説明

両面供用可能なプレキャストコンクリート舗装版とその設置方法

【課題】工期の大幅な短縮化を図ることができ、反転後も舗装版同士を結合することができる舗装版を提供する。
【解決手段】舗装版1,2の表側および裏側に舗装面7,8を各々形成する。互いに連結する舗装版1,2の結合構造21は、舗装版1,2に横設され接合端面23に開口する水平孔25と、この一方の水平孔25に対応して舗装版1,2に横設され接合端面24に開口する水平孔28と、互いに連結する舗装版1,2の一方の水平孔25と他方の水平孔28に跨って挿入される結合鉄筋26と、一方の水平孔25と他方の水平孔28の少なくとも一方に連通する充填材用の垂直孔27,29と、この垂直孔27,29から一方及び他方の水平孔25,28に充填した充填材34とを備え、垂直孔27,29が表側に連通する表側用の結合構造21と、垂直孔27,29が裏側に連通する裏側用の結合構造とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、舗装などに用いる両面供用可能なプレキャストコンクリート舗装版とその舗装版を用いて舗装路面などを形成する設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリート舗装の急速修繕工法として、路盤をあらわにした後、プレキャスト舗装版などのコンクリートを敷き詰め、これら舗装版間を連結する舗装版(例えば、特許文献1)が提案され、この舗装版では、互いに連結する両コンクリート舗装版の結合端面間に連通され、かつ両端が前記コンクリート舗装版の表面側に開口させた弧状の連通孔を備え、該連通孔内に前記両コンクリート舗装版にまたがらせて弧状の連通棒を挿通するとともに、前記連通孔内に充填材を充填して前記連結棒を連通孔内に埋設固定している。
【0003】
また、結合しようとするコンクリート舗装版の結合端面に気密性パッキングを嵌装し、かつコンクリート舗装版の端面に開口して各水平孔を設け、この水平孔の軸方向に結合鉄筋を収納すると共に、奥部にコンクリート舗装版の水平孔の開口部が一致するように形成し、前記開口部より圧縮空気を吹き込んで結合鉄筋を移動させた後、充填材を充填するコンクリート舗装版の結合方法(例えば、特許文献2)が提案されている。
【0004】
また、舗装版に雌螺子部を有する貫通孔を形成し、その雌螺子部にジャッキアップ工具を螺合回転させて舗装版を上下させて所定の高さに調整し、舗装版に形成した充填材用の貫通孔から舗装版の裏面側に充填材を充填する補修方法及び舗装版(例えば特許文献3)が提案されている。
【0005】
上記従来技術においては、いずれも舗装版の片面しか使用しないものであったため、特に高品質コンクリート製品であるプレキャスト舗装版の場合には建設コストが割高になる。
【0006】
このような問題を考慮して、舗装版の表側舗装面が磨耗等の損傷により供用限界に達した後、前記舗装版を反転して裏側舗装面を路面などとして再度路盤上に敷設して供用可能とする両面供用可能なプレキャスト舗装版の設置方法(例えば特許文献4)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭56−167005号公報
【特許文献2】特開昭61−261502号公報
【特許文献3】特開昭61−169504号公報
【特許文献4】特開平3−194004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献4のものでは、補修時の建設コスト及び維持管理を含めたトータルコストの低減を図り、また、工期の大幅な短縮化を図ることができる。
【0009】
ところで、特許文献4では舗装版を反転して使用することはできるが、舗装版同士の結合構造は考慮されていなかった。また、上記特許文献1及び2では、舗装版同士を結合することができるが、仮に反転して使用しようとしても、反転後は舗装版同士を結合することはできなかった。
【0010】
そこで、本発明は上記した問題点に鑑み、建設コスト及び維持管理を含めたトータルコストの低減を図り、また、工期の大幅な短縮化を図ることができ、反転後も舗装版同士を結合することができる両面供用可能なプレキャストコンクリート舗装版とその設置方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、舗装版の表側および裏側に舗装面を各々形成した両面供用可能なプレキャストコンクリート舗装版において、互いに連結する前記舗装版の接合端面間に結合鉄筋を介在させる結合構造を備え、前記結合構造は、前記舗装版に横設され前記接合端面に開口する一方の孔と、この一方の孔に対応して前記舗装版に横設され前記接合端面に開口する他方の孔と、互いに連結する前記舗装版の前記一方の孔と前記他方の孔に跨って挿入される結合鉄筋と、前記一方の孔と前記他方の孔の少なくとも一方に連通する充填材用の充填孔と、この充填孔から前記一方及び他方の孔に充填した充填材とを備え、前記充填孔が表側に連通する表側用の前記結合構造と、前記充填孔が裏側に連通する裏側用の前記結合構造とを備えることを特徴とする。
【0012】
また、請求項2に係る発明は、前記表側用結合構造の前記一方の孔と、前記裏側用結合構造の前記一方の孔とを並設し、前記表側用結合構造の前記他方の孔と、前記裏側用結合構造の前記他方の孔とを並設したことを特徴とする。
【0013】
また、請求項3に係る発明は、前記舗装版の前記結合端面に吊り具を設け、この吊り具が前記結合端面の内側に設けられていることを特徴とする。
【0014】
また、請求項4に係る発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の両面供用可能なプレキャストコンクリート舗装版の設置方法において、路盤上に前記舗装版を敷設すると共に、前記表側用結合構造により隣合う前記舗装版同士を結合し、前記表側舗装面が磨耗等の損傷により供用限界に達した後、前記接合端面間に介在する前記結合鉄筋を切断し、前記舗装版を反転して再度路盤上に敷設し、前記裏側用結合構造により隣合う前記舗装版同士を結合することを特徴とする。
【0015】
また、請求項5に係る発明は、前記舗装版の接合端面を、前記一方及び他方の孔の開口部が一致するように合わせた後、前記結合鉄筋の他方側を前記他方の舗装版の孔内に挿入するに際し、前記結合鉄筋の一端側に引張部材の一端を連結した後、この連結した引張部材の一端側と共に前記結合鉄筋を、前記一方の孔に収め、前記引張部材の他端側を上部に引き出し、前記一方及び他方の孔の開口部が一致するように合わせた後、前記引張部材の他端側を引張って前記結合鉄筋を他方に孔に向って動かすことを特徴とする。
【0016】
また、請求項6に係る発明は、前記舗装版の前記表側舗装面と前記裏側舗装面と間に貫通した受け孔及びグラウト孔を設け、前記舗装版を路盤上に並設して敷設すると共に、前記受け孔に螺合した高さ調整ボルトにより該舗装版の高さを調節し、前記高さ調整ボルトにより支持しながら前記グラウト孔から該舗装版の下面側にグラウト材を充填することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の請求項1の構成によれば、表側舗装面が磨耗等の損傷により供用限界に達したら、舗装版を反転して裏側に形成している裏側舗装面を上にして再度敷設する。この場合、表側舗装面を上にして使用する場合は、一方と他方の孔に結合鉄筋を跨って配置した後、上に位置する表側の充填孔から充填材を充填し、一方、裏側舗装面を上にして使用する場合は、一方と他方の孔に結合鉄筋を跨って配置した後、反転後上に位置する裏側の充填孔から充填材を充填し、表裏両方で隣合う舗装版を結合することができる。
【0018】
また、本発明の請求項2の構成によれば、表側用結合構造と裏側用結合構造において、結合鉄筋を挿入する孔を並設して配置しているから、表側舗装面と裏側舗装面の使用状態において、略同一性能の結合構造が得られる。
【0019】
また、本発明の請求項3の構成によれば、接合端面に設けた吊り具により反転作業が容易となり、しかも、吊り具が接合端面から突出しないから、敷設状態で邪魔にならない。
【0020】
また、本発明の請求項4の構成によれば、表側舗装面と裏側舗装面の両面供用時に、隣合う舗装版同士を結合して使用することができる。
【0021】
また、本発明の請求項5の構成によれば、引張部材を連結した結合鉄筋を、一方の孔に収め、引張部材の他端は外部に引き出しておき、コンクリート舗装版の接合端面相互を突き合わせ、一方及び他方の孔を合わせた後、引張部材の他端を引張ると、結合鉄筋が他方の孔に向って動き、結合鉄筋を一方及び他方の孔に跨って配置することができる。
【0022】
また、本発明の請求項6の構成によれば、表側舗装面と裏側舗装面の敷設時に、受け孔に螺合した高さ調整ボルトにより該舗装版の高さを調節し、グラウト孔を用いて舗装版の下面側にグラウト材を充填することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施例1を示す舗装版の平面図である。
【図2】同上、舗装版の側面図である。
【図3】同上、受け孔回りの断面図である。
【図4】同上、グラウト孔回りの断面図である。
【図5】同上、吊り具回りの断面図である。
【図6】同上、受け孔の高さ調整ボルトを螺合した状態の断面図である。
【図7】同上、グラウト充填後のグラウト孔回りの断面図である。
【図8】同上、受け孔から高さ調整ボルトを抜いて上部にモルタルを充填した状態の断面図である。
【図9】同上、受け孔から高さ調整ボルトを抜き、その受け孔に仮充填部材を螺合して上部にモルタルを充填した状態の断面図である。
【図10】同上、仮充填部材の要部の斜視図である。
【図11】同上、結合鉄筋を収める前の一方の舗装版の断面図である。
【図12】同上、引張部材を連結する前の結合鉄筋の側面図である。
【図13】同上、結合鉄筋を収めた後の一方の舗装版の断面図である。
【図14】同上、結合鉄筋を動かす前の舗装版の断面図である。
【図15】同上、結合鉄筋を動かした後の舗装版の断面図である。
【図16】同上、充填材を充填した後の舗装版の断面図である。
【図17】同上、反転後、充填材を充填した後の舗装版の断面図である。
【図18】本発明の実施例2を示す結合鉄筋を動かした後の舗装版の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明における好適な実施の形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、以下に説明される構成の全てが、本発明の必須要件であるとは限らない。各実施例では、従来とは異なる新規な両面供用可能なプレキャストコンクリート舗装版とその設置方法を採用することにより、従来にない両面供用可能なプレキャストコンクリート舗装版とその設置方法が得られ、その両面供用可能なプレキャストコンクリート舗装版とその設置方法について記述する。
【実施例1】
【0025】
以下、本発明の実施例を添付図面を参照して説明する。図1〜図17は本発明の実施例1を示し、同図に示すように、プレキャストコンクリート製の舗装版1,2は、その結合端面23,24を突き合わせ状態で敷設される。
【0026】
前記舗装版1,2の表裏には、タイヤとの摩擦を増大させるために洗い出し仕上げを行った表側舗装面7とホウキ目仕上げを行なった裏側舗装面8とが形成され、この裏側舗装面8には、後述する裏込め材たるグラウト材の付着を防止するために剥離剤8Aが散布あるいは塗布されている。
【0027】
次に、隣合う舗装版1,2同士を結合する表側及び裏側結合構造21,22について説明する。尚、舗装版1,2は同一構成のものである。
【0028】
表側及び裏側結合構造21,22は、前記舗装版1,2の幅方向一側(図1中で下側)と長さ方向一側(図1中で右側)には、一端が結合端面23に開口する一方の孔たる水平孔25を横設し、この水平孔25内に、結合鉄筋26が摺動自在に遊嵌して収められる。この水平孔25の奥部には、舗装版1,2の外部側たる上面と連通する断面円形の充填材用の充填孔たる垂直孔27を設ける。
【0029】
また、前記舗装版1,2の幅方向他側(図1中で上側)と長さ方向他側(図1中で左側)には、一端が結合端面24に開口する他方の水平孔28を横設する。この水平孔28は、外側に向って僅かに拡大するテーパー孔であり、結合端面24における開口は、前記水平孔24の結合端面23における開口より大きく形成され、また、水平孔28の結合端面24における開口の下端28Kは、水平孔25の結合端面24における開口の下端より低い位置に設定され、これにより結合鉄筋26が挿入し易くなっている。また、その水平孔28の奥部には、舗装版1,2の外部側たる上面と連通する断面円形の充填材用の充填孔たる垂直孔29を設ける。
【0030】
また、水平孔28の長さは、前記水平孔25の略半分であり、結合鉄筋26の略半分が水平孔28に収まり、結合鉄筋26の他端が水平孔28の奥部に当接する。
【0031】
前記舗装版1,2の結合端面23,24間には、パッキン材30が嵌装し、このパッキン材30には、前記水平孔28に対応して、挿通孔31が穿設されている。
【0032】
前記結合鉄筋26の一端側には、引張部材たるビニールテープ32を連結する。この連結には、接着手段たる粘着テープ33が用いられ、この粘着テープ33としては、布製のテープに粘着面を設けた布製ガムテープなどが例示される。
【0033】
尚、34は前記垂直孔27,29から水平孔25,28に充填した充填材である。
【0034】
図1及び図2に示すように、前記接合端面23には、並設された一対の水平孔25,25が複数箇所設けられ、また、前記接合端面24に、並設された一対の水平孔28,28が複数個所設けられている。さらに、水平孔25,28は舗装版1,2の厚さ方向中央に設けられている。
【0035】
そして、一対の水平孔25,25の一方の垂直孔27は表側舗装面7に連通すると共に、他方の垂直孔27は裏側舗装面8に連通し、また、一対の水平孔28,28の一方の垂直孔29は表側舗装面7に連通すると共に、他方の垂直孔28は裏側舗装面8に連通し、前記表側結合構造21は表側舗装面7に連通する垂直孔27,29を備え、前記裏側結合構造21は裏側舗装面8に連通する垂直孔27,29を備える。
【0036】
尚、この例では、図1中、下,上の結合端面23,24において、左側の水平孔25,28の垂直孔27,29が表側舗装面7に連通すると共に、右側の水平孔25,28の垂直孔27,29が表側舗装面8に連通し、また、左,右の結合端面24,23において、上側の水平孔28,25の垂直孔29,27が裏側舗装面8に連通すると共に、下側の水平孔28,25の垂直孔29,27が裏側舗装面8に連通している。
【0037】
9は表側舗装面7と裏側舗装面8との間に貫通する舗装版吊り上げ及び高さ調節兼用の受け孔であり、これら複数の受け孔9は舗装版1,2の少なくとも四方に配置されており、この受け孔9の略中央には雌螺子部であるナット状の雌螺子体10が、舗装版成形時のインサート成形により同軸状に固着されている。尚、雌螺子体10はステンレスなどの耐腐食性に優れた材料からなる。そして、前記雌螺子体10には吊り具(図示せず)又は高さ調整ボルト11が螺合され、この高さ調整ボルト11の頭部が工具係合部であり、舗装版1,2を敷設する際には、吊り具を雌螺子体10に螺合し、敷設した後、高さ調整ボルト11を雌螺子体10に螺合し、螺合位置を調節することにより、舗装版1,2の高さを調節することができる。尚、高さ調整ボルト11の先端を尖鋭に形成することにより、回転時の抵抗を少なくしている。
【0038】
また、前記雌螺子体10には、必要に応じて、図8に示すように、合成樹脂などからなる仮充填部材11Aが螺合され、この仮充填部材11Aの上下端には、ドライバー用溝などの工具係合部11Kを有し、雌螺子体10に仮充填部材11Aを充填した状態で、仮充填部材11Aの頂部には凹型のキャップ11Bが嵌合され、仮充填部材11Aによりモルタルが受け孔9内に侵入することを防止している。
【0039】
12はグラウト材充填用のグラウト孔であり、このグラウト孔12は塩化ビニルなどの合成樹脂パイプ13を埋設して設けられている。
【0040】
また、前記舗装版1,2の接合端面23,24には、複数の吊り具41が設けられ、図5に示すように、前記吊り具41はデーハーアンカーなどからなり、吊り具本体42を舗装版1,2に埋設固定し、吊り具本体42の頭部42Aを、接合端面23,24に形成した凹部44に収納し、前記頭部43に吊金具(図示せず)を係止して舗装版1,2が吊り上げられる。
【0041】
次に、前記舗装版の設置方法について説明する。尚、設置における結合作業に係る説明は後述する。
【0042】
まず、既設舗装をコンクリートカッター,ブレーカーなどを用いて取り壊した後、搬出する。次に、図6及び図7に示すように、既設路盤上に補足材を搬入して敷き均し、また、振動ローラ等により転圧すると共にレベル等を調節する。このようにして路盤15を形成した後、該路盤15の上部を構成するアスファルト中間層14を形成し、該アスファルト中間層14に後述するグラウトの浸透防止と充填促進のために厚さが0.1〜0.3mm程度のビニール製等の樹脂シート16を敷設し、その上に前記受け孔9に対応して高さ調整ボルト11の受け板17となる鉄板等を適所に配置する。尚、アスファルト中間層14は必ずしも設ける必要はないが、隣合う舗装版1,2の目地部からの雨水侵入と振動とによる調整砂の流出によって目地部下方が空洞化することを防止すると共に、支持力増強を図る面から、アスファルト中間層14を設けることが好ましい。
【0043】
次に、受け孔9の雌螺子体10に吊り上げ具(図示せず)を螺着して運搬トラック及びクレーンにより舗装版1,2を所定位置に敷設する。そして、吊り上げ具を外し、図6に示すように、前記受け孔9の一側から高さ調整ボルト11を螺入して該高さ調整ボルト11の下端を受け板17に当接せしめてレベルの調節をし、所定高さに支持する。また、隣合う舗装版1,2の接合端面23,24間に挟むようにパッキン20を配置する。
【0044】
この後、前記グラウト孔12より自然流下させて舗装版1,2の裏側に裏込め用のグラウト材18を充填し、硬化させる(図7)。グラウト材18が硬化した後、ボルト11を引き抜き、これによりボルト11を引き抜いた箇所が空洞となり、図8に示すように、受け孔9の上部にキャップ11Bを装着し、この後、その受け孔9の上部に超速硬性のモルタル19を充填し、また、グラウト孔12の上部にも超速硬性のモルタル19を充填する。尚、ボルト11を引き抜いた後、図9に示すように、受け孔9に、合成樹脂製の仮充填部材11Aを螺入し、受け孔9の上部にキャップ11Bを装着し、該仮充填部材11Aにより受け孔9を保護するようにしてもよい。
【0045】
次に、上述した設置作業中に行う隣合う舗装版1,2の結合作業について説明する。硬質材料からなる結合鉄筋26の他端側に、粘着テープ33により、ビニールテープ32の他端を接着して連結する。隣の舗装版を敷設する前に、その結合鉄筋26を他端から水平孔25に挿入して収める。
【0046】
表側舗装面7を用いる場合、隣合う水平孔25,25の一方のみに結合鉄筋26を挿入する。具体的には、図1では、図中下側の結合端面23の左側の水平孔25と、図中右側の結合端面23の上側の水平孔25に結合鉄筋26を挿入する。
【0047】
また、ビニールテープ32の一端は舗装版1の上に引き出しておく。好ましくは、ビニールテープ32の途中は、水平孔25上の結合端面23に沿わせ、さらに、舗装版1の上面に沿わせておく。この状態で、上述したようにパッキン材30を接合端面3,4間に挟んで、舗装版1,2を敷設し、ビニールテープ32の一端は、外部である舗装版1,2の表面側の上に引き出しておく。
【0048】
次に、ビニールテープ32の一端側を外側に引っ張ると、接合鉄筋26が他方の舗装版2側に送られ、挿通孔31から水平孔28内に挿入され、結合鉄筋26の一端が、水平孔28の奥に当ることにより止まる。この場合、結合鉄筋26が水平孔28の奥に当接する際に発する音により、これを確認できる。この後、さらにビニールテープ32を強く引けば、粘着テープ33からビニールテープ32が外れ、ビニールテープ32を抜き取ることができる。尚、ビニールテープ32が舗装版1内に残っても問題はない。
【0049】
この後、表側に開口する垂直孔27,29から充填材34を充填し、水平孔25,28と結合鉄筋26との隙間及び垂直孔27,29を充填材34により埋める。尚、充填材34には硬化性を有するグラウト材などが用いられる。
【0050】
上述したように舗装版1,2…を敷設すると共に、隣合う舗装版1,2同士を結合し、供用するものである。
【0051】
一方、舗装版1,2の表側舗装面7が轍などによって磨耗したような場合には、パッキン材10を除去し、隣合う舗装版1,2間の結合鉄筋26をカッターなどにより切断する。この場合、充填材34を充填した垂直孔27,29を目印にして結合鉄筋26の位置を確認できる。また、前記受け孔9のモルタル19を除去し、キャップ11Bを取り出すと、上述したようにボルト11を外してできた中空状の雌螺子体10が表れ、或いは、仮充填部材11Aを用いた場合は、仮充填部材11Aも取り外し、吊り具(図示せず)を前記受け孔9の雌螺子体10に螺合し、雌螺子体10に螺合した吊り具と前記吊り具41を用いて舗装版1,2を吊り上げた後、反転し、裏側舗装面8を表面とし、上述したように路盤工を行い、さらに、裏側舗装面8側から受け孔9にボルト11を螺入してレベルなどを調節する。
【0052】
また、反転する前に、グラウト孔12からモルタル20を除去し、或いはモルタル20をパイプ13と共に除去する。さらに、隣に舗装版2を敷設する前に、表側で使用しなかった隣合う水平孔25,25の他方のみに結合鉄筋26を挿入し、また、ビニールテープ32の一端は舗装版1の上である裏側舗装面8に引き出しておく。そして、表側舗装面7を上にする設置方法と同様にして隣に舗装版2を敷設する。
【0053】
レベルを調節した後、グラウト孔12から下向きとなった舗装面7側にグラウト材18を充填し、固化させる。また、ボルト11を抜き出した後、受け孔9及びグラウト孔12の上部に超速硬性のモルタル19,20を充填する。
【0054】
また、ビニールテープ32の一端側を外側に引っ張ると、接合鉄筋26が他方の舗装版2側に送られ、挿通孔31から水平孔28内に挿入され、結合鉄筋26の一端が、水平孔28の奥に当ることにより止まる。この後、上になった裏側舗装面8に開口する垂直孔27,29から充填材34を充填し、水平孔25,28と結合鉄筋26との隙間及び垂直孔27,29を充填材34により埋める。尚、充填材34には硬化性を有するグラウト材などが用いられる。
【0055】
そして、養生した後、表となった裏側舗装面8を供用する。
【0056】
以上のように、舗装版1,2の表側及び裏側に表側舗装面7及び裏側舗装面8を各々形成し、表側舗装面7が磨耗などした場合には、舗装版1,2を反転して裏側舗装面8をあらわにして再度設置することによって、一枚の舗装版1,2を再利用でき、コストの低減を図ることができ、特に、従来できなかった結合構造21,22を備えた舗装版において両面供用が可能となる。
【0057】
さらに、表側舗装面7及び裏側舗装面8を有する舗装版1,2を反転して再度設置するため、新たに舗装版を製作し、運び込む必要がなく、工期の短縮を図ることができる。
【0058】
このように本実施例では、請求項1に対応して、舗装版1,2の表側および裏側に舗装面7,8を各々形成した両面供用可能なプレキャストコンクリート舗装版において、互いに連結する舗装版1,2の接合端面3,4間に結合鉄筋26を介在させる結合構造21,22を備え、結合構造21,22は、舗装版1,2に横設され接合端面に開口する一方の孔たる水平孔25と、この一方の水平孔25に対応して舗装版1,2に横設され接合端面24に開口する他方の孔たる水平孔28と、互いに連結する舗装版1,2の一方の水平孔25と他方の水平孔28に跨って挿入される結合鉄筋26と、一方の水平孔25と他方の水平孔28の少なくとも一方に連通する充填材用の充填孔たる垂直孔27,29と、この垂直孔27,29から一方及び他方の水平孔25,28に充填した充填材34とを備え、垂直孔27,29が表側に連通する表側用の結合構造21と、垂直孔27,29が裏側に連通する裏側用の結合構造22とを備えるから、表側舗装面7が磨耗などの損傷をしたら、舗装版1,2を反転して裏側に形成している裏側舗装面8を上にして再度敷設する。この場合、表側舗装面7を上にして使用する場合は、一方と他方の水平孔25,28に結合鉄筋26を跨って配置した後、上に位置する表側の垂直孔27,29から充填材34を充填し、一方、裏側舗装面8を上にして使用する場合は、一方と他方の水平孔25,28に結合鉄筋26を跨って配置した後、反転後上に位置する裏側の垂直孔27,29から充填材34を充填し、表裏両方で隣合う舗装版1,2を結合することができる。
【0059】
また、このように本実施例では、請求項2に対応して、表側用結合構造21の一方の孔たる水平孔25と、裏側用結合構造22の一方の孔たる水平孔25とを並設し、表側用結合構造21の他方の孔たる水平孔28と、裏側用結合構造22の他方の孔たる水平孔28とを並設したから、表側用結合構造21と裏側用結合構造22において、結合鉄筋26を挿入する水平孔25,28を並設して配置しているから、表側舗装面7と裏側舗装面8の使用状態において、略同一性能の結合構造が得られる。
【0060】
また、このように本実施例では、請求項3に対応して、舗装版1,2の結合端面23,24に吊り具41を設け、この吊り具41が結合端面23,24の内側に設けられているから、接合端面23,24に設けた吊り具41により反転作業が容易となり、しかも、吊り具41が接合端面23,24から突出しないから、敷設状態で邪魔にならない。
【0061】
また、本発明の請求項4の構成によれば、表側舗装面と裏側舗装面の両面供用時に、隣合う舗装版同士を結合して使用することができる。
【0062】
また、このように本実施例では、請求項4に対応して、請求項1〜3のいずれか1項に記載の両面供用可能なプレキャストコンクリート舗装版の設置方法において、路盤15上に舗装版1,2を敷設すると共に、表側用結合構造21により隣合う舗装版1,2同士を結合し、表側舗装面7が磨耗等の損傷により供用限界に達した後、接合端面23,24間に介在する結合鉄筋26を切断し、舗装版1,2を反転して再度路盤15上に敷設し、裏側用結合構造22により隣合う舗装版1,2同士を結合するから、表側舗装面7と裏側舗装面8の両面供用時に、隣合う舗装版1,2同士を結合して使用することができる。
【0063】
また、このように本実施例では、請求項5に対応して、舗装版1,2の接合端面23,24を、一方及び他方の孔たる水平孔25,28の開口部が一致するように合わせた後、結合鉄筋26の他方側を他方の舗装版2の孔たる水平孔28内に挿入するに際し、結合鉄筋26の一端側に引張部材たるビニールテープ32の一端を連結した後、この連結したビニールテープ32の一端側と共に結合鉄筋26を、一方の水平孔25に収め、ビニールテープ32の他端側を上部に引き出し、一方及び他方の水平孔25,28の開口部が一致するように合わせた後、ビニールテープ32の他端側を引張って結合鉄筋26を他方に水平孔28に向って動かすから、ビニールテープ32を連結した結合鉄筋26を、一方の水平孔25に収め、ビニールテープ32の他端は接合端面23,24を突き合せる前に外部に引き出しておき、コンクリート舗装版1,2の接合端面23,24相互を突き合わせ、一方及び他方の水平孔25,28を合わせた後、ビニールテープ32の他端を引張ると、結合鉄筋26が他方の水平孔28に向って動き、結合鉄筋26を一方及び他方の水平孔25,28に跨って配置することができる。
【0064】
また、このように本実施例では、請求項6に対応して、舗装版1,2の表側舗装面7と裏側舗装面8と間に貫通した受け孔9及びグラウト孔12を設け、舗装版1,2を路盤15上に並設して敷設すると共に、受け孔9に螺合した高さ調整ボルト11により該舗装版1,2の高さを調節し、高さ調整ボルト11により支持しながらグラウト孔12から該舗装版1,2の下面側にグラウト材18を充填するから、表側舗装面7と裏側舗装面8の敷設時に、受け孔9に螺合した高さ調整ボルト11により該舗装版1,2の高さを調節し、グラウト孔12を用いて舗装版1,2の下面側にグラウト材18を充填することができる。
【0065】
また、実施例上の効果として、水平孔25,28を舗装版1,2の厚さ方向中央に設けたから、表裏両面の使用において、均一な結合構造21,22を得ることができる。また、複数運の吊り具41を舗装版1,2の幅方向端面(図1で上下の結合端面23,24)に設けたから、反転作業が容易となる。
【0066】
また、実施例上の効果として、互いに連結するコンクリート舗装版1,2の接合端面23,24間に結合鉄筋26を介在させるコンクリート舗装版1,2の結合工法において、一方の舗装版1には一端が該舗装版1の接合端面23に開口する一方の孔たる水平孔25を横設するとともに、この一方の水平孔25に結合鉄筋26を収め、他方の舗装版2には一端が舗装版2の接合端面24に開口する他方の孔たる水平孔28を横設し、これら舗装版1,2の接合端面23,24を、一方及び他方の水平孔25,28の開口部が一致するように合わせた後、結合鉄筋26の他方側を他方の舗装版2の水平孔28内に挿入するコンクリート舗装版の接合方法において、結合鉄筋26の一端側に引張部材たるビニールテープ32の一端を連結した後、この連結したビニールテープ32の一端側と共に結合鉄筋26を、一方の水平孔25に収め、ビニールテープ32の他端側を上部に引き出し、一方及び他方の水平孔25,28の開口部が一致するように合わせた後、ビニールテープ32の他端側を引張って結合鉄筋26を他方に水平孔28に向って動かすから、ビニールテープ32を連結した結合鉄筋26を、一方の水平孔25に収め、ビニールテープ32の他端は接合端面23,24を突き合せる前に外部に引き出しておき、コンクリート舗装版1,2の接合端面23,24相互を突き合わせ、一方及び他方の水平孔25,28を合わせた後、ビニールテープ32の他端を引張ると、結合鉄筋26が他方の水平孔8に向って動き、結合鉄筋26を一方及び他方の水平孔25,28に跨って配置することができる。
【0067】
また、一方の水平孔28内において、引張部材たるビニールテープ32を結合鉄筋26の上部に配置したから、ビニールテープ32を引張りやすくなる。
【0068】
また、接着手段たる粘着テープ33によりビニールテープ32を結合鉄筋26に連結したから、結合鉄筋26を移動した後、前記引張部材を外部に引き抜くもできる。
【実施例2】
【0069】
図18は本発明の実施例2を示し、上記実施例1と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述し、この例では、水平孔25,28を囲むようにして、舗装版1,2内に補強部材51を配置している。この補強部材51としては、輪状の鉄筋やループ上の鉄筋が例示される。尚、同図に示すように補強部材51は、水平孔25の全長に設ける必要はなく、接合状態で結合鉄筋26を略囲む範囲に設ければよい。
【0070】
このように本実施例では、両方の水平孔25,28を補強部材21により補強しているから、結合強度を確保することができる。
【0071】
尚、本発明は、本実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、結合構造は、実施例のタイプに限定されることなく、従来技術のタイプなどの各種の構造に適用可能である。また、引張部材は、ビニールテープ以外でも、外部で他端側を引張ることにより結合鉄筋を動かすことができるものであれば、紐や帯、あるいはチェーンなどもよい。また、結合鉄筋の材質は適宜選定可能である。さらに、仮充填部材を用いることなく施工ができることは言うまでもない。また、本施工方法は、アスファルト中間層の無い路盤に用いることができる。
【符号の説明】
【0072】
1 舗装版
2 舗装版
3 結合端面
4 結合端面
7 表側舗装面
8 裏側舗装面
9 受け孔
11 高さ調整ボルト
12 グラウト孔
14 アスファルト中間層(路盤)
15 路盤
18 グラウト材
21 表側結合構造
22 裏側結合構造
23 結合端面
24 結合端面
25 一方の水平孔(一方の孔)
26 結合鉄筋
27 垂直孔(充填孔)
28 他方の水平孔(他方の孔)
29 垂直孔(充填孔)
32 ビニールテープ(引張部材)
34 充填材
41 吊り具
43 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
舗装版の表側および裏側に舗装面を各々形成した両面供用可能なプレキャストコンクリート舗装版において、
互いに連結する前記舗装版の接合端面間に結合鉄筋を介在させる結合構造を備え、
前記結合構造は、前記舗装版に横設され前記接合端面に開口する一方の孔と、この一方の孔に対応して前記舗装版に横設され前記接合端面に開口する他方の孔と、互いに連結する前記舗装版の前記一方の孔と前記他方の孔に跨って挿入される結合鉄筋と、前記一方の孔と前記他方の孔の少なくとも一方に連通する充填材用の充填孔と、この充填孔から前記一方及び他方の孔に充填した充填材とを備え、
前記充填孔が表側に連通する表側用の前記結合構造と、前記充填孔が裏側に連通する裏側用の前記結合構造とを備えることを特徴とする両面供用可能なプレキャストコンクリート舗装版。
【請求項2】
前記表側用結合構造の前記一方の孔と、前記裏側用結合構造の前記一方の孔とを並設し、前記表側用結合構造の前記他方の孔と、前記裏側用結合構造の前記他方の孔とを並設したことを特徴とする請求項1記載の両面供用可能なプレキャストコンクリート舗装版。
【請求項3】
前記舗装版の前記結合端面に吊り具を設け、この吊り具が前記結合端面の内側に設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の両面供用可能なプレキャストコンクリート舗装版。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の両面供用可能なプレキャストコンクリート舗装版の設置方法において、路盤上に前記舗装版を敷設すると共に、前記表側用結合構造により隣合う前記舗装版同士を結合し、前記表側舗装面が磨耗等の損傷により供用限界に達した後、前記接合端面間に介在する前記結合鉄筋を切断し、前記舗装版を反転して再度路盤上に敷設し、前記裏側用結合構造により隣合う前記舗装版同士を結合することを特徴とする両面供用可能なプレキャストコンクリート舗装版の設置方法。
【請求項5】
前記舗装版の接合端面を、前記一方及び他方の孔の開口部が一致するように合わせた後、前記結合鉄筋の他方側を前記他方の舗装版の孔内に挿入するに際し、前記結合鉄筋の一端側に引張部材の一端を連結した後、この連結した引張部材の一端側と共に前記結合鉄筋を、前記一方の孔に収め、前記引張部材の他端側を上部に引き出し、前記一方及び他方の孔の開口部が一致するように合わせた後、前記引張部材の他端側を引張って前記結合鉄筋を他方に孔に向って動かすことを特徴とする請求項4記載の両面供用可能なプレキャストコンクリート舗装版の設置方法。
【請求項6】
前記舗装版の前記表側舗装面と前記裏側舗装面と間に貫通した受け孔及びグラウト孔を設け、前記舗装版を路盤上に並設して敷設すると共に、前記受け孔に螺合した高さ調整ボルトにより該舗装版の高さを調節し、前記高さ調整ボルトにより支持しながら前記グラウト孔から該舗装版の下面側にグラウト材を充填することを特徴とする請求項5記載の両面供用可能なプレキャストコンクリート舗装版の設置方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−117128(P2011−117128A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−272751(P2009−272751)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(000181354)鹿島道路株式会社 (46)
【出願人】(000232508)日本道路株式会社 (48)
【出願人】(000239437)福田道路株式会社 (24)
【出願人】(000201515)前田道路株式会社 (61)
【出願人】(591273281)株式会社アドヴァンス (18)
【出願人】(594005304)新和コンクリート工業株式会社 (4)
【出願人】(595136483)永井コンクリート工業株式会社 (6)
【Fターム(参考)】