説明

不飽和酸もしくはそのエステルおよびそのための触媒

【課題】エチレン性不飽和酸もしくはそのエステル、特にメタクリル酸もしくはメタクリル酸アルキルの製造、ならびに特にそのための新規な触媒に関する。
【解決手段】アルカン酸もしくはエステル、特にプロピオン酸メチルのホルムアルデヒドとの接触反応による、エチレン性不飽和酸もしくはエステルの製造であり、そこで触媒は、アルカリ金属、特にセシウム、1〜10wt%(金属として表わされて)を含有する多孔質の高表面積シリカを含み、そしてホウ素、マグネシウム、アルミニウム、ジルコニウムおよびハフニウムから選ばれる、少なくとも1つの調節剤元素の化合物は、シリカ100モルあたり合計0.25〜2グラム原子の主な調節剤元素を触媒が含有するような量で、該シリカの細孔中に分散されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレン性不飽和酸もしくはそのエステル、特にメタクリル酸もしくはメタクリル酸アルキルの製造、ならびに特にそのための新規な触媒に関する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0002】
このような酸もしくはエステルは、式R’−CH−COOR(RおよびR’は、それぞれ独立して、水素もしくはアルキル基、特にたとえば1〜4の炭素原子を含む低級アルキル基である)のアルカン酸(もしくはエステル)をホルムアルデヒドと反応させることにより製造され得る。このようにメタクリル酸もしくはそのアルキルエステル、特にメタクリル酸メチルは、プロピオン酸、もしくはその対応するアルキルエステル、たとえばプロピオン酸メチルのホルムアルデヒドとの接触反応により、次の反応順序にしたがって製造されうる:
CH−CH−COOR+HCHO→CH−CH(CHOH)−COOR
CH−CH(CHOH)−COOR→CH−C(:CH)−COOR+H
反応は、高温で、通常250〜400℃の範囲で、塩基触媒を用いて通常行なわれる。所望の生成物がエステルであると、エステルの加水分解により対応する酸が生成するのを最小とするために、関連するアルコールの存在下で反応が行われるのが好適である。さらに、便宜上、ホルマリンの形でホルムアルデヒドを導入するのが望ましいことが多い。このゆえに、メタクリル酸メチルの製造のために、触媒に供給された反応混合物は、通常、プロピオン酸メチル、メタノール、ホルムアルデヒドおよび水からなる。
【0003】
用いられた適切な触媒は、アルカリ金属を添加された、特にセシウムを添加された(cecium−doped)シリカ触媒を含む。あるセシウムを添加されたシリカ触媒、すなわちシリカゲルにもとづくもの、は、比較的短時間で活性および選択性を減少するので、受け入れられ難い耐用寿命を有する。活性の減少は2つのファクタによるものとされる。
【0004】
第1に、使用されるアルカリ金属化合物は、使用される反応条件下でかなりの揮発性を示し、したがってアルカリ金属の減少によって活性が減少しうる。米国特許第4,990,662号明細書に記載されるように、これは、プロセスガス流に、適したアルカリ金属化合物を混合することにより克服され得、その結果、アルカリ金属化合物は操業の間、触媒上に堆積し揮発によって減少されたアルカリ金属化合物を補う。
【0005】
第2に、米国特許第4,942,258号明細書から推論されるように、アルカリ金属が活性であるためには、その支持体は、ある最小の表面積を有するべきであると考えられる。必要な面積は触媒中のアルカリ金属の量に依存する:このように、アルカリ金属の単位あたりに要求される最小表面積があることが推論されうる。操業の間、シリカ支持体は表面積を減少する傾向がある。このように、反応条件下で、反応により生成される水によるのではなく、反応混合物に存在する水から、たとえば、ホルマリンのようなホルムアルデヒドの導入に由来する水により、シリカの加水分解の危険がある。時間がたつにつれてシリカゲル触媒の性能が低下するのは、時間とともに触媒の表面積を減少させるそのような加水分解に大いに由来することを我々は見出した。
【0006】
通常、その触媒はアルカリ金属1〜10wt%を含む。好ましくは少なくとも2wt%のアルカリ金属が使用されると、揮発によるアルカリ金属の減少が最小になりうるのに十分に低い温度で、その方法は操作される。低温での操作は、シリカの細孔をふさぎ、活性を減少させやすいコークスの堆積速度を減少させる、付加的な利益を有する。
【0007】
アルカリ金属に加えて、ホウ素、アルミニウム、マグネシウム、ジルコニウムもしくはハフニウムのような元素の化合物のような、ある調節剤(modifiers)を触媒に混合することは表面積の減少を遅らせることを我々は見出した。本発明の触媒において、調節剤は単にシリカ粒子と混合された粒子の形にあるよりも、むしろシリカ中に密接に分散されていることが重要である。その金属化合物は、どんな形で添加されようとも、触媒の乾燥、仮焼もしくは操作の前もしくは間に、酸化物もしくは(特にシリカ表面で)水酸化物に乾燥し、その形でシリカ構造の表面で、もしくはその大部分で互いに作用し合うであろう。さらに、調節剤の量は、ある範囲内にあることが重要である:もし調節剤が少なすぎると、有意の利点が生じないし、一方もし多すぎる調節剤が使用されると、触媒の選択率は逆に影響される。通常、要求される調節剤の量はシリカ100モルあたり調節剤元素0.25〜2g原の範囲にある。
【背景技術】
【0008】
前述の米国特許第4,990,662号明細書は、シリカは、微量不純物として、アルミニウム、ジルコニウム、チタンおよび鉄化合物のような物質を含みうることと示している。しかし、この文献は、このような不純物が、酸抽出で除去されて100ppm未満の微量不純物含量となれば、改良された触媒が得られることを示す。
【0009】
ヨーロッパ特許265964はアンチモンならびにアルカリ金属を含有するシリカ担持触媒の使用を開示する。その記述は、アルミナ含量が、望ましくは500ppm未満であることを示す。アンチモンを含有しない比較例は950ppmのアルミナを含有する組成物の使用を開示する。これは、シリカ100モルあたりアルミニウム0.11グラム原子に相当する。
【0010】
米国特許第3,933,888号明細書は、高熱シリカ(pyrogenic silica)をセシウム化合物のような塩基ととも仮焼することにより得られる触媒を用いて、上記反応によりメタクリル酸メチルを製造することを開示し、そして高熱シリカは高熱ジルコニア1〜10wt%と混合されうることを述べる。この文献も、アルカリ金属としてのセシウム、および少量のホウ砂を含む組成物から得られる触媒の使用を開示する。しかしホウ素の量はシリカ100モルあたり約0.04グラム原子であり、したがって少なすぎて有意の安定した効果を有さない。ドイツ特許第2,349,054号は、名目上米国特許第3,933,888号に対応するが、シリカと混合してジルコニアもしくはハフニアを含有する触媒を例証する:例示された結果は、ジルコニアもしくはハフニアを含有する触媒は、使用されるホルムアルデヒドの量に基づいて比較的低い収率を与えたことを述べる。
【0011】
Yooは、「Applied Catalysis」、102(1993)215〜232頁において、種々の調節剤を添加し、シリカ上に担持されたセシウム触媒を開示する。ビスマスは満足すべき添加剤であるようにみえるのに、ランタン、鉛もしくはリチウムを添加された触媒は短期間の改良を与えた。しかし、高水準のランタンは低選択率の生成物を与えたのに、低水準のランタンは、ビスマスを添加された触媒よりもずっと速く焼結される触媒を与えた。有効な触媒は、すべて、かなりの揮発性を有する非常に有毒な重金属であった:これらの考慮は触媒成分としてのそれらの使用を除外する。
【0012】
前述の米国特許第3,933,888号は、発熱性シリカを使用するのが重要であると述べ、他の種類のシリカは適さないことを示した。適していると述べられた高熱シリカは、全表面積150〜300m/g、全細孔容積3〜15cm/gおよび特定の細孔径分布(すなわち細孔含量の少なくとも50%は10000Å(1000nm)を超える細孔の形で、そして30%未満は1000Å(100nm)未満の細孔の形である)を有している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
対照的に、本発明においては、使用されうるシリカは、シリカゲル(gel silicas)、沈降シリカゲルおよび凝集高熱シリカのような、多孔質の高表面積シリカであるのが好適である。
【0014】
したがって、本発明は、アルカリ金属1〜10wt%(金属として表わされて)を含有する多孔質の高表面積シリカを含む触媒を提供するものであり、該触媒はホウ素、マグネシウム、アルミニウム、ジルコニウムおよびハフニウムから選ばれる、少なくとも1つの調節剤元素の化合物を、触媒がシリカ100モルあたり該調節剤元素を合計0.25〜2グラム原子含有するような量で、含み、該調節剤元素化合物は該シリカの細孔に分散されている。
【0015】
本発明で使用されるシリカは、好ましくは少なくとも50m/gの表面積を有する。表面積は周知の方法で測定されることができ、好適な方法は、この分野でよく知られている標準BET窒素吸着法である。好ましくは、シリカの表面積の大部分は径5〜150nmの細孔にある。好ましくはシリカの細孔容積の大部分は径5〜150nmの細孔により与えられる。その細孔容積もしくは表面積の「大部分」(“the bulk”)は、少なくとも50%の細孔容積もしくは表面積がこの径の細孔により与えられることを意味し、もっと好適には少なくとも70%である。
【0016】
好ましいアルカリ金属は、カリウム、ルビジウムもしくは特にセシウムである。アルカリ金属含量は、3〜8wt%(金属として表わされて)が好適である。
適切な高熱シリカも使用されうるが、シリカゲルが好適である。
好ましい調節剤元素はジルコニウム、アルミニウムもしくはホウ素である。
【0017】
本発明は、さらに、式R’−CH−COOR(RおよびR’は、それぞれ独立して、水素もしくはアルキル基、特にたとえば1〜4の炭素原子を含む低級アルキル基である)のアルカン酸もしくはアルカン酸エステルをホルムアルデヒドと前記触媒の存在下に反応させることにより、エチレン性不飽和酸もしくはそのエステル、特にメタクリル酸もしくはメタクリル酸アルキルを製造する方法を提供する。
【0018】
その方法は、そのアルカン酸もしくはエステルがプロピオン酸もしくはプロピオン酸メチルである場合の、メタクリル酸もしくはメタクリル酸メチルの製造に特に適する。
【0019】
調節剤元素の混合物も使用され得、たとえばアルミニウムおよびジルコニウム、またはマグネシウムおよびジルコニウムである。触媒における調節剤元素の合計量は、好ましくはシリカ100モルあたり0.25〜1.5グラム原子である。少なすぎる調節剤元素は、表面積の減少により活性を低下させるので、シリカ担体の不十分な安定化をもたらすのが通常であり、一方調節剤元素が多すぎると触媒の選択率が減少してしまうことが多い。
【0020】
触媒は、触媒の要求物理的寸法を有するシリカ粒子を、調節剤元素の適切な化合物、たとえば塩、の適切な溶媒溶液に含浸させ、ついで乾燥することにより製造されうる。含浸および乾燥処理は、所望の添加剤充填を得るために一度より多く繰り返されうる。シリカの活性部位に対して調節剤およびアルカリ金属の間の競合がみられるようなので、調節剤は、アルカリ金属の前に組み入れられるのが好ましい。もし粒子が含浸の間に十分に乾燥されると、水性溶液での多くの含浸は触媒粒子の強度を低下させやすいことを我々は見出したので、これらの場合には、連続的な含浸の間でいくらかの水分を触媒に保持させるのが好適である。非水性溶液を用いる場合には、適切な非水性溶液、たとえば調節剤金属のアルコキシドもしくは酢酸塩のエタノール溶液に1度以上含浸することにより、最初に調節剤と含浸し、ついで乾燥するのが好適である。次に、アルカリ金属は、適切なアルカリ金属化合物の溶液を用いて同様な処理で組み入れられる。水性溶液が使用されるときには、調節剤およびセシウムの所望の組み入れが一段階で実施されるのに十分な濃度の、たとえば調節剤金属およびセシウムの、硝酸塩もしくは酢酸塩の水性溶液を用いて含浸を実施し、ついで乾燥するのが好適である。
【0021】
調節剤元素は、可溶性塩としてシリカ粒子に導入されうるが、その調節剤は、含浸、乾燥、仮焼もしくは触媒の接触使用の間にイオン交換により生成される酸化物および/または水酸化物(特にシリカの表面で)の形でシリカ中に存在すると考える。
【0022】
あるいは、調節剤は、調節剤元素の化合物をシリカと共ゲル化もしくは共沈させることにより、または調節剤元素ハロゲン化物とハロゲン化ケイ素の混合物の加水分解により、組成物に組み入られうる。シリカおよびジルコニアの混合酸化物をゾルゲル法により製造する方法は、Bosmanらにより、「J.Catalysis」Vol.148(1994)660頁に、そしてMonrosらにより「J.Material Science」 Vol.28(1993)5832頁に記載されている。テトラエチルオルソシリケート(TEOS)からのゲル化の間に、シリカ球にホウ素を添加することは、JubbとBrowenにより「J.Material Science」Vol.22(1987)1963−1970頁に記載されている。多孔質シリカの製法は、Iler RKの「The Chemistry of Silica」(Wiley,New York,1975)、およびBrinker CJ&Scherer GWの「Sol−Gel Science」(Academic Press,1990)に記載されている。このように適切なシリカの製法は、この分野で公知である。
【0023】
そして、触媒は使用する前に、たとえば空気中で、300〜600℃、好ましくは400〜500℃の温度で仮焼されるのが好適であるが、これは必ずしも必要ではない。
【0024】
触媒は、通常、固定床の形で用いられるので、組成物は、成形された単位、たとえば、球、粒子、ペレット、凝集物、もしくは押出物、に形成され、通常1〜10mmの最大および最小寸法を有する。含浸法が使用される場合、シリかは含浸の前に成形されうる。あるいは、組成物は、触媒製造の適切な段階で、いつでもそのように成形されうる。さらに、触媒は、他の形、たとえば粉末もしくは小ビードでも有効であり、この形で使用されうる。
【0025】
アルカン酸もしくはそのエステルおよびホルムアルデヒドが、ホルムアルデヒドに対する酸もしくはエステルのモル比20:1〜1:20、250〜400℃の温度、滞留時間1〜100秒および圧力1〜10barで、触媒を含む反応器に、独立に、攪拌の前後に、供給されうる。水は、触媒の劣化およびエステルの酸への加水分解の両方によるその否定的な効果のために、好ましくは最小にされるが、反応混合物の60wt%までは存在しうる。ホルムアルデヒドはいかなる適切な源からも添加されうる。しかし、これらはホルムアルデヒド水溶液に限定されず、ホルムアルデヒド乾燥処理、トリオキサン、トリメチレングリコールのジエーテル、およびパラホルムアルデヒド由来の無水ホルムアルデヒドを含む。遊離していない、もしくは弱く結合されたホルムアルデヒドの形が用いられるときには、ホルムアルデヒドは、合成反応器内でその場で、もしくは合成反応器に先立つ別の反応器で形成される。このように、たとえば、トリオキサンは350℃を超える温度で不活性材料により、もしくは空の管内で、または100℃を超えて酸触媒により、分解されうる。第2の例として、メチラ-ルは、水との反応により、分解してホルムアルデヒトを生成し、または水なしに分解してジメチルエーテルおよびホルムアルデヒドを生成する。これは反応器内または、不均一酸触媒のような触媒を含む別の反応器内、のいずれでも得られる。この場合、酸触媒による分解を避けるために、アルカン酸もしくはそのエステルを合成反応器と別に供給するのが有利である。
【0026】
所望の生成物が、アルカン酸エステルをホルムアルデヒドと反応させることにより得られる不飽和エステルであるときにはエステルに対応するアルコールも、他の成分とともに、もしくは別々に反応器に供給されうる。他の効果のうちで、アルコールは反応器に残す酸の量を減少させる。アルコールが反応器の入口で添加されることは必要ではなく、たとえば、中間もしくは後部近くで添加されてもよく、その結果、触媒活性を低下させることなく、プロピオン酸、メタクリル酸のその対応するエステルへの転換を実施しうる。
【0027】
他の添加物は、反応の強さを弱めるため、もしくは反応の結果として触媒からの熱放出を制御するために不活性希釈剤として添加されうる。反応調節剤もたとえば触媒上に堆積する炭素の速度を変えるために添加されうる。このようにたとえば酸素のような酸化剤がコークス生成速度を低下させるために低水準で添加されうる。さらに、添加物がたとえば共沸混合物の組成を変えることにより分離を助けるために含まれうる。後者の効果を得るような成分は、反応器の後に有利に添加されうるが、ある場合には、反応器にその添加物を含有させるのが有利でありうる。
【0028】
揮発によるアルカリ金属の減少を最小とするために、適切な形のアルカリ金属、たとえば揮発性塩、が連続的にもしくは断続的に反応器に供給されうる。
【実施例】
【0029】
本発明は、次の実施例により例示される。
実施例1〜4
これらの実施例において、使用されるシリカは径2〜4mmの球状シリカゲルであり、純度99%超、全表面積約300〜350m/g、そして76%の細孔は径7〜23mmの細孔により与えられる細孔容積1.04cm/g、を有する。
【0030】
一連の触媒は、シリカを硝酸ジルコニウムの水溶液で含浸し、排水し、回転蒸発器中で、ついで120℃、2時間空気炉中で、乾燥することにより、異なる調節剤を用いて製造された。含浸および乾燥工程は、もし必要ならば、所望の調節剤濃度を得られるまで繰り返された。ついで、セシウムは、炭酸セシウムの水性溶液を用いて同様の方法で組み入れられ、約4wt%のセシウム含量(金属として表現されて)を得た。ついで触媒は、空気中で450℃で3時間仮焼された。
【0031】
時間がたつにつれて加水分解による表面積減少が加速化試験により測定され、約40vol%の水を含む窒素が、350℃で触媒1gを3l/hの速度で通過した。周期的に、試料の表面積が、乾燥窒素でパージした後に窒素吸着法により測定された。結果は次の表に示される。
【0032】
【表1】

【0033】
触媒試料の触媒性能は、1mmの大きさの粒子に破砕した約3gの触媒を充填した大気圧ミクロ反応器で測定された。使用する前に、触媒は30分間、100l/minの窒素気流中で300℃で乾燥された。触媒は300℃で作用しはじめ、プロピオン酸メチル、メタノールおよびホルマリンとともに供給された。ホルマリンはホルムアルデヒド:水:メタノールを0.35:0.50:0.15の質量比で有し、プロピオン酸メチル、メタノールおよびホルマリンの比は、プロピオン酸メチル、メタノールおよびホルムアルデヒド全体のモル比が1:1.45:0.187であった。反応物は、接触時間が最初に約5秒であるような速度で触媒を通過した。供給が安定した後に(約30分)、触媒温度は350℃上昇し、一夜安定に放置された。約16時間の運転の後に、触媒は供給ガス流速を変えることにより活性および選択率を試験された。結果は次の表に示される。
【0034】
【表2】

【0035】
ジルコニアは、比較的大量のジルコニアが使用されたときを除いて、表面積の減少の阻止における著しい向上および比較的長い滞留時間での選択率における著しい向上を与えたことがみられる。選択率への影響も、「重い」(“heavy”)成分、すなわち望まれない副生物の産生を示す次の表により示される。
【0036】
【表3】

【0037】
実施例5〜7
触媒は、硝酸ジルコニウムの代わりに硝酸アルミニウムを用いるほかは実施例1〜4と同様に製造され試験された。
【0038】
【表4】

【0039】
【表5】

【0040】
これはアルミニウムがシリカの安定性を増加させる調節剤として有効であるが、過剰な量の使用は活性および選択率に逆の効果をもたらすことを示す。
【0041】
実施例8
硝酸ジルコニウムに代えて炭酸セシウム溶液に溶解された酸化ホウ素を用いる以外は実施例2が繰りかえされ、シリカ100モルあたり0.8グラム原子のホウ素を含む触媒が得られた。表面積は6日の試験後に172m/gであり、その後ゆっくりと低下し、22日の試験後に157m/gであった。3.8秒の接触時間での活性テストにおいて、収率は7%であり、選択率は95%であった。6.2秒の接触時間で、収率は9%、および選択率は95%であった。
【0042】
実施例9
硝酸ジルコニウムの代わりに、硝酸アルミニウム、およびオキシ硝酸ハフニウムの混合物を用いるほかは実施例2が繰りかえされ、シリカ100モルあたり0.2グラム原子のアルミニウム原子および0.3グラム原子のハフニウム原子を有する触媒が得られた。接触時間3.0秒での活性試験において、収率は7%、および選択率は94%であった。
【0043】
実施例10〜13(比較)
担体としてシリカゲルの代わりに1mm粒径のジルコニアを用いて、触媒が実施例1の方法により製造された。触媒は2〜8wt%の名目的セシウム含量で製造された。その結果および触媒の表面積は次の表に示される。
【0044】
【表6】

【0045】
非常に低い収率および選択率は、セシウム添加ジルコニアは、適切な触媒ではないことを示す。
【0046】
実施例14〜16
一連の触媒が、硝酸ジルコニウムおよび硝酸アルミニウムの混合物を用いる以外は実施例2の方法により製造された。加速加水分解および活性試験の結果は次の表に示される。
【0047】
【表7】

【0048】
【表8】

【0049】
実施例17〜18
ジルコニウムが凝集高温シリカに表面積安定効果を有することを示すために、径3.5mm、長さ4mmのペレットが純度99%超、全表面積約200m/gおよび細孔容積0.8cm/gを有する高温シリカを、炭酸セシウムおよび硝酸ジルコニウムに含浸させてセシウム約4wt%を含有する触媒を得ることにより得られた。表面積試験が実施例1〜4のように実施された。
【0050】
【表9】

【0051】
実施例19〜23
実施例18が、全表面積やく300m/gおよび細孔容積0.81cm/gの高温シリカを用いて繰りかえされ、種々の量のジルコニウム、およびセシウム約4wt%を含有する触媒を生成した。表面積および活性試験が実施例1〜4のように実施された。
【0052】
【表10】

【0053】
【表11】

【0054】
実施例24〜26
実施例20が、異なる量のセシウムを使用する以外は繰りかえされ、シリカ100モルあたりジルコニウム0.7グラム原子を含有する触媒が得られた。触媒の活性が実施例1〜4のように評価された。
【0055】
【表12】

【0056】
実施例27〜33
触媒製造の異なる方法を用い、セシウム4wt%および異なる水準のジルコニウムを有することを除いて、実施例1〜4と同一の担体にもとづいて触媒が製造された。担体は破砕され、0.5〜2.0mmの部分にふるい分けされた。硝酸アルミニウム、硝酸ジルコニウムおよび硝酸セシウムは別々に溶解された。溶液は混合され、担体の細孔容積の約1.5倍に等しい量が攪拌下に担体に添加された。これは連続的な攪拌下に熱いプレート上で乾燥された。ついで担体は空気中で100℃、3時間乾燥された。
【0057】
時間の経過に伴う加水分解による表面積減少は、加速試験により測定された。そこでは窒素は70℃で水を通して吹き込まれ、それにより出口で約22vol%の水を含んでおり、ついで350℃で10gの触媒試料を60l/hの速度で通過した。試験のはじめと終わりに、試料の表面積が、Micromeritics ASAP 2405窒素ポロシメータにより窒素吸着法で測定された。結果は下の表に示される。
【0058】
【表13】

【0059】
触媒の触媒性能は、触媒約1gを充填した加圧ミクロ反応器で試験された。反応物含有流が、プロピオン酸メチル:ホルムアルデヒド:メタノール:水が1:1:0.19:0.048モル組成の混合物25vol%および窒素75vol%の流れで、有機物および水の全分圧が1bar絶対圧になるような4bar絶対圧で導入された。接触時間は、可能であれば収率10%が得られるように調節された。性能は18時間の流通の後に測定された。結果は下の表に示され、水熱焼結(hydrothermal sintering)に対する触媒安定性はジルコニウム含量とともに連続的に増加することを示す。触媒性能は、約0.5グラム原子ジルコニウム/100グラムモルシリカまでは、かなり一貫しているが、その後は低下する。これらの結果は、0.35および0.5グラム原子シルコニウム/100グラムモルシリカでのこれらの2つの効果を組合わせる最適の性能を示す。実施例2〜4との比較は、最適水準は触媒方法に依存することを示す。
【0060】
【表14】

【0061】
実施例34〜38
触媒は、結晶性ジルコニア粉末(表面積38m/g)について製造され、それに硝酸セシウムが実施例28に記載された方法により添加された。触媒は実施例27の方法を用いて活性を試験された。結果は下の表に示され、ジルコニア単独はMMA合成の適切な支持体でないことを示す。セシウム2wt%での最良の結果は保持されず、24時間の運転後に選択率60%に低下した。望まれない反応副生物であるジエチルケトン(DEK)の水準も、セシウムの最も好適な充填を除いて非常に高い。DEKは、そのような水準で特に問題である。なぜなら、それはMMAに非常に近い沸点を有するので、蒸留で除去され得ないからである。
【0062】
【表15】

【0063】
実施例39〜43(比較)
触媒は、0.6〜1.0mmメッシュの大きさに粉砕された、実施例1〜4で用いた精製シリカを、実施例34〜38で用いたジルコニア粉末と種々の割合で物理的に混合することにより製造された。混合担体は、ついで実施例27〜33に記載された方法を用いて硝酸セシウムに含浸され、4wt%セシウムの、シリカ+ジルコニアを得た。実施例27〜33の方法を用いた、触媒試験および水熱焼結に対する安定性の結果は下の表に示される。
【0064】
【表16】

【0065】
その結果は、ジルコニアとシリカの物理的混合物の形でのジルコニアの存在は、水にさらされた後の表面積の減少に、ある有利な効果をもたらすこと、ならびにこの効果は混合物中に存在するジルコニアの量に依存するようには見えないこと、を示す。しかし、この形のジルコニウムは、ジルコニウムが、実施例29〜31により示されるように溶液からの分散によりシリカに組み入れられるときのようには有効ではない。加えて、DEKの産生は、次の表に示されるように、シリカとジルコニアの混合物から生成される触媒を用いるほうがかなり大きかった。
【0066】
【表17】

【0067】
実施例44〜48
触媒は、硝酸ジルコニウムの代わりに酸化ホウ素が用いられることを除いて、実施例28で使用された方法により製造された。触媒は、先の実施例に記載された方法を用いた、触媒性能および水熱焼結に対する安定性を試験され、その結果が下に示される。焼結へのホウ素の有利な効果が、約2グラム原子超/シリカ100g原子で始まる触媒性能への逆の効果とともに、観察される。
【0068】
【表18】

【0069】
実施例49
0.39グラム原子のジルコニウムの代わりに0.39グラム原子のハフニウムを用い、そして硝酸ジルコニウムの代わりにオキシ硝酸ハフニウムが用いられるのを除いて、実施例28の方法で、触媒が製造された。その触媒は、実施例27〜33で用いられた方法により触媒活性に関し水熱焼結に対する安定性が試験された。表面積は、試験後に309m/gから125m/gに低下した。1.9秒の接触時間で、メタクリル酸エステルとメタクリル酸を合わせた収率は10.33%であり、選択率は92.5%であった。
【0070】
実施例50
セシウムおよびジルコニウムを含有する触媒が、純度99%超、表面績127m/gを有する径2〜4mmが球の形の高純度シリカゲルにもとづいて実施例28に記載された方法により製造された。
【0071】
実施例51〜54
セシウムおよびジルコニウムを含有する触媒が、下記の表に示される表面積を有する粉末の形の高純度シリカゲルにもとづき製造された。
【0072】
実施例55〜58
セシウムおよびジルコニウムを含有する触媒が、下記の表に示される組成を有する高温シリカ粉末に基づいて製造された。
【0073】
【表19】

【0074】
ジルコニウムなしの、およびありの試料の比較は、表面積の保持の改良は、試験されたすべての担体で得られることを示す。
【0075】
実施例59〜63
触媒は、実施例1〜4と同一の担体上に、硝酸塩の代わりに酢酸塩を用いて製造された。担体は粉砕され、0.5〜2.0mmの部分にふるい分けされた。水酸化アルミニウムおよび水酸化セシウムは、5%および10%水性酢酸中に別々に溶解された。酢酸ジルコニウムの15%酢酸溶液(Aldrichから)が受け入れられたまま使用された。その溶液は混合され、担体の細孔の約1.5倍に等しい量が、攪拌下に担体に添加された。これは、110℃で2時間乾燥される前に連続的な攪拌下に加熱プレート上で乾燥された。触媒組成は下の表に示される。
【0076】
【表20】

【0077】
触媒は実施例1〜4に記載される方法により初期性能および水熱安定性が試験された。
【0078】
【表21】

【0079】
【表22】

【0080】
このように、これらの触媒は、実施例1に比較して満足すべき触媒性能および、シリカの焼結に対する向上した安定を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ金属1〜10wt%(金属として表わされて)を含有する多孔質の高表面積シリカを含む触媒であり、該触媒は、ホウ素、マグネシウム、アルミニウム、ジルコニウムおよびハフニウムから選ばれる少なくとも1つの調節剤元素の化合物を、触媒がシリカ100モルあたり該調節剤元素を合計0.25〜2グラム原子含有するような量で、含み、該調節剤元素化合物は該シリカの細孔に分散されている、ことを含む触媒。
【請求項2】
シリカの表面積が少なくとも50m/gである請求項1記載の触媒。
【請求項3】
細孔容積の少なくとも50%が、径が5〜150nmの細孔により与えられる請求項1記載の触媒。
【請求項4】
シリカの全表面積の少なくとも50%が径が5〜150nmの細孔に存在する請求項1記載の触媒。
【請求項5】
アルカリ金属がセシウムである請求項1記載の触媒。
【請求項6】
少なくとも1つの調節剤元素の化合物が少なくとも1つの該調節剤元素の少なくとも1つの酸化物および/または水酸化物の形で存在する請求項1〜5のいずれかに記載の触媒。
【請求項7】
調節剤元素がジルコニウムおよび/またはアルミニウムおよび/またはボロンを含む請求項1〜6記載のいずれかに記載の触媒。
【請求項8】
シリカ100モルあたり該調節剤元素を合計0.25〜2グラム原子含有する請求項1〜7のいずれかに記載の触媒。
【請求項9】
アルカリ金属1〜10wt%(金属として表わされて)を含有する多孔質の高表面積シリカの粒子を、ホウ素、マグネシウム、アルミニウム、ジルコニウムおよび/またはハフニウムから選ばれる調節剤元素の化合物の溶液とともに混合し、その結果、該化合物は、該粒子がシリカ100モルあたり該調節剤元素を合計0.25〜2グラム原子含有するような量で、該粒子に含浸され、ついで該粒子を乾燥する、ことを含む触媒の製造方法。
【請求項10】
多孔質の高表面積シリカの粒子を、ホウ素、マグネシウム、アルミニウム、ジルコニウムおよび/またはハフニウムから選ばれる調節剤元素の化合物の溶液とともに混合し、その結果該化合物は、該粒子がシリカ100モルあたり該調節剤元素を合計0.25〜2グラム原子含有するような量で、該粒子に含浸され;該粒子を、粒子がアルカリ金属1〜10wt%(金属として表わされて)を含有するようにアルカリ金属の化合物の溶液に含浸させ、該含浸は調節剤元素化合物への含浸の前、間もしくは後に実施され;そして次に該粒子を乾燥する、ことを含む触媒の製造方法。
【請求項11】
調節剤元素の化合物をシリカと共ゲル化もしくは共沈させること、または調節剤元素ハロゲン化物とハロゲン化ケイ素の混合物を加水分解することを含む請求項1記載の触媒の製造方法。
【請求項12】
式R’−CH−COOR(RおよびR’は、それぞれ独立して水素もしくはアルキル基である)のアルカン酸もしくはアルカン酸エステルを、請求項1〜8のいずれかに記載の触媒の存在下に、ホルムアルデヒドと反応させることにより、エチレン性不飽和酸もしくはそのエステルを製造する方法。
【請求項13】
アルカン酸エステルがプロピオン酸メチルであり、メタノールの存在下にホルムアルデヒドと反応される、請求項12記載の方法。
【請求項14】
ホルムアルデヒドがホルマリンの形で供給される請求項12もしくは13記載の方法。
【請求項15】
プロピオン酸メチルを、セシウム1〜10wt%(金属として表わされて)を含有する多孔質の高表面積シリカを含有する触媒の存在下に、ホルマリンおよびメタノールと反応させることを含み、触媒は、ジルコニウム化合物を触媒がシリカ100モルあたりジルコニウム元素を合計0.25〜2グラム原子含有するような量で、含み、該ジルコニウム化合物は該シリカの細孔に分散されている、ことを含むメタクリル酸メチルの製造方法。

【公開番号】特開2012−166200(P2012−166200A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−108694(P2012−108694)
【出願日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【分割の表示】特願2000−543233(P2000−543233)の分割
【原出願日】平成11年4月1日(1999.4.1)
【出願人】(500460209)ルーサイト インターナショナル ユーケー リミテッド (30)
【Fターム(参考)】