説明

中継接続サービスを提供する通信方法および通信システム

【課題】IP網を用いて中継接続する場合に、メッセージサイズの増大を防ぐことができる通信方法および通信システムを提供する。
【解決手段】複数の通信事業者の通信網(PSTN)間の情報の中継接続をIP網を用いて行う中継接続事業者網内に、着番号情報に対応付けてその呼が中継接続を行う呼か自IP網内の端末6への着信(自IP網着信)かが記憶された中継判断DB200を格納する中継判断DB装置2を備え、PSTN−GW1aが、通信事業者Aから着呼要求信号を受信すると、その呼が中継接続か自IP網着信かを中継判断DB装置2に問い合わせ、自IP網着信の場合に、カプセル化処理を行わず、着呼要求信号を、中継サーバ3、加入者サーバ4およびIP変換装置5を介して端末6へ送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中継接続サービスをIP(Internet Protocol)網において提供する通信方法および通信システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
呼制御プロトコルISUP(ISDN user part)を利用した従来の回線交換電話網(PSTN:Public Switched Telephone Network)サービスを提供する通信事業者には、中継接続サービスを提供する中継接続事業者が存在する。この中継接続サービスとは、例えば、中継接続事業者が2つの地域系固定通信事業者それぞれと相互接続を行い、これら地域系固定通信事業者2社間の通信時の呼制御信号、音声信号等を中継接続するサービスである。ある通信事業者が他の通信事業者と通信を確保するには、それぞれの通信事業者との間で相互接続回線を準備する必要があるため、相応の設備コストを有するのに対し、中継接続事業者の中継接続サービスを活用すれば、当該中継接続事業者との相互接続回線を準備するだけで当該中継接続事業者と接続する他の通信事業者との通信が可能となり、設備コストを削減できるメリットがある。
【0003】
従来のPSTNでの中継接続サービスの具体的な処理について説明する。図6は、従来のPSTNでの中継接続サービスを提供する通信システムの構成および中継接続の処理の流れの説明図である。
【0004】
図6に示すように、中継接続サービスを提供する通信事業者網(以下、「中継接続事業者網」とする)に、他の通信事業者A,B,Cの通信網(PSTN)が接続されている。そして、中継接続事業者網内には、中継接続事業者のIGS(関門交換機)7(7a,7b)、IC(中継交換機)8、GC(加入者交換機)9、および端末6を備える。なお、中継接続事業者が、中継接続サービスのみを行い、地域系固定通信サービスを行わない場合は、GC9および端末6を備える必要はないが、中継接続サービスを行う事業者は、地域系固定通信サービスを併せて行うのが一般的である。よって、中継接続事業者網に、GC9および端末6が含まれるものとして説明する。
【0005】
通信事業者Aの通信網(PSTN)から発信された情報を、他の通信事業者の通信網(PSTN)に中継接続する場合として、以下の3つのパターンが考えられる。
【0006】
(パターン1)通信事業者Aの通信網から、IGS7aおよびIC8を経由し、IGS7bに接続する通信事業者Bの通信網に中継接続される場合。なお、ここで、発信側から信号を受信し着信側へ送信するIGS7をIGS7aとし、IC8を介して信号を受信しさらに着信側に送信するIGS7をIGS7bとする。
(パターン2)通信事業者Aの通信網から、IGS7aに同じく接続点を有する通信事業者Cの通信網に中継接続される場合。
(パターン3)通信事業者Aの通信網から、中継接続事業者網に収容される加入者の端末6に着信する場合。
【0007】
このパターン1〜3について、具体的な処理手順について説明する。
【0008】
まず、パターン1〜3のすべての場合において、IGS7aが通信事業者Aの通信網からの信号を受信する。
【0009】
次に、IGS7aは、受信した信号の着番号情報(着番号または着番号帯)から、接続先を判断し、前記した3パターンに分けて処理を実行する。
【0010】
(パターン1)
接続先が、IGS7aとは別のIGS7に接続点を有する他の通信事業者の通信網への接続であれば、該当するIGS7(例えば、IGS7b)へ信号を送信する。IGS7bは、受信した信号に付された着番号情報に基づき、自身のIGS7bに接続点を有する通信事業者Bの通信網へ信号を転送する。
このとき、IGS7aおよびIGS7bは、中継接続事業者が信号の中継を行うに際し設定や変更をしなければならない一部の情報を除き、情報の透過的な中継を行う。ここで、透過的な中継とは、信号の内容を書き換えずに中継を行うことであり、中継接続事業者は、発信側の通信事業者および着信側の通信事業者が設定した情報を原則として透過的に中継することが技術標準として規定されている(非特許文献1参照)。なお、中継接続事業者が信号の中継を行うに際し設定しなければならない情報とは、後に課金情報として必要になるどの中継接続事業者をその呼が経由したかを示す情報等であり、変更をしなければならない情報とは、通信事業者間を接続している回線の能力や特性を示すパラメータ等である。これらの一部の情報を除き、中継接続事業者は、情報の透過的な中継をしなくてはならない。
【0011】
(パターン2)
接続先が、信号を受信したIGS7aと同じく、IGS7aに接続点を有する他の通信事業者(通信事業者C)の通信網への接続であれば、IGS7aは、信号を該当する通信事業者Cの通信網へ送信する。このとき、IGS7aは、中継接続事業者が信号の中継を行うに際し設定や変更をしなければならない一部の情報を除き、情報の透過的な中継を行う。
【0012】
(パターン3)
接続先が、中継接続事業者網内の加入者の端末6への接続であれば、自中継接続事業者網のIC8へ信号を送信し、GC9を介して端末6に信号を送信する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】社団法人情報通信技術委員会、「TTC標準 JJ-90.10(相互接続共通インタフェース仕様)」第7.1版、2006年9月5日制定、p.20
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
近年、従来のPSTNの技術に代えて、IP電話技術が普及してきている。PSTNの回線交換方式の場合には、通話毎に1回線を占有するため、各交換機間では、ピーク呼量に耐えうる設備(回線)が必要となる。そのため、相応の設備コストを要し、かつ、その設備(回線)の使用効率が高くないものとなる。これに対し、IP網の場合は、複数の通話の呼制御信号パケット、音声パケット等がIP網を共用するため、通信事業者にとっては、設備コストを削減でき、かつそれによりユーザ料金を低減できるというメリットがある。
【0015】
しかし、中継接続にIP網を導入する場合に、以下のことが問題となる。PSTNとIP網との相互接続は、「TTC標準 JF-IETF-RFC3398(SIP-TTC ISUP信号方式相互接続に関する技術仕様)」(社団法人情報通信技術委員会、第1.0版、2005年6月2日)等で、標準化が進められているが、その接続形態は、PSTN(ISUP)−IP(SIP:Session Initiation Protocol)網間の相互接続のみを範囲としており、例えば、PSTN−IP網−PSTNといった、中継接続サービスをIP網で提供するような形態までは対象に含まれていない(同「TTC標準 JF-IETF-RFC3398」p.9)。
【0016】
IP網とPSTNを相互接続する場合、IP網側において、受信したISUP信号をSIP信号に変換したり、SIP信号をISUP信号に変換したりして送信する必要がある。このISUP→SIP→ISUP経由の中継において、現在の標準等に則りISUP→SIP変換を行うと、一部のISUPパラメータが欠落してしまうため、変換したSIP信号をさらにISUP信号へ変換した時点で、発信側が設定したISUPパラメータが透過的に着信側に送信されなくなる。例えば、ISUPプロトコルにおいて通信回線の接続要求を示す「アドレス」メッセージ(IAM:Initial address message)を、SIPプロトコルのセッション開始リクエスト(INVITE)に変換する際に、IAMのオプションパラメータである「ユーザサービス情報(Q.931“ 伝送能力”情報要素)」のマッピングについては、TTC標準 JF-IETF-RFC3398では明示されていない。したがって、透過的な中継ができない場合がある。
前記の通り、PSTNにおける中継接続における技術標準では、原則として情報の透過的な中継を行うことが規定されており(非特許文献1参照)、これと同様に、IP網で中継接続する場合においても、透過的な中継を行うことが求められる。
【0017】
この対策としてSIPには、ISUP信号をバイナリデータとして丸ごとSIP信号の中に含めて転送するISUPカプセレーションという手法があり、これを利用することで透過的な中継を実現することができる(IETF RFC3398 5.1章、ITU-T Q.1912.5 5.4章ISUP encapsulation-detailed procedures 参照)。しかしながら、ISUPカプセレーションの手法は、受信先がPSTNでありISUP信号を利用する場合は有効であるが、例えば、中継接続事業者のIP網内の端末が着信先である場合(中継接続事業者が地域系固定通信サービスを提供する場合)、カプセリングしたISUP信号は必要ないため、不必要な情報が含まれメッセージサイズが増大したSIP信号を送信することになる(後記する図2のパターン3参照)。メッセージサイズの増大はIP網に負荷を与えることとなるため、メッセージサイズの増大を防ぐ効率的な情報伝送を行うことが必要となる。
【0018】
このような背景に鑑みて、本発明がなされたのであり、本発明は、IP網を用いて中継接続する場合に、メッセージサイズの増大を防ぐことができる通信方法および通信システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記した課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、送信元となる通信事業者の通信網から受信した着呼要求信号を、送信先となる他の通信事業者の通信網に中継接続する中継接続事業者のIP網に、前記送信元となる通信事業者のPSTNから送信される信号を受信する発側のゲートウェイ装置と、前記着呼要求信号が、前記送信先となる他の通信事業者の通信網に中継接続する呼であるか、当該中継接続事業者のIP網内の加入者サーバに収容される端末に着信する呼であるかを、前記着呼要求信号に付された着番号情報ごとに示す中継判断DBを格納する中継判断DB装置とを備え、中継接続サービスを提供する通信システムに用いられる通信方法であって、前記発側のゲートウェイ装置が、前記送信元となる通信事業者の通信網から前記着呼要求信号を受信し、その着呼要求信号に付された着番号情報を含めた中継判断要求情報を前記中継判断DB装置に送信し、前記中継判断DB装置が、前記中継判断要求情報の着番号情報をキーとして、前記中継判断DBを参照し、当該着呼要求信号が、前記送信先となる他の通信事業者の通信網に中継接続する呼であるか、または、前記中継接続事業者のIP網内の着信呼であるかを判断して、その判断結果を前記発側のゲートウェイ装置に送信し、前記発側のゲートウェイ装置が、前記着呼要求信号が、前記中継接続事業者のIP網内の着信呼であるとの判断結果を受信した場合に、前記着呼要求信号を当該IP網で用いられる着呼要求のIP信号にプロトコル変換し、当該IP網の加入者サーバ、および着信先となる前記端末と接続されるIP変換装置を介して、前記端末に、前記着呼要求のIP信号を送信することを特徴とする通信方法とした。
【0020】
また、請求項6に記載の発明は、送信元となる通信事業者の通信網から受信した着呼要求信号を、送信先となる他の通信事業者の通信網に中継接続する中継接続事業者のIP網に、前記送信元となる通信事業者のPSTNから送信される信号を受信する発側のゲートウェイ装置と、前記着呼要求信号が、前記送信先となる他の通信事業者の通信網に中継接続する呼であるか、当該中継接続事業者のIP網内の加入者サーバに収容される端末に着信する呼であるかを、前記着呼要求信号に付された着番号情報ごとに示す中継判断DBを格納する中継判断DB装置とを備え、中継接続サービスを提供する通信システムであって、前記発側のゲートウェイ装置が、前記送信元となる通信事業者の通信網から前記着呼要求信号を受信する受信制御部と、前記受信した着呼要求信号に付された着番号情報を含めた中継判断要求情報を前記中継判断DB装置に送信するDBアクセス部と、前記中継判断DB装置から、前記着呼要求信号が前記中継接続事業者のIP網内の着信呼であるとの判断結果を受信した場合に、前記着呼要求信号を当該IP網で用いられる着呼要求のIP信号にプロトコル変換するプロトコル変換部と、当該IP網の加入者サーバ、および着信先となる前記端末と接続されるIP変換装置を介して、前記端末に向けて前記着呼要求のIP信号を送信する第1のルーチング部と、を備え、前記中継判断DB装置が、前記中継判断DBと、前記発側のゲートウェイ装置から受信した前記中継判断要求情報の着番号情報をキーとして、前記中継判断DBを参照し、当該着呼要求信号が、前記送信先となる他の通信事業者の通信網に中継接続する呼であるか、または、前記中継接続事業者のIP網内の着信呼であるかを判断して、その判断結果を前記発側のゲートウェイ装置に送信する中継判断処理部と、を備えることを特徴とする通信システムとした。
【0021】
このようにすることで、発側のゲートウェイ装置は、中継判断DBから、着呼要求信号が中継接続事業者のIP網内の着信呼であるとの判断結果を受信することにより、PSTNの着呼要求信号のカプセル化処理を行わず、プロトコル変換した着呼要求のIP信号をIP網内の端末に向けて送信することができる。よって、本発明によれば、不要なカプセル化を行う必要をなくし、メッセージサイズの増大を防ぐことができる中継接続を可能にする。
【0022】
請求項2に記載の発明は、前記中継接続事業者のIP網に、前記送信先となる他の通信事業者のPSTNに接続される着側のゲートウェイ装置をさらに備え、前記発側のゲートウェイ装置が、前記中継判断DB装置から、前記着呼要求信号が、前記送信先となる他の通信事業者の通信網に中継接続する呼であるとの判断結果を受信した場合に、前記着呼要求信号を前記IP網で用いられる着呼要求のIP信号にプロトコル変換し、当該着呼要求のIP信号内に前記着呼要求信号をカプセル化して、前記着側のゲートウェイ装置に送信し、前記着側のゲートウェイ装置が、前記着呼要求信号がカプセル化された前記着呼要求のIP信号を受信すると、前記カプセル化された着呼要求信号のカプセル化を解除して、前記PSTNで用いられる着呼要求信号に変換し、当該着呼要求信号を、前記送信先となる他の通信事業者の通信網に送信することを特徴とする請求項1に記載の通信方法とした。
【0023】
また、請求項7に記載の発明は、前記中継接続事業者のIP網に、前記送信先となる他の通信事業者のPSTNに接続される着側のゲートウェイ装置をさらに備え、前記発側のゲートウェイ装置が、前記中継判断DB装置から、前記着呼要求信号が前記送信先となる他の通信事業者の通信網に中継接続する呼であるとの判断結果を受信した場合に、前記プロトコル変換部がプロトコル変換した前記着呼要求のIP信号内に、前記着呼要求信号をカプセル化するカプセル化処理部をさらに備え、前記第1のルーチング部が、前記着呼要求信号がカプセル化された前記着呼要求のIP信号を前記着側のゲートウェイ装置に送信し、前記着側のゲートウェイ装置が、前記着呼要求信号がカプセル化された前記着呼要求のIP信号を受信すると、前記カプセル化された着呼要求信号のカプセル化を解除して、前記PSTNで用いられる着呼要求信号に変換するカプセル化解除部と、前記カプセル化解除部が変換した前記PSTNで用いられる着呼要求信号を、前記送信先となる他の通信事業者の通信網に送信する第2のルーチング部と、を備えることを特徴とする請求項6に記載の通信システムとした。
【0024】
このようにすることで、発側のゲートウェイ装置は、中継判断DBから、着呼要求信号が送信先となる他の通信事業者の通信網に中継接続する呼であるとの判断結果を受信することにより、着呼要求信号がカプセル化された着呼要求のIP信号を着側にゲートウェイ装置に送信する。そして、着側のゲートウェイ装置は、カプセル化された着呼要求信号のカプセル化を解除して、PSTNで用いられる着呼要求信号に変換し、送信先となる他の通信事業者に送信することができる。よって、透過的な中継接続を実現することが可能となる。
【0025】
請求項3に記載の発明は、前記発側のゲートウェイ装置が、前記中継判断DB装置から、前記着呼要求信号が、前記送信先となる他の通信事業者の通信網に中継接続する呼であるとの判断結果を受信した場合に、前記送信先となる他の通信事業者の通信網が、当該発側のゲートウェイ装置と接続されているときに、前記着呼要求信号を、前記送信先となる他の通信事業者の通信網に転送することを特徴とする請求項2に記載の通信方法とした。
【0026】
このようにすることで、発側のゲートウェイ装置が、中継判断DBから、着呼要求信号が送信先となる他の通信事業者の通信網に中継接続する呼であるとの判断結果を受信した場合に、送信先となる他の通信事業者の通信網が、発側のゲートウェイ装置に接続されていれば、着呼要求信号をIP網で用いられる着呼要求のIP信号に変換するプロトコル変換処理、およびPSTNの着呼要求信号のカプセル化処理を行わずに、着呼要求信号を送信先となる他の通信事業者の通信網に転送することができる。
【0027】
請求項4に記載の発明は、前記発側のゲートウェイ装置が、前記中継判断DB装置から、前記着呼要求信号が、前記送信先となる他の通信事業者の通信網に中継接続する呼であるとの判断結果を受信した場合に、当該着呼要求信号が、前記中継接続する呼であることを前記発側のゲートウェイ装置の記憶部に記憶し、前記送信元となる通信事業者の通信網から当該着呼要求信号に応じて発信された呼制御信号を受信した場合に、当該記憶部に、当該着呼要求信号が前記中継接続する呼として記憶されていることを確認し、前記呼制御信号を前記IP網で用いられる呼制御のIP信号にプロトコル変換し、当該呼制御のIP信号内に前記呼制御信号をカプセル化して、前記着側のゲートウェイ装置に送信し、前記着側のゲートウェイ装置が、前記呼制御信号がカプセル化された前記呼制御のIP信号を受信すると、前記カプセル化された呼制御信号のカプセル化を解除して、前記PSTNで用いられる呼制御信号に変換し、当該呼制御信号を、前記送信先となる他の通信事業者の通信網に送信することを特徴とする請求項2に記載の通信方法とした。
【0028】
このように、発側のゲートウェイ装置の記憶部に、着呼要求信号が中継接続する呼であることを記憶しておくことにより、送信元となる通信事業者の通信網から着呼要求信号に応じて発信された呼制御信号を受信した場合に、発側のゲートウェイ装置が、中継判断DB装置に中継判断要求情報を再度送信して応答信号を受信する必要をなくすことができる。
【0029】
請求項5に記載の発明は、前記着側のゲートウェイ装置が、前記着呼要求信号がカプセル化された前記着呼要求のIP信号を、前記発側のゲートウェイ装置から受信すると、当該着呼要求信号が、前記送信先となる他の通信事業者の通信網に中継接続する呼であることを前記着側のゲートウェイ装置の記憶部に記憶し、前記送信先となる他の通信事業者の通信網から前記着呼要求信号に応じて発信された呼制御信号を受信した場合に、当該記憶部に、当該着呼要求信号が前記中継接続する呼として記憶されていることを確認し、前記呼制御信号を前記IP網で用いられる呼制御のIP信号にプロトコル変換し、当該呼制御のIP信号内に前記呼制御信号をカプセル化して、前記発側のゲートウェイ装置に送信し、前記発側のゲートウェイ装置が、前記呼制御信号がカプセル化された前記呼制御のIP信号を受信すると、前記カプセル化された呼制御信号のカプセル化を解除して、前記PSTNで用いられる呼制御信号に変換し、当該呼制御信号を、前記送信元となる通信事業者の通信網に送信することを特徴とする請求項4に記載の通信方法とした。
【0030】
このように、着側のゲートウェイ装置の記憶部に、着呼要求信号が中継接続する呼であることを記憶しておくことにより、送信先となる他の通信事業者の通信網から着呼要求信号に応じて発信された呼制御信号を受信した場合に、着側のゲートウェイ装置が、中継判断DB装置に中継判断要求情報を再度送信して応答信号を受信する必要をなくすことができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、IP網を用いて中継接続する場合に、メッセージサイズの増大を防ぐことができる通信方法および通信システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本実施形態に係る中継接続サービスを提供する通信システムの構成を示す図である。
【図2】本実施形態に係る中継接続の接続パターンを説明するための図である。
【図3】本実施形態に係る通信システムにおいて、通信事業者Aの通信網(PSTN)から中継接続事業者網(IP網)を経由し、通信事業者Bの通信網(PSTN)に中継接続される場合(パターン1)の処理の流れを説明するシーケンス図である。
【図4】本実施形態に係る通信システムにおいて、通信事業者Aの通信網(PSTN)から、同じPSTN−GWに接続点を有する他の通信事業者Cの通信網(PSTN)に中継接続される場合(パターン2)の処理の流れを説明するシーケンス図である。
【図5】本実施形態に係る通信システムにおいて、中継接続事業者網に収容される加入者の端末に着信する場合(パターン3)の処理の流れを説明するシーケンス図である。
【図6】従来のPSTNでの中継接続サービスを提供する通信システムの構成および中継接続の処理の流れの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
次に、本発明を実施するための形態(「実施形態」という)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
【0034】
≪システム構成≫
図1は、本実施形態に係る中継接続サービスを提供する通信システムの構成を示す図である。図1に示すように、本通信システムは、通信事業者A,B,Cの各通信網、および、その通信事業者A,B,Cの通信網との間で信号の中継接続を行う中継接続事業者網を含んで構成される。ここで、各通信事業者A,B,Cの通信網はPSTN(ISUP)であり、中継接続事業者網はIP網(SIP)で構成されているものとする。
【0035】
この中継接続事業者網(IP網)は、PSTNとの関門中継サーバとなるPSTN−GW(ゲートウェイ装置)1(1a,1b)と、中継判断DB(DataBase:データベース)装置2と、中継サーバ3と、加入者サーバ4と、端末6を収容するIP変換装置5とを含んで構成される。なお、中継接続事業者が、中継接続サービスのみを行い、地域系固定通信サービスを行わない場合は、加入者サーバ4、IP変換装置5および端末6を備える必要はないが、中継接続事業者は、IP網においても、従来技術と同様に、地域系固定通信サービスを併せて行うのが一般的である。よって、中継接続事業者網に、加入者サーバ4、IP変換装置5および端末6が含まれるものとして説明する。
【0036】
このPSTN−GW1、中継判断DB装置2、中継サーバ3、および加入者サーバ4は、入出力部、処理部、記憶部(いずれも不図示)を備えるコンピュータにより実現される。入出力部は、入出力インタフェースから構成される。処理部は、この各サーバが備えるCPU(Central Processing Unit)によるプログラム実行処理や、専用回路等により実現される。また、記憶部は、RAM(Random Access Memory)、ハードディスク、フラッシュメモリ等の記憶手段による実現される。なお、これらの装置(サーバ)をプログラム処理により実現する場合、記憶部には、この装置(サーバ)の機能を実現するためのプログラムが格納される。
【0037】
端末6は、インタフェースがメタル回線の電話端末であり、ダイヤル番号の送出や、音声信号の送出等を行う。また、IP変換装置5は、メタル回線による端末6を収容し、端末6からの呼制御信号や音声信号を、IP網上で使用される信号にプロトコル変換する装置である。このIP変換装置5は、局設置であっても、ユーザ宅内に設定してあってもよい。以下、IP網内に設けられる各装置について具体的に説明する。
【0038】
(加入者サーバ)
加入者サーバ4は、加入者サーバ4自身が収容する加入者のサービス契約情報の管理や、呼状態管理を行うとともに、端末6からの発呼信号をIP変換装置5経由で受け付け、その信号の送信先を決定したり、自網内の中継サーバ3等から受信した発呼信号や応答信号を端末6に向けてルーチングしたりする呼制御を行う。
【0039】
(中継サーバ)
中継サーバ3は、PSTN−GW1(1a,1b)および加入者サーバ4等と接続され、他装置から受信した発呼信号や応答信号をルーチングするといった呼制御信号の中継を行う。
【0040】
(PSTN−GW)
PSTN−GW(ゲートウェイ装置)1は、他の通信事業者A,B,Cの通信網(PSTN)との関門ゲートウェイ装置であり、他の通信事業者A,B,Cの通信網からのPSTN信号を自網内のIP信号に変換し送信を行ったり、逆に、自網内のIP信号を他の通信事業者A,B,Cの通信網で用いられるPSTN信号に変換し送信を行ったりする。なお、ここでは、発信側から信号を受信し着信側へ送信するPSTN−GW1をPSTN−GW1a(発側のゲートウェイ装置)とし、中継サーバ3を介して信号を受信しさらに着信側に送信するPSTN−GW1をPSTN−GW1b(着側のゲートウェイ装置)とする。
そして、このPSTN−GW1は、PSTN−GW1a、PSTN−GW1bそれぞれに、受信制御部11(11a,11b)と、DBアクセス部12(12a,12b)と、カプセル化対象呼記憶制御部13(13a,13b)と、プロトコル変換部14(14a,14b)と、カプセル化処理部15(15a,15b)と、カプセル化解除部16(16a,16b)と、ルーチング部17(17a,17b)とを備える。
【0041】
受信制御部11は、他の通信事業者の通信網(PSTN)から着呼要求信号(ISUP−IAM信号)を受信した場合、その受信した着呼要求信号を、後記するDBアクセス部12に出力する。また、受信制御部11は、中継サーバ3から着呼要求信号(SIP−INVITE)を受信した場合は、その受信した着呼要求信号を、後記するカプセル化対象呼記憶制御部13に出力する。また、受信制御部11は、着呼要求信号に応じて発信された呼制御信号、つまり、IAM以外の呼制御信号(ISUP信号)、または、INVITE以外の呼制御信号(SIP信号)を、着呼要求信号の応答信号等として受信した場合も、後記するように呼が中継接続呼であるか否かを判断するため、カプセル化対象呼記憶制御部13に出力する。
【0042】
DB(データベース)アクセス部12は、受信制御部11から着信要求信号(ISUP−IAM信号)を取得すると、取得した着信要求信号(ISUP−IAM信号)に付された着番号情報を含めた中継判断要求情報を生成し、その中継判断要求情報を中継判断DB装置2に送信して、当該呼が中継接続か自IP網内の端末6への着信(以下、「自IP網着信」という)かの判断情報を要求する。
【0043】
カプセル化対象呼記憶制御部13は、発信側のPSTN−GW1(PSTN−GW1a)のカプセル化対象呼記憶制御部13aであるとき、中継判断DB装置2からの応答情報により、着信要求信号(ISUP−IAM信号)が中継接続である旨を受信すると、当該呼(着信要求信号)が中継接続呼であることをPSTN−GW1aの記憶部(不図示)に記憶する。
また、カプセル化対象呼記憶制御部13は、着信側のPSTN−GW1(PSTN−GW1b)のカプセル化対象呼記憶制御部13bであるとき、受信制御部11が、SIPのINVITEメッセージを受信すると、そのSIPメッセージ内にカプセリングされたISUPメッセージ情報が格納されているかを判定し、ISUPメッセージ情報が格納されている場合は、その受信した呼(着信要求信号)が中継接続呼であることをPSTN−GW1bの記憶部(不図示)に記憶する。
【0044】
また、カプセル化対象呼記憶制御部13は、着呼要求信号に応じて発信された呼制御信号(ISUP)を受信すると、その発呼信号(着呼要求信号)が、自身のPSTN−GW1の記憶部に、中継接続呼として記憶されているか否かを確認する。そして、カプセル化対象呼記憶制御部13は、中継接続呼として記憶されている場合に、その呼制御信号(ISUP)をプロトコル変換部14およびカプセル化処理部15に出力する。
なお、このようにすることで、PSTN−GW1が着信要求信号に応じて発信された呼制御信号(ISUP)を受信した場合に、再びDBアクセス部12が、中継判断DB装置2に、当該呼(着信要求信号)が中継接続か自IP網着信か否かの問い合わせをする必要をなくすことができる。
【0045】
プロトコル変換部14は、PSTNで用いられるプロトコル(例えば、ISUP)とIP網で用いられるプロトコル(例えば、SIP)とを相互に変換する。
【0046】
カプセル化処理部15は、受信したISUPメッセージ情報を、SIPメッセージ内にカプセリングする。このISUPメッセージ情報のカプセリングは、例えば、前記したISUPカプセレーションの方法が用いられる。
【0047】
カプセル化解除部16は、SIPメッセージ内にカプセリングされたISUPメッセージ情報を抽出してカプセル化を解除し、ISUPに変換する。
【0048】
ルーチング部17は、受信した信号に付された着番号情報(着番号または着番号帯)に基づき、その信号をルーチングする処理を行う。
【0049】
(中継判断DB装置)
中継判断DB装置2は、PSTN−GW1からの要求(中継判断要求情報)に基づき、着呼要求信号が、中継接続すべき信号か、自IP網内に端末6に着信すべき信号(自IP網着信)かを、後記する中継判断DB200に基づき判定し、その結果を応答情報として、中継判断要求情報を送信したPSTN−GW1に送信する。そして、この中継判断DB装置2は、中継判断処理部20と、中継判断DB200とを備える。
【0050】
中継判断DB200は、着番号情報(着番号または着番号帯)に対応付けて、その信号が、中継接続か自IP網着信かを記憶する。また、対象となる着番号等が中継接続である場合にその中継先のPSTN−GW1(例えば、「PSTN−GW(a)」(PSTN−GW1a)等)を、着番号情報に対応付けて示す付加情報を記憶しておいてもよい。さらに、対象となる着番号等が自IP網着信の場合に着信先の端末6を収容する加入者サーバ4のIPアドレス等を、着番号情報に対応付けて示す付加情報を記憶しておいてもよい。
【0051】
中継判断処理部20は、PSTN−GW1から中継判断要求情報を受信すると、その中継判断要求情報に付された着呼要求信号の着番号情報をキーに、中継判断DB200を参照し、着呼要求信号が、中継接続か、自IP網着信かを判断し、その判断結果の情報を応答情報に付して、中継判断要求情報を送信したPSTN−GW1に返信する。ここで例えば、その判断結果が、中継接続の場合「1」、自IP網着信の場合「0」のビット等を返信するようにしてもよい。また、中継判断処理部20は、中継先のPSTN−GW1等の付加情報を応答情報に付して、中継判断要求情報を送信したPSTN−GW1に送信してもよい。
【0052】
なお、この中継判断DB200および中継判断処理部20を、各PSTN−GW1に備えるようにすることもできる。
【0053】
≪処理手順≫
次に、図1を参照しつつ、本実施形態に係る中継接続サービスの処理手順を説明する。図2は、本実施形態に係る中継接続の接続パターンを説明するための図である。図2に示すように、通信事業者Aの通信網(PSTN)から発信された情報を、中継接続事業者網(IP網)を介して、他の通信事業者の通信網に中継接続する場合として、以下の3パターンがある。なお、通信事業者Aと通信事業者Cの通信網は、PSTN−GW1aと接続され、通信事業者Bの通信網は、PSTN−GW1bと接続されているものとする。
【0054】
(パターン1)
通信事業者Aの通信網から、PSTN−GW1aおよび中継サーバ3を経由し、PSTN−GW1bに接続する通信事業者Bの通信網に中継接続される場合。
(パターン2)
通信事業者Aの通信網から、PSTN−GW1aに同じく接続点を有する他の通信事業者Cの通信網に中継接続される場合。
(パターン3)
通信事業者Aの通信網から、中継接続事業者網に収容される加入者の端末6に着信する場合。
【0055】
このパターン1,2,3について、具体的な処理手順を説明する。なお、本実施形態において、IP網内の制御プロトコルとしてSIPが用いられ、PSTN内の制御プロトコルとしてISUPが用いられるものとして説明するが、これに限定されるものではなく、他のプロトコルにおいても適用可能である。
【0056】
図3は、本実施形態に係る通信システムにおいて、通信事業者Aの通信網(PSTN)から中継接続事業者網(IP網)を経由し、通信事業者Bの通信網(PSTN)に中継接続される場合(パターン1)の処理の流れを説明するシーケンス図である。
【0057】
まず、PSTN−GW1aは、通信事業者Aの通信網から着呼要求信号(発呼信号)(IAM)を受信する(S101)。そして、着呼要求信号(IAM)を受信したPSTN−GW1aの受信制御部11aは、その着呼要求信号(IAM)をDBアクセス部12aに出力する。そしてDBアクセス部12aは、着呼要求信号(IAM)に付された着番号情報を含む中継判断要求情報を生成し、中継判断DB装置2に送信する(S102)。
【0058】
中継判断DB装置2の中継判断処理部20は、中継判断要求情報を受信すると、着呼要求信号(IAM)の着番号情報をキーとして、中継判断DB200を参照し、対象となる着呼要求信号(IAM)が、中継接続か、自IP網着信かを判断する。ここでは、中継判断処理部20が、中継接続であると判断したものとする。そして、中継判断処理部20は、中継接続である旨の判断を応答情報として、中継判断要求情報を送信したPSTN−GW1aに返信する(S103)。
【0059】
中継判断DB装置2から中継接続である旨の応答情報を受信すると、PSTN−GW1aのカプセル化対象呼記憶制御部13は、当該呼(着呼要求信号)が中継接続呼であることを記憶部に記憶する。そして、プロトコル変換部14が、ISUPのIAMメッセージを、SIPのINVITEメッセージにプロトコル変換し、カプセル化処理部15が、受信したISUPメッセージ(IAM)のカプセル化を行う(S104)。続いて、ルーチング部(第1のルーチング部)17aが自IP網内の中継サーバ3にINVITE(IAM)を送信する(S105)。ここで、INVITE(IAM)は、ISUPのIAM信号をカプセリングしたSIPのINVITEメッセージを表す。そして、PSTN−GW1aは、応答信号(ACM)を通信事業者Aの通信網に送信する(S106)。
【0060】
INVITE(IAM)を受信した中継サーバ3は、INVITEメッセージのヘッダ部の情報に基づき、通信事業者Bの通信網と接続されるPSTN−GW1bへINVITE(IAM)を送信する(S107)。
【0061】
INVITE(IAM)を受信したPSTN−GW1bのカプセル化対象呼記憶制御部13bは、INVITE(IAM)にカプセル化されたISUP信号が付されていることから、当該呼が中継接続呼であることを記憶部に記憶する。そして、カプセル化解除部16bが、INVITE(IAM)内にカプセル化されたISUP信号情報のカプセル化を解除してISUP信号(IAM)に変換し(カプセル化解除)(S108)、ルーチング部(第2のルーチング部)17bがIAMメッセージを通信事業者Bの通信網に送信する(S109)。
【0062】
次に、PSTN−GW1bは、通信事業者Bの通信網から応答信号(ACM)を受信し(S110)、続いて、呼出し中を示す呼出信号(CPG)を通信事業者Bの通信網から受信する(S111)。PSTN−GW1bのカプセル化対象呼記憶制御部13bは、当該呼(応答信号のもととなる着呼要求信号)が中継接続呼である旨が記憶部に記憶されていることを確認する。そして、DBアクセス部12bが中継判断DB装置2への問い合わせ要求(中継判断要求情報の送信)をすることなく、プロトコル変換部14bがISUPのCPGメッセージを、SIPの180メッセージにプロトコル変換し、カプセル化処理部15bが、受信したISUPメッセージ(CPG)のカプセル化を行う(S112)。続いて、ルーチング部17bが自IP網内の中継サーバ3に180(CPG)を送信する(S113)。ここで、180(CPG)は、ISUPのCPG信号をカプセリングしたSIPの180メッセージを表す。
【0063】
180(CPG)を受信した中継サーバ3は、PSTN−GW1aに180(CPG)を送信する(S114)。
【0064】
180(CPG)を受信したPSTN−GW1aは、180(CPG)にカプセル化されたISUP信号が付されているため、カプセル化解除部16aが、180(CPG)内にカプセル化されたISUP信号情報のカプセル化を解除してISUP信号(CPG)に変換し(カプセル化解除)(S115)、ルーチング部17aがCPGメッセージを通信事業者Aの通信網に送信する(S116)。
【0065】
次に、PSTN−GW1bが、通信事業者Bの通信網から着信端末が応答したことを示す応答信号(ANM)を受信すると(S117)、PSTN−GW1bのカプセル化対象呼記憶制御部13bは、当該呼(応答信号のもととなる着呼要求信号)が中継接続呼である旨が記憶部に記憶されていることを確認する。そして、プロトコル変換部14bがISUPのANMメッセージを、SIPの200メッセージにプロトコル変換し、カプセル化処理部15bが、受信したISUPメッセージ(ANM)のカプセル化を行う(S118)。続いて、ルーチング部17bが自IP網内の中継サーバ3に200(ANM)を送信する(S119)。ここで、200(ANM)は、ISUPのANM信号をカプセリングしたSIPの200メッセージを表す。
【0066】
200(ANM)を受信した中継サーバ3は、PSTN−GW1aに200(ANM)を送信する(S120)。
【0067】
200(ANM)を受信したPSTN−GW1aは、200(ANM)にカプセル化されたISUP信号が付されているため、カプセル化解除部16aが、200(ANM)内にカプセル化されたISUP信号情報のカプセル化を解除してISUP信号(ANM)に変換し(カプセル化解除)(S121)、ルーチング部17aがANMメッセージを通信事業者Aの通信網に送信する(S122)。
【0068】
これ以降の信号処理においても、PSTN−GW1aおよびPSTN−GW1bは、ISUPメッセージ(着呼要求信号に応じて発信された呼制御信号)を受信すると、当該呼が中継接続呼であることを自身の記憶部を参照して確認し、SIPへのプロトコル変換、およびISUP信号のカプセル化処理を行う。なお、自身の記憶部に当該呼が中継接続呼であることを記憶しておくことで、DBアクセス部12による中継判断DB装置2への問い合わせをなくすことができる。また、PSTN−GW1aおよびPSTN−GW1bは、ISUP信号がカプセル化されたSIPメッセージを受信すると、カプセル化解除を行い、各信号の中継を行う。
【0069】
このようにして、PSTN−IP網−PSTNの各通信事業者間の中継において、透過的な中継接続サービスを提供することができる。
【0070】
図4は、本実施形態に係る通信システムにおいて、通信事業者Aの通信網(PSTN)から、同じPSTN−GW1aに接続点を有する他の通信事業者Cの通信網(PSTN)に中継接続される場合(パターン2)の処理の流れを説明するシーケンス図である。なお、図2のパターン2に示したように、通信事業者Aの通信網と通信事業者Cの通信網とは同じPSTN−GW1aに接続点を有しているものである。
【0071】
まず、PSTN−GW1aは、通信事業者Aの通信網から着呼要求信号(発呼信号)(IAM)を受信する(S201)。そして、着呼要求信号(IAM)を受信したPSTN−GW1aの受信制御部11aは、その着呼要求信号(IAM)をDBアクセス部12aに出力する。そしてDBアクセス部12aは、着呼要求信号(IAM)に付された着番号情報を含む中継判断要求情報を生成し、中継判断DB装置2に送信する(S202)。
【0072】
中継判断DB装置2の中継判断処理部20は、中継判断要求情報を受信すると、着呼要求信号(IAM)の着番号情報をキーとして、中継判断DB200を参照し、対象となる着呼要求信号(IAM)が、中継接続か、自IP網着信かを判断する。ここでは、中継判断処理部20が、中継接続であると判断したものとする。そして、中継判断処理部20は、その中継接続である旨の判断を応答情報として、中継判断要求情報を送信したPSTN−GW1aに返信する(S203)。なお、このとき中継判断処理部20は、付加情報として中継先がPSTN−GW1aである旨を応答情報に付して、PSTN−GW1aに返信してもよい。
【0073】
中継判断DB装置2から中継接続である旨の応答情報を受信すると、PSTN−GW1aのカプセル化対象呼記憶制御部13aは、当該呼が中継接続であることを記憶部に記憶する。そして、プロトコル変換部14aが、ISUPのIAMメッセージを、SIPのINVITEメッセージにプロトコル変換し、カプセル化処理部15aが、受信したISUPメッセージ(IAM)のカプセル化を行う(S204)。
【0074】
次に、ルーチング部(第1のルーチング部)17aは、INVITE(IAM)の送信先が、自身のPSTN−GW1aに接続点を有する通信事業者Cの通信網(PSTN)であると判定し、当該信号をカプセル化解除部16aに出力する。続いて、カプセル化解除部16aが、INVITE(IAM)内にカプセル化されたISUP信号情報のカプセル化を解除してISUP信号(IAM)に変換し(カプセル化解除)(S205)、ルーチング部17aが変換したISUP信号であるIAMメッセージを通信事業者Cに送信する(S206)。
【0075】
なお、PSTN−GW1aが、中継判断DB装置2から応答情報の付加情報として、当該呼の中継先が自身のPSTN−GW1aであることを取得した場合や、プロトコル変換部14aおよびカプセル化処理部15aによる処理の前に、ルーチング部17aが当該呼のルーチング先を決定する処理を行うようにした場合においては、プロトコル変換部14aによるプロトコル変換処理、カプセル化処理部15によるカプセル化処理(S204)、およびカプセル化解除部16によるカプセル化解除処理(S205)を行わないようにすることができる。この場合、PSTN−GW1aは、中継判断DB装置2からの応答情報に基づき、当該呼が中継接続であることを記憶部に記憶した後、ルーチング部17aが、IAMメッセージをそのまま通信事業者Cに転送する。
【0076】
次に、PSTN−GW1aは、通信事業者Cの通信網からの応答信号(ACM)を受信すると(S207)、カプセル化対象呼記憶制御部13aが、当該呼が中継接続呼である旨が記憶部に記憶されていることを確認し、PSTN−GW1aにおいて、プロトコル変換処理、カプセル化処理、およびカプセル化解除処理を前記のように行うか、または、これらの処理を行わないようにして、応答信号(ACM)を通信事業者Aに送信する(S208)。
【0077】
そして、PSTN−GW1aは、このS207およびS208と同様の処理を行い、通信事業者Cの通信網から呼出信号(CPG)を受信して(S209)、その呼出信号(CPG)を通信事業者Aの通信網に送信する(S210)。続いて、PSTN−GW1aは、通信事業者Cの通信網から応答信号(ANM)を受信して(S211)、その応答信号(ANM)を通信事業者Aの通信網に送信する(S212)。
【0078】
このようにすることで、同じPSTN−GW1に接続点を有する他の通信事業者の通信網(PSTN)に中継接続することができる。
【0079】
図5は、本実施形態に係る通信システムにおいて、中継接続事業者網に収容される加入者の端末6に着信する場合(パターン3)の処理の流れを説明するシーケンス図である。
【0080】
まず、PSTN−GW1aは、通信事業者Aの通信網から着呼要求信号(発呼信号)(IAM)を受信する(S301)。そして、着呼要求信号(IAM)を受信したPSTN−GW1aの受信制御部11aは、その着呼要求信号(IAM)をDBアクセス部12aに出力する。そしてDBアクセス部12aは、着呼要求信号(IAM)に付された着番号情報を含む中継判断要求情報を生成し、中継判断DB装置2に送信する(S302)。
【0081】
中継判断DB装置2の中継判断処理部20は、中継判断要求情報を受信すると、着呼要求信号(IAM)の着番号情報をキーとして、中継判断DB200を参照し、対象となる着呼要求信号(IAM)が、中継接続か、自IP網着信かを判断する。ここでは、中継判断処理部20が、自IP網着信であると判断したものとする。そして、中継判断処理部20は、自IP網着信である旨の判断を応答情報として、中継判断要求情報を送信したPSTN−GW1aに返信する(S303)。
【0082】
中継判断DB装置2から自IP網着信である旨の応答情報を受信すると、PSTN−GW1aのプロトコル変換部14aが、ISUPのIAMメッセージを、SIPのINVITEメッセージにプロトコル変換して、ルーチング部17aが、自IP網内の中継サーバ3にINVITEを送信する(S304)。つまり、ここでは、カプセル化対象呼記憶制御部13による中継接続であることの記憶部への記憶や、カプセル化処理部15によるカプセル化処理を行わない。そして、PSTN−GW1aは、応答信号(ACM)を通信事業者Aの通信網に送信する(S305)。
【0083】
続いて、中継サーバ3は、INVITEのヘッダ部の情報から、自IP網内の加入者サーバ4にINVITEを送信する(S306)。そして、加入者サーバ4は、送信先となる端末6に接続するIP変換装置5に、そのINVITEを送信する(S307)。
【0084】
次に、PSTN−GW1aは、IP変換装置5から、加入者サーバ4および中継サーバ3を介して、呼出信号である180メッセージを受信する(S308〜S310)。そして、カプセル化対象呼記憶制御部13aは、記憶部に当該呼が中継接続呼である旨の記憶がされていないことを確認し、プロトコル変換部14aが、SIPの180メッセージをISUPの呼出信号(CPG)に変換して、ルーチング部17aが通信事業者Aの通信網に送信する(S311)。つまり、カプセル化対象呼記憶制御部13aが、記憶部に当該呼が中継接続呼である旨が記憶されていないことを確認することにより、カプセル化処理部15aによるカプセル化処理や、カプセル化解除部16aによりカプセル化解除処理を行わないようにすることができる。
【0085】
続いて、PSTN−GW1aは、IP変換装置5から、加入者サーバ4および中継サーバ3を介して、着信端末6からの応答信号である200メッセージを受信する(S312〜S314)。そして、カプセル化対象呼記憶制御部13aは、記憶部に当該呼が中継接続呼である旨の記憶がされていないことを確認し、プロトコル変換部14aが、SIPの200メッセージをISUPの応答信号(ANM)に変換して、通信事業者Aの通信網に送信する(S315)。続いて、PSTN−GW1aは、IP変換装置5に向けて、応答確認信号(ACK)を送信する(S316〜S318)。
【0086】
このようにすることで、中継接続事業者網に収容される加入者の端末6に着信する場合に、PSTN−GW1aは、SIPメッセージ内にISUP信号をカプセル化する処理を行わないようにすることができる。したがって、本実施形態に係る通信方法および通信システムによれば、中継接続を行うIP網内でのメッセージサイズの増大を防ぎ、効率的な中継を行うことができる。
【符号の説明】
【0087】
1 PSTN−GW(ゲートウェイ装置)
2 中継判断DB装置
3 中継サーバ
4 加入者サーバ
5 IP変換装置
6 端末
7 IGS(関門交換機)
8 IC(中継交換機)
9 GC(加入者交換機)
11 受信制御部
12 DBアクセス部
13 カプセル化対象呼記憶制御部
14 プロトコル変換部
15 カプセル化処理部
16 カプセル化解除部
17 ルーチング部
20 中継判断処理部
200 中継判断DB

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信元となる通信事業者の通信網から受信した着呼要求信号を、送信先となる他の通信事業者の通信網に中継接続する中継接続事業者のIP網に、前記送信元となる通信事業者のPSTNから送信される信号を受信する発側のゲートウェイ装置と、前記着呼要求信号が、前記送信先となる他の通信事業者の通信網に中継接続する呼であるか、当該中継接続事業者のIP網内の加入者サーバに収容される端末に着信する呼であるかを、前記着呼要求信号に付された着番号情報ごとに示す中継判断DBを格納する中継判断DB装置とを備え、中継接続サービスを提供する通信システムに用いられる通信方法であって、
前記発側のゲートウェイ装置は、
前記送信元となる通信事業者の通信網から前記着呼要求信号を受信し、その着呼要求信号に付された着番号情報を含めた中継判断要求情報を前記中継判断DB装置に送信し、
前記中継判断DB装置は、
前記中継判断要求情報の着番号情報をキーとして、前記中継判断DBを参照し、当該着呼要求信号が、前記送信先となる他の通信事業者の通信網に中継接続する呼であるか、または、前記中継接続事業者のIP網内の着信呼であるかを判断して、その判断結果を前記発側のゲートウェイ装置に送信し、
前記発側のゲートウェイ装置は、
前記着呼要求信号が、前記中継接続事業者のIP網内の着信呼であるとの判断結果を受信した場合に、
前記着呼要求信号を当該IP網で用いられる着呼要求のIP信号にプロトコル変換し、
当該IP網の加入者サーバ、および着信先となる前記端末と接続されるIP変換装置を介して、前記端末に、前記着呼要求のIP信号を送信すること
を特徴とする通信方法。
【請求項2】
前記中継接続事業者のIP網に、前記送信先となる他の通信事業者のPSTNに接続される着側のゲートウェイ装置をさらに備え、
前記発側のゲートウェイ装置は、
前記中継判断DB装置から、前記着呼要求信号が、前記送信先となる他の通信事業者の通信網に中継接続する呼であるとの判断結果を受信した場合に、
前記着呼要求信号を前記IP網で用いられる着呼要求のIP信号にプロトコル変換し、
当該着呼要求のIP信号内に前記着呼要求信号をカプセル化して、前記着側のゲートウェイ装置に送信し、
前記着側のゲートウェイ装置は、
前記着呼要求信号がカプセル化された前記着呼要求のIP信号を受信すると、前記カプセル化された着呼要求信号のカプセル化を解除して、前記PSTNで用いられる着呼要求信号に変換し、
当該着呼要求信号を、前記送信先となる他の通信事業者の通信網に送信すること
を特徴とする請求項1に記載の通信方法。
【請求項3】
前記発側のゲートウェイ装置は、
前記中継判断DB装置から、前記着呼要求信号が、前記送信先となる他の通信事業者の通信網に中継接続する呼であるとの判断結果を受信した場合に、
前記送信先となる他の通信事業者の通信網が、当該発側のゲートウェイ装置と接続されているときに、
前記着呼要求信号を、前記送信先となる他の通信事業者の通信網に転送すること
を特徴とする請求項2に記載の通信方法。
【請求項4】
前記発側のゲートウェイ装置は、
前記中継判断DB装置から、前記着呼要求信号が、前記送信先となる他の通信事業者の通信網に中継接続する呼であるとの判断結果を受信した場合に、
当該着呼要求信号が、前記中継接続する呼であることを前記発側のゲートウェイ装置の記憶部に記憶し、
前記送信元となる通信事業者の通信網から当該着呼要求信号に応じて発信された呼制御信号を受信した場合に、当該記憶部に、当該着呼要求信号が前記中継接続する呼として記憶されていることを確認し、
前記呼制御信号を前記IP網で用いられる呼制御のIP信号にプロトコル変換し、
当該呼制御のIP信号内に前記呼制御信号をカプセル化して、前記着側のゲートウェイ装置に送信し、
前記着側のゲートウェイ装置は、
前記呼制御信号がカプセル化された前記呼制御のIP信号を受信すると、前記カプセル化された呼制御信号のカプセル化を解除して、前記PSTNで用いられる呼制御信号に変換し、
当該呼制御信号を、前記送信先となる他の通信事業者の通信網に送信すること
を特徴とする請求項2に記載の通信方法。
【請求項5】
前記着側のゲートウェイ装置は、
前記着呼要求信号がカプセル化された前記着呼要求のIP信号を、前記発側のゲートウェイ装置から受信すると、
当該着呼要求信号が、前記送信先となる他の通信事業者の通信網に中継接続する呼であることを前記着側のゲートウェイ装置の記憶部に記憶し、
前記送信先となる他の通信事業者の通信網から前記着呼要求信号に応じて発信された呼制御信号を受信した場合に、当該記憶部に、当該着呼要求信号が前記中継接続する呼として記憶されていることを確認し、
前記呼制御信号を前記IP網で用いられる呼制御のIP信号にプロトコル変換し、
当該呼制御のIP信号内に前記呼制御信号をカプセル化して、前記発側のゲートウェイ装置に送信し、
前記発側のゲートウェイ装置は、
前記呼制御信号がカプセル化された前記呼制御のIP信号を受信すると、前記カプセル化された呼制御信号のカプセル化を解除して、前記PSTNで用いられる呼制御信号に変換し、
当該呼制御信号を、前記送信元となる通信事業者の通信網に送信すること
を特徴とする請求項4に記載の通信方法。
【請求項6】
送信元となる通信事業者の通信網から受信した着呼要求信号を、送信先となる他の通信事業者の通信網に中継接続する中継接続事業者のIP網に、前記送信元となる通信事業者のPSTNから送信される信号を受信する発側のゲートウェイ装置と、前記着呼要求信号が、前記送信先となる他の通信事業者の通信網に中継接続する呼であるか、当該中継接続事業者のIP網内の加入者サーバに収容される端末に着信する呼であるかを、前記着呼要求信号に付された着番号情報ごとに示す中継判断DBを格納する中継判断DB装置とを備え、中継接続サービスを提供する通信システムであって、
前記発側のゲートウェイ装置は、
前記送信元となる通信事業者の通信網から前記着呼要求信号を受信する受信制御部と、
前記受信した着呼要求信号に付された着番号情報を含めた中継判断要求情報を前記中継判断DB装置に送信するDBアクセス部と、
前記中継判断DB装置から、前記着呼要求信号が前記中継接続事業者のIP網内の着信呼であるとの判断結果を受信した場合に、前記着呼要求信号を当該IP網で用いられる着呼要求のIP信号にプロトコル変換するプロトコル変換部と、
当該IP網の加入者サーバ、および着信先となる前記端末と接続されるIP変換装置を介して、前記端末に向けて前記着呼要求のIP信号を送信する第1のルーチング部と、を備え、
前記中継判断DB装置は、
前記中継判断DBと、
前記発側のゲートウェイ装置から受信した前記中継判断要求情報の着番号情報をキーとして、前記中継判断DBを参照し、当該着呼要求信号が、前記送信先となる他の通信事業者の通信網に中継接続する呼であるか、または、前記中継接続事業者のIP網内の着信呼であるかを判断して、その判断結果を前記発側のゲートウェイ装置に送信する中継判断処理部と、を備えること
を特徴とする通信システム。
【請求項7】
前記中継接続事業者のIP網に、前記送信先となる他の通信事業者のPSTNに接続される着側のゲートウェイ装置をさらに備え、
前記発側のゲートウェイ装置は、
前記中継判断DB装置から、前記着呼要求信号が前記送信先となる他の通信事業者の通信網に中継接続する呼であるとの判断結果を受信した場合に、前記プロトコル変換部がプロトコル変換した前記着呼要求のIP信号内に、前記着呼要求信号をカプセル化するカプセル化処理部をさらに備え、
前記第1のルーチング部が、前記着呼要求信号がカプセル化された前記着呼要求のIP信号を前記着側のゲートウェイ装置に送信し、
前記着側のゲートウェイ装置は、
前記着呼要求信号がカプセル化された前記着呼要求のIP信号を受信すると、前記カプセル化された着呼要求信号のカプセル化を解除して、前記PSTNで用いられる着呼要求信号に変換するカプセル化解除部と、
前記カプセル化解除部が変換した前記PSTNで用いられる着呼要求信号を、前記送信先となる他の通信事業者の通信網に送信する第2のルーチング部と、を備えること
を特徴とする請求項6に記載の通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−250330(P2011−250330A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−123684(P2010−123684)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】