不安定走行装置
【課題】 従来の不安定走行装置においては、車両本体に乗った人が手足を自由に動かすことができず、限られた範囲内の手足、身体の移動によってのみ車両の前進走行、後進走行、左右旋回、加速・減速、制動等の操縦を行うことができるに過ぎない。
【解決手段】 平行に配置された2つの車輪2L,2Rと、その2つの車輪の回転により走行する車両本体3と、その車両本体に取り付けられると共に2つの車輪を回転駆動する2つの車輪駆動ユニット4L,4Rと、2つの車輪の車軸方向Xと直交する走行方向Yに延在され且つ車両本体に回動自在に支持されるシャーシ軸5と、そのシャーシ軸に固定されると共に運転操作者の左右の足が個別に置かれる一対の搭乗デッキ6L,6Rと、その一対の搭乗デッキの走行方向の傾き角度を検出するジャイロセンサ7と、一対の搭乗デッキの車軸方向の傾き角度を検出する回転角検出器8と、ジャイロセンサ及び回転角検出器により検出される一対の搭乗デッキの姿勢に応じて2つの車輪駆動ユニットに制御信号を出力して走行状態を制御する制御装置10と、を設ける。
【解決手段】 平行に配置された2つの車輪2L,2Rと、その2つの車輪の回転により走行する車両本体3と、その車両本体に取り付けられると共に2つの車輪を回転駆動する2つの車輪駆動ユニット4L,4Rと、2つの車輪の車軸方向Xと直交する走行方向Yに延在され且つ車両本体に回動自在に支持されるシャーシ軸5と、そのシャーシ軸に固定されると共に運転操作者の左右の足が個別に置かれる一対の搭乗デッキ6L,6Rと、その一対の搭乗デッキの走行方向の傾き角度を検出するジャイロセンサ7と、一対の搭乗デッキの車軸方向の傾き角度を検出する回転角検出器8と、ジャイロセンサ及び回転角検出器により検出される一対の搭乗デッキの姿勢に応じて2つの車輪駆動ユニットに制御信号を出力して走行状態を制御する制御装置10と、を設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2輪又は3輪以上の車輪を平行に配置して走行するようにした不安定走行装置に関し、特に、運転操作者の重心移動によって前進、後進、加速及び減速、左右旋回、停止等の制御を安定性良く行うことができる不安定走行装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の、この種の不安定走行装置としては、例えば、特許文献1に記載されているようなものがある。特許文献1には、手による操作を行わずに体重を利用して移動することを可能にした電動式移動体に関するものが記載されている(第1従来例)。この特許文献1に記載された電動式移動体は、「体重移動を検出するセンサと、このセンサからの検出信号に応じてモータを駆動制御するコントローラとを備え、前記モータの駆動制御によって移動する」ことを特徴としている。
【0003】
このような構成を有する電動式移動体によれば、「移動体の乗り手の姿勢、換言すれば移動体に設けられた圧力センサへの体重のかかり具合によりモータを駆動制御し、このモータの駆動制御状態に応じて、移動体のスピードや加速のコントロール、前後進、方向指示等を行うことができる」等の効果が期待される。
【0004】
従来の他の不安定走行装置としては、例えば、特許文献2に記載されているようなものもある。特許文献2には、同軸二輪車における姿勢制御方法に関するものが記載されている(第2従来例)。この特許文献2に記載された同軸二輪車における姿勢制御方法は、「一対の車輪と、両車輪間に架設された車軸と、車軸上に回動可能に支持された車体と、車体に装着された車輪駆動用モータと、車輪駆動用モータに作動指令を送る制御コンピュータと、車体の傾きを検出する角度検出手段とからなる同軸二輪車において、前記角度検出手段により検出される車体の傾斜角度を短時間間隔にてサンプリングし、車体のサンプリング傾斜角度を状態変数、フィードバックゲインを係数として制御コンピュータ内に予め入力設定された制御入力算出式に前記サンプリング値を代入して演算し、この演算に基づいて車輪駆動用モータの制御トルクを算出し、この算出された制御トルク相当の作動を制御コンピュータから車輪駆動用モータに指令する」ことを特徴としている。
【0005】
このような構成を有する同軸二輪車における姿勢制御方法によれば、「車体の傾きを検出する角度検出手段により検出される車体の傾斜角度を短時間間隔にてサンプリングし、車体のサンプリング傾斜角度及びフィードバックゲインを係数として制御コンピュータ内に予め入力設定された制御入力算出式にサンプリング値を代入して演算し、この演算に基づいて車輪駆動用モータの制御トルクを算出すると共に、この算出された制御トルク相当の作動を制御コンピュータから車輪駆動用モータに指令して同軸二輪車における姿勢を制御するようにしたので、前記算出結果に基づいて車輪駆動用モータのフィードバック制御が行われ、車体が傾動すれば車輪が車体の傾動方向へ直ちに移動して車体の復元が確実に行われる」等の効果が期待される。
【0006】
また、従来の更に他の不安定走行装置としては、例えば、特許文献3に記載されているようなものもある。特許文献3には、不安定車両の走行制御装置に関するものが記載されている(第3従来例)。この特許文献3に記載された不安定車両の走行制御装置は、「進行方向に平行する同一の直線上の位置を除く位置に配される少なくとも2個の車輪とそれを連結する車軸上に固定される座席とからなり、該車輪の回転軸線の上方に重心位置を備えてなる不安定車両の走行を制御する装置であって、前記回転軸線と重心位置とを結ぶ線の、軸線に直交する方向における重力方向に対する傾斜角度及び/又は傾斜角速度を検出する検出手段、前記車輪に固定され、それを駆動する駆動手段、及び前記検出値を減少させるべく該駆動手段の制御値を決定する制御値決定手段、を備えた」ことを特徴としている。
【0007】
このような構成を有する不安定車両の走行制御装置によれば、「車両を前後の所望の方向に傾斜させることによってその方向に走行させることができる。また、2個の車輪で接地するのみであることから小回りがきき、狭隘な個所であっても困難なく走行することができる」という効果が期待される。
【特許文献1】特開平10−23613号公報
【特許文献2】特開昭63−305082号公報
【特許文献3】特開平4−201793号公報
【0008】
しかしながら、前述した第1従来例の電動式移動体においては、スケートボードのような乗り物として構成されていて、ボード本体の下面の前後に2個ずつ合計4個の車輪が配置されている。ボード本体の前部に配置された2個の前輪が自由輪であるのに対し、後部に配置された2個の後輪はモータによって回転駆動され、このモータの駆動による後輪の回転によってボード本体が走行するようになっている。この電動式移動体のモータの駆動制御は、ボード本体に乗った運転操作者の体重移動によって行われる。即ち、運転操作者の体重移動をセンサで検出すると共に、その検出信号に基づきコントローラでモータの駆動を制御することにより、手で操縦せずに運転操作者の体重移動だけで、前進走行、後進走行、左右旋回、加速減速等の操縦を行うことができるようになっている。
【0009】
ところが、この電動式移動体は、不安定走行装置と言っても、前後に2個ずつ配置された合計4個の車輪によってボード本体が支持されているため、厳密な意味での不安定走行装置と言えるものではなく、4個の車輪を有する自動車等の車両に近い安定性を有するものであった。そのため、この種のスケートボード形式の電動式移動体においては、運動用具と娯楽用具とを兼ね備えたスポーツ用品としては好ましいが、車両本体が4個の車輪によって比較的安定性良く支持されているという点で、本願発明の不安定走行装置とは異なるものである。
【0010】
これに対して、第2従来例の同軸二輪車及び第3従来例の不安定車両のいずれの場合にも、1個の車輪又は平行に配置された2個の車輪によって車両本体が支持されているため、本願発明の不安定走行装置と同種のものである。ところが、第2従来例の同軸二輪車の場合には、同軸上に配置された2個の車輪によって車体が支持されているが、その車体の姿勢制御は、車体の傾斜角度を検出する角度検出手段の検出信号に基づき車輪駆動モータの駆動を制御して行うようになっていた。しかも、車体は人が乗ることができるような構成にはなっておらず、人が乗って楽しむような装置ではなかった。
【0011】
また、第3従来例の不安定車両の場合には、車両本体は人が乗ることができる構造となっていたが、その車両本体には人が掴むことができるハンドルが設けられていた。このハンドルは、車両本体に搭乗する者の姿勢を安定させるためには有効であるが、手足を自由に動かして重心を移動させることによる車両の走行制御を行うことができず、よりスポーツライクの走行を楽しむことができないという課題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
解決しようとする問題点は、従来の不安定走行装置においては、車両本体に乗った人が手足を自由に動かすことができず、限られた範囲内の手足、身体の移動によってのみ車両の前進走行、後進走行、左右旋回、加速・減速、制動等の操縦を行うことができるに過ぎないという点である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本出願の請求項1に記載の不安定走行装置は、平行に配置された2輪又は3輪以上の車輪と、その2輪又は3輪以上の車輪の回転により走行する車両本体と、その車両本体に取り付けられると共に2輪又は3輪以上の車輪を回転駆動する1又は2以上の車輪駆動手段と、2輪又は3輪以上の車輪の車軸方向と直交する走行方向に延在され且つ車両本体に回動自在に支持されるシャーシ軸と、そのシャーシ軸に固定されると共に運転操作者の左右の足が個別に置かれる一対の搭乗デッキと、その一対の搭乗デッキの走行方向の傾き角度を検出するピッチ角検出手段と、一対の搭乗デッキの車軸方向の傾き角度を検出するロール角検出手段と、ピッチ角検出手段及びロール角検出手段により検出される一対の搭乗デッキの姿勢に応じて1又は2以上の車輪駆動手段に制御信号を出力して走行状態を制御する車両制御手段と、を設けたことを主要な特徴とする。
【0014】
本出願の請求項2に記載の不安定走行装置は、ピッチ角検出手段は、車両本体の傾き角度を検出するジャイロセンサからなることを特徴とする。
【0015】
本出願の請求項3に記載の不安定走行装置は、ロール角検出手段は、シャーシ軸の回転角度を検出する回転角検出器からなることを特徴とする。
【0016】
本出願の請求項4に記載の不安定走行装置は、一対の搭乗デッキは、車両本体を挟んでシャーシ軸の軸方向の両側に重量バランスを保持して左右対称に設けたことを特徴とする。
【0017】
本出願の請求項5に記載の不安定走行装置は、一対の搭乗デッキには、運転操作者の左右の足から付加される荷重をそれぞれ検出して重心の移動を検出する一対の荷重センサを設けたことを特徴とする。
【0018】
本出願の請求項6に記載の不安定走行装置は、一対の荷重センサは、シャーシ軸を挟んで両側に配置された一対の荷重検出部をそれぞれ有することを特徴とする。
【0019】
本出願の請求項7に記載の不安定走行装置は、一対の搭乗デッキの下部には、その一対の搭乗デッキの走行方向の傾き角度を制限する補助輪をそれぞれ設けたことを特徴とする。
【0020】
本出願の請求項8に記載の不安定走行装置は、補助輪は、路面に接触して回転する際の摩擦力により制動力を生じさせる制動車輪であることを特徴とする。
【0021】
本出願の請求項9に記載の不安定走行装置は、補助輪は、走行方向の回転を阻止してその走行方向と反対側の回転のみを許容する一方向クラッチを有する制動車輪であることを特徴とする。
【0022】
本出願の請求項10に記載の不安定走行装置は、補助輪には、所定以上の荷重が負荷されたときに1又は2以上の車輪駆動手段の駆動を停止する駆動停止スイッチを設けたことを特徴とする。
【0023】
本出願の請求項11に記載の不安定走行装置は、車両制御手段は、ピッチ角検出手段から供給される検出信号に基づき1又は2以上の車輪駆動手段に制御信号を出力して運転操作者の重心移動量に応じて走行速度を制御することを特徴とする。
【0024】
また、本出願の請求項12に記載の不安定走行装置は、車両制御手段は、ロール角検出手段から供給される検出信号に基づき1又は2以上の車輪駆動手段に制御信号を出力して運転操作者の重心移動量に応じて旋回速度を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本出願の請求項1に記載の不安定走行装置によれば、2輪又は3輪以上の車輪と車両本体と1又は2以上の車輪駆動手段とシャーシ軸と一対の搭乗デッキとピッチ角検出手段とロール角検出手段と車両制御手段とを設ける構成とすることにより、一対の搭乗デッキに両足を乗せた運転操作者が走行したい方向に重心(体重)を移動すると、その重心の移動量に応じて一対の搭乗デッキが走行したい方向に傾き(ピッチ角:P)、そのピッチ角Pがピッチ角検出手段によって検出される。これにより、ピッチ角検出手段の検出信号が車両制御手段に入力され、その検出信号に応じて車両制御手段が1又は2以上の車輪駆動手段に制御信号を出力する。その結果、1又は2以上の車輪駆動手段が一対の搭乗デッキのピッチ角Pに応じて回転駆動され、そのピッチ角Pの速度・加速度に応じて走行したい方向に走行される。そして、運転操作者が走行方向と逆方向に重心を移動することにより、走行速度を低下して走行状態を停止することができる。
【0026】
また、一対の搭乗デッキに両足を乗せた運転操作者が旋回したい方向に重心(体重)を移動すると、その重心の移動量に応じて一対の搭乗デッキが旋回したい方向に傾き(ロール角:R)、そのロール角Rがロール角検出手段によって検出される。これにより、ロール角検出手段の検出信号が車両制御手段に入力され、その検出信号に応じて車両制御手段が1又は2以上の車輪駆動手段に制御信号を出力する。その結果、1又は2以上の車輪駆動手段が一対の搭乗デッキのロール角Rに応じて、左右の車輪間に所定量の回転差を生じさせるように回転駆動され、そのロール角Rの速度・加速度に応じて旋回したい方向に旋回される。
【0027】
本出願の請求項2に記載の不安定走行装置によれば、ピッチ角手段を、車両本体の傾き角度を検出するジャイロセンサで構成することにより、比較的簡単な構造でありながら一対の搭乗デッキのピッチ角を確実且つ精度良く検出することができ、その検出信号に基づいて前進走行、後進走行、加速・減速、停止等の走行状態を好適に制御することができる。
【0028】
本出願の請求項3に記載の不安定走行装置によれば、ロール角検出手段を、シャーシ軸の回転角度を検出する回転角検出器で構成することにより、一対の搭乗デッキの実際の回転角度を確実且つ精度良く検出することができ、その検出信号に基づいて左右への旋回を好適に制御して、安定性良く旋回することができる。
【0029】
本出願の請求項4に記載の不安定走行装置によれば、一対の搭乗デッキを、車両本体を挟んでシャーシ軸の軸方向両側に配置すると共に重量バランスを保持して左右対称に構成することにより、一対の搭乗デッキのシャーシ軸の軸方向における釣合いを容易に取ることができ、運転操作者の意志に的確に反応し、重心移動だけで楽に走行、旋回等の運転操作を行うことができる。
【0030】
本出願の請求項5に記載の不安定走行装置によれば、一対の搭乗デッキに一対の荷重センサを設ける構成とすることにより、比較的簡単な構造でありながら一対の搭乗デッキに乗った運転操作者の体重移動による走行方向の重心移動を確実且つ精度良く検出することができ、その検出信号に基づいて前進走行、後進走行、加速・減速、停止等の走行状態を好適に制御することができる。
【0031】
本出願の請求項6に記載の不安定走行装置によれば、一対の荷重センサを、シャーシ軸を挟んで両側に配置した一対の荷重検出部で構成とすることにより、比較的簡単な構造でありながら一対の搭乗デッキに乗った運転操作者の体重移動による走行方向と直交する方向の重心移動を確実且つ精度良く検出することができ、その検出信号に基づいて左右への旋回走行を好適に制御することができる。
【0032】
本出願の請求項7に記載の不安定走行装置によれば、一対の搭乗デッキの下部に補助輪を設ける構成とすることにより、走行方向に対して一対の搭乗デッキが必要以上に傾くのを防止することができ、運転操作者の大きな姿勢変化を防ぎ、走行方向における搭乗安定性の向上を図ることができる。
【0033】
本出願の請求項8に記載の不安定走行装置によれば、補助輪を制動車輪で構成することにより、制動車輪の回転によって制動力を生じさせ、滑らかに減速して安定性良く制動することができる。
【0034】
本出願の請求項9に記載の不安定走行装置によれば、一方向クラッチを有する制動車輪で補助輪を構成することにより、進行方向と逆方向への移動を瞬時に停止することができ、緊急停止時における制動性能の向上を図ることができる。
【0035】
本出願の請求項10に記載の不安定走行装置によれば、補助輪に駆動停止スイッチを設ける構成とすることにより、制動時にブレーキ力を作用させて制動力を確実に働かせることができ、車輪の駆動力を減少又は停止させて安定性良く停止できると共に、緊急時における制動性能の向上を図り、安全に停止することができる。
【0036】
本出願の請求項11に記載の不安定走行装置によれば、ピッチ角検出手段の検出信号に基づいて車両制御手段で車輪駆動手段を制御し、運転操作者の重心移動に応じて走行速度を制御する構成とすることにより、前進走行、後進走行、加速・減速、停止等の走行状態を好適に制御し、安定性良くスムースに走行することができる。
【0037】
また、本出願の請求項12に記載の不安定走行装置によれば、ロール角検出手段の検出信号に基づいて車両制御手段で車輪駆動手段を制御し、運転操作者の重心移動に応じて旋回速度を制御する構成とすることにより、左右の旋回速度を好適に制御し、旋回時の遠心力に運転操作者が振り落とされるおそれがなく、安定性良くスムースに旋回することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
運転操作者の重心移動によって前進走行、後進走行、加速及び減速、左右旋回、停止等の制御を安定性良く行うことができ、人が乗って移動する車両としては勿論のこと、運動用具や娯楽用具等としての汎用性も有する不安定走行装置を、簡単な構成によって実現した。
【0039】
図1〜図37は、本発明の実施の形態を示すものである。即ち、図1は本発明の不安定走行装置の一実施例を示す外観斜視図、図2は同じく平面図、図3は同じく右側面図、図4は同じく底面図、図5は同じく正面図、図6は一対の荷重センサを現した外観斜視図、図7は同じく平面図、図8は同じく右側面図、図9は同じく底面図、図10は同じく正面図、図11は同じく背面図、図12は一対の搭乗デッキの内部構造を示す斜視図、図13は同じく底面図、図14はヘルメットを取り除いた左側面図、図15は同じく背面図、図16はシャーシ軸に一対の搭乗デッキが取り付けられた状態の斜視図、図17は同じく平面図、図18は同じく右側面図、図19は同じく正面図である。
【0040】
図20は本発明の不安定走行装置に係る軸結合部材の斜視図、図21はシャーシ軸の要部を示す斜視図、図22は軸結合部材とシャーシ軸の結合状態を示す説明図、図23は傾き検出手段の配置を示す説明図、図24はシャーシ軸等の支持構造等を示す説明図、図25は軸結合部材の取付状態を示す説明図、図26は補助輪を示す斜視図、図27は補助輪の支持構造を示す説明図、図28は同じく一部を断面して正面から見た説明図、図29は同じく一部を断面して側面から見た説明図、図30は一対の搭乗デッキの一方に片足を乗せた状態の説明図、図31は一対の搭乗デッキに両足を乗せた状態の説明図、図32は両足でバランスを取った状態の説明図、図33は同じく全体を示す説明図、図34は補助輪の制動時における制御を示すブロック図、図35は乗車時の制御を示すブロック図、図36は非常停止時における制御を示すブロック図、図37は降車時の制御を示すブロック図である。
【実施例1】
【0041】
この実施例で説明する不安定走行装置1は、図1〜図5に示すように、平行に配置された2つの車輪2L,2Rと、その2つの車輪2L,2R間に配置された車両本体3と、その車両本体3に取り付けられると共に2つの車輪2L,2Rを回転駆動する車輪駆動手段としての2つの車輪駆動ユニット4L,4Rと、2つの車輪2L,2Rの車軸方向Xと直交する走行方向Yに延在され且つ車両本体3に回転自在に支持されたシャーシ軸5と、そのシャーシ軸5の軸方向の両側に固定された一対の搭乗デッキ6L,6Rと、一対の搭乗デッキ6L,6Rの走行方向Yの傾き角度(ピッチ角)を検出するピッチ角検出手段としてのジャイロセンサ7と、一対の搭乗デッキ6L,6Rの車軸方向Xの傾き角度(ロール角)を検出するロール角検出手段としての回転角検出器8と、車両本体3に作用する加速度を検出する加速度センサ9と、これらの検出手段7,8及び9から入力される情報信号に基づき所定の演算処理を実行して2つの車輪駆動ユニット4L,4Rに制御信号を出力して走行状態を制御する車両制御手段としての制御装置10等を備えて構成されている。
【0042】
車両本体3は、四角形の筐体からなるケーシング11を備えている。ケーシング11は、上下方向に重ね合わされ、互いに着脱可能とされた上ケースと下ケースとから構成されている。このケーシング11の一方に対向する2の側面のうちの一面の外側には第1の車輪駆動ユニット4Lが配置され、その反対側の他面の外側には第2の車輪駆動ユニット4Rが配置されている。2つの車輪駆動ユニット4L,4Rは同一のものであって、電動モータ12と、その電動モータ12と一体に設けられた減速機13とで構成されている。2つの車輪駆動ユニット4L,4Rは、図13及び図24等に示すように、互いに平行をなす2本の支持軸14,14の両端に、それぞれマウントインシュレータ15を介して弾性的に支持されている。
【0043】
2本の支持軸14,14は、それぞれケーシング11を貫通して両端が外部に突出されており、その突出部にマウントインシュレータ15が取り付けられている。マウントインシュレータ15は、車輪駆動ユニット4L,4Rの振動を吸収し、或いはその振動の伝達を遮断等するためにゴム状弾性体によって形成されている。各マウントインシュレータ15は2本の支持軸14,14間に掛け渡されており、その間に車輪駆動ユニット4L,4Rがそれぞれ保持されている。図24に示す符合16は、支持軸14に固定されたスペーサである。各スペーサ16はケーシング11とマウントインシュレータ15との間に介在されていて、支持軸14の軸方向への移動を制限している。
【0044】
2つの車輪駆動ユニット4L,4Rの電動モータ12は内側に配置されていて、外側に固定された減速機13の先端側の回転部に、第1及び第2の車輪2L,2Rがそれぞれボルト及びナットからなる固着手段によって着脱可能に取り付けられている。第1及び第2の車輪2L,2Rの回転中心となる車軸は、互いの軸心線が一致するように同軸上に設定されており、この軸心線が前記車軸方向Xの基準軸となっている。更に、各車輪駆動ユニット4L,4Rには、それぞれの車輪2L,2Rの回転角度及び回転数を検出してその検出信号を出力する回転検出手段が設けられている。
【0045】
第1及び第2の車輪2L,2Rとして、この実施例では適当な強さを備えた柔軟性のあるもの、例えば、空気入りタイヤが用いられている。即ち、各車輪2L,2Rは、車輪駆動ユニット4L,4Rの出力部に固定された円盤状のホイール17と、そのホイール17の外周面に装着されたゴム製のタイヤ18とから構成されている。タイヤ18には適当な圧力の空気が充填されており、負荷荷重の相違に基づく左右タイヤ18の弾性変形量の違いによる左右車輪2L,2Rの接地半径の違いによっても旋回動作し得るように構成されている。なお、第1及び第2の車輪2L,2Rとしては、この実施例の空気入りタイヤに限定されるものではなく、例えば、ゴム状弾性体のみからなるゴムタイヤ、或いは木製車輪や金属製車輪その他の車輪状のものを適宜に用いることができる。
【0046】
また、ケーシング11には、図12〜14及び図24等に示すように、2本の支持軸14,14と直交する方向(走行方向)に延在されたシャーシ軸5が貫通されている。シャーシ軸5は、ケーシング11の2つの車輪駆動ユニット4L,4Rが配置された1の側面と直交する側面に設けた一対の軸受部20によって回動自在に支持されている。このシャーシ軸5は、図21及び図24に示すように、軸方向に接続される2本の軸部材5L,5Rによって構成されている。
【0047】
2本の軸部材5L,5Rは同一のものであって、その当接部を軸結合部材21で固定することによって一体的に構成されている。各軸部材5L,5Rは、軸方向の中途部に鍔部22が設けられたパイプ状の部材からなり、互いに当接される端部には同一形状の切欠き部23,23が設けられている。切欠き部23,23は、2本の軸部材5L,5Rの相対的な回動を防止して回動方向に一体化させるものである。これらの切欠き部23,23には軸結合部材21の回転止め凸部24が係合され、この回転止め凸部24を介して2本の軸部材5L,5Rが回動方向に一体とされている。更に、各軸部材5L,5Rには、配線用のリード線等が挿通される挿通穴5aが複数箇所に設けられている。
【0048】
軸結合部材21は、図20に示すような構成を有している。軸結合部材21は、2本の軸部材5L,5Rの接合部を適当な幅で保持できるブロック状の部材からなり、その中央部に、2本の軸部材5L,5Rが両側から挿入される貫通穴25が設けられている。この貫通穴25の中間部に、前記回転止め凸部24が設けられている。回転止め凸部24は、周方向に略180度連続された円弧状の凸部からなり、当接された2つの切欠き部23,23間に隙間なく嵌り合う大きさに形成されている。
【0049】
更に、軸結合部材21には、貫通穴25に連通されるスリット26が設けられている。このスリット26を設けることで貫通穴25の径を弾性限度内において縮径可能としている。そして、軸結合部材21には、図22に示すように、スリット26と直交する方向に延びる2つのネジ穴27が設けられている。このネジ穴27に挿入されるボルトを締め込むことにより、貫通穴25が縮径されてシャーシ軸5が軸結合部材21に締付固定される。この軸結合部材21には、シャーシ軸5の回動量(ロール角)を制限する一対のストッパ部28a,28bと一対のアーム部29a,29bとが設けられている。
【0050】
一対のストッパ部28a,28bは、スリット26が延びる方向に延在されていると共に、当該スリット26を挟んで両側に対向するように設けられている。この一対のストッパ部28a,28bに対して、図示しないがケーシング11の裏面にはストッパ受部が対向するように設けられている。これにより、シャーシ軸5が予め設定された所定のロール角傾いたときに、一方のストッパ部がストッパ受部に当接して所定角度以上にシャーシ軸5が傾くのを防止するロール角制限機構が構成されている。
【0051】
一対のアーム部29a,29bは、スリット26が延びる方向と垂直をなす外側に展開されている。図16〜図19及び図25に示すように、一対のアーム部29a,29bのストッパ部28a,28b側の面には、ケーシング11の内面に固定された複数個の弾性体32a,32bが所定の隙間を空けて対向するように設けられている。これらの弾性体32a,32bと一対のアーム部29a,29bとによってロール角ダンパ機構31が構成されている。ロール角ダンパ機構31は、ロール角制限機構が働いてシャーシ軸5の回動を制限する最大ロール角の直前において、弾性体32a,32bをアーム部29a,29bに当接させて衝突時の衝撃力や振動を吸収して和らげる働きをなすものである。
【0052】
ロール角ダンパ機構31の弾性体32a,32bは、この実施例では6個の円筒状を成す耐圧弾性材料、例えば、シリコンゴム、ブチルゴム、ウレタンゴム等によって構成されている。このロール角ダンパ機構31の一側に配置した3個の弾性体32a(又は32b)の合計の剛性強さは、例えば、80Nm(ニュートンメーター)程度が好適である。この80Nmは、平均的な成人男性が両足で踏ん張ってシャーシ軸5をロール方向に回転させることができる程度の大きさである。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、運転操作者が子供である場合、女性である場合等のように、その者の体力に応じて適宜な値に設定できることは勿論である。また、シャーシ軸5のロール角度は、±15度程度が好適である。しかしながら、本発明はこれに限定されるものでないことは勿論である。
【0053】
シャーシ軸5のロール角度を検出するため、ケーシング11の内面にはロール角検出手段の一具体例を示す回転角検出器8が取り付けられている。回転角検出器8は、図24及び図25に示すように、ロータリエンコーダによって構成されている。回転角検出器8は、その回転軸に取り付けられたゴムローラ34を有しており、そのゴムローラ34をシャーシ軸5の外周面に回転接触させることによってシャーシ軸5の回転角度を検出できるようになっている。この回転角検出器8は、取付ブラケット35を介してケーシング11に支持されている。
【0054】
シャーシ軸5は、一対の鍔部22,22を一対の軸受部20,20で支持することにより所定の角度範囲内でケーシング11に回転自在に取り付けられている。このシャーシ軸5の両端にはデッキブラケット36が一体的に取り付けられており、それぞれのデッキブラケット36,36が軸方向外側に延在されている。これらのデッキブラケット36,36の上に、一対の搭乗デッキ6L,6Rがそれぞれ固定ネジ等の固着手段によって着脱可能に取り付けられている。
【0055】
一対の搭乗デッキ6L,6Rは、車両本体3を挟んで車軸方向Xと直交する走行方向Yの両側に配置されている。一対の搭乗デッキ6L,6Rは同一のものであって、運転操作者が片足ずつ乗ることができる大きさを有すると共に、両足をやや広げた間隔に設定されている。各搭乗デッキ6L,6Rは、デッキブラケット36に固定されるデッキ本体38と、このデッキ本体38の下部に着脱自在に装着されるデッキカバー39とから構成されている。デッキ本体38とデッキカバー39との間に設けられた空間部には、図6〜図11に示すように、各種の電装部品が収納されている
【0056】
図6〜図11は、図1〜図5に示す不安定走行装置1のうち、一対の搭乗デッキ6L,6Rの各デッキカバー39を取り外した状態を示す図である。図8及び図9に示すように、第1の搭乗デッキ37Lには、第1及び第2のドライバ基板ユニット41a,41bとバッテリ電源基板ユニット42と第1及び第2の回生抵抗器43a,43bとが配置されている。これらの基板ユニット等は、すべてデッキ本体38の下面に懸架されていて、固定ネジ等の固着手段によって着脱可能に取り付けられている。また、第2の搭乗デッキ37Rには、制御基板ユニット44と主電源基板ユニット45と荷重センサ基板ユニット46とが配置されている。これらの基板ユニットも同じく、すべてデッキ本体38の下面に懸架されていて、固定ネジ等の固着手段によって着脱可能に取り付けられている。
【0057】
各基板ユニット41a,41b、42、44,45及び46は、それぞれに所定の配線パターンが設けられた配線基板と、各配線基板に実装された電子部品等によって構成されている。そして、車両本体3内に収納された図示しないバッテリ電源とそれぞれ電気的に接続されている。バッテリ電源と各基板ユニット41a,41b〜46間を接続するリード線は、シャーシ軸5に設けた挿通穴5aから挿入され且つ内部の穴を通して配線されている。従って、リード線が外部に露出されて外観上の見映えが悪くなるのを回避できると共に、相対的に回動変位する部分間においても両者をリード線によって確実に接続することができる。
【0058】
前記第1及び第2のドライバ基板ユニット41a,41b、バッテリ電源基板ユニット42、第1及び第2の回生抵抗器43a,43bと、制御基板ユニット44、主電源基板ユニット45、荷重センサ基板ユニット46等によって車両制御手段の一具体例を示す制御装置10が構成されている。
【0059】
また、図8及び図9等に示すように、一対の搭乗デッキ6L,6Rのそれぞれ先端側には、下方に突出する一対の補助輪50L,50Rが設けられている。一対の補助輪50L,50Rは同一のものであって、図26〜図29に示すような構成とされている。即ち、各補助輪50L,50Rは、制動車輪51と、この制動車輪51が回転自在に保持された車輪軸52と、この車輪軸52を支持する車輪ブラケット53と、この車輪ブラケット53をデッキブラケット36に移動可能に支持する支持ボルト54と、車輪ブラケット53をデッキブラケット36から離反する方向に付勢する弾性体55等を備えて構成されている。
【0060】
補助輪50L,50Rの制動車輪51は、中央部の直径を両端部の直径よりも大きくしたクラウン形状のローラ56と、このローラ56の穴に嵌合された軸受スリーブ57とから構成されている。ローラ56をクラウン形状とすることにより、路面に接地するときにロール方向の倒れが生じている場合にも、ローラ56をスムースに回転させて安定した走行を確保することができる。しかも、制動車輪51が路面に接地した際に、軸受スリーブ57と車輪軸52との間に摺動摩擦力を生じさせて機械的に緩やかな回転制動力を得ることができる。なお、ローラ56の材質としては、例えば、ウレタンゴムが好適であるが、その他のゴムやエンジニアリングプラスチック等を用いることもできる。
【0061】
この補助輪50L,50Rの制動車輪51としては、前記軸受スリーブ57に代えて一方向クラッチを用いる構成としてもよい。一方向クラッチは、一方向だけに動力を伝える構造の軸継手であって、その逆転を防止するものである。この一方向クラッチを制動車輪51に用いる場合には、走行方向前側に移動するときの回転を許容し、後ろ側へ戻るときの回転を阻止するように使用する。このように用いる場合には、走行側に重心がある走行状態から急停止させるときに、不安定走行装置1を可能な限り瞬時に停止することができる。
【0062】
即ち、不安定走行装置1の走行時、走行方向Y前方へのピッチ角が大きくなると、そのピッチ角の増加に応じて走行速度が増加する。この前方ピッチ角が、予め設定された許容ピッチ角(前後の傾斜可動角、例えば10°〜25°)を越えると、対応する補助輪50L又は50Rが路面に接地する。このとき、その制動車輪51は、進行方向に対しては滑らかに回転し、緩やかな回転制動力を発揮する。
【0063】
これに対して、不安定走行装置1を制動するために運転操作者が進行方向と逆方向に重心を移動させると、後方ピッチ角の増加量に応じて急速に減速される。この際、後方ピッチ角が許容ピッチ角を越えると、これに対応する進行方向後方に位置する補助輪50R又は50Lが路面に接地する。このとき、その路面に接地する制動車輪51は、進行方向に対して回転を阻止するように作用し、回転することなくロックして路面に当接される。その結果、不安定走行装置1は、制動車輪51をロックした状態で接地面に擦り付けるようにして移動するため、急速に大きな制動力を発生させながら比較的安全に急停車させることができる。
【0064】
補助輪50L,50Rの車輪ブラケット53は、下部に開口された門形の部材からなり、対向設置された軸受片53a,53a間に制動車輪51が収納されている。車輪ブラケット53の一対の軸受片53a,53aの先端には、制動車輪51が装着された車輪軸52の軸方向両端に設けた固定部52a,52aが係合される係合溝53bがそれぞれ設けられている。係合溝53bはコ字状の溝部からなり、この係合溝53bに四角形の固定部52aが嵌め込まれている。各固定部52aには固定ネジ58が下方から上方へ挿通されており、この固定ネジ58の締め込みによって車輪軸52が車輪ブラケット53の下端に着脱可能に取り付けられている。
【0065】
図27〜図29に示すように、車輪ブラケット53はデッキブラケット36の先端下部に、2本の支持ボルト54,54と2個のスリーブガイド60,60を介して所定範囲内において接近及び離反可能に支持されている。スリーブガイド60は、軸方向の一端に外向きのフランジ部60aが設けられた円筒体からなり、その中央穴に支持ボルト54が挿通されている。この支持ボルト54が挿通された2個のスリーブガイド60,60が、デッキブラケット36に車輪軸52の軸方向に所定の間隔をあけて設けた2つの貫通穴61,61に摺動自在に挿通されている。各貫通穴61の上部には、スリーブガイド60のフランジ部60aが挿入される座ぐり穴62が設けられている。
【0066】
貫通穴61に挿通されたスリーブガイド60は、フランジ部60aを座ぐり穴62の座面に接触させた状態で先端部がデッキブラケット36の下面から適宜量だけ下方に突出されている。スリーブガイド60の下端面は車輪ブラケット53の上面に当接され、その状態で支持ボルト54のネジ部が車輪ブラケット53のネジ穴に螺合されている。このとき、デッキブラケット36の下面と車輪ブラケット53の上面との間には適宜長さの隙間Eが設けられている。従って、車輪ブラケット53は、隙間Eの距離だけデッキブラケット36に対して相対的に接近及び離反可能とされている。
【0067】
このデッキブラケット36と車輪ブラケット53の間には、車輪ブラケット53を常時デッキブラケット36から離反させる方向に付勢する弾性体の一具体例を示すコイルバネ55が介在されている。このコイルバネ55を所定位置に保持するため、デッキブラケット36と車輪ブラケット53には、互いに対向する位置にバネ受け穴63a,63bが設けられている。コイルバネ55のバネ力に抗して当該コイルバネ55を押し縮めることにより、車輪ブラケット53をデッキブラケット36に近づける方向に移動することができる。
【0068】
これにより、制動車輪51はコイルバネ55によって、常にデッキブラケット36に対してフローティング状態に保持されている。このコイルバネ55のバネ力(例えば、10kg、20kg、30kg等)により、一定値以下の外力を吸収し、振動を減衰させるようにしている。そして、コイルバネ55のバネ力よりも大きな外力が制動車輪51に加えられ、そのコイルバネ55が所定量だけ縮んだときに、その状態を駆動停止スイッチ66で検出するようにしている。
【0069】
なお、本実施例においては、弾性体としてコイルバネ55を用いた例について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、板バネやゴム状弾性体その他の弾性体を適用することができる。また、車輪ブラケット53の上面に、スリーブガイド60の先端が嵌合される座ぐり穴64を設けたが、その座ぐり穴64を廃止して、車輪ブラケット53の上面に直接スリーブガイド60の先端面を当接させる構造としてもよい。
【0070】
図29に示すように、駆動停止スイッチ66は、一対の補助輪50L,50Rにそれぞれ設けられている。駆動停止スイッチ66は、デッキブラケット36に固定されたスイッチ本体67と、車輪ブラケット53に固定されたスイッチングドグ68とを有している。スイッチ本体67はスイッチホルダ69に固定されていて、そのスイッチホルダ69が固定ネジ70による固着手段によってデッキブラケット36の下面に着脱可能に取り付けられている。スイッチ本体67の作動子67aは下方に突出されており、この作動子67aに対して所定の隙間をあけてスイッチングドグ68の操作部68aが対向されている。そして、スイッチングドグ68は、固定ネジ71からなる固着手段によって車輪ブラケット53の背面に固定されている。
【0071】
駆動停止スイッチ66は、一対の搭乗デッキ6L,6Rの走行方向におけるピッチ角が許容ピッチ角(例えば、10°〜25°の範囲内で適宜に設定する。)となったときに、車輪駆動ユニット4L,4Rの駆動を中止して走行等の制御を停止させることを目的とするものである。即ち、不安定走行装置1の走行時等において、一対の搭乗デッキ6L,6Rのピッチ角が許容ピッチ角に達して補助輪50L,50Rのコイルバネ55を押し縮めたときに、スイッチングドグ68でスイッチ本体67をオンとして、車輪駆動ユニット4L,4Rを減速して停止させる。
【0072】
その後、一対の搭乗デッキ6L,6Rのピッチ角が水平方向に戻され、補助輪50L,50Rの負荷が開放(又は減少)されて制動車輪51が元の位置に戻ろうとすると同時に、スイッチングドグ68の操作部68aがスイッチ本体67の作動子67aから離れる。これにより、駆動停止スイッチ66がオフとなり、車輪駆動ユニット4L,4Rが再び起動されて、走行等の制御が再開される。
【0073】
このときの駆動停止スイッチ66による補助輪の制動時における制御状態を図34に示す。図34において、まず、ステップS1により、定格荷重ばねであるコイルバネ55の状態を検知する。この場合、コイルバネ55が縮みを開始しているときには、車輪2L,2Rの制動を開始しているとする。次に、ステップS2に移行して、コイルバネ55に負荷されている荷重が、そのコイルバネ55のバネ力(例えば、30kg)を超えたか否かを判定する。この判定の結果、負荷荷重が定格荷重に到達していないときにはステップS1に戻り、負荷荷重が定格荷重に到達しているときには、ステップS3に移行する。
【0074】
ステップS3では、電気ブレーキである駆動停止スイッチ66をオンとする。そして、ステップS4に移行する。ステップS4では、メカストッパであるスイッチングドグ68の突き当たりを停止し、次のステップS5に移行する。ステップS5では、一対の車輪駆動ユニット4L,4Rの動作を停止して、本車輪である一対の車輪2L,2Rを制動させる。これにより、不安定走行装置1の走行が停止される。
【0075】
このような構成及び作用を有する駆動停止スイッチ66は、補助輪50L,50Rが路面に接地した状態を検出する接地検出スイッチとしても用いることができる。この接地検出スイッチは、運転操作者が不安定走行装置1に乗り降りする際に作動し、利用するものである。この接地検出スイッチの作動については、後に詳細に説明する。
【0076】
図2、図7及び図15等に示すように、一対の搭乗デッキ6L,6Rの各デッキ本体38の上面には、運転操作者の体重移動によるピッチ方向及びロール方向における重心の移動を検出する一対の荷重センサ75L,75Rが設けられている。各荷重センサ75L,75Rは、シャーシ軸5を中心にして一方の車輪4L側に配置された第1のセンサプレート75aと、他方の車輪4R側に配置された第2のセンサプレート75bとから構成されている。そして、各荷重センサ75L,75Rは、滑り止め用のデッキシート76によって覆われている。
【0077】
一対の荷重センサ75L,75Rは、片足ずつ乗せられる一対の搭乗デッキ6L,6Rにおける運転操作者の各足毎に負荷される荷重を検出し、その重量配分から運転操作者の不安定走行装置1上における重心位置を検出するものである。この一対の荷重センサ75L,75Rにより、不安定走行装置1のピッチ方向における重心位置を検出することができる。また、各荷重センサ75L,75Rを一対のセンサプレート75a,75bで構成し、各搭乗デッキ6L,6Rにおいて、両センサプレート75a,75bをシャーシ軸5の両側に対称に配置している。これにより、不安定走行装置1のロール方向における重心位置を検出することができる。
【0078】
また、図23に示すように、車両本体3のケーシング11の上面には、車両本体3を含む一対の搭乗デッキ6L,6Rの走行方向の傾き(姿勢の変化)であるピッチ角を検出するピッチ角検出手段の一具体例を示すジャイロセンサ7と、車両本体3に作用する速度又は加速度を検出する加速度センサ9とが搭載されている。ジャイロセンサ7は、車両本体3が重力方向に対してどの程度傾いたかを見るものであり、その傾き角を知ることによって車両本体3を含む一対の搭乗デッキ6L,6Rの走行方向におけるピッチ角を検出することができる。加速度センサ9は、車両本体3に作用する速度又は加速度を検出するものである。
【0079】
これらジャイロセンサ7及び加速度センサ9の検出信号に基づいて不安定走行装置1の走行、加速及び減速、制動の各制御が行われる。しかしながら、ピッチ角検出手段としては、前記ジャイロセンサ7に限定されるものではなく、車両本体3等の姿勢変化を検出できる各種の検出装置、検出器を適用できるものである。
【0080】
加速度センサ9とジャイロセンサ7は、それぞれブラケット77,78を介してセンサ基板79に固定されている。加速度センサ9とジャイロセンサ7との間には適当な大きさの隙間が設定されていると共に、両センサ9,7の中心が車軸上に一致するようにセンサ基板79がケーシング11の上面に固定されている。このように配置することにより、車両本体3に作用する速度若しくは加速度並びに重力加速度を検出することができる。
【0081】
これらの加速度センサ9及びジャイロセンサ7は、図1〜図3等に示すように、半球形の容器体からなるヘルメット80によって覆われている。ヘルメット80は、2つのセンサを含むセンサ基板79の全体を覆うことができる大きさとされていて、不安定走行装置1の操作部としての3つのスイッチ82〜84が設けられている。即ち、ヘルメット80の上面の中央部には姿勢制御スイッチ82が配置され、その側部には非常停止用のテザースイッチ83が配置されていて、側面部には主電源スイッチ84が配置されている。
【0082】
主電源スイッチ84は、車両本体3に搭載されたバッテリ電源の電力を装置内の各種電気機器、電気部品等に供給すると共にその供給を停止するオン・オフスイッチである。姿勢制御スイッチ82は、車両本体3及び一対の搭乗デッキ6L,6Rの走行方向における姿勢をシーソー状態のようにバランスさせる制御を行わせるためのオン・オフスイッチである。また、テザースイッチ83は、運転操作者が一対の搭乗デッキ6L,6Rから落下した場合等において、自動的に車輪駆動ユニット4L,4Rの作動を停止させて非常停止を行い、不安定走行装置1が無人走行を継続するのを防止するものである。
【0083】
これらのスイッチ類、加速度センサ7A、ジャイロセンサ7B、回転検出器8、一対の荷重センサ75L,75R及び一対の車輪駆動ユニット4L,4R等は、制御装置10と電気的に接続されている。この制御装置10によって不安定走行装置1の制御が行われる。制御装置10は、例えばマイクロコンピュータ等を有して構成されており、ジャイロセンサ7、回転検出器8及び加速度センサ9から入力されるそれらの検出信号に基づき所定の演算処理を実行し、必要な制御信号を出力して一対の車輪駆動ユニット4L,4Rの駆動を制御する。
【0084】
制御装置10は、具体的には、不安定走行装置1の走行、制動、旋回、乗車、降車、非常停止等の状態に応じて、それぞれ必要な制御信号を出力して一対の車輪駆動ユニット4L,4R等の駆動制御を実行する。
【0085】
まず、運転操作者が不安定走行装置1に搭乗する場合について、図30〜図33及び図35を参照して説明する。
図35において、まず、ステップS10にて、運転操作者が乗り易い左右どちらか一方に不安定走行装置1を傾斜させ、対応する乗り易い側の補助輪50L(又は50R)を路面90に接触させて一対の搭乗デッキ6L,6Rを安定化させる。次に、ステップS11に移行して、車両本体3に搭載しているヘルメット80に設置されている主電源スイッチ84を手動操作でオンする。
【0086】
次に、ステップS12に移行して、図30に示すように、傾斜して着地している側の搭乗デッキ6L(又は6R)に運転操作者が片足で搭乗し、その片足に全体重を掛けて、その搭乗デッキに設けられている補助輪50L(又は50R)の接地検出スイッチを兼ねる駆動停止スイッチ66をオンさせる。次に、ステップS13に移行して、ヘルメット80の中央部に設置されている姿勢制御スイッチ82を手動操作によってオンすると共に、他方の片足を他方の搭乗デッキ6R(又は6L)に乗せる(図31に示す状態)。そして、図32に示すように、両足から一対の搭乗デッキ6L,6Rに加えられる荷重を調整して、一対の搭乗デッキ6L,6Rを路面90と平行になるようにバランスさせる。
【0087】
これにより、それまでオンとされていた駆動停止スイッチ(接地検出スイッチ)66がオフになると共に、一対の搭乗デッキ6L,6R上に設置されている一対の荷重センサ75L,75Rによって運転操作者の各足から加えられる荷重が検出される。このとき、駆動停止スイッチ66がオンからオフに切り換わる信号をトリガとして、不安定走行装置1の姿勢制御が開始される。
【0088】
不安定走行装置1の姿勢制御が開始されたところで、運転操作者が走行したい方向に重心を移動することにより、車両本体3を含む一対の搭乗デッキ6L,6Rが、その走行したい方向に傾斜(ピッチ角)する。これにより、車両本体3のピッチ角がジャイロセンサ7によって検出され、その検出信号が制御装置10に供給されると共に、車両本体3に作用する加速度が加速度センサ9によって検出され、その検出信号が制御装置10に供給される。
【0089】
このとき、不安定走行装置1は、まだ停止状態にあるため、車両本体3の姿勢変化の加速度に応じた制御信号が制御装置10から一対の車輪駆動ユニット4L,4Rに出力される。その結果、一対の車輪駆動ユニット4L,4Rが同様に駆動され、一対の車輪2L,2Rが同方向に同様に回転駆動されて、進行させたい方向に走り始める。この走行時、運転操作者が重心の移動量を大きくしてピッチ角を大きくすることにより、そのピッチ角に応じて走行速度が加速される。これとは逆に、運転操作者が走行方向と逆方向に重心を移動することにより、走行速度が減速される。そして、一対の搭乗デッキ6L,6Rを路面90と平行に戻すことにより、不安定走行装置1の走行が停止される。
【0090】
このような走行状態において、例えば、危険回避等を目的として瞬時に不安定走行装置1を停止させたい場合が生じることがある。かかる場合に、上述した通常の減速・停止動作によっては間に合わないことがあるが、本発明では、補助輪50L,50Rの働きによってかかる不安をなくすことができる。
【0091】
即ち、運転操作者が不安定走行装置1を瞬時に停止させることを目的として、進行方向と逆の方向に重心を大きく移動させると、一対の搭乗デッキ6L,6Rの傾き方向が逆になり、重心が移動した側の搭乗デッキに設けられている補助輪50R(又は50L)の制動車輪51が路面90に接触される。このとき、路面90に接触した補助輪等の作用を介して、次の順序によって制動される。
【0092】
まず、進行方向と逆の方向に運転操作者の重心が移動することにより、通常の姿勢制御に基づく停止動作が行われる。次に、制動車輪51を構成するローラ56と軸受スリーブ57による物理的ブレーキ作動が行われる。その後、大きな荷重が加わることによって補助輪のコイルバネ55が圧縮され、駆動停止スイッチ66がオンされて電気的ブレーキ作動が行われる。
【0093】
第1の姿勢制御に基づく停止動作は前述したため、第2の物理的ブレーキ作動から説明する。制動車輪51の軸受スリーブ57がメタル軸受である場合には、軸受スリーブ57が車輪軸52と摺動接触する際の摩擦抵抗によって制動力が得られ、走行速度が減速されて、適当な距離を走行した後に停止される。一方、軸受スリーブ57が一方向クラッチを有するものである場合には、前述したように制動車輪51がロックされるため、制動車輪51のロックを利用して大きな制動力が得られ、走行速度を急激に減速させることができる。
【0094】
第3の電気的ブレーキ作動は、次のようなことである。補助輪に大きな荷重が加わることによってコイルバネ55が所定量圧縮すると、車輪ブラケット53に固定したスイッチングドグ68の操作部68aが駆動停止スイッチ66のスイッチ本体67の作動子67aをオンする。これにより、駆動停止スイッチ66のオン信号が制御装置10に供給され、その信号に基づき制御装置10が、一対の車輪駆動ユニット4L,4Rにそれまで出力していた駆動信号の出力を停止する。その結果、一対の車輪2L,2Rの回転が停止されるため、不安定走行装置1を確実に停止することができる。
【0095】
次に、不安定走行装置1の旋回操作について説明する。不安定走行装置1の旋回操作は、運転操作者が旋回したい方向(ロール方向)に重心を移動することによって行うことができる。運転操作者が、車両本体3を含む一対の搭乗デッキ6L,6Rを、その走行したい方向に傾斜(ロール角)すると、一対の搭乗デッキ6L,6Rのロール角が、シャーシ軸5の外周面にゴムローラ34を接触させた回転角検出器8によって検出される。この回転角検出器8の検出信号が制御装置10に供給されると共に、そのときの車両本体3に作用する加速度が加速度センサ9によって検出され、その検出信号が制御装置10に供給される。
【0096】
これにより、制御装置10が、検出されたロール角度とそのときの走行速度とに基づいて旋回半径を演算し、それに対応した駆動信号を制御装置10が一対の車輪駆動ユニット4L,4Rに出力する。即ち、制御装置10は、ロール角度(旋回指令量)と現在の車両速度から旋回半径を決定し、そのときの遠心加速度が最大加速度となるように旋回半径を決定し、これにより決定された旋回半径を最小旋回半径として実現できる旋回量を最大旋回量とするように制御する。これにより、運転操作者は、旋回時の遠心力によっても振り落とされることなく、安定性よくスムースに旋回することができる。
【0097】
このような旋回半径は、例えば、次のようにして求めることができる。その旋回半径は、入力された旋回量(一対の搭乗デッキ6L,6Rのロール角)と現在の走行速度から決定されるものであって、現在の速度における遠心加速度が設定最大加速度Gmaxとなるような旋回半径Rminを最小半径とし、その旋回量Tを100%とする。走行速度をVm、旋回半径をRmとすると、運転操作者には、旋回の外側に向かう加速度(V2/R)が生じる。
【0098】
いま、現在の速度V=10km/h、設定最大加速度Gmax=0.1G、旋回量T=80%とすると、最小旋回半径Rminは、
【数1】
である。従って、旋回半径Rは、
【数2】
となる。
【0099】
また、上記旋回操作は、運転操作者のロール方向における体重移動を、一対の搭乗デッキ6L,6Rにおける左右両足から受ける一対の荷重センサ75L、75Rで検出される荷重を用い、その検出値に基づいて一対の車輪駆動ユニット4L,4Rを制御するようにしてもよい。即ち、進行方向デッキ中央を境に車軸方向X両側に配置された一対のセンサプレート75a,75bでロール方向の重心位置を検出し、その重量配分量の差異と、予め設定された相対旋回量とを比較して旋回指令値を決定することもできる。また、体重移動による一対の車輪2L,2Rのタイヤ径の変化を利用して、タイヤ径の変化量だけで緩やかに旋回させることもできる。
【0100】
一対の荷重センサ75L、75Rで運転操作者の重心移動を検出して制御する場合には、運転操作者固有の体重ごとに適正な姿勢制御における姿勢角フィードバックゲイン(Kpp)を求め、その姿勢角フィードバックゲイン(Kpp)で補正するようにする。これにより、不安定走行装置1における制御の適正化を図り、挙動の安定した制御を実現することができる。
【0101】
また、走行中に運転操作者が不安定走行装置1から急に降りたり、或いは落下したような非常時においては、制御装置10によって、例えば、図36に示すような制御が行われる。まず、ステップS21において、一対の荷重センサ75L、75Rが運転操作者の体重を感知しているか否かを判定する。この判定は、一対の荷重センサ75L、75Rがオフとなったとき、即ち、一対の荷重センサ75L、75Rが運転操作者の体重を感知しなくなったときには、運転操作者が一対の搭乗デッキ6L,6Rから降りたか、落下していなくなった場合であると判定するものである。その結果、一対の荷重センサ75L、75Rがオフになったと判定したときには、直ちに制御を中止し、非常停止の措置を行う。
【0102】
これに対し、ステップS21において、一対の荷重センサ75L、75Rがオフになっていないと判定したときには、ステップS22に移行する。ステップS22では、接地検知スイッチを兼ねる駆動停止スイッチ66がオンとされたか否かを判定する。この判定は、駆動停止スイッチ66が運転操作者の手動操作によって行われるものであるため、運転操作者において、降車する意思が積極的にあるかどうかを見るものである。この判定の結果、駆動停止スイッチ66がオンとされたと判定したときには、直ちに制御を中止し、非常停止の措置を行う。
【0103】
一方、ステップS22において、駆動停止スイッチ66がオンになっていないと判定したときには、ステップS23に移行する。ステップS23では、テザースイッチ83又はその他の非常停止スイッチ(本実施例では設置されていない)がオンとされたか否かを判定する。この判定は、テザースイッチ83又はその他の非常停止スイッチで運転操作者の体重を感知しなくなったことを検知することにより、一対の車輪駆動ユニット4L,4Rを緊急停止させて機械的な非常停止を行うか否かを判定するものである。
【0104】
この判定の結果、テザースイッチ83又はその他の非常停止スイッチがオンとされたと判定したときには、直ちに制御を中止し、非常停止の措置を行う。一方、ステップS22において、テザースイッチ83又はその他の非常停止スイッチがオンになっていないと判定したときには、ステップS21に戻り、再びステップS21からの処理を繰り返す。
【0105】
走行の終了後、運転操作者が不安定走行装置1から降車する場合には、制御装置10によって、例えば、図37に示すような制御が行われる。まず、ステップS31において、不安定走行装置1の姿勢制御の状態であって走行を停止した状態において、姿勢制御スイッチ82をオフにする。これにより、不安定走行装置1の姿勢制御が停止され、一対の搭乗デッキ6L,4Rが水平方向にバランスされてシーソー状態になる。次に、ステップS32に移行して、運転操作者が降車し易い左右どちらか一方の搭乗デッキ6L(又は4R)に体重を掛けて傾斜させ、その傾斜側の補助輪50L(又は50R)を路面90に着地させて不安定走行装置1を安定化させる。
【0106】
次に、ステップS33に移行して、運転操作者が搭乗デッキ6L(又は4R)から降車する。その後、ステップS34に移行して、主電源スイッチ84をオフする。これにより、不安定走行装置1の一連の制御が完了する。
【0107】
以上説明したように、本発明の不安定走行装置1によれば、運転操作者の体重移動により好みに応じて前進走行、後進走行、左右への旋回操作を自在に行うことができる。しかも、不安定走行装置1の形状及び重量が、車軸を中心に左右にバランスされた構成となっているため、例えば横風や路面の凹凸等の外乱による影響を受けることが少なく、安定した姿勢制御を行うことができ、安定性の高い不安定走行装置1を提供することができる。更に、運転操作者の体重移動のみで操縦できるため、乗り手の意志に的確に反応して楽に操作ができると共に、手の不自由な人でも扱うことができ、手で操縦する一般車両のように頭の考えと手の不一致による誤操作のおそれを解消し、走行装置本来の移動する楽しみを味わうことができる。
【0108】
また、本発明の不安定走行装置1は、走行方向に前後の区別がないため、サーフィン感覚の操作性を導入してスポーツライクに乗りこなすことができると共に、坂道を登ったり、起伏の激しい娯楽性の高い場所での走行を可能とすることができる。更に、走行中の起伏や段差等に対しても、車輪が路面から離れた場合には、離れる直前までの速度を維持したまま車輪を回転し続け、再び車輪が路面に着地した(トルクが掛かった)ときに通常の制御へ戻すことにより、着地時における不安定さを無くし、運転操作者の転倒を最小限に抑えることができる。
【0109】
本発明は、上述し且つ図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において種々の変形実施が可能である。
例えば、前記実施例においては、左右の車輪2L,2Rを回転駆動するために、それぞれに1台ずつ車輪駆動ユニット4L,4Rを設け、各車輪2L,2Rを個別に回転駆動する構成としたが、車輪駆動ユニットを1台にて構成して、1台の車輪駆動ユニットで2個の車輪2L,2Rを回転駆動する構成としてもよい。また、前記実施例では、2個の車輪2L,2Rを平行に配置した例について説明したが、3個又は4個以上の車輪を平行に配置する構成とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】本発明の不安定走行装置の一実施例を示す外観斜視図である。
【図2】本発明の不安定走行装置の一実施例を示す平面図である。
【図3】本発明の不安定走行装置の一実施例を示す右側面図である。
【図4】本発明の不安定走行装置の一実施例を示す底面図である。
【図5】本発明の不安定走行装置の一実施例を示す正面図である。
【図6】本発明の不安定走行装置の一実施例を示すもので、デッキシートとデッキカバーを取り除いた外観斜視図である。
【図7】本発明の不安定走行装置の一実施例を示すもので、デッキシートとデッキカバーを取り除いた平面図である。
【図8】本発明の不安定走行装置の一実施例を示すもので、デッキシートとデッキカバーを取り除いた右側面図である。
【図9】本発明の不安定走行装置の一実施例を示すもので、デッキシートとデッキカバーを取り除いた底面図である。
【図10】本発明の不安定走行装置の一実施例を示すもので、デッキシートとデッキカバーを取り除いた正面図である。
【図11】本発明の不安定走行装置の一実施例を示すもので、デッキシートとデッキカバーを取り除いた背面図である。
【図12】本発明の不安定走行装置の一実施例を示すもので、デッキカバーと一方の車輪及び車輪駆動ユニットを取り除いた外観斜視図である。
【図13】本発明の不安定走行装置の一実施例を示すもので、デッキカバーと一方の車輪及び車輪駆動ユニットを取り除いた底面図である。
【図14】本発明の不安定走行装置の一実施例を示すもので、デッキカバーと一方の車輪及び車輪駆動ユニットとヘルメットを取り除いた左側面図である。
【図15】本発明の不安定走行装置の一実施例を示すもので、デッキカバーと一方の車輪及び車輪駆動ユニットとヘルメットを取り除いた背面図である。
【図16】本発明の不安定走行装置に係る一対の搭乗デッキとロール角ダンパ機構を示す斜視図である。
【図17】本発明の不安定走行装置に係る一対の搭乗デッキとロール角ダンパ機構を示す平面図である。
【図18】本発明の不安定走行装置に係る一対の搭乗デッキとロール角ダンパ機構を示す右側面図である。
【図19】本発明の不安定走行装置に係る一対の搭乗デッキとロール角ダンパ機構を示す正面図である。
【図20】本発明の不安定走行装置に係る軸結合部材の斜視図である。
【図21】本発明の不安定走行装置に係るシャーシ軸の一対の軸部材における接続側の要部を示す斜視図である。
【図22】本発明の不安定走行装置に係る軸結合部材とシャーシ軸の結合状態を示す説明図である。
【図23】本発明の不安定走行装置に係る車両本体に搭載された傾き検出手段の配置を示す説明図である。
【図24】本発明の不安定走行装置に係るシャーシ軸等の支持構造等を示す説明図である。
【図25】本発明の不安定走行装置に係る軸結合部材とシャーシ軸の結合状態を示す斜視図である。
【図26】本発明の不安定走行装置に係る一対の搭乗デッキに設けた補助輪の一方を示す斜視図である。
【図27】本発明の不安定走行装置に係る補助輪の斜視図である。
【図28】本発明の不安定走行装置に係る補助輪の一部を断面して正面側から見た説明図である。
【図29】本発明の不安定走行装置に係る補助輪の一部を断面して側面側から見た説明図である。
【図30】本発明の不安定走行装置への搭乗動作を説明するもので、一対の搭乗デッキの一方に片足を乗せた状態の説明図である。
【図31】本発明の不安定走行装置への搭乗動作を説明するもので、一対の搭乗デッキに両足を乗せた状態の説明図である。
【図32】本発明の不安定走行装置への搭乗動作を説明するもので、一対の搭乗デッキに乗って両足でバランスを取った状態の説明図である。
【図33】本発明の不安定走行装置への搭乗動作を説明するもので、一対の搭乗デッキに乗って両足でバランスを取った状態の全体を示す説明図である。
【図34】本発明の不安定走行装置に係る制御装置による補助輪の制動時における制御を示すブロック図である。
【図35】本発明の不安定走行装置に係る制御装置による補助輪の乗車時の制御を示すブロック図である。
【図36】本発明の不安定走行装置に係る制御装置による補助輪の非常停止時における制御を示すブロック図である。
【図37】本発明の不安定走行装置に係る制御装置による補助輪の降車時の制御を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0111】
1…不安定走行装置、 2L,2R…車輪、 3…車両本体、 4L,4R…車輪駆動ユニット(車輪駆動手段)、 5…シャーシ軸、 5L,5R…軸部材、 6L,6R…搭乗デッキ、 7…ジャイロセンサ(ピッチ角検出手段)、 8…回転角検出器(ロール角検出手段)、 9…加速度センサ、 10…制御装置(車両制御手段)、 11…ケーシング、 12…電動モータ、 21…軸結合部材、 31…ロール角ダンパ機構、 32a,32b…弾性体、 34…ゴムローラ、 36…デッキブラケット、 38…デッキ本体、 50L,50R…補助輪、 51…制動車輪、 52…車輪軸、 53…車輪ブラケット、 55…コイルバネ(弾性体)、 66…駆動停止スイッチ、 67…スイッチ本体、 68…スイッチングドグ、 75L,75R…荷重センサ、 75a,75b…センサプレート、 76…デッキシート、 80…ヘルメット、 82…姿勢制御スイッチ、 83…テザースイッチ、 84…主電源スイッチ、 90…路面、 X…車軸方向、 Y…走行方向
【技術分野】
【0001】
本発明は、2輪又は3輪以上の車輪を平行に配置して走行するようにした不安定走行装置に関し、特に、運転操作者の重心移動によって前進、後進、加速及び減速、左右旋回、停止等の制御を安定性良く行うことができる不安定走行装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の、この種の不安定走行装置としては、例えば、特許文献1に記載されているようなものがある。特許文献1には、手による操作を行わずに体重を利用して移動することを可能にした電動式移動体に関するものが記載されている(第1従来例)。この特許文献1に記載された電動式移動体は、「体重移動を検出するセンサと、このセンサからの検出信号に応じてモータを駆動制御するコントローラとを備え、前記モータの駆動制御によって移動する」ことを特徴としている。
【0003】
このような構成を有する電動式移動体によれば、「移動体の乗り手の姿勢、換言すれば移動体に設けられた圧力センサへの体重のかかり具合によりモータを駆動制御し、このモータの駆動制御状態に応じて、移動体のスピードや加速のコントロール、前後進、方向指示等を行うことができる」等の効果が期待される。
【0004】
従来の他の不安定走行装置としては、例えば、特許文献2に記載されているようなものもある。特許文献2には、同軸二輪車における姿勢制御方法に関するものが記載されている(第2従来例)。この特許文献2に記載された同軸二輪車における姿勢制御方法は、「一対の車輪と、両車輪間に架設された車軸と、車軸上に回動可能に支持された車体と、車体に装着された車輪駆動用モータと、車輪駆動用モータに作動指令を送る制御コンピュータと、車体の傾きを検出する角度検出手段とからなる同軸二輪車において、前記角度検出手段により検出される車体の傾斜角度を短時間間隔にてサンプリングし、車体のサンプリング傾斜角度を状態変数、フィードバックゲインを係数として制御コンピュータ内に予め入力設定された制御入力算出式に前記サンプリング値を代入して演算し、この演算に基づいて車輪駆動用モータの制御トルクを算出し、この算出された制御トルク相当の作動を制御コンピュータから車輪駆動用モータに指令する」ことを特徴としている。
【0005】
このような構成を有する同軸二輪車における姿勢制御方法によれば、「車体の傾きを検出する角度検出手段により検出される車体の傾斜角度を短時間間隔にてサンプリングし、車体のサンプリング傾斜角度及びフィードバックゲインを係数として制御コンピュータ内に予め入力設定された制御入力算出式にサンプリング値を代入して演算し、この演算に基づいて車輪駆動用モータの制御トルクを算出すると共に、この算出された制御トルク相当の作動を制御コンピュータから車輪駆動用モータに指令して同軸二輪車における姿勢を制御するようにしたので、前記算出結果に基づいて車輪駆動用モータのフィードバック制御が行われ、車体が傾動すれば車輪が車体の傾動方向へ直ちに移動して車体の復元が確実に行われる」等の効果が期待される。
【0006】
また、従来の更に他の不安定走行装置としては、例えば、特許文献3に記載されているようなものもある。特許文献3には、不安定車両の走行制御装置に関するものが記載されている(第3従来例)。この特許文献3に記載された不安定車両の走行制御装置は、「進行方向に平行する同一の直線上の位置を除く位置に配される少なくとも2個の車輪とそれを連結する車軸上に固定される座席とからなり、該車輪の回転軸線の上方に重心位置を備えてなる不安定車両の走行を制御する装置であって、前記回転軸線と重心位置とを結ぶ線の、軸線に直交する方向における重力方向に対する傾斜角度及び/又は傾斜角速度を検出する検出手段、前記車輪に固定され、それを駆動する駆動手段、及び前記検出値を減少させるべく該駆動手段の制御値を決定する制御値決定手段、を備えた」ことを特徴としている。
【0007】
このような構成を有する不安定車両の走行制御装置によれば、「車両を前後の所望の方向に傾斜させることによってその方向に走行させることができる。また、2個の車輪で接地するのみであることから小回りがきき、狭隘な個所であっても困難なく走行することができる」という効果が期待される。
【特許文献1】特開平10−23613号公報
【特許文献2】特開昭63−305082号公報
【特許文献3】特開平4−201793号公報
【0008】
しかしながら、前述した第1従来例の電動式移動体においては、スケートボードのような乗り物として構成されていて、ボード本体の下面の前後に2個ずつ合計4個の車輪が配置されている。ボード本体の前部に配置された2個の前輪が自由輪であるのに対し、後部に配置された2個の後輪はモータによって回転駆動され、このモータの駆動による後輪の回転によってボード本体が走行するようになっている。この電動式移動体のモータの駆動制御は、ボード本体に乗った運転操作者の体重移動によって行われる。即ち、運転操作者の体重移動をセンサで検出すると共に、その検出信号に基づきコントローラでモータの駆動を制御することにより、手で操縦せずに運転操作者の体重移動だけで、前進走行、後進走行、左右旋回、加速減速等の操縦を行うことができるようになっている。
【0009】
ところが、この電動式移動体は、不安定走行装置と言っても、前後に2個ずつ配置された合計4個の車輪によってボード本体が支持されているため、厳密な意味での不安定走行装置と言えるものではなく、4個の車輪を有する自動車等の車両に近い安定性を有するものであった。そのため、この種のスケートボード形式の電動式移動体においては、運動用具と娯楽用具とを兼ね備えたスポーツ用品としては好ましいが、車両本体が4個の車輪によって比較的安定性良く支持されているという点で、本願発明の不安定走行装置とは異なるものである。
【0010】
これに対して、第2従来例の同軸二輪車及び第3従来例の不安定車両のいずれの場合にも、1個の車輪又は平行に配置された2個の車輪によって車両本体が支持されているため、本願発明の不安定走行装置と同種のものである。ところが、第2従来例の同軸二輪車の場合には、同軸上に配置された2個の車輪によって車体が支持されているが、その車体の姿勢制御は、車体の傾斜角度を検出する角度検出手段の検出信号に基づき車輪駆動モータの駆動を制御して行うようになっていた。しかも、車体は人が乗ることができるような構成にはなっておらず、人が乗って楽しむような装置ではなかった。
【0011】
また、第3従来例の不安定車両の場合には、車両本体は人が乗ることができる構造となっていたが、その車両本体には人が掴むことができるハンドルが設けられていた。このハンドルは、車両本体に搭乗する者の姿勢を安定させるためには有効であるが、手足を自由に動かして重心を移動させることによる車両の走行制御を行うことができず、よりスポーツライクの走行を楽しむことができないという課題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
解決しようとする問題点は、従来の不安定走行装置においては、車両本体に乗った人が手足を自由に動かすことができず、限られた範囲内の手足、身体の移動によってのみ車両の前進走行、後進走行、左右旋回、加速・減速、制動等の操縦を行うことができるに過ぎないという点である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本出願の請求項1に記載の不安定走行装置は、平行に配置された2輪又は3輪以上の車輪と、その2輪又は3輪以上の車輪の回転により走行する車両本体と、その車両本体に取り付けられると共に2輪又は3輪以上の車輪を回転駆動する1又は2以上の車輪駆動手段と、2輪又は3輪以上の車輪の車軸方向と直交する走行方向に延在され且つ車両本体に回動自在に支持されるシャーシ軸と、そのシャーシ軸に固定されると共に運転操作者の左右の足が個別に置かれる一対の搭乗デッキと、その一対の搭乗デッキの走行方向の傾き角度を検出するピッチ角検出手段と、一対の搭乗デッキの車軸方向の傾き角度を検出するロール角検出手段と、ピッチ角検出手段及びロール角検出手段により検出される一対の搭乗デッキの姿勢に応じて1又は2以上の車輪駆動手段に制御信号を出力して走行状態を制御する車両制御手段と、を設けたことを主要な特徴とする。
【0014】
本出願の請求項2に記載の不安定走行装置は、ピッチ角検出手段は、車両本体の傾き角度を検出するジャイロセンサからなることを特徴とする。
【0015】
本出願の請求項3に記載の不安定走行装置は、ロール角検出手段は、シャーシ軸の回転角度を検出する回転角検出器からなることを特徴とする。
【0016】
本出願の請求項4に記載の不安定走行装置は、一対の搭乗デッキは、車両本体を挟んでシャーシ軸の軸方向の両側に重量バランスを保持して左右対称に設けたことを特徴とする。
【0017】
本出願の請求項5に記載の不安定走行装置は、一対の搭乗デッキには、運転操作者の左右の足から付加される荷重をそれぞれ検出して重心の移動を検出する一対の荷重センサを設けたことを特徴とする。
【0018】
本出願の請求項6に記載の不安定走行装置は、一対の荷重センサは、シャーシ軸を挟んで両側に配置された一対の荷重検出部をそれぞれ有することを特徴とする。
【0019】
本出願の請求項7に記載の不安定走行装置は、一対の搭乗デッキの下部には、その一対の搭乗デッキの走行方向の傾き角度を制限する補助輪をそれぞれ設けたことを特徴とする。
【0020】
本出願の請求項8に記載の不安定走行装置は、補助輪は、路面に接触して回転する際の摩擦力により制動力を生じさせる制動車輪であることを特徴とする。
【0021】
本出願の請求項9に記載の不安定走行装置は、補助輪は、走行方向の回転を阻止してその走行方向と反対側の回転のみを許容する一方向クラッチを有する制動車輪であることを特徴とする。
【0022】
本出願の請求項10に記載の不安定走行装置は、補助輪には、所定以上の荷重が負荷されたときに1又は2以上の車輪駆動手段の駆動を停止する駆動停止スイッチを設けたことを特徴とする。
【0023】
本出願の請求項11に記載の不安定走行装置は、車両制御手段は、ピッチ角検出手段から供給される検出信号に基づき1又は2以上の車輪駆動手段に制御信号を出力して運転操作者の重心移動量に応じて走行速度を制御することを特徴とする。
【0024】
また、本出願の請求項12に記載の不安定走行装置は、車両制御手段は、ロール角検出手段から供給される検出信号に基づき1又は2以上の車輪駆動手段に制御信号を出力して運転操作者の重心移動量に応じて旋回速度を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本出願の請求項1に記載の不安定走行装置によれば、2輪又は3輪以上の車輪と車両本体と1又は2以上の車輪駆動手段とシャーシ軸と一対の搭乗デッキとピッチ角検出手段とロール角検出手段と車両制御手段とを設ける構成とすることにより、一対の搭乗デッキに両足を乗せた運転操作者が走行したい方向に重心(体重)を移動すると、その重心の移動量に応じて一対の搭乗デッキが走行したい方向に傾き(ピッチ角:P)、そのピッチ角Pがピッチ角検出手段によって検出される。これにより、ピッチ角検出手段の検出信号が車両制御手段に入力され、その検出信号に応じて車両制御手段が1又は2以上の車輪駆動手段に制御信号を出力する。その結果、1又は2以上の車輪駆動手段が一対の搭乗デッキのピッチ角Pに応じて回転駆動され、そのピッチ角Pの速度・加速度に応じて走行したい方向に走行される。そして、運転操作者が走行方向と逆方向に重心を移動することにより、走行速度を低下して走行状態を停止することができる。
【0026】
また、一対の搭乗デッキに両足を乗せた運転操作者が旋回したい方向に重心(体重)を移動すると、その重心の移動量に応じて一対の搭乗デッキが旋回したい方向に傾き(ロール角:R)、そのロール角Rがロール角検出手段によって検出される。これにより、ロール角検出手段の検出信号が車両制御手段に入力され、その検出信号に応じて車両制御手段が1又は2以上の車輪駆動手段に制御信号を出力する。その結果、1又は2以上の車輪駆動手段が一対の搭乗デッキのロール角Rに応じて、左右の車輪間に所定量の回転差を生じさせるように回転駆動され、そのロール角Rの速度・加速度に応じて旋回したい方向に旋回される。
【0027】
本出願の請求項2に記載の不安定走行装置によれば、ピッチ角手段を、車両本体の傾き角度を検出するジャイロセンサで構成することにより、比較的簡単な構造でありながら一対の搭乗デッキのピッチ角を確実且つ精度良く検出することができ、その検出信号に基づいて前進走行、後進走行、加速・減速、停止等の走行状態を好適に制御することができる。
【0028】
本出願の請求項3に記載の不安定走行装置によれば、ロール角検出手段を、シャーシ軸の回転角度を検出する回転角検出器で構成することにより、一対の搭乗デッキの実際の回転角度を確実且つ精度良く検出することができ、その検出信号に基づいて左右への旋回を好適に制御して、安定性良く旋回することができる。
【0029】
本出願の請求項4に記載の不安定走行装置によれば、一対の搭乗デッキを、車両本体を挟んでシャーシ軸の軸方向両側に配置すると共に重量バランスを保持して左右対称に構成することにより、一対の搭乗デッキのシャーシ軸の軸方向における釣合いを容易に取ることができ、運転操作者の意志に的確に反応し、重心移動だけで楽に走行、旋回等の運転操作を行うことができる。
【0030】
本出願の請求項5に記載の不安定走行装置によれば、一対の搭乗デッキに一対の荷重センサを設ける構成とすることにより、比較的簡単な構造でありながら一対の搭乗デッキに乗った運転操作者の体重移動による走行方向の重心移動を確実且つ精度良く検出することができ、その検出信号に基づいて前進走行、後進走行、加速・減速、停止等の走行状態を好適に制御することができる。
【0031】
本出願の請求項6に記載の不安定走行装置によれば、一対の荷重センサを、シャーシ軸を挟んで両側に配置した一対の荷重検出部で構成とすることにより、比較的簡単な構造でありながら一対の搭乗デッキに乗った運転操作者の体重移動による走行方向と直交する方向の重心移動を確実且つ精度良く検出することができ、その検出信号に基づいて左右への旋回走行を好適に制御することができる。
【0032】
本出願の請求項7に記載の不安定走行装置によれば、一対の搭乗デッキの下部に補助輪を設ける構成とすることにより、走行方向に対して一対の搭乗デッキが必要以上に傾くのを防止することができ、運転操作者の大きな姿勢変化を防ぎ、走行方向における搭乗安定性の向上を図ることができる。
【0033】
本出願の請求項8に記載の不安定走行装置によれば、補助輪を制動車輪で構成することにより、制動車輪の回転によって制動力を生じさせ、滑らかに減速して安定性良く制動することができる。
【0034】
本出願の請求項9に記載の不安定走行装置によれば、一方向クラッチを有する制動車輪で補助輪を構成することにより、進行方向と逆方向への移動を瞬時に停止することができ、緊急停止時における制動性能の向上を図ることができる。
【0035】
本出願の請求項10に記載の不安定走行装置によれば、補助輪に駆動停止スイッチを設ける構成とすることにより、制動時にブレーキ力を作用させて制動力を確実に働かせることができ、車輪の駆動力を減少又は停止させて安定性良く停止できると共に、緊急時における制動性能の向上を図り、安全に停止することができる。
【0036】
本出願の請求項11に記載の不安定走行装置によれば、ピッチ角検出手段の検出信号に基づいて車両制御手段で車輪駆動手段を制御し、運転操作者の重心移動に応じて走行速度を制御する構成とすることにより、前進走行、後進走行、加速・減速、停止等の走行状態を好適に制御し、安定性良くスムースに走行することができる。
【0037】
また、本出願の請求項12に記載の不安定走行装置によれば、ロール角検出手段の検出信号に基づいて車両制御手段で車輪駆動手段を制御し、運転操作者の重心移動に応じて旋回速度を制御する構成とすることにより、左右の旋回速度を好適に制御し、旋回時の遠心力に運転操作者が振り落とされるおそれがなく、安定性良くスムースに旋回することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
運転操作者の重心移動によって前進走行、後進走行、加速及び減速、左右旋回、停止等の制御を安定性良く行うことができ、人が乗って移動する車両としては勿論のこと、運動用具や娯楽用具等としての汎用性も有する不安定走行装置を、簡単な構成によって実現した。
【0039】
図1〜図37は、本発明の実施の形態を示すものである。即ち、図1は本発明の不安定走行装置の一実施例を示す外観斜視図、図2は同じく平面図、図3は同じく右側面図、図4は同じく底面図、図5は同じく正面図、図6は一対の荷重センサを現した外観斜視図、図7は同じく平面図、図8は同じく右側面図、図9は同じく底面図、図10は同じく正面図、図11は同じく背面図、図12は一対の搭乗デッキの内部構造を示す斜視図、図13は同じく底面図、図14はヘルメットを取り除いた左側面図、図15は同じく背面図、図16はシャーシ軸に一対の搭乗デッキが取り付けられた状態の斜視図、図17は同じく平面図、図18は同じく右側面図、図19は同じく正面図である。
【0040】
図20は本発明の不安定走行装置に係る軸結合部材の斜視図、図21はシャーシ軸の要部を示す斜視図、図22は軸結合部材とシャーシ軸の結合状態を示す説明図、図23は傾き検出手段の配置を示す説明図、図24はシャーシ軸等の支持構造等を示す説明図、図25は軸結合部材の取付状態を示す説明図、図26は補助輪を示す斜視図、図27は補助輪の支持構造を示す説明図、図28は同じく一部を断面して正面から見た説明図、図29は同じく一部を断面して側面から見た説明図、図30は一対の搭乗デッキの一方に片足を乗せた状態の説明図、図31は一対の搭乗デッキに両足を乗せた状態の説明図、図32は両足でバランスを取った状態の説明図、図33は同じく全体を示す説明図、図34は補助輪の制動時における制御を示すブロック図、図35は乗車時の制御を示すブロック図、図36は非常停止時における制御を示すブロック図、図37は降車時の制御を示すブロック図である。
【実施例1】
【0041】
この実施例で説明する不安定走行装置1は、図1〜図5に示すように、平行に配置された2つの車輪2L,2Rと、その2つの車輪2L,2R間に配置された車両本体3と、その車両本体3に取り付けられると共に2つの車輪2L,2Rを回転駆動する車輪駆動手段としての2つの車輪駆動ユニット4L,4Rと、2つの車輪2L,2Rの車軸方向Xと直交する走行方向Yに延在され且つ車両本体3に回転自在に支持されたシャーシ軸5と、そのシャーシ軸5の軸方向の両側に固定された一対の搭乗デッキ6L,6Rと、一対の搭乗デッキ6L,6Rの走行方向Yの傾き角度(ピッチ角)を検出するピッチ角検出手段としてのジャイロセンサ7と、一対の搭乗デッキ6L,6Rの車軸方向Xの傾き角度(ロール角)を検出するロール角検出手段としての回転角検出器8と、車両本体3に作用する加速度を検出する加速度センサ9と、これらの検出手段7,8及び9から入力される情報信号に基づき所定の演算処理を実行して2つの車輪駆動ユニット4L,4Rに制御信号を出力して走行状態を制御する車両制御手段としての制御装置10等を備えて構成されている。
【0042】
車両本体3は、四角形の筐体からなるケーシング11を備えている。ケーシング11は、上下方向に重ね合わされ、互いに着脱可能とされた上ケースと下ケースとから構成されている。このケーシング11の一方に対向する2の側面のうちの一面の外側には第1の車輪駆動ユニット4Lが配置され、その反対側の他面の外側には第2の車輪駆動ユニット4Rが配置されている。2つの車輪駆動ユニット4L,4Rは同一のものであって、電動モータ12と、その電動モータ12と一体に設けられた減速機13とで構成されている。2つの車輪駆動ユニット4L,4Rは、図13及び図24等に示すように、互いに平行をなす2本の支持軸14,14の両端に、それぞれマウントインシュレータ15を介して弾性的に支持されている。
【0043】
2本の支持軸14,14は、それぞれケーシング11を貫通して両端が外部に突出されており、その突出部にマウントインシュレータ15が取り付けられている。マウントインシュレータ15は、車輪駆動ユニット4L,4Rの振動を吸収し、或いはその振動の伝達を遮断等するためにゴム状弾性体によって形成されている。各マウントインシュレータ15は2本の支持軸14,14間に掛け渡されており、その間に車輪駆動ユニット4L,4Rがそれぞれ保持されている。図24に示す符合16は、支持軸14に固定されたスペーサである。各スペーサ16はケーシング11とマウントインシュレータ15との間に介在されていて、支持軸14の軸方向への移動を制限している。
【0044】
2つの車輪駆動ユニット4L,4Rの電動モータ12は内側に配置されていて、外側に固定された減速機13の先端側の回転部に、第1及び第2の車輪2L,2Rがそれぞれボルト及びナットからなる固着手段によって着脱可能に取り付けられている。第1及び第2の車輪2L,2Rの回転中心となる車軸は、互いの軸心線が一致するように同軸上に設定されており、この軸心線が前記車軸方向Xの基準軸となっている。更に、各車輪駆動ユニット4L,4Rには、それぞれの車輪2L,2Rの回転角度及び回転数を検出してその検出信号を出力する回転検出手段が設けられている。
【0045】
第1及び第2の車輪2L,2Rとして、この実施例では適当な強さを備えた柔軟性のあるもの、例えば、空気入りタイヤが用いられている。即ち、各車輪2L,2Rは、車輪駆動ユニット4L,4Rの出力部に固定された円盤状のホイール17と、そのホイール17の外周面に装着されたゴム製のタイヤ18とから構成されている。タイヤ18には適当な圧力の空気が充填されており、負荷荷重の相違に基づく左右タイヤ18の弾性変形量の違いによる左右車輪2L,2Rの接地半径の違いによっても旋回動作し得るように構成されている。なお、第1及び第2の車輪2L,2Rとしては、この実施例の空気入りタイヤに限定されるものではなく、例えば、ゴム状弾性体のみからなるゴムタイヤ、或いは木製車輪や金属製車輪その他の車輪状のものを適宜に用いることができる。
【0046】
また、ケーシング11には、図12〜14及び図24等に示すように、2本の支持軸14,14と直交する方向(走行方向)に延在されたシャーシ軸5が貫通されている。シャーシ軸5は、ケーシング11の2つの車輪駆動ユニット4L,4Rが配置された1の側面と直交する側面に設けた一対の軸受部20によって回動自在に支持されている。このシャーシ軸5は、図21及び図24に示すように、軸方向に接続される2本の軸部材5L,5Rによって構成されている。
【0047】
2本の軸部材5L,5Rは同一のものであって、その当接部を軸結合部材21で固定することによって一体的に構成されている。各軸部材5L,5Rは、軸方向の中途部に鍔部22が設けられたパイプ状の部材からなり、互いに当接される端部には同一形状の切欠き部23,23が設けられている。切欠き部23,23は、2本の軸部材5L,5Rの相対的な回動を防止して回動方向に一体化させるものである。これらの切欠き部23,23には軸結合部材21の回転止め凸部24が係合され、この回転止め凸部24を介して2本の軸部材5L,5Rが回動方向に一体とされている。更に、各軸部材5L,5Rには、配線用のリード線等が挿通される挿通穴5aが複数箇所に設けられている。
【0048】
軸結合部材21は、図20に示すような構成を有している。軸結合部材21は、2本の軸部材5L,5Rの接合部を適当な幅で保持できるブロック状の部材からなり、その中央部に、2本の軸部材5L,5Rが両側から挿入される貫通穴25が設けられている。この貫通穴25の中間部に、前記回転止め凸部24が設けられている。回転止め凸部24は、周方向に略180度連続された円弧状の凸部からなり、当接された2つの切欠き部23,23間に隙間なく嵌り合う大きさに形成されている。
【0049】
更に、軸結合部材21には、貫通穴25に連通されるスリット26が設けられている。このスリット26を設けることで貫通穴25の径を弾性限度内において縮径可能としている。そして、軸結合部材21には、図22に示すように、スリット26と直交する方向に延びる2つのネジ穴27が設けられている。このネジ穴27に挿入されるボルトを締め込むことにより、貫通穴25が縮径されてシャーシ軸5が軸結合部材21に締付固定される。この軸結合部材21には、シャーシ軸5の回動量(ロール角)を制限する一対のストッパ部28a,28bと一対のアーム部29a,29bとが設けられている。
【0050】
一対のストッパ部28a,28bは、スリット26が延びる方向に延在されていると共に、当該スリット26を挟んで両側に対向するように設けられている。この一対のストッパ部28a,28bに対して、図示しないがケーシング11の裏面にはストッパ受部が対向するように設けられている。これにより、シャーシ軸5が予め設定された所定のロール角傾いたときに、一方のストッパ部がストッパ受部に当接して所定角度以上にシャーシ軸5が傾くのを防止するロール角制限機構が構成されている。
【0051】
一対のアーム部29a,29bは、スリット26が延びる方向と垂直をなす外側に展開されている。図16〜図19及び図25に示すように、一対のアーム部29a,29bのストッパ部28a,28b側の面には、ケーシング11の内面に固定された複数個の弾性体32a,32bが所定の隙間を空けて対向するように設けられている。これらの弾性体32a,32bと一対のアーム部29a,29bとによってロール角ダンパ機構31が構成されている。ロール角ダンパ機構31は、ロール角制限機構が働いてシャーシ軸5の回動を制限する最大ロール角の直前において、弾性体32a,32bをアーム部29a,29bに当接させて衝突時の衝撃力や振動を吸収して和らげる働きをなすものである。
【0052】
ロール角ダンパ機構31の弾性体32a,32bは、この実施例では6個の円筒状を成す耐圧弾性材料、例えば、シリコンゴム、ブチルゴム、ウレタンゴム等によって構成されている。このロール角ダンパ機構31の一側に配置した3個の弾性体32a(又は32b)の合計の剛性強さは、例えば、80Nm(ニュートンメーター)程度が好適である。この80Nmは、平均的な成人男性が両足で踏ん張ってシャーシ軸5をロール方向に回転させることができる程度の大きさである。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、運転操作者が子供である場合、女性である場合等のように、その者の体力に応じて適宜な値に設定できることは勿論である。また、シャーシ軸5のロール角度は、±15度程度が好適である。しかしながら、本発明はこれに限定されるものでないことは勿論である。
【0053】
シャーシ軸5のロール角度を検出するため、ケーシング11の内面にはロール角検出手段の一具体例を示す回転角検出器8が取り付けられている。回転角検出器8は、図24及び図25に示すように、ロータリエンコーダによって構成されている。回転角検出器8は、その回転軸に取り付けられたゴムローラ34を有しており、そのゴムローラ34をシャーシ軸5の外周面に回転接触させることによってシャーシ軸5の回転角度を検出できるようになっている。この回転角検出器8は、取付ブラケット35を介してケーシング11に支持されている。
【0054】
シャーシ軸5は、一対の鍔部22,22を一対の軸受部20,20で支持することにより所定の角度範囲内でケーシング11に回転自在に取り付けられている。このシャーシ軸5の両端にはデッキブラケット36が一体的に取り付けられており、それぞれのデッキブラケット36,36が軸方向外側に延在されている。これらのデッキブラケット36,36の上に、一対の搭乗デッキ6L,6Rがそれぞれ固定ネジ等の固着手段によって着脱可能に取り付けられている。
【0055】
一対の搭乗デッキ6L,6Rは、車両本体3を挟んで車軸方向Xと直交する走行方向Yの両側に配置されている。一対の搭乗デッキ6L,6Rは同一のものであって、運転操作者が片足ずつ乗ることができる大きさを有すると共に、両足をやや広げた間隔に設定されている。各搭乗デッキ6L,6Rは、デッキブラケット36に固定されるデッキ本体38と、このデッキ本体38の下部に着脱自在に装着されるデッキカバー39とから構成されている。デッキ本体38とデッキカバー39との間に設けられた空間部には、図6〜図11に示すように、各種の電装部品が収納されている
【0056】
図6〜図11は、図1〜図5に示す不安定走行装置1のうち、一対の搭乗デッキ6L,6Rの各デッキカバー39を取り外した状態を示す図である。図8及び図9に示すように、第1の搭乗デッキ37Lには、第1及び第2のドライバ基板ユニット41a,41bとバッテリ電源基板ユニット42と第1及び第2の回生抵抗器43a,43bとが配置されている。これらの基板ユニット等は、すべてデッキ本体38の下面に懸架されていて、固定ネジ等の固着手段によって着脱可能に取り付けられている。また、第2の搭乗デッキ37Rには、制御基板ユニット44と主電源基板ユニット45と荷重センサ基板ユニット46とが配置されている。これらの基板ユニットも同じく、すべてデッキ本体38の下面に懸架されていて、固定ネジ等の固着手段によって着脱可能に取り付けられている。
【0057】
各基板ユニット41a,41b、42、44,45及び46は、それぞれに所定の配線パターンが設けられた配線基板と、各配線基板に実装された電子部品等によって構成されている。そして、車両本体3内に収納された図示しないバッテリ電源とそれぞれ電気的に接続されている。バッテリ電源と各基板ユニット41a,41b〜46間を接続するリード線は、シャーシ軸5に設けた挿通穴5aから挿入され且つ内部の穴を通して配線されている。従って、リード線が外部に露出されて外観上の見映えが悪くなるのを回避できると共に、相対的に回動変位する部分間においても両者をリード線によって確実に接続することができる。
【0058】
前記第1及び第2のドライバ基板ユニット41a,41b、バッテリ電源基板ユニット42、第1及び第2の回生抵抗器43a,43bと、制御基板ユニット44、主電源基板ユニット45、荷重センサ基板ユニット46等によって車両制御手段の一具体例を示す制御装置10が構成されている。
【0059】
また、図8及び図9等に示すように、一対の搭乗デッキ6L,6Rのそれぞれ先端側には、下方に突出する一対の補助輪50L,50Rが設けられている。一対の補助輪50L,50Rは同一のものであって、図26〜図29に示すような構成とされている。即ち、各補助輪50L,50Rは、制動車輪51と、この制動車輪51が回転自在に保持された車輪軸52と、この車輪軸52を支持する車輪ブラケット53と、この車輪ブラケット53をデッキブラケット36に移動可能に支持する支持ボルト54と、車輪ブラケット53をデッキブラケット36から離反する方向に付勢する弾性体55等を備えて構成されている。
【0060】
補助輪50L,50Rの制動車輪51は、中央部の直径を両端部の直径よりも大きくしたクラウン形状のローラ56と、このローラ56の穴に嵌合された軸受スリーブ57とから構成されている。ローラ56をクラウン形状とすることにより、路面に接地するときにロール方向の倒れが生じている場合にも、ローラ56をスムースに回転させて安定した走行を確保することができる。しかも、制動車輪51が路面に接地した際に、軸受スリーブ57と車輪軸52との間に摺動摩擦力を生じさせて機械的に緩やかな回転制動力を得ることができる。なお、ローラ56の材質としては、例えば、ウレタンゴムが好適であるが、その他のゴムやエンジニアリングプラスチック等を用いることもできる。
【0061】
この補助輪50L,50Rの制動車輪51としては、前記軸受スリーブ57に代えて一方向クラッチを用いる構成としてもよい。一方向クラッチは、一方向だけに動力を伝える構造の軸継手であって、その逆転を防止するものである。この一方向クラッチを制動車輪51に用いる場合には、走行方向前側に移動するときの回転を許容し、後ろ側へ戻るときの回転を阻止するように使用する。このように用いる場合には、走行側に重心がある走行状態から急停止させるときに、不安定走行装置1を可能な限り瞬時に停止することができる。
【0062】
即ち、不安定走行装置1の走行時、走行方向Y前方へのピッチ角が大きくなると、そのピッチ角の増加に応じて走行速度が増加する。この前方ピッチ角が、予め設定された許容ピッチ角(前後の傾斜可動角、例えば10°〜25°)を越えると、対応する補助輪50L又は50Rが路面に接地する。このとき、その制動車輪51は、進行方向に対しては滑らかに回転し、緩やかな回転制動力を発揮する。
【0063】
これに対して、不安定走行装置1を制動するために運転操作者が進行方向と逆方向に重心を移動させると、後方ピッチ角の増加量に応じて急速に減速される。この際、後方ピッチ角が許容ピッチ角を越えると、これに対応する進行方向後方に位置する補助輪50R又は50Lが路面に接地する。このとき、その路面に接地する制動車輪51は、進行方向に対して回転を阻止するように作用し、回転することなくロックして路面に当接される。その結果、不安定走行装置1は、制動車輪51をロックした状態で接地面に擦り付けるようにして移動するため、急速に大きな制動力を発生させながら比較的安全に急停車させることができる。
【0064】
補助輪50L,50Rの車輪ブラケット53は、下部に開口された門形の部材からなり、対向設置された軸受片53a,53a間に制動車輪51が収納されている。車輪ブラケット53の一対の軸受片53a,53aの先端には、制動車輪51が装着された車輪軸52の軸方向両端に設けた固定部52a,52aが係合される係合溝53bがそれぞれ設けられている。係合溝53bはコ字状の溝部からなり、この係合溝53bに四角形の固定部52aが嵌め込まれている。各固定部52aには固定ネジ58が下方から上方へ挿通されており、この固定ネジ58の締め込みによって車輪軸52が車輪ブラケット53の下端に着脱可能に取り付けられている。
【0065】
図27〜図29に示すように、車輪ブラケット53はデッキブラケット36の先端下部に、2本の支持ボルト54,54と2個のスリーブガイド60,60を介して所定範囲内において接近及び離反可能に支持されている。スリーブガイド60は、軸方向の一端に外向きのフランジ部60aが設けられた円筒体からなり、その中央穴に支持ボルト54が挿通されている。この支持ボルト54が挿通された2個のスリーブガイド60,60が、デッキブラケット36に車輪軸52の軸方向に所定の間隔をあけて設けた2つの貫通穴61,61に摺動自在に挿通されている。各貫通穴61の上部には、スリーブガイド60のフランジ部60aが挿入される座ぐり穴62が設けられている。
【0066】
貫通穴61に挿通されたスリーブガイド60は、フランジ部60aを座ぐり穴62の座面に接触させた状態で先端部がデッキブラケット36の下面から適宜量だけ下方に突出されている。スリーブガイド60の下端面は車輪ブラケット53の上面に当接され、その状態で支持ボルト54のネジ部が車輪ブラケット53のネジ穴に螺合されている。このとき、デッキブラケット36の下面と車輪ブラケット53の上面との間には適宜長さの隙間Eが設けられている。従って、車輪ブラケット53は、隙間Eの距離だけデッキブラケット36に対して相対的に接近及び離反可能とされている。
【0067】
このデッキブラケット36と車輪ブラケット53の間には、車輪ブラケット53を常時デッキブラケット36から離反させる方向に付勢する弾性体の一具体例を示すコイルバネ55が介在されている。このコイルバネ55を所定位置に保持するため、デッキブラケット36と車輪ブラケット53には、互いに対向する位置にバネ受け穴63a,63bが設けられている。コイルバネ55のバネ力に抗して当該コイルバネ55を押し縮めることにより、車輪ブラケット53をデッキブラケット36に近づける方向に移動することができる。
【0068】
これにより、制動車輪51はコイルバネ55によって、常にデッキブラケット36に対してフローティング状態に保持されている。このコイルバネ55のバネ力(例えば、10kg、20kg、30kg等)により、一定値以下の外力を吸収し、振動を減衰させるようにしている。そして、コイルバネ55のバネ力よりも大きな外力が制動車輪51に加えられ、そのコイルバネ55が所定量だけ縮んだときに、その状態を駆動停止スイッチ66で検出するようにしている。
【0069】
なお、本実施例においては、弾性体としてコイルバネ55を用いた例について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、板バネやゴム状弾性体その他の弾性体を適用することができる。また、車輪ブラケット53の上面に、スリーブガイド60の先端が嵌合される座ぐり穴64を設けたが、その座ぐり穴64を廃止して、車輪ブラケット53の上面に直接スリーブガイド60の先端面を当接させる構造としてもよい。
【0070】
図29に示すように、駆動停止スイッチ66は、一対の補助輪50L,50Rにそれぞれ設けられている。駆動停止スイッチ66は、デッキブラケット36に固定されたスイッチ本体67と、車輪ブラケット53に固定されたスイッチングドグ68とを有している。スイッチ本体67はスイッチホルダ69に固定されていて、そのスイッチホルダ69が固定ネジ70による固着手段によってデッキブラケット36の下面に着脱可能に取り付けられている。スイッチ本体67の作動子67aは下方に突出されており、この作動子67aに対して所定の隙間をあけてスイッチングドグ68の操作部68aが対向されている。そして、スイッチングドグ68は、固定ネジ71からなる固着手段によって車輪ブラケット53の背面に固定されている。
【0071】
駆動停止スイッチ66は、一対の搭乗デッキ6L,6Rの走行方向におけるピッチ角が許容ピッチ角(例えば、10°〜25°の範囲内で適宜に設定する。)となったときに、車輪駆動ユニット4L,4Rの駆動を中止して走行等の制御を停止させることを目的とするものである。即ち、不安定走行装置1の走行時等において、一対の搭乗デッキ6L,6Rのピッチ角が許容ピッチ角に達して補助輪50L,50Rのコイルバネ55を押し縮めたときに、スイッチングドグ68でスイッチ本体67をオンとして、車輪駆動ユニット4L,4Rを減速して停止させる。
【0072】
その後、一対の搭乗デッキ6L,6Rのピッチ角が水平方向に戻され、補助輪50L,50Rの負荷が開放(又は減少)されて制動車輪51が元の位置に戻ろうとすると同時に、スイッチングドグ68の操作部68aがスイッチ本体67の作動子67aから離れる。これにより、駆動停止スイッチ66がオフとなり、車輪駆動ユニット4L,4Rが再び起動されて、走行等の制御が再開される。
【0073】
このときの駆動停止スイッチ66による補助輪の制動時における制御状態を図34に示す。図34において、まず、ステップS1により、定格荷重ばねであるコイルバネ55の状態を検知する。この場合、コイルバネ55が縮みを開始しているときには、車輪2L,2Rの制動を開始しているとする。次に、ステップS2に移行して、コイルバネ55に負荷されている荷重が、そのコイルバネ55のバネ力(例えば、30kg)を超えたか否かを判定する。この判定の結果、負荷荷重が定格荷重に到達していないときにはステップS1に戻り、負荷荷重が定格荷重に到達しているときには、ステップS3に移行する。
【0074】
ステップS3では、電気ブレーキである駆動停止スイッチ66をオンとする。そして、ステップS4に移行する。ステップS4では、メカストッパであるスイッチングドグ68の突き当たりを停止し、次のステップS5に移行する。ステップS5では、一対の車輪駆動ユニット4L,4Rの動作を停止して、本車輪である一対の車輪2L,2Rを制動させる。これにより、不安定走行装置1の走行が停止される。
【0075】
このような構成及び作用を有する駆動停止スイッチ66は、補助輪50L,50Rが路面に接地した状態を検出する接地検出スイッチとしても用いることができる。この接地検出スイッチは、運転操作者が不安定走行装置1に乗り降りする際に作動し、利用するものである。この接地検出スイッチの作動については、後に詳細に説明する。
【0076】
図2、図7及び図15等に示すように、一対の搭乗デッキ6L,6Rの各デッキ本体38の上面には、運転操作者の体重移動によるピッチ方向及びロール方向における重心の移動を検出する一対の荷重センサ75L,75Rが設けられている。各荷重センサ75L,75Rは、シャーシ軸5を中心にして一方の車輪4L側に配置された第1のセンサプレート75aと、他方の車輪4R側に配置された第2のセンサプレート75bとから構成されている。そして、各荷重センサ75L,75Rは、滑り止め用のデッキシート76によって覆われている。
【0077】
一対の荷重センサ75L,75Rは、片足ずつ乗せられる一対の搭乗デッキ6L,6Rにおける運転操作者の各足毎に負荷される荷重を検出し、その重量配分から運転操作者の不安定走行装置1上における重心位置を検出するものである。この一対の荷重センサ75L,75Rにより、不安定走行装置1のピッチ方向における重心位置を検出することができる。また、各荷重センサ75L,75Rを一対のセンサプレート75a,75bで構成し、各搭乗デッキ6L,6Rにおいて、両センサプレート75a,75bをシャーシ軸5の両側に対称に配置している。これにより、不安定走行装置1のロール方向における重心位置を検出することができる。
【0078】
また、図23に示すように、車両本体3のケーシング11の上面には、車両本体3を含む一対の搭乗デッキ6L,6Rの走行方向の傾き(姿勢の変化)であるピッチ角を検出するピッチ角検出手段の一具体例を示すジャイロセンサ7と、車両本体3に作用する速度又は加速度を検出する加速度センサ9とが搭載されている。ジャイロセンサ7は、車両本体3が重力方向に対してどの程度傾いたかを見るものであり、その傾き角を知ることによって車両本体3を含む一対の搭乗デッキ6L,6Rの走行方向におけるピッチ角を検出することができる。加速度センサ9は、車両本体3に作用する速度又は加速度を検出するものである。
【0079】
これらジャイロセンサ7及び加速度センサ9の検出信号に基づいて不安定走行装置1の走行、加速及び減速、制動の各制御が行われる。しかしながら、ピッチ角検出手段としては、前記ジャイロセンサ7に限定されるものではなく、車両本体3等の姿勢変化を検出できる各種の検出装置、検出器を適用できるものである。
【0080】
加速度センサ9とジャイロセンサ7は、それぞれブラケット77,78を介してセンサ基板79に固定されている。加速度センサ9とジャイロセンサ7との間には適当な大きさの隙間が設定されていると共に、両センサ9,7の中心が車軸上に一致するようにセンサ基板79がケーシング11の上面に固定されている。このように配置することにより、車両本体3に作用する速度若しくは加速度並びに重力加速度を検出することができる。
【0081】
これらの加速度センサ9及びジャイロセンサ7は、図1〜図3等に示すように、半球形の容器体からなるヘルメット80によって覆われている。ヘルメット80は、2つのセンサを含むセンサ基板79の全体を覆うことができる大きさとされていて、不安定走行装置1の操作部としての3つのスイッチ82〜84が設けられている。即ち、ヘルメット80の上面の中央部には姿勢制御スイッチ82が配置され、その側部には非常停止用のテザースイッチ83が配置されていて、側面部には主電源スイッチ84が配置されている。
【0082】
主電源スイッチ84は、車両本体3に搭載されたバッテリ電源の電力を装置内の各種電気機器、電気部品等に供給すると共にその供給を停止するオン・オフスイッチである。姿勢制御スイッチ82は、車両本体3及び一対の搭乗デッキ6L,6Rの走行方向における姿勢をシーソー状態のようにバランスさせる制御を行わせるためのオン・オフスイッチである。また、テザースイッチ83は、運転操作者が一対の搭乗デッキ6L,6Rから落下した場合等において、自動的に車輪駆動ユニット4L,4Rの作動を停止させて非常停止を行い、不安定走行装置1が無人走行を継続するのを防止するものである。
【0083】
これらのスイッチ類、加速度センサ7A、ジャイロセンサ7B、回転検出器8、一対の荷重センサ75L,75R及び一対の車輪駆動ユニット4L,4R等は、制御装置10と電気的に接続されている。この制御装置10によって不安定走行装置1の制御が行われる。制御装置10は、例えばマイクロコンピュータ等を有して構成されており、ジャイロセンサ7、回転検出器8及び加速度センサ9から入力されるそれらの検出信号に基づき所定の演算処理を実行し、必要な制御信号を出力して一対の車輪駆動ユニット4L,4Rの駆動を制御する。
【0084】
制御装置10は、具体的には、不安定走行装置1の走行、制動、旋回、乗車、降車、非常停止等の状態に応じて、それぞれ必要な制御信号を出力して一対の車輪駆動ユニット4L,4R等の駆動制御を実行する。
【0085】
まず、運転操作者が不安定走行装置1に搭乗する場合について、図30〜図33及び図35を参照して説明する。
図35において、まず、ステップS10にて、運転操作者が乗り易い左右どちらか一方に不安定走行装置1を傾斜させ、対応する乗り易い側の補助輪50L(又は50R)を路面90に接触させて一対の搭乗デッキ6L,6Rを安定化させる。次に、ステップS11に移行して、車両本体3に搭載しているヘルメット80に設置されている主電源スイッチ84を手動操作でオンする。
【0086】
次に、ステップS12に移行して、図30に示すように、傾斜して着地している側の搭乗デッキ6L(又は6R)に運転操作者が片足で搭乗し、その片足に全体重を掛けて、その搭乗デッキに設けられている補助輪50L(又は50R)の接地検出スイッチを兼ねる駆動停止スイッチ66をオンさせる。次に、ステップS13に移行して、ヘルメット80の中央部に設置されている姿勢制御スイッチ82を手動操作によってオンすると共に、他方の片足を他方の搭乗デッキ6R(又は6L)に乗せる(図31に示す状態)。そして、図32に示すように、両足から一対の搭乗デッキ6L,6Rに加えられる荷重を調整して、一対の搭乗デッキ6L,6Rを路面90と平行になるようにバランスさせる。
【0087】
これにより、それまでオンとされていた駆動停止スイッチ(接地検出スイッチ)66がオフになると共に、一対の搭乗デッキ6L,6R上に設置されている一対の荷重センサ75L,75Rによって運転操作者の各足から加えられる荷重が検出される。このとき、駆動停止スイッチ66がオンからオフに切り換わる信号をトリガとして、不安定走行装置1の姿勢制御が開始される。
【0088】
不安定走行装置1の姿勢制御が開始されたところで、運転操作者が走行したい方向に重心を移動することにより、車両本体3を含む一対の搭乗デッキ6L,6Rが、その走行したい方向に傾斜(ピッチ角)する。これにより、車両本体3のピッチ角がジャイロセンサ7によって検出され、その検出信号が制御装置10に供給されると共に、車両本体3に作用する加速度が加速度センサ9によって検出され、その検出信号が制御装置10に供給される。
【0089】
このとき、不安定走行装置1は、まだ停止状態にあるため、車両本体3の姿勢変化の加速度に応じた制御信号が制御装置10から一対の車輪駆動ユニット4L,4Rに出力される。その結果、一対の車輪駆動ユニット4L,4Rが同様に駆動され、一対の車輪2L,2Rが同方向に同様に回転駆動されて、進行させたい方向に走り始める。この走行時、運転操作者が重心の移動量を大きくしてピッチ角を大きくすることにより、そのピッチ角に応じて走行速度が加速される。これとは逆に、運転操作者が走行方向と逆方向に重心を移動することにより、走行速度が減速される。そして、一対の搭乗デッキ6L,6Rを路面90と平行に戻すことにより、不安定走行装置1の走行が停止される。
【0090】
このような走行状態において、例えば、危険回避等を目的として瞬時に不安定走行装置1を停止させたい場合が生じることがある。かかる場合に、上述した通常の減速・停止動作によっては間に合わないことがあるが、本発明では、補助輪50L,50Rの働きによってかかる不安をなくすことができる。
【0091】
即ち、運転操作者が不安定走行装置1を瞬時に停止させることを目的として、進行方向と逆の方向に重心を大きく移動させると、一対の搭乗デッキ6L,6Rの傾き方向が逆になり、重心が移動した側の搭乗デッキに設けられている補助輪50R(又は50L)の制動車輪51が路面90に接触される。このとき、路面90に接触した補助輪等の作用を介して、次の順序によって制動される。
【0092】
まず、進行方向と逆の方向に運転操作者の重心が移動することにより、通常の姿勢制御に基づく停止動作が行われる。次に、制動車輪51を構成するローラ56と軸受スリーブ57による物理的ブレーキ作動が行われる。その後、大きな荷重が加わることによって補助輪のコイルバネ55が圧縮され、駆動停止スイッチ66がオンされて電気的ブレーキ作動が行われる。
【0093】
第1の姿勢制御に基づく停止動作は前述したため、第2の物理的ブレーキ作動から説明する。制動車輪51の軸受スリーブ57がメタル軸受である場合には、軸受スリーブ57が車輪軸52と摺動接触する際の摩擦抵抗によって制動力が得られ、走行速度が減速されて、適当な距離を走行した後に停止される。一方、軸受スリーブ57が一方向クラッチを有するものである場合には、前述したように制動車輪51がロックされるため、制動車輪51のロックを利用して大きな制動力が得られ、走行速度を急激に減速させることができる。
【0094】
第3の電気的ブレーキ作動は、次のようなことである。補助輪に大きな荷重が加わることによってコイルバネ55が所定量圧縮すると、車輪ブラケット53に固定したスイッチングドグ68の操作部68aが駆動停止スイッチ66のスイッチ本体67の作動子67aをオンする。これにより、駆動停止スイッチ66のオン信号が制御装置10に供給され、その信号に基づき制御装置10が、一対の車輪駆動ユニット4L,4Rにそれまで出力していた駆動信号の出力を停止する。その結果、一対の車輪2L,2Rの回転が停止されるため、不安定走行装置1を確実に停止することができる。
【0095】
次に、不安定走行装置1の旋回操作について説明する。不安定走行装置1の旋回操作は、運転操作者が旋回したい方向(ロール方向)に重心を移動することによって行うことができる。運転操作者が、車両本体3を含む一対の搭乗デッキ6L,6Rを、その走行したい方向に傾斜(ロール角)すると、一対の搭乗デッキ6L,6Rのロール角が、シャーシ軸5の外周面にゴムローラ34を接触させた回転角検出器8によって検出される。この回転角検出器8の検出信号が制御装置10に供給されると共に、そのときの車両本体3に作用する加速度が加速度センサ9によって検出され、その検出信号が制御装置10に供給される。
【0096】
これにより、制御装置10が、検出されたロール角度とそのときの走行速度とに基づいて旋回半径を演算し、それに対応した駆動信号を制御装置10が一対の車輪駆動ユニット4L,4Rに出力する。即ち、制御装置10は、ロール角度(旋回指令量)と現在の車両速度から旋回半径を決定し、そのときの遠心加速度が最大加速度となるように旋回半径を決定し、これにより決定された旋回半径を最小旋回半径として実現できる旋回量を最大旋回量とするように制御する。これにより、運転操作者は、旋回時の遠心力によっても振り落とされることなく、安定性よくスムースに旋回することができる。
【0097】
このような旋回半径は、例えば、次のようにして求めることができる。その旋回半径は、入力された旋回量(一対の搭乗デッキ6L,6Rのロール角)と現在の走行速度から決定されるものであって、現在の速度における遠心加速度が設定最大加速度Gmaxとなるような旋回半径Rminを最小半径とし、その旋回量Tを100%とする。走行速度をVm、旋回半径をRmとすると、運転操作者には、旋回の外側に向かう加速度(V2/R)が生じる。
【0098】
いま、現在の速度V=10km/h、設定最大加速度Gmax=0.1G、旋回量T=80%とすると、最小旋回半径Rminは、
【数1】
である。従って、旋回半径Rは、
【数2】
となる。
【0099】
また、上記旋回操作は、運転操作者のロール方向における体重移動を、一対の搭乗デッキ6L,6Rにおける左右両足から受ける一対の荷重センサ75L、75Rで検出される荷重を用い、その検出値に基づいて一対の車輪駆動ユニット4L,4Rを制御するようにしてもよい。即ち、進行方向デッキ中央を境に車軸方向X両側に配置された一対のセンサプレート75a,75bでロール方向の重心位置を検出し、その重量配分量の差異と、予め設定された相対旋回量とを比較して旋回指令値を決定することもできる。また、体重移動による一対の車輪2L,2Rのタイヤ径の変化を利用して、タイヤ径の変化量だけで緩やかに旋回させることもできる。
【0100】
一対の荷重センサ75L、75Rで運転操作者の重心移動を検出して制御する場合には、運転操作者固有の体重ごとに適正な姿勢制御における姿勢角フィードバックゲイン(Kpp)を求め、その姿勢角フィードバックゲイン(Kpp)で補正するようにする。これにより、不安定走行装置1における制御の適正化を図り、挙動の安定した制御を実現することができる。
【0101】
また、走行中に運転操作者が不安定走行装置1から急に降りたり、或いは落下したような非常時においては、制御装置10によって、例えば、図36に示すような制御が行われる。まず、ステップS21において、一対の荷重センサ75L、75Rが運転操作者の体重を感知しているか否かを判定する。この判定は、一対の荷重センサ75L、75Rがオフとなったとき、即ち、一対の荷重センサ75L、75Rが運転操作者の体重を感知しなくなったときには、運転操作者が一対の搭乗デッキ6L,6Rから降りたか、落下していなくなった場合であると判定するものである。その結果、一対の荷重センサ75L、75Rがオフになったと判定したときには、直ちに制御を中止し、非常停止の措置を行う。
【0102】
これに対し、ステップS21において、一対の荷重センサ75L、75Rがオフになっていないと判定したときには、ステップS22に移行する。ステップS22では、接地検知スイッチを兼ねる駆動停止スイッチ66がオンとされたか否かを判定する。この判定は、駆動停止スイッチ66が運転操作者の手動操作によって行われるものであるため、運転操作者において、降車する意思が積極的にあるかどうかを見るものである。この判定の結果、駆動停止スイッチ66がオンとされたと判定したときには、直ちに制御を中止し、非常停止の措置を行う。
【0103】
一方、ステップS22において、駆動停止スイッチ66がオンになっていないと判定したときには、ステップS23に移行する。ステップS23では、テザースイッチ83又はその他の非常停止スイッチ(本実施例では設置されていない)がオンとされたか否かを判定する。この判定は、テザースイッチ83又はその他の非常停止スイッチで運転操作者の体重を感知しなくなったことを検知することにより、一対の車輪駆動ユニット4L,4Rを緊急停止させて機械的な非常停止を行うか否かを判定するものである。
【0104】
この判定の結果、テザースイッチ83又はその他の非常停止スイッチがオンとされたと判定したときには、直ちに制御を中止し、非常停止の措置を行う。一方、ステップS22において、テザースイッチ83又はその他の非常停止スイッチがオンになっていないと判定したときには、ステップS21に戻り、再びステップS21からの処理を繰り返す。
【0105】
走行の終了後、運転操作者が不安定走行装置1から降車する場合には、制御装置10によって、例えば、図37に示すような制御が行われる。まず、ステップS31において、不安定走行装置1の姿勢制御の状態であって走行を停止した状態において、姿勢制御スイッチ82をオフにする。これにより、不安定走行装置1の姿勢制御が停止され、一対の搭乗デッキ6L,4Rが水平方向にバランスされてシーソー状態になる。次に、ステップS32に移行して、運転操作者が降車し易い左右どちらか一方の搭乗デッキ6L(又は4R)に体重を掛けて傾斜させ、その傾斜側の補助輪50L(又は50R)を路面90に着地させて不安定走行装置1を安定化させる。
【0106】
次に、ステップS33に移行して、運転操作者が搭乗デッキ6L(又は4R)から降車する。その後、ステップS34に移行して、主電源スイッチ84をオフする。これにより、不安定走行装置1の一連の制御が完了する。
【0107】
以上説明したように、本発明の不安定走行装置1によれば、運転操作者の体重移動により好みに応じて前進走行、後進走行、左右への旋回操作を自在に行うことができる。しかも、不安定走行装置1の形状及び重量が、車軸を中心に左右にバランスされた構成となっているため、例えば横風や路面の凹凸等の外乱による影響を受けることが少なく、安定した姿勢制御を行うことができ、安定性の高い不安定走行装置1を提供することができる。更に、運転操作者の体重移動のみで操縦できるため、乗り手の意志に的確に反応して楽に操作ができると共に、手の不自由な人でも扱うことができ、手で操縦する一般車両のように頭の考えと手の不一致による誤操作のおそれを解消し、走行装置本来の移動する楽しみを味わうことができる。
【0108】
また、本発明の不安定走行装置1は、走行方向に前後の区別がないため、サーフィン感覚の操作性を導入してスポーツライクに乗りこなすことができると共に、坂道を登ったり、起伏の激しい娯楽性の高い場所での走行を可能とすることができる。更に、走行中の起伏や段差等に対しても、車輪が路面から離れた場合には、離れる直前までの速度を維持したまま車輪を回転し続け、再び車輪が路面に着地した(トルクが掛かった)ときに通常の制御へ戻すことにより、着地時における不安定さを無くし、運転操作者の転倒を最小限に抑えることができる。
【0109】
本発明は、上述し且つ図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において種々の変形実施が可能である。
例えば、前記実施例においては、左右の車輪2L,2Rを回転駆動するために、それぞれに1台ずつ車輪駆動ユニット4L,4Rを設け、各車輪2L,2Rを個別に回転駆動する構成としたが、車輪駆動ユニットを1台にて構成して、1台の車輪駆動ユニットで2個の車輪2L,2Rを回転駆動する構成としてもよい。また、前記実施例では、2個の車輪2L,2Rを平行に配置した例について説明したが、3個又は4個以上の車輪を平行に配置する構成とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】本発明の不安定走行装置の一実施例を示す外観斜視図である。
【図2】本発明の不安定走行装置の一実施例を示す平面図である。
【図3】本発明の不安定走行装置の一実施例を示す右側面図である。
【図4】本発明の不安定走行装置の一実施例を示す底面図である。
【図5】本発明の不安定走行装置の一実施例を示す正面図である。
【図6】本発明の不安定走行装置の一実施例を示すもので、デッキシートとデッキカバーを取り除いた外観斜視図である。
【図7】本発明の不安定走行装置の一実施例を示すもので、デッキシートとデッキカバーを取り除いた平面図である。
【図8】本発明の不安定走行装置の一実施例を示すもので、デッキシートとデッキカバーを取り除いた右側面図である。
【図9】本発明の不安定走行装置の一実施例を示すもので、デッキシートとデッキカバーを取り除いた底面図である。
【図10】本発明の不安定走行装置の一実施例を示すもので、デッキシートとデッキカバーを取り除いた正面図である。
【図11】本発明の不安定走行装置の一実施例を示すもので、デッキシートとデッキカバーを取り除いた背面図である。
【図12】本発明の不安定走行装置の一実施例を示すもので、デッキカバーと一方の車輪及び車輪駆動ユニットを取り除いた外観斜視図である。
【図13】本発明の不安定走行装置の一実施例を示すもので、デッキカバーと一方の車輪及び車輪駆動ユニットを取り除いた底面図である。
【図14】本発明の不安定走行装置の一実施例を示すもので、デッキカバーと一方の車輪及び車輪駆動ユニットとヘルメットを取り除いた左側面図である。
【図15】本発明の不安定走行装置の一実施例を示すもので、デッキカバーと一方の車輪及び車輪駆動ユニットとヘルメットを取り除いた背面図である。
【図16】本発明の不安定走行装置に係る一対の搭乗デッキとロール角ダンパ機構を示す斜視図である。
【図17】本発明の不安定走行装置に係る一対の搭乗デッキとロール角ダンパ機構を示す平面図である。
【図18】本発明の不安定走行装置に係る一対の搭乗デッキとロール角ダンパ機構を示す右側面図である。
【図19】本発明の不安定走行装置に係る一対の搭乗デッキとロール角ダンパ機構を示す正面図である。
【図20】本発明の不安定走行装置に係る軸結合部材の斜視図である。
【図21】本発明の不安定走行装置に係るシャーシ軸の一対の軸部材における接続側の要部を示す斜視図である。
【図22】本発明の不安定走行装置に係る軸結合部材とシャーシ軸の結合状態を示す説明図である。
【図23】本発明の不安定走行装置に係る車両本体に搭載された傾き検出手段の配置を示す説明図である。
【図24】本発明の不安定走行装置に係るシャーシ軸等の支持構造等を示す説明図である。
【図25】本発明の不安定走行装置に係る軸結合部材とシャーシ軸の結合状態を示す斜視図である。
【図26】本発明の不安定走行装置に係る一対の搭乗デッキに設けた補助輪の一方を示す斜視図である。
【図27】本発明の不安定走行装置に係る補助輪の斜視図である。
【図28】本発明の不安定走行装置に係る補助輪の一部を断面して正面側から見た説明図である。
【図29】本発明の不安定走行装置に係る補助輪の一部を断面して側面側から見た説明図である。
【図30】本発明の不安定走行装置への搭乗動作を説明するもので、一対の搭乗デッキの一方に片足を乗せた状態の説明図である。
【図31】本発明の不安定走行装置への搭乗動作を説明するもので、一対の搭乗デッキに両足を乗せた状態の説明図である。
【図32】本発明の不安定走行装置への搭乗動作を説明するもので、一対の搭乗デッキに乗って両足でバランスを取った状態の説明図である。
【図33】本発明の不安定走行装置への搭乗動作を説明するもので、一対の搭乗デッキに乗って両足でバランスを取った状態の全体を示す説明図である。
【図34】本発明の不安定走行装置に係る制御装置による補助輪の制動時における制御を示すブロック図である。
【図35】本発明の不安定走行装置に係る制御装置による補助輪の乗車時の制御を示すブロック図である。
【図36】本発明の不安定走行装置に係る制御装置による補助輪の非常停止時における制御を示すブロック図である。
【図37】本発明の不安定走行装置に係る制御装置による補助輪の降車時の制御を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0111】
1…不安定走行装置、 2L,2R…車輪、 3…車両本体、 4L,4R…車輪駆動ユニット(車輪駆動手段)、 5…シャーシ軸、 5L,5R…軸部材、 6L,6R…搭乗デッキ、 7…ジャイロセンサ(ピッチ角検出手段)、 8…回転角検出器(ロール角検出手段)、 9…加速度センサ、 10…制御装置(車両制御手段)、 11…ケーシング、 12…電動モータ、 21…軸結合部材、 31…ロール角ダンパ機構、 32a,32b…弾性体、 34…ゴムローラ、 36…デッキブラケット、 38…デッキ本体、 50L,50R…補助輪、 51…制動車輪、 52…車輪軸、 53…車輪ブラケット、 55…コイルバネ(弾性体)、 66…駆動停止スイッチ、 67…スイッチ本体、 68…スイッチングドグ、 75L,75R…荷重センサ、 75a,75b…センサプレート、 76…デッキシート、 80…ヘルメット、 82…姿勢制御スイッチ、 83…テザースイッチ、 84…主電源スイッチ、 90…路面、 X…車軸方向、 Y…走行方向
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平行に配置された2輪又は3輪以上の車輪と、
前記2輪又は3輪以上の車輪の回転により走行する車両本体と、
前記車両本体に取り付けられると共に前記2輪又は3輪以上の車輪を回転駆動する1又は2以上の車輪駆動手段と、
前記2輪又は3輪以上の車輪の車軸方向と直交する走行方向に延在され且つ前記車両本体に回動自在に支持されるシャーシ軸と、
前記シャーシ軸に固定されると共に運転操作者の左右の足が個別に置かれる一対の搭乗デッキと、
前記運転操作者の重心移動に基づく前記一対の搭乗デッキの前記走行方向の傾き角度を検出するピッチ角検出手段と、
前記運転操作者の重心移動に基づく前記一対の搭乗デッキの前記車軸方向の傾き角度を検出するロール角検出手段と、
前記ピッチ角検出手段及び前記ロール角検出手段により検出される前記一対の搭乗デッキの姿勢に応じて前記1又は2以上の車輪駆動手段に制御信号を出力して走行状態を制御する車両制御手段と、を設けたことを特徴とする不安定走行装置。
【請求項2】
前記ピッチ角検出手段は、前記車両本体の傾き角度を検出するジャイロセンサからなることを特徴とする請求項1に記載の不安定走行装置。
【請求項3】
前記ロール角検出手段は、前記シャーシ軸の回転角度を検出する回転角検出器からなることを特徴とする請求項1に記載の不安定走行装置。
【請求項4】
前記一対の搭乗デッキは、前記車両本体を挟んで前記シャーシ軸の軸方向の両側に重量バランスを保持して左右対称に設けたことを特徴とする請求項1に記載の不安定走行装置。
【請求項5】
前記一対の搭乗デッキには、前記運転操作者の左右の足から付加される荷重をそれぞれ検出して重心の移動を検出する一対の荷重センサを設けたことを特徴とする請求項1に記載の不安定走行装置。
【請求項6】
前記一対の荷重センサは、前記シャーシ軸を挟んで両側に配置された一対の荷重検出部をそれぞれ有することを特徴とする請求項5に記載の不安定走行装置。
【請求項7】
前記一対の搭乗デッキの下部には、当該一対の搭乗デッキの前記走行方向の傾き角度を制限する補助輪をそれぞれ設けたことを特徴とする請求項1に記載の不安定走行装置。
【請求項8】
前記補助輪は、路面に接触して回転する際の摩擦力により制動力を生じさせる制動車輪であることを特徴とする請求項7に記載の不安定走行装置。
【請求項9】
前記補助輪は、走行方向の回転を阻止して当該走行方向と反対側の回転のみを許容する一方向クラッチを有する制動車輪であることを特徴とする請求項7に記載の不安定走行装置。
【請求項10】
前記補助輪には、所定以上の荷重が負荷されたときに前記1又は2以上の車輪駆動手段の駆動を停止する駆動停止スイッチを設けたことを特徴とする請求項7に記載の不安定走行装置。
【請求項11】
前記車両制御手段は、前記ピッチ角検出手段から供給される検出信号に基づき前記1又は2以上の車輪駆動手段に制御信号を出力して運転操作者の重心移動量に応じて走行速度を制御することを特徴とする請求項1に記載の不安定走行装置。
【請求項12】
前記車両制御手段は、前記ロール角検出手段から供給される検出信号に基づき前記1又は2以上の車輪駆動手段に制御信号を出力して運転操作者の重心移動量に応じて旋回速度を制御することを特徴とする請求項1に記載の不安定走行装置。
【請求項1】
平行に配置された2輪又は3輪以上の車輪と、
前記2輪又は3輪以上の車輪の回転により走行する車両本体と、
前記車両本体に取り付けられると共に前記2輪又は3輪以上の車輪を回転駆動する1又は2以上の車輪駆動手段と、
前記2輪又は3輪以上の車輪の車軸方向と直交する走行方向に延在され且つ前記車両本体に回動自在に支持されるシャーシ軸と、
前記シャーシ軸に固定されると共に運転操作者の左右の足が個別に置かれる一対の搭乗デッキと、
前記運転操作者の重心移動に基づく前記一対の搭乗デッキの前記走行方向の傾き角度を検出するピッチ角検出手段と、
前記運転操作者の重心移動に基づく前記一対の搭乗デッキの前記車軸方向の傾き角度を検出するロール角検出手段と、
前記ピッチ角検出手段及び前記ロール角検出手段により検出される前記一対の搭乗デッキの姿勢に応じて前記1又は2以上の車輪駆動手段に制御信号を出力して走行状態を制御する車両制御手段と、を設けたことを特徴とする不安定走行装置。
【請求項2】
前記ピッチ角検出手段は、前記車両本体の傾き角度を検出するジャイロセンサからなることを特徴とする請求項1に記載の不安定走行装置。
【請求項3】
前記ロール角検出手段は、前記シャーシ軸の回転角度を検出する回転角検出器からなることを特徴とする請求項1に記載の不安定走行装置。
【請求項4】
前記一対の搭乗デッキは、前記車両本体を挟んで前記シャーシ軸の軸方向の両側に重量バランスを保持して左右対称に設けたことを特徴とする請求項1に記載の不安定走行装置。
【請求項5】
前記一対の搭乗デッキには、前記運転操作者の左右の足から付加される荷重をそれぞれ検出して重心の移動を検出する一対の荷重センサを設けたことを特徴とする請求項1に記載の不安定走行装置。
【請求項6】
前記一対の荷重センサは、前記シャーシ軸を挟んで両側に配置された一対の荷重検出部をそれぞれ有することを特徴とする請求項5に記載の不安定走行装置。
【請求項7】
前記一対の搭乗デッキの下部には、当該一対の搭乗デッキの前記走行方向の傾き角度を制限する補助輪をそれぞれ設けたことを特徴とする請求項1に記載の不安定走行装置。
【請求項8】
前記補助輪は、路面に接触して回転する際の摩擦力により制動力を生じさせる制動車輪であることを特徴とする請求項7に記載の不安定走行装置。
【請求項9】
前記補助輪は、走行方向の回転を阻止して当該走行方向と反対側の回転のみを許容する一方向クラッチを有する制動車輪であることを特徴とする請求項7に記載の不安定走行装置。
【請求項10】
前記補助輪には、所定以上の荷重が負荷されたときに前記1又は2以上の車輪駆動手段の駆動を停止する駆動停止スイッチを設けたことを特徴とする請求項7に記載の不安定走行装置。
【請求項11】
前記車両制御手段は、前記ピッチ角検出手段から供給される検出信号に基づき前記1又は2以上の車輪駆動手段に制御信号を出力して運転操作者の重心移動量に応じて走行速度を制御することを特徴とする請求項1に記載の不安定走行装置。
【請求項12】
前記車両制御手段は、前記ロール角検出手段から供給される検出信号に基づき前記1又は2以上の車輪駆動手段に制御信号を出力して運転操作者の重心移動量に応じて旋回速度を制御することを特徴とする請求項1に記載の不安定走行装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【公開番号】特開2006−1384(P2006−1384A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−178997(P2004−178997)
【出願日】平成16年6月16日(2004.6.16)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年6月16日(2004.6.16)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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