説明

中継装置およびプログラム

【課題】多大な設備投資を行うことなくインターネット放送サービスの実現を可能にする。
【解決手段】一連の映像を表すエンコードデータを含むデータパケットを受信する受信手段と、受信したデータパケットの複製を生成して他の中継装置へ送信する第1の送信手段と、前記受信したデータパケットに含まれているエンコードデータを、映像または音声を表すエンコードデータファイルのデコードおよびそのデコード結果に応じた映像信号の出力を行うプレイヤ装置へ送信する手段であって、映像の視聴開始を指示された後、前記プレイヤ装置へ最初に送信するエンコードデータには、前記エンコードデータファイルのファイルヘッダを付加して送信し、前記プレイヤ装置へ最後に送信するエンコードデータには前記エンコードデータファイルの終端を示す制御コードを付加して送信する第2の送信手段とを有する中継装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インターネット等の電気通信回線を介した映像や音声の配信サービスを実現する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高速データ通信技術の普及に伴い、例えばインターネットテレビなど電気通信回線経由の映像配信サービスが一般に行われている。この種の映像配信サービスにおいては、パーソナルコンピュータを用いて映像の視聴を行うことが一般的であったが、パーソナルコンピュータの表示装置はテレビ受像器に比較して表示性能が劣るため、充分な画質で映像を視聴することができないといった問題があった。このため、セットトップボックス(以下、「STB」)と呼ばれる専用通信装置を上記電気通信回線とテレビ受像器との間に介挿し、その電気通信回線を介してストリーミング配信されるエンコードデータ(映像信号などをエンコードして得られるデジタルデータ)をSTBによりデコードして得られる映像信号をテレビ受像器に与えて映像を再生することが提案されている。しかし、上記映像配信サービスにおいては、一般的なテレビ放送とは異なり、各STBへ別個にエンコードデータの配信を行う必要があるため、不特定多数のユーザの利用に耐えるためには、映像データ配信用のコンピュータ装置を複数台設置する等の多重化や充分な帯域幅の通信経路の確保を行う必要があり、多大な設備投資を要する。そこで、多大な設備投資を行うことなく電気通信回線経由の映像配信サービスの実現を可能にするための技術が種々提案されており、その一例としては特許文献1に開示された技術が挙げられる。
【0003】
特許文献1には、映像データのストリーミング配信を行う配信サーバとエンコードデータの表す映像の再生を行うクライアント装置との間の通信を中継するホームゲートウェイに、配信サーバまたは他のホームゲートウェイから配信されたエンコードデータを一旦蓄積して配信する機能と、上記クライアント装置とは異なる他のクライアント装置からエンコードデータの配信を要求された場合に、該他のクライアント装置と上記配信サーバとの通信を中継するホームゲートウェイに上記蓄積したエンコードデータを送信する機能と、を設けることが開示されている。
【特許文献1】特開2003−69970号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に開示された技術では、配信サーバ等から配信されるエンコードデータをホームゲートウェイに一旦蓄積するため、ホームゲートウェイに蓄積されているエンコードデータの表す映像を各ユーザが好みの時間に視聴するといったサービス形態には適するが、放送のように各ユーザがほぼ同時に同一の内容を視聴することが望まれるサービス形態には適さない。何故ならば、一般的に30分から一時間程度の映像を表すエンコードデータのデータサイズは数10ギガバイト程度になるため、そのようなエンコードデータのファイル単位での蓄積に要する時間は各ユーザの視聴タイミングに多大な影響を与える虞があるからである。
本発明は上記課題に鑑みて為されたものであり、多大な設備投資を行うことなくインターネット放送サービスの実現を可能にする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明は、一連の映像または音声を表すエンコードデータを含むデータパケットを通信網を介して受信する受信手段と、前記受信手段により受信したデータパケットの複製を生成して他の中継装置へ送信する第1の送信手段と、前記受信したデータパケットに含まれているエンコードデータを、映像または音声を表すエンコードデータファイルのデコードおよびそのデコード結果に応じた映像信号または音声信号の出力を行うプレイヤ装置へ送信する手段であって、映像または音声の視聴開始を指示された後、前記プレイヤ装置へ最初に送信するエンコードデータには、前記エンコードデータファイルのファイルヘッダを付加して送信する第2の送信手段とを有することを特徴とする中継装置、および、コンピュータ装置を上記各手段として機能させるプログラムを提供する。
【0006】
このような中継装置およびプログラムによれば、配信サーバから配信されるデータパケットの複製が上記第1の送信手段によって他の中継装置へ送信されるため、該他の中継装置は上記配信サーバと通信を行う必要はなく、上記配信サーバに過剰な負荷がかかることはない。したがって、配信サーバの多重化や各中継装置から配信サーバへ至る通信経路に充分な帯域幅を確保する等の設備投資を行なわなくとも、電気通信回線を介した映像や音声の配信サービスを提供することが可能になる。また、上記中継装置およびプログラムによれば、ファイル単位でのエンコードデータの蓄積は行われないため、若干の通信遅延はあるものの各ユーザの視聴タイミングに多大な影響を与えることはない。
【0007】
より好ましい態様においては、上記中継装置の第2の送信手段は、前記プレイヤ装置へ宛ててエンコードデータを送信してから所定時間が経過した時点で該エンコードデータに後続するエンコードデータが書き込まれたデータパケットを受信していない場合には、所定の映像または音声を表すエンコードデータを生成して前記プレイヤ装置へ送信することを特徴とする。
【0008】
また、別の好ましい態様においては、上記中継装置の受信手段により受信するデータパケットには、前記プレイヤ装置とは異なる電子機器に与えるべき作動指示を示すコントロールデータが付加されており、上記中継装置は、前記受信手段により受信されたデータパケットから前記コントロールデータを取得するする取得手段と、前記取得手段により取得したコントロールデータを前記第2の送信手段によるデータパケットの送信に同期させつつ前記電子機器へ出力する出力手段とを更に有することを特徴とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、多大な設備投資を行うことなくインターネット放送サービスの実現が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(A:第1実施形態)
(A−1:構成)
以下、図面を参照しつつ本発明の一実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る通信システム1の構成例を示す図である。
図1に示すように通信システム1には、通信網30に各々接続された配信サーバ群10、リフレクタ20a、20bおよび20cが含まれている。以下、上記3台のリフレクタの各々を区別する必要がない場合には、単に「リフレクタ20」と表記する。通信網30は、例えばインターネットであり、上記各装置間で所定の通信プロトコル(本実施形態では、RTP(Real-time Transport Protocol))にしたがって行われるデータ通信を仲介するためのものである。
【0011】
配信サーバ群10の各々は、所謂インターネット放送を実現するためのコンピュータ装置である。配信サーバ群10の各々は、放送番組の映像やその映像に付随した音声を表すデータを所定の時間帯に上記所定の通信プロトコルにしたがってストリーミング配信することにより、インターネット放送を実現する。以下では、上記時間帯の開始時刻を「番組開始時刻」といい、同終了時刻を「番組終了時刻」と呼ぶ。この配信サーバ群10を構成する複数のコンピュータ装置の各々は、互いに異なる番組のストリーミング配信を行っている。なお、以下では、配信サーバ群10を構成するコンピュータ装置の各々を区別する必要がない場合には、単に「配信サーバ10」と表記する。配信サーバ10によるストリーミング配信の態様には、一般に「ライブ方式」と「オンデマンド方式」の2つの態様があるが、配信サーバ10によるストリーミング配信はこれら2つの態様のうちの「ライブ方式」である。ここで、ライブ方式のストリーミング配信とは、所謂生中継方式の番組配信である。より詳細に説明すると、ライブ方式のストリーミング配信では、配信対象である映像や音声を所定のフレーム数分ずつ収録してMPEG2などの所定の規格にしたがったエンコードし、そのエンコード結果であるエンコードデータをパケット化して配信する態様である。一方、「オンデマンド方式」とは、配信対象である映像や音声の全体を表すエンコードデータに所定のファイルヘッダおよびEOF等ファイルの終端を示す制御コードを付加して得られるエンコードデータファイルを配信サーバ10に予め蓄積しておき、そのエンコードデータファイルをパケット化して配信する態様である。
【0012】
図1のリフレクタ20は、前述したホームゲートウェイなどの中継装置であり、上記ストリーミング配信される番組の視聴者であるユーザの住居等に配置される。図1に示すように、上記3台のリフレクタ20の各々には、例えばイーサネット(登録商標)等のホームネットワーク(図示省略)を介してDLNA(Digital Living Network
Alliance:なお、DLNAは登録商標)プレイヤ装置が1台ずつ接続されている。このDLNAプレイヤ装置には、テレビ受像器が接続される(図示省略)。DLNAプレイヤ装置は、特許文献1に開示された「クライアント装置」に相当するコンピュータ装置であり、他のコンピュータ装置(特許文献1ではホームゲートウェイ)に蓄積されているエンコードデータファイルをHTTPに準拠した手順で取得してデコードし、そのデコード結果に応じた映像信号や音声信号を自装置に接続されているテレビ受像器へ出力することで映像や音声の再生を行う装置である。
【0013】
さて、通信システム1においては、配信サーバ10は、上記3台のリフレクタのうちの予め定められた1台(例えば、リフレクタ20a)へ宛ててのみデータパケットを送信し、以下、図2に示すように各リフレクタ間でデータパケットを送受信する処理が実行される。これにより、配信サーバ10にアクセスが集中し過剰な負荷がかかることが回避されるのである。また、リフレクタ20は、通信網30を介して受信したデータパケットに含まれているエンコードデータをDLNAプレイヤ装置へ転送する際に、上記エンコードデータファイルのファイルヘッダおよびEOF等の制御コードを適宜付加して転送することにより、それらエンコードデータが上記エンコードデータファイルの一部であるとDLNAプレイヤ装置に認識させるのである。これにより、本来ファイル単位でのデータ授受しかできないDLNAプレイヤ装置を用いてストリーミング配信サービスを利用することが可能になる。加えて、本実施形態のリフレクタ20は、ファイル単位でのエンコードデータの蓄積を行わないため、各ユーザの番組視聴タイミングに多大な影響を与えることもない。以下、本発明の特徴を顕著に示すリフレクタ20を中心に説明する。
【0014】
図3は、リフレクタ20の構成例を示すブロック図である。
図3に示すようにリフレクタ20は、制御部110、第1通信インタフェイス(以下、「IF」)部120、第2通信IF部130、記憶部140、および、これら各構成要素間のデータ授受を仲介するバス150を有している。
【0015】
制御部110はCPU(Central Processing Unit)であり、記憶部140に格納されている制御プログラムにしたがって作動することによりリフレクタ20の制御中枢としての役割を果たす。第1通信IF部120は、例えばNIC(Network Interface Card)である。この第1通信IF部120は、通信網30に接続されており、インターネットを介して送信されてくるデータパケット(本実施形態では、RTPパケット)を受信し制御部110へ引き渡す一方、制御部110から受け取ったRTPパケットを上記インターネットを介してその宛先へ送信する。第2通信IF部130もNICであり、前述したホームネットワークに接続されている。この第2通信IF部130は、制御部110から引き渡されるデータパケット(本実施形態では、HTTPパケット)を上記ホームネットワークへ送出する一方、制御部110から受け取ったHTTPパケットを上記ホームネットワークを介してその宛先へ送信する。つまり、上記制御プログラムにしたがって作動している制御部110は、2つの通信網(本実施形態では、インターネットとホームネットワーク)の各々に接続されている機器間のデータ通信を通信プロトコルの変換を行いつつ仲介するゲートウェイ処理を実行する。このゲートウェイ処理の詳細については後に明らかにする。
【0016】
記憶部140は、図3に示すように、揮発性記憶部141と不揮発性記憶部142とを含んでいる。揮発性記憶部141は、例えばRAM(Random Access Memory)であり、上記制御プログラムにしたがって作動している制御部110によってワークエリアとして利用される。一方、不揮発性記憶部142は、例えばFlashROMであり、この不揮発性記憶部142には前述した制御プログラム142cが格納されている。また、不揮発性記憶部142には、本発明に係る中継装置に特徴的な処理を制御部110に実行させるためのデータが格納される。不揮発性記憶部142に格納されるデータの一例としては、番組選択画面用データ142aと転送先指示データ142bとが挙げられる。
【0017】
番組選択画面用データ142aは、各配信サーバ10によりストリーミング配信される番組のうちの何れを視聴するのかをユーザに選択させる番組選択画面(図4参照)をテレビ受像器に表示する処理をDLNAプレイヤ装置に実行させるためのHTMLデータである。この番組選択画面用データ142aには、配信サーバ10からストリーミング配信されるデータパケット(以下、データストリーム)により表される番組毎に、それらデータストリームを一意に示す識別子(例えば、配信元である配信サーバ10のドメイン名やIPアドレス)と、番組の名称やその番組の内容を表す文字列、番組開始時刻および番組終了時刻等を表す第1のメタデータが含まれる。好ましい態様においては、制御部110は、リフレクタ20の電源(図示省略)投入時点で上記第1のメタデータを各配信サーバ10から収集して上記番組選択画面用データ142aを生成し不揮発性記憶部142に書き込む。また、別の好ましい態様においては、上記第1のメタデータを定期的に各配信サーバ10からリフレクタ20の各々へ配信し、その第1のメタデータから上記番組選択画面用データ142aを生成して不揮発性記憶部142に書き込む処理を制御部110に実行させても良い。
【0018】
番組選択画面用データ142aには、上記第1のメタデータの他に、データストリーム毎にそのデータストリームに含まれているエンコードデータをHTTPに準拠した手順でDLNAプレイヤ装置に取得させることを可能にする第2のメタデータが含まれている。ここで、HTTPはファイル単位でのデータ通信を規定する通信プロトコルであるから、上記第2のメタデータとしては、上記各エンコードデータを前述したエンコードデータファイルの一部としてDLNAプレイヤ装置に取得させるために擬似的に付与するファイル名称やファイルサイズ(例えば、第1のメタデータの表す番組終了時刻から番組開始時刻を減算して得られる時間長(すなわち、番組の放送時間)に単位時間当たりのデータサイズを乗算して得られる値)を表すデータが挙げられる。なお、本実施形態では、上記ファイルサイズとして番組の放送時間に応じて定まる値を用いたが、十分に大きな値(例えば、上記エンコードデータファイルの仕様等から定まる最大のデータサイズ)であれば、どのような値であっても良い。上記ファイルサイズの値が十分に大きくないと、上記全てのエンコードデータの受信を完了するよりも前に上記ファイル名称で識別されるエンコードデータファイルのダウンロードが完了したと誤判断される虞があるからである。
【0019】
転送先指示データ142bは、第1通信IF部120を介して受信したデータパケットの転送先を示すデータ(例えば、データパケットの転送先であるリフレクタ20のIPアドレス)である。例えば、図2に示す転送経路でのリフレクタ20間のデータパケットの転送を実現するためには、リフレクタ20aの不揮発性記憶部142には、転送先指示データ142bとしてリフレクタ20bの通信アドレスを格納しておき、リフレクタ20bの不揮発性記憶部142には、転送先指示データ142bとしてリフレクタ20cの通信アドレスを格納しておけば良い。そして、上記転送経路の終端に位置するリフレクタ20cには、転送指示データ142bとして、該リフレクタが転送経路の終端であることを示すデータを格納しておけば良い。なお、本実施形態では、転送先指示データをリフレクタ20の不揮発性記憶部142に予め格納しておく場合について説明したが、配信サーバ10が送信するデータパケットの各々にその転送先を示す転送先指示データを付加(例えば、データパケットのヘッダ部の所定領域に書き込んでおく)しておいても良い。このような態様においては、番組毎にその番組の映像または音声を表すエンコードデータが書き込まれたデータパケットをどのような転送経路で配信するのかを配信サーバ10を用いてインターネット放送を行っている事業者に制御させることが可能になる。
【0020】
制御プログラム142cは、図3に示すように、リフレクタ処理、番組選択画面用データ送信処理およびゲートウェイ処理の3つの処理を制御部110に実行させるプログラムである。リフレクタ処理とは、第1通信IF部120を介して受け取ったデータパケットの複製を揮発性記憶部141をワークエリアとして生成し、複製したデータパケットを転送先指示データ142bの示す宛先へ転送する処理である。このリフレクタ処理を制御部110に実行させることによって、リフレクタ20間のデータパケットの送受信(図2参照)が実現される。
【0021】
番組選択画面用データ送信処理は、DLNAプレイヤ装置からの要求に応じて番組選択画面用データ142aをその要求元であるDLNAプレイヤ装置へ送信する処理である。上記制御プログラムにしたがって作動している制御部110は、番組選択画面用データ142aの送信を要求する旨のHTTPリクエスト(GETリクエスト)を受信したことを契機として、この番組選択画面用データ送信処理を実行する。この番組選択画面用データ142aを受信したDLNAプレイヤ装置は、その番組選択画面用データ142aにしたがって番組選択画面(図4参照)を、自装置に接続させているテレビ受像器に表示させる。この番組選択画面を視認したユーザは、DLNAプレイヤ装置に設けられている操作部(図示省略)を適宜操作することによって、視聴を所望する番組を選択することができる。そして、上記番組選択画面にて何れかの番組を選択する操作が為されたことを検出したDLNAプレイヤ装置は、該選択された番組に対応するファイルのダウンロードを要求する旨のHTTPリクエスト(そのファイルのファイル名称が書き込まれたGETリクエスト:以下、ファイルダウンロードリクエスト)を生成し、自装置に接続されているリフレクタ20へ送信する。
【0022】
ゲートウェイ処理は、番組選択画面にて視聴を指示された番組に対応するデータストリームを番組選択画面用データ142aを参照して特定し、そのデータストリームを構成する各データパケットに含まれている各エンコードデータを、上記ダウンロード要求がなされたエンコードデータファイルの一部であるとDLNAプレイヤ装置に認識されるようデータ変換を施しつつ送信する処理である。上記制御プログラムにしたがって作動している制御部110は、上記ファイルダウンロードリクエストを受信したことを契機として、このゲートウェイ処理の実行を開始する。前述したように、リフレクタ20は、パケット化されて配信サーバ10から送信されてくるエンコードデータをファイル化して蓄積する処理を実行しない。このため、制御部110は、上記エンコードデータファイルが有しているべきファイルヘッダに相当するデータやファイルの末尾を示す制御コードを適宜生成して補うことにより、リフレクタ20から送信されるデータパケットに含まれているエンコードデータを上記エンコードデータファイルの一部であるとその送信先であるDLNAプレイヤ装置に認識させるのである。詳細については後に明らかにするが、このゲートウェイ処理においては、制御部110は、番組の視聴開始を指示された後、DLNAプレイヤ装置へ最初に送信するエンコードデータには、上記エンコードデータファイルのファイルヘッダを付加して送信し、同DLNAプレイヤ装置へ最後に送信するエンコードデータには、原則的に、エンコードデータファイルの終端を示す制御コード(EOF)を付加して送信する。なお、配信サーバ10から受信したデータパケットに含まれているエンコードデータのエンコード方式と、DLNAプレイヤ装置でデコード可能なエンコード方式とが異なっている場合(例えば、前者がMPEG2であり、後者がMPEG4である場合)には、両エンコード方式の相互変換を行いつつデータ転送を行えば良い。また、リフレクタ20からDLNAプレイヤ装置へ送信するデータパケットに書き込むエンコードデータの数は1つに限定されるものではなく、複数個であっても勿論良い。要は、リフレクタ20とDLNAプレイヤ装置との通信を仲介するホームネットワークにて割り当て可能な帯域幅に応じたデータ量ずつリフレクタ20からDLNAプレイヤ装置へエンコードデータが送信される態様であれば良い。
以上がリフレクタ20の構成である。
【0023】
(A−2:動作)
次いで、図5に示すN個のデータパケットに書き込まれているエンコードデータの各々により表される番組の視聴開始が指示された場合(HTTPリクエストによるファイルダウンロード要求を受信した場合)に、リフレクタ20が行う動作について説明する。
(1)番組開始時刻以前に視聴開始が指示された場合の動作
番組開始時刻以前に視聴開始を指示された場合、すなわち、番組を冒頭から視聴する場合、DLNAプレイヤ装置へ転送するべき最初のエンコードデータは、図5(a)に示すように、その番組を表すエンコードデータとしてリフレクタ20が最初に受信するエンコードデータ(すなわち、エンコードデータ1)である。したがって、制御部110は、上記エンコードデータ1をDLNAプレイヤ装置へ転送する際には、そのエンコードデータ1に前述したエンコードデータファイルのヘッダ部に相当するデータを付加し、更にパケット化して転送する。そして、上記番組をその番組終了時刻までユーザが視聴する場合、DLNAプレイヤ装置へ転送するべき最後のエンコードデータは、図5(a)に示すように、その番組を表すエンコードデータとしてリフレクタ20が最後に受信するエンコードデータ(すなわち、エンコードデータN)であるから、制御部110は、上記エンコードデータNをDLNAプレイヤ装置へ転送する際には、そのエンコードデータNに前述した制御コード(EOF)を付加し、更にパケット化して転送する。なお、ユーザが、番組終了時刻よりも前に視聴終了を指示した場合には、制御部110は、その指示以降に通信網30を介して受信したデータパケットに含まれているエンコードデータの転送を行う必要はないため、その時点でゲートウェイ処理を終了しても良く、また、上記制御コードのみを書き込んだデータパケットを生成してDLNAプレイヤ装置へ送信しても良い。
【0024】
(2)番組開始時刻より後であって、番組終了時刻前に視聴開始を指示された場合の動作
一方、組開始時刻より後であって、番組終了時刻前に視聴開始を指示された場合(すなわち、番組を途中から視聴する場合)には、DLNAプレイヤ装置へ転送するべき最初のエンコードデータは、上記視聴開始を指示された後、その番組を表すエンコードデータとしてリフレクタ20が最初に受信するエンコードデータである。例えば、図5(b)に示すように、エンコードデータ1が書き込まれたデータパケットの受信後、エンコードデータ2が書き込まれたデータパケットの受信前に番組の視聴開始を指示された場合、DLNAプレイヤ装置へ転送するべき最初のエンコードデータは、エンコードデータ2である。したがって、制御部110は、上記エンコードデータ2をDLNAプレイヤ装置へ転送する際に、そのエンコードデータ2に前述したエンコードデータファイルのヘッダ部に相当するデータを付加し、更にパケット化して転送する。なお、揮発性記憶部141内の記憶領域をリングバッファとして用い、通信網30を介して受信するデータパケットをそのリングバッファの容量に応じた数だけキャッシュする態様においては、上記視聴開始を指示された時点でそのリングバッファに格納されているデータパケットのうちで最も古いものに格納されているエンコードデータを、DLNAプレイヤ装置へ最初に転送するエンコードデータとすれば良い。また、エンコードデータファイルの末尾を表す制御コードの付加態様については、前述した「番組を冒頭から視聴する場合」の付加態様と同一であるため、説明を省略する。
【0025】
以上に説明した構成としたため、図1に示す通信システム1においては、その通信システム1に含まれているリフレクタ20の全てが各配信サーバ10にアクセスする必要はなく、配信サーバ10に過剰な負荷がかかることを回避しつつ、映像や音声のストリーミング配信サービスを提供することが可能になる。また、本実施形態に係るリフレクタ20によれば、データパケット単位でのワークエリアへの書き込みは行われるものの、配信サーバ10から送信されるデータストリームに含まれているエンコードデータをファイル化して蓄積する処理は行わないため、通信遅延等を除いて各ユーザの番組視聴タイミングに多大な影響を与えることはない。
【0026】
(B:第2実施形態)
図6は、本発明に係る中継装置の第2の実施形態であるリフレクタ21の構成例を示すブロック図である。図6では、前述したリフレクタ20の構成要素と同一であるものには同一の符号が付されている。図6と図3とを対比すれば明らかなように、リフレクタ21は、外部機器IF部160を有している点と制御プログラム142cに替えて制御プログラム142dが不揮発性記憶部142に記憶されている点がリフレクタ20と異なっている。
【0027】
外部機器IF部160は、例えばUSB(Universal Serial Bus)やMIDI(Musical Instruments Digital Interface)などの所定の規格にしたがって他の電子機器とデータの授受を行うためのインタフェイスである。制御部110は、例えばUSBコントロールやMIDIイベントなどの各種電子機器へ与える指示を表すコントロールデータを外部機器IF部160を介してその接続先である電子機器に与えることにより、その電子機器の作動制御を行うことができる。本実施形態では、上記コントロールデータは、前述した通信網30を介して送信されてくるエンコードデータに付加された状態(例えば、そのエンコードデータがペイロード部に書き込まれたデータパケットのヘッダ部の所定領域に書き込まれた状態)でリフレクタ21に与えられる。
【0028】
制御プログラム142dは、前述した番組選択画面用データ送信処理、ゲートウェイ処理およびリフレクタ処理の他に、図6に示すコントロールデータ取得処理とコントロールデータ出力処理を制御部110に実行させる点が、前述した制御プログラム142cと異なっている。図6のコントロールデータ取得処理は、第1通信IF部120を介して受信したデータパケットを解析し、そのデータパケットに付加されているコントロールデータを取得する処理である。一方、図6のコントロールデータ出力処理は、上記ゲートウェイ処理によるデータパケットの送信に同期させつつ、上記コントロールデータ取得処理にて取得されたコントロールデータを外部機器IF部160を介してその接続先である電子機器へ出力し、その電子機器の作動制御を行う処理である。このように、通信網30を介して送信されてくるデータパケットに含まれているエンコードデータをDLNAプレイヤ装置へ送信する処理に同期させつつ、そのデータパケットに付加されているコントロールデータの上記電子機器への出力が実行されるため、上記DLNAプレイヤ装置による映像や音声の再生と上記電子機器の動作とを同期させることができるのである。
【0029】
以上に説明したように、本第2実施形態に係るリフレクタ21によれば、ストリーミング配信される映像や音声の再生に同期させて所定の電子機器の作動制御を行うことが可能になる。このため、配信サーバ10に配信させる各データパケットに様々な種類のコントロールデータを付加しておくことによって、新たな通信サービスを提供することが可能になる。
【0030】
例えば、配信サーバ10からパケット化されて配信されるエンコードデータがカラオケ用のデータ(楽曲の進行に合わせてワイプされる歌詞を含む映像とその楽曲の伴奏音とを表すデータ)である場合、各データパケットにそのデータパケットに書き込まれているエンコードデータに対応する演奏区間のガイドメロディを構成する音のピッチとその演奏区間内でのノートオンおよびノートオフタイミングを示すMIDIデータを上記コントロールデータとして付加しておく態様が考えられる。このような態様においては、上記MIDIデータの表すガイドメロディの音程の推移と歌唱音の音程の推移とを比較して歌唱の巧拙の採点を行いその採点結果を表示するカラオケ採点装置を上記電子機器としてリフレクタ21に接続することで、採点付きの通信カラオケサービスを家庭で手軽に利用することが可能になる。
【0031】
また、配信サーバ10からパケット化されて配信されるエンコードデータが料理番組を表すデータ(講師による調理手順の実演映像とその調理手順の解説音声とを表すデータ)である場合、各データパケットにそのデータパケットに書き込まれているエンコードデータに対応する調理手順で使用されている電磁調理器(例えば、電子レンジやIH調理器)に与える指示内容とその指示を与えるタイミング(例えば、上記エンコードデータの表す映像の先頭を基準点とする時刻)を表すUSBコントロールデータ(例えば、加熱の開始や終了、加熱温度などを示すUSBコントロールデータ)を上記コントロールデータとして付加しておく態様が考えられる。このような態様によれば、上記講師が実演した火加減や加熱タイミングおよび加熱時間を体感しつつ調理手順を習得することが可能になる。
【0032】
(C:変形)
以上、本発明の各実施形態について説明したが、上記各実施形態に以下に述べる変形を加えても良いことは勿論である。
(1)上述した第1および第2実施形態では、配信サーバ10の各々に、互いに異なる番組を表すエンコードデータをパケット化して配信させたが、1台の配信サーバ10に複数番組分のエンコードデータを配信させても勿論良い。また、上述した第1および第2実施形態では、「ライブ方式」のストリーミング配信を配信サーバ10に行わせたが、「オンデマンド方式」のストリーミング配信を行わせても勿論良い。ただし、「オンデマンド方式」のストリーミング配信の場合には、エンコードデータファイルがパケット化されて配信サーバ10から送信されるため、リフレクタ20(またはリフレクタ21)で実行するゲートウェイ処理においてファイルヘッダやEOFの付加を行う必要はなく、圧縮方式の相互変換を必要に応じて実行すれば充分である。また、上述した各実施形態では、映像とその映像に付随する音声を表すエンコードデータをパケット化して配信サーバ10から配信したが、映像のみ、または音声のみを表すエンコードデータをパケット化して配信しても勿論良い。
【0033】
(2)上述した第1および第2実施形態では、配信サーバ10から受信したデータパケットに書き込まれているエンコードデータをDLNAプレイヤ装置へ転送する際にファイルヘッダおよびファイルの末尾を示す制御コードを付加して転送することにより、それらエンコードデータをエンコードデータファイルの一部であるとDLNAプレイヤ装置に認識させた。しかし、DLNAプレイヤ装置へのエンコードデータの転送を行った後、そのエンコードデータの表す映像や音声の再生時間に相当する時間が経過するまでに、そのエンコードデータに後続するエンコードデータを配信サーバ10から受信しなかった場合には、不具合が生じてしまう。そこで、上記事態が発生した場合には、例えば「しばらくお待ち下さい」などのメッセージをテレビ受像器に表示させる処理を上記DLNAプレイヤ装置に実行させるためのデータを生成して送信する処理を制御部110に実行させても良い。
【0034】
(3)上述した第2実施形態では、外部機器IF部160に接続されている電子機器に対して、リフレクタ21からコントロールデータを与える場合について説明したが、逆に上記電子機器からリフレクタ21に対してコントロールデータを与えても良い。例えば、上述した第2実施形態により通信カラオケサービスを利用している過程で電子機器側で生成される採点結果データとその採点結果データを配信サーバ10へアップロードすることを示すコントロールデータとをカラオケ採点装置からリフレクタ21に与え、そのコントロールデータの示す処理をリフレクタ21の制御部110に実行させるようにすれば、その通信カラオケサービスの全てのユーザを対象としたカラオケランキングを実施することが可能になる。このように、第2実施形態に係るリフレクタ21によれば、視聴者参加型のインターネット放送を実現することが可能になる。なお、上述した第2実施形態では、配信サーバ10から送信される各データパケットにコントロールデータが付加されている場合には、そのコントロールデータを無条件に読み出し、外部機器IF部160を介して出力する場合について説明したが、上記各データパケットに含まれているエンコードデータにより表される番組をその途中から視聴する場合には、上記コントロールデータの取得および出力を行わないよう制御しても良い。これは、電子機器に与えるべき一連のコントロールデータがその先頭のものから与えられないことにより、上記電子機器が誤作動することを回避するためである。
【0035】
(4)上述した第1および第2実施形態では、本発明に係る中継装置に特徴的な処理を実現する制御プログラムを予めリフレクタ20(リフレクタ21)の記憶部140に記憶させておいた。しかし、かかる制御プログラムを、例えばCD−ROM(Compact Disk Read Only Memory)などのコンピュータ装置読み取り可能な記録媒体に書き込んで配布しても良く、また、インターネットなどの電気通信回線経由のダウンロードにより上記制御プログラムを配布しても良い。また、上述した実施形態では、リフレクタ20(あるいはリフレクタ21)の制御部110を制御プログラム142c(あるいは制御プログラム142d)にしたがって作動させることによって、その制御部110を以下の各手段として機能させた。すなわち、配信サーバ10から順次配信されてくるデータパケットを受信する受信手段、この受信手段により受信したデータパケットの複製を生成して他のリフレクタ20(あるいは他のリフレクタ21)へ送信する第1の送信手段、および、上記受信手段により受信したデータパケットに含まれているエンコードデータがエンコードデータファイルの一部であるとDLNAプレイヤ装置に認識されるようデータ変換を施しつつそのエンコードデータをパケット化して送信する第2の送信手段である。しかし、これら各手段の全部または一部を電子回路で構成しても勿論良い。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るリフレクタ20を含んでいる通信システム1の構成例を示す図である。
【図2】同通信システム1におけるデータパケットの流れを示す図である。
【図3】同リフレクタ20の構成例を示すブロック図である。
【図4】同リフレクタ20の制御部110が、DLNAプレイヤ装置に接続されているテレビ受像器に表示させる番組選択画面の一例を示す図である。
【図5】同制御部110が実行するゲートウェイ処理を説明するための図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係るリフレクタ21の構成例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0037】
1…通信システム、10…配信サーバ、20,20a,20b,20c,21…リフレクタ、30…通信網、110…制御部、120…第1通信IF部、130…第2通信IF部、140…記憶部、141…揮発性記憶部、142…不揮発性記憶部、142a…番組選択画面用データ、142b…転送先指示データ、142c,142d…制御プログラム、150…バス、160…外部機器IF部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一連の映像または音声を表すエンコードデータを含むデータパケットを通信網を介して受信する受信手段と、
前記受信手段により受信したデータパケットの複製を生成して他の中継装置へ送信する第1の送信手段と、
前記受信したデータパケットに含まれているエンコードデータを、映像または音声を表すエンコードデータファイルのデコードおよびそのデコード結果に応じた映像信号または音声信号の出力を行うプレイヤ装置へ送信する手段であって、映像または音声の視聴開始を指示された後、前記プレイヤ装置へ最初に送信するエンコードデータには、前記エンコードデータファイルのファイルヘッダを付加して送信する第2の送信手段と、
を有することを特徴とする中継装置。
【請求項2】
前記第2の送信手段は、前記プレイヤ装置へ宛ててエンコードデータを送信してから所定時間が経過した時点で該エンコードデータに後続するエンコードデータが書き込まれたデータパケットを受信していない場合には、所定の映像または音声を表すエンコードデータを生成して前記プレイヤ装置へ送信する
ことを特徴とする請求項1に記載の中継装置。
【請求項3】
前記受信手段により受信されるデータパケットには、前記プレイヤ装置とは異なる電子機器に与えるべき作動指示を示すコントロールデータが付加されており、
前記受信手段により受信されたデータパケットから前記コントロールデータを取得するする取得手段と、
前記取得手段により取得したコントロールデータを前記第2の送信手段によるデータパケットの送信に同期させつつ前記電子機器へ出力する出力手段と、
を更に有することを特徴とする請求項1に記載の中継装置。
【請求項4】
コンピュータ装置を、
一連の映像または音声を表すエンコードデータを含むデータパケットを通信網を介して受信する受信手段と、
前記受信手段により受信したデータパケットの複製を生成して他の中継装置へ送信する第1の送信手段と、
前記受信したデータパケットに含まれているエンコードデータを、映像または音声を表すエンコードデータファイルのデコードおよびそのデコード結果に応じた映像信号または音声信号の出力を行うプレイヤ装置へ送信する手段であって、映像または音声の視聴開始を指示された後、前記プレイヤ装置へ最初に送信するエンコードデータには、前記エンコードデータファイルのファイルヘッダを付加して送信する第2の送信手段と
して機能させることを特徴とするプログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−49958(P2009−49958A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−216806(P2007−216806)
【出願日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】