説明

中継伝送システム

【課題】 中継伝送システムにおいて、システムとして信頼性を改善することを目的としている。
【解決手段】 送信局と複数の中継器と受信局とが伝送経路を介して接続され、前記送信局から送出された信号を前記各中継器で中継して前記受信局まで伝送する中継伝送システムであって、前記各中継器は、自中継器に入力した信号を受信して再生する受信部と、自中継器から出力する信号を送信する送信部と、前記受信部で再生された信号を出力するための前記送信部を選択する経路選択部と、自中継器に入力した信号を通過させて自中継器から出力する通過経路と、を備え、前記各中継器の前記通過経路は、隣接する前記中継器の前記送信部または前記受信部に前記伝送経路を介して接続された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、中継器を用いて中継伝送を行う中継伝送システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
大容量な伝送システムの中継局を監視・制御するための監視・制御信号の伝送や、複数地点の気象観測・地震観測などのデータを収集・伝送を行う場合などには、数百Mb/s以下といった比較的低速な信号を各中継器で挿抜する必要がある。このような中継伝送システムとして、信号を一旦再生して中継する再生中継器を用いるものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
この従来の中継伝送システムは、光制御信号を出力する制御信号発生回路と、光計測信号を受信処理する信号受信回路とを有する陸上端局装置と;光制御信号を電気制御信号に変換する光/電気変換回路と、電気制御信号と電気計測信号を光信号に変換する電気/光変換回路と、光計測信号を装置内通過させる光ファイバケーブルとを有する海底観測装置と;各装置間を結ぶ光海底ケーブルを備えるものである。
【0004】
【特許文献1】特開平7−202804号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された中継伝送システムは、再生中継器としての海底観測装置を多段接続しているので、1箇所で中継器が故障した場合にも、故障した中継器で中継されるべき他の中継器からの信号の伝送が不能となり、システム全体の通信機能に影響がある。このため、システム全体として所望の信頼性を達成するためには、中継器の構成部品を高信頼化する必要があり、部品の実現性やコストの面で課題があるという問題点があった。
【0006】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、中継伝送システムにおいて、中継器の構成部品を高信頼化する必要がなく、システムとして信頼性を改善することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る中継伝送システムは、送信局と複数の中継器と受信局とが伝送経路を介して接続され、前記送信局から送出された信号を前記各中継器で中継して前記受信局まで伝送する中継伝送システムであって、前記各中継器は、自中継器に入力した信号を受信して再生する受信部と、自中継器から出力する信号を送信する送信部と、前記受信部で再生された信号を出力するための前記送信部を選択する経路選択部と、自中継器に入力した信号を通過させて自中継器から出力する通過経路と、を備え、前記各中継器の前記通過経路は、隣接する前記中継器の前記送信部または前記受信部に前記伝送経路を介して接続されたものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明は、中継伝送システムにおいて、システムとして信頼性を改善することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
実施の形態1.
この発明の実施の形態1による中継伝送システムは、受信部と送信部と経路選択部とからなる二重化した再生中継経路を各中継器に備えるとともに、この再生中継経路のバイパスとするための通過経路を各中継器に備え、隣接する中継器間で通過経路と再生中継経路の1つとを接続するようにしたので、システムとして信頼性を改善することができるものである。
【0010】
図1は、この発明の実施の形態1による中継伝送システムを示す構成図である。
図1において、1は中継器、2は信号の通過入力端、3は信号の通過出力端、4a、4bは信号の受信端、5a、5bは信号の送信端、6a、6bは受信器、7a、7bは送信器、8は経路選択部、9は信号処理部、10はモニタ対象の装置、11は通過入力端2と通過出力端3を有する通過経路、12a、12b、12cは伝送経路である。なお、受信端4a、4bと受信器6a、6bとで受信部を構成し、送信端5a、5bと送信器7a、7bとで送信部を構成する。
【0011】
ここで、経路選択部8は、半固定式に経路を切り替えるようなスイッチや、あるいは時分割多重された信号ごとに適切な経路を選択するような高速なスイッチであり、LAN(Local Area Network)で用いられるような汎用的なスイッチを使用することが可能である。モニタ対象10は、例えば、監視・制御対象となる装置や、あるいは気象観測・地震観測などを行う観測装置である。通過経路11は1本の光ファイバである。伝送経路12a、12b、12cは、並走する伝送路であり、同一ケーブル内に束ねられた3本の光ファイバを使用している。ただし、これに限定されるものではなく、例えば3本の光ファイバケーブルを使用するようにしても良いし、また、1本の光ファイバの中に多重された波長の異なる3つの信号光を、3つの独立した伝送経路(いわゆる光パス)として使用することもできる。
【0012】
また、図1において、100は送信局、101a、101b、101cは信号の送信端、102a、102b、102cは送信器、103は受信局、104a、104b、104cは信号の受信端、105a、105b、105cは受信器である。なお、送信局100、受信局103は、本伝送システムの両端に配置される端局装置である。
【0013】
なお、図1全体として、再生中継伝送システムを構成している。ただし、図1では中継器として中継器1、1’、1’’の3台のみを示しており、中継器1’’と受信局103の間に縦続接続される多数の中継器や伝送経路は図示を省略している。なお、中継器1’、1’’の構成は、中継器1と同様であるため、説明を省略する。
【0014】
また、図1において、送信端101a、101b、101cは通過入力端2、受信端4a、4bに伝送経路12a、12b、12cを介して接続され、送信端5a、5b、通過出力端3は通過入力端2’、受信端4a’、4b’に伝送経路12b’、12c’、12a’を介して接続され、以下同様に受信端104a、104b、104cにまで接続されている。
【0015】
次に動作について説明する。
中継器1において、受信端4a、4bから入力した信号は、受信器6a、6bによって光信号から電気信号に変換され、再生される。なお、いわゆる再生中継方式においては、信号は繰返しパルスの連続であり、繰返しパルスを中継するにあたっては、パルスの時間的位置とパルスの有無だけを正しく再生するようにすれば良い。モニタ対象10からの信号は、監視結果や観測結果の情報などを含む信号であり、信号処理部9に入力されて、送信するのに適したデータ形式に変換される。受信器6a、6b、信号処理部9からの信号は経路選択部8に入力されて、信号を出力する経路として、送信器7a、7b、信号処理部9のいずれかが選択される。なお、経路選択部8を経て信号処理部9に入力される信号は、受信器6a、6bからの信号で、モニタ対象10の制御などのための信号であり、信号処理部9でデータ形式が逆変換されてモニタ対象10に送られる。
【0016】
送信器7a、7bでは、電気信号が光信号に変換されて、送信端5a、5bを経て送信される。また、通過入力端2に入力した信号は、受信器で再生されること無く光信号のまま、通過経路11を通り、通過出力端3へ送られる。そして、通過出力端3、送信端5a、5bから出力された信号は、伝送経路12a’、12b’、12c’を経て、次の中継器1’へ送られる。なお、中継器1’、1’’の動作は、中継器1と同様であるため、説明を省略する。
【0017】
次に二重化による高信頼化について説明する。
中継器1では、伝送経路12b、受信端4aを経て受信器6aで受信する経路と、伝送経路12c、受信端4bを経て受信器6bで受信する経路との2つの経路をもち、どちらか1つの経路に障害が発生して正常に受信できなくなった場合でも、残る1つの経路で信号を受信することができる。同様に、送信器7aで、送信端5a、伝送経路12b’を経て送信する経路と、送信器7bで、送信端5b、伝送経路12c’を経て送信する経路との2つの経路で送信することができ、どちらか1つの経路が正常であれば送信を行うことができる。また、経路選択部8は、その役割上二重化が困難であり、経路選択部8に障害が発生した場合には、中継器1は受信、送信ともに不能な状態に陥るが、通過経路11を経由して送信局100と中継器1’の通信を継続することができる。これによって、中継器1以外の通信を継続することができる。
【0018】
同様に、経路選択部8’で障害が発生して、中継器1’での信号の受信、送信が不能となった場合には、中継器1からの送信信号のうち、送信端5aからの出力が、伝送経路12b’から中継器1’の通過経路11’’を経由して、中継器1’’の受信端4b’’に至る経路を用いて通信を維持することが可能である。このように、中継器の障害時には、通過経路11、11’、11’’を経由して障害中継器を通過することで、通信機能を維持することができるため、システム全体の通信機能を最大限維持することが可能である。具体的には、隣接する2台の中継器が通信不能とならない限り、システムとして通信を維持することができる。
【0019】
したがって、受信器6a、6b、6a’、6b’、6a’’、6b’’、送信器7a、7b、7a’、7b’、7a’’、7b’’のうちいくつかに故障が発生した場合や、経路選択部8、8’、8’’のいずれかが故障した場合にも、正常な経路を最大限利用して通信機能を維持することが可能である。
【0020】
図2は、システムの通信機能が維持できる場合の一例として、受信器6b、経路選択部8’、送信器7a’’が故障した場合を示している。これらの故障によって不通となる経路は矢印をつけた破線で示している。正常に通信可能な経路は、矢印をつけた実線で示している経路である。送信局100内の送信器102bから送信された信号を、伝送経路12b、受信器6a、経路選択部8、送信器7a、伝送経路12b’、通過経路11’、伝送経路12a’’、受信器6b’、経路選択部8’’、送信器7b’’、伝送経路12c’’’を経由することで受信局103に伝送することが可能である。仮に、このような冗長化を行わず、独立した3つの再生中継システムを並走させる場合を考えると、各システムは、それぞれ1箇所の故障で通信不能に陥る。これに対して、この発明による実施の形態1では、複数箇所の故障でも通信を維持できる場合が多く、飛躍的に信頼性を高める効果がある。特に、中継数が多い伝送システムにおいて、その効果が大きい。
【0021】
なお、この発明による実施の形態1のように、信号を各中継器で挿抜する必要のあるシステムにおける中継器では、冗長化の有無に関わらず、受信器で再生した信号の伝達先として、信号処理部か送信器を選択するための経路選択部が必要であり、冗長化のために新たに経路選択部を追加する必要はない。したがって、図1に示す構成は、受信器、送信器を二重化して通過経路11を設けるだけの比較的簡単な構成として実現できるのである。
【0022】
以上のように、この発明の実施の形態1による中継伝送システムにおいては、信号を受信して再生する受信器と送信器と経路選択部とを有する二重化した再生中継経路を各中継器に備えるとともに、この再生中継経路を迂回するための通過経路を各中継器に備え、隣接する中継器間で通過経路と再生中継経路の1つとを接続するようにしている。これにより、受信器、送信器、経路選択部などで障害が発生した場合にも、正常な経路を利用してシステムの通信機能が維持でき、システムとして信頼性を改善することができる。
【0023】
なお、上述の実施の形態1においては、受信器、送信器、伝送経路を二重化するシステムの構成例を挙げたが、更に冗長度を上げるようにしても良く、例えば三重化によって、隣接する2つの中継器における経路選択部の障害などにも耐えるシステム構成とすることも可能である。
【0024】
また、上述の実施の形態1において、図1に示す再生中継伝送システムの中に、再生中継を行わない線形中継器が一部の伝送経路に挿入されていても良く、その場合には、線形中継器は伝送経路12a、12b、12c、12a’、12b’、12c’、12a’’、12b’’、12c’’、12a’’’、12b’’’、12c’’’のうちの一部とみなされる。さらに、再生中継を行わない線形中継器を一部の中継器の通過経路に挿入するようにしても良い。これにより、再生中継器がバイパスされるために増加する伝送路損失を線形中継器で補償することができ、システムの通信機能がさらに良好に維持されるという効果を奏する。
【0025】
また、上述の実施の形態1においては、伝送経路が光ファイバである例を示しているが、これに限定されるものではなく、例えば同軸ケーブルなどの他の伝送経路であっても良く、同様の効果が得られる。なお、同軸ケーブルを用いる場合には、信号は電気信号として伝送し、送信器、受信器として電気信号を送信、受信するものを用いるように構成すれば良い。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】この発明の実施の形態1による中継伝送システムを示す構成図
【図2】この発明の実施の形態1による中継伝送システムを示す構成図
【符号の説明】
【0027】
1、1’、1’’ 中継器
2、2’、2’’ 通過入力端
3、3’、3’’ 通過出力端
4a、4b、4a’、4b’、4a’’、4b’’ 受信端
5a、5b、5a’、5b’、5a’’、5b’’ 送信端
6a、6b、6a’、6b’、6a’’、6b’’ 受信器
7a、7b、7a’、7b’、7a’’、7b’’ 送信器
8、8’、8’’ 経路選択部
11、11’、11’’ 通過経路
12a、12b、12c、12a’、12b’、12c’、12a’’、12b’’、12c’’、12a’’’、12b’’’、12c’’’ 伝送経路
100 送信局
103 受信局

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信局と複数の中継器と受信局とが伝送経路を介して接続され、前記送信局から送出された信号を前記各中継器で中継して前記受信局まで伝送する中継伝送システムであって、
前記各中継器は、自中継器に入力した信号を受信して再生する受信部と、自中継器から出力する信号を送信する送信部と、前記受信部で再生された信号を出力するための前記送信部を選択する経路選択部と、自中継器に入力した信号を通過させて自中継器から出力する通過経路と、を備え、
前記各中継器の前記通過経路は、隣接する前記中継器の前記送信部または前記受信部に前記伝送経路を介して接続されたことを特徴とする中継伝送システム。
【請求項2】
送信局と複数の中継器と受信局とが伝送経路を介して接続され、前記送信局から送出された信号を前記各中継器で中継して前記受信局まで伝送する中継伝送システムであって、
前記各中継器は、自中継器に入力した信号を受信して再生する2つの受信部と、自中継器から出力する信号を送信する2つの送信部と、前記受信部で再生された信号を出力するための前記送信部の1つを選択する経路選択部と、自中継器に入力した信号を通過させて自中継器から出力する1つの通過経路と、を備え、
前記各中継器の前記1つの通過経路は、隣接する前記中継器の前記2つの送信部の1つ、または前記2つの受信部の1つに前記伝送経路を介して接続されたことを特徴とする中継伝送システム。
【請求項3】
前記各中継器の前記経路選択部は、次段の前記中継器の前記経路選択部に障害が発生していない場合に、次段の前記中継器の前記受信部に接続された前記送信部を選択することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の中継伝送システム。
【請求項4】
前記各中継器の前記経路選択部は、次段の前記中継器の前記経路選択部に障害が発生した場合に、次段の前記中継器の前記通過経路に接続された前記送信部を選択することを特徴とする請求項3に記載の中継伝送システム。
【請求項5】
前記各中継器の前記経路選択部は、次段の前記中継器の前記受信部に障害が発生した場合に、次段の前記中継器の前記受信部のうち、障害が発生していない他の前記受信部に接続された前記送信部を選択することを特徴とする請求項3に記載の中継伝送システム。
【請求項6】
前記各中継器の前記経路選択部は、自中継器の前記送信部に障害が発生した場合に、障害が発生していない他の前記送信部を選択することを特徴とする請求項3に記載の中継伝送システム。
【請求項7】
前記伝送経路は、光ファイバで構成されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の中継伝送システム。
【請求項8】
前記伝送経路は、光ファイバ内の波長分割多重伝送による複数の光パスで構成されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の中継伝送システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−74254(P2007−74254A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−258069(P2005−258069)
【出願日】平成17年9月6日(2005.9.6)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】