説明

中央給電導波路型平面スロットアンテナ

【課題】 中央の給電導波路と対応する部分にはスロットが形成されておらず、この部分幅が広くなると、指向特性におけるサイドローブレベルが大きくなってしまうので、このサイドローブレベルを抑える構造とする。
【解決手段】 給電導波路120 を、その断面四辺形状に対し、その長辺側がアンテナベース部100 の厚さ方向となるように、かつその短辺側がアンテナベース部100 の電波放射面と平行な方向となるように形成する。複数本の放射導波路140 それぞれは、その一端をこの給電導波路120 に接続する。スロット板200 は、このアンテナベース部100 の各放射導波路140 に合わせて、そのスロット210 を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は中央給電導波路型平面スロットアンテナに関し、特に中央給電導波路の両側に複数の放射導波路が配置されて、これら複数の放射導波路に対し前述の中央給電導波路から給電される構造の中央給電導波路型平面スロットアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
平面スロットアンテナの1つの構造として(背景技術の第1の例)、図3に示すように、四辺形状のアンテナベース部100xに対し、その一方の面(電波放射側の面)に、四辺形状の一辺に沿って給電導波路120xを形成し、かつ、この給電導波路120xに対して直交するように、複数本の放射導波路140xをこの面全体に形成し、また、これら複数本の放射導波路140xそれぞれと対応して複数個のスロット210xが配列形成されたスロット板200xを、アンテナベース部100xの一方の面(導波路形成側の面)に止めねじ300でねじ止めする構造のものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この背景技術の第1の例では、放射導波路140xの長さが長くなって、その給電導波路側と終端側とでは給電電力に差が生じて、指向性や、伝達周波数帯域、放射電力等の諸特性において、希望する特性が得られなくなる、という問題点が生じるため、電波放射面の中央部分に給電導波路を設けた、中央給電導波路型平面スロットアンテナが提案されるようになってきた。
この中央給電導波路型平面スロットアンテナの背景技術における構造の1例を(背景技術の第2の例)図4に示す。
【0004】
この中央給電導波路型平面スロットアンテナも、前述の例(第1の例)と同様に、アンテナベース部100yとスロット板200yとから成り、その詳細は次のとおりである。
まず、アンテナベース部100yは、その中心部分に、その給電源部配置側の面からその一方の面(電波放射側の面)へと貫通する給電源導波孔110yが形成され、その一方の面の電波放射側の面には、この給電源導波孔110yを通ってこの面を左右に2分するように延びる、給電導波路120y、即ち、中央部分に、給電導波路120yが形成され、この給電導波路120yの両側に、複数本づつの放射導波路140yが、給電導波路120yと直交するように配置されている。放射導波路140yには、スロット210yからの反射を打ち消す効果を持つ放射導波路壁板143yが配置形成されている。そして、給電導波路120yと放射導波路140yとの交差路部分には、給電導波路120yの底面部分(給電導波路底面123)に、4本の誘電性ポスト124が配置形成されている。給電導波路120yの両端のみ、1本の誘電性ポスト125が配置形成されている。
【0005】
次に、スロット板200は、前述のアンテナベース部100yの複数本の放射導波路140yそれぞれと対応して、複数個のスロット210yが配列、形成されていて、前述の第1の例と同様に、アンテナベース部100の電波放射側の面にねじ止めされる。
【0006】
なお、アンテナベース部100yの給電導波路120yは、その底面(給電導波路底面123)が複数本の放射導波路140yの底面(放射導波路底面142y)と同一面となっており、従って、その断面は、放射導波路140yの断面と同様であり、横方向の方が縦方向(底面−スロット板方向)より広くなっている。
【0007】
また、スロット板200yにおいては、その中央部分の、アンテナベース部100yとの給電導波路120yと対応する部分にはスロットは形成されておらず、従って、その左右の、複数本の放射導波路140yと対応するスロット210yとの間隔dは、給電導波路120yの幅寸法より広めとする(例えば、非特許文献1参照)。
【特許文献1】特願2003−184424(図2)
【非特許文献1】朴 世鉉、広川 二郎、安藤 真「一層構造導波管アレイ用中央給電回路の設計」2003年、電子情報通信学会総合大会 講演論文集 B−1−87
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した背景技術における第2の例の中央給電導波路型平面スロットアンテナでは、そのアンテナベース部100yにおいて、中央に配設された給電導波路120yと、その両側に配設された複数本の放射導波路140yとの間で、その底面を同一平面として、その断面が横方向に長くなるように配置されており、従って、中央部分の給電導波路120yも横方向に広くなっており、このアンテナベース部100yの電波放射面にねじ止めされるスロット板200yには、アンテナベース部100yの複数の放射導波路140yそれぞれと対応して複数のスロット210yが配列、形成されているものの、中央の給電導波路120yと対応する位置にはスロットは形成されておらず、このスロットが形成されていない部分の幅寸法は、給電導波路120y及び放射導波路140yの幅寸法より広めの寸法dとなっているため、この部分での電波の放射はなく、従って、この平面スロットアンテナで形成される指向特性において、サイドローブレベルが上昇するという問題点があった。
【0009】
本発明の目的は、上記背景技術の問題点に鑑みて、指向特性におけるサイドローブレベルを低減することができる中央給電導波路型平面スロットアンテナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の中央給電導波路型平面スロットアンテナは、
一方の面に、この面の中心点を通る中心線上に配置、形成された給電導波路と、この給電導波路に対し、それぞれその一端を前記給電導波路と結合してこの給電導波路の両側に広がって延びるように形成された複数本づつの放射導波路と、を備えたアンテナベース部と、このアンテナベース部の複数本の放射導波路それぞれと対応する部位に複数のスロットが配列、形成されて、前記アンテナベース部の一方の面に装着され、前記給電導波路及び複数本の放射導波路それぞれを、その断面が閉じた四辺形状の導波管型となるようにするスロット板と、を含んで成り、前記アンテナベース部の給電導波路の断面は、スロット板装着状態の四辺形状の長辺側が前記アンテナベース部の厚さ方向であり、かつ短辺側がこのアンテナベース部の一方の面と平行な方向であることを特徴とする。
【0011】
また、前記アンテナベース部の、複数本の放射導波路それぞれは、その給電導波路と結合する部分に、この結合部分の各放射導波路の断面積を調整して前記給電導波路との間で授受される電力の比率を調整する、結合窓が設けられた構造である、構成を有し、更に、
前記アンテナベース部の給電導波路の、複数本の放射導波路それぞれが結合される部分の底面には、各放射導波路からの反射を打ち消す、反射抑圧壁が形成された構造である、構成を有している。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、第1に、電波放射面の中央部分に配置された給電導波路が、その断面四辺形状の、長辺側をアンテナベース部の厚さ方向とし、短辺側を電波放射面と平行な方向となるように形成され、かつ、この給電導波路にそれぞれその一端を接続してそのその両方向に広がるように延びて複数本づつの放射導波路が形成されており、このアンテナベース部の電波放射面に装着されるスロット板は、上記の複数本づつの放射導波路それぞれと対応して、複数のスロットが配列、形成されているのに対し、中央部分の給電導波路と対応する部分にはスロットが形成されていない構造となっているので、このスロット板における、スロットが形成されていない中央部分の間隔を小さくすることができて、この平面スロットアンテナにおける放射指向性のサイドローブレベルを低減することができる効果がある。
【0013】
また、本発明は、第2に、アンテナベース部が、給電導波路及び複数本の放射導波路を含め、また、各放射導波路に設けられた結合窓及び給電導波路の底面に設けられた反射抑圧壁を含めて、一体形成できる、という効果もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明を実施するための最良の形態は、
一方の面に、この面の中心点を通る中心線上に配置、形成された給電導波路と、この給電導波路に対し、それぞれその一端を上記給電導波路と接続してこの給電導波路の両側に広がって延びるように形成された複数本づつの放射導波路と、を備えたアンテナベース部と、このアンテナベース部の複数本の放射導波路それぞれと対応する部位に複数のスロットが配列、形成されて、上記アンテナベース部の一方の面に装着され、上記給電導波路及び複数本の放射導波路それぞれを、その断面が閉じた四辺形状の導波管型となるようにするスロット板と、を含んで成り、上記アンテナベース部の給電導波路の断面は、スロット板装着状態での四辺形状の長辺側がこのアンテナベース部の厚さ方向であり、かつ短辺側がこのアンテナベース部の一方の面と平行な方向である、構造を有している。
【0015】
また、上記アンテナベース部の、複数本の放射導波路それぞれは、その給電導波路と結合する部分に、この結合部分の各放射導波路の断面積を調整して上記給電導波路との間で授受される電力の比率を調整する、結合窓が設けられた構造であり、更に、
上記アンテナベース部の給電導波路の、複数本の放射導波路それぞれが結合される部分の底面には、各放射導波路からの反射を打ち消す、反射抑圧壁が形成された構造である、構成となっている。
【実施例】
【0016】
次に本発明の実施例について図面を参照して説明する。
図1は本発明の一実施例の全体構造を示す平面図、図2(a)〜(c)は図1に示された本発明の全体構造における、給電導波路と放射導波路との接続部分の拡大斜視図及び各方向から見た側面図である。
この実施例は、図1に示すように、アンテナベース部100とスロット板200とを含んで構成され、アンテナベース部100は、中心点を厚さ方向に貫通する給電源導波孔110が形成されて、その一方の面(電波放射側の面)に、この面の中心点を通る中心線上、即ち、上記の給電源導波孔110とつながって、配置、形成された給電導波路120と、この給電導波路120に対し、それぞれその一端をこの給電導波路120と接続してこの給電導波路120の両側に広がって延びるように形成された複数本づつの放射導波路140と、が形成されている。
【0017】
また、スロット板200は、アンテナベース部100の複数本の放射導波路140それぞれと対応する部位に、複数のスロット210が配列、形成されて、アンテナベース部100の一方の面(電波放射側の面)に装着され、上記の給電導波路120及び複数本の放射導波路140それぞれを、その断面が閉じた四辺形状の導波管型となるようにする。そしてこれらアンテナベース部100及びスロット板200の更なる詳細は、次のようになっている。
【0018】
まずアンテナベース部100は、その給電導波路120が、その断面を、スロット板200装着状態での四辺形状の長辺側がこのアンテナベース部100の厚さ方向となり、かつ短辺側がアンテナベース部100の一方の面と平行な方向となるように形成され、また、複数本の放射導波路140それぞれは、その断面を、スロット板200の装着状態での四辺形状の長辺側がこのアンテナベース部100の一方の面と平行な方向となり、かつ短辺側がこのアンテナベース部100の厚さ方向となるように形成され、更に給電導波路120との接続端部分は、この給電導波路120の形成形状に合わせて形成される。
【0019】
また、スロット板200は、上記のアンテナベース部100の複数本の放射導波路それぞれと対応する部位に、複数個づつのスロット210が配列、形成されている。給電導波路120をはさんで向かい合う放射導波路140には逆位相で電力が分配されるため、スロット210と放射導波路壁板143の配列は、各々のスロットが同相で励振されるように配列、形成されている。
【0020】
そして、アンテナベース部100の、複数本の放射導波路140それぞれは、その給電導波路120との接続部分に、この接続部分の各放射導波路の断面積を調整して給電導波路120との間で授受される電力の比率を調整する、結合調整部130が設けられており、また、アンテナベース部100の給電導波路120の、複数本の放射導波路140それぞれが接続される部分の底面(122)には、各放射導波路140への電力を分配し、かつ各放射導波路140からの反射を打ち消す、反射抑圧壁121が形成されている。
なお、結合調整部130は、窓形成用側壁突出部132により結合窓131の広さを変えて、放射導波路140の断面積を調整するようになっている。
【0021】
この実施例においては、スロット板200は、アンテナベース部100の給電導波路120と対応する部分にはスロット210は形成されておらず、このスロット210は、複数本の放射導波路140それぞれと対応する部位に形成されており、かつ給電導波路120が、その四辺形状の長辺側をアンテナベース部100の厚さ方向、短辺側をアンテナベース部100の一つの面と平行な方向となるように形成されているので、給電導波路120に対し、その両側に広がる複数本づつのスロット210の、この給電導波路120と対応する部分のこの給電導波路120を挟むスロット210の間隔(d)を狭くすることができる。従って、この平面スロットアンテナにおける放射指向性のサイドローブレベルを小さくすることができる。
また、アンテナベース部は、その給電導波路、複数本の放射導波路、及び反射抑圧壁を含めて、一体形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施例の全体構造を示す分解平面図である。
【図2】図1に示された本発明の全体構造における、給電導波路と放射導波路との接続部分の拡大斜視図及び各方向から見た側面図である。
【図3】従来の平面スロットアンテナの一例を示す分解斜視図である。
【図4】従来の中央給電導波路型平面スロットアンテナの一例を示す分解平面図である。
【符号の説明】
【0023】
100,100x,100y アンテナベース部
110,110y 給電源導波孔
120,120x,120y 給電導波路
121 反射抑圧壁
122,123 給電導波路底面
124,125 誘電性ポスト
130 結合調整部
131 結合窓
132 窓形成用側壁突出部
140,140x,140y 放射導波路
141,141x,141y 放射導波路側壁
142,142y 放射導波路底面
143,143y 放射導波路壁板
200,200x,200y スロット板
210,210x,210y スロット
300 止めねじ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面に、この面の中心点を通る中心線上に配置、形成された給電導波路と、この給電導波路に対し、それぞれその一端を前記給電導波路と結合してこの給電導波路の両側に広がって延びるように形成された複数本づつの放射導波路と、を備えたアンテナベース部と、このアンテナベース部の複数本の放射導波路それぞれと対応する部位に複数のスロットが配列、形成されて、前記アンテナベース部の一方の面に装着され、前記給電導波路及び複数本の放射導波路それぞれを、その断面が閉じた四辺形状の導波管型となるようにするスロット板と、を含んで成り、前記アンテナベース部の給電導波路の断面は、スロット板装着状態での四辺形状の長辺側が前記アンテナベース部の厚さ方向であり、かつ短辺側がこのアンテナベース部の一方の面と平行な方向である、ことを特徴とする中央給電導波路型平面スロットアンテナ。
【請求項2】
前記アンテナベース部の、複数本の放射導波路それぞれは、その給電導波路と結合する部分に、この結合部分の各放射導波路の断面積を調整して前記給電導波路との間で授受される電力の比率を調整する、結合窓が設けられた構造である請求項1記載の中央給電導波路型平面スロットアンテナ。
【請求項3】
前記アンテナベース部の給電導波路の、複数本の放射導波路それぞれが結合される部分の底面には、各放射導波路からの反射を打ち消す、反射抑圧壁が形成された構造である請求項1または請求項2記載の中央給電導波路型平面スロットアンテナ。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−33697(P2006−33697A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−212909(P2004−212909)
【出願日】平成16年7月21日(2004.7.21)
【出願人】(000004330)日本無線株式会社 (1,186)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】