説明

中空成形体の製造方法

【課題】
解決しようとする課題は、連通した連通インサートを有する中空成形体の製造において、連通インサート内部のインサート空洞でパリソンがインサート内面に密着するまで伸びきらずに破裂して、破裂端を該インサート内面に密着させることができないという点である。
【解決手段】
吹込み過程の初期には金型外部と該連通インサートとの連通を遮断し、該吹込み過程の中期には金型外部と該連通インサートとの連通を開通させ、該吹込み過程の終期に金型外部と該連通インサートとの連通を再び遮断することにより前記課題を解決した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用のレゾネータ等の、連通した連通インサートを有する中空成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
連通した連通インサートを有する中空成形体の製造方法に関する従来技術としては特許文献1の段落番号0004に「・・・一つの開口部を持つ中空体を別個に先に成形しておき、前記中空体をブロー成形金型に前記開口部がブロー金型内に案内されるパリソンと接する姿勢にインサートし、前記パリソンをブロー成形金型内でブローして、先に成形した中空体とブロー成形部とを密着させ、前記開口部においては、パリソン内の空気圧で破裂させて、先の中空体とブロー成形による中空体とを前記開口部で連通させる・・・」として例示されているようなものがある。
【特許文献1】特開平7−217511号公報
【0003】
しかしこの従来技術の欠点として同じく特許文献1の段落番号0005に「・・・開口部のブロー壁の破裂が一定形状にならなかったり、全体として一定形状の成形品を得ることは期待し難しく・・・」と指摘されているように、該開口部の断面形状や断面積の変動がブロー成形品の性能に重要な影響を及ぼすような場合にはこの従来技術を適用できないという欠点があった。
【0004】
以下、図によってより詳しく説明する。図1は従来の中空成形体1の成形概念斜視図である。2は中空体、3は連通インサート、10はパリソン、7は分割金型(図示せず)のパーティングラインを示す。尚、解り易くするため該中空成形体1は成形後の状態で表示されている。
【0005】
該分割金型内の所定の位置に該連通インサート3をセットした後、該分割金型を矢印A、Aの方向から型締めし、該パリソン10内に高圧空気を吹込んで賦形させた該中空成形体1の、図1におけるB−B断面を、図1では図示しなかった該分割金型も符号5として図示し、図2に示す。
【0006】
図2に示すように該高圧空気の吹込み直後の該パリソン10は該分割金型5のキャビティー面12には密着しているが、該連通インサート3内部のインサート空洞31においては該パリソン10はインサート内面32に密着するまで伸びきらずに破裂して破裂端11が生じており、該破裂端11は該インサート内面32に密着せずに宙に浮いていて成形不良の状態となっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
解決しようとする課題は、連通した連通インサートを有する中空成形体の製造において、パリソンが連通インサートのインサート内面に密着するまで伸びきらずに破裂して、破裂端を該インサート内面に密着させることができないという点である。本発明は上記の点を解決するためになされた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため本発明は、一端が金型のキャビティー側に開口し、他端が金型外部に連通した連通インサートを有する中空成形体の吹込み成形において、吹込み過程の初期には金型外部と該連通インサートとの連通を遮断し、該吹込み過程の中期には金型外部と該連通インサートとの連通を開通させ、該吹込み過程の終期に金型外部と該連通インサートとの連通を再び遮断することを最も主要な特徴とする。
また、該連通インサートが細径部と太径部を有していることを第2の主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、従来例のような宙に浮いている破裂端をウオーターハンマー現象による圧力波によってインサート内面に密着させることができるという利点がある。また、該連通インサートが細径部と太径部、及び該細径部と該太径部を連絡するテーパー部を有しているため、該太径部の内面に密着した該破裂端の内径が該細径部の内径より小さくなることはなく、該連通インサート内部の断面の変化がなめらかになるので、成形後の該中空成形体の該連通インサート内の空気の流れに対する抵抗は極小となるという効果もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
宙に浮いている破裂端をインサート内面に密着させるという目的を、吹込み過程の初期には金型外部と該連通インサートとの連通を遮断し、該吹込み過程の中期には金型外部と該連通インサートとの連通を開通させ、該吹込み過程の終期に金型外部と該連通インサートとの連通を再び遮断することによって、ウオーターハンマー現象により発生した圧力波を用いて、ブロー成形の持つ経済性を損なわずに実現した。
【実施例1】
【0011】
本発明の構成を発明の実施の形態に基づいて説明すると次の通りである。尚、従来例と同一の符号は同一の部材を表す。
【0012】
図3は、本発明の1実施例を示す部分断面図であり、図1のB−B断面に相当するものであって、型締め前の状態を表す。連通インサート3は細径部33、太径部35、及び該細径部33と該太径部35を連絡するテーパー部34を有しており、分割金型5にセットされている。
【0013】
該分割金型5には型内連通孔15が設けられ、一端は該連通インサート3のインサート空洞31を経て該分割金型5のキャビティーに連通しており、他端は開閉弁(図示せず)を経て金型外部に連通している。
【0014】
次に本発明の作用を説明する。先ず、該分割金型5内にポリプロピレン等の半溶融状態の熱可塑性樹脂パリソン10を垂下させ該分割金型5を型締めする。
【0015】
尚、該パリソン10に適用される該熱可塑性樹脂としてはポリプロピレンに限らず、ポリエチレンや他のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、シンジオタクチックポリスチレン、ポリスチレン、ゴム改質ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、変性ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート等、ブロー成形が可能な樹脂であれば何でも良い。また、該熱可塑性樹脂にガラス繊維、炭素繊維、ボロン繊維、硫酸カルシウム粉末、炭酸カルシウム粉末等を混錬させた複合材であってもよい。
【0016】
その後吹込み過程に進むが、先ず該開閉弁を閉じ金型外部と該連通インサート3との連通を遮断した状態で該パリソン10内に高圧空気を吹き込む。これにより、該連通インサート3内のインサート空洞31においては従来例と同様に破裂端11が生じて宙に浮いたままになるが、該開閉弁が閉じていることで該パリソン10内の高圧は保持され該連通インサート3以外の中空体2の各部分は充分にブローアップされる。
【0017】
数秒後、該開閉弁を開くと金型外部と該連通インサート3との連通が開通し、該型内連通孔15内を空気が急速に流れて該パリソン10の内部の圧力は急激に下がるが、該連通インサート3以外の該中空体2の各部分は既に充分にブローアップされているので問題は生じない。
【0018】
更に数秒後、再び該開閉弁を急激に閉じて金型外部と該連通インサート3との連通を遮断すると該開閉弁の直前の圧力は急激に上昇し、それによって生じた圧力波は該型内連通孔15内及び該インサート空洞31内を遡行する。即ちウオーターハンマー現象が起こることになる。
【0019】
図4も本発明の1実施例を示す部分断面図であり、図1のB−B断面に相当するものである。図4において圧力波頭9a、9b、9c、9dの順に該圧力波の遡行する状態を表す。
【0020】
該圧力波が遡行する途上、該インサート空洞31内における該破裂端11は該圧力波によって外側に押され、インサート内面32に押し付けられるので該破裂端11は該インサート内面32に密着することになって成形不良とはならない。
【0021】
即ち、本発明に係る吹込み過程の初期には該開閉弁を閉じて該パリソン10内に高圧空気を吹込むので、該連通インサート3以外の中空体2の各部分は充分にブローアップされる。
【0022】
次に、吹込み過程の中期には該開閉弁を一旦開いて該型内連通孔15に空気を流しておき、吹込み過程の終期には該開閉弁を再び急激に閉じることにより該型内連通孔15内及び該インサート空洞31内に圧力波を遡行させて、該破裂端11を該インサート内面32に密着させる。
【0023】
この場合、該連通インサート3が該細径部33、該太径部35及び該細径部33と該太径部35を連絡する該テーパー部34を有しているため、該太径部35の内面に密着した該破裂端11の内径が該細径部33の内径より小さくなることはない。このため、該連通インサート3内部の断面の変化がなめらかとなり、成形後の該中空成形体1の該連通インサート3内の空気の流れに対する抵抗は極小となる。
【0024】
以上実施例に述べたように本発明によれば、従来例のような宙に浮いている破裂端を圧力波によってインサート内面に密着させることができるので、成形不良を防ぐことができるという効果がある。
【0025】
また、連通インサートが細径部と太径部、及び該細径部と該太径部を連絡するテーパー部を有しているため、該太径部の内面に密着した該破裂端の内径が該細径部の内径より小さくなることはなく、該連通インサート内部の断面の変化がなめらかになるので、成形後の中空成形体の該連通インサート内の空気の流れに対する抵抗は極小となるという効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、自動車用のレゾネータ等の連通インサート付き中空成形体の製造に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】従来の連通インサート付き中空成形体の成形概念斜視図
【図2】図1におけるB−B断面図
【図3】図1におけるB−B断面相当の、本発明に係る部分断面図
【図4】図1におけるB−B断面相当の、本発明に係る部分断面図
【符号の説明】
【0028】
1 中空成形体
2 中空体
3 連通インサート
5 分割金型
7 パーティングライン
9a、9b、9c、9d 圧力波頭
10 パリソン
11 破裂端
12 キャビティー面
15 型内連通孔
31 インサート空洞
32 インサート内面
33 細径部
34 テーパー部
35 太径部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が金型のキャビティー側に開口し、他端が金型外部に連通した連通インサートを有する中空成形体の吹込み成形において、吹込み過程の初期には金型外部と該連通インサートとの連通を遮断し、該吹込み過程の中期には金型外部と該連通インサートとの連通を開通させ、該吹込み過程の終期に金型外部と該連通インサートとの連通を再び遮断することを特徴とする中空成形体の製造方法

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−120053(P2008−120053A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−309764(P2006−309764)
【出願日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願人】(503233130)株式会社アイテック (96)
【Fターム(参考)】