説明

中枢神経系活性を有する置換ピロリジン化合物

生体アミン輸送体に結合することが示され、キラルジロジウム触媒に基づく手順で合成することができる置換ピロリジンを提供する。置換ピロリジンからなる組成物は、統合失調症等の中枢神経系疾患の治療に用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中枢神経系活性を有する置換ピロリジン化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
中枢神経系疾患は、経済的にも社会的にも悲惨である。例えば、統合失調症は、高い死亡率及び罹患率という特徴を備え、人口の0.6〜1.3%の生涯有病率を有する世界的な疾患の主要原因の一つである。この疾患を有する人の内、競争力のある被雇用者となっているのは15%以下であり、自立して生活しているのは約20%である。
【0003】
統合失調症は、一般に、陽性症状(例えば、妄想、幻覚及びまとまりのない行動)、陰性症状(例えば、アネルギー)、感情症状(例えば、情動不安、絶望、不安神経症、反抗、攻撃性)、又は認知障害によって特徴付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5763455号明細書
【特許文献2】米国特許第5723719号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような疾患の典型的な処置方法としては、モノアミン受容体系に作用する薬物が含まれる。例えば、第1世代抗精神病薬の主要な効果は、ドーパミン(D受容体)遮断である。これらの薬物は、統合失調症の陽性症状に対する処置に効果を発揮する一方、陰性症状及び認知障害に対してはほんのわずかな効果しか発揮しない。
【0006】
従って、統合失調症等の中枢神経系疾患を治療するためのいくつかの処置薬が利用可能であるのにもかかわらず、中枢神経系疾患の治療方法及び治療薬を改良するための満たされていない要求がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の化合物は、中枢神経系疾患の症状を軽減するために用いることができる。本発明の化合物は、下記の一般式(1)により表される。
【0008】


【0009】
ピロリジン環の置換基であるR及びRは、水素、ヒドロキシル基若しくはアルコキシ基(OR)、カルボン酸若しくはカルボキシレート基(C(O)OR)、又はアミド基(C(O)N(R)R(前記アミド基は、置換されていないか(両方のRx基が共に水素である。C(O)NH)、又は置換されている(1つ又は両方のR基が水素ではない。C(O)NHR又はC(O)N(R)R))とすることができる。Rは、水素、炭素数が8個以下のアルキル基(例えば、−CH)若しくはアルケニル基(炭素−炭素二重結合を有する基)、アリール基(置換されているか又は置換されていない環状の芳香族炭化水素)、又はアミノ基(置換されているか又は置換されていないアミンを含む)とすることができる。R置換基及びR置換基に関して、RがOR、C(O)OR又はC(O)N(R)Rであり、Rが水素である場合、前記化合物は、2,4−置換ピロリジンとなる。RがOR、C(O)OR又はC(O)N(R)Rであり、Rが水素である場合、前記化合物は2,3−置換ピロリジンとなる。Rは、C(O)OR又はCHORとすることができる。このときRは水素、炭素数が8個以下のアルキル基若しくはアルケニル基、アリール基又はアミノ基である。
【0010】
は、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルコキシ基、ハロゲノ基(フルオロ基、クロロ基、ブロモ基又はヨード基)、ニトロ基(−NO)、シアノ基(−CN)、ケト基(−C(O)R,式中Rは、炭素数が8個以下のアルキル鎖)、アミノ基又はカルボキシレート基とすることができる。Rは、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルコキシ基、ハロゲノ基、ニトロ基、シアノ基、ケト基、アミノ基、カルボキシレート基とすることができる。Rは、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルコキシ基、ハロゲノ基、ニトロ基、シアノ基、ケト基、アミノ基、カルボキシレート基とすることができる。Rは、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルコキシ基、ハロゲノ基、ニトロ基、シアノ基、ケト基、アミノ基、カルボキシレート基とすることができる。
【0011】
本発明の一実施形態において、一般式(1)中のZ基は、2−ナフチル基であり、下記の一般式(2)により表される化合物又はその鏡像異性体(3)である。

【0012】
本発明の一実施形態において、一般式(1)により表される化合物のZ基は、3,4−2置換フェニル基であり、下記の一般式(4)により表される化合物又はその鏡像異性体(5)である。



【0013】
本発明の他の実施形態において、一般式(1)により表される化合物のZ基は、2置換フェニル基(例えば、2,3−2置換又は2,4−2置換)である。
【0014】
本発明は、鏡像異性体及びジアステレオマーを含む全ての立体異性体を含んでおり、一般式(1)の様々な置換や幾何学的配置を形成することができる。本発明の一実施形態において、一般式(1)により表される化合物は、ジアステレオマー構造(6)又はその鏡像異性体(構造(7))であり、実施例1に記載される一般的な合成方法により生成され得る。

【0015】
本発明の他の実施形態において、一般式(1)により表される化合物は、ジアステレオマー構造(8)又はその鏡像異性体(構造(9))であり、実施例1に記載される一般的な合成方法により生成され得る。

【0016】
本発明の化合物は、例えば、これに限るものではないが、下記構造又はその鏡像異性体構造を有する。
【0017】




【0018】



【0019】



【0020】



【0021】

【0022】
図示のように、化合物DC−16及びDC−17は、受容体結合データ及びckrマウスに対する試験結果に基づき、有利な生物学的活性を示すことが観察された。
【0023】
組成物は、同様に、これらの化合物の鏡像異性体又はラセミ体混合物からなることができる。上記化合物は、立体中心の1つ又は2つが反転して、他の立体化学構造をとることができる。これは、側鎖基における立体中心が反転していることによるトレオ−ジアステレオマー構造を含む。これはまた、環中の立体中心(R又はR)が反転している連続ジアステレオマー(diastereomeric series)を含む。前記組成物は、これらの立体異性体及び鏡像異性体のジアステレオマー混合物からなるようにすることができる。
【0024】
これらの化合物は、経口投与、非経口投与、筋内投与、静脈内投与、粘膜投与又は他を経由して投与してもよい。前記化合物には、剤形、患者固有の必要性、製造方法等に応じて、医薬組成物の一部として他の成分を添加することができる。実施例は、これに限るものではないが、結合剤、潤滑剤、賦形剤、香味料、防腐剤、着色料、希釈剤等を含む。本発明の組成物に添加する特定の物質及びその適合性の選択は、当業者であれば容易に確認することができる(例えば、特許文献1参照)。一実施例においては、経口投与される。このような化合物の投与計画は、当業者においてよく行われている。例として、投与量は、体重1kg当たり4μg〜50mgとすることができる。もう一つの例として、投与量は、体重1kg当たり20μg〜15mgとすることができる。
【0025】
chakragati(ckr)マウスモデルは、図4に示すように、本発明の組成物のインビボにおける精神神経疾患の症状を軽減するという薬効を示すために用いた(例えば、特許文献2参照)。
【0026】
ckrマウスモデルは、遺伝子導入マウスであり、統合失調症の自発運動量及び社会的行動を示す。ckrマウスは、遺伝子挿入変異の結果、偶然作成されたものである。同型の条件における内在性遺伝子及び遺伝子導入マウスを生じさせた遺伝子再配列に関連する明確な機能喪失は、異常な旋回運動表現型を示す。これらのマウスの自発運動量の増加は、NMDA(N−メチル−D−アスパラギン酸)受容体アンタゴニストにより処理された野生型マウスにおいて、同様に観察され、統合失調症の陽性症状に類似した行動をとる。ckrマウスはまた、統合失調症の陰性症状の集合の一部である社会的引きこもりと同様の社会的交流現象を示すように見える。ckrマウスはまた、側脳室拡張の症状を呈しており、これは統合失調症における神経病理学的観察に酷似している。非定型抗精神病薬であるクロザピン及びオランザピンは、マウスの特徴的な旋回運動を低減する。これらのまとめられたデータによれば、crkマウスは統合失調症の病理学的なある一面を示すモデルとなるであろうことを示唆する。
【0027】
前記モデルはさらに、検査によりcrkマウスにおけるリスペリドン、ハロペリドール及びピモジドの有効性を確認することができる。行動の結果(behavioral output)は、前記薬剤の投与後における多動率及び旋回運動を測定することにより分析した。その結果、ヒトへの臨床用途に関連する濃度におけるリスペリドン、クロザピン、ハロペリドール及びピモジドに対するckrマウスの多動率及び旋回運動の用量依存的減衰が示された。上述した内容に基づくと、crkマウスモデルは、ヒトを含むほ乳類における精神神経疾患の症状を低減するために用いられる化合物を評価するのに有効であると考えられる。
【0028】
情報処理及び認知過程における機能不全は、統合失調症における欠損の重要な一面である。刺激に関連する感覚運動開閉(gating)及び処理の欠損は、統合失調の症候学的な多くの面における中心である。そのため、統合失調症の動物モデルが、感覚情報処理におけるこれらの欠損モデルとなることは重要である。プレパルス抑制(PPI)は、感覚運動開閉現象であり、その結果、反応を引き起こさない程度の低強度の刺激であるプレパルス暴露が先行して行われた強刺激に対する反応を低減する。PPIは、一般に微弱な白色雑音プレパルスを前暴露することによる大きな白色雑音パルスに対する驚愕反応の低減として測定される。PPIは、統合失調症の患者において欠損している。このPPIの欠損は、感覚運動開閉の混乱を反映していると一般に考えられている。動物モデルにおいて、PPI試験は、統合失調症における感覚運動開閉欠損に対して、優れた側面(good face)を有し、予測性及び構成有効性を備えると考えられており、PPI欠損は、低グルタミン酸モデル及び抗ドーパミンモデルの両方を含む統合失調症の動物モデルの評価における基準として重要である。
【0029】
実施例4に示すcrkマウスモデルデータを得るために、本発明の化合物を含む様々な関連化合物が、驚愕反射の感覚運動開閉の標準測定を調査するために用いられた。驚愕反射の感覚運動開閉は、PPI測定を介して測定された、直前に弱いプレパルスによって先行された驚愕刺激に対する驚愕反応幅の低減として評価された。この測定は、PPIの相対的損失が、ヒトにおける統合失調症等の遺伝の神経発生障害と同様に、セロトニン(5−HT)アゴニストを含むある種の薬物により処理されたラットにおいて確立されているので、有益である。
【0030】
インビボにおけるモノアミン輸送体への結合親和力(図3及び図4)、及びインビボにおけるckrマウス研究(図1及び図2)のデータは、高度に置換されたピロリジンが、特に鬱病及び統合失調症の治療に用いられる中枢神経系薬としての生物学的活性を有することを示す。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】(a)ckrマウススクリーニング試験における運動データを示すグラフ、(b)ckrマウススクリーニング試験における速度データを示すグラフ、(c)ckrマウススクリーニング試験にける時間データを示すグラフ。
【図2】(a)ckrマウススクリーニング試験における驚愕反応幅データを示すグラフ、(b)ckrマウススクリーニング試験におけるPPI(プレパルス抑制)を示すグラフ、(c)ckrマウススクリーニング試験におけるPPIデータを示すグラフ、(d)ckrマウススクリーニング試験におけるPPIデータを示すグラフ。
【図3(a)】受容体阻害データを示す表。
【図3(b)】受容体阻害データを示す表。
【図4】受容体阻害データを示す表。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下の実施例は、説明を目的とするものであり、以下の内容に限定することを意図するものではない。
【実施例1】
【0033】
[置換ピロリジン化合物の合成]
この実施例は、本発明の化合物の合成について説明する。一実施例において、置換ピロリジン((R)−メチル2−((2S,4R)−4−ヒドロキシピロリジン−2−イル)−2−(ナフタレン−2−イル)酢酸塩酸塩)(HDMP−80)を、C−H活性化工程を用いて合成した。この反応は、選択的に高いジアステレオ−及び鏡像選択性を有するエリトロ産物を形成する。前記反応は、キラル触媒(Rh(S−DOSP))によって触媒され、ピロリジン環の位置を機能的(C2又はC5)に制御する。

【0034】
一般に、本発明の置換ピロリジンの合成は、上に示される反応式によって達成される。例えば、様々なアリールジアゾ酢酸メチルは、3位が置換されたN−Boc−保護ピロリジン(ヒドロキシル基で置換されたピロリジンの場合)と反応することができ、2,4位が置換されたピロリジン誘導体及び2,3位が置換されたピロリジン誘導体が生成される。得られた生産物は、一般に鏡像異性体的に純粋な置換ピロリジン又は実質的に純粋な置換ピロリジンを出発物質とした場合、ジアステレオ選択性が95%以上となる。ヒドロキシル基で置換されたピロリジンは、シリルエステル誘導体として保護され、トリフルオロ酢酸と反応することによりピロリジン環上に遊離ヒドロキシル置換基を生成する。メトキシ基で置換されたピロリジンもまた適切な基質である。これらの変換において得られる機能性を、従来の化学を用いて達成することは非常に困難である。従って、本発明の工程は、高度に置換されたピロリジンの実質的に純粋な立体異性体の生物学的評価のため、すぐに利用することができる
【実施例2】
【0035】
[(R)−メチル2−((2S,4R)−メトキシピロリジン−2−イル)−2−(ナフタレン−2−イル)酢酸塩酸塩(DC−16)及び(S)−メチル2−((2S,3R)−3−メトキシピロリジン−2−イル)−2−(ナフタレン−2−イル)酢酸塩酸塩(HDMP85)の合成]
2,2−ジメチルブタン(50mL)中における(R)−3−(メトキシ)−N−(tert−ブトキシカルボニル)ピロリジン(0.63g)及びジロジウム(II)テトラキス[(S)−N−[p−(ドデシルフェニル)スルホニル]プロリン酸{Rh(S−DOSP)}(113mg)の攪拌溶液を還流下で攪拌した。トリフルオロトルエンと2,2−ジエチルブタンとを1:4の割合で混合した混合液中に、ジアゾ−(2−ナフチル酢酸メチルエステル)(1.41g)を、3時間以上の時間をかけてシリンジポンプを用いて添加した。得られた混合液をさらに2時間還流下で攪拌し、その後室温で一晩攪拌した。その後、前記混合物を濃縮し、ジクロロメタン(100mL)で希釈し、次いでトリフルオロ酢酸(1.97mL、26.6mmol)により飽和(charge)させた。16時間後、前記溶液を濃縮し、残渣をエタノール(100mL)で溶解し、10%HCl(3×100mL)で抽出した。水層を固体のNaHCO(固)により塩基性化し、そして1M NaOHでpHを8〜9に調整した。その後、水相をエチル酢酸(3×50mL)により逆抽出し、有機相を塩水(25mL)で洗浄し、NaSOを用いて乾燥した後、ろ過した。抽出物は、還元した後、クロマトグラフィにより精製し、(R)−メチル2−((2S,4R)−4−メトキシピロリジン−2−イル)−2−(ナフタレン−2−イル)酢酸塩酸塩(DC−16)と(S)−メチル2−((2R,3R)−3−メトキシピロリジン−2−イル)−2−(ナフタレン−2−イル)酢酸塩酸塩とが1:2.6の割合で混合された混合物を産出した(391mg(549mg、収率59%))。これら2つの位置異性体をシリカゲルクロマトグラフィにより分離した。
【0036】
(R)−メチル2−((2S,4R)−4−メトキシピロリジン−2−イル)−2−(ナフタレン−2−イル)酢酸塩酸塩(DC−16):[α]23= +64.2 (c = 1.2, CHCl3); 1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 7.82 - 7.79 (m, 4H), 7.52 - 7.43 (d, J = 7 Hz, 3H), 4.04 - 3.98 (m, 2H), 3.92 (s, 1H), 3.30 (s, 3H), 3.12 - 3.07 (m, 1H), 2.87 - 2.84 (m, 1H), 2.20 -2.15 (m, 1H), 1.69 - 1.62 (m, 2H). 13C NMR (75 MHz, CDCl3) δ 172.9 (C), 134.8 (C), 133.3 (C), 132.7 (C), 128.3 (CH), 127.8 (CH), 127.5 (CH), 126.1 (CH), 125.9 (CH), 81.2 (CH), 59.5 (CH), 57.8 (CH3), 56.3 (CH2), 51.9 (CH), 51.8 (CH2), 36.5 (CH3). IR (neat): 1732cm-1; HRMS (ESI) m/z Calc’d for [C18H21NO3]+(M + 23): 299.1521. Found 322.1412.
(S)−メチル2−((2R,3R)−3−メトキシピロリジン−2−イル)−2−(ナフタレン−2−イル)酢酸塩:[α]23= -174.2 (c = 1.0, CHCl3); 1H NMR(500 MHz, CDCl3) δ7.83 - 7.80 (m, 4H), 7.57 - 7.55 (d, 1H), 7.48 - 7.43 (m, 2H), 3.84 - 3.83 (d, 1H), 3.72 - 3.64 (m, 4H), 3.34 (s, 3H), 3.03 - 2.88 (m, 2H), 1.99 - 1.92 (m, 1H), 1.87 - 1.82 (m, 1H), 1.65 (bs, 1H). 13C NMR (75 MHz, CDCl3) δ172.9 (C), 134.1 (C), 133.3 (C), 132.8 (C), 128.3 (CH), 127.9 (CH), 127.6 (CH), 126.4 (CH), 125.9 (CH), 84.4 (CH), 65.7 (CH), 56.8 (CH3), 55.4 (CH2), 51.9 (CH), 44.2 (CH2), 30.9 (CH3). IR (neat): 1732 cm-1; HRMS (ESI) m/z Calc’d for [C18H21NO3]+(M + 23): 299.1521. Found 322.1412.
中性塩基は、乾燥エーテル中に塩基を溶解することにより、塩酸塩に変換され、その後、エーテルを含むHClを添加し、ろ過により塩を分離した。本発明の化合物の一連の鏡像異性体を、上述した触媒及び基質の鏡像異性体を出発物質として製造した。
【0037】
[(R)メチル2−(3,4−ジクロロフェニル)−2−((2S,4R)−4−ヒドロキシピロリジン−2−イル)酢酸塩酸塩(DC−17)の合成]
2,2−ジメチルブタン中における(R)−3−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)−N−(tert−ブトキシカルボニル)ピロリジン(1.00g、3.32mmol)及びジロジウム(II)テトラキス[(S)−N−[p−(ドデシルフェニル)スルホニル]プロリン酸]{Rh(S−DOSP)}(125mg、0.07mmol)の攪拌溶液を、還流下で攪拌した。トリフロロトルエンと2,2−ジエチルブタンとを1:4の割合で混合した混合液中に、ジアゾ−(3,4−ジクロロフェニル)酢酸メチルエステル(1.63g、6.64mmol)を、3時間以上の時間をかけてシリンジポンプを用いて添加した。得られた混合物をさらに2時間の間還流下で攪拌し、その後室温で一晩攪拌した。その後、前記混合液を濃縮し、ジクロロメタン(100mL)で希釈し,次いでトリフルオロ酢酸(1.97mL、26.6mmol)で飽和させた。16時間後、前記溶液を濃縮し、残渣をエタノール(100mL)に溶解し、10%HCl(3×100mL)で抽出した。水層を固体のNaHCO(固)により塩基性化し、そして1M NaOHでpHを8〜9に調整した。その後、水相をエチル酢酸(3×50mL)によって逆抽出し、有機相を塩水(25mL)で洗浄し、NaSOを用いて乾燥し、次いでろ過した。得られた抽出物を還元した後、クロマトグラフィにより精製し、クリアオイル(clear oil)として本実施例の化合物を産出した(391mg(収率35%))。1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 7.50 (s, 1H), 7.41 - 7.39 (d, J =8 Hz, 1H), 7.24 - 7.22 (m, 1H), 4.41 (m, 1H), 3.99 (m, 1H), 3.67 (s, 1H), 3.42 (d, J = 9 Hz, 1H), 3.04 (dd, J = 4.5, 7.5 Hz, 1H), 2.83 (m, 1H), 2.00 (m, 4H), 1.66 (m, 1H). 13C NMR (75 MHz, CDCl3) δ 172.3 (C), 137.4 (C), 132.7 (C), 131.8 (C), 130.6 (CH), 130.5 (CH), 128.1 (CH), 72.3 (CH), 59.3 (CH2), 56.6 (CH), 54.8 (CH), 52.2 (CH3), 40.2 (CH2); IR (neat): 1753 cm-1; HRMS (ESI) m/z Calc’d for [C13H15Cl2NO3]+(M+): 303.0429. Found: 303.0437.
中性塩基は、乾燥エーテル中に塩基を溶解することにより、塩酸塩に変換され、その後、エーテルを含むHClを添加し、ろ過により塩を分離した。鏡像異性体を、上述した触媒及び基質の鏡像異性体を出発物質として製造した。
【0038】
[(R)−メチル2−((2S,4R)−4−ヒドロキシピロリジン−2−イル)−2−(ナフタレン−2−イル)酢酸塩(HDMP80)の合成]
2,2−ジメチルブタン(50mL)中における(R)−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ−N−(tert−ブトキシカルボニル)ピロリジン(0.837g)及びジロジウム(II)テトラキス[(S)−N−[p−(ドデシルフェニル)スルホニル]プロリン酸{Rh(S−DOSP)}(104mg)の攪拌溶液を還流下で攪拌した。トリフルオロトルエンと2,2−ジエチルブタンとを1:10の割合で混合した混合液中に、ジアゾ−(2−ナフチル)酢酸メチルエステル(1.63g,6.64mmol)を、3時間以上の時間をかけてシリンジポンプを用いて添加した。得られた混合液をさらに2時間の間、還流下で攪拌し、その後室温で一晩攪拌した。その後、前記混合液を濃縮し、ジクロロメタン(100mL)により希釈し、次いでトリフルオロ酢酸(1.97mL)により飽和させた。16時間後、前記溶液を濃縮し、残渣をエタノ−ル(100mL)で溶解し、10%HCl(3×100mL)により抽出した。水相を固体のNaHCO(固)塩基性化し、そして1M NaOHを用いてpHを8〜9に調整した。その後、水相をエチル酢酸(3×50mL)によって逆抽出し、有機相を塩水(25mL)で洗浄し、NaSOを用いて乾燥し、次いでろ過した。得られた抽出物を還元した後、クロマトグラフィにより精製し、クリアオイルとして本実施例の化合物を産出した(672mg、収率64%)。[α]23= +74.20 (c = 1.0, CHCl3); 1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 7.83 - 7.80 (m, 4H), 7.53 -7.51 (m, 1H), 7.47 - 7.45 (m, 2H), 4.44 (m, 1H), 4.15 - 4.10 (m, 1H), 3.67 (m, 4H), 3.14 - 3.10 (dd, J = 6, 5 Hz, 1H), 2.82 - 2.79 (m, 1H), 2.09 - 2.04 (m, 1H), 1.81 - 1.75 (m, 3H). 13C NMR (75 MHz, CDCl3) δ 173.0 (C), 134.7 (C), 133.4 (C), 132.8 (C), 128.5 (CH), 127.9 (CH), 127.7 (CH), 127.6 (CH), 126.2 (CH), 126.2 (CH), 125.9 (CH), 72.4 (CH), 59.3 (CH2), 57.6 (CH), 54.8 (CH3), 51.9 (CH), 40.4 (CH2); IR (neat): 1720 cm-1; HRMS (ESI) m/z Calc’d for [C17H19NO3]+ (M+): 285.13649. Found 286.1370.
中性塩基は、乾燥エーテル中に塩基を溶解することにより、塩酸塩に変換され、その後、エーテルを含むHClを添加し、ろ過により塩を分離した。鏡像異性体を、上述した触媒及び基質の鏡像異性体を出発物質として製造した。
【0039】
[(3R,5S)−5−((R)−2−(ヒドロキシ−1−(ナフタレン−2−イル)エチル)ピロリジン−3−オール塩酸塩(HDMP86)の合成]
THF(4mL)中の((R)−メチル2((2S,4R)−4−ヒドロキシピロリジン−2−イル)−2−(ナフタレン−2−イル)酢酸塩(89mg、0.27mmol)を1ツ口の25mLフラスコに充填し、−78℃で30分間攪拌した。水素化アルミニウムリチウム(0.1mL)(3M TMF中)を滴下して加え、さらに16時間攪拌し、加温した。得られた混合物を、4M NaOH(1mL)及びHO(1mL)に滴下して急冷した。セリットを前記混合物に添加し、ろ過した。上澄みを濃縮し、フラッシュカラムクロマトグラフィ(メタノールとトリエチルアミンと酢酸エチルとの割合が1:1:3; SiO)を用いて精製し、本実施例の化合物を産出した(56mg、収率81%)。[α]23= -87.1 (c = 1.0, CHCl3); 1H NMR(500 MHz, CDCl3) δ 7.93 - 7.65 (m, 4H), 7.41 - 7. 28 (m, 3H), 3.82 (m, 2H), 3.32 (m, 1H), 3.12 (m, 1H), 3.08 (m, 1H), 2.90 (m, 2H), 1.70 (m, 2H), 1.65 (bs, 2H). 13C NMR (75 MHz, CDCl3)δ 137.4 (C), 135.0 (C), 134.5 (C), 129.9 (CH), 128.7 (CH), 128.6 (CH), 127.5 (CH), 127.2 (CH), 127.2 (CH), 70.7 (CH), 64.9 (CH2), 62.6 (CH2), 54.2 (CH), 39.6 (CH2); HRMS (ESI) m/z Calc’d for [C16H19NO2] (M + 1): 257.14158. Found 258.14958.
中性塩基は、乾燥エーテル中に塩基を溶解することにより、塩酸塩に変換され、その後、エーテルを含むHClを添加し、ろ過により塩を分離した。鏡像異性体を、上述した触媒及び基質の鏡像異性体を出発物質として製造した。
【実施例3】
【0040】
[中枢神経系障害に関連する受容体に対する置換ピロリジン化合物の相互作用の測定]
結合試験
生体アミン輸送体への置換ピロリジン化合物の結合は、Sprague−Dawleyラットの凍結脳から切り出した線条体及び前頭皮質(Pel-Freez. Rogers, AR)を用いて測定した。ドーパミン(DA)輸送体部位に結合する化合物の親和性を、ラット線条体由来の膜0.5mg(初期湿重量)と、10pM [125I]RTI−55を用い、該膜中に結合している[125I]3β−(4−ヨードフェニル)トロパン−2β−カルボン酸メチルエステル(RTI−55)の置換によって測定した。非特異的結合は、1μM 2β−プロパノイル−3β−(2−ナフチル)トロパン(WF−23)の存在下において測定した。5−HT輸送体部位への化合物の親和性は、ラット前頭皮質由来の膜50mg(初期湿重量)と、0.4nM [H]パロキセチンを用い、該膜中に結合している[H]パロキセチンの置換により測定した。非特異的結合は、10μM フルオキセチンの存在下において測定した。ノルエピネフリン(NE)輸送体部位への化合物の結合は、0.7nM[H]ニソキセチンを用い、ラット前頭由来の膜中に結合する[H]ニソキセチンの置換により測定した。非特異的結合は、1μM デシプラミンの存在下において測定した。
【0041】
図3及び図4に示すように、有効性は、非線形曲線の当てはめによって分析されるものとして、ラベル化されていない化合物の7〜10濃度を用いた置換曲線から計算した。ドーパミン輸送体への置換ピロリジンの結合は、一般に、多面的であるとされており、[125I]RTI−55結合阻害の有効性は、IC50値として報告されている。[H]パロキセチン及び[H]ニソキセチンの結合分析のため、Ki値は、Cheng−Prusoff式を用いて計算した。全てのデータは、3重にして行い、少なくとも3回の独立した実験の平均値±SEM(標準誤差)である。
【0042】
[生物学的活性]
図4及び図5に示す一連の化合物におけるドーパミン(DA)輸送体、セロトニン(5−HT)輸送体及びノルエピネフリン(NE)輸送体への結合親和力は、上述の方法により決定される。
【0043】
本発明の化合物の生物学的活性を示した。これらの多くは、ドーパミン輸送体及びノルエピネフリン輸送体への望ましい結合親和力を有する。1つ以上のモノアミン輸送体に結合している化合物は、抗うつ薬等として効果的であることが示されており、本発明の置換ピロリジン誘導体は、同様の活性を有することが期待される。好ましい化合物は、HDMP−80であり、これはセロトニン輸送体に対して高い結合親和力を示す。
【実施例4】
【0044】
ckrマウスモデルを用いるスクリーニング候補化合物
本発明の化合物を含む化合物の中枢神経系機能に対する効果を試験するために、chakragati(ckr)マウスをモデルとして用いた。DC系列の化合物は、ckrマウスにおける自発運動量及びPPIを試験した。
【0045】
[薬物溶液の製造]
DC−01からDC−20までの薬物の貯蔵液を、DMSOに溶解し、その後、最終DMSO濃度が0.5%となるように蒸留水で希釈し、10mg/10mlにした。各動物は、体重10g当たりに10mg/kgの濃度の試験薬物を0.1mLの体積だけ投与した。
いくつかの化合物(DC−9,DC−11,DC−12,DC−13及びDC−16は、DMSOだけに溶解するのは困難であることがわかった。これらの化合物は、DMSO中で30分間超音波処理し、1M HClを滴下することによりpHを4〜5に酸性化し、その後、20%シクロデキストリン溶液中に懸濁させた。
【0046】
[自発運動量に基づく候補化合物のスクリーニング]
20匹のckrマウス(雄及び雌、3ヶ月齢)を無作為に割り当て、試験薬物又は0.5%DMSO媒剤を投与した。各薬物は、5匹のマウスで検査を行った。各マウスには、無作為に割り当てられた薬物を順不同で5種類まで投与した。各処置は、3日間の最小限の休薬期間を設定して行った。試験当日、マウスを行動試験室に持ち込んでから少なくとも1時間慣れさせた。その後、マウスに、試験薬物溶液又は媒剤を0.1mL/10g(10mg/kg)、腹腔内投与した。
【0047】
その後、マウスをケージに戻し、20分後に直径190mm、深さ300mmの円形記録室に配置した。4匹のマウスが4つの別々の記録室で同時に試験された。各試験の間、前記記録室に70%エタノールを噴霧し、少なくとも10分間乾燥した。記録室中のマウスは、その頭上に設けられたビデオカメラにより15分間観察された。マウスの行動を、ビデオテープに録画すると同時に、デジタル化及び追跡した(Ethovision Version 2(商品名)、Noldus社製)。全移動距離、行動速度及び行動に費やした時間を計算した。
【0048】
[音響による驚愕のプレパルス抑制に基づく候補化合物のスクリーニング]
行動に対して顕著な効果を示すと選択された化合物のPPIに対する効果を検査した。これらの化合物はDC−01,DC−08,DC−11,DC−12,DC−16,DC−18及びDC−19である。18匹のckrマウス(雄及び雌、3ヶ月齢)を無作為に割り当て、試験薬物又は媒剤を投与した。各薬物又は媒剤は、6〜7匹のマウスにおいて試験された。各マウスには、無作為に割り当てられた薬物を順不同で4種類まで投与した。各処置は、3日間の最小限の休薬期間の間分離して行った。
【0049】
[装置]
驚愕反応度は、驚愕室を用いて測定した(SR−LAB(商品名)、San Diego Instruments製、米国カリフォルニア州)。驚愕室は、内側が換気され、音響減衰室であるプラットホームに置かれている透明なプレクシグラスシリンダーからなる。驚愕室内の拡声器は、継続的な65dBの背景ノイズと同様に、様々な音響刺激を生成する。動物の全身驚愕反応により生じるプレクシグラスシリンダーの振動を、プラットホームに設けられた圧電ユニットによりアナログ信号(0〜5000mVの範囲)に変換した。これらのシグナルは、その後の分析のためにデジタル化した。
【0050】
[実験手順]
各群につき、8匹のマウスを用意した。マウスは、PPIの測定の前に、行動試験室内で1時間慣れさせた。その後、前記マウスをプレクシグラスシリンダー内に配置し、65dBの背景白色雑音にさらした。5分後、前記マウスを白色雑音のパルスに暴露することを含む一連の異なる5種類の試行に暴露した。前記試行は、(1)パルスのみ試行;120dBの刺激を40ミリ秒間与える試行、(2)+3dBプレパルス試行;120dBの刺激を与える前に間隔を置いて、68dB(背景白色雑音の65dB+3dB)のプレパルスを20ミリ秒間先行させて与える試行、(3)+6dBプレパルス試行;120dBの刺激を与える前に間隔を置いて、71dB(背景白色雑音の65dB+6dB)のプレパルスを20ミリ秒間先行させて与える試行、(4)+12dBプレパルス試行;120dBの刺激を与える前に間隔を置いて、77dB(背景白色雑音の65dB+12dB)のプレパルスを20ミリ秒間先行させて与える試行、及び(5)パルスを与えない試行、の5種類である。野生型、ヘテロ接合、及びckrマウス間において、PPIの相違を測定するために、プレパルスからパルスまでの間隔は100ミリ秒とした。プレパルス抑制の特徴は、プレパルスからパルスまでの間隔が非常に短くなると、現象が消失してしまうことである。ckrマウスにおいて、前記手順は、続いて、プレパルスからパルスまでの間隔を、疑似乱数により定めた順序で25ミリ秒、100ミリ秒及び175ミリ秒として繰り返され、プレパルス抑制が示される効果を確認した。一セッションにおいて、合計52回の試行が疑似乱数により定めた順序で行われ、その内、パルスのみ試行が20回、その他の4種の試行がそれぞれ8回であった。これらは、4回のパルスのみ試行によって先行され、このバルスのみ試行の結果は破棄した。各試行の間の平均時間は、15秒(9〜21秒の範囲)であった。驚愕反応は、パルスに続いて65ミリ秒後まで検知された平均運動として記録した。プレパルス試行における驚愕反応幅が、パルスのみ試行における驚愕反応幅の平均の90%を越えた場合は除外した。驚愕反応幅は、パルスのみ試行における平均驚愕反応幅を基準として測定した。プレパルス抑制は、PPI割合、即ち、(A−B)/A×100(式中、Aはパルスのみ試行における平均驚愕反応幅であり、Bはプレパルス試行における平均驚愕反応幅である)として計算した。この測定方法を用いることにより、絶対変動スコアよりむしろ、PPIによる驚愕反応幅の個体差の影響を最小限にすることができる。
【0051】
[ckrマウススクリーニング試験の結果]
統計分析
各パラメータに対するデータを、媒剤処置対照群を用い、一元配置分散分析(one-way ANOVA(Analysis of Variance))及びpost hoc Dunnett’s比較によって、独立して分析した。Tukey’s HSD試験を、群間のpost hoc比較に対して適用した。p<0.05の場合を、統計的に有意であると考えた。
【0052】
[DC系列の薬物投与に対する反応の一般的な観察]
DC−15は、3匹のマウスにおいて10mg/kgで致死となった。DC−15での処置は中止とした。他のDC系列の薬剤はいずれを用いた場合においても、不利な生理的効果を示す観察はなされなかった。ckrマウスに報告された自発運動パターンの変化を除くと、ここでは旋回行動が報告され、観察された行動には、薬物により引き起こされた異常はなかった。
【0053】
自発運動量結果
・総移動距離
総移動距離におけるDC系列の薬剤の全体的効果は、有意であった(F19,75=5.839,p<0.0001)。DC−01,DC−08,DC−12及びDC−19は、総移動距離を有意に増大させた(図1(a)に示す)。DC−11,DC−16及びDC−18は、総移動距離を減少させる傾向をもたらした。
【0054】
・速度
総移動距離におけるDC系列の薬剤の全体的効果は、有意であった(F19,75=5.721,p<0.0001)。DC−01,DC−08、DC−12及びDC−19は、速度を有意に増大させた(図1(b)に示す)。DC−11,DC−16及びDC−18は、速度を減少させる傾向をもたらした。
【0055】
・移動に費やした時間
総移動距離におけるDC系列の薬剤の全体的効果は、有意であった(F19,75=22.99,p<0.0001)。DC−01,DC−08、DC−12及びDC−19は、総移動距離を有意に増大させた(図1(c)に示す)。DC−11及びDC−18は、移動に費やした時間を著しく減少させた。DC−16は、移動に費やした時間を減少させる傾向をもたらした。
【0056】
音響驚愕のプレパルス抑制の結果
・驚愕反応幅
驚愕反応幅における全てのDC系列の薬剤の効果は、有意であった(F7,44=2.573,p<0.05)。しかしながら、媒剤処理対照群に対して有意な差はなかった(図2(a)に示す)。この差は、上述したDC−01による処理における驚愕反応幅に対して、DC−11(p<0.05)及びDC−16(p<0.05)による処理における驚愕反応幅の上昇に起因する。
【0057】
・プレパルス抑制
背景より3dB大きいプレパルスによれば、薬物処理の効果は有意であった(F7,28=2.718,p<0.05)。DC−11は、媒剤処理対照群に対してPPIを有意に増加させた。一方、DC−12,DC−16及びDC−18は、同様の傾向ではあるものの有意な差はなかった(図2(b)に示す)。背景より6dB大きいプレパルスによっても、薬物処理の効果は有意であった(F7,29=4.087,p<0.005)。DC−11は、媒剤処理対照群に対してPPIを有意に増加させたが、一方でDC−18だけは、同様の傾向ではあるものの有意な差はなかった(図2(d)に示す)。背景より12dB大きいプレパルスによっても、再び薬物処理の効果は有意であった(F7,31=8.039,p<0.0005)。DC−11及びDC−12は、両方とも媒剤処理対照群に対してPPIを有意に増加させた(それぞれ、p<0.01及びp<0.05)が、一方でDC−18は、同様の傾向ではあるものの有意な差はなかった(図2(c)に示す)。要約すると、DC−11は、一貫してPPIの回復に有意であったが、一方DC−18だけは、全てのプレパルス強度を通じて同様の傾向が見られた。
【0058】
結果の検討
DC−11及びDC−18は、ckrマウスの旋回運動における自発運動量の減少をもたらし、ckrマウスに見られるPPIの欠損を改善する傾向がある。本データは、これらの化合物は、全身投与後の中枢神経系を活性する抗精神病薬の候補となり得ることを示唆する。DC−01,DC−08,DC−12及びDC−19は、自発運動量を増大させるが、PPIに対してほとんど効果がない。自発運動量の増大は、ドーパミン作動性機能の増大に関連する可能性がある。重要なことに、ckrマウスにおける旋回行動に対する効果は、これらの薬物が全身投与後の中枢神経系において、生物学的に利用可能であることを示唆する。これらの薬物がckrマウスにおけるPPIを修正しないこと又はPPI欠損を悪化させないということは、重度の感覚運動処理の欠損をもたらさないであろうことを示唆する。これらの薬物の性質は、全身投与後の中枢作用性及びドーパミン作動性機能の増大を示唆する。
【0059】
図1及び図2に示すckrスクリーニングデータのANOVA分析は、DC−16が中枢神経系障害の治療剤としての生物学的活性を有していることを示す。
【0060】
本発明の教示から、本発明の思想から逸脱することなく、当業者であれば種々の改変及び変更をすることができると考えられる。このような改変等は、本発明の範囲内である。
【0061】
本発明の目的は、置換ピロリジン化合物からなる組成物、及び中枢神経系疾患のために前記組成物を用いる方法を提供することにある。本発明の化合物は、式(1)により表される構造を有する。一実施例において、一般式(1)中、Z基が2−ナフタレン基であり、一般式(2)により表される構造を有する化合物である。他の実施例において、一般式(1)中、Z基は3,4−2置換フェニル基等の2置換フェニル基である。
【0062】
前記置換ピロリジンの立体化学的異性体の例としては、一般式(6)〜(9)により表される構造を有する。一実施例において、前記化合物は、DC−16の構造及びその鏡像異性体構造を有する。他の実施例において、前記化合物は、DC−17の構造及びその鏡像異性体構造を有する。種々の実施例において、前記化合物は、一般式(12)〜(14)の構造及びそれらの鏡像異性体構造を有する。本発明の化合物は、中枢神経系疾患の症状/原因を治療又は軽減するために用いることができる。
【0063】
本発明の目的は、モノアミン輸送体阻害剤として機能すると共に、選択的セロトニン輸送体(SERT)阻害剤として作用する置換ピロリジン化合物の組成物を提供することにある。化合物は、中枢神経系疾患の症状を軽減するために用いることができる。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の構造(式(1))からなる化合物、その立体異性体、又は前記化合物及びその鏡像異性体のラセミ体混合物からなることを特徴とする組成物。


(式中、Zは、

であり、
及びRは、H,OR,C(O)OR若しくはC(O)N(R)Rであり、Rは、水素、炭素数が8個以下の鎖からなるアルキル基若しくはアルケニル基,アリール基、又はアミノ基であり、さらに、RがOR,C(O)ORまたはC(O)N(R)Rである場合にはRが水素であり、RがOR,C(O)ORまたはC(O)N(R)Rである場合にはR1が水素である。
は、CO又はCHORであり、Rは、水素、炭素数が8個以下の鎖からなるアルキル基若しくはアルケニル基,アリール基、又はアミノ基である。
は、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルコキシ基、ハロゲノ基、ニトロ基、シアノ基、ケト基、アミノ基、カルボキシレート基である。
は、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルコキシ基、ハロゲノ基、ニトロ基、シアノ基、ケト基、アミノ基、カルボキシレート基であり、
は、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルコキシ基、ハロゲノ基、ニトロ基、シアノ基、ケト基、アミノ基、カルボキシレート基であり、
は、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルコキシ基、ハロゲノ基、ニトロ基、シアノ基、ケト基、アミノ基、カルボキシレート基である。)
【請求項2】
請求項1記載の組成物において、
前記Zは2−ナフチル基であることを特徴とする組成物。
【請求項3】
請求項1記載の組成物において、
前記立体異性体は、下記化合物(式(2))又はその鏡像異性体であることを特徴とする組成物。

【請求項4】
請求項1記載の組成物において、
前記立体異性体は、下記化合物(式(3))又はその鏡像異性体であることを特徴とする組成物。

【請求項5】
請求項1記載の組成物において、
前記化合物は、下記構造(式(4))又はその鏡像異性体構造であることを特徴とする組成物。

【請求項6】
請求項1記載の組成物において、
前記化合物は、下記構造(式(5))又はその鏡像異性体構造であることを特徴とする組成物。

【請求項7】
請求項1記載の組成物において、
前記化合物は、下記構造(式(6))又はその鏡像異性体構造であることを特徴とする組成物。

【請求項8】
請求項1記載の組成物において、
前記化合物は、下記構造(式(7))又はその鏡像異性体構造であることを特徴とする組成物。

【請求項9】
請求項1記載の組成物において、
前記化合物は、下記構造(式(8))又はその鏡像異性体構造であることを特徴とする組成物。

【請求項10】
請求項1記載の組成物において、
前記化合物は、薬学上利用可能な塩であることを特徴とする組成物。
【請求項11】
請求項1記載の組成物において、
前記化合物は、塩酸塩であることを特徴とする組成物。
【請求項12】
請求項1記載の組成物を精神神経疾患の症状を軽減するために効果的な量だけ患者に投与すると共に、
前記組成物の投与は、精神神経疾患の1つ以上の症状を軽減することを特徴とする患者の精神神経疾患の1つ以上の症状を軽減する方法。
【請求項13】
請求項12記載の方法において、
前記化合物は、下記構造(式(4))又はその鏡像異性体構造であることを特徴とする方法。

【請求項14】
請求項12記載の方法において、
前記化合物は、下記構造(式(5))又はその鏡像異性体構造であることを特徴とする方法。

【請求項15】
請求項12記載の方法において、
前記化合物は、下記構造(式(6))又はその鏡像異性体構造であることを特徴とする方法。

【請求項16】
請求項12記載の方法において、
前記化合物は、下記構造(式(9))又はその鏡像異性体構造であることを特徴とする方法。

【請求項17】
請求項12記載の方法において、
前記化合物は、薬学上利用可能な塩であることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項12記載の方法において、
前記化合物は、塩酸塩であることを特徴とする方法。



【図1】
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【図2】
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【図3(a)】
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【図3(b)】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−530900(P2010−530900A)
【公表日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−513483(P2010−513483)
【出願日】平成20年6月23日(2008.6.23)
【国際出願番号】PCT/US2008/067884
【国際公開番号】WO2009/002923
【国際公開日】平成20年12月31日(2008.12.31)
【出願人】(508271551)ザ・リサーチ・ファウンデーション・オブ・ステート・ユニバーシティ・オブ・ニューヨーク (5)
【氏名又は名称原語表記】THE RESEARCH FOUNDATION OF STATE UNIVERSITY OF NEW YORK
【Fターム(参考)】