説明

上吊引戸

【課題】 本発明は、障子下端と床面との隙間を塞いで見込み方向の視線を確実に遮断すると共に、構造も簡単な上吊引戸を提供することにある。
【解決手段】 枠体1と障子2を備え、枠体1は、上枠1aに障子2を摺動自在に吊り下げて下端を浮かせていると共に、下枠1bの障子2と対向する位置に溝15が設けてあり、下框2bに下向きの溝5を有するものであって、竪框2c下端に取り付ける端部キャップ7と、端部キャップ7に挿入し且つ上下動自在に保持される可動部品8と、可動部品8に両端を保持されると共に下框2bの溝5に挿入して上下動自在な補助下框9を有し、可動部品8と補助下框9は、自重により下方に移動して下枠1bの溝15に入り込むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上吊引戸に関するものである。
【背景技術】
【0002】
枠体の施工誤差により、障子を上枠に吊り上げたときには下框と下枠との間に隙間が生じ、見込み方向の視線を遮断するために面倒な位置調整を要するものであった。そこで、引戸障子下端の下枠との隙間を遮断する上吊引戸として、特開2007−186888号公報のものがあり、この上吊引戸は、下框に取り付けてある隙間閉塞部材と戸車が板バネの付勢で下方に突出してフラットな床面上を走行するものであった。ところが、上記の上吊引戸では、戸車がフラットな床面を走行するものであることから、付勢部材で隙間開閉部材と戸車を下方に付勢し、戸車を床面に押し付けながら障子を走行させなければならないため、障子の構造が複雑になった。しかも、戸車を隙間開閉部材の下端よりも下方に突出させなければ障子の開閉がスムーズに行えないことから、隙間開閉部材と床面との間に隙間が生じてしまうため、これにより、実質的に障子見込み方向の視線を遮断することはできなかった。また、下枠のないフラットな床面であることから、障子の振れを小さくするために略凹溝を有するガイドブロックを床面に取り付ける必要があり、施工手間もかかるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−186888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、障子下端と床面との隙間を塞いで見込み方向の視線を確実に遮断すると共に、構造も簡単な上吊引戸を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のうち請求項1記載の発明は、枠体と障子を備え、枠体は、上枠に障子を摺動自在に吊り下げて障子下端を浮かせていると共に、下枠の障子と対向する位置に溝が設けてあり、障子は、下框に下向きの溝を有するものであって、竪框下端に取り付ける端部キャップと、端部キャップに挿入し且つ上下動自在に保持される可動部品と、可動部品に両端を保持されると共に下框の溝に挿入して上下動自在な補助下框を有し、可動部品と補助下框は、自重により下方に移動して下枠の溝に入り込むことを特徴とする。
【0006】
本発明の請求項2記載の発明では、端部キャップは、竪框下端と下框を固定するネジで竪框下端に取付けてあることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のうち請求項1記載の発明によれば、障子下端で端部キャップに上下動自在に保持される可動部品、および可動部品と連動する補助下框が自重で下枠の溝に入り込むことから、可動部品と補助下框により障子下端と下枠との隙間が隠れることで、障子見込み方向の視線が遮断される上、障子の振れ止めの効果も期待できる。また、可動部品が自重で下枠の溝に入り込むことから付勢部材と戸車が不要となるので、下框の構造が簡単になる。
【0008】
本発明のうち請求項2記載の発明によれば、竪框と下框を取り付けるとき、端部キャップと可動部品および補助下框も一緒に取り付けることができるので、上吊引戸の組み立てが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1(a)(b)】(a)は、本実施による上吊引戸の縦断面図であり、(b)は、本実施による上吊引戸の横断面図である。
【図2(a)(b)(c)(d)(e)】(a)は、端部キャップおよび可動部品の斜視図であり、(b)は、端部キャップおよび可動部品の縦断面図であり、(c)は、竪框と下框のコーナー部を拡大して示す斜視図であり、(d)は、竪框と下框のコーナー部を拡大した縦断面図であり、(e)は、同じく、下框のコーナー部を拡大した側面図である。
【図3(a)(b)】本実施による上吊引戸の可動部品の動作を示す簡略化した縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、図面に基づいて本実施による上吊引戸の実施の形態を説明する。
本実施による上吊引戸は、図1(a)(b)のように、上枠1aと下枠1bと竪枠1cとからなる枠体1と、枠体1の上枠1aに摺動自在に吊られる引違い障子(障子)2とからなっている。また、下枠1bには障子2と対向する位置に凹溝状のレール溝15が設けてあり、障子2下端に取り付けてある可動部品8が自重により下がることで、そのレール溝15に入り込む構造となっている。
【0011】
障子2は、上框2aと下框2bと竪框2cを框組みして形成するものであり、上框2aは、上端に水平軸回転するローラーの付いた係止部3を有しており、その係止部3のローラーを上枠1aに設けてある被係止溝4に係止し、障子2下端を浮かすことで、障子2を被係止溝4に沿って摺動自在な状態で吊り上げてある。また、下框2bは、収納凹溝(溝)5を有する断面下向き略コ字型をなしており、収納凹溝5には、後述するが、補助下框9が上下動自在に収容される。
【0012】
障子2は、図2(a)(c)のように、竪框2c下端に取り付ける端部キャップ7と、端部キャップ7に挿入して上下動自在に保持される可動部品8と、可動部品8に長手側の両端を保持される補助下框9とを有している。端部キャップ7は、図2(b)のように、略矩形筒型状をなして下端が開放した可動部品8の収容部11を有している。また、符号17は、上記ネジ10の挿通孔であり、図2(d)(e)のように、下框2bの長手側端部に設けてある略水平に伸びるタッピングホール12にネジ10を挿通して下框2bに共締めされる。また、収納部11を挟んで対向する両側壁の内面側には、収容部11に向かって突出する係止爪部13が設けてある。可動部品8は、その上部に矩形筒型状をなす挿入部を有しており、挿入部を形成する側壁のうちの対向する箇所に縦孔14が各々設けてある。これにより、可動部品8が端部キャップ7の収容部11において所定の範囲を自在に上下動できるが、可動部品8の自重によってさらに下がろうとしたときに、側壁の縦孔14による残壁部14aが端部キャップ7の係止爪部13に係止してそれ以上の移動が規制され、可動部品8が端部キャップ7の収納部11から抜け落ちない構造となる。また、可動部品8の下部は、下枠1bのレール溝15の溝幅よりも僅かに狭い寸法で張り出した溝挿入部16が設けてある。補助下框9は、桟のような形状をなすもので、下框2bと略同じ長さに形成されており、上記の可動部品8により長手側の両端部が固定してあり、可動部品8の上下方向の動きに追従して動作する。また、下框2bが下枠1bに接触することなく、自重で下框2bから下方に移動した可動部品8の溝挿入部16両端のみがレール溝15の溝壁にガイドされながら走行するため、障子2のスムーズな開閉が可能となる(図3(b)参照)。
【0013】
上記した下框2bの作動状態について、図3(a)(b)に基づいて説明する。
障子2を上枠1aの被係止溝4に係止したとき、障子2の下框2bでは、可動部品8(図2(c)参照)が補助下框9とともに自重により下方へ移動して下枠1bのレール溝15に入り込み、可動部品8と補助下框9が障子2の下框2bと下枠1bとの間の隙間を遮ることになる(図3(b)参照)。したがって、障子2見込み方向の視線が遮断されて障子2を挟んだ対向側(図3(a)(b)中の一方側または他方側)が見えなくなると共に、可動部品8がレール溝15に入り込んで、所定の範囲ではあるが障子2の寸法誤差を吸収できることで、枠体1の施工誤差により施工精度が求められる上吊引戸の建て付け調整も容易となる。
【0014】
本発明の上吊引戸は、上記実施形態の他、障子2の下框2bから下枠1bのレール溝15に挿入したときに、障子2下端と下枠1bとの隙間を塞ぐものであれば、可動部品8や補助下框9の大きさや形状などは特に限定するものではない。
【符号の説明】
【0015】
1 枠体
1a 上枠
1b 下枠
2 障子
2b 下框
2c 竪框
5 収納凹溝(溝)
7 端部キャップ
8 可動部品
9 補助下框
10 ネジ
15 レール溝(溝)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体と障子を備え、枠体は、上枠に障子を摺動自在に吊り下げて障子下端を浮かせていると共に、下枠の障子と対向する位置に溝が設けてあり、障子は、下框に下向きの溝を有するものであって、竪框下端に取り付ける端部キャップと、端部キャップに挿入し且つ上下動自在に保持される可動部品と、可動部品に両端を保持されると共に下框の溝に挿入して上下動自在な補助下框を有し、可動部品と補助下框は、自重により下方に移動して下枠の溝に入り込むことを特徴とする上吊引戸。
【請求項2】
端部キャップは、竪框下端と下框を固定するネジで竪框下端に取付けてあることを特徴とする請求項1記載の上吊引戸。

【図1(a)(b)】
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【図2(a)(b)(c)(d)(e)】
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【図3(a)(b)】
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【公開番号】特開2010−174551(P2010−174551A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−20161(P2009−20161)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(000175560)三協立山アルミ株式会社 (529)
【Fターム(参考)】