説明

不整脈を検出するアルゴリズムの動的選択

装置は、被験者の心臓の心臓脱分極事象を表す第1の電気センサー信号を生成する第1の埋め込み型センサーと、心臓の血流動態機能を表す第2の電気センサー信号を生成する第2の埋め込み型センサーと、信号アナライザ回路と、不整脈識別回路とを備える。信号アナライザ回路は、第1のセンサー信号から不整脈事象を検出し、第2のセンサー信号を用いて不整脈事象検出に応答して血流動態安定性を計算する。不整脈識別回路は、信号アナライザ回路によって生成され計算された血流動態安定性に従って、不整脈識別回路によって実施可能である複数の候補不整脈識別アルゴリズムの中から不整脈識別アルゴリズムを選択し、選択された不整脈識別アルゴリズムを用いて検出された不整脈を分類し、不整脈分類をユーザーまたはプロセスに提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、患者または被験者の心臓電気生理学的パラメータを監視するシステム、機器、および方法に関し、特に、心臓不整脈の識別または分類を改良するシステム、機器、および方法に関する。
(優先権主張)
本出願は2009年4月22日に出願の米国仮特許出願第61/171,723号明細書の優先権の利益を主張し、当該明細は参照によって本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
埋め込み型医療機器(IMD)は、患者に埋め込まれるように設計された機器である。これらの機器の例として、心臓機能管理(CFM)機器が挙げられる。CFM機器は、埋め込み型ペースメーカーと、埋め込み型除細動器(ICD)と、心臓再同期治療を含むペーシングおよび除細動の組み合わせを含む機器とを含む。当該機器は、典型的に、電気治療を用いて患者を治療するとともに患者の状態の内部モニタリングによって患者を診断する際に医師および介護者を支援するために使用される。当該機器は、患者内の心臓の電気的活動を監視するためにセンスアンプとともに通信用導線を含む場合があり、他の患者内部パラメータを監視するためのセンサーを含む場合が多い。埋め込み型医療機器の他の例として、埋め込み型インスリンポンプまたは患者に薬物を投与するために埋め込まれる機器が挙げられる。
【0003】
さらに、一部のIMDは、心臓の電気的活動信号を監視することによって諸事象を検出する。CFM機器では、これらの事象は、心腔の拡大収縮を含む。拡大または収縮を示す心臓信号を監視することによって、IMDは異常に速い心拍、すなわち頻脈性不整脈を検出することができる。検出された心室頻脈は、ICDなどのIMDを用いて高エネルギーショック療法によって停止されうる。
【0004】
IMDを適用される患者は、IMD感知回路によって感知された信号の誤認によって悪影響を受ける場合がある。IMDが感知された信号を、頻脈性不整脈を示すものと間違って解釈すると、IMDはショック療法を不適切に施すおそれがある。ショック療法を不適切に施すと、患者に不快感を与える可能性があり、比較的大量のバッテリ電力を消耗して有益な機器の寿命を短縮しかねない。したがって、頻脈性不整脈を正確に検出することが重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書は、一般に、患者または被験者の心臓電気生理学的パラメータを監視するシステム、機器、および方法に関し、特に、心臓不整脈の識別または分類を改良するシステム、機器、および方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
例1では、装置は、被験者心臓の心臓脱分極事象を表す第1の電気センサー信号を生成する第1の埋め込み型センサーと、心臓の血流動態機能を表す第2の電気センサー信号を生成する第2の埋め込み型センサーと、信号アナライザ回路と、不整脈識別回路とを含む。信号アナライザ回路は、第1のセンサー信号から不整脈事象を検出し、第2のセンサー信号を用いた不整脈応答検出に応答して血流動態安定性を計算する。不整脈識別回路は、信号アナライザ回路によって生成されて計算された血流動態安定性に従って、不整脈識別回路によって実施可能である複数の候補不整脈識別アルゴリズムの中から不整脈識別アルゴリズムを選択し、選択された不整脈識別アルゴリズムを用いて検出された不整脈を分類し、不整脈分類をユーザーまたはプロセスに提供する。
【0007】
例2では、例1の不整脈識別回路は、任意で、不整脈が血流動態的に安定していることを血流動態安定性計算が示すときに第1の不整脈識別アルゴリズムを選択し、不整脈が血流動態的に不安定であることを血流動態安定性計算が示すときに第2の不整脈識別アルゴリズムを選択するように構成される。第1の不整脈識別アルゴリズムは第2の不整脈識別アルゴリズムよりも高い特異度を有し、第2の不整脈識別アルゴリズムは第1の不整脈識別アルゴリズムよりも高い感度を有する。
【0008】
例3では、例1および2のいずれか1つまたは複数の不整脈識別回路は、任意で、血流動態安定性計算からの血流動態安定性または不安定性のレベルを量子化し、血流動態安定性または不安定性のレベルに従って不整脈識別アルゴリズムを選択するように構成される。
【0009】
例4では、例1〜3のいずれか1つまたは複数の装置は、任意で、被験者の生理学的事象を表す第3の電気センサー信号を生成するように構成された第3のセンサーを含む。不整脈識別回路は、計算された血流動態安定性に従って、また第3のセンサー信号から得られた生理学的情報に従って、不整脈識別アルゴリズムを選択するように構成される。
【0010】
例5では、例1〜4のいずれか1つまたは複数の装置は、任意で、患者の兆候(patient indication)または患者人口統計の少なくとも一方に関連する情報を記憶するように構成された記憶回路を含む。不整脈識別回路は、計算された血流動態安定性に従って、また記憶された患者の兆候または患者人口統計の少なくとも一方に従って不整脈識別アルゴリズムを選択するように構成される。
【0011】
例6では、例1〜5のいずれか1つまたは複数の候補不整脈識別アルゴリズムは、任意で、第1のセンサー信号から抽出され不整脈を分類する際に候補アルゴリズムによって使用される特性、不整脈を分類するために候補アルゴリズムによって使用される規則、または候補アルゴリズムの論理構造の少なくとも1つが互いに異なる。
【0012】
例7では、例1〜6のいずれか1つまたは複数の候補不整脈識別アルゴリズムは、任意で、デフォルト不整脈識別アルゴリズムを含む。これらの例の不整脈識別回路は、計算された血流動態安定性に従って、デフォルトアルゴリズムを使用するか、それとも別の候補アルゴリズムに切り替えるかを決定するように構成される。
【0013】
例8では、例1〜7のいずれか1つまたは複数の不整脈識別回路は、任意で、不整脈分類回路によって実施可能な1組のアルゴリズムの中から複数の候補不整脈識別アルゴリズムを予め選択し、候補不整脈識別アルゴリズムの各々を用いて検出された不整脈を分類し、計算された血流動態安定性に従って候補アルゴリズムによって不整脈分類に重みを付け、検出された不整脈を重みに従って最終的に分類するように構成される。
【0014】
例9では、例1〜8のいずれか1つまたは複数の不整脈識別回路は、任意で、第3の電気的センサー信号、装置のメモリに記憶された患者の兆候、またはメモリに記憶された患者人口統計から得られた生理学的情報の少なくとも1つに従って候補不整脈識別アルゴリズムを予め選択するように構成される。
【0015】
例10では、例1〜9のいずれか1つまたは複数の信号アナライザ回路は、任意で、不整脈検出率または間隔閾値を満足し、かつ所定の時間または心拍数の間持続される心拍数または間隔を検出するときに不整脈事象を検出する。
【0016】
例11では、方法は、IMDを用いて被験者の心臓の不整脈事象を検出することと、心臓の血流動態機能を表す電気センサー信号を監視することと、センサー信号を用いて不整脈事象検出に応答して血流動態安定性を計算することと、IMDによって実施可能である複数の候補不整脈識別アルゴリズムの中から計算された血流動態安定性に従って不整脈識別アルゴリズムを選択することと、検出された不整脈を選択された不整脈識別アルゴリズムを用いて分類することと、不整脈分類をユーザーまたはプロセスに提供することとを含む。
【0017】
例12では、例11の不整脈識別アルゴリズムを選択することは、任意で、不整脈が血流動態的に安定していることを血流動態安定性計算が示すときに第1の不整脈識別アルゴリズムを選択することと、不整脈が血流動態的に不安定であることを血流動態安定性計算が示すときに第2の不整脈識別アルゴリズムを選択することとを含む。第1の不整脈識別アルゴリズムは第2の不整脈識別アルゴリズムよりも高い特異度を有し、第2の不整脈識別アルゴリズムは第1の不整脈識別アルゴリズムよりも高い感度を有する。
【0018】
例13では、例11および12のいずれか1つまたは複数の血流動態安定性を計算することは、任意で、血流動態安定性計算からの血流動態安定性または不安定性のレベルを量子化することを含み、不整脈識別アルゴリズムを選択することは血流動態安定性または不安定性のレベルに従ってアルゴリズムを選択することを含む。
【0019】
例14では、例11〜13のいずれか1つまたは複数の方法は、任意で、被験者の生理学的事象を表す第2の電気センサー信号を監視することを含み、不整脈識別アルゴリズムを選択することは計算された血流動態安定性に従って、また第2のセンサー信号から得られた生理学的情報に従って不整脈識別アルゴリズムを選択することを含む。
【0020】
例15では、例11〜14のいずれか1つまたは複数の不整脈識別アルゴリズムを選択することは、任意で、計算された血流動態安定性に従って、またIMDに記憶された患者の兆候または患者人口統計の少なくとも一方に従って不整脈識別アルゴリズムを選択することを含む。
【0021】
例16では、例11〜15のいずれか1つまたは複数の不整脈識別アルゴリズムを選択することは、任意で、センサー信号から抽出され検出された不整脈を分類するために候補アルゴリズムによって使用される特性、不整脈を分類するために候補アルゴリズムによって使用される規則、または候補アルゴリズムの論理構造の少なくとも1つが異なる候補アルゴリズムの中から不整脈識別アルゴリズムを選択することを含む。
【0022】
例17では、例11〜16のいずれか1つまたは複数の候補アルゴリズムは、任意で、デフォルト不整脈識別アルゴリズムを含む。不整脈識別アルゴリズムを選択することは、任意で、計算された血流動態安定性に従って、デフォルトアルゴリズムを使用するか、それともより適切な候補アルゴリズムに切り替えるかを決定することを含む。
【0023】
例18では、例11〜17のいずれか1つまたは複数の方法は、任意で、IMDによって実施可能な1組のアルゴリズムの中から複数の候補不整脈識別アルゴリズムを予め選択することと、候補不整脈識別アルゴリズムの各々を用いて検出された不整脈を分類することとを含む。不整脈識別アルゴリズムを選択することは、任意で、計算された血流動態安定性に従って候補アルゴリズムによって分類に重みを付けることを含み、検出された不整脈を分類することは、任意で、重み付けに従って選択された候補不整脈識別アルゴリズムの分類を用いることを含む。
【0024】
例19では、例11〜18のいずれか1つまたは複数の複数の候補アルゴリズムを予め選択することは、任意で、第2のセンサー信号から得られた生理学的情報、IMDに記憶された患者の兆候、またはIMDに記憶された患者人口統計の少なくとも1つに従って候補不整脈識別アルゴリズムを予め選択することを含む。
【0025】
例20では、例11〜19のいずれか1つまたは複数の不整脈事象を検出することは、任意で、不整脈検出率または間隔閾値を満足する心拍数または間隔を検出することを含む。
【0026】
本節は本特許出願の主題を概観するものである。本節は本発明を排他的または網羅的に説明するものではない。本特許出願に関するさらなる情報を提供するために発明の詳細な説明が含まれている。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】IMDを使用するシステムの各部の図である。
【図2】IMDにおける不整脈識別を実施する方法の流れ図である。
【図3】測定された心臓内インピーダンス波形の1組のグラフである。
【図4】不整脈識別アルゴリズムの例の概念ブロック図である。
【図5】不整脈を検出し識別するためのIMDの各部のブロック図である。
【図6】血流動態安定性とアルゴリズム感度および特異度のグラフを示す。
【図7】別の不整脈識別アルゴリズムの例の概念ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図面は必ずしも一定の縮尺で描かれておらず、同様の数字は図が異なっても同様の構成要素を表す場合がある。異なる添え字を有する同様の数字は、同様の構成要素の異なる事例を表す場合がある。図面は、本明細書において議論する様々な実施形態を、一般的に、制限としてではなく例として示す。
【0029】
本明細書では、IMDによる心臓事象の検出を改善するシステムおよび方法を説明する。具体的には、IMDによる不整脈の識別または分類を改善するシステムおよび方法を説明する。
【0030】
埋め込み型医療機器(IMD)は、本明細書で説明する特徴、構造、方法、またはこれらの組み合わせの1つまたは複数を含んでいてもよい。たとえば、心臓モニターまたは心臓電気刺激装置は、以下で説明する有利な特徴またはプロセスの1つまたは複数を含むように実施されてもよい。このようなモニター、刺激装置などの埋め込み可能な機器または部分的に埋め込み可能な機器は本明細書に記載する特徴のすべてを含む必要はないが、特異な構造または機能性を備える選択された特徴を含むように実施されてもよいことが意図される。このような機器は、様々な治療または診断機能を備えるように実施されてもよい。
【0031】
図1はIMD110を使用するシステムの各部の図である。IMD110の例として、限定的にではなく、ペースメーカー、除細動器、心臓再同期治療(CRT)機器、またはこのような機器の組み合わせが挙げられる。また、当該システムは、典型的に、無線周波数(RF)などのテレメトリ信号を使用したりして、IMD110と無線信号190をやり取りするIMDプログラマなどの外部機器170を含む。
【0032】
IMD110は、1本または複数本の導線108A〜Cによって心臓105に結合される。心臓導線108A〜Cは、IMD110に結合される近位端と、1つまたは複数の電極によって心臓105の一部分または複数部分に結合される遠位端とを含む。電極は、典型的に、電気的除細動、除細動、ペーシング、または再同期治療、あるいはこれらの組み合わせを少なくとも1つの心臓105の心室に提供する。電極は、電気心臓信号を感知するためにセンスアンプに電気的に結合されてもよい。
【0033】
心臓105は、右心房100A、左心房100B、右心室105A、左心室105B、および右心房100Aから延びる冠状静脈洞120を含む。心房導線108Aは、信号を感知し、またはペーシング治療を提供し、またはこれら両方を心房100Aに対して行うために心臓105の心房100Aに配置された電極(リング電極125およびチップ電極130などの電気接点)を含む。
【0034】
心室導線108Bは、信号を感知し、またはペーシング治療を提供し、または信号の感知とペーシング治療の提供の両方を行うチップ電極135およびリング電極140など、1つまたは複数の電極を含む。また、導線108Bは、任意で、心房電気的除細動、心房除細動、心室電気的除細動、心室除細動、またはこれらの組み合わせなどを心臓105に提供するさらなる電極を含む。このような電極は、典型的に、除細動に伴う比較的大きいエネルギーを処理するためにペーシング電極よりも大きい表面積を有する。導線108Bは、任意で、再同期治療を心臓105に提供する。
【0035】
IMD110は、ヘッダー155を通じてIMD110に取り付けられた第3の心臓導線108Cを含んでいてもよい。第3の心臓導線108Cは、冠状静脈を介して左心室(LV)105Bの心外膜にある冠状静脈に設置されたリング電極160および165を含む。第3の心臓導線108Cは、冠状静脈洞(CS)120の近傍に定置されたリング電極185を含んでいてもよい。
【0036】
導線108Bは、右心室(RV)に配置するチップおよびリング電極135、140の近位に位置する第1の除細動コイル電極175と、第1の除細動コイル175の近位に位置する第2の除細動コイル電極180と、チップ電極135と、上大静脈(SVC)に配置されるリング電極140とを含んでいてもよい。一部の例では、高エネルギーショック療法が第1またはRVコイル175から第2またはSVCコイル180に提供される。一部の例では、SVCコイル180は、密封されているIMDハウジングまたはIMD缶150に形成された電極に電気的に結合される。こうすることによって、RVコイル175からの電流を心室筋により均一に供給することによって除細動が改善される。一部の例では、治療がRVコイル175からIMD缶150に形成された電極のみに提供される。
【0037】
電極の他の形態は、心臓105の一部に適用されてもよい、あるいはIMD110によって生成される電流を「誘導する」のに役立つように身体の他の部位に埋め込まれてもよいメッシュおよびパッチを含む。当該方法およびシステムは、様々な構成で様々な電気接点および「電極」によって機能する。電極の種々の組での感知は、心臓信号の伝播に関する指向性情報を提供する場合が多く、しばしばベクトルの感知と称される。たとえば、単腔ICDでは、右心室チップ電極135から右心室リング電極140までの感知は第1のベクトルとなり、RVコイル175から缶150の電極、またはヘッダー155までの感知は第2のベクトルとなる。
【0038】
異常に速い心拍数を治療する際の医療機器の有効性は、感度および特異度を用いて表されることが多い。感度は、一般に、機器が治療すべき心調律の異常(たとえば、心室頻拍(VT)または心室除細動(VF)であって、かつ/または種々の調律異常や雑音を識別すべき)を効果的に検出するための機器の検出方式の能力を指す。感度は次式のように表されうる。
【0039】
感度=真陽性/(真陽性+偽陰性)
特異度は、機器が治療することを目的としていない律動(たとえば、洞頻脈(ST))の治療を回避するための機器の検出方式の能力を指す。特異度は次式のように表されうる。
【0040】
特異度=真陰性/(真陰性+偽陽性)
たとえば、検出されるべき律動がVT/VFなどの頻脈性不整脈である場合、具体的な律動がVT/VFでありかつ検出アルゴリズムがこれをVT/VFとして正しく識別するときに真陽性が発生することになる。律動がVT/VFでありかつ検出アルゴリズムがこれを不整脈でないと誤って判断を下すかあるいはこれをVT/VFとは異なる不整脈として識別するときに偽陰性が発生することになる。律動がVT/VF以外のもの(たとえば、正常洞調律(NSR)、ST、心房細動(AF)、心房粗動(AFI)、電気的雑音(たとえば、筋電位(mypotentials)、電磁妨害(EMI)、導線の止めねじの緩み、導線の破損など)であり)、かつ識別アルゴリズムがこれをVT/VFであると誤って判断を下すときに偽陽性が発生することになる。律動がVT/VF以外のもの(たとえば、NSR、ST、AF、AFI、電気的雑音など)であり、かつ識別アルゴリズムがこれをVT/VFでないと正しく判断を下すときに真陰性が発生することになる。
【0041】
実際に、医療機器に対して不整脈識別方式を設計することは、感度と特異度との間のトレードオフの整定を伴う。これは、患者の心臓の異常とは関係なくすべての患者に対して普遍的に機能する識別アルゴリズムを生成する際の技術的問題のためである。検出および識別方式は、一般に、特異度を犠牲にして感度を増す側で誤りが生じるように控えめに設計される。これは、このような方式の利益(すなわち、生命を脅かす不整脈を適切に治療すること)が方式の損失(すなわち、治療、特に、苦痛なショック療法を不適切に提供すること)よりも重要であるようにすることである。
【0042】
あらゆる目的に使える不整脈検出および識別アルゴリズムを開発する試みと比較して、感度は高いが特異度は低いかほどほどであるアルゴリズムを開発すること、あるいは特異度は高いが感度は低いかほどほどであるアルゴリズムを開発することは比較的容易である。
【0043】
最良の不整脈識別を実現するためのより優れたアプローチは、あるIMDで1つの不整脈識別アルゴリズムを実施しようとしたり、そのアルゴリズムの患者に対する最良適合を探そうとしたりするのではなく、あるIMDでいくつかの頻脈性不整脈識別アルゴリズムを実施して患者の現状に応じて異なるアルゴリズムの中からIMDを自動的に選択する方法を提供することである。機器によって感知または測定される血流動態情報は、採用すべきアルゴリズム決定する際に有用である。
【0044】
図2は、IMDで不整脈識別を実施する方法200の流れ図である。ブロック205において、被験者の心臓の不整脈事象がIMDを用いて検出される。一部の例では、不整脈は、とりわけ、VT、VF、上室性頻拍症(SVT)、ST、AF、またはAFIなどの頻脈性不整脈である。ある例では、IMDは、心臓脱分極信号を感知し、頻脈性不整脈検出率閾値を超える脱分極速度を検出することによって頻脈性不整脈を検出する。
【0045】
ブロック210において、埋め込み型センサーから受信された電気センサー信号が監視される。電気センサー信号は、心臓の血流動態機能を表している。血流動態機能は心臓の機械的機能(たとえば、心臓の収縮性)の有効性を指す。これは心臓の電気伝導系を伝播する活動電位である電気的内因性心臓信号の感知とは異なることに留意されたい。
【0046】
一部の例では、電気センサー信号は、不整脈事象中の心拍出量を示す。これは、埋め込み型心臓血圧センサーから与えられる電気信号を含んでいてもよい。埋め込み型心臓血圧センサーを採用するシステムおよび方法の説明は、2002年1月4日に出願された「Method and Apparatus for Measuring Left Ventricular Pressure」と題するSaloらによる、米国特許第6,666,826号明細書に見られ、これはその全体が参照によって本明細書に組み入れられる。他の心臓圧力センサーの例として、右心室(RV)腔圧力センサー、肺動脈圧力センサー、および左心房腔圧力センサーが挙げられる。心拍出量を示す電気センサー信号を提供するもう1つのセンサーは、血流センサーである。
【0047】
一部の例では、電気センサー信号は、不整脈事象中の心拍出量を間接的に示す。血流動態機能を間接的に示す電気信号を提供するセンサーの例として、とりわけ、心臓内インピーダンスセンサー、経胸腔インピーダンスセンサー、心音センサー、温度センサー、および化学センサーが挙げられる。
【0048】
心腔内に設置される電極は、心臓内インピーダンス−時間の信号を提供する。当該電極は、心臓の右心室に設置されてもよく、測定された心臓内インピーダンス波形は、ペーシングQRS群または自然QRS群(収縮マーカー)で始まり、インピーダンス信号がQRS群に続いて正方向のゼロ軸を横断する点で終わる時間間隔の測定を得るために処理される信号でありうる。得られる時間間隔は、心臓の収縮に反比例する。心臓内インピーダンスを測定するためのシステムおよび方法は、1987年8月21日に出願された「Physiologic Control of Pacemaker Rate Using Pre−Ejection Interval as the Controlling Parameter」と題するCitakらによる、米国特許第4,773,401号明細書に記載されており、これはその全体が参照によって本明細書に組み入れられる。経胸腔インピーダンスセンサーの例は、1998年2月27日に出願された「Rate Adaptive Cardiac Rhythm Management Device Using Transthoracic Impedance」と題するHartleyらによる、米国特許第6,076,015号明細書に記載されており、これはその全体が参照によって本明細書に組み入れられる。
【0049】
心音の監視によって、医師は患者の血流動態性能を観察または評価することができる。心腔収縮の変化は、心音センサーを用いて測定されうる。心音を監視するアプローチは、2002年12月30日に出願された「Method and Apparatus for Monitoring of Diastolic Hemodynamics」と題するSiejkoらによる、米国特許出願公開第2004/0127792号明細書に見られ、これはその全体が参照によって本明細書に組み入れられる。
【0050】
埋め込み型心臓温度センサーは、心拍出量を間接的に示す情報を提供しうる。一部の例では、埋め込み型心臓温度センサーは、患者の冠状静脈洞に埋め込まれた導線系に含まれる。埋め込み型心臓温度センサーは、心筋組織を通過した後に冠状静脈洞を通って戻る血液の温度を測定する。正常な心臓機能の副生成物として、心臓は熱を発生する。この熱は、かん流血液によって抽出される。血液は、右心房および右心室に入る前に冠状静脈を通って冠状静脈洞に出る。血液は、この後、肺を通って送り出され、肺では余分な熱が排除されて呼気とともに身体から出る。
【0051】
左心室によって実施される有用な仕事(W)は心室を移動する血液量に関係するが、左心室から出る熱は全仕事(W)に関係する。左心室に入る血液と冠状静脈内の血液との温度差は、左心室の仕事に関係する。Wの増加、すなわち、代理測定としての心臓温度は、活動の活発化や患者の努力といった他の指標を伴うことがなく、患者の血流動態システムにおける効率の低下を示している可能性がある。
【0052】
冠状静脈内の温度を感知するアプローチは、2001年12月31日に出願されたSaloによる「Method and Apparatus for Monitoring Left Ventricular Work or Power」と題する、特許出願公開第2003/0125774号明細書に見られ、これはその全体が参照によって本明細書に組み入れられる。
【0053】
心拍出量を間接的に示す情報を提供しうる化学センサーの例が埋め込み型酸素飽和センサーである。酸素飽和センサーは、心臓の機械的活動、収縮性、および血流に関連する流体酸素飽和度の変化に関係している電気センサー信号を生成する。収縮性の変化は、血液酸素飽和度のレベルの低下として現れる場合がある。血液酸素飽和レベルを測定する埋め込み型センサーを使用するアプローチは、1992年10月7日に出願されたThompsonによる「Oxygen Sensor Based Capture Detection for a Pacer」と題する、米国特許第5,342,406号明細書に見られ、これはその全体が参照によって本明細書に組み入れられる。
【0054】
図2の方法に関して、埋め込み型センサーから受信された電気センサー信号は、血流動態安定度または不安定度を特徴付けるために使用される。ブロック215において、血流動態安定性は、センサー信号を用いて不整脈事象検出に応答して計算される。特性が電気センサー信号から抽出される。特性の値が離散レベルに量子化される。レベルの変化は、不整脈の結果としての被験者の血流動態安定性における変化を反映する。
【0055】
例を図3に示す。図3は、測定された心臓内インピーダンス波形の1組のグラフ300を示す。グラフ305は、波形の傾斜310と、ベースライン心臓内インピーダンス値320上方にありかつ心臓内インピーダンス波形325下方にある面積315とを示す。傾斜310および面積315の少なくとも一方は、インピーダンス波形325から抽出される。グラフ330は、波形の傾斜を増加させる心臓内インピーダンスの変化と、波形の下方にありかつベースライン値の上方にある面積とを示す。心臓内インピーダンスは容積に反比例するので、心周期中に心室を満たし、心室から排出される血液量の変化の増加を示している可能性がある。グラフ335は、傾斜および面積を減らす変化を示しており、それゆえ、おそらく心室が完全に空になっていないために血流量がグラフ305およびグラフ330の場合と同程度まで変化していないことを示している可能性がある。傾斜または面積が心周期にわたって急速に減少する場合、これは血流動態不安定性の兆候である可能性がある。
【0056】
心臓内インピーダンスを用いて血流動態性能を評価する例が、2005年8月22日に出願されたZhangらによる「Intracardiac Impedance and its Applications」と題する、米国特許出願第2007/0043394号明細書に見られ、これはその全体が参照によって本明細書に組み入れられる。
【0057】
図2に戻ると、ブロック220において、不整脈識別アルゴリズムは計算された血流動態安定性に従って選択される。不整脈識別アルゴリズムは、IMDによって実施可能である複数の候補不整脈識別アルゴリズムの中から選択される。
【0058】
ブロック225において、検出された不整脈は、選択された不整脈識別アルゴリズムを用いて分類される。ブロック230において、不整脈分類はユーザーまたはプロセスに提供される。
【0059】
この識別アルゴリズム選択の例を図4に概念的に示す。被験者の心臓の不整脈事象が電気記録図(EGM)回路などの心臓信号感知回路を用いて検出される。不整脈識別アルゴリズム(アルゴリズムX)が、血流動態検知から決定された血流動態安定性の評価に従って、N個の候補アルゴリズムの中から選択される。選択されたアルゴリズムは、この後、心臓信号感知回路によって提供された情報を使用して不整脈を分類する。
【0060】
図5は、不整脈を検出して識別するためのIMD500の各部のブロック図である。IMD500は、第1の埋め込み型センサー500および第2の埋め込み型センサー510を含む。一部の例では、第1の埋め込み型センサー505は、心臓信号感知回路を含み、被験者の心臓の心臓脱分極事象を表す第1の電気センサー信号を生成する。
【0061】
また、IMD500は、第1および第2の埋め込み型センサーに通信可能に結合された信号アナライザ回路515を含む。通信可能な結合によって、第1と第2の埋め込み型センサーの間に介在する回路がある場合でも、信号アナライザ回路515は第1および第2の埋め込み型センサーから電気信号を受信しうる。
【0062】
一部の例では、信号アナライザ回路515は、不整脈検出率閾値を超える脱分極速度を検出することによって第1のセンサー信号用いて不整脈を検出する。たとえば、信号アナライザ回路515は、不整脈検出率または間隔閾値を満足する心室脱分極速度または間隔を検出してもよい。ある例では、信号アナライザ回路515は、速度または間隔が所定の時間または心拍数の間持続されるときに頻脈性不整脈を検出する。
【0063】
一部の例では、信号アナライザ回路515は、被験者に心拍数の急増が認められたとき心調律安定性の評価を用いて不整脈を検出する。不整脈を検出して心調律の安定性を評価するための方法およびシステムの例は、1999年8月20日に出願されたGilkersonらによる「System and Method for Detection Enhancement Programming」と題する、米国特許第6,493,579号明細書に見られ、これはその全体が参照によって本明細書に組み入れられる。
【0064】
第2の埋め込み型センサー510は、心臓の血流動態機能を表す第2の電気センサー信号を生成する。前述のように、第2の埋め込み型センサー510の例の限定的なリストは、埋め込み型心臓血圧センサー、埋め込み型血流センサー、心臓内インピーダンスセンサー、経胸腔インピーダンスセンサー、心音センサー、温度センサー、および化学センサーを含む。さらなる例として、心臓弁運動および心室壁運動を監視するためのセンサーが挙げられる。不整脈事象の検出に応答して、信号アナライザ回路515は、第2のセンサー信号を用いて血流動態安定性を計算する。
【0065】
IMD500は、信号アナライザ回路515および少なくとも第1の埋め込み型センサー505に通信可能に結合された不整脈識別回路520を含む。不整脈識別回路520は、2つまたはそれ以上の異なる識別アルゴリズムを実施しうる。一部の例では、不整脈識別回路520はプロセッサを含み、アルゴリズムはプロセッサによって実行可能であるソフトウェアまたはファームウェアの命令で具体化される。このようなプロセッサは、マイクロプロセッサまたは特定用途向け集積回路(ASIC)を含んでいてもよい。一部の例では、信号アナライザ回路515および不整脈識別回路520は、ディジタル信号プロセッサ(DSP)などの同じプロセッサに含まれる。
【0066】
各識別アルゴリズムは、不整脈を特定または識別する方法が異なる。各アルゴリズムは、これらが使用するセンサー信号から抽出される特性、これらが検出のために使用する規則、これらの意思決定論理の構造の少なくとも1つが異なる。
【0067】
たとえば、頻脈性不整脈の種類を分類するために、1つの識別アルゴリズムは、不整脈を分類するためにセンサー信号から抽出された脱分極速度を使用してもよい。別のアルゴリズムでは、センサー信号から抽出された発症速度を使用してもよい。発症速度では、現在の脱分極速度がその速度の移動平均と比較される。現在の速度が複数の心周期内の移動平均からの閾値以上に変化(たとえば、増加)すると、突然発症であるとの判断が下される。別のアルゴリズムでは、漸進的発症を使用してもよく、その場合、速度は、各心周期で一定のパーセンテージ以内で移動平均から徐々に変化している。もう1つの特性は心室−心室(V−V)間隔安定性である。前述のような心臓安定性用いる検出に加えて、アルゴリズムでは不整脈を分類するためにV−V安定性を使用してもよい。
【0068】
さらに別のアルゴリズムでは、不整脈を分類するためのテンプレートに形態類似性を使用してもよい。不整脈は、第1のセンサー信号の形態を不整脈識別回路520のメモリに記憶された形態テンプレートと比較することによって分類されてもよい。一部の例では、感知された心臓脱分極の形態は、メモリに記憶された既知の正常または異常な脱分極形態(正常洞調律、心室頻脈性不整脈、または上室性頻脈性不整脈など)のテンプレートと比較される。たとえば、テンプレートは、患者の心臓の上室性領域に電気エネルギーパルスを提供することによってCRMを用いて患者用に形成されうる。この後、形態に基づく心臓信号分類アルゴリズムに使用されるテンプレートを形成するために、得られる心臓複合波(cardiac complex)が感知されて使用される。形態に基づくアルゴリズム用のテンプレートを形成するシステムおよび方法は、2002年7月23日に出願されたHsuによる「Classification of Supra−ventricular and Ventricular Cardiac Rhythms Using Cross Channel Timing Algorithm」と題する、米国特許第6,889,081号明細書に記載されており、これはその全体が参照によって本明細書に組み入れられる。
【0069】
別の例では、アルゴリズムが不整脈を分類するために拍動形態安定性を使用してもよい。拍動形態解析の一部の例では、各々が複数の心拍の不整脈心拍に関連する複数の属性相関係数(Fcc)値が不整脈が検出される間に感知される。各Fcc値は、関連する不整脈心拍が既知のタイプの心調律のテンプレート心拍と形態学的に相関性があるかどうかを示す。不整脈を不整脈の特定タイプ(たとえば、頻脈性不整脈の特定タイプ)として分類するために多数決が採用される。すなわち、テンプレート心拍と相関のある不整脈心拍の数が所定の閾値数に等しいかこれを超える場合、不整脈はテンプレートによって表される特定タイプの不整脈として分類される。
【0070】
テンプレート心拍と相関のある不整脈心拍の数が所定の閾値数よりも小さい場合、Fcc値によって示される形態の安定性は、不整脈を形態の安定性に基づいてさらに分類するために解析される。一部の例では、解析された不整脈心拍の相関解析によって生成されるFcc値の分散が不整脈を識別するために解析される。形態安定性を用いて不整脈を識別するためのシステムおよび方法は、2005年1月20日に出願されたLiによる「Methods and Apparatuses for Cardiac Arrhythmia Classification Using Morphology Stability」と題する、米国特許第7,430,446号明細書に記載されており、これはその全体が参照によって本明細書に組み入れられる。
【0071】
前述のように、不整脈識別回路520によって実施可能な識別アルゴリズムは、検出に使用される規則が異なる可能性がある。たとえば、1つのアルゴリズムでは、不整脈を識別するために突然発症を使用してもよいが、別のアルゴリズムでは漸進的発症を使用してもよい。ある例では、2つのアルゴリズムが漸進的発症または突然発症を検出するために適用される規則が異なっていてもよい。たとえば、1つのアルゴリズムは、脱分極速度が各心周期で9%未満だけ移動平均から徐々に変化している場合には、漸進的発症を検出するときに洞頻脈であるとの判断を下してもよい。別のアルゴリズムは、洞頻脈であるとの判断を下すために漸進的発症に対して異なる規則(たとえば、異なるパーセンテージ)を採用してもよい。
【0072】
一部の例では、各識別アルゴリズムは、それらの意思決定論理に差がある。たとえば、1つの識別アルゴリズムはデシジョンツリーを採用してもよく、第2の識別アルゴリズムは多数決を採用してもよく、第3の識別アルゴリズムはファジー理論を採用してもよく、第4の識別アルゴリズムは神経網を採用してもよい。
【0073】
ある例では、各識別アルゴリズムは、それらの意思決定論理の構造に差がある。たとえば、2つのアルゴリズムは各々が検出された不整脈を識別するためにデシジョンツリーを採用し、かつデシジョンツリーは1組または一連のIF−THEN記述からなるものと仮定しよう。この例では、第1のアルゴリズムは、調律特定アルゴリズム(調律ID)であり、第2のアルゴリズムは検出強化アルゴリズムである。2つのアルゴリズムは、識別に使用されるIF−THEN記述に差があってもよい。調律IDアルゴリズムは、心拍閾値を超えているかどうかをまずチェックしてもよい。超えている場合、調律IDアルゴリズムは、この後、心拍数が心房速度を超えているかどうか(V>A)をチェックする。調律IDアルゴリズムは、この後、発症速度をチェックし、つぎに心拍安定性を決定し、さらに心房細動をチェックする。
【0074】
検出強化アルゴリズムは、そのIF−THEN記述が以下の異なる順序で配置されてもよく、すなわち、心拍閾値を超えているかどうかをまずチェックし、その後、V>Aであるかどうかをチェックし、続いてベクトルタイミングおよび相関(VTC)の形態解析があり、さらに、心房細動のチェックの後に心拍安定性の決定が続いてもよい。
【0075】
図5に関して前述したように、不整脈識別回路520は、2つまたはそれ以上の異なる識別アルゴリズムを実施しうる。不整脈識別回路520は、識別アルゴリズムを選択し、不整脈識別回路520によって実施可能である複数の異なる候補不整脈識別アルゴリズムの中から検出された不整脈を識別する際に使用する。識別アルゴリズムは、信号解析回路515によって生成され計算された血流動態安定性に従って選択される。
【0076】
被験者が血流動態的に安定していることを血流動態安定性計算が示す場合、被験者は不整脈に耐えられる。被験者は不整脈の間に比較的安全であり、特異度の高い識別アルゴリズムがIMD 500によって採用されてもよい。逆に、被験者が血流動態的に不安定であることを計算が示す場合、被験者は不整脈に耐えられる可能性が低い。不整脈は生命を脅かすおそれがあり、不整脈の妥当な治療が提供されるようにするためには感度の高い識別アルゴリズムがより適切であるかもしれない。たとえば、第2のセンサー510が埋め込み型心臓血圧センサーである場合、被験者の血圧が指定された閾値以下に低下していると信号アナライザ回路515が判断するならば信号アナライザ回路は高感度の識別アルゴリズムを使用することを決定してもよい。
【0077】
したがって、一部の例では、不整脈識別回路420は、不整脈が血流動態的に安定していることを血流動態安定性計算が示すときに第1の不整脈識別アルゴリズムを選択し、不整脈が血流動態的に不安定であることを血流動態安定性計算が示すときに第2の不整脈識別アルゴリズムを選択するように構成される。第1の不整脈識別アルゴリズムは、第2の不整脈識別アルゴリズムよりも高い特異度を有し、第2の不整脈識別アルゴリズは第1の不整脈識別アルゴリズムよりも高い感度を有する。
【0078】
図6は、アルゴリズム感度および特異度とともに血流動態安定性のグラフ605、610を示す。一部の例では、不整脈識別回路520は、血流動態安定性計算からの血流動態安定性または不安定性のレベルを量子化する。不整脈識別回路520は、血流動態安定性または不安定性のレベルに従って不整脈識別アルゴリズムを選択する。グラフ605は、血流動態安定性の量子化レベルが変動するときの識別アルゴリズムに対する特異度要件の下限の例を示す。グラフ610は、識別アルゴリズムに対する感度要件の下限の例を示す。
【0079】
この例では、血流動態安定性は、4つの安定ゾーン615、620、625、および630に分けられる。ゾーン615では、被験者は血流動態的にきわめて安定しており、したがって、不整脈を分類するために不整脈識別回路520によって特異度の高い識別アルゴリズムが選定される。ゾーン620では、被験者は血流動態的にやや安定しており、したがって、不整脈を分類するために不整脈識別回路520によって感度の高い識別アルゴリズムが選定される。ゾーン625では、被験者は血流動態的にやや安定している。このゾーンでは、高い特異度、高い感度のいずれを採用するかの選定が明白とは言えない。ある例では、選択を実施する際に採用される論理は、当該被験者に対して不整脈を識別する際に比較的有効である識別アルゴリズムを選択することに重点が置かれてもよい。ゾーン630では、被験者は血流動態的にきわめて不安定である。一部の例では、不整脈識別回路520による識別アルゴリズムの選択は無効にされるかあるいは無視され、デフォルトのきわめて高感度のアルゴリズムが採用される。ある例では、ゾーン境界が医師によってプログラム可能である。
【0080】
不整脈識別回路520は、この後、検出された不整脈を選択された不整脈識別アルゴリズムを用いて分類する。不整脈の分類が終了すると、不整脈識別回路520は、不整脈分類をユーザーまたはプロセスに提供してもよい。一部の例では、分類がIMD500によって採用され、抗頻脈ペーシング(ATP)または抗頻脈性不整脈薬の投与などの抗頻脈性不整脈治療を開始する。一部の例では、分類は、IMDプログラマまたは進行患者管理(APM)システムなどの外部機器に伝達される。頻脈性不整脈などの不整脈の正確な分類は、ショック療法の不適切な提供を減らし、妥当な機器機能の確保に役立つかもしれない。別の例では、AFなどの不整脈の正確な分類は、AFが存在するとき、IMDにモード切替機能(たとえば、DDDペーシングモードからVVIペーシングモードへの)を正しく実施させる。
【0081】
一部の例では、IMD500は、被験者の生理学的事象を表す第3の電気センサー信号を生成する第3のセンサー525を含む。不整脈識別回路520は、計算された血流動態安定性に従って、また第3のセンサー信号から得られた生理学的情報に従って、不整脈識別アルゴリズムを選択する。このさらなる生理学的情報は、不整脈の許容性を評価するために利用されうる。たとえば、ある例では、第3のセンサー525は、姿勢センサーを含む。被験者が不整脈中に座っていたり横になっていたりせずに立ったままであることを姿勢センサーが示す場合、これは、不整脈が被験者にとって許容されるとともに特異度の高いアルゴリズムが不整脈を分類するために採用されうることを示している可能性がある。
【0082】
一部の例では、IMD500は、不整脈識別回路に通信可能に結合された記憶回路530(たとえば、メモリ)を含む。記憶回路530は、不整脈識別回路520に統合されていても、不整脈識別回路520から分離されていてもよい。記憶回路530は、患者の兆候(たとえば、被験者が心不全などを罹患しているかどうかといった被験者の心臓病の種類)、または患者人口統計(たとえば、被験者の年令、被験者の性別など)の少なくとも1つに関連する情報を記憶する。不整脈識別回路520は、計算された血流動態安定性に従って、また記憶された患者の兆候または患者人口統計に従って、不整脈識別アルゴリズムを選択する。
【0083】
たとえば、被験者が心不全(HF)を罹患している兆候を記憶回路530が含む場合、不整脈識別回路520は控えめであるように構成されて(たとえば、プログラムされて)HFのない被験者の場合よりも特異度の高い識別アルゴリズムを選択する可能性がある。
【0084】
一部の例では、候補アルゴリズムは、デフォルト不整脈識別アルゴリズムを含む。不整脈識別回路520は、計算された血流動態安定性に従って、デフォルトアルゴリズムを採用するか、それとも異なる候補アルゴリズムに切り替えるかを決定する。たとえば、医師は、高度の房室(AV)ブロック、あるいは房室結節アブレーション(AVN)、あるいはIIIのNYHA分類を有する被験者に対して特異度の高いデフォルトアルゴリズムを予め選択してもよい。不整脈識別回路420は、血流動態および生理学的センサーの少なくとも一方から提供される情報を用いて、低感度かつ高特異度の識別アルゴリズムを採用するかどうかを決定する。
【0085】
一部の例によると、不整脈識別回路520は、不整脈識別回路520によって実施可能なN個のアルゴリズムから複数のk個の候補不整脈識別アルゴリズムを予め選択する。これは、図7のブロック図に概念的に示される。一部の例では、k個の予め選択されたアルゴリズムは、第3の電気センサー信号から得られあるいはk個のデフォルトアルゴリズムとして医師によって選定された生理学的情報を用いてIMD500のメモリに記憶された前述の患者の兆候および患者人口統計の少なくとも一方を用いて、不整脈識別回路520によって選定される。
【0086】
検出された不整脈は、第1のセンサー信号(たとえば、心臓信号感知回路によって提供される電気記録図)を用いてk個の予め選択された候補不整脈識別アルゴリズムの各々によって分類されて、k個の分類を決定する。信号アナライザ回路515によって提供された血流動態安定性の血流感知および計算と、第3の生理学的センサー(もしあれば)によって提供された信号とは、最終分類決定を決定する決定融合規則(decision fusion rule)の出力を制御するために使用される。
【0087】
一部の例では、決定融合規則は、k個の予め選択された不整脈識別アルゴリズムの各々によって提供された分類決定の加重和を含む。k個の候補アルゴリズムによる不整脈分類は、計算された血流動態安定性に従って重みが付けられる。ある例では、重みは、血流動態センサーまたは生理学的センサーの出力に基づいて割り当てられる。被験者が不整脈中に血流動態的に安定していることを血流動態安定性の計算が示す場合、より高い特異度を有するk個のアルゴリズムの1つにより高い重みが割り当てられる。被験者が不整脈中に血流動態的に不安定であることを血流動態安定性の計算が示す場合、より高い感度を有するk個のアルゴリズムの1つにより高い重みが割り当てられる。
【0088】
検出された不整脈は、最終的には重みに従って分類される。ある意味で、図4の単一のアルゴリズムアプローチは、この多重アルゴリズム事前選択アプローチの特別な場合である。これから、k個のアルゴリズムの各非選択アルゴリズムに割り当てられた重みはゼロの重みを割り当てられているかどうかが分かる。
補注
前述の発明の詳細な説明は、発明の詳細な説明の一部を形成する添付図面への参照を含む。図面は、本発明が実施されうる具体的な実施形態を実例として示す。また、これらの実施形態は、本明細書では「例」と称される。本明細書で参照されるすべての出版物、特許、および特許文献は、あたかも参照によって個別に組み込まれるかのように、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。本明細書と参照によってこのように組み込まれた文献との間に使用法の矛盾がある場合、組み込まれた参考文献における使用法は本明細書の使用法の補足と考えられるべきであり、すなわち、相容れない矛盾に対しては本明細書に記載の使用法が基準となる。
【0089】
本明細書では、「または」という用語は、他に指示がない限り、「AまたはB」が「AであるがBでない」、「BであるがAでない」、および「AおよびB」を含むように非排他的であることを指すために使用される。添付の特許請求の範囲では、「含む」という用語は「備える」という用語の同等の平易な語として使用される。また、以下の特許請求の範囲において、「含む」および「備える」という用語は非限定的であり、すなわち、請求項のそのような用語の後に列挙されるものに加えて要素を含むシステム、機器、項目、またはプロセスは、やはりその請求項の範囲に入るものと見なされる。さらに、以下の特許請求の範囲では、「第1の」、「第2の」、「第3の」などの用語は、単に標識としてのみ使用され、それらの対象に数値的要件を課すことを意図するものではない。
【0090】
本明細書に記載される方法例は、少なくとも部分的にマシンまたはコンピュータで実現されうる。一部の例は、上記の例に記載されたような方法を実施するために電子機器を構成する働きをする命令で符号化されたコンピュータ可読媒体またはマシン可読媒体を含みうる。このような方法の実施は、マイクロコード、アセンブリ言語コード、高水準言語コードなどのコードを含みうる。このようなコードは、様々な方法を実施するコンピュータ可読命令を含みうる。当該コードは、コンピュータプログラム製品の各部を形成しうる。さらに、当該コードは、実行中またはある時には1つまたは複数の揮発性あるいは不揮発性コンピュータ可読媒体に明白に記憶されうる。これらのコンピュータ可読媒体は、ハードディスク、リムーバブル磁気ディスク、リムーバブル光ディスク(たとえば、コンパクトディスクおよびディジタル・ビデオ・ディスク)、磁気カセット、メモリカードまたはスティック、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、読取り専用メモリ(ROM)などを含みうるが、これらに限定されない。
【0091】
上記の記載は、説明を意図したものであり、限定を意図したものではない。たとえば、前述の例(あるいはその1つまたは複数の態様)は、互いに組み合わせて使用されてもよい。上記の記載を検討すると、たとえば、当業者によって他の実施形態が採用されうる。要約は、読者が技術的開示の性質を迅速に確認しうるように記載されている。これは、特許請求の範囲または意味を解釈または限定するために使用されないことを考慮して提示されている。また、前述の発明の詳細な説明において、本開示を簡素化するために様々な特徴がグループ化されている場合がある。これは、開示されてはいるが請求項に含まれない特徴がどの請求項にも不可欠であることを表すものと解釈されるべきではない。むしろ、発明の主題は、開示された特定の実施形態のすべての特徴にあるわけではないかもしれない。それゆえ、以下の特許請求の範囲では、各請求項が個別の実施形態として独立して発明の詳細な説明に組み込まれている。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲とかかる特許請求の範囲によって権利が与えられる均等物の全範囲とを参照して判断されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置であって、
被験者の心臓の心臓脱分極事象を表す第1の電気センサー信号を生成するように構成された第1の埋め込み型センサーと、
前記心臓の血流動態機能を表す第2の電気センサー信号を生成するように構成された第2の埋め込み型センサーと、
前記第1および第2の埋め込み型センサーに通信可能に結合された信号アナライザ回路であって、
前記第1のセンサー信号から不整脈事象を検出し、
前記第2のセンサー信号を用いて、前記不整脈事象検出に応答して血流動態安定性を計算する
ように構成された前記信号アナライザ回路と、
前記信号アナライザ回路および前記第1の埋め込み型センサーに通信可能に結合された不整脈識別回路であって、
前記信号アナライザ回路によって生成された計算された血流動態安定性に従って、前記不整脈識別回路によって実施可能である複数の候補不整脈識別アルゴリズムの中から不整脈識別アルゴリズムを選択し、
選択された不整脈識別アルゴリズムを用いて検出された不整脈を分類し、
不整脈識別をユーザーまたはプロセスに提供する
ように構成された前記不整脈識別回路と
を備える装置。
【請求項2】
前記不整脈識別回路は、
前記不整脈が血流動態的に安定していることを前記血流動態安定性の計算が示す場合に第1の不整脈識別アルゴリズムを選択し、
前記不整脈が血流動態的に不安定であることを前記血流動態安定性の計算が示す場合に第2の不整脈識別アルゴリズムを選択するように構成され、
前記第1の不整脈識別アルゴリズムは前記第2の不整脈識別アルゴリズムよりも高い特異度を有し、前記第2の不整脈識別アルゴリズムは前記第1の不整脈識別アルゴリズムよりも高い感度を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記不整脈識別回路は、
血流動態安定性計算からの血流動態安定性または不安定性のレベルを量子化し、
前記血流動態安定性または不安定性のレベルに従って不整脈識別アルゴリズムを選択するように構成されている、請求項1および2のいずれか一項に記載の装置。
【請求項4】
前記被験者の生理学的事象を表す第3の電気センサー信号を生成するように構成された第3のセンサーを含み、前記不整脈識別回路は、前記計算された血流動態安定性に従って、並びに前記第3のセンサー信号から得られた生理学的情報に従って、不整脈識別アルゴリズムを選択するように構成されている、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記不整脈識別回路に通信可能に結合され、患者の兆候または患者人口統計の少なくとも一方に関連する情報を記憶するように構成された記憶回路を含み、
前記不整脈識別回路は、前記計算された血流動態安定性に従って、並びに記憶された患者の兆候または患者人口統計の少なくとも一方に従って不整脈識別アルゴリズムを選択するように構成されている、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
複数の候補アルゴリズムは、前記第1のセンサー信号から抽出され前記不整脈を分類する際に候補アルゴリズムによって使用される特性が、相互に異なっている、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
候補アルゴリズムは、
センサー信号を用いた脱分極発症速度の測定と、
センサー信号から抽出された心臓脱分極間隔の安定性の測定と、
テンプレートに対するセンサー信号の形態の類似性の測定と、
センサー信号の心拍形態の安定性の測定と
のうちの少なくとも1つを用いて不整脈を分類する、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
複数の候補アルゴリズムは、前記不整脈を分類するために候補アルゴリズムによって使用される規則が、相互に異なっている、請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
候補アルゴリズムによって使用される規則は、
漸進的不整脈発症を使用して前記不整脈を分類すること、
突然不整脈発症を使用して前記不整脈を分類すること
のうちの少なくとも一方を含む、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
複数の候補アルゴリズムは、候補アルゴリズムの論理構造が、相互に異なっている、請求項1乃至請求項6および請求項8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
候補アルゴリズムの論理構造は
デシジョンツリーと、
多数決と、
ファジー論理と、
神経網と
のうちの少なくとも1つを含む、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
複数の候補アルゴリズムはデフォルト不整脈識別アルゴリズムを含み、前記不整脈識別回路は、前記計算された血流動態安定性に従って、デフォルトアルゴリズムを使用するか、または異なる候補アルゴリズムに切り替えるかを決定するように構成されている、請求項1乃至請求項11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記不整脈識別回路は、
不整脈分類回路によって実施可能である1組のアルゴリズムの中から複数の候補不整脈識別アルゴリズムを予め選択し、
前記候補不整脈識別アルゴリズムの各々を用いて前記検出された不整脈を分類し、
前記計算された血流動態安定性に従って候補アルゴリズムによって不整脈分類に重み付けし、
重み付けに従って前記検出された不整脈を最終的に分類するように構成されている、請求項1乃至請求項12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記不整脈識別回路は、
第3の電気センサー信号から得られた生理学的情報と、
前記装置のメモリに記憶された患者の兆候と、
前記メモリに記憶された患者人口統計と
のうちの少なくとも1つに従って、前記候補不整脈識別アルゴリズムを予め選択するように構成されている、請求項1乃至請求項13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
前記信号アナライザ回路は、不整脈検出率または間隔閾値を満足し、所定の時間または心拍数の間持続される心拍数または間隔を検出する場合に前記不整脈事象を検出する、請求項1乃至請求項14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
方法であって、
埋め込み型医療機器(IMD)を用いて被験者の心臓の不整脈事象を検出すること、
埋め込み型センサーから受信される電気センサー信号を監視することであって、前記電気センサー信号は前記心臓の血流動態機能を表す、前記監視すること、
前記センサー信号を用いて、前記不整脈事象検出に応答して血流動態安定性を計算すること、
計算された血流動態安定性に従って、前記IMDによって実施可能である複数の候補不整脈識別アルゴリズムの中から不整脈識別アルゴリズムを選択すること、
選択された不整脈識別アルゴリズムを用いて検出された不整脈を分類すること、
不整脈分類をユーザーまたはプロセスに提供すること
を備える方法。
【請求項17】
不整脈識別アルゴリズムを選択することは、
前記不整脈が血流動態的に安定していることを血流動態安定性計算が示す場合に第1の不整脈識別アルゴリズムを選択すること、
前記不整脈が血流動態的に不安定であることを血流動態安定性計算が示す場合に第2の不整脈識別アルゴリズムを選択すること
を含み、前記第1の不整脈識別アルゴリズムは前記第2の不整脈識別アルゴリズムよりも高い特異度を有し、前記第2の不整脈識別アルゴリズムは前記第1の不整脈識別アルゴリズムよりも高い感度を有する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
血流動態安定性を計算することは血流動態安定性計算からの血流動態安定性または不安定性のレベルを量子化することを含み、
不整脈識別アルゴリズムを選択することは血流動態安定性または不安定性のレベルに従ってアルゴリズムを選択することを含む、
請求項16および17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
第2の電気センサー信号を監視することを備え、前記第2のセンサー信号は前記被験者の生理学的事象を表し、不整脈識別アルゴリズムを選択することは、前記計算された血流動態安定性に従って、並びに前記第2のセンサー信号から得られた生理学的情報に従って、不整脈識別アルゴリズムを選択することを含む、請求項16乃至請求項18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記IMDによって実施可能である1組のアルゴリズムの中から複数の候補不整脈識別アルゴリズムを予め選択すること、
前記候補不整脈識別アルゴリズムの各々を用いて前記検出された不整脈を分類すること
を備え、
不整脈識別アルゴリズムを選択することは、前記計算された血流動態安定性に従って候補アルゴリズムによって前記分類に重み付けすることを含み、
前記検出された不整脈を分類することは、重み付けに従って選択された候補不整脈識別アルゴリズムの分類を用いることを含む、
請求項16乃至請求項19のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−524609(P2012−524609A)
【公表日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−507243(P2012−507243)
【出願日】平成22年4月6日(2010.4.6)
【国際出願番号】PCT/US2010/030060
【国際公開番号】WO2010/123679
【国際公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(505003528)カーディアック ペースメイカーズ, インコーポレイテッド (466)
【Fターム(参考)】