説明

乗員拘束装置

【課題】車両の衝突の衝撃から乗員を保護するため、衝突時に乗員がシートへ強く拘束されることが好ましい。
【解決手段】乗員拘束装置10は、車両の乗員が着座するシート18、第1配管30でシート18と第1配管30で接続される圧力タンク20、および圧力タンク20と第2配管32で接続されるバキュームポンプ22を含む。シート18の表面には第1配管30と接続された吸引口が設けられている。第1配管30には第1開閉弁24が設けられる。ECU14は、Gセンサ12により検出された車両減速度が所定の第1閾値を超えたとき、第1開閉弁24を開放して負圧により乗員をシート18に拘束する。車速減速度が第1閾値より大きい第2閾値を超えたとき、ECU14はエアバッグを作動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の乗員をシートに拘束する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
車両が障害物に衝突する場合、その衝突の衝撃から乗員を保護するため、衝突時に乗員をシートへ強く拘束することが好ましい。例えば、特許文献1には、衝突時においてエアバッグ作動させるとき、エアバッグ装置内で発生させるガス圧の一部を利用してバックルと連結された部材を移動させることにより、シートベルト引き締め作動の遅れを抑制する技術が開示されている。
【特許文献1】特開平9−86345号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に開示された技術は、上述したように、シートベルトを引き締めることによって乗員をシートに拘束する。近年、シートベルトに限らず、乗員をシートに拘束するための様々な手法の開発が望まれている。
【0004】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、車両の乗員をシートに拘束する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の乗員拘束装置は、車両の乗員が着座するシートと、第1の配管でシートと接続され、負圧状態を形成する負圧状態形成手段と、を備える。シートの表面に第1の配管と接続された吸引口が設けられている。
この態様において、負圧状態形成手段と接続された吸引口から車両内の空気が吸い込まれる。これによって、シートに着座した乗員の身体には吸引口における吸引力によってシートに押さえ付けられるような力が働くので、乗員をシートに拘束できる。
【0006】
負圧状態形成手段は、シートと第1の配管で接続される負圧貯蔵手段と、負圧貯蔵手段と第2の配管で接続される負圧発生手段と、を含んでもよい。
この態様によれば、負圧発生手段が発生させた負圧を負圧貯蔵手段に保持させておくので、乗員拘束装置において、車両減速前にあらかじめ負圧状態を維持することができる。これによって、負圧を貯蔵しない場合と比較して、乗員をシートに拘束する吸引力が発生するまでの時間を短縮できる。
【0007】
第1の配管に設けられた第1の開閉弁と、車両の減速度が所定の第1の閾値を超えたか否かを判定して、その判定結果に応じて第1の開閉弁の開閉を制御する制御手段と、をさらに備えてもよい。制御手段は、車両の減速度が第1の閾値を超えたと判定したとき、第1の開閉弁を開放させてもよい。
車両が急激に減速すると乗員の身体は前方に傾き、例えばハンドルやダッシュボード等にぶつかるおそれがある。この態様によれば、車両の減速度が第1の閾値を超えた場合に第1の開閉弁を開放して、負圧による吸引力を利用して乗員をシートに拘束するので、乗員の身体が前方に傾くことを回避できる。
【0008】
シートの前方または側方に設けられ、制御手段に作動を制御されるエアバッグ装置をさらに備えてもよい。制御手段は、車両の減速度が第1の閾値より大きい第2の閾値を超えたと判定したとき、エアバッグ装置を作動させてもよい。
この態様によれば、まず車両の減速度が第1の閾値を超えたときに、乗員の身体は負圧によってシートに拘束され、さらに減速度が増加して第2の閾値を超えるとエアバッグ装置が作動する。このようにエアバッグ装置の作動前に乗員をシートに拘束しておくことにより、展開したエアバッグに乗員を受け止めさせることができる。
【0009】
負圧貯蔵手段を大気圧に開放する第2の開閉弁をさらに備えてもよい。制御手段は、エアバッグ装置を作動させた後に第2の開閉弁を開放させてもよい。
この態様によれば、第2の開閉弁は、エアバッグがある程度展開してから開放される。第2の開閉弁が開放されると、負圧による吸引力が低下して乗員がシートの拘束から解放される。これによって、展開したエアバッグに乗員を良好なタイミングで受け止めさせることができる。
【0010】
負圧発生手段は、エンジンにより負圧を発生させてもよい。これによって、負圧を発生するために新たな装置を設ける必要がなくなるので、乗員拘束装置の省スペース化を実現できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のディスクホイールによれば、車両の乗員をシートに拘束できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は、本実施の形態に係る乗員拘束装置の構成を示すブロック図である。乗員拘束装置10において、車両の乗員が着座するシート18には、負圧状態を形成する負圧状態形成装置34が第1配管30で接続される。負圧状態形成装置34は、負圧を貯蔵する圧力タンク20および負圧を発生させるバキュームポンプ22を含む。ここで、シート18には、第1配管30で圧力タンク20が接続される。圧力タンク20には第2配管32でバキュームポンプ22が接続される。バキュームポンプ22は、第2配管32を介して圧力タンク20の空気を吸引し、圧力タンク20を負圧状態にする。
【0013】
第1配管30には第1開閉弁24が、圧力タンク20には第2開閉弁26が、第2配管32には第3開閉弁28が設けられる。第1開閉弁24が開放されるとシート18と圧力タンク20とが連通する。第2開閉弁26が開放されると、圧力タンク20内部は大気圧に開放される。第3開閉弁28が開放されると圧力タンク20とバキュームポンプ22とが連通する。以下、第1開閉弁24、第2開閉弁26および第3開閉弁28を総称して「開閉弁」ともいう。
【0014】
ECU(Electric Control Unit)14は、車両の加速度を検出する加速度センサ(以下、「Gセンサ」ともいう)12の検出結果に基づいて、開閉弁の開閉ならびにシート18の前方および側方に設けられたエアバッグ装置16の作動を制御する。ここで、エアバッグ装置16は、前方のみに設けられていてもよい。ECU14による開閉弁の開閉およびエアバッグ装置16の作動の制御については、図4を用いて後述する。
【0015】
図2は、シート18を示す斜視図である。シート18は、ヘッドレスト40、シートバック42およびシートクッション44を含む。乗員がシート18に着座した状態において、乗員の後頭部はヘッドレスト40、背中はシートバック42、太ももやふくらはぎの裏側はシートクッション44に接触する。ヘッドレスト40、シートバック42およびシートクッション44のそれぞれの表面には、図2に示すように複数の吸引口46が設けられている。
【0016】
図3は、図2に示したシート18の側面に平行な方向の断面図である。図1および図2と同一の構成については同一番号を付す。ここでは、また、図3には、シート18に着座した乗員48をも示している。同図に示すように、乗員48が着座した状態において、乗員48の後頭部はヘッドレスト40に設けられた吸引口46a、背中はシートバック42に設けられた吸引口46b、ふくらはぎの裏側はシートクッション44に設けられた吸引口46cに接触する。
【0017】
図3に示すように、すべての吸引口46は第1配管30と接続されている。図1を用いて上述したように、第1配管30は第1開閉弁24を介して圧力タンク20と接続されている。圧力タンク20に負圧が貯蔵された状態で第1開閉弁24が開放されると、第1配管30内において圧力タンク20に向かって空気が流れ(矢印p)、吸引口46から車内の空気が吸い込まれる。このとき生じる吸引力によって、乗員48の身体にはシート18に押さえ付けられるような方向に力が働き(矢印q)、乗員48はシート18に拘束される。
【0018】
本実施の形態では、シートバック42のみならず、ヘッドレスト40およびシートクッション44にも吸引口46を設けた。ヘッドレスト40に吸引口46aを設けることにより、乗員が鞭打ちになることを回避できる。また、シートクッション44に吸引口46cを設けることによって、膝にかかる荷重を低減できる。
【0019】
図4は、ECU14によるエアバッグ装置16の作動および開閉弁の開閉の制御を示すフローチャートである。ここでは、ドライバが車両走行中に障害物を確認して急ブレーキをかけた後、その障害物に衝突したときの動作制御について説明する。また、乗員はドライバであることを前提とし、乗員を「ドライバ」ともいう。
まず、ECU14は、第1開閉弁24および第2開閉弁26を閉鎖させ、第3開閉弁28を開放させて圧力タンク20内部に負圧状態を形成した後、第3開閉弁28を閉鎖させて圧力タンク20に負圧を貯蔵する。以下、この状態を「初期状態」ともいう。このように、ECU14は、まず、乗員拘束装置10を初期状態に設定する(S10)。
【0020】
車両走行中において、ドライバが障害物を確認して急なブレーキ操作により減速した場合において、Gセンサ12により検出される減速度が所定の閾値(以下、「第1閾値」ともいう)を超えたとき(S12のY)、ECU14は第1開閉弁24を開放させる(S14)。ここで、第1閾値は、例えばドライバが急ブレーキをかけたときの減速度に設定されているものとする。第1開閉弁24が開放すると、上述したようにドライバの身体は圧力タンク20に貯蔵された負圧によって吸引口46に吸い付けられる。これによって、ドライバはシート18に拘束される。このように、乗員拘束装置10によれば、シートベルト等を用いなくともドライバをシート18に拘束できる。ここで、乗員拘束装置10とともにシートベルトを用いれば、拘束力の向上を実現できる。
【0021】
その後、車両が障害物に衝突して、Gセンサ12により検出される減速度が第1閾値より大きい所定の閾値(以下、「第2閾値」ともいう)を超えたとき(S16のY)、ECU14はエアバッグ装置16を作動させる(S18)。ここで、第2閾値は、例えば車両が前方衝突したときの減速度を設定するものとする。つまり、車両が前方衝突したときにシート18の前方や側方に設けられたエアバッグが展開する。衝突の初期段階において、ドライバはすでにシート18に拘束されている。これによって、シートベルト等を用いなくともいわゆるドライバの初期拘束が可能となり、エアバッグの衝撃吸収性能をより良好に実現できる。また、乗員拘束装置10とともにシートベルトを用いる場合、シートベルトによる拘束力が加わる分、より良好な初期拘束を実現できる。
【0022】
次に、ECU14は、エアバッグが完全に展開する直前に第2開閉弁26を開放して、圧力タンク20内部を大気圧に開放する(S20)。圧力タンク20内部が大気圧に開放されるとドライバを吸引する力は低下するので、ドライバはシート18への拘束から解放される。これによって、車両衝突の衝撃により前方へ傾いたドライバの身体はエアバッグに受け止められる。このように、ドライバの拘束をエアバッグが完全に展開する直前に解除することにより、ドライバは適当なタイミングでエアバッグに受け止められる。これによって、エアバッグの衝撃吸収性能をより良好に実現できる。この結果、乗員の安全が確保される。
S12において、車両の減速度が第1閾値以下であるとき(S12のN)、S14からS20までの処理は実行されない。また、S16において、車両の減速度が第2閾値以下であるとき(S16のN)、S18およびS20の処理は実行されない。
【0023】
上述のように、乗員拘束装置10は、開閉弁の開閉によって乗員をシート18に拘束する。従って、万が一、ECU14が誤判定して開閉弁を開閉させた場合であっても、それによって破壊される部品はない。つまり、再度乗員をシート18に拘束するために部品を交換する必要はなく、再度初期状態に設定するだけでよい。これによって、部品の交換に伴うコストの増加を抑制できる。
【0024】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。例えば、以下のような変形例が考えられる。
【0025】
本実施の形態では、バキュームポンプ22により負圧を発生させたが、変形例では、エンジンにより発生する負圧を利用してもよい。これによって、圧力タンク20に負圧を貯蔵するためにバキュームポンプ22を設ける必要がなくなるので、乗員拘束装置10の省スペース化および乗員拘束装置10の軽量化を実現できる。
【0026】
本実施の形態では、乗員拘束装置10をドライバのシートに設ける例について説明したが、乗員拘束装置10を設けるシートはこれに限らず、車両のすべてのシートに設けることができる。これによって、車両のどの座席についても上述したすべての効果が得られ、乗員の安全が確保される。
【0027】
本実施の形態では、乗員拘束装置10を車両が前方からの衝突に適用する例を説明したが、変形例として、車両の側方や後方からの衝突についても適用してもよい。この場合、車両に側方や後方からの衝突を検出するセンサを設けて、そのセンサの検出結果に応じてECU14が開閉弁の開閉およびエアバッグ装置16の作動を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】実施の形態に係る乗員拘束装置の構成を示すブロック図である。
【図2】シートを示す斜視図である。
【図3】図2に示したシートの側面に平行な方向の断面図である。
【図4】ECUによるエアバッグ装置の作動および開閉弁の開閉の制御を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0029】
10 乗員拘束装置、 12 Gセンサ、 14 ECU、 16 エアバッグ装置、 18 シート、 20 圧力タンク、 22 バキュームポンプ、 24 第1開閉弁、 26 第2開閉弁、 28 第3開閉弁、 30 第1配管、 32 第2配管、 34 負圧状態形成装置、 40 ヘッドレスト、 42 シートバック、 44 シートクッション、 46 吸引口、 48 乗員。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の乗員が着座するシートと、
第1の配管で前記シートと接続され、負圧状態を形成する負圧状態形成手段と、
を備え、
前記シートの表面に第1の配管と接続された吸引口が設けられていることを特徴とする乗員拘束装置。
【請求項2】
前記負圧状態形成手段は、
前記シートと第1の配管で接続される負圧貯蔵手段と、
前記負圧貯蔵手段と第2の配管で接続される負圧発生手段と、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の乗員拘束装置。
【請求項3】
前記第1の配管に設けられた第1の開閉弁と、
車両の減速度が所定の第1の閾値を超えたか否かを判定して、その判定結果に応じて前記第1の開閉弁の開閉を制御する制御手段と、
をさらに備え、
前記制御手段は、車両の減速度が前記第1の閾値を超えたと判定したとき、前記第1の開閉弁を開放させることを特徴とする請求項2に記載の乗員拘束装置。
【請求項4】
前記シートの前方または側方に設けられ、前記制御手段に作動を制御されるエアバッグ装置をさらに備え、
前記制御手段は、車両の減速度が前記第1の閾値より大きい第2の閾値を超えたと判定したとき、前記エアバッグ装置を作動させることを特徴とする請求項3に記載の乗員拘束装置。
【請求項5】
前記負圧貯蔵手段を大気圧に開放する第2の開閉弁をさらに備え、
前記制御手段は、前記エアバッグ装置を作動させた後に前記第2の開閉弁を開放させることを特徴とする請求項4に記載の乗員拘束装置。
【請求項6】
前記負圧発生手段は、エンジンにより負圧を発生させることを特徴とする請求項2から5のいずれかに記載の乗員拘束装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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