説明

中継コネクタ

【課題】絶縁性材料によって一体成形されるとともにフローティング機能を発揮する本体部の面上に、導電パターンを形成することによって、実装された相手方コネクタに嵌合させる作業を容易に行うことができ、相手方コネクタの位置ずれを吸収することができ、極間ショートが発生することがなく、所望の導電パターンを容易に形成することができ、構成が簡素で、部品点数が少なく、製造が容易で、コストが低くなるようにする。
【解決手段】相手方コネクタ101と各々嵌合する複数の嵌合部を備え、絶縁性材料によって一体成形された本体部11と、該本体部11の面上に形成された導電パターンとを有し、前記本体部11は、前記嵌合部の変位を吸収するフローティング機構部を備え、前記導電パターンが前記相手方コネクタ101の相手方端子と接触し、複数の相手方コネクタ101を接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中継コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、一対の平行な回路基板同士を電気的に接続するために、基板対基板コネクタが使用されている(例えば、特許文献1参照。)。このような基板対基板コネクタは、同一面上に並べて配設された一対の回路基板同士を接続する。
【0003】
図12は従来の基板対基板コネクタの側面図である。
【0004】
図において、901は第1回路基板991Aに取付けられる第1コネクタであり、902は第2回路基板991Bに取付けられた相手方コネクタと嵌(かん)合する第2コネクタであり、801は第1コネクタ901と第2コネクタ902とを連結する連結コネクタである。そして、前記第1コネクタ901は、ハウジング911と該ハウジング911から突出するソルダーテール961とを備え、該ソルダーテール961が第1回路基板991Aの対応する導電トレースに接続される。これにより、前記第1コネクタ901は第1回路基板991A上に実装される。
【0005】
また、前記第2コネクタ902は、ハウジング912と該ハウジング912に取付けられた接触部962とを備え、第2回路基板991B上に実装された相手方コネクタと嵌合する。これにより、前記接触部962は相手方コネクタの相手方端子と接触して導通する。
【0006】
そして、前記連結コネクタ801は、ハウジング811を備え、第1コネクタ901に回動可能に連結されている。この場合、第1コネクタ901のハウジング911の両側に形成された回動軸ピン915が、連結コネクタ801のハウジング811に形成された受溝813に回動可能に嵌合されている。なお、第2コネクタ902のハウジング912は、連結コネクタ801のハウジング811に固定されている。
【0007】
また、前記連結コネクタ801は、並列に配設された複数本のジャンパーリード861を備える。該ジャンパーリード861は、柔軟性を備える導電性金属線から成り、両端が、各々、ソルダーテール961及び接触部962と接続されるようになっている。すなわち、第1コネクタ901のソルダーテール961と第2コネクタ902の接触部962とは、ジャンパーリード861によって接続されている。
【0008】
従来の基板対基板コネクタは、このような構造を有し、保管、運搬等の状態においては、第1コネクタ901は第1回路基板991A上に実装されるとともに、第2コネクタ902と相手方コネクタとの嵌合は解除されている。そのため、外部からの衝撃等の原因によって第1回路基板991Aと第2回路基板991Bとの相対的な位置がずれても、それに起因する応力を受けることがない。そして、第1回路基板991Aと第2回路基板991Bとを接続する場合には、第1回路基板991A上に実装された第1コネクタ901に対して連結コネクタ801を回動させ、第2コネクタ902を第2回路基板991B上に実装された相手方コネクタと嵌合させる。これにより、接触部962が相手方コネクタの相手方端子と接触するので、第1回路基板991Aと第2回路基板991Bとが接続、すなわち、各々の回路基板に設けられた電気回路に接続される。
【0009】
また、基板対基板コネクタによって接続された状態において第1回路基板991Aと第2回路基板991Bとの間に位置ずれが発生しても、回動軸ピン915と受溝813との嵌合状態がルーズであるとともに、ジャンパーリード861が柔軟で容易に撓(たわ)むことができるので、前記位置ずれを適切に吸収することができる。
【特許文献1】特開2003−272734号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前記従来の基板対基板コネクタにおいては、連結コネクタ801が複数本のジャンパーリード861を備え、該複数本のジャンパーリード861が合成樹脂等から成るハウジング811と一体化されている。そのため、連結コネクタ801を製造するためには、金属端子であるジャンパーリード861を保持する機能を備える金属端子金型を使用し、該金属端子金型内に溶融樹脂を充填(てん)することによってハウジング811を成形する必要があるが、一般的に金属端子金型は、構造が複雑であるのでコストが高く、そのため、連結コネクタ801の製造コストが高くなってしまう。
【0011】
また、第1回路基板991Aと第2回路基板991Bとの間に位置ずれが発生するとジャンパーリード861が撓むようになっているので、特に、該ジャンパーリード861のピッチが狭いものであると、撓んだ際に隣接するジャンパーリード861同士が接触して、いわゆる極間ショートが発生する可能性が高くなる。そのため、隣接するジャンパーリード861同士の接触を防止するための極間ショート対策部品を別途用意する必要があるので、部品点数が増加し、構成が複雑になってしまう。
【0012】
もっとも、FPC(Flexible Printed Circuit:フレキシブル回路基板)やFFC(Flexible Flat Cable:フレキシブルフラットケーブル)は、可撓(とう)性を備えているので、前記従来の基板対基板コネクタに代えて、高速伝送用のFPCやFFCによって第1回路基板991Aと第2回路基板991Bとを接続することも考えられる。しかし、この場合、柔軟なFPCやFFCの両端を、それぞれ順番に、第1回路基板991A及び第2回路基板991Bに実装されたコネクタに接続しなければならないので、手間と時間がかかってしまう。
【0013】
本発明は、前記従来の問題点を解決して、絶縁性材料によって一体成形されるとともにフローティング機能を発揮する本体部の面上に、導電パターンを形成することによって、実装された相手方コネクタに嵌合させる作業を容易に行うことができ、相手方コネクタの位置ずれを吸収することができ、極間ショートが発生することがなく、所望の導電パターンを容易に形成することができ、構成が簡素で、部品点数が少なく、製造が容易で、コストが低い中継コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
そのために、本発明の中継コネクタにおいては、相手方コネクタと各々嵌合する複数の嵌合部を備え、絶縁性材料によって一体成形された本体部と、該本体部の面上に形成された導電パターンとを有し、前記本体部は、前記嵌合部の変位を吸収するフローティング機構部を備え、前記導電パターンが前記相手方コネクタの相手方端子と接触し、複数の相手方コネクタを接続する。
【0015】
本発明の他の中継コネクタにおいては、さらに、前記本体部は、前記嵌合部の縦方向の変位を吸収する第1フローティング機構部と、横方向の変位を吸収する第2フローティング機構部とを含む橋渡し部を備え、前記嵌合部は、前記橋渡し部における導電パターンの延在する方向の両端において前記橋渡し部に接続され、かつ、前記縦方向に延出する。
【0016】
本発明の更に他の中継コネクタにおいては、さらに、前記第1フローティング機構部は、前記橋渡し部における導電パターンの延在する方向に屈曲した薄板から成る。
【0017】
本発明の更に他の中継コネクタにおいては、さらに、前記第2フローティング機構部は、前記橋渡し部における導電パターンの延在する方向に延在する導電パターン保持部を備え、該導電パターン保持部は、前記橋渡し部における導電パターンの延在する方向に延在する第2スリットによって分離された複数の櫛(くし)歯部を備え、該櫛歯部の各々の裏面には導電パターンの各々が形成される。
【0018】
本発明の更に他の中継コネクタにおいては、さらに、前記第2フローティング機構部は、前記導電パターン保持部の両側に第1スリットを挟んで配設された側壁部を備える。
【0019】
本発明の更に他の中継コネクタにおいては、さらに、前記導電パターンは、前記第1フローティング機構部の裏面に形成された第1部、前記第2フローティング機構部の裏面に形成され、前記第1部に接続された第2部、及び、前記嵌合部の裏面に形成され、前記第2部に接続された第3部を含む。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、中継コネクタは、絶縁性材料によって一体成形されるとともにフローティング機能を発揮する本体部の面上に、導電パターンを形成するようになっている。これにより、基板に実装された相手方コネクタに嵌合させる作業を容易に行うことができ、相手方コネクタの位置ずれを吸収することができ、極間ショートが発生することがなく、所望の導電パターンを容易に形成することができ、構成を簡素化し、部品点数を少なくし、製造を容易にし、コストを低くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0022】
図1は本発明の実施の形態における中継コネクタを相手方コネクタに嵌合した状態を示す斜視図、図2は本発明の実施の形態における中継コネクタを相手方コネクタに嵌合した状態を示す上面図、図3は本発明の実施の形態における中継コネクタを相手方コネクタに嵌合した状態を示す正面図、図4は本発明の実施の形態における中継コネクタを取外した状態の相手方コネクタを示す斜視図である。
【0023】
図において、1は本実施の形態における中継コネクタとしてのコネクタであり、合成樹脂等の絶縁性材料によって形成された本体部11、及び、該本体部11の面上に形成された後述される導電パターン61を有し、両端を第1基板91A及び第2基板91Bの各々に実装された相手方コネクタ101に嵌合させることによって、第1基板91A及び第2基板91Bを電気的に接続することができる。なお、前記導電パターン61は、本体部11の第1面、すなわち、表面2には形成されておらず、本体部11の第2面、すなわち、裏面3に形成されている。また、第1基板91A及び第2基板91Bは、例えば、プリント回路基板であるが、電気的な回路を具備する基板であればいかなる種類の基板であってもよい。
【0024】
なお、本実施の形態において、コネクタ1及びその他の部材に含まれる各部の構成及び動作を説明するために使用される上、下、左、右、前、後等の方向を示す表現は、絶対的なものでなく相対的なものであり、前記コネクタ1及びその他の部材に含まれる各部が図に示される姿勢である場合に適切であるが、その姿勢が変化した場合には姿勢の変化に応じて変更して解釈されるべきものである。
【0025】
前記本体部11は、合成樹脂等の絶縁性材料、より具体的には、無電解めっき鍍(と)着用の媒体や、有機金属を含有する熱可塑性樹脂の複合材によって一体的に成形された部材であり、上面から観て長方形であって正面から観て波形の板状の橋渡し部12、及び、該橋渡し部12の両端に基端が接続され、垂直な方向(図2における下方向)に延出する嵌合部としての脚部13を有する。また、本体部11の裏面3には、両側の脚部13を連結する方向に延在する導電パターン61が、複数本、互いに平行になるように形成されている。
【0026】
そして、両側の脚部13を第1基板91A及び第2基板91Bの各々に実装された相手方コネクタ101に嵌合させると、導電パターン61が相手方コネクタ101の相手方端子161と接触する。これにより、第1基板91A及び第2基板91Bの各々に実装された相手方コネクタ101の相手方端子161は、導電パターン61を介して、電気的に接続される。
【0027】
ここで、前記相手方コネクタ101は、レセプタクルコネクタであって、合成樹脂等の絶縁性材料によって一体的に形成されたコネクタ本体としてのハウジング111と、該ハウジング111に装着された導電性の金属から成る複数の相手方端子161と、ハウジング111の両端に取付けられた取付用補助金具としてのネイル181とを有する。さらに、前記ハウジング111は、前記コネクタ1の脚部13の先端部分を挿入するための開口部である挿入開口122を有する。該挿入開口122は、幅の狭いスロット状の形状を備え、その短手方向の寸法は前記脚部13の先端部分の厚さ寸法とほぼ同じ程度である。また、挿入開口122の周囲は、第1側壁112、第2側壁113及び端壁114によって画定されている。
【0028】
前記第1側壁112は、第1基板91A及び第2基板91Bの表面に対してほぼ垂直となるように立設され、かつ、コネクタ1の幅方向に延在する壁部材であり、内側壁面にはコネクタ1の幅方向に配列された複数の相手方端子161が装着されている。なお、該相手方端子161は、ハウジング111の下方に露出し、第1基板91A及び第2基板91Bが備える図示されない導電トレースに接続されるテール部163と、コネクタ1の導電パターン61の配列に対応するように配列され、各々が対応する導電パターン61と接触する接触部164とを備える。
【0029】
また、前記第2側壁113は、前記第1側壁112に対向し、該第1側壁112と平行に延在する壁部材であり、上端近傍の中央付近に相手方ロック部としての膨出部115が形成されている。該膨出部115には、コネクタ1のロック部としてのロック用腕部15が収容され、該ロック用腕部15のロック用突起16が膨出部115の壁面に形成されたロック用開口116に係合する。
【0030】
さらに、前記端壁114は、第1側壁112及び第2側壁113の両端に接続され、かつ、第1基板91A及び第2基板91Bの表面に対してほぼ垂直となるように立設されるとともに、ネイル181が装着される。
【0031】
前記相手方コネクタ101は、いわゆるストレートタイプのコネクタであり、第1基板91A及び第2基板91Bの表面に対して立設した状態で、すなわち、挿入開口122が上を向いた状態で、第1基板91A及び第2基板91Bの表面にネイル181及び相手方端子161のテール部163をはんだ付等の手段によって固着することにより実装される。そして、コネクタ1は、脚部13の先端部分が挿入開口122に挿入され、ロック用腕部15が膨出部115に収容され、ロック用突起16がロック用開口116に係合することによって、相手方コネクタ101と嵌合してロックされる。これにより、コネクタ1の導電パターン61の各々が対応する相手方端子161の接触部164と接触して導通し、テール部163が接続されている第1基板91A及び第2基板91Bの導電トレースと電気的に接続される。
【0032】
本実施の形態におけるコネクタ1は、いわゆるMID(Molded Interconnect Device)であり、合成樹脂等から成る本体部11の面上に、三次元的なパターンである導電パターン61がめっきによって一体的に形成されたものである。この場合、パターンを形成するには、例えば、レーザ照射によるパターニングが用いられる。そのパターン形成方法としては、無電解めっき鍍着用の媒体を含有する樹脂成形体の表面に絶縁層を被着させ、絶縁層にレーザビームを照射して絶縁層を回路パターン形状に除去させ、樹脂成形体の絶縁層除去部に無電解めっきを鍍着させる方法がある。また、他にも熱可塑性樹脂であるベースポリマーにフィラー及び有機金属を混入した複合材の表面にレーザを照射してパターニングを行う方法等種々開発されており、ここではその説明を省略する。これらレーザ照射によるパターニングにより、例えば、100〔μm〕程度の微細ピッチで配列された約80本の導電パターン61を得ることができる。該導電パターン61は、本体部11の三次元的な裏面に沿って形成されるので、後述されるように、三次元的な形状を備える。
【0033】
前記本体部11の形状は、長手方向、すなわち、第1基板91Aに実装された相手方コネクタ101と第2基板91Bに実装された相手方コネクタ101とを連結する方向(図2及び3における横方向)の中心を通る仮想線に対して線対称となっている。すなわち、前記本体部11は、図2及び3において、左右対称な形状を備える。そして、橋渡し部12は、図3に示されるように、略W字状の正面形状を備え、第1フローティング機構部としての中央部31、及び、該中央部31の両側に接続された第2フローティング機構部としての側部21を有する。
【0034】
前記中央部31は、V字を逆さにしたような正面形状を備えるように屈曲された柔軟な薄板から成り、弾性変形することによって、主として、第1基板91A及び第2基板91Bの表面に対する垂直方向、すなわち、縦方向(図3における上下方向)のフローティング機能を発揮する。具体的には、橋渡し部12の両端に接続された脚部13同士の高さ方向、すなわち、第1基板91A及び第2基板91Bの表面に対する垂直方向の変位を吸収するが、同様に、前記脚部13間の距離の伸縮、及び、前記脚部13同士の捩(ねじ)れも吸収する。
【0035】
また、前記側部21の各々は、略平板状の厚板から成り、長手方向に延在し、かつ、板厚方向に貫通するように形成された複数の縦スリットを有し、弾性変形することによって、主として、第1基板91A及び第2基板91Bの表面に平行な方向、すなわち、横方向(図2における上下方向)のフローティング機能を発揮する。具体的には、前記側部21は、幅方向の中央に配設された導電パターン保持部23と、該導電パターン保持部23の両側に配設された連結部としての側壁部22と、前記導電パターン保持部23と側壁部22との間に形成された縦スリットとしての第1スリット24とを有する。また、前記導電パターン保持部23は、複数の櫛歯部25と、隣接する櫛歯部25同士の間に形成された縦スリットとしての第2スリット26とを有する。そして、前記側部21は、脚部13同士の幅方向(図2における上下方向)への変位を吸収する。
【0036】
ここで、橋渡し部12は中央部31を挟んで両側に側部21が設けられるよう形成されているが、これは導電パターン保持部23の櫛歯部25の隣同士が接触しないよう、中間部でその間隔を維持するためである。よって、櫛歯部25の長さが短いときなどは、導電パターン保持部23と脚部13との間に設けてもよい。
【0037】
次に、前記コネクタ1の構成について詳細に説明する。
【0038】
図5は本発明の実施の形態における中継コネクタの上方から観た斜視図、図6は本発明の実施の形態における中継コネクタの下方から観た斜視図、図7は本発明の実施の形態における中継コネクタの上面図、図8は本発明の実施の形態における中継コネクタの下面図、図9は本発明の実施の形態における中継コネクタの側面図、図10は本発明の実施の形態における中継コネクタの正面図、図11は本発明の実施の形態における中継コネクタの断面図であり図7におけるZ−Z矢視断面図である。
【0039】
図6及び8に示されるように、複数の導電パターン61は、コネクタ1の本体部11の裏面3に形成され、各々が両側の脚部13を連結する方向、すなわち、長手方向に延在するとともに、幅方向に並ぶように配列されている。そして、各導電パターン61は、橋渡し部12の中央部31の裏面に形成された第1部62、中央部31の両側の側部21における導電パターン保持部23の櫛歯部25の裏面に形成された第2部63、及び、脚部13の裏面に形成された第3部64を備える。なお、各導電パターン61は、一方の第3部64の終端から他方の第3部64の終端まで、途切れることなく、連続するように形成されている。
【0040】
ここで、各櫛歯部25は、前述のように、側部21を板厚方向に貫通する第2スリット26によって隣接する櫛歯部25から分離されて独立した薄板状の部材であり、側部21の幅方向の寸法が微小となっている。すなわち、各櫛歯部25の断面は、側部21の板厚方向の寸法に対して側部21の幅方向の寸法が極めて短い矩(く)形となっている。そのため、各櫛歯部25は、幅方向の断面二次係数が板厚方向の断面二次係数よりも極めて小さいので、幅方向に柔軟に変形することができ、並列に配列された複数の櫛歯部25の集合体である導電パターン保持部23も幅方向に比較的柔軟に変形することができる。
【0041】
なお、各櫛歯部25の裏面には導電パターン61の第2部63が1本ずつ形成されている。すなわち、櫛歯部25は、導電パターン61の配列ピッチと同等のピッチで幅方向に配列されている。
【0042】
また、導電パターン保持部23の幅方向両側に第1スリット24を挟んで配設された側壁部22は、側部21の板厚方向の寸法は櫛歯部25のそれとほぼ同等であるが、側部21の幅方向の寸法は、図7及び8に示されるように、櫛歯部25のそれよりも大きい。そのため、側壁部22は、幅方向の断面二次係数がある程度小さいので、幅方向にある程度変形することができるが、櫛歯部25ほど柔軟ではない。この側壁部22の幅方向の寸法を調節することによって、側部21の柔軟性を調節するとともに側部21の強度を保つことが可能である。この点において、側壁22の幅方向の寸法は適宜選択することができ、また、側部21を櫛歯部25だけで構成することも可能である。
【0043】
なお、前記側壁部22及び櫛歯部25は、板厚方向の寸法が大きく、板厚方向の断面二次係数が大きいので、板厚方向には変形しにくくなっている。
【0044】
このように、側部21は、縦スリットによって、複数の側壁部22及び櫛歯部25に分離されているので、幅方向に柔軟性を備え、脚部13同士の幅方向への変位を吸収することができる。なお、前記側部21は、図7及び8に示されるように、あたかも、両側の側壁部22、脚部13及び中央部31によって形成される矩形状の枠内に、導電パターン保持部23が収容されたような形状を備える。そして、側部21が幅方向に変形して脚部13同士の幅方向への変位を吸収する際には、前記矩形状の枠が変形して平行四辺形となり、脚部13が中央部31に対して幅方向に変位する。この場合、各櫛歯部25の両端は、脚部13と中央部31とに接続され、平行に移動するので、隣接する櫛歯部25同士が接触することがない。したがって、側部21が幅方向に変形しても、隣接する導電パターン61の第2部63同士が接触することによる短絡が発生することがない。
【0045】
さらに、側部22において、導電パターン61の幅方向の寸法を、櫛歯部25の幅方向の寸法より小さいものとして櫛歯部25の中央に形成すると、導電パターン61の両側に櫛歯部25の樹脂が配される。そうすると、仮に隣合う櫛歯部25同士が何らかの強制力によって接触したり、意図せぬ変形等で接触しても、隣接する導電パターン61同士が接触することがない。
【0046】
また、前記中央部31は、その長手方向の中央に位置する尾根部33、該尾根部33の両側に接続された斜面部32、及び、該斜面部32に接続された麓(ふもと)部34を備える。前記尾根部33は、正面から観て上側に突出した曲面から成る突部形状を備え、幅方向に延在する突条の部分である。また、前記斜面部32は、尾根部33から麓部34に向って下方に傾斜し、かつ、幅方向に延在する平板状の部分である。さらに、前記麓部34は、水平で、かつ、幅方向に延在する平板状の部分であり、斜面部32と反対側の端部が側部21に接続されている。そして、前記尾根部33、斜面部32及び麓部34は、図11に示されるように、接続部分が緩やかな曲面を描くように接続され、全体としてV字を逆さにしたような断面形状、又は、正面形状を備える。
【0047】
このように、中央部31は、柔軟な薄板を長手方向に屈曲したような形状の部材であるから、幅方向の断面二次係数が大きく、板厚方向の断面二次係数が小さいので、板厚方向に柔軟に変形することができる。そのため、縦方向に柔軟性を備え、脚部13同士の縦方向への変位を吸収することができる。また、前記中央部31は、長手方向に屈曲したような形状であるから、長手方向の伸縮性も備えるので、脚部13間の距離の伸縮も吸収し、捩れも許容するので、脚部13同士の捩れも吸収する。
【0048】
図6及び11に示されるように、コネクタ1の本体部11の裏面3は、滑らかに連続して形成されている。具体的には、中央部31の裏面は、各部の接続部分が緩やかな曲面を描くように形成され、かつ、側部21との接続部分も平坦(たん)な面となるように形成されている。また、側部21の裏面は、平坦な面と、該平坦な面同士を接続する緩やかな曲面とで形成されている。そして、脚部13の裏面は、上下方向に延在する平坦な垂直壁面13aと、該垂直壁面13aと側部21の裏面との接続部分に形成された緩やかに湾曲した接続曲面13bと、前記垂直壁面13aの先端、すなわち、下端に形成された傾斜平面である面取部13cとを備える。
【0049】
このように、本体部11の裏面3が滑らかに連続しているので、めっきによって形成された導電パターン61の各部における角度変化が滑らかであり、導電パターン61が途中で途切れてしまうことがない。
【0050】
仮に、本体部11の裏面3に不連続な部分や角度が急激に変化する部分があると、めっき被膜を形成する際に、そのような部分でめっき被膜が途切れてしまう可能性がある。さらに、そのような部分に形成されためっき被膜は、他の部材と接触したり擦れ合ったりすると、容易に切断されてしまう。また、レーザを照射してパターニングを行う際にも、不連続な部分や角度が急激に変化する部分があると、このような部分でパターンが途切れてしまう可能性がある。
【0051】
しかし、本実施の形態においては、本体部11の裏面3に不連続な部分や角度が急激に変化する部分がないので、レーザを照射してパターニングを行う際にパターンが途切れてしまうことがなく、かつ、めっき被膜を形成する際にめっき被膜が途切れてしまうこともない。さらに、形成されためっき被膜が、他の部材と接触したり擦れ合ったりしても、切断されることがない。したがって、途切れることのない連続した安定した導電パターン61を得ることができる。
【0052】
垂直壁面13aと側部21の裏面との接続部分は、全体的には角度が急激に変化する鋭角な形状を備える部分であるが、緩やかに湾曲した接続曲面13bが形成されているので、レーザを照射してパターニングを行う際にパターンが途切れてしまうことがなく、かつ、めっき被膜を形成する際にめっき被膜が途切れてしまうこともない。
【0053】
特に、レーザを照射してパターニングを行う際には、垂直壁面13aと側部21の裏面との接続部分は、鋭角であって、かつ、垂直壁面13aと側部21の裏面とによって挟まれた狭い箇所であるために、そのままであると、レーザが届きにくくなり、垂直壁面13a上のパターンと側部21の裏面上のパターンとが適切に接続されない可能性が高くなる。しかし、緩やかに湾曲した接続曲面13bが形成されているので、レーザが届きやすくなり、両方のパターンが適切に接続される。なお、中央部31の尾根部33の裏面も、接続曲面13bと同様に、緩やかに湾曲しているので、レーザが届きやすく、両側の斜面部32の裏面上のパターンが適切に接続される。
【0054】
また、垂直壁面13aの先端には面取部13cが形成されているので、コネクタ1を相手方コネクタ101と嵌合させる際に、脚部13の先端部分を相手方コネクタ101の挿入開口122にスムーズに挿入することが可能となる。さらに、導電パターン61の第3部64が対応する相手方端子161の接触部164と接触する際に、最初に、相手方端子161の接触部164と接触する第3部64の終端近傍は、傾斜平面である面取部13c上に形成されているので、切断されにくくなっている。そのため、第3部64全体も、相手方端子161の接触部164と接触する際に切断されることがない。なお、前記面取部13cは、傾斜平面でなく、徐々に傾斜が変化する曲面であってもよい。
【0055】
さらに、前記脚部13の表面には、カンチレバー状のロック用腕部15が一体的に形成されている。該ロック用腕部15は、図11に示されるように、その下端が脚部13の表面に接続され、上端が自由端であって、オペレータが手指等によって操作する操作部となっている。なお、ロック用腕部15の途中には、ロック用突起16が形成されている。
【0056】
また、脚部13の幅方向両端には、端壁部14が接続されている。本体部11の長手方向に関し、端壁部14の寸法は脚部13の寸法よりも大きい。そのため、端壁部14が接続されることによって、脚部13全体における本体部11の長手方向の断面二次係数が増大し、脚部13全体の剛性が向上する。換言すると、脚部13は、上下方向に延在する板部材から成るので、そのままでは剛性が不足気味であるが、幅方向両端に板厚方向の寸法が脚部13より大きな端壁部14を接続することによって、十分な剛性を備える。
【0057】
次に、前記コネクタ1の両端を第1基板91A及び第2基板91Bに実装された相手方コネクタ101に接続する動作について説明する。
【0058】
まず、オペレータは、手指等によって、コネクタ1の本体部11を把持し、第1基板91A及び第2基板91Bの上方からコネクタ1を下方に移動させ、本体部11の両端の脚部13を第1基板91A及び第2基板91Bに実装された相手方コネクタ101に嵌合させる。この場合、脚部13の先端部分が挿入開口122に挿入され、ロック用腕部15が膨出部115に収容される。また、脚部13の裏面に形成された導電パターン61の第3部64が、相手方コネクタ101の第1側壁112に装着された対応する相手方端子161の接触部164と接触して電気的に接続される。
【0059】
なお、各相手方コネクタ101が所定の位置において所定の向きになるように、第1基板91A及び第2基板91Bをあらかじめ配置しておけば、橋渡し部12は、全体として上下方向に剛性が高くて変形しにくいので、橋渡し部12を手指等によって把持して移動させることにより、両端の脚部13を、一度の動作で同時に両方の相手方コネクタ101に嵌合させることができる。
【0060】
そして、該相手方コネクタ101の膨出部115の壁面に形成されたロック用開口116にロック用腕部15のロック用突起16が係合することによって、脚部13は相手方コネクタ101と嵌合してロックされる。これにより、コネクタ1の両端を第1基板91A及び第2基板91Bに実装された相手方コネクタ101に接続する動作が完了し、第1基板91Aと第2基板91Bとが、コネクタ1を介して、相互に接続された状態となる。
【0061】
このように、本実施の形態において、コネクタ1は、相手方コネクタ101と各々嵌合する複数の脚部13を備え、絶縁性材料によって一体成形された本体部11と、該本体部11の面上に形成された導電パターン61とを有し、本体部11は、フローティング機能を発揮して脚部13の変位を吸収する中央部31及び側部21を備え、導電パターン61が相手方コネクタ101の相手方端子161と接触し、複数の相手方コネクタ101を接続するようになっている。これにより、部品点数が少なく、簡素な構成でありながら、相手方コネクタ101同士の位置ずれを吸収することができる。また、脚部13を相手方コネクタ101に嵌合させる作業を容易に行うことができる。さらに、所望の導電パターン61を容易に形成することができ、製造が容易で、コストを低減することができる。
【0062】
また、本体部11は、複数の脚部13のうち一対を縦方向の変位を吸収するフローティング機能を発揮する中央部31と、横方向の変位を吸収するフローティング機能を発揮する側部21とを含む橋渡し部12を備え、脚部13は、橋渡し部12における導電パターン61の延在する方向の両端において橋渡し部12に接続され、かつ、縦方向に延出する。このように、橋渡し部12は、縦方向の変位を吸収するフローティング機能を発揮する中央部31と、横方向の変位を吸収するフローティング機能を発揮する側部21とが別々に形成されているので、柔軟性を維持しつつ、ある程度の剛性を備える。そのため、両端に接続された脚部13を一括して相手方コネクタ101に嵌合させることができる。
【0063】
さらに、中央部31は、橋渡し部12における導電パターン61の延在する方向に屈曲した薄板から成る。これにより、中央部31は、前記縦方向に加え、脚部13間の距離の伸縮、及び、脚部13同士の捩れも吸収することができる。
【0064】
さらに、側部21は、導電パターン保持部23に第2スリット26によって分離された複数の櫛歯部25を備え、該櫛歯部25の各々の裏面には導電パターン61の各々が形成されている。これにより、櫛歯部25同士が接触せず、隣接する導電パターン61同士が接触することによる短絡が発生することなく、脚部13同士の横方向への変位を吸収することができる。
【0065】
さらに、側部21は、導電パターン保持部23と、該導電パターン保持部23の両側に第1スリット24を挟んで配設された側壁部22とを備える。これにより、側部21は、その剛性を保ちながら脚部13同士の横方向への変位を吸収することができる。
【0066】
さらに、導電パターン61は、中央部31の裏面に形成された第1部62、側部21の裏面に形成され、第1部62に接続された第2部63、及び、脚部13の裏面に形成され、第2部63に接続された第3部64を含む。このように、本体部11の裏面3に導電パターン61が形成されるので、多数の導電パターン61を高密度で配線することができ、極数の多い相手方コネクタ101同士を接続することができる。
【0067】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の実施の形態における中継コネクタを相手方コネクタに嵌合した状態を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態における中継コネクタを相手方コネクタに嵌合した状態を示す上面図である。
【図3】本発明の実施の形態における中継コネクタを相手方コネクタに嵌合した状態を示す正面図である。
【図4】本発明の実施の形態における中継コネクタを取外した状態の相手方コネクタを示す斜視図である。
【図5】本発明の実施の形態における中継コネクタの上方から観た斜視図である。
【図6】本発明の実施の形態における中継コネクタの下方から観た斜視図である。
【図7】本発明の実施の形態における中継コネクタの上面図である。
【図8】本発明の実施の形態における中継コネクタの下面図である。
【図9】本発明の実施の形態における中継コネクタの側面図である。
【図10】本発明の実施の形態における中継コネクタの正面図である。
【図11】本発明の実施の形態における中継コネクタの断面図であり図7におけるZ−Z矢視断面図である。
【図12】従来の基板対基板コネクタの側面図である。
【符号の説明】
【0069】
1 コネクタ
2 表面
3 裏面
11 本体部
12 橋渡し部
13 脚部
13a 垂直壁面
13b 接続曲面
13c 面取部
14 端壁部
15 ロック用腕部
16 ロック用突起
21 側部
22 側壁部
23 導電パターン保持部
24 第1スリット
25 櫛歯部
26 第2スリット
31 中央部
32 斜面部
33 尾根部
34 麓部
61 導電パターン
62 第1部
63 第2部
64 第3部
91A 第1基板
91B 第2基板
101 相手方コネクタ
111、811、911、912 ハウジング
112 第1側壁
113 第2側壁
114 端壁
115 膨出部
116 ロック用開口
122 挿入開口
161 相手方端子
163 テール部
164、962 接触部
181 ネイル
801 連結コネクタ
813 受溝
861 ジャンパーリード
901 第1コネクタ
902 第2コネクタ
915 回動軸ピン
961 ソルダーテール
991A 第1回路基板
991B 第2回路基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)相手方コネクタ(101)と各々嵌合する複数の嵌合部(13)を備え、絶縁性材料によって一体成形された本体部(11)と、
(b)該本体部(11)の面上に形成された導電パターン(61)とを有し、
(c)前記本体部(11)は、前記嵌合部(13)の変位を吸収するフローティング機構部(21、31)を備え、
(d)前記導電パターン(61)が前記相手方コネクタ(101)の相手方端子(161)と接触し、複数の相手方コネクタ(101)を接続することを特徴とする中継コネクタ(1)。
【請求項2】
前記本体部(11)は、前記嵌合部(13)の縦方向の変位を吸収する第1フローティング機構部(31)と、横方向の変位を吸収する第2フローティング機構部(21)とを含む橋渡し部(12)を備え、
前記嵌合部(13)は、前記橋渡し部(12)における導電パターン(61)の延在する方向の両端において前記橋渡し部(12)に接続され、かつ、前記縦方向に延出する請求項1に記載の中継コネクタ(1)。
【請求項3】
前記第1フローティング機構部(31)は、前記橋渡し部(12)における導電パターン(61)の延在する方向に屈曲した薄板から成る請求項2に記載の中継コネクタ(1)。
【請求項4】
前記第2フローティング機構部(21)は、前記橋渡し部(12)における導電パターン(61)の延在する方向に延在する導電パターン保持部(23)を備え、該導電パターン保持部(23)は、前記橋渡し部(12)における導電パターン(61)の延在する方向に延在する第2スリット(26)によって分離された複数の櫛歯部(25)を備え、該櫛歯部(25)の各々の裏面には導電パターン(61)の各々が形成される請求項2に記載の中継コネクタ(1)。
【請求項5】
前記第2フローティング機構部(21)は、前記導電パターン保持部(23)の両側に第1スリット(24)を挟んで配設された側壁部(22)を備える請求項4に記載の中継コネクタ(1)。
【請求項6】
前記導電パターン(61)は、前記第1フローティング機構部(31)の裏面に形成された第1部(62)、前記第2フローティング機構部(21)の裏面に形成され、前記第1部(62)に接続された第2部(63)、及び、前記嵌合部(13)の裏面に形成され、前記第2部(63)に接続された第3部(64)を含む請求項2に記載の中継コネクタ(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−117100(P2009−117100A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−287083(P2007−287083)
【出願日】平成19年11月5日(2007.11.5)
【出願人】(591043064)モレックス インコーポレイテド (441)
【氏名又は名称原語表記】MOLEX INCORPORATED
【Fターム(参考)】