説明

乗員保護用エアバッグ

【課題】膨張を完了させたエアバッグに乗員の頭部が干渉した際に、反力を抑えて、乗員の頭部を的確に保護することが可能なエアバッグを提供する。
【解決手段】乗員面に凹部を有する乗員保護用エアバッグであって、本体部、および、該本体部と一方の端で連通した2つ以上の筒状部を有し、該筒状部の他端がそれぞれ本体部に結合されてなる乗員保護用エアバッグである。また、乗員面に凹部を有する乗員保護用エアバッグであって、本体部、および、該本体部と一方の端で連通した3つ以上の筒状部を有し、対向する筒状部の他端同士が結合されてなる乗員保護用エアバッグである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に装備され、車両の衝突事故時、瞬時に膨出して乗員を保護するエアバッグに関し、詳細には、膨張を完了させたエアバッグに乗員の頭部が干渉した際に、反力を抑えて乗員の頭部を的確に保護することのできる乗員保護用エアバッグに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、多くの車両に、乗員保護装置としてエアバッグ装置が搭載されるようになった。エアバッグ装置(通常、車両のステアリングホイールやカーテンエアバッグなどに配置される)は、衝突時に、乗員と内装構造物との間の空間に瞬時に膨出し、乗員が直接、インパネやサイドドア、ハンドルなどに衝突する際の衝撃を吸収する機能をもつものである。そのため、エアバッグ装置としては、車両の衝突などの衝撃を受けたときの急激な減速を検知するセンサ、センサからの信号を受けて膨出用の高圧ガスを発生するインフレータ、インフレータからの膨出用の高圧ガスにより、膨出展開して乗員の衝撃を緩和するエアバッグ袋体、および、エアバッグシステムが正常に機能しているか否かを判断する診断回路を、通常備えている。
【0003】
従来のエアバッグでは、乗員前方の左側に膨張する左側膨張部と、乗員前方の右側に膨張する右側膨張部とが、ガス流入口近傍で相互に連通されて構成されるものがあった(特許文献1など)。このようなエアバッグは、とくに助手席用として用いられており、左側と右側の膨張部との間に生じた空間、つまり乗員面に形成された凹部が衝突した乗員を受け止める。
【0004】
このような左右に連通する膨張部を有するエアバッグは、通常、蝶のような形状の2枚のパネルの外周を縫製して中央部で折りたたみ、左右の膨張部を結合するようにして形成されている。そのため、乗員の衝突によって左右の膨張部の結合が外れてしまった場合、膨張部は左右に別れてしまい、乗員を保護することはできなくなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−335203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、膨張を完了させたエアバッグに乗員の頭部が干渉した際に、反力を抑えて、乗員の頭部を的確に保護することが可能なエアバッグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、乗員面に凹部を有する乗員保護用エアバッグであって、本体部、および、該本体部と一方の端で連通した2つ以上の筒状部を有し、該筒状部の他端がそれぞれ本体部に結合されてなる乗員保護用エアバッグに関する。
【0008】
隣り合う前記筒状部同士が、結合されてなることが好ましい。
【0009】
また、本発明は、乗員面に凹部を有する乗員保護用エアバッグであって、本体部、および、該本体部と一方の端で連通した3つ以上の筒状部を有し、対向する筒状部の他端同士が結合されてなる乗員保護用エアバッグに関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のエアバッグは、本体部を有しているため、万が一、筒状部が左右に分かれても乗員をしっかり保護することができる。さらに、乗員と直接接触する部分を2つ以上の筒状部として形成しているため、乗員の両肩をしっかりと受けとめることができる。また、前記筒状部の間に空間部(凹部)が形成されるので、乗員の頭部を保護することができる。すなわち、エアバッグ膨張完了時、前記筒状部が乗員の左右の肩部付近と干渉し、しっかりと拘束する。その後、両肩を筒状部により拘束された乗員の頭部が、その筒状部の間に形成された空間部(凹部)に侵入することにより前方側への移動が抑えられ、乗員を確実に拘束することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のエアバッグにおける膨出展開状態を示す斜視図である。
【図2】図1のエアバッグのA−A線における断面図である。
【図3】本発明のエアバッグに用いられるパネルの一例を示す平面図である。
【図4】図1のエアバッグのA−A線における別の態様の断面図である。
【図5】本発明のエアバッグに用いられる別の態様におけるパネルの一例を示す平面図である。
【図6】図5に示すパネルから得られる本発明のエアバッグの膨出展開状態における側面図である。
【図7】本発明のエアバッグに用いられる別の態様におけるパネルの一例を示す平面図である。
【図8】図7に示すパネルから得られる本発明のエアバッグの膨出展開状態における側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態1を、図1に基づいて説明する。図1は、本発明のエアバッグ1における膨出展開状態を示した図である。この形態1では、エアバッグ乗員面のほぼ全長に亘る複数の筒状部(ここでは、5aおよび5bの2つ)が存在し、その一端と本体部とが結合している。なお、これら筒状部の長さは、乗員面の全長に亘っていることには限定されず、用途・目的などに応じて適宜設定することができる。
【0013】
展開時には、まず、インフレータ取付口8に取り付けられたインフレータから膨出用ガスが注入充填されて、本体部2が形成される。ついで、本体部2と一方の端で連通した2つの筒状部5aおよび5bへとガスが流れ出し、筒状部5aおよび5bが展開する。なお、筒状部5aおよび5bの他の端部は、それぞれ、本体部2の一部と結合している。図1では、筒状部5aおよび5bの他の端部にそれぞれ結合片10を、本体部2に結合補強布11を配置し、結合片10と結合補強布11とを縫製により結合している。もちろん、結合の方法は縫製に限定されず、接着や溶着であってもよい。また、とくに結合片や結合補強布を配置せずに結合してもよい。なお、たとえ、この筒状部5aおよび5bと本体部2との結合が外れてしまっても、本体部2が平面状に形成されているので、乗員をしっかり保護することができる。
【0014】
図2に示すように、膨出した筒状部5aと5bとの間には、凹部6が形成される。前記筒状部5aおよび5bが乗員の左右の肩部付近と干渉し、両肩を拘束された乗員の頭部が凹部6に侵入することにより、前方側への移動が抑えられる。また、万が一、凹部6を形成している筒状部5a、5bが横にずれても、本体部2が平面状に形成されているので、乗員をしっかり保護することができる。筒状部5a、5bが横にずれるのを防ぐために、図4に示すように、筒状部の側面にも結合片10を配置するなどして、隣り合う筒状部同士を結合してもよい。
【0015】
なお、本発明のエアバッグは、車両に対して、筒状部が上下方向に展開するように配置される。これにより、凹部6がエアバッグの上部から下部にかけて形成されるため、乗員の体格や着座姿勢により乗員の頭部が上下方向に移動しても、乗員の頭部を確実に受け止めることができる。
【0016】
図2に、図1のA−A線における膨出展開状態での断面図を示す。図2でもわかるように、本発明のエアバッグは、筒状部5a、5bと本体部2とで形成されている。凹部6の深さは、筒状部5a、5bの厚さAによって規制される。厚さAは、50〜300mmであることが好ましく、100〜200mmであることがより好ましい。50mmより小さいと、凹部が浅すぎて、乗員の頭部が凹部に侵入することができないおそれがあり、300mmをこえると、エアバッグがかさばり、収納性が悪くなるおそれがある。
【0017】
また、本体部2の厚さBは、200〜500mmであることが好ましく、300〜400mmであることがより好ましい。200mmより小さいと、本体部の厚さが薄くなって乗員を保護することができなくなる可能性があり、500mmをこえると、エアバッグがかさばり、収納性が悪くなるおそれがある。
【0018】
凹部6の幅Cについては、100mm以内であることが好ましく、70mm以内であることがより好ましく、50mm以内であることがさらに好ましい。幅Cが100mmをこえると、肩部を拘束しにくくなるおそれがある。なお、展開時のエアバッグ1の幅Dは、少なくとも乗員の肩部を拘束できるものであればとくに限定されず、適宜設定することができる。
【0019】
筒状部5a、5bは、エアバッグ1の乗員面の好ましくは中央付近に上下方向への凹部が形成されるよう、2つ以上存在すればよい。図1〜4では、2つの場合を例示しているが、これに限定されるものではない。また、その幅も、前記幅Dや筒状部の数を考慮して、適宜設定すればよく、すべて同じ幅でなくてもよい。
【0020】
本発明の他の実施形態2を、図5および6に示す。この形態2では、エアバッグ乗員面のほぼ半分の長さに相当する複数の筒状部5が存在し、対向する筒状部5同士の先端が結合している。もちろん、筒状部5同士の結合は、必ずしも乗員面の中央部に存在しなくてもよく、すべての筒状部を同じ長さにする必要はない。対向する筒状部5同士を結合したときに、その結合された筒状部がエアバッグ乗員面のほぼ全幅に亘るように設定すればよい。図6では、筒状部5の端部に、それぞれ結合片10を配置し、結合片10同士を縫製することにより結合しているが、結合の方法は縫製に限定されず、接着や溶着であってもよい。また、とくに結合片10を配置せずに結合してもよい。なお、たとえ、この筒状部同士の結合が外れてしまっても、本体部2が平面状に形成されているので、乗員をしっかり保護することができる。
【0021】
膨出した筒状部5の間に凹部6が形成されるが、先の態様1と同じように、上下方向に移動する乗員の頭部を確実に受け止めるため、膨出したときに筒状部5が上から下へ、あるいは下から上へと展開するように、車両に対してエアバッグを配置する。また、筒状部5が横にずれるのを防ぐために、少なくとも1つの筒状部5を、本体部2と結合してもよい。
【0022】
この形態2においては、筒状部5は、エアバッグの乗員面の好ましくは中央付近に上下方向への凹部6が形成され、かつ、少なくとも1つの対向する筒状部5が形成されるよう、3つ以上存在すればよい。図5および6では、4つの場合を例示しているが、これに限定されるものではない。また、その幅も、前記幅Dや筒状部の数を考慮して、適宜設定すればよく、すべて同じ幅でなくてもよい。
【0023】
本発明のエアバッグは、非常に簡単な工程で製造することができる。すなわち、長辺方向に切り込みを有する略矩形の2枚のパネルの外周を結合したのち、該パネルを長辺方向に折りたたみ、その端部同士を結合することにより、得ることができる。
【0024】
態様1においては、まず、図3に示すように、基布から、一方の端部に切り込みを有する略矩形を2枚切り出し、インフレータ取付口側パネル3および乗員側パネル4とする。インフレータ取付口側パネル3には、インフレータ取付口8と排気穴14とを設ける。また、前記切り込み部分が筒状部5aおよび5bとなるため、適切な長さに設定する。これらパネルには、必要に応じて、結合片10および結合補強布11を配置しておく。
【0025】
次に、得られたインフレータ取付口側パネル3と乗員側パネル4とを重ね合わせて、外周を結合する。図2では、縫製糸7を用いた縫製にて結合した場合を示している。ここで、インフレータ取付口側パネル3に形成されたインフレータ取付口8を補強するために、外周を結合する前に、付近に数枚の取付口補強布9を結合しておくことが好ましい。最後に、結合片10と結合補強布11とを縫製するなどしてパネルの端部同士を結合し、本発明のエアバッグを作成する。
【0026】
態様2においては、まず、図5に示すように、基布から、両方の端部に切り込みを有する略矩形を2枚切り出し、インフレータ取付口側パネル3および乗員側パネル4とする。インフレータ取付口側パネル3には、インフレータ取付口8と排気穴14とを設ける。また、前記切り込み部分が筒状部5となるため、適切な長さに設定する。これらパネルには、必要に応じて、その端部に結合片10を配置しておく。
【0027】
次に、得られたインフレータ取付口側パネル3と乗員側パネル4とを重ね合わせて、外周を結合する。同様に、インフレータ取付口側パネル3に形成されたインフレータ取付口8を補強するために、外周を結合する前に、付近に数枚の取付口補強布9を結合しておくことが好ましい。最後に、結合片10同士を縫製するなどしてパネル(すなわち筒状部5)の端部同士を結合し、エアバッグを作成する。
【0028】
ここまで、2ピースのパネルからなるエアバッグを例にして説明してきたが、これに限定されるものではなく、3ピース、4ピースなどにも適用が可能である。以下、3ピースの場合を図7および8に示す。
【0029】
3ピースの場合は、たとえば、図7に示すような本体パネル12と2枚の本体側面パネル13とから形成される。本発明でいう本体部2は、本体パネル12の一部と本体側面パネル13の一部とから形成され、筒状部5も同様である。まず、図7に示すように、基布から、両方の端部に切り込みを有する略矩形を1枚切り出し、本体パネル12とする。さらに、エアバッグの側面になる部分と、筒状部5の一部を形成する部分とを有した形状にて2枚切り出し、ともに本体側面パネル13とする。本体側面パネル13には排気穴14を設けておく。なお、本体パネル12の長辺の長さと、本体側面パネル13の外周の長さとが、同じになるようにする。また、前記切り込み部分が筒状部5となるため、適切な長さに設定する。本体パネル12には、必要に応じて、結合片10および結合補強布11を配置しておく。
【0030】
次に、得られた本体パネル12を2つ折りにし、合わさった2枚を切り込みの内側の辺および端部にて結合する。ついで、本体パネル12の2つの長辺と2枚の本体側面パネル13の外周とを、それぞれ結合する。最後に、結合片10と結合補強布11とを縫製するなどして、筒状部5の先端と本体部2とを結合し、本発明のエアバッグを作成する。
【0031】
本発明のエアバッグのパネルに使用される基布には、インフレータの性能やバッグ容量、使用部位などによって、ゴムや樹脂などを積層塗布して不通気性加工を施したものを使用してもよい。
【0032】
前記基布としては繊維布帛が用いられる。ここで繊維布帛とは、繊維糸条を用いて製織される織物、繊維糸条を用いて製編される編物および不織布を意味する。
【0033】
繊維布帛を構成する繊維は、天然繊維、化学繊維、無機繊維など、とくに限定するものではない。たとえば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン610、ナイロン612などの単独またはこれらの共重合、混合により得られる脂肪族ポリアミド繊維、ナイロン6T、ナイロン6I、ナイロン9Tに代表される脂肪族アミンと芳香族カルボン酸の共重合ポリアミド繊維、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどの単独またはこれらの共重合、混合によって得られるポリエステル繊維、超高分子量ポリオレフィン系繊維、ビニリデン、ポリ塩化ビニルなどの含塩素系繊維、ポリテトラフルオロエチレンを含む含フッ素系繊維、ポリアセタール系繊維、ポリサルフォン系繊維、ポリフェニレンサルファイド系繊維(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン系繊維(PEEK)、全芳香族ポリアミド系繊維、全芳香族ポリエステル系繊維、ポリイミド系繊維、ポリエーテルイミド系繊維、ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール系繊維(PBO)、ビニロン系繊維、アクリル系繊維、セルロース系繊維、炭化珪素系繊維、アルミナ系繊維、ガラス系繊維、カーボン系繊維、スチール系繊維などから適宜、1種または2種以上を選定すればよい。なかでも、汎用性があり、基布の製造工程、基布物性などの点から、合成繊維フィラメントが好ましい。とくには、物理特性、耐久性、耐熱性などの点からナイロン66繊維が好ましい。また、リサイクルの観点からは、ポリエステル系繊維、ナイロン6繊維も好ましい。
【0034】
これら繊維には、紡糸性や、加工性、耐久性などを改善するために通常使用されている各種の添加剤、たとえば、耐熱安定剤、酸化防止剤、耐光安定剤、老化防止剤、潤滑剤、平滑剤、顔料、撥水剤、撥油剤、酸化チタンなどの隠蔽剤、光沢付与剤、難燃剤、可塑剤などの1種または2種以上を使用してもよい。また、カラミ織を製織する上で望ましい場合には、加撚、嵩高加工、捲縮加工、捲回加工、糊付け加工などの加工を施してもよい。さらに、糸条の形態は、長繊維フィラメント以外に、短繊維の紡績糸、これらの複合糸などを用いてもよい。
【0035】
たとえば、前記繊維布帛が織物の場合は、平織、斜子織(バスケット織)、格子織(リップストップ織)、綾織、畝織、絡み織、模紗織、あるいはこれらの複合組織などいずれでもよい。必要に応じて、経糸、緯糸の二軸以外に、斜め60度を含む多軸設計としてもよく、その場合の糸の配列は、経糸または緯糸と同じ配列に準じればよい。なかでも構造の緻密さ、物理特性や性能の均等性が確保できる点で、平織が好ましい。
【0036】
織物の製造は、通常の工業用織物を製織するのに用いられる各種織機から適宜選定すればよく、たとえば、シャトル織機、ウォータージェット織機、エアージェット織機、レピア織機、プロジェクタイル織機などから選定すればよい。
【0037】
前記繊維布帛が編物の場合は、シングルトリコット編、シングルコード編、シングルアトラス編などのたて編や、平編、ゴム編、パール編などのよこ編、などの編組織を単独またはそれらを組み合わせた二重組織などからなるものがあげられる。また、前記繊維布帛が不織布の場合は、ケミカルボンド、サーマルボンド、ニードルパンチ、スパンレース、ステッチボンド、スパンボンド、メルトブロー、湿式などにより製造されるものがあげられる。
【0038】
前記基布を構成する糸の単糸太さは、同じでも異なってもいずれでもよく、たとえば、0.5〜8dtexの範囲であることが好ましい。また、単糸の強度も、5.4cN/dtex以上であることが好ましく、8cN/dtex以上であることがより好ましい。また、これら繊維の単糸の断面形状も、円形、楕円、扁平、多角形、中空、その他の異型など、布帛の製造、得られた布帛の物性に支障のない範囲で適宜選定すればよい。また、太さや断面形状などが異なる複数の糸を、合糸、撚り合わせなどにより一体化したものを用いてもよい。
【0039】
前記繊維の総繊度は、150〜1000dtexであることが好ましく、235〜700dtexであることがより好ましい。150dtex未満ではエアバッグに求められる強度が得られにくい傾向にあり、1000dtexより大きくなると、重量が大きくなりすぎると同時に、基布の厚みが増大しバッグの収納性が悪くなるおそれがある。
【0040】
前記基布は、目付けが190g/m以下、引張強力が600N/cm以上であることが好ましい。目付けと引張強力がこの範囲であれば、軽くて物理特性に優れているといえる。なお、ここでいう目付けは、後述する不通気処理剤を塗布する前の未加工の状態の基布重量をいう。
【0041】
前記基布が織物である場合のカバーファクターは、1500〜2500であることが好ましい。カバーファクターが1500より小さいと、織物の開口部が大きくなるためバッグの気密性を得ることが困難となり、またカバーファクターが2500より大きいと、織物の厚みが増大し、バッグの収納性が悪くなるおそれがある。ここで、カバーファクターとは基布のタテ糸総繊度をD1(dtex)、タテ糸密度をN1(本/2.54cm)とし、ヨコ糸総繊度をD2(dtex)、ヨコ糸密度をN2(本/2.54cm)とすると(D1×0.9)1/2×N+(D×0.9)1/2×N2で表される。
【0042】
また、前記基布は精練および熱処理を施されたものであってもよい。
【0043】
前記したように、基布は、耐熱性の向上および通気度の低下を目的として、樹脂層を有していてもよい。また、その目的から、前記樹脂層は、少なくとも基布の片面全面に付着しているが、基布表面、基布を構成する糸束の間隙部、または、繊維単糸の間隙部など、いずれに介在していてもよい。耐熱性、および、基布に外力が加わっても被膜の損傷が抑えられるという理由により、樹脂層を有する面同士を接合して、被覆面が内側になるようにエアバッグを作製することが好ましい。
【0044】
前記樹脂としては、たとえば、クロロプレンゴム、ハイバロンゴム、フッ素ゴムなどの含ハロゲンゴム、シリコーンゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレン三元共重合ゴム、ニトリルブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、イソブチレンイソプレンゴム、ウレタンゴムおよびアクリルゴムなどのゴム類、および、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂およびフッ素樹脂などの含ハロゲン樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エステル樹脂、アミド樹脂、オレフィン樹脂およびシリコーン樹脂などの樹脂類があげられ、これらは単独または併用して使用される。なかでも、可撓性、耐熱性および耐候性に優れる点で、シリコーンゴムおよびシリコーン樹脂が好ましい。
【0045】
被覆方法としては、1)コーティング法(ナイフ、キス、リバース、コンマ、スロットダイおよびリップなど)、2)浸漬法、3)印捺法(スクリーン、ロール、ロータリーおよびグラビアなど)、4)転写法(トランスファー)、5)ラミネート法、および6)スプレーなどにて噴霧する方法などがあげられる。なかでも、設定できる付与量の幅が大きい点で、コーティング法が好ましい。
【0046】
また、塗布量としては、5〜60g/mが好ましい。塗布量が5g/mより少ないと、基布の通気性が高くなるため、バッグの気密性に問題が発生するおそれがあり、また塗布量が60g/mより多いと、基布の厚みが厚くなってバッグの収納性に問題が発生するおそれがある。
【0047】
また、各乗員側布とインフレータ側布との結合、あるいは補強布の結合は、縫製、接着、溶着、製織、製編あるいはこれらの併用など、いずれの方法によってもよく、エアバッグとしての堅牢性、展開時の耐衝撃性、乗員の耐衝撃性能などを満足するものであればよい。
【0048】
縫製は、本縫い、二重環縫い、片伏せ縫い、かがり縫い、安全縫い、千鳥縫い、扁平縫いなどの通常のエアバッグに適用されている縫い目により行えばよい。また、縫い糸の太さは、235dtex(50番手相当)〜2800dtex(0番手相当)、運針数は2〜10針/cmとすればよい。複数列の縫い目線が必要な場合は、縫い目線間の距離は2.2mm〜8mm程度として、多針型ミシンを用いればよいが、縫製部距離が長くない場合には、1本針ミシンで複数回縫合してもよい。
【0049】
さらに、必要に応じて、外周縫製部などの縫い目からのガス抜けを防ぐために、シール材、接着剤または粘着材などを、縫い目の上部および/または下部、縫い目の間、縫い代部などに塗布、散布または積層してもよい。
【0050】
縫合に使用する縫い糸は、一般に化合繊縫い糸と呼ばれるものや工業用縫い糸として使用されているものの中から適宜選定すればよい。たとえば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ポリエステル、高分子ポリオレフィン、含フッ素、ビニロン、アラミド、カーボン、ガラス、スチールなどがあり、紡績糸、フィラメント合撚糸またはフィラメント樹脂加工糸のいずれでもよい。
【0051】
また、前記の通り、使用するインフレータの特性に応じて、インフレータ取付口周囲に熱ガスから保護するための耐熱保護布や力学的な補強布を設けてもよい。これらの保護布や補強布は、布自体が耐熱性の材料、たとえば、全芳香族ポリアミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維、PBO繊維、ポリイミド繊維、含フッ素系繊維などの耐熱性繊維材料を用いてもよいし、エアバッグ本体と同じか本体用基布より太い糸を用いて別途作成した織物を用いてもよい。また、織物に耐熱性被覆材を施したものを用いてもよい。
【0052】
以上、これまで図面を参照して本発明を説明してきたが、本発明の実施形態はこれのみを指すものではなく、要旨を逸脱しない範囲での変更、改良は当然可能である。また、このような形状のエアバッグは主に助手席用として使用されるが、本発明はこれに限定されるものではなく、運転席用エアバッグや側突用エアバッグなど他のエアバッグにも適用が可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 エアバッグ
2 本体部
3 インフレータ取付口側パネル
4 乗員側パネル
5、5a、5b 筒状部
6 凹部
7 外周縫製糸
8 インフレータ取付口
9 インフレータ取付口補強布
10 結合片
11 結合補強布
12 本体パネル
13 本体側面パネル
14 排気穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員面に凹部を有する乗員保護用エアバッグであって、本体部、および、該本体部と一方の端で連通した2つ以上の筒状部を有し、該筒状部の他端がそれぞれ本体部に結合されてなる乗員保護用エアバッグ。
【請求項2】
隣り合う前記筒状部同士が、結合されてなる請求項1記載の乗員保護用エアバッグ。
【請求項3】
乗員面に凹部を有する乗員保護用エアバッグであって、本体部、および、該本体部と一方の端で連通した3つ以上の筒状部を有し、対向する筒状部の他端同士が結合されてなる乗員保護用エアバッグ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−93336(P2011−93336A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−246271(P2009−246271)
【出願日】平成21年10月27日(2009.10.27)
【出願人】(000107907)セーレン株式会社 (462)
【Fターム(参考)】