説明

不揮発性記憶装置

【課題】不揮発性記憶装置における積層構造のアスペクト比の増加を抑制し、加工性の向上及び特性の均一化を達成する。
【解決手段】本実施形態の不揮発性記憶装置は、第1の方向に延びる複数本の第1上部配線と、前記第1上部配線と離間して設けられ、前記第1の方向と交差する第2の方向に延びる複数本の第1下部配線と、前記複数本の第1上部配線と、前記複数本の第1下部配線と、の間のそれぞれの交差位置に設けられ、異なる抵抗状態のあいだを遷移する遷移機能及び電流を整流する整流機能を有する第1機能層と、を有する。前記第1機能層は、第1金属層と、第1対向層と、前記第1金属層と、前記第1対向層と、の間に設けられ、前記第1金属層及び前記第1対向層のそれぞれに接する第1半導体層と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、不揮発性記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気的に書き換え可能な可変抵抗素子を用いた不揮発性記憶装置が注目を集めている。不揮発性記憶装置のデバイス構造に関しては、高集積化の観点から、WL(ワードライン)とBL(ビットライン)との交点にメモリセルを配置する3次元クロスポイント構造が提案されている。
【0003】
3次元クロスポイント構造においては、あるメモリセルにデータを書き込むために電圧を印加すると、選択していない他のメモリセルにも逆方向の電圧が印加されてしまうため、各メモリセルには抵抗変化膜と共にダイオード(整流素子)を設ける必要がある。
【0004】
しかしながら、メモリセルや整流素子は、WLとBLとの交点に積層されており、必要な特性を維持しつつ、積層構造のアスペクト比の増加を抑制することが、加工性の向上や、特性の均一化を図るうえで重要になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−203098号公報
【特許文献2】特開2008−300841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の実施形態は、積層構造のアスペクト比の増加を抑制し、加工性の向上及び特性の均一化を達成した不揮発性記憶装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態の不揮発性記憶装置は、第1の方向に延びる複数本の第1上部配線と、前記第1上部配線と離間して設けられ、前記第1の方向と交差する第2の方向に延びる複数本の第1下部配線と、前記複数本の第1上部配線と、前記複数本の第1下部配線と、の間のそれぞれの交差位置に設けられ、異なる抵抗状態のあいだを遷移する遷移機能及び電流を整流する整流機能を有する第1機能層と、を有する第1積層構造体を備える。前記第1機能層は、第1金属層と、第1対向層と、前記第1金属層と、前記第1対向層と、の間に設けられ、前記第1金属層及び前記第1対向層のそれぞれに接する第1半導体層と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】不揮発性記憶装置を示す模式図である。
【図2】クロスポイント構造を示す模式的斜視図である。
【図3】メモリセルの構成を示す模式的断面図である。
【図4】不揮発性記憶装置の製造方法を示す工程断面図である。
【図5】不揮発性記憶装置の製造方法を示す工程断面図である。
【図6】不揮発性記憶装置の製造方法を示す工程断面図である。
【図7】不揮発性記憶装置の製造方法を示す工程断面図である。
【図8】機能層の状態遷移を示す模式的断面図である。
【図9】不揮発性記憶装置の動作を示す図である。
【図10】ユニポーラ動作を示す図である。
【図11】バイポーラ動作を示す図である。
【図12】機能層を示す模式的断面図である。
【図13】機能層を示す模式的断面図である。
【図14】機能層を示す模式的断面図である。
【図15】機能層を示す模式的断面図である。
【図16】機能層を示す模式的断面図である。
【図17】機能層を示す模式的断面図である。
【図18】機能層を示す模式的断面図である。
【図19】機能層を示す模式的断面図である。
【図20】不揮発性記憶装置を示す模式的斜視図である。
【図21】不揮発性記憶装置を示す模式的斜視図である。
【図22】上下の機能層を示す模式的斜視図である。
【図23】遷移機能及び整流機能の組み合わせを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図に基づき説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比係数などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比係数が異なって表される場合もある。
また、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
また、以下の説明では、一例として、第1導電形をP形、第2導電形をN形とした具体例を挙げる。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る不揮発性記憶装置の構成を例示する模式図である。
なお、図1では、後述する3次元クロスポイント構造のうち、一つのクロスポイントでの構造を模式的に示している。
図1に表したように、第1の実施形態に係る不揮発性記憶装置110は、第1の方向に延びる上部配線(第1上部配線)L1と、上部配線L1と離間して設けられ、第1の方向と交差する第2の方向に延びる下部配線(第1下部配線)L2と、上部配線L1と、下部配線L2と、の間の交差位置に設けられる機能層(第1機能層)100と、を備える。積層構造体(第1積層構造体)STSは、上部配線L1、下部配線L2及び機能層100を有する。
【0011】
上部配線L1は、後述するビット線BLまたはワード線WLである。一方、下部配線L2は、後述するワード線WLまたはビット線BLである。図1では、各々1本の上部配線L1及び下部配線L2が示されている。実際には、並行する複数本の上部配線L1と、並行する複数本の下部配線L2と、が交差するように設けられている。
【0012】
機能層100は、金属層(第1金属層)10と、対向層(第1対向層)20と、これらの間に設けられた半導体層(第1半導体層)30と、を有する。半導体層30は、金属層10及び対向層20のそれぞれに接している。図1に例示した機能層100では、上部配線L1から下部配線L2に向けて、金属層10、半導体層30及び対向層20の順に設けられているが、この反対の順に設けられていてもよい。
【0013】
機能層100は、異なる抵抗状態のあいだを遷移する機能(以下、単に「遷移機能」と言う。)と、電流を整流する機能(以下、単に「整流機能」と言う。)と、を有する。抵抗状態には、相対的に高い抵抗状態(高抵抗状態)と、相対的に低い抵抗状態(低抵抗状態)と、がある。機能層100は、所定の電圧が印加されることによって、高抵抗状態と、低抵抗状態と、のあいだを遷移する。また、機能層100は、方向による電流特性を定める整流機能を有する。整流機能は、例えばPNダイオードによって実現される。
【0014】
本実施形態に係る不揮発性記憶装置110では、機能層100の半導体層30が、遷移機能の一部と整流機能の一部とを兼用している。したがって、これらの機能を別々な層で構成する場合に比べ、層厚を薄くすることができ、機能層100のアスペクト比を小さくできるようになる。ここで、機能層100のアスペクト比は、機能層100における配線層(例えば、第1配線層L1)の幅方向に沿った長さをa、幅方向と垂直な方向に沿った長さをb、とした場合、b/aのことである。以下、本実施形態では、機能層100のアスペクト比を、「b/a」と定義して説明する。
【0015】
次に、不揮発性記憶装置110のクロスポイント構造について説明する。
図2は、不揮発性記憶装置のクロスポイント構造を例示する模式的斜視図である。
同図に表したように、本実施形態に係る不揮発性記憶装置110においては、シリコン基板101が設けられており、シリコン基板101の上層部分及び上面上には、不揮発性記憶装置110の駆動回路(図示せず)が形成されている。シリコン基板101上には、駆動回路を埋め込むように、例えばシリコン酸化物からなる層間絶縁膜102が設けられており、層間絶縁膜102上にはクロスポイント構造のメモリセル部103が設けられている。メモリセル部103に含まれる積層構造体STSは、同一層となる複数のワード線WLと、同一層となる複数のビット線BLと、これらのクロスポイントに設けられた複数の機能層100と、を備えた構成になる。
【0016】
メモリセル部103においては、シリコン基板101の上面に平行な一方向(以下、「ワード線方向」という)に延びる複数本のワード線WLからなるワード線配線層104と、シリコン基板101の上面に平行な方向であって、ワード線方向に対して交差、例えば直交する方向(以下、「ビット線方向」という)に延びる複数本のビット線BLからなるビット線配線層105と、が絶縁層を介して積層されている。
【0017】
ワード線WL及びビット線BLのうち一方は上部配線L1であり、他方は下部配線L2である。なお、本実施形態では、一例として、ワード線WLを上部配線L1、ビット線BLを下部配線L2として説明する。
【0018】
ワード線WL及びビット線BLは、例えば、タングステン(W)により形成されている。また、ワード線WL同士、ビット線BL同士、ワード線WLとビット線BLとは、相互に接していない。
【0019】
そして、各ワード線WLと各ビット線BLとの最近接点には、シリコン基板101の上面に対して垂直な方向(以下、「上下方向」という)に延びる機能層100が設けられている。機能層100は、ワード線WLとビット線BLとの間にピラー状に形成されている。1つの機能層100により、1つのメモリセルが構成されている。ワード線WLとビット線BLとの最近接点毎にメモリセルが配置されることで、不揮発性記憶装置110はクロスポイント構造になる。ワード線WL、ビット線BL及び機能層100によるピラーの相互間は、例えばシリコン酸化物からなる層間絶縁膜107(図3参照)によって埋め込まれている。
【0020】
以下、図3を参照して、メモリセルの構成を説明する。
メモリセルの構成には、機能層100の下方にワード線WLが配置され、上方にビット線BLが配置される場合と、機能層100の下方にビット線BLが配置され、上方にワード線WLが配置される場合と、の2種類がある。図3においては、下方にビット線BLが配置され、上方にワード線WLが配置されたピラーが示されている。
【0021】
このメモリセルにおいては、下方(ビット線側)から上方(ワード線側)に向かって、対向層20、半導体層30及び金属層10の順に積層されている。すなわち、金属層10は、半導体層30に接し、半導体層30は対向層20に接している。また、金属層10はワード線WLに接し、対向層20はビット線BLに接している。なお、ワード線WLと金属層10との間や、ビット線BLと対向層20との間に、それぞれ接続用電極が設けられていてもよい。
【0022】
同層の各クロスポイントに形成された複数の機能層100の間には、層間絶縁膜107が埋め込まれている。これにより、各機能層100の間の絶縁及びピラー状の機能層100の支持がなされる。
【0023】
次に、本実施形態に係る不揮発性記憶装置の製造方法について説明する。
図4〜図7は、本実施形態に係る不揮発性記憶装置の製造方法を例示する工程断面図である。
先ず、シリコン基板101(図2参照)の上面に、メモリセル部103(図2参照)を駆動するための駆動回路を形成する。次に、シリコン基板101上に層間絶縁膜102を形成する。次に、層間絶縁膜102内に、駆動回路まで到達するコンタクト(図示せず)を形成する。
【0024】
次に、図4に表したように、例えばダマシン法によって層間絶縁膜12の上層部分内にタングステンを埋め込み、複数本のビット線BLをビット線方向に延びるように相互に平行に形成する。これらのビット線BLにより、ビット線配線層105(図2参照)が形成される。
【0025】
次に、ビット線配線層105上に、対向層20を一様に堆積させる。さらに、対向層20の上に、半導体層30を一様に堆積させる。さらに、半導体層30の上に金属層10を一様に堆積させる。
【0026】
次に、TEOS(tetra ethyl ortho silicate)を原料とするシリコン酸化膜及びシリコン窒化膜を成膜してパターン形成用のマスク材を形成し、このマスク材をリソグラフィ法によりパターニングして、マスクパターン(図示せず)を形成する。次に、このマスクパターンをマスクとしてRIE(reactive ion etching:反応性イオンエッチング)を施し、金属層10、半導体層30及び対向層20を選択的に除去して、ワード線方向及びビット線方向の双方に沿って分断する。これにより、各ビット線BL上に複数本のピラー状の機能層100が形成される(図5参照)。機能層100によるピラーのアスペクト比は、例えば10以下となる。
【0027】
次に、図6に表したように、例えば、ピラー状の機能層100を埋め込むように、絶縁膜、例えばTEOSを原料とするCVD(chemical vapor deposition:化学気相成長)法により、シリコン酸化膜を堆積させる。この絶縁膜が層間絶縁膜107になる。
【0028】
次に、図7に示すように、層間絶縁膜107上に更に層間絶縁膜(図示せず)を形成し、ダマシン法によりワード線WLを形成する。すなわち、層間絶縁膜におけるワード線WLを形成する予定の領域に溝を形成し、配線材料、例えばタングステンを堆積させて溝内を埋め込み、CMPにより溝の外部に堆積されたタングステンを除去する。これにより、タングステンからなるワード線WLが形成される。また、これらの複数本のワード線WLにより、ワード線配線層104(図2参照)が形成される。各ワード線WLは、ワード線方向に配列された複数本の機能層100の上面に接続される。これにより、各機能層100は、ワード線WLとビット線BLとの間のクロスポイントに形成され、かつ、ワード線WL及びビット線BLに接続される。
これにより、本実施形態に係る不揮発性記憶装置110が製造される。
【0029】
図8は、機能層の状態遷移について説明する模式的断面図である。
同図(a)は、高抵抗状態、同図(b)は、低抵抗状態をそれぞれ例示している。
機能層100における半導体層30には、金属層10に含まれる金属(例えば、Ag)の原子(金属原子atm)が金属層10から半導体層30内に拡散している。
図8(a)に表した高抵抗状態では、半導体層30内の金属原子atmが、例えば対向層20の側に寄っている。つまり、金属層10と対向層20との間の導通経路となるフィラメントFLMは形成されない。これにより、機能層100は、高抵抗状態(オフ状態)となる。
【0030】
図8(b)に表した低抵抗状態では、半導体層30内の金属原子atmが、金属層10と対向層20との間で繋がる。つまり、金属層10と対向層20との間の導通経路となるフィラメントFLMが形成される。これにより、機能層100は、低抵抗状態(オン状態)となる。
【0031】
なお、状態遷移は金属原子atmによるフィラメントFLMの形成の有無には限定されない。例えば、半導体層30の組成によっては、酸素欠陥やイオン伝導を用いてフィラメントFLMが形成されるものもある。したがって、このようなフィラメントFLMの形成が成される半導体層30であれば、絶縁体や絶縁体に近い材料またはこのような材料を含むものであってもよい。
また、金属層10としては、半導体層30との積層によって状態遷移動作が可能であれば酸化または窒化されていてもよい。
【0032】
次に、本実施形態の動作について説明する。
図9(a)及び(b)は、横軸に電圧をとり、縦軸に電流をとって、不揮発性記憶装置の動作を例示するグラフ図である。
同図(a)はフォーミング動作を示し、同図(b)はセット動作及びリセット動作を示す。
【0033】
図9(a)に示す実線S1は、初期状態にある機能層のIV特性を示している。実線S1に示すように、初期状態においては、機能層100の抵抗値はかなり高い。この初期状態の機能層100に印加する電圧を徐々に増加させていくと、ある電圧(Vf)において、実線S2に示す低抵抗状態に不連続的に移行する。このときの電圧Vfをフォーミング電圧という。実線S2が示す状態は、上述のオン状態又はオフ状態であり、実線S1が示す初期状態よりも抵抗値が低い。
【0034】
このとき、実線S1に示すように、機能層に印加している電圧がフォーミング電圧Vfに達すると、機能層の抵抗値が急激に低下するため、そのままだと大電流が流れ、機能層が損傷を受けてしまう。そこで、電圧を供給する駆動回路に何らかの防御機構を設け、印加電圧がフォーミング電圧Vfに到達した瞬間に電流を遮断している。
【0035】
また、図9(b)の破線S3に示すように、高抵抗なオフ状態にある機能層に対して、セット電圧Vsetを印加すると、低抵抗なオン状態に移行する。この動作を「セット動作」という。セット動作においても、機能層の抵抗値が急激に低下するため、駆動回路は、電圧がセット電圧Vsetに達した瞬間に電流を遮断し、抵抗変化膜に過電流が流れることを防止している。
【0036】
一方、図9(b)の実線S4に示すように、低抵抗なオン状態にある機能層に対して、リセット電圧Vresetを印加すると、高抵抗なオフ状態に移行する。この動作を「リセット動作」という。なお、リセット動作においては、機能層の抵抗が増加するため、機能層に過電流が流れることはない。そして、セット動作及びリセット動作を繰り返すことにより、オン状態とオフ状態との間を可逆的に移行させることができ、機能層をメモリ素子として利用することができる。
【0037】
次に、セット動作及びリセット動作を行う際のメモリセルへの電圧印加動作を説明する。
図10は、ユニポーラ動作を説明する図である。
同図(a)は、セット動作、同図(b)は、リセット動作を説明する図である。
図11は、バイポーラ動作を説明する図である。
同図(a)は、セット動作、同図(b)は、リセット動作を説明する図である。
なお、ここでは、説明を分かりやすくするため、3本のワード線WLと3本のビット線BLとによる合計9個のクロスポイントにおいて、各メモリセルへ印加される電圧の状態を例示している。各図において、メモリセルは丸印で表されている。9個のクロスポイントのうち、選択対象は中央のメモリセルMC0、非選択対象はそれ以外のメモリセルMC1である。
【0038】
図10(a)に表したように、ユニポーラ動作におけるセット動作では、選択対象のメモリセルMC0に接続されたワード線WL0にはセット電圧Vsetを、ビット線BL0には基準電位(例えば、0V)を印加する。一方、非選択対象のメモリセルMC1に接続されたワード線WL1には基準電位を、ビット線BL1にはセット電圧Vsetを印加する。
これにより、選択対象のメモリセルMC0には、セット電圧Vsetが印加される。一方、非選択対象のメモリセルMC1には、基準電位または−Vsetが印加される。
ここで、メモリセルMC0及びMC1にはそれぞれ選択素子が設けられている。したがって、一方の極性であるセット電圧Vsetが印加されたメモリセルMC0の機能層100にのみセット電圧Vsetが印加され、セット動作が行われる。また、他方の極性である−Vsetまたは基準電位が印加されたメモリセルMC1の機能層100には電圧が印加されず、セット動作は行われない。
【0039】
図10(b)に表したリセット動作では、選択対象のメモリセルMC0に接続されたワード線WL0にはリセット電圧Vresetを、ビット線BL0には基準電位(例えば、0V)を印加する。一方、非選択対象のメモリセルMC1に接続されたワード線WL1には基準電位を、ビット線BL1にはリセット電圧Vresetを印加する。
これにより、選択対象のメモリセルMC0には、リセット電圧Vresetが印加される。一方、非選択対象のメモリセルMC1には、基準電位または−Vresetが印加される。
したがって、一方の極性であるリセット電圧Vresetが印加されたメモリセルMC0の機能層100にのみリセット電圧Vresetが印加され、リセット動作が行われる。また、他方の極性である−Vresetまたは基準電位が印加されたメモリセルMC1の機能層10には電圧が印加されず、リセット動作は行われない。
なお、図10に示すセット動作及びリセット動作の動作手法は、逆にしてもよい。
【0040】
図11(a)に表したように、バイポーラ動作におけるセット動作では、選択対象のメモリセルMC0に接続されたワード線WL0にはセット電圧Vsetを、ビット線BL0には基準電位(例えば、0V)を印加する。一方、非選択対象のメモリセルMC1に接続されたワード線WL1にはVset/2を、ビット線BL1にはVset/2を印加する。
これにより、選択対象のメモリセルMC0には、選択素子のブレークダウン電圧を超えたセット電圧Vsetが印加される。一方、非選択対象のメモリセルMC1には、選択素子のブレークダウン電圧を超えない基準電位またはVset/2が印加される。
したがって、セット電圧Vsetが印加されたメモリセルMC0の機能層100にのみセット電圧Vsetが印加され、セット動作が行われる。また、メモリセルMC1にはセット電圧Vsetが印加されず、セット動作は行われない。
【0041】
図11(b)に表したリセット動作では、選択対象のメモリセルMC0に接続されたワード線WL0には基準電位、ビット線BL0にはリセット電圧Vresetを印加する。一方、非選択対象のメモリセルMC1に接続されたワード線WL1にはリセット電圧Vresetを、ビット線BL1には基準電位を印加する。
したがって、リセット電圧Vresetの逆極性である−Vresetが印加されたメモリセルMC0の機能層100にのみ−Vresetが印加され、リセット動作が行われる。また、リセット電圧Vresetまたは基準電位が印加されたメモリセルMC1の機能層100には電圧が印加されず、リセット動作は行われない。
なお、図11に示すセット動作及びリセット動作の動作手法は、逆にしてもよい。
【0042】
上記の動作は一例であり、リセット動作やセット動作の電圧の印加方向は極性を逆にしてもよい。例えば、バイポーラ動作であれば、セット電圧を+Vset、リセット電圧を−Vresetにしても、反対に、セット電圧を−Vset、リセット電圧を+Vresetにしてもよい。また、セット動作、リセット動作ともに±Vset/2、±Vreset/2をとる方式を用いてもよい。
【0043】
図12〜図18は、機能層の具体例を説明する模式的断面図である。
各図では、説明の便宜上、1つのクロスポイントに設けられた1つの機能層の模式的断面を例示している。
【0044】
図12に表した不揮発性記憶装置111の機能層100Aは、金属層10、対向層20及び半導体層30を備える。対向層20は、第1層21及び第2層22を有する。また、半導体層30は、第1層31及び第2層32を有する。
【0045】
金属層10は、例えば銀(Ag)、ハフニウム(Hf)、ニッケル(Ni)を含む。対向層20の第1層21は、真性半導体(例えば、シリコン(Si))である。また、対向層20の第2層22は、第2導電形の半導体(例えば、N形のSi)である。半導体層30の第1層31は、真性半導体(例えば、Si)である。また、半導体層30の第2層32は、第1導電形の半導体(例えば、P形のSi)である。ここで、導電形に付された「+」は、「−」に対して相対的に不純物濃度が高いことを示す。
【0046】
この機能層100Aでは、半導体層30の第2層32に含まれる例えばP形のSi、対向層20の第1層21に含まれる真性Si及び対向層20の第2層22に含まれる例えばN形のSiによって、PIN(P形半導体−真性半導体−N形半導体)ダイオードを構成している。
このPINダイオードのうち、半導体層30の第2層32に含まれる例えばP形のSiは、第1層31に含まれる真性Siとともに遷移機能(メモリ機能)を有する。すなわち、半導体層30の第2層32は、遷移機能の一部と、PINダイオードによる整流機能の一部と、を兼ね備える。このように、遷移機能の一部と整流機能の一部とを兼用した第2層32を含む機能層100Aは、兼用しない場合に比べてアスペクト比を小さくできることになる。
なお、PINダイオードは、上記のP形とN形とを上下逆にした構造でもよい。
【0047】
図13に表した不揮発性記憶装置112の機能層100Bは、金属層10、対向層20及び半導体層30を備える。半導体層30は、第1層31、第2層32及び第3層33を有する。
【0048】
金属層10は、例えばAg、Hf、Niを含む。対向層20は、第2導電形の半導体(例えば、N形のSi)を含む。また、半導体層30の第1層31は、真性半導体(例えば、Si)を含む。また、半導体層30の第2層32は、第2導電形の半導体(例えば、N形のSi)を含む。また、半導体層30の第3層33は、第1導電形の半導体(例えば、P形のSi)を含む。
【0049】
この機能層100Bでは、半導体層30の第2層32に含まれる例えばN形のSi、第3層33に含まれる例えばP形のSi及び対向層20に含まれる例えばN形のSiによって、NPN(N形半導体−P形半導体−N形半導体)素子を構成している。
このNPN素子のうち、半導体層30の第2層32に含まれる例えばN形のSi及び第3層33に含まれる例えばP形のSiは、第1層31に含まれる真性Siとともに遷移機能を有する。すなわち、半導体層30の第2層32及び第3層33は、遷移機能の一部と、NPN素子の整流機能の一部と、を兼ね備える。このように、遷移機能の一部と整流機能の一部とを兼用した第2層32及び第3層33を含む機能層100Bは、兼用しない場合に比べてアスペクト比を小さくできることになる。
【0050】
図14に表した不揮発性記憶装置113の機能層100Cは、金属層10、対向層20及び半導体層30を備える。対向層20は、第1層21及び第2層22を有する。また、半導体層30は、第1層31及び第2層32を有する。
【0051】
金属層10は、例えばAg、Hf、Niを含む。対向層20の第1層21は、第2導電形の半導体(例えば、N形のSi)を含む。また、対向層20の第2層22は、第1導電形の半導体(例えば、P形のSi)を含む。また、半導体層30の第1層31は、真性半導体(例えば、Si)を含む。また、半導体層30の第2層32は、第1導電形の半導体(例えば、P形のSi)を含む。
【0052】
この機能層100Cでは、半導体層30の第2層32に含まれる例えばP形のSi、第3層33に含まれる例えばN形のSi及び対向層20に含まれる例えばP形のSiによって、PNP(P形半導体−N形半導体−P形半導体)素子を構成している。
このPNP素子のうち、半導体層30の第2層32に含まれる例えばP形のSi及び第3層33に含まれる例えばN形のSiは、第1層31に含まれる真性Siとともに遷移機能を有する。すなわち、半導体層30の第2層32及び第3層33は、遷移機能の一部と、PNP素子の整流機能の一部と、を兼ね備える。このように、遷移機能の一部と整流機能の一部とを兼用した第2層32及び第3層33を含む機能層100Cは、兼用しない場合に比べてアスペクト比を小さくできることになる。
【0053】
図15に表した不揮発性記憶装置114の機能層100Dは、金属層10、対向層20及び半導体層30を備える。対向層20は、第1層21、第2層22及び第3層23を有する。また、半導体層30は、第1層31及び第2層32を有する。
【0054】
金属層10は、例えばAg、Hf、Niを含む。対向層20の第1層21は、第2導電形の半導体(例えば、N形のSi)を含む。また、対向層20の第2層22は、第1導電形の半導体(例えば、P形のSi)を含む。また、第2対向層20の第3層23は、第2導電形の半導体(例えば、N形のSi)を含む。また、半導体層30の第1層31は、真性半導体(例えば、Si)を含む。また、半導体層30の第2層32は、第1導電形の半導体(例えば、P形のSi)を含む。
【0055】
この機能層100Dでは、半導体層30の第2層32に含まれる例えばP形のSi、対向層20の第1層21に含まれる例えばN形のSi、第2層22に含まれる例えばP形のSi、第3層23に含まれるN形の半導体(例えば、N形のSi)によって、PNPN(P形半導体−N形半導体−P形半導体−N形半導体)素子を構成している。
このPNPN素子のうち、半導体層30の第2層32に含まれる例えばP形のSiは、第1層31に含まれる真性Siとともに遷移機能を有する。すなわち、半導体層30の第2層32は、遷移機能の一部と、PNPN素子の整流機能の一部と、を兼ね備える。このように、遷移機能の一部と整流機能の一部とを兼用した第2層32を含む機能層100Dは、兼用しない場合に比べてアスペクト比を小さくできることになる。
【0056】
図16に表した不揮発性記憶装置115の機能層100Eは、金属層10、対向層20及び半導体層30を備える。対向層20は、第1層21及び第2層22を有する。また、半導体層30は、第1層31及び第2層32を有する。
【0057】
金属層10は、例えばAg、Hf、Niを含む。対向層20の第1層21は、絶縁体を含む。また、対向層20の第2層22は、第1導電形の半導体(例えば、P形のSi)を含む。また、半導体層30の第1層31は、真性半導体(例えば、Si)を含む。また、半導体層30の第2層32は、第1導電形の半導体(例えば、P形のSi)を含む。
【0058】
この機能層100Eでは、半導体層30の第2層32に含まれる例えばP形のSi、第2対向層の第1層21に含まれる絶縁体及び対向層20の第2層22に含まれる例えばP形のSiによって、SIS(半導体−絶縁体−半導体)素子を構成している。
このSIS素子のうち、半導体層30の第2層32に含まれる例えばP形のSiは、第1層31に含まれる真性Siとともに遷移機能を有する。すなわち、半導体層30の第2層32は、遷移機能の一部と、SIS素子の整流機能の一部と、を兼ね備える。このように、遷移機能の一部と整流機能の一部とを兼用した第2層32を含む機能層100Eは、兼用しない場合に比べてアスペクト比を小さくできることになる。
【0059】
なお、図16に例示した機能層100Eでは、半導体層30の第2層32及び対向層20の第2層22がいずれもP形の導電形を有する場合を例としたが、これらはN形であってもよい。また、第2層22及び32のうち、いずれか一方がN形、他方がP形であってもよい。また、上記のP、または、Nの第2層22層と絶縁体の第1層21との間に真性半導体層、または、P、または、Nをはさんで電界を緩和させ、キャリアの沸きを操作し、Vset、Vresetの動作点を変えてもよい。
【0060】
図17に表した不揮発性記憶装置116の機能層100Fは、金属層10、対向層20及び半導体層30を備える。対向層20は、第1層21、第2層22及び第3層23を有する。
【0061】
金属層10は、例えばAg、Hf、Niを含む。対向層20の第1層21は、金属を含む。また、対向層20の第2層22は、絶縁体を含む。また、対向層20の第3層22は、第1導電形の半導体(例えば、P形のSi)を含む。また、半導体層30は、真性半導体(例えば、Si)を含む。
【0062】
この機能層100Fでは、対向層20の第1層21に含まれる金属、第2層22に含まれる絶縁体、第3層23に含まれる例えばP形のSiによって、MIS(金属−絶縁体−半導体)素子を構成している。なお、このMIS素子の構成に、半導体層30に含まれる例えば真性Siを含めて、SMIS(半導体−金属−絶縁体−半導体)素子を構成してもよい。
このMIS素子のうち、対向層20の第1層21に含まれる金属は、半導体層30に含まれる真性Siとともに遷移機能を有する。すなわち、対向層20の第1層21は、遷移機能の一部と、MIS素子の整流機能の一部と、を兼ね備える。このように、遷移機能の一部と整流機能の一部とを兼用した第1層21を含む機能層100Fは、兼用しない場合に比べてアスペクト比を小さくできることになる。
【0063】
また、MIS素子部分の金属の仕事関数を材料によって操作すると、電気特性を変化させることができる。例えば、電流を低い電圧でとりたい場合には、フェルミ準位の高い金属を用いるとよい。また、第2層22の絶縁体を多層構造にすることでも、On/Off比を変化させることができる。例えば、電子を注入する側に高い障壁を持つ絶縁膜を薄膜で設けると、高い障壁を持つ側から電子が流れると流れやすく、逆側(低い障壁側)から電子が流れる場合、流れにくくなる。このような調節によって、電気特性を調節することができるようになる。
【0064】
図18に表した不揮発性記憶装置117の機能層100Gは、金属層10、対向層20及び半導体層30を備える。対向層20は、第1層21、第2層22及び第3層23を有する。
【0065】
金属層10は、例えばAg、Hf、Niを含む。対向層20の第1層21は、金属を含む。また、対向層20の第2層22は、絶縁体を含む。また、対向層20の第3層23は、金属を含む。また、半導体層30は、真性半導体(例えば、Si)を含む。
【0066】
この機能層100Gでは、対向層20の第1層21に含まれる金属、第2層22に含まれる絶縁体、第3層23に含まれる金属によって、MIM(金属−絶縁体−金属)素子を構成している。
このMIM素子のうち、対向層20の第1層21に含まれる金属は、半導体層30に含まれる真性Siとともに遷移機能を有する。すなわち、対向層20の第1層21は、遷移機能の一部と、MIM素子の整流機能の一部と、を兼ね備える。このように、遷移機能の一部と整流機能の一部とを兼用した第1層21を含む機能層100Gは、兼用しない場合に比べてアスペクト比を小さくできることになる。
【0067】
また、MIM素子部分の金属の仕事関数を材料によって操作すると、電気特性を変化させることができる。例えば、電流を低い電圧でとりたい場合には、フェルミ準位の高い金属を用いるとよい。また、第2層22の絶縁体を多層構造にすることでも、On/Off比の変化させることができる。例えば、電子を注入する側に高い障壁を持つ絶縁膜を薄膜で設けると、高い障壁を持つ側から電子が流れると流れやすく、逆側(低い障壁側)から電子が流れる場合、流れにくくなる。このような調節によって、電気特性を調節することができるようになる。
【0068】
図19に表した不揮発性記憶装置118の機能層100Hは、金属層10、対向層20及び半導体層30を備える。対向層20は、第1層21、第2層22及び第3層23を有する。
【0069】
金属層10は、例えばAg、Hf、Niを含む。対向層20の第1層21は、例えばP形半導体を含む。また、対向層20の第2層22は、真性半導体を含む。また、対向層20の第3層23は、金属を含む。また、半導体層30は、真性半導体(例えば、Si)を含む。
【0070】
この機能層100Hでは、対向層20の第1層21に含まれるP形半導体、第2層22に含まれるP性半導体、第3層23に含まれる金属によって、PIM(P型半導体−真性半導体−金属)素子を構成している。
このPIM素子のうち、対向層20の第1層21に含まれる半導体は、半導体層30に含まれる真性Siとともに遷移機能を有する。すなわち、対向層20の第1層21は、遷移機能の一部と、PIM素子の整流機能の一部と、を兼ね備える。このように、遷移機能の一部と整流機能の一部とを兼用した第1層21を含む機能層100Hは、兼用しない場合に比べてアスペクト比を小さくできることになる。
【0071】
また、PIM素子部分の金属の仕事関数を材料によって操作すると、電気特性を変化させることができる。例えば、電流を低い電圧でとりたい場合は、フェルミ準位の高い金属を用いるとよい。また、第1層21に含まれる半導体は、P形の変わりにN形を用いてもよい。また、PIM素子は、上下逆の構造を用いてもよい。さらに、PIM素子の金属と真性半導体との界面に、偏析させたN形不純物を入れてもよい(NIM素子の場合はP形不純物を偏析させる)。極薄の偏析によってPINにはならず、PIMのままの特性で調節することができる。
【0072】
なお、上記機能層100A〜100Fについては、金属層10と上部配線L1との間に接続用電極を設けてもよい。また、機能層100A〜100Fについては、対向層20と下部配線L2との間に接続用電極を設けてもよい。
【0073】
(第2の実施形態)
図20は、第2の実施形態に係る不揮発性記憶装置の構造を例示する模式的斜視図である。
図20に表したように、本実施形態に係る不揮発性記憶装置120は、積層構造体(第1積層構造体)STS1及び積層構造体(第2積層構造体)STS2が上下方向に積層されたものである。
積層構造体STS1は、第1の上部配線L1であるワード線WL−1と、第1の下部配線L2であるビット線BL−1と、ワード線WL−1とビット線BL−1とのクロスポイントに設けられた第1の機能層100−1と、を有する。
積層構造体STS2は、第2の上部配線L1であるワード線WL−2と、第2の下部配線L2であるビット線BL−2と、ワード線WL−2とビット線BL−2とのクロスポイントに設けられた第2の機能層100−2と、を有する。
【0074】
積層構造体STS1の機能層100−1には、先に説明した機能層100A〜100Gのいずれかが適用される。また、積層構造体STS2の機能層100−2には、先に説明した機能層100A〜100Gのいずれかが適用される。
機能層100−1及び機能層100−2は、同じ構造であっても、異なる構造であってもよい。
また、機能層100−1及び機能層100−2について同じ構造を採用しても、金属層10、対向層20及び半導体層30のそれぞれについて材料や組成が異なっていてもよい。
【0075】
機能層100−1及び100−2にいずれの機能層100A〜100Gを用いても、アスペクト比を小さくすることができる。このように、積層構造体STS1及びSTS2を積層した不揮発性記憶装置120では、機能層100のアスペクト比の抑制の効果がより顕著に表れることになる。
【0076】
なお、図20に例示した不揮発性記憶装置120では、積層構造体STSが上下方向に2段積層されているが、3段以上積層されていてもよい。積層段数が増えるほど、機能層100のアスペクト比の抑制の効果は大きい。
【0077】
(第3の実施形態)
図21は、第3の実施形態に係る不揮発性記憶装置の構造を例示する模式的斜視図である。
不揮発性記憶装置130は、ワード線方向に延びる複数本のワード線(第1配線)WLを有する第1ワード線配線層104Aと、第1ワード線配線層104Aと離間して設けられ、ビット線方向に延びる複数本のビット線(第2配線)BLを有するビット線配線層105と、第1ワード線配線層104A及びビット線配線層105と離間して設けられ、ワード線方向に延びる複数本のワード線(第3配線)WLを有する第2ワード線配線層104Bと、各配線の交差位置に設けられる機能層100と、を備える。機能層100は、金属層10と、対向層20と、これらの間に設けられた半導体層30と、を有する。
【0078】
この不揮発性記憶装置130では、上下に積層された2つの機能層100の間に設けられたビット線BLが、2つの機能層100で兼用になっている。機能層100としては、先に説明した機能層100A〜100Gのいずれかを用いることができる。機能層100は、遷移機能及び整流機能を有する。
【0079】
図22は、クロスポイントにおける上下の機能層の構成を例示する模式的斜視図である。
ワード線WLとビット線BLとの交差位置になるクロスポイントには、金属層10、対向層20及び半導体層30を有する機能層100が設けられる。機能層100は、ワード線WLからビット線BLに向けて、金属層10、半導体層30及び対向層20の順、またはこの逆順に設けられる。
【0080】
例えば、図22に例示した、上段の機能層100UPは、第2ワード線配線層104Bのワード線WLからビット線配線層105のビット線BLに向けて、金属層10、半導体層30及び対向層20の順に設けられている。また、下段の機能層100DWは、第1ワード線配線層104Aのワード線WLからビット線配線層105のビット線BLに向けて、対向層20、半導体層30及び金属層10の順に設けられている。
【0081】
機能層100UP及び100DWは、金属層10、半導体層30及び対向層20の形成順及び半導体の導電形の選択によって、遷移機能を発揮する部分と整流機能を発揮する部分との並び順及び整流機能の整流方向が変化する。
【0082】
例えば、機能層100UPは、第2ワード線配線層104Bのワード線WLからビット線BLに向けて、遷移機能を発揮する部分、整流機能を発揮する部分の順に設けられている。また、機能層100UPは、第2ワード線配線層104Bのワード線WLからビット線BLに向けて順方向となる整流機能を有する。一方、機能層100DWは、ビット線BLから第1ワード線配線層104Aのワード線WLに向けて、遷移機能を発揮する部分、整流機能を発揮する部分の順に設けられている。また、機能層100DWは、ビット線BLから第1ワード線配線層104Aワード線WLに向けて順方向となる整流機能を有する。
【0083】
図23は、機能層の機能部分の並び及び整流方向の組み合わせ例を示す図である。
同図において、遷移機能は抵抗記号で表され、整流機能はダイオード記号で表されている。
同図(a)及び(b)のそれぞれについて、上欄が機能層100UP、下欄が機能層100DWに対応している。
このように、遷移機能を発揮する部分と整流機能を発揮する部分との並び順及び整流機能の整流方向の組み合わせは、16通り選択することができる。これらの組み合わせを選択することで、様々なメモリ動作を実現することができる。
【0084】
ここで、積層構造体STSに用いられる各層の具体的な材料の一例を示す。
【0085】
<半導体>
半導体層30や対向層20で用いられる半導体には、例えばバンドギャップが0.1eV以上、10eV以下の値を有する物質が含まれる。半導体は、単結晶及び多結晶を含む。
半導体には、例えば、Si、SiGe、SiC、Ge、C、GaAs、酸化物半導体、ナイトライド系半導体、カーバイド系半導体及び硫化物半導体が含まれる。
また、P形半導体には、P形Si、TiO、ZrO、InZnO、ITO、SnO:Sb、ZnO:Al、AgSbO、InGaZnO、ZnO・SnO等が含まれる。
また、N形半導体には、N+形Si、NiO、ZnO・Rh、ZnO:N、LaCuO4+d等が含まれる。
【0086】
<絶縁体>
機能層100EのSIS素子、機能層100FのMIS(SMIS)素子及び機能層100GのMIM素子の絶縁体は、例えば以下の材料から選択される。
【0087】
(1)酸化物
(1−1)SiO、Al、Y、La、Gd、Ce、CeO、Ta、HfO、ZrO、TiO、HfSiO、HfAlO、ZrSiO、ZrAlO、AlSiOなどのうちの一つまたは複数個の組み合わせ。
(1−2)AB
ただし、A及びBは、同じ又は異なる元素で、かつ、Al、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Geのうちの一つまたは複数個の組み合わせ。
例えば、Fe、FeAl、Mn1+xAl2−x4+y、Co1+xAl2−x4+y、MnOである。
(1−3)ABO
ただし、A及びBは、同じ又は異なる元素で、かつ、Al、La、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、Pb、Bi、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Snのうちの一つまたは複数個の組み合わせで構成される。
例えば、LaAlO、SrHfO、SrZrO、SrTiOである。
(2)酸窒化物
(2−1)SiON、AlON、YON、LaON、GdON、CeON、TaON、HfON、ZrON、TiON、LaAlON、SrHfON、SrZrON、SrTiON、HfSiON、HfAlON、ZrSiON、ZrAlON、AlSiONなどのうちの一つまたは複数個の組み合わせ。
(2−2)上述の(1)酸化物の酸素元素の一部を窒素元素で置換した材料
特に、MIM素子を構成する絶縁層は、それぞれ、SiO、SiN、Si、Al、SiON、HfO、HfSiON、Ta、TiO、SrTiOのグループから選択されるのが好ましい。
特にSiO、SiN、SiONなどのSi系の絶縁膜に関しては、酸素元素、窒素元素の濃度がそれぞれ1×1013atoms/cm以上であるものを含む。
ただし、MIM素子の絶縁体が複数の絶縁層を含む場合の各絶縁層や、積層構造体STSが複数段設けられた場合において異なる段のMIM素子の各絶縁層については、互いにバリアハイトが異なるものを用いてもよい。
また、絶縁層は、欠陥準位を形成する不純物原子、または半導体/メタルドット(量子ドット)を含む材料を含む。
【0088】
<導体>
ワード線WL及びビット線BLを構成する上部配線L1及び下部配線L2として機能する導電線は、例えば以下の材料から選択される。
【0089】
W、WN、Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、TiN、WSi、TaSi、PdSi、ErSi、YSi、PtSi、HfSi、NiSi、CoSi、TiSi、VSi、CrSi、MnSi、FeSiなどのうち一つまたは複数個の組み合わせ。
【0090】
接続用電極、MIM素子、MIS(SMIS)素子及び遷移動作を行う素子の金属は、例えば以下の材料から選択される。
【0091】
金属元素単体または複数の混合物、シリサイドや酸化物、窒化物などが挙げられる。
具体的にはPt、au、Ag、TiAlN、SrRuO、Ru、RuN、Ir、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、TiN、TaN、LaNiO、Al、PtIrO、PtRhO、Rh、TaAlN、SiTiO、WSi、TaSi、PdSi、PtSi、IrSi、ErSi、YSi、HfSi、NiSi、CoSi、TiSi、VSi、CrSi、MnSi、FeSiなどのうちの一つまたは複数個の組み合わせで構成される。接続用電極は、バリアメタル層または接着層としての機能を同時に有していてもよい。
【0092】
特に、MIS(SMIS)素子及びMIM素子の金属は、例えば以下の材料のうちの一つまたは複数個の組み合わせで構成される。
【0093】
(3−1)金属の単一元素
(3−2)酸化物、炭化物、ホウ化物、窒化物若しくはケイ化物としての化合物金属
(3−3)TiN、TiC、TiB、TiSi、TaC、TaB、TaN、WC、WB、W、WSi、TaC、TaB、TaN、TaSi、HfSi、Hf、YSi、ErSi
【0094】
ただし、MIM素子における二つのメタル層の実効仕事関数は、互いに異なっているのが好ましい。
例えば、二つのメタル層のうちの一方が、小さな実効仕事関数を有するErSi、HfSi、YSi、TaC、TaN、TiN、TiC、TiB、LaB、La、LaNなどのうち一つまたは複数個の組み合わせで構成されるとき、他方は、大きな実効仕事関数を有するWN、W、WB、WC、Pt、PtSi、Pd、PdSi、Ir、IrSiのうちの一つまたは複数個の組み合わせで構成するのが好ましい。
【0095】
以上説明したように、本実施形態に係る不揮発性記憶装置によれば、機能層100のアスペクト比の増加を抑制し、加工性の向上及び特性の均一化を達成することができる。
【0096】
なお、上記に本実施形態及びその変形例を説明したが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。例えば、前述の各実施の形態および各変形例においては、第1の導電形をP形、第2の導電形をN形として説明したが、本発明は第1の導電形をN形、第2の導電形をP形としても実施可能である。
【0097】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0098】
10…金属層、20…対向層、30…半導体層、110〜130…不揮発性記憶装置、L1…上部配線、L2…下部配線、STS…積層構造体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に延びる複数本の第1上部配線と、
前記第1上部配線と離間して設けられ、前記第1の方向と交差する第2の方向に延びる複数本の第1下部配線と、
前記複数本の第1上部配線と、前記複数本の第1下部配線と、の間のそれぞれの交差位置に設けられ、異なる抵抗状態のあいだを遷移する遷移機能及び電流を整流する整流機能を有する第1機能層と、
を有する第1積層構造体を備え、
前記第1機能層は、
第1金属層と、
第1対向層と、
前記第1金属層と、前記第1対向層と、の間に設けられ、前記第1金属層及び前記第1対向層のそれぞれに接する第1半導体層と、
を有することを特徴とする不揮発性記憶装置。
【請求項2】
前記第1半導体層は、第1導電形の第1半導体領域を含み、
前記第1対向層は、第2導電形の第2半導体領域を含むことを特徴とする請求項1記載の不揮発性記憶装置。
【請求項3】
前記第1対向層は、前記第1半導体領域と、前記第2半導体領域と、の間に、第1真性半導体領域を有することを特徴とする請求項2記載の不揮発性記憶装置。
【請求項4】
前記第1半導体層は、第2導電形の第3半導体領域を含み、
前記第3半導体領域は、前記第1半導体領域と、前記第1上部配線と、の間に設けられたことを特徴とする請求項2記載の不揮発性記憶装置。
【請求項5】
前記第1対向層は、第1導電形の第4半導体領域を含み、
前記第4半導体領域は、前記第2半導体領域と、前記第1下部配線と、の間に設けられたことを特徴とする請求項2記載の不揮発性記憶装置。
【請求項6】
前記第1半導体層は、第1導電形の第1半導体領域を含み、
前記第1対向層は、
第1導電形の第6半導体領域と、
前記第6半導体領域と、前記第1半導体領域と、の間に設けられた第1絶縁体領域と、
を含むことを特徴とする請求項1記載の不揮発性記憶装置。
【請求項7】
前記第1対向層は、
第1金属領域と、
第7半導体領域と、
前記第1金属領域と、前記第7半導体領域と、の間に設けられた第2絶縁体領域と、
を含むことを特徴とする請求項1記載の不揮発性記憶装置。
【請求項8】
前記第1対向層は、
第8半導体領域と、
第4金属領域と、
前記第8半導体領域と、前記第4金属領域と、の間に設けられた第2真性半導体領域と、
を含むことを特徴とする請求項1記載の不揮発性記憶装置。
【請求項9】
第1の方向に延びる複数本の第1配線と、
前記第1の配線と離間して設けられ、前記第1の方向と交差する第2の方向に延びる複数本の第2配線と、
前記第1の配線及び前記第2の配線と離間して設けられ、前記第1の方向に延びる複数本の第3配線と、
前記複数本の第1配線と、前記複数本の第2配線と、の間、及び前記複数本の第2配線と、前記複数本の第3配線と、の間のそれぞれの交差位置に設けられ、異なる抵抗状態のあいだを遷移する遷移機能及び電流の整流機能を有する機能層と、
を備え、
前記機能層は、
金属層と、
対向層と、
前記金属層と、前記対向層と、の間に設けられ、前記金属層及び前記対向層のそれぞれに接する半導体層と、
を有することを特徴とする不揮発性記憶装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2012−33763(P2012−33763A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−172723(P2010−172723)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】