説明

不織布積層体

【課題】伸縮性、柔軟性、透湿性、耐水性に優れ、液滲みが無くまたにおいのバリア性も良好で且つ層間接着強度が高い不織布積層体を提供する。
【解決手段】熱可塑性エラストマー(A)の長繊維:10〜90重量%と熱可塑性樹脂(B)の長繊維:90〜10重量%(但し、(A)+(B)=100重量%とする)を含む混繊スパンボンド不織布の少なくとも片面に透湿性フィルムが積層されている不織布積層体。
【効果】衛生材用をはじめ、医療材用、産業資材用等に好適に用い得る。具体的には、衛生材用としては、使い捨ておむつあるいは生理用品等の吸収性物品があげられる。展開型使い捨ておむつあるいはパンツ型使い捨ておむつには、バックシート、ウェストバンド(延長テープ、サイドフラップ)、ファスニングテープ、立体ギャザー、レッグカフ、またパンツ型使い捨ておむつのサイドパネル等の部位に好適に用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸縮性、柔軟性、透湿性、耐水性、層間接着強度などに優れる不織布積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、不織布は通気性、柔軟性に優れることから各種用途に幅広く用いられている。そのため、不織布には、その用途に応じた各種の特性が求められるとともに、その特性の向上が要求されている。
【0003】
例えば、紙おむつ、生理用ナプキン等の衛生材料、湿布材の基布等に用いられる不織布は、耐水性があり、且つ透湿性に優れることが要求される。また、使用される箇所によっては伸縮性および嵩高性を有することも要求される。
【0004】
不織布に伸縮性を付与する方法の一つとして、スパンボンド不織布の原料として熱可塑性エラストマーを用いる方法(例えば、特許文献1;特表平7−503502号公報)、不織布を形成する繊維として熱可塑性ポリウレタンからなる繊維と熱可塑性ポリマーからなる混合繊維を用いる方法(例えば、特許文献2;特開2004−244791号公報)、また、目的が伸縮性を付与することとは異なるが、水素添加スチレンブロック共重合体等から構成される粘着性繊維と非粘着性繊維とを混繊してなる長繊維不織布(例えば、特許文献3;特開2004−197291号公報)等が種々提案されている。
【0005】
一方、不織布に耐水性、防水性を付与する方法として、柔軟性を有するポリウレタン不織布と透湿性、通気性を有するポリウレタンフィルムを積層する方法(例えば、特許文献4;特開平8−10283号公報)、不織布と透湿性を有する熱可塑性ポリエステルエラストマーフィルムを積層する方法(例えば、特許文献5;特開2004−195833号公報)、ポリアミドエラストマー不織布と透湿性を有するシートを積層する方法(例えば、特許文献6;特開2003−181995号公報)、樹脂コートされた熱可塑性エラストマー不織布とエラストマーフィルムを積層する方法(例えば、特許文献7;特開2006−28695号公報)等、多数提案されている。
しかしながら、耐水性、透湿性、伸縮性がより改善された不織布積層体の需要は依然として強い。
【0006】
【特許文献1】特表平7−503502号公報
【特許文献2】特開2004−244791号公報
【特許文献3】特開2004−197291号公報
【特許文献4】特開平8−10283号公報
【特許文献5】特開2004−195833号公報
【特許文献6】特開2003−181995号公報
【特許文献7】特開2006−28695号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、伸縮性、柔軟性、透湿性、耐水性に優れ、液滲みが無くまたにおいのバリア性も良好で且つ層間接着強度が高い不織布積層体を開発することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、熱可塑性エラストマー(A)の長繊維:10〜90重量%と熱可塑性樹脂(B)の長繊維:90〜10重量%(但し、(A)+(B)=100重量%とする)を含む混繊スパンボンド不織布の少なくとも片面に透湿性フィルムが積層されていることを特徴とする不織布積層体を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の不織布積層体は、伸縮性、柔軟性、透湿性、耐水性に優れ、液滲みが無くまたにおいのバリア性も良好で且つ層間接着強度が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
<熱可塑性エラストマー(A)>
本発明の不織布積層体を構成する混繊スパンボンド不織布を形成する繊維成分の一つである熱可塑性エラストマー(A)の長繊維の原料である熱可塑性エラストマー(A)としては、種々公知の熱可塑性エラストマーを用いることができ、2種類以上の熱可塑性エラストマーを併用してもよい。
【0011】
具体的には、例えば、ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレンブロックコポリマー(SBSと呼称)、ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレンブロックコポリマー(SISと呼称)、それらの水素添加物であるポリスチレン−ポリエチレン・ブチレン−ポリスチレンブロックコポリマー(SEBSと呼称)、及びポリスチレン−ポリエチレン・プロピレン−ポリスチレンブロックコポリマー(SEPSと呼称)に代表される少なくとも1個のスチレン等の芳香族ビニル化合物から構成される重合体ブロックと少なくとも1個のブタジエンあるいはイソプレン等の共役ジエン化合物から構成される重合体ブロックからなるブロック共重合体あるいはその水素添加物であるスチレン系エラストマー、高結晶性の芳香族ポリエステルと非晶性の脂肪族ポリエーテルから構成されるブロック共重合体に代表されるポリエステル系エラストマー、結晶性で高融点のポリアミドと非晶性でガラス転移温度(Tg)が低いポリエーテルもしくはポリエステルから構成されるブロック共重合体に代表されるポリアミド系エラストマー、ハードセグメントがポリウレタンでソフトセグメントがポリカーボネート系ポリオール、エーテル系ポリオール、カプロラクトン系ポリエステルもしくはアジペート系ポリエステル等から構成されるブロック共重合体に代表される熱可塑性ポリウレタン系エラストマー、非晶性もしくは低結晶性のエチレン・α−オレフィンランダム共重合体、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体、プロピレン・エチレン・α−オレフィンランダム共重合体等を単独、または前記非晶性もしくは低結晶性のランダム共重合体とプロピレン単独重合体あるいはプロピレンと少量のα−オレフィンとの共重合体、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン等の結晶性のポリオレフィンとを混合したポリオレフィン系エラストマー、ポリ塩化ビニル系エラストマー、フッ素系エラストマー、等を例示できる。
【0012】
スチレン系エラストマーとしては、ポリスチレンブロックとブタジエンラバーブロックまたはイソプレンラバーブロックとをベースにした、ジブロックおよびトリブロックコポリマーが挙げられる。前記ラバーブロックは、不飽和または完全に水素添加されたものであってもよい。スチレン系エラストマーとしては、具体的には、例えば、KRATONポリマー(商品名、シェルケミカル(株)製)、SEPTON(商品名、クラレ(株)製)、TUFTEC(商品名、旭化成工業(株)製)、レオストマー(商品名、リケンテクノス(株)製)等の商品名で製造・販売されている。
【0013】
ポリエステル系エラストマーとしては、具体的には、例えば、HYTREL(商品名、E.I.デュポン(株)製)、ペルプレン(商品名、東洋紡(株)製)などの商品名で製造・販売されている。
【0014】
ポリアミド系エラストマーとしては、具体的には、例えば、PEBAX(商品名、アトフィナ・ジャパン(株))の商品名で製造・販売されている。
【0015】
ポリオレフィン系エラストマーとしては、エチレン/α−オレフィン共重合体、プロピレン/α−オレフィン共重合体が挙げられる。具体的には、例えば、TAFMER(商品名、三井化学(株)製)、エチレン−オクテン共重合体であるEngage(商品名、DuPontDow Elastomers社製)、結晶性オレフィン共重合体を含むCATALLOY(商品名、モンテル(株)製)、Vistamaxx(商品名、エクソンモービルケミカル社製)などの商品名で製造・販売されている。
【0016】
塩ビ系エラストマーとしては、具体的には、例えば、レオニール(商品名、リケンテクノス(株)製)、ポスミール(商品名、信越ポリマー(株)製)などの商品名で製造・販売されている。
【0017】
これら熱可塑性エラストマー(A)の中でも、熱可塑性ポリウレタン系エラストマー(A1)およびオレフィン系共重合体エラストマー(A2)が積層体した際の伸縮性、加工性などの点で好ましい。
【0018】
熱可塑性エラストマー(A)には、本発明の目的を損なわない範囲で、通常用いられる酸化防止剤、耐候安定剤、帯電防止剤、防曇剤、ブロッキング防止剤、滑剤、核剤、顔料等の添加剤或いは他の重合体を必要に応じて配合することができる。
【0019】
<熱可塑性ポリウレタン系エラストマー(A1)>
前記熱可塑性ポリウレタン系エラストマー(A1)の中でも、凝固開始温度が65℃以上、好ましくは75℃以上、最も好ましくは85℃以上の熱可塑性ポリウレタン系エラストマーが好ましい。凝固開始温度の上限値は195℃が好ましい。
【0020】
ここで、凝固開始温度は、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定される値であり、熱可塑性ポリウレタン系エラストマーを10℃/分で230℃まで昇温し、230℃で5分間保持した後、10℃/分で降温させる際に生じる熱可塑性ポリウレタン系エラストマーの凝固に由来する発熱ピークの開始温度である。凝固開始温度が65℃以上であると、混繊スパンボンド不織布を得る際に繊維同士の融着、糸切れ、樹脂塊等の成形不良を抑制することができるとともに、熱エンボス加工の際には成形された混繊スパンボンド不織布がエンボスローラーに巻きつくことを防止できる。また、得られる混繊スパンボンド不織布もベタツキが少なく、たとえば、衣料、衛生材料、スポーツ材料等の肌と接触する材料に好適に用いられる。一方、凝固開始温度を195℃以下にすることにより、成形加工性を向上させることができる。なお、成形された繊維の凝固開始温度はこれに用いた熱可塑性ポリウレタン系エラストマーの凝固開始温度よりも高くなる傾向にある。
【0021】
このような熱可塑性ポリウレタン系エラストマーの凝固開始温度を65℃以上に調整するためには、熱可塑性ポリウレタン系エラストマーの原料として使用するポリオール、イソシアネート化合物および鎖延長剤について、それぞれ最適な化学構造を有するものを選択するとともに、ハードセグメントの量を調整する必要がある。ここで、ハードセグメント量とは、熱可塑性ポリウレタン系エラストマーの製造に使用したイソシアネート化合物と鎖延長剤との合計重量を、ポリオール、イソシアネート化合物および鎖延長剤の総量で除算して100を掛けた重量パーセント(重量%)値である。ハードセグメント量は、好ましくは20〜60重量%であり、さらに好ましくは22〜50重量%であり、最も好ましくは、25〜48重量%である。
【0022】
また、かかる熱可塑性ポリウレタン系エラストマーは、極性溶媒不溶分の粒子数が300万個/g以下、好ましくは250万個以下、最も好ましくは200万個以下である。ここで、熱可塑性ポリウレタン系エラストマー中の極性溶媒不溶分とは、主に、熱可塑性ポリウレタン系エラストマーの製造中に発生するフィッシュアイやゲル等の塊状物であり、熱可塑性ポリウレタン系エラストマーのハードセグメント凝集物に由来する成分、ならびにハードセグメントおよび/またはソフトセグメントがアロファネート結合、ビュレット結合等により架橋された成分等、熱可塑性ポリウレタン系エラストマーを構成する原料ならびにこの原料間の化学反応により生じる成分である。
【0023】
極性溶媒不溶分の粒子数は、熱可塑性ポリウレタン系エラストマーをジメチルアセトアミド溶媒(以下、「DMAC」と略す。)に溶解させた際の不溶分を、細孔電気抵抗法を利用した粒度分布測定装置に100μmのアパーチャーを装着して測定した値である。100μmのアパーチャーを装着すると、未架橋ポリスチレン換算で2〜60μmの粒子の数を測定することができる。
【0024】
極性溶媒不溶分の粒子数が熱可塑性ポリウレタン系エラストマー1gに対して300万個以下にすることにより、上記熱可塑性ポリウレタン系エラストマーの凝固開始温度範囲内において、繊維径の分布の増大、紡糸時の糸切れ等の問題を回避することができる。また、このような熱可塑性ポリウレタン系エラストマーを用いて成形された混繊スパンボンド不織布は、その繊維径を織物の繊維径と同等にすることができ、触感に優れるため、たとえば衛生材料等に好適に用いることができる。また、不純物等を濾過するために押出機内部に設置されたフィルターが目詰まりしにくく、機器の調整、整備頻度が低くなるため、工業的にも好ましい。
【0025】
極性溶媒不溶分の少ない上記熱可塑性ポリウレタン系エラストマーは、後述するように、ポリオール、イソシアネート化合物および鎖延長剤の重合反応を行なった後、ろ過することにより得ることができる。
【0026】
このような熱可塑性ポリウレタン系エラストマーは、示差走査熱量計(DSC)により測定される、ピーク温度が90〜140℃の範囲にある吸熱ピークから求められる融解熱量の総和(a)と、ピーク温度が140℃を超えて220℃以下の範囲にある吸熱ピークから求められる融解熱量の総和(b)とが、下記式(1)
a/(a+b)×100≦80 (1)
の関係を満たすことが好ましく、
下記式(2)
a/(a+b)×100≦70 (2)
の関係を満たすことがさらに好ましく、
下記式(3)
a/(a+b)×100≦55 (3)
の関係を満たすことが最も好ましい。
【0027】
ここで、「a/(a+b)×100」は熱可塑性ポリウレタン系エラストマーのハードドメインの融解熱量比(単位:%)を意味する。熱可塑性ポリウレタン系エラストマーのハードドメインの融解熱量比が80%以下になると、繊維、特に混繊スパンボンド不織布における繊維および不織布の強度ならびに伸縮性が向上する。本発明では、熱可塑性ポリウレタン系エラストマーのハードドメインの融解熱量比の下限値は0.1%程度が好ましい。
【0028】
かかる熱可塑性ポリウレタン系エラストマーは、温度200℃、せん断速度100sec-1の条件における溶融粘度が100〜3000Pa・sが好ましく、より好ましくは200〜2000Pa・s、最も好ましくは1000〜1500Pa・sである。ここで、溶融粘度は、キャピログラフ(東洋精機(株)製、ノズル長30mm、直径1mmのものを使用)で測定した値である。
【0029】
また、かかる熱可塑性ポリウレタン系エラストマーは、その水分値が350ppm以下のものが好ましく、より好ましくは300ppm以下、最も好ましくは150ppm以下のものである。水分値を350ppm以下にすることにより、大型のスパンボンド成形機械での不織布の成形において、ストランド中への気泡の混入、または糸切れの発生を抑制することができる。
【0030】
このような特性を有する熱可塑性ポリウレタン系エラストマーは、例えば、特開2004−244791号公報に記載された製造方法により得ることができる。
【0031】
<オレフィン系共重合体エラストマー(A2)>
前記オレフィン系共重合体エラストマー(A2)の中でも、非晶性もしくは低結晶性、好ましくはX線回折により測定される結晶化度が20質量%以下の、エチレンとプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン等の炭素数が3〜20の1種以上のα−オレフィンとの共重合体であるエチレン・α−オレフィン共重合体エラストマー、およびプロピレンとエチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン等の炭素数が2〜20(但し3を除く)の1種以上のα−オレフィンとの共重合体であるプロピレン・α−オレフィン共重合体エラストマーが好ましい。また、ポリオレフィン系エラストマーは、上記α―オレフィンの他に、少量のノルボルネン、5−メチルノルボルネン、5−エチルノルボルネン、シクロペンテン、3−メチルシクロペンテン、4−メチルシクロペンテン等の環状オレフィン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、1,3−シクロペンタジエン、1,3−シクロへキサジエン、1,4−シクロへキサジエン等の環状ジエン等、あるいは酢酸ビニル、メタアクリル酸エステル等のビニル化合物を含んでいてもよい。(なお、上記ポリオレフィンが共重合体の場合、最初に記載された単量体からなる構成単位が、この共重合体の主成分である。)
かかるエチレン・α−オレフィン共重合体エラストマーとしては、具体的には、エチレン・プロピレンランダム共重合体エラストマー、エチレン・1−ブテンランダム共重合体エラストマー等を例示することができる。また、エチレン・α−オレフィン共重合体エラストマーのメルトフローレート(MFR)は紡糸性を有する限りとくに限定はされないが、通常、MFR(ASTM D1238 190℃、2160g荷重)が1〜1000g/10分、より好ましくは5〜500g/10分、さらに好ましくは10〜100g/10分の範囲にある。
【0032】
かかるプロピレン・α−オレフィン共重合体エラストマーとしては、具体的には、プロピレン・エチレンランダム共重合体エラストマー、プロピレン・エチレン・1−ブテンランダム共重合体エラストマー、プロピレン・1−ブテンランダム共重合体エラストマーを例示することができる。また、プロピレン・α−オレフィン共重合体エラストマーのMFRは紡糸性を有する限りとくに限定はされないが、通常、MFR(ASTM D1238 230℃、2160g荷重)が1〜1000g/10分、より好ましくは5〜500g/10分、さらに好ましくは10〜100g/10分の範囲にある。
【0033】
また、オレフィン系共重合体エラストマー(A2)は、前記非晶性もしくは低結晶性の重合体エラストマー単体でも用い得るが、プロピレン単独重合体あるいはプロピレンと少量のα−オレフィンとの共重合体、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン等の結晶性のポリオレフィンを1〜40質量%程度混合した組成物であってもよい。
【0034】
とくに好ましいオレフィン系共重合体エラストマーとしては、プロピレン単独重合体:1〜40質量%と非晶性もしくは低結晶性のプロピレン・エチレンランダム共重合体:99〜60質量%の組成物からなるオレフィン系共重合体エラストマー、プロピレン単独重合体:1〜40質量%と非晶性もしくは低結晶性のプロピレン・エチレン・α−オレフィンランダム共重合体〔プロピレン:45〜89モル%、エチレン:10〜25モル%および炭素数4〜20のα−オレフィン(ただし、炭素数4〜20のα−オレフィンの共重合量は30モル%を超えない):99〜60質量%の組成物からなるオレフィン系共重合体エラストマーが挙げられる。
【0035】
<熱可塑性樹脂(B)>
本発明の不織布積層体を構成する混繊スパンボンド不織布を形成する成分の一つである熱可塑性樹脂からなる長繊維の原料となる熱可塑性樹脂(B)としては、前記熱可塑性エラストマー(A)以外の種々公知の熱可塑性樹脂を用い得る。例えば、融点(Tm)が100℃以上の結晶性の重合体、あるいはガラス転移温度が100℃以上の非晶性の重合体などが挙げられるが、これら熱可塑性樹脂(B)でも結晶性の熱可塑性樹脂が好ましい。
【0036】
また、熱可塑性樹脂(B)の中でも、公知のスパンボンド不織布の製造方法により製造して得られる不織布の最大点伸度が50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは100以上伸長し、かつ弾性回復が殆どない性質を有する熱可塑性樹脂(伸長性熱可塑性樹脂)は、熱可塑性エラストマー(A)の長繊維と混繊して得られる混繊スパンボンド不織布及びフィルムと積層して不織布積層体とした際に、延伸加工により嵩高感が発現し、触感が良くなるとともに、不織布積層体に伸び止り機能を付与することができるので好ましい。なお、熱可塑性樹脂(B)からなるスパンボンド不織布の最大点伸度の上限は必ずしも限定されないが、通常、300%以下である。
【0037】
かかる熱可塑性樹脂(B)としては、具体的には、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテンおよび1−オクテン等のα−オレフィンの単独若しくは共重合体であるポリオレフィン〔高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン(所謂LLDPE)、高密度ポリエチレン、エチレン・プロピレンランダム共重合体、エチレン・1−ブテンランダム共重合体等のエチレンの単独重合体あるいはエチレン・α−オレフィン共重合体等のエチレン系重合体;プロピレンの単独重合体(所謂ポリプロピレン)、プロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・エチレン・1−ブテンランダム共重合体(所謂ランダムポリプロピレン)、プロピレンブロック共重合体、プロピレン・1−ブテンランダム共重合体等のプロピレン系重合体;1−ブテン単独重合体、1−ブテン・エチレン共重合体、1−ブテン・プロピレン共重合体等の1−ブテン系重合体;ポリ4−メチル−1−ペンテン等〕、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリアミド(ナイロン−6、ナイロン−66、ポリメタキシレンアジパミド等)、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリスチレン、アイオノマーあるいはこれらの混合物等を例示することができる。これらのうちでは、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン(所謂LLDPE)、高密度ポリエチレンなどのエチレン系重合体、ポリプロピレンおよびポリプロピレンランダム共重合体等のプロピレン系重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド等が好ましい。
【0038】
熱可塑性樹脂(B)には、本発明の目的を損なわない範囲で、通常用いられる酸化防止剤、耐候安定剤、帯電防止剤、防曇剤、ブロッキング防止剤、滑剤、核剤、顔料、染料、天然油、合成油、ワックス等の添加剤或いは他の重合体を必要に応じて配合することができる。
【0039】
<プロピレン系重合体(B1)>
前記熱可塑性樹脂の中でも、プロピレン系重合体(B1)が得られる混繊スパンボンド不織布の加工性、強度などの点から好ましい。
かかるプロピレン系重合体としては、融点(Tm)が155℃以上、好ましくは157〜165℃の範囲にあるプロピレンの単独重合体若しくはプロピレンと極少量のエチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン等の炭素数2以上(但し、3を除く)、好ましくは2〜8(但し、3を除く)の1種または2種以上のα−オレフィンとの共重合体であり、プロピレン単独重合体が好ましい。
【0040】
プロピレン系重合体は、溶融紡糸し得る限り、メルトフローレート(MFR:ASTM D−1238、230℃、荷重2160g)は特に限定はされないが、通常、通常1〜1000g/10分、好ましくは5〜500g/10分、さらに好ましくは10〜100g/10分の範囲にある。また、本発明に係るプロピレン系重合体の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比Mw/Mnは、通常1.5〜5.0である。紡糸性が良好で、かつ繊維強度が特に優れる複合繊維が得られる点で、さらには1.5〜3.0が好ましい。本発明において、良好な紡糸性とは、紡糸ノズルからの吐出時および延伸中に糸切れを生じず、フィラメントの融着が生じないことをいう。本発明において、MwおよびMnは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によって、公知の方法で測定することができる。
【0041】
<混繊スパンボンド不織布>
本発明の不織布積層体を構成する混繊スパンボンド不織布は、熱可塑性エラストマー(A)の長繊維〔以下、「熱可塑性エラストマー(A)長繊維」とも呼ぶ。〕と熱可塑性樹脂(B)の長繊維〔以下、「熱可塑性樹脂(B)長繊維」とも呼ぶ。〕が10〜90重量%:90〜10重量%の割合(但し、(A)+(B)=100重量%とする)で含まれている混繊スパンボンド不織布である。混繊スパンボンド不織布としては、伸縮性や柔軟性の観点からは、熱可塑性エラストマー(A)長繊維が20重量%以上であることが好ましく、30重量%以上であることがより好ましく、加工性(耐べたつき性)の観点からは、70重量%以下が好ましく、60重量%以下であることがより好ましい。
【0042】
本発明に係る混繊スパンボンド不織布を形成する熱可塑性エラストマー(A)長繊維及び熱可塑性樹脂(B)長繊維の繊維径(平均値)は、それぞれ通常50μm以下、5〜40μm、より好ましくは7〜30μmの範囲にある。熱可塑性エラストマー(A)長繊維と熱可塑性樹脂(B)長繊維の繊維径は同じであっても異なってもよい。
【0043】
本発明に係る混繊スパンボンド不織布は、おむつ等衛生材用途においては柔軟性および通気性の観点から、通常、目付が120g/m2以下、好ましくは80g/m2以下、より好ましくは50g/m2以下、更に好ましくは40〜15g/m2範囲にある。
【0044】
本発明に係る混繊スパンボンド不織布は、前記熱可塑性エラストマー(A)及び前記熱可塑性樹脂(B)を用いて、公知のスパンボンド不織布の製造方法、例えば、特開2004−244791号公報等に記載の方法により製造し得る。
【0045】
具体的には、熱可塑性エラストマー(A)及び熱可塑性樹脂(B)をそれぞれ別個の押出機で溶融した後、溶融した重合体をそれぞれ個別に多数の紡糸孔(ノズル)を備えた口金(ダイ)に導入し、熱可塑性エラストマー(A)と熱可塑性樹脂(B)とを異なる紡糸孔から独立に同時に吐出させた後、溶融紡糸された熱可塑性エラストマー(A)の長繊維と熱可塑性樹脂(B)の長繊維を冷却室に導入し、冷却風により冷却した後、延伸エアにより長繊維を延伸(牽引)し、移動捕集面上に堆積させる方法により製造し得る。重合体の溶融温度はそれぞれ重合体の軟化温度あるいは融解温度以上で且つ熱分解温度未満であれば特に限定はされず、用いる重合体等により決め得る。口金温度は、用いる重合体にもよるが、例えば、熱可塑性エラストマー(A)として熱可塑性ポリウレタン系エラストマーあるいはオレフィン系共重合体エラストマーを、熱可塑性樹脂(B)としてプロピレン系重合体あるいはプロピレン系重合体とHDPEとのオレフィン系重合体組成物を用いる場合は、通常180〜240℃、好ましくは190〜230℃、より好ましくは200〜225℃の温度に設定し得る。
【0046】
冷却風の温度は重合体が固化する温度であれば特に限定はされないが、通常5〜50℃、好ましくは10〜40℃、より好ましくは15〜30℃の範囲にある。延伸エアの風速は、通常100〜10,000m/分、好ましくは500〜10,000m/分の範囲にある。
【0047】
本発明に係る混繊スパンボンド不織布は、用途により、種々公知の交絡方法、例えば、ニードルパンチ、ウォータージェット、超音波等の手段を用いる方法、あるいはエンボスロールを用いる熱エンボス加工またはホットエアースルーを用いることにより1部熱融着する方法により交絡しておいてもよい。かかる交絡方法は単独でも複数の交絡方法を組合わせて用いてもよい。
【0048】
熱エンボス加工により熱融着する場合は、通常、エンボス面積率が5〜20%、好ましくは5〜10%、非エンボス単位面積が0.5mm以上、好ましくは4〜40mmの範囲にある。非エンボス単位面積とは、四方をエンボス部で囲まれた最小単位の非エンボス部において、エンボスに内接する四角形の最大面積である。
【0049】
混繊スパンボンド不織布あるいは後述の透湿性フィルムと積層してなる不織布積層体をかかる範囲でエンボスすることにより、得られる不織布積層体の柔軟性、通気性、摩擦堅牢度、伸縮性等がバランスに優れるので好ましい。
【0050】
<透湿性フィルム>
本発明の不織布積層体を構成する透湿性フィルムは、熱可塑性エラストマー(混繊スパンボンド不織布層に含まれる熱可塑性エラストマー(A)と区別するために、熱可塑性エラストマー(C)と表す。)からなるフィルムであり、30μmでの膜厚にてJIS L1099 A−1法(40℃、相対湿度90%、CaCl2法の条件)による透湿度が通常、2000g/m2・day以上、好ましくは3000g/m2・day更に好ましくは4000g/m2・day以上の水蒸気透過率を示すフィルムである。
【0051】
本発明に係る透湿性フィルムは、種々用途により、適宜選択し得るが、通常、厚さが10〜50μm、好ましくは15〜40μmの範囲にある。不織布とラミ時にピンホールを防止する観点及び機械的強度を保ち適切な耐水度を保つために、厚さを10μm以上にすることが望ましく、良好な透湿性を得、かつ柔軟性を得るために厚みが50μm以下が良い。
【0052】
本発明に係る透湿性フィルムは、熱可塑性エラストマー(C)を用い、公知のフィルム成形方法、例えば、熱可塑性エラストマー(C)を押出機で溶融した後、T−ダイ、環状ダイを用いてフィルムに成形する方法が例示出来るが、透湿を有するエラストマーは一般にべた付きが大きくブロッキングすることから、直接あるいは間接的に、前記混繊スパンボンド不織布層上に押出してフィルム層として形成させてもよい。
【0053】
<熱可塑性エラストマー(C)>
本発明に係る熱可塑性エラストマー(C)としては、熱可塑性エラストマーであってフィルムを形成させた際に透湿性を有するものであれば種々のものを用いうる。透湿性を有することを確認するには、例えばJIS L1099 A−1法(40℃、相対湿度90%、CaCl法の条件)による測定法によって、水蒸気の透過性が認められることをもって透湿性を有するものとすることができる。この場合、好ましくは、同JIS L1099 A−1法によって、厚さ30μmのフィルムが2000g/m2・day以上、好ましくは3000g/m2・day以上の水蒸気透過率を示すものが、本発明において好ましく使用される。
【0054】
かかる熱可塑性エラストマー(C)として好適なものは、ポリエステル系エラストマー(C1)、ポリアミド系エラストマー(C2)、熱可塑性ポリウレタン系エラストマー(C3)が挙げられる。
熱可塑性エラストマー(C)には、本発明の目的を損なわない範囲で、通常用いられる酸化防止剤、耐候安定剤、帯電防止剤、防曇剤、ブロッキング防止剤、滑剤、核剤、顔料等の添加剤或いは他の重合体を必要に応じて配合することができる。
【0055】
<ポリエステル系エラストマー(C1)>
ポリエステル系エラストマー(C1)としては、芳香族ポリエステルに由来する下記式(I)で表される構造単位をハードセグメントに、脂肪族ポリエーテルに由来する下記式(II)で表される構造単位をソフトセグメントにし、それらがブロック共重合したブロックコポリマーが例示される。
【0056】
−O−D−O−CO−R−CO− (I)
−O−G−O−CO−R−CO− (II)
上記式中、Dは分子量が約250以下のジオールから2つのヒドロキシル基を除いた2価の残基であり、Rは分子量が約300以下のジカルボン酸から2つのカルボキシル基を除いた2価の残基であり、Gは平均分子量が約400〜約3500のポリ(アルキレンオキサイド)グリコールから両末端のヒドロキシル基を除いた2価の残基である。ここで、ポリ(アルキレンオキサイド)グリコールのコポリエーテルエステルである式(II)で表される構造単位に挿入されるエチレンオキシド基の量は、コポリエーテルエステルの全質量に対して約25〜68質量%である。
【0057】
本発明においては、特に前記芳香族ポリエステルがテトラメチレンテレフタレートであり、前記脂肪族ポリエーテルがアルキレンエーテルテレフタレートであると好ましい。具体的にはポリブチレンテレフタレート/ポリテトラメチレンエーテルグリコールブロック共重合体などが挙げられる。市販品としては、具体的には、例えば、HYTREL(商品名、E.I.デュポン(株)製)、ペルプレン(商品名、東洋紡(株)製)などの商品名で製造・販売されている。
【0058】
<ポリアミド系エラストマー(C2)>
ポリアミド系エラストマー(C2)としては、ポリアミドをハードセグメントに、ガラス転移温度の低いポリエステルまたはポリオールのジオールをソフトセグメントに用いたマルチブロックコポリマーが例示される。ここで、ポリアミド成分としては、ナイロン6、66、610、11、12等があげられる。これらの中では、ナイロン6、ナイロン12が好ましい。ポリエーテルジオールとしては、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ポリ(オキシプロピレン)グリコール等があげられ、ポリエステルジオールとしては、ポリ(エチレン・1,4−アジペート)グリコール、ポリ(ブチレン・1,4−アジペート)グリコール、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。具体例として、ナイロン12/ポリテトラメチレングリコールブロック共重合体等が挙げられる。市販品としては、具体的には、例えば、ダイアミド(ダイセルヒュルス社製)、PEBAX(アトケム社製)〔いずれも商標名〕等の商品名で製造・販売されている。
【0059】
<熱可塑性ポリウレタン系エラストマー(C3)>
熱可塑性ポリウレタン系エラストマー(C3)としては、ハードセグメントとして短鎖ポリオール(分子量60〜600)とジイソシアナートの反応で得られるポリウレタンと、ソフトセグメントとして長鎖ポリオール(分子量600〜4000)とジイソシアナートの反応で得られるポリウレタンとのブロックコポリマーが例示される。ジイソシアナートとしては、トルエンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート等があげられ、短鎖ポリオールとしては、エチレングリコール、1,3-プロピレングリコール、ビスフェノールA等があげられる。
【0060】
熱可塑性ポリウレタン系エラストマー(C3)としては、ポリカプロラクトングリコール等のポリラクトンエステルポリオールに短鎖ポリオールの存在下ジイソシアナートを付加重合したもの(ポリエーテルポリウレタン);ポリ(エチレン・1,4−アジペート)グリコール、ポリ(ブチレン・1,4−アジペート)グリコール等のアジピン酸エステルポリオールに短鎖ポリオールの存在下ジイソシアナートを付加重合したもの(ポリエステルポリウレタン);テトラヒドロフランの開環で得られたポリテトラメチレングリコールに短鎖ポリオールの存在下ジイソシアナートを付加重合したもの等が例示される。市販品としては、具体的には、例えば、ブルコラン(バイエル社製)、ケミガムSL(グッドイヤー社製)、アジプレン(デュポン社製)、バルカプレン(ICI社製)〔いずれも商標名〕等の商品名で製造・販売されている。
【0061】
これらの中では、透湿性に優れる点で、ポリエステル系エラストマー(C1)、熱可塑性ポリウレタン系エラストマー(C3)が好ましく、とりわけ伸縮性を兼ね備えた熱可塑性ポリウレタン系エラストマー(C3)が特に好ましい。
【0062】
<不織布積層体>
本発明の不織布積層体は、前記熱可塑性エラストマー(A)の長繊維10〜90質量%と熱可塑性樹脂(B)の長繊維90〜10質量%が混繊されてなる混繊スパンボンド不織布層と、熱可塑性エラストマー(C)からなる透湿性フィルムを含むことを特徴とする。
【0063】
本発明の不織布積層体は、透湿性フィルムとして熱可塑性エラストマー(C)を用いるため、多孔性フィルムなどを積層した不織布積層体に比べて機械的強度に優れる。また通常、30μmの膜厚においてJIS L1099 A−1法(40℃、相対湿度90%、CaCl2法の条件)による透湿度が1000〜15000g/m2・day、好ましくは2000〜12000g/m2・dayさらに好ましくは3000〜10000g/m2・dayである。耐水圧が、500mmAq以上、好ましくは800mmAq以上を有する。
【0064】
さらに不織布積層体は、伸長性にも優れ、80%以上(もとの長さの1.8倍以上)好ましくは100%以上(もとの長さの2倍以上)、更に好ましくは120%以上(もとの長さの2.2倍以上)、最も好ましくは150%以上(もとの長さの2.5倍以上)の伸びを有することを特徴とする。さらに、伸長回復性は通常30%以下、好ましくは25%以下更に好ましくは20%以下、もっとも好ましくは15%以下である。
【0065】
本発明の不織布積層体には、混繊スパンボンド不織布層および透湿性フィルムに加え、何れかの面に、他の層を積層してもよい。
【0066】
本発明の不織布積層体を構成する他の層は、特に限定はされず、用途により種々の層が積層し得る。
【0067】
具体的には、例えば、編布、織布、不織布、フィルム等を挙げることができる。本発明の不織布積層体と他の層を積層する(貼り合せる)場合は、熱エンボス加工、超音波融着等の熱融着法、ニードルパンチ、ウォータージェット等の機械的交絡法、ホットメルト接着剤、ウレタン系接着剤等の接着剤による方法、押出しラミネート等をはじめ、種々公知の方法を採り得る。
【0068】
本発明の不織布積層体と積層される不織布としては、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、湿式不織布、乾式不織布、乾式パルプ不織布、フラッシュ紡糸不織布、開繊不織布等、種々公知の不織布を挙げることができる。
【0069】
混繊スパンボンド不織布層と透湿性フィルムを積層する(貼り合せる)方法としては、予め混繊スパンボンド不織布および透湿性フィルムを得た後、混繊スパンボンド不織布と透湿性フィルムを重ね合わせエンボスロール等により圧着する方法、予め得た混繊スパンボンド不織布層上に、熱可塑性エラストマー(C)を押出しラミネートする方法等種々公知の方法を採り得る。また、混繊スパンボンド不織布層と透湿性フィルムを積層した後、エンボスロール等により圧着する場合は、通常、60〜150℃、好ましくは70〜140の温度で(好ましい条件を記載すること)行い得る。
【0070】
本発明においては、混繊スパンボンド不織布と透湿性フィルムとが共に化学的組成の近い熱可塑性エラストマーから構成される場合は、積層する際には、必ずしも接着剤等は必要とはしない。例えば、具体的な例として、熱可塑性エラストマー(A)長繊維として、熱可塑性ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー及びポリアミド系エラストマーから選ばれる熱可塑性エラストマー(A)長繊維を含む混繊スパンボンド不織布と透湿性フィルムとして、熱可塑性ポリウレタン系エラストマー(C3)、ポリエステル系エラストマー(C1)及びポリアミド系エラストマー(C2)からなる透湿性フィルムとを積層することにより、良好な接着性が得られる。
また、混繊スパンボンド不織布と透湿性フィルムを積層する場合は、化学的組成によらず、種々用途によって、要求される透湿度および接着強度を考慮して、接着剤等を用いてもよい。
【実施例】
【0071】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例及び比較例における物性値等は、以下の方法により測定した。
【0072】
(1)目付〔g/m
・ 不織布及び/又は不織布積層体から200mm(MD)×50mm(CD)の試験片を6点採取した。なお、採取場所はMD、CDともに任意の3箇所とした(計6箇所)。次いで、採取した各試験片を上皿電子天秤(研精工業社製)を用いて、それぞれ質量(g)を測定した。各試験片の質量の平均値を求めた。求めた平均値から1m当たりの質量(g)に換算し、小数点第2位を四捨五入して各不織布サンプルの目付〔g/m〕とした。
・ 200mm(MD)×50mm(CD)の試験片が採取出来ない場合においてはポンチにて不織布1cmを5点抜きその質量の平均から1m当たりの質量(g)に換算し、小数点第2位を四捨五入して各不織布サンプルの目付〔g/m〕とした。
【0073】
(2)最大点伸度〔%〕
不織布及び/又は不織布積層体から200mm(MD)×50mm(CD)の試験片を6点採取した。次いで、採取した各試験片を万能引張試験機(インテスコ社製、IM−201型)を用いて、スパン間隔I=100mm、引張速度100mm/min.で引張試験を行い、最大強度点での伸度(最大点伸度〔%〕)を求めた。なお、最大点伸度は、上記6点(MD、CD各3点)について平均値を求め、小数点第2位を四捨五入した。
【0074】
(3)残留歪〔%〕
不織布及び/又は不織布積層体から200mm(MD)×50mm(CD)の試験片を6点採取した。なお、採取場所はMD、CDともに任意の3箇所とした(計6箇所)。次いで、採取した各試験片を万能引張試験機(インテスコ社製、IM−201型)を用いて、チャック間100mm、引張速度100mm/min.、延伸倍率100%で延伸した後、直ちに同じ速度で原長まで回復させて、回復時のひずみを測定し、残留歪〔%〕とした。なお、残留歪は、上記6点(MD、CD各3点)について平均値を求め、小数点第2位を四捨五入した。
【0075】
(4)透湿度
JIS L1099 A−1法に規定される方法に従い、温度40℃、相対湿度90%の条件下でCaCl2法により測定した。なお不織布積層体の大きさが十分得られない場合それに応じた面積を有するカップを用意して測定した。
【0076】
(5)耐水圧〔mmHO〕
JIS L1092に準拠して測定した。不織布及び/又は不織布積層体から150mm(MD)×150mm(CD)の試験片を6点採取した。なお、採取場所は得られた不織布の任意の3箇所とした。次いで、採取した各試験片を、耐水度試験装置(テスター産業製)を用いて、試験片の表面を水に当てられるように取り付け、常温水を入れた水準装置を60±30mm/min.または10±5mm/min.の速さで上昇させて試験片に水圧をかけ、試験片の反対側の3箇所から水が漏れたときの水位を測定し、耐水圧〔mmHO〕を求めた。なお、耐水圧は上限1000として1000を超える場合は1000として、上記3点について平均値を求め、小数点第1位を四捨五入した。
【0077】
(6)接着性の評価
不織布積層体から200mm(MD)×50mm(CD)の試験片を採取し次いで、採取した各試験片を万能引張試験機(インテスコ社製、IM−201型)を用いて、スパン間隔I=100mm、引張速度100mm/min.で100mm長まで延伸直ちに同速度にて逆行し原点まで戻すサイクルを1サイクルとして20回繰り返し、その際の層間での剥離の有無を観察した。
【0078】
(7)ピンホール
不織布積層体を20cm×20cmの大きさに切り出し、濾紙の上に透湿性フィルム面が濾紙と接するように積層体を敷き、食紅が適量混入された市販の食用サラダ油を刷毛にて混繊不織布が十分濡れる程度塗りつけ、1時間後濾紙に着色油が付着の有無にてピンホールの有無を調査した。
また、実施例、比較例に用いた熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)の分析および評価は、下記の方法に従って行った。
【0079】
(8)凝固開始温度
セイコー電子工業(株)製SSC5200Hディスクステーションに接続した示差走査熱量計(DSC220C)により測定した。サンプルとして、粉砕したTPUをアルミ製パンに約8mg採取し、カバーを被せクリンプした。リファレンスとして、同様にアルミナを採取した。サンプルおよびリファレンスをセル内の所定の位置にセットした後、流量40Nml/minの窒素気流下で測定を行った。昇温速度10℃/minで室温から230℃まで昇温し、この温度で5分間ホールドした後、10℃/minの降温速度で−75℃まで降温させた。このときに記録されたTPUの凝固に由来する発熱ピークの開始温度を測定し、凝固開始温度(単位:℃)とした。
【0080】
(9)極性溶媒不溶分の粒子数
細孔電気抵抗法に基づく粒度分布測定装置としてベックマンコールター社製マルチサーザーIIを使用して測定を行った。5リットルのセパラブルフラスコに、ジメチルアセトアミド(和光純薬工業(株)製 特級品)3500gとチオシアン酸アンモニウム(純正化学(株)製 特級品)145.83gとを秤量し、室温にて24時間かけて溶解させた。
次いで、1μmのメンブランフィルターで減圧濾過を行い、試薬Aを得た。200ccのガラス瓶に試薬A180gとTPUペレット2.37gを精秤し、3時間かけてTPU中の可溶分を溶解させ、これを測定用試料とした。マルチサイザーIIに100μmのアパーチャーチューブを取り付け、装置内の溶媒を試薬Aに置換した後、減圧度を約3000mmAqに調節した。十分に洗浄した試料投入用のビーカーに試薬Aを120g秤量し、ブランク測定により発生したパルス量が50個/分以下であることを確認した。最適なCurrent値とGainをマニュアルで設定した後、10μmの未架橋ポリスチレン標準粒子を使用してキャリブレーションを実施した。測定は、十分に洗浄した試料投入用ビーカーに試薬Aを120g、測定用試料を約10g秤量し、210秒間実施した。この測定によりカウントされた粒子数を、アパーチャーチューブに吸引されたTPU重量で除算した値をTPU中の極性溶媒不溶分の粒子数(単位:個/g)とした。なお、TPU重量は次式により算出した。
TPU重量={(A/100)×B/(B+C)}×D
式中、A:測定用試料のTPU濃度(重量%)、B:ビーカーに秤量した測定用試料の重量(g)、C:ビーカーに秤量した試薬Aの重量(g)、D:測定中(210秒間)にアパーチャーチューブに吸引された溶液量(g)である。
【0081】
(10)ハードドメインの融解熱量比
セイコー電子工業(株)製SSC5200Hディスクステーションに接続した示差走査熱量計(DSC220C)により測定した。サンプルとして、粉砕したTPUをアルミ製パンに約8mg採取し、カバーを被せクリンプした。リファレンスとして、同様にアルミナを採取した。サンプルおよびリファレンスをセル内の所定の位置にセットした後、流量40Nml/minの窒素気流下で測定を行った。昇温速度10℃/minで室温から230℃まで昇温した。このとき、ピーク温度が90℃以上140℃以下の範囲にある吸熱ピークから求められる融解熱量の総和(a)と、ピーク温度が140℃を超えて220℃以下の範囲にある吸熱ピークから求められる融解熱量の総和(b)を求め、次式によりハードドメインの融解熱量比(単位:%)を求めた。
ハードドメインの融解熱量比(%)=a/(a+b)×100
【0082】
(11)200℃における溶融粘度(以下、単に「溶融粘度」という。)
キャピログラフ(東洋精機(株)製モデル1C)を用いて、TPUの200℃におけるせん断速度100sec-1の時の溶融粘度(単位:単位:Pa・s)を測定した。長さ30mm、直径は1mmのノズルを用いた。
【0083】
(12)TPUの水分値
水分量測定装置(平沼産業社製AVQ−5S)と水分気化装置(平沼産業社製EV−6)とを組み合わせてTPUの水分量(単位:ppm)の測定を行った。加熱試料皿に秤量した約2gのTPUペレットを250℃の加熱炉に投入し、気化した水分を予め残存水分を除去した水分量測定装置の滴定セルに導き、カールフィッシャー試薬にて滴定した。セル中の水分量変化に伴う滴定電極の電位変化が20秒間生じないことをもって滴定終了とした。
【0084】
(13)ショアA硬度
TPUの硬さは、23℃、50%相対湿度下においてJIS K−7311に記載の方法により測定した。デュロメーターはタイプAを使用した。
【0085】
<TPU製造例1>
ジフェニルメタンジイソシアネート(以下MDIと記す。)をタンクAに窒素雰囲気下で装入し、気泡が混入しない程度に攪拌しながら45℃に調整した。
数平均分子量2000のポリエステルポリオール(三井武田ケミカル(株)製、商品名:タケラックU2024)628.6重量部と、イルガノックス1010を2.21重量部と、1,4−ブタンジオール77.5重量部とをタンクBに窒素雰囲気下で仕込み、攪拌しながら95℃に調整した。この混合物をポリオール溶液1という。
これらの反応原料から計算されるハードセグメント量は37.1重量%である。
次に、ギアポンプ、流量計を介した送液ラインにて、MDIを17.6kg/hの流速で、ポリオール溶液3を42.4kg/hの流速で、120℃に調整した高速攪拌機(SM40)に定量的に通液し、2000rpmで2分間攪拌混合した後、スタティックミキサーに通液した。スタティックミキサー部は、管長0.5m、内径20mmφのスタティックミキサーを3本接続した第1〜第3のスタティックミキサー(温度230℃)と、管長0.5m、内径20mmφのスタティックミキサーを3本接続した第4〜第6のスタティックミキサー(温度220℃)と、管長1.0m、内径34mmφのスタティックミキサーを6本接続した第7〜第12のスタティックミキサー(温度210℃)と、管長0.5m、内径38mmφのスタティックミキサーを3本接続した第13〜第15のスタティックミキサー(温度200℃)とを直列に接続したものである。
第15スタティックミキサーから流出した反応生成物を、ギヤポンプを介して、ポリマーフィルター(長瀬産業(株)製、商品名:デナフィルター)を先端に付随した単軸押出機(直径65mmφ、温度180〜210℃)に圧入し、ストランドダイから押出した。水冷後、ペレタイザーにて連続的にペレット化した。次いで、得られたペレットを乾燥機に装入し、100℃で8時間乾燥して、水分値40ppmの熱可塑性ポリウレタンエラストマーを得た。この熱可塑性ポリウレタンエラストマーを単軸押出機(直径50mmφ、温度180〜210℃)で連続的に押出し、ペレット化した。再度、100℃で7時間乾燥して、水分値57ppmの熱可塑性ポリウレタンエラストマー(A−1)を得た。
A−1の凝固開始温度は103.7℃、極性溶媒不溶分の粒子数は150万個/g、射出成形により調製した試験片による硬度は86A、200℃における溶融粘度は1900Pa・s、ハードドメインの融解熱量比は35.2%であった。
【0086】
[実施例1]
<混繊スパンボンド不織布用の熱可塑性樹脂組成物の調製>
MFR(ASTM D1238に準拠し、温度230℃、荷重2.16kgで測定)60g/10分、密度0.91g/cm3、融点160℃のプロピレン単独重合体(以下、「PP−1」と略す)96重量%とMFR(ASTM D1238に準拠して、温度190℃、荷重2.16kgで測定)5g/10分、密度0.97g/cm3、融点134℃の高密度ポリエチレン(以下、「HDPE」と略す)4重量%とを混合し、熱可塑性樹脂組成物(B−1)を準備した。
【0087】
<混繊スパンボンド不織布の製造>
前記熱可塑性ポリウレタンエラストマー(A−1)及び熱可塑性樹脂組成物(B−1)とをそれぞれ独立に75mmφの押出機及び50mmφの押出機を用いて溶融した後、紡糸口金を有するスパンボンド不織布成形機(捕集面上の機械の流れ方向に垂直な方向の長さ:800mm)を用いて、樹脂温度とダイ温度がとも210℃、冷却風温度20℃、延伸エアー風速3750m/分の条件でスパンボンド法により溶融紡糸し、A−1からなる長繊維AとB−1からなる長繊維Bの混繊比が41:59(重量比)の混合繊維からなるウェッブを捕集面上に堆積させた。前記紡糸口金は、A−1の吐出孔とB−1の吐出孔が交互に配列されたノズルパターンを有し、A−1(繊維A)のノズル径0.75mmφ及びB−1(繊維B)のノズル径0.6mmφであり、ノズルのピッチが縦方向8mm、横方向11mmであり、ノズル数の比は繊維A用ノズル:繊維B用ノズル=1:1.45である。繊維Aの単孔吐出量は0.73g/(分・孔)、繊維Bの単孔吐出量は0.73g/(分・孔)とした。
【0088】
堆積された混合長繊維からなるウェッブはベルト上の非粘着素材でコーティングされたニップロールにて線圧10kg/cmにてプレボンドし、移動ベルトからプレボンドウェブを剥離させ、エンボスパターンは面積率18%、エンボス面積0.41mm2であり、加熱温度110℃、線圧30kg/cm条件の加熱エンボスにてウェブを一体化し、目付33g/m2の混繊スパンボンド不織布を得た。また、堆積された混合長繊維からなるウェッブの繊維径は、大きい方、即ち繊維Aの繊維径が29.2μm、小さい方、即ち、繊維Bの繊維径が21.0μmであった。
【0089】
<不織布積層体の製造>
前記混繊スパンボンド不織布の表面をコロナ処理(30W/m2)した後、コロナ処理面に、透湿性フィルムの原料として、ポリエステル系熱可塑性エラストマー〔E.I.デュポン(株)製 商品名 HYTREL G3548L 密度:1.15g/cm〕を、先端にT−ダイを備えたT−ダイフィルム成形機を用い、成形温度200℃〜240℃で溶融し、成形温度240℃で、厚さが20μmになるように、フィルム状の押出しラミした後、冷却ロールとニップロールからなる一対のロール間隙へと供給し、混繊スパンボンド不織布/透湿性フィルムからなる不織布積層体を得た。得られた不織布積層体の目付は56g/mであった。
【0090】
得られた不織布積層体を70℃に加熱した予熱ロールと延伸ロールとの間で、2.0倍の延伸倍率で機械方向に一軸延伸し、その後張力を解放し目付47g/m2の不織布積層体を得た。なお、不織布積層体の延伸加工時の歪は19%であった。
(延伸加工時歪)={(延伸前積層体目付)÷(延伸後積層体目付)―1}×100(%)
得られた不織布積層体を前記記載の方法で評価した。評価結果を表1に示す。
【0091】
[実施例2]
<混繊スパンボンド不織布の製造>
実施例1に記載の方法に準じ、長繊維A:長繊維Bの混繊比が25:75(重量比)及び目付38g/m2の混繊スパンボンド不織布を得た。
【0092】
<不織布積層体の製造>
実施例1に記載の方法に準じ、混繊スパンボンド不織布/透湿性フィルムからなる不織布積層体を得た。得られた不織布積層体の目付は61g/m2であった。
また、実施例1に記載の方法に準じ、不織布積層体を延伸した。張力を解放後、目付51g/m2の不織布積層体を得た。延伸加工時の歪は20%であった。
得られた不織布積層体を前記記載の方法で評価した。評価結果を表1に示す。
【0093】
[実施例3]
<混繊不織布の製造>
実施例1に記載の方法に準じ、長繊維A:長繊維Bの混繊比が60:40(重量比)及び目付25g/m2の混繊スパンボンド不織布を得た。
【0094】
<不織布積層体の製造>
実施例1に記載の方法に準じ、混繊スパンボンド不織布/透湿性フィルムからなる不織布積層体を得た。得られた不織布積層体の目付は48g/m2であった。
また、実施例1に記載の方法に準じ、不織布積層体を延伸した。張力を解放後、目付41g/m2の不織布積層体を得た。延伸加工時の歪は17%であった。
得られた不織布積層体を前記記載の方法で評価した。評価結果を表1に示す。
【0095】
[実施例4]
<混繊不織布の製造>
実施例1に記載の方法に準じ、長繊維A:長繊維Bの混繊比が41:59(重量比)及び目付33g/m2の混繊スパンボンド不織布を得た。
【0096】
<不織布積層体の製造>
実施例1で用いたポリエステル系熱可塑性エラストマーに代えて、ポリエステル系熱可塑性エラストマー〔E.I.デュポン(株)製 HYTREL 8206 密度 1.19g/cm〕を用いる以外は実施例1と同様に行い、混繊スパンボンド不織布/透湿性フィルムからなる不織布積層体を得た。得られた不織布積層体の目付は57g/mであった。
また、実施例1に記載の方法に準じ、不織布積層体を延伸した。張力を解放後、目付47g/m2の不織布積層体を得た。延伸加工時の歪は21%であった。
得られた不織布積層体を前記記載の方法で評価した。評価結果を表1に示す。
【0097】
[比較例1]
実施例4で用いた混繊スパンボンド不織布に代えて、B−1のみからなる目付33g/mのスパンボンド不織布〔A−1の吐出を停止〕、を用いる以外は実施例4と同様に行い、スパンボンド不織布/透湿性フィルムからなる不織布積層体を得た。得られた不織布積層体の目付は56g/mであった。
また、実施例1に記載の方法に準じ、不織布積層体を延伸した。張力を解放後、目付41g/m2の不織布積層体を得た。延伸加工時の歪は37%であった。
得られた不織布積層体を前記記載の方法で評価した。評価結果を表1に示す。
【0098】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明の不織布積層体は、伸縮性、柔軟性、透湿性、通気性、耐水性、防臭性、耐毛羽立ち性、耐カール性、強度に優れ、且つ層間接着強度が高いので、かかる特徴を活かして、衛生材用をはじめ、医療材用、衛生材用、産業資材用等に好適に用い得る。
【0100】
具体的には、衛生材用としては、使い捨ておむつあるいは生理用品等の吸収性物品があげられる。展開型使い捨ておむつあるいはパンツ型使い捨ておむつには、バックシート、ウェストバンド(延長テープ、サイドフラップ)、ファスニングテープ、立体ギャザー、レッグカフ、またパンツ型使い捨ておむつのサイドパネル等の部位に好適に用いることができる。生理用ナプキンとしてはバックシート、ウィング、横漏れ防止カフ等の部位に好適に用いることができる。これら部位に本発明品を使用することで、装着者の動きに追随し装着者の身体にフィットすることが可能となり、着用中においても快適な状態が維持されるとともに薄型、軽量化、パッケージのコンパクト化も期待が出来る。
【0101】
シップ基布として適度な伸縮性、薬剤の蒸散制御、良好な肌触りにより身体の動きへの追随性、スキンケア性によりさまざまな部位での使用が可能となりまた治癒効果につながることに期待がもてる。同様に傷手当て用基材においては、適度な伸縮性を有し、身体への密着性を高じ、防水性を有し、傷への感染防止が可能となりかつ、通気フィルムにより患部の湿度を制御可能となるため傷の回復を早める作用が期待できる。
【0102】
本発明の不織布積層体は、通常の不織布と同様に不織布であるため、優れた透湿性、伸縮性を有し、さらに良好なバリア性、細菌バリア性を有することが期待出来るため、通気性、伸縮性及び感染防止性が求められる使い捨て手術着、レスキューガウンなどの腕、肘、肩など可動間接部に用いられる基材として好適に使用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性エラストマー(A)の長繊維:10〜90重量%と熱可塑性樹脂(B)の長繊維:90〜10重量%(但し、(A)+(B)=100重量%とする)を含む混繊スパンボンド不織布の少なくとも片面に透湿性フィルムが積層されていることを特徴とする不織布積層体。
【請求項2】
熱可塑性エラストマー(A)の長繊維が、熱可塑性ポリウレタン系エラストマーの長繊維であることを特徴とする請求項1に記載の不織布積層体。
【請求項3】
熱可塑性エラストマー(A)の長繊維が、オレフィン系共重合体エラストマーの長繊維であることを特徴とする請求項1に記載の不織布積層体。
【請求項4】
オレフィン系共重合体エラストマーの長繊維が、エチレン・α−オレフィン共重合体エラストマーの長繊維またはプロピレン・α−オレフィン共重合体エラストマーの長繊維であることを特徴とする請求項3に記載の不織布積層体。
【請求項5】
熱可塑性樹脂(B)の長繊維が、スパンボンド不織布にした際の最大点伸度が50%以上である請求項1に記載の不織布積層体。
【請求項6】
熱可塑性樹脂(B)の長繊維が、プロピレン系重合体の長繊維であることを特徴とする請求項1に記載の不織布積層体。
【請求項7】
混繊スパンボンド不織布層と透湿性フィルムが直接貼り合わせてなることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の不織布積層体。
【請求項8】
透湿性フィルムが、熱可塑性エラストマー(C)からなることを特徴とする請求項1に記載の不織布積層体。
【請求項9】
熱可塑性エラストマー(C)が、ポリエステル系エラストマーであることを特徴とする請求項8に記載の不織布積層体。
【請求項10】
熱可塑性エラストマー(C)が、ポリアミド系エラストマーであることを特徴とする請求項8に記載の不織布積層体。
【請求項11】
熱可塑性エラストマー(C)が、熱可塑性ポリウレタン系エラストマーであることを特徴とする請求項8に記載の不織布積層体。

【公開番号】特開2008−213284(P2008−213284A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−53490(P2007−53490)
【出願日】平成19年3月2日(2007.3.2)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】