説明

不正通行車両の監視装置

【課題】
有料道路を利用するETC車両に対して、車載器の載せ替えによる不正利用を防止する。
【解決手段】
移動体通信用の基地局アンテナ101と、通行する車両の画像撮影を行うカメラ104と、カメラ104で撮影された画像から前記車両のナンバープレート及び車種情報を識別する画像処理装置103と、基地局アンテナ101を介して車両と通信して得られた車両データと画像処理装置103で識別された車両のナンバープレート及び車種情報の不一致から不正通行車両を検出するアンテナ処理装置100を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路上に設置されたアンテナ基地局、車両のナンバープレートを認識するカメラを用いた不正通行車両の監視装置に係り、特に、車両に搭載された移動局と、基地局の間で通信を行う際に、移動局から送信される車両情報とナンバープレート認識カメラにおいて認識した車両情報を用いて、車載器を載せ換えて有料道路を不正に通行することを防止する不正通行車両の監視装置に関わる。
【背景技術】
【0002】
ITSは、無線通信により、人と道路と車両を一体システムとして構築し、安全性向上,輸送効率の向上,快適性の向上を達成し、環境保全を資するシステムとされている。
【0003】
路車間通信方式であるDSRC(Dedicated Short Range Communication)は、ITSにおける重要な通信基盤技術であり、高速道路の自動料金収受システムであるETC(Electronic Toll Collection System)に採用され、実用技術として利用されている。
【0004】
車両のナンバープレートを認識するカメラは、旅行時間計測等に用いられていたが、近年、路上に設置されたカメラで認識した結果をセンタまで伝送し、予めセンタに登録しておいた手配車両がある地点を通過した時にはアラームを出す、緊急配備支援システムにも応用されている。
【0005】
近年、有料道路の不正通行が頻繁に発生し、各道路事業者の経営基盤を揺るがしかねない問題となっており、不正通行による経営損失を抑えるために、不正通行の防止システムが検討されている。不正通行の防止システムとして、〔特許文献1〕から〔特許文献3〕に記載の従来技術がある。
【0006】
〔特許文献1〕,〔特許文献2〕に記載の従来の技術は、入口料金所内に設置した車種判別装置,軸数計及びその他センサにより、車種の判別を行い、車種がアンマッチであれば通行券等にアンマッチであった旨の情報を書き込み、出口料金所にて、規定の料金を徴収する方式である。
【0007】
この方式は、多数の機器を料金所内に設置する必要があり、コストがかかるという問題があった。また、大都市部の有料道路では、機器の設置スペースの確保が難しい問題があった。
【0008】
〔特許文献3〕に記載の従来の技術は、ETCレーンにおいて、予め登録した車載器IDと車種情報を制御装置に配信し、そのデータと料金所内に設置した車種判別装置を用いて不正利用を防止する方式である。
【0009】
現在のETCシステムでは、車載器IDを登録するための手段はあるが、車種情報を予め制御装置内に登録する手段はないため、改修する必要があり、改修のための莫大な費用が必要となるという問題がある。
【0010】
【特許文献1】特開2003−203254号公報
【特許文献2】特開平5−197856号公報
【特許文献3】特開2000−182106号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
有料道路における利用料金の計算方法は、大きくわけて2通りある。1つは利用距離に関わらず均一の料金を徴収する均一料金方式であり、もう1つは利用した距離に応じて料金を徴収する対距離方式である。何れの徴収方式においても、料金計算のキーとなるのは車種である。車種には、軽,普通,中型,大型,特大の5種類あり、車両が大きくなるほど通行料金が高くなる設定となっている。
【0012】
従来は、料金所入口に設置された車種判別装置により、通行券に車種情報を打刻し出口料金所においては、収受員による車種のチェックが行えたため、車種を偽って有料道路を利用することはほとんど不可能であった。
【0013】
近年、ETCが導入され、入口,出口とも収受員を介在させずに料金所を通過することが可能となったが、車種の情報は車両に搭載した車載器の中に設定される。車載器への車種情報の設定は、車載器の購入時もしくは車両を乗り換えた時に、車検証を元に作成されたデータを書き込むことにより行われる。このため、例えば軽自動車の設定で書き込んだ車載器を大型車に載せかえて、通行料金の支払いを不正に安く済ませるケースがあることが報告されている。
【0014】
本発明の第1の目的は、車載器に設定された車種とカメラで撮影した車両を画像処理した結果のマッチングを行い、アンマッチであった場合には、ユーザを特定し警告するとともに、料金所において、ETCサービスを停止および車両を停車させることのできる不正通行車両の監視装置を提供することにある。
【0015】
第2の目的は、不正利用者に対して通行料金および課徴金請求等のペナルティを課すための支援を行う不正通行車両の監視装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するため、本発明の不正通行車両の監視装置は、基地局アンテナ,カメラ、それらのデータを処理する処理装置を設置し、カメラで撮影,認識した車両のデータと無線通信により取得した通行車両の車両情報の突合せを行い、車両情報がアンマッチであれば、ユーザに対して警告するとともに、中央装置へ当該車両の走行情報および車両情報を送信するものである。
【0017】
又、送信された不正車両情報に対してペナルティを課すために、不正通行車両の車載器固有データを車載器ネガテーブルに登録し、各料金所のETC装置へ送信するための支援を行うものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、不正通行車両の監視装置により、車両に搭載された車載器とカメラの撮影結果のマッチングによる監視を行うことにより、不正通行をしているユーザに対して警告が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の一実施例である不正通行車両の監視システムを図1から図7により説明する。ここで、図1には、不正通行車両の監視装置を10で示しているが、全体を不正通行車両の監視装置と呼んでもよい。
【0020】
不正通行車両の監視装置10−1から10−Nは、有料道路の本線上又はランプ付近に設置されている。不正通行車両の監視装置10−1から10−Nは、基地局アンテナ101,基地局アンテナ101及びネットワーク50に接続されたアンテナ処理装置100,カメラ104,カメラ104及びネットワーク50に接続され画像処理を行う画像処理装置103で構成される。基地局アンテナ101はETCで採用されているDSRC通信方式に対応しており、5.8GHz帯の周波数で路車間の通信を行う。
【0021】
ネットワーク50には、中央装置(ETC)30と中央装置(画像)40が接続されており、中央装置(ETC)30には、ETC統合装置300が設置され、中央装置(画像)40には、ネットワーク50に接続されるセンタ装置400、センタ装置400に接続される大容量記憶装置401が設置されている。
【0022】
ネットワーク50には、料金所(ETC装置)20が接続され、料金所(ETC装置)20には、料金所サーバ200,料金所サーバ200に接続される車線サーバ201,車線サーバに接続される路側装置202が設置されている。
【0023】
アンテナ処理装置100は、基地局アンテナ101を介して車両に搭載された車載器と通信したデータの解析,データの蓄積を行う。
【0024】
カメラ104は、道路上に設置され、通行する車両の画像撮影を行い、画像処理装置103は、カメラ104で撮影された画像を元にナンバープレート認識を行う。カメラ104には、夜間でもナンバープレートおよび車両の撮影が行えるように赤外線照明装置も具備する。カメラ104で撮影した車両画像からナンバープレートの認識や車種情報の割り出しを行い、結果をアンテナ処理装置100へ伝送する。
【0025】
アンテナ処理装置100は、画像処理装置102から走行車両のナンバープレート認識結果及び車種情報等を受信し、車載器から受信したデータに含まれる車種情報とのマッチング処理を行い、その結果を画像処理装置103へ返信する。
【0026】
マッチング処理の結果、マッチングがとれなかった場合は、当該車両の車載器ID等の車両情報データを、ネットワーク50を介して接続された中央装置(ETC)30のETC統合装置300へ送信する。
【0027】
アンテナ処理装置100の処理フローの一例を図2に示す。アンテナ処理装置100で、画像認識結果とマッチング処理をした結果を画像処理装置103へ送信する際のデータフォーマットの一例を図7に示す。図7に示すように、データフォーマットは、車両の通過日時71,車載器固有番号72,車番73,車種74,画像マッチング結果75で構成される。
【0028】
図2に示すように、ステップS21で、画像処理装置103は、カメラ104で撮影した車両画像からナンバープレートの認識や車種情報の割り出しを行い、結果をアンテナ処理装置100へ伝送する。
【0029】
ステップS22で、画像処理装置103からナンバープレートの認識結果や車種情報を受信し、マッチング処理を行う。ステップS23で、マッチング処理の結果が車載器の情報と一致するか否かを判断し、一致する場合は、処理を終了し、一致しない場合(NGともいう)は、ステップS24で、画像処理装置103内に当該車両の通行日時,ナンバープレート認識結果,撮影画像,撮影地点等のデータを記録し、ステップS25で、図7に示すフォーマットのデータを中央装置(画像)40へ伝送する。
【0030】
中央装置(画像)40の処理フローの一例を図4に示す。
【0031】
中央装置(画像)40は、ステップS41で、不正通行車両監視装置10の画像処理装置103から伝送されるアンマッチ車両のデータを受信し、ステップS42で、ナンバープレート認識結果および画像データをセンタ装置400の画像サーバ内に蓄積する。
【0032】
ステップS43で、大容量記憶装置401に記憶する蓄積容量がオーバーするか、或いは設定された一定期間を経過したデータがあるか否かを判断し、これらに該当する場合は、ステップS44で、一部のデータを大容量記憶装置401に退避させる。不正通行者に対してペナルティを課す際に、証拠物件として撮影画像を提示するために、蓄積した画像データの検索機能を有し、大容量記憶装置401に、画像データを長期間保存する。
【0033】
このように、大容量記憶装置を具備しているので、何らかの影響によりアンテナおよびカメラの処理装置と中央装置の間で伝送回線が不通となった場合に、データの消失を防ぐことができる。
【0034】
中央装置(ETC)の処理フローの一例を図4に示す。
【0035】
中央装置(ETC)30は、ステップS51で、アンテナ処理装置100から伝送される不正通行車両に関する車載器ID等の車両情報データを受信し、ステップS52で、車載器ネガティブリストテーブルに不正通行車両に関するIDを登録し、ステップS53で、ネットワーク50を介して各料金所(ETC装置)20に不正通行車両に関する情報を一斉に配信する。
【0036】
料金所(ETC装置)20の処理フローの一例を図3に示す。
【0037】
ステップS31で、画像処理装置103からナンバープレート認識結果を受信し、ステップS32で、通過する車両の車載器との通信により車載器固有番号と車種情報を受信する。
【0038】
ステップS31で、受信した車種情報が画像処理装置103からの画像処理結果と一致するか否かを判断する。一致した場合は、ステップS38で、画像処理装置103へマッチングした結果を送信する。
【0039】
一致していない場合は、ステップS34で、該当する車両の車載器へ、警告を施すメッセージを含む指示情報を送信し、ステップS35で、画像処理装置103へマッチング結果が一致しない情報を送信する。又、配信された車載器ネガティブリストテーブルを参照し、該当する車両情報であった場合は、料金所(ETC装置)20は、該当する車両がレーンに進入した際に、車両を停止させる処理を行い、ETCサービスを停止する。停止した車両に対して料金所の係員がユーザに直接ヒアリングすることにより、不正通行をするユーザを摘発することが可能となる。
【0040】
また、不正通行車両については、静止画像を撮影し、不正通行車両としてペナルティを課す際の証拠物件として利用する。
【0041】
ステップS36で、該当する車両の車両情報データをアンテナ処理装置100に記憶し、ステップS37で、中央装置(ETC)30のETC統合装置300へ該当する車両の車両情報データを送信する。
【0042】
中央装置(ETC)30へ伝送する際のデータフォーマットの一例を図6に示す。図6に示すように、データフォーマットは、車両の通過日時60,車番61,車種62,撮影地点63で構成される。
【0043】
本実施例の不正通行車両監視装置は、車載器の情報を取得する際の路車間通信シーケンスに、ETCの通信シーケンスを利用している。この場合、不正通行車両監視装置付近で車載器からICカードを引き抜いた場合は、車載器ID等詳細な情報を取得出来ないという問題がある。この場合、車載器にICカードが挿入されていなくても、車載器固有の無線局識別番号であるWCN(Wireless Call Number)は、基地局アンテナで受信出来るため、そのWCNをデータベースに登録し、他料金所でETCで通過した際のWCNから車載器ID等の車種情報を検索し、同様の処理を行うことが可能である。
【0044】
又、不正通行車両監視装置は、監視対象とする道路の状況に応じてアンテナ,カメラおよびそれらの処理装置を追加することにより、様々な道路に対して適用可能である。
【0045】
本実施例によれば、不正通行車両の監視装置により、車両に搭載された車載器とカメラの撮影結果のマッチングによる監視を行うことにより、不正通行をしているユーザに対して警告が可能である。
【0046】
又、不正通行車両監視装置は、ETC統合装置や料金所ETC設備と連動させることにより、不正通行者を捕らえることが容易となる。不正通行車両監視装置は、カメラにより不正通行車両の画像を撮影するため、ペナルティを課す際の、証拠物件として利用することが可能である。
【0047】
又、安価で機器設置スペースも少なく不正通行車両の監視を行うことが可能である。構成する機器が少ないため、安価にかつ設置スペースの問題も解消することができる。又、車載器IDとナンバープレートを読み取るためのカメラを設置することにより不正利用を防止することが可能であるため、安価に不正利用を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施例である不正通行車両の監視システムの構成図。
【図2】本実施例における画像処理装置の処理フローの一例を示す流れ図。
【図3】本実施例における料金所の処理フローの一例を示す流れ図。
【図4】本実施例における画像中央装置の処理フローの一例を示す流れ図。
【図5】本実施例におけるETC統合装置の処理フローの一例を示す流れ図。
【図6】本実施例における画像認識結果のデータフォーマットの一例を示す図。
【図7】本実施例におけるマッチング結果のデータフォーマットの一例を示す図。
【符号の説明】
【0049】
10 不正通行車両監視装置
20 料金所ETC装置
30 中央装置(ETC)
40 中央装置(画像)
100 アンテナ処理装置
101 基地局アンテナ
103 画像処理装置
104 カメラ
200 料金所サーバ
201 車線サーバ
202 路側装置
300 ETC統合装置
400 センタ装置
401 大容量記憶装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体通信用の基地局アンテナと、通行する車両の画像撮影を行うカメラと、該カメラで撮影された画像から前記車両のナンバープレート及び車種情報を識別する画像処理装置と、前記基地局アンテナを介して車両と通信して得られた車両データと前記画像処理装置で識別された車両のナンバープレート及び車種情報の不一致から不正通行車両を検出するアンテナ処理装置を備えた不正通行車両の監視装置。
【請求項2】
前記アンテナ処理装置からネットワークを介して送信される不正通行車両に関する車両情報データを受信して車載器ネガティブリストテーブルに不正通行車両に関する情報を登録し、各料金所のETC装置に該不正通行車両に関する情報を一斉に配信する中央装置を具備した請求項1に記載の不正通行車両の監視装置。
【請求項3】
前記画像処理装置からネットワークを介して送信されるナンバープレート及び画像データを受信し、画像サーバに記録する第2の中央装置を具備する不正通行車両の監視装置。
【請求項4】
前記中央装置から一斉に配信された不正通行車両に関する情報を受信し、撮影および認識するカメラのデータを突合せ、不正通行車両に対して警告および停止措置の支援を行う料金所のETC装置を具備した請求項2に記載の不正通行車両の監視装置。
【請求項5】
前記ETC装置が、不正通行車両が料金所を通過する際には車載器固有データを元に停止指示を出すものである請求項4に記載の不正通行車両の監視装置。
【請求項6】
前記画像サーバに記憶された移動局との通信結果および画像認識結果を退避させるための大容量記憶装置を具備する請求項3に記載の不正通行車両の監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−116480(P2009−116480A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−286863(P2007−286863)
【出願日】平成19年11月5日(2007.11.5)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000153443)株式会社日立情報制御ソリューションズ (359)
【Fターム(参考)】