説明

中空板状体における補強部材の固定構造

【課題】補強部材を固定部に容易に取り付けることができるとともに、ガタツキなく固定できるようにする。
【解決手段】中空板状体1は、ブロー成形された熱可塑性性樹脂製であって、間隔をおいて相対する表壁2および裏壁3と、表壁の周辺と裏壁の周辺との間に介在された周囲壁1aとを有しており、中空部9に配置した補強部材6を固定部4において固定することによって補強されている。裏壁3には、金属製筒状体からなる補強部材6が配置される部位に沿って、表壁に向かって窪んだ凹部からなる固定部4が互に間隔をおいて複数設けられており、金属製筒状体には、各凹部に先端が当接する突起部7aが前記裏壁に向かって突設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用のフロアリッドやパネル等に用いられる補強部材によって補強された中空板状体であって、ブロー成形された熱可塑性樹脂製の中空板状体における補強部材の固定構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車用のフロアリッドやパネル等に用いられる補強部材で補強された中空板状体の従来例について説明する。
【0003】
図11は、一従来例の主要部を示す模式部分断面図である。中空板状体201の裏壁202に空洞部206に向かって窪んだ凹陥部203を設け、この凹陥部203を基部としてさらに小突起204を設ける。
【0004】
空洞部206内に補強部材であるパイプ部材205を押し込んでパイプ部材205に小突起204を当接させて固定する(特開平11−115687号公報)。
【0005】
図10は、他の従来例による補強部材の固定構造を示し、(a)は、裏壁側から見た模式斜視図、(b)は主要部の部分斜視図である。図10(a)に示すように、中空板状体101は間隔をおいて相対する表壁102及び裏壁103と、前記表壁102の周辺と前記裏壁103の周辺を閉塞する周囲壁104を有し、裏壁103には挿入された補強部材107に先端が当接する山形状の突起部109が形成されている。この山形状の突起部109は、補強部材107の挿入方向に対する傾斜面の傾斜角度が45度以下に形成されている。
【0006】
【特許文献1】特開平11−115687号公報
【特許文献2】特開2006−28187号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、中空板状体をブロー成形する際のブロー工程において、パリスンの内部に加圧流体を導入してパリスンを金型のキャビティ面にならう形状に膨らませる。このため、パリスンの外表面のみがキャビティ面に押し付けられ、パリスンの内表面は加圧流体が接触するだけで、キャビティ面に押し付けられることはない。その結果、上記従来例のようなパリスンの内表面に形成される突起部は寸法・精度にバラツキが発生し、補強部材の形状・寸法の組み合わせ管理が難しい。
【0008】
また、ブロー成形された中空板状体の固定部に補強部材を挿入し易くするために補強部材と固定部の間の隙間を大きくすると、ガタツキが発生して補強部材が脱落するという課題があった。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためのものであって、補強部材を固定部に容易に取り付けることができるとともに、ガタツキなく固定することができる中空板状体における補強部材の固定構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の中空板状体における補強部材の固定構造は、間隔をおいて相対する表壁及び裏壁と、前記表壁の周辺と前記裏壁の周辺との間に介在された周囲壁とを有するブロー成形された熱可塑性樹脂製の中空板状体において、前記裏壁には、金属製筒状体からなる補強部材が配置された部位に沿って、前記表壁に向かって窪んだ凹部が互に間隔をおいて複数設けられており、前記金属製筒状体には、各凹部に先端が当接する突起部がそれぞれ前記裏壁に向かって突設されていること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、上述のように構成されているので、次に記載するような効果を奏する。
【0012】
ブロー成形された中空板状体に対して補強部材である金属製筒状体を容易に取り付けることができる。また、補強部材金属製筒状体をガタツキなく中空板状体に固定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明を実施するための最良の形態を図面に基いて説明する。
【0014】
図1は、一実施形態による中空板状体における補強部材の固定構造を示す模式斜視図、図2は、図1に示す中空板状体における補強部材の固定構造の主要部を示し、(a)は補強部材の軸方向に沿った模式部分断面図、(b)は(a)のAーA線に沿った模式断面図である。
【0015】
図1、図2に示すように、中空板状体1は、ブロー成形により一体成形された熱可塑性樹脂製の中空二重壁構造体である。中空板状体1は、間隔をおいて相対する表壁2及び裏壁3と、表壁2の周辺と裏壁3の周辺との間に介在された周囲壁1aとを有している。
【0016】
表壁2の外表面には、表皮材5が積層されており、表壁2と裏壁3の間の中空部9に配置した補強部材6を固定部4において固定することによって剛性等の強度が増大するように補強されている。
【0017】
ここで、補強部材6の中空板状体1への取り付け工程について、図3〜図5を参照して説明する。
(1)ブロー成形しておいた中空板状体1に対し、一列に設けられた複数の固定部のうちの補強部材側の固定部4の空洞部4cに補強部材6を挿入する。この場合、補強部材6に少なくとも一端にしぼり部6aを有する金属製パイプを用い、しぼり部6a側から挿入すると固定部4を削ってしまうことがなくなる。
(2)上記(1)ののち、図3の(a)に示すように、補強部材6の中空部にポンチ10を固定したポンチ台11を挿入し、ポンチ台11に連結部材13aを介して一端側が取り付けられたスケール13を用いてポンチ10を加工位置に位置決めする。
(3)上記(2)ののち、図3の(b)に示すように、ロッド12のみを矢印方向へ直線移動させる。このとき、ポンチ10はロッド12の先端の斜面を昇り、ポンチ10の先端が補強部材6の内壁面に当接し、固定される。
(4)上記(3)ののち、さらにロッド12のみを図3の(c)に示すように、矢印方向へ直線移動させて、ポンチ台11とともにポンチ10を上昇させることにより、補強部材6を変形させて突起部7aを径方向外方、つまり裏壁に向けて突設する。
(5)上記(4)ののち、突起部7aが固定部4の空洞部4cの内壁面と補強部材6の外壁面との間の隙間の寸法より大きくなると、補強部材6の突起部7aとともに固定部4の空洞部4cの壁面が径方向へ向けて変形して、固定部4に突起部7bが突設される。これにより、中空板状体1に補強部材6が固定される。この際、固定部4に突設される突起部7bは、凹部の範囲内に収まる大きさで形成され、突起部7bの先端が裏壁面の外方へ突出することがない。これにより、補強部材を固定するために裏壁3の外表面へ向けて設けられた突起部によって、裏壁の平滑性および外観性が損なわれることがない。
【0018】
次に、他の実施形態について、図6〜9を参照して説明する。
【0019】
図6は、他の実施形態による中空板状体における補強部材の固定構造を示す模式斜視図である。図7は、図6に示す中空板状体における補強部材の先端部を示す部分斜視図、図8は、図6に示す中空板状体における補強部材の固定構造を示す模式断面図である。
【0020】
図6、図7に示すように、ブロー成形された熱可塑性樹脂製の中空板状体21は、間隔をおいて相対する表壁22及び裏壁23と、前記表壁22の周辺と裏壁23の周辺との間に介在された周囲壁21aとを有する。
【0021】
表壁22の外表面には表皮材25が積層されており、表壁22と裏壁23の間の中空部に補強部材26を配設することにより剛性等の機械的強度が補強されている。
【0022】
補強部材26は、断面が矩形の金属製パイプからなり、少なくとも一端に先細りの先端潰し形状部が設けられている。このため、挿入時における凹部の削り取りを防止できる。固定部24は、ブロー成形時において、パリスンの裏壁となる部分を相対する表壁となる部分に向けて窪ませた凹部を有する。この固定部24は、補強部材26を挿入できる形状・寸法の空洞部に相当するものであって、配置された補強部材26の外壁面と凹部の内壁面の間にわずかに隙間が生じる形状・寸法に設定されている。
【0023】
なお、補強部材26の中空板状体21への取り付け工程は、上述した実施形態による図3に示した取り付け工程と同様でよいので、その説明は省略する。
【0024】
本発明において、熱可塑性樹脂としてはブロー成形が可能であって且つ強度及び耐久性に優れたABS樹脂、変性ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリカーボネイト、ポリアミド、ポリプロピレン等が好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】一実施形態による中空板状体における補強部材の固定構造を示す模式斜視図である。
【図2】図1に示す中空板状体における補強部材の固定構造の主要部を示し、(a)は、補強部材の軸方向に沿った模式部分断面図、(b)は(a)のAーA線に沿った模式断面図である。
【図3】図1に示す中空板状体における補強部材の固定構造を実施するための工程のうち、補強部材を固定部に固定する工程を示す説明図である。
【図4】図3の(c)のAーA線に沿った模式断面図である。
【図5】図3の(b)におけるB−B線に沿った模式断面図である。
【図6】他の実施形態による中空板状体における補強部材の固定構造を示す模式斜視図である。
【図7】図6に示した他の実施形態における補強部材を示す模式部分斜視図である。
【図8】図6に示した中空板状体における補強部材の固定構造を示し、補強部材の軸方向に沿った模式部分断面図である。
【図9】図8のA−A線に沿った模式断面図である。
【図10】一従来例による中空二重壁構造体のブロー成形品を示し、(a)は模式斜視図、(b)は挿入された補強部材が突起部に当接した状態を示す模式部分断面図である。
【図11】他の従来例による補強部材をブロー成形品の空洞部へ挿入する状態を示す模式部分断面図である。
【符号の説明】
【0026】
1、21 中空板状体
2、22 表壁
3、23 裏壁
4、24 固定部
5、25 表皮材
6、26 補強部材
7、27 周囲壁
7a、7b、27a、27b 突起部
8溶着部
9、29 中空部
10 ポンチ
11 ポンチ台
12 ロッド
13 スケール
13a 連結部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隔をおいて相対する表壁及び裏壁と、前記表壁の周辺と前記裏壁の周辺との間に介在された周囲壁とを有するブロー成形された熱可塑性樹脂製の中空板状体において、
前記裏壁には、金属製筒状体からなる補強部材が配置される部位に沿って、前記表壁に向かって窪んだ凹部からなる固定部が互に間隔をおいて複数設けられており、
前記表壁と前記複数の凹部との間に配置された前記金属製筒状体には、各凹部に先端が当接する突起部がそれぞれ前記裏壁に向かって突設されていること、を特徴とする中空板状体における補強部材の固定構造。
【請求項2】
前記表壁の外表面に表皮材が積層されていることを特徴とする請求項1記載の中空板状体における補強部材の固定構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−154341(P2009−154341A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−333461(P2007−333461)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【出願人】(000104674)キョーラク株式会社 (292)
【Fターム(参考)】