説明

両親媒性コポリマー及びこのようなポリマーを含む組成物

【要訳】
少なくとも親水性鎖セグメント(A)および疎水性鎖セグメント(B)を含む両親媒性コポリマーであって、前記親水性鎖セグメント(A)はペプチドを含み、前記疎水性鎖セグメント(B)はアセタール基またはオルトエステル基を含む、両親媒性コポリマー。前記親水性鎖セグメント(A)は、好ましくはグルタミン/グルタミン酸単位またはアスパラギン/アスパラギン酸単位を含み、サーモゲルを形成することができる生分解性コポリマーをなす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両親媒性コポリマー、このようなポリマー及び少なくとも1つの治療活性薬剤(therapeutically active agent)を含む組成物並びに前記コポリマーを含むインプラントに関する。本発明は、更に、上記組成物を人間又は動物の体に投与することによる治療の方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
治療活性薬剤の制御された放出は、人間及び動物の治療において重要である。
【0003】
近年、この理由のため、マイクロスフィア、マイクロカプセル、リポソーム、ストランド等としてデバイスに加工された多くのポリマーが開発された。活性薬剤は、これらデバイスの内部に組み込まれ、人間又は動物の体に投与された後、種々の機構でゆっくりと放出される。米国特許4,079,038、4,093,709、4,131,648、4,138,344、4,180,646、4,304,767、4,946,931及び5,9689,543は、活性薬剤の制御された送達のために用いられることができる種々のポリマーを開示する。このようなデバイスの製造は、多くの場合面倒であり、高価であり、更に、放出動力学の非再現性という欠点を持つ可能性もある。更に、ほとんどの場合、治療薬剤に悪影響を与える可能性がある有機溶剤が用いられ、また、デバイス中に残留溶媒がある可能性があり、これは多くの場合毒性が高い。更に、デバイスを含む溶液又は分散液の投与は、患者に優しいものではない。このような溶液又は分散液の高い粘性のためである。更に、このようなデバイスは、一般的に、固体ポリマーへの組込みの最中に活性を通常損失するタンパク質の送達に有用ではない。
【0004】
少なくとも1つの親水性鎖セグメント(A)及び1つの疎水性鎖セグメント(B)を含む両親媒性コポリマーのアプリケーションにおける重要な改善が発見された。このようなコポリマーは、少なくとも1つの治療活性薬剤を含んでよい、水中のミセル又は熱可逆性ゲルを形成しうる。
【0005】
両親媒性コポリマーのミセルは、数々の有用な属性を有する。例えば、正しい大きさ(通常40nmより小さい)を有するミセルが用いられると、これらミセルは、通常の血管系では浸出しないが、通常漏れやすい血管系を有する腫瘍の中では浸出しうる。このため、腫瘍において高濃度の抗腫瘍剤を達成することが、通常の組織に過剰な毒性を与えることなく可能である。
【0006】
腫瘍標的(tumor targeting)におけるミセルとしての有用性に加えて、ミセルは、高度に非水溶性の薬剤の可溶化にも重要なアプリケーションがある。なぜなら、このような薬剤は、ミセルの疎水性のコアに組み込まれることができるからである。
【0007】
腫瘍標的及び高度に非水溶性の薬剤の可溶化におけるミセルの使用は、V. P. Torchilin, Structure and design of polymeric surfactant−based drug delivery systems”, J. Controlled Release 73 (2001) 137−172, and by V. P. Torchilin, “Polymeric Immunomicelles: Carriers of choice for targeted delivery of water−insoluble pharmaceuticals”, Drug Delivery Technology, 4 (20004) 30−39において詳しく説明されている。
【0008】
炎症を起こした組織も漏れやすい血管系を有するため、これらの薬剤を適切な大きさのミセルに組み込むことによって、このような組織中において高濃度の抗炎症剤を達成することも可能である。
【0009】
ポリエチレングリコール及びポリD,L−乳酸に基づくミセルは、J. Lee, “Incorporation and release behaviour of hydrophobic drug in functionalized poly(D,L−lactide)−block poly(ethylene oxide) micelles” J. Controlled Release, 94 (2004) 323−335において検証されている。ポリエチレングリコール及びポリ(β−ベンジル−L−アスパラギン酸塩)に基づくミセルは、Kataoka, G. Kwon, “Block copolymer micelles for drug delivery: loading and release of doxorubicin” J. Controlled Release, 48 (1997) 195−201において検証されている。ポリエチレングリコール及びポリオルトエステルに基づくミセルはToncheva et. al., “Use of block copolymers of poly(ortho esters) and poly(ethylene glycol) micellar carriers as potential tumour targeting systems”, J. DrugTargeting, 11 (2003) 345−353.において述べられている。
【0010】
特定の組成を有する両親媒性コポリマーがいわゆるサーモゲルを形成することも可能である。このようなコポリマーは、低温ではコポリマーは水溶性であり、より高い温度ではコポリマーは不溶となりゲルを形成するという独特な特性を有する。好ましくは、このようなコポリマーは室温では水溶性であり、37℃の体温では水に不溶となりゲルを形成する。
【0011】
コポリマー及び治療活性薬剤を含む組成物は、室温では、小さいゲージ針を用いて低い粘性の水溶液として投与されることができ、これにより患者への不快感を最小化することができる。体温ではすぐに、組成物は、体内の所望の場所に局所化される、明確に定義されたゲルを形成する。更に、このような物質は、治療活性薬剤としてタンパク質とともに使用されるのに特に適している。なぜなら、タンパク質は、タンパク質の特性に影響を与えることなく両親媒性コポリマーを含むのと同じ溶液に単純に溶解され、該溶液は注入されるからである。
【0012】
非常に細い針が使用できることは、サーモゲルを、眼球内注入に、特に硝子体内注入に、適したものにする。このような注入は、年齢に関連した黄斑変性(目の硝子体の中の血管の成長)を含む目の病気の処置にとって特に興味深いものである。
【0013】
治療活性薬剤は、拡散によって、又は、拡散と浸食との組み合わせによって、両親媒性コポリマーでできたミセル又はサーモゲルからゆっくりと放出される。最終的には、両親媒性コポリマーは、分解して、体から代謝又は除去されることができる破片にならなければならない。
【0014】
サーモゲルは、詳しく研究されている。最も詳しく研究されたサーモゲル化ポリマーは、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)である。このポリマーは、32℃より下で水溶性であり、温度が32℃より高くなると急激に沈殿する。この温度は、下限臨界溶液温度、すなわちLCSTとして知られている。従って、このようなポリマーは、室温では低い粘性の溶液として小径針を用いて注入されることができ、組織内に入るとすぐに沈殿して明確に定義された貯蔵所(depot)を形成する。しかし、このようなポリマーは非分解性である。このようなポリマーは、Hoffman, in L. C. Donget. al., “Thermally reversible hydrogels:III.Immobilization of enzymes for feedback reaction control”, J. Controlled Release, 4 (1986) 223−227において詳しく説明されている。
【0015】
ポリ(乳酸・グリコール酸)コポリマーを疎水性セグメントとして用い、ポリエチレングリコールを親水性セグメントとして用いるサーモゲルは、詳しく研究され、多くの特許及び刊行物に説明されている:米国特許5,702,717、6,004,573、6,117,949、6,201,072 B1及びG. Zentner, J. Controlled Release, 72 (2001) 203−215である。
【0016】
疎水性ポリ(乳酸・グリコール酸)バックボーン及び親水性ポリエチレングリコールグラフト、あるいはポリエチレングリコールバックボーン及びポリ(乳酸・グリコール酸)グラフトを有する両親媒性グラフトコポリマーに基づくサーモゲルも説明されている。親水性バックボーンを有するサーモゲル化ポリマーも当技術分野で知られている。たとえば、Macromolecules, 33 (2000) 8317−8322中でPEG−g−PLGAである。
【0017】
既知の両親媒性コポリマーの問題は、コポリマーが完全に分解して体から除去されず、高分子量分解生成物、たとえばポリエチレングリコール(PEG)が、体内に残留して細胞内で蓄積することができるということである。
【0018】
活性薬剤の繰り返し投与が必要な幾つかのアプリケーションでは、例えば、薬剤を含む熱可逆性ゲルの注入では、非生分解性材料(ポリエチレングリコールを含む材料を含む)は、大きな残留分子の形成に至る可能性がある。血管組織において、これらの大きな分子は、しばしば、血液輸送又はリンパ輸送によって体外に輸送されることができる。しかし、脳、目のガラス体又は椎間板を含む場所では、大きな分子は、血液−脳バリア、血液−目バリア又は線維性被包のため、逃れることができない。生分解なしには、これらの大きな分子はこれらの組織内に蓄積し、毒性の問題又は被包による傷の形成を生じる可能性が高い。ポリエチレングリコールの分解の機構及び分解により生じる毒性の問題(分解は、バイオメディカルアプリケーションにおいて用いられるものよりも小さい非常に短いポリエチレングリコールでは起こる)は、Herold et. Al., “Oxidation of polyethylene glycols by alcohol dehydrogenase”, Biochem. Pharmacol., 38(1989) 73−76において検証されている。通常バイオメディカルアプリケーションで用いられるポリエチレングリコールは、1000Daより高い分子量を有し、これは分解を妨げる。これらが血液によって輸送されることができるとき、これらは、Yamaoka et. Al., “Distribution and Tissue Uptake of Poly(ethylene glycol) with Different Molecular Weights after Intravenous Administration to Mice”, J. Pharm. Sci., 83(1994) 601−606において示されたように、通常肝臓及び腎臓に行き着く。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、これらの及び他の課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、請求項1に関する。
【0021】
本発明の両親媒性コポリマーは、ブロックコポリマー又はグラフトコポリマーであってよい。ブロックコポリマーの場合、コポリマーは、A(BA),B(AB)又は(AB)であってよく、ブロックAは親水性鎖セグメント(A)であり、ブロックBは疎水性鎖セグメント(B)であり、xは1〜5の整数である。両親媒性コポリマーが、グラフトコポリマーであって、該コポリマーのポリマーバックボーンが親水性鎖セグメント(A)又は疎水性鎖セグメント(B)であり、ポリマーグラフト鎖は、バックボーンが親水性のとき疎水性鎖セグメント(B)であり、バックボーンが疎水性のとき親水性セグメント(A)である、グラフトコポリマーであってもよい。
【0022】
本発明の文脈において、生分解とは、生命体の活動を含む生物環境の活動(特に生理的pH及び温度における、)による両親媒性コポリマーの分解、劣化又は消化を指す。好ましくは、生分解は、温血動物及び人間において起こる。本発明における生分解の主要な機構は、両親媒性コポリマーのモノマーユニット間及び内での結合の加水分解である。具体的な反応は、たとえば、アセタール、オルトエステル、エステル及び炭酸塩の加水分解(化学的又は酵素的)、ペプチドに基づく鎖のアミド結合のタンパク質分解、及び、自然にある分子(乳酸、グリコール酸及びアミノ酸を含むがこれらに限定されない)を生じる反応である。
【0023】
本発明の利点は、これらすべてのポリマーが、in situで、目又は脳の組織−血液バリアを越えて容易に輸送されることができる分子に分解する、あるいは、in situで組織によって代謝されるということである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】水中のポリマーの典型的な粘度温度を示す。ポリマー、治療薬剤及び他の化合物を含む完全な組成を作ると、ηsolは増加することができ、また、ηgelも増加する。
【0025】
親水性鎖セグメント(A)は、ペプチドを含む。ペプチドは、少なくとも2つのアミノ酸又はアミノ酸誘導体の連続体である。好ましくは、親水性鎖セグメントは、グルタミン/グルタミン酸単位又はアスパラギン若しくはアスパラギン酸単位を含む。アスパラギンはアスパルタミンのIUPAC名である。
【0026】
好ましくは、グルタミン又はグルタミン酸単位の例は、
【化1】

の構造を有する一方で、アスパラギン又はアスパラギン酸基の好ましい例は、
【化2】

の構造を有し、ここで、R=OH、OCH、NH−(CH−)OH、N−(CH−CH−OH)、NH−(CH−CH−O−)H、NH−CH−CH(OH)−CH−OH、NH−(CH−)O−CO−CH=CH、NH−(CH−)O−CO−C(CH)=CH、N−(CH、N−CH−(CHである。
【0027】
好ましくは、親水性鎖セグメント(A)は、N−(ヒドロキシアルキル)−L−グルタミン、L−グルタミン酸、N−(ヒドロキシアルキル)−L−アスパラギン、L−アスパラギン酸、N−アルキル−L−グルタミン、N−アルキル−L−アスパラギン又はこれらの組み合わせのモノマー単位を含む。より好ましくは、セグメント(A)は、N−(2−ヒドロキシエチル)−L−グルタミン又はN−イソプロピル−L−グルタミン(このようなセグメントはポリ[N−(2−ヒドロキシエチル)−L−グルタミン]又はポリ[イソプロピル−L−グルタミンとも呼ばれる]のモノマー単位を含む。更に好ましくは、親水性鎖セグメントは、ポリ[N−(2−ヒドロキシアルキル)−L−グルタミン]、ポリ[L−グルタミン酸]、ポリ[N−ヒドロキシアルキル−L−アスパラギン]、ポリ[L−アスパラギン酸]、ポリ[N−アルキル−L−グルタミン]、ポリ[N−アルキル−L−アスパラギン]である。
【0028】
アルキルは、直鎖若しくは分岐した1〜20の炭素原子を有するヒドロカルビル基又は3〜20の炭素原子を有する環状基を指す。アルキル基の例は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、n−ブチル及びt−ブチルを含む。更に、ヒドロキシアルキルは、一又は複数の炭素にヒドロキシル基が付いたアルキル鎖を指す。ヒドロキシアルキル基の例は、n−ヒドロキシエチル−、n−ヒドロキシブチル−、1,3−ジヒドロキシイソプロピル−を含む。
【0029】
上記のモノマー単位を含む鎖セグメントは、生分解性で親水性であり、これらは種々の明確に規定された分子量を持つように作製されることができる。これは、明確に規定された構造を有するコポリマーの作製を可能にし、これにより、コポリマーから明確に規定されたミセル又はサーモゲルが形成されることができ、更に、治療活性薬剤の放出キネティクスに良好な再現性が達成できる可能性がある。
【0030】
疎水性鎖セグメント(B)は、アセタール基、オルトエステル基又はこれらの組み合わせを含む。アセタール基の好ましい例は、以下の構造を有し、
【化3】

ここで、R’=C〜Cアルキル基である(式I〜IVで使用される)。
オルトエステル基の好ましい例は、以下の構造を有し、
【化4】

ここで、R=H又はC〜Cアルキル基である(式V〜VIIIで使用される)。
【0031】
オルトエステル基を含む疎水性セグメントを作るのに用いられるモノマーの例は、例えば以降に規定される式IXのものを含み、更に、ジビニルエーテル、たとえば1−4−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、1−4−ブタノールジビニルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジビニルエーテル、及び、適切なジオール又はジオールの混合物を含む。ジオールは、例えば、1−4−シクロヘキサンジメタノール、1−4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールを含む。
【0032】
本発明の他の好ましい実施例では、アセタール及びオルトエステル部分(moieties)は、オルトエステルジエン及びジビニルエーテルの両方を用いて同一の疎水性セグメントに組み合わせられることができる。オルトエステルジエンはジビニルエーテルよりもずっと速くジオールと反応するので、オルトエステルジエンをジオールに変換し、次いでこれをジビニルエーテルと反応させるか又はこの逆を行い、ジエン間での競争を制限することが好ましい。
【0033】
他の疎水性セグメント、例えば、ポリ−L−乳酸、ポリ−D,L−乳酸、ポリ(乳酸−グリコール酸)(乳酸)、グリコール酸、ポリ酸無水物、ポリフォスファゼン、ポリケタールも用いられることができる。
【0034】
更に、これらの疎水性セグメントのどの組み合わせでも用いられることができる。
【0035】
本発明による好ましい両親媒性コポリマーは、ポリ[N−ヒドロキシアルキル−L−グルタミン]−ポリアセタール、ポリ[N−ヒドロキシアルキル−L−グルタミン]−ポリアセタール−ポリ[N−ヒドロキシアルキル−L−グルタミン]、ポリアセタール−ポリ[N−ヒドロキシアルキル−L−グルタミン]−ポリアセタールブロックコポリマー、ポリアセタール−ポリ[N−ヒドロキシアルキル−L−グルタミン]グラフトコポリマー、ポリ[N−ヒドロキシアルキル−L−グルタミン]−ポリ(オルトエステル)、ポリ[N−ヒドロキシアルキル−L−グルタミン]−ポリ(オルトエステル)−ポリ[N−ヒドロキシアルキル−L−グルタミン]、ポリ(オルトエステル)−ポリ[N−ヒドロキシアルキル−L−グルタミン]−ポリ(オルトエステル)ブロックコポリマー、ポリ(オルトエステル)−ポリ[N−ヒドロキシアルキル−L−グルタミン]グラフトコポリマー、ポリ[N−ヒドロキシアルキル−L−アスパラギン]−ポリアセタール、ポリ[N−ヒドロキシアルキル−L−アスパラギン]−ポリアセタール−ポリ[N−ヒドロキシアルキル−L−アスパラギン]、ポリアセタール−ポリ[N−ヒドロキシアルキル−L−アスパラギン]−ポリアセタールブロックコポリマー、ポリアセタール−ポリ[N−ヒドロキシアルキル−L−アスパラギン]グラフトコポリマー、ポリ[N−ヒドロキシアルキル−L−アスパラギン]−ポリ(オルトエステル)、ポリ[N−ヒドロキシアルキル−L−アスパラギン]−ポリ(オルトエステル)−ポリ[N−ヒドロキシアルキル−L−アスパラギン]、ポリ(オルトエステル)−ポリ[N−ヒドロキシアルキル−L−アスパラギン]−ポリ(オルトエステル)ブロックコポリマー、ポリ(オルトエステル)−ポリ[N−ヒドロキシアルキル−L−アスパラギン]グラフトコポリマー、ポリ[N−アルキル−L−グルタミン]−ポリアセタール、ポリ[N−アルキル−L−グルタミン]−ポリアセタール−ポリ[N−アルキル−L−グルタミン]、ポリアセタール−ポリ[N−アルキル−L−グルタミン]−ポリアセタールブロックコポリマー、ポリアセタール−ポリ[N−アルキル−L−グルタミン]グラフトコポリマー、ポリ[N−アルキル−L−グルタミン]−ポリ(オルトエステル)、ポリ[N−アルキル−L−グルタミン]−ポリ(オルトエステル)−ポリ[N−アルキル−L−グルタミン]、ポリ(オルトエステル)−ポリ[N−アルキル−L−グルタミン]−ポリ(オルトエステル) ブロックコポリマー、ポリ(オルトエステル)−ポリ[N−アルキル−L−グルタミン]グラフトコポリマー、ポリ[N−アルキル−L−アスパラギン]−ポリアセタール、ポリ[N−アルキル−L−アスパラギン]−ポリアセタール−ポリ[N−アルキル−L−アスパラギン]、ポリアセタール−ポリ[N−アルキル−L−アスパラギン]−ポリアセタールブロックコポリマー、ポリアセタール−ポリ[N−アルキル−L−アスパラギン]グラフトコポリマー、ポリ[N−アルキル−L−アスパラギン]−ポリ(オルトエステル)、ポリ[N−アルキル−L−アスパラギン]−ポリ(オルトエステル)−ポリ[N−アルキル−L−アスパラギン]、ポリ(オルトエステル)−ポリ[N−アルキル−L−アスパラギン]−ポリ(オルトエステル)ブロックコポリマー、ポリ(オルトエステル)−ポリ[N−アルキル−L−アスパラギン]グラフトコポリマー、ポリ(L−グルタミン酸)−ポリアセタール、ポリ(L−グルタミン酸)−ポリアセタール−ポリ(L−グルタミン酸)、ポリアセタール−ポリ(L−グルタミン酸)−ポリアセタールブロックコポリマー、ポリアセタール−ポリ(L−グルタミン酸)グラフトコポリマー、ポリ(L−グルタミン酸)−ポリ(オルトエステル)、ポリ(L−グルタミン酸)−ポリ(オルトエステル)−ポリ(L−グルタミン酸)、ポリ(オルトエステル)−ポリ(L−グルタミン酸)−ポリ(オルトエステル)ブロックコポリマー、ポリ(オルトエステル)−ポリ(L−グルタミン酸)グラフトコポリマー、ポリ(L−アスパラギン酸)−ポリアセタール、ポリ(L−アスパラギン酸)−ポリアセタール−ポリ(L−アスパラギン酸)、ポリアセタール−ポリ(L−アスパラギン酸)−ポリアセタールブロックコポリマー、ポリアセタール−ポリ(L−アスパラギン酸)グラフトコポリマー、ポリ(L−アスパラギン酸)−ポリ(オルトエステル)、ポリ(L−アスパラギン酸)−ポリ(オルトエステル)−ポリ(L−アスパラギン酸)、ポリ(オルトエステル)−ポリ(L−アスパラギン酸)−ポリ(オルトエステル)ブロックコポリマー、ポリ(オルトエステル)−ポリ(L−アスパラギン酸)グラフトコポリマーを含む。
【0036】
本発明によるグラフトコポリマーは、一般に、数平均分子量5000〜120000Da、好ましくは10000〜80000、より好ましくは15000〜50000を有する。これらのグラフトコポリマーについては、疎水性バックボーンは、好ましくは数平均分子量3000〜40000Daを有する。これらのグラフトコポリマーは、例えば、500〜3000Daの重量を有する3〜50の親水性側鎖(およそ2〜20のアミノ酸誘導体である)を有してよい。一般に、グラフトコポリマーは、側鎖がより高い分子量を有するときにはより少ない側鎖を有してよく、側鎖がより低い分子量を有するときにはより多い数の側鎖を有してよい。
【0037】
本発明によるブロックコポリマーは、分子量300〜30000Daを有する親水性Aブロック(2〜200のアミノ酸誘導体になるであろう)及び約500〜40000Daの分子量を有する疎水性ブロックB(4〜300のモノマーになるであろう)を有してよい。
【0038】
本発明による適切なポリマーの例は、また、式I〜VIIIに示されたポリマーである。
【0039】
式I。グラフトコポリマー。以下に示される2つのモノマー単位のランダムな配列からなるコポリマー。各モノマー単位の数は、1〜300の整数である。
【0040】
【化5】

【0041】
ここで、R’はC〜Cアルキル鎖、s=2〜20の整数、q及びrは1〜20の独立した整数、pは3〜30の整数、B及びB’はC 〜Cアルキル鎖である。A及びA’は、R、R又はこれらの組み合わせでありうる。
は、
【化6】

から選択され、ここでbは1〜12の整数であり、

【化7】

であり、ここでRはH又はC〜Cアルキル鎖であり、yは1〜10の整数である。
【0042】
=(CH
zは1〜6の整数、
=OH、OCH、NH−(CH−)OH、N−(CH−CH−OH)、NH−(CH−CH−O−)H、NH−CH−CH(OH)−CH−OH、NH−(CH−)O−CO−CH=CH、NH−(CH−)O−CO−C(CH)=CH、N−(CH、N−CH−(CHである。
z は1〜6の整数である。
=CO−CH、CO−CH=CH、CO−C(CH)=CHである。
【0043】
好ましくは、Rは−CH−又は−CH−CH−基である。
【0044】
式II。ABブロックコポリマー。
【0045】
【化8】

【0046】
ここで、A、A’、R’、R、R及びRは式Iにおいて定義されたものと同じであり、
nは2〜200の独立した整数であり、
mは2〜150の独立した整数であり、
=H、R、R10、CH(R’)−O−R10であり、
10=C〜C16アルキル鎖(直鎖又は分岐)、シクロヘキシルである。
【0047】
式III。ABAブロックコポリマー。
【0048】
【化9】

【0049】
ここで、A、A’、R’、R、R及びRは式Iにおいて定義されたものと同じであり、
n及びn’は2〜200の独立した整数であり、
mは2〜150の独立した整数である。
【0050】
式IV。BABブロックコポリマー。
【0051】
【化10】

【0052】
ここで、A、A’、R’、R、R及びR10は式IIにおいて定義されたものと同じであり、
nは2〜200の独立した整数であり、
mは2〜150の独立した整数である。
【0053】
式V。グラフトコポリマー。以下に示される2つのモノマー単位のランダムな配列からなるコポリマー。各モノマー単位の数は、2〜300の整数である。
【0054】
【化11】

【0055】
ここで、A、B、B’、R、R及びRは式Iにおいて定義されたものと同じであり、
=H、C〜Cアルキル鎖である。
【0056】
式VI。ABブロックコポリマー。
【0057】
【化12】

【0058】
ここで、A、R、R、R及びRは式IIにおいて定義されたものと同じであり、
は式Vにおいて定義されたものと同じであり、
nは2〜200の独立した整数である。
mは2〜150の独立した整数である。
【0059】
式VII。ABAブロックコポリマー。
【0060】
【化13】

【0061】
ここで、A、R、R及びRは式Iにおいて定義されたものと同じであり、
は式Vにおいて定義されたものと同じであり、
n及びn’は2〜200の独立した整数であり、
mは2〜150の独立した整数である。
【0062】
式VIII。BABブロックコポリマー。
【0063】
【化14】

【0064】
ここで、A、R、R及びR10は式IIにおいて定義されたものと同じであり、
は式Vにおいて定義されたものと同じであり、
nは2〜200の独立した整数であり、
mは2〜150の独立した整数である。
【0065】
式IX。ポリ(オルトエステル)疎水性セグメントのケテンアセタールモノマー単位(それぞれ構造1、2及び3)。
【0066】
【化15】

【0067】
【化16】

【0068】
【化17】

【0069】
は式Vにおいて定義されたものと同じであり、
11=−(CH−、−(CH−O−(CH−であり、
dは1〜10の整数であり、e及びfは1〜6の独立した整数である。
【0070】
[N−(2−ヒドロキシエチル)−L−グルタミン]を含む親水性鎖セグメント(A)は、疎水性鎖セグメントのアミノ基を用いて重合を開始して、グルタミンエステルの適切に置換されたN−カルボキシル酸無水物の重合によって作製されることができる。疎水性鎖セグメントのアミノ基は、重縮合反応の最中にアミンを含むアルコール又はジオールを組み入れることによって導入されることができる。アミンを含むアルコール、例えばFmoc−アミノエタノール(Fmoc=9H−フルオレン−9−イルメトキシカルボニル))を、疎水性セグメント縮合に用いることにより、保護されたアミン末端基を有するポリマーが合成されることができ、両親媒性ブロックコポリマー、例えば式II、III,VI及びVIIのものの形成にいたる。Fmoc−セリノールを重縮合のモノマーとして用いるとき、アミノ基をポリマー鎖に沿って有する疎水性鎖セグメントが形成し、これは、両親媒性グラフトコポリマー、例えば式I及びIVのものを作製するのに用いられることができる。他のアミン含有アルコール及びジオールが、当業者によって用いられることができる。
【0071】
最後の合成ステップにおいて、2−アミノエタノール等のアミンによるグルタミンの保護された側鎖のアミノ分解は、[N−(2−ヒドロキシエチル)−L−グルタミン]を生じる。このアミノ分解ステップは、他のアミン(4−アミノブタノール、N−イソプロピルアミンを含むがこれらに限定されない)を用いて[N−(4−ヒドロキシブチル)−L−グルタミン]又は[N−(イソプロピル−L−グルタミン]を生じることができる。
【0072】
グルタミンは、アスパラギンで置換されて[N−(2−ヒドロキシエチル)−L−アスパラギン]又はL−アスパラギンの他の誘導体を含む親水性鎖セグメントを作製することができる。
【0073】
別の実施例においては、疎水性セグメント及び親水性セグメントのアミノ基の間にスペーサが挿入されて、アミノ基を疎水セグメントポリマー鎖から更に遠ざけることができる。スペーサは、例えば、天然及び合成のアミノ酸、n−アミノ−アルカノイック酸(C〜C16)及びこれらの酸ハロゲン化物及び無水物誘導体を含む。アミノ基及びカルボキシル酸基の末端基を有するヘテロ−二官能性ポリエチレングリコールも利用可能である(1〜8のエチレングリコール単位)。スペーサのアミノ部分は、保護されて、これを疎水性鎖セグメントと反応させて次いで親水性セグメント形成の前に脱保護されることができる。
【0074】
親水性鎖セグメントを合成する代わりの手法は、例えばイースト及びバクテリアを含む生命体を用いてグルタミン又はアスパラギンポリペプチドを作製する分子生物学を用いるものである。
【0075】
アセタール基を含む疎水性鎖セグメント(B)は、トランスアセタール化反応によって作製されることができ、これは、平衡反応であり、低分子量副産物(通常アルコール)を除くことにより高分子量に進められなければならない。好ましくは、これらの鎖セグメントは、J. Heller et. al., “Preparation of polyacetals by the reaction of divinyl ethers and polyols” J. Polymer Sci., Polymer Letters Ed., 18 (1980) 293−297 and in U.S. Patent No. 4,713,441において説明されるように、ポリオールとジビニルエーテルとの反応によって作製される。
【0076】
オルトエステル基を含む鎖セグメントは、ジケテンアセタール3,9−ジエチリデン−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(DETOSU、図9の構造1を参照のこと)へのポリオールの付加によって作製されることができる。これらの作製及びアプリケーションは、Heller, Poly (Ortho Esters), Advances in Polymer Science, Vol.107, (1993) 41−92 and Heller, et. al., Poly(ortho esters): Synthesis, characterization, properties and uses, Adv. DrugDelivery Rev., 54 (2002) 1015−1039において詳しく検証されている。
【0077】
オルトエステル基を含む鎖セグメントは、式IXの構造2及び3を用いて作製されることもできる。構造2は、Newsome et. al., US 6,863,782において説明されたように作製されることができる。構造3は、Crivello et. al., Ketene acetal monomers: synthesis and characterization, J. Polymer Sci., Part A: Polymer Chem., 34 (1996) 3091−3102において説明されたように作製されることができる。
【0078】
当業者によって、ポリマー鎖の伸張を停止することができることにより、鎖停止剤を用いて疎水性鎖セグメントの最終分子量を制御することができることが知られている。I本発明において、鎖停止剤として用いられる分子は、例えば、モノアルケン、好ましくはモノビニルエーテル又はモノアルコールである。本発明の疎水性鎖セグメントの鎖停止剤の他のカテゴリは、酸ハライド、無水物及び活性化エステルを含む。最も好ましくは、低い毒性を有するアルコール、例えば、イソプロピルアルコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル又はジエチレングリコールモノブチルエーテルは、効率的な鎖停止剤である。
【0079】
N−(2−ヒドロキシエチル)−L−グルタミンを含む鎖セグメントは、2つの際立って異なった方法によって両親媒性ブロックコポリマーに組み入れられることができる。1つの方法では、疎水性のアミン末端ブロックが作製され、好ましくは、ポリアセタール、ポリ(オルトエステル)又は2つの末端アミノ基を有する2つの基の組み合わせが、適切に置換されたN−カルボキシル酸無水物の重合を開始するのに用いられる。疎水性バックボーンを有するグラフトコポリマーが、ポリアセタール、ポリ(オルトエステル)又はペンダントアミノ基を有するこれら2つの基の組み合わせを用いて作製されることができ、適切に置換されたN−カルボキシル酸無水物の重合がペンダントアミノ基によって開始される。
【0080】
第2の方法では、ブロック又はグラフトコポリマーが、適切に一置換されたポリ[N−(2−ヒドロキシエチル)−L−グルタミン]をポリマーに、好ましくはポリアセタール、ポリ(オルトエステル)又はアミノ末端基若しくはペンダントアミノ基を有するこれら2つの基の組み合わせに、結合することによって形成される。これら2つの方法のうち、ポリアセタール、ポリ(オルトエステル)又はこれら2つの基の組み合わせの末端又はペンダントアミノ基による適切に置換されたN−カルボキシル酸無水物の開始が好ましい。なぜなら、未反応ポリ[N−(2−ヒドロキシエチル)−L−グルタミン]セグメントの困難な除去が必要でないからである。
【0081】
第3の方法では、ポリ[N−(2−ヒドロキシエチル)−L−グルタミン]等の親水性セグメントが、アミン及びカルボキシル酸を含む開始剤を用いてL−グルタミン酸のN−カルボキシル酸無水物エステルから形成されることができる。生じるカルボキシ末端親水性セグメントは、アミンを含む予め形成された疎水セグメントと反応して両親媒性コポリマーを生じることができる(ブロック又はグラフト)。カルボキシル酸部分の末端基を有するポリ[N−(2−ヒドロキシエチル)−L−グルタミン]がSchacht et. al. によりUS7,005,123B1で説明されている。
【0082】
本発明のコポリマーは、生分解性ポリマーが有用であるあらゆる用途に有用性を見出す。例えば、治療活性薬剤の持続的放出の賦形剤、整形外科用インプラント、分解性縫合糸等である。これらはまた、親水性及び疎水性セグメントの両方を有するブロック及びグラフトコポリマーとしての性質が特別な利益を与えるようなアプリケーションに特別な有用性を見出し、これらの用途が以下でより詳細に説明される。
【0083】
幾つかのアプリケーションにおいては、ポリマー架橋を達成するポリマー鎖間での化学反応が起こることを可能にする特別な部分がポリマー鎖に導入されなければならないかもしれない。架橋は通常、ポリマーの機械特性及び分解プロフィールを修正するために行われる。末端のヒドロキシル及びアミノ基を介してこれらの部分を上記のポリマーに導入する当業者に知られた多くの方法があり、これらは主鎖及び/又は側鎖の機能化として知られている(例としては式IからVIIIのR,R及びR部分を参照のこと)。これらの部分は、例えば、アクリレート、メタクリレート、ビニル基、スチリル基、アクリルアミド、メタクリルアミド、チオール及びチオール−エン二重系を含んでよい。これらの部分の活性化及び分子間反応は、通常、放射源、外部化学反応若しくは刺激又はこれらの組み合わせによって引き起こされる。放射の例は、熱、赤外線源、紫外線源、電子ビーム源、マイクロ波源、X線源、可視光源(単色又はそうでない)及びガンマ線を含む。外部反応又は刺激は、例えば、pH、酸化/還元反応、in vivoに存在する化学品(気体、タンパク質、酵素、抗体等)との反応、体内への導入に際して組成物に加えられる化学品との反応(二重系として知られる、例えば2以上の反応基を含む分子)を含む。
【0084】
本発明は、少なくとも1つの両親媒性コポリマー及び少なくとも1つの治療活性薬剤を含む組成物にも関する。
【0085】
治療活性薬剤とは、当業者は、病気を予防、遅延又は治療することができる分子、細胞又は細胞材料のあらゆる組み合わせを指す。治療活性薬剤は、タンパク質、酵素、ペプチド、核酸配列(DNA及びRNA等)、合成遺伝子ベクターの錯体(ポリプレックス)、抗原、抗体、毒素、ウイルス、ウイルスに基づく物質、細胞、細胞サブ構造、合成薬、天然薬及びこれらから導出された物質を含む。
【0086】
活性剤及びこれらの薬学的に許容可能な塩の例は、薬学、農業又は化粧剤である。適切な薬剤は、局所若しくは病巣内適用(例えば、擦りむいた皮膚、裂傷、刺し傷等及び切開痕への適用を含む)又は皮下、皮内、筋肉内、眼球内若しくは関節内注射等の注射により対象に投与されうる、局所的又は組織的に動作する薬学的活性剤を含む。これら薬剤の例は、例えば、抗感染薬(抗生物質、抗ウイルス剤、殺菌剤、疥癬虫殺虫剤又はシラミ駆除剤)、消毒剤(たとえば塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、酢酸マフェニド、塩化メチルベンゼトニウム、ニトロフラゾン、ニトロメルゾール等)、ステロイド(例えばエストロゲン、プロゲスチン、アンドロゲン、アドレノコルチコイド等)、治療ポリペプチド(例えば、インスリン、エリスロポエチン、骨形態形成タンパク質(骨形態形成タンパク質等)等)、鎮痛剤、抗炎症剤(例えば、アスピリン、イブプロフェン、ナプロキセン、ケトロラク、COX−1阻害剤、COX−2阻害等)、癌化学療法剤(例えば、メクロルエタミン、シクロホスファミド、フルオロウラシル、チオグアニン、カルマスティン、ロムスチン、メルファラン、クロラムブシル、ストレプトゾシン、メトトレキサート、ビンクリスチン、ブレオマイシン、ビンブラスチン、ビンデシン、ダクチノミシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、タモキシフェン等)、麻薬(モルヒネ、メペリジン、コデイン等)、局所麻酔薬(例えば、アミド又はアニリド型局所型麻酔薬(例えば、ブピバカイン、ジブカイン、メピバカイン、プロカイン、リドカイン、テトラカイン等))、制吐剤(例えば、オンダンセトロン、グラニセトロン、トロピセトロン、メトクロプラミド、ドンペリドン、スコポルアミド等)、抗血管新生剤(例えば、血管阻害剤、コントートロスタチン、抗VGF等)、多糖類、ワクチン、アンチセンスオリゴヌクレオチドを含む。
【0087】
本発明はまた、局所的に作用する活性剤、例えば、収斂剤、制汗剤、刺激剤、発赤剤、発疱剤、硬化剤(sclerosingagents)、腐食剤(caustics)、痂皮剤(escharotics)、角質溶解剤、日焼け止め及び種々の皮膚剤(色素沈着減少及び鎮痒剤を含む)にも適用されることができる。活性剤という用語は、更に、殺生物剤、例えば殺菌剤、殺虫剤及び除草剤、植物成長促進又は阻害剤、防腐剤、消毒剤、空気清浄剤並びに栄養剤を含む。上記の活性剤のプロドラッグは本発明の範囲に含まれる。
【0088】
ミセル系
本発明の一実施例において、組成物は、コポリマーのミセル及びこれらミセル内に封入された治療活性薬剤を含む。
【0089】
これらコポリマーが水中に入れられると、この中では親水性セグメントは可溶であり疎水セグメントは不溶であり、これらの濃度に応じて、ポリマー鎖は自然に自己集合してミセル構造を形成しうる。
【0090】
このようなミセル構造の1つの主要な用途は、疎水性コア内に疎水性薬剤を封入して可溶化する能力である。薬剤は、ミセルを含む水性媒体に加えられ、単純な撹拌によって、穏やかな温度への加熱によって又は超音波処理によって組み入れられることができる。あるいは、揮発性有機溶媒に溶解された薬剤は、予め形成されたミセルの水性溶液に加えられ、これに、系からの溶媒蒸発が続く。
【0091】
疎水性ドラッグの効率的な封入は、高度に疎水性のコアを必要とする。ポリアセタール、ポリ(オルトエステル)又はこれらのコポリマーの高い疎水性は、ポリ(乳酸−グリコール酸)共重合体等の他の生分解性セグメントに対して大きく向上した封入効率を有するミセル系の作製を可能にする。
【0092】
ミセル構造に組み入れられることができる抗がん剤のいずれもこの使用に適しているが、ミセル腫瘍標的に特に適している抗がん剤は、低い水溶性を有するもの、例えば、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、ミトミシンC、パクリタキセル、シス−プラチン、カルボプラチン等である。
【0093】
他の薬剤は、抗がんタンパク質、例えばネオカルジノスタチン、L−アスパリギナーゼ等及び光動力治療に用いられる光増感剤を含んでよい。I腫瘍標的におけるミセルとしての有用性に加えて、ミセルは、高度に水溶性の薬剤の可溶化に重要なアプリケーションを見出す。
【0094】
あらゆる抗炎症薬がミセル構造に組み入れられることができる一方で、特に興味深い非ステロイド抗炎症薬は、メロキシカム、ピロキシカム、ピケトプロフェン、プロピルフェナゾン等である。
【0095】
ポリマーソーム
本発明の別の実施例において、本発明の組成物は、コポリマーのポリマーソームであり、該ポリマーソーム内に治療活性薬剤が封入されたポリマーソームを含む。これらは、直径約5〜10ミクロンの微小なベシクルであって、両親媒性ブロックコポリマー又はグラフトコポリマーの自己集合から形成された薄いが頑丈なシェルで囲まれた水性のコアからなる。
【0096】
このようなポリマーソームの1つの大きな有用性は、ポリマーソーム内に含まれたヘモグロビンからなる人工血液である。他の治療薬も用いられることができる。ポリマーソームに関する総説がD. Discher “Polymersomes” Annual Review of Biomedical Engineering8 (2006) 323−341に書かれている。
【0097】
サーモゲル
本発明の更に別の実施例において、コポリマー組成物は、本発明によるコポリマー及び治療活性薬剤を水溶液として含み、前記溶液は、37℃より低い下限臨界溶液温度(LCST)を有する。
【0098】
このようなポリマーは、鎖の親水性部分と水との間の強い水素結合のためLCSTより下では水溶性であるが、LCST値より上では水素相互作用が弱まり、ポリマーの疎水性領域間の疎水性相互作用が優勢になり、この結果、ポリマーの相分離が起こり、粘性が増加し、ポリマー濃度に応じて、より高い濃度では溶液のゲル化が起こる。
【0099】
LCST値は、ブロック又はグラフトコポリマーの親水性及び疎水性部分のバランスに依存し、このバランスを変化させることによって調整されることができる。これは、水溶液中のブロック又はグラフトコポリマーの濃度にも依存する。治療アプリケーションに特に有用な物質は、LCST値が22〜37℃である物質である。なぜなら、このような物質は、室温では水溶液に可溶であり、37℃の体温でゲルを形成するからである。本発明による組成物は、図1に示されるとおりのTsol、ηsol、Tgel及びηgelを有する。Tsolは、製剤が、粘度ηsolを有する液体であるときの温度である。LCSTより高い値への温度の増加の後、組成物は、ゲル化し始める(図1を参照のこと)。Tgel、すなわち製剤がゲル化する温度では、粘度ηgelは或る平坦域の粘度まで増加している。Tsolは、一般に、0〜80℃であり、好ましくは0〜60℃であり、最も好ましくは4〜30℃である。ηsolは、典型的には、500mPa・s以下であり、好ましくは400mPa・s以下であり、最も好ましくは300mPa・sである。Tgelは、典型的には、10〜90℃であり、常に、組成物のTsolよりも高い。典型的には、TgelはTsolよりも1〜20℃、好ましくは1〜10℃、最も好ましくは1〜5℃高い。
【0100】
熱ゲル化及び熱可逆挙動は以下のときに得られる:
ηgel/ηsol>2、好ましくはηgel/ηsol>4、最も好ましくはηgel/ηsol>10
【0101】
サーモゲルの望ましい特徴の1つは、小径針を用いてサーモゲル製剤を投与する能力であり、これは、投与の際に、マイクロスフィア、マイクロカプセル、ストランド又は他の固体薬剤放出デバイスと比較して大幅に小さい痛みを生じる。これは、室温でのサーモゲルの水溶性のためであり、水溶液の比較的低い粘度が小径針の使用を可能にする。
【0102】
別の重要でユニークな特徴は、治療活性薬剤を制御された速度で生理活性を損失することなく届ける能力である。このアプリケーションでは、本発明によるポリマーが適当な体積の水に溶解され、ペプチド、タンパク質又は核酸配列が同じ溶液に溶解される。この混合物は、次に、所望の体部位に注入され、これはそこでゲル化し、ペプチド、タンパク質又は核酸配列をゲル化材料内に捕集する。活性剤が水及び37℃という体温よりも高くない温度にしか露出されないため、これらが極めて穏やかな条件であるということが理解されるであろう。
【0103】
この方法は、通常タンパク質活性の損失を生じる、上昇された温度、及び/又は有機溶媒、又は、有機溶媒及び水の混合物といった厳しい条件を必要とする、固体ポリマーへのタンパク質組み入れの従来方法よりも大幅に優れている。
【0104】
この方法は、関節軟骨、心膜、心筋、強膜及び目の硝子体への上記のタンパク質を含むサーモゲルの注入を含むがこれらに限定されるものではないアプリケーションにおける、治療活性薬剤の送達及び投与に特に有用である。
【0105】
温度応答挙動は、複合デバイスを構築するときにも利点を与える。これらは、異なったLCST(常に37度より低い)を持つ幾つかのサーモゲルを用いて構築されることができる。インプラントの際に、活性薬剤のin vitroの分解及び放出は、これらのLCST及び化学構造に依存して調整されることができる。
【0106】
他の好ましい実施例において、治療活性薬剤は、成長因子である。このような組成物は、椎間板の病気の治療における使用に非常に適している。これは、組成物が、ゲル化し、活性薬剤を所定の場所に或る期間保持し、ゲル化しない溶液の直接注入よりも遅く放出するからである。更に、ゲル形成ポリマーは、それらの機能を完了した後完全に分解する。より少ない代謝作用が起こる椎間板の領域において、これは特に重要である。
【0107】
好ましくは、成長因子として、形質転換成長因子β−3、骨形成タンパク質1、骨形態形成タンパク質2及び7からなる群から少なくとも1つの化合物が用いられる。それよりは好ましくないが、一般的なサーモゲル及び形質転換成長因子を含む組成物を使用することも可能である。このような組成物は、少なくとも、成長因子の持続放出という利点を有する。
【0108】
サーモゲルの他の好ましい特徴は、これらのゲルをエアロゾルとして送達する能力である。このような送達システムの利点は、容易な使用及び、その高い表面積及びその均一な送達の結果としての速いゲル化プロセスを含む。加えて、エアロゾルは、ゲル−組織界面間の良好な接触を保証する。このようなスプレー送達システムは、組織シーラント、人工皮膚、抗癒着バリア、閉鎖性傷包帯及び慢性的な傷(糖尿病潰瘍等)の治療等のアプリケーションに有用である。
【0109】
他の望ましいアプリケーションは、管状デバイス(例えば、カテーテル又はカニューレを含むがこれらに限定されるものではない)を用いたサーモゲルのターゲット領域への送達である。カテーテルは、長くても(すなわち100cm以上)又は短くても(すなわち20cm)よい。ゲルは、初期段階では、圧力下で容器から液体形状又はプレゲル形状でカテーテル又はカニューレのルーメンに輸送される。液体又はプレゲルは、こうして、体内の標的とされた組織又は配置される領域に送られる。管状デバイスは、ゲルを血管システム、リンパシステムを介してゲルを適用するのに用いられることができる。他の実施例において、管状デバイスは、抗生物質、抗炎症剤、鎮痛薬又は造影剤等(これらに限定されるものではない)の治療剤を送達するために例えば洞、中耳、内耳、胃、子宮、膀胱、腸の一部等に達するために体の自然開口部(例えば耳、鼻、のど、腸管、尿路及び膣等)を介してサーモゲルを送達するのに用いられることができる。
【0110】
使用の最中、管状デバイスは、体内に入れられると体温まで暖められる可能性があり、これは、管状デバイスのルーメンを通じて流れている組成物の早期ゲル化を生じさせる可能性があり、これは流れを遮断又は阻害する。これを避けるため、管状デバイスは、使用前に冷やされるか、又は、内部ルーメンを組成物のゲル化温度より低く維持するために用いられることができる追加のルーメンを備えていてよい。
【0111】
生体内分解性コポリマー。制御された送達、組織工学及びバイオメディカルアプリケーションのためのマトリックス。
【0112】
本発明は、本発明によるポリマーを含むインプラントにも関する。特定の用途において、サーモゲル化物質に対して改善した機械特性を有する物質を得ることが望ましい。この趣旨で、例えば整形外科アプリケーション(骨折固定又は骨軟骨欠損等)等の多くのアプリケーションに有用な固体ポリマーが作製されることができる。固体ポリマーは、体への又は体空洞若しくは通路内へのインプラント、挿入又は配置のための多くの形及び形状に容易に構成されることができる。例えば、ブロック又はグラフトコポリマーは、射出成形、押し出し成形又は圧縮成形されて、薄いフィルムにされることができ、又は、平らな、四角の、丸い、円柱状、管状、円板、リング等の種々の幾何学的形又は形状にされることができる。ロッド又はペレット形状のデバイスは、トロカールを用いてインプラントされることができ、これらの又は他の形状は、小規模な外科工程によりインプラントされることができる。代わりに、がんの外科処置における腫瘍除去等の大規模な外科工程に続いてデバイスがインプラントされることができる。抗がん剤を含むポリマーウェーハのインプラントは、例えば、Brem他、米国特許5,626,862及び5,651,986及びこれらに引用された文献に記載されており、ブロック及びグラフトコポリマーはこのようなアプリケーションに用途を見出す。
【0113】
本発明に記載されたコポリマーでできたサーモゲルを用いる組織工学は、例えば、神経成長若しくは修復、軟骨成長若しくは修復、骨成長若しくは修復、腎臓修復、筋肉成長若しくは修復、皮膚成長若しくは修復、分泌線修復、眼の修復及び椎間修復を含む。これらのアプリケーションにおいては、サーモゲルは、神経派生細胞、軟骨細胞、骨芽細胞、骨髄派生幹細胞、間葉幹細胞、腎臓派生細胞、筋肉派生細胞、繊維芽細胞、ケラチノサイト、上皮細胞、脂肪組織派生細胞、髄核細胞、繊維輪細胞、等の細胞と組み合わせられることができる。
【0114】
サーモゲルが、それ自体で、又は、より大きいインプラント、膜、骨格又は構造の一部として用いられてよいことは理解されたい。他の望ましいアプリケーションは、例えば、薬剤送達容器として用いられるインプラント可能デバイスのルーメンのフィラーとして封入された治療薬剤を含むゲルを用いることであり、これは、例えば、Pijls et al “In vivo tolerance and kinetics of a novel ocualr drugdelivery device” J Controlled Release, 116 (2006) 47−49に記載されたものであるがこれに限定されるものではない。デバイスは、粘性のあるゲルを所定位置に保持するルーメン、一部封鎖ケース、溝又はプロファイルを有するいかなる形状を有してもよい。ゲル及び治療薬剤を含むデバイスは、種々の薬剤を、例えば目、耳、口腔、洞、消化管及び腸、尿路、膣及び子宮(これらに限定されるものではない)並びにデバイスが体内に配置されるあらゆる他の臓器又は位置に、放出するのに用いられることができる。デバイスはゲルで満たされることができる。使用されるポリマー組成物は、インプラントの前に容器から流れ出ないように、より低い温度、例えば20〜25℃でゲル化しなければならない。デバイスがインプラントされると、内部のゲルは、上述されたように分解し、これにより、ゲル内に封入された薬剤を放出する。上述のゲルシステムを用いる利点は、拡散系を用いる場合よりも放出速度が一定であることと、すべての分解生成物が生分解性であり生体適合性だということとである。上記デバイスのフィラーとして治療活性剤を含む前記ゲルを用いる他の利点は、送達の間中分解又は変性なしに治療剤を安全に封入することができるゲルの能力である。
【0115】
37℃より低いLCSTを有するサーモゲルは、矯正及び再構成外科を待つ最中の損傷組織の癒着及び傷組織形成を防止するために、顕著な外傷の場合に一時的な空隙フィラーとして用いられることもできる。空隙充填は、サーモゲルを注入することにより容易に実行されることができ、除去は、当該領域を冷やしてサーモゲルを液化した後に切断、削り取り又は吸入によって実行されることができる。空隙フィラーを用いる他の利点は、例えば、外部からの汚染を防止すること、感染を防止すること、周りの組織の壊死若しくは変質を防止すること、特定の組織形成(骨、軟骨、筋肉、神経、皮膚等)を誘発すること、周りの組織の構造的一体性をそれ自体で若しくは他の知られた骨格若しくは構造とともに維持するのを助けること、特定の自然若しくは異質な分子を捕集することを含む。一時的空隙フィラーは、更に、サーモゲルを合成又は天然ポリマーと組み合わせることによって改良されることができる。これらのポリマーは、マイクロ又はナノ粒子、マイクロスフィア、粉末、繊維、フリース、膜、フィルム又はこれらの組み合わせとして存在してよい。これらのポリマーの例は、例えば、ポリラクチド、ポリ(乳酸・グリコール酸共重合体)、ポリカプロラクトン、ポリトリメチルカルボネート、例えばリン酸トリカルシウム及びハイドロキシアパタイト、コラーゲン、ゼラチン、ヒアルロン酸、硫酸コンドロイチン、キトサン及びこれらの組み合わせを含む。このようなポリマーをサーモゲルに加える有益な側面は、改善されたバルキング及び空隙充填能力、インプラント封入、組織誘導能力、骨伝導性、組織親和性、機械特性及びインプラント吸収における改善された調整能を含む。
【0116】
本発明のサーモゲル化ポリマーは、また、LCSTに到達するときのゲル化に際してほとんど又は全く膨潤を示さない。これは、インプラント後の膨潤が、例えば、神経、臓器又は骨への圧力を増加させえ、従って損傷を生じうるような、幾つかのインプラント又は眼球内若しくは頭蓋内手術等の組織工学アプリケーションにおいて有用である。眼窩再生に適した物質を見つけることの困難性は、G. Enislidis “Treatment of orbital fractures: the case for treatment with bioresorbable materials” J. Oral Maxillofacial Surgery, 62 (2004) 869−872において説明されている。
【0117】
37℃より低いLCSTを有するサーモゲルの他の有用な用途は、手術後癒着の防止にある。癒着は、手術、外傷又は感染の結果として別個の組織又は臓器の間で形成する組織の繊維状帯である。腹膜領域における高い発生率の手術後の癒着がYeo et al. “Polymers in the prevention of peritoneal adhesions” Eur J Pharm and Biopharm, 68 (2008) 57−66において報告されている。結果は、衰弱でありえ、痛み、組織圧縮、不妊、炎症又は腸閉塞症を含みうる。腹膜癒着に加えて、癒着防止バリアがくも膜及び硬膜外癒着の防止のために神経外科においても適用されることができる。脳及び脊髄を囲む頑丈な繊維状保護膜である硬膜の再生も興味深い。脳神経外科工程に続いて、硬膜の適切な密封が、脳及び脊髄の組織からの脳脊髄液の漏れを防止するために達成されなければならず、治癒の最中の繊維状組織が最小化されなければならない。
【0118】
脊髄癒着が、脊髄手術の失敗における主要な貢献要素とみなされている。癒着形成が、傷の治癒の間の一時的な生分解性バリアの組織間への適用によって防止されることができ、これにより、繊維状傷痕状組織の存在を防止するか又は最小化させる。種々の生体材料が、膜、フィルム、溶液又はゲルとして、手術後癒着を防止するのに適用されてきた。米国特許5,759,584は、ポリトリメチルカーボネートに基づく癒着防止デバイスを記載する。WO0167987は、傷痕形成を防止するポリラクチド膜の使用を記載する。他の適用材料は、ポリテトラフルオロエチレン、コラーゲン、ゼラチン、酸化再生セルロース、ヒアルロン酸及びカルボキシメチルセルロースを含む。繊維状組織形成の防止の臨床的成功は、しかし、限定的である。癒着防止バリアとしてのサーモゲルの使用の利点は、その安全で完全な生体吸収性、高い接触表面積、生体接着性、注入又は噴霧による使用の容易性及び低いハイドロゲル膨潤を含む。
【0119】
他のアプリケーションにおいて、37℃より低いLCSTを有するサーモゲルは、腹圧性尿失禁(SUI)を防止又は低減させるための膨張性薬剤として適している。SUIは、成人女性の間で一般的な厄介な症状である。繊維状組織の誘導による尿道から腹内へかけての圧力を向上させるための膨張性薬剤の尿道又は経尿道注入は頻繁に適用されている。適用された膨張性薬剤の総説が、Kerr et al. “Bulking agents in the treatment of stress urinary incontinence: history, outcomes, patient populations, and reimbursement profile” Rev Urol, 7(2005) Suppl 1, 3−11において与えられている。使用された物質は、コラーゲン、ヒアルロン酸、シリコーンマイクロ粒子、ハイドロキシアパタイト、エチレンビニルコポリマー及びポリアクリルアミドハイドロゲルを含む。しかしながら、尿失禁における改善は依然として限定的である。報告された事項は、組織体積の急速な低下、遠い臓器への粒子移動、適当な生体適合性の欠如、肉芽腫形成、塞栓及び慢性的炎症を含む。複数回の注入が通常必要とされ、サーモゲルは、完全に生体吸収性、生体適合性かつ非組織刺激性であるので、サーモゲルは膨張性薬剤として特に適している。サーモゲルは、合成又は天然マイクロ粒子、例えばポリラクチド、ポリ(乳酸−グリコール酸)、ポリカプロラクトン、ポリトリメチルカーボネート、コラーゲン等と組み合わせられて、繊維状組織誘起能を更に向上させるのに適している。サーモゲルの急速なin situゲル化は、マイクロ粒子の適当な局所的封じ込めを保障し、その移動を防止する。
【0120】
更に他の有用なアプリケーションにおいて、37℃より低いLCSTを有するサーモゲルが、目のイオントフォレーシスに用いられることができる。イオントフォレーシスは、非侵襲性の薬剤送達技術であり、イオン化された薬剤の組織への浸透を向上させるために小さい電流が印加されるものである。この眼科送達のアプローチは、Eljarrat−Binstock et al. “Iontophoresis: a non−invasive ocular drugdelivery” J Control Rel, 110(2006) 479−489に与えられている。この方法は、使用前に薬剤含有溶液で飽和され、直接目に置かれる例えばポリアセタール又は寒天に基づいたハイドロゲルスポンジを用いてよい。これらのアプリケーションにおけるサーモゲルの使用の有益な側面は、高い組織接触領域、高い薬剤ローディング効率及びバイオアベイラビリティ、使用の容易性及び目の環境との完全な生体適合性及びその完全な吸収性を含む。
【0121】
別の適切なアプリケーションにおいて、37℃より低いLCSTを有するサーモゲルは、治療活性薬剤と組み合わせられ、更に造影剤と組み合わせられて、薬物動態学及び薬力学を含む薬理学をモニタすることができる。画像診断技術は、Saleem et al. “In vivo monitoringof drugs using radiotracer techniques” Adv DrugDel Rev, 41(2000) 21−39において検証されており、位置放射トモグラフィー、磁気共鳴影像法(MRI)及びコンピュータ断層撮影法(CT)を含むガンマシンチグラフィーによって実行されることができる。適切な金属イオンの例は、例えば、バリウム、ガドリニウム、マンガン、ジスプロシウム、ユーロピウム、ランタン及びイッテルビウムを含む。適切な放射性標識の例は、ヨウ素、炭素、フッ素、インジウム、テクネシウム及びコバルトを含む。水又は空気を含むマイクロスフィアもMRIのために用いられることができる。サーモゲルの使用の利点は、これらのX線透過性及び生体適合性を含む。
【0122】
更に他のアプリケーションにおいて、37℃より低いLCSTを有するサーモゲルが可逆血管閉塞に用いられることができる。血管閉塞は、血管を閉塞させて通常の血管床を守り、目標とした場所に血流を向け直すことを意図した最小侵襲性工程であり、出血、血管病変、胃腸出血又は動脈瘤等の症状のためのものである。塞栓性物質は、カテーテルを介して又は直接注入によって導入されることができ、視覚化のためには放射線不透過性を要する。加えて、サーモゲルは、オフポンプ冠動脈バイパス術の最中に心外膜冠動脈の閉塞のために注入されて吻合の実行の最中の理想的可視性のための無血野を促進することができる。必要であれば、閉塞は、冷たい生理食塩水の添加によって取り除かれることができる。血管閉塞におけるサーモゲルの使用の利点は、体温との接触に際しての速いゲル化特性、その熱可逆性、その生体適合性、有害な細胞事象を誘起することのない完全な生体吸収性及びそのハイドロゲル状特性であり、これは、血管クランプ又はシャントにおけるような内皮への機械的負傷を防止する。
【0123】
本発明は、長期のストレスのかかる状況下でのタスク及び課題のパフォーマンスを向上させるためのいわゆる成績向上薬を一貫して送達して投与するのにも有用である。成績向上薬と言ったとき、当業者は、長期のストレスのかかる又は要求の厳しい状況において特定のタスク及び課題を実行する目的を持つ人間の身体的及び心理的パフォーマンスに肯定的な影響を与えることができる合成又は天然の分子、抽出物及び製剤のあらゆる群を指す。このような成績向上薬は、例えば、鎮痛剤、ビタミン、カフェイン誘導体、抗生物質、抗酸化剤、植物からの抽出物、同化化合物、代謝化合物、血管拡張薬及び栄養補助食品であるが、これらに限定されるものではない。このようなストレスのかかる状況又は要求の厳しい状況の例は、例えば、戦闘、長距離飛行、長距離航行、職業遠洋漁業及び海底溶接であり(これらに限定されるものではない)、疲労、不安、身体的及び精神的ストレス並びに集中力の欠如がタスクの完了に不利でありえ、タスクを実行している個人及びチームにとって危険ですらありうるような状況である。これらの影響は、上述の成績向上薬及び製剤を使用することにより、低減されることができ、又は、その発現が遅らせられることができる。
【0124】
本発明は、規則的で持続的な投与が前提でない又は計画することが困難な薬又は製剤の正しい投与について個人のコンプライアンスを向上させる利点を提供する。前記成績向上薬を含むサーモゲルは、例えば、行動を開始する前に皮膚下又は筋肉内に注入することにより投与されることができる。成績向上薬は、個人がいかなる動作を起こすことなく、規則的な服用について考える必要なく、サーモゲルから徐々に放出される。更に有利なのは、投与の周期的反復が、傷の形成又はポリマー化合物若しくはその分解生成物の生物的蓄積なしになされることができるということである。
【0125】
本発明は、医薬の製造のための37℃より低いLCSTを有する水中でサーモゲルを形成することができる本発明のコポリマーを含む組成物の使用にも関する。このような医薬は、種々のアプリケーションに用いられることができる。例えば、腫瘍標的における使用、手術後癒着の防止における使用、腹圧性尿失禁の防止のための膨張性薬剤としての使用、炎症を起こした組織における使用、目のイオントフォレシス及び目の硝子体内注射における使用、一時的血管閉塞における使用、長期のストレスのかかる又は要求の厳しい状況下での成績向上薬の送達、組織工学アプリケーションにおける使用又は一時的なin vivo空隙フィラーとしての使用である。
【0126】
膨張性薬剤は、合成又は天然のマイクロ粒子を含むことができる。成績向上薬は、例えば、鎮痛剤、ビタミン、カフェイン誘導体、抗生物質、抗酸化剤、植物からの抽出物、同化化合物、代謝化合物、血管拡張薬、栄養補助食品又はこれらの組み合わせを含んでよい。
【0127】
組織工学アプリケーションは、骨、軟骨、皮膚、神経、筋肉、眼科及び椎間板修復に関連することができる。
【0128】
サーモゲルは、例えば、神経派生細胞、軟骨細胞、骨芽細胞、骨髄派生幹細胞、間葉幹細胞、肝臓派生細胞、筋肉派生細胞、線維芽細胞、ケラチノサイト、上皮細胞、脂肪組織派生細胞、髄核細胞、繊維輪細胞又はこれらの組み合わせと組み合わせられることができる。
【0129】
組成物は、美容外科、再生外科及び口腔外科のための一時的空隙フィラーとしても適している。
【0130】
サーモゲルは、例えば、合成又は天然のポリマーと組み合わせられてよい。このような合成又は天然のポリマーは、マイクロ若しくはナノ粒子、マイクロスフィア、粉末、繊維、フリース、膜、フィルム又はこれらの組み合わせで存在することができる。
【0131】
組成物は、5体積%より小さい膨潤が有利であるアプリケーション、例えば眼球内若しくは頭蓋内手術において用いられることができる。
【0132】
治療薬剤は、成長因子、例えば、形質転換成長因子β−3、骨形成タンパク質1、骨形態形成タンパク質2及び7からなる群のうちの1つであってよい。
【0133】
本発明は、実験例に限定されることなく実験の部において更に説明される。
【発明を実施するための形態】
【0134】
例1:アミノ末端ポリアセタールの合成
反応はグローブボックスで実行した。2.5g(0.013mol)の1,4−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、1.6g(0.011mol)のトランス−1,4−−シクロヘキサンジメタノール及び0.23g(0.82mmol)のFmoc−アミノエタノールを10mlの乾燥テトラヒドロフランに溶解させた。0.2mlの触媒、p−トルエンスルホン酸(テトラヒドロフラン中10mg/ml)を撹拌しながら加え、反応が室温で5時間実行された。次に、2.0mlのピペリジンを加え、溶液を更に2時間室温で撹拌した。生成物をテトラヒドロフラン(分子量カットオフ:1000Da)中での3日間の透析によって精製し、溶媒の蒸発によって単離した。プレポリマーをH NMR(CDCl)及びGPCクロマトグラフィー(テトラヒドロフラン中、ポリスチレン標準)によって特性化した。GPCによる数平均分子量は8000Daであった。
最終重量:〜2.4g
【0135】
例2:アミノ末端ポリ(オルトエステル)の合成
反応はグローブボックスで実行した。2.0g(0.0094mol)のDETOSU、1.24g(0.0085mol)のtrans−1,4−−シクロヘキサンジメタノール及び0.18gのFmoc−アミノエタノールを20mlのテトラヒドロフランに溶解させた。2滴の触媒、p−トルエンスルホン酸(テトラヒドロフラン中10mg/ml)を撹拌しながら加え、反応が室温で2時間実行された。次に、4.0mlのピペリジンを加え、溶液を更に2時間室温で撹拌した。生成物をテトラヒドロフラン(分子量カットオフ:1000Da)中での3日間の透析によって精製し、溶媒の蒸発によって単離した。最終重量は2.3グラムであった。生成物をH NMR(CDCl)及びGPCクロマトグラフィー(テトラヒドロフラン中、ポリスチレン標準)によって特性化した。分子量は10000Daであった。
【0136】
例3:アミノ末端ポリ[N−(2−ヒドロキシエチル)−L−グルタミン]の合成
2.0gのγ−トリクロロエチル−L−グルタミンのN−カルボキシル酸無水物(TCEG−NCA)を20mlの乾燥ジクロロエタンに溶解させ、生じた溶液を10℃まで冷却した。0.099gの1−トリフェニルメチルアミノエチルアミン(すなわちTCEG−NCAに対して5モル%)を2mlの1,2−ジクロロエタンに溶解し、TCEG−NCAの溶液に加えた。TCEG−NCAの重合は温度を10℃に保つことによって進行し、2時間後に完了した(赤外分光によって決定した)。次に、3倍モル過剰の無水酢酸及び等モル量のトリエチルアミンを加え、反応混合物を2時間室温で撹拌した。溶液をペンタン中で沈殿させ、生成したポリマーをろ過により単離し、真空下で乾燥させた。収率は1.9グラムであった。その分子量をH NMR (DMF−d7)及びゲル透過クロマトグラフィー(テトラヒドロフラン中、ポリスチレン標準)によって測定した。〜6000Daであった。
【0137】
1.0g(3.8 mmol)の上記の得られたポリマーを10mlの乾燥N,N−ジメチルホルムアミドに溶解した。この溶液を10℃まで冷却し、次に、0.69ml(11.5mmol)のエタノールアミン及び0.36g(3.8mmol)の2−ヒドロキシピリジンを加えた。反応に続いて赤外分光法を行い、2時間後に完了した。生じたアミノ分解したポリマーをエーテル中の沈殿により分離し、ろ過し、真空下で乾燥し、Sephadex G−25によるゲルろ過により精製(溶離剤は水)し、フリーズドライにより単離した。収率は1.0グラムであった。精製したポリマーをH NMR (DO)及びゲル透過クロマトグラフィー(水中、デキストラン標準)によって測定した:5000Da。
【0138】
1.0gのアミノ分解したポリマーを10mlのトリフルオロ酢酸に溶解させ、室温で30分撹拌した。トリフルオロ酢酸を真空下の蒸発によって除去した。生じたポリマーを水に溶解させ遠心分離し、続いて、上澄みをGPC(Sephadex G−25、溶離剤は水;5000Da)によって精製し、フリーズドライによって単離した。収率0.9g。
【0139】
例4:ポリ[N−(2−ヒドロキシエチル)−L−グルタミン]−ポリアセタールジブロックコポリマー(PHEG−PA)の合成
2.0gの1,4−ブタンジオールジビニルエーテル及び0.11gのFmoc−アミノエタノールを6mlのテトラヒドロフランに溶解した。0.1mlの触媒、p−トルエンスルホン酸(テトラヒドロフラン中10mg/ml)を撹拌しながら加え、反応が室温で5時間実行された。次に、1.2mlのピペリジンを加え、溶液を2時間室温で撹拌した。生成物をテトラヒドロフラン(分子量カットオフ:1000Da)中での3日間の透析によって精製し、溶媒の蒸発によって単離した。生成物をH NMR(CDCl)及びGPCクロマトグラフィー(テトラヒドロフラン中、ポリスチレン標準)によって特性化した。
【0140】
2.6gのN−トリクロロエチル−L−グルタミン酸塩のN−カルボキシル酸無水物を10mlの乾燥クロロホルムに溶解させた。1.5gのプレポリマーを5mlの乾燥クロロホルムに溶解し、溶液に加えた。反応に続いて赤外分光を行い、3時間の混合の後に完了した。0.4mlの酢酸無水物及び0.6mlのトリエチルアミンを加え、撹拌を2時間続けた。最後に生成物をペンタン中で沈殿させ、ろ過し、真空下で乾燥させた。
【0141】
3.5gのコポリマーを乾燥N,N−ジメチルホルムアミドに乾燥させ、10℃まで冷却させた。1.7mlの2−アミノエタノール及び0.8gの2−ヒドロキシピリジンを加え、溶液を2時間撹拌させた。反応に続いて赤外分光を行った。最後に溶媒を蒸発させ、生じたポリマーを水に溶解させ、分取GPC(Sephadex G−25、溶離剤は水)によって精製した。最終的なコポリマーをフリーズドライによって単離した。
【0142】
最終重量:〜1.5g(第1ステップ)、THF中GPC:〜11kDa
最終重量:〜3.5g(第2ステップ)、THF中GPC:〜19kDa
最終重量:〜3.0g(第3ステップ)、水中GPC::〜16kDa
【0143】
例5:ポリ[N−(2−ヒドロキシエチル)−L−グルタミン]−ポリ(オルトエステル)−ポリ[N−(2−ヒドロキシエチル)−L−グルタミン]トリブロックコポリマー(PHEG−POE−PHEG)の合成
3.0gの例2のプレポリマーを10mlの乾燥クロロホルムに溶解した。5.3gのN−トリクロロエチル−L−グルタミン酸塩のN−カルボキシル酸無水物を50mlの乾燥クロロホルムに溶解させた。混合物を2時間撹拌した。反応に続いて赤外分光を行い、1.7mlの酢酸無水物及び2.2mlのトリエチルアミンを加え、撹拌を2時間続けた。最後に生成物をヘキサン中で沈殿させ、ろ過し、真空下で乾燥させた。
【0144】
7.0gのコポリマーを70mlの乾燥N,N−ジメチルホルムアミドに溶解し、10℃まで冷却した。3.6mlの2−アミノエタノール及び1.7gの2−ヒドロキシピリジンを加え、溶液を2時間撹拌した。反応に続いて赤外分光を行った。最後に溶媒を蒸発させ、生成物を水に溶解させ、分取GPC(Sephadex G−25、溶離剤は水)によって精製した。最終的なコポリマーをフリーズドライによって単離した。
【0145】
定義された分子量カットオフ(予想されるポリマー分子量に応じて1kDa〜5kDa)を有する膜を用いた限外ろ過が分取GPCの代替手段であった。
【0146】
最終重量:〜7.0g(第1ステップ)、THF中GPC:〜28kDa
最終重量:〜3.5g(第2ステップ)、水中GPC:〜24kDa
【0147】
例6:ポリアセタール−ポリ[N−(2−ヒドロキシエチル)−L−グルタミン]−ポリアセタールトリブロックコポリマー(PA−PHEG−PA)の合成
2.5g(0.013モル)の1,4−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル及び1.9g(0.013モル)のトランス−1,4−シクロヘキサンジメタノールを10mlの乾燥クロロホルムに溶解した。0.2mlの触媒、p−トルエンスルホン酸(テトラヒドロフラン中10mg/ml)を撹拌しながら加え、反応を室温で5時間実行した。次に2mlのピペリジンを加え、溶液を更に2時間室温で撹拌した。
【0148】
生成物を3日間のテトラヒドロフラン中の透析(MWCO 1000)により精製し、溶媒の蒸発によって単離した。PAプレポリマーを1H NMR(CDCl)及びGPCクロマトグラフィー(テトラヒドロフラン中、ポリスチレン標準)によって特性化した。
【0149】
4.4g(0.013モル)のPAプレポリマー及び13.3g(0.052モル)のN,N’−ジスクシンイミジルカルボネートを60mLの乾燥テトラヒドロフランに溶解した。9.1mL(0.052モル)のジイソプロピルエチルアミンを10mLの乾燥テトラヒドロフランと混合し、室温でプレポリマー溶液にゆっくり加えた。8時間後、スクシンイミジル修飾PAプレポリマーを3日間テトラヒドロフラン(MWCO 1000)中の透析により精製し、溶媒の蒸発によって単離した。修飾PAプレポリマーを1H NMR(CDCl)及びGPCクロマトグラフィー(テトラヒドロフラン中、ポリスチレン標準)によって特性化した。
【0150】
5.2g(0.013モル)の修飾PAプレポリマー及び2.6g(6.5mmol)の例3のアミノ末端ポリ[N−(2−ヒドロキシエチル)−L−グルタミン]を100mlのpH7.4の10mMリン酸塩緩衝生理食塩水に溶解した。室温での24時間の撹拌の後、最終的なPA−PHEG−PAコポリマーを透析してPBS緩衝液を除去し(分子量カットオフ:1000Da)、続いての分取GPC(Sephadex G−25、溶離剤は水)によって精製した。最終的なPA−PHEG−PAコポリマーをフリーズドライによって回収した。
【0151】
最終重量:〜4.4g(第1ステップ)、THF中GPC:〜15kDa
最終重量:〜5.2g(第2ステップ)、THF中GPC:〜16kDa
最終重量:〜7.0g(第3ステップ)、水中GPC:〜36kDa
【0152】
例7:ペンダント[N−(2−ヒドロキシエチル)−L−グルタミン]基を有するポリ(オルトエステル)(POE~PHEGs)の合成
【0153】
1.0g(0.0047mol)の3,9−ジエチリデン−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(DETOSU)、0.47g(3.3mmol)のトランス−1,4−−シクロヘキサンジメタノール及び0.44g(1.4mmol)のFmoc−セリノールを6mlのテトラヒドロフランに溶解させた。1滴の触媒、p−トルエンスルホン酸(テトラヒドロフラン中10mg/ml)を撹拌しながら加え、反応が室温で2時間実行された。次に、1.2mlのピペリジンを加え、溶液を2時間室温で撹拌した。生成物をテトラヒドロフラン(分子量カットオフ:1000Da)中での3日間の透析によって精製し、溶媒の蒸発によって単離した。生成物をH NMR (CDCl)及びGPCクロマトグラフィー(テトラヒドロフラン中、ポリスチレン標準)によって特性化した。
【0154】
1.5gのプレポリマーを10mlの乾燥クロロホルムに溶解した。4.7gのトリクロロエチル−L−グルタミン酸塩のN−カルボキシ無水物を50mlの乾燥クロロホルムに溶解させた。混合物を3時間撹拌した。反応に続いて赤外分光を行い、2.4mlの酢酸無水物及び3.0mlのトリエチルアミンを加え、撹拌を2時間続けた。最後に生成物をヘキサン中で沈殿させ、ろ過し、真空下で乾燥させた。
【0155】
4.0gのコポリマーを乾燥N,N−ジメチルホルムアミドに乾燥させ、10℃まで冷却させた。2.0mlの2−アミノエタノール及び0.9gの2−ヒドロキシピリジンを加え、溶液を2時間撹拌した。反応に続いて赤外分光を行った。最後に溶媒を蒸発させ、生成物を水に溶解させ、分取GPC(Sephadex G−25、溶離剤は水)によって精製した。最終的なコポリマーをフリーズドライによって単離した。
【0156】
最終重量:〜1.5g(第1ステップ)、THF中GPC:〜18kDa
最終重量:〜4.0g(第2ステップ)、THF中GPC:〜40kDa
最終重量:〜3.6g(第3ステップ)、水中GPC:〜36kDa
【0157】
例8:下限臨界溶液温度(LCST)の決定
LCST特性(温度の関数としてのコポリマーの損失弾性率G’、貯蔵弾性率G”及び複素粘度η)をPhysica MC301(Anton Paar)レオメータを用いてレオロジー(振動モード)によって決定した。
【0158】
上昇する温度におけるレオロジー特性を、ゲル化実験において用いられたポリマー濃度と同じ濃度(通常20重量%)を用いて決定した。図1は粘度(y軸、mPa.s)対温度(x軸、℃)のプロットである。レオロジー測定は、実際には、示されるゲル化の開始を、温度の関数としての粘度の増加として決定したが、我々は、LCSTを、本発明の組成物について粘度が増加し始めた温度として定義した。図1の例においては、LCSTは29℃であった。
【0159】
例9:サーモゲルのin vitro分解試験
分解実験は、体積マーキングの付いた10mm径ガラス管において実行した。コポリマーは、20℃でpH7.4の10mMリン酸塩緩衝生理食塩水に、20重量%濃度で溶解したか、又は、pH5.5の10mMクエン酸バッファに溶解した。固体ゲル化を保証するため、3.0mLの溶液を各試験管に注いだ。
【0160】
ガラス管を、37℃の振動浴槽を有するインキュベータに又は37℃に温度制御された水浴に1時間配置し、3mL溶液をゲルにした。次に、同じ温度でインキュベートした7.0mLの10mM PBS(pH7.4)又は7.0mLのクエン酸バッファ(pH5.5)をゲルの上に配置した。所定の時間に、ゲル上のバッファを除去し、残りのゲルを体積マーキングで測定した。次に、同じ温度でプレインキュベートした7.0mLのフレッシュバッファを加え、試験管を温度制御された浴槽に再び配置した。残りのゲル体積をインキュベーション時間に対してプロットして分解プロファイルを得た。
【0161】
例10:パクリタキセルが充填されたミセルの作製
幾らかのPHEG−POE−PHEG及びPaclitaxel(1:0.4w/w)をアセトニトリルに溶解し、よく混合した。撹拌しながら窒素の流れを用いて溶媒を蒸発させた。混合物を蒸留水に再溶解し、強い乳白色の溶液を得た。ろ過(G3フィルタ)の後、溶液をフリーズドライした。パクリタキセルを含むミセルは、水に容易に再溶解させることができ、光散乱測定によって特性化された。
【0162】
例11:サーモゲルからのウシ血清アルブミン(BSA)のin vitro放出及び引き続きのUV−可視光分光
放出実験は、10mm径ガラス管内で実行した。コポリマーは、20℃でpH7.4の10mMリン酸塩緩衝生理食塩水に、20重量%濃度で溶解したか、又は、pH5.5の10mMクエン酸バッファに溶解した。1重量%及び5重量%のローディングのBSAを同じ緩衝液に溶解し、コポリマー溶液と混合した。
【0163】
ガラス管を、37℃の振動浴槽を有するインキュベータに又は37℃に温度制御された水浴に1時間配置した。ゲルの寸法は、20 mmx10mmであった。次に、同じ温度でインキュベートした2mLの10mMPBS(pH7.4)又は2mLのクエン酸バッファ(pH5.5)をゲルの上に配置した。所定の時間に、ゲル上のバッファを除去し、同じ温度でプレインキュベートしたフレッシュバッファで置換した。除去したサンプルを、pH7.4については494nmの吸収及びpH5.5については458nmの吸収を用いて、UV−可視光分光によって分析した。
【0164】
例12:顎顔面外傷における一時的空隙充填剤及び衝撃吸収剤
患者が救急病棟に到着した際に、重大な顎顔面外傷の診断の後、生分解性サーモゲルが、痛みを軽減する(組成物中に含まれる鎮痛剤を介して)ためにそしてゲル化に際して折れた骨と組織部分との間の衝撃吸収剤として働くために、損傷領域に注入されることになる。ゲルは、更に、損傷した組織及び骨の望ましくない癒着を防止して瘢痕組織形成を防止することになる。これは、外科医に再生手術を計画するより多くの時間を与えることになり、再生手術の最中に患者により少ない外傷を生じることになる。自然治癒が数日間遅れるからである。外科医の準備ができるころには、ゲルは、分解し始めており、又は、残りのゲルブロックは、冷たい流体又は機器を用いて冷却し、液化したゲルを吸い出すことによって除去することができる。
【0165】
例13:成長因子を含む内部ライニング及び神経幹細胞を含むルーメンを備えた神経ガイドの作製
修復される神経の外径にマッチした内径を備えた管について、その内部を、本発明の両親媒性コポリマー(LCSTは15℃)、細胞成長の栄養素及び成長因子を含む冷たい組成物でディップコーティングした。過剰の組成物材料を流し出した後、管温度を20℃まで上昇させて組成物を管壁の内部ライニングとしてゲル化させた。次に、管ルーメンを、神経幹細胞及び本発明の両親媒性コポリマー(LCSTは25℃)を含む溶液でディップコーティングすることにより充填した。管温度を30℃まで上昇させ、ルーメン内の溶液をゲル化させた。この管を、断裂した神経位置に埋め込んだ。神経再成長は、断裂した細胞の先端まで神経幹細胞を露出するルーメンゲルの急速な浸食を通じて起こることができ、成長は、栄養素及び成長因子を最適速度でルーメンに供給する外部ゲルコーティングによって持続される。
【0166】
例14:病的又は損傷した組織の分解を停止又は逆転させるための、骨形成及び/又は骨形態形成タンパク質を含むサーモゲルの椎間板又は関節軟骨への注入
他の成分の中でも、成長因子TGF−β−3又は別の骨形成若しくは骨形態形成タンパク質を含む、37℃のLCSTを有するサーモゲルの組成物を作製した。液体形式の組成物を、小径針又は小径カニューレを用いて椎間板に注入した。LCSTに到達したら、組成物はゲル化し、或る期間成長因子をin situで保持することになり、これを非ゲル化溶液の直接の注入よりもゆっくりと放出することになる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも親水性鎖セグメント(A)および疎水性鎖セグメント(B)を含む両親媒性コポリマーであって、前記親水性鎖セグメント(A)はペプチドを含み、前記疎水性鎖セグメント(B)はアセタール基またはオルトエステル基を含む、両親媒性コポリマー。
【請求項2】
請求項1に記載のコポリマーであって、前記親水性鎖セグメント(A)は、グルタミン/グルタミン酸単位またはアスパラギン/アスパラギン酸単位を含む、コポリマー。
【請求項3】
請求項1に記載のコポリマーであって、前記コポリマーは、ブロックコポリマーまたはグラフトコポリマーである、コポリマー。
【請求項4】
請求項1または2に記載のコポリマーであって、前記コポリマーは、A(BA)、B(AB)または(AB)ブロックコポリマーであり、xは1〜5の整数である、コポリマー。
【請求項5】
請求項1ないし3の何れか一項に記載のコポリマーであって、前記親水性鎖セグメントは、N−ヒドロキシアルキル−L−グルタミン、N−アルキル−L−グルタミン、L−グルタミン酸、N−ヒドロキシアルキル−L−アスパルタミン、N−アルキル−L−アスパルタミン、L−アスパルタミン酸またはこれらの組み合わせの単位を含む、コポリマー。
【請求項6】
請求項1ないし3の何れか一項に記載のコポリマーであって、前記親水性鎖セグメントは、ポリ[N−ヒドロキシアルキル−L−グルタミン]、ポリ[N−アルキル−L−グルタミン]、ポリ[L−グルタミン酸]、ポリ[N−ヒドロキシアルキル−L−アスパルタミン]、ポリ[N−アルキル−L−アスパルタミン]、ポリ[L−アスパルタミン酸]である、コポリマー。
【請求項7】
請求項1ないし5の何れか一項に記載のコポリマーであって、前記疎水性鎖セグメントは、ポリ−L−乳酸、ポリ−D,L−乳酸、ポリ(乳酸−グリコール酸共重合体)、ポリ酸無水物、ポリフォスファゼン、ポリケタールを含む、コポリマー。
【請求項8】
請求項6または7に記載のコポリマーであって、該コポリマーは、ポリ[N−ヒドロキシアルキル−L−グルタミン]−ポリアセタール、ポリ[N−ヒドロキシアルキル−L−グルタミン]−ポリアセタール−ポリ[N−ヒドロキシアルキル−L−グルタミン]、ポリアセタール−ポリ[N−ヒドロキシアルキル−L−グルタミン]−ポリアセタールブロックコポリマー、ポリアセタール−ポリ[N−ヒドロキシアルキル−L−グルタミン]グラフトコポリマー、ポリ[N−ヒドロキシアルキル−L−グルタミン]−ポリ(オルトエステル)、ポリ[N−ヒドロキシアルキル−L−グルタミン]−ポリ(オルトエステル)−ポリ[N−ヒドロキシアルキル−L−グルタミン]、ポリ(オルトエステル)−ポリ[N−ヒドロキシアルキル−L−グルタミン]−ポリ(オルトエステル)ブロックコポリマー、ポリ(オルトエステル)−ポリ[N−ヒドロキシアルキル−L−グルタミン]グラフトコポリマー、ポリ[N−ヒドロキシアルキル−L−アスパラギン]−ポリアセタール、ポリ[N−ヒドロキシアルキル−L−アスパラギン]−ポリアセタール−ポリ[N−ヒドロキシアルキル−L−アスパラギン]、ポリアセタール−ポリ[N−ヒドロキシアルキル−L−アスパラギン]−ポリアセタールブロックコポリマー、ポリアセタール−ポリ[N−ヒドロキシアルキル−L−アスパラギン]グラフトコポリマー、ポリ[N−ヒドロキシアルキル−L−アスパラギン]−ポリ(オルトエステル)、ポリ[N−ヒドロキシアルキル−L−アスパラギン]−ポリ(オルトエステル)−ポリ[N−ヒドロキシアルキル−L−アスパラギン]、ポリ(オルトエステル)−ポリ[N−ヒドロキシアルキル−L−アスパラギン]−ポリ(オルトエステル)ブロックコポリマー、ポリ(オルトエステル)−ポリ[N−ヒドロキシアルキル−L−アスパラギン]グラフトコポリマー、ポリ[N−アルキル−L−グルタミン]−ポリアセタール、ポリ[N−アルキル−L−グルタミン]−ポリアセタール−ポリ[N−アルキル−L−グルタミン]、ポリアセタール−ポリ[N−アルキル−L−グルタミン]−ポリアセタールブロックコポリマー、ポリアセタール−ポリ[N−アルキル−L−グルタミン]グラフトコポリマー、ポリ[N−アルキル−L−グルタミン]−ポリ(オルトエステル)、ポリ[N−アルキル−L−グルタミン]−ポリ(オルトエステル)−ポリ[N−アルキル−L−グルタミン]、ポリ(オルトエステル)−ポリ[N−アルキル−L−グルタミン]−ポリ(オルトエステル)ブロックコポリマー、ポリ(オルトエステル)−ポリ[N−アルキル−L−グルタミン]グラフトコポリマー、ポリ[N−アルキル−L−アスパラギン]−ポリアセタール、ポリ[N−アルキル−L−アスパラギン]−ポリアセタール−ポリ[N−アルキル−L−アスパラギン]、ポリアセタール−ポリ[N−アルキル−L−アスパラギン]−ポリアセタールブロックコポリマー、ポリアセタール−ポリ[N−アルキル−L−アスパラギン]グラフトコポリマー、ポリ[N−アルキル−L−アスパラギン]−ポリ(オルトエステル)、ポリ[N−アルキル−L−アスパラギン]−ポリ(オルトエステル)−ポリ[N−アルキル−L−アスパラギン]、ポリ(オルトエステル)−ポリ[N−アルキル−L−アスパラギン]−ポリ(オルトエステル)ブロックコポリマー、ポリ(オルトエステル)−ポリ[N−アルキル−L−アスパラギン]グラフトコポリマー、ポリ(L−グルタミン酸)−ポリアセタール、ポリ(L−グルタミン酸)−ポリアセタール−ポリ(L−グルタミン酸)、ポリアセタール−ポリ(L−グルタミン酸)−ポリアセタールブロックコポリマー、ポリアセタール−ポリ(L−グルタミン酸)グラフトコポリマー、ポリ(L−グルタミン酸)−ポリ(オルトエステル)、ポリ(L−グルタミン酸)−ポリ(オルトエステル)−ポリ(L−グルタミン酸)、ポリ(オルトエステル)−ポリ(L−グルタミン酸)−ポリ(オルトエステル)ブロックコポリマー、ポリ(オルトエステル)−ポリ(L−グルタミン酸)グラフトコポリマー、ポリ(L−アスパラギン酸)−ポリアセタール、ポリ(L−アスパラギン酸)−ポリアセタール−ポリ(L−アスパラギン酸)、ポリアセタール−ポリ(L−アスパラギン酸)−ポリアセタール ブロックコポリマー、ポリアセタール−ポリ(L−アスパラギン酸) グラフトコポリマー、ポリ(L−アスパラギン酸)−ポリ(オルトエステル)、ポリ(L−アスパラギン酸)−ポリ(オルトエステル)−ポリ(L−アスパラギン酸)、ポリ(オルトエステル)−ポリ(L−アスパラギン酸)−ポリ(オルトエステル) ブロックコポリマー、ポリ(オルトエステル)−ポリ(L−アスパラギン酸)グラフトコポリマーからなる群のうちの1つである、コポリマー。
【請求項9】
請求項1乃至7の何れか一項に記載のコポリマーであって、前記ポリマー鎖の間での化学反応を可能にしてポリマー架橋を達成する部分を含む、コポリマー。
【請求項10】
請求項1乃至8の何れか一項に記載のコポリマーであって、式Iに従う構造を有し、
【化1】

ここで、R’はC〜Cアルキル鎖、s=2〜20の整数、qおよびrは1〜20の独立した整数、pは3〜30の整数、BおよびB’はC〜Cアルキル鎖であり、AおよびA’は、R、Rまたはこれらの組み合わせであり、
は、
【化2】

から選択され、ここでbは1〜12の整数であり、
は、
【化3】

であり、ここでRはHまたはC〜Cアルキル鎖であり、yは1〜10の整数であり、
=(CHz、zは1〜6の整数、R=OH、OCH、NH−(CH−)OH、N−(CH−CH−OH)、NH−(CH−CH−O−)H、NH−CH−CH(OH)−CH−OH、NH−(CH−)O−CO−CH=CH、NH−(CH−)O−CO−C(CH)=CH、N−(CH、N−CH−(CH、zは1〜6の整数であり、R=CO−CH、CO−CH=CH、CO−C(CH)=CHである、コポリマー。
【請求項11】
請求項1乃至8の何れか一項に記載のコポリマーであって、式IIに従う構造を有し、
【化4】

ここで、A、A’、R’、R、RおよびRは請求項10(式I)において定義されたものと同じであり、nは2〜200の独立した整数であり、mは2〜150の独立した整数であり、R=H、R、R10、CH(R’)−O−R10であり、R10=C〜C16アルキル鎖(直鎖または分岐)、シクロヘキシルである、コポリマー。
【請求項12】
請求項1乃至8の何れか一項に記載のコポリマーであって、式IIIに従う構造を有し、
【化5】

ここで、A、A’、R’、R、RおよびRは請求項10において定義されたものと同じであり、nおよびn’は2〜200の独立した整数であり、mは2〜150の独立した整数である、コポリマー。
【請求項13】
請求項1乃至8の何れか一項に記載のコポリマーであって、式IVに従う構造を有し、
【化6】

ここで、A、A’、R’、R、RおよびR10は請求項10において定義されたものと同じであり、nは2〜200の独立した整数であり、mは2〜150の独立した整数である、コポリマー。
【請求項14】
請求項1乃至8の何れか一項に記載のコポリマーであって、式Vに従う構造を有し、
【化7】

ここで、A、B、B’、R、RおよびRは請求項10において定義されたものと同じであり、R=H、C〜Cアルキル鎖である、コポリマー。
【請求項15】
請求項1乃至8の何れか一項に記載のコポリマーであって、式VIに従う構造を有し、
【化8】

ここで、A、R、R、RおよびRは請求項10において定義されたものと同じであり、Rは式Vにおいて定義されたものと同じであり、nは2〜200の独立した整数であり、mは2〜150の独立した整数である、コポリマー。
【請求項16】
請求項1乃至8の何れか一項に記載のコポリマーであって、式VIIに従う構造を有し、
【化9】

ここで、A、R、RおよびRは請求項10において定義されたものと同じであり、Rは式Vにおいて定義されたものと同じであり、nおよびn’は2〜200の独立した整数であり、mは2〜150の独立した整数である、コポリマー。
【請求項17】
請求項1乃至8の何れか一項に記載のコポリマーであって、式VIIIに従う構造を有し、
【化10】

ここで、A、R、RおよびR10は式IIにおいて定義されたものと同じであり、Rは式Vにおいて定義されたものと同じであり、nは2〜200の独立した整数であり、mは2〜150の独立した整数である、コポリマー。
【請求項18】
請求項1乃至17の何れか一項に記載の両親媒性コポリマーと少なくとも1つの治療活性薬剤とを含む組成物。
【請求項19】
請求項18に記載の組成物であって、前記コポリマーは水中でミセルを形成し、前記治療活性薬剤は前記ミセル中に封入される、組成物。
【請求項20】
請求項18に記載の組成物であって、前記コポリマーは水中でポリマーソームを形成し、前記治療薬剤は前記ポリマーソームに封入され、前記治療薬剤は、人口血液を形成するヘモグロビンであるがこれに限定されない、組成物。
【請求項21】
請求項18に記載の組成物であって、前記組成物は、水中では37℃より低いLCSTを有するサーモゲルを形成することができる、組成物。
【請求項22】
請求項1乃至17の何れか一項に記載のコポリマーを含むインプラント。
【請求項23】
請求項22に記載のインプラントであって、少なくとも1つの治療活性薬剤を含む、インプラント。
【請求項24】
請求項22又は23に記載のインプラントであって、前記コポリマーは、37℃より低いLCSTを有するサーモゲルを形成することができ、該インプラントのルーメンに含まれる、インプラント。
【請求項25】
水中では37℃より低いLCSTを有するサーモゲルを形成することができる請求項1乃至17の何れか一項に記載のコポリマーを含み、診断イメージングにおける使用のための少なくとも1つの撮像剤を含む、組成物。
【請求項26】
水中では37℃より低いLCSTを有するサーモゲルを形成することができる請求項1乃至17の何れか一項に記載のコポリマーの、
腫瘍ターゲティング標的における使用、手術後癒着の防止における使用、腹圧性尿失禁の防止のための膨張性薬剤としての使用、炎症を起こした組織における使用、
目のイオントフォレシスおよび目の組織における使用、神経系および脳の組織における使用、一時的血管閉塞における使用、長期のストレスのかかるまたは要求の厳しい状況下での成績向上薬の送達、組織工学アプリケーションにおける使用または一時的なin vivo空隙フィラーとしての使用のための薬剤の製造のための使用。
【請求項27】
請求項26に記載の組成物の使用であって、前記膨張性薬剤は合成又は天然のマイクロ粒子を含む、使用。
【請求項28】
請求項26に記載の組成物の使用であって、前記成績向上薬は、鎮痛剤、ビタミン、カフェイン誘導体、抗生物質、抗酸化剤、植物からの抽出物、同化化合物、代謝化合物、血管拡張薬、栄養補助食品またはこれらの組み合わせを含む、使用。
【請求項29】
請求項26に記載の組成物の使用であって、前記組織工学アプリケーションは、骨、軟骨、皮膚、神経、筋肉、目、ホルモン分泌線組織および椎間板修復に関連する、使用。
【請求項30】
請求項26ないし28の何れか一項に記載の組成物の使用であって、前記サーモゲルは、神経派生細胞、軟骨細胞、骨芽細胞、骨髄派生幹細胞、間葉幹細胞、肝臓派生細胞、筋肉派生細胞、線維芽細胞、ケラチノサイト、上皮細胞、脂肪組織派生細胞、髄核細胞、繊維輪細胞、胚幹細胞またはこれらの組み合わせと組み合わせられる、使用。
【請求項31】
請求項26ないし29の何れか一項に記載の組成物の使用であって、美容外科、再生外科および口腔外科のための一時的空隙フィラーとしての使用。
【請求項32】
請求項31に記載の組成物の使用であって、前記サーモゲルは合成又は天然ポリマーと組み合わせられる、使用。
【請求項33】
請求項32に記載の組成物の使用であって、前記合成又は天然ポリマーは、マイクロもしくはナノ粒子、マイクロスフィア、粉末、繊維、フリース、膜、フィルムまたはこれらの組み合わせとして存在する、使用。
【請求項34】
請求項18ないし33の何れか一項に記載の組成物の使用であって、15体積%より小さい膨潤が有利であるアプリケーション、例えば眼球内または頭蓋内手術のための使用。
【請求項35】
請求項18ないし33の何れか一項に記載の組成物であって、前記治療薬剤は成長因子である、組成物。
【請求項36】
請求項35に記載の組成物であって、前記形質転換成長因子は、形質転換成長因子β−3、骨形成タンパク質1、骨形態形成タンパク質2および7からなる群のうちの少なくとも1つである、組成物。

【図1】
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【公表番号】特表2010−539312(P2010−539312A)
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−525351(P2010−525351)
【出願日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際出願番号】PCT/EP2008/062441
【国際公開番号】WO2009/037313
【国際公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(510076340)
【氏名又は名称原語表記】NIRVANA’S TREE HOUSE B.V.
【住所又は居所原語表記】Doornlaan 22 NL−6226WV Maastricht NL.
【Fターム(参考)】