三量体IL−1Ra
三量体形成ドメインとIL−1Raポリペプチド配列とを有する融合タンパク質を含むインターロイキン−1受容体アンタゴニスト(IL−1Ra)。この融合タンパク質は、IL−1により媒介される疾患を治療するための医薬組成物に使用される三量体複合体の一部である。リウマチ様関節炎および糖尿病などの炎症性疾患の効果的治療を記載する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照としてその全体が本明細書に援用される2008年10月8日出願の米国仮出願番号第60/978,254号の利益を主張する。
【0002】
本発明は、インターロイキン1により媒介される疾患の治療に関する。より具体的には、本発明は、このような疾患の治療に有用なインターロイキン1受容体アンタゴニスト(IL−1Ra)に関する。
【背景技術】
【0003】
IL−1ファミリーは、自然免疫系の重要な一部分を担っており、適応免疫系の調節物質でもある。局所組織におけるIL−1とIL−1Raとの間のバランスは、炎症性疾患の発症可能性およびそれに起因する構造的損傷に影響を与える。過剰量のIL−1存在下では、関節、肺、胃腸管、中枢神経系(CNS)または血管に、炎症性疾患および自己免疫疾患が発症し得る。IL−1Raによるヒト疾患の治療は、組換えIL−1Raの注入により、または遺伝子療法アプローチにより実施される。組換えIL−1Raによる治療はリウマチ様関節炎(RA)に対して承認されており、変形性関節炎(OA)に対しては第二相試験が進行中である。
【0004】
多くのヒト疾患におけるIL−1の重要な炎症誘発性の役割が、ここ10年間にわたって記載されている。IL−1とIL−1Raとの間のバランスは、リウマチ様関節炎(RA)、変形性関節炎(OA)、炎症性腸疾患(IBD)、肉芽腫性および線維性肺障害、腎疾患、肝臓疾患および膵疾患、移植片対宿主疾患(GVHD)、白血病、癌、骨粗しょう症、糖尿病、中枢神経系疾患、感染症および動脈疾患などの多様な動物疾患モデルにおいて広範に研究されている。これら疾患の各々において、局所のIL−1の過剰産生および/またはIL−1Raの産生不足が、被験体に疾患を発症し易くさせる。IL−1Raの治療的投与は、組織損傷の予防に有効であることが示されている(非特許文献1を参照)。
【0005】
IL−1ファミリーは、2つのアゴニストであるIL−1αとIL−1β;特異的な受容体アンタゴニストであるIL−1Ra;ならびに3つの異なる受容体であるIL−1RタイプI(IL−1RI)、IL−1RタイプII(IL−1RII)およびIL−1受容体アクセサリータンパク質(IL−1R AcP)からなる。IL−1RIは、215残基の長い細胞質ドメインを有する80kDaのタンパク質である。生物学的に不活性なIL−1RIIは、29残基の短い細胞質ドメインを有する60kDaのタンパク質である。IL−1R AcPは、一本鎖のIL−1RIにIL−1αまたはIL−1βが結合した後に、その複合体に動員される。IL−1RIおよびIL−1R AcPの細胞質ドメイン近傍で活性化されるシグナル伝達経路としては、NF−κB経路、JNK/AP−1経路、およびp38MAPキナーゼ経路が挙げられる。IL−1RIIは、細胞膜上で双方のIL−1を結合するデコイ受容体として、また体液相中の可溶性受容体として機能し、そのことによってIL−1が機能的なIL−1RIと相互作用することを防ぐ。
【0006】
IL−1ファミリーにおける第三のリガンド、IL−1Raは、双方のIL−1Rに結合するが細胞を活性化することはできない、IL−1の構造的な変異体である。IL−1Raは、IL−1αに18%のアミノ酸相同性を有し、IL−1βに26%のアミノ酸相同性を有する、17kDaのタンパク質である。元々イソ型と記載されていたIL−1Raは、単球、マクロファージ、好中球、および他の細胞から分泌され、現在ではsIL−1Raと称されている。現在まで、IL−1Raのさらに3つの細胞内イソ型が記載されている。上流のエキソンから別の転写スプライス機構によって作出されるIL−1Raの18kDa体はicIL−1Ra1と称され、ケラチノサイトおよび他の上皮細胞、単球、組織マクロファージ、線維芽細胞および内皮細胞中に見られる。ヒト白血球からクローン化されたIL−1RaのcDNAは、そのcDNAの5’領域に挿入断片として、さらに63bpの配列を含有する。icIL−1Ra3と称されるIL−1Raの15kDaのイソ型は、単球、マクロファージ、好中球および肝細胞中に見られ、別の転写スプライスと別の翻訳開始の双方により作出され得る。
【0007】
可溶性のIL−1RaとicIL−1Ra1は双方ともIL−1Rに等しく良好に結合するが、icIL−1Ra3は受容体との弱い結合性を示す。IL−1Raは、IL−1RIに結合するが、IL−1R AcPとIL−1RIとの結合を防ぐことにより特異的な受容体アンタゴニストとして機能し、その結果、シグナル伝達経路を開始できない。
【0008】
デコイ受容体IL−1RIIは、細胞膜上および可溶性受容体として体液相中の両方でIL−1と結合し、IL−1が機能的なIL−1RIと相互作用するのを防ぐ。したがって、可溶性のIL−1RIIおよびIL−1Raは、IL−1を協同的に阻害することができる。可溶性のIL−RIは、IL−1およびIL−1Raに結合することができるが、IL−1とIL−1Raとの間のバランスにより、可溶性のIL−1RIは炎症誘発剤として作用するようである。
【0009】
KINERET(登録商標)は、Amgenからの大腸菌産生IL−1Raであり、進行性のリウマチ様関節炎患者に利益を与えることが示されている。KINERET(登録商標)は、1日1回皮下注射する必要がある。皮下注射で、KINERET(登録商標)は、4時間から6時間の範囲の半減期を有し、静脈内注射では、半減期はおよそ2.5時間である。IL−1Raは腎クリアランスにより除去される。KINERET(登録商標)はメチオニン基の存在により、天然のIL−1受容体アンタゴニストとは異なるIL−1の特異的受容体アンタゴニストである。KINERET(登録商標)は、単独でまたはメトトレキサートと組み合わせて投与すると、臨床的徴候および症状における改善、X線撮影上での進行の減少、患者の機能、痛みおよび疲労における改善により評価される利益を患者に与えることが示されている。KINERET(登録商標)は、臨床試験で実証されたように、好ましい安全性プロファイルを有している。
【0010】
IL−1Raの薬物動態不良を改善するために幾つかの試みがなされた。IL−1ベータのみを標的にする抗体が開発された。しかしながら、IL−1Raとは対照的に、これはIL−1ベータのみをブロックし、IL−1αの作用はブロックしない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】W.P. Arend, Cytokine & Growth Factor Reviews, 13 (2002) pp. 323-240
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、IL−1Ra分子のより長い半減期および好ましい安全性プロファイルを提供する、IL−1Raに関する改善された送達法に対する当分野における必要性を、本発明者らは認めた。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、三量体形成ドメインおよびIL−1活性を阻害するIL−1Raポリペプチド配列を含む融合タンパク質を提供する。一実施形態において、この融合タンパク質は、IL−1活性を阻害する配列番号38の変異体または断片を含むIL−1Ra配列を含む。さらなる実施形態において、この融合タンパク質は、配列番号38に少なくとも85%同一性があるIL−1Raポリペプチド配列を含む。この融合タンパク質は、ポリエチレングリコールを含み得る。この融合タンパク質の三量体形成ドメインは、テトラネクチンから誘導できる。
【0014】
本発明はまた、本発明の3つの融合タンパク質を含む三量体複合体も提供する。一実施形態において、この三量体複合体は、テトラネクチン三量体形成構造エレメント(TTSE)である三量体形成ドメインを含む。一実施形態において、この三量体複合体は、配列番号1に少なくとも66%同一性がある三量体形成ドメインを含む。さらなる実施形態において、この三量体複合体は、TripK−IL−1ra(配列番号39);TripV−IL−1ra(配列番号40);TripT−IL−1ra(配列番号41);TripQ−IL−1ra(配列番号42);I10−TripK−IL−1ra(配列番号43);I10−TripV−IL−1ra(配列番号44);I10−TripT−IL−1ra(配列番号45);I10−TripQ−IL−1ra(配列番号46);V17−TripT−IL1Ra(配列番号55);V17−TripK−IL−1Ra(配列番号56);V17−TripV−IL−1Ra(配列番号57);およびV17−TripQ−IL1Ra(配列番号58)からなる群から選択される融合タンパク質のうちの少なくとも1つを含む。
【0015】
さらなる実施形態において、本発明は、三量体および少なくとも1つの薬学的に許容できる賦形剤を含む医薬組成物を提供する。
さらに本発明は、インターロイキン1に媒介される疾患を治療するための方法に関する。この方法は、この方法を必要とする患者に、本発明の医薬組成物を投与することを含む。この疾患は、リウマチ様関節炎または糖尿病などの炎症性疾患であり得る。この方法はまた、抗炎症剤を患者に同時にまたは連続的に投与することを含む。
【0016】
本発明はまた、当該融合タンパク質に共有結合した抗炎症剤をさらに含む融合タンパク質を提供する。
【0017】
本発明のこれらおよび他の態様は、下記にさらに詳細に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】テトラネクチンタンパク質ファミリーの三量体形成構造エレメントのアミノ酸配列のアラインメントを示す図である。ヒト・テトラネクチンのエキソン2およびエキソン3の最初の3個の残基を含む残基V17からK52(1文字コード)に相当するアミノ酸配列(配列番号59);マウス・テトラネクチン(配列番号60);リーフシャークの軟骨から単離されたテトラネクチンの相同タンパク質(配列番号61);およびウシ軟骨から単離されたテトラネクチンの相同タンパク質(配列番号62)。7残基反復(heptad repeat)のa位およびd位の残基を太字で記載する。テトラネクチンタンパク質ファミリーの三量体形成構造エレメントに見られる共通配列は、この領域中の他の保存された残基に加えて、図1に示された7残基反復中のa位およびd位に存在する残基を含む。「hy」は、脂肪族の疎水性残基を示す。
【図2】透析によるCII−H6−GrB−TripK−IL−1Raのリフォールディング結果を示す図である。
【図3】NiNTA上でのCII−H6−GrB−TripK−IL−1Raの捕捉を示す図である。
【図4】U937細胞におけるIL−1誘導性のIL−8を阻害するGG−TripV−IL−1Ra(tripV−IL−1Ra)、GG−TripK−IL−1Ra(tripK−IL−1Ra)、GG−TripT−IL−1Ra(tripT−IL−1Ra)およびGG−TripT−IL−1Ra(tripT−IL−1Ra)の能力を示すグラフである。
【図5】非ペグ化TripTおよびTripVおよびKINERET(登録商標)と比較した、U937細胞におけるIL−1誘導性のIL−8を阻害するペグ化TripTおよびTripVの能力を示すグラフである。
【図6】PK試験に用いられたTripT−IL−1Ra、I10−TripT−IL−1Ra、V17−TripT−IL−1RaのU937細胞におけるIL−1誘導性のIL−8を阻害する能力を示すグラフである。
【図7】ラットにおける100mg/kgの静脈内注射後、TripT−IL−1Ra、I10−TripT−IL−1Ra、およびV17−TripT−IL−1Raの血中濃度を示すグラフである。
【図8】複数のバッチであるMet−I10−TrpT−IL−1Ra(LM022およびLM023)およびGG−V17−TrpT−IL−1Ra(CF019およびCF020)のタンパク質収量のSDS−PAGE分析を示す図である。
【図9】Met−I10−TrpT−IL−1RaおよびGG−V17−TrpT−IL−1Raタンパク質収量のSEC分析結果を示す図である。
【図10】ラットのCIA試験結果を示す図である。II型コラーゲン関節炎を有するメスのルイスラットの足首の直径は、媒体(10mMのリン酸緩衝液pH7.4)、または単量体IL−1Ra(100mg/kgのKINERET(登録商標))、もしくは三量体化IL−1Ra(120mg/kgのMet−I10−TripT−IL1ra、または120mg/kgのGG−V17−TripT−IL1ra)を投与する等モル量のIL−1Raによる処置後に測定した。
【図11】媒体処置された疾患対照動物と比較して、ラットをKINERET(登録商標)、Met−I10−TripT−IL1ra QD、またはGG−V17−TripT−IL1ra QDで処置した場合の最終的な足重量の減少試験を示す図である。
【図12】I10−TripT−IL1−RaまたはKINERET(登録商標)による毎日の腹腔内投与後に見られた血中グルコース濃度の減少を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、IL−1により媒介される疾患を治療するための化合物および方法に関する。一態様において、本発明は、三量体形成ドメインまたは多量体形成ドメインと融合したIL−1Raポリペプチド配列の融合タンパク質に関する。IL−1Ra単独よりも高い安定性および改善された薬物動態特性を提供する組成物を提供し、かつ好ましい安全性プロファイルを提供するために、3つ以上の融合タンパク質を三量体化または多量体化することができる。
【0020】
さらなる態様において本発明は、上記ポリペプチドのいずれか1つをコードする核酸を提供し、ならびに特異的な発現および回収を可能にする条件下での上記ポリペプチドを調製する方法を提供する。
【0021】
本発明のポリペプチドは、有効量の医薬組成物を被験体に投与することにより、炎症性疾患の治療方法など、IL−1により媒介される病態を有する被験体の治療に使用するための医薬組成物の調製に使用できる。
【0022】
本明細書に用いられる疾患または医学的状態は、自然発生的または実験的な疾患または医学的状態が体液中または組織中のIL−1のレベル上昇に関連している場合、または身体から採取した細胞または組織が培養物中にIL−1の上昇レベルを産生する場合、「インターロイキン1媒介疾患」または「インターロイキン1により媒介される疾患」と考えられる。多くの場合、このようなインターロイキン1媒介疾患はまた、以下のさらなる2つの条件によって認識される:(1)この疾患または医学的状態に関連する病理的所見が、IL−1の投与により、動物において実験的に模倣することができる;(2)この疾患または医学的状態の実験動物モデルに誘発させた病態が、IL−1の作用を阻害する薬剤による治療によって阻止または消滅させることができる。たいていのIL−1媒介疾患において、これら3つの条件のうちの少なくとも2つが当てはまり、多くのIL−1媒介疾患において、これら3つの条件の全てが当てはまる。急性および慢性のIL−1媒介炎症性疾患の非排他的リストとして、限定はしないが、以下が挙げられる:痛風、急性膵炎;ALS;アルツハイマー病;悪液質/食欲不振症;喘息;アテローム硬化症;慢性疲労症候群;発熱;糖尿病(例えば、インスリン糖尿病);糸球体腎炎;移植片対宿主拒絶反応;出血性ショック;痛覚過敏症;炎症性腸疾患;変形性関節炎、乾癬性関節炎、若年性関節炎およびリウマチ様関節炎などの関節の炎症性病態;脳虚血(例えば、外傷、てんかん、出血または脳卒中の結果の脳傷害、それらの各々は神経変性に至る可能性がある)などの虚血性傷害;肺疾患(例えば、ARDS);多発性骨髄腫;多発性硬化症;骨髄性白血病(例えば、AMLおよびCML)および他の白血病;筋疾患(例えば、特に敗血症における筋タンパク質の代謝);骨粗しょう症;パーキンソン病;疼痛;早期分娩;乾癬;再灌流傷害;敗血症ショック;放射線療法による副作用、一時的な顎関節症、腫瘍転移;または、挫傷、捻挫、軟骨損傷、外傷、整形外科手術、感染症または他の疾患過程から生じる炎症性病態、およびマックル−ウェルズ症候群、家族性感冒自己炎症性症候群および新生児期発症多臓器炎症性疾患などのクライオピリン関連周期熱症候群。
【0023】
本明細書に用いられる用語「多量体形成ドメイン」とは、2つ以上の他のアミノ酸配列と結合して、三量体複合体または他の多量体複合体を形成することのできる機能を有するアミノ酸配列を意味する。一例において、融合タンパク質は、他の2つの三量体形成ドメインを伴って三量体複合体を形成する三量体形成ドメインであるアミノ酸配列を含有する。三量体形成ドメインは、他の同一のアミノ酸配列の三量体形成ドメインと結合する(ホモ三量体)か、または異なるアミノ酸配列の三量体形成ドメインと結合する(ヘテロ三量体)ことができる。このような相互作用は、三量体形成ドメイン成分間の共有結合によって、また、水素結合力、疎水性力、ファンデルワールス力および塩架橋によって生じ得る。したがって、本発明の種々の実施形態において、多量体形成は、二量体形成ドメイン、三量体形成ドメイン、四量体形成ドメイン、五量体形成ドメインなどである。これらのドメインは、2つ、3つ、4つ、5つまたはそれ以上の本発明の融合タンパク質からなるポリペプチド複合体を形成することができる。
【0024】
本発明の融合タンパク質の三量体形成ドメインは、米国出願公開番号第2007/0154901号('901 Application)(参照としてその全体が本明細書に援用される)に記載されているように、テトラネクチンから誘導できる。全長ヒト・テトラネクチンポリペプチド配列は、本明細書において配列番号63として提供されている。テトラネクチン三量体形成ドメインの例としては、配列番号63のアミノ酸17から49、17から50、17から51および17から52が挙げられ、これらは、ヒト・テトラネクチン遺伝子のエキソン2によってコードされるアミノ酸、さらに任意に、この遺伝子のエキソン3によってコードされる最初の1個、2個または3個のアミノ酸を含む。他の例としては、アミノ酸1から49、1から50、1から51および1から52が挙げられ、これらは、この遺伝子のエキソン1およびエキソン2の全体、さらに任意に、この遺伝子のエキソン3によりコードされる最初の1個、2個または3個のアミノ酸を含む。あるいは、エキソン1によりコードされるアミノ酸配列の一部のみが三量体形成ドメインに含まれる。具体的には、三量体形成ドメインのN末端は、配列番号63の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16および17番目の残基のいずれからでも始めることができる。特定の実施形態において、N末端は、I10またはV17であり、C末端は、Q47、T48、V49、C(S)50、L51またはK52(配列番号63に従う番号付け)である。
【0025】
本発明の一態様において、三量体形成ドメインは、米国出願公開番号第2007/00154901号にさらに十分に記載されているテトラネクチンファミリー三量体形成構造エレメントの共通配列である、配列番号1のアミノ酸配列を有するテトラネクチン三量体形成構造エレメント(「TTSE」)である。図1に示されているように、TTSEは、タンパク質のテトラネクチンファミリーの天然メンバーの変異体、特に、αコイルドコイル三量体を形成するTTSEの能力にいかようにも実質的な程度の不利な影響を与えないアミノ酸配列における改変を有する変異体を包含する。本発明の種々の態様において、本発明による三量体ポリペプチドは、配列番号1の共通配列に、少なくとも66%のアミノ酸配列同一性(確定された残基(Xaaではない)のみを計数する);例えば、配列番号1の共通配列に、少なくとも73%、少なくとも80%、少なくとも86%または少なくとも92%の配列同一性を有する三量体形成ドメインとしてのTTSEを含む。言い換えると、配列番号1の確定されたアミノ酸の少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、または少なくとも5個を置換することができる。
【0026】
特定の一実施形態において、配列番号63における50位のシステイン(C50)は、望ましくない多量体形成に至り得る望ましくない鎖間ジスルフィド架橋の形成を避けるために、セリン、トレオニン、メチオニンまたは他の任意のアミノ酸残基へ有利に変異誘発することができる。他の公知の変異体は、アミノ酸残基番号(配列番号63に従う番号付け)、6、21、22、24、25、27、28、31、32、35、39、41、および42番目のアミノ酸から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基を含むが、これらのアミノ酸残基は、らせんを破壊しない任意のアミノ酸残基により置換することができる。これらの残基は、天然のテトラネクチン単量体の3つのTTSE間の三量体複合体を安定化する分子間相互作用には直接関与していないことが示されている。図1に示された一態様において、TTSEは、式a−b−c−d−e−f−g(N端からC端へ)で示される7残基反復を有し、式中、残基aおよびd、すなわち26位、33位、37位、40位、44位、47位、51位は任意の疎水性アミノ酸であってよい(配列番号63に従う番号付け)。
【0027】
さらなる実施形態において、TTSE三量体形成ドメインは、ポリヒスチジン配列および/またはプロテアーゼ開裂部位、例えば、血液凝集因子XaまたはGranzymeBの開裂部位(本明細書に援用される米国出願公開番号第2005/0199251号を参照のこと)の組込みによって、またC末端KGまたはKGS配列を含めることによって改変することができる。また、精製を助けるために、2位のプロリンをグリシンによって置換してもよい。
【0028】
TTSEの切断体および変異体の特定の非限定的な例は、以下の表1に示されている。
【0029】
【表1−1】
【0030】
【表1−2】
【0031】
三量体形成ドメインの他の例は、米国特許第6,190,886号に開示されており(その全体が本明細書に援用される)、これには、コレクションネック(collectin neck)領域を含むポリペプチドが記載されている。次いで、コレクションネック領域のアミノ酸配列を含む3つのポリペプチドにより、適切な条件下で三量体を作製することができる。
【0032】
三量体形成ドメインの他の例は、参照としてその全体が本明細書に援用される2007年11月9日に本出願の譲受人により出願された米国仮出願番号第60/996,288号に記載されているMBP三量体形成ドメインである。この三量体形成ドメインは、さらにオリゴマー化して、高次の多量体複合体を作出することができる。
【0033】
本発明のIL−1Raポリペプチドは、三量体形成ドメインのN末端またはC末端のアミノ酸残基のいずれにも連結できる。フレキシブルな分子リンカーを任意に、IL−1Raであるポリペプチドと三量体形成ドメインとの間に組み込み、共有結合により連結することができる。このリンカーは約1個から20個、2個から10個、または3個から7個のアミノ酸残基のポリペプチド配列であることが好ましい。さらなる実施形態において、このリンカーは、非免疫原性であり、容易にはタンパク質分解により開裂せず、他の残基と相互作用することが知られているアミノ酸残基(例えばシステイン残基)を含まない。
【0034】
本明細書に用いられる「IL−1Ra」とは、下記:
【化1】
に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドのことである。
【0035】
また、「IL−1Ra」の定義には、IL−1Rに対するIL−1Raの結合を示す、好ましくはIL−1R阻害活性を示す配列番号38の変異体および断片が含まれる。このような断片は、全長の天然IL−1Raタンパク質と比較して、IL−1RaのN末端またはC末端において切断されていてもよいし、または、内部残基を欠損していてもよい。特定の断片は、本発明による三量体IL−1Raタンパク質の所望の生物学的活性にとって必須ではないアミノ酸残基が欠損され得る。例えば、Evans, et al. (J.Biol.Chem. 1995、19:11477-11483)は、部位特異的変異誘発により、IL−1Rに対する結合にとってTrp16、Gln20、Tyr34、Gln36およびTyr147だけが必須であり、機能的分子を維持しつつ他のアミノ酸位置を変更できることが示されている。さらに、Dahlen, et al. (J.Immunotoxicology 5:189-199 (2008))により示されるように、IL−1Raとその受容体とのループ相互作用を増大させるために、結合領域の外側のアミノ酸を変異させ、それにより、IL−1Raのその受容体に対する親和性を改善することができる。これは、IL−1Ra受容体結合領域の外側のアミノ酸の変異、具体的には、例えば、D47N、E52R、E90Y、P38Y、H54R、Q129LおよびM136N(同上)によって達成できる。さらに、天然のIL−1Ra変異体が存在し、そのいずれも使用することができる。上流エキソンからの別の転写スプライス機構によって作出されたIL−1Raの18kDa体は、icIL−1Ra1と称され、ケラチノサイト、ならびに他の上皮細胞、単球、組織マクロファージ、線維芽細胞および内皮細胞の内部に見られる。ヒト白血球からクローン化されたIL−1Ra cDNAは、そのcDNAの5’領域に挿入断片としてさらに63bpの配列を含有する。icIL−1Ra3と称される、IL−1Raの15kDaイソ型は、単球、マクロファージ、好中球、および肝細胞の中に見られ、別の転写スプライスと別の翻訳開始の双方によって作出することができる。
【0036】
本発明の融合タンパク質にとって有用なIL−1Raペプチドは、配列番号38に、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%同一性があるポリペプチドを含む。特定の実施形態において、融合タンパク質は、配列番号38に、少なくとも85%同一性があり、IL−1R結合活性、好ましくはIL−1Ra阻害活性を有するIL−1Raペプチド配列を含む。別の特定の実施形態において、融合タンパク質は、配列番号38に、少なくとも95%同一性があり、IL−1R結合活性、好ましくはIL−1Ra阻害活性を有するIL−1Raペプチド配列を含む。これらの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号38の番号付けによるTrp16、Gln20、Tyr34、Gln36およびTyr147を含む。これらのポリペプチドはさらに、1つまたは複数のアミノ酸置換、D47N、E52R、E90Y、P38Y、H54R、Q129LおよびM136N(配列番号38の番号付けによる)を含む。さらに、IL−1Raポリペプチドの変異体は、1つまたは複数のアミノ酸を、同様な構造特性または化学特性を有する別のアミノ酸、例えば保存的アミノ酸置換体によって置換することにより達成することができる。
【0037】
さらなる実施形態において、本発明による融合タンパク質は、以下から選択されるIL−1受容体アンタゴニストから選択される:
【化2】
【化3】
式中、下線部は、三量体形成単位を示し、太字部はIL−1Ra部分を示す。
【0038】
融合タンパク質の作製
本発明の三量体IL−1Raタンパク質は、化学的に合成することもできるし、または何らかの好適な標準的タンパク質発現系に発現させることもできる。タンパク質発現系は、そこから所望のタンパク質が容易に単離でき、インビトロでリフォールディングできる系であることが好ましい。原核生物の発現系は、高収量のタンパク質を得ることができ、また効率的な精製とリフォールディングの方法が利用できることから好ましい。真核生物の発現系もまた使用できる。したがって、適切な発現系の選択は、十分に当業者の能力と裁量の範囲内にある。同様に、本発明の融合タンパク質のアミノ酸の一次配列が選択されたら、当業者は、選択された宿主におけるコドンバイアス、宿主における分泌シグナル配列の必要性、シグナル配列内へのプロテイナーゼ開裂部位の導入などの要因を考慮に入れて、所望のタンパク質をコードする適切な組換えDNA構築物を容易に設計することができる。これらの組換えDNA構築物は、選択された宿主に適切な多くの発現ベクターのいずれかの内にインフレームで挿入することができる。発現ベクターは、組換え構築物の発現を駆動するために、強力なプロモーターを含むことが好ましい。
【0039】
本発明の融合タンパク質は、その融合タンパク質が発現される条件下で、本融合タンパク質をコードするベクターによって形質転換した宿主を培養することにより、任意の好適な標準的タンパク質発現系において発現させることができる。この発現系は、そこから所望のタンパク質が容易に単離でき、インビトロでリフォールディングできる系であることが好ましい。一般に、原核生物の発現系が、高収量のタンパク質を得ることができ、また効率的な精製とリフォールディングの方法が利用できることから好ましい。したがって、適切な発現系の選択(ベクターおよび細胞型を含めて)は、当業者の知識の範囲内にある。同様に、本発明の融合タンパク質のアミノ酸の一次配列が選択されたら、当業者は、選択された宿主におけるコドンバイアス、宿主における分泌シグナル配列の必要性、シグナル配列内のプロテイナーゼ開裂部位の導入などの要因を考慮に入れて、所望のアミノ酸配列をコードする適切な組換えDNA構築物を容易に設計することができる。
【0040】
一実施形態において、単離ポリヌクレオチドが、本発明の融合タンパク質をコードする。別の実施形態において、IL−1Raポリペプチドおよび三量体形成ドメインは、連続していないポリヌクレオチド配列によってコードされる。したがって、いくつかの実施形態において、IL−1Raポリペプチドおよび三量体形成ドメインは、別々のポリペプチドとして発現され、単離および精製されてから共に融合されて、本発明の融合タンパク質が形成される。
【0041】
これらの組換えDNA構築物は、選択された宿主に適切な多くの発現ベクターのいずれかの内にインフレームで挿入することができる。一定の実施形態において、発現ベクターは、組換え融合タンパク質構築物の発現を制御する強力なプロモーターを含む。本発明の融合タンパク質を作出するために組換え発現法を用いた場合、得られた融合タンパク質は、当分野に周知の好適な標準的操作を用いて、単離し精製することができ、任意に、例えば、凍結乾燥などのさらなる処理に供することができる。
【0042】
組換えDNA分子、タンパク質および融合タンパク質産生のために、また組織培養および細胞の形質転換のために、標準的な技法を使用することができる。例えば、Sambrook, et al.(下記)またはCurrent Protocol in Molecular Biology(Ausubel, et al., eds., Green Publishers Inc. and Wiley and Sons、1994)を参照されたい。精製法は一般に、製造元の指示に従って実施されるか、またはSambrook, et al.(Molecular Cloning:A Laboratory Manual. Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY(1989)に記載されているような慣例的な手順を用いて当分野で一般に遂行されるように、または本明細書に記載されているとおりに実施される。特に定義が与えられない限り、実験上の手順、ならびに本明細書に記載された分子生物学、生化学、分析化学、および薬剤/製薬化学に関連する技法に関連して利用される命名法は、当分野で周知の一般的なものである。生化学的合成、生化学的分析、薬学的調製、製剤、ならびに送達、および患者の処置に関しては、標準的な技法を使用することができる
【0043】
当然のことながら、フレキシブルな分子リンカーは、任意に、IL−1Raポリペプチドと三量体形成ドメインとの間に組み込んで、共有結合により連結することができる。一定の実施形態において、リンカーは、約1個から20個のアミノ酸残基のポリペプチド配列である。リンカーは、10個未満のアミノ酸であってよく、最も好ましくは、5個、4個、3個、2個、または1個のアミノ酸であってよい。ある場合には、9個、8個、7個、または6個のアミノ酸が好適であり得る。有用な実施形態において、リンカーは本質的に非免疫原性であり、容易にタンパク質分解により開裂することはなく、他の残基と相互作用することが知られているアミノ酸残基(例えばシステイン残基)を含まない。
【0044】
以下の記述はまた、1つまたは複数の化学基に共有結合している(以下「コンジュゲートしている」)融合タンパク質、および三量体複合体を作製する方法に関する。このようなコンジュゲートにおける使用に好適な化学基は、有意に毒性または免疫原性がないことが好ましい。この化学基は任意に、保存でき、かつ保存に好適な条件下で使用できるコンジュゲートを作製するために選択される。ポリペプチドにコンジュゲートできる種々の代表的な化学基が当分野で知られており、例えば、糖タンパク質上に自然に生じる炭水化物などの炭水化物、ポリグルタメート、およびポリオール類などの非タンパク様ポリマーが挙げられる(例えば、米国特許第6,245,901号を参照)。
【0045】
ポリオールは、例えば、上記の国際公開第WO93/00109号に開示されているように、リシン残基を含む、1つまたは複数のアミノ酸残基において、本発明の融合タンパク質とコンジュゲートすることができる。使用されるポリオールは、任意の水溶性ポリ(アルキレンオキシド)ポリマーであってよく、線状鎖または分枝状鎖を有していてよい。好適なポリオールとしては、1つまたは複数のヒドロキシル位において、1個から4個の間の炭素を有するアルキル基などの化学基により置換されたものが挙げられる。一般に、ポリオールは、ポリ(エチレングリコール)(PEG)などのポリ(アルキレングリコール)であり、かくして、残りの議論は例示的な実施形態に関連しており、記述の容易のため、そこでは、使用されるポリオールはPEGであり、ポリペプチドにポリオールをコンジュゲートする過程を「ペグ化」と称する。しかしながら、PEGに関して本明細書に記載したコンジュゲートのための技法を用いて、例えば、ポリ(プロピレングリコール)およびポリエチレン−ポリプロピレングリコールコポリマーなどの他のポリオール類が使用できることを、当業者は認識している。
【0046】
IL−1Raのペグ化に使用されるPEGの平均分子量は変わる可能性があり、一般に、約500ダルトン(D)から約30,000Dの範囲であり得る。PEGの平均分子量は、好ましくは約1,000Dから約25,000D、より好ましくは約1,000Dから約5,000Dである。一実施形態において、ペグ化は、約1,000Dの平均分子量を有するPEGによって実施される。任意に、PEGホモポリマーは非置換であるが、その一端がアルキル基により置換されていてもよい。アルキル基はC1〜C4アルキル基であることが好ましく、メチル基であることが最も好ましい。PEG製剤は市販品として入手できるが、一般に、本発明における使用に好適なPEG製剤は、平均分子量により販売された不均一製剤である。例えば、市販品として入手できるPEG(5000)製剤は一般に、分子量がわずかに、通常は±500D異なる分子を含有する。小型分子化合物(例えば化学療法剤)へのコンジュゲート;シグナル分子(例えば蛍光体)へのコンジュゲート;特異的結合ペア(例えばビオチン/ストレプトアビジン、抗体/抗原)の分子へのコンジュゲート;またはグリコシル化、PEG化もしくは安定化ドメイン(例えばFcドメイン)へのさらなる融合による安定化などの当分野に公知の技法を用いて、本発明の融合タンパク質をさらに改変することができる。
【0047】
タンパク質ペグ化のための種々の方法が当分野において知られている。PEGにコンジュゲートさせたタンパク質を作製する特定の方法としては、米国特許第4,179,337号、米国特許第4,935,465号および米国特許第5,849,535号に記載された方法が挙げられる。一般にタンパク質は、主に反応条件、ポリマーの分子量などに依って、ポリマー上の末端の反応基に対しタンパク質の1つまたは複数のアミノ酸残基を介して共有結合される。(複数の)反応基を有するポリマーは、本明細書において活性化ポリマーと称される。反応基は、タンパク質上のフリーのアミノ基または他の反応基と選択的に反応する。PEGポリマーは、ランダムなまたは部位特異的な様式で、タンパク質上のアミノ基または他の反応基と結合することができる。しかし、最適な結果を得るために、選択される反応基のタイプおよび量、ならびに使用されるポリマーのタイプは、反応基がタンパク質上のあまりにも多くの特定の活性基と反応することを避けるために使用される特定のタンパク質またはタンパク質変異体に依存することは理解されたい。これは完全に避けることが不可能かもしれないので、タンパク質濃度に依り、一般にタンパク質1モル当たり、約0.1モルから約1000モル、好ましくは2モルから200モルの活性化ポリマーを使用することが推奨される。タンパク質1モル当たり活性化ポリマーの最終量は、最適な活性を維持すると同時に、可能な場合は、タンパク質の循環半減期を最適化しつつ、調整する。
【0048】
本明細書に用いられる場合、用語「ポリオール」とは、広く多価アルコール化合物のことである。ポリオールは、例えば、任意の水溶性ポリ(アルキレンオキシド)ポリマーであってよく、直鎖または分枝鎖を有していてもよい。好ましいポリオールとしては、1つまたは複数のヒドロキシル位を、1つ〜4つの間の炭素を有するアルキル基などの化学基により置換したものが挙げられる。一般にポリオールは、ポリ(アルキレングリコール)、好ましくはポリ(エチレングリコール)(PEG)である。しかしながら、PEGに関して本明細書に記載したコンジュゲートのための技法を用いて、例えば、ポリ(プロピレングリコール)およびポリエチレン−ポリプロピレングリコールコポリマーなどの他のポリオール類が使用できることを、当業者は認識している。本発明のポリオールには、当分野に周知のもの、および市販品として入手可能な供給源などから公的に入手できるものが含まれる。
【0049】
さらに、血清アルブミン結合ペプチド、FcRn結合ペプチドまたはIgG結合ペプチドなどの他の半減期延長性の分子(half-life extending molecule)を、三量体形成ドメインのN末端またはC末端に結合させることができる。
【0050】
一実施形態において、本発明の三量体IL−1Raタンパク質を、大腸菌などの原核宿主細胞内に発現させ、さらに第三のポリペプチド、すなわち第三の融合の相手に結合させる。したがって、このような第三の融合の相手を、本発明の三量体IL−1Raタンパク質に付加させることによって、高収量の三量体IL−1Raタンパク質を得ることができると考えられる。第三の融合相手は、ジペプチド、トリペプチド、テトラペプチド、ペンタペプチドまたはヘキサペプチドなど、任意の好適なペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質であり得る。ある場合には、融合相手は単独のアミノ酸であり得る。融合相手は、タンパク質分解性の分解に対して融合タンパク質をより抵抗性にするように、融合タンパク質の発現および分泌の増大が促進されるように、可溶性が改善されるように、および/または融合タンパク質の後のアフィニティー精製が可能となるように選択できる。
【0051】
一実施形態において、本発明の融合タンパク質(すなわち、IL−1Ra部分および三量体形成ドメイン)とユビキチンなどの第三の融合相手との間の接合領域は、グランザイムBプロテアーゼ開裂部位、例えば米国出願公開番号第2005/0199251号に記載されているヒトグランザイムB(E.C.3.4.21.79)開裂部位を含む。
【0052】
第三の融合相手は、さらなる実施形態において、アフィニティータグと結合されてよい。このようなアフィニティータグは、アフィニティー樹脂上での融合タンパク質の精製を可能にするアフィニティードメインであり得る。アフィニティータグは、ヘキサヒスタグなどのポリヒスチジンタグ、ポリアルギニンタグ、FLAGタグ、Strepタグ、c−mycタグ、Sタグ、カルモジュリン結合ペプチド、セルロース結合ペプチド、キチン結合ドメイン、グルタチオンSトランスフェラーゼタグ、またはマルトース結合タンパク質であり得る。
【0053】
上記のアフィニティータグシステムの使用により固定化された融合タンパク質の酵素による開裂によって形成される三量体IL−1Raタンパク質を単離する単離ステップにも、本発明の方法は及びうる。この単離ステップは、イオン交換およびサイズによる分画の使用など、当分野に公知のタンパク質単離のための任意の好適な手段によって実施することができ、その選択は、融合タンパク質の性質に依存する。一実施形態において、第三の融合相手と三量体形成ドメインおよびIL−1Raを含む領域との間の領域を、ヒトセリンプロテアーゼ・グランザイムBによりつなぎ、グランザイムBプロテアーゼ開裂部位で融合タンパク質を開裂させ、本発明の融合タンパク質が得られる。
【0054】
本発明はまた、少なくとも1つの上記の核酸を含むプラスミド、ベクター、転写カセットまたは発現カセットを提供する。プロモーター配列、ターミネーター配列、ポリアデニル化配列、エンハンサー配列、マーカー遺伝子および要すれば他の配列などの適切な調節配列を含む好適なベクターを選択するか、または構築することができる。ベクターは、必要に応じて、プラスミド、ウィルス、ファージ、またはファージミドであり得る(Molecular Cloning:a Laboratory Manual: 2nd edition, Sambrook et al., 1989, Cold Spring Harbor Laboratory Press)。
【0055】
本発明はまた、本発明の1つまたは複数の構築物を含む組換え宿主細胞を提供する。好適な宿主細胞としては、細菌系、哺乳動物細胞系、酵母系およびバキュロウィルス系が挙げられる。異種ポリペプチドの発現に利用できる哺乳動物細胞系としては、チャイニーズハムスター卵巣細胞、ヒーラー細胞、仔ハムスター腎細胞、NSOマウス黒色腫細胞および他の多数のものが挙げられる。好ましい細菌宿主は大腸菌である。
【0056】
医薬組成物
さらに別の態様において、本発明は、薬学的に許容できる担体または賦形剤と共に、本発明の融合タンパク質の治療的有効量を含む医薬組成物に関する。本明細書に用いられる「薬学的に許容できる担体」または「薬学的に許容できる賦形剤」には、生理学的に適合性のある溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤ならびに抗真菌剤、等張化剤ならびに吸収遅延剤などのいずれかおよび全てが含まれる。薬学的に許容できる担体または薬学的に許容できる賦形剤の例としては、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなどのうちの1つまたは複数、ならびにそれらの組合せが挙げられる。多くの場合、前記組成物中に、等張化剤、例えば、糖類、マンニトール、ソルビトールなどのポリアルコール、または塩化ナトリウムを含めることが好ましいであろう。湿潤剤などの薬学的に許容できる物質、または湿潤剤または乳化剤などの微量の補助的物質、抗体または抗体部分の使用期限または有効性を増強する保存剤または緩衝剤もまた含めることができる。任意に、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸またはアルギン酸ナトリウムなどのアルギン酸塩などの崩壊剤を含めることができる。賦形剤に追加して、医薬組成物は、以下の1つまたは複数を含むことができる:血清アルブミンなどの担体タンパク質、緩衝剤、結合剤、甘味剤および他の風味剤;着色剤およびポリエチレングリコール。
【0057】
これらの組成物は、例えば、溶液剤(例えば、注射用液剤および注入用液剤)、分散剤または懸濁剤、錠剤、丸剤、散剤、リポソーム剤および座剤など、液体、半固体および固体の剤形など、種々の形態であり得る。好ましい形態は、意図される投与経路および治療適用に依る。一実施形態において、これらの組成物は、注射用液剤または注入用液剤の形態であり、例えば、抗体によるヒトの受動的免疫化に用いられるものと同様の組成物である。一実施形態において、投与様式は、非経口的(例えば、静脈内、皮下、腹腔内、筋内)である。一実施形態において、融合タンパク質(または三量体複合体)は、静脈内注入または静脈内注射により投与される。別の実施形態において、融合タンパク質または三量体複合体は、筋内注射または皮下注射により投与される。
【0058】
医薬組成物投与の他の好適な経路としては、限定はしないが、経口、経直腸、経皮、経膣、経粘膜または経腸投与が挙げられる。
【0059】
治療用組成物は一般に滅菌状態であり、製造および貯蔵の条件下で安定である。組成物は、高薬剤濃度に好適な液剤、ミクロ乳剤、分散剤、リポソーム剤、または他の指示された構造に製剤化することができる。滅菌注射用液剤は、必要量の活性剤(すなわち、融合タンパク質または三量体複合体)を、必要ならば上記に挙げた成分の1つまたは組合せと共に、適切な溶媒中に組み入れた後に、ろ過滅菌することによって調製することができる。一般に分散剤は、活性化合物を、基本的な分散媒ならびに他の上記に挙げた成分からの必要な成分を含有する滅菌媒体内へ組み入れることによって調製される。滅菌注射用液剤の調製のための滅菌散剤の場合、好ましい調製方法は、真空乾燥、および活性成分の散剤と、先の滅菌ろ過されたその液剤から任意の所望の追加成分とが得られる凍結乾燥である。液剤の適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用により、分散剤の場合は必要な粒径の維持により、また界面活性剤の使用により維持することができる。注射用組成物の吸収延長は、この組成物中に、吸収を遅延させる薬剤、例えばモノステアリン酸塩およびゼラチンを含めることによってもたらすことができる。
【0060】
本明細書に記載された障害の治療に有用な治療薬を含有するキットなどの製造品は、少なくとも1つの容器と1つのラベルを含む。好適な容器としては、例えば、ボトル、バイアル、シリンジ、および試験管が挙げられる。容器は、ガラスまたはプラスチックなど、種々の材料から形成することができる。容器の上の、または容器に結合したラベルは、この製剤が、選択された病態の治療に用いられることを指示する。この製造品は、リン酸緩衝生理食塩水、リンガー液、デキストロース液などの薬学的に許容できる緩衝液を含む容器をさらに含み得る。この製造品は、他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針、シリンジ、および使用説明のついた添付文書など、商業的な、および使用者の立場から望ましい他の材料をさらに含み得る。この製造品は、上記の別の活性剤を有する容器も含み得る。
【0061】
一般に、製剤を等張にするために、適切な量の薬学的に許容できる塩が製剤中に用いられる。薬学的に許容できる担体の例としては、生理食塩水、リンガー液およびデキストロース液が挙げられる。製剤のpHは、好ましくは約6から約9、より好ましくは、約7から約7.5である。例えば、投与経路および治療薬の濃度に依り、一定の担体がより好ましいと考えられることは当業者には明らかであろう。
【0062】
治療用組成物は、凍結乾燥製剤、水性液剤、または水性懸濁剤の形態で、任意の薬学的に許容できる担体、賦形剤、または安定化剤(Remington's Pharmaceutical Sciences, 16th edition, Osol,A. ed.(1980))と共に、適切な純度を有する所望の分子を混合することにより調製することができる。許容できる担体、賦形剤、または安定化剤は、用いられる投与量および濃度において、レシピエントに対して無毒であることが好ましく、トリス、HEPES、PIPES、リン酸、クエン酸、および他の有機酸などの緩衝液;アスコルビン酸およびメチオニンなどの抗酸化剤;保存剤(塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルアルコールまたはベンジルアルコール;メチルパラベンまたはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン類;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3−ペンタノール;およびm−クレゾール);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド類;血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドン類などの親水性ポリマー類;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、またはリシンなどのアミノ酸類;グルコース、マンノース、またはデキストリン類などの単糖類、二糖類、および他の糖質;ショ糖、マンニトール、トレハロースまたはソルビトールなどの糖類;ナトリウムなどの塩形成対イオン類;および/またはTWEEN(商標)、PLURONICS(商標)またはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン界面活性剤が含まれる。
【0063】
このような担体のさらなる例としては、イオン交換剤、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、ヒト血清アルブミンなどの血清タンパク質、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウムなどの緩衝物質、飽和植物脂肪酸の部分的グリセリド混合物、水、塩類、または硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウムなどの電解質、コロイダルシリカ、三珪酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、およびセルロースベースの物質が挙げられる。局所用またはゲルベースの形態に対する担体としては、カルボキシメチルセルロースンナトリウムまたはメチルセルロースなどの多糖類、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート類、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリエチレングリコール、および木材ワックスアルコール類が挙げられる。全ての投与で、慣例的なデポー形態は好適に用いられる。このような形態としては、例えば、ミクロカプセル、ナノカプセル、リポソーム、プラスター、吸入形態、鼻スプレー、舌下錠、および徐放製剤が挙げられる。
【0064】
インビボ投与に用いられる製剤は滅菌状態でなければならない。これは、凍結乾燥および再構成の前または後に、滅菌ろ過膜を通してろ過することによって容易に達成される。製剤は全身投与される場合は、凍結乾燥形態で、または溶液で保存できる。凍結乾燥形態の場合、一般に、使用時に適切な希釈剤と共に再構成するために他の成分と組み合わせて製剤化される。液体製剤の一例は、皮下注射用の単回投与バイアルに充填された滅菌、清澄、無色の非保存液剤である。
【0065】
治療用製剤は一般に、滅菌アクセス口を有する容器、例えば、静脈内用液剤バッグまたは皮下注射針によって貫通可能な密栓を有するバイアルの中に入れられる。製剤は、反復される静脈内(i.v.)、皮下(s.c.)、筋内(i.m.)の注射剤もしくは注入剤として、または鼻腔内もしくは肺内の送達に好適なエアロゾル製剤として投与されることが好ましい(肺内送達に関しては、例えば、EP 257,956を参照)。
【0066】
本明細書に開示された分子は、徐放製剤の形態で投与することもできる。徐放製剤の好適な例としては、タンパク質を含有する固体疎水性ポリマーの半透過性マトリックスが挙げられ、これらのマトリックスは、形状化製品、例えば、フィルム、またはマイクロカプセルの形態である。徐放マトリックスの例としては、ポリエステル類、ヒドロゲル類(例えば、Langer et al., J.Biomed.Mater.Res.、15:167-277(1981)およびLanger、Chem.Tech.、12:98-105(1982)に記載されているポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド類(米国特許第3,773,919号、EP58,481)、L−グルタミン酸とガンマエチル−L−グルタメートのコポリマー類(Sidman et al., Biopolymers、22:547-556(1983))、非分解性エチレン−ビニルアセテート(Langer et al.,上記)、Lupron Depot(乳酸−グリコール酸コポリマーおよびロイプロリドアセテートからなる注射用ミクロスフェア)などの分解性乳酸−グリコール酸コポリマー類、およびポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸(EP 133,988)が挙げられる。
【0067】
治療方法
本発明の他の態様は、IL−1Raに媒介される疾患を治療する方法に関する。この方法は、本発明の医薬組成物の治療的有効量により、このような疾患に罹っている被験体を治療することを含む。
【0068】
本発明の他の態様は併用療法に関する。治療薬を含む製剤もまた本発明により提供される。このような製剤は、貯蔵にとって、ならびに治療的投与にとって特に好適であると考えられる。これらの製剤は公知の技法によって調製できる。例えばこれらの製剤は、ゲルろ過カラム上の緩衝液交換によって調製できる。
【0069】
これらの医薬組成物は、ボーラスとしての静脈内投与などの公知の方法により、または一定時間にわたる連続的注入により、筋内、腹腔内、脳脊髄内、皮下、関節内、滑液内、脊髄内、経口、局所、または吸入経路により投与することができる。任意に、市販品として入手できる種々の装置を用いたミニポンプ注入により、投与を行うことができる。
【0070】
三量体IL−1Raを投与するための有効な投与量と投与スケジュールは、経験的に決定することができ、このような決定は当分野の範囲内にある。単回投与または複数回投与を用いることができる。現在、単独で用いられる三量体IL−1Raの有効な投与量または量は、1日当り体重1kgにつき約1μgから約100mgの範囲またはそれ以上であり得ると考えられている。投与量の種間換算は、例えば、Mordenti et al., Pharmaceut. Res.、8: 1351 (1991)に開示されるように、当分野に知られた様式で実施することができる。
【0071】
IL−1Ra融合タンパク質のインビボ投与が用いられる場合、通常の投与量は、投与経路に依って、1日当り哺乳動物の体重1kgにつき約10ngから約100mgまでまたはそれ以上、好ましくは、約1μg/kg/日から50mg/kg/日まで変わり得る。具体的な投与量および送達方法に関するガイダンスは、文献に提供されている(例えば、米国特許第4,657,760号;米国特許第5,206,344号;または米国特許第5,225,212号を参照)。種々の製剤が、種々の治療用化合物および種々の障害にとって有効であること、1つの臓器または1つの組織を標的とする投与が、例えば、別の臓器または組織への送達様式とは異なる送達様式を必要とし得ることを当業者は認識するであろう。投与しなければならない三量体IL−1Raの投与量が、例えば、三量体IL−1Raが与えられる哺乳動物、投与経路、および哺乳動物に投与されている他の薬物または治療法に依って変わり得ることを当業者は理解するであろう。
【0072】
三量体複合体と他の治療剤(1つまたは複数の他の治療法)とを、並行に(同時に)または連続的に投与することができる。特定の実施形態において、融合タンパク質または三量体複合体と治療剤とは、並行投与される。別の実施形態において、融合タンパク質または三量体複合体は、治療剤の投与前に投与される。別の実施形態において、治療剤は、融合タンパク質または三量体複合体の前に投与される。投与後、処置した細胞をインビトロで分析することができる。インビボ治療が行われた場合、治療を受けた哺乳動物を、熟練医師によく知られている種々の方法でモニターすることができる。例えば、血清中サイトカイン応答を分析することができる。
【0073】
本明細書に記載されたIL−1Ra融合タンパク質は、本明細書に挙げられた疾患および障害の治療または予防目的で1つまたは複数のTNF阻害剤と併用して(治療前、治療後、または並行治療で)、限定はしないが、Etanercept(ENBREL(登録商標)など)を含む可溶性TNF受容体の全ての形態、ならびに単量体または多量体p75および/またはp55TNF受容体分子およびそれらの断片;限定はしないが、Infliximab(REMICADE(登録商標)など)、およびD2E7(HUMIRA(登録商標)など)などの抗ヒトTNF抗体など、使用することができる。このようなTNF阻害剤としては、TNFのインビボ合成または細胞外放出をブロックする化合物およびタンパク質が挙げられる。具体的な実施形態において、本発明は、以下のTNF阻害剤:TNF結合タンパク質(本明細書に定義された可溶性TNF受容体タイプ−Iおよび可溶性TNF受容体タイプ−II(「sTNFRs」))、抗TNF抗体、顆粒球コロニー刺激因子;サリドマイド;BN50730;テニダップ(tenidap);E5531;tiapafantPCA4248;ニメスリド;パナビル;ロリプラム;RP73401;ペプチドT;MDL201、449A;(1R,3S)−シス−1−[9−(2,6−ジアミノプリニル)]−3−ヒドロキシ−4−シクロペンテン塩酸塩;(1R,3R)−トランス−1−(9−(2,6−ジアミノ)プリン)−3−アセトキシシクロペンタン;(1R,3R)−トランス−1−(9−アデニル)−3−アジドシクロペンタン塩酸塩;および(1R,3R)−トランス−1−(6−ヒドロキシ−プリン−9−イル)−3−アジドシクロペンタンの1つまたは複数のいずれかと併用した(治療前、治療後、または並行治療)IL−17RA IL−1Ra融合タンパク質の使用に関する。TNF結合タンパク質は、当分野に開示されている(EP308 378、EP422 339、GB2 218 101、EP393 438、国際公開第WO90/13575号、EP398 327、EP412 486、国際公開第WO91/03553号、EP418 014、特開JP127,800/1991号公報、EP433 900、米国特許第5,136,021号、GB2 246 569、EP464 533、国際公開第WO92/01002号、国際公開第WO92/13095号、国際公開第WO92/16221号、EP512 528、EP526 905、国際公開第WO93/07863号、EP568 928、国際公開第WO93/21946号、国際公開第WO93/19777号、EP417 563、国際公開第WO94/06476号および国際特許出願番号PCT/US97/12244)。
【0074】
例えば、EP393 438およびEP422 339では、一緒くたに「sTNFRs」と称される、可溶性TNF受容体タイプI(「sTNFR−I」または「30kDa TNF阻害剤」としても知られている)および可溶性TNF受容体タイプII(「sTNFR−II」または「40kDa TNF阻害剤」としても知られている)、ならびにそれらの修飾形態(例えば、断片、機能性誘導体および変異体)のアミノ酸配列および核酸配列を教示している。EP393 438およびEP422 339はまた、阻害剤のコードを担っている遺伝子を単離する方法、好適なベクターと細胞型において遺伝子をクローン化する方法および遺伝子を発現させて阻害剤を産生する方法を開示している。さらにsTNFR−IおよびsTNFR−IIの多価形態(すなわち、2つ以上の活性部分を含む分子)もまた開示している。一実施形態において、この多価形態は、少なくとも1つのTNF阻害剤および別の部分を任意の臨床的に許容できるリンカー、例えば、ポリエチレングリコールを用いて化学的に結合させることにより(国際公開第WO92/16221号および国際公開第WO95/34326号)、ペプチドリンカー(Neve et al. (1996)、Cytokine、8(5):365-370)により、ビオチンへ化学的に結合させ、次いでアビジンへ結合させることにより(国際公開第WO91/03553号)、最後にキメラ抗体分子を組み合わせることにより(米国特許第5,116,964号、国際公開第WO89/09622号、国際公開第WO91/16437号およびEP315062)作製することができる。
【0075】
抗TNF抗体としては、MAK 195F Fab抗体(Holler et al. (1993), 1st International Symposium on Cytokines in Bone Marrow Transplantation, 147);CDP 571抗TNFモノクローナル抗体(Rankin et al. (1995)、British Journal of Rheumatology, 34:334-342);BAY X 1351マウスの抗腫瘍壊死因子モノクローナル抗体(Kieft et al. (1995)、7th European Congress of Clinical Microbiology and Infectious Diseases、page 9);CenTNF cA2抗TNFモノクローナル抗体(Elliott et al. (1994)、Lancet, 344:1125-1127およびElliott et al. (1994)、Lancet, 344:1105-1110)が挙げられる。
【0076】
本明細書に記載されたIL−1Ra融合タンパク質は、IL−17阻害剤(例えば、抗IL17受容体抗体、Amgen;抗IL−17A、抗IL17F)、RORc阻害剤の全ての形態と併用して使用することができる。
【0077】
本明細書に記載されたIL−1Ra融合タンパク質は、限定はしないが、アバタセプト(例えば、ORENCIA(登録商標))など、CD28阻害剤の全ての形態と併用して使用することができる。
【0078】
本明細書に記載されたIL−1Ra融合タンパク質は、限定はしないが、トシリズマブ(例えば、ACTEMRA(登録商標))など、IL−6およびIL−6受容体阻害剤の全ての形態と併用して使用することができる。
【0079】
本明細書に記載されたIL−1Ra融合タンパク質は、IL−18BPまたは誘導体、IL−18trap、抗IL−18、抗IL−18R1、または抗IL−18RAcPなど、抗IL−18化合物の全ての形態と併用して使用することができる。
【0080】
本明細書に記載されたIL−1Ra融合タンパク質は、抗IL−22または抗IL−22Rなど、抗IL−22の全ての形態と併用して使用することができる。
【0081】
本明細書に記載されたIL−1Ra融合タンパク質は、抗p19、抗p40(Ustekinumab)、抗IL−23Rなど、抗IL−23および/またはIL−12の全ての形態と併用して使用することができる。
【0082】
本明細書に記載されたIL−1Ra融合タンパク質は、抗IL−21または抗IL−21Rなど、抗IL−21の全ての形態と併用して使用することができる。
【0083】
本明細書に記載されたIL−1Ra融合タンパク質は、抗TGF−ベータの全ての形態と併用して使用することができる。
【0084】
本明細書に記載されたIL−1Ra融合タンパク質は、1つまたは複数のサイトカイン類、リンホカイン類、造血因子(類)、および/または抗炎症剤と併用して使用することができる。
【0085】
本明細書に挙げられた疾患および障害の治療には、本明細書に提供されたIL−1Ra融合タンパク質の1つまたは複数による治療と併用して(治療前、治療後、または並行治療)痛みおよび炎症の制御に最初に使用される薬物使用を含むことができる。これらの薬物は、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)として分類される。二次的治療としては、コルチコステロイド、遅効性抗リウマチ薬(SAARD)、または疾患改質薬(DM)が挙げられる。以下の化合物に関する情報はThe Merck Manual of Diagnosis and Therapy, Sixteenth Edition, Merck, Sharp & Dohme Research Laboratories, Merck & Co., Rahway, N.J. (1992)および、PJB Publications社のファーマプロジェクツに見ることができる。
【0086】
本明細書に記載されたIL−1Ra融合タンパク質は、本明細書に挙げられた疾患および障害を治療する目的で任意の1つまたは複数のNSAIDと併用して使用することができる。NSAIDは、少なくとも部分的にプロスタグランジン合成の阻害により、これらの抗炎症作用を発揮する(Goodman and Gilman in "The Pharmacological Basis of Therapeutics," MacMillan 7th Edition (1985))。NSAIDは、以下の少なくとも9つのグループに特徴づけることができる:(1)サリチル酸誘導体;(2)プロピオン酸誘導体;(3)酢酸誘導体;(4)フェナム酸誘導体;(5)カルボン酸誘導体;(6)酪酸誘導体;(7)オキシカム類;(8)ピラゾール類および(9)ピラゾロン類。
【0087】
本明細書に記載されたIL−1Ra融合タンパク質は、1つまたは複数のサリチル酸誘導体、プロドラッグエステル類または薬学的に許容できるそれらの塩類のいずれかと併用して(治療前、治療後、または並行治療)使用することができる。このようなサリチル酸誘導体、プロドラッグエステル類および薬学的に許容できるそれらの塩類は:アセトアミノサロール、アロキシプリン、アスピリン、ベノリレート(benorylate)、ブロモサリゲニン、アセチルサリチル酸カルシウム、トリサリチル酸コリンマグネシウム、サリチル酸マグネシウム、サリチル酸コリン、ジフルシナル、エテルサレート、フェンドサル、ゲンチシン酸、サリチル酸グリコール、サリチル酸イミダゾール、アセチルサリチル酸リシン、メサラミン、サリチル酸モルホリン、サリチル酸1−ナフチル、オルサラジン、パルサルミド、アセチルサリチル酸フェニル、サリチル酸フェニル、サラセタミド、サリチルアミドO−酢酸、サルサレート、サリチル酸ナトリウムおよびスルファサラジンを含む。同様の鎮痛性および抗炎症性を有する構造的に関連するサリチル酸誘導体もまた、このグループに包含されることが意図されている。
【0088】
さらなる具体的な実施形態において、本発明は、1つまたは複数のプロピオン酸誘導体、プロドラッグエステル類または薬学的に許容できるそれらの塩類のいずれかと併用する(治療前、治療後、または並行治療)IL−1Ra融合タンパク質の使用に関する。これらのプロピオン酸誘導体、プロドラッグエステル類または薬学的に許容できるそれらの塩類は:アルミノプロフェン、ベノキサプロフェン、ブクロキシ酸、カルプロフェン、デキシンドプロフェン、フェノプロフェン、フルノキサプロフェン、フルプロフェン、フルルビプロフェン、フルクロプロフェン、イブプロフェン、イブプロフェンアルミニウム、イブプロキサム、インドプロフェン、イソプロフェン、ケトプロフェン、ロキソプロフェン、ミロプロフェン、ナプロキセン、ナプロキセンナトリウム、オキサプロジン、ピケトプロフェン、ピメプロフェン、ピルプロフェン、プラノプロフェン、プロチジン酸、ピリドキシプロフェン、スプロフェン、チアプロフェン酸およびチオキサプロフェンを含む。同様の鎮痛性および抗炎症性を有する構造的に関連するプロピオン酸誘導体もまた、このグループに包含されることが意図されている。
【0089】
さらに別の具体的な実施形態において、本発明は、1つまたは複数の酢酸誘導体、プロドラッグエステル類または薬学的に許容できるそれらの塩類のいずれかと併用する(治療前、治療後、または並行治療)IL−1Ra融合タンパク質の使用に関する。これらの酢酸誘導体、プロドラッグエステル類または薬学的に許容できるそれらの塩類は:アセメタシン、アルクロフェナック、アムフェナック、ブフェキサマック、シンメタシン、クロピラック、デルメタシン、ジクロフェナックカリウム、ジクロフェナックナトリウム、エトドラック、フェルビナック、フェンクロフェナック、フェンクロラック、フェンクロジン酸、フェンチアザック、フロフェナック、グルカメタシン、イブフェナック、インドメタシン、イソフェゾラック、イソキセパック、ロナゾラック、メチアジン酸、オキサメタシン、オクスピナック、ピメタシン、プログルメタシン、スリンダック、タルメタシン、チアラミド、チオピナック、トルメチン、トルメチンナトリウム、ジドメタシンおよびゾメピラックを含む。同様の鎮痛性および抗炎症性を有する構造的に関連する酢酸誘導体もまた、このグループに包含されることが意図されている。
【0090】
別の具体的な実施形態において、本発明は、1つまたは複数のフェナム酸誘導体、プロドラッグエステル類または薬学的に許容できるそれらの塩類のいずれかと併用する(治療前、治療後、または並行治療)IL−1Ra融合タンパク質の使用に関する。これらのフェナム酸誘導体、プロドラッグエステル類または薬学的に許容できるそれらの塩類は:エンフェナム酸、エトフェナメート、フルフェナム酸、イソニキシン、メクロフェナム酸、メクロフェナム酸ナトリウム、メドフェナム酸、メフェナム酸、ニフルミン酸、タルニフルメート、テロフェナメート、トルフェナム酸およびウフェナメートを含む。同様の鎮痛性および抗炎症性を有する構造的に関連するフェナム酸誘導体もまた、このグループに包含されることが意図されている。
【0091】
さらなる具体的な実施形態において、本発明は、1つまたは複数のカルボン酸誘導体、プロドラッグエステル類または薬学的に許容できるそれらの塩類のいずれかと併用する(治療前、治療後、または並行治療)IL−1Ra融合タンパク質の使用に関する。使用できるこれらのカルボン酸誘導体、プロドラッグエステル類または薬学的に許容できるそれらの塩類は:クリダマック、ジフルニサル、フルフェニサル、イノリジン、ケトロラックおよびチノリジンを含む。同様の鎮痛性および抗炎症性を有する構造的に関連するカルボン酸誘導体もまた、このグループに包含されることが意図されている。
【0092】
さらに別の具体的な実施形態において、本発明は、1つまたは複数の酪酸誘導体、プロドラッグエステル類または薬学的に許容できるそれらの塩類のいずれかと併用する(治療前、治療後、または並行治療)IL−1Ra融合タンパク質の使用に関する。これらの酪酸誘導体、プロドラッグエステル類または薬学的に許容できるそれらの塩類は:ブマジゾン、ブチブフェン、フェンブフェンおよびキセンブシンを含む。同様の鎮痛性および抗炎症性を有する構造的に関連する酪酸誘導体もまた、このグループに包含されることが意図されている。
【0093】
別の具体的な実施形態において、本発明は、1つまたは複数のオキシカム類、プロドラッグエステル類または薬学的に許容できるそれらの塩類のいずれかと併用する(治療前、治療後、または並行治療)IL−1Ra融合タンパク質の使用に関する。これらのオキシカム類、プロドラッグエステル類または薬学的に許容できるそれらの塩類は:ドロキシカム、エノリカム、イソキシカム、ピロキシカム、スドキシカム、テノキシカムおよび4−ヒドロキシル−1,2−ベンゾチアジン1,1−ジオキシド4−(N−フェニル)−カルボキサミドを含む。同様の鎮痛性および抗炎症性を有する構造的に関連するオキシカム類また、このグループに包含されることが意図されている。
【0094】
さらに別の具体的な実施形態において、本発明は、1つまたは複数のピラゾール類、プロドラッグエステル類または薬学的に許容できるそれらの塩類のいずれかと併用する(治療前、治療後、または並行治療)IL−1Ra融合タンパク質の使用に関する。使用し得るこれらのピラゾール類、プロドラッグエステル類または薬学的に許容できるそれらの塩類は:ジフェナミゾールおよびエピリゾールを含む。同様の鎮痛性および抗炎症性を有する構造的に関連するピラゾール類もまた、このグループに包含されることが意図されている。
【0095】
さらなる具体的な実施形態において、本発明は、1つまたは複数のピラゾロン類、プロドラッグエステル類または薬学的に許容できるそれらの塩類のいずれかと併用する(治療前、治療後、または並行治療)IL−1Ra融合タンパク質の使用に関する。使用し得るこれらのピラゾロン類、プロドラッグエステル類または薬学的に許容できるそれらの塩類は:アパゾン、アザプロパゾン、ベンズピペリロン、フェプラゾン、モフェブタゾン、モラゾン、オキシフェンブタゾン、フェニルブタゾン、ピペブゾン、プロピルフェナゾン、ラミフェナゾン、スクシブゾンおよびチアゾリノブタゾンを含む。同様の鎮痛性および抗炎症性を有する構造的に関連するピラゾロン類もまた、このグループに包含されることが意図されている。
【0096】
別の具体的な実施形態において、本発明は、以下の1つまたは複数のNSAIDのいずれかと併用する(治療前、治療後、または並行治療)IL−1Ra融合タンパク質の使用に関する:ε−アセトアミドカプロン酸、S−アデノシル−メチオニン、3−アミノ−4−ヒドロキシ酪酸、アミキセトリン、アニトラザフェン、アントラフェニン、ベンダザック、ベンダザックリシネート、ベンジダミン、ベプロジン、ブロペラモール、ブコローム、ブフェゾラック、シプロクアゾン、クロキシメート、ダジダミン、デボキサメット、デトミジン、ジフェンピラミド(difenpiramide)、ジフェンピラミド(difenpyramide)、ジフィサラミン、ジタゾール、エモルファゾン、メシル酸ファネチゾール、フェンフルミゾール、フロクタフェニン、フルミゾール、フルニキシン、フルプロクアゾン、ホピルトリン、ホスホサル、グアイメサル、グアイアゾレン、イソニキシン、レフェタミンHCl、レフルノミド、ロフェミゾール、ロチファゾール、リシンクロニキシネート、メセクラゾン、ナブメトン、ニクチンドール、ニメスリド、オルゴテイン、オルパノキシン、オキサセプロール、オキサパドール、パラニリン、ペリソキサール、クエン酸ペリソキサール、ピホキシム、ピプロキセン、ピラゾラック、ピルフェニドン、プロクアゾン、プロキサゾール、チエラビンB、チフラミゾール、チメガジン、トレクチン、トルパドール、トリプタミドならびに480156S、AA861、AD1590、AFP802、AFP860、AI77B、AP504、AU8001、BPPC、BW540C、CHINOIN121、CN100、EB382、EL508、F1044、FK−506、GV3658、ITF182、KCNTEI6090、KME4、LA2851、MR714、MR897、MY309、ONO3144、PR823、PV102、PV108、R830、RS2131、SCR152、SH440、SIR133、SPAS510、SQ27239、ST281、SY6001、TA60、TAI−901(4−ベンゾイル−1−インダンカルボン酸)、TVX2706、U60257、UR2301およびWY41770などの会社コード番号により称されるもの。このNSAIDと同様の鎮痛性および抗炎症性を有する構造的に関連するNSAIDもまた、このグループに包含するように意図されている。
【0097】
さらに別の具体的な実施形態において、本発明は、リウマチ様疾患、移植片対宿主疾患および多発性硬化症などの急性炎症および慢性炎症など、本明細書に挙げられた疾患および障害の治療を目的とした1つまたは複数のコルチコステロイド類、プロドラッグエステル類または薬学的に許容できるそれらの塩類のいずれかと併用する(治療前、治療後、または並行治療)IL−1Ra融合タンパク質の使用に関する。コルチコステロイド類、プロドラッグエステル類または薬学的に許容できるそれらの塩類としては、ヒドロコルチゾン、および21−アセトキシプレグネノロン、アルクロメラゾン、アルゲストン、アムシノミド、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、ブデソニド、クロロプレドニゾン、クロベタゾール、プロピオン酸クロベタゾール、クロベタゾン、酪酸クロベタゾン、クロコルトロン、クロプレドノール、コルチコステロン、コルチゾン、コルチバゾール、デフラザコン、デゾニド、デスオキシメラゾン、デキサメタゾン、ジフロラゾン、ジフルコルトロン、ジフルプレドナート、エノキソロン、フルアザコート、フルクロロニド、フルメタゾン、ピバル酸フルメタゾン、フルシノロンアセトニド、フルニゾリド、フルオシノニド、フルオロシノロンアセトニド、フルオコルチンブチル、フルオコルトロン、ヘキサン酸フルオコルトロン、吉草酸ジフルコルトロン、フルオロメトロン、酢酸フルペロロン、酢酸フルプレドニデン、フルプレドニゾロン、フルランデノリド、ホルモコルタール、ハルシノニド、ハロメタゾン、酢酸ハロプレドン、ヒドロコルタメート、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、酪酸ヒドロコルチゾン、リン酸ヒドロコルチゾン、コハク酸ヒドロコルチゾン21−ナトリウム、テブト酸ヒドロコルチゾン、マジプレドン、メドリゾン、メプレドニゾン、メチルプレドニゾロン、フロン酸モメタゾン、パラメタゾン、プレドニカルベート、プレドニゾロン、21−ジエドリアミノ酢酸プレドニゾロン、リン酸プレドニゾロンナトリウム、コハク酸プレドニゾロンナトリウム、21−m−スルホ安息香酸プレドニゾロンナトリウム、21−ステアログリコール酸プレドニゾロンナトリウム、テブト酸プレドニゾロン、21−トリメチル酢酸プレドニゾロン、プレドニゾン、プレドニバル、プレドニリデン、21−ジエチルアミノ酢酸プレドニリデン、チキソコルトール、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、トリアムシノロンベネトニドおよびトリアムシノロンヘキサセトニドなどのヒドロコルチゾンから誘導される化合物が挙げられる。同様の鎮痛性および抗炎症性を有する構造的に関連するコルチコステロイド類もまた、このグループに包含されることが意図されている。
【0098】
別の具体的な実施形態において、本発明は、リウマチ様疾患、移植片対宿主疾患および多発性硬化症などの急性炎症および慢性炎症など、本明細書に挙げられた疾患および障害の治療を目的とした1つまたは複数の遅効性抗リウマチ薬類(SAARD)または疾患改質抗リウマチ薬類(DMARD)、プロドラッグエステル類または薬学的に許容できるそれらの塩類のいずれかと併用する(治療前、治療後、または並行治療)IL−1Ra融合タンパク質の使用に関する。SAARDまたはDMARD、プロドラッグエステル類または薬学的に許容できるそれらの塩類は:アロクプレイドナトリウム、オーラノフィン、オーロチオグルコース、オーロチオグリカニド、アザチオプリン、ブレキナールナトリウム、ブシラミン、3−オーロチオ−2−プロパノールスルホン酸カルシウム、クロラムブシル、クロロキン、クロブザリット、クプロキソリン、シクロ−ホスファミド、シクロスポリン、ダプゾン、15−デオキシスペルグアリン、ジアセレイン、グルコサミン、金塩類(例えば、クロロキン金塩、チオリンゴ酸金ナトリウム塩、チオ硫酸金ナトリウム塩)、ヒドロキシクロロキン、硫酸ヒドロキシクロロキン、ヒドロキシ尿素、ケブゾン、レバミゾール、ロベンザリット、メリッチン、6−メルカプトプリン、メトトレサート、ミゾリビン、ミコフェノレートモフェチル、ミオラール、ナイトロジェンマスタード、D−ペニシラミン、SKNF86002およびSB203580などのピリジノールイミダゾール類、ラパマイシン、チオール類、サイモポエチンおよびビンクリスチンを含む。同様の鎮痛性および抗炎症性を有する構造的に関連するSAARDまたはDMARDもまた、このグループに包含されることが意図されている。
【0099】
別の具体的な実施形態において、本発明は、急性炎症および慢性炎症など、本明細書に挙げられた疾患および障害の治療を目的とした、1つまたは複数のCOX2阻害剤、プロドラッグエステル類または薬学的に許容できるそれらの塩類のいずれかと併用する(治療前、治療後、または並行治療)IL−1Ra融合タンパク質の使用に関する。COX2阻害剤、プロドラッグエステル類または薬学的に許容できるそれらの塩類の例としては、例えば、セレコキシブが挙げられる。同様の鎮痛性および抗炎症性を有する構造的に関連するCOX2阻害剤もまた、このグループに包含されることが意図されている。COX−2選択的阻害剤の例としては、限定はしないが、エトリコキシブ、バルデコキシブ、セレコキシブ、リコフェロン、ルミラコキシブ、ロフェコキシブなどが挙げられる。
【0100】
さらに別の具体的な実施形態において、本発明は、急性炎症および慢性炎症など、本明細書に挙げられた疾患および障害の治療目的で、1つまたは複数の抗菌剤、プロドラッグエステル類または薬学的に許容できるそれらの塩類のいずれかと併用する(治療前、治療後、または並行治療)IL−1Ra融合タンパク質の使用に関する。抗菌剤としては、例えば、広範なクラスのペニシリン類、セファロスポリン類および他のベータ−ラクタム類、アミノグリコシド類、アゾール類、キノロン類、マクロライド類、リファマイシン類、テトラサイクリン類、スルホンアミド類、リンコサミド類およびポリミキシン類が挙げられる。ペニシリン類としては、限定はしないが、ペニシリンG、ペニシリンV、メチシリン、ナフシリン、オキサシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、フロキサシリン、アンピシリン、アンピシリン/スルバクタム、アモキシシリン、アモキシシリン/クラブラネート、ヘタシリン、シクラシリン、バカンピシリン、カルベニシリン、カルベニシリンインダニル、チカルシリン、チカルシリン/クラブラネート、アゾロシリン、メジオシリン、ペペラシリン、およびメシリナムが挙げられる。セファロスポリン類および他のベータ−ラクタム類としては、限定はしないが、セファロチン、セファピリン、セファレキシン、セフラジン、セファゾリン、セファドロキシル、セファクロール、セファマンドール、セフォテタン、セフォキシチン、セルロキシム、セフォニシド、セフォラジン、セフィキシム、セフォタキシム、モキサラクタム、セフチゾキシム、セトリアキソン、セフォペラゾン、セフタジジム、イミペネムおよびアズトレオナムが挙げられる。アミノグリコシド類としては、限定はしないが、ストレプトマイシン、ゲンタマイシン、トブラマイシン、アミカシン、ネチルマイシン、カナマイシンおよびネオマイシンが挙げられる。アゾール類としては、限定はしないが、フルコナゾールが挙げられる。キノロン類としては、限定はしないが、ナリジクス酸、ノルフロキサシン、エノキサシン、シプロフロキサシン、オフロキサシン、スパルフロキサシンおよびテマフロキサシンが挙げられる。マクロライド類としては、限定はしないが、エリスロマイシン、スピラマイシンおよびアジトロマイシンが挙げられる。リファマイシン類としては、限定はしないが、リファンピンが挙げられる。テトラサイクリン類としては、限定はしないが、スピサイクリン、クロルテトラサイクリン、クロモサイクリン、デメクロサイクリン、デオキシサイクリン、グアメサイクリン、リメサイクリン、メクロサイクリン、メタサイクリン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン、ペニメピサイクリン、ピパサイクリン、ロリテトラサイクリン、サンサイクリン、セノサイクリンおよびテトラサイクリンが挙げられる。スルホンアミド類としては、限定はしないが、スルファニルアミド、スルファメトキサゾール、スルファセタミド、スルファジアジン、スルフィソキサゾールおよびコ−トリモキサゾール(トリメトプリム/スルファメトキサゾール)が挙げられる。リンコサミド類としては、限定はしないが、クリンダマイシンおよびリンコマイシンが挙げられる。ポリミキシン類(ポリペプチド類)としては、限定はしないが、ポリミキシンBおよびコリスチンが挙げられる。
【0101】
当然のことながら、本明細書において、章の見出しは、編成のみを目的としたものであって、決して記載された内容を限定するものとして解釈すべきではない。引用された全ての文献は、全ての目的のために参照としてそれらの全体が本明細書に援用される。
【0102】
以下の実施例は、本発明の一定の実施形態を単に例示するものであり、添付された特許請求の範囲により定義される本発明を限定するものとして解釈してはならない。
【実施例】
【0103】
実施例1:三量体IL−1Raの様式、産生および精製
IL−1Raは、大腸菌(E.coli.)において組換えタンパク質として産生できることが以前に示されている(Steinkasserer et al 1992. FEBS 310:63-65)。このタンパク質は、極めて安定であり、効率的にリフォールディングする。そのN末端に追加のアミノ酸を有するIL−1Raのイソ型もまた記載されている(Haskill et al 1991, PNAS 88:3681-3685;Muzio et al 1995, JEM 182、623-628)。これらの分子は、IL−1Rならびにその成熟分泌体と結合したので、受容体への結合を損なうことなくアンタゴニストのN末端に追加ペプチドの融合が可能なことを示している。IL−1RaとIL−1Rとの相互作用の結晶構造分析もまた、N末端の改変がIL1Rとの相互作用に影響を及ぼさないことを裏付けている(Schreuder et al 1997, Nature 386: 190-194)。IL−1Raは、骨髄および/またはヒト胎盤に由来するヒトcDNAライブラリーからクローン化された。
【0104】
三量体IL−1Raは、Trip三量体形成単位に対するC末端融合体として設計された。8つの異なる融合タンパク質を設計し、その4つは全長の三量体形成単位を有し(Trip)、残りの4つは9個のアミノ酸が切断された三量体形成単位を有する(I10Trip)。次いでIL−1Raを、4つの異なるC末端融合体を用いていずれかの三量体形成単位にも融合させた。TripV、TripT、TripQおよびTripKと称するC末端変異体は、三量体形成ドメイン上のCTLDドメインのユニークな提示が考えられる。TripK変異体は、最長の構築物であり、CTLDと三量体形成ドメインとの間に最長かつ最もフレキシブルなリンカーを含有する。TripV、TripT、TripQは、構造的にフレキシブルでない三量体形成モジュール上への直接的なCTLD分子の融合を表すが、CTLD分子は、TripVからTripTへ、およびTripTからTripQへと1/3回転している。これは、これらのアミノ酸の各々が、αヘリックスターンしているが、完全な回転には3.2aaが必要であるという事実による。
【0105】
以下のタンパク質は、以下のグランザイムB開裂融合タンパク質としてBL21AI細菌において産生させた。下線部分は三量体単位を示し、太字部分はIL−1Ra部分を示す:
【化4】
【化5】
【化6】
【0106】
全ての構成物を、NiNTA Superflow(Qiagen)上で捕捉し、リフォールディングし、さらにSP−Sepharose FF(GE Heathcare)上で精製した。三量体IL1−Raの振とうフラスコ内または発酵槽での発現から、封入体を精製した。一塊の細胞ペレットを、溶解用緩衝液(50mMのトリス−HCl、pH8.0、25w/v%のショ糖、1mMのEDTA)中、音波処理によりホモジナイズした(溶解用緩衝液100mL当り50gのウェット細胞ペレット)。次いで、溶解用緩衝液100mL当り100mgのリゾチームを添加し、混合してから、サンプルを15分間室温に放置した。次にこのサンプルを、混合しながら2〜5分間音波処理した。洗浄用緩衝液(0.2MのNaCl、1w/v%のデオキシコレート、Na塩、1w/v%のノニデットP40、20mMのトリス−HCl、pH7.5、2mMのEDTA)を加え、サンプルを混合し、再度音波処理した。封入体を、4℃、8,000rpmで25分間の遠心分離により回収した。上澄液を、4℃で保存し、このペレットを、元の細胞ペレット50g当り100mLのTRITON(登録商標)X−100緩衝液(0,5w/v%のTRITON(登録商標)X−100、1mMのEDTA、pH8)中に再懸濁させた。封入体を、4℃、8,000rpmで25分間の遠心分離により回収し、上澄液を、4℃で保存した。TRITON(登録商標)X−100緩衝液洗浄をもう一度繰り返し、封入体を、4℃、12,000rpmで5分間の遠心分離により回収した。
【0107】
封入体を、細胞ペースト1グラム当り30mLの変性用緩衝液(6Mの尿素、10mMのEDTA、20mMのトリス/HClおよび20mMのβ−メルカプトエタノール、pH8.0)中、28℃で2時間再懸濁した。この懸濁液を、7500gで15分間遠心分離して、不溶性物質を除去した。この後、CaCl2を加えて20mMの最終濃度にし、この溶液を、NTA緩衝液(8Mの尿素;1000mMのNaCl;50mMのトリスHCl pH8.0;5mMのβ−メルカプトエタノール)中で平衡にした100mLのNi−NTA Superflowカラムに適用し、安定なベースラインが得られるまで洗浄した。さらに250mLのグアニジン−HCl、50mMのトリス−HCl pH8.0、5mMのβ−メルカプトエタノールにより洗浄し、次いで100mLの緩衝液NTAにより洗浄した。
【0108】
2つのリフォールディング法、すなわち透析リフォールディングおよびカラム上のリフォールディングを用い、双方から純粋な可溶性のタンパク質を得た。透析リフォールディングでは、再懸濁した封入体を用いて、直接、3Mの尿素、1mMのEDTA、pH7.2を含有する1×PBS中で一晩かけて透析した。翌日、0Mの尿素、1mMのEDTA、pH7.2を含有する1×PBS中で透析を続けた。
【0109】
カラム上のリフォールディングでは、タンパク質を結合させた洗浄Ni−NTA Superflowカラムの樹脂を、3Mの尿素、pH7.2を含有する4CVmlの1×PBSで洗浄してから、3Mの尿素、pH7.2を含有する10CVの1×PBS、そして0Mの尿素、pH7.2を含有する10CVの1×PBSの直線勾配で操作した。リフォールディングされた三量体IL−1Raを回収するために、このカラムを1×PBS、10mMのEDTA、pH6.0で溶出させ、フラクションを集めた。
【0110】
リフォールディング後、溶出液中のpHをNaOHにより7.5に調整してから、組換えグランザイムBを1:500(グランザイム/タンパク質)の比率で添加し、25℃で一晩インキュベートすることによって、組換えヒトグランザイムBによる開裂を実施した。この進行をSDS−PAGEにより追跡した。
【0111】
最後に、SP−SepharoseFF(GE Healthcare)カチオン交換ステップを用いて、開裂タンパク質を精製した。約50mLのSP−Sepharose FFを詰め、安定なベースラインが得られるまで緩衝液A(1×PBS、1mMのEDTA pH5.5)中で平衡にした。この開裂反応物を、緩衝液Aにより1:3に希釈し、カラム上に装填し、次いで安定なベースラインがモニターされるまで緩衝液Aで洗浄した。10CVの緩衝液Aから10CVの緩衝液B(1×PBS、1mMのEDTA+0.5MのNaCl pH5.5)までの勾配を設定して、フラクションを5mLずつ集めた。タンパク質を含有するフラクションを、SDS−PAGEで分析してからタンパク質産物をプールした。
【0112】
あるいは、上記封入体調製物からの上澄液を用いてタンパク質を精製した。上澄液中の可溶性三量体IL−1Raを、緩衝液A(20mMのTrisHCL、50mMのNaCl pH8.0)で平衡にしたNi−NTA Superflow(Qiagen)カラム上で精製した。封入体精製からの洗浄液をプールし、10000rpmで10分間遠心分離してから、CaCl2を5mMに、およびトリス−HClを20mMに加えて、HCl/NaOHによりpHを6.0に調整した。このプールをカラムに装填し、安定なベースラインが得られるまで緩衝液Aで洗浄した。安定なベースラインが得られるまで緩衝液A+1MのNaClで洗浄後、結合したタンパク質を、緩衝液A+20mMのEDTAで溶出させ、フラクションを集めた。その後、タンパク質プールを、グランザイムBにより開裂し、上記のとおりSP−SepharoseFFカラム上で精製した。3L発現培養物からのCII−H6−GrB−GG−TripK−IL−1raの可溶性フラクションから、Ni−NTA Superflow(Qiagen)の捕捉後、約250mgのCII−H6−GrB−TripK−IL−1Raについで最終収量が95mgのTripK−IL−1Raが得られた。可溶性フラクションからのタンパク質の収率と純度が、リフォールディングを実施することよりも有意に良好であったことから、この経路が、最初の構成物試験後に選択された。
【0113】
リフォールディングされたタンパク質のIL−1受容体1に結合する能力を、Biacore3000(Biacore、Uppsala、スウェーデン)上で分析した。この分析には、マウスIL1−RI/FcをCM5センサーチップに結合させ、IL−1RIタンパク質に対する可溶性TripK−IL−1raの結合を測定した。透析による未開裂のCII−H6−GrB−TripK−IL−1raリフォールディングの結果を図2に示し、未開裂のCII−H6−GrB−TripK−IL−1raのカラム上のNiNTAリフォールディングを図3に示す。開裂アッセイおよび精製アッセイにより、配列番号47−54の三量体IL−1Ra化合物を作製した。
【0114】
実施例2:U937細胞内でのIL−1誘導性のIL−8を阻害する三量体IL−1Ra化合物の能力
U937細胞内でのIL−1誘導性のIL−8を阻害する能力に関して、GG−TripV−IL−1ra(tripV−IL1Ra)、GG−TripK−IL−1ra(tripK−IL1Ra)、GG−TripT−IL−1ra(tripT−IL1Ra)およびCII−H6−GrB−GG−TripT−IL−1ra(tripQ−IL1Ra)をさらに分析した。結果を図4に示す。
【0115】
これらの化合物は、その応答をブロックする効果が本質的に等しく、これら全てがKINERET(登録商標)と同様に効果的であると思われる(w/wで比較した場合)。このアッセイにおける緩衝液効果のため、使用される最高のタンパク質濃度(100μg/mL)におけるIL−8の産生は、さらに減少するのではなくて増加する。幾つかのインビトロでの有効性検定ならびにBiacoreアッセイに基づいて、TripT IL1Raは、ブロッキングおよび結合の有効性ならびに産生収率に基づき最良の化合物であると判定した。
【0116】
実施例3:ペグ化三量体IL−1Ra化合物
KINERET(登録商標)の有効性において、そのインビボでの半減期が重要なパラメータである(KINERET(登録商標)のヒトでの半減期は、わずか4−6時間であり、したがって毎日1回適用する必要がある)ことから、N末端ペグ化によりTripT IL1Raをペグ化する能力を試験した。三量体IL1−RaをN末端においてペグ化する。上記の精製法の最終ステップ後の三量体IL1−Raアンタゴニストタンパク質を、ペグ化の出発点として用いた。ペグ化反応用に、このタンパク質の緩衝液をPBS緩衝液pH6.0に変えた。反応中のタンパク質濃度は、0.5mg/mLと3.5mg/mLとの間であり、20mMのシアノボロヒドリド(NaCNBH3)で補足した5〜10モル過剰のmPeg5K−アルデヒドまたはmPeg20K−アルデヒド(Nektar)を用いた。反応は、20℃で16時間実施した。次いでこの反応混合物をSource15Sカラム(GE Healtcare)に適用して、モノペグ化体を精製した。図5に示すように、非ペグ化タンパク質と比較して、このペグ化体のアンタゴニスト活性は減少した。しかしながら、このペグ化タンパク質は、依然として良好なIL1ブロック効力を有している。
【0117】
実施例4:オスのルイスラットにおける静脈内注射後の三量体IL−1Raタンパク質の薬物動態学的分析
先の実施例に記載された3種の三量体IL−1Raポリペプチドを、薬物動態学的分析用に選択した。これらの構築物の違いは、三量体形成ドメインのN末端にあり、すなわち全長(FL)、最初の9個のアミノ酸が切断されている(I10)および最初の16個のアミノ酸が切断されている(V17)という違いであった。I10構築物は、三量体形成ドメインの天然の欠失変異体を表し、Thr4においてO−グリコシル化部位を欠いている。V17誘導体は、三量体形成ドメインをコードする最初のエキソンの欠失を表し、特徴的なヘパリン結合部位を欠いている。この部位はまた、I10構築物において部分的に除去されている。図6に示されるように、IL−1Ra分子のインビトロ有効性は、U937細胞アッセイにおいて立証された。
【0118】
これら3種の構築物ポリペプチドの薬物動態学的プロファイルを、ルイスラットにおける静脈内(i.v.)注射後に分析した。得られたプロファイルを、同一の実験におけるKINERET(登録商標)の薬物動態学的プロファイルと比較した。薬物動態学的試験は、1群当りオスのルイスラット4匹を用いて実施し、使用した構築物は、FLIL−1Ra、I10IL−1Ra、V17IL−1RaおよびKINERET(登録商標)であった。100mg/kgの単回用量を動物に静脈内投与した。試験化合物を、媒体(4.4mMのクエン酸ナトリウム、pH6.5、93.8mMのNaCl、0.33mMのEDTA、0.7gのTWEEN(登録商標)−80)に溶解し、尾静脈(正中仙骨静脈)または後足静脈(伏在静脈)を介して投与した。
【0119】
次に血液を、ベースライン(ゼロ時間)ならびに投与後0.5時間、1時間、2時間、4時間、8時間、12時間、24時間、48時間、72時間の時点で、1時点当り4匹の動物から採取した。およそ100μlの血液サンプルを、尾の先端からMicrotainers(商標)中に採取した。血漿を採取し、ポリプロピレンチューブに移した。次に測定が実施されるまで、血漿サンプルを≦70℃で保存した。次いで、CO2吸入により動物を殺処理し、これらの死体を、病理学的検査をせずに廃棄した。次に血漿中のIL−1Ra化合物濃度およびKINERET(登録商標)濃度を、ELISAにより決定した。
【0120】
各ラットの平均体重は、250グラムであった。ラットの平均血液量が16.5mLであるとすれば、静脈内注射後の化合物の理論的な最高の初期濃度は、1,500,000ng/mLと算出される。これらの濃度を図7に示す。この初期濃度を、分析の出発値として用いた。動物に副作用または健康状態の変化は見られなかった。
【0121】
上記時点での血液サンプルの採取後、ELISAアッセイを用いて、血液サンプル中の注射されたタンパク質を測定した。これらのELISA結果に基づき、薬物曝露の尺度として曲線下面積(AUC)を用い、また標準的なソフトウェアを用いて血漿中の半減期を算出した。この曲線下面積を表2に示し、血漿中タンパク質の半減期を表3に示してある。
【0122】
【表2】
【0123】
【表3】
【0124】
これらの静脈内データより、KINERET(登録商標)と比較して三量体化合物の方が、優れた血漿中半減期を有することが示されている。KINERET(登録商標)の半減期は、約1.2分であり、一方、静脈内注射後のV17 IL1Ra三量体タンパク質の半減期は、約69分である。分析に用いられた評価基準に依ると、AUCの相対的増加は、FL IL1Ra三量体に関する2倍とV17 IL1Ra三量体に関する5倍との間にあり、これは、KINERET(登録商標)に比較して、三量体化された変異体を用いた薬物曝露は実質的に改善することを示すものである。
【0125】
実施例5:Met−I10−TripT−IL1raおよびGG−V17−TripT−IL1raの産生ならびにラットCIAモデル
双方の分子は、2×TY培地(Met−I10−TripT−IL−1ra)または化学的に規定された最少培地(GG−V17−TripT−IL−1ra)を用いて10Lの発酵槽操作でBL21 AI細菌により産生された。5887×gで20分間の遠心分離により細胞ペレットが得られ、次に10mMのNa2HPO4 pH6中に再懸濁させた。Met−I0−TripT−IL−1raについては、高圧ホモジネート(2×17,000psi)に次いで、10,000×gで10分間の遠心分離により目的のタンパク質を含有する可溶性の細胞フラクションを得た。上澄液を、10mMのNa2HPO4 pH7.4で希釈し、AKTA fPLCを用いて、SP−SepharoseFFカラム(カチオン交換、GE Healthcare)にかけ、次いでQ−Sepharose FF(アニオン交換、GE Healthcare)にかけた。最終ステップにおいて、タンパク質は、Mustang Eフィルター(Pall)を通過させてエンドトキシンを除去し、次いで緩衝液をPBS pH7.4に交換し、濃度を50mg/mLにした。GG−V17−TripT−IL−1Raタンパク質は、N末端ブースタードメイン、ファージCIIタンパク質、続いてヒトグランザイムB開裂部位を含む融合タンパク質として発現した。GG−V17−TripT−IL−1Raは、リゾチームを含有する溶解用緩衝液中でのホモジネートに次いで、8000rpmで25分間遠心分離することにより、発酵細胞ペレットから精製した。次に上澄液は、Fractogel(登録商標)EMDキレート(M)カラム(EMD Chemicals Inc.)を通過させ、溶出液の緩衝液を、20mMのトリスpH7.5、150mMのNaClに交換した。次にこのタンパク質フラクションを、ヒト組換えグランザイムB(社内作製、特許参照)で消化した。PBS pH6で希釈した後、タンパク質は、SP Sepharose FF、次いでMustangEろ過および流動様式のFractogel(登録商標)EMDキレート(M)カラムを用いて精製し、融合タグおよびヒトグランザイムBを除去した。最後に、タンパク質の緩衝液をPBS pH7.4に交換し、50mg/mLに濃縮した。Met−I10−TripT−IL−1raおよびGG−V17−TripT−IL−1ra双方のタンパク質に関する収量は、SDS−PAGE(図8)、RP−HPLCおよびMSにより判定すると、3g〜5g/L、純度>95%であった。LALアッセイ(Lonza)を用いて判定すると、エンドトキシン濃度は、<3EU/mgであった。分析SECにより判定すると、凝集体は、<0.5%であり(図9)、宿主細胞タンパク質は、<6ng/mLであった。Met−I10−TripT−IL−1raの2つのバッチ(LM022、LM023)およびGG−V17−TripT−IL−1raの2つのバッチ(CF019、CF020)を、上記アッセイにより試験した。
【0126】
4日確立の(4-day established)II型コラーゲン関節炎のメスのルイスラットを、1日〜3日の関節炎に対して毎日(QD)、媒体(10mMのリン酸緩衝液pH7.4)により、あるいは単量体IL−1Ra(100mg/kgのKINERET(登録商標))または三量体化IL−1Ra(120mg/kgのMet−I10−TripT−IL1raもしくは120mg/kgのGG−V17−TripT−IL1ra)を投与する等モル量のIL−1Raにより、皮下(SC)処置した。対照を1セットのみとするため、QD群における全てのラットに、第二回目と第三回目の投与に際してそれぞれの媒体(10mMのリン酸緩衝液pH7.4、またはKINERET(登録商標)についてはクエン酸ナトリウム緩衝液pH6.5)を投与し、操作を一定に保った。動物は、関節炎4日目で殺処理した。効力の評価は、曲線下面積(AUC)で表される足首のカリパス測定、最後の後足の重量および体重に基づいた(Bendele et al 2000, Arthritis + Rheumatism 43:2648-2659)。動物は全て試験終了まで生存した。KINERET(登録商標)またはその媒体(CSEP)を注射されたラットは、注射処置時に鳴いたことから、皮下炎症が生じたことを示唆する。他のものを用いた注射では鳴かなかった。
【0127】
1ケージ当り4匹の飼育動物(関節炎群につき8匹、正常群につき4匹)に、イソフルランで麻酔をかけ、0日目および6日目に、尾のつけねと2箇所の背中とに2mg/mlのウシII型コラーゲン(Elastin Products、オーウェンスビレ、ミズーリ州)を含有する300μlのフロイント不完全アジュバント(Difco、デトロイト、ミシガン州)を皮下/皮内(SC/ID)注射した。皮下経路による投与(24時間の間隔で毎日)を、関節炎1日目に開始し、3日目まで継続した。実験群は表4に示すとおりである。
【0128】
【表4】
【0129】
関節炎の0日目〜4日目にラットの体重を量り、足首のカリパス測定を関節炎0日目から開始して毎日行った(試験9日目)。最後の体重測定後に、動物を安楽死させ、後足を、内くるぶしと外くるぶしの面で切断し、(一対で)重量を量った。
【0130】
100mg/kgの毎日のKINERET(登録商標)(3日目〜4日目)処置、120mg/kgの毎日のMet−I10−TripT−IL1ra(2日目〜4日目)処置、または120mg/kgの毎日のGG−V17−TripT−IL1ra(3日目〜4日目)処置されたラットは、媒体処置された疾患対照動物と比較して、足首の直径の有意な減少が見られた。媒体処置された疾患対照動物と比較して、100mg/kgの毎日のKINERET(登録商標)処置(34%)、120mg/kgの毎日のMet−I10−TripT−IL1ra(54%)処置、または120mg/kgの毎日のGG−V17−TripT−IL1ra(49%)処置されたラットでは、足首の直径のAUCが有意に減少した。毎日のMet−I10−TripT−IL1ra処置は、毎日のKINERET(登録商標)処置と比較して足首の直径のAUCが有意に減少する試験結果となった(試験の終了時においてp<0.035)。また、試験の終了時における毎日のKINERET(登録商標)処置と比較して、毎日のGG−V17−TripT−IL1ra処置により、足首の直径のAUCが有意に減少する試験結果となった(p<0.001)(図10)。
【0131】
媒体処置の疾患対照動物と比較して、100mg/kgの毎日のKINERET(登録商標)処置(61%)、120mg/kgの毎日のMet−I10−TripT−IL1ra処置(79%)、または120mg/kgの毎日のGG−V17−TripT−IL1ra処置(91%)されたラットでは、最終的な足重量が有意に減少した。毎日のKINERET(登録商標)処置と比較して、毎日のGG−V17−TripT−IL1ra処置により最終的な足重量が有意に減少する試験結果となった(p<0.006)(図11)。
【0132】
媒体処置された疾患対照動物と比較して、100mg/kgの毎日のKINERET(登録商標)処置(54%)、120mg/kgの毎日のMet−I10−TripT−IL1ra処置(49%)、または120mg/kgの毎日のGG−V17−TripT−IL1ra処置(65%)されたラットの体重の変化は、正常値へと有意に増加した。
【0133】
実施例6:ストレプトゾシン(STZ)誘導型糖尿病モデル
絶食させたC57BL/6Jオスのマウスに、STZ(Sigma Aldrich)の50mg/kgを、連続5日間、毎日1回、腹腔内投与した。マウスは、1日目から4日目にかけて血中グルコース濃度が徐々に増していった。この血中グルコース濃度は、STZ誘導期間中に、6.9nmol/Lから13.1nmol/Lまで上昇した。5日間(4日目)の最後のSTZ投与後に、良好な状態の10匹のマウスをそれぞれが含む10個の処置群に、マウスを無作為に分配した。糖尿病の発症前のこの日に処置を開始し、発症後も処置を継続した。処置群は表5に示すとおりである。
【0134】
【表5】
【0135】
試験期間は28日であり、処置期間中、マウスの体重を週1回量った。糖尿病の発症をモニターするために、血中グルコース濃度を、試験期間中、1日おきに測定した。尾静脈からの出血により、全血から液滴で採血し、Ascensia ELITE(登録商標)の血中グルコース試験ストリップ上に乗せて、Ascensia ELITE(登録商標)の血中グルコース計測器(Bayer)で分析した。これらの値を記録し、処置開始時の濃度と比較して、処置群におけるx倍の増加を算出した。臨床的症状は、反対の症状が生じた群において毎日または適宜観察した。
【0136】
図12に示されるように、100mg/kgおよび30mg/kg双方でのI10−TripT−IL1−RaまたはKINERET(登録商標)のいずれの毎日の腹腔内投与後にも、血中グルコース濃度の著しい減少が見られた。さらに、100mg/kgでのI10−TripT−IL1Raの週2回の投与では、100mg/kgのKINERET(登録商標)の毎日の投与と効果が等しかった。これらのデータは、三量体化IL−1Raが、実験的に誘導した糖尿病の治療に有効であることを実際に示している。
【0137】
上記に示した実施例は、単に例示を目的としたものであり、本発明の全ての可能な実施形態、適用または修飾の網羅的な列挙であること意味するものではない。したがって、本発明の範囲と意図から逸脱することなく、本発明の記載された方法およびシステムの種々の修飾と変更は、当業者にとって明らかとなろう。本発明を、具体的な実施形態に関連して記載したが、当然のことながら、特許請求された本発明は、このような具体的な実施形態に過度に限定されるべきものではない。具体的には、分子生物学、免疫学、化学、生化学または関連分野の当業者にとって明白な、本発明を実施するための記載された様式に関する種々の修飾は、添付された請求項の範囲内にあることが意図される。
【0138】
本発明は、当然のことながら、本明細書に記載された特定の方法論、プロトコル、および試薬などに限定されず、当業者に認識されるように、これらを変えることができる。また本明細書に用いられる用語は、当然のことながら、特定の実施形態の説明だけを目的として使用されており、本発明の範囲を限定する意図はない。また、本明細書および添付された特許請求の範囲に用いられる単数形「ある、その/この(a、an、およびthe)」は、文脈により明確に別様に規定されない限り、複数系への言及を含んでいることに注意すべきである。したがって、例えば、「あるリンカー(a linker)」に対する言及は、当業者には既知の1つまたは複数のリンカーおよびそれらの均等物に対する言及である。
【0139】
別様に規定されない限り、本明細書に用いられる全ての技術用語および科学用語は、本発明に関係する当業者により一般に理解される用語と同じ意味を有する。本発明の実施形態およびその種々の特徴および利点は、非限定的な実施形態を参照してより十分に説明され、また添付の図面に例示され、そして明細書において詳述されている。図面に例示された特徴は、必ずしも縮尺どおりに描かれておらず、一実施形態の特徴は、たとえ本明細書に明白に述べられていなくても当業者が認識できるはずの他の実施形態で実施できる。
【0140】
本明細書に挙げられた数値はいずれも、任意の下限値と任意の上限値との間にある少なくとも2つの構成単位を分離できる1つの構成単位の増分の下限値から上限値にある全ての値を含む。例として、例えば、成分濃度または例えば、サイズ、角度の大きさ、圧力、時間などの処理変数の値が、例えば、1から90、具体的には20から80、より具体的には30から70であると述べられている場合、それは、15から85まで、22から68まで、43から51まで、30から32までなどの値が本明細書において明確に示されていることを意図するものである。1未満の値については、1つの構成単位は、適宜0.0001、0.001、0.01または0.1であると考えられる。これらは、単に具体的に意図される数値の例であり、示された数値の下限値と上限値との間の数値の可能な全ての組合せが、同様の様式で本明細書に明確に言及されていると考えるべきである。
【0141】
特定の方法、装置、および材料が記載されているが、本明細書に記載されたものと類似のまたは均等な方法および材料のいずれも、本発明の実施または試験に使用することができる。これまでに引用された全ての報文および参考文献および刊行物の開示は、各々が個々に参照として組み込まれているのと同程度に、それらの全体が参照として明確に本明細書に援用される。
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照としてその全体が本明細書に援用される2008年10月8日出願の米国仮出願番号第60/978,254号の利益を主張する。
【0002】
本発明は、インターロイキン1により媒介される疾患の治療に関する。より具体的には、本発明は、このような疾患の治療に有用なインターロイキン1受容体アンタゴニスト(IL−1Ra)に関する。
【背景技術】
【0003】
IL−1ファミリーは、自然免疫系の重要な一部分を担っており、適応免疫系の調節物質でもある。局所組織におけるIL−1とIL−1Raとの間のバランスは、炎症性疾患の発症可能性およびそれに起因する構造的損傷に影響を与える。過剰量のIL−1存在下では、関節、肺、胃腸管、中枢神経系(CNS)または血管に、炎症性疾患および自己免疫疾患が発症し得る。IL−1Raによるヒト疾患の治療は、組換えIL−1Raの注入により、または遺伝子療法アプローチにより実施される。組換えIL−1Raによる治療はリウマチ様関節炎(RA)に対して承認されており、変形性関節炎(OA)に対しては第二相試験が進行中である。
【0004】
多くのヒト疾患におけるIL−1の重要な炎症誘発性の役割が、ここ10年間にわたって記載されている。IL−1とIL−1Raとの間のバランスは、リウマチ様関節炎(RA)、変形性関節炎(OA)、炎症性腸疾患(IBD)、肉芽腫性および線維性肺障害、腎疾患、肝臓疾患および膵疾患、移植片対宿主疾患(GVHD)、白血病、癌、骨粗しょう症、糖尿病、中枢神経系疾患、感染症および動脈疾患などの多様な動物疾患モデルにおいて広範に研究されている。これら疾患の各々において、局所のIL−1の過剰産生および/またはIL−1Raの産生不足が、被験体に疾患を発症し易くさせる。IL−1Raの治療的投与は、組織損傷の予防に有効であることが示されている(非特許文献1を参照)。
【0005】
IL−1ファミリーは、2つのアゴニストであるIL−1αとIL−1β;特異的な受容体アンタゴニストであるIL−1Ra;ならびに3つの異なる受容体であるIL−1RタイプI(IL−1RI)、IL−1RタイプII(IL−1RII)およびIL−1受容体アクセサリータンパク質(IL−1R AcP)からなる。IL−1RIは、215残基の長い細胞質ドメインを有する80kDaのタンパク質である。生物学的に不活性なIL−1RIIは、29残基の短い細胞質ドメインを有する60kDaのタンパク質である。IL−1R AcPは、一本鎖のIL−1RIにIL−1αまたはIL−1βが結合した後に、その複合体に動員される。IL−1RIおよびIL−1R AcPの細胞質ドメイン近傍で活性化されるシグナル伝達経路としては、NF−κB経路、JNK/AP−1経路、およびp38MAPキナーゼ経路が挙げられる。IL−1RIIは、細胞膜上で双方のIL−1を結合するデコイ受容体として、また体液相中の可溶性受容体として機能し、そのことによってIL−1が機能的なIL−1RIと相互作用することを防ぐ。
【0006】
IL−1ファミリーにおける第三のリガンド、IL−1Raは、双方のIL−1Rに結合するが細胞を活性化することはできない、IL−1の構造的な変異体である。IL−1Raは、IL−1αに18%のアミノ酸相同性を有し、IL−1βに26%のアミノ酸相同性を有する、17kDaのタンパク質である。元々イソ型と記載されていたIL−1Raは、単球、マクロファージ、好中球、および他の細胞から分泌され、現在ではsIL−1Raと称されている。現在まで、IL−1Raのさらに3つの細胞内イソ型が記載されている。上流のエキソンから別の転写スプライス機構によって作出されるIL−1Raの18kDa体はicIL−1Ra1と称され、ケラチノサイトおよび他の上皮細胞、単球、組織マクロファージ、線維芽細胞および内皮細胞中に見られる。ヒト白血球からクローン化されたIL−1RaのcDNAは、そのcDNAの5’領域に挿入断片として、さらに63bpの配列を含有する。icIL−1Ra3と称されるIL−1Raの15kDaのイソ型は、単球、マクロファージ、好中球および肝細胞中に見られ、別の転写スプライスと別の翻訳開始の双方により作出され得る。
【0007】
可溶性のIL−1RaとicIL−1Ra1は双方ともIL−1Rに等しく良好に結合するが、icIL−1Ra3は受容体との弱い結合性を示す。IL−1Raは、IL−1RIに結合するが、IL−1R AcPとIL−1RIとの結合を防ぐことにより特異的な受容体アンタゴニストとして機能し、その結果、シグナル伝達経路を開始できない。
【0008】
デコイ受容体IL−1RIIは、細胞膜上および可溶性受容体として体液相中の両方でIL−1と結合し、IL−1が機能的なIL−1RIと相互作用するのを防ぐ。したがって、可溶性のIL−1RIIおよびIL−1Raは、IL−1を協同的に阻害することができる。可溶性のIL−RIは、IL−1およびIL−1Raに結合することができるが、IL−1とIL−1Raとの間のバランスにより、可溶性のIL−1RIは炎症誘発剤として作用するようである。
【0009】
KINERET(登録商標)は、Amgenからの大腸菌産生IL−1Raであり、進行性のリウマチ様関節炎患者に利益を与えることが示されている。KINERET(登録商標)は、1日1回皮下注射する必要がある。皮下注射で、KINERET(登録商標)は、4時間から6時間の範囲の半減期を有し、静脈内注射では、半減期はおよそ2.5時間である。IL−1Raは腎クリアランスにより除去される。KINERET(登録商標)はメチオニン基の存在により、天然のIL−1受容体アンタゴニストとは異なるIL−1の特異的受容体アンタゴニストである。KINERET(登録商標)は、単独でまたはメトトレキサートと組み合わせて投与すると、臨床的徴候および症状における改善、X線撮影上での進行の減少、患者の機能、痛みおよび疲労における改善により評価される利益を患者に与えることが示されている。KINERET(登録商標)は、臨床試験で実証されたように、好ましい安全性プロファイルを有している。
【0010】
IL−1Raの薬物動態不良を改善するために幾つかの試みがなされた。IL−1ベータのみを標的にする抗体が開発された。しかしながら、IL−1Raとは対照的に、これはIL−1ベータのみをブロックし、IL−1αの作用はブロックしない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】W.P. Arend, Cytokine & Growth Factor Reviews, 13 (2002) pp. 323-240
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、IL−1Ra分子のより長い半減期および好ましい安全性プロファイルを提供する、IL−1Raに関する改善された送達法に対する当分野における必要性を、本発明者らは認めた。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、三量体形成ドメインおよびIL−1活性を阻害するIL−1Raポリペプチド配列を含む融合タンパク質を提供する。一実施形態において、この融合タンパク質は、IL−1活性を阻害する配列番号38の変異体または断片を含むIL−1Ra配列を含む。さらなる実施形態において、この融合タンパク質は、配列番号38に少なくとも85%同一性があるIL−1Raポリペプチド配列を含む。この融合タンパク質は、ポリエチレングリコールを含み得る。この融合タンパク質の三量体形成ドメインは、テトラネクチンから誘導できる。
【0014】
本発明はまた、本発明の3つの融合タンパク質を含む三量体複合体も提供する。一実施形態において、この三量体複合体は、テトラネクチン三量体形成構造エレメント(TTSE)である三量体形成ドメインを含む。一実施形態において、この三量体複合体は、配列番号1に少なくとも66%同一性がある三量体形成ドメインを含む。さらなる実施形態において、この三量体複合体は、TripK−IL−1ra(配列番号39);TripV−IL−1ra(配列番号40);TripT−IL−1ra(配列番号41);TripQ−IL−1ra(配列番号42);I10−TripK−IL−1ra(配列番号43);I10−TripV−IL−1ra(配列番号44);I10−TripT−IL−1ra(配列番号45);I10−TripQ−IL−1ra(配列番号46);V17−TripT−IL1Ra(配列番号55);V17−TripK−IL−1Ra(配列番号56);V17−TripV−IL−1Ra(配列番号57);およびV17−TripQ−IL1Ra(配列番号58)からなる群から選択される融合タンパク質のうちの少なくとも1つを含む。
【0015】
さらなる実施形態において、本発明は、三量体および少なくとも1つの薬学的に許容できる賦形剤を含む医薬組成物を提供する。
さらに本発明は、インターロイキン1に媒介される疾患を治療するための方法に関する。この方法は、この方法を必要とする患者に、本発明の医薬組成物を投与することを含む。この疾患は、リウマチ様関節炎または糖尿病などの炎症性疾患であり得る。この方法はまた、抗炎症剤を患者に同時にまたは連続的に投与することを含む。
【0016】
本発明はまた、当該融合タンパク質に共有結合した抗炎症剤をさらに含む融合タンパク質を提供する。
【0017】
本発明のこれらおよび他の態様は、下記にさらに詳細に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】テトラネクチンタンパク質ファミリーの三量体形成構造エレメントのアミノ酸配列のアラインメントを示す図である。ヒト・テトラネクチンのエキソン2およびエキソン3の最初の3個の残基を含む残基V17からK52(1文字コード)に相当するアミノ酸配列(配列番号59);マウス・テトラネクチン(配列番号60);リーフシャークの軟骨から単離されたテトラネクチンの相同タンパク質(配列番号61);およびウシ軟骨から単離されたテトラネクチンの相同タンパク質(配列番号62)。7残基反復(heptad repeat)のa位およびd位の残基を太字で記載する。テトラネクチンタンパク質ファミリーの三量体形成構造エレメントに見られる共通配列は、この領域中の他の保存された残基に加えて、図1に示された7残基反復中のa位およびd位に存在する残基を含む。「hy」は、脂肪族の疎水性残基を示す。
【図2】透析によるCII−H6−GrB−TripK−IL−1Raのリフォールディング結果を示す図である。
【図3】NiNTA上でのCII−H6−GrB−TripK−IL−1Raの捕捉を示す図である。
【図4】U937細胞におけるIL−1誘導性のIL−8を阻害するGG−TripV−IL−1Ra(tripV−IL−1Ra)、GG−TripK−IL−1Ra(tripK−IL−1Ra)、GG−TripT−IL−1Ra(tripT−IL−1Ra)およびGG−TripT−IL−1Ra(tripT−IL−1Ra)の能力を示すグラフである。
【図5】非ペグ化TripTおよびTripVおよびKINERET(登録商標)と比較した、U937細胞におけるIL−1誘導性のIL−8を阻害するペグ化TripTおよびTripVの能力を示すグラフである。
【図6】PK試験に用いられたTripT−IL−1Ra、I10−TripT−IL−1Ra、V17−TripT−IL−1RaのU937細胞におけるIL−1誘導性のIL−8を阻害する能力を示すグラフである。
【図7】ラットにおける100mg/kgの静脈内注射後、TripT−IL−1Ra、I10−TripT−IL−1Ra、およびV17−TripT−IL−1Raの血中濃度を示すグラフである。
【図8】複数のバッチであるMet−I10−TrpT−IL−1Ra(LM022およびLM023)およびGG−V17−TrpT−IL−1Ra(CF019およびCF020)のタンパク質収量のSDS−PAGE分析を示す図である。
【図9】Met−I10−TrpT−IL−1RaおよびGG−V17−TrpT−IL−1Raタンパク質収量のSEC分析結果を示す図である。
【図10】ラットのCIA試験結果を示す図である。II型コラーゲン関節炎を有するメスのルイスラットの足首の直径は、媒体(10mMのリン酸緩衝液pH7.4)、または単量体IL−1Ra(100mg/kgのKINERET(登録商標))、もしくは三量体化IL−1Ra(120mg/kgのMet−I10−TripT−IL1ra、または120mg/kgのGG−V17−TripT−IL1ra)を投与する等モル量のIL−1Raによる処置後に測定した。
【図11】媒体処置された疾患対照動物と比較して、ラットをKINERET(登録商標)、Met−I10−TripT−IL1ra QD、またはGG−V17−TripT−IL1ra QDで処置した場合の最終的な足重量の減少試験を示す図である。
【図12】I10−TripT−IL1−RaまたはKINERET(登録商標)による毎日の腹腔内投与後に見られた血中グルコース濃度の減少を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、IL−1により媒介される疾患を治療するための化合物および方法に関する。一態様において、本発明は、三量体形成ドメインまたは多量体形成ドメインと融合したIL−1Raポリペプチド配列の融合タンパク質に関する。IL−1Ra単独よりも高い安定性および改善された薬物動態特性を提供する組成物を提供し、かつ好ましい安全性プロファイルを提供するために、3つ以上の融合タンパク質を三量体化または多量体化することができる。
【0020】
さらなる態様において本発明は、上記ポリペプチドのいずれか1つをコードする核酸を提供し、ならびに特異的な発現および回収を可能にする条件下での上記ポリペプチドを調製する方法を提供する。
【0021】
本発明のポリペプチドは、有効量の医薬組成物を被験体に投与することにより、炎症性疾患の治療方法など、IL−1により媒介される病態を有する被験体の治療に使用するための医薬組成物の調製に使用できる。
【0022】
本明細書に用いられる疾患または医学的状態は、自然発生的または実験的な疾患または医学的状態が体液中または組織中のIL−1のレベル上昇に関連している場合、または身体から採取した細胞または組織が培養物中にIL−1の上昇レベルを産生する場合、「インターロイキン1媒介疾患」または「インターロイキン1により媒介される疾患」と考えられる。多くの場合、このようなインターロイキン1媒介疾患はまた、以下のさらなる2つの条件によって認識される:(1)この疾患または医学的状態に関連する病理的所見が、IL−1の投与により、動物において実験的に模倣することができる;(2)この疾患または医学的状態の実験動物モデルに誘発させた病態が、IL−1の作用を阻害する薬剤による治療によって阻止または消滅させることができる。たいていのIL−1媒介疾患において、これら3つの条件のうちの少なくとも2つが当てはまり、多くのIL−1媒介疾患において、これら3つの条件の全てが当てはまる。急性および慢性のIL−1媒介炎症性疾患の非排他的リストとして、限定はしないが、以下が挙げられる:痛風、急性膵炎;ALS;アルツハイマー病;悪液質/食欲不振症;喘息;アテローム硬化症;慢性疲労症候群;発熱;糖尿病(例えば、インスリン糖尿病);糸球体腎炎;移植片対宿主拒絶反応;出血性ショック;痛覚過敏症;炎症性腸疾患;変形性関節炎、乾癬性関節炎、若年性関節炎およびリウマチ様関節炎などの関節の炎症性病態;脳虚血(例えば、外傷、てんかん、出血または脳卒中の結果の脳傷害、それらの各々は神経変性に至る可能性がある)などの虚血性傷害;肺疾患(例えば、ARDS);多発性骨髄腫;多発性硬化症;骨髄性白血病(例えば、AMLおよびCML)および他の白血病;筋疾患(例えば、特に敗血症における筋タンパク質の代謝);骨粗しょう症;パーキンソン病;疼痛;早期分娩;乾癬;再灌流傷害;敗血症ショック;放射線療法による副作用、一時的な顎関節症、腫瘍転移;または、挫傷、捻挫、軟骨損傷、外傷、整形外科手術、感染症または他の疾患過程から生じる炎症性病態、およびマックル−ウェルズ症候群、家族性感冒自己炎症性症候群および新生児期発症多臓器炎症性疾患などのクライオピリン関連周期熱症候群。
【0023】
本明細書に用いられる用語「多量体形成ドメイン」とは、2つ以上の他のアミノ酸配列と結合して、三量体複合体または他の多量体複合体を形成することのできる機能を有するアミノ酸配列を意味する。一例において、融合タンパク質は、他の2つの三量体形成ドメインを伴って三量体複合体を形成する三量体形成ドメインであるアミノ酸配列を含有する。三量体形成ドメインは、他の同一のアミノ酸配列の三量体形成ドメインと結合する(ホモ三量体)か、または異なるアミノ酸配列の三量体形成ドメインと結合する(ヘテロ三量体)ことができる。このような相互作用は、三量体形成ドメイン成分間の共有結合によって、また、水素結合力、疎水性力、ファンデルワールス力および塩架橋によって生じ得る。したがって、本発明の種々の実施形態において、多量体形成は、二量体形成ドメイン、三量体形成ドメイン、四量体形成ドメイン、五量体形成ドメインなどである。これらのドメインは、2つ、3つ、4つ、5つまたはそれ以上の本発明の融合タンパク質からなるポリペプチド複合体を形成することができる。
【0024】
本発明の融合タンパク質の三量体形成ドメインは、米国出願公開番号第2007/0154901号('901 Application)(参照としてその全体が本明細書に援用される)に記載されているように、テトラネクチンから誘導できる。全長ヒト・テトラネクチンポリペプチド配列は、本明細書において配列番号63として提供されている。テトラネクチン三量体形成ドメインの例としては、配列番号63のアミノ酸17から49、17から50、17から51および17から52が挙げられ、これらは、ヒト・テトラネクチン遺伝子のエキソン2によってコードされるアミノ酸、さらに任意に、この遺伝子のエキソン3によってコードされる最初の1個、2個または3個のアミノ酸を含む。他の例としては、アミノ酸1から49、1から50、1から51および1から52が挙げられ、これらは、この遺伝子のエキソン1およびエキソン2の全体、さらに任意に、この遺伝子のエキソン3によりコードされる最初の1個、2個または3個のアミノ酸を含む。あるいは、エキソン1によりコードされるアミノ酸配列の一部のみが三量体形成ドメインに含まれる。具体的には、三量体形成ドメインのN末端は、配列番号63の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16および17番目の残基のいずれからでも始めることができる。特定の実施形態において、N末端は、I10またはV17であり、C末端は、Q47、T48、V49、C(S)50、L51またはK52(配列番号63に従う番号付け)である。
【0025】
本発明の一態様において、三量体形成ドメインは、米国出願公開番号第2007/00154901号にさらに十分に記載されているテトラネクチンファミリー三量体形成構造エレメントの共通配列である、配列番号1のアミノ酸配列を有するテトラネクチン三量体形成構造エレメント(「TTSE」)である。図1に示されているように、TTSEは、タンパク質のテトラネクチンファミリーの天然メンバーの変異体、特に、αコイルドコイル三量体を形成するTTSEの能力にいかようにも実質的な程度の不利な影響を与えないアミノ酸配列における改変を有する変異体を包含する。本発明の種々の態様において、本発明による三量体ポリペプチドは、配列番号1の共通配列に、少なくとも66%のアミノ酸配列同一性(確定された残基(Xaaではない)のみを計数する);例えば、配列番号1の共通配列に、少なくとも73%、少なくとも80%、少なくとも86%または少なくとも92%の配列同一性を有する三量体形成ドメインとしてのTTSEを含む。言い換えると、配列番号1の確定されたアミノ酸の少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、または少なくとも5個を置換することができる。
【0026】
特定の一実施形態において、配列番号63における50位のシステイン(C50)は、望ましくない多量体形成に至り得る望ましくない鎖間ジスルフィド架橋の形成を避けるために、セリン、トレオニン、メチオニンまたは他の任意のアミノ酸残基へ有利に変異誘発することができる。他の公知の変異体は、アミノ酸残基番号(配列番号63に従う番号付け)、6、21、22、24、25、27、28、31、32、35、39、41、および42番目のアミノ酸から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基を含むが、これらのアミノ酸残基は、らせんを破壊しない任意のアミノ酸残基により置換することができる。これらの残基は、天然のテトラネクチン単量体の3つのTTSE間の三量体複合体を安定化する分子間相互作用には直接関与していないことが示されている。図1に示された一態様において、TTSEは、式a−b−c−d−e−f−g(N端からC端へ)で示される7残基反復を有し、式中、残基aおよびd、すなわち26位、33位、37位、40位、44位、47位、51位は任意の疎水性アミノ酸であってよい(配列番号63に従う番号付け)。
【0027】
さらなる実施形態において、TTSE三量体形成ドメインは、ポリヒスチジン配列および/またはプロテアーゼ開裂部位、例えば、血液凝集因子XaまたはGranzymeBの開裂部位(本明細書に援用される米国出願公開番号第2005/0199251号を参照のこと)の組込みによって、またC末端KGまたはKGS配列を含めることによって改変することができる。また、精製を助けるために、2位のプロリンをグリシンによって置換してもよい。
【0028】
TTSEの切断体および変異体の特定の非限定的な例は、以下の表1に示されている。
【0029】
【表1−1】
【0030】
【表1−2】
【0031】
三量体形成ドメインの他の例は、米国特許第6,190,886号に開示されており(その全体が本明細書に援用される)、これには、コレクションネック(collectin neck)領域を含むポリペプチドが記載されている。次いで、コレクションネック領域のアミノ酸配列を含む3つのポリペプチドにより、適切な条件下で三量体を作製することができる。
【0032】
三量体形成ドメインの他の例は、参照としてその全体が本明細書に援用される2007年11月9日に本出願の譲受人により出願された米国仮出願番号第60/996,288号に記載されているMBP三量体形成ドメインである。この三量体形成ドメインは、さらにオリゴマー化して、高次の多量体複合体を作出することができる。
【0033】
本発明のIL−1Raポリペプチドは、三量体形成ドメインのN末端またはC末端のアミノ酸残基のいずれにも連結できる。フレキシブルな分子リンカーを任意に、IL−1Raであるポリペプチドと三量体形成ドメインとの間に組み込み、共有結合により連結することができる。このリンカーは約1個から20個、2個から10個、または3個から7個のアミノ酸残基のポリペプチド配列であることが好ましい。さらなる実施形態において、このリンカーは、非免疫原性であり、容易にはタンパク質分解により開裂せず、他の残基と相互作用することが知られているアミノ酸残基(例えばシステイン残基)を含まない。
【0034】
本明細書に用いられる「IL−1Ra」とは、下記:
【化1】
に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドのことである。
【0035】
また、「IL−1Ra」の定義には、IL−1Rに対するIL−1Raの結合を示す、好ましくはIL−1R阻害活性を示す配列番号38の変異体および断片が含まれる。このような断片は、全長の天然IL−1Raタンパク質と比較して、IL−1RaのN末端またはC末端において切断されていてもよいし、または、内部残基を欠損していてもよい。特定の断片は、本発明による三量体IL−1Raタンパク質の所望の生物学的活性にとって必須ではないアミノ酸残基が欠損され得る。例えば、Evans, et al. (J.Biol.Chem. 1995、19:11477-11483)は、部位特異的変異誘発により、IL−1Rに対する結合にとってTrp16、Gln20、Tyr34、Gln36およびTyr147だけが必須であり、機能的分子を維持しつつ他のアミノ酸位置を変更できることが示されている。さらに、Dahlen, et al. (J.Immunotoxicology 5:189-199 (2008))により示されるように、IL−1Raとその受容体とのループ相互作用を増大させるために、結合領域の外側のアミノ酸を変異させ、それにより、IL−1Raのその受容体に対する親和性を改善することができる。これは、IL−1Ra受容体結合領域の外側のアミノ酸の変異、具体的には、例えば、D47N、E52R、E90Y、P38Y、H54R、Q129LおよびM136N(同上)によって達成できる。さらに、天然のIL−1Ra変異体が存在し、そのいずれも使用することができる。上流エキソンからの別の転写スプライス機構によって作出されたIL−1Raの18kDa体は、icIL−1Ra1と称され、ケラチノサイト、ならびに他の上皮細胞、単球、組織マクロファージ、線維芽細胞および内皮細胞の内部に見られる。ヒト白血球からクローン化されたIL−1Ra cDNAは、そのcDNAの5’領域に挿入断片としてさらに63bpの配列を含有する。icIL−1Ra3と称される、IL−1Raの15kDaイソ型は、単球、マクロファージ、好中球、および肝細胞の中に見られ、別の転写スプライスと別の翻訳開始の双方によって作出することができる。
【0036】
本発明の融合タンパク質にとって有用なIL−1Raペプチドは、配列番号38に、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%同一性があるポリペプチドを含む。特定の実施形態において、融合タンパク質は、配列番号38に、少なくとも85%同一性があり、IL−1R結合活性、好ましくはIL−1Ra阻害活性を有するIL−1Raペプチド配列を含む。別の特定の実施形態において、融合タンパク質は、配列番号38に、少なくとも95%同一性があり、IL−1R結合活性、好ましくはIL−1Ra阻害活性を有するIL−1Raペプチド配列を含む。これらの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号38の番号付けによるTrp16、Gln20、Tyr34、Gln36およびTyr147を含む。これらのポリペプチドはさらに、1つまたは複数のアミノ酸置換、D47N、E52R、E90Y、P38Y、H54R、Q129LおよびM136N(配列番号38の番号付けによる)を含む。さらに、IL−1Raポリペプチドの変異体は、1つまたは複数のアミノ酸を、同様な構造特性または化学特性を有する別のアミノ酸、例えば保存的アミノ酸置換体によって置換することにより達成することができる。
【0037】
さらなる実施形態において、本発明による融合タンパク質は、以下から選択されるIL−1受容体アンタゴニストから選択される:
【化2】
【化3】
式中、下線部は、三量体形成単位を示し、太字部はIL−1Ra部分を示す。
【0038】
融合タンパク質の作製
本発明の三量体IL−1Raタンパク質は、化学的に合成することもできるし、または何らかの好適な標準的タンパク質発現系に発現させることもできる。タンパク質発現系は、そこから所望のタンパク質が容易に単離でき、インビトロでリフォールディングできる系であることが好ましい。原核生物の発現系は、高収量のタンパク質を得ることができ、また効率的な精製とリフォールディングの方法が利用できることから好ましい。真核生物の発現系もまた使用できる。したがって、適切な発現系の選択は、十分に当業者の能力と裁量の範囲内にある。同様に、本発明の融合タンパク質のアミノ酸の一次配列が選択されたら、当業者は、選択された宿主におけるコドンバイアス、宿主における分泌シグナル配列の必要性、シグナル配列内へのプロテイナーゼ開裂部位の導入などの要因を考慮に入れて、所望のタンパク質をコードする適切な組換えDNA構築物を容易に設計することができる。これらの組換えDNA構築物は、選択された宿主に適切な多くの発現ベクターのいずれかの内にインフレームで挿入することができる。発現ベクターは、組換え構築物の発現を駆動するために、強力なプロモーターを含むことが好ましい。
【0039】
本発明の融合タンパク質は、その融合タンパク質が発現される条件下で、本融合タンパク質をコードするベクターによって形質転換した宿主を培養することにより、任意の好適な標準的タンパク質発現系において発現させることができる。この発現系は、そこから所望のタンパク質が容易に単離でき、インビトロでリフォールディングできる系であることが好ましい。一般に、原核生物の発現系が、高収量のタンパク質を得ることができ、また効率的な精製とリフォールディングの方法が利用できることから好ましい。したがって、適切な発現系の選択(ベクターおよび細胞型を含めて)は、当業者の知識の範囲内にある。同様に、本発明の融合タンパク質のアミノ酸の一次配列が選択されたら、当業者は、選択された宿主におけるコドンバイアス、宿主における分泌シグナル配列の必要性、シグナル配列内のプロテイナーゼ開裂部位の導入などの要因を考慮に入れて、所望のアミノ酸配列をコードする適切な組換えDNA構築物を容易に設計することができる。
【0040】
一実施形態において、単離ポリヌクレオチドが、本発明の融合タンパク質をコードする。別の実施形態において、IL−1Raポリペプチドおよび三量体形成ドメインは、連続していないポリヌクレオチド配列によってコードされる。したがって、いくつかの実施形態において、IL−1Raポリペプチドおよび三量体形成ドメインは、別々のポリペプチドとして発現され、単離および精製されてから共に融合されて、本発明の融合タンパク質が形成される。
【0041】
これらの組換えDNA構築物は、選択された宿主に適切な多くの発現ベクターのいずれかの内にインフレームで挿入することができる。一定の実施形態において、発現ベクターは、組換え融合タンパク質構築物の発現を制御する強力なプロモーターを含む。本発明の融合タンパク質を作出するために組換え発現法を用いた場合、得られた融合タンパク質は、当分野に周知の好適な標準的操作を用いて、単離し精製することができ、任意に、例えば、凍結乾燥などのさらなる処理に供することができる。
【0042】
組換えDNA分子、タンパク質および融合タンパク質産生のために、また組織培養および細胞の形質転換のために、標準的な技法を使用することができる。例えば、Sambrook, et al.(下記)またはCurrent Protocol in Molecular Biology(Ausubel, et al., eds., Green Publishers Inc. and Wiley and Sons、1994)を参照されたい。精製法は一般に、製造元の指示に従って実施されるか、またはSambrook, et al.(Molecular Cloning:A Laboratory Manual. Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY(1989)に記載されているような慣例的な手順を用いて当分野で一般に遂行されるように、または本明細書に記載されているとおりに実施される。特に定義が与えられない限り、実験上の手順、ならびに本明細書に記載された分子生物学、生化学、分析化学、および薬剤/製薬化学に関連する技法に関連して利用される命名法は、当分野で周知の一般的なものである。生化学的合成、生化学的分析、薬学的調製、製剤、ならびに送達、および患者の処置に関しては、標準的な技法を使用することができる
【0043】
当然のことながら、フレキシブルな分子リンカーは、任意に、IL−1Raポリペプチドと三量体形成ドメインとの間に組み込んで、共有結合により連結することができる。一定の実施形態において、リンカーは、約1個から20個のアミノ酸残基のポリペプチド配列である。リンカーは、10個未満のアミノ酸であってよく、最も好ましくは、5個、4個、3個、2個、または1個のアミノ酸であってよい。ある場合には、9個、8個、7個、または6個のアミノ酸が好適であり得る。有用な実施形態において、リンカーは本質的に非免疫原性であり、容易にタンパク質分解により開裂することはなく、他の残基と相互作用することが知られているアミノ酸残基(例えばシステイン残基)を含まない。
【0044】
以下の記述はまた、1つまたは複数の化学基に共有結合している(以下「コンジュゲートしている」)融合タンパク質、および三量体複合体を作製する方法に関する。このようなコンジュゲートにおける使用に好適な化学基は、有意に毒性または免疫原性がないことが好ましい。この化学基は任意に、保存でき、かつ保存に好適な条件下で使用できるコンジュゲートを作製するために選択される。ポリペプチドにコンジュゲートできる種々の代表的な化学基が当分野で知られており、例えば、糖タンパク質上に自然に生じる炭水化物などの炭水化物、ポリグルタメート、およびポリオール類などの非タンパク様ポリマーが挙げられる(例えば、米国特許第6,245,901号を参照)。
【0045】
ポリオールは、例えば、上記の国際公開第WO93/00109号に開示されているように、リシン残基を含む、1つまたは複数のアミノ酸残基において、本発明の融合タンパク質とコンジュゲートすることができる。使用されるポリオールは、任意の水溶性ポリ(アルキレンオキシド)ポリマーであってよく、線状鎖または分枝状鎖を有していてよい。好適なポリオールとしては、1つまたは複数のヒドロキシル位において、1個から4個の間の炭素を有するアルキル基などの化学基により置換されたものが挙げられる。一般に、ポリオールは、ポリ(エチレングリコール)(PEG)などのポリ(アルキレングリコール)であり、かくして、残りの議論は例示的な実施形態に関連しており、記述の容易のため、そこでは、使用されるポリオールはPEGであり、ポリペプチドにポリオールをコンジュゲートする過程を「ペグ化」と称する。しかしながら、PEGに関して本明細書に記載したコンジュゲートのための技法を用いて、例えば、ポリ(プロピレングリコール)およびポリエチレン−ポリプロピレングリコールコポリマーなどの他のポリオール類が使用できることを、当業者は認識している。
【0046】
IL−1Raのペグ化に使用されるPEGの平均分子量は変わる可能性があり、一般に、約500ダルトン(D)から約30,000Dの範囲であり得る。PEGの平均分子量は、好ましくは約1,000Dから約25,000D、より好ましくは約1,000Dから約5,000Dである。一実施形態において、ペグ化は、約1,000Dの平均分子量を有するPEGによって実施される。任意に、PEGホモポリマーは非置換であるが、その一端がアルキル基により置換されていてもよい。アルキル基はC1〜C4アルキル基であることが好ましく、メチル基であることが最も好ましい。PEG製剤は市販品として入手できるが、一般に、本発明における使用に好適なPEG製剤は、平均分子量により販売された不均一製剤である。例えば、市販品として入手できるPEG(5000)製剤は一般に、分子量がわずかに、通常は±500D異なる分子を含有する。小型分子化合物(例えば化学療法剤)へのコンジュゲート;シグナル分子(例えば蛍光体)へのコンジュゲート;特異的結合ペア(例えばビオチン/ストレプトアビジン、抗体/抗原)の分子へのコンジュゲート;またはグリコシル化、PEG化もしくは安定化ドメイン(例えばFcドメイン)へのさらなる融合による安定化などの当分野に公知の技法を用いて、本発明の融合タンパク質をさらに改変することができる。
【0047】
タンパク質ペグ化のための種々の方法が当分野において知られている。PEGにコンジュゲートさせたタンパク質を作製する特定の方法としては、米国特許第4,179,337号、米国特許第4,935,465号および米国特許第5,849,535号に記載された方法が挙げられる。一般にタンパク質は、主に反応条件、ポリマーの分子量などに依って、ポリマー上の末端の反応基に対しタンパク質の1つまたは複数のアミノ酸残基を介して共有結合される。(複数の)反応基を有するポリマーは、本明細書において活性化ポリマーと称される。反応基は、タンパク質上のフリーのアミノ基または他の反応基と選択的に反応する。PEGポリマーは、ランダムなまたは部位特異的な様式で、タンパク質上のアミノ基または他の反応基と結合することができる。しかし、最適な結果を得るために、選択される反応基のタイプおよび量、ならびに使用されるポリマーのタイプは、反応基がタンパク質上のあまりにも多くの特定の活性基と反応することを避けるために使用される特定のタンパク質またはタンパク質変異体に依存することは理解されたい。これは完全に避けることが不可能かもしれないので、タンパク質濃度に依り、一般にタンパク質1モル当たり、約0.1モルから約1000モル、好ましくは2モルから200モルの活性化ポリマーを使用することが推奨される。タンパク質1モル当たり活性化ポリマーの最終量は、最適な活性を維持すると同時に、可能な場合は、タンパク質の循環半減期を最適化しつつ、調整する。
【0048】
本明細書に用いられる場合、用語「ポリオール」とは、広く多価アルコール化合物のことである。ポリオールは、例えば、任意の水溶性ポリ(アルキレンオキシド)ポリマーであってよく、直鎖または分枝鎖を有していてもよい。好ましいポリオールとしては、1つまたは複数のヒドロキシル位を、1つ〜4つの間の炭素を有するアルキル基などの化学基により置換したものが挙げられる。一般にポリオールは、ポリ(アルキレングリコール)、好ましくはポリ(エチレングリコール)(PEG)である。しかしながら、PEGに関して本明細書に記載したコンジュゲートのための技法を用いて、例えば、ポリ(プロピレングリコール)およびポリエチレン−ポリプロピレングリコールコポリマーなどの他のポリオール類が使用できることを、当業者は認識している。本発明のポリオールには、当分野に周知のもの、および市販品として入手可能な供給源などから公的に入手できるものが含まれる。
【0049】
さらに、血清アルブミン結合ペプチド、FcRn結合ペプチドまたはIgG結合ペプチドなどの他の半減期延長性の分子(half-life extending molecule)を、三量体形成ドメインのN末端またはC末端に結合させることができる。
【0050】
一実施形態において、本発明の三量体IL−1Raタンパク質を、大腸菌などの原核宿主細胞内に発現させ、さらに第三のポリペプチド、すなわち第三の融合の相手に結合させる。したがって、このような第三の融合の相手を、本発明の三量体IL−1Raタンパク質に付加させることによって、高収量の三量体IL−1Raタンパク質を得ることができると考えられる。第三の融合相手は、ジペプチド、トリペプチド、テトラペプチド、ペンタペプチドまたはヘキサペプチドなど、任意の好適なペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質であり得る。ある場合には、融合相手は単独のアミノ酸であり得る。融合相手は、タンパク質分解性の分解に対して融合タンパク質をより抵抗性にするように、融合タンパク質の発現および分泌の増大が促進されるように、可溶性が改善されるように、および/または融合タンパク質の後のアフィニティー精製が可能となるように選択できる。
【0051】
一実施形態において、本発明の融合タンパク質(すなわち、IL−1Ra部分および三量体形成ドメイン)とユビキチンなどの第三の融合相手との間の接合領域は、グランザイムBプロテアーゼ開裂部位、例えば米国出願公開番号第2005/0199251号に記載されているヒトグランザイムB(E.C.3.4.21.79)開裂部位を含む。
【0052】
第三の融合相手は、さらなる実施形態において、アフィニティータグと結合されてよい。このようなアフィニティータグは、アフィニティー樹脂上での融合タンパク質の精製を可能にするアフィニティードメインであり得る。アフィニティータグは、ヘキサヒスタグなどのポリヒスチジンタグ、ポリアルギニンタグ、FLAGタグ、Strepタグ、c−mycタグ、Sタグ、カルモジュリン結合ペプチド、セルロース結合ペプチド、キチン結合ドメイン、グルタチオンSトランスフェラーゼタグ、またはマルトース結合タンパク質であり得る。
【0053】
上記のアフィニティータグシステムの使用により固定化された融合タンパク質の酵素による開裂によって形成される三量体IL−1Raタンパク質を単離する単離ステップにも、本発明の方法は及びうる。この単離ステップは、イオン交換およびサイズによる分画の使用など、当分野に公知のタンパク質単離のための任意の好適な手段によって実施することができ、その選択は、融合タンパク質の性質に依存する。一実施形態において、第三の融合相手と三量体形成ドメインおよびIL−1Raを含む領域との間の領域を、ヒトセリンプロテアーゼ・グランザイムBによりつなぎ、グランザイムBプロテアーゼ開裂部位で融合タンパク質を開裂させ、本発明の融合タンパク質が得られる。
【0054】
本発明はまた、少なくとも1つの上記の核酸を含むプラスミド、ベクター、転写カセットまたは発現カセットを提供する。プロモーター配列、ターミネーター配列、ポリアデニル化配列、エンハンサー配列、マーカー遺伝子および要すれば他の配列などの適切な調節配列を含む好適なベクターを選択するか、または構築することができる。ベクターは、必要に応じて、プラスミド、ウィルス、ファージ、またはファージミドであり得る(Molecular Cloning:a Laboratory Manual: 2nd edition, Sambrook et al., 1989, Cold Spring Harbor Laboratory Press)。
【0055】
本発明はまた、本発明の1つまたは複数の構築物を含む組換え宿主細胞を提供する。好適な宿主細胞としては、細菌系、哺乳動物細胞系、酵母系およびバキュロウィルス系が挙げられる。異種ポリペプチドの発現に利用できる哺乳動物細胞系としては、チャイニーズハムスター卵巣細胞、ヒーラー細胞、仔ハムスター腎細胞、NSOマウス黒色腫細胞および他の多数のものが挙げられる。好ましい細菌宿主は大腸菌である。
【0056】
医薬組成物
さらに別の態様において、本発明は、薬学的に許容できる担体または賦形剤と共に、本発明の融合タンパク質の治療的有効量を含む医薬組成物に関する。本明細書に用いられる「薬学的に許容できる担体」または「薬学的に許容できる賦形剤」には、生理学的に適合性のある溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤ならびに抗真菌剤、等張化剤ならびに吸収遅延剤などのいずれかおよび全てが含まれる。薬学的に許容できる担体または薬学的に許容できる賦形剤の例としては、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなどのうちの1つまたは複数、ならびにそれらの組合せが挙げられる。多くの場合、前記組成物中に、等張化剤、例えば、糖類、マンニトール、ソルビトールなどのポリアルコール、または塩化ナトリウムを含めることが好ましいであろう。湿潤剤などの薬学的に許容できる物質、または湿潤剤または乳化剤などの微量の補助的物質、抗体または抗体部分の使用期限または有効性を増強する保存剤または緩衝剤もまた含めることができる。任意に、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸またはアルギン酸ナトリウムなどのアルギン酸塩などの崩壊剤を含めることができる。賦形剤に追加して、医薬組成物は、以下の1つまたは複数を含むことができる:血清アルブミンなどの担体タンパク質、緩衝剤、結合剤、甘味剤および他の風味剤;着色剤およびポリエチレングリコール。
【0057】
これらの組成物は、例えば、溶液剤(例えば、注射用液剤および注入用液剤)、分散剤または懸濁剤、錠剤、丸剤、散剤、リポソーム剤および座剤など、液体、半固体および固体の剤形など、種々の形態であり得る。好ましい形態は、意図される投与経路および治療適用に依る。一実施形態において、これらの組成物は、注射用液剤または注入用液剤の形態であり、例えば、抗体によるヒトの受動的免疫化に用いられるものと同様の組成物である。一実施形態において、投与様式は、非経口的(例えば、静脈内、皮下、腹腔内、筋内)である。一実施形態において、融合タンパク質(または三量体複合体)は、静脈内注入または静脈内注射により投与される。別の実施形態において、融合タンパク質または三量体複合体は、筋内注射または皮下注射により投与される。
【0058】
医薬組成物投与の他の好適な経路としては、限定はしないが、経口、経直腸、経皮、経膣、経粘膜または経腸投与が挙げられる。
【0059】
治療用組成物は一般に滅菌状態であり、製造および貯蔵の条件下で安定である。組成物は、高薬剤濃度に好適な液剤、ミクロ乳剤、分散剤、リポソーム剤、または他の指示された構造に製剤化することができる。滅菌注射用液剤は、必要量の活性剤(すなわち、融合タンパク質または三量体複合体)を、必要ならば上記に挙げた成分の1つまたは組合せと共に、適切な溶媒中に組み入れた後に、ろ過滅菌することによって調製することができる。一般に分散剤は、活性化合物を、基本的な分散媒ならびに他の上記に挙げた成分からの必要な成分を含有する滅菌媒体内へ組み入れることによって調製される。滅菌注射用液剤の調製のための滅菌散剤の場合、好ましい調製方法は、真空乾燥、および活性成分の散剤と、先の滅菌ろ過されたその液剤から任意の所望の追加成分とが得られる凍結乾燥である。液剤の適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用により、分散剤の場合は必要な粒径の維持により、また界面活性剤の使用により維持することができる。注射用組成物の吸収延長は、この組成物中に、吸収を遅延させる薬剤、例えばモノステアリン酸塩およびゼラチンを含めることによってもたらすことができる。
【0060】
本明細書に記載された障害の治療に有用な治療薬を含有するキットなどの製造品は、少なくとも1つの容器と1つのラベルを含む。好適な容器としては、例えば、ボトル、バイアル、シリンジ、および試験管が挙げられる。容器は、ガラスまたはプラスチックなど、種々の材料から形成することができる。容器の上の、または容器に結合したラベルは、この製剤が、選択された病態の治療に用いられることを指示する。この製造品は、リン酸緩衝生理食塩水、リンガー液、デキストロース液などの薬学的に許容できる緩衝液を含む容器をさらに含み得る。この製造品は、他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針、シリンジ、および使用説明のついた添付文書など、商業的な、および使用者の立場から望ましい他の材料をさらに含み得る。この製造品は、上記の別の活性剤を有する容器も含み得る。
【0061】
一般に、製剤を等張にするために、適切な量の薬学的に許容できる塩が製剤中に用いられる。薬学的に許容できる担体の例としては、生理食塩水、リンガー液およびデキストロース液が挙げられる。製剤のpHは、好ましくは約6から約9、より好ましくは、約7から約7.5である。例えば、投与経路および治療薬の濃度に依り、一定の担体がより好ましいと考えられることは当業者には明らかであろう。
【0062】
治療用組成物は、凍結乾燥製剤、水性液剤、または水性懸濁剤の形態で、任意の薬学的に許容できる担体、賦形剤、または安定化剤(Remington's Pharmaceutical Sciences, 16th edition, Osol,A. ed.(1980))と共に、適切な純度を有する所望の分子を混合することにより調製することができる。許容できる担体、賦形剤、または安定化剤は、用いられる投与量および濃度において、レシピエントに対して無毒であることが好ましく、トリス、HEPES、PIPES、リン酸、クエン酸、および他の有機酸などの緩衝液;アスコルビン酸およびメチオニンなどの抗酸化剤;保存剤(塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルアルコールまたはベンジルアルコール;メチルパラベンまたはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン類;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3−ペンタノール;およびm−クレゾール);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド類;血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドン類などの親水性ポリマー類;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、またはリシンなどのアミノ酸類;グルコース、マンノース、またはデキストリン類などの単糖類、二糖類、および他の糖質;ショ糖、マンニトール、トレハロースまたはソルビトールなどの糖類;ナトリウムなどの塩形成対イオン類;および/またはTWEEN(商標)、PLURONICS(商標)またはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン界面活性剤が含まれる。
【0063】
このような担体のさらなる例としては、イオン交換剤、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、ヒト血清アルブミンなどの血清タンパク質、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウムなどの緩衝物質、飽和植物脂肪酸の部分的グリセリド混合物、水、塩類、または硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウムなどの電解質、コロイダルシリカ、三珪酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、およびセルロースベースの物質が挙げられる。局所用またはゲルベースの形態に対する担体としては、カルボキシメチルセルロースンナトリウムまたはメチルセルロースなどの多糖類、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート類、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリエチレングリコール、および木材ワックスアルコール類が挙げられる。全ての投与で、慣例的なデポー形態は好適に用いられる。このような形態としては、例えば、ミクロカプセル、ナノカプセル、リポソーム、プラスター、吸入形態、鼻スプレー、舌下錠、および徐放製剤が挙げられる。
【0064】
インビボ投与に用いられる製剤は滅菌状態でなければならない。これは、凍結乾燥および再構成の前または後に、滅菌ろ過膜を通してろ過することによって容易に達成される。製剤は全身投与される場合は、凍結乾燥形態で、または溶液で保存できる。凍結乾燥形態の場合、一般に、使用時に適切な希釈剤と共に再構成するために他の成分と組み合わせて製剤化される。液体製剤の一例は、皮下注射用の単回投与バイアルに充填された滅菌、清澄、無色の非保存液剤である。
【0065】
治療用製剤は一般に、滅菌アクセス口を有する容器、例えば、静脈内用液剤バッグまたは皮下注射針によって貫通可能な密栓を有するバイアルの中に入れられる。製剤は、反復される静脈内(i.v.)、皮下(s.c.)、筋内(i.m.)の注射剤もしくは注入剤として、または鼻腔内もしくは肺内の送達に好適なエアロゾル製剤として投与されることが好ましい(肺内送達に関しては、例えば、EP 257,956を参照)。
【0066】
本明細書に開示された分子は、徐放製剤の形態で投与することもできる。徐放製剤の好適な例としては、タンパク質を含有する固体疎水性ポリマーの半透過性マトリックスが挙げられ、これらのマトリックスは、形状化製品、例えば、フィルム、またはマイクロカプセルの形態である。徐放マトリックスの例としては、ポリエステル類、ヒドロゲル類(例えば、Langer et al., J.Biomed.Mater.Res.、15:167-277(1981)およびLanger、Chem.Tech.、12:98-105(1982)に記載されているポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド類(米国特許第3,773,919号、EP58,481)、L−グルタミン酸とガンマエチル−L−グルタメートのコポリマー類(Sidman et al., Biopolymers、22:547-556(1983))、非分解性エチレン−ビニルアセテート(Langer et al.,上記)、Lupron Depot(乳酸−グリコール酸コポリマーおよびロイプロリドアセテートからなる注射用ミクロスフェア)などの分解性乳酸−グリコール酸コポリマー類、およびポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸(EP 133,988)が挙げられる。
【0067】
治療方法
本発明の他の態様は、IL−1Raに媒介される疾患を治療する方法に関する。この方法は、本発明の医薬組成物の治療的有効量により、このような疾患に罹っている被験体を治療することを含む。
【0068】
本発明の他の態様は併用療法に関する。治療薬を含む製剤もまた本発明により提供される。このような製剤は、貯蔵にとって、ならびに治療的投与にとって特に好適であると考えられる。これらの製剤は公知の技法によって調製できる。例えばこれらの製剤は、ゲルろ過カラム上の緩衝液交換によって調製できる。
【0069】
これらの医薬組成物は、ボーラスとしての静脈内投与などの公知の方法により、または一定時間にわたる連続的注入により、筋内、腹腔内、脳脊髄内、皮下、関節内、滑液内、脊髄内、経口、局所、または吸入経路により投与することができる。任意に、市販品として入手できる種々の装置を用いたミニポンプ注入により、投与を行うことができる。
【0070】
三量体IL−1Raを投与するための有効な投与量と投与スケジュールは、経験的に決定することができ、このような決定は当分野の範囲内にある。単回投与または複数回投与を用いることができる。現在、単独で用いられる三量体IL−1Raの有効な投与量または量は、1日当り体重1kgにつき約1μgから約100mgの範囲またはそれ以上であり得ると考えられている。投与量の種間換算は、例えば、Mordenti et al., Pharmaceut. Res.、8: 1351 (1991)に開示されるように、当分野に知られた様式で実施することができる。
【0071】
IL−1Ra融合タンパク質のインビボ投与が用いられる場合、通常の投与量は、投与経路に依って、1日当り哺乳動物の体重1kgにつき約10ngから約100mgまでまたはそれ以上、好ましくは、約1μg/kg/日から50mg/kg/日まで変わり得る。具体的な投与量および送達方法に関するガイダンスは、文献に提供されている(例えば、米国特許第4,657,760号;米国特許第5,206,344号;または米国特許第5,225,212号を参照)。種々の製剤が、種々の治療用化合物および種々の障害にとって有効であること、1つの臓器または1つの組織を標的とする投与が、例えば、別の臓器または組織への送達様式とは異なる送達様式を必要とし得ることを当業者は認識するであろう。投与しなければならない三量体IL−1Raの投与量が、例えば、三量体IL−1Raが与えられる哺乳動物、投与経路、および哺乳動物に投与されている他の薬物または治療法に依って変わり得ることを当業者は理解するであろう。
【0072】
三量体複合体と他の治療剤(1つまたは複数の他の治療法)とを、並行に(同時に)または連続的に投与することができる。特定の実施形態において、融合タンパク質または三量体複合体と治療剤とは、並行投与される。別の実施形態において、融合タンパク質または三量体複合体は、治療剤の投与前に投与される。別の実施形態において、治療剤は、融合タンパク質または三量体複合体の前に投与される。投与後、処置した細胞をインビトロで分析することができる。インビボ治療が行われた場合、治療を受けた哺乳動物を、熟練医師によく知られている種々の方法でモニターすることができる。例えば、血清中サイトカイン応答を分析することができる。
【0073】
本明細書に記載されたIL−1Ra融合タンパク質は、本明細書に挙げられた疾患および障害の治療または予防目的で1つまたは複数のTNF阻害剤と併用して(治療前、治療後、または並行治療で)、限定はしないが、Etanercept(ENBREL(登録商標)など)を含む可溶性TNF受容体の全ての形態、ならびに単量体または多量体p75および/またはp55TNF受容体分子およびそれらの断片;限定はしないが、Infliximab(REMICADE(登録商標)など)、およびD2E7(HUMIRA(登録商標)など)などの抗ヒトTNF抗体など、使用することができる。このようなTNF阻害剤としては、TNFのインビボ合成または細胞外放出をブロックする化合物およびタンパク質が挙げられる。具体的な実施形態において、本発明は、以下のTNF阻害剤:TNF結合タンパク質(本明細書に定義された可溶性TNF受容体タイプ−Iおよび可溶性TNF受容体タイプ−II(「sTNFRs」))、抗TNF抗体、顆粒球コロニー刺激因子;サリドマイド;BN50730;テニダップ(tenidap);E5531;tiapafantPCA4248;ニメスリド;パナビル;ロリプラム;RP73401;ペプチドT;MDL201、449A;(1R,3S)−シス−1−[9−(2,6−ジアミノプリニル)]−3−ヒドロキシ−4−シクロペンテン塩酸塩;(1R,3R)−トランス−1−(9−(2,6−ジアミノ)プリン)−3−アセトキシシクロペンタン;(1R,3R)−トランス−1−(9−アデニル)−3−アジドシクロペンタン塩酸塩;および(1R,3R)−トランス−1−(6−ヒドロキシ−プリン−9−イル)−3−アジドシクロペンタンの1つまたは複数のいずれかと併用した(治療前、治療後、または並行治療)IL−17RA IL−1Ra融合タンパク質の使用に関する。TNF結合タンパク質は、当分野に開示されている(EP308 378、EP422 339、GB2 218 101、EP393 438、国際公開第WO90/13575号、EP398 327、EP412 486、国際公開第WO91/03553号、EP418 014、特開JP127,800/1991号公報、EP433 900、米国特許第5,136,021号、GB2 246 569、EP464 533、国際公開第WO92/01002号、国際公開第WO92/13095号、国際公開第WO92/16221号、EP512 528、EP526 905、国際公開第WO93/07863号、EP568 928、国際公開第WO93/21946号、国際公開第WO93/19777号、EP417 563、国際公開第WO94/06476号および国際特許出願番号PCT/US97/12244)。
【0074】
例えば、EP393 438およびEP422 339では、一緒くたに「sTNFRs」と称される、可溶性TNF受容体タイプI(「sTNFR−I」または「30kDa TNF阻害剤」としても知られている)および可溶性TNF受容体タイプII(「sTNFR−II」または「40kDa TNF阻害剤」としても知られている)、ならびにそれらの修飾形態(例えば、断片、機能性誘導体および変異体)のアミノ酸配列および核酸配列を教示している。EP393 438およびEP422 339はまた、阻害剤のコードを担っている遺伝子を単離する方法、好適なベクターと細胞型において遺伝子をクローン化する方法および遺伝子を発現させて阻害剤を産生する方法を開示している。さらにsTNFR−IおよびsTNFR−IIの多価形態(すなわち、2つ以上の活性部分を含む分子)もまた開示している。一実施形態において、この多価形態は、少なくとも1つのTNF阻害剤および別の部分を任意の臨床的に許容できるリンカー、例えば、ポリエチレングリコールを用いて化学的に結合させることにより(国際公開第WO92/16221号および国際公開第WO95/34326号)、ペプチドリンカー(Neve et al. (1996)、Cytokine、8(5):365-370)により、ビオチンへ化学的に結合させ、次いでアビジンへ結合させることにより(国際公開第WO91/03553号)、最後にキメラ抗体分子を組み合わせることにより(米国特許第5,116,964号、国際公開第WO89/09622号、国際公開第WO91/16437号およびEP315062)作製することができる。
【0075】
抗TNF抗体としては、MAK 195F Fab抗体(Holler et al. (1993), 1st International Symposium on Cytokines in Bone Marrow Transplantation, 147);CDP 571抗TNFモノクローナル抗体(Rankin et al. (1995)、British Journal of Rheumatology, 34:334-342);BAY X 1351マウスの抗腫瘍壊死因子モノクローナル抗体(Kieft et al. (1995)、7th European Congress of Clinical Microbiology and Infectious Diseases、page 9);CenTNF cA2抗TNFモノクローナル抗体(Elliott et al. (1994)、Lancet, 344:1125-1127およびElliott et al. (1994)、Lancet, 344:1105-1110)が挙げられる。
【0076】
本明細書に記載されたIL−1Ra融合タンパク質は、IL−17阻害剤(例えば、抗IL17受容体抗体、Amgen;抗IL−17A、抗IL17F)、RORc阻害剤の全ての形態と併用して使用することができる。
【0077】
本明細書に記載されたIL−1Ra融合タンパク質は、限定はしないが、アバタセプト(例えば、ORENCIA(登録商標))など、CD28阻害剤の全ての形態と併用して使用することができる。
【0078】
本明細書に記載されたIL−1Ra融合タンパク質は、限定はしないが、トシリズマブ(例えば、ACTEMRA(登録商標))など、IL−6およびIL−6受容体阻害剤の全ての形態と併用して使用することができる。
【0079】
本明細書に記載されたIL−1Ra融合タンパク質は、IL−18BPまたは誘導体、IL−18trap、抗IL−18、抗IL−18R1、または抗IL−18RAcPなど、抗IL−18化合物の全ての形態と併用して使用することができる。
【0080】
本明細書に記載されたIL−1Ra融合タンパク質は、抗IL−22または抗IL−22Rなど、抗IL−22の全ての形態と併用して使用することができる。
【0081】
本明細書に記載されたIL−1Ra融合タンパク質は、抗p19、抗p40(Ustekinumab)、抗IL−23Rなど、抗IL−23および/またはIL−12の全ての形態と併用して使用することができる。
【0082】
本明細書に記載されたIL−1Ra融合タンパク質は、抗IL−21または抗IL−21Rなど、抗IL−21の全ての形態と併用して使用することができる。
【0083】
本明細書に記載されたIL−1Ra融合タンパク質は、抗TGF−ベータの全ての形態と併用して使用することができる。
【0084】
本明細書に記載されたIL−1Ra融合タンパク質は、1つまたは複数のサイトカイン類、リンホカイン類、造血因子(類)、および/または抗炎症剤と併用して使用することができる。
【0085】
本明細書に挙げられた疾患および障害の治療には、本明細書に提供されたIL−1Ra融合タンパク質の1つまたは複数による治療と併用して(治療前、治療後、または並行治療)痛みおよび炎症の制御に最初に使用される薬物使用を含むことができる。これらの薬物は、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)として分類される。二次的治療としては、コルチコステロイド、遅効性抗リウマチ薬(SAARD)、または疾患改質薬(DM)が挙げられる。以下の化合物に関する情報はThe Merck Manual of Diagnosis and Therapy, Sixteenth Edition, Merck, Sharp & Dohme Research Laboratories, Merck & Co., Rahway, N.J. (1992)および、PJB Publications社のファーマプロジェクツに見ることができる。
【0086】
本明細書に記載されたIL−1Ra融合タンパク質は、本明細書に挙げられた疾患および障害を治療する目的で任意の1つまたは複数のNSAIDと併用して使用することができる。NSAIDは、少なくとも部分的にプロスタグランジン合成の阻害により、これらの抗炎症作用を発揮する(Goodman and Gilman in "The Pharmacological Basis of Therapeutics," MacMillan 7th Edition (1985))。NSAIDは、以下の少なくとも9つのグループに特徴づけることができる:(1)サリチル酸誘導体;(2)プロピオン酸誘導体;(3)酢酸誘導体;(4)フェナム酸誘導体;(5)カルボン酸誘導体;(6)酪酸誘導体;(7)オキシカム類;(8)ピラゾール類および(9)ピラゾロン類。
【0087】
本明細書に記載されたIL−1Ra融合タンパク質は、1つまたは複数のサリチル酸誘導体、プロドラッグエステル類または薬学的に許容できるそれらの塩類のいずれかと併用して(治療前、治療後、または並行治療)使用することができる。このようなサリチル酸誘導体、プロドラッグエステル類および薬学的に許容できるそれらの塩類は:アセトアミノサロール、アロキシプリン、アスピリン、ベノリレート(benorylate)、ブロモサリゲニン、アセチルサリチル酸カルシウム、トリサリチル酸コリンマグネシウム、サリチル酸マグネシウム、サリチル酸コリン、ジフルシナル、エテルサレート、フェンドサル、ゲンチシン酸、サリチル酸グリコール、サリチル酸イミダゾール、アセチルサリチル酸リシン、メサラミン、サリチル酸モルホリン、サリチル酸1−ナフチル、オルサラジン、パルサルミド、アセチルサリチル酸フェニル、サリチル酸フェニル、サラセタミド、サリチルアミドO−酢酸、サルサレート、サリチル酸ナトリウムおよびスルファサラジンを含む。同様の鎮痛性および抗炎症性を有する構造的に関連するサリチル酸誘導体もまた、このグループに包含されることが意図されている。
【0088】
さらなる具体的な実施形態において、本発明は、1つまたは複数のプロピオン酸誘導体、プロドラッグエステル類または薬学的に許容できるそれらの塩類のいずれかと併用する(治療前、治療後、または並行治療)IL−1Ra融合タンパク質の使用に関する。これらのプロピオン酸誘導体、プロドラッグエステル類または薬学的に許容できるそれらの塩類は:アルミノプロフェン、ベノキサプロフェン、ブクロキシ酸、カルプロフェン、デキシンドプロフェン、フェノプロフェン、フルノキサプロフェン、フルプロフェン、フルルビプロフェン、フルクロプロフェン、イブプロフェン、イブプロフェンアルミニウム、イブプロキサム、インドプロフェン、イソプロフェン、ケトプロフェン、ロキソプロフェン、ミロプロフェン、ナプロキセン、ナプロキセンナトリウム、オキサプロジン、ピケトプロフェン、ピメプロフェン、ピルプロフェン、プラノプロフェン、プロチジン酸、ピリドキシプロフェン、スプロフェン、チアプロフェン酸およびチオキサプロフェンを含む。同様の鎮痛性および抗炎症性を有する構造的に関連するプロピオン酸誘導体もまた、このグループに包含されることが意図されている。
【0089】
さらに別の具体的な実施形態において、本発明は、1つまたは複数の酢酸誘導体、プロドラッグエステル類または薬学的に許容できるそれらの塩類のいずれかと併用する(治療前、治療後、または並行治療)IL−1Ra融合タンパク質の使用に関する。これらの酢酸誘導体、プロドラッグエステル類または薬学的に許容できるそれらの塩類は:アセメタシン、アルクロフェナック、アムフェナック、ブフェキサマック、シンメタシン、クロピラック、デルメタシン、ジクロフェナックカリウム、ジクロフェナックナトリウム、エトドラック、フェルビナック、フェンクロフェナック、フェンクロラック、フェンクロジン酸、フェンチアザック、フロフェナック、グルカメタシン、イブフェナック、インドメタシン、イソフェゾラック、イソキセパック、ロナゾラック、メチアジン酸、オキサメタシン、オクスピナック、ピメタシン、プログルメタシン、スリンダック、タルメタシン、チアラミド、チオピナック、トルメチン、トルメチンナトリウム、ジドメタシンおよびゾメピラックを含む。同様の鎮痛性および抗炎症性を有する構造的に関連する酢酸誘導体もまた、このグループに包含されることが意図されている。
【0090】
別の具体的な実施形態において、本発明は、1つまたは複数のフェナム酸誘導体、プロドラッグエステル類または薬学的に許容できるそれらの塩類のいずれかと併用する(治療前、治療後、または並行治療)IL−1Ra融合タンパク質の使用に関する。これらのフェナム酸誘導体、プロドラッグエステル類または薬学的に許容できるそれらの塩類は:エンフェナム酸、エトフェナメート、フルフェナム酸、イソニキシン、メクロフェナム酸、メクロフェナム酸ナトリウム、メドフェナム酸、メフェナム酸、ニフルミン酸、タルニフルメート、テロフェナメート、トルフェナム酸およびウフェナメートを含む。同様の鎮痛性および抗炎症性を有する構造的に関連するフェナム酸誘導体もまた、このグループに包含されることが意図されている。
【0091】
さらなる具体的な実施形態において、本発明は、1つまたは複数のカルボン酸誘導体、プロドラッグエステル類または薬学的に許容できるそれらの塩類のいずれかと併用する(治療前、治療後、または並行治療)IL−1Ra融合タンパク質の使用に関する。使用できるこれらのカルボン酸誘導体、プロドラッグエステル類または薬学的に許容できるそれらの塩類は:クリダマック、ジフルニサル、フルフェニサル、イノリジン、ケトロラックおよびチノリジンを含む。同様の鎮痛性および抗炎症性を有する構造的に関連するカルボン酸誘導体もまた、このグループに包含されることが意図されている。
【0092】
さらに別の具体的な実施形態において、本発明は、1つまたは複数の酪酸誘導体、プロドラッグエステル類または薬学的に許容できるそれらの塩類のいずれかと併用する(治療前、治療後、または並行治療)IL−1Ra融合タンパク質の使用に関する。これらの酪酸誘導体、プロドラッグエステル類または薬学的に許容できるそれらの塩類は:ブマジゾン、ブチブフェン、フェンブフェンおよびキセンブシンを含む。同様の鎮痛性および抗炎症性を有する構造的に関連する酪酸誘導体もまた、このグループに包含されることが意図されている。
【0093】
別の具体的な実施形態において、本発明は、1つまたは複数のオキシカム類、プロドラッグエステル類または薬学的に許容できるそれらの塩類のいずれかと併用する(治療前、治療後、または並行治療)IL−1Ra融合タンパク質の使用に関する。これらのオキシカム類、プロドラッグエステル類または薬学的に許容できるそれらの塩類は:ドロキシカム、エノリカム、イソキシカム、ピロキシカム、スドキシカム、テノキシカムおよび4−ヒドロキシル−1,2−ベンゾチアジン1,1−ジオキシド4−(N−フェニル)−カルボキサミドを含む。同様の鎮痛性および抗炎症性を有する構造的に関連するオキシカム類また、このグループに包含されることが意図されている。
【0094】
さらに別の具体的な実施形態において、本発明は、1つまたは複数のピラゾール類、プロドラッグエステル類または薬学的に許容できるそれらの塩類のいずれかと併用する(治療前、治療後、または並行治療)IL−1Ra融合タンパク質の使用に関する。使用し得るこれらのピラゾール類、プロドラッグエステル類または薬学的に許容できるそれらの塩類は:ジフェナミゾールおよびエピリゾールを含む。同様の鎮痛性および抗炎症性を有する構造的に関連するピラゾール類もまた、このグループに包含されることが意図されている。
【0095】
さらなる具体的な実施形態において、本発明は、1つまたは複数のピラゾロン類、プロドラッグエステル類または薬学的に許容できるそれらの塩類のいずれかと併用する(治療前、治療後、または並行治療)IL−1Ra融合タンパク質の使用に関する。使用し得るこれらのピラゾロン類、プロドラッグエステル類または薬学的に許容できるそれらの塩類は:アパゾン、アザプロパゾン、ベンズピペリロン、フェプラゾン、モフェブタゾン、モラゾン、オキシフェンブタゾン、フェニルブタゾン、ピペブゾン、プロピルフェナゾン、ラミフェナゾン、スクシブゾンおよびチアゾリノブタゾンを含む。同様の鎮痛性および抗炎症性を有する構造的に関連するピラゾロン類もまた、このグループに包含されることが意図されている。
【0096】
別の具体的な実施形態において、本発明は、以下の1つまたは複数のNSAIDのいずれかと併用する(治療前、治療後、または並行治療)IL−1Ra融合タンパク質の使用に関する:ε−アセトアミドカプロン酸、S−アデノシル−メチオニン、3−アミノ−4−ヒドロキシ酪酸、アミキセトリン、アニトラザフェン、アントラフェニン、ベンダザック、ベンダザックリシネート、ベンジダミン、ベプロジン、ブロペラモール、ブコローム、ブフェゾラック、シプロクアゾン、クロキシメート、ダジダミン、デボキサメット、デトミジン、ジフェンピラミド(difenpiramide)、ジフェンピラミド(difenpyramide)、ジフィサラミン、ジタゾール、エモルファゾン、メシル酸ファネチゾール、フェンフルミゾール、フロクタフェニン、フルミゾール、フルニキシン、フルプロクアゾン、ホピルトリン、ホスホサル、グアイメサル、グアイアゾレン、イソニキシン、レフェタミンHCl、レフルノミド、ロフェミゾール、ロチファゾール、リシンクロニキシネート、メセクラゾン、ナブメトン、ニクチンドール、ニメスリド、オルゴテイン、オルパノキシン、オキサセプロール、オキサパドール、パラニリン、ペリソキサール、クエン酸ペリソキサール、ピホキシム、ピプロキセン、ピラゾラック、ピルフェニドン、プロクアゾン、プロキサゾール、チエラビンB、チフラミゾール、チメガジン、トレクチン、トルパドール、トリプタミドならびに480156S、AA861、AD1590、AFP802、AFP860、AI77B、AP504、AU8001、BPPC、BW540C、CHINOIN121、CN100、EB382、EL508、F1044、FK−506、GV3658、ITF182、KCNTEI6090、KME4、LA2851、MR714、MR897、MY309、ONO3144、PR823、PV102、PV108、R830、RS2131、SCR152、SH440、SIR133、SPAS510、SQ27239、ST281、SY6001、TA60、TAI−901(4−ベンゾイル−1−インダンカルボン酸)、TVX2706、U60257、UR2301およびWY41770などの会社コード番号により称されるもの。このNSAIDと同様の鎮痛性および抗炎症性を有する構造的に関連するNSAIDもまた、このグループに包含するように意図されている。
【0097】
さらに別の具体的な実施形態において、本発明は、リウマチ様疾患、移植片対宿主疾患および多発性硬化症などの急性炎症および慢性炎症など、本明細書に挙げられた疾患および障害の治療を目的とした1つまたは複数のコルチコステロイド類、プロドラッグエステル類または薬学的に許容できるそれらの塩類のいずれかと併用する(治療前、治療後、または並行治療)IL−1Ra融合タンパク質の使用に関する。コルチコステロイド類、プロドラッグエステル類または薬学的に許容できるそれらの塩類としては、ヒドロコルチゾン、および21−アセトキシプレグネノロン、アルクロメラゾン、アルゲストン、アムシノミド、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、ブデソニド、クロロプレドニゾン、クロベタゾール、プロピオン酸クロベタゾール、クロベタゾン、酪酸クロベタゾン、クロコルトロン、クロプレドノール、コルチコステロン、コルチゾン、コルチバゾール、デフラザコン、デゾニド、デスオキシメラゾン、デキサメタゾン、ジフロラゾン、ジフルコルトロン、ジフルプレドナート、エノキソロン、フルアザコート、フルクロロニド、フルメタゾン、ピバル酸フルメタゾン、フルシノロンアセトニド、フルニゾリド、フルオシノニド、フルオロシノロンアセトニド、フルオコルチンブチル、フルオコルトロン、ヘキサン酸フルオコルトロン、吉草酸ジフルコルトロン、フルオロメトロン、酢酸フルペロロン、酢酸フルプレドニデン、フルプレドニゾロン、フルランデノリド、ホルモコルタール、ハルシノニド、ハロメタゾン、酢酸ハロプレドン、ヒドロコルタメート、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、酪酸ヒドロコルチゾン、リン酸ヒドロコルチゾン、コハク酸ヒドロコルチゾン21−ナトリウム、テブト酸ヒドロコルチゾン、マジプレドン、メドリゾン、メプレドニゾン、メチルプレドニゾロン、フロン酸モメタゾン、パラメタゾン、プレドニカルベート、プレドニゾロン、21−ジエドリアミノ酢酸プレドニゾロン、リン酸プレドニゾロンナトリウム、コハク酸プレドニゾロンナトリウム、21−m−スルホ安息香酸プレドニゾロンナトリウム、21−ステアログリコール酸プレドニゾロンナトリウム、テブト酸プレドニゾロン、21−トリメチル酢酸プレドニゾロン、プレドニゾン、プレドニバル、プレドニリデン、21−ジエチルアミノ酢酸プレドニリデン、チキソコルトール、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、トリアムシノロンベネトニドおよびトリアムシノロンヘキサセトニドなどのヒドロコルチゾンから誘導される化合物が挙げられる。同様の鎮痛性および抗炎症性を有する構造的に関連するコルチコステロイド類もまた、このグループに包含されることが意図されている。
【0098】
別の具体的な実施形態において、本発明は、リウマチ様疾患、移植片対宿主疾患および多発性硬化症などの急性炎症および慢性炎症など、本明細書に挙げられた疾患および障害の治療を目的とした1つまたは複数の遅効性抗リウマチ薬類(SAARD)または疾患改質抗リウマチ薬類(DMARD)、プロドラッグエステル類または薬学的に許容できるそれらの塩類のいずれかと併用する(治療前、治療後、または並行治療)IL−1Ra融合タンパク質の使用に関する。SAARDまたはDMARD、プロドラッグエステル類または薬学的に許容できるそれらの塩類は:アロクプレイドナトリウム、オーラノフィン、オーロチオグルコース、オーロチオグリカニド、アザチオプリン、ブレキナールナトリウム、ブシラミン、3−オーロチオ−2−プロパノールスルホン酸カルシウム、クロラムブシル、クロロキン、クロブザリット、クプロキソリン、シクロ−ホスファミド、シクロスポリン、ダプゾン、15−デオキシスペルグアリン、ジアセレイン、グルコサミン、金塩類(例えば、クロロキン金塩、チオリンゴ酸金ナトリウム塩、チオ硫酸金ナトリウム塩)、ヒドロキシクロロキン、硫酸ヒドロキシクロロキン、ヒドロキシ尿素、ケブゾン、レバミゾール、ロベンザリット、メリッチン、6−メルカプトプリン、メトトレサート、ミゾリビン、ミコフェノレートモフェチル、ミオラール、ナイトロジェンマスタード、D−ペニシラミン、SKNF86002およびSB203580などのピリジノールイミダゾール類、ラパマイシン、チオール類、サイモポエチンおよびビンクリスチンを含む。同様の鎮痛性および抗炎症性を有する構造的に関連するSAARDまたはDMARDもまた、このグループに包含されることが意図されている。
【0099】
別の具体的な実施形態において、本発明は、急性炎症および慢性炎症など、本明細書に挙げられた疾患および障害の治療を目的とした、1つまたは複数のCOX2阻害剤、プロドラッグエステル類または薬学的に許容できるそれらの塩類のいずれかと併用する(治療前、治療後、または並行治療)IL−1Ra融合タンパク質の使用に関する。COX2阻害剤、プロドラッグエステル類または薬学的に許容できるそれらの塩類の例としては、例えば、セレコキシブが挙げられる。同様の鎮痛性および抗炎症性を有する構造的に関連するCOX2阻害剤もまた、このグループに包含されることが意図されている。COX−2選択的阻害剤の例としては、限定はしないが、エトリコキシブ、バルデコキシブ、セレコキシブ、リコフェロン、ルミラコキシブ、ロフェコキシブなどが挙げられる。
【0100】
さらに別の具体的な実施形態において、本発明は、急性炎症および慢性炎症など、本明細書に挙げられた疾患および障害の治療目的で、1つまたは複数の抗菌剤、プロドラッグエステル類または薬学的に許容できるそれらの塩類のいずれかと併用する(治療前、治療後、または並行治療)IL−1Ra融合タンパク質の使用に関する。抗菌剤としては、例えば、広範なクラスのペニシリン類、セファロスポリン類および他のベータ−ラクタム類、アミノグリコシド類、アゾール類、キノロン類、マクロライド類、リファマイシン類、テトラサイクリン類、スルホンアミド類、リンコサミド類およびポリミキシン類が挙げられる。ペニシリン類としては、限定はしないが、ペニシリンG、ペニシリンV、メチシリン、ナフシリン、オキサシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、フロキサシリン、アンピシリン、アンピシリン/スルバクタム、アモキシシリン、アモキシシリン/クラブラネート、ヘタシリン、シクラシリン、バカンピシリン、カルベニシリン、カルベニシリンインダニル、チカルシリン、チカルシリン/クラブラネート、アゾロシリン、メジオシリン、ペペラシリン、およびメシリナムが挙げられる。セファロスポリン類および他のベータ−ラクタム類としては、限定はしないが、セファロチン、セファピリン、セファレキシン、セフラジン、セファゾリン、セファドロキシル、セファクロール、セファマンドール、セフォテタン、セフォキシチン、セルロキシム、セフォニシド、セフォラジン、セフィキシム、セフォタキシム、モキサラクタム、セフチゾキシム、セトリアキソン、セフォペラゾン、セフタジジム、イミペネムおよびアズトレオナムが挙げられる。アミノグリコシド類としては、限定はしないが、ストレプトマイシン、ゲンタマイシン、トブラマイシン、アミカシン、ネチルマイシン、カナマイシンおよびネオマイシンが挙げられる。アゾール類としては、限定はしないが、フルコナゾールが挙げられる。キノロン類としては、限定はしないが、ナリジクス酸、ノルフロキサシン、エノキサシン、シプロフロキサシン、オフロキサシン、スパルフロキサシンおよびテマフロキサシンが挙げられる。マクロライド類としては、限定はしないが、エリスロマイシン、スピラマイシンおよびアジトロマイシンが挙げられる。リファマイシン類としては、限定はしないが、リファンピンが挙げられる。テトラサイクリン類としては、限定はしないが、スピサイクリン、クロルテトラサイクリン、クロモサイクリン、デメクロサイクリン、デオキシサイクリン、グアメサイクリン、リメサイクリン、メクロサイクリン、メタサイクリン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン、ペニメピサイクリン、ピパサイクリン、ロリテトラサイクリン、サンサイクリン、セノサイクリンおよびテトラサイクリンが挙げられる。スルホンアミド類としては、限定はしないが、スルファニルアミド、スルファメトキサゾール、スルファセタミド、スルファジアジン、スルフィソキサゾールおよびコ−トリモキサゾール(トリメトプリム/スルファメトキサゾール)が挙げられる。リンコサミド類としては、限定はしないが、クリンダマイシンおよびリンコマイシンが挙げられる。ポリミキシン類(ポリペプチド類)としては、限定はしないが、ポリミキシンBおよびコリスチンが挙げられる。
【0101】
当然のことながら、本明細書において、章の見出しは、編成のみを目的としたものであって、決して記載された内容を限定するものとして解釈すべきではない。引用された全ての文献は、全ての目的のために参照としてそれらの全体が本明細書に援用される。
【0102】
以下の実施例は、本発明の一定の実施形態を単に例示するものであり、添付された特許請求の範囲により定義される本発明を限定するものとして解釈してはならない。
【実施例】
【0103】
実施例1:三量体IL−1Raの様式、産生および精製
IL−1Raは、大腸菌(E.coli.)において組換えタンパク質として産生できることが以前に示されている(Steinkasserer et al 1992. FEBS 310:63-65)。このタンパク質は、極めて安定であり、効率的にリフォールディングする。そのN末端に追加のアミノ酸を有するIL−1Raのイソ型もまた記載されている(Haskill et al 1991, PNAS 88:3681-3685;Muzio et al 1995, JEM 182、623-628)。これらの分子は、IL−1Rならびにその成熟分泌体と結合したので、受容体への結合を損なうことなくアンタゴニストのN末端に追加ペプチドの融合が可能なことを示している。IL−1RaとIL−1Rとの相互作用の結晶構造分析もまた、N末端の改変がIL1Rとの相互作用に影響を及ぼさないことを裏付けている(Schreuder et al 1997, Nature 386: 190-194)。IL−1Raは、骨髄および/またはヒト胎盤に由来するヒトcDNAライブラリーからクローン化された。
【0104】
三量体IL−1Raは、Trip三量体形成単位に対するC末端融合体として設計された。8つの異なる融合タンパク質を設計し、その4つは全長の三量体形成単位を有し(Trip)、残りの4つは9個のアミノ酸が切断された三量体形成単位を有する(I10Trip)。次いでIL−1Raを、4つの異なるC末端融合体を用いていずれかの三量体形成単位にも融合させた。TripV、TripT、TripQおよびTripKと称するC末端変異体は、三量体形成ドメイン上のCTLDドメインのユニークな提示が考えられる。TripK変異体は、最長の構築物であり、CTLDと三量体形成ドメインとの間に最長かつ最もフレキシブルなリンカーを含有する。TripV、TripT、TripQは、構造的にフレキシブルでない三量体形成モジュール上への直接的なCTLD分子の融合を表すが、CTLD分子は、TripVからTripTへ、およびTripTからTripQへと1/3回転している。これは、これらのアミノ酸の各々が、αヘリックスターンしているが、完全な回転には3.2aaが必要であるという事実による。
【0105】
以下のタンパク質は、以下のグランザイムB開裂融合タンパク質としてBL21AI細菌において産生させた。下線部分は三量体単位を示し、太字部分はIL−1Ra部分を示す:
【化4】
【化5】
【化6】
【0106】
全ての構成物を、NiNTA Superflow(Qiagen)上で捕捉し、リフォールディングし、さらにSP−Sepharose FF(GE Heathcare)上で精製した。三量体IL1−Raの振とうフラスコ内または発酵槽での発現から、封入体を精製した。一塊の細胞ペレットを、溶解用緩衝液(50mMのトリス−HCl、pH8.0、25w/v%のショ糖、1mMのEDTA)中、音波処理によりホモジナイズした(溶解用緩衝液100mL当り50gのウェット細胞ペレット)。次いで、溶解用緩衝液100mL当り100mgのリゾチームを添加し、混合してから、サンプルを15分間室温に放置した。次にこのサンプルを、混合しながら2〜5分間音波処理した。洗浄用緩衝液(0.2MのNaCl、1w/v%のデオキシコレート、Na塩、1w/v%のノニデットP40、20mMのトリス−HCl、pH7.5、2mMのEDTA)を加え、サンプルを混合し、再度音波処理した。封入体を、4℃、8,000rpmで25分間の遠心分離により回収した。上澄液を、4℃で保存し、このペレットを、元の細胞ペレット50g当り100mLのTRITON(登録商標)X−100緩衝液(0,5w/v%のTRITON(登録商標)X−100、1mMのEDTA、pH8)中に再懸濁させた。封入体を、4℃、8,000rpmで25分間の遠心分離により回収し、上澄液を、4℃で保存した。TRITON(登録商標)X−100緩衝液洗浄をもう一度繰り返し、封入体を、4℃、12,000rpmで5分間の遠心分離により回収した。
【0107】
封入体を、細胞ペースト1グラム当り30mLの変性用緩衝液(6Mの尿素、10mMのEDTA、20mMのトリス/HClおよび20mMのβ−メルカプトエタノール、pH8.0)中、28℃で2時間再懸濁した。この懸濁液を、7500gで15分間遠心分離して、不溶性物質を除去した。この後、CaCl2を加えて20mMの最終濃度にし、この溶液を、NTA緩衝液(8Mの尿素;1000mMのNaCl;50mMのトリスHCl pH8.0;5mMのβ−メルカプトエタノール)中で平衡にした100mLのNi−NTA Superflowカラムに適用し、安定なベースラインが得られるまで洗浄した。さらに250mLのグアニジン−HCl、50mMのトリス−HCl pH8.0、5mMのβ−メルカプトエタノールにより洗浄し、次いで100mLの緩衝液NTAにより洗浄した。
【0108】
2つのリフォールディング法、すなわち透析リフォールディングおよびカラム上のリフォールディングを用い、双方から純粋な可溶性のタンパク質を得た。透析リフォールディングでは、再懸濁した封入体を用いて、直接、3Mの尿素、1mMのEDTA、pH7.2を含有する1×PBS中で一晩かけて透析した。翌日、0Mの尿素、1mMのEDTA、pH7.2を含有する1×PBS中で透析を続けた。
【0109】
カラム上のリフォールディングでは、タンパク質を結合させた洗浄Ni−NTA Superflowカラムの樹脂を、3Mの尿素、pH7.2を含有する4CVmlの1×PBSで洗浄してから、3Mの尿素、pH7.2を含有する10CVの1×PBS、そして0Mの尿素、pH7.2を含有する10CVの1×PBSの直線勾配で操作した。リフォールディングされた三量体IL−1Raを回収するために、このカラムを1×PBS、10mMのEDTA、pH6.0で溶出させ、フラクションを集めた。
【0110】
リフォールディング後、溶出液中のpHをNaOHにより7.5に調整してから、組換えグランザイムBを1:500(グランザイム/タンパク質)の比率で添加し、25℃で一晩インキュベートすることによって、組換えヒトグランザイムBによる開裂を実施した。この進行をSDS−PAGEにより追跡した。
【0111】
最後に、SP−SepharoseFF(GE Healthcare)カチオン交換ステップを用いて、開裂タンパク質を精製した。約50mLのSP−Sepharose FFを詰め、安定なベースラインが得られるまで緩衝液A(1×PBS、1mMのEDTA pH5.5)中で平衡にした。この開裂反応物を、緩衝液Aにより1:3に希釈し、カラム上に装填し、次いで安定なベースラインがモニターされるまで緩衝液Aで洗浄した。10CVの緩衝液Aから10CVの緩衝液B(1×PBS、1mMのEDTA+0.5MのNaCl pH5.5)までの勾配を設定して、フラクションを5mLずつ集めた。タンパク質を含有するフラクションを、SDS−PAGEで分析してからタンパク質産物をプールした。
【0112】
あるいは、上記封入体調製物からの上澄液を用いてタンパク質を精製した。上澄液中の可溶性三量体IL−1Raを、緩衝液A(20mMのTrisHCL、50mMのNaCl pH8.0)で平衡にしたNi−NTA Superflow(Qiagen)カラム上で精製した。封入体精製からの洗浄液をプールし、10000rpmで10分間遠心分離してから、CaCl2を5mMに、およびトリス−HClを20mMに加えて、HCl/NaOHによりpHを6.0に調整した。このプールをカラムに装填し、安定なベースラインが得られるまで緩衝液Aで洗浄した。安定なベースラインが得られるまで緩衝液A+1MのNaClで洗浄後、結合したタンパク質を、緩衝液A+20mMのEDTAで溶出させ、フラクションを集めた。その後、タンパク質プールを、グランザイムBにより開裂し、上記のとおりSP−SepharoseFFカラム上で精製した。3L発現培養物からのCII−H6−GrB−GG−TripK−IL−1raの可溶性フラクションから、Ni−NTA Superflow(Qiagen)の捕捉後、約250mgのCII−H6−GrB−TripK−IL−1Raについで最終収量が95mgのTripK−IL−1Raが得られた。可溶性フラクションからのタンパク質の収率と純度が、リフォールディングを実施することよりも有意に良好であったことから、この経路が、最初の構成物試験後に選択された。
【0113】
リフォールディングされたタンパク質のIL−1受容体1に結合する能力を、Biacore3000(Biacore、Uppsala、スウェーデン)上で分析した。この分析には、マウスIL1−RI/FcをCM5センサーチップに結合させ、IL−1RIタンパク質に対する可溶性TripK−IL−1raの結合を測定した。透析による未開裂のCII−H6−GrB−TripK−IL−1raリフォールディングの結果を図2に示し、未開裂のCII−H6−GrB−TripK−IL−1raのカラム上のNiNTAリフォールディングを図3に示す。開裂アッセイおよび精製アッセイにより、配列番号47−54の三量体IL−1Ra化合物を作製した。
【0114】
実施例2:U937細胞内でのIL−1誘導性のIL−8を阻害する三量体IL−1Ra化合物の能力
U937細胞内でのIL−1誘導性のIL−8を阻害する能力に関して、GG−TripV−IL−1ra(tripV−IL1Ra)、GG−TripK−IL−1ra(tripK−IL1Ra)、GG−TripT−IL−1ra(tripT−IL1Ra)およびCII−H6−GrB−GG−TripT−IL−1ra(tripQ−IL1Ra)をさらに分析した。結果を図4に示す。
【0115】
これらの化合物は、その応答をブロックする効果が本質的に等しく、これら全てがKINERET(登録商標)と同様に効果的であると思われる(w/wで比較した場合)。このアッセイにおける緩衝液効果のため、使用される最高のタンパク質濃度(100μg/mL)におけるIL−8の産生は、さらに減少するのではなくて増加する。幾つかのインビトロでの有効性検定ならびにBiacoreアッセイに基づいて、TripT IL1Raは、ブロッキングおよび結合の有効性ならびに産生収率に基づき最良の化合物であると判定した。
【0116】
実施例3:ペグ化三量体IL−1Ra化合物
KINERET(登録商標)の有効性において、そのインビボでの半減期が重要なパラメータである(KINERET(登録商標)のヒトでの半減期は、わずか4−6時間であり、したがって毎日1回適用する必要がある)ことから、N末端ペグ化によりTripT IL1Raをペグ化する能力を試験した。三量体IL1−RaをN末端においてペグ化する。上記の精製法の最終ステップ後の三量体IL1−Raアンタゴニストタンパク質を、ペグ化の出発点として用いた。ペグ化反応用に、このタンパク質の緩衝液をPBS緩衝液pH6.0に変えた。反応中のタンパク質濃度は、0.5mg/mLと3.5mg/mLとの間であり、20mMのシアノボロヒドリド(NaCNBH3)で補足した5〜10モル過剰のmPeg5K−アルデヒドまたはmPeg20K−アルデヒド(Nektar)を用いた。反応は、20℃で16時間実施した。次いでこの反応混合物をSource15Sカラム(GE Healtcare)に適用して、モノペグ化体を精製した。図5に示すように、非ペグ化タンパク質と比較して、このペグ化体のアンタゴニスト活性は減少した。しかしながら、このペグ化タンパク質は、依然として良好なIL1ブロック効力を有している。
【0117】
実施例4:オスのルイスラットにおける静脈内注射後の三量体IL−1Raタンパク質の薬物動態学的分析
先の実施例に記載された3種の三量体IL−1Raポリペプチドを、薬物動態学的分析用に選択した。これらの構築物の違いは、三量体形成ドメインのN末端にあり、すなわち全長(FL)、最初の9個のアミノ酸が切断されている(I10)および最初の16個のアミノ酸が切断されている(V17)という違いであった。I10構築物は、三量体形成ドメインの天然の欠失変異体を表し、Thr4においてO−グリコシル化部位を欠いている。V17誘導体は、三量体形成ドメインをコードする最初のエキソンの欠失を表し、特徴的なヘパリン結合部位を欠いている。この部位はまた、I10構築物において部分的に除去されている。図6に示されるように、IL−1Ra分子のインビトロ有効性は、U937細胞アッセイにおいて立証された。
【0118】
これら3種の構築物ポリペプチドの薬物動態学的プロファイルを、ルイスラットにおける静脈内(i.v.)注射後に分析した。得られたプロファイルを、同一の実験におけるKINERET(登録商標)の薬物動態学的プロファイルと比較した。薬物動態学的試験は、1群当りオスのルイスラット4匹を用いて実施し、使用した構築物は、FLIL−1Ra、I10IL−1Ra、V17IL−1RaおよびKINERET(登録商標)であった。100mg/kgの単回用量を動物に静脈内投与した。試験化合物を、媒体(4.4mMのクエン酸ナトリウム、pH6.5、93.8mMのNaCl、0.33mMのEDTA、0.7gのTWEEN(登録商標)−80)に溶解し、尾静脈(正中仙骨静脈)または後足静脈(伏在静脈)を介して投与した。
【0119】
次に血液を、ベースライン(ゼロ時間)ならびに投与後0.5時間、1時間、2時間、4時間、8時間、12時間、24時間、48時間、72時間の時点で、1時点当り4匹の動物から採取した。およそ100μlの血液サンプルを、尾の先端からMicrotainers(商標)中に採取した。血漿を採取し、ポリプロピレンチューブに移した。次に測定が実施されるまで、血漿サンプルを≦70℃で保存した。次いで、CO2吸入により動物を殺処理し、これらの死体を、病理学的検査をせずに廃棄した。次に血漿中のIL−1Ra化合物濃度およびKINERET(登録商標)濃度を、ELISAにより決定した。
【0120】
各ラットの平均体重は、250グラムであった。ラットの平均血液量が16.5mLであるとすれば、静脈内注射後の化合物の理論的な最高の初期濃度は、1,500,000ng/mLと算出される。これらの濃度を図7に示す。この初期濃度を、分析の出発値として用いた。動物に副作用または健康状態の変化は見られなかった。
【0121】
上記時点での血液サンプルの採取後、ELISAアッセイを用いて、血液サンプル中の注射されたタンパク質を測定した。これらのELISA結果に基づき、薬物曝露の尺度として曲線下面積(AUC)を用い、また標準的なソフトウェアを用いて血漿中の半減期を算出した。この曲線下面積を表2に示し、血漿中タンパク質の半減期を表3に示してある。
【0122】
【表2】
【0123】
【表3】
【0124】
これらの静脈内データより、KINERET(登録商標)と比較して三量体化合物の方が、優れた血漿中半減期を有することが示されている。KINERET(登録商標)の半減期は、約1.2分であり、一方、静脈内注射後のV17 IL1Ra三量体タンパク質の半減期は、約69分である。分析に用いられた評価基準に依ると、AUCの相対的増加は、FL IL1Ra三量体に関する2倍とV17 IL1Ra三量体に関する5倍との間にあり、これは、KINERET(登録商標)に比較して、三量体化された変異体を用いた薬物曝露は実質的に改善することを示すものである。
【0125】
実施例5:Met−I10−TripT−IL1raおよびGG−V17−TripT−IL1raの産生ならびにラットCIAモデル
双方の分子は、2×TY培地(Met−I10−TripT−IL−1ra)または化学的に規定された最少培地(GG−V17−TripT−IL−1ra)を用いて10Lの発酵槽操作でBL21 AI細菌により産生された。5887×gで20分間の遠心分離により細胞ペレットが得られ、次に10mMのNa2HPO4 pH6中に再懸濁させた。Met−I0−TripT−IL−1raについては、高圧ホモジネート(2×17,000psi)に次いで、10,000×gで10分間の遠心分離により目的のタンパク質を含有する可溶性の細胞フラクションを得た。上澄液を、10mMのNa2HPO4 pH7.4で希釈し、AKTA fPLCを用いて、SP−SepharoseFFカラム(カチオン交換、GE Healthcare)にかけ、次いでQ−Sepharose FF(アニオン交換、GE Healthcare)にかけた。最終ステップにおいて、タンパク質は、Mustang Eフィルター(Pall)を通過させてエンドトキシンを除去し、次いで緩衝液をPBS pH7.4に交換し、濃度を50mg/mLにした。GG−V17−TripT−IL−1Raタンパク質は、N末端ブースタードメイン、ファージCIIタンパク質、続いてヒトグランザイムB開裂部位を含む融合タンパク質として発現した。GG−V17−TripT−IL−1Raは、リゾチームを含有する溶解用緩衝液中でのホモジネートに次いで、8000rpmで25分間遠心分離することにより、発酵細胞ペレットから精製した。次に上澄液は、Fractogel(登録商標)EMDキレート(M)カラム(EMD Chemicals Inc.)を通過させ、溶出液の緩衝液を、20mMのトリスpH7.5、150mMのNaClに交換した。次にこのタンパク質フラクションを、ヒト組換えグランザイムB(社内作製、特許参照)で消化した。PBS pH6で希釈した後、タンパク質は、SP Sepharose FF、次いでMustangEろ過および流動様式のFractogel(登録商標)EMDキレート(M)カラムを用いて精製し、融合タグおよびヒトグランザイムBを除去した。最後に、タンパク質の緩衝液をPBS pH7.4に交換し、50mg/mLに濃縮した。Met−I10−TripT−IL−1raおよびGG−V17−TripT−IL−1ra双方のタンパク質に関する収量は、SDS−PAGE(図8)、RP−HPLCおよびMSにより判定すると、3g〜5g/L、純度>95%であった。LALアッセイ(Lonza)を用いて判定すると、エンドトキシン濃度は、<3EU/mgであった。分析SECにより判定すると、凝集体は、<0.5%であり(図9)、宿主細胞タンパク質は、<6ng/mLであった。Met−I10−TripT−IL−1raの2つのバッチ(LM022、LM023)およびGG−V17−TripT−IL−1raの2つのバッチ(CF019、CF020)を、上記アッセイにより試験した。
【0126】
4日確立の(4-day established)II型コラーゲン関節炎のメスのルイスラットを、1日〜3日の関節炎に対して毎日(QD)、媒体(10mMのリン酸緩衝液pH7.4)により、あるいは単量体IL−1Ra(100mg/kgのKINERET(登録商標))または三量体化IL−1Ra(120mg/kgのMet−I10−TripT−IL1raもしくは120mg/kgのGG−V17−TripT−IL1ra)を投与する等モル量のIL−1Raにより、皮下(SC)処置した。対照を1セットのみとするため、QD群における全てのラットに、第二回目と第三回目の投与に際してそれぞれの媒体(10mMのリン酸緩衝液pH7.4、またはKINERET(登録商標)についてはクエン酸ナトリウム緩衝液pH6.5)を投与し、操作を一定に保った。動物は、関節炎4日目で殺処理した。効力の評価は、曲線下面積(AUC)で表される足首のカリパス測定、最後の後足の重量および体重に基づいた(Bendele et al 2000, Arthritis + Rheumatism 43:2648-2659)。動物は全て試験終了まで生存した。KINERET(登録商標)またはその媒体(CSEP)を注射されたラットは、注射処置時に鳴いたことから、皮下炎症が生じたことを示唆する。他のものを用いた注射では鳴かなかった。
【0127】
1ケージ当り4匹の飼育動物(関節炎群につき8匹、正常群につき4匹)に、イソフルランで麻酔をかけ、0日目および6日目に、尾のつけねと2箇所の背中とに2mg/mlのウシII型コラーゲン(Elastin Products、オーウェンスビレ、ミズーリ州)を含有する300μlのフロイント不完全アジュバント(Difco、デトロイト、ミシガン州)を皮下/皮内(SC/ID)注射した。皮下経路による投与(24時間の間隔で毎日)を、関節炎1日目に開始し、3日目まで継続した。実験群は表4に示すとおりである。
【0128】
【表4】
【0129】
関節炎の0日目〜4日目にラットの体重を量り、足首のカリパス測定を関節炎0日目から開始して毎日行った(試験9日目)。最後の体重測定後に、動物を安楽死させ、後足を、内くるぶしと外くるぶしの面で切断し、(一対で)重量を量った。
【0130】
100mg/kgの毎日のKINERET(登録商標)(3日目〜4日目)処置、120mg/kgの毎日のMet−I10−TripT−IL1ra(2日目〜4日目)処置、または120mg/kgの毎日のGG−V17−TripT−IL1ra(3日目〜4日目)処置されたラットは、媒体処置された疾患対照動物と比較して、足首の直径の有意な減少が見られた。媒体処置された疾患対照動物と比較して、100mg/kgの毎日のKINERET(登録商標)処置(34%)、120mg/kgの毎日のMet−I10−TripT−IL1ra(54%)処置、または120mg/kgの毎日のGG−V17−TripT−IL1ra(49%)処置されたラットでは、足首の直径のAUCが有意に減少した。毎日のMet−I10−TripT−IL1ra処置は、毎日のKINERET(登録商標)処置と比較して足首の直径のAUCが有意に減少する試験結果となった(試験の終了時においてp<0.035)。また、試験の終了時における毎日のKINERET(登録商標)処置と比較して、毎日のGG−V17−TripT−IL1ra処置により、足首の直径のAUCが有意に減少する試験結果となった(p<0.001)(図10)。
【0131】
媒体処置の疾患対照動物と比較して、100mg/kgの毎日のKINERET(登録商標)処置(61%)、120mg/kgの毎日のMet−I10−TripT−IL1ra処置(79%)、または120mg/kgの毎日のGG−V17−TripT−IL1ra処置(91%)されたラットでは、最終的な足重量が有意に減少した。毎日のKINERET(登録商標)処置と比較して、毎日のGG−V17−TripT−IL1ra処置により最終的な足重量が有意に減少する試験結果となった(p<0.006)(図11)。
【0132】
媒体処置された疾患対照動物と比較して、100mg/kgの毎日のKINERET(登録商標)処置(54%)、120mg/kgの毎日のMet−I10−TripT−IL1ra処置(49%)、または120mg/kgの毎日のGG−V17−TripT−IL1ra処置(65%)されたラットの体重の変化は、正常値へと有意に増加した。
【0133】
実施例6:ストレプトゾシン(STZ)誘導型糖尿病モデル
絶食させたC57BL/6Jオスのマウスに、STZ(Sigma Aldrich)の50mg/kgを、連続5日間、毎日1回、腹腔内投与した。マウスは、1日目から4日目にかけて血中グルコース濃度が徐々に増していった。この血中グルコース濃度は、STZ誘導期間中に、6.9nmol/Lから13.1nmol/Lまで上昇した。5日間(4日目)の最後のSTZ投与後に、良好な状態の10匹のマウスをそれぞれが含む10個の処置群に、マウスを無作為に分配した。糖尿病の発症前のこの日に処置を開始し、発症後も処置を継続した。処置群は表5に示すとおりである。
【0134】
【表5】
【0135】
試験期間は28日であり、処置期間中、マウスの体重を週1回量った。糖尿病の発症をモニターするために、血中グルコース濃度を、試験期間中、1日おきに測定した。尾静脈からの出血により、全血から液滴で採血し、Ascensia ELITE(登録商標)の血中グルコース試験ストリップ上に乗せて、Ascensia ELITE(登録商標)の血中グルコース計測器(Bayer)で分析した。これらの値を記録し、処置開始時の濃度と比較して、処置群におけるx倍の増加を算出した。臨床的症状は、反対の症状が生じた群において毎日または適宜観察した。
【0136】
図12に示されるように、100mg/kgおよび30mg/kg双方でのI10−TripT−IL1−RaまたはKINERET(登録商標)のいずれの毎日の腹腔内投与後にも、血中グルコース濃度の著しい減少が見られた。さらに、100mg/kgでのI10−TripT−IL1Raの週2回の投与では、100mg/kgのKINERET(登録商標)の毎日の投与と効果が等しかった。これらのデータは、三量体化IL−1Raが、実験的に誘導した糖尿病の治療に有効であることを実際に示している。
【0137】
上記に示した実施例は、単に例示を目的としたものであり、本発明の全ての可能な実施形態、適用または修飾の網羅的な列挙であること意味するものではない。したがって、本発明の範囲と意図から逸脱することなく、本発明の記載された方法およびシステムの種々の修飾と変更は、当業者にとって明らかとなろう。本発明を、具体的な実施形態に関連して記載したが、当然のことながら、特許請求された本発明は、このような具体的な実施形態に過度に限定されるべきものではない。具体的には、分子生物学、免疫学、化学、生化学または関連分野の当業者にとって明白な、本発明を実施するための記載された様式に関する種々の修飾は、添付された請求項の範囲内にあることが意図される。
【0138】
本発明は、当然のことながら、本明細書に記載された特定の方法論、プロトコル、および試薬などに限定されず、当業者に認識されるように、これらを変えることができる。また本明細書に用いられる用語は、当然のことながら、特定の実施形態の説明だけを目的として使用されており、本発明の範囲を限定する意図はない。また、本明細書および添付された特許請求の範囲に用いられる単数形「ある、その/この(a、an、およびthe)」は、文脈により明確に別様に規定されない限り、複数系への言及を含んでいることに注意すべきである。したがって、例えば、「あるリンカー(a linker)」に対する言及は、当業者には既知の1つまたは複数のリンカーおよびそれらの均等物に対する言及である。
【0139】
別様に規定されない限り、本明細書に用いられる全ての技術用語および科学用語は、本発明に関係する当業者により一般に理解される用語と同じ意味を有する。本発明の実施形態およびその種々の特徴および利点は、非限定的な実施形態を参照してより十分に説明され、また添付の図面に例示され、そして明細書において詳述されている。図面に例示された特徴は、必ずしも縮尺どおりに描かれておらず、一実施形態の特徴は、たとえ本明細書に明白に述べられていなくても当業者が認識できるはずの他の実施形態で実施できる。
【0140】
本明細書に挙げられた数値はいずれも、任意の下限値と任意の上限値との間にある少なくとも2つの構成単位を分離できる1つの構成単位の増分の下限値から上限値にある全ての値を含む。例として、例えば、成分濃度または例えば、サイズ、角度の大きさ、圧力、時間などの処理変数の値が、例えば、1から90、具体的には20から80、より具体的には30から70であると述べられている場合、それは、15から85まで、22から68まで、43から51まで、30から32までなどの値が本明細書において明確に示されていることを意図するものである。1未満の値については、1つの構成単位は、適宜0.0001、0.001、0.01または0.1であると考えられる。これらは、単に具体的に意図される数値の例であり、示された数値の下限値と上限値との間の数値の可能な全ての組合せが、同様の様式で本明細書に明確に言及されていると考えるべきである。
【0141】
特定の方法、装置、および材料が記載されているが、本明細書に記載されたものと類似のまたは均等な方法および材料のいずれも、本発明の実施または試験に使用することができる。これまでに引用された全ての報文および参考文献および刊行物の開示は、各々が個々に参照として組み込まれているのと同程度に、それらの全体が参照として明確に本明細書に援用される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
三量体形成ドメインとIL−1活性を阻害するIL−1Raポリペプチドとを含む、融合タンパク質。
【請求項2】
IL−1Raポリペプチドが、保存的アミノ酸置換の結果、配列番号38に対して少なくとも85%同一性があって、Trp16、Gln20、Tyr34、Gln36およびTyr147を含む、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項3】
前記IL−1Raポリペプチドが、配列番号38に対して少なくとも95%同一性がある、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項4】
D47N、E52R、E90Y、P38Y、H54R、Q129LおよびM136Nからなる群から選択される変異を少なくとも1つさらに含む、請求項2に記載の融合タンパク質。
【請求項5】
三量体形成ドメインが、ヒト・テトラネクチンに由来する、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項6】
三量体形成ドメインが、テトラネクチンの三量体形成構造エレメントである、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項7】
三量体形成ドメインが、配列番号1に対して少なくとも66%同一性がある、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項8】
同一または別の請求項5に記載の融合タンパク質を3個含む、三量体複合体。
【請求項9】
同一または別の請求項6に記載の融合タンパク質を3個含む、三量体複合体。
【請求項10】
ポリエチレングリコールをさらに含む、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項11】
IL−1Raポリペプチドと三量体形成ドメインとの間にリンカーをさらに含む、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項12】
3個の融合タンパク質を含む三量体複合体であって、各融合タンパク質が請求項1に記載の融合タンパク質を含み、そのうち少なくとも1個の融合タンパク質が、TripK−IL−1Ra(配列番号39);TripV−IL−1Ra(配列番号40);TripT−IL−1Ra(配列番号41);TripQ−IL−1Ra(配列番号42);I10−TripK−IL−1Ra(配列番号43);I10−TripV−IL−1Ra(配列番号44);I10−TripT−IL−1Ra(配列番号45);I10−TripQ−IL−1Ra(配列番号46);V17−TripT−IL−1Ra(配列番号55);V17−TripK−IL−1Ra(配列番号56);V17−TripV−IL−1Ra(配列番号57);およびV17−TripQ−IL−1Ra(配列番号58)からなる群から選択される、三量体複合体。
【請求項13】
請求項1に記載のポリペプチドをコードする、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項14】
請求項13に記載のポリヌクレオチドを含む、ベクター。
【請求項15】
請求項14に記載のベクターを含む、宿主細胞。
【請求項16】
請求項1に記載の融合タンパク質および少なくとも1つの薬学的に許容できる賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項17】
請求項7に記載の三量体複合体および少なくとも1つの薬学的に許容できる賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項18】
インターロイキン1により媒介される疾患の治療を必要とする患者に、請求項17に記載の医薬組成物を投与することを含む、インターロイキン1により媒介される疾患を治療する方法。
【請求項19】
疾患が、炎症性疾患である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
炎症性疾患が、リウマチ様関節炎である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
炎症性疾患が、糖尿病である、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
抗炎症剤を、該患者に同時にまたは連続的に投与することをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
該融合タンパク質に共有結合した抗炎症剤をさらに含む、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項24】
少なくとも1個の該融合タンパク質が、抗炎症剤と共有結合している、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
請求項1に記載の融合タンパク質を少なくとも2個含む、ポリペプチド複合体。
【請求項26】
前記融合タンパク質を少なくとも4個含む、請求項25に記載のポリペプチド複合体。
【請求項1】
三量体形成ドメインとIL−1活性を阻害するIL−1Raポリペプチドとを含む、融合タンパク質。
【請求項2】
IL−1Raポリペプチドが、保存的アミノ酸置換の結果、配列番号38に対して少なくとも85%同一性があって、Trp16、Gln20、Tyr34、Gln36およびTyr147を含む、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項3】
前記IL−1Raポリペプチドが、配列番号38に対して少なくとも95%同一性がある、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項4】
D47N、E52R、E90Y、P38Y、H54R、Q129LおよびM136Nからなる群から選択される変異を少なくとも1つさらに含む、請求項2に記載の融合タンパク質。
【請求項5】
三量体形成ドメインが、ヒト・テトラネクチンに由来する、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項6】
三量体形成ドメインが、テトラネクチンの三量体形成構造エレメントである、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項7】
三量体形成ドメインが、配列番号1に対して少なくとも66%同一性がある、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項8】
同一または別の請求項5に記載の融合タンパク質を3個含む、三量体複合体。
【請求項9】
同一または別の請求項6に記載の融合タンパク質を3個含む、三量体複合体。
【請求項10】
ポリエチレングリコールをさらに含む、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項11】
IL−1Raポリペプチドと三量体形成ドメインとの間にリンカーをさらに含む、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項12】
3個の融合タンパク質を含む三量体複合体であって、各融合タンパク質が請求項1に記載の融合タンパク質を含み、そのうち少なくとも1個の融合タンパク質が、TripK−IL−1Ra(配列番号39);TripV−IL−1Ra(配列番号40);TripT−IL−1Ra(配列番号41);TripQ−IL−1Ra(配列番号42);I10−TripK−IL−1Ra(配列番号43);I10−TripV−IL−1Ra(配列番号44);I10−TripT−IL−1Ra(配列番号45);I10−TripQ−IL−1Ra(配列番号46);V17−TripT−IL−1Ra(配列番号55);V17−TripK−IL−1Ra(配列番号56);V17−TripV−IL−1Ra(配列番号57);およびV17−TripQ−IL−1Ra(配列番号58)からなる群から選択される、三量体複合体。
【請求項13】
請求項1に記載のポリペプチドをコードする、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項14】
請求項13に記載のポリヌクレオチドを含む、ベクター。
【請求項15】
請求項14に記載のベクターを含む、宿主細胞。
【請求項16】
請求項1に記載の融合タンパク質および少なくとも1つの薬学的に許容できる賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項17】
請求項7に記載の三量体複合体および少なくとも1つの薬学的に許容できる賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項18】
インターロイキン1により媒介される疾患の治療を必要とする患者に、請求項17に記載の医薬組成物を投与することを含む、インターロイキン1により媒介される疾患を治療する方法。
【請求項19】
疾患が、炎症性疾患である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
炎症性疾患が、リウマチ様関節炎である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
炎症性疾患が、糖尿病である、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
抗炎症剤を、該患者に同時にまたは連続的に投与することをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
該融合タンパク質に共有結合した抗炎症剤をさらに含む、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項24】
少なくとも1個の該融合タンパク質が、抗炎症剤と共有結合している、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
請求項1に記載の融合タンパク質を少なくとも2個含む、ポリペプチド複合体。
【請求項26】
前記融合タンパク質を少なくとも4個含む、請求項25に記載のポリペプチド複合体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2010−539995(P2010−539995A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−529006(P2010−529006)
【出願日】平成20年10月8日(2008.10.8)
【国際出願番号】PCT/US2008/079216
【国際公開番号】WO2009/048961
【国際公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(508253627)アナフォア インコーポレイテッド (7)
【氏名又は名称原語表記】Anaphore,Inc.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月8日(2008.10.8)
【国際出願番号】PCT/US2008/079216
【国際公開番号】WO2009/048961
【国際公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(508253627)アナフォア インコーポレイテッド (7)
【氏名又は名称原語表記】Anaphore,Inc.
【Fターム(参考)】
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