説明

両端給電システム

【課題】 給電装置が停止中でも装置規模を拡大することなく、給電状態を的確に把握し、保守員の安全性と作業性を確保する両端給電システムを提供する。
【解決手段】 給電監視回路(1a、1b)は、海底ケーブルの一端に接続されたケーブル終端ユニット(10a、10b)に設けられ、自陸揚局あるいは対向陸揚局の給電装置(7a、7b)から海底ケーブル(8)に供給された給電電流Ioを検出する電流検出回路(2a、2b)と、電流が流れていることを外部に表示する表示素子(3a、3b)とを備えている。さらには、海底ケーブルに給電電流Ioが流れている場合にケーブル終端ユニットの蓋を開放しようとした場合の警告ブザー(6a、6b)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は両端給電システムに関し、特に光海底ケーブルシステムにおける給電を監視する際の両端給電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光海底ケーブルの給電システムにおいて、給電装置から離れて設置されるケーブル終端ユニットには、海底ケーブルに給電電流が供給されているのか、いないのかを知る方法として、自陸揚局の給電装置からの給電中であることを示す信号を受けて状態を表示する表示器が設けられている。しかし、自陸揚局の給電装置が停止している場合、対向陸揚局からの給電が通電状態なのかそれとも停止状態なのかという判断が給電装置から離れて設置されているケーブル終端ユニットの表示器には表示されないため、容易にその区別ができないという問題があった。
【0003】
具体的には、自陸揚局の給電装置からの給電通電状態情報をケーブル終端ユニットに設けたランプなどで状態を知らせていたため、対向陸揚局の給電通電状態を知らせることができなかった。さらには、ケーブル終端ユニットと自陸揚局給電装置を接続するケーブル等が必要となるが、ケーブル終端ユニットが給電装置と離れて設置されるため装置間接続が大規模となる問題があった。
【0004】
上記問題の対策として各陸揚局の監視装置をデータ通信ネットワーク網を介して接続し、自陸揚局の監視装置にて対向陸揚局の給電状態を知る方法があるが、給電をかけようとする海底ケーブル通信システム以外の通信網が必要となり非常に大規模なシステムとなる問題があった。さらには、ケーブル終端ユニットと監視装置の接続が必要となり、システム構成が複雑になる問題があった。
【0005】
この結果、ケーブル終端ユニットの保守者が、給電電流供給状態の判断を誤ってしまい、給電中の高電圧部分に触れてしまう可能性がある。
【0006】
特許文献1の「両端給電システムにおける給電折り返し回路」では、部品の許容電流値の低減化を図るため、自局停止時に対向局からの折り返し電流を検出して、折り返し経路に使用しているダイオードを短絡させる手法を採っている。目的は異なるもののこのような手法を用いても自陸揚局の給電装置が停止している場合における対向陸揚局からの給電の様子を知ることはできない。
【0007】
特許文献2の「配電盤用扉の警報装置」では、配電盤用の扉を開くときに出力する音声警報装置を備え、保守員の感電事故防止を図っているが、この装置を光海底ケーブルの給電システムに適用したとしても、自陸揚局の給電装置が停止している場合には、警報が作動せず対向陸揚局からの給電の様子を知ることはできない。
【特許文献1】特開2003−108240号公報
【特許文献2】特開平4−67704号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記事情を鑑みて本発明では給電装置が停止中でも装置規模を拡大することなく、給電状態を的確に把握し、保守員の安全性と作業性を確保する両端給電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成する本発明の態様は、給電装置と前記給電装置より給電される終端装置を有する自局及び前記自局と同等の構成を有する1以上の対向局が互いにケーブルで接続されており、前記自局及び前記対向局の終端装置はそれぞれ前記自局及び前記対向局の給電装置による何れの給電の給電状態を監視しうる給電監視回路をそれぞれ有することを特徴とする両端給電システムにおいて、前記自局の給電装置が停止しているときでも、前記自局の給電監視回路は前記給電状態の監視結果を通知する通知手段を有するものである。
【0010】
ここで前記通知手段は、給電されていることを表示する表示手段を有することを特徴とし、前記表示手段は、給電された電流に応じて発光する発光ダイオードであると良い。
【0011】
また前記通信手段は、前記終端装置に備えられた蓋の開放を検出する蓋開放検出手段と、前記蓋開放検出手段が検出した蓋の開放と、給電されていることに対して警告表示する警告表示手段を有することを特徴とし、前記警告表示手段は、警告音を発生させるブザーであると良い。
【0012】
一方、前記給電監視回路は、給電の電流値を検出する給電電流値検出回路と、前記給電電流値検出回路が検出した電流値を表示する給電電流値表示手段を有することを特徴とする。
【0013】
また前記給電監視回路は、電流に関する所定の閾値を設定し、給電された電流と前記閾値を比較し、対応する判断結果を出力する異常検出回路と、前記異常検出回路が出力した判断結果に応じ、警報を送出する警報送出手段を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明により給電装置が停止中でも装置規模を拡大することなく、給電状態を的確に把握し、保守員の安全性と作業性を確保することができる。
また、給電状態を的確に把握し、給電の電流の異常監視し、迅速な修理を施すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態を添付図面を参照しつつ説明する。
【0016】
〈構成〉
図1は、本発明を実施する最良の形態に係る両端給電システムのブロック図である。陸揚局9aと陸揚局9bとは、海底ケーブル8を介して接続されている。陸揚局9a、9bには給電装置7a、7bおよびケーブル終端ユニット10a、10bがそれぞれ設置されている。ケーブル終端ユニット10a、10bには、給電監視回路1a、1bがそれぞれ設置されている。給電監視回路1a、1bはどちらも同じ構成であるので、以下、給電監視回路1aについてのみ説明する。
【0017】
ケーブル終端ユニット10a内の給電監視回路1aは、給電装置7aおよび海底ケーブル8に接続されており、電流検出回路2a、表示素子3a、論理積回路4a、蓋開放検出スイッチ5aおよびブザー6aにより構成される。
電流検出回路2aは、陸揚局9aあるいは陸揚局9bからの給電電流Ioの有無を調べ、表示素子3aおよび論理積回路4aに電流検出信号を発生する。
表示素子3aは、電流検出回路2aに接続され、電流検出回路2aから電流検出信号を受けて陸揚局9aあるいは、陸揚局9bの給電装置7aあるいは7bが海底ケーブル8に対して給電中であることを外部に表示する。表示素子3aの具体的な構成としては、例えば電流検出信号で発光する発光ダイオードなどでよい。
論理積回路4aは、電流検出回路2aと蓋開放検出スイッチ5aおよびブザー6aに接続され、電流検出回路2aから電流検出信号と蓋開放検出スイッチ5aからの検出信号を受けて論理積の結果をアラーム信号としてブザー6aに送出する。
蓋開放検出スイッチ5aは、ケーブル終端ユニット10aの高電圧部の蓋の開放を常に監視し、蓋開放の有無を判断する。
ブザー6aは、論理積回路4aからのアラーム信号により警告音を発生する。
【0018】
以上のような構成を有する両端給電システムは自陸揚局と対向陸揚局とのループ構成になっており、自陸揚局が停止中でも対向陸揚局から給電される仕組みになっている。停止中の自陸揚局が有する給電監視回路は、対向陸揚局から給電される給電電流をも検知・監視し得る。
【0019】
次に、給電監視回路1aの詳細な構成について説明する。この給電監視回路は、例えば電流センサ、絶対値回路および比較器の組合せで実現できる。
【0020】
図2は、給電監視回路1aの構成ブロック図である。図2において、電流検出回路2aは、電流センサ20a、絶対値回路21aおよび比較器22aから構成される。
電流センサ20aは、給電装置7a、7bからの海底ケーブル8に供給される給電電流Ioに応じた電圧信号を発生する。
絶対値回路21aは、電流センサ20aから受けた電圧信号を絶対値に変換し、比較器22aへ出力する。
比較器22aは、絶対値回路21aから受けた電圧信号が基準電圧信号を越えたら電流検出信号を表示素子3aおよび論理積回路4aに送出する。
【0021】
〈動作〉
図1の回路動作について、図3のフローチャートを参照して説明する。
電流検出回路2aは、海底ケーブル8に流れる給電電流Ioを常に監視し、給電電流Ioの有無を判断する(S1)。
給電電流Ioが検出されると電流検出信号を発生させる(S2)。
表示素子3aは、電流検出信号を受けると海底ケーブル8に対して給電中であることを外部に表示する(S3)。
蓋開放検出回路5aは、ケーブル終端ユニット10aの高電圧部の蓋の開放を常に監視し、蓋開放の有無を判断する(S4)。
論理積回路4aは、電流検出信号と蓋開放信号を同時に受けると、アラーム信号を送出する(S5)。
ブザー6aは、論理積回路4aからのアラーム信号を受けると警告音を発生させる(S6)。
【0022】
以上の処理動作により、高電圧部を持つケーブル終端ユニットに給電電流が流れているかどうかをケーブル終端ユニットに設けた表示器により容易に判断できる。このため、遠方に設置されている給電装置の給電電流メータにより電流が流れていることを確認する必要がなく、また、自陸揚局の給電装置が停止中でも対向陸揚局からの給電電流通電状態を確認できるため、保守時の安全性と作業性を向上させる。
【0023】
また、ケーブル終端ユニットに設けた給電中を示す表示器を見逃しても、誤って高電圧部に触れてしまうことを防止できる。その理由は、ケーブル終端ユニットの蓋を開放したとき、給電電流が流れていれば警告を発生する手段(例えばブザー)を設けたためである。
【0024】
また、データ通信回線網を用いなくても、対向陸揚局が給電中なのか停止中なのかを知ることができる。その理由は、海底ケーブルを介して接続されているそれぞれの陸揚局に供給される給電電流を監視しているためである。このため大規模なシステム構成とはならずシステム構築費用が大幅に削減可能となる。
【0025】
なお、上記形態は本発明を実施するための一例であってこれに限定する主旨ではない。従って、本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形することが可能である。
【0026】
その変形した他の形態の一つについて図4を参照して説明する。
図4の電流センサ20aからの出力電圧を受けて、海底ケーブルに流れている給電電流値にレベル変換するスケーリング回路30aおよびスケーリング回路30aから電圧を受けて給電電流値として表示する電圧表示器31aが設けられている。表示素子3aは給電電流Ioが流れているかのか、いないのかを判断することができるが、どのぐらい流れているかがわからないという問題がある。この他の形態では、スケーリング回路30aで電流センサ20aの変換比を実際の給電電流レベルに変換して電圧表示器31aに表示するため、給電電流値を知ることができ、給電システムの異常を判断することができ、迅速な修理を施すことができるという新たな効果を奏する。
【0027】
また、電流センサ20aからの出力電圧を受けて、給電電流の異常を設定したしきい値と比較・判断する異常検出回路32aおよび異常検出回路32aからの異常検出信号を受けて外部に警報を送出する警報送出器33aが設けられている。給電電流の異常監視は、給電装置で検出しているため給電装置が停止中は異常が検出できない問題がある。この他の形態では、ケーブル終端ユニットのみで外部警報信号を送出可能としたため、局舎内あるいは遠隔で給電装置がなくても給電電流の異常監視が可能となり、迅速な修理を施すことができる新たな効果を奏する。
【0028】
上記形態は何れも自陸揚局と対向陸揚局の2局で説明したが、2つ以上の局数においても本発明を実施しうる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明を実施する最良の形態に係る両端給電システムのブロック図である。
【図2】本発明を実施する最良の形態に係る給電監視回路1aの構成ブロック図である。
【図3】本発明を実施する最良の形態に係る給電監視回路1aの処理動作を表すフローチャートである。
【図4】本発明を実施する他の形態に係る給電監視回路1aの構成ブロック図である。
【符号の説明】
【0030】
1a、1b 給電監視回路
2a、2b 電流検出回路
3a、3b 表示素子
4a、4b 論理積回路
5a、5b 蓋開放検出スイッチ
6a、6b ブザー
7a、7b 給電装置
8 海底ケーブル
9a、9b 陸揚局
10a、10b ケーブル終端ユニット
20a 電流センサ
21a 絶対値回路
22a 比較器
30a スケーリング回路
31a 電圧表示器
32a 異常検出回路
33a 警報送出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給電装置と前記給電装置より給電される終端装置を有する自局及び前記自局と同等の構成を有する1以上の対向局が互いにケーブルで接続されており、
前記自局及び前記対向局の終端装置はそれぞれ前記自局及び前記対向局の給電装置による何れの給電の給電状態を監視しうる給電監視回路をそれぞれ有することを特徴とする両端給電システムにおいて、
前記自局の給電装置が停止しているときでも、前記自局の給電監視回路は前記給電状態の監視結果を通知する通知手段を有することを特徴とする両端給電システム。
【請求項2】
前記通知手段は、給電されていることを表示する表示手段を有することを特徴とする請求項1に記載の両端給電システム。
【請求項3】
前記表示手段は、給電された電流に応じて発光する発光ダイオードであることを特徴とする請求項2に記載の両端給電システム。
【請求項4】
前記通信手段は、
前記終端装置に備えられた蓋の開放を検出する蓋開放検出手段と、
前記蓋開放検出手段が検出した蓋の開放と、給電されていることに対して警告表示する警告表示手段を有することを特徴とする請求項1に記載の両端給電システム。
【請求項5】
前記警告表示手段は、警告音を発生させるブザーであることを特徴とする請求項4に記載の両端給電システム。
【請求項6】
前記給電監視回路は、
給電の電流値を検出する給電電流値検出回路と、
前記給電電流値検出回路が検出した電流値を表示する給電電流値表示手段を有することを特徴とする請求項1から5の何れかに記載の両端給電システム。
【請求項7】
前記給電監視回路は、
電流に関する所定の閾値を設定し、給電された電流と前記閾値を比較し、対応する判断結果を出力する異常検出回路と、
前記異常検出回路が出力した判断結果に応じ、警報を送出する警報送出手段を有することを特徴とする請求項1から5の何れかに記載の両端給電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−33952(P2006−33952A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−206852(P2004−206852)
【出願日】平成16年7月14日(2004.7.14)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【出願人】(000232254)日本電気通信システム株式会社 (586)
【Fターム(参考)】