説明

不均一系ロジウム金属触媒

下式(I)(式中、R〜R、X、A、m、n及びpは、本出願で定義されるものである)の繰り返しサブユニットを有する新規なポリマーロジウム触媒を説明し、そして更に、化学合成変換におけるそれらの触媒並びに前記触媒のための前駆体を使用する方法も説明する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、不均一系ロジウム金属触媒の分野、及び化学合成における、特に不斉化学合成におけるそれらの使用の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
不斉触媒反応は、化学の重要な分野であり、学術的な研究所では活発に研究されており、農芸化学、 香味料、芳香剤、及び医薬品の産業では多くの出願がなされている。例えば、米国食品医薬品局によって2006年に承認された小分子薬剤の75%は、単一のエナンチオマーであった。しばしば、キラルな医薬品のうちの一方のエナンチオマーは、望ましい生理活性を有し、それに対して、もう一方は、活性が低いか又は有毒である。例えば、ナプロキセンは、広く使われている抗炎症剤である。その(S)−エナンチオマーは、(R)−エナンチオマーに比べて30倍有効である。而して、(S)−エナンチオマーの低用量は、所望の効果にとって充分であり、それにより、中毒性副作用が減る。生物系におけるエナンチオマー間の活性のこの違いは、不斉合成におけるアカデミック且つ産業的な研究の背後にある主要な原動力である。エナンチオマー富化化学薬品を調製するための通常の一般的な方法としては、ラセミ体の光学分割、天然に利用可能なキラル化合物の転換、キラリティ移動反応、及び不斉触媒反応が挙げられる。これらのうちで、不斉触媒反応は、ソースキラリティ(source chirality)を増幅するための最も効率的な方法の一つである。更に、触媒反応は、大規模な化学生産に伴う廃棄物及び副産物を減らす。
【0003】
不斉触媒反応において通常問題になることは、触媒が、高コストであり且つ空気感受性である点である。更に、典型的な不斉触媒は、工業に関する、特に医薬品に関する健康及び安全基準を満たすために、製品から取り除かれなければならない毒性の金属及び配位子を含む7,8。触媒のコスト及び製品汚染を低減するための最も直接的な方法は、濾過によって又は流通反応装置を使用することによって、製品混合物から容易に除去される再使用可能な触媒を開発することである。
【0004】
これらの目的に向かって、単純濾過によって単離でき、そして再使用できる固定化均一系触媒を開発するために、多くの研究が行われてきた。多種多様なアプローチが文書化され、そして、関心のある読者は、次の事柄:すなわち、キラル改質表面、カプセル化10、静電的相互作用11、二相性又はイオン性液体系12、及び共有結合つなぎ止め(covalent tethering)13,14の再検討を行っている。これらの方法のうち、触媒活性部位の完全性に対して最も侵食的でないものは、触媒におけるキラル配位子の固体担体への共有結合である15。金属による別の結合は、触媒活性部位周辺の配位環境に大きな影響を及ぼす。均一系触媒を共有結合で固定化するために使用される方法としては、ビニルアレーンとビニル置換配位子とのラジカル共重合16−19、アルコールの又はアミンと酸誘導体との縮合20−24、カップリング反応25,26、及びアミンとイソシアネートとの間の重合27,28が挙げられる。
【0005】
水素化反応のための固定化均一系ルテニウム触媒は、ルテニウム含有モノマーとスペーサーモノマーシクロオクテン(COE)との間の交互重合反応を用いて引き起こされる開環メタセシス重合(ROMP)で金属含有モノマーを使用して、近時、作製された29,30。より近時の努力では、この水素化法は、(R)−5,5´−ジノリミド BINAP(BINAP=2,2´−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1´−ビナフチル)の調製を介してBINAPの使用まで拡張された30
【0006】
エニンの分子内環化異性化は、ルテニウム31、パラジウム32、白金32,33、ニッケル34、イリジウム35,36、金33,37、及びロジウム38を含む様々な遷移金属によって触媒される。1,6−エニンのロジウムを触媒とした不斉環化異性化反応は、最初に、2000年にZhangのグループによって報告された39。前記文献の触媒は、1,2−ジクロロエチレン中において[(COD)RhCl](COD=1,5−シクロオクタジエン)とBINAP(Rh1原子当たり1当量)とを反応させ、次いで、AgSbF(Cl1原子当たり2当量)を加えることによって、最も良好にその場で生成される40。この反応は、テトラヒドロフラン40、ラクタム41、ラクトン42、シクロペンタン43、及びシクロペンタノン43を含む様々な製品を調製するために使用されてきた。本発明者が認識している限りにおいては、不均一型反応用に触媒が首尾よく固定されたという文献の実施例は知らない。均一実施例は、活性剤として20モル%のAgSbFと一緒に、非実用的に高い充填量の、通常は10モル%の[Rh(BINAP)]を必要とする。Rh、BINAP及びAgSbFの高コストと毒性は、この反応の商業的な応用を妨げている44
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
新規の、再使用可能な、回転率の高いポリマー系触媒骨格を、開発した。この触媒は、エニンの不斉環化異性化にとって特に有用である。詳しくは、5、5−ジノリミドBINAP配位子を使用してロジウム触媒を調製した。前記ロジウム触媒を、交互開環メタセシス重合(ROMP)を用いて、シクロオクテンと共重合させて固定化触媒系を製造するユニークなことには、触媒活性部位を架橋した塩化物架橋を含む触媒は、結果として三次元骨格を生成する。この架橋は、例えば銀塩で処理することにより塩化物を除去することによって開かれるよりコンパクトな骨格を構築する。得られた固定化触媒は、エニン基質の分子内環化異性化を引き起こすことができ、例えば、7回を超える運転(ほとんどの運転で91%を超える収率であった)で、総計で600回を超えるターンオーバーを実現した。
【0008】
而して、本出願は、下式I:
【0009】
【化1】


(式中、
、R、R及びRは、フェニル及びC4−8シクロアルキルから独立に選択され、後者2つの基は置換されていないか、又は、可能ならば、C1−6アルキル、OC1−6アルキル及びハロから独立に選択される1、2、3、4、若しくは5つの基によって置換されている;
【0010】
【化2】


は、ビナフチル基又はビナフチル基の誘導体であり、それぞれは、置換されていないか、又は、C1−6アルキル、OC1−6アルキル及びハロから独立に選択される1つ若しくは複数の基によって置換されている;
、R、R及びRは、H、C1−6アルキル、OC1−6アルキル及びハロから独立に選択されるか、又はR及びR及び/若しくはR及びRは、=Oであるか、又はR及びRのうちの1つは、R及びRのうちの1つに連結されて、それらが結合される原子と、それらを接続している原子とが一緒になって、単環式、二環式又は三環式の環系を形成し、各メチレン単位におけるR、R、R及びRは、同じか又は異なっており、そして、適用できる場合は、
【0011】
【化3】


は、この結合に結合された二重結合がシス又はトランス配置にあることを意味している;
m及びnは、独立に、0〜10の整数(0と10を含む)である;
Pは、1〜14の整数(1と14を含む)である;そして
Xは、アニオン配位子である)の繰り返しサブユニットを含むポリマー触媒を含む。
【0012】
本出願は、式Iのポリマーの前駆体として有用な、並びに金属で触媒される有機合成反応のための触媒として有用な下式II
【0013】
【化4】


(式中、R、R、R、R、X及び
【0014】
【化5】


は、上記の式Iで定義したものである;
【0015】
【化6】


は、少なくとも1つの二重結合を含み、且つ、置換されていないか又はC1−6アルキル、OC1−6アルキル、ハロ及び=Oから独立に選択される1つ若しくは複数の基によって置換されている単環式、二環式又は三環式の基である)の化合物も含む。
【0016】
本出願は、有機合成反応を行うための条件下で、有機合成反応のための基質を、上で定義した式Iの繰り返しサブユニットを含む触媒及び/又は上で定義した式IIの化合物を含む触媒と接触させる工程、及び前記有機合成反応から1種又は複数種の生成物を任意に単離する工程を含む、金属で触媒される有機合成反応を行う方法も含む。本出願の実施態様では、有機合成反応は、金属触媒の存在又は使用から利益を得るあらゆる反応、例えば、限定するものではないが、環化異性化、ヒドロシリル化、水素化、共役付加及びクロスカップリングである。本出願の実施態様では、有機合成変換は、不斉又はキラル合成反応である(すなわち、エナンチオマーをもう一方のエナンチオマーよりも多く提供する)。
【0017】
本出願の実施態様では、有機合成反応は、分子内環化異性化反応であり、従って、少なくとも1つのエニン基を分子内環化異性化するのに適する条件下、アニオン抽出剤の存在下で、少なくとも1つのエニン基を有する1種又は複数種の化合物を、上で定義した式Iの繰り返しサブユニットを含む触媒及び/又は上で定義した式IIの化合物を含む触媒と接触させる工程を含む、エニンを分子内環化異性化するための方法も提供する。
【0018】
別の実施態様では、有機合成反応は、溶媒を用いて又は用いずに、フロースルー反応器で行う。本出願の他の特徴及び利点は、下記の詳細な説明により明らかとなるだろう。しかしながら、本出願の範囲内にある様々な変更や修正は、この詳細な説明により、当業者には明らかとなるので、本出願の好ましい実施態様を示している、詳細な説明及び特定の実施例は、ただ例示としてのみ提供される、ことを理解すべきである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
i.定義
本明細書で使用される用語「C1−qアルキル」は、1〜「q」個の炭素原子を含む直鎖及び/又は分岐鎖の飽和アルキル基を意味しており、(nのアイデンティティーに応じて)メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチル、イソブチル、t−ブチル、2,2−ジメチルブチル、n−ペンチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、n−ヘキシルなどを含み、その場合、変数qは、アルキル基における炭素原子の最大数を示している整数である。
【0020】
本明細書で使用される用語「C4−8シクロアルキル」とは、4〜8個の炭素原子を含む単環式飽和炭素環基を意味しており、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロペンチル及びシクロオクチルを含む。
【0021】
本明細書で使用される用語「ハロ」とは、クロロ、ブロモ、ヨード又はフルオロを意味している。
【0022】
本明細書で使用される用語「単環式、二環式又は三環式の環系」とは、単環、縮合環、スピロ環二環、三環及び架橋環を含む炭素含有環系を指している。指定される場合、環中の炭素は、ヘテロ原子で置換又は交換し得る。
【0023】
本明細書で使用される用語「に連結された(linked to)」とは、参照している基が、直接結合であるリンカー基を介して、又は、指定される場合、鎖中の炭素がヘテロ原子で置換若しくは交換され得る又はアルキレン鎖を介して、結合されていることを意味している。
【0024】
式I、II及びIIIの化合物は、少なくとも1つの非対称中心を有する。これらの化合物が2つ以上の非対称中心を有する場合、それらは、ジアステレオマーとして存在し得る。あらゆる割合のすべての前記異性体及びそれらの混合物が、本出願の範囲内に包含されることを理解すべきである。本出願の化合物の立体化学構造は、本明細書に記載されているあらゆる所定の化合物に関して示すことができるが、そのような化合物は、交互立体化学構造を有する対応化合物を特定の量(例えば30%未満、20%未満、10%未満又は5%未満)含むこともできる、ことを理解すべきである。
【0025】
用語「適当な」、例えば「適当なアニオン配位子」又は「適当な反応条件」とは、特定の基又は条件の選択は、実行される特定の合成操作及び分子の同一性に左右されると考えられるが、前記の選択は、当業者の技術の範囲内で充分に対処される、ことを意味している。本明細書において記載されるすべてのプロセス工程は、所望の生成物を提供するのに適当な条件下で行われるべきである。例えば反応溶媒、反応時間、反応温度、反応圧力、反応比を含むすべての反応条件は、反応を無水又は不活性の雰囲気下で行うべきであろうとなかろうと、所望の生成物の収率を最適化するように変化させることができ、そしてそれは、当業者の技術の範囲内である、ことを当業者は理解するだろう。
【0026】
場合によっては、本明細書で概説される化学は、例えば保護基を使用することによって、置換基として結合される反応基の副反応を防止するように変更されなければならないかもしれない。それは、例えば"Protective Groups in Organic Chemistry" McOmie, J.F.W. Ed., Plenum Press, 1973 and in Greene, T.W. and Wuts, P.G.M., "Protective Groups in Organic Synthesis", John Wiley & Sons, 3rd Edition, 1999において記載されている従来の保護基によって達成され得る。
【0027】
本明細書で使用される用語「保護性基(protective group)」又は「保護基(protecting group)」又は「PG」などは、分子の反応性部分における副反応を防止するために分子の反応性部分を保護又はマスクする化学部分を指している。操作又は反応が完了した後に、保護基は、分子を破壊しない又は分解しない条件下で取り除かれる。多くの従来の保護基は、当業において公知であり、例えば"Protective Groups in Organic Chemistry" McOmie, J.F.W. Ed. , Plenum Press, 1973 and in Greene, T.W. and Wuts, P.G.M., "Protective Groups in Organic Synthesis", John Wiley & Sons, 3rd Edition, 1999に記載されている。保護基としては、Boc、Ts、Ms、TBDMS、TBDPS、Tf、Bn、アリル、Fmoc、C1−16アシル、シリルなどが挙げられるが、それらに限定されない。
【0028】
本明細書で使用される「分子内環化異性化」という用語は、同じ分子中の2つ以上の官能基が、互いに反応して、1つ以上の二重結合又は三重結合の異性化により環状構造を形成する反応を指している。
【0029】
本明細書で使用される用語「異性化」とは、同じ原子を正確に有してはいるが、しかし原子が再配置されている別の分子へと1つの分子が変換されるプロセスを指している。
【0030】
本出願の範囲の理解において、「含む(comprising)」という用語及びその派生語は、本明細書において使用される場合、記載されている特徴、要素、成分、基、整数、及び/又は工程の存在を明示し、しかし他の記載されていない特徴、要素、成分、基、整数、及び/又は工程の存在を排除しない、オープンエンドな用語であることが意図される。前記のことは、同様の意味を有する単語、例えば、「含む(including)」、「有する」という用語及びそれらの派生語にも適用される。最後に、程度の用語、例えば、「実質的に」、「約」及び「およそ」は、本明細書において使用される場合、最終結果が顕著に変更されないような、修飾される用語の合理的な量の偏差を意味している。程度のこれらの用語は、この偏差が、それが修飾する単語の意味を否定しない場合、修飾される用語の少なくとも±5%の偏差を含むと解釈されるべきである。
【0031】
特定のセクションで記載される定義及び実施態様は、本明細書で記載されている他の実施態様に適用可能であるように意図され、そのために、定義及び実施態様は当業者によって理解されるだろうように適当である。
ii.化合物
【0032】
本出願は、下式I:
【0033】
【化7】


(式中、
、R、R及びRは、フェニル及びC4−8シクロアルキルから独立に選択され、後者2つの基は置換されていないか、又は、可能ならば、C1−6アルキル、OC1−6アルキル及びハロから独立に選択される1、2、3、4、若しくは5つの基によって置換されている;
【0034】
【化8】


は、ビナフチル基又はビナフチル基の誘導体であり、それぞれは、置換されていないか、又は、C1−6アルキル、OC1−6アルキル及びハロから独立に選択される一つ若しくは複数の基によって置換されている;
、R、R及びRは、H、C1−6アルキル、OC1−6アルキル及びハロから独立に選択されるか、又はR及びR及び/若しくはR及びRは、=Oであるか、又はR及びRのうちの1つは、R及びRのうちの1つに連結されて、それらが結合される原子と、それらを接続している原子とが一緒になって、単環式、二環式又は三環式の環系を形成し、各メチレン単位におけるR、R、R及びRは、同じか又は異なっており、そして、適用できる場合、
【0035】
【化9】


は、この結合に結合された二重結合がシス又はトランス配置にあることを意味している;
m及びnは、独立に、0〜10の整数(0と10を含む)である;
pは、1〜14の整数(1と14を含む)である;そして
Xは、アニオン配位子である)の繰り返しサブユニットを含む新規ポリマー触媒を含む。
【0036】
本出願の実施態様では、R、R、R及びRは、フェニル及びシクロヘキシルから独立に選択され、後者2つの基は置換されていないか、又は、C1−4アルキル、OC1−4アルキル、クロロ及びフルオロから独立に選択される1、2、3、4、若しくは5つの基によって置換されている。本出願の更なる実施態様では、R、R、R及びRは、フェニル及びシクロヘキシルから独立に選択され、後者2つの基は置換されていないか、又は、CH、OCH、クロロ及びフルオロから独立に選択される1、2、3、4、若しくは5つの基によって置換されている。本出願の更なる実施態様では、R、R、R及びRは、同じである。更なる実施態様では、R、R、R及びRは、それぞれ、置換されていないか、又は、C1−4アルキル、OC1−4アルキル、クロロ及びフルオロから独立に選択される1、2、3、4、若しくは5つの基によって置換されているフェニルである。別の実施態様では、R、R、R及びRは、それぞれ、非置換フェニルである。
【0037】
本出願の別の実施態様では、R、R、R及びRは、H、C1−4アルキル、OC1−4アルキル及びハロから独立に選択されるか、又はR及びR及び/若しくはR及びRは、=Oであるか、又はR及びRのうちの1つは、R及びRのうちの1つに連結されて、それらが結合される原子と、それらを接続している原子とが一緒になって、単環式若しくは二環式の環系を形成し、そして、各メチレン単位におけるR、R、R及びRは、同じか又は異なっている。
【0038】
別の実施態様では、R、R、R及びR、m及びnは、それらが結合される原子と、そしてそれらを接続している原子と一緒になって:
【0039】
【化10】


から選択される基を形成する。
【0040】
別の実施態様では、R、R、R及びR、m及びnは、それらが結合される原子と、そしてそれらを接続している原子とが一緒になって
【0041】
【化11】


を形成する。
【0042】
本出願の別の実施態様では、
【0043】
【化12】


は、ビナフチル基又はビナフチル基の誘導体であり、それぞれは、置換されていないか、又は、C1−4アルキル、OC1−4アルキル、クロロ及びフルオロから独立に選択される1、2、3、4、5若しくは6つの基によって置換されている。別の実施態様では、
【0044】
【化13】


は、1,1´−ビナフチル、5,5´,6,6´,7,7´,8,8´−オクタヒドロ−1,1´−ビナフチル又は12,13,14,15,16,17,12´,13´,14´,15´,16´,17´−ドデカヒドロ−11H,11´H−[4,4´]ビ[シクロペンタ[a]フェナントレニル]であり、それぞれ、置換されていないか、又はC1−4アルキル、OC1−4アルキル、クロロ及びフルオロから独立に選択される1、2、3、4、5若しくは6つの基によって置換されている。本出願の特定の実施態様では、
【0045】
【化14】


は光学的に活性であり、そして、式Iの化合物は、
【0046】
【化15】


の実質的に純粋な光学異性体を含む。
【0047】
構造
【0048】
【化16】


を有する配位子は、当業において公知であり、一般的にはBINAP及びその様々な誘導体として略記される。本出願の範囲内であるBINAPの公知の誘導体のうちのいくつかとしては、2,2´−ビス−(ジフェニルホスフィノ)−1,1´−ビナフチル(略号:BINAP)の各光学異性体;BINAPのナフタレン環が部分的に還元されているBINAP誘導体、例えば2,2´−ビス(ジフェニルホスフィノ)−5,5´,6,6´,7,7´,8,8´−オクタヒドロ−1,1´−ビナフチル(略称:HBINAP)の各光学異性体;BINAPのナフタレン環が置換基(単数又は複数)を有しているBINAP誘導体、例えば2,2´−ビス−(ジフェニルホスフィノ)−6,6´−ジメチル−1,1´−ビナフチル(略称:6MeBINAP)の各光学異性体;BINAPの燐原子上のベンゼン環が低級アルキル基(単数又は複数)によって置換されているBINAP誘導体、例えば2,2´−ビス−(ジ−p−トリルホスフィノ)−1,1´−ビナフチル(略称:Tol−BINAP)の各光学異性体、2,2´−ビス[ビス(3−メチルフェニル)ホスフィノ]−1,1´−ビナフチルの各光学異性体、2,2´−ビス[ビス(3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフィノ]−1,1´−ビナフチルの各光学異性体、2,2´−ビス[ビス(4−tert−ブチルフェニル)ホスフィノ]−1,1´−ビナフチルの各光学異性体、2,2´−ビス[ビス(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィノ]−1,1´−ビナフチル(略称:Xyl−BINAP)の各光学異性体、そして、2,2´−ビス[ビス(3,5−ジメチル−4−メトキシフェニル)ホスフィノ]−1,1´−ビナフチル(略称:Dmanyl−BINAP)の各光学異性体;BINAPのナフタレン環が置換基を有していて、そして、BINAPの燐原子上のベンゼン環が1〜5つのC1−6アルキル置換基で置換されているBINAP誘導体、例えば2,2´−ビス[ビス−(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィノ]−6,6´−ジメチル−1,1´−ビナフチル(略称:Xyl−6MeBINAP)の各光学異性体:及び、BINAPのナフタレン環が飽和炭化水素環と縮合しているBINAP誘導体、例えば3,3´−ビス−(ジフェニルホスファニル)−13,13´−ジメチル−12,13,14,15,16,17,12´,13´,14´,15´,16´,17´−ドデカヒドロ−11H,11´H−[4,4]ビ[シクロペンタ[a]フェナントレニル]の各光学異性体が挙げられるが、それらに限定されない。
【0049】
ポリマー触媒が、以下に示してある式I:
【0050】
【化17】


(式中、
R1、R2、R3及びR4は、フェニル及びC4−8シクロアルキルから独立に選択され、後者2つの基は置換されていないか、又は、可能ならば、C1−6アルキル、OC1−6アルキル及びハロから独立に選択される1、2、3、4、若しくは5つの基によって置換されている;
pは、1〜14の整数(1と14を含む)である;
Xは、アニオン配位子である)の繰り返しサブユニット、又はそれらの交互光学異性体を含むことは、本出願の実施態様である。
【0051】
本出願の実施態様では、pは、2、3、4、5、6、7、8又は9である。更なる実施態様では、pは、5、6、7、8又は9である。
【0052】
本出願の実施態様では、Xは、ハリド、好適にはクロリドである。
【0053】
本出願の別の実施態様では、式Iの繰り返しサブユニットは、以下の相対的な立体化学構造:
【0054】
【化18】


(式中、
、R、R及びRは、フェニル及びC4−8シクロアルキルから独立に選択され、後者2つの基は置換されていないか、又は、可能ならば、C1−6アルキル、OC1−6アルキル及びハロから独立に選択される1、2、3、4、若しくは5つの基によって置換されている;
pは、1〜14の整数(1と14を含む)である;そして
Xは、アニオン配位子である)を有するか又はその交互光学異性体を有する。
【0055】
本出願の実施態様では、式Iの繰り返しサブユニットを含む触媒は、シクロオレフィンと、式II(式中、
【0056】
【化19】


、X、R、R、R及びRは式Iで定義したものである)の触媒前駆体との交互ROMP組み立てを使用することにより調製する。前記式IIの触媒前駆体は、適当な有機溶媒、例えば塩化メチレン中において、約20℃〜約40℃、好適には約30℃の温度で、約10分〜約12時間、好適には約1時間、式IIIの化合物(式中、
【0057】
【化20】


、R、R、R及びRは式Iで定義したものであり、そして
【0058】
【化21】


は、少なくとも1つの二重結合を含み、且つ、置換されていないか又はC1−6アルキル、OC1−6アルキル、ハロ及び=Oから独立に選択される1つ若しくは複数の基によって置換されている単環式、二環式又は三環式の基である)と、例えば、式IV(式中、Xは式Iで定義したものであり、そして、Lは、任意の好適な置換可能な配位子、例えばCである)の試薬とを反応させることによって、調製する(スキーム1参照)。式IIIの化合物は、例えば、当業において従来記載されている手順で、調製する30
【0059】
【化22】

スキーム1
【0060】
本出願の実施態様では、式II(式中、
【0061】
【化23】


、X、R、R、R及びRは式Iで定義したものであり、そして
【0062】
【化24】


は、少なくとも1つの二重結合を含み、且つ、置換されていないか又はC1−6アルキル、OC1−6アルキル、ハロ及び=Oから独立に選択される1つ若しくは複数の基によって置換されている単環式、二環式又は三環式の基である)の前駆体の交互ROMP組み立てを、適当な有機溶媒、例えば塩化メチレン中において、約20℃〜約60℃、好適には約40℃の温度で、スペーサーとしてシクロオレフィン、例えばシクロオクテン)を使用して、そしてROMP触媒、例えばグラブス触媒(例えばRuCl(PCyCHPh)、シュロック触媒又は任意の他のメタセシス触媒(例えば、Bielawski,C.W. and Grubbs R.H. Prog. Polym. Sci. 2007, 32: 1−29に記載されている前記触媒)を使用して、約1時間〜約48時間、好適には約28時間行う。ある実施態様では、式IIの化合物:シクロオレフィン:触媒のモル比は、約10:120:1である。
【0063】
式IIの化合物とシクロオレフィンの交互ROMP組み立てにより、ケトン水素化のために従来合成されたRu骨格とは異なる三次元触媒有機骨格が生成される30。詳しくは、Iにおけるアニオン配位子橋は、得られる骨格のの触媒活性部位を架橋することが予期される。この架橋は、例えば銀塩との反応によりアニオン配位子を取り除くことによって開かれる更にコンパクトな骨格を作り出す。得られる開かれる骨格は、依然としてRh中心をペアで保持し、各Rh中心は他の中心の近傍に存在する。この近傍にあることにより、二金属協同作用を誘導することができると考えられ、更に重要なことには、運転の間に触媒の活性部位を保護する組み込み法(built−in method)が提供される。バッチ式反応における固体触媒の再利用に共通する課題は、生成物混合物を触媒から濾別し、そして新鮮な反応混合物を再導入する際に、触媒を運転の間に保護しなければならないという点である。一般的に、所定の反応のための所望の高い活性を有する触媒は、それ自体不安定でもあり、また、濾過工程及び再導入工程を生き残れない。溶液中では、下式
【0064】
【化25】


の錯体は、Rh中心に対してη−アリール結合を形成することによって二量化することが知られている45。これらのη−アリール結合は、基質が存在していない場合、Rh中心を安定化させ、そして、運転間では、骨格の[Rh(BINAP)]中心を安定化させる。ηアリール結合は、基質の存在下又は触媒を再生させるための配位性溶媒の存在下で、壊れることが予期される。
【0065】
本出願は、式Iのポリマーへの前駆体として有用な、下式IIの化合物も含む。
【0066】
【化26】

【0067】
上記式中、R、R、R、R、X及び
【0068】
【化27】


は、上記式Iで定義したものであり、そして
【0069】
【化28】


は、少なくとも1つの二重結合を含み、且つ、置換されていないか又はC1−6アルキル、OC1−6アルキル、ハロ及び=Oから独立に選択される1つ若しくは複数の基によって置換されている単環式、二環式又は三環式の基である。
【0070】
本出願の実施態様では、
【0071】
【化29】


は以下から選択する:
【0072】
【化30】

【0073】
更なる実施態様では、
【0074】
【化31】



【0075】
【化32】


である。
【0076】
本出願の別の実施態様では、
【0077】
【化33】



【0078】
【化34】


であるとき、式IIの化合物は、以下の相対的立体化学構造を有する:
【0079】
【化35】

【0080】
式IIの化合物は、以下により詳細に記載されている金属で触媒される有機合成反応のための触媒としても有用でもある。
iii.方法
【0081】
本出願は、有機合成反応を行うための条件下で、有機合成反応のための基質を、上で定義した式Iの繰り返しサブユニットを含む触媒及び/又は上で定義した式IIの化合物を含む触媒と接触させる工程、及び前記有機合成反応から1種又は複数種の生成物を任意に単離する工程を含む、金属で触媒される有機合成反応を行う方法も含む。本出願の実施態様では、有機合成反応は、金属触媒の存在又は使用から利益を得るあらゆる反応、例えば、限定するものではないが、環化異性化、ヒドロシリル化、水素化、共役付加及びクロスカップリングである。本出願の実施態様では、有機合成変換は、不斉又はキラル合成反応である(すなわち、エナンチオマーを、もう一方のエナンチオマーよりも多く与える)。
【0082】
本出願の実施態様では、有機合成反応は、分子内環化異性化反応であり、従って、少なくとも1つのエニン基を分子内環化異性化するのに適する条件下、アニオン抽出剤の存在下で、少なくとも1つのエニン基を有する1種又は複数種の化合物を、上で定義した式Iの繰り返しサブユニットを含む触媒及び/又は上で定義した式IIの化合物を含む触媒と接触させる工程を含む、エニンを分子内環化異性化するための方法も提供する。
【0083】
少なくとも1つのエニン基を有する化合物は、好適には、少なくとも1つの二重結合(「エン」)及び少なくとも1つの三重結合(「イン」)を含むあらゆる化合物であり、そして、それらは分子内環化異性化反応できるように、二重結合及び三重結合が空間的に配置されている。前記化合物は、任意には、官能基が環化異性化反応を阻害しない限りにおいては、例えばエーテル、アミド、カルボニル、チオエーテル、アミン、スルホキシド、スルホン、シラン、シロキサン及びそれらの任意の組み合わせを包含する1つ又は複数の官能基も含む。当業者は、本出願の方法で使用するのに好適なエニン化合物を容易に識別できるだろう。そのような化合物の例は、例えば、Michelet, V.; Toullec, P.Y.; Genet, J.−P. Angew. Chem. Int. Ed. 2008, 47:4268−4315において見出される。本出願の実施態様では、エニンは、1,6−エニン又は1,7−エニンであり、好適には1,6−エニンである。
【0084】
ある実施態様では、触媒骨格を、薄膜として、基質の上に、例えば、限定するものではないが、BaSO、(L)−及び(D)−酒石酸バリウム、酸化アルミニウム(Al)、シリカ(SiO)、Fe、テフロン(登録商標)、セライト(登録商標)、AgCl及び砂の上に堆積させて、触媒が凝集するのを防ぎ、また、長期の撹拌に対して機械的安定性を付与する。
【0085】
更なる実施態様では、アニオン抽出剤は、銀塩、例えば、限定するものではないが、AgSbF、AgPF、AgBF、AgClO、AgBARF(BARF=テトラキス(3,5−ビス(トリフルオロメチル)−フェニル)−ボレート)、AgOTf(OTf=トリフルオロメタンスルホネート − CFSO)又は弱配位性対イオンとの任意の他の銀塩である。更なる実施態様では、アニオン抽出剤は、タリウム塩、例えば、限定するものではないが、TIPFである。ある実施態様では、使用されるアニオン抽出剤の量は、約1モル%〜約10モル%である。アニオン抽出剤は、最初の運転でのみ使用し、少なくとも1つのエニン基を有する更なる化合物を添加する際に、再添加する必要は無いことに留意されたい。
【0086】
更なる実施態様では、少なくとも1つのエニン基を分子内環化異性化する条件としては、適当な溶媒の使用が挙げられる。ある実施態様では、溶媒は、1,4−ジオキサン、メタノール、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、シクロペンチルジメチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ジクロロエタン、ジクロロメタン、アセトン、又はエタノール、又はそれらの混合物である。ある実施態様では、溶媒は、2−メチルテトラヒドロフランである。
【0087】
別の実施態様では、少なくとも1つのエニン基を分子内環化異性化するための条件としては:約10:1〜約1,000,000:1、10:1〜約100,000:1、10:1〜約10,000:1、10:1〜約5000:1、約20:1〜約2500:1、又は約25:1〜約1000:1の基質対触媒のモル比が挙げられる。
【0088】
別の実施態様では、少なくとも一つのエニン基を分子内環化異性化するための条件としては、1時間〜約96時間、約0℃〜約120℃、30℃〜約100℃、好適には約40℃〜約90℃が挙げられる。
【0089】
別の実施態様では、上で定義した式Iの繰り返しサブユニットを含む触媒及び/又は上で定義した式IIの化合物を含む触媒を使用して金属で触媒される有機合成反応を行う方法は、フロースルー型反応器で行う。この実施態様では、触媒は、例えばカラムのようなフロースルー反応器中に包含されていて、基質及び任意の他の必要な反応物を、溶媒と一緒に又は溶媒無しで、前記反応器の入口端部中に注入する。反応は、基質及び反応物が反応器中を流れるときに、触媒と接触して、反応器中で反応が起こり、生成物は、反応器の出口端部から単離する。反応器中の流れは、重力によって又はガス圧を使用して、促進し得る。フロースルー反応器及びそれらの使用法は、当業において公知である(フロー反応器における不斉触媒反応に関する最近の総説については、"Asymmetric Reactions in Continuous Flow", by Xiao Yin Mak, Paola Laurino, and Peter H Seeberger: Beilstein J. Org. Chem. 2009; volume 5, 19を参照されたい)。式IIの触媒に関しては、固体担体上に結合又は吸着させることが、フロースルー反応器には望ましい。固体担体へ触媒を結合又は吸着させる方法は、当業において公知である。
【0090】
本出願は、式Iの化合物、式IIの化合物、又はそれらの混合物、及びアニオン抽出剤を含む組成物も含む。ある実施態様では、アニオン抽出剤は、銀塩、例えば、限定するものではないが、AgSbF、AgPF、AgBF、AgClO、AgBARF(BARF=テトラキス(3,5−ビス(トリフルオロメチル)−フェニル)−ボレート)、AgOTf(OTf=トリフルオロメタンスルホネート − CFSO)又は弱配位性対イオンとの任意の他の銀塩である。前記組成物は、金属で触媒される有機合成反応のための触媒として式I及び/又は式IIの化合物の販売キットとして、配合又はパッケージし得る。従って、本出願は、取扱説明書と一緒に、一つの組成物で、又は、任意に、別々の組成物で、式Iの化合物、式IIの化合物、又はそれらの混合物、そしてアニオン抽出剤を含むキットも包含している。
【0091】
以下の非限定的な実施例は、本出願の例示である:
実施例
実施例1:触媒前駆体IIaの調製
【0092】
【化36】

【0093】
触媒前駆体[RhCl((R)−N−BINAP)](IIa))は、CHCl中で、(R)−5,5´−ジノリミド−BINAP(IIIa)をμ−ジクロロテトラエチレンジロジウム(I)(IVa)と反応させることによって、合成した。ROMP組み立てのために、IIaの反応溶液を、IIaを単離せずに、直接使用した。
実施例2:触媒前駆体IIaとCOEのROMP組立て
【0094】
【化37】

【0095】
IIaの交互ROMP組立ては、スペーサーとしてシクロオクテン(COE)と、触媒としてRuCl(PCy(CHPh)とを使用して、20:120:1のモル比で、40℃のCHCl中で行った。H及び31PNMR分光分析法により、COE及びIIaは、28時間後に消費されたことが分かった。実施例3:(3−((Z)−ペント−2−エニルオキシ)プロプ−1−インイル)シクロヘキサン(1)の分子内環化
【0096】
【化38】

【0097】
この環化は、5モル%のRhを使用して、起こした。詳しくは、20当量の1を、ジオキサン中BaSO担持ロジウム有機骨格Iaの懸濁液に加え、その混合物を1分間激しく撹拌し、そして、ジオキサン中に懸濁させた2当量のAgSbFを加えた。環化は、60℃で、3時間激しく撹拌して完了させた。〜1モル%の触媒と反応性基質とを使用している未確認の一つの報告を除いて、エニンのRh触媒不斉環化に関するすべての文献報告で、10モル%のRh触媒(10回のターンオーバー)を使用している。而して、この実施例は、キラルRh−ジホスフィン触媒を使用する不活性エニンの直接不斉環化に関して達成された最高ターンオーバー数を提供する。試薬、例えばボロン酸、シラン又は水素を使用して生成物を遮るか又は捕捉すると、〜3モル%の触媒を使用することによって幾分多いターンオーバーが得られることが文献で報告されてきた。しかしながら、そのような間接的な環化は原子非効率的であり、使用できる又は得ることができる基質及び生成物のタイプが制限される。更に、1がこの種の反応を経てうまく環化されたのはこれが初めてである。文献の触媒系、[((R)−BINAP)RhCl]とAgSbFを使用して反応を実行する試みでは、生成物の複雑な混合物が生じた。而して、少なくともこの基質に関しては、触媒有機骨格は、均一系に比べてより有効な環化触媒である。
【0098】
驚くべきことに、更なるヘキサフルオロアンチモン酸銀(I)を加えずに、同じ触媒(合成la)を合計7運転で使用できることを見出した。表1に、この系によって得られた結果が要約してある。運転4によって活性は低下したが、この低下は、反応を加熱することによって補償された。運転4〜7に関しては65℃までの温度を使用し、得られた生成物には観察可能な相違は認められなかった。而して、同じ触媒が、7回を超える運転で、合計で720回のターンオーバーをもたらし、ほとんどの運転で91%を超える収率であった。それにもかかわらず、本発明の触媒系は、公開されている文献で現在最先端と報告されているものに比べてターンオーバーが10回を超える活性の段階的な増加が認められる。より高い基質充填量対触媒(例えば500:1〜1000:1)を使用して実験を繰り返し、そしてその結果は表2に示してある。
実施例4:1−(3−((Z)−ペント−2−エニルオキシ)プロプ−1−イニル)ベンゼン(3)の分子内環化
【0099】
【化39】

【0100】
本出願の触媒有機骨格は、驚くべきことに、フェニル基質3の環化にも活性であった。それらの結果は表3及び4にまとめてある。第一運転は、実施例3の第一運転と同じ温度(60℃)で行った。次いで、温度は、運転2〜4に関しては50℃に低下させた。3との反応は、1との反応に比べて遅かった。おそらく、触媒のRh中心への基質又は生成物の競争的なη−アリール結合に起因している。従って、3の環化に関しては、より高い温度が要求された。微量生成物のピークがGCの棄却限界(主ピーク積分の0.025%)内で検出できなかったので、反応に関する光学収率(ee)は99.9%を超えていた。運転3の後に再び活性の低下が認められたが、温度を上昇させることによって補償した。温度を上昇させても、反応のeeは低下しなかったことが注目される。各運転の変換率は76%〜100%であり、総ターンオーバー数は5運転にわたって380回であり、そしてそのターンオーバー数は、エニンの環化におけるあらゆるエナンチオ選択的ロジウム触媒に関するターンオーバーでは最高数であると考えられる。
【0101】
本出願を、好ましい実施例であると現在考えられるものに関して説明してきたが、本出願は、開示した実施例に限定されないことを理解すべきである。それとは反対に、本出願は、添付の特許請求の範囲及びその趣旨に包含される、様々な変更及び同価値のアレンジを含むことが意図される。
【0102】
個々の公報、特許及び特許出願が、その全文が参照により本明細書に組み込まれると明確に且つ個々に示唆されているのと同程度に、すべての公報、特許及び特許出願は、その全文が参照により本明細書に組み込まれる。本出願における用語が、参照により本明細書に組み込まれる文書において違って定義されていることが分かった場合、本明細書で提供される定義は、その用語に関する定義として役立つ。
【0103】
表1. 1の環化用の触媒骨格Iaのリサイクリング
【表1】


[a]反応は、1,4−ジオキサン中1の0.2M溶液において、次の条件下で:すなわち、Sub./Rh.=100/1で行った;運転1は除く。
[b]Sub./AgSbF/Rh=20/2/1。
[c]H NMR分析で測定した変換率。
[d]温度は、初期運転を60℃で3時間行った後、50℃まで低下させた。
[e]運転は50℃で22時間後に完了しなかったので、温度を65℃に上げ、そして完了するまで反応させ、完了は65℃で更に4時間後であった。
【0104】
表2 触媒骨格Iaを使用した1の高充填量環化
【表2】


1000:1の充填は表に記載した溶媒中2Mの1で行い、そして500:1の充填は表に記載した溶媒中1Mの1で行った。この充填は、常に触媒を隠蔽する溶媒の量を維持するためであった。すべての反応のために、担持触媒骨格laを、固体AgSbFと一緒に、シュレンク管中に計量して入れた。次いで、基質を、不活性雰囲気下で加え、そして適当量の溶媒ですすいだ。次いで、反応フラスコを、指定の時間、恒温槽中に置いた。
【0105】
表3 3の環化用の触媒骨格Iaのリサイクリング
【表3】


[a]反応は、運転1を除いて、1,4−ジオキサン中3の0.2M溶液で行った。
[b]基質の触媒に対する当量数。
[c]変換率及びeeはキラルGC分析で測定した。
[d]3の0.1M溶液を使用した。
[e]温度を18.5時間後に70℃まで上げ、更に23.5時間で反応を完了させた。
【0106】
表4 触媒骨格Iaを使用する3の高充填量環化
【表4】


a反応はジオキサン中3の0.6M溶液で行った。
b反応はジオキサン中3の0.4M溶液で行った。
cジオキサンで最低限度すすいだ先に使用したのと同じ触媒を使用した。AgSbFの添加は必要なかった。触媒の総ターンオーバー数は482である。
【0107】
明細書で参照した文書の完全な列挙
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(44) Hashmi, A. Stephen K.; Haufe, P.; Nass, A. R. “On the Enantioselective Rhodium-Catalyzed Enyne Cyclization” Adv. Synth. Catai. 2003, 345, 1237- 1241.
(45) Miyashita, A.; Yasuda, A.; Takaya, H.; Toriumi, K.; Ito, T.; Souchi, T.; Noyori, R. “Synthesis of 2,2'-bis(diphenylphosphino)-1 , 1 '-binaphthyl (BINAP), an atropisomeric chiral bis(triaryl)phosphine, and its use in the rhodium(l)-catalyzed asymmetric hydrogenation of a-(acylamino)acrylic acids” J. Am. Chem. Soc. 1980, 02, 7932-7934.

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下式I:
【化1】


(式中、
、R、R及びRは、フェニル及びC4−8シクロアルキルから独立に選択され、後者2つの基は置換されていないか、又は、可能ならば、C1−6アルキル、OC1−6アルキル及びハロから独立に選択される1、2、3、4、若しくは5つの基によって置換されている;
【化2】


は、ビナフチル基又はビナフチル基の誘導体であり、それぞれ、置換されていないか、又は、C1−6アルキル、OC1−6アルキル及びハロから独立に選択される1つ若しくは複数の基によって置換されている;
、R、R及びRは、H、C1−6アルキル、OC1−6アルキル及びハロから独立に選択されるか、又はR及びR及び/若しくはR及びRは、=Oであるか、又はR及びRのうちの1つは、R及びRのうちの1つに連結されて、それらが結合される原子と、それらを接続している原子とが一緒になって、単環式、二環式又は三環式の環系を形成し、各メチレン単位におけるR、R、R及びRは、同じか又は異なっており、そして、適用できる場合は、
【化3】


は、この結合に結合された二重結合がシス又はトランス配置にあることを意味している;
m及びnは、独立に、0と10を含む0〜10の整数である;
pは、1と14を含む1〜14の整数である;そして
Xは、アニオン配位子である)の繰り返しサブユニットを含むポリマー触媒。
【請求項2】
、R、R及びRが、フェニル及びシクロヘキシルから独立に選択され、後者2つの基が、置換されていないか、又は、C1−4アルキル、OC1−4アルキル、クロロ及びフルオロから独立に選択される1、2、3、4、若しくは5つの基によって置換されている請求項1記載の触媒。
【請求項3】
、R、R及びRが、フェニル及びシクロヘキシルから独立に選択され、後者2つの基が、置換されていないか、又は、CH、OCH、クロロ及びフルオロから独立に選択される1、2、3、4、若しくは5つの基によって置換されている請求項2記載の触媒。
【請求項4】
、R、R及びRが、同じである請求項1〜3のいずれか一つに記載の触媒。
【請求項5】
、R、R及びRが、それぞれ、置換されていないか、又は、C1−4アルキル、OC1−4アルキル、クロロ及びフルオロから独立に選択される1、2、3、4、若しくは5つの基によって置換されているフェニルである請求項4記載の触媒。
【請求項6】
、R、R及びRが、それぞれ、非置換フェニルである請求項5記載の触媒。
【請求項7】
【化4】


が、ビナフチル基又はビナフチル基の誘導体であり、それぞれが、置換されていないか、又は、C1−4アルキル、OC1−4アルキル、クロロ及びフルオロから独立に選択される1、2、3、4、5若しくは6つの基によって置換されている請求項1〜6のいずれか一つに記載の触媒。
【請求項8】
【化5】


が、1,1´−ビナフチル、5,5´,6,6´,7,7´,8,8´−オクタヒドロ−1,1´−ビナフチル又は12,13,14,15,16,17,12´,13´,14´,15´,16´,17´−ドデカヒドロ−11H,11´H−[4,4´]ビ[シクロペンタ[a]フェナントレニル]であり、それぞれ、置換されていないか、又はC1−4アルキル、OC1−4アルキル、クロロ及びフルオロから独立に選択される1、2、3、4、5若しくは6つの基によって置換されている請求項7記載の触媒。
【請求項9】
【化6】


が光学的に活性であり、そして式Iの化合物が
【化7】


の実質的に純粋な光学異性体を含む請求項1〜8のいずれか一つに記載の触媒。
【請求項10】
【化8】


が、
(a) 2,2´−ビス−(ジフェニルホスフィノ)−1,1´−ビナフチル(略称:BINAP);
(b)BINAPのナフタレン環が部分的に還元されているBINAP誘導体;
(c)BINAPのナフタレン環が置換基(単数又は複数)を有するBINAP誘導体;
(d)BINAPの燐原子上のベンゼン環が低級アルキル基(単数又は複数)によって置換されているBINAP誘導体;
BINAPのナフタレン環が置換基を有していて、そして、BINAPの燐原子上のベンゼン環が1〜5つのC1−6アルキル置換基で置換されているBINAP誘導体;及び
(f)BINAPのナフタレン環が飽和炭化水素環と縮合されるBINAP誘導体
の各光学異性体から選択される請求項1記載の触媒。
【請求項11】
2,2´−ビス−(ジフェニルホスフィノ)−1,1´−ビナフチル(略称:BINAP)の各光学異性体、2,2´−ビス(ジフェニルホスフィノ)−5,5´,6,6´,7,7´,8,8´−オクタヒドロ−1,1´−ビナフチル(略称:HBINAP)の各光学異性体、2,2´−ビス−(ジフェニルホスフィノ)−6,6´−ジメチル−1,1´−ビナフチル(略称:6MeBINAP)の各光学異性体、2,2´−ビス−(ジ−p−トリルホスフィノ)−1,1´−ビナフチル(略称:Tol−BINAP)の各光学異性体、2,2´−ビス[ビス(3−メチルフェニル)ホスフィノ]−1,1´−ビナフチルの各光学異性体、2,2´−ビス[ビス(3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフィノ]−1,1´−ビナフチルの各光学異性体、2,2´−ビス[ビス(4−tert−ブチルフェニル)ホスフィノ]−1、1´−ビナフチルの各光学異性体、2,2´−ビス[ビス(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィノ]−1,1´−ビナフチル(略称:Xyl−BINAP)の各光学異性体、2,2´−ビス[ビス(3,5−ジメチル−4−メトキシフェニル)ホスフィノ]−1,1´−ビナフチル(略称:Dmanyl−BINAP)の各光学異性体、2,2´−ビス[ビス−(3,5 − ジメチルフェニル)ホスフィノ]−6,6´−ジメチル−1,1´−ビナフチル(略称:Xyl−6MeBINAP)の各光学異性体、及び3,3´−ビス−(ジフェニルホスファニル)−13,13´−ジメチル−12,13,14,15,16,17,12´,13´,14´,15´,16´,17´−ドデカヒドロ−11H,11´H−[4,4´]ビ[シクロペンタ[a]フェナントレニル]の各光学異性体から選択される請求項10記載の触媒。
【請求項12】
【化9】


が、1,1−ビナフチルの光学異性体である請求項11記載の触媒。
【請求項13】
、R、R及びRが、H、C1−4アルキル、OC1−4アルキル及びハロから独立に選択されるか、又は、R及びR及び/若しくはR及びRが=Oであるか、又はR及びRのうちの1つが、R及びRのうちの1つに連結されて、それらが結合される原子と、それらを接続している原子とが一緒になって、単環式若しくは二環式の環系を形成し、そして各メチレン単位におけるR、R、R及びRが、同じか又は異なっている請求項1〜12のいずれか一つに記載の触媒。
【請求項14】
、R、R及びR、m及びnが、それらが結合される原子と、そしてそれらを接続している原子とが一緒になって:
【化10】

から選択される基を形成する請求項13記載の触媒。
【請求項15】
、R、R及びR、m及びnが、それらが結合される原子と、そしてそれらを接続している原子とが一緒になって:
【化11】


を形成する請求項14記載の触媒。
【請求項16】
下式I:
【化12】


(式中、
、R、R及びRは、フェニル及びC4−8シクロアルキルから独立に選択され、後者2つの基は置換されていないか、又は、可能ならば、C1−6アルキル、OC1−6アルキル及びハロから独立に選択される1、2、3、4、若しくは5つの基によって置換されている;
pは、1と14を含む1〜14の整数である;及び
Xは、アニオン配位子である)の繰り返しサブユニット、
又はそれらの交互光学異性体を含む請求項1記載の触媒。
【請求項17】
式Iの繰り返しサブユニットが、以下の相対的立体化学構造:
【化13】


(式中、
、R、R及びRは、フェニル及びC4−8シクロアルキルから独立に選択され、後者2つの基は置換されていないか、又は、可能ならば、C1−6アルキル、OC1−6アルキル及びハロから独立に選択される1、2、3、4、若しくは5つの基によって置換されている;
pは、1と14を含む1〜14の整数である;及び
Xは、アニオン配位子である)を有するか
又はそれらの交互光学異性体を有する請求項1記載の触媒。
【請求項18】
Xが、ハリドである請求項1〜17のいずれか一つに記載の触媒。
【請求項19】
下式II:
【化14】


(式中、R、R、R、R、X及び
【化15】


が、請求項1〜18のいずれか一つで定義されているものであり、そして、
【化16】


は、少なくとも1つの二重結合を含み、且つ、置換されていないか又はC1−6アルキル、OC1−6アルキル、ハロ及び=Oから独立に選択される1つ若しくは複数の基によって置換されている単環式、二環式又は三環式の基である)の化合物。
【請求項20】
【化17】


が:
【化18】

から選択される請求項19記載の化合物。
【請求項21】
【化19】


が、
【化20】


である請求項20記載の化合物。
【請求項22】
以下の相対的立体化学構造:
【化21】


を有する請求項21記載の化合物。
【請求項23】
前記有機合成反応を行うための条件下で、有機合成反応のための基質を、請求項1〜18のいずれか一つで定義されている式Iの繰り返しサブユニットを含む触媒及び/又は請求項19〜22のいずれか一つで定義されている式IIの化合物を含む触媒と接触させる工程、及び、任意に、前記有機合成反応から1種又は複数種の生成物を単離する工程を含む、金属で触媒される有機合成反応を行う方法。
【請求項24】
前記有機合成反応が、環化異性化、ヒドロシリル化、水素化、共役付加及びクロスカップリングから選択される請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記有機合成変換が、不斉合成反応又はキラル合成反応である請求項23又は24記載の方法。
【請求項26】
少なくとも1つのエニン基を分子内環化異性化するのに適する条件下、アニオン抽出剤の存在下で、少なくとも1つのエニン基を有する1種又は複数種の化合物を、請求項1〜18のいずれか一つの式Iの繰り返しサブユニットを含む触媒及び/又は請求項19〜22のいずれか一つで定義されている式IIの化合物を含む触媒と接触させる工程を含む、エニンを分子内環化異性化するための方法。
【請求項27】
前記触媒が、担体上に薄膜として堆積される請求項26記載方法。
【請求項28】
前記担体が、BaSOである請求項27記載の方法。
【請求項29】
前記アニオン抽出剤が、銀塩である請求項26〜28のいずれか一つに記載の方法。
【請求項30】
銀塩が、AgSbFである請求項29記載の方法。
【請求項31】
使用されるアニオン抽出剤の量が、約1モル%〜約10モル%である請求項26〜30のいずれか一つに記載の方法。
【請求項32】
前記少なくとも1つのエニン基を分子内環化異性化するための条件が、適当な溶媒の使用を含む請求項26〜31のいずれか一つに記載の方法。
【請求項33】
前記溶媒が、2−メチルテトラヒドロフランである請求項32記載の方法。
【請求項34】
前記少なくとも1つのエニン基を分子内環化異性化するための条件が、約10:1〜約1,000,000:1の基質対触媒のモル比を使用することを含む請求項26〜33のいずれか一つに記載の方法。
【請求項35】
前記少なくとも1つのエニン基を分子内環化異性化するための条件が、約0℃〜約120℃の温度、約1時間〜約96時間を含む請求項26〜34のいずれか一つに記載の方法。
【請求項36】
溶媒を用いて又は用いずに、フロースルー反応器で行う請求項26〜35のいずれか一つに記載の方法。
【請求項37】
請求項1〜18のいずれか一つで定義されている式Iの化合物、請求項9〜22のいずれか一つで定義されている式IIの化合物、又はそれらの混合物、及びアニオン抽出剤を含む組成物。
【請求項38】
請求項1〜18のいずれか一つで定義されている式Iの化合物と、請求項9〜22のいずれか一つで定義されている式IIの化合物と、又はそれらの混合物と、そしてアニオン抽出剤とを、一つの組成物又は別々の組成物で、任意には取扱説明書と一緒に含むキット。

【公表番号】特表2013−505814(P2013−505814A)
【公表日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−530065(P2012−530065)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【国際出願番号】PCT/CA2010/001547
【国際公開番号】WO2011/035445
【国際公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(504368697)ザ ガバナーズ オブ ザ ユニバーシティ オブ アルバータ (6)
【Fターム(参考)】