説明

両極性発光電界効果トランジスタ

【課題】両極性発光電界効果トランジスタを提供する。
【解決手段】トランジスタのチャネル長を規定する長さLによって分離される電子注入電極及び正孔注入電極と接触する有機半導体層を備え、発光元の有機半導体層の領域は、電子注入電極及び正孔注入電極の両方からL/10より離れている両極性発光トランジスタ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両極性伝導およびトランジスタのチャネル内に良好に規定された区域からの発光が可能な新規のトランジスタ、およびこれを作成するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電界効果トランジスタ(FETs)は、ソース端子、ドレイン端子、およびゲート端子を備えた3端子装置である。半導体層(「チャネル」)は、ソースとドレイン端子とを橋渡しするが、それ自体は、ゲート誘電体と呼ばれる絶縁層によってゲート端子とは間隔が空けられている。有機トランジスタでは、半導体層は、有機半導体材料から製造される。特に、ポリマートランジスタでは、有機半導体層は、半導体ポリマー、典型的にはn−共役有機ポリマーから製造される。この層は、前駆体を経てまたは直接的に溶液処理によって装置内に堆積され得る。
【0003】
電圧は、ソース端子およびドレイン端子間に印加される。さらに、電界効果トランジスタでは、電圧がゲート端子に印加される。この電圧が、ゲート誘電体のすぐ隣に存在する半導体層の電流−電圧特性を変える電界を、電荷キャリアの蓄積または空乏をそこに発生させることで生成する。これによって今度は、チャネル抵抗、およびソースからドレイン端子へと電荷が流れる速度(すなわち、ソース−ドレイン電流)が調整されて所定のソース−ドレイン電圧とされる。
【0004】
原則として、有機電界効果トランジスタ(FETs)は、2つのモードで動作できる。すなわち、n−チャネル装置(この場合、チャネルに蓄積している電荷が電子である)として、またはp−チャネル装置(この場合、チャネルに蓄積している電荷が正孔である)のいずれかである。
【0005】
Advanced Functional Materials 13(2003年)の199から204ページには、ゲート絶縁体材料の選択によってもたらされるp−チャネル有機電界効果トランジスタの動作に影響する新しい効果が提示されている。この文献は、n−チャネル伝導には関連していない。この文献は、さまざまな誘電体定数および極性を持つ多数のゲート絶縁体を調べている。低k絶縁体(low-k insulator)によってp−チャネル装置性能が改善されることが報告されている。
【0006】
具体的には、低k絶縁体を使った場合、正孔移動度が改善される一貫した傾向が現れたと記載されている。試験したPTAA誘導体では、6×10−3cm−1−1のFETの正孔移動度が可能と述べられている。観察された効果は、半導体/ゲート誘電体界面におけるエネルギーの不規則性が変化することによるものと仮定される。この点に関して、界面の極性が低いと有利であることが示されていると述べられている。さらに、このことによって、より低いゲート電位でトラップが充填され、その結果、閾値電圧を低くできるとも述べられている。
【0007】
調べられた絶縁体材料は、二酸化シリコン(silicon dioxide)、ポリ(ビニルフェノール)(poly(vinyl phenol))(PVP)、ポリ(メチルメタクリレート)(poly(methyl methacrylate))(PMMA)、ポリ(ビニルアルコール)(poly(vinyl alcohol))(PVA)、ポリ(ペルフルオロエチレン−コ−ブテニルビニルエーテル)(perfluoroethlene-co-butenyl vinyl ether)、シアノプルラン(cyanopullulane)、ポリイソブチレン(polyisobutylene)、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)(poly(4-methyl-1-pentene))、およびポリプロピレン(polypropylene)のコポリマー、すなわちポリ[プロピレン−コ−(1−ブテン)](poly[propylene-co-(1-butene)])にまで及ぶ。
【0008】
n−およびp−チャネル有機FETの両方を実現できると特に有利である。このことは、無機Si FETの分野で知られているような、待機消費電力が非常に低い相補型回路を製造する可能性を開拓する(非特許文献1参照)。相補型回路を作り出す1つの特に単純な方法は、(適切なゲート電圧の極性を単に選択することによって)同じ装置でn−およびp−チャネル伝導の両方を実現することである。かかる装置は、両極性であると言われており、無機アモルファスSiを使って実証されている(非特許文献2参照)。
【0009】
しかしながら、今日まで、n−チャネル有機FETは、ペリレンテトラカルボキシレートジイミド/二無水物(perylenetetracarboxylate diimide/dianhydride)、ナフタレンテトラカルボキシレートジイミド/二無水物(naphthalenetetracarboxylate diimide/dianhydride)、または、フタロシアニン単位(phthalocyanine units)を含むもの、または、バンドギャップが非常に小さいもの(1.6eV以下)と言った、バンドギャップが小さいことでまさに非常に大きな電子親和力を持っている、非常に高い電子親和性(EA)半導体という特別な分類に限られるということが一般に受け入れられてきた。
【0010】
これまで使われてきた小分子n−チャネル半導体材料の具体的な例のいくつかとしては、次のものがある。
【0011】
−ビス(フタロシアニン)(bis(phthalocyanines))(G. Guillaud, M.A. Sadound and M. Maitrot, Chemical Physics Letters 167 (1990) pg. 503)
−テトラシアノキノジメタン(tetracyanoquinodimethane)(A. R. Brown, D. M. de Leeuw, E. J. Lous and E. E. Havinga, Synthetic Metals 66 (1994) pg. 257)
−ナフタレンテトラカルボン酸(napthalenetetracarboxylic acid)の二無水物およびジイミド(J. G. Laquindanum, H. e. Katz, A. Dodabalapur and A. J. Lovinger, Journal of the Americal Chemical Society 118 (1996)pg. 11331; H. E. Katz, A. J. Lovinger, J. Johnson, C. Kloc, T. Siegrist, W. Li, Y-Y. Lin and A. Dodabalapur, Nature 404 (2000) pg. 478)
−ペリレンテトラカルボン酸(perylenetetracarboxlic acid)のジイミド(C. D. Dimitrakopoulos and P. R. L. Malenfant, Advanced Materials 14 (2002) pg. 99)
小分子n−チャネル半導体材料の例は、KatzらのNature 404 (2000) pg.478-481からも知られている。この文献は、実際、有機ポリイミド誘電体の可能性について言及している。しかしながら、適切なポリイミドの例は、挙げられておらず、どのようにして適切なポリイミドを選択すればよいかについての情報は、提供されていない。さらに、典型的なポリイミドは、1−5%の残留−COOH基を含んでいる。
【0012】
無機誘電体とともに使われてきた高い電子親和性オリゴマーn−チャネル半導体材料のいくつかの例としては、次のものがある。
【0013】
−α,ω−ジペルフルオロヘキシルセキシチオフェン(α,ω-diperfluorohexylsexithiophene)(A. Facchetti, Y. Deng, A. Wang, Y. Koide, H. Sirringhaus, T. Marks and R. H. Friend, Augewangte Chemie International Edition 39 (2000) pg. 4545)
−キノダールテルチオフェン(quinodal terthiophene)(R. J. Chesterfield, C. R. Newman, T. M. pappenfus, P. C. Ewbank, M. H. Haukaas, K. R. Mann, L. L. Miller and C. D. Frisbie, Advanced Materials 15 (2003) pg. 1278)
無機誘電体とともに使われてきた高い電子親和性ポリマーn−チャネル半導体材料の例としては、次のものがある。
【0014】
−ポリ(ベンゾビスイミダゾベンゾフェナントロリン)(poly(benzobisimidazobenzophenanthroline))(A. Babeland S. A. Jenekhe, Journal of the American Chemical Society 125 (2003) pg. 13656) これは、堅固なポリマー骨格に電子求吸引性イミン窒素を持つ非常に高いEAのポリマーである。
【0015】
今日まで、上述の「特別な分類」には当てはまらない材料がn−チャネル半導体挙動を示すことは無くまた示すとは期待できないことがやはり一般に受け入れられてきた。その結果、n−チャネル有機FETのための半導体材料の選択は、非常に限られてきた。
【0016】
非常に高い電子親和性材料(および低バンドギャップ材料)は、それ自身の制限を持つ可能性がある。例えば、これらは、特に永久的な伝導状態にバイアスされて、例えば、H、アンモニウムおよび金属イオンのような外来の不純物によって意図せずにドープされる場合がある。従って、バンドギャップおよび電子親和力がより適度な一般的な分類の材料からn−チャネルおよび両極性のトランジスタを開発可能であることは、有利であると思われる。
【0017】
Nature Materials 2 (2003) pg. 678に記載されているように、両極性トランジスタの動作を実現する場合の主な難しさの1つは、同じ電極から単一の半導体に正孔および電子を注入するということである。この電極は、正孔が半導体の最高占有分子軌道(HOMO)に注入することができ、電子が最低非占有分子軌道(LUMO)に注入することができるようにする仕事関数を持つ必要がある。その結果、これによってキャリアの1つにつきバンドギャップエネルギーの少なくとも半分の注入障壁になる。
【0018】
同じ電極から単一の半導体への正孔および電子の注入を実現することの上述の難しさは、当然のことながら、いずれの場合でも有機FETでのn−チャネルの活性は、たとえ適切な電子注入をもってしても実現が難しかったという事実によって著しく強められる。このことは、電子がいくらかはほとんどの有機材料にトラップされる(そしてその結果固定される)であろうという一般的な(誤った)見解を導き、そして(やはり間違って)これらの材料のほとんど大部分からは有用なn−チャネルFETを作成することはできないという見解を導いてきた。
【0019】
それにもかかわらず、このNature Materials 2 文献は、熱的に成長した無機SiO層をゲート誘電体として用い、p型およびn型半導体の相互に貫通し合うネットワークからなる異種混合物を半導体層として用いた両極性トランジスタを提示している。半導体電子トランスポータとしての非常に高い電子親和力を持つ誘導体化したC60(PCBM)と、半導体正孔トランスポータとしてのOC1C10−PPVポリマーとの混合物が例示されている。OC1C10ポリマーのHOMOレベルは,金電極の仕事関数に合わされている。PCBMのLUMOレベルと金電極の仕事関数との間には、1.4eVの不整合が報告されている。
【0020】
この文献は、また、広いバンドギャップ半導体において両極性トランジスタが動作しないのは大きな注入障害が存在するためだとも提案している。バンドギャップの小さい半導体を用いて障壁を小さくすることが提案されている。1.55eVのバンドギャップを持つポリ(インデノフルオレン)(poly(indenofluorene))が例示されている。
【0021】
しかしながら、この文献で実現された電子の電界効果移動度は、10−5cm/Vsドメインではまだ受け入れられないほど低いものである(PIFの場合、電子移動度が5×10−5cm/Vsで正孔移動度が4×10−5cm/Vs;そして、C60−OC1C10−PPVの場合では、電子移動度が3×10−5cm/Vsで正孔移動度が7×10−4cm/Vs)。
【0022】
明らかに、この教示に従って作成できる両極性トランジスタの範囲は、制限されている。さらに、π−π*ギャップ<1.6eVというバンドギャップの小さな半導体は、比較的安定性を欠く傾向があるが、これは、これらが意図しないドーピング、および起こりやすい光化学反応に対して脆弱なためである。一方、C60ネットワークを持つ電子伝導混合物は、C60アニオンの起こりやすい化学反応、および、急速な酸素トラッピングのせいで不安定であるのみならず、小分子の電子アクセプタおよびトランスポータの再結晶化のせいでパーコレーションパスも全体的に不安定になる。
【0023】
上述のNature Materials 2 文献以前に、Science 269 (1995) pg 1560は、両極性トランジスタの挙動を実現するために、無機ゲート誘電体および正孔コンダクタと電子コンダクタとのバイレイヤの利用を記載している。電子コンダクタは、C60であり、電子移動度が10−3cm/Vsの範囲で測定されている。この電子コンダクタは、Nature Material 2文献に関して上で述べたのと同じ問題点を抱えている。
【0024】
上述のことから、n−チャネルFETおよび両極性トランジスタを実現するための努力の主な点は、半導体層、特に半導体層および構成に使われる材料、半導体材料の形態および空間的な順序に集中されてきたことがわかるであろう。典型的には、半導体材料は、無機のSiO界面に対して試験されてきた。この界面は、常に部分的に水和されていることがわかるであろう。さらに、n−チャネル有機FETおよび両極性有機FETにおいては、n−チャネル伝導をさらに改善する必要があることがわかるであろう、なぜなら、現在、非常に限られた範囲の有機材料しかこのような装置に使えないからである。
【0025】
両極性有機FETの見込まれる用途の1つとして発光FET(LFET)への適用が挙げられ、この場合、装置のオン状態にあるトランジスタチャネルから光が発光される。LFETは、光学信号変換および通信などの用途、および、トランジスタ回路に必要なプロセスフローとは互換性がないかもしれずまたはさらに別のプロセス工程を必要とするかもしれない垂直発光ダイオードのように特別な発光装置構造を実現せずとも集積型トランジスタ回路へ表示機能を組み込むという用途で関心が持たれている。
【0026】
発光トランジスタ(LFET)は、文献(H. Schoen et al., Science 289, 588 (2000)において仮定されいた(この論文は、科学的な不正があるため後に撤回された、すなわちこの論文の実験データは、改ざんされたものだった)。
【0027】
しかしながら、これらは、FET構造からの発光がいくつかのグループによって報告されてきたにもかかわらず、実際には完全には実現されなかった。Heppら(Phys. Rev. Lett. 91, 157406 (2003))ならびにSantatoら(Synth. Metals 146, 329 (2004))は、真空処理テトラセン(tetracene)FETのドレイン接触の端部からの発光を報告した。この装置は、実際には両極性装置としては作動していなかった、なぜならテトラセン/SiO界面は、電子伝導をサポートしないからである。発光は、ドレイン電極における突き出しトポグラフィープロファイルによるものであり、正孔を半導体のバルクを通って移動させるものである。ドレイン接触付近の関連する高電界により電子がドレイン端子から注入される。この装置における電子の移動度が非常に低いため、ドレイン電極に非常に近い区域から光が発光され、再結合区域が装置のチャネル内へ移動されるようには装置をバイアスさせることができなかった。
【0028】
発光は、また共蒸着正孔輸送α−キノクエチオフェン(α−quinquethiophene)と、電子輸送N,N’−ジトリデシルペリレン−3,4,9,10−テトラカルボキシル(N,N’-ditridecylperylene-3,4,9,10-tetracarboxylic)との混合物に基づくFETからも報告されている(Appl. Phys. Lett. 85, 1613 (2004))。この装置における電子および正孔移動度は、1けたよりも大きく相違し、このことは、やはり、低移動度キャリア(電子)が注入された接触部に非常に近接して光が発光されたことを暗示している。
【0029】
発光は、またSakanoueにより、金/アルミニウムまたは金/クロムの二層ソース/ドレイン接触を備える装置における溶液処理FETでも報告されている(Appl. Phys. Lett. 84, 3037 (2004))。しかしながら、装置特性は、双極性伝導レジーム(bipolar conduction regime)の証拠を示しておらず、そして、光が発光される領域は、報告されなかった。しかしながら、報告された装置特性において両極性伝導の証拠がないため、電極のうちの1つに非常に近い領域から光が発光されたと仮定する必要がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0030】
【非特許文献1】P. Horowitz and W. Hill, The art of Electronics, Cambridge University Press, 1989
【非特許文献2】H. Pfleiderer, W. Kusian and B. Bullemer, Siemens Forschungs-Und Entwicklungsberichte-Siemens Research and Development Reports 14 (1985) pp. 114
【発明の概要】
【0031】
適切な、真に両極性のLFETは、電子および正孔移動度が1桁内で類似している両極性伝導が可能であり、またソース、ドレイン、およびゲート電極に印加されるバイアス電圧を変動させることによってソースおよびドレイン電極間のチャネルに沿った何れの位置に対しても光が発光させられる半導体層における再結合区域の位置を移動させることのできる半導体を必要とする。このことは、従来技術では実現されてこなかった。図3a(最上部)は、両極性LFETの概略を示している。もしゲート電圧がソースおよびドレイン電圧の間の値に設定されるように装置がバイアスされる場合、正孔蓄積層は、ソース電極付近に誘導され、電子蓄積は、ドレイン電極付近に誘導される。装置は、ソースからの正孔の流れ、および、いくらかチャネルに沿った良好に規定された再結合区域(8)における再結合でドレインからの電子の流れによって作動する。再結合区域の位置は、相対的な電子および正孔移動度によって決まる。仮に電子および正孔移動度が良好にバランスしていれば、再結合区域は、チャネルの中央へ移動させることができ、実際には、装置に印加されるバイアス電圧を変更することによってソースからドレイン電極の何れの位置にも移動させることができる。
【0032】
今日までにn−チャネルおよび両極性トランジスタに関して発行された研究のほとんどすべては、有機半導体の調製に向けられており、この場合、n−チャネル伝導が(水和した)SiO界面に対して観察できる。同時に出願された「N−チャネルトランジスタ」(代理人R ef.:305038WO)という名称のPCT出願では、新規の一般的な設計戦略を提供することで、現在可能と考えられているよりもより広い範囲の有機半導体でn−チャネル伝導(そしてまた両極性電界効果伝導も)が開示されている。
【0033】
N−チャネルトランジスタの発明では、n−チャネル電界効果伝導は、誘電体が、電界効果によって半導体チャネルに誘導された負の電荷キャリアをトラップする可能性のある高い濃度の化学部分を誘電体が示さない場合にだけ、誘電体/半導体界面で安定的にサポートされることを開示している。この2つのうち誘電体界面がより重要であるとはいえ、誘電体バルクもまた好ましくは考慮すべきである、なぜならバルクトラップ状態は、非常にゆっくりではあるがそれでも定着させることができるからである。誘導された電荷キャリアは、界面に沿って移動するため、それらが界面で遭遇するトラップによってもっとも大きく影響される。反対に、電荷キャリアは、そこに閉じ込められるように、バルク内に進まなければならない。にもかかわらず、バルクトラップ状態は、電荷を長時間保持することができ、このことでトランジスタの挙動が損なわれる。
【0034】
N−チャネルトランジスタの発明では、有機ゲート絶縁材料を適切に選択することによって、これまで知られていたよりもずっと広い範囲の有機半導体からn−チャネルFETを得ることが実際に可能であることを開示している。そのようなものとして、N−チャネルトランジスタの発明は、初めて有機半導体および有機誘電体を使ってn−チャネル伝導の機会を提供するものである。本発明者によって、広い範囲のポリ(p−フェニレンビニレン)(poly(p-phenylenevinylene))およびポリ(フルオレン)(poly(fluorene))誘導体およびコポリマーが良好に試験された。重要な点は、有機ゲート誘電体層が臨界点を越える濃度の(有機半導体の電子輸送レベル付近またはそれ以下のエネルギーにある)トラッピング基を含んではならないことである。この発明の結果、n−チャネル有機FETおよび両極性有機FETを得る範囲が大幅に拡大される。もはや非常に高い電子親和性半導体である有機半導体に制限されることはない。
【0035】
N−チャネルトランジスタの発明では、今や、なぜn−チャネルFETが今日まで非常にわかりにくかったかという理由が、今日まで試験されてきたゲート誘電体(最も顕著なのは、酸化シリコン、ポリ(メチルメタクリレート)(poly(methyl methacrylate))、ポリ(ビニルフェノール)(poly(vinyl phenol))およびポリ(イミド)(poly(imide)))がN−チャネルトランジスタの発明の仕様を満たさないためであることをつきとめた。
【0036】
ソース−ドレイン接触について適切な材料を選択して電子および正孔を効率的に注入させる場合、電子トラッピング基の数が少ない有機誘電体を選択することにより、広い範囲の有機半導体で欠点のない両極性伝導が可能となる。
【0037】
本発明は、N−チャネルトランジスタの発明によるトラッピングなしの誘導体を使用することによって、両極性LFETの実現が可能となり、このLFETでは、再結合区域は、トランジスタのソース、ドレイン、およびゲート電極に印加されるバイアス電圧を変化させることによって、トランジスタのチャネル長全体に亘って掃引することができることを開示している。
【0038】
本発明の第1の側面によると、両極性発光電界効果トランジスタが提供される。このトランジスタは、トラッピングの無いゲート誘電体を備えており、このゲート誘電体は、1つの電極から有機半導体層へと負の電子が注入され、他の電極から有機半導体層へと正孔が注入されるバイアスレジーム(biasing regime)で作動されると、トランジスタのチャネル内の良好に規定された再結合区域から光を発光する。
【0039】
本発明の第2の側面によると、トランジスタのソース、ドレインおよび/またはゲート電極に印加される電圧を変動させることによってトランジスタのチャネル全体に亘る何れの位置にでも発光区域を移動させることができる両極性発光電界効果トランジスタが提供される。
【0040】
本発明の第3の側面によると、両極性発光電界効果トランジスタの発光区域をトランジスタのチャネルに沿った何れかの位置に移動させるための方法が開示される。
【0041】
本発明の第4の側面によると、トランジスタから発光させるために両極性発光トランジスタの使用法が提供される。
【0042】
本発明の第5の側面によると、両極性発光電界効果トランジスタの製造方法が提供される。
【0043】
以下の説明では、まず最初に、本発明による両極性LFETを構成するための第1の要件を説明する。すなわち、トラッピングの無い誘電体を使うことであり、この誘電体は、ゲート誘電体層のトラッピング基のバルク濃度が1018cm−3未満でありこの場合、トラッピング基とは、(i)EAsemicond以上の電子親和力EAおよび/または(ii)(EAsemicond−2eV)以上の反応性電子親和力EArxnを持つ基である。
【0044】
反応性トラップとは、後の化学反応にさらされることにより、電子が、通常は、電子を再放出できない新しい(そして深い)状態にトラップされるもののことである。従って、トラッピングは、可逆ではない。特に、反応性トラップのいたるところに見られる例としては、不可逆的に電子をトラップして水素を追い出すことのできる、−COOHおよびーCROHのような活性(酸性)水素を持つものが挙げられる。
【0045】
非反応性トラップとは、トラップされた電子を再放出できるもののことである。反応性トラップは、誘導されたキャリアを消費して誘電体界面の静電荷および閾値電圧の大規模なシフトをもたらすが、非反応性トラップは、電荷キャリア移動度の損失をもたらす。これらは、両方ともトランジスタ装置にとって有害である。いくらかの不純物(HOのような)が存在する下での非反応性トラップは、反応性トラップに変わる可能性があるため、2種類のトラップ間の区別は、常にはっきりしているわけではない点に留意すべきである。
【0046】
当業者であれば、電気化学の一般的な知識に基づいて、特定の化学基が反応性トラップとして、非反応性トラップとして、またはその両方として作用できるかどうかがわかるであろう。
【0047】
本発明は、反応性トラップおよび非反応性トラップ両方の合計濃度が臨界濃度未満であることを必要とする。本発明によると、基がトラッピング基であるかどうかは、半導体層を形成している有機半導体材料のEAsemicond.を参照することによって決定されねばならないことがわかるであろう。半導体材料を知っておりその結果EAsemicond.がわかれば、当業者なら後で述べるEAおよびEArxnについての分析および定義を使って、検討中の有機ゲート誘電体層に存在するすべての化学基を、まず最初にEAに関して(すなわち、それらの非反応性トラッピング特性に従って)、そして第2にEArxnに関して(すなわち、それらの反応性トラッピング特性に従って)2列に配列することができるであろう。上述のやり方によって、その後当業者であれば、半導体(EAsemicond)の電子親和力を使ってどの基がトラッピング基でなくそのためゲート誘電体層に存在していてもよく、どの他の基がトラッピング基であるためゲート誘電体層において臨界濃度を超えて存在してはならないことを識別するためのカットオフ値を規定できる。
【0048】
通常のFET動作の下では、誘導された電荷キャリア濃度は、典型的には約1012−1013cm−2であり、そして、トラップは、FET伝導が発生できるようになる前にまず最初に充填されるため、半導体/ゲート誘電体界面(Cinterf)における反応性および非反応性トラップの臨界濃度は、1012cm−2未満、好ましくは1011cm−2およびより好ましくは1010cm−2未満である必要がある。
【0049】
1012cm−2の界面濃度に対応するバルク濃度(Cbulk)は、式Cinterf=(Cbulk2/3によって1018cm−3である。従って、本発明によると、誘電体層におけるトラッピング基のバルク濃度は、1018cm−3未満でなければならない。界面偏析を考慮すると、バルク濃度は、少なくとも1−2けた低いのが好ましい。従って、好ましいバルク濃度は、1017cm−3未満である。
【0050】
対象となっているトラッピング基のゲート誘電体層におけるバルク濃度(Cbulk)は、FTIRをはじめとする多数の方法によって測定できる。バルク濃度(Cbulk)を測定するために使用可能な適切な方法のいくつかの例を以下に説明する。これらの例は、対象となっているトラッピング基としてOH基を採用している。
【0051】
方法(A):片面研磨真性SiウェハのようなIR−透過性基板上に、ドロップキャスティングまたはブレードコーティングによって試験誘電体膜を50−100ミクロンの厚みで形成する。FTIR機器でIRスペクトラムを測定する。ノイズ変動が10−4吸光度単位となるように十分な走査を集める。標準テーブルで基の吸収帯位置を調べる。OHの場合、これは、約3300cm−1であり、また約900cm−1でもある。これらの波数における帯吸収強度を定量化する。帯吸収度の文献値、または、公知の厚みで公知のOH基の濃度の膜における吸収スペクトラを測定することから得られた校正値を用いることによって、有効濃度に変換する。
【0052】
方法(B):試験中の基に標準的なガスクロマトグラフィー誘導体化方法を使って、例えば、ゲート誘電体材料中のOHを適切なフルオロ無水物(fluoro anhydride)と反応させることによって、適切なフッ素またはシリコンのラベルでラベル付けする。精製する。真性シリコンウェハ上に約0.1−1ミクロンの厚みの膜を形成する。二次イオン質量分析法を行って適切な校正後に膜におけるラベル付けされた基の濃度を測定する。
【0053】
方法(C):標準的な生化学蛍光プローブラベリング方法を使って、適切な蛍光ラベルで試験中の基にラベル付けする。精製する。適切な校正後に蛍光活性を測定して濃度を得る。
【0054】
電子親和力(EA)は、材料が真空から電子を受け取るときに放出されるエネルギーである。電子親和力は、材料の極性に直接関係することはなくまた電子親和力と誘電定数との間になんの相互関係もない。
【0055】
本発明によると、EAsemicond.は、有機半導体の場合ならサイクリックボルタンメトリ実験から、または、その測定したイオン化エネルギーから決定できる。有機半導体のイオン化エネルギー(IE)は、紫外線光電子放出スペクトラにおける価電子帯特性のオンセット(onset)として紫外線光電子分光実験から決定できる。あまり好ましくはないが、この量は、酸化走査において、一対の酸化および還元ピークの中間ポテンシャル(E’)またはオンセット酸化ポテンシャル(Eonset)として、標準的なサイクリックボルタンメトリから見積もってもよい。
【0056】
このポテンシャルは、標準エネルギーシフトIE=E’(対NHE)+4.8eVまたはEonset(対NHE)+4.8eVを用いて真空エネルギースケールに変換される。
【0057】
電子親和力(EA)は、以下の式に従ってイオン化エネルギーから算出される。
【0058】
EA=IE−ΔE−BE
バンドギャップ(ΔE)は、例えば光吸収を用いて測定される。数多くの共役ポリマーの場合、励起子結合エネルギー(BE)は、広く一般に0.4eVに維持される。
【0059】
あるいは、有機半導体のEAは、逆光電子放出によって、または還元走査において、一対の酸化および還元ピークの中間ポテンシャル(E’)またはオンセット還元ポテンシャル(Eonset)として、標準的なサイクリックボルタンメトリによって、より直接的な方法で測定することができる。このポテンシャルは、標準エネルギーシフト:IE=E’(対NHE)+4.8eVまたはEonset(対NHE)+4.8eVを用いて真空エネルギースケールに変換される。
【0060】
誘電体材料の場合、これらは、非伝導性であるため、EA値は、直接的に測定することが非常に困難である。しかしながら、EAは、有機材料に存在する化学基または部分の比較的局所的な特性である。反対に、このことは、無機材料には当てはまらない。従って、本発明の目的で、有機ゲート誘電層が特定の半導体のn−チャネル活性と互換性があるか否かは、誘電体(EAおよびEArxn)の構成部分のそれぞれのEAをEAsemicond.と比較することによって部分的には決定される。広い範囲の基の気相EAが文献から得られるので、このことから選別を行う目的で候補となっている誘電体に存在する広い範囲の化学基のEAを決定するための有用な先験的(a priori)手段が得られる。
【0061】
有機誘電体に存在する(ポリアルキレン(polyalkylene)、ポリスチレン(polystyrene)などの脂肪族鎖およびフェニル(phenyl)/フェニレン(phenylene)単位のような)通常の炭化水素骨格構造の構成要素は、パイ拡張(pi-extend)されておらずそれらの固体状態EAは、しばしば0eV未満である。これは、典型的な半導体材料(EAsemicond)の電子親和力をはるかに下回り、典型的には2−3eVである(例えば、ポリフルオレン(polyfluorene)、ポリフェニレン(polyphenylene)、ポリチオフェン(polythiophene)、およびそれらのコポリマーの場合)。従って、これらの単位が存在することは、本発明で使用する絶縁材料では許容される。
【0062】
しかしながら、設計により(構造単位として、特に繰り返し単位または末端基として)または不純物(鎖末端、重合欠陥、安定剤、触媒および偶発的な汚染物質など)として、誘電体に存在する他の化学的/構造的な基または部分は、よりずっと大きなEAを持つ場合がある。本発明者は、これらの部分が電子と絶対に競合しないようにするためにはある設計規則を満たさなければならないことをつきとめた。反応性および非反応性トラッピング基に関して別々の設計規則を考えてよい。設計規則により、使用しようとしている有機半導体に対して所望のゲート誘電体材料を選択することができるようになる。この意味において、本発明それ自体は、所望の誘電体材料を定義することに制限されるものではない。反対に、所望の誘電体材料は、使用する有機半導体に従って定義してよい。
非反応性トラッピング基
非反応性トラップの場合、トラッピングは、可逆的であるため、非トラッピングとなる基についての基準は、EAsemicond未満となるべき誘電体材料(EA)中の化学基の固体状態EAについてのものである。例として、一般的な基のいくつかのEA値を以下に示す。本発明によると、これらの値は、気相EAデータから算出される。固体状態EA値は、M. Pope and C.E. Swenberg, Electronic Processes in Organic Crystals and Polymers (Oxford University Press, 1999) によって与えられているように、ここでは1.8eVとされる固体状態分極エネルギーを加えることによって、気相EAから算出される。
【0063】
部分X 固体状態EA(eV)
(a)脂肪族カルボニル(-CO-、-COO-、-CONR-)およびCN 1.8-2.0
(b)芳香族カルボニル(-CO-、-COO-、-CONR-) 2.0-2.4
(c)芳香族フルオロカーボン 2.3
(d)キノキサリン 2.5
(e)脂肪族フルオロカーボン 2.8-2.9
(f)キノン 3.4-3.6
aは、適切なモデル化合物の気相EAに分極エネルギー(本発明の目的では1.8eVとされる)を加えることによって得られる。
【0064】
従って、2−3eVのEAsemicond値の場合、(a)の存在は、いくつかの半導体では誘電体において許容できる。しかしながら、臨界濃度を超える濃度での(b)−(d)の存在は、多くの有機半導体のn−チャネル活性と互換性がない場合がある。さらに、臨界濃度を超える(e)−(f)の存在は、ほとんどの有機半導体と互換性がなくなる。可能な部分がこのように多数存在するため、ここではいくつかだけについて分析を行う。他の基についてのEA値も同じやり方で決定できる。
反応性トラップ
このようなトラップは、デトラッピングを不可能とする結合反応にさらされる。結合反応の一例としては、活性水素を持つ部分からの水素原子の放出が挙げられる。一旦この水素原子が(水素ガスを提供するための何らかの他のラジカル反応または再結合によって)失われると、電子電荷は、何らかの電荷中和事象が生じるまで不可逆的に部分にトラップされる。いずれの場合でも、初期にトラップされた電子が再放出されることはなく、ゲート誘電体の容量性電荷密度は、このような固定の電荷によって充填される。反応性トラップの場合、非トラッピングとなる基の基準は、反応自由エネルギーを考慮することを必要とする。反応性トラップの気相EA値は、得ることができない。従って、本発明の目的では、このような基の反応性電子親和力を考慮しさえすればよい。
【0065】
一例として、酸性−COOH部分を考慮すると、この部分は、ポリ(メチルメタクリレート)(poly(methyl methacrylate))にサブパーセントレベルの不純物として存在し、ポリイミド(polyimide)には、前駆体材料の不完全な変換のため数パーセントで存在する。反応性トラッピングの最中、考慮される反応は、
Semicond(s)+Diel-COOH(s)→Semicond(s)+Diel-COO(s)+H(s)
であり、これは、初期に半導体(Semicond)に存在していた誘導された電子がH原子を失うことで誘電体(Diel−COO)の−COOにトラッピングされることを表している。
【0066】
必要とされる正確な運動メカニズムが全体の反応のエネルギー論に影響を与えることはなく、2つの半反応の合計として表現される:
(i) Semicond(s)→Semicond(s)+e(g) EAsemicond
(ii) Diel-COOH(s)+e(g)→Diel-COO(s)+H(s) −(EArxn)
反応(ii)は、水素原子の放出を必要とする。ここで、反応(ii)のエネルギー論は、負の反応性電子親和力(EArxn)として表される。従って、本発明は、反応性トラップのEArxnを定義しており、対応の小分子モデルに対するボルン−ハーバー熱力学サイクルを用いて見積もることができるものであり、その一例は、次の通りである。
(ii)(a) Diel-COOH(s)→Diel-COOH(g) ΔGsub1
(ii)(b) Diel-COOH(g)→Diel-COO(g)+H(g) ΔGdeprot
(ii)(c) H(g)+e(g)→H(g) −ΔGion,H
(ii)(d) Diel-COO(g)→Diel-COO(s) ΔGpolar−ΔGsub1
(ii)(e) H(g)→H(s) −ΔGsub1.H
ここで、Diel−COOHモデルの小分子のために、3つの主なエネルギー用語は、それぞれ、気相脱プロトン化エネルギー(ΔGdeprot)、負の水素原子イオン化エネルギー(−ΔGion,H=−13.6eV)、および媒質分極エネルギー(ΔGpolar、ここでは−1.8eVとされる)である。
【0067】
反応(ii)の全体のエネルギーは、これらのエネルギーの合計、すなわち−EArxn=ΔGdeprot−ΔGion,H+ΔGpolar−ΔGsubl,H=ΔGdeprot−15.4eVである。昇華エネルギーΔsubl,Hは、十分に小さいため(おそらく0.1eV未満)省略してよい。ΔGdeprotは、データテーブルから得ることができる。従って、活性水素を含む化学基が反応性トラップとして作用するかどうかを決める主な要因は、その脱プロトン化エネルギーである。このやり方で得られる、反応性トラップとして作用する一般的な部分の範囲のEArxn値を以下に一覧表にする。
【0068】
部分X ΔGdeprot(eV) EArxn(eV)
(a)脂肪族-NHR 16.6 -1.2
(b)脂肪族-OH 15.9 -0.5
(c)芳香族-NHR 15.5 -0.1
(d)脂肪族-SH 15.1 0.3
(e)芳香族-OH 14.8 0.6
(f)脂肪族-COOH 14.8 0.6
(g)芳香族-SH 14.5 0.9
(h)芳香族-COOH 14.5 0.9
実験により、本発明者は、(e)および(f)が一般的には有機半導体の範囲に入るn−チャネルFET伝導とは互換性がないと判断した(この場合、EAsemicond.≒2−2.5eV)。従って、本発明者は、ある部分を非トラッピングとするには、そのEArxnがそのEAsemicondよりも少なくとも2eVだけ小さくすべきである、すなわちEArxn<(EAsemicond−2eV)とすべきであることを提案する。
【0069】
理論に束縛されることを望むことなく、このことは、トラッピング率(k)が試みた周波数(v)およびトラップ占有確率(K)の積、すなわちk=vKであることを考慮することによってだいたい合理化できる。Kの値は、標準的な化学熱力学によってK=exp(−ΔG/kT)と見積もられる。K<10−7−1(誘導された電荷濃度に類似のトラップ濃度についての特徴的なトラッピング時間>100日に対応する)およびv=1015−1(電子周波数)については、我々は、K<10−22であることを必要とするためΔG>1.5eVである。
【0070】
従って、分析は、(a)−(c)は、誘電体で許容されるが、(e)−(h)は、もし臨界濃度を超えて存在するとほとんどの有機半導体とは互換性がないことを示している。対象となっている他のいずれの部分についても同様の分析が行える。
【0071】
(a)−(c)は、反応性EA領域とは互換性があるにもかかわらず、これらの水素結合部分は、親水性となる傾向がありHOを強く保持する。固体膜中に分散したHOは、高いEA(≒3.0eV)を持っているため、これらの部分が存在するとやはりほとんどの有機半導体ではn−チャネル伝導とは互換性がなくなる場合がある。このような理由により、絶縁材料は、0.1重量%より多くの−OH基および他の水素結合基を含まないことが望ましい。非常に小さい濃度の−OH基および他の水素結合基であれば絶縁材料中に許容される。好ましくは、絶縁性ポリマーは、0.01重量%未満の−OH基および他の水素結合基を含んでおり、より好ましくは、0.001重量%未満の−OH基および他の水素結合基を含んでいる。最も好ましくは、絶縁ポリマーは、−OH基および他の水素結合基を実質的に含まない。
【0072】
一例として、EAsemicondが2.5eVの有機半導体を挙げると、もしあれば以下の(非網羅的な)基は、以前に規定された臨界濃度を超えてはならない、すなわち、キノキサリン(quinoxaline)、脂肪族フルオロカーボン(aliphatic fluorocarbon)、キノン(quinone)、芳香族−OH、脂肪族−COOH、芳香族−SH、芳香族−COOHである。臨界バルク濃度は、上で既に説明している。
【0073】
これらの基を欠陥、鎖末端、安定剤または汚染物質として含有する有機誘電体は、徹底的に精製してこれらが上述の臨界濃度未満で存在するようにする必要がある。
【0074】
発光トランジスタは、トップゲート構造でもボトムゲート構造でもよい。
【0075】
本発明による発光トランジスタでは、ゲート誘電体層は、なんらかの不純物とともに有機ゲート絶縁材料を含むと考えられる。ゲート誘電体層は、トラッピング基を全く含まないのが好ましい。このことにより、トラッピング基の濃度は、確実に臨界濃度未満となる。
【0076】
より好ましくは、有機ゲート絶縁材料自身は、トラッピング基を含む繰り返し単位を含まない。最も好ましくは、有機ゲート絶縁材料自身は、トラッピング基を全く含まない。
【0077】
典型的にはEAsemicondは、2eV以上であるが、本発明は、このように限定されるわけではない。やはり典型的には、EAsemicondは、2eVから4eVの範囲であり、より典型的には、2eVから3eVの範囲である。
【0078】
上述のように、絶縁材料中のトラッピング基は、絶縁材料自身の一部である(すなわち不純物を含まない)か、不純物として存在してよい。トラッピング基は、また、調製中に有機絶縁材料の形成が不完全なことによって、有機絶縁材料中に存在する残留単位の一部として存在してもよい。トラッピング基は、末端基、欠陥、安定剤または不純物としては許容できるものの、絶縁材料中の繰り返し単位としては通常は許容されないであろうことが分かるであろう。なぜなら、繰り返し単位として存在すると、トラッピング基が臨界濃度を超える場合があるためである。トラッピング基は、有機絶縁材料中の残留単位の濃度によっては許容されてもされなくてもよい。
【0079】
好ましくは、絶縁材料は、(i)電子親和力EAが3eV以上および/または(ii)反応性電子親和力EArxnが0.5eV以上の基を含む繰り返し単位または残留単位を含まない。
【0080】
従って、好ましくは、絶縁材料は、キノン(quinone)、芳香族−OH、脂肪族−COOH、芳香族−SHまたは芳香族−COOH基を含む繰り返し単位または残留単位は含まない。
【0081】
いくつかの実施態様では、好ましくは、絶縁材料は、2.5eV以上、より好ましくは2eV以上の電子親和力EAを持つ繰り返し単位または残留単位を含まない。これらの実施態様では、絶縁材料は、好ましくは、脂肪族フルオロカーボン基を含む繰り返し単位および/または残留単位を含まない。より好ましくは、絶縁材料は、芳香族カルボニル(aromatic carbonyl)、キノキサリン(quinoxaline)または芳香族フルオロカーボン(aromatic fluorocarbon)基を含む繰り返し単位および/または残留単位を含まない。
【0082】
好ましくは、絶縁材料自身は、アルケン(alkene)、アルキレン(alkylene)、シクロアルケン(cycloalkene)、シクロアルキレン(cycloalkylene)、シロキサン(siloxane)、エーテル酸素(ether oxygen)、アルキル(alkyl)、シクロアルキル(cycloalkyl)、フェニル(phenyl)、およびフェニレン(phenylene)基から独立して選択される1つ以上の基を含んでいる。これらの基は、置換されていても置換されていなくてもよい。これらの基は、必要に応じて絶縁材料の繰り返し単位の一部であってよい。
【0083】
絶縁材料自身は、脂肪族カルボニル(aliphatic carbonyl)、シアノ(cyano)、脂肪族−NHR、、芳香族−NHR、およびから独立して選択される1つ以上の基を含んでいてよい。やはりこれらの基は、必要に応じて絶縁材料の繰り返し単位の一部であってよい。
【0084】
いくつかの実施態様では、絶縁材料は、絶縁材料の前駆体から作られていてよい。かかる前駆体は、適切な反応によって最終的な絶縁材料へと変換できる。例えば、最終的な絶縁材料が架橋されている場合は、前駆体絶縁材料は、架橋可能な基を含んでいてよく、架橋化絶縁材料は、例えば加熱によって前駆体から形成できる。前駆体絶縁材料に存在するのに望ましい基としては、アルケン(alkene)およびスチレン(styrene)基が挙げられる。
【0085】
1つの実施態様では、ゲート誘電体層は、好ましくは、有機絶縁ポリマーを含んでいる。適切な精製後に使用可能な絶縁ポリマーの例としては、以下のものが挙げられる。
【0086】
(i)ポリ(シロキサン)(poly(siloxane))およびそのコポリマー、例えば、ポリ(ジメチルシロキサン)(poly(dimethylsiloxane))、ポリ(ジフェニルシロキサン−コ−ジメチル−シロキサン)(poly(diphenylsiloxane-co-dimethyl-siloxane))、およびそのコポリマー。
【0087】
(ii)ポリ(アルケン)(poly(alkene))およびそのコポリマー、例えば、アタクチックポリプロピレン(atactic polypropylene)、ポリ(エチレン−コ−プロピレン)(poly(ethylene-co-propylene))、ポリイソブチレン(polyisobutylene)、ポリ(ヘキセン)(poly(hexene))、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)(poly(4-methyl-1-pentene))、およびそのコポリマー。
【0088】
(iii)ポリ(オキシアルキレン)(poly(oxyalkylene))およびそのコポリマー、例えば、ポリ(オキシメチレン)(poly(oxymethylene))、ポリ(オキシエチレン)(poly(oxyethlene))、およびそのコポリマー。
【0089】
(iv)ポリ(スチレン)(poly(styrene))およびそのコポリマー。
【0090】
上述のポリマー中、そして実際には本発明で使用できる何れの有機絶縁ポリマー中の繰り返し単位も、最終的な絶縁ポリマーが上述の設計規則に適合するのであれば置換されていても置換されていなくてもよい。置換基は、可溶性といったポリマーの特定の特性を高めるための官能基を含んでいる。
【0091】
上述のポリマーにおける架橋された誘導体もまた本発明の範囲内である。
【0092】
好ましくは、絶縁材料は、ポリ(イミド)(poly(imide))ではない。
【0093】
好ましくは、絶縁ポリマーは、Si(R)−O−Si(R)単位を含んでおり、ここで、それぞれのRは、独立して炭化水素を含んでいる。この点に関して、上述のような好ましいポリ(シロキサン)(poly(siloxane))は、絶縁ポリマーであり、ここで、ポリマーの骨格は、−Si(R)−O−Si(R)−を含む繰り返し単位を含んでおり、ここで、それぞれのRは、独立してメチル(methyl)または置換されているまたは置換されていないフェニル(phenyl)である。かかるポリマーの具体的な例は、一般式:
【0094】
【化1】

【0095】
を持っており、置換されていても置換されていなくてもよい。このポリマーは、一般式:
【0096】
【化2】

【0097】
を持つモノマーおよびその誘導体、例えば、ビス(ベンゾシクロブタン)−ジビニルテトラメチルジシロキサン(bis(benzocyclobutane)-divinyltetramethyldisiloxane)(シクロテン(登録商標)として市販されている)またはその誘導体を架橋することによって作成することができる。
【0098】
他の実施態様では、絶縁材料は、好ましくは、絶縁オリゴマーまたは絶縁小分子を含んでいる。
【0099】
上述の設計規則を考慮することに加えて、隣接する半導体層との間に高品質の界面を形成できる誘電体材料を選択することが重要である。界面は、望ましくは、化学的に安定しており、分子的に急峻であり、および分子的に平滑である。
【0100】
さらに、誘電体層は、好ましくは、高い絶縁破壊強度、および非常に低い電気伝導性を示すべきである。
【0101】
また、ゲート誘電体ポリマーは、有機(特にポリマー)FETの全体的な指定された処理と親和性がなければならない。例えば、それを形成することで既に形成されている層の完全性を破壊してはならず、それと同時に自身は、その後の溶剤および熱処理(もしあれば)に耐えなければならない。
【0102】
さらに好ましくは、絶縁材料は、低いバルク電気伝導性および高い絶縁破壊強度を持っている。
【0103】
また好ましくは、絶縁材料は、ガラス転移温度が120℃よりも高く、最も好ましくは150℃よりも高い。
【0104】
絶縁材料のバルク抵抗は、好ましくは1014Ωcmより大きく、最も好ましくは1015Ωcm)よりも大きい。
【0105】
絶縁材料は、望ましくは、高品質で欠陥のない超薄膜に加工可能であるべきである。
【0106】
絶縁破壊強度は、有利には1MV/cmより大きく、好ましくは3MV/cmよりも大きい。
【0107】
(a)好ましくは、ゲート誘電体は、150℃まで、より好ましくは300℃まで、熱的および機械的に安定である。このような場合、装置の上棚/作動温度は、半導体ポリマー(および取り付けられている電極)によって基本的に限定される。
【0108】
化学的および機械的安定性を付与するために、1つの実施態様におけるゲート有機ゲート絶縁材料は、好ましくは架橋されている。
【0109】
本発明によると、誘電体層は、単一の絶縁材料の単一の層からなるか、または複数の絶縁材料または絶縁材料の混合物の1つより多い層を備え得る。
【0110】
本発明で使用できる半導体材料としては、小分子、オリゴマー、およびポリマーが挙げられる。
【0111】
適切な半導体ポリマーのいくつかの例としては、ポリ(フルオレン)ホモポリマー(poly(fluorene) homopolymer)およびコポリマー、ポリ(p−フェニレンビニレン)ホモポリマー(poly(p-phenylenevinylene) homopolymer)およびコポリマー、ポリ(オキサジアゾール)ホモポリマー(poly(oxadiazole) homopolymer)およびコポリマー、ポリ(キノキサリン)ホモポリマー(poly(quinoxaline) homopolymer)およびコポリマー、および、ペリレンテトラカルボキシルジイミド(perylenetetracarboxlic diimide)、ナフタレンテトラカルボキシル二無水物(napthalenetetracarboxylic dianhydride)、キノリン(quinoline)、ベンズイミジアゾール(benzimidiazole)、オキサジアゾール(oxadiazole)、キノキサリン(quinoxaline)、ピリジン(pyridine)、ベンゾチアジアゾール(benzothiadiazole)、アクリジン(acridine)、フェナジン(phenazine)、およびテトラアザアントラセン(tetraazaanthracene)から選択される1つ以上の基を持つホモポリマーおよびコポリマーが挙げられる。
【0112】
上述のポリマー中、そして実際には本発明で使用できる何れの有機絶縁ポリマー中の繰り返し単位も、最終的な絶縁ポリマーが上述の設計規則に適合するのであれば置換されていても置換されていなくてもよい。置換基は、可溶性といったポリマーの特定の特性を高めるための官能基を含んでいる。
【0113】
上述のポリマーにおける架橋された誘導体もまた本発明の範囲内である。
【0114】
上述のポリマーの等価なオリゴマーが本発明で使用することができる。
【0115】
いくつかの実施態様では、半導体ポリマーは、前駆体ポリマーから作られていてよい。かかる前駆体は、適切な反応によって最終的な半導体へと変換できる。例えば、最終的な半導体ポリマーが架橋されている場合は、前駆体半導体ポリマーは、架橋可能な基を含んでいてよく、架橋化半導体ポリマーは、例えば加熱によって前駆体から形成できる。
【0116】
適切な半導体小分子のいくつかの例としては、ペンタセン(pentacene)、ペリレンテトラカルボキシル(perylenetetracarboxlic)の二無水物およびジイミド、ナフタレンテトラカルボキシル(napthalenetetracarboxylic)の二無水物およびジイミドが挙げられる。
【0117】
電荷キャリア移動度は、できるだけ高いのが好ましい。現在のところ、本発明で得られる典型的な値は、10−5−10−1cm/Vsの範囲である。
【0118】
本発明のトランジスタを作成するための適切な方法が当業者にわかるであろう。明らかに、トラッピング基が臨界濃度を超えて誘電体層に存在することがないように処理条件を選択しなければならない。このことは、特に誘電体層を形成する場合に、例えば、最終的な誘電体層が臨界濃度を超えてトラップとして作用する可能性のある残留単位を含まないように、適切な処理条件の選択を要するであろう。
【0119】
当該誘電体層および/または半導体層は、好ましくは溶液処理によって形成される。
【0120】
絶縁材料を架橋させる場合、架橋化絶縁材料を作成するための反応材料を含む溶液は、溶液処理によって蒸着させてよい。そして反応材料を硬化させて架橋化絶縁材料を作成する。硬化のための1つの一般的なメカニズムは、反応材料を架橋させる縮合反応である。この縮合反応は、典型的には反応材料からの−OH離脱基の損失をともなう。しかしながら、−OH離脱基が損失しつつ縮合反応を介して硬化が進む場合は、これにより典型的には反応材料に存在していたすべての−OH離脱基が取り除かれるということはない。従って、最終的な架橋化絶縁材料は、残留−OH離脱基を含むことになる。上述のように、このことは、不利であるため、架橋化絶縁材料を作成するための反応材料は、−OH離脱基をまったく含まないのが好ましい。好ましくは、絶縁材料中の架橋基は、離脱基を失うことなく硬化させることができる反応材料中の架橋可能な基に由来するものである。かかる反応の例としては、(ベンゾシクロブテン(benzocyclobutene)とアルケン(alkene)との間の反応によって例示されるような)ジエン(diene)とジエノフィル(dienophile)との間のディールズ・アルダー反応、およびSi−Hとアルケン(alkene)との間のヒドロシリル化反応が挙げられる。
【0121】
本発明による効率的なLFETを構成するには、ソースおよびドレイン電極を、該ソースおよびドレイン接触のうちの一方から効率的な電子注入が可能となり、該ソースおよびドレイン電極のうちの他方から効率的な正孔注入が可能となるように構成する必要がある。
【0122】
本発明者は、いくつかの有機半導体が電子ならびに正孔の両方を同じ金属接触から効率的に注入させることを発見した。例えば、本発明者は、ゲート誘電体としてBCBを備え、活性半導体層としてポリ−3−ヘキシルチオフェン(poly-3-hexylthiophene)を備え、トップ接触カルシウムソース−ドレイン電極を備えた両極性ボトムゲートTFTを製造することができた。ソース/ドレイン電圧に関するゲート電圧の符号次第でこれらの装置は、両極性輸送特性を示す。同様に、金のソース−ドレイン接触を備えたトップゲートのポリ−ジオクチルフルオレン−コ−ビチオフェン(poly-dioctylfluorene-co-bithiophene)(F8T2)トランジスタで両極性輸送が観察された。理論に束縛されることを望まず、半導体のバンドギャップが比較的大きいにもかかわらず、この場合同じ金属から電子および正孔の両方の注入が可能であるという事実は、金属電極と有機半導体間で界面双極子または界面化学反応が形成されることに関連していると思われる。
【0123】
本発明の他の実施態様によると、LFETは、ドレイン電極とは異なる伝導性材料を備えたソース電極で構成される。好ましくは、2つの金属は、異なる仕事関数を持つ。仕事関数のより低い方の金属は、有機半導体の最低非占有分子軌道(LUMO)へ電子を効率的に注入することができるように選択され、一方、仕事関数のより高い方の金属は、最高占有分子軌道(HOMO)へ正孔を効率的に注入することができるように選択される。ほとんどの有機材料のバンドギャップは、1.5eVよりも高いため、2つの接触間の仕事関数の差は、少なくとも0.5eVであることが好ましい。より好ましくは、ソースおよびドレイン金属間の仕事関数の差は、1.0eVよりも大きく、最も好ましくは、仕事関数の差は、1.5eVよりも大きい。適切な正孔注入接触は、金(仕事関数5.0eV)、銀、プラチナ、パラジウム、酸化インジウムスズ、またはPEDOT/PSSのような導電性ポリマーを含んでいる。適切な電子注入接触は、カルシウム(仕事関数2.9eV)、マグネシウム、バリウム、銅、またはアルミニウムのような仕事関数の低い金属である。
【0124】
他の実施態様によると、ソースおよびドレイン接触は、同じバルク材料から製造できるが、ソースおよびドレイン電極に対して異なる効果を持つ表面処理プロセスまたは一連の表面処理工程の結果、異なる表面構成を示すように調製される。自己組織化単分子膜によって金属電極を改造することによって電極の仕事関数を大幅に変更することができる。
【0125】
使用中のトランジスタ構造によっては(異なるバルクまたは表面構成を持つ)ソースおよびドレイン接触を異なる方法によって製造できる。もっとも一般的なボトムコンタクトまたはトップコンタクトの薄膜トランジスタ構造では、ソースおよびドレイン接触は、基板の同じ平面上に形成される。異なる材料からソースおよびドレイン接触を形成するための1つの方法としては、2工程シャドウマスク蒸着が挙げられる。第1の工程では、チャネル長を規定している距離Lによって第1の開口部から分離されている第2の開口部を遮断しながら、カルシウムの薄膜のような第1の材料が、第1の電極を規定するためのシャドウマスクの第1の開口部を介して蒸着される。第2の蒸着工程では、金の薄膜のような第2の材料が、第2の電極を規定するための開放された第2の開口部で蒸着される。第2の蒸着工程中、もし装置構造が第1の開口部の領域にある第1の材料の上に蒸着される第2の材料が第1の材料からトランジスタのチャネルへのそれぞれの電荷の注入を妨げないようになっていれば、第2の開口部は、開放したままでよい。ボトムゲート、トップコンタクトのTFT構造の場合、例えば、第2の材料(Au)は、その後第1の材料(Ca)をいくらか封入できる。
【0126】
あるいは、2段工程フォトリソグラフィー、またはこれらに限られるわけではないが、インクジェット印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、レーザーフォワード転写印刷またはグラビア印刷のような2段後工程直接書き込み印刷工程といった技術を使うことができる。第1の工程では、第1の材料を堆積しパターン化し、その後、第2の工程では、第1の材料の隣に第1の材料の端に正確にレジストレーションして第2の材料を堆積しパターン化する。
【0127】
LFETの多くの用途では、トランジスタのチャネル長は、短いことが望ましい、すなわち、数ミクロン単位またはサブミクロメートルの寸法でさえあることが望ましい。こうすることでトランジスタのオン電流(1/Lに比例)は、高くなり、発光の強度が高くなる。2つの異なる電極間のミクロンまたはサブミクロメータの間隔を一貫して理想的に規定するために、自己整合される工程が使用されている、すなわち、第1の電極の端の位置に対する第2の電極の端の位置がレジストレーションまたはアラインメント工程によらずに規定される。
【0128】
仕事関数の低い電極と仕事関数の高い電極との間に自己整合したチャネル長を基板の同じ面に規定するための本発明による1つの方法は、表面エネルギーに手助けされたインクジェット印刷(PCT/GB00/04942)に基づいている。この方法では、基板の表面は、疎水性および親水性の表面領域に予めパターン化されている。チャネル長は、両側にある2つの隣接し合う親水性領域によって分離されている狭い疎水性リブによって規定されている。金ナノ粒子インクのような仕事関数の高い金属材料、またはPEDOT/PSS伝導性ポリマーインクを含む第1のインクを第1の親水性基板領域にインクジェット印刷する。インクの拡散は、疎水性リブによって制限されて、インクが第2の親水性領域に接触しないようになっている。その後、仕事関数のより低い金属を含む第2のインクを、疎水性リブがやはりインクの拡散を制限している状態で、第2の親水性領域にインクジェット印刷する。このようにして、チャネル長が疎水性リブの幅によって規定された状態で自己整合チャネルが形成される。
【0129】
液体ベースのパターンニング技術は、仕事関数が低くまた印刷/処理中に酸化に対して十分な安定性を示す金属インクを必要とする。仕事関数の低い適切なインクは、カーボンナノチューブベースのまたはカーボンブラック分散のインクであろう。アルカリ導入カーボンナノチューブバンドルは、仕事関数が4.5eV未満で多くの有機半導体への電子注入に適していることが証明された。他の選択肢としては、銅などの仕事関数の低い金属ナノ粒子または無電解めっきインクが挙げられる。
【0130】
本発明によるLFETの自己整合チャネルを規定するための他の好ましい方法は、UK0130485.6に開示されている自己整合印刷技術に基づいている。自己整合印刷技術は、第1の材料を基板上に印刷し、第1の材料の表面を改質して第2の材料のインクに反発性表面を露出することに基づいている。このようにして、異なるバルクまたは表面構成であり得る、2つの引き続いて印刷された材料間にサブ100nmの寸法の自己整合した間隔を規定することができる。自己整合印刷技術に基づいた整流ダイオードは、PCT/GB2004/003879に開示されている。
【0131】
本発明によるチャネルの自己整合化規定のための他の方法は、上述の2工程蒸着に基づいている。この場合、第2の材料は、斜めの角度で平行ビームとして蒸着されて、第2の材料が表面に衝突している角度によって規定されるチャネルの長でチャネルがシャドウイング効果によって規定される。
【0132】
2つの非類似の材料間のサブミクロメートルの間隔を規定するためのさらに他の技術は、レジストパターンによって保護されている第1の金属層をアンダーエッチングし、その後引き続いて第2の材料を蒸着してからレジストパターンをリフトオフすることに基づいている。同じ金属電極間のサブミクロメートルチャネル長を規定するための関連する技術は、Scheinert et al., Appl. Phys. Lett. 84, 4427 (2004) に開示されている。この技術は、2つの非類似材料間の間隔を規定する場合にも同様に適用できる。
【0133】
上述のすべての技術では、仕事関数の低い金属が、電子注入に必要とされる仕事関数の低い反応性表面の酸化または他の化学的劣化が回避されるように処理されるよう注意を払う必要がある。これには、不活性ガス雰囲気下で処理を行うか、または、金属に最終的な表面処理またはエッチング工程を施すことによって処理中に施されたどのような表面酸化物も、それが有機半導体層に接触する前に取り除く必要があるであろう。半導体がソース−ドレイン構造の上に形成される技術の場合は、もし仕事関数の低い金属が2番目に積層されるのであれば、酸化は、より簡単に回避されるであろう。
【0134】
活性材料としては、好ましくは、フォト/エレクトロルミネッセンス効率が高く同時に電子および正孔の両方について電界効果移動度が比較的高い材料を選択する。材料は、採用される処理条件下で適切な安定性を持つ利用可能な金属接触材料によって効率的な電子および正孔注入が達成できるように選択すべきである。特に、有機半導体材料の電子親和力は、好ましくは2.5eVより高く、より好ましくは3eVより高く、有機半導体材料のイオン化ポテンシャルは、好ましくは5.8eVより低く、より好ましくは5.5eVより低い。
【0135】
適切な材料の例としては、これらに限定されるわけではないが、ポリ−ジオクチルフルオレン(poly-dioctylfluorene)(F8)、F8T2などのポリフルオレンベース系、または、ポリ(2−メトキシ−5−(3,7−ジメチル)オクチル−p−フェニレンビニレン)(poly(2-methoxy-5-(3,7-dimethyl)octoxy-p-phenylenevinylene))(「OC1C10−PPV」)などのポリフェニレンビニレン(polyphenylenevinylene)(PPV)ベースポリマーをはじめとする発光ポリマーが挙げられる。あるいは、これらに限定されるわけではないが、小分子有機半導体または発光デンドリマーをはじめとする、文献から知ることのできる効率的なフォトルミネッセンスを持つ他の有機材料も使うことができる。他の活性半導体系としては、いくつかの成分の混合物、例えば、三重項発光染料(Baldo, et al., Nature 403, 750 (2000),)のような発光性で、蛍光性またはリン光性の高い発色団と、その電荷輸送特性ゆえに選択されるマトリックスとしての有機半導体材料との混合物、およびまたは高移動度電子および正孔輸送有機半導体層の混合物(Appl. Phys. Lett. 85, 1613 (2004))が挙げられる。
【0136】
トラッピングのない誘電体、ならびに電子および正孔の注入が可能なソースおよびドレイン接触を持つ両極性FETを作動させるために、ゲート電極に印加されるバイアス電圧は、ソースおよびドレイン電極に印加される電圧の間の値に設定する必要がある。
【0137】
本発明者は、本発明によって構成されたLFETでは(装置の詳細については、以下の実施例4を参照のこと)、ソース、ドレイン、およびゲート電圧をそれ相応に変動させることによって、光の発光元である再結合区域をFETのチャネルに沿ったどこにでも配置できることを見出した。例えば、負のゲート電圧が固定される場合、負のドレイン電圧を増加させることによって、ドレイン電圧がゲート電圧よりも負になると、ドレイン電極付近からの発光がまず最初に観察される。この時点で、トランジスタ電流がそれぞれのゲート電圧の正孔飽和電流を超えて突然増加した証拠としてトランジスタが両極性輸送レジーム(ambipolar transport regime)となる(図3cを参照のこと)。ドレイン電圧がより負になるにつれて、良好に規定された再結合区域は、チャネルに沿ったどの位置にでもソース電極に達するまで移動させることができる。
【0138】
本発明は、発光区域がソースおよびドレイン接触から十分に離れて配置されている発光トランジスタの実現を可能とするものである。バイアス電圧次第で、再結合区域をソースおよびドレイン電極の両方から1ミクロンより大きく、さらに5ミクロンよりも大きく離すことができ、そして、実際にはソース−ドレイン電圧が増加するにつれてソースからドレイン接触までの全域にわたって移動させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0139】
ここで本発明を添付の図面を参照しながらさらに詳細に説明する。
実施例
実施例1:
一般的な原則の例示として、200nmのSiO層を持つp−ドープシリコン基板を、メシチレン(mesitylene)中の4.4w/v%BCB(シクロテン(登録商標、ダウケミカル社))溶液をスピンすることによって厚み50nmのBCB層でコーティングし、次に、290度に設定したホットプレート上で15秒間、窒素下で(pO<5ppm)超高速熱アニールする。次いで、必要とされている有機半導体を、適切な溶媒中の1.3−1.8w/v%溶液から50−80nmの厚みの薄膜として基板全体にスピンキャストする。試験を行った共役ポリマーの範囲は、次の通りである。(i)混合キシレンから得られたポリ(9,9−ジオクチルフルオレン−アルト−ベンゾ−2−チア−1,3−ジアゾール)(poly(9,9-dioctylfluorene-alt-benzo-2-thia-1,3-diazole))(「F8BT」)、(ii)混合キシレンから得られたポリ(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)(poly(9,9-dioctylfluorene-2,7-diyl))(「F8」)、(iii)トルエンから得られたポリ(2,5−ジヘキシル−p−フェニレンビニレン−コ−α,α−ジシアノ−2,5−ジヘキシル−p−フェニレンビニレン)(poly(2,5-dihexyl-p-phenylenevinylene-co-α,α’-dicyano-2,5-dihexyl-p-phenylenevinylene))(「CN−PPV」)、(iv)1:3(v/v)THF:トルエンから得られたポリ(2−メトキシ−5−(3,7−ジメチル)オクトキシ−p−フェニレンビニレン)(poly(2-methoxy-5-(3,7-dimethyl)octoxy-p-phenylenevinylene)(「OC1C10−PPV」)、および(v)メタノールから得られた前駆体PPV(「PPV」)である。100nmのカルシウム電極をシャドウマスクを介して蒸着し、この電極を30nmのSiOに封入して、チャンネルの長さが25μmで幅が2.5mmのソース−ドレイントップコンタクト電極を得た。次に、トランジスタをグローブボックス内で試験した。
【0140】
代表的な結果を図1(a)−(e)に示す。図1(a)および図1(b)はそれぞれ、F8BTの移送(transfer)および出力特性を示している。線形レジーム移動度(linear-regime mobility)(μFET,e)は、5×10−3cm/Vsと推定される。図1(c)は、CN−PPVの移送特性を示している(μFET,e=3×10−5cm/Vs)。図1(d)は、0C1C10−PPVの移送特性を示している(μFET,e=4×10−5cm/Vs)。図1(e)は、PPVの移送特性を示している(μFET,e=5×10−5cm2/Vs)。本願で研究したPPVおよびOC1C10−PPV膜は、比較的高い不純物レベルを持っており、このことにより装置特性の閾値およびドリフトが高くなっている。F8は、μFET,e=1×10−3cm/Vsである(移送特性は、示していない)。
【0141】
本実施例のようにBCB誘電体でコーティングせずに、SiO表面をヘキサメチルジシラザン(hexamethyldisilazane)でパッシベートした後でさえ、大きなn−チャネル活性は、観察することができない。このような観察は、SiOの表面上の残留シラノール基について予測できる高いEArxnと一致する。
【0142】
このセットの実施例は、ゲート誘電体を適切に選択することで、適切な注入接触が行われさえすれば広範囲の有機半導体を使ってn−チャネルFETを製造することが可能となる、という原則を示すために提供される。
【0143】
ポリ(メチルメタクリレート)(poly(methyl methacrylate))を(トップゲートFETにおける)ゲート誘電体として使用する場合、得られるn−チャネルFET移動度は、非常に劣悪であり、ポリ(フルオレン)(poly(fluorene))誘導体におけるμFET,eが典型的には10−6cm/Vs未満である。ポリ(ビニルフェノール)(poly(vinylphenol))をゲート誘電体として使用する場合、n−チャネルFET挙動は、得られない。ヘキサメチルジシラザン(hexamethyldisilazane)で処理したSiOをゲート誘電体として使用する場合も、やはりn−チャネルFET挙動は、得られない。これらの観察はすべて、本発明の設計規則に一致する。
実施例2:
一般原則をさらに例示するものとして、今回は、アルミニウムソース−ドレイン電極を用いる。200nmのSiO層を持つp−ドープシリコン基板を、メシチレン(mesitylene)中の4.4w/v%BCB(シクロテン(登録商標)、ダウケミカル社)溶液をスピンすることによって厚み50nmのBCB層でコーティングし、次に、290度に設定したホットプレート上で15秒間、窒素下で(pO<5ppm)超高速熱アニールする。次いで、必要とされている有機半導体を、適切な溶媒中の1.3−1.8w/v%溶液から50−80nmの厚みの薄膜として基板全体にスピンキャストする。試験を行った2つの共役ポリマーは、次の通りである。(i)混合キシレンから得られたポリ(9,9−ジオクチルフルオレン−アルト−ベンゾ−2−チア−1,3−ジアゾル)(poly(9,9-dioctylfluorene-alt-benzo-2-thia-1,3-diazole))(「F8BT」)、および(ii)トルエンから得られたポリ(2,5−ジヘキシル−p−フェニレンビニレン−コ−α,α−ジシアノ−2,5−ジヘキシル−p−フェニレンビニレン)(poly(2,5-dihexyl-p-phenylenevinylene-co-α,α’-dicyano-2,5-dihexyl-p-phenylenevinylene))(「CN−PPV」)である。100nmのアルミニウム電極をシャドウマスクを介して蒸着する。次に、トランジスタをグローブボックス内で試験した。
【0144】
代表的な結果を図2(a)−(d)に示す。図2(a)および図2(b)は、それぞれ、F8BTの移送および出力特性を示している。線形レジーム移動度(μFET,e)は、4×10−4cm/Vsと推定される。この値は、Ca電極の場合よりも一桁小さい値である。出力特性もまたあまりにも早く飽和する。これらは、両方とも、アルミニウム電極の接触抵抗が高いことを表している。しかしながらそれにもかかわらず、n−チャネル活性は、やはり得られた。図2(c)および図2(d)は、CN−PPVの移送および出力特性を示している(μFET,e=4×10−5cm/Vs)。これは、Ca装置に匹敵し、Alは、CN−PPV中へ十分に良好に注入できることを表している。
【0145】
このセットの実施例は、本発明で説明したようにゲート誘電体を適切に選択することで、広範囲の有機半導体から適切な注入接触を持つn−チャネルFETの製造が可能となる原則を再び示すために提供される。
実施例3:
一般原則をさらに例示するものとして、今回は、ガラス基板上にパターン化された金ソース−ドレイン電極およびトップゲートを用いる。ガラス基板を、混合キシレン中の1.7w/v%溶液から得られる50−80nmの厚みのポリ(9,9−ジオクチルフルオレン−アルト−ベンゾ−2−チア−1,3−ジアゾル)(poly(9,9-dioctylfluorene-alt-benzo-2-thia-1,3-diazole))でコーティングする。次に、30−40℃でデカン中の12.7w/v%BCB(ダウケミカル社のシクロテン(登録商標)から抽出)から厚みが200nmのBCB層をスピンすることによってゲート誘電体層を堆積し、そして290℃に設定したホットプレート上で15秒間、窒素下で(pO<5ppm)超高速熱アニールする。次に、表面活性イオン交換ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(poly(3,4-ethylenedioxythiophene))−ポリ(スチレンスルホネート)(poly(styrenesulfonate))錯体(「PEDT:PSSR」)を印刷することによってトップゲート電極を堆積する。この表面活性イオン交換PEDT:PSSR錯体は、バイトロンP(ドイツのHC Starck of Leverkusen社)から作成されるもので、バイトロンPをポリ(スチレンスルホン酸)(poly(styrenesulfonic acid))で富裕化してPEDT:PSS比を10−16とした後、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム(hexadecyltrimethylammonium)で透析交換することにより作成される。
【0146】
電子移動度は、約10−4cm/Vsであり、注入によって制限される。従って、双極性自己組織化単分子膜を使って金電極を適切に機能化してその有効仕事関数を改善することにで、さらなる改善を行うことができる。
【0147】
本実施例は、本発明で教示する原則が実用的な注入接触を持つトップゲート装置にも適用できることを示すために提供される。
実施例4:発光FET
本発明による両極性発光トランジスタを製造するために、ドレイン電極14としてカルシウムおよびソース電極13として金の実施例1で説明したものと同じ構造を使った(図3a(最下部))。チャネル幅が3mmでチャネル長が100μmのシャドウマスクを介してこれら2つの金属を引き続いて蒸着した。まず最初に、ソース電極を規定しているシャドウマスクの第2の開口部を遮蔽した状態で、ドレイン電極を規定しているシャドウマスクの第1の開口部を介してカルシウムを蒸着した。次いで、第1および第2の開口部の両方を開放した状態で、金を蒸着した。第2の蒸着中、カルシウム接触は、金がかぶせられ、その電子注入特性に影響を与えることなく、反応性カルシウム接触のいくらかの封入を提供する。半導体材料として、本発明者は、無水混合異性体キシレン溶液(5重量%)からスピンした「OC1C10−PPV」)を使用した。BCBと接触して、OC1C10−PPVは、高いフォトルミネッセンス効率と比較的高い、良好にバランスされた電子および正孔の電界効果移動度(5・10−4cm/Vsの正孔移動度、および2・10−3cm/Vsの電子移動度)とを組み合わせる。
【0148】
図3bは、Vd=60でこのような方法で構成された両極性OC1C10−PPVトランジスタの移送特性を示している。ゲートバイアスが異なっていても電子および正孔輸送が明らかに誘導できている。
【0149】
図3cは、低いVdの正孔蓄積レジームで作動している両極性OC1C10−PPVトランジスタの出力特性を示している。Vdが増大すると、電子は、さらに注入され、矢印で指し示すように出力電流を急激に増大させる。本発明者は、この時点から発光を観察する。
【0150】
図3dは、異なるソース−ドレイン電圧および一定のゲート電圧で作動中の発光トランジスタにおける2つの光学顕微鏡写真を示している。チャネルの中央で電極に平行な細い線としての発光が観察される(矢印で表示)。正確な位置は、印加されるバイアス電圧で制御できる。2つの画像間におけるソース−ドレイン電圧の差は、2Vであり、値がより負になると、再結合区域は、ソース電極に向かってより近くに移動する。
【0151】
本発明は、上述の実施例に制限されるものではない。本発明の側面は、本願で説明する概念の新規かつ進歩性のある側面をすべて網羅し、また本願で説明する特徴の新規かつ進歩性のある組み合わせをすべて網羅するものである。
【0152】
出願人は、本願によって、本願で説明するそれぞれの個々の特徴およびかかる特徴の2つ以上のどのような組み合わせも、かかる特徴または特徴の組み合わせが本願で開示するどの問題点を解決するものかに関係なくまた本発明の範囲を制限することなく、かかる特徴または組み合わせが当業者の一般的な知識を照らし合わせて本明細書全体に基づいて実施できる範囲で別個に開示する。出願人は、本発明の側面がかかる個々の特徴または特徴の組み合わせのいずれからも構成され得ると指摘する。上述の説明をかんがみれば、本発明の範囲内でさまざまな改変を行い得ることは当業者にとって明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0153】
【図1】図1aおよび図1bは、それぞれ、実施例1に従ってF8BTを半導体層として使用しているトランジスタの移送および出力特性を示している。図1cは、実施例1に従ってCN−PPVを半導体層として使用しているトランジスタの移送特性を示している。図1dは、実施例1に従ってOC1C10−PPVを半導体層として使用しているトランジスタの移送特性を示している。図1eは、実施例1に従ってPPVを半導体層として使用しているトランジスタの移送特性を示している。
【図2】図2aおよび図2bは、それぞれ、実施例2に従ってF8BTを半導体層として使用しているトランジスタの移送および出力特性を示している。図2cおよび図2dは、それぞれ、実施例2に従ってCN−PPVを半導体層として使用しているトランジスタの移送および出力特性を示している。
【図3】図3aは、一般的なLFET(トップ)および特定の実施例(ボトム)の概略図を示している。(1)基板/ゲート電極、(2)誘電体、(3)ソース電極、(4)ドレイン電極、(5)電子チャネル、(6)正孔チャネル、(7)活性有機半導体、(8)再結合区域/発光、(9)ゲート電極としての高濃度にドープされたSiおよび基板、(10)300nmの熱成長SiO、(11)50nmの硬化BCB、(12)40nmのスピンされたOC10−PPV、(13)Au電極、(14)Ca電極、(15)SiO封入。図3bは、Vd=60の両極性OC1C10−PPVトランジスタの移送特性を示している。ゲートバイアスが異なっていても電子および正孔輸送が明らかに誘導できている。図3cは、低いVdの正孔蓄積レジーム(hole accummulation regime)で作動している両極性OC1C10−PPVトランジスタの出力特性を示している。Vdが増大すると、電子がさらに注入され、矢印で指し示されるように出力電流を急激に増大させる。本発明者は、この時点から発光を観察する。図3dは、作動中の発光トランジスタの光学顕微鏡写真を示している。チャネルの真ん中で電極に平行な細い線(矢印で指し示されている)として発光が観察される。正確な位置は、印加するバイアス電圧で制御できる。
【符号の説明】
【0154】
1 基板/ゲート電極
2 誘電体
3 ソース電極
4 ドレイン電極
5 電子チャネル
6 正孔チャネル
7 活性有機半導体
8 再結合区域/発光
9 ゲート電極としての高濃度にドープされたSiおよび基板
10 300nmの熱成長SiO
11 50nmの硬化BCB
12 40nmのスピンされたOC10−PPV
13 Au電極
14 Ca電極
15 SiO封入

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機ゲート誘電体層と、前記有機ゲート誘電体層と界面を形成する有機半導体層と、トランジスタのチャネル長を規定している距離Lによって互いに分離され、前記有機半導体層と接触している電子注入電極および正孔注入電極であって、前記有機半導体層と前記有機ゲート誘電体層との間の界面に沿って電荷キャリアが移動するように配置された電子注入電極と正孔注入電極とを備える両極性の発光トランジスタであって、光の発光元である有機半導体層の区域は、前記電子注入電極および前記正孔注入電極の両方からL/10よりも離れて配置されていることを特徴とする、両極性の発光トランジスタ。
【請求項2】
有機ゲート誘電体層と、前記有機ゲート誘電体層と界面を形成する有機半導体層と、前記有機半導体層と接触している電子注入電極および正孔注入電極であって、前記有機半導体層と前記有機ゲート誘電体層との間の界面に沿って電荷キャリアが移動するように配置された電子注入電極と正孔注入電極とを備える両極性の発光トランジスタであって、光の発光元である有機半導体層の区域は、前記電子注入電極および前記正孔注入電極の両方から1μmよりも離れて配置されていることを特徴とする、両極性の発光トランジスタ。
【請求項3】
有機ゲート誘電体層と、前記有機ゲート誘電体層と界面を形成する有機半導体層と、前記有機半導体層と接触している電子注入電極および正孔注入電極であって、前記有機半導体層と前記有機ゲート誘電体層との間の界面に沿って電荷キャリアが移動するように配置された電子注入電極と正孔注入電極とを備える両極性の発光トランジスタであって、光の発光元である有機半導体層の区域は、前記電子注入電極および前記正孔注入電極の両方から5μmよりも離れて配置されていることを特徴とする、両極性の発光トランジスタ。
【請求項4】
前記有機ゲート誘電体層中のトラッピング基のバルク濃度は、1018cm−3未満であり、この場合、トラッピング基は、(i)EAsemicond以上の電子親和力EAおよび/または(ii)(EAsemicond.−2eV)以上の反応性電子親和力EArxnを持つ基であることを特徴とする、請求項1ないし3の何れかに記載の両極性の発光トランジスタ。
【請求項5】
トランジスタの制御ゲート電極に印加されるバイアス電圧は、正孔注入電極に印加されるバイアス電圧と電子注入電極に印加されるバイアス電圧の間となるように選択されることを特徴とする、請求項1ないし4の何れかに記載の発光トランジスタをバイアスさせるための方法。
【請求項6】
制御ゲート電極に印加されるバイアス電圧、正孔注入電極に印加されるバイアス電圧、および電子注入電極は、再結合区域をトランジスタのチャネルに沿って所望の位置へと移動させるように調整されることを特徴とする、請求項1ないし4の何れかに記載の発光トランジスタを作動させるための方法。
【請求項7】
請求項1ないし4の何れかに定義されている発光トランジスタを作成するための方法。
【請求項8】
前記電子注入および正孔注入電極を規定する工程は、シャドウマスク蒸着を含むことを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記電子注入および正孔注入電極を規定する工程は、表面エネルギーに手助けされた印刷を含むことを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記電子注入および正孔注入電極を規定する工程は、自己整合印刷を含むことを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記電子注入および正孔注入電極を規定する工程は、斜めの角度での蒸着を含むことを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記電子注入および正孔注入電極を規定する工程は、レジストパターンによって保護されている金属膜のアンダーエッチングを含むことを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
トランジスタにおいて発光するための請求項1ないし4の何れかに記載の発光トランジスタの使用法。
【請求項14】
請求項1ないし4の何れかに定義されている発光トランジスタを備える回路、相補型回路、論理回路、またはディスプレイ。
【請求項15】
請求項14に定義されている回路、相補型回路、または論理回路を作成するための方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−54566(P2012−54566A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211888(P2011−211888)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【分割の表示】特願2006−548404(P2006−548404)の分割
【原出願日】平成17年1月17日(2005.1.17)
【出願人】(503372842)ケンブリッジ エンタープライズ リミティド (32)
【Fターム(参考)】