説明

下水汚泥の処理方法

【課題】
下水処理施設など大量の汚泥を効率よく脱水する場合、従来の溶解設備を用いた溶解方法と同等の溶解性能が得られ、しかも狭い場所でも用いることのできる溶解設備を用いて汚泥を処理する場合の処理方法を提供する。
【解決手段】
分散型高分子凝集剤と希釈水を配管中に供給し前記配管中で接触させ、混合し調製された希釈液を、汚泥処理設備における汚泥凝集混合槽あるいは機械濃縮設備に供給し下水の生物処理から発生した汚泥を凝集処理あるいは濃縮処理する。すなわち汚泥凝集混合槽より凝集した汚泥をベルト濃縮機に移送し濃縮するか、あるいは該希釈液を遠心濃縮機に直接供給し濃縮操作を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水汚泥の処理方法に関するものであり、詳しくは分散型高分子凝集剤と希釈水を配管中に供給し前記配管中で接触させ、混合し調製された希釈液を、汚泥処理設備における濃縮機に供給し凝集操作および濃縮操作をすることを特徴とする下水汚泥の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子凝集剤は通常、溶解設備を用いて200倍以上に希釈して使用するため、溶解設備は比較的大きくなり設置場所などに苦慮していたという背景がある。設置面積が少なく、新に溶解槽を設置する場所がない処理施設に適した分散型有機高分子凝集剤の溶解設備が望まれている。
【0003】
下水、し尿または各種産業排水から発生する汚泥は、色々な原因によって難脱水化している。また、脱水ケーキを最終処分するための乾燥、焼却に要するエネルギーを極力少なくすることが重要になっているため、脱水ケーキの含水率をできるだけ低くすることが重要な課題になっている。この課題を解決するための有効な凝集方法が求められていて、複数の有機高分子凝集剤を組み合わせて使用する多くの提案がなされている。例えば、従来のカチオン系有機高分子凝集剤単独使用に変えて、カチオン系有機高分子凝集剤とアニオン系有機高分子凝集剤の併用(特許文献1あるいは特許文献2)などがそれに当たり、汚泥の種類や脱水機に応じて最適の方法を選択して現在は幅広く用いられている。しかしながら、これらの方法は複数の有機高分子凝集剤を用いるため、今まで1つの溶解設備しかもたない処理施設では、新たに溶解設備を増設する必要があり、増設する場所がない場合は、これらの方法を採用することができなかった。それを解決する方法として、液状有機高分子凝集剤をラインミキサーで効率的に供給する設備は、それに当たるが(特許文献3)、この方法について、設備を再現し検証した結果、ラインミキサーから排出される液状有機高分子凝集剤の溶解液の粘度は完全に溶解したときの70%以下であり、目視でも未溶解なものが確認された。この状態では、所定以上の添加量を要して経済的でないばかりでなく、未溶解のものが配管設備や脱水機などに付着して問題になることが推測される。
【特許文献1】特開平10−249399号公報
【特許文献2】特開2001−286898号公報
【特許文献3】特開平7−328319号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、従来の溶解設備を用いた溶解方法と同等の溶解性能が得られ、しかも狭い場所でも用いることのできる溶解設備よって調整された分散型高分子凝集剤の希釈液を提供し、その希釈液を用い機械的濃縮設備により濃縮操作を経た後、汚泥を脱水するという従来に較べ効率の良い汚泥処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため検討を重ねた結果、本発明者等は以下に述べる発明に到達した。すなわち請求項1の発明は、分散型高分子凝集剤と希釈水を配管中に供給し前記配管中で接触させ、混合し調製された希釈液を、汚泥処理設備における濃縮機に供給し凝集操作および濃縮操作をすることを特徴とする下水汚泥の処理方法である。
【0006】
請求項2の発明は、前記濃縮機が遠心濃縮機であることを特徴とする請求項1に記載の下水汚泥の処理方法である。
【0007】
請求項3の発明は、前記希釈液を汚泥凝集混合槽に供給し、凝集操作を行った後、ベルト濃縮機に移送し濃縮操作をすることを特徴とする請求項1に記載の下水汚泥の処理方法である。
【0008】
請求項4の発明は、前記分散型高分子凝集剤と前記希釈水を配管中で接触させる手段にT字型継手を用い、前記希釈水の流水方向に対し前記分散型高分子凝集剤と前記希釈水が接触する部分から手前10mm以上100mm以下の位置に希釈水の流速を高めるとともに乱流を発生させる機能を有するノズルを設置することを特徴とする請求項1あるいは3に記載の下水汚泥の処理方法である。
【0009】
請求項5の発明は、前記ノズルが、羽型ノズルであることを特徴とする請求項4に記載の下水汚泥の処理方法である。
【0010】
請求項6の発明は、前記分散型高分子凝集剤と前記希釈水が接触する点から手前200mm以内の前記分散型高分子凝集剤の配管に逆止弁を設置することを特徴とする請求項4に記載の下水汚泥の処理方法である。
【0011】
請求項7の発明は、前記分散型高分子凝集剤が、油中水型高分子エマルジョンであることを特徴とする請求項1あるいは3に記載の下水汚泥の処理方法である。
【0012】
請求項8の発明は、前記油中水型エマルジョンに疎水性単量体と、カチオン性単量体、アニオン性単量体、およびポリオキシエチレン鎖を有する単量体から選択される一種あるいは二種との共重合物からなる油溶性高分子を配合することを特徴とする請求項7に記載の下水汚泥の処理方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の下水汚泥の処理方法は、分散型高分子凝集剤と希釈水を配管中に供給し前記配管中で接触させ、混合し調製された希釈液を、汚泥処理設備における濃縮設備に供給し凝集操作および濃縮操作をすることを特徴とする。前記濃縮機凝集混合槽はが遠心濃縮機である場合、ライン中に前記希釈液を注入し、凝集、遠心濃縮を連続して行うことができる。またベルト濃縮機の場合は、前記希釈液を汚泥凝集混合槽に供給し、凝集操作を行った後、濃縮操作を実施する。脱水操作をする前に汚泥を濃縮することにより、脱水効果を向上させ、しかもケーキ含水率も低下させることができる。本発明の処理方法は、下水処理場のように多量の汚泥を処理しなければならない施設では有効な方法と期待される。例えば大都市の汚泥処理センターのような施設では、各下水処理場から送られてくる余剰汚泥と最初沈殿池から発生する汚泥すなわち、混合生汚泥を濃縮し、その後脱水を行う設備に対して有効な方法と考えられる。
【0014】
本発明においては、油中水型エマルジョンを分散型高分子凝集剤として使用し、この油中水型エマルジョンに疎水性単量体と、カチオン性単量体、アニオン性単量体、およびポリオキシエチレン鎖を有する単量体から選択される一種との共重合物からなる油溶性高分子を配合することが好ましい。すなわち前記油溶性高分子を添加することにより、ライン中で希釈水と混合し、希釈液を調製する場合など、溶解性が向上し、未溶解分散粒子の発生を抑えることができる。
【0015】
本発明の効果としては、小規模な設置面積の場所においても分散型高分子凝集剤の希釈液が容易に調製できる。下水処理場などでは高分子凝集剤のよう溶解水に処理水を使用する場合が多い。一般的に処理水は塩濃度が高いなど水道水と比較して水質が悪いため、凝集剤の劣化も早いが、水道水は高価なため使用できない場合がある。本発明のライン溶解の場合、溶解して使用されるまでが短時間のため、劣化はほとんどないと考えられる。よって、バッチ式で溶解して使用する場合とは異なる性能が期待できる。
【0016】
本発明の汚泥処理方法においては、凝集混合槽に希釈液を供給し汚泥を凝集させた後、汚泥の機械的濃縮設備に移送し濃縮操作を行い一旦、タンクなどに貯留する。その後他の汚泥と混合し汚泥を脱水する操作も行うことができる。すなわち下水処理場のように大量の汚泥を効率的に処理する場合、効率よく汚泥を処理することができるという利点がある。下水処理場の余剰汚泥の場合は通常無薬注であるが、汚泥の季節変動などにより凝集状態が悪化した場合に高分子凝集剤を添加し、濃縮設備によって濃縮し、その後濃縮された汚泥に高分子凝集剤を添加し、脱水機に供給し脱水すれば回収率を10%ポイント程度向上
させることができ、その結果電気代を節約することが期待できる。さらに回収率の向上によって返流水の負荷が軽減されることによって、生物処理のブロアーの電気代も軽減することが期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明においては分散型高分子凝集剤を使用するため、希釈液を調製する際に容易にできる。配管中で分散型高分子凝集剤と希釈水を接触、混合させるだけで分散粒子はある程度溶解し、残りの分散粒子はそのまま汚泥脱水機に供給される。汚泥脱水機においては、希釈液と未溶解の分散粒子の混合物が投入され、汚泥と未溶解の分散粒子が混煉され、この際未溶解の分散粒子が溶解していき、その結果新しい凝集フロックも生成し、汚泥の凝集工程において良い影響を与える。すなわち攪拌によっては解された凝集フロックも際凝集するという効果が期待できる。
【0018】
上記基本的な形態を更に確実にするために本発明においては、下記のような手段を追加設置することができる。すなわち本発明で使用する分散型高分子凝集剤の希釈液は、希釈水配管にT字型継ぎ手を接続し、前記希釈水配管と分散型高分子凝集剤配管を前記T字型継ぎ手によって連結し、希釈水の流水方向に対し前記T字型継ぎ手から手前10mm以上、100mm以下の位置に水の流速を高めるとともに乱流を発生させる機能を有するノズルを前記希釈水配管内に設置し、前記分散型高分子凝集剤と前記希釈水を配管中で接触、混合させ、その後ラインミキサーで希釈することによって調製することができる。
【0019】
従来、分散型に限らず粉末型においても高分子凝集剤の希釈液を調製するには、攪拌機付の溶解タンクに溶解水を投入し、攪拌機を回転させながら粗大粒子が発生しないように高分子凝集剤を少しずつ添加し、分散させ一定時間攪拌し希釈液を調製する。この設備は、希釈液を一度に数t〜十数tと調製するため大きなタンクと強力なモーターが必要であり、設置面積もある程度の広さを確保する必要がある。上記設備に較べ本発明のように調整すれば、設置面積と設備費用が大きく削減できる。例えば汚泥を1時間当たり10t供給し脱水操作をする場合、汚泥固形分濃度が4質量%であり、対汚泥固形分1質量%の添加量、0.2質量%で高分子凝集剤を供給しようとすると、12時間分で24tの溶解液を調製する必要がある。0.3質量%溶液でも16t要する。
【0020】
しかし一方、上記と同様の汚泥、添加量、溶解濃度で高分子凝集剤を供給する場合、1分あたりの供給量は0.2質量%で33.3Kg/分であるが、分散型高分子凝集剤と希釈水を混合し、希釈液を調製する本発明の方式では、分散型高分子凝集剤の原液濃度を40質量%とし、比重を1とすると上記流量は167mL/分となり、小型のポンプで十分対応可能である。今希釈水を33.3L/分で供給すると、希釈水配管の内径を1.5cmの場合、流速は18.5m/分となり、分散型高分子凝集剤の原液をこの速度の10分の1一で供給し、流量を上記167mL/分にする。この場合希釈水配管と分散型高分子凝集剤配管をT字型継ぎ手によって連結した場合、分散型高分子凝集剤配管の内径は、3.4mmとなる。従って前記T字型継ぎ手と分散型高分子凝集剤配管とが接する点から200mm以内に逆止弁を設置すれば、配管内に残る原液の量は約1.8ccと僅かである。
【0021】
本発明においては、希釈水の流水方向に対しT字型継ぎ手から手前10mm以上、100mm以下の位置に水の流速を高めるとともに乱流を発生させる機能を有するノズルを前記希釈水配管内に設置し、管内で希釈水に接触した場合、分散型高分子凝集剤の不溶粒子(表面だけ溶解し内部は未溶解した粒子、いわゆるダマあるいはフィッシュアイ)の発生を抑える仕組みを設置することができる。この仕組みにより管内で分散型高分子凝集剤粒子を流速が速く、乱流を起こしている水流の中に分散させ不溶粒子の発生を最小限にするとともに、ラインミキサーでの混合、希釈をより効率的に行うことができる。このような機能を有する具体的な部材としては株式会社ノリタケカンパニーリミテド製などがある。
【0022】
その後、散型高分子凝集剤粒子と希釈水の混合した状態の懸濁液をラインミキサーに通し粒子を溶解させ希釈液を調製する。このラインミキサーは、ポンプに較べ比較的低価格であり、構造が単純で重量も軽く取り扱いも良く使い勝手が非常によく好適である。具体的な例としては冷化工業株式会社製、カルマンミキサーシリーズ−F1,F2,F3,KS2,KT2などである。溶解が一基では不足する場合は、二基直列に連結することもできる。
【0023】
本発明で使用する分散型高分子凝集剤には、油中水型高分子エマルジョンと塩水中高分子分散液がある。このうち塩水中高分子分散液は、硫酸アンモニウムのような多価アニオン塩の水溶液を調製し、この中にカチオン性単量体、あるいは非イオン性単量体からなる混合物を仕込み、また、両性水溶性重合体の場合はアニオン性単量体をしこみ、分散剤として該塩水溶液に可溶な高分子分散剤を共存させ攪拌下、分散重合し合成することができる。
【0024】
次に分散剤について説明する。高分子分散剤としては、非イオン性あるいはカチオン性高分子のいずれでも使用可能であるが、カチオン性高分子のほうがより好ましい。カチオン性高分子としては、アクリル系カチオン性単量体、たとえば、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルやジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどの無機酸や有機酸の塩、あるいは塩化メチルや塩化ベンジルによる四級アンモニウム塩とアクリルアミドとの共重合体である。例えば(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシ2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシ2−ヒドロキシプロピルジメチルベンジルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルアミノプロピルジメチルベンジルアンモニウム塩化物などがあげられ、これら単量体と非イオン性単量体との共重合体でも良い。またジメチルジアリルアンモニウム塩化物重合体などジアリルアミン系重合体でも使用できる。
【0025】
非イオン性高分子の例としては、上記非イオン性単量体の(共)重合体、ポリビニルアルコ−ル、スチレン/無水マレイン酸共重合物あるいはブテン/無水マレイン酸共重合物の完全アミド化物などである。
【0026】
上記イオン性高分子の分子量としては、5、000から300万、好ましくは5万から150万である。また、非イオン性高分子分の分子量としては、1,000〜100万であり、好ましくは1,000〜50万である。これら高分子分散剤の単量体に対する添加量は、1/100〜1/10であり、好ましくは2/100〜5/100である。
【0027】
重合時の温度は、5〜50℃であり、好ましくは15〜40℃である。50℃より高くすると重合の制御は難しく、急激な温度上昇や重合液の塊状化などが起きて、高重合度で安定な分散液は生成しない。
【0028】
一方、油中水型高分子エマルジョンは、イオン性単量体、あるいはイオン性単量体、共重合可能な単量体及びこれら単量体に対し生成した重合体が水溶性を保つモル比で添加した架橋性単量体を含有する単量体混合物を水、少なくとも水と非混和性の炭化水素からなる油状物質、油中水型エマルジョンを形成するに有効な量とHLBを有する少なくとも一種類の界面活性剤を混合し、強攪拌し油中水型エマルジョンを形成させ重合することにより合成する。
【0029】
また分散媒として使用する炭化水素からなる油状物質の例としては、パラフィン類あるいは灯油、軽油、中油などの鉱油、あるいはこれらと実質的に同じ範囲の沸点や粘度などの特性を有する炭化水素系合成油、あるいはこれらの混合物があげられる。含有量としては、油中水型エマルジョン全量に対して20質量%〜50質量%の範囲であり、好ましくは20質量%〜35質量%の範囲である。
【0030】
油中水型エマルジョンを形成するに有効な量とHLBを有する少なくとも一種類の界面活性剤の例としては、HLB1〜8のノニオン性界面活性剤であり、その具体例としては、ソルビタンモノオレ−ト、ソルビタンモノステアレ−ト、ソルビタンモノパルミテ−トなどがあげられる。これら界面活性剤の添加量としては、油中水型エマルジョン全量に対して0.5〜10質量%であり、好ましくは1〜5質量%の範囲である。
【0031】
この場合、高HLB界面活性剤により乳化させ油中水型エマル
ジョンを形成させ重合したエマルジョンは、このままで水となじむので転相剤
を添加する必用がない。これら界面活性剤のHLBは、9〜20のもの、好ま
しくは11〜20のものを使用する。そのような界面活性剤の例としては、カ
チオン性界面活性剤やHLB9〜15のノニオン性界面活性剤であり、ポリオ
キシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエ−テル系、ポリオキシエチレン
アルコールエ−テル系などである。
【0032】
低HLBの界面活性剤により乳化、重合した場合は重合後転相剤と呼ばれる親水性界面化成剤を添加して油の膜で被われたエマルジョン粒子が水になじみ易くし、中の水溶性高分子が溶解しやすくする処理を行い、水で希釈しそれぞれの用途に用いる。親水性界面活性剤の例としては、カチオン性界面活性剤やHLB9〜15のノニオン性界面活性剤であり、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエ−テル系、ポリオキシエチレンアルコールエ−テル系などである。
【0033】
重合は窒素雰囲気下にて、重合開始剤、例えば2、2’−アゾ
ビス(アミジノプロパン)二塩化水素化物または2、2’−アゾビス〔2−
(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕二塩化水素化物のよ
うな水溶性アゾ系重合開始剤、あるいは過硫酸アンモニウムおよび亜硫酸水素
ナトリウム併用のような水溶性レドックス系重合開始剤を添加し、撹拌下ラジ
カル重合を行う。
【0034】
分散型高分子凝集剤を製造する場合、原料となる単量体としては、三級アミノ含有単量体の塩化メチルや塩化ベンジルによる四級化物である(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシ2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシ2−ヒドロキシプロピルジメチルベンジルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルアミノプロピルジメチルベンジルアンモニウム塩化物などである。また一般式(2)で表されるジメチルジアリルアンモニウム系単量も使用可能であり、その例としてジメチルジアリルアンモニウム塩化物、ジアリルメチルベンジルアンモニウム塩化物などである。
【0035】
両性水溶性重合体を製造する場合には、前記カチオン性と非イオン性単量体に加えて、さらに一般式(3)で表されるアニオン性単量体を共重合する。その例としては、スルホン基でもカルボキシル基でもさしつかいなく、両方を併用しても良い。スルホン基含有単量体の例は、ビニルスルホン酸、ビニルベンゼンスルホン酸あるいは2−アクリルアミド2−メチルプロパンスルホン酸などである。またカルボキシル基含有単量体の例は、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸あるいはp−カルボキシスチレンなどである。
【0036】
非イオン性単量体の例としては、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、酢酸ビニル、アクリロニトリル、アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、ジアセトンアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、アクリロイルモルホリン、アクリロイルピペラジンなどがあげられる。
【0037】
本発明で使用する油中水型高分子エマルジョンは、架橋性単量体あるいは熱架橋性単量体を共存させ架橋性水溶性高分子とすることもできる。そのような架橋性単量体の例としてメチレンビスアクリルアミドやエチレングルコ−ルジ(メタ)アクリレ−トなどの複数の重合性二重結合を有する単量体、あるいはN、N−ジメチルアクリルアミド単量体などの熱架橋性単量体があげられる。添加量としては単量体混合物全モル数に対し0.0005〜0.1モル%であり、好ましくは0.0010〜0.05%であり、更に好ましくは0.0015〜0.03%である。また、重合度を調節するためイソプロピルアルコールを対単量体0.1〜5質量%など併用すると効果的である。
【0038】
本発明で使用する油中水型高分子エマルジョンは、液粘性があまり高いと汚泥中に分散しにくくなり好ましくない。そのため油中水型高分子エマルジョンは、数10〜10,000mPa・sであることが好ましいが、さらに好ましくは50〜5,000mPa・sである。また油中水型高分子エマルジョンを構成するカチオン性及び/又は両性水溶性重合体の分子量としては、300万〜2000万であることが好ましいが、さらに好ましくは500万〜1000万である。
【0039】
しかし汚泥は一般的に高濃度であり、従って分散液を汚泥中に効率的に混合することが重要な要素となる。そのため油中水型高分子エマルジョン添加時、強力攪拌すれば良好な凝集状態を得ることができるが、脱水現場では常にこの条件を得ることができるとは限らない。本発明ではこの点を改良するため検討を加え、前記油中水型エマルジョンに疎水性単量体と、カチオン性単量体、アニオン性単量体、およびポリオキシエチレン鎖を有する単量体から選択される一種あるいは二種との共重合物からなる油溶性高分子を油中水型高分子エマルジョンに添加しておけば、汚泥への分散性およびエマルジョンの溶解性が改善できることが分かった。
【0040】
以下油溶性高分子に関して説明する。本発明で使用する油溶性高分子は、疎水性単量体とカチオン性基を有する単量体、アニオン性基を有する単量体、または分子中にポリオキシエチレン鎖を有する単量体から選択される一種あるいは二種との共重合によって製造することができる。疎水性単量体は、スチレンやα−メチルスチレンなど芳香環やアルキル基の付加した芳香環を有する単量体やα−オレフィンなど炭素数6〜20の芳香環あるいは脂肪族ビニル化合物である。また炭素数4〜18のアルキル基を持つアルキル(メタ)アクリレートも使用することができる。
【0041】
アルキル(メタ)アクリレートの具体例としては以下のものがある。すなわちアクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリルなどである。
【0042】
カチオン性基を有する単量体は、ジアルキルアミノアルキルアクリルアミドあるいはジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートなどである。ジアルキルアミノアルキルアクリルアミドの具体例としては、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジエチルアミノプロピルアクリルアミドなどである。またジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレートなどがあげられる。
【0043】
アニオン性基を有する単量体の例としては、メタクリル酸あるいはアクリル酸である。また分子中にポリオキシエチレン鎖を有する単量体の例としては、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレートであり、ポリオキシエチレンの重合度として3〜20である。
【0044】
これら疎水性単量体とカチオン性基を有する単量体、アニオン性基を有する単量体、あるいは分子中にポリオキシエチレン鎖を有する単量体との共重合の組み合わせのうち、最も好ましいのは疎水性単量体としてアクリル酸2−エチルヘキシルあるいはアクリル酸ラウリル、カチオン性単量体としてジメチルアミノエチルメタクリレート、アニオン性基を有する単量体としてメタクリル酸あるいはアクリル酸、ポリオキシエチレン鎖を有する単量体としてポリオキシエチレン(メタ)アクリレートであり、ポリオキシエチレンの重合度として4〜10であると最も好ましい。
【0045】
油溶性高分子中の疎水性単量体のモル比は、好ましくは60〜95モル%であり、更に好ましくは80〜95モル%である。一方カチオン性基を有する単量体、アニオン性基を有する単量体、ポリオキシエチレン鎖を有する単量体のモル比は、好ましくは5〜40モル%であり、更に好ましくは5〜20モル%である。
【0046】
油溶性高分子は前記単量体混合物を調整後、通常の重合法によって行なうことが出来る。重合法としては溶液重合、塊状重合、懸濁重合などがあげられる。好ましい方法は重合操作、取り扱いが容易な溶液重合である。溶液重合の場合、単量体濃度は質量%で20〜80%、好ましくは40〜60%で重合する。その場合の重合溶媒は非極性の有機溶媒が好ましい。すなわち芳香族や脂肪族炭化水素であり、特に好ましいのは油中水型エマルジョン重合に分散媒として使用する有機溶媒と同じ有機溶媒を使用すると便利であり、沸点190°Cないし230°Cのパラフィンあるいはイソパラフィンが好ましい。
【0047】
本発明の油溶性高分子の添加法は、任意に使用することができる。すなわち油溶性高分子を重合後、油中水型高分子エマルジョンに適切な量を加え分散する。あるいは特にカチオン性油溶性高分子を添加する場合は、単量体油中水型分散液に予めカチオン性油溶性高分子中のアミノ基に比例した量の酸を添加しておき、重合後カチオン性油溶性高分子を添加することもできる。好ましくは予め酸を添加しておき、重合後カチオン性油溶性高分子を添加する。その他の油溶性高分子を使用する場合は、特に制限はない。
【0048】
上記のように添加する酸は、カチオン性油溶性高分子のアミノ基を中和、解離させカチオン性油溶性高分子の分散性を増強させ、分散安定剤としての機能を向上させるためである。またもう一つの目的として重合後の油中水型分散液pHを調整し水溶性高分子の劣化防止などである。このような目的で使用する酸は、水相内水溶性高分子や分散液形態保持に悪影響を及ぼすことがなければどのようなものを用いても良い。具体的には、こはく酸、酢酸、クエン酸、アジピン酸などがあげられる。
【0049】
添加する酸の量は、カチオン性油溶性高分子の分子中アミノ基に対し、重合前の油中水型単量体分散液あるいは重合後の油中水型高分子分散液に30モル%以上添加する。また好ましくは30モル%以上、1000モル%以下であり、更に好ましくは50モル%以上、500モル%以下である。
【0050】
本発明で使用する油溶性高分子は、油中水型高分子エマルジョンを水により希釈する場合、水とのなじみが向上し油溶性高分子無添加時より希釈液を早く調製することができる。エマルジョン粒子表面には油の膜が存在し、水とは交じり難く水溶性高分子は、簡単には溶解していかない。これを助けるのがいわゆる転相剤であるが、これら転相剤は、一般的にはHLBの高い、すなわち親水性界面活性剤であり、低分子の化合物である。親水性界面活性剤は油とは混じらず、エマルジョン粒子表面から剥離していく油の膜を水中に分散させていくのを助ける。本発明で使用する油溶性高分子は、油の中にも溶解していくのでエマルジョン粒子表面の油の膜中にも存在すると推定される。そのため水で希釈する場合は、希釈液が早く調製でき、また希釈せず分散液の状態で汚泥などに添加する場合も汚泥中の水分によって速やかに希釈、溶解していき、その結果優れた凝集効果を発現するものと思われる。
【0051】
ここで汚泥の濃縮機に関して説明をする。現状ではベルト濃縮機と遠心濃縮機の2機種が主流であり、脱水機と同じく、ベルト濃縮機の場合は凝集混合槽で汚泥と凝集剤を凝集混合させてからベルト濃縮機へ供給し濃縮後、他の汚泥と混合し脱水操作を実施する。また遠心濃縮機の場合は直接濃縮機に供給され濃縮機内で混合される。この様な機械濃縮設備は下水処理場のように大量の汚泥を効率的に処理する場合、次の汚泥脱水を効率よく処理することが利点であり他業種の処理施設では一般的ではない。ベルト濃縮機の場合は混合生汚泥、余剰汚泥など汚泥の種類にかかわらず汚泥凝集混合槽で汚泥と凝集剤を混合させてから濃縮機に供給する。凝集剤添加量は対汚泥固形分0.2〜0.4%程度である。遠心濃縮機の場合、凝集剤を添加する場合は対汚泥固形分0.03〜0.2%程度であり、直接遠心濃縮機に供給する。
【0052】
遠心濃縮機の場合は、混合生汚泥には凝集剤を通常0.1%程度添加するが余剰汚泥は、通常凝集剤無薬注でよい。下水処理場の余剰汚泥を無薬注の条件により濃縮設備によって濃縮し、その後濃縮された汚泥に高分子凝集剤を添加し、脱水機に供給し脱水すれば回収率を10%ポイント程度向上させることが期待でき、その結果電気代を節約することが期待できる。さらに回収率の向上によって返流水の負荷が軽減されることによって、生物処理のブロアーの電気代も軽減することが期待できる。通常、余剰汚泥の遠心濃縮設備には薬注設備はないが、本発明のライン溶解によって調製された分散型高分子凝集剤の希釈液を使用すれば、場所もとらないため簡単に設置することも可能である。
【0053】
(実施例)以下、実施例および比較例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に制約されるものではない。
【0054】
(合成例1)攪拌機および温度制御装置を備えた反応槽に沸点190°Cないし230°Cのイソパラフィン24.75gにジメチルアミノエチルメタクリレート(以下DMMと略記)5.48g(30モル%)、ラウリルアクリレート(炭素数12、以下LAと略記)19.52g(70モル%)、3−メルカプト1,2−プロパンジオール0.25g、ジメチル−2,2−アゾビスイソブチレート(和光純薬製V−601)0.5g(対単量体2質量%)を仕込み溶解させた。単量体溶液の温度を70〜73℃に保ち、窒素置換を30分行い、重合反応を開始させた。反応温度を71±2℃で5時間重合させ反応を完結させた。ゲルパーミエーションクラマトグラフィー法による重量平均分子量は8100であった。これを試作−1とする。
【0055】
(合成例2)攪拌機および温度制御装置を備えた反応槽に沸点190°Cないし230°Cのイソパラフィン24.75gにポリオキシエチレンメタクリレート(ポリオキシエチレンの重合度6)13.6g(35モル%)、アクリル酸2−エチルヘキシル18.60g(65モル%)、3−メルカプト1,2−プロパンジオール0.16g、ジメチル−2,2−アゾビスイソブチレート(和光純薬製V−601)0.5g(対単量体2質量%)を仕込み溶解させた。単量体溶液の温度を70〜73℃に保ち、窒素置換を30分行い、重合反応を開始させた。反応温度を71±2℃で5時間重合させ反応を完結させた。ゲルパーミエーションクラマトグラフィー法による重量平均分子量は7500であった。これを試作−2とする。
【0056】
(合成例3)攪拌機および温度制御装置を備えた反応槽に沸点190°Cないし230°Cのイソパラフィン24.75gにメタクリル酸11.3g(35モル%)、アクリル酸2−エチルヘキシル44.8g(65モル%)、3−メルカプト1,2−プロパンジオール0.28g、ジメチル−2,2−アゾビスイソブチレート(和光純薬製V−601)0.5g(対単量体2質量%)を仕込み溶解させた。単量体溶液の温度を70〜73℃に保ち、窒素置換を30分行い、重合反応を開始させた。反応温度を71±2℃で5時間重合させ反応を完結させた。ゲルパーミエーションクラマトグラフィー法による重量平均分子量は6200であった。これを試作−3とする。
【0057】
(合成例4)攪拌機および温度制御装置を備えた反応槽に沸点190°Cないし230°Cのイソパラフィン24.75gにポリオキシエチレンメタクリレート(ポリオキシエチレンの重合度6)6.3g(20モル%)、アクリル酸2−エチルヘキシル24.4g(75モル%)、ジメチルアミノエチルメタクリレート1.4g(5モル%)、3−メルカプト1,2−プロパンジオール0.16g、ジメチル−2,2−アゾビスイソブチレート(和光純薬製V−601)0.5g(対単量体2質量%)を仕込み溶解させた。単量体溶液の温度を70〜73℃に保ち、窒素置換を30分行い、重合反応を開始させた。反応温度を71±2℃で5時間重合させ反応を完結させた。ゲルパーミエーションクラマトグラフィー法による重量平均分子量は8500であった。これを試作−4とする。
【0058】
合成例1〜4で作成した油溶性高分子試作−1〜油溶性高分子試作−4の各々を表1に記載する油中水型高分子エマルジョンに、液総量に対し1質量%添加し、水溶性高分子濃度40質量%の試験用エマルジョン凝集剤EM−1〜EM−3を調整した。また油溶性高分子試作−1〜油溶性高分子試作−4を添加していない油中水型高分子エマルジョンEM−5も調製した。さらに油溶性高分子を添加していない塩水中分散液タイプDI−1も調製した。その結果を表1に示す。
【0059】
(表1)

DMQ:アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物
DMC:メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物
AAM:アクリルアミド、AAC:アクリル酸、
MBA:メチレンビスアクリルアミド(単量体総量に対する質量%)
EM:油中水型エマルジョン、DI:塩水中分散液
エマルジョン凝集剤粘度:mPa・s、
【実施例1】
【0060】
図1は本発明の希釈・濃縮・脱水システムである。希釈水供給ポンプ2を稼働し、図に示していない水槽より希釈水配管1を通して20L/minの速度で希釈水を供給し、図に示していない分散型高分子凝集剤原液タンクより配管8を通して分散型高分子凝集剤原液供給ポンプ9を稼働し、油中水型エマルジョンEM−1を100mL/minの速度で供給した。希釈水は希釈水流量調節バルブ4、乱流を発生させる機能を有するノズル5を通過し、T字型継ぎ手6において、逆止弁10を通過した分散型高分子凝集剤原液と合流し、混合・希釈が行われ、ラインミキサー7においてほぼ希釈が行われ、汚泥凝集混合槽12へ供給される。汚泥は、図に示していない汚泥貯留槽より配管11を通して汚泥凝集混合槽12へ供給され、攪拌・混合され配管14を通し図に示していない汚泥脱水機へ移送され脱水処理が実施される。上記の条件で希釈水と分散型高分子凝集剤原液を供給した場合の希釈倍率は200倍である。バッチ式高分子凝集剤希釈槽13は、比較のため用いられ、図1の希釈システムフローに示すプロペラ回転によるバッチ式高分子凝集剤希釈槽13により1時間攪拌し希釈液を調整することができる。
【0061】
次に上記希釈システムにより調製した希釈液を直接汚泥処理装置に供給し汚泥脱水試験を実施した。下水混合生汚泥(余剰汚泥と最初沈殿汚泥の混合物、pH7.54、ss分11,000mg/L)を用い、11m/hrで上記汚泥を攪拌機の付いた汚泥凝集混合槽に供給する。また水道水により40L/minの速度で希釈水を供給し、原液タンクより油中水型エマルジョンEM−1を200mL/minの速度で供給することにより、原液40質量%を0.2質量%に希釈するよう各ポンプを設定した。その後ラインミキサーより排出される油中水型エマルジョンEM−1希釈液を183L/hrで前記汚泥凝集混合槽に供給した(対ss分0.3質量%の添加量に相当)。この凝集汚泥を図に示していないベルト濃縮機によって濃縮操作を行い、濃縮汚泥貯槽に移送した。濃縮後の汚泥は30,740mg/Lであった。同様にEM−3およびDI−1に関しても同様な試験を実施した。結果を表2に示す。
【0062】
(比較例1)
図1の希釈システムフローに示す攪拌機の付いた高分子凝集剤希釈槽に5mの水道水を仕込み、油中水型エマルジョンEM−1を2L/minの速度で12.5分間供給し0.2質量%希釈液を調製した。1時間攪拌し希釈液を調製した後、実施例1で使用したものと同じ下水混合生汚泥を用い、11m/hrで上記汚泥を汚泥凝集混合槽に供給し、前記0.2質量%希釈液を183L/hrで前記汚泥凝集混合槽に供給した(対ss分0.3質量%の添加量に相当)。この凝集汚泥を図に示していないベルト型濃縮機によって濃縮操作を行い、濃縮汚泥貯槽に移送した。濃縮後の汚泥は29,300mg/Lであった。
同様にEM−3およびDI−1に関しても同様な試験を実施した。結果を表2に示す。
【0063】
1時間攪拌し希釈液を調製したため、高分子凝集剤の物性がやや劣化したと推定され、ライン中で希釈しそのまま汚泥処理に使用した希釈液に較べ凝集効果が低下し沈殿分離が十分進まず濃縮が低下していることが分かる。
【0064】
(表2)

脱離水中のSS分:mg/L、ケーキ含水率:質量%、薬注量:対ss質量%
【実施例2】
【0065】
図2のような希釈・濃縮・脱水システムを用い汚泥処理試験を行った。希釈水供給ポンプ2を稼働し、図に示していない水槽より希釈水配管1を通して20L/minの速度で希釈水を供給し、図に示していない分散型高分子凝集剤原液タンクより配管8を通して分散型高分子凝集剤原液供給ポンプ9を稼働し、油中水型エマルジョンEM−1を100mL/minの速度で供給した。希釈水は希釈水流量調節バルブ4、乱流を発生させる機能を有するノズル5を通過し、T字型継ぎ手6において、逆止弁10を通過した分散型高分子凝集剤原液と合流し、混合・希釈が行われ、ラインミキサー7においてほぼ希釈が行われ、
遠心濃縮機15へ供給される。汚泥供給11が行われ、凝集、濃縮操作が実施される。
【0066】
実施例1と同様な操作で行う。下水余剰汚泥(pH6.48、ss分10,300mg/L)を用い、11m/hrで上記汚泥を遠心濃縮機15に供給する。また水槽より40L/minの速度で希釈水を供給し、原液タンクより油中水型エマルジョンEM−2を200mL/minの速度で供給しすることにより、原液40質量%を0.19質量%に希釈するように各ポンプを設定した。前記遠心濃縮機15にラインミキサーより排出される油中水型エマルジョンEM−2希釈液を30.5L/hrで前記汚泥凝集混合槽に供給した(対ss分0.05質量%の添加量に相当)。供給し濃縮操作を実施し濃縮汚泥貯槽に移送した。濃縮後の汚泥濃度は、28,800mg/Lであった。同様にEM−4およびEM−5に関しても同様な試験を実施した。結果を表3に示す。
【0067】
(比較例2)
図1の希釈システムフローに示す攪拌機の付いた高分子凝集剤希釈槽に5mの水道水を仕込み、油中水型エマルジョンEM−2を2L/minの速度で12.5分間供給し0.19質量%希釈液を調製した。希釈液を調製した後、実施例1で使用したものと同じ下水混合生汚泥を用い、11m/hrで上記汚泥を遠心濃縮機15に供給し、ラインミキサーより排出される油中水型エマルジョンEM−2希釈液を30.5L/hrで前記汚泥凝集混合槽に供給し(対ss分0.05質量%の添加量に相当)、濃縮操作を実施し濃縮汚泥貯槽に移送した。濃縮後の汚泥濃度は、27,800mg/Lであった。同様にEM−4およびEM−5に関しても同様な試験を実施した。結果を表3に示す。
【0068】
1時間攪拌し希釈液を調製したため、高分子凝集剤の物性がやや劣化したと推定され、ライン中で希釈しそのまま汚泥処理に使用した希釈液に較べ凝集効果が低下し沈殿分離が十分進まず濃縮が低下していることが分かる。
【0069】
(表3)


脱離水中のSS分:mg/L、ケーキ含水率:質量%、薬注量:対ss質量%
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】分散型高分子凝集剤の希釈液を調製し、汚泥凝集槽に汚泥と希釈液を供給し、その後ベルト濃縮機による濃縮、汚泥脱水を実施するためのシステム図である。
【図2】分散型高分子凝集剤の希釈液を調製し、遠心濃縮機に汚泥と希釈液を供給し、その後機械的濃縮、汚泥脱水を実施するためのシステム図である。
【符号の説明】
【0071】
1 希釈水
2 希釈水供給ポンプ
3 流量計2
4 希釈水流量調節バルブ
5 乱流を発生させる機能を有するノズル
6 T字型継ぎ手
7 ラインミキサー
8 分散型高分子凝集剤
9 分散型高分子凝集剤供給ポンプ
10 逆止弁
11 汚泥の供給
12 汚泥凝集混合槽
13 バッチ式高分子凝集剤希釈槽
14 凝集処理後、ベルト濃縮機、その後汚泥脱水機へ移送
15 遠心濃縮機、
16 汚泥脱水機へ移送

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散型高分子凝集剤と希釈水を配管に供給し前記配管中で接触させ、混合し調製された希釈液を、汚泥処理設備における濃縮機に供給し凝集操作および濃縮操作をすることを特徴とする下水汚泥の処理方法。
【請求項2】
前記濃縮機が遠心濃縮機であることを特徴とする請求項1に記載の下水汚泥の処理方法。
【請求項3】
前記希釈液を汚泥凝集混合槽に供給し、凝集操作を行った後、ベルト濃縮機に移送し濃縮操作をすることを特徴とする請求項1に記載の下水汚泥の処理方法。
【請求項4】
前記分散型高分子凝集剤と前記希釈水を配管中で接触させる手段にT字型継手
を用い、前記希釈水の流水方向に対し前記分散型高分子凝集剤と前記希釈水が接触する部分から手前10mm以上100mm以下の位置に希釈水の流速を高めるとともに乱流を発生させる機能を有するノズルを設置することを特徴とする請求項1あるいは3に記載の下水汚泥の処理方法。
【請求項5】
前記ノズルが、羽型ノズルであることを特徴とする請求項4に記載の下水汚泥の処理方法。
【請求項6】
前記分散型高分子凝集剤と前記希釈水が接触する点から手前200mm以内の前記分散型高分子凝集剤の配管に逆止弁を設置することを特徴とする請求項4に記載の下水汚泥の処理方法。
【請求項7】
前記分散型高分子凝集剤が、油中水型高分子エマルジョンであることを特徴とする請求項1あるいは3に記載の下水汚泥の処理方法。
【請求項8】
前記油中水型エマルジョンに疎水性単量体と、カチオン性単量体、アニオン性単量体、およびポリオキシエチレン鎖を有する単量体から選択される一種あるいは二種との共重合物からなる油溶性高分子を配合することを特徴とする請求項7に記載の下水汚泥の処理方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−167651(P2011−167651A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−35495(P2010−35495)
【出願日】平成22年2月22日(2010.2.22)
【出願人】(000142148)ハイモ株式会社 (151)
【Fターム(参考)】