4)と同様にして、白色粉体としてポリマーFP−17を得た。得られた白色粉体は重合率99%で重量平均分子量は64,000であった。
【0110】
合成例(18):複素芳香環基を持つポリマーFP−18の合成
ピリジン−4−アクリルアミド(例示モノマーM−111)90部、メタクリル酸メチル10部の代わりに、セレノフェン−2−アクリルアミド100部を使用した以外は合成例(4)と同様にして、白色粉体としてポリマーFP−18を得た。得られた白色粉体は重合率99%で重量平均分子量は54,000であった。
【0111】
(三次元造形用材料の製造)
<三次元造形用材料:結合剤T−1>
以下の成分を撹拌機により撹拌することで三次元造形用インクジェット吐出材料(結合剤)を得た。
ポリマーFP−1:10部
水:20部
メタノール:60部
C.I.アシッドレッド 1:10部
【0112】
<三次元造形用材料:結合剤T−2〜T−27>
ポリマーFP−1又はC.I.アシッドレッド 1を表1に示すように変更した以外は結合剤T−1と同様にして結合剤T−2〜T−27を得た。
【0113】
(評価法)
<三次元モデルの作製>
粉末材料が800μmの厚さになるように塗設用ブレード及び下降・上昇するステージを用い有機粒子(粉末材料)としてハイパールM4003(根上工業(株)製、ポリメタクリル酸メチル樹脂)を敷設し、その上にディスペンサとして武蔵エンジニアリング(株)製非接触式ディスペンサJETMASTER2、卓上3軸ロボットとして武蔵エンジニアリング(株)製SHOT mini SLを用い、三次元造形用材料(結合剤)を縦2.5cm×横2.6cmの範囲内に28Gのノズルを用いて0.15〜0.20Mpaの圧力をかけることで0.5mmの間隔を空けて縦50回・横52回、計2,600回打滴した。浸透後に再度800μmの厚さになるように塗設用ブレード及び下降・上昇するステージを用い有機粒子としてM4003を敷設し、打滴することを計4回繰り返すことで縦2.5cm×横2.6cm×高さ3.2mmのプレートを作製した。
【0114】
<強度評価>
作製したプレートを1cmの間隔をあけた台上に、間隔の中央とプレートの中央が一致するように橋かけ、プレートの中央に直径5mmの鉄製円柱によって負荷をかけ、プレートが破断するまでに耐えられた最高圧力によって以下の評価を行い点数付けした。
・耐圧500g以上:5点
・耐圧400g以上〜500g未満:4点
・耐圧300g以上〜400g未満:3点
・耐圧200g以上〜300g未満:2点
・耐圧100g以上〜200g未満:1点
・耐圧100g未満:0点
【0115】
<吐出安定性評価>
前記方法による三次元造形物の作製中にノズル詰まり(ノズルをメタノールによる洗浄を行わない限り造形が継続できない状態)を起こした回数によって以下の点数付けを行った。なお、ノズル詰まり後は、造形を一時停止しノズルを洗浄することによって造形を再開する。
・ノズル詰まり0回:5点
・ノズル詰まり1回:4点
・ノズル詰まり2回:3点
・ノズル詰まり3回:2点
・ノズル詰まり4回:1点
・ノズル詰まり5回以上:0点
【0116】
(液浸透性評価)
ハイパールM4003に対して0.1mlの造形用材料をシリンジによって表面が荒れないように滴下し、遠藤科学(株)製接触角測定装置にて滴下液体の表面の接触角が浸透によって1度以下になるまでの時間により以下の点数付けを行った。
・30秒未満:5点
・60秒未満:4点
・120秒未満:3点
・360秒未満:2点
・600秒未満:1点
・600秒以上:0点
【0117】
結合剤T−1〜T−27を使用して三次元造形物を作製し、上記の評価を行った。結果を表1に示す。
【0118】
【表1】

【符号の説明】
【0119】
1:薄層
2:結合剤付与領域
3:三次元造形部
4:支持体(造形ステージ)
5:垂直方向移動部
6:枠
7:ブレード
8:インクジェットヘッド
10:三次元造形物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)粉末材料、及び、
(B)前記(A)粉末材料を結合する結合剤を含み、
前記結合剤が、複素芳香環基を有する単量体単位を有する重合体を含有することを特徴とする
三次元造形用材料。
【請求項2】
前記複素芳香環基を有する単量体単位が、下記式(1)で表される、請求項1に記載の三次元造形用材料。
【化1】

(式(1)中、R1は水素原子又は炭素数1〜6の炭化水素基を表し、Yは単結合又は炭素数1〜6のアルキレン基、エステル結合、エーテル結合、ウレタン結合、チオエーテル結合、及び、これらの組み合わせよりなる群から選択された二価の連結基を表し、R2は、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子よりなる群から選択された少なくとも1つのヘテロ原子を有する5員環又は6員環の複素芳香環基を表す。)
【請求項3】
式(1)においてYが単結合を表す、請求項2に記載の三次元造形用材料。
【請求項4】
式(1)においてR2がヘテロ原子として窒素原子を有する複素芳香環基を表す、請求項2又は3に記載の三次元造形用材料。
【請求項5】
式(1)において、R2がピリジル基、チエニル基、及び、フリル基よりなる群から選択される、請求項2〜4いずれか1つに記載の三次元造形用材料。
【請求項6】
式(1)において、R2がピリジル基である、請求項2〜5いずれか1つに記載の三次元造形用材料。
【請求項7】
前記複素芳香環基を有する単量体単位を有する重合体の分子量が3,000以上100,000以下である、請求項1〜6いずれか1つに記載の三次元造形用材料。
【請求項8】
支持体上に粉末材料を所定の厚さを有する層に形成する層形成工程、及び、
造形対象物を平行な断面で切断した断面形状になるように前記層における粉末材料を結合剤により結合させる結合工程を順次繰り返すことを含み、
前記粉末材料及び前記結合剤として請求項1〜7いずれか1つに記載の三次元造形用材料を用いることを特徴とする
三次元造形物の製造方法。
【請求項9】
前記結合工程において、前記結合剤をインクジェットにより吐出する、請求項8に記載の三次元造形物の製造方法。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の三次元造形物の製造方法により製造された三次元造形物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−228103(P2010−228103A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−75002(P2009−75002)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】