説明

不可視印刷物及びその識別方法

【課題】 本発明は、400nmの可視光領域から近赤外領域において画像の視認が困難な不可視印刷物と、その不可視印刷物の画像を、フーリエ変換赤外分光光度計(以下「FTIR」という。)のイメージング法により識別する識別方法に関するものである。
【解決手段】 (A)基材の表層面に形成された印刷インキの量と基材の中に浸透した印刷インキの量を合計したインキ量を、スペクトルの信号として示した吸光度に対し、(B)基材及び印刷インキにおける赤外吸収のない領域をノイズとして示した吸光度が、A(Aは5以上の整数):B(Bは1)を満たした不可視印刷物である。また、その不可視印刷物に対し、中赤外領域の印刷インキ中の樹脂に帰属される特定波長の吸収ピークによるケミカルイメージングを行い、ケミカルイメージング像を取得し、取得したケミカルイメージング像を識別する識別方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、400nmの可視光領域から近赤外領域において画像の視認が困難な不可視印刷物と、その不可視印刷物の画像を、フーリエ変換赤外分光光度計(以下「FTIR」という。)のケミカルイメージング法により識別する識別方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
不可視印刷物の一例として、紫外線又は赤外線のいずれか一方により励起されて所定波長の光を発する顔料を含有する透明インキを用いて、顔料が粗の状態となるように印刷した後、1)印刷により形成された部分と基材との段差が反映されない被覆状に、透明のオーバープリント印刷を行って不可視印刷物を得たり、2)印刷がなされた基材の表面に透明の樹脂フィルムを熱圧着して不可視印刷物を得たりする技術が提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0003】
また、反射光では視認できず、透過光によって視認可能な印刷物の一例として、用紙における紙層の厚薄によって形成した「すき入れ画像」と、透明の印刷によって形成した「疑似すき入れ画像」とを組み合わせた印刷物を作製し、作製した印刷物に対し、FTIRの透過イメージングモードで、IRスペクトルを二次元領域において取得し、取得したIRスペクトルから、2500cm−1〜1500cm−1の波数領域において用紙の持つ官能基由来のピーク波数におけるケミカルイメージングを行ったすき入れ画像と、2,500cm−1〜1,500cm−1の波数領域において印刷した透明インキの持つ官能基由来の吸収ピークによるケミカルイメージングを行った疑似すき入れ画像を取得し、取得したすき入れ画像と疑似すき入れ画像の識別を行う方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平07−195819号公報
【特許文献2】特開平09−30101号公報
【特許文献3】特開2007−327881号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載されているように、透明インキを用いて印刷を行った後に、透明のオーバープリント印刷を行って不可視印刷物にしたり、透明の樹脂フィルムを熱圧着して不可視印刷物にした場合、その部分が光沢を帯びてしまい、完全に不可視の状態となる印刷物にすることが困難であった。
【0006】
また、特許文献3に記載されているように、すき入れ画像と疑似すき入れ画像を組み合わせた用紙の場合、反射光では識別困難であっても、透過光では「すかし」として視認されるものであり、これもまた完全に不可視の状態となる印刷物ではない。
【0007】
本発明は、上記課題の解決を目的とするものであり、印刷インキを一定の膜厚以下で印刷した可視光下において画像の視認が困難な不可視印刷物と、その不可視印刷物の画像を、ケミカルイメージング法を用いて、中赤外領域の印刷インキ中の樹脂に帰属される特定波長の吸収ピークによるケミカルイメージングを行い、中赤外領域において画像を識別する方法である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明における不可視印刷物は、基材の所定部分に、透明な印刷インキによって印刷領域を形成した不可視印刷物であって、印刷インキは、基材の持つ官能基由来の特定波数における吸収ピークとは異なる吸収ピークを持ち、かつ、中赤外領域における特定波数に吸収ピークを持つ顔料を含有し、印刷領域は、(A)基材の表層面に形成された印刷インキの量と基材の中に浸透した印刷インキの量を合計したインキ量を、スペクトルの信号として示した吸光度に対し、(B)基材及び印刷インキにおける赤外吸収のない領域をノイズとして示した吸光度が、A(Aは5以上の整数):B(Bは1)を満たし、印刷領域は、可視光領域における反射又は透過で不可視であり、中赤外領域においてのみ、印刷インキの持つ官能基由来のピーク波数に対するケミカルイメージングにより取得したケミカルイメージング像が視認可能であることを特徴とする。
【0009】
本発明における不可視印刷物の識別方法は、前述の不可視印刷物の識別方法であって、不可視印刷物の識別方法であって、フーリエ変換型赤外分光光度計における分解能、積算回数及びイメージピクセルサイズの条件設定を、不可視印刷物に使用した基材及び印刷インキを元に、フーリエ変換型赤外分光光度計が備えている選定条件の中から選定することで設定し、設定した条件の下、不可視印刷物に対して、透過イメージングモード又は反射イメージングモードによりケミカルイメージングを行うことで、FTIRスペクトルを取得し、取得した前記FTIRスペクトルから、印刷インキの持つ官能基由来のピーク波数に対するケミカルイメージングにより第1のケミカルイメージング像を取得し、取得した第1のケミカルイメージング像とあらかじめ記憶してある正規のケミカルイメージングとを比較して識別を行うことを特徴とする。
【0010】
本発明における不可視印刷物の識別方法は、不可視印刷物の識別方法が、取得したFTIRスペクトルから、基材の持つ官能基由来のピーク波数に対する第2のケミカルイメージング像を取得し、取得した第2のケミカルイメージング像とあらかじめ記憶してある正規のケミカルイメージングとを比較して識別を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明における不可視印刷物は、可視光下において、反射で視認できないことに加え透過でも視認できない完全な不可視が実現可能な印刷物である。また、この不可視印刷物は、中赤外領域の特定波数においてのみ識別が可能であるため、偽造防止効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明における不可視印刷物をオフセットで印刷した場合の可視画像を示す。図2(a)は、本発明における不可視印刷物の可視光領域から近赤外領域までの分光反射率曲線を示し、(b)は、本発明における不可視印刷物のFTIRスペクトルを示す。図3は、本発明における不可視印刷物をオフセット印刷で作製した場合の1,730cm−1におけるケミカルイメージング像を示す。図4は、本発明における不可視印刷物をオフセット印刷で作製した場合の2,135cm−1におけるケミカルイメージング像を示す。図5は、本発明における不可視印刷物をインクジェット印刷で作製した場合の可視画像を示す。図6は、本発明における不可視印刷物をインクジェット印刷で作製した場合の1,665cm−1におけるケミカルイメージング像を示す。図7は、本発明における不可視印刷物をインクジェット印刷で作製した場合の2,135cm−1のケミカルイメージング像を示す。図8は、ケミカルイメージング法における赤外スペクトルを得る原理を示す。
【0013】
本発明における不可視印刷物に使用する基材は、例えば、コート紙、上質紙、PPC用紙のほか、プラスチックフィルム等、印刷インキを受容できる基材であれば良い。
【0014】
本発明における不可視印刷物に使用する印刷インキは、印刷物が不可視である必要があるため、透明である必要がある。印刷インキは、例えば、パラフィン系ポリマー、アルキド樹脂、単官能アクリレート、多官能アクリレート、脂環族飽和炭化水素樹脂等を単独で、又は複数混合し使用する。
【0015】
選定する印刷インキの種類は、使用する基材のインキ受容性に依存する。印刷インキと基材との関係は、印刷インキの持つ官能基由来の中赤外領域における特定波数の吸収ピークが、基材の持つ官能基由来の特定波数における吸収ピークと異なっている必要がある。これは、基材の持つ官能基由来の特定波数における吸収ピークが、印刷インキの持つ官能基由来の中赤外領域における特定波数の吸収ピークと重なる場合、特定波数において、印刷インキの吸収ピークと基材の吸収ピークとが識別できないためである。
【0016】
印刷膜厚は、選定した基材と選定した印刷インキに依存する。つまり、基材に印刷された印刷領域が、可視光領域から近赤外光領域においては視認することができず、中赤外領域において印刷インキ由来の特定波数における吸収ピークのケミカルイメージング像で視認することができるように、印刷膜厚の調整を行う。
【0017】
また、基材に印刷する印刷領域の形状は、文字や図形などのデザイン的なものでも良く、単なる点(ドット)のようなものでも良い。また、文字や図形などのデザインを構成する要素は、網点でも万線でもベタでも良く、何ら限定されるものではない。
【0018】
印刷方式によっては、低粘度樹脂、水又はアルコールの溶媒に溶解させて粘度を1,000cps以下に調整する必要がある。これは、1,000cps以上の粘度を有する印刷インキは、インクジェット印刷方式の場合、ノズル内にインキがつまるため、印刷不可能である。
【0019】
印刷物の識別装置として、面情報を得ることができるイメージング分析機能を備えたフーリエ変換型赤外分光光度計(FTIR)を用いる。この装置は、印刷物の一点ずつのIRスペクトルを取得する装置ではなく、印刷物を面情報としてケミカルイメージングを行い、FTIRスペクトルを取得することが可能な装置である。
【0020】
フーリエ変換型赤外分光光度計(FTIR)における分析条件は、分解能は64cm−1以上、積算は2回以上、イメージピクセルサイズは25μm×25μm以上の条件で測定することが望ましい。これは、分解能及び積算回数が、中赤外領域の特定波数でデザインとして視認できる最低の分析条件となる。
【0021】
また、FTIRによるケミカルイメージングの方法には、透過法と反射法がある。これは、ケミカルイメージングを行う際に、分析の対象となる物に対して照射した赤外線領域の光を、透過で検出するか、又は反射で検出するかの違いがある。本発明における不可視印刷物を分析する場合、透過法又は反射法のどちらの方法を用いても、ほぼ同じFTIRスペクトルを得ることができるため、どちらの方法を用いても良い。
【0022】
前述の分析条件により、FTIRスペクトルを取得する。取得したFTIRスペクトルから印刷インキの成分に由来する吸収ピークによる第1のケミカルイメージング像を取得し、更に用紙のセルロースに由来する吸収ピークによる第2のケミカルイメージング像を取得する。
【0023】
取得した第1のケミカルイメージング像から、印刷したデザインを視認する。デザインを視認するためには、印刷インキの持つ特定吸収ピークおける吸光度に対するバックグラウンドにおける吸光度のSN比(信号対ノイズ比)が、5:1以上である必要がある。この信号対ノイズ比は、大きければ大きいほど好ましく、現在市販されているフーリエ変換型赤外分光光度計(FTIR)の場合、50000:1まで可能である。なお、今後、高性能なフーリエ変換型赤外分光光度計(FTIR)が開発された場合、その装置が持つ最大の信号対ノイズ比まで分析可能となる。
【0024】
印刷インキの持つ特定吸収ピークとは、印刷インキの持つ官能基由来のピーク波数のことであり、例えば、1,650cm−1から1,850cm−1の吸収帯に検出されるカルボニル吸収、2,000cm−1から2,200cm−1の吸収帯で検出されるC=N、C=C吸収、1,500cm−1から1,650cm−1の吸収帯で検出されるアミン、アミド、イミン帰属のN−H変角振動等が挙げられる。
【0025】
また、印刷インキの持つ特定吸収ピークおける吸光度とは、基材に対して印刷インキのインキ量をスペクトルの信号として示すものである。インキのインキ量とは、基材上に印刷インキによって印刷した印刷物に対し、基材の表層面に形成された印刷領域における印刷インキの量と基材の中に浸透した印刷インキの量を合計したインキ量のことである。
【0026】
また、バックグラウンドの吸光度とは、基材及び印刷インキにおける赤外吸収のない領域をノイズとして示すものである。
【0027】
また、SN比とは、印刷インキのインキ量における信号に対して、バックグラウンドにおけるノイズを比で表したものである。
【0028】
印刷インキの持つ特定吸収ピークおける吸光度に対するバックグラウンドにおける吸光度のSN比(信号対ノイズ比)が、5:1を下回ってしまう場合、例えば、4:1などになった場合、信号とノイズの切り分けが困難となり、取得したケミカルイメージング像からデザインを認識することが困難となる。積算を複数回行うことでSN比が高くなるため、ケミカルイメージング像は、鮮明になり、識別性能が向上する。しかし、積算を複数回行うと測定時間を要することとなるため、測定時間と識別性能とのバランスを考慮すると、SN比は、32:1以上であることが更に望ましい。
【0029】
さらに、印刷インキの持つ官能基由来のピーク波数に対するケミカルイメージングにより取得した前記第1のケミカルイメージング像と、あらかじめ記憶してある正規のケミカルイメージング像とを比較して識別を行うことが可能である。また、基材の持つ官能基由来のピーク波数に対するケミカルイメージングにより前記第2のケミカルイメージング像とあらかじめ記憶してある正規のケミカルイメージング像とをそれぞれ比較して識別を行うことが可能である。
【0030】
図8に示すように、ケミカルイメージング法におけるFTIRスペクトルを得る原理は、試料(3)に赤外線(4)を照射し、透過した赤外光を検出器(5)にてピクセル単位で測定し、FTIRスペクトルを得る方法である。検出器(5)で測定する方法には、1ピクセル(6)ずつ検出する方法、広範囲のピクセルのスペクトルを一度に測定する方法、複数のピクセルの測定とステージの動きをリンクさせてイメージング測定を行う方法が挙げられる。
【0031】
いずれの方法でも測定が可能であるが、本発明では、複数のピクセルの測定とステージの動きをリンクさせてケミカルイメージングを行う方法を用いた。
【0032】
以下に、本発明の実施例について、図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0033】
オフセット印刷により作製した不可視印刷物とその識別について説明する。
【0034】
再生紙PPC用紙に、DIC製NewChampionマットOPニスを用いて、彩紋模様の印刷デザインを施した樹脂凸版ローラで、20枚の連続印刷を行った。印刷膜厚は、刷り出し時を10μmに調整した。
【0035】
さらに、再生紙PPC用紙に印刷した印刷領域においては、(A)再生紙PPC用紙の表層面に形成されたNewChampionマットOPニスの量と基材の中に浸透したNewChampionマットOPニスの量を合計したインキ量を、スペクトルの信号として示した吸光度に対し、(B)再生紙PPC用紙及びNewChampionマットOPニスにおける赤外吸収のない領域をノイズとして示した吸光度は、A:B=32:1である。
【0036】
図1に、オフセット印刷により得られた不可視印刷物の可視画像を示す。肉眼では、用紙に何も印刷されていないように見える。図2(a)に、この不可視印刷物の画線部及び非画線部における可視光領域から近赤外領域までの分光反射率曲線を示す。分光反射率は、ほぼ一致しており、可視光から近赤外領域までの画線部と非画線部の分光反射率の差異は、ほとんどなかった。
【0037】
オフセット印刷物の識別方法として、得られた不可視印刷物をフーリエ変換型赤外分光光度計(パーキンエルマー社製)において、反射イメージングモード及び分析条件は、分解能16cm−1、積算回数2回、イメージピクセルサイズ25μm×25μmで分析を行い、図2(b)に示すFTIRスペクトルを取得した。
【0038】
取得したFTIRスペクトルから、印刷インキの樹脂成分に由来する1,730cm−1付近のC=O伸縮振動の吸収ピークによるケミカルイメージング像を図3に示す。その結果、可視光下では確認できなかった彩紋模様のデザインを表示することができた。さらに、取得した図3のケミカルイメージングと、あらかじめ記憶してある正規のケミカルイメージングとを比較させることで識別を行った。
【0039】
また、取得したFTIRスペクトルから、用紙のセルロースに由来する2,135cm−1付近のCH基の吸収ピークによるケミカルイメージング像を図4に示す。その結果、彩紋模様を確認することができなかった。
【実施例2】
【0040】
インクジェット印刷により作製した不可視印刷物とその識別について説明する。
【0041】
ネオペンチルグリコールヒドロキシピバリン酸エステルジアクリレート(乳白色低粘度樹脂)をエプソン社製インクジェットプリンタ用カートリッジのインキタンクに詰め替え、エプソン社製インクジェットプリンタPX−V630を用いてPPC用紙に印刷を行った。
【0042】
さらに、PPC用紙に印刷した印刷領域においては、(A)PPC用紙の表層面に形成されたネオペンチルグリコールヒドロキシピバリン酸エステルジアクリレートの量と、PPC用紙の中に浸透したネオペンチルグリコールヒドロキシピバリン酸エステルジアクリレートの量を合計したインキ量を、スペクトルの信号として示した吸光度に対し、(B)PPC用紙及びネオペンチルグリコールヒドロキシピバリン酸エステルジアクリレートにおける赤外吸収のない領域をノイズとして示した吸光度は、A:B=32:1である。そのため、図5に示すように、可視画像では、オフセット印刷と同様に、印刷画線を確認することができない。
【0043】
インクジェット印刷物の識別方法として、得られた不可視印刷物を高速フーリエ変換型赤外分光光度計(パーキンエルマー社製)において、オフセット印刷物の識別と同様に、反射イメージングモード及び分析条件は、分解能16cm−1、積算回数2回、イメージピクセルサイズ25μm×25μmで分析を行い、FTIRスペクトルを取得した。
【0044】
取得したFTIRスペクトルから、印刷インキの成分に由来する1,665cm−1付近のアミド1型C=O伸縮振動の吸収ピークによるケミカルイメージング像を図6に示す。その結果、可視光下では確認できなかった文字「製」を表示することができた。さらに、取得した図6のケミカルイメージングと、あらかじめ記憶してある正規のケミカルイメージングとを比較させることで識別を行った。
【0045】
また、FTIRスペクトルから、用紙のセルロースに由来する2,135cm−1付近のCH基の吸収ピークによるケミカルイメージング像を図7に示す。その結果、文字「製」を確認することができなかった。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明における不可視印刷物をオフセットで印刷した場合の可視画像を示す図である。
【図2】(a)は、本発明における不可視印刷物の可視光領域から近赤外領域までの分光反射率曲線を示し、(b)は、本発明における不可視印刷物の中赤外領域のFTIRスペクトルを示す図である。
【図3】本発明における不可視印刷物をオフセットで印刷した場合の1730cm−1のケミカルイメージング像を示す図である。
【図4】本発明における不可視印刷物をオフセットで印刷した場合の2135cm−1のケミカルイメージング像を示す図である。
【図5】本発明における不可視印刷物をインクジェットで印刷した場合の可視画像を示す図である。
【図6】本発明における不可視印刷物をインクジェットで印刷した場合の1665cm−1のケミカルイメージング像を示す図である。
【図7】本発明における不可視印刷物をインクジェットで印刷した場合の2135cm−1のケミカルイメージング像を示す図である。
【図8】ケミカルイメージング法における赤外スペクトルを得る原理を示す図である。
【符号の説明】
【0047】
1 試料
2 赤外線
3 検出器
4 1ピクセル検出素子
5 イメージング測定面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の所定部分に、透明な印刷インキによって印刷領域を形成した不可視印刷物であって、
前記印刷インキは、前記基材の持つ官能基由来の特定波数における吸収ピークとは異なる吸収ピークを持ち、かつ、中赤外領域における特定波数に吸収ピークを持つ顔料を含有し、
前記印刷領域は、(A)前記基材の表層面に形成された前記印刷インキの量と前記基材の中に浸透した前記印刷インキの量を合計したインキ量を、スペクトルの信号として示した吸光度に対し、(B)前記基材及び前記印刷インキにおける赤外吸収のない領域をノイズとして示した吸光度が、A(Aは5以上の整数):B(Bは1)を満たし、
前記印刷領域は、可視光領域における反射又は透過で不可視であり、中赤外領域においてのみ、前記印刷インキの持つ官能基由来のピーク波数に対するケミカルイメージングにより取得したケミカルイメージング像が視認可能であることを特徴とする不可視印刷物。
【請求項2】
請求項1記載の不可視印刷物の識別方法であって、
フーリエ変換型赤外分光光度計における分解能、積算回数及びイメージピクセルサイズの条件設定を、前記不可視印刷物に使用した基材及び印刷インキを元に、前記フーリエ変換型赤外分光光度計が備えている選定条件の中から選定することで設定し、
前記設定した条件のもと、前記不可視印刷物に対して、透過イメージングモード又は反射イメージングモードによりケミカルイメージングを行うことで、FTIRスペクトルを取得し、
取得した前記FTIRスペクトルから、前記印刷インキの持つ官能基由来のピーク波数に対するケミカルイメージングにより第1のケミカルイメージング像を取得し、
取得した前記第1のケミカルイメージング像とあらかじめ記憶してある正規のケミカルイメージングとを比較して識別を行うことを特徴とする不可視印刷物の識別方法。
【請求項3】
前記不可視印刷物の識別方法が、取得した前記FTIRスペクトルから、前記基材の持つ官能基由来のピーク波数に対する第2のケミカルイメージング像を取得し、
取得した前記第2のケミカルイメージング像とあらかじめ記憶してある正規のケミカルイメージングとを比較して識別を行うことを特徴とする請求項2記載の不可視印刷物の識別方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−285844(P2009−285844A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−137497(P2008−137497)
【出願日】平成20年5月27日(2008.5.27)
【出願人】(303017679)独立行政法人 国立印刷局 (471)
【Fターム(参考)】