説明

中空糸型液浄化器用乾燥装置、および乾燥方法

【課題】取り扱い性に優れて安定した乾燥を効率良く行うことができる中空糸膜型血液浄化器用の乾燥装置を提供する。
【解決手段】液浄化器を複数取り付け可能な治具21と、外部に連通する経路25を有する乾燥炉20とを備え、治具は、経路を接続する接続部35と、複数の中空糸膜内部用分岐路26と、複数の中空糸膜外部用分岐路27と、上記接続部、中空糸膜内部用分岐路、中空糸膜外部用分岐路を繋ぐ主流路37とを備え、複数の中空糸膜内部用分岐路は、分岐部分から先端接続口までの長さ、太さが同じになるように統一され、複数の中空糸膜外部用分岐路は、分岐部分から先端接続口までの長さ、太さが同じになるように統一され、中空糸膜内部用分岐路の先端接続口を液浄化器の被浄化液用ポートの一方に接続し、中空糸膜外部用分岐路の先端接続口を液浄化器の浄化液用ポートの一方に接続し、真空ポンプ24の作動により中空糸膜の内外を通気して乾燥する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒状ケーシング内に中空糸膜の束を装填して両端部分を封止した中空糸型液浄化器用の乾燥装置、および乾燥方法に関する。
【背景技術】
【0002】
筒状ケーシング内に中空糸膜の束を装填して両端部分を封止した中空糸型液浄化器(ダイアライザー)には中空糸内外を滅菌水等で充填したウェットタイプと、滅菌水が充填されていないドライタイプ(セミドライタイプを含む)に大別される。ドライタイプダイアライザーを製造するには、乾燥させた中空糸に湿潤を与えず製造する方法と、湿潤させた後に、必要となる水分量まで乾燥させて製造する方法とが考えられる。
【0003】
この乾燥に用いられる乾燥装置としては、ハウジングケース(ケーシング)内に未乾燥の中空糸膜の束をU字状に差し込んでモジュール化して、このモジュールにキャップを取り付けることなくハウジングケースの一端開口部を開放した状態で乾燥炉の中に入れ、マイクロ波を照射し、モジュールのどちらか一方の開口部に吸引治具を取り付け、乾燥炉内の空気をモジュールの内部を通してから乾燥炉の外に排出して乾燥する方法が開示されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開平9−888号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記した従来の乾燥装置は、中空糸膜の束をハウジングケース内に入れて開放した状態のままで乾燥炉内にセットし、この開放状態でマイクロ波を照射して乾燥し、乾燥後も開放状態で次の封止工程のステージに搬送しなければならないので、取り扱いが煩雑であり、自動化も容易ではない。また、開放状態で搬送しなければならないので、中空糸にゴミ等の異物が付着しないように厳重な管理が不可欠となり、面倒である。また、吸引を行うのは中空糸外部のみであるため、中空糸内部の水分が積極的に排出されないため、処理に時間がかかる。
斯かる不都合を解消するために、中空糸膜の束の両端部分をハウジングケース内に封止した後に乾燥することも考えられるが、これでは空気の通りが悪くなって乾燥度合いに個体差が生じてしまう。したがって、品質の安定化に新たな問題が発生してしまう。
【0005】
本発明は上記に鑑み提案されたもので、その目的は、取り扱い性に優れて安定した乾燥を効率良く行うことができる中空糸膜型液浄化器用乾燥装置、および乾燥方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記目的を達成するためのものであり、請求項1に記載のものは、筒状ケーシング内に中空糸膜の束を装填して両端部分を封止し、中空糸膜の内側空間を、ケーシングの両端に取り付けたキャップ部材に突設された被浄化液用ポートに連通し、ケーシングの内面と中空糸膜の外側面との間の外側空間を、ケーシングの両端部分から突設した浄化液用ポートに連通してなる中空糸型液浄化器用の乾燥装置において、
前記液浄化器を複数取り付け可能な治具と、
該治具を収容し、外部に連通する経路を有する乾燥炉と、
を備え、
前記治具は、
外部に連通する経路を接続する接続部と、
複数の中空糸膜内部用分岐路と、
複数の中空糸膜外部用分岐路と、
上記接続部、中空糸膜内部用分岐路、中空糸膜外部用分岐路を繋ぐ主流路と、
を備え、
前記した複数の中空糸膜内部用分岐路は、分岐部分から先端接続口までの長さ、太さが同じになるように統一され、
前記した複数の中空糸膜外部用分岐路は、分岐部分から先端接続口までの長さ、太さが同じになるように統一され、
前記中空糸膜内部用分岐路の先端接続口を液浄化器の前記被浄化液用ポートの一方に接続し、前記中空糸膜外部用分岐路の先端接続口を液浄化器の前記浄化液用ポートの一方に接続し、
ポンプの作動により中空糸膜の内外を通気して乾燥することを特徴とする中空糸型液浄化器用の乾燥装置である。
【0007】
請求項2に記載のものは、前記乾燥炉が、マイクロ波照射装置と、前記治具を載せて回転するターンテーブルと、前記外部に連通する経路と、を備え、ターンテーブル上で液浄化器を回転させながらマイクロ波を照射して乾燥することを特徴とする請求項1に記載の中空糸型液浄化器用の乾燥装置である。
【0008】
請求項3に記載のものは、前記治具が接続治具と支持治具とからなり、
前記接続治具は、真空ポンプに接続した経路と、この経路から分岐した複数の中空糸膜内部用分岐路と、経路から分岐した複数の中空糸膜外部用分岐路とを備え、
前記支持治具は、水平方向に設けた下支持部から上方に向けて支柱を設け、該支柱から下支持部と平行になるようにして上支持部を水平方向に設け、下支持部の先端部分に、血液浄化器のポートが嵌合可能な切欠きを開設し、この切欠きの上方に位置する上支持部に、血液浄化器のケーシングが横方向から入り込む切欠保持部を形成してなることを特徴とする請求項1または2に記載の中空糸型液浄化器用の乾燥装置である。
【0009】
請求項4に記載のものは、前記中空糸膜内部用分岐路と中空糸膜外部用分岐路との配管抵抗に差をつけることにより、中空糸膜内外に圧力差が生じるように構成したことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の中空糸型液浄化器用の乾燥装置である。
【0010】
請求項5に記載のものは、前記中空糸膜内部用分岐路と中空糸膜外部用分岐路との少なくとも一方に絞り部を設けたことを特徴とする請求項4に記載の中空糸型液浄化器用の乾燥装置である。
【0011】
請求項6に記載のものは、前記中空糸膜内部用分岐路の最狭部径D2と中空糸膜外部用分岐路の最狭部径D1との比を2:1に設定したことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の中空糸型液浄化器用の乾燥装置である。
【0012】
請求項7に記載の乾燥方法は、請求項1から6のいずれかに記載の乾燥装置を使用し、中空糸膜内部用分岐路と中空糸膜外部用分岐路の配管抵抗に差をつけることにより、中空糸膜内外に圧力差を発生させて中空糸膜内外を通る空気を調整しながら乾燥することを特徴とする中空糸型液浄化器の乾燥方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、1つの乾燥炉を使用して、複数本の中空糸型液浄化器を同時に乾燥処理することができて作業効率を向上させることができ、しかも、複数の中空糸膜内部用分岐路の分岐部分から先端接続口までの長さ、太さが同じになるように統一し、複数の中空糸膜外部用分岐路の分岐部分から先端接続口までの長さ、太さが同じになるように統一してあるので、各液浄化器の中空糸膜の水分含有率(乾燥の度合い)を揃えることができる。
【0014】
また、マイクロ波照射装置と、前記治具を載せて回転するターンテーブルと、を備え、ターンテーブル上で液浄化器を回転させながらマイクロ波を照射して乾燥すると、効率の良い乾燥処理を行うことができ、しかも乾燥ムラを防止できる。また、前記乾燥治具は接続部をもって乾燥炉と独立したものであるため、治具を複数用意し、入れ替えることで、ほぼ連続的に処理を行うことができる。
【0015】
そして、治具が接続治具と支持治具とから構成され、支持治具は、水平方向に設けた下支持部から上方に向けて支柱を設け、該支柱から下支持部と平行になるようにして上支持部を水平方向に設け、下支持部の先端部分に、血液浄化器のポートが嵌合可能な切欠きを開設し、この切欠きの上方に位置する上支持部に、血液浄化器のケーシングが横方向から入り込む切欠保持部を形成してあるので、血液浄化器を立てた状態で乾燥することができる。このため、中空糸膜の偏りを防止して、処理液の流れを円滑にできる。
【0016】
また、前記中空糸膜内部用分岐路と中空糸膜外部用分岐路との配管抵抗に差をつけることにより、中空糸膜内外に圧力差が生じるように構成すると、乾燥効率を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
まず、図1及び図2に基づいて代表的な液浄化器である血液浄化器1の構成について説明する。例示した血液浄化器1は、ケース2の内部に中空糸束3を備えた構成である。
【0018】
ケース2は、前記中空糸束3を収納可能な筒状のケーシング4と、このケーシング4の一端の開口部に螺合装着される排出側のキャップ部材5と、ケーシング4の他端の開口部に螺合装着される注入側のキャップ部材6とを備えている。ケーシング4は、円筒状部材であり、例えばポリカーボネイトにより構成されている。そして、筒長手方向の一端側には、ケーシング4の内部空間に連通した透析液(浄化液)注入用のポート(本発明の浄化液用ポートの一種)8を筒の側方に向けて突設し、他端側には、ケーシング4の内部空間に連通した透析液排出用のポート(本発明の浄化液用ポートの一種)9を筒の側方に向けて突設している。
【0019】
このケーシング4における筒長手方向の両端部には封止部10を設けている。封止部10は、中空糸束3の端部をケーシング4に接着固定して封止するための部分であり、例えば、シーリング材によって構成される。このシーリング材としては樹脂組成物、例えばウレタン系の接着剤が用いられる。そして、シーリング材は、図2(a)に示すように、中空糸束3とケーシング4との間、及び、中空糸束3を構成する中空糸膜12同士の間に充填されている。これにより、ケーシング4の両端面は、端部が開口した複数の中空糸膜12同士の間隙を塞いだ封止状態となる。
【0020】
そして、この封止部10は、透析液注入ポート8や透析液排出ポート9の開口位置よりも筒長手方向の端部側に設けられる(図1参照)。このため、中空糸膜12及び封止部10によってケーシング4の内部空間は、中空糸膜12の内側空間と外側空間とに区画される。さらに、中空糸膜12の外側空間は、透析液注入ポート8及び透析液排出ポート9を通じてケーシング4の外部に連通される。そして、中空糸膜12の中空部である内側空間は、血液などの被浄化液を通じるための第1通液空間として機能し、ハウジングの内面と中空糸膜12の外側面との間の外側空間は、透析液などの浄化液を通じるための第2通液空間として機能する。
【0021】
排出側キャップ部材5は、被浄化液用ポートの一種である血液排出ポート13を有する略漏斗形状のキャップ部材であり、ケーシング4の筒長手方向他端側に螺合装着される。そして、この排出側キャップ部材5には、封止部外表面の外周部分に密着可能なOリング14を配設している。このOリング14は、封止部外表面に密着することで、ケーシング4と排出側キャップ部材5との境界部分を液密にシールしている。また、注入側キャップ部材6は、排出側キャップ部材5と同様な構造であり、被浄化液用ポートの一種である血液注入ポート15を設けた略漏斗形状のキャップ部材である。そして、この注入側キャップ部材6は、ケーシング4の筒長手方向一端側に螺合装着され、装着状態においてOリング16が封止部外表面に密着し、ケーシング4と注入側キャップ部材6との境界部分を液密にシールする。そして、キャップ部材5,6の装着状態において、排出側キャップ部材5の内部空間、及び、注入側キャップ部材6の内部空間は、各中空糸膜12の内側空間と共に血液が通る血液流路(被浄化液流路)を構成する。
【0022】
中空糸膜12は、図2(b)に示すように、中空糸状の半透膜であり、膜基材の肉厚が5〜50マイクロメートル、内径が100〜500マイクロメートル程度の極めて細いものである。また、樹脂組成物で固定された中空糸束3の両端部には、封止部10が形成されている。なお、膜基材は、ポリアリレート樹脂(PAR)とポリエーテルスルホン樹脂(PES)とからなるポリマーアロイ膜を主たる膜素材とした疎水性高分子製の半透膜である。
【0023】
次に、乾燥方法について説明する。
乾燥方法としては、血液浄化器1にマイクロ波を照射する方法と、血液浄化器1内に温風を流す方法とがあるが、本実施形態における乾燥処理では、前者のマイクロ波を利用する方法で乾燥を行う。具体的には、内部に残っている洗浄液を圧縮空気などによって押し出すことである程度除去した後、真空ポンプを用いて血液浄化器1内部の蒸気を除去しながら、所定出力のマイクロ波を照射して乾燥を行う。
【0024】
乾燥装置は、図3に示すように、前記血液浄化器1を複数取付可能な治具21と、該治具21を収納可能で対電磁波用シールドされた箱状の乾燥炉20と、前記乾燥炉20の側面に配設したマイクロ波照射装置22と、前記治具21を載せて回転するターンテーブル23と、乾燥炉20外へ連通する経路25と、を備え、ターンテーブル23上で血液浄化器1を回転させながらマイクロ波を照射して乾燥する。
【0025】
前記治具21は、接続治具21aと支持治具21bとに大別することができる。接続治具21aは、ポンプ24に接続されて乾燥炉20内ほぼ中央に天井から垂下した経路25を接続する接続部35と、接続部35から複数の中空糸膜内部用分岐路26と複数の中空糸膜外部用分岐路27とを繋ぐ経路36と、を備えている。図面の実施形態では、接続部35から経路36を垂下し、経路36の下端分岐部分から2本の中空糸膜外部用分岐路27を180度位相を変えて水平方向に分岐し、両中空糸膜外部用分岐路27は、分岐部分から先端接続口までの長さL1と太さD1が両方同じになるように統一され、また、中空糸膜外部用分岐路27の分岐部分よりも少し上方を分岐部分として2本の中空糸膜内部用分岐路26を180度位相を変えて分岐し、両中空糸膜内部用分岐路26は、分岐部分から下向き先端接続口までの長さL2と太さD2が両方同じになるように統一されている。
【0026】
支持治具21bは、図面に示す実施形態では、下支持部28から上方に向けて設けた支柱29から下支持部28と平行になるようにして上支持部30を水平方向に設け、乾燥炉20の底部下面に設けた回転モータ31の軸32を乾燥炉20の底部を貫通させ、乾燥炉20の内部に設けたターンテーブル23に載せてある。また、左右に腕状に延出した下支持部28の先端部分に、血液浄化器1のポート13(15)が嵌合可能なU字状の切欠き33を開設し、このU字状の切欠き33の上方に位置する上支持部30には、血液浄化器1のケーシング4が横方向から入り込む略U字状の切欠保持部34を形成してある。したがって、縦方向に向けた血液浄化器1の下側のポート13(15)を下支持部28のU字状の切欠き33内に嵌合して切欠保持部34内にケーシング4の途中を横から嵌め込み、この状態で当該血液浄化器1を安定した状態で支持することができる。なお、切欠保持部34は、開口部分を回転方向に向けて形成すると、ターンテーブル23が急激に回転し始めてもケーシング4を受け止めることができ外れない。
【0027】
上記した構成からなる乾燥装置により血液浄化器1を乾燥する場合には、まず、血液浄化器1を縦方向に向け、この姿勢で下向きに突出した被浄化液用のポート、すなわち、血液用ポート13(15)を下支持部28のU字状の切欠き33内に差し込んでケーシング4を上支持部30の切欠保持部34内に嵌め込む。次に、この状態で接続治具21aの中空糸膜外部用分岐路27の先端接続口を浄化液用ポート9(8)に接続し、前記中空糸膜内部用分岐路26の先端接続口を上向きの血液ポート15(13)に接続する。この様にして、2本の血液浄化器1を乾燥治具21に接続したら該治具を乾燥炉20内にあるターンテーブル23上へ載せる。その後に外部接続用経路25を治具21の接続部35へ接続する。
【0028】
この様にして準備が整ったならば、乾燥炉20の扉(図示せず)を閉めて乾燥装置のスイッチをオンにする。すると回転モータ31が治具21を血液浄化器1を載せた状態で回転を始めるとともに、マイクロ波照射装置22が作動してマイクロ波を血液浄化器1に照射し、回転する各血液浄化器1内の中空糸膜12等に付着した水分の蒸発を促進する。また、スイッチをオンにすると真空ポンプ24が作動し、経路25内の空気を吸引し、これにより中空糸膜内部用分岐路26および中空糸膜外部用分岐路27が減圧され、この減圧に伴って血液浄化器1の内部の圧力、すなわち、中空糸膜12の内側空間、および中空糸膜12の外側面とケーシング4内面との間の外側空間が減圧される。すると、この減圧により血液浄化器1の下側に位置する血液用ポート13(15)から外気が中空糸膜12の内側空間内に導入され、この導入された空気は、前記内側空間内を通過する間に、主として中空糸膜12の内側表面から蒸発した水分(湿気)を吸収しながら当該空間内を上方に流れて上の血液用ポート15(13)から中空糸膜内部用分岐路26、経路25を通ってポンプ24に吸引されてから大気に放出される。同様に、前記した減圧により透析液用ポート8(9)から中空糸膜12の外側空間内に導入され、この導入された空気は、前記外側空間内を通過する間に、主として中空糸膜12の外側表面から蒸発した水分(湿気)を吸収しながら当該空間内を上方に流れて上の透析液用ポート9(8)から中空糸膜外部用分岐路27、経路25を通ってポンプ24に吸引されてから大気に放出される。
【0029】
また、この際に中空糸膜外部用分岐路27内に絞り部37を設けることで、前記した血液排出ポート13から血液注入ポート15、及び透析液注入ポート8から透析液排出ポート9の流れのみではなく、透析液注入ポート8から中空糸膜12を通り、血液注入ポート15へ流れる空気の流れを発生させて乾燥を促進させることができる。すなわち、前記中空糸膜内部用分岐路26と中空糸膜外部用分岐路27との配管抵抗に差をつけることにより、中空糸膜の内外に圧力差が生じるように構成し、この圧力差により空気が中空糸膜を膜厚方向に通って膜内部の水分を蒸発させて乾燥させるものである。
【0030】
中空糸膜内部用分岐路26と中空糸膜外部用分岐路27との配管抵抗に差をつける具体的手段として、図3では中空糸膜外部用分岐路27の途中に絞り部37を設け、この絞り部37により、中空糸膜内部用分岐路26の最狭部径D2と中空糸膜外部用分岐路27の最狭部径D1との比を2:1に設定してある。この様に構成すると、絞り部37がない場合には1:2.5程度であった中空糸膜内部用分岐路26の血液側流量(V2):中空糸膜外部用分岐路27の透析液側流量(V1)が6:1程度に変化し、これにより乾燥効率を約8%向上させることができる。なお、前記構成による変化を圧力比でいうと、中空糸膜内部用分岐路26の血液側圧力(P2):中空糸膜外部用分岐路27の透析液側圧力(P1)が1:1.5であったが、これが10:1になった。
【0031】
この様にして、2本の血液浄化器1を同時に乾燥する場合、前記した通り、両中空糸膜外部用分岐路27が、分岐部分から先端接続口までの長さL1と太さD1が両方同じになるように統一されているので、両血液浄化器1の前記外側空間を通る空気の量が統一され、また、両中空糸膜内部用分岐路26が、分岐部分から下向き先端接続口までの長さL2と太さD2が両方同じになるように統一されているので、両血液浄化器1の前記内側空間を通る空気の量が統一されているので、通気による乾燥効果としては両血液浄化器1において均一になる。したがって、水洗した後、乾燥処理した両血液浄化器1の中空糸膜12の乾燥度合い(水分含有量)を均一にすることができ、乾燥時間やマイクロ波照射時間を調整することにより中空糸膜12の水分含有量を容易に制御することができる。また、本発明によれば、中空糸膜12をケーシング4の内部に装填した状態で乾燥するので、内部にゴミ等の侵入のおそれがないばかりでなく、取り扱いが容易であり、自動化し易い。さらに、本実施形態では血液浄化器1を立てた状態で乾燥するので、中空糸膜12の偏りが少なくなって透析液の流れを均一化できるばかりでなく、外観上も有利である。
【0032】
この乾燥処理における処理条件(マイクロ波のパラメータ又は温風の温度、乾燥時間等)は、乾燥後の中空糸膜12における水分含有量に関連している。この中空糸膜12の水分含有量は、賦活処理時の気泡抜けを良好にする観点で重要である。
【0033】
なお、前記した実施形態においては、血液浄化器1を立てた状態で2本セットして乾燥処理する構成を採ったが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、経路25から分岐する中空糸膜内部用分岐路26と中空糸膜外部用分岐路27の数を増やして3本以上にしてもよいし、血液浄化器1の姿勢も立てた状態に限らず寝かせたり、斜めにセットしてもよい。
また、中空糸膜の内外で圧力差を得るために中空糸膜外部用分岐路27内に絞り部37を設ける方法を採ったが、それに限らず、透析液用ポート8内に絞りを設けても良いし、他端である透析液用ポート9内でも構わない。更には、透析液用ポート9を閉塞する方法でも実現できる。
また、前記した実施形態では真空ポンプ24を用いて吸引したが、逆に送気ポンプを用いて送風してもよい。要するに、通気は、吸引と送風のいずれでもよい。
【0034】
また、前記した実施形態では血液浄化器1を乾燥する例を挙げて説明したが、本発明における乾燥対象物はこれに限定されるものではない。例えば、血清浄化器など血液以外の液体を浄化する液浄化器でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】血液浄化器の断面図である。
【図2】(a)は血液浄化器の断面図、(b)は中空糸束の封止部分の拡大断面図である。
【図3】乾燥装置の概略構成図である。
【符号の説明】
【0036】
1 血液浄化器
2 ケース
3 中空糸束
4 ケーシング
5 血液排出側のキャップ部材
6 血液注入側のキャップ部材
8 浄化液注入用のポート
9 浄化液排出用のポート
10 封止部
12 中空糸膜
13 血液排出ポート
14 Oリング
15 血液注入ポート
16 Oリング
20 乾燥炉
21 治具
21a 接続治具
21b 支持治具
22 マイクロ波照射装置
23 ターンテーブル
24 ポンプ
25 経路
26 中空糸膜内部用分岐路
27 中空糸膜外部用分岐路
28 下支持部
29 支柱
30 上支持部
31 回転モータ
32 ターンテーブル軸
33 切欠き
34 切欠保持部
35 接続部
36 経路
37 絞り部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状ケーシング内に中空糸膜の束を装填して両端部分を封止し、中空糸膜の内側空間を、ケーシングの両端に取り付けたキャップ部材に突設された被浄化液用ポートに連通し、ケーシングの内面と中空糸膜の外側面との間の外側空間を、ケーシングの両端部分から突設した浄化液用ポートに連通してなる中空糸型液浄化器用の乾燥装置において、
前記液浄化器を複数取り付け可能な治具と、
該治具を収容し、外部に連通する経路を有する乾燥炉と、
を備え、
前記治具は、
外部に連通する経路を接続する接続部と、
複数の中空糸膜内部用分岐路と、
複数の中空糸膜外部用分岐路と、
上記接続部、中空糸膜内部用分岐路、中空糸膜外部用分岐路を繋ぐ主流路と、
を備え、
前記した複数の中空糸膜内部用分岐路は、分岐部分から先端接続口までの長さ、太さが同じになるように統一され、
前記した複数の中空糸膜外部用分岐路は、分岐部分から先端接続口までの長さ、太さが同じになるように統一され、
前記中空糸膜内部用分岐路の先端接続口を液浄化器の前記被浄化液用ポートの一方に接続し、前記中空糸膜外部用分岐路の先端接続口を液浄化器の前記浄化液用ポートの一方に接続し、
ポンプの作動により中空糸膜の内外を通気して乾燥することを特徴とする中空糸型液浄化器用の乾燥装置。
【請求項2】
前記乾燥炉は、マイクロ波照射装置と、前記治具を載せて回転するターンテーブルと、前記外部に連通する経路と、を備え、ターンテーブル上で液浄化器を回転させながらマイクロ波を照射して乾燥することを特徴とする請求項1に記載の中空糸型液浄化器用の乾燥装置。
【請求項3】
前記治具は、接続治具と支持治具とからなり、
前記接続治具は、ポンプに接続した経路と、この経路から分岐した複数の中空糸膜内部用分岐路と、経路から分岐した複数の中空糸膜外部用分岐路とを備え、
前記支持治具は、水平方向に設けた下支持部から上方に向けて支柱を設け、該支柱から下支持部と平行になるようにして上支持部を水平方向に設け、下支持部の先端部分に、血液浄化器のポートが嵌合可能な切欠きを開設し、この切欠きの上方に位置する上支持部に、血液浄化器のケーシングが横方向から入り込む切欠保持部を形成してなることを特徴とする請求項1または2に記載の中空糸型液浄化器用の乾燥装置。
【請求項4】
前記中空糸膜内部用分岐路と中空糸膜外部用分岐路との配管抵抗に差をつけることにより、中空糸膜内外に圧力差が生じるように構成したことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の中空糸型液浄化器用の乾燥装置。
【請求項5】
前記中空糸膜内部用分岐路と中空糸膜外部用分岐路との少なくとも一方に絞り部を設けたことを特徴とする請求項4に記載の中空糸型液浄化器用の乾燥装置。
【請求項6】
前記中空糸膜内部用分岐路の最狭部径D2と中空糸膜外部用分岐路の最狭部径D1との比を2:1に設定したことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の中空糸型液浄化器用の乾燥装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の乾燥装置を使用し、中空糸膜内部用分岐路と中空糸膜外部用分岐路の配管抵抗に差をつけることにより、中空糸膜内外に圧力差を発生させて中空糸膜内外を通る空気を調整しながら乾燥することを特徴とする中空糸型液浄化器の乾燥方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−233639(P2009−233639A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−86717(P2008−86717)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000226242)日機装株式会社 (383)
【Fターム(参考)】