説明

中継局および無線通信中継方法

【課題】 基地局と中継局の無線通信のチャネルと、中継局と無線通信端末の無線通信のチャネルの干渉を、より確実に回避することを目的とする。
【解決手段】 本発明の代表的な構成は、無線通信端末110と基地局120との無線通信を中継可能な中継局130であって、無線通信に利用可能な全周波数帯域を分割した複数の分割周波数帯域のうち、無線通信を実行する基地局によって定まる1の分割周波数帯域に含まれるチャネルを用いて基地局と無線通信を実行する端末通信部350と、基地局との無線通信で利用されている分割周波数帯域と異なる分割周波数帯域を選択する周波数選択部370と、周波数選択部が選択した分割周波数帯域に含まれるチャネルを用いて、無線通信端末と通信を行う基地局通信部354と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信端末と基地局との無線通信を中継可能な中継局および無線通信中継方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やPHS(Personal Handy phone System)端末等に代表される無線通信端末が普及し、場所や時間を問わず通話や情報入手が可能となった。特に昨今では、入手可能な情報量も増加の一途を辿り、大容量のデータをダウンロードするため高速かつ高品質な無線通信方式が取り入れられるようになってきた。
【0003】
このような高速デジタル無線通信方式の一つとして、IEEE802.11やWiMAX(例えば、非特許文献1)に代表されるOFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiplex Access:直交周波数分割多元接続)方式が挙げられる。OFDMA方式は、データの多重化方式の一つに分類され、単位時間軸上で多数の搬送波を利用し、変調対象となる信号波の位相が隣り合う搬送波間で直交するように搬送波の帯域を一部重ね合わせて周波数帯域を有効利用する方式である。また、OFDMA方式は、個別のユーザ毎に時分割でサブチャネルを割り当てているOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing:直交周波数分割多重)方式に対して、複数のユーザが全サブチャネルを共有し、各ユーザにとって最も伝送効率のよいサブチャネルを割り当てることを特徴としている。
【0004】
上述したWiMAX等次世代の高速無線通信方式において2.5GHz帯またはそれ以上の高周波数帯を使用する場合、障害物が多い等、電波状態が悪い領域では基地局1つに対する通信可能範囲(カバレージ)が小さくなり、周囲をすべて賄うには多数の基地局を配設しなければならない。また、電波の回り込みも抑制されるため、屋内においては圏外となる可能性が高くなる。そこで、基地局装置と無線通信端末とを中継する中継局を設置することで、ビル等の障害物による遮蔽から生じるシャドウイングの影響等により、サービスエリア内にも拘わらず基地局と通信を行うことができない範囲を減少させることが可能な技術が開示されている。
【0005】
また、中継局は、ビルや塔に固定設置したものに限らず、バスや電車等、人が乗降可能な移動体に搭載することもできる。移動体に搭載された中継局は、無線通信端末と通信を行う通信部が無線通信端末との相対的な位置関係を維持することが可能であり、移動体の筐体外に設置された基地局と通信を行う通信部が弊害のない通信が可能なので、無線通信端末の安定した通信を確保できる。
【0006】
かかる移動体に搭載された中継局について、移動体の位置を計測する計測器を備え、通信対象としての基地局を変更するハンドオーバを実行する位置を予め記憶させておく技術が公開されている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2000−229571号公報
【非特許文献1】「Mobile WiMAX ? Part I:A Technical Overview and Performance Evaluation」Prepared on Behalf of the WiMAX Forum, February 21, 2006, http://www.intel.com/netcomms/technologies/wimax/WiMAX_Overview_v2.pdf
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、移動体に搭載された中継局が、通信している基地局の通信圏外に近づき、隣接する他の基地局にハンドオーバするとき、他の基地局との新たな無線通信に利用する周波数が、中継局と移動体内の無線通信端末が無線通信に利用している周波数と等しい場合、その周波数のチャネルは干渉を起こしてしまう。そこで、中継局は基地局との無線通信に利用している周波数とは異なる周波数に、無線通信端末との無線通信に利用している周波数を変更する。
【0008】
しかし、中継局は、基地局との通信に利用する周波数と異なる周波数で、さらに当該中継局が搭載された移動体内の複数の無線通信端末間で重複しない周波数を選択し、無線通信端末との無線通信に利用しているため、通信環境によっては、互いの周波数が極端に近くなり、相互に干渉を起こしてしまうこととなる。
【0009】
本発明は、このような問題に鑑み、基地局と中継局の無線通信のチャネルと、中継局と無線通信端末の無線通信のチャネルの干渉を、より確実に回避することが可能な、中継局および無線通信中継方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の代表的な構成は、無線通信端末と基地局との無線通信を中継可能な中継局であって、無線通信に利用可能な全周波数帯域を分割した複数の分割周波数帯域のうち、無線通信を実行する基地局によって定まる1の分割周波数帯域に含まれるチャネルを用いて基地局と無線通信を実行する端末通信部と、基地局との無線通信で利用されている分割周波数帯域と異なる分割周波数帯域を選択する周波数選択部と、周波数選択部が選択した分割周波数帯域中に含まれるチャネルを用いて、無線通信端末と通信を行う基地局通信部と、を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明では、全周波数帯域を複数の分割周波数帯域に分割し、基地局と中継局の無線通信で利用するチャネルを含む分割周波数帯域と、中継局と当該中継局が搭載されている移動体内の無線通信端末との無線通信で利用するチャネルの選択対象である分割周波数帯域を、それぞれ異ならせる。かかる構成により、基地局と中継局の無線通信で利用するチャネルと、中継局と無線通信端末との無線通信で利用するチャネルとをより確実に引き離すことができ、相互の干渉回避を図ることが可能となる。
【0012】
中継局は、基地局との無線通信で利用された分割周波数帯域を記憶する履歴記憶部をさらに備え、周波数選択部は、履歴記憶部に記憶されている分割周波数帯域と異なる分割周波数帯域を優先して選択してもよい。
【0013】
かかる構成により、中継局を搭載した移動体が基地局との通信可能範囲を跨って移動する場合、中継局は、一度利用された分割周波数帯域を避けて、無線通信端末との無線通信に利用する分割周波数帯域を選択できる。こうして、以前に通った基地局の通信可能範囲を再度通る場合、基地局と中継局の無線通信に利用する分割周波数帯域と、中継局と無線通信端末の無線通信で利用する分割周波数帯域が重複せず、中継局と無線通信端末の無線通信で利用するチャネルを、変更する必要が無くなるため、処理負荷や電力の消費を削減できる。
【0014】
履歴記憶部は、基地局との無線通信で利用された分割周波数帯域を時系列に記憶し、周波数選択部は、履歴記憶部に記憶されている分割周波数帯域と異なる分割周波数帯域が無い場合、記憶されている分割周波数帯域のうち最古の分割周波数帯域を選択してもよい。
【0015】
中継局を搭載した移動体が、基地局を跨った所定の地域を周期的に移動し、移動中に基地局と中継局との無線通信で全ての分割周波数帯域を利用してしまった場合、利用された履歴のある分割周波数帯域から選択しなければならなくなる。このとき、分割周波数帯域の選び方によっては、中継局と無線通信端末の無線通信のチャネルを頻繁に変更しなければならなくなってしまう。本発明では、記憶されている分割周波数帯域のうち最古の分割周波数帯域を選択する構成により、例えば、移動体が電車で往復路線であった場合、チャネルの変更の回数を最も減らすことができ、処理負荷および電力消費を削減できる。
【0016】
履歴記憶部は、基地局との無線通信で利用された分割周波数帯域を時系列に記憶し、周波数選択部は、履歴記憶部に記憶されている分割周波数帯域と異なる分割周波数帯域が無い場合、記憶されている分割周波数帯域のうち最新の分割周波数帯域を選択する。
【0017】
中継局を搭載した移動体が、基地局を跨った所定の地域を周期的に移動し、移動中に基地局と中継局との無線通信で全ての分割周波数帯域を利用してしまった場合、利用された履歴のある分割周波数帯域から選択しなければならなくなる。このとき、分割周波数帯域の選び方によっては、中継局と無線通信端末の無線通信のチャネルを頻繁に変更しなければならなくなってしまう。本発明では、記憶されている分割周波数帯域のうち最新の分割周波数帯域を選択する構成により、例えば、移動体が電車で環状路線であった場合、チャネルの変更の回数を最も減らすことができ、処理負荷および電力消費を削減できる。
【0018】
本発明の代表的な他の構成は、無線通信端末と基地局との無線通信を中継可能な中継局を用いて無線通信を実行する無線通信中継方法であって、無線通信に利用可能な全周波数帯域を分割した複数の分割周波数帯域のうち、無線通信を実行する基地局によって定まる1の分割周波数帯域に含まれるチャネルを用いて基地局と無線通信を実行し、基地局との無線通信で利用されている分割周波数帯域と異なる分割周波数帯域を選択し、選択した分割周波数帯域に含まれるチャネルを用いて、無線通信端末と通信を行うことを特徴とする。
【0019】
上述した中継局の技術的思想に基づく構成要素やその説明は、当該無線通信中継方法にも適用可能である。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように本発明によれば、基地局と中継局の無線通信のチャネルと、中継局と無線通信端末の無線通信のチャネルの干渉を、より確実に回避することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0022】
携帯電話やPHS端末等に代表される無線通信端末は、複数配された基地局と広域の無線通信システムを構築し、この無線通信システムを通じて他の無線通信端末や通信網上のサーバと通信を遂行する。さらに、WiMAX等次世代の高速無線通信方式においては、通信可能範囲(カバレージ)の縮小化を回避するため、電波状態が悪い、ビルが密集しているところや、電波状態が著しく変化する移動体に、基地局として機能する中継局を設け無線通信システムの一部を担わせることができる。本実施形態では、特に、移動体に中継局を搭載する場合を説明する。
【0023】
ここでは、本実施形態の理解を容易にするため、まず中継局を含む無線通信システム全体の概略的な構成を説明し、その後で無線通信システムを構成する各装置の具体的な動作を説明する。
【0024】
(無線通信システム100)
図1は、無線通信システム100の概略的な構成を示したブロック図である。当該無線通信システム100は、無線通信端末110(110A、110B)と、基地局120(120A、120B)と、中継局130と、ISDN(Integrated Services Digital Network)回線、インターネット、専用回線等で構成される通信網140と、中継サーバ150と、移動体160とを含んで構成される。
【0025】
ここでは、無線通信端末110として、携帯電話、PHS端末ノート型パーソナルコンピュータ、PDA(Personal Digital Assistant)、デジタルカメラ、音楽プレイヤー、カーナビゲーション、ポータブルテレビ、ゲーム機器、DVDプレイヤー、リモートコントローラ等無線通信可能な様々な電子機器を用いることもできる。
【0026】
上述した無線通信システム100において、ユーザが自身の無線通信端末110Aから他の無線通信端末110Bへの通信を実行する場合、無線通信端末110Aは、通信可能範囲内にある基地局120Aに無線接続要求を行う。無線接続要求を受信した基地局120Aは、通信網140を介して中継サーバ150に通信相手との通信接続を要求し、中継サーバ150は、他の無線通信端末110Bの位置登録情報を参照し、他の無線通信端末110Bの無線通信範囲内にある基地局120Bを抽出して基地局120Aと基地局120Bとの通信経路を確保し、無線通信端末110Aと無線通信端末110Bの通信を実行(確立)する。
【0027】
ここで、ユーザが移動体160としての例えば電車に乗った場合、無線通信端末110Aは、基地局120Aと直接ではなく、中継局130を介した通信に切り換わる。かかる中継局130は、移動体160に固定され、かつ移動体160と共に移動し、カバレージを移動体内まで広げる役割を担う。本実施形態ではかかる移動体160を電車としているが、自動車、バス、電車(列車)、船舶、航空機等、人が乗降可能な様々な乗り物であってもよい。
【0028】
移動体内に乗ってきたユーザが有する無線通信端末110Aと中継局130とは、空き座席を探す等の動作が生じない限り互いの位置関係が変化することなく共に移動し、また両者の間を遮蔽する障壁も無いため、安定した無線通信を確保することが可能となる。従って、無線通信端末110Aは、移動体160の移動に拘わらず、中継局130を介して他の無線通信端末110Bとの通信を安定して維持することができる。
【0029】
以下、無線通信システム100を構成する無線通信端末110、基地局120、中継局130について個々に説明する。
【0030】
(無線通信端末110)
図2は、無線通信端末110のハードウェア構成を示した機能ブロック図であり、図3は、無線通信端末110の外観を示した斜視図である。無線通信端末110は、端末制御部210と、端末メモリ212と、表示部214と、操作部216と、音声入力部218と、音声出力部220と、端末無線通信部222とを含んで構成される。
【0031】
端末制御部210は、中央処理装置(CPU)を含む半導体集積回路により無線通信端末110全体を管理および制御する。端末制御部210は、端末メモリ212のプログラムを用いて、通話機能、メール送受信機能、撮像機能、音楽再生機能、TV視聴機能も遂行する。端末メモリ212は、ROM、RAM、EEPROM、不揮発性RAM、フラッシュメモリ、HDD等で構成され、端末制御部210で処理されるプログラムや音声データ等を記憶する。
【0032】
表示部214は、液晶ディスプレイ、EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等で構成され、端末メモリ212に記憶された、または通信網140を介してアプリケーション中継サーバ(図示せず)から提供される、WebコンテンツやアプリケーションのGUI(Graphical User Interface)を表示することができる。操作部216は、キーボード、十字キー、ジョイスティック等のスイッチから構成され、ユーザの操作入力を受け付ける。
【0033】
音声入力部218は、マイク等の音声変換手段で構成され、通話時等に入力されたユーザの音声を無線通信端末110内で処理可能な電気信号に変換する。音声出力部220は、スピーカで構成され、無線通信端末110で受信した通話相手の音声信号を音声に変えて出力する。また、音声出力部220は、着信音や、操作部216の操作音、アラーム音等も出力できる。端末無線通信部222は、通信網140における基地局120または中継局130との無線通信を実行する。端末無線通信部222には、WiMAX、ARIB(Association of Radio Industries and Businesses) STD T95、PHS MoU(Memorandum of Understanding)等OFDMA方式の他、OFDM方式、TDMA(時分割多重接続:Time Division Multiple Access)方式等様々な無線通信方式を適用することができる。
【0034】
(基地局120)
図4は、基地局120の概略的な構成を示したブロック図である。基地局120は、基地局制御部250と、基地局メモリ252と、基地局無線通信部254と、基地局有線通信部256とを含んで構成される。
【0035】
基地局制御部250は、中央処理装置(CPU)を含む半導体集積回路により基地局120全体を管理および制御する。基地局メモリ252は、ROM、RAM、EEPROM、不揮発性RAM、フラッシュメモリ、HDD等で構成され、基地局制御部250で処理されるプログラム等を記憶する。
【0036】
基地局無線通信部254は、無線通信端末110または中継局130と、例えばOFDMA方式等による無線通信を実行し、無線通信端末110または中継局130との通信状態に応じて、QoS(Quality Of Service)である例えば変調方式を適応的に変更することもできる(適応変調)。基地局有線通信部256は、通信網140を介して中継サーバ150を含む様々なサーバと通信を実行することができる。
【0037】
(中継局130)
図5は、中継局130の概略的な構成を示したブロック図である。中継局130は、中継局無線通信部310と、中継局制御部312と、中継局メモリ314とを含んで構成される。かかる中継局130は、移動体160内に搭載(設置)されている。
【0038】
中継局無線通信部310は、無線通信端末110および基地局120のいずれとも無線通信を実行し、無線通信端末110と基地局120とを中継する。また、中継局無線通信部310は、端末通信部350と、接続制御部352と、基地局通信部354として機能する。
【0039】
端末通信部350は、移動体160の筐体外側に設置され、基地局120に対する通信に関して無線通信端末110として機能し、OSI参照モデルにおける物理層(レイヤ1)およびデータリンク層(レイヤ2)を担う。本実施形態では、OFDMA方式に基づいて端末通信部350を1つのみ設ける構成を説明しているが、かかる場合に限らず、OFDMA方式において、また、他の通信方式において端末通信部350を複数設けることも可能である。このように端末通信部350を複数設けた場合、それぞれを異なる基地局120に独立して通信を実行させることができる。
【0040】
さらに、端末通信部350は、無線通信に利用可能な全周波数帯域を分割した複数の分割周波数帯域のうち、無線通信を実行する対象の基地局120によって定まる1の分割周波数帯域に含まれる複数のチャネルのうちの例えば1のチャネルを用いて基地局120と無線通信を実行する。
【0041】
本実施形態において、無線通信に利用可能な全周波数帯域とは、電波法で定められた任意の周波数を中心とした例えば30MHzの幅を有する帯域であり、全周波数帯域を、例えば6分割した5MHz毎の帯域を分割周波数帯域と称する。このような分割周波数帯域は、複数の基地局120同士が干渉を引き起こさないように隣り合う基地局120にそれぞれ異なる分割周波数帯域を割り当て、互いの基地局120のチャネルが重複しないようにしている。
【0042】
接続制御部352は、後述する基地局通信部354に無線通信端末110が複数接続された場合、そのチャネル制御を行い(MACトレーサ機能)、また、本実施形態のようにOFDMA方式が採用されている場合、通信データの最小送信単位であるサブチャネルを時間および周波数方向に配列したチャネルマップへの通信データの割当を行う。また、接続制御部352は、基地局通信部354と無線通信を実行している無線通信端末110との通信状態に応じて、QoSを適応的に変更することもできる。
【0043】
基地局通信部354は、移動体160の筐体内側に設置され、筐体内に存在する無線通信端末110に対する通信に関して基地局120として機能し、OSI参照モデルにおける物理層およびデータリンク層を担う。基地局通信部354は、図5に示すように、本実施形態において中継局1つに対して1つだけ設けられている。また、船舶、航空機等のある程度広い空間に適用される場合、複数で構成することもできる。かかる基地局通信部354により、無線通信端末110は、基地局120とではなく中継局130と無線通信を実行したとしても、あたかも基地局120と無線通信を実行しているかの如く動作する。
【0044】
さらに、基地局通信部354は、複数の分割周波数帯域のうち1の分割周波数帯域に含まれる複数のチャネルのうちの例えば1のチャネルを用いて無線通信端末110と無線通信を実行する。
【0045】
中継局制御部312は、中央処理装置(CPU)を含む半導体集積回路により中継局130全体を管理および制御する。また、中継局制御部312は、周波数選択部370を含んで構成される。
【0046】
周波数選択部370は、基地局120との無線通信で利用されている分割周波数帯域と異なる分割周波数帯域を選択し、基地局通信部354にその分割周波数帯域を利用するように指示する。
【0047】
当該中継局130は、一体的に形成された筐体に収容されるので、上述した端末通信部350と基地局通信部354とは、十分な距離を隔てていないことが多い。このような状況下において、基地局120との通信で利用しているチャネルと、無線通信端末110との通信で利用しているチャネルとが等しいと送信側における送信データの漏れ電力が受信側に回り込んで受信データに干渉を与え、受信側が受信データを正しく受信できなくなるおそれが生じる。本実施形態では、基地局120と中継局130の無線通信で利用するチャネルと、中継局と無線通信端末との無線通信で利用するチャネルとを、その分割周波数帯域を異ならせることでより確実に引き離すことができ、相互の干渉回避を図ることが可能となる。
【0048】
中継局メモリ314は、ROM、RAM、EEPROM、不揮発性RAM、フラッシュメモリ、HDD等で構成され、中継局制御部312で処理されるプログラム等を記憶する。また、中継局メモリ314は、履歴記憶部390を含んで構成される。
【0049】
履歴記憶部390は、基地局120との無線通信で利用された分割周波数帯域を記憶する。本実施形態では、周波数選択部370が、かかる履歴記憶部390に記憶されている分割周波数帯域と異なる分割周波数帯域を、無線通信端末100との通信に利用する分割周波数帯域として優先して選択する。
【0050】
かかる構成により、中継局130を搭載した移動体160が基地局120との通信可能範囲を跨って移動する場合、中継局130は、一度利用された分割周波数帯域を避けて、無線通信端末110との無線通信に利用する分割周波数帯域を選択できる。こうして、以前に通った基地局の通信可能範囲を再度通る場合、基地局120と中継局130の無線通信に利用する分割周波数帯域と、中継局130と無線通信端末110の無線通信で利用する分割周波数帯域が重複せず、中継局130と無線通信端末110の無線通信で利用するチャネルを、変更する必要が無くなるため、処理負荷や電力の消費を削減できる。
【0051】
図6は、中継局130と無線通信端末110の無線通信の例と比較例を比較した説明図である。図6(a)は比較例であり、図6(b)は、本実施形態を適用した例である。また、図6中六角形で示した領域は、1つの基地局120の通信可能範囲を示したセルであり、横一列に並んだ4つのセル(セルA、セルB、セルC、セルD)がそれぞれ分割周波数帯域Fa、Fb、Fc、Fdを利用して、無線通信端末110や中継局130等と無線通信を実行する。ここでは、あるセルで使用されている分割周波数帯域は、Fにそのセルを示すアルファベットの小文字を添えて表す。また、説明のため縦長の六角形を描画しているが、実際のセルは正六角形に近い。また、正六角形以外に正三角形や正四角形に近い形状であってもよい。
【0052】
そして、中継局130を搭載した移動体160は、セルを跨って移動し、中継局130の端末通信部350は、進入したセルに対応する分割周波数帯域Fa、Fb、Fc、Fdに従ってチャネルを選択する。また、移動体160の中の文字は、中継局130と無線通信端末110の無線通信に用いられている分割周波数帯域を示し、その分割周波数帯域が変更されたときをハッチングで示す。履歴記憶部390は、中継局130が、セルA、セルB、セルC、セルDの順に移動しているときの、図に一点鎖線の楕円で示した各位置における状態を示している。当該図6におけるこのようなセルや分割周波数帯域の定義は、後述する図7、8にも適用される。
【0053】
図6(a)の比較例において、中継局130は、履歴記憶部390を有しておらず、中継局130と無線通信端末110の無線通信に用いる分割周波数帯域を、基地局120の無線通信に用いていない分割周波数帯域内で無作為に選択する。まず、中継局130はセルA内を通り、基地局120との通信に分割周波数帯域Faを利用し、無線通信端末110との通信に分割周波数帯域Fcを利用したとする。中継局130を搭載した移動体160がさらに移動し、隣のセルBに入るとき、基地局120との無線通信に分割周波数帯域Fbを利用する。このとき、基地局120との無線通信に用いる分割周波数帯域Fbと、無線通信端末110の無線通信に用いる分割周波数帯域Fcとは異なるため、中継局130と無線通信端末110との無線通信の分割周波数帯域は変更しない。
【0054】
その後、移動体160が移動し更に隣のセルCに入るとき、基地局120との無線通信に分割周波数帯域Fcを利用する。ここで、基地局120との無線通信の分割周波数帯域Fcは、無線通信端末110との無線通信の分割周波数帯域Fcと重複するため、中継局130は、後者を分割周波数帯域Fc以外の分割周波数帯域、例えば分割周波数帯域Fdに無作為に変更する。そうすると、移動体160がセルDに移動した際、さらなる変更が生じ、このとき中継局130が無作為に分割周波数帯域Fcを選択すると、移動体160の往路において、セルCに入るとき再度変更が生じる。図6(b)の例では、セルAからセルDまでを1往復半する間に5回、無線通信端末110との無線通信の分割周波数帯域が変更されており、その後も分割周波数帯域Fe、Ffが選択されるまで、分割周波数帯域の変更が繰り返されることとなる。
【0055】
それに対して、図6(b)の実施例では、中継局130は履歴記憶部390を有し、その履歴記憶部390を参照することで、過去に選択した分割周波数の履歴を把握することができる。ここで、図6(b)下に記載された長方形のマスは、図6(b)中の各位置における履歴記憶部390の状態、即ち、中継局130の端末通信部350が無線通信に利用した分割周波数帯域の履歴を示している。かかる履歴は上部のもの程新しく、下から時系列に並んでいる。まず中継局130はセルA内を通り、基地局120との通信に分割周波数帯域Faを利用し、無線通信端末110との通信に例えば分割周波数帯域Fcを利用したとする。履歴記憶部390は、位置Aにおいて分割周波数帯域Faを記憶する。
【0056】
移動体160が移動し隣のセルBに入るとき、基地局120との無線通信に分割周波数帯域Fbを利用する。このとき、基地局120との無線通信に用いる分割周波数帯域Fbと、無線通信端末110の無線通信に用いる分割周波数帯域Fcとは異なるため、中継局130と無線通信端末110との無線通信の分割周波数帯域は変更しない。履歴記憶部390は、位置Bにおいて分割周波数帯域Fbを記憶する。
【0057】
その後、移動体160が移動し隣のセルCに入るとき、基地局120との無線通信に分割周波数帯域Fcを利用する。ここで、基地局120との無線通信の分割周波数帯域Fcは、無線通信端末110との無線通信の分割周波数帯域Fcと重複するため、中継局130は、後者を、分割周波数帯域Fc以外で、さらに直前のエリアBを出るまでに履歴記憶部390に記憶されている分割周波数帯域Fa、Fb以外の分割周波数帯域、例えば分割周波数帯域Fdに変更する。履歴記憶部390は、位置Cにおいて分割周波数帯域Fcを記憶する。
【0058】
さらに、移動体160が移動し、セルDに入るとき、基地局120との無線通信に分割周波数帯域Fdを利用する。ここで、基地局120との無線通信の分割周波数帯域Fdは、無線通信端末110との無線通信の分割周波数帯域Fdと重複するため、中継局130は後者を、分割周波数帯域Fd以外で、さらに直前のセルCを出るまでに履歴記憶部390に記憶されていない分割周波数帯域Feに変更する。履歴記憶部390は、位置Dにおいて分割周波数帯域Fdを記憶する。
【0059】
かかる図6(b)の例では、移動体160の往路にあるセルの基地局120では分割周波数帯域Feは利用されていない。従って、以後、移動体160が同じ往路を何度往復しようと、基地局120との無線通信の分割周波数帯域と、無線通信端末110との無線通信の分割周波数帯域は、重複することが無いため、無線通信端末110との無線通信の分割周波数帯域を変更する必要が無くなり、処理負荷や電力の消費を削減できる。
【0060】
また、履歴記憶部390は、基地局120との無線通信で利用された分割周波数帯域を時系列に記憶し、周波数選択部370は、履歴記憶部390に記憶されている分割周波数帯域と異なる分割周波数帯域が無い場合、記憶されている分割周波数帯域のうち最古の分割周波数帯域を選択してもよい。
【0061】
前述のように、分割周波数帯域は、例えば無線通信端末110の無線通信に利用可能な全周波数帯域を6分割しているのでその分割周波数帯域Fa、Fb、Fc、Fd、Fe、Ffの総数は有限(6)である。そのため、図6(b)のように、履歴記憶部390に記憶されている分割周波数帯域を選択しようとしても、6つの分割周波数帯域全てが記憶されていて選択できない場合があり、履歴記憶部390に記憶されている分割周波数帯域、即ち過去に利用したことがある分割周波数帯域を選択せざるを得ない。
【0062】
例えば、移動体160が電車であり、往復路線を走っているような場合において、その往復線路のセルで全ての分割周波数帯域が利用され、履歴記憶部390に記憶されている分割周波数帯域と異なる分割周波数帯域を選択することができないとき、本実施形態の周波数選択部370は、記憶されている分割周波数帯域のうち最古の分割周波数帯域を選択する。かかる構成により、履歴記憶部390に記憶されている分割周波数帯域を選択せざるを得ない場合において、チャネルの変更の回数を最も減らすことができ、処理負荷および電力消費を削減できる。
【0063】
図7は、中継局130と無線通信端末110の無線通信において、履歴記憶部390に記憶されている分割周波数帯域を選択する往復路線の例を説明した説明図である。また、図7中六角形で示した領域は、図6同様、1つの基地局120の通信可能範囲を示したセルであり、横一列に並んだ6つのセルA、B、C、D、E、Fがそれぞれ分割周波数帯域Fa、Fb、Fc、Fd、Fe、Ffを利用して、無線通信端末110や中継局130等と無線通信を実行する。
【0064】
図7における履歴記憶部390は、中継局130が、往復路線を、セルA、セルB、セルC、セルD、セルE、セルFの順に移動した後、セルF、セルE、セルD、セルC、セルB、セルAの順(逆方向)に移動しているときの図に一点鎖線の楕円で示した各位置における状態を示している。
【0065】
中継局130は、無線通信端末110との無線通信に分割周波数Ffを用いている状態で、セルF内に入ると、基地局120との無線通信に用いる分割周波数帯域Ffと、無線通信端末110の無線通信に用いる分割周波数帯域Ffとが一致してしまうため分割周波数帯域Ffと異なる分割周波数帯域を選択しなければならない。しかし、履歴記憶部390には既に全ての範囲の分割周波数帯域が記憶されているので、履歴記憶部390に記憶されていない分割周波数帯域を選択できない。
【0066】
このとき、周波数選択部370は、履歴記憶部390に記憶されている分割周波数帯域のうち最古の分割周波数帯域Faを選択する。ここでいう最古の分割周波数帯域は、履歴記憶部390に記憶されている分割周波数帯域のうち、同一の分割周波数帯域が複数記憶されている場合、その同一の分割周波数帯域の中では最も新しい履歴を選択の対象とする。
【0067】
移動体160が位置Fから位置Bへ移動し、さらに位置Bから位置Aへ移動するとき(セルAに入るとき)、直前の位置Bにおいて履歴記憶部390には、新しいほうから順にFb、Fc、Fd、Fe、Ff、Fe・・・が記憶されており、分割周波数帯域Fbは2つ重複している中で一番新しい、すなわち上から一番目の分割周波数帯域Fbが選択の対象となる。同様に、Fc、Fd、Fe、Ff、Faそれぞれで最も新しいものを破線の楕円で囲って示す。こうして抽出された選択対象(破線の楕円で囲われた分割周波数帯域)の中で、最古のものは分割周波数帯域Ffとなる。中継局130は、位置Aにおいて、無線通信端末110との無線通信の分割周波数帯域Faを分割周波数帯域Ffに変更する。
【0068】
図7のような往路においては、分割周波数帯域Faと分割周波数帯域Ffの変更が繰り返される。こうして、履歴記憶部390に記憶されている分割周波数帯域を利用せざるを得ない場合の往復路線の電車等においても、周波数の変更が最も少ないことになる。従って、移動体160が電車等の往復を前提とした移動体であった場合、チャネルの変更の回数を最も減らすことができ、処理負荷および電力消費を削減できる。
【0069】
さらに、履歴記憶部390は、基地局120との無線通信で利用された分割周波数帯域を時系列に記憶し、周波数選択部370は、移動体160の移動軌跡が特定の軌跡(例えば環状軌跡)を描くとき、履歴記憶部390に記憶されている分割周波数帯域と異なる分割周波数帯域が無い場合において、履歴記憶部390に記憶されている分割周波数帯域のうち最新の分割周波数帯域を選択してもよい。
【0070】
図8は、中継局130と無線通信端末110の無線通信において、履歴記憶部390に記憶されている分割周波数帯域を選択する環状路線の例を説明した説明図である。図8において、履歴記憶部390は、中継局130が、環状路線を、セルA、セルB、セルC、セルD、セルE、セルFの順に繰り返し移動しているときの図に一点鎖線の楕円で示した各位置における履歴の状態を示している。
【0071】
図8で移動体160が位置Aから位置Bに移動するとき、基地局120との無線通信に分割周波数帯域Fbを利用する。ここで、基地局120との無線通信の分割周波数帯域Fbは、無線通信端末110との無線通信の分割周波数帯域Fbと重複するため、中継局130は後者を、分割周波数帯域Fb以外で、さらに直前の位置Aを出るまでに履歴記憶部390に記憶されていない分割周波数帯域を選択しようとするが、履歴記憶部390には既に全ての範囲の分割周波数帯域が記憶されているので、履歴記憶部390に記憶されていない分割周波数帯域を選択できず、利用された履歴のある分割周波数帯域から選択しなければならなくなり、分割周波数帯域の選び方によっては、中継局と無線通信端末の無線通信のチャネルを頻繁に変更しなければならなくなってしまう。
【0072】
このとき、周波数選択部370は、履歴記憶部390に記憶されている分割周波数帯域のうち最新の分割周波数帯域を選択する。ここでいう最新の分割周波数帯域は、単に履歴記憶部390に記憶されている最も新しい履歴を対象とする。この場合、直前の位置Aで基地局との無線通信に利用されていた分割周波数帯域Fa(実線の楕円で囲われたFa)が最新の分割周波数帯域となる。
【0073】
上述の規則に従うと、セルAからセルFまでを繰り返し周回するとき、無線通信端末110との無線通信に利用する分割周波数帯域が5つのセル毎に変更される。こうして、履歴記憶部390に記憶されている分割周波数帯域を利用せざるを得ない場合の環状路線の電車等において、周波数の変更が最も少ないことになる。従って、移動体160が電車で環状路線を移動する場合においても、チャネルの変更の回数を最も減らすことができ、処理負荷および電力消費を削減できる。
(無線通信中継方法)
次に、無線通信端末110と、基地局120と、中継局130とを用いて無線通信を実行する無線通信中継方法を詳細に説明する。
【0074】
図9は、往復路線の電車に中継局130が搭載された場合の分割周波数帯域の選択の処理の流れを示したフローチャートである。基地局120と中継局130の無線通信でハンドオーバが開始されると(S400YES)、そのハンドオーバ先の分割周波数帯域と、中継局130と無線通信端末110との無線通信で利用されている分割周波数帯域が一致するか否かが判定される(S402)。一致しない場合(S402NO)、基地局120と中継局130の無線通信で次のハンドオーバが開始されるまで待機する。
【0075】
一致する場合(S402YES)、履歴記憶部390に記憶されていない分割周波数帯域が残っていて選択可能であるかが判定される(S404)。残っている場合(S404YES)、周波数選択部370は、残っている分割周波数帯域から1の分割周波数帯域を選択する(S406)。記憶されていない分割周波数帯域が残っていない場合(S404NO)、周波数選択部370は、履歴記憶部390に記憶された分割周波数帯域の並びから最古の分割周波数帯域を選択する。かかる最古の分割周波数帯域を選択するため、周波数選択部370は、まず、全ての分割周波数帯域を参照すべく、すでに全周波数帯域の分割周波数帯域を履歴記憶部390から読み込んでいるか判定する(S408)。全周波数帯域の分割周波数帯域が読み込まれていない場合(S408NO)、履歴記憶部390の新しい方から、まだ読み込んでいない分割周波数帯域を読み込む(S410)。そして、読み込んだ分割周波数帯域が、それまでに読み込んだ分割周波数帯域と一致するか否か判定する(S412)。
【0076】
それまでに読み込んだ分割周波数帯域と一致する場合(S412YES)、古い分割周波数帯域は削除して(S414)全周波数帯域の分割周波数帯域を読込済みかの判定ステップ(S408)に戻る。一致しない場合(S412NO)、読み込んだ分割周波数帯を保持する(S416)。以上の処理を繰り返し、全帯域の分割周波数帯域の読み込みを終えると(S408YES)、その中で、最古の分割周波数帯域を選択する(S418)。
【0077】
そして、無線通信端末110との無線通信で利用する分割周波数帯域を選択した分割周波数帯域に変更し(S420)、基地局120と中継局130の無線通信で次のハンドオーバが開始されるまで待機する。
【0078】
図10は、環状路線の電車に中継局130が搭載された場合の分割周波数帯域の選択の処理の流れを示したフローチャートである。
【0079】
環状路線においても、基地局120と中継局130の無線通信でハンドオーバが開始(S400)されてから、履歴記憶部390に記憶されていない分割周波数帯域が残っていて履歴に無い分割周波数帯域を選択する(S406)までは、図9の往復路線の場合と実質的に処理が等しいのでここではその説明を省略する。履歴記憶部390に記憶されていない分割周波数帯域が残っていない場合(S404NO)、周波数選択部370は、履歴記憶部390に記憶されている最新の分割周波数帯域を選択し(S450)、その後は、往復路線の場合と同じく、無線通信端末110との無線通信で利用する分割周波数帯域を選択した分割周波数帯域に変更し(S420)、基地局120と中継局130の無線通信で次のハンドオーバが開始されるまで待機する。
【0080】
周波数選択部370は、履歴から分割周波数帯域を選択するとき、予め設定された図9の往復路線または図10の環状路線における分割周波数帯域の選択処理を行う。また、周波数選択部370は、中継局130を搭載した移動体160が例えば電車の往復路線のように移動しているか、環状路線のように移動しているかを、履歴記憶部390に記憶された分割周波数帯域の履歴から判断し、図9、10のどちらの処理によって分割周波数帯域を選択するか決定しても良い。
【0081】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0082】
なお、本明細書の無線通信中継方法における各工程は、必ずしもシーケンス図として記載された順序に沿って時系列に処理する必要はなく、並列的あるいはサブルーチンによる処理を含んでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、無線通信端末と基地局との無線通信を中継可能な中継局および無線通信中継方法に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】無線通信システムの概略的な構成を示したブロック図である。
【図2】無線通信端末のハードウェア構成を示した機能ブロック図である。
【図3】無線通信端末の外観を示した斜視図である。
【図4】基地局の概略的な構成を示したブロック図である。
【図5】中継局の概略的な構成を示したブロック図である。
【図6】中継局と無線通信端末の無線通信の例と比較例を比較した説明図である。
【図7】中継局と無線通信端末の無線通信において、履歴記憶部に記憶されている分割周波数帯域を選択する往復路線の例を説明した説明図である。
【図8】中継局と無線通信端末の無線通信において、履歴記憶部に記憶されている分割周波数帯域を選択する環状路線の例を説明した説明図である。
【図9】往復路線の電車に中継局が搭載された場合の分割周波数帯域の選択の処理の流れを示したフローチャートである。
【図10】環状路線の電車に中継局が搭載された場合の分割周波数帯域の選択の処理の流れを示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0085】
110 …無線通信端末
120 …基地局
130 …中継局
170 …移動体
350 …端末通信部
354 …基地局通信部
370 …周波数選択部
390 …履歴記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信端末と基地局との無線通信を中継可能な中継局であって、
前記無線通信に利用可能な全周波数帯域を分割した複数の分割周波数帯域のうち、無線通信を実行する基地局によって定まる1の分割周波数帯域に含まれるチャネルを用いて該基地局と無線通信を実行する端末通信部と、
前記基地局との無線通信で利用されている分割周波数帯域と異なる分割周波数帯域を選択する周波数選択部と、
前記周波数選択部が選択した分割周波数帯域に含まれるチャネルを用いて、前記無線通信端末と通信を行う基地局通信部と、
を備えることを特徴とする中継局。
【請求項2】
前記基地局との無線通信で利用された分割周波数帯域を記憶する履歴記憶部をさらに備え、
前記周波数選択部は、前記履歴記憶部に記憶されている分割周波数帯域と異なる分割周波数帯域を優先して選択することを特徴とする請求項1に記載の中継局。
【請求項3】
前記履歴記憶部は、前記基地局との無線通信で利用された分割周波数帯域を時系列に記憶し、
前記周波数選択部は、前記履歴記憶部に記憶されている分割周波数帯域と異なる分割周波数帯域が無い場合、該記憶されている分割周波数帯域のうち最古の分割周波数帯域を選択することを特徴とする請求項2に記載の中継局。
【請求項4】
前記履歴記憶部は、前記基地局との無線通信で利用された分割周波数帯域を時系列に記憶し、
前記周波数選択部は、前記履歴記憶部に記憶されている分割周波数帯域と異なる分割周波数帯域が無い場合、該記憶されている分割周波数帯域のうち最新の分割周波数帯域を選択することを特徴とする請求項2に記載の中継局。
【請求項5】
無線通信端末と基地局との無線通信を中継可能な中継局を用いて無線通信を実行する無線通信中継方法であって、
前記無線通信に利用可能な全周波数帯域を分割した複数の分割周波数帯域のうち、無線通信を実行する基地局によって定まる1の分割周波数帯域に含まれるチャネルを用いて該基地局と無線通信を実行し、
前記基地局との無線通信で利用されている分割周波数帯域と異なる分割周波数帯域を選択し、
前記選択した分割周波数帯域に含まれるチャネルを用いて、前記無線通信端末と通信を行うことを特徴とする無線通信中継方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−81435(P2010−81435A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−249247(P2008−249247)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】