説明

乗員検知センサ

【課題】 構造的柔軟性に優れたフィルム状乗員検知センサを提供することを目的とする。
【解決手段】 互にほぼ同一形状の第1、第2可撓性絶縁フィルム1、6は複数のセンサ部1a、6a及びこれらに連接する連結部1b、6bを有し、各絶縁フィルム上の第1及び第2配線パターン層2、7は互にほぼ同一形状で前記センサ部及び連結部上に配置された複数の第1、第2接点セル及びセル間の第1、第2配線部を有し、前記第1−第2絶縁フィルム間のスペーサ3は各第1、第2接点セルの複数対に対向する貫通孔4を有し、各絶縁フィルムのセンサ部及び複数対の第1及び第2接点セルで構成される複数のスイッチセルS1乃至S9は1列当たり複数のスイッチセルを有する複数列のスイッチセル列L1乃至L3を構成するように配置され、これら複数列のスイッチセル列はつづら折状パターンに織り込み配列される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は乗員検知センサに係り、特に乗物座席への着座者の状態を検知するのに好適なフィルム状の乗員検知センサの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車のシートベルト着用システムでは、その着用/未着用を表示する電装表示パネル及び座席のシート表皮裏側に内装されたフィルム状の着座検知センサ等が備えられ、そのセンサは着座有無に応じた信号をパネル表示回路へ伝達する役割を持っている。
【0003】
この種のセンサとしてはフィルム状或いはシート状のものを提供する従来技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。この従来のセンサは、いずれも可撓性絶縁フィルム上に配線層を設けた1対の回路配線フィルム間に、複数のスイッチ用貫通孔を有する絶縁スペーサを介在させ、これらを重ね合わせて形成されている。前記各配線層は、互いにほぼ同一配線パターンとなっていて、前記貫通孔に面した各部分が接点セルとなっている。前記スペーサは、未着座時には相対向する前記各配線層の接点セル同士を離間させている(オフ状態)が、着座時には前記絶縁フィルムが押圧されて前記貫通孔内空間における前記接点セル同士が押圧接触される(オン状態)。
【0004】
ところで、前記貫通孔が密閉状態にあると、内部空気が温度変化により膨張/収縮しスイッチ機能の低下を招く心配があり、また、着座時の内部空気の圧縮抵抗により前記絶縁フィルムの撓みが鈍り前記接点セル同士の接触が不安定になり易いという問題等がある。
【0005】
これに対して、この種センサ市場では、前記圧縮抵抗の影響を避けるために前記スイッチ用貫通孔に連通するエアー通路を前記スペーサに形成し、このエアー通路を通じて、前記貫通孔と外部との間の空気の流出入を行える製品がみられるようになってきた。
【0006】
そこで、このようなエアー通路付の乗員検知センサの従来技術について図4を参照して説明する。図4(a)はそのセンサの一部を示す一部切欠平面図、図4(b)はそのX−X線に沿う断面を矢印方向に見た拡大断面図である。第1回路配線フィルム用の第1絶縁フィルム51上に形成された第1配線層52は円形の複数の接点セル52a及びこのセル間を互いに接続する複数の第1配線部52bを有し、その上に重ねられたスペーサ53は前記各接点セル52aに対応する複数の円形状スイッチ用貫通孔54及びこれに連通するエアー通路55を有する。更にその上に重ねられた第2回路配線フィルム用の第2絶縁フィルム56上に形成された第2配線層57(絶縁フィルム56の紙面裏側に位置するため破線表示されている)は前記各接点セル52aに対向する複数の円板状接点セル57a及びこのセルを互いに接続する複数の第2配線部57bを有する。
【0007】
そして、前記第1及び第2絶縁フィルム51、56の外形幅は、接点セルに対向する部分ではそのセルの外径に合わせて幅広に、その他の部分では前記接点セルの外径に比して幅狭にされている。しかしながら、前記絶縁フィルムの幅狭の部分にあっても、前記第1及び第2配線部52b、57b及び前記エアー通路55が横並びに互いに並行配置されこれらによる占有幅が大きいため、幅狭にするにも限度がある。
【0008】
従って、前記絶縁フィルムの幅狭の部分での剛性が高く、外力に対するフィルムの柔軟性が充分に得られず所謂ゴワゴワ感を生じ易いために、座席シートに必要な好感触性を低下させ易いと言う問題がある。この問題は、特に着座検知センサのように多数の接点セルを広範に分布させるために、回路配線フィルムが多数に分岐されるようなパターンでは、その分岐点でのフィルム幅或いはその面積がなお更大きくなり、その分岐部分の剛性が高く益々大きな問題となってきている。
【特許文献1】特許第2909961号公報(特開平9−315199号公報)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前記従来例に示された回路配線フィルムにおいて剛性の高い部分が存在することにより生じる問題点を解決するためになされたものであり、フィルム状検知センサ全体の構造的柔軟性に優れた構造の乗員検知センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明の乗員検知センサは、複数のセンサ部及びこれらを連結する連結部を有する第1可撓性絶縁フィルムと、このフィルムの一主面に形成され前記センサ部及び連結部上にそれぞれ配置された複数の第1接点セル及びこれらセルに連接する第1配線部を有する第1配線パターン層と、前記第1可撓性絶縁フィルムとほぼ同一形状の複数のセンサ部及びこれらを連結する連結部を有する第2可撓性絶縁フィルムと、前記第2可撓性絶縁フィルムの前記第1配線パターン層に対向する一主面に前記第1配線パターン層とほぼ同一のパターンをもって形成され複数の第2接点セル及びこれらセルに連接する第2配線部を有する第2配線パターン層と、前記第1及び第2絶縁フィルム相互間に介在され相対する前記各第1及び第2接点セルの複数対にそれぞれ対向する複数のスイッチ用貫通孔及びこの貫通孔に連接し第1及び第2配線部に対向するエアー通路を有する絶縁スペーサとを備え、前記エアー通路及び第1及び第2配線部は相互に重なり合う配置とされ、前記第1及び第2可撓性絶縁フィルムから選択された少なくとも1つの部材は前記エアー通路に連通する通気孔を有していることを特徴とするものである。
【0011】
請求項2に記載の発明の乗員検知センサは、複数のセンサ部及びこれらを連結する連結部を有する第1可撓性絶縁フィルムと、このフィルムの一主面に形成され前記センサ部及び連結部上にそれぞれ配置された複数の第1接点セル及びこれらセルに連接する第1配線部を有する第1配線パターン層と、前記第1可撓性絶縁フィルムとほぼ同一形状の複数のセンサ部及びこれらを連結する連結部を有する第2可撓性絶縁フィルムと、前記第2可撓性絶縁フィルムの前記第1配線パターン層に対向する一主面に前記第1配線パターン層とほぼ同一のパターンをもって形成され複数の第2接点セル及びこれらセルに連接する第2配線部を有する第2配線パターン層と、前記第1及び第2絶縁フィルム相互間に介在され相対する前記各第1及び第2接点セルの複数対にそれぞれ対向する複数のスイッチ用貫通孔を有する絶縁スペーサとを備え、前記各可撓性絶縁フィルムのセンサ部及び複数対の第1及び第2接点セルによって複数のスイッチセルが構成され、前記複数のスイッチセルは1列当たり複数のスイッチセルを有する複数列のスイッチセル列を構成するようにほぼ縦横に配置され、前記連結部の前記第1及び第2配線部は前記複数列のスイッチセル列がつづら折状パターンに織り込まれるように前記複数のスイッチセルを一連につなぎ合せていることを特徴とするものである。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の乗員検知センサにおいて、前記各可撓性絶縁フィルムのセンサ部及び複数対の第1及び第2接点セルによって複数のスイッチセルが構成され、前記複数のスイッチセルは1列当たり複数のスイッチセルを有する複数列のスイッチセル列を構成するようにほぼ縦横に配置され、前記連結部の前記第1及び第2配線部は前記複数列のスイッチセル列がつづら折状パターンに織り込まれるように前記複数のスイッチセルを一連につなぎ合せていることを特徴とするものである。
【0013】
ッチセルは1列当たり複数のスイッチセルを有する複数列のスイッチセル列を構成するようにほぼ縦横に配置され、前記複数のスイッチセル間に連接する前記第1及び第2配線部は前記複数列のスイッチセル列がつづら折状パターンに織り込まれるように前記複数のスイッチセルを一連につなぎ合せていることを特徴とするものである。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は請求項3に記載の乗員検知センサにおいて、隣り合う前記スイッチセル列における一方のセル列のセルが他方のセル列のセル間に位置するように配置されていることを特徴とするものである。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項2乃至請求項4のいずれか一の請求項に記載の乗員検知センサにおいて、隣り合う前記スイッチセル列における一方のセル列の一セルと他方のセル列の一セルとの間に絶縁性の補助連結部を設けたことを特徴とするものである。
【0016】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の乗員検知センサにおいて、前記補助連結部は前記第1及び第2可撓性絶縁フィルム及び前記スペーサから選択された少なくとも1つの部材のパターンニングにより形成されていることを特徴とするものである。
【0017】
請求項7に記載の発明は、請求項1又は請求項3乃至請求項6項のいずれか一の請求項に記載の乗員検知センサにおいて、前記通気孔は、前記第1及び第2可撓性絶縁フィルム及び前記スペーサの一部を前記スイッチセルの外周の一部側方に突出させて形成された突出部に設けられ、前記エアー通路が前記通気孔に連通されるように延長されていることを特徴とするものである。
【0018】
請求項8に記載の発明は、請求項1乃至請求項7項のいずれか一の請求項に記載の乗員検知センサにおいて、前記第1及び第2可撓性絶縁フィルムのいずれか一方の外面に粘着膜が接着され、前記いずれか一方の絶縁フィルムが前記粘着膜によってスイッチ被装着体に直接接着されることを特徴とするとするものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、複数のスイッチセル及びこれらセルに連接する連結部を有するフィルム状の乗員検知センサの剛性の低減を図ることによりフィルム全体としての構造的柔軟性が従来に比して向上するという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に、本発明による乗員検知センサの実施の形態を図1乃至図3を参照して説明する。図1は本発明の一実施形態を示す乗員検知センサの一部切欠平面図である。図2は図1に示された乗員検知センサの一要部(図1中1点鎖線で囲まれた部分)を説明するための図であり、図2(a)はその一部切欠拡大平面図、図2(b)はそのY−Y線に沿う縦断面図、図2(c)は図2(a)中のZ−Z線に沿う縦断面図である。図3は図2に示されたセンサの構成を分解して示す各部材の平面図である。
【0021】
図1は本発明の一実施形態の乗員検知センサ例えばフィルム状の着座検知センサの全体的な外観形状を示しており、まず、これについて説明する。この着座検知センサはそのセンサの基本単位である複数(例えば9個)の例えば直径が20mm程度の円板状のスイッチセルS1乃至S9を有している。これらスイッチセルS1乃至S9は、それらセル間にそれぞれ形成された例えばパターン外形幅が5mm程度の連結部C1乃至C8によって相互連結され、これらスイッチセルS1乃至S9及び連結部C1乃至C8は相俟って一連の連鎖状配列パターンを構成している。この連鎖状配列の一端にある例えばスイッチセルS1の一部に連接された引出部C0の端部には配線端子部Dが設けられていて、この配線端子部Dには、センサへの入出力を行う外部リード線W1、W2が接続される。
【0022】
そして、前記スイッチセルS1乃至S9は、いずれの列も図中2点鎖線の囲いで示されているように、S1乃至S3からなる第1セル列L1、同様にS4乃至S6からなる第2セル列L2、及びS7乃至S9からなる第3セル列L3に配分され、これらセル列相互をほぼ平行配置させることによりほぼ縦横の配置パターンに分布されている。これらスイッチセルの1セル列当たりの数、セル列の数は、乗員検出センサの用途に応じて設定され、また、着座検知センサでは着座者の体型や座席シートに対する着座位置に関する習性等を考慮した検知範囲を満たすような範囲にスイッチセルを分布させ、その検出感度を確保できるように設定される。
【0023】
これら第1乃至第3セル列L1、L2、L3は、図示のように前記引出部C0から複数の分岐路を持つことなく一連の配列をもって、つづら折状の配列パターンに織り込まれている。このつづら折状配列パターンによれば、前記従来技術のような回路配線フィルムの多数の分岐路は無いので、従来に比して剛性の増加要因を抑えることができる。従って、このような回路配線フィルムを備えた検知センサ全体としての構造的柔軟性を従来に比して著しく向上でき、つづら折状配列パターンの延長の中で、必要に応じスイッチセルの数及びそれらの分布範囲を自由に設定することにより、その検出感度を高めることができる。
【0024】
更に、前記第1乃至第3セル列L1、L2、L3は、隣り合うセル列同士の位置が平行に各スイッチセルのほぼ半径分(ほぼ半ピッチ分)ずらされており、例えば第1セル列L1のセルS3及び第3セル列L3のセルS9は第2セル列L2のセルS4とセルS5との間に位置するように配置されている。このようにして前記スイッチセルS1乃至S9相互を千鳥配置にする場合は、例えば隣り合う第1セル列L1と第2セル列L2とは図示の状態ではセル列同士が全体的に上下に離間しているが、第1セル列L1中の各セルは第2セル列L2中の各セル間に割込ませるほど接近させることができ、セル列同士としては一部重なるほどにセル列L1とL2とを著しく接近させることができる。同様に第2セル列L2と第3セル列L3も相互に接近させることができるので、スイッチセル配列密度を高くすることができ、検知センサの検出感度を著しく向上できる。
【0025】
更に、スイッチセルS4とS9との間に設けられた絶縁性の補助連結部CXは、例えばつづら折最終端部のスイッチセルのふらつきに起因する検知センサの被装着体への取付けまでの取扱い作業の不便さを防止するのに役立ち、その存在により前記セル列相互間隔を一定に維持でき、セル配列パターンが大きく乱れることがない。この補助連結部CXは、後述する配線パターン層を設けることなく、第1及び第2可撓性絶縁フィルム及び絶縁スペーサから選択された少なくとも1つの部材をパターニングすることによって簡単に形成される。また、前記補助連結部CXはスイッチセルの数が多くなるに従ってその設置場所を適宜増加してもよく、前記ふらつき或いは乱れを抑える程度の細い寸法でよいので、フィルム剛性は低く抑えることができる。
【0026】
なお、図1中には、前記スイッチセルS3についてのA−A線に沿う縦断面及び前記連結部C1についてのB−B線に沿う縦断面を描き添えてあるが、後述する図2及び図3による着座検知センサの構成説明から理解されるので、ここでは説明を省略する。
【0027】
次に、図2及び図3は、図1に示された前記着座検知センサのスイッチセルS7及びS8及び連結部C6乃至C8の内部構成を説明するための図であり、まず、図3(a)乃至(c)に示された各構成部材について説明する。
【0028】
図3(a)において、第1可撓性絶縁フィルム1は、例えば円板状の複数のセンサ部1a(図1及び図2中のS7及びS8に対応)及びこれらの間を連結する複数の連結部1b(図1及び図2中の符号C6乃至C8に対応)を有していて、複数のセンサ部1aを複数の連結部1bによって交互に接続した構成となっている。前記センサ部1aは20mm程度の直径を有するように形成され、連結部1bはその部分での剛性を低減するためにできるだけ幅狭となるように例えば5mm程度の外形幅となるように形成されている。
【0029】
前記絶縁フィルム1の一主面上に形成された第1配線パターン層2は、前記絶縁フィルム1に対して外形寸法を小さくしてほぼ相似形のパターンをもって例えば印刷配線技術等により形成されている。前記第1配線パターン層2は前記スイッチセルS7及びS8にそれぞれ対応するほぼ円板状の複数の第1接点セル2a、及びこれらセルを連結するようにセルに連接する複数の第1配線部2b(図1及び図2中の符号C6乃至C8に対応)を有している。前記第1接点セル2aは、できるだけ広面積にして接触面積を大きくすることによって着座荷重に対する検知感度の向上が図られている。
【0030】
次に、図3(b)において、可撓性樹脂からなる絶縁スペーサ3は、前記第1絶縁フィルム1と後述する第2絶縁フィルム6との間に介在されるものであり、前記第1絶縁フィルム1の外形とほぼ同一外形及び寸法に形成されている。このスペーサ3は前記第1配線パターン層2の複数の第1接点セル2aに対向する位置にそれぞれ形成された複数のほぼ円形状のスイッチ用貫通孔4を有する。前記絶縁スペーサ3は前記貫通孔4の形成により、円環状の複数の枠部3a及びこれらの間を連結する複数の連結部3bを有する形状となっている。これら連結部3bには、前記各貫通孔4に連通するエアー通路5が形成され、このエアー通路5は、前記第1配線パターン層2中の複数の第1配線部2bに対向する位置に設けられていて、その幅は前記第1配線部2bの幅より狭い例えば約1mmとなっている。
【0031】
図3(c)において、第2可撓性絶縁フィルム6は、その一主面が前記第1可撓性絶縁フィルム1の一主面に対向するように配置されるもので、前記第1可撓性絶縁フィルム1とほぼ同一の形状となっていて、円板状の複数のセンサ部6a及びこれらを連結する複数の連結部6bを有している。従って、これらのセンサ部6a及び連結部6bは、前記第1可撓性絶縁フィルム1のセンサ部1a及び連結部1bと対応しており、それぞれほぼ同一形状及び外形寸法を有している。
【0032】
前記絶縁フィルム6の一主面上に形成された第2配線パターン層7は、前記第1配線パターン層2とほぼ同一のパターン形状をもって例えば印刷配線技術等により形成されていて、ほぼ円板状の複数の第2接点セル7a及びこれらセルを連結するようにセル間に連接する複数の第2配線部7bを有している。従って、これらの第2接点セル7a及び第2配線部7bは、前記第1配線パターン層2の第1接点セル2a及び第1配線部2bと対応しており、それぞれほぼ同一形状及び外形寸法を有している。ところで、図3(c)では前記絶縁フィルム6の一主面が紙面裏向きとなるように示されているため、前記第2配線パターン層7は図中破線で表されている。
【0033】
そして、この実施形態における乗員検知センサは、図3(a)における第1配線パターン層2が形成された第1可撓性絶縁フィルム1の上に前記スペーサ3を重ね、その上に、前記第2配線パターン層7が形成された第2可撓性絶縁フィルム6を重ねてこれらを相互に接着して一体化することにより、図1及び図2に示すような形状に組立てられている。
【0034】
次に図2を参照して乗員検知センサの組立て構造を説明する。まず、スイッチセルS8は、図2(a)及び図2(b)に示されているように、スペーサ3の枠部3aに囲まれたスイッチ用貫通孔4内において、前記第1絶縁フィルム1のセンサ部1a上の第1接点セル2aと前記第2絶縁フィルム6のセンサ部6a上の第2接点セル7aとを所定の間隔をもって対向配置させることによって構成されている。前記スイッチセルS1乃至S9は、いずれもこのスイッチセルS8と同様な構成となっており、電気的に簡潔に表現すれば、第1接点セル2aと第2接点セル7aとの対によって構成されている。
【0035】
連結部C7の構造は、図2(a)及び図2(c)に示されているように、前記第1絶縁フィルム1の連結部1b上の第1配線部2bと、エアー通路5と、前記第2絶縁フィルム1の連結部6b上の第2配線部7bとは互いにほぼ正対するように重ね合せた配置関係にある。従って、前記連結部C7の外形幅は、このような重ね合せ配置関係により、従来の相対応する2つの配線部とエアー通路との横並び配置に比して小さくできるので、その部分での剛性もまた小さくできる。この従来の外形幅が通常12mm程度であるのに対して、この実施形態のものでは5mm程度と約1/2以下にでき、剛性もまた約1/2以下になる。
【0036】
その結果、乗員検知センサのフィルム全体としての構造的柔軟性が得られるため、この検知センサは、そのフィルム面が例えば座席シートのような被装着体の取付け面形状を柔軟に受け入れて装着され、着座時に座席シートに変形が起きてもその変形に柔軟に対応でき、所謂ゴワゴワ感を感じることなく、座席シートの本来の好感触性が保たれる。なお、この好感触性は、分岐路を無くして、剛性を抑えた前述のつづら折配列による前述の実施形態の検知センサにおいても同様に得られる。
【0037】
ここで、図1中に示された引出部C0及び配線端子部Dについて説明を加えておく。前記スイッチセルS1に連接する前記引出部C0は、図2に示された連結部C7と同様に前記第1絶縁フィルム1の連結部1b上の第1配線部2bと、エアー通路5と、前記第2絶縁フィルム1の連結部6b上の第2配線部7bとを備えた構成となっていて、前記第1及び第2配線部2b、7bはこの部分では引出配線部と称してよい。そして前記引出部C0にこれより広面積にして延長された前記配線端子部Dには、この引出配線部2a、6bをそれぞれ延長させた第1及び第2端子部(図示略)が形成され、これら第1及び第2端子部は相互に重なり合わず、二又に分かれるような平面パターン(図示略)とされ、外部リード線W1、W2にそれぞれ接続される。
【0038】
また、前述のようにエアー通路5を介して前記第1配線部2bと第2配線部7bとが重ね合せ配置関係にあると、このエアー通路5部分においても第1配線部2bと第2配線部7bとによるスイッチ接点を構成することが可能である。即ち、前記絶縁フィルムの連結部における外形幅を剛性の影響を抑えた範囲で増加させ、エアー通路5のパターン幅をできるだけ広げることによって前記第1及び第2配線部2b、7bによるスイッチ接点の形成ができ、前記スイッチセルS1乃至S9の接点セル領域を実質的に拡大し、検知感度を向上させることができる。
【0039】
前記エアー通路5と連通する通気孔は、前記第1及び第2可撓性絶縁フィルムや絶縁性スペーサから選択された少なくとも1つの部材に形成すればよいが、ここではその通気孔形成の一例を図1を参照して説明する。一例としては、前記配線端子部Dに設けられ二又に分かれた前記第1端子と第2端子部との間の位置に前記第1又は第2可撓性絶縁フィルムの部分に通気孔11aを形成し、この通気孔11aに前記エアー通路5を連通させる。この配線端子部Dは、外部リード線W1、W2との接続の関係から前記引出部C0及び連結部C1乃至C8より幅広であるが、被装着体例えば座席シートから離れた位置に装着されるため前記剛性の問題に何ら影響しない。
【0040】
もう一つの例は、前記第1及び第2可撓性絶縁フィルム及び絶縁性スペーサの一部を例えばスイッチセルS6外周の一部側方に突出された突出部10が設けられ、この突出部10に通気孔11bが形成されている。そして前記エアー通路5はこの通気孔11bに連通するよう突出部10内に延長されている。この突出部10に通気孔11bを形成する例では、スイッチセルが多くなるほどエアー通路5が長くなりがちで、通気機能の低下が心配されるので、スイッチセルの数に応じて、通気孔11b付の前記突出部10の形成場所を適宜設定し、通気機能を良好に保つことができると言う利点がある。また、前記突出部10の突出度合いをできるだけ長くして、通気孔11bをスイッチセルから遠ざけるようにすれば、外気中の塵埃による汚染などの影響を受け難くすることができる。
【0041】
次に前記実施形態に係る乗員検知センサを被装着体例えば座席シート表皮裏側の例えばスポンジ状のウレタン樹脂製のパッドに装着する場合に好適な手法について説明する。
【0042】
ところで、通常、乗員検知センサは、前記パッドへの装着前に、予め例えばポリエチレンテレフタレートのような合成樹脂を基材とする両面粘着テープの片面に粘着させた状態で準備され、前記テープの他面を前記パッドへ粘着することによって装着されており、前記テープ基材がその剛性により前記センサ全体のゴワゴワ感を発生させ易い要素となっている。
【0043】
そこで、前記実施形態にあっては、前記両面粘着テープを使用することなく、前記乗員検知センサの第1及び第2可撓性絶縁フィルムのいずれか一方の外面に粘着膜を接着し、この粘着膜によって前記乗員検知センサを前記パッド(被装着体)に直接接着する。この粘着膜としては、ここでは例えば膜厚0.1mm程度のウレタン樹脂系の加熱粘着膜を使用する。前記乗員検知センサの装着は、この加熱粘着膜を比較的低温で加熱して、予め一方の前記可撓性絶縁フィルムに仮接着しておき、この加熱粘着膜を前記パッド(被装着体)に重ね合わせ、例えばアイロン操作要領で加熱装置により約150℃の温度で前記加熱粘着膜をホットメルトすることによって行う。このような粘着膜は剛性が小さく柔軟性があるために、前記乗員検知センサ全体のゴワゴワ感を発生させ難い。
【0044】
なお、前記実施形態において、各種配線層としては、一例として印刷技術により形成された銀ペースト及びこの上に重ねられたカーボン層が使用され、可撓性絶縁フィルムや絶縁性スペーサとしてはポリエチレンナフタレートやポリエチレンテレフタレート等の樹脂が使用されている。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の一実施形態に係る乗員検知センサを示す一部切欠平面図である。
【図2】図1に示された本発明の一実施形態に係る乗員検知センサの一要部を説明するための一部切欠拡大図である。
【図3】図2に示された本発明の一実施形態に係る乗員検知センサの一要部の構成を分解して示す平面図である。
【図4】従来技術を説明するための図である。
【符号の説明】
【0046】
1 第1可撓性絶縁フィルム
1a 第1可撓性絶縁フィルムのセンサ部
1b 第1可撓性絶縁フィルムの連結部
2 第1配線パターン層
2a 第1接点セル
2b 第1配線部
3 絶縁スペーサ
3a 絶縁スペーサの枠部
3b 絶縁スペーサの連結部
4 スイッチ用貫通孔
5 エアー通路
6 第2可撓性絶縁フィルム
6a 第2可撓性絶縁フィルムのセンサ部
6b 第2可撓性絶縁フィルムの連結部
7 第2配線パターン層
7a 第2接点セル
7b 第2配線部
10 通気孔形成のための突出部
11a、11b 通気孔
C0 引出部
C1乃至C8 連結部
D 配線端子部
L1乃至L3 第1乃至第3セル列
S1乃至S9 スイッチセル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセンサ部及びこれらを連結する連結部を有する第1可撓性絶縁フィルムと、このフィルムの一主面に形成され前記センサ部及び連結部上にそれぞれ配置された複数の第1接点セル及びこれらセルに連接する第1配線部を有する第1配線パターン層と、前記第1可撓性絶縁フィルムとほぼ同一形状の複数のセンサ部及びこれらを連結する連結部を有する第2可撓性絶縁フィルムと、前記第2可撓性絶縁フィルムの前記第1配線パターン層に対向する一主面に前記第1配線パターン層とほぼ同一のパターンをもって形成され複数の第2接点セル及びこれらセルに連接する第2配線部を有する第2配線パターン層と、前記第1及び第2絶縁フィルム相互間に介在され相対する前記各第1及び第2接点セルの複数対にそれぞれ対向する複数のスイッチ用貫通孔及びこの貫通孔に連接し第1及び第2配線部に対向するエアー通路を有する絶縁スペーサとを備え、前記エアー通路及び第1及び第2配線部は相互に重なり合う配置とされ、前記第1及び第2可撓性絶縁フィルムから選択された少なくとも1つの部材は前記エアー通路に連通する通気孔を有していることを特徴とする乗員検知センサ。
【請求項2】
複数のセンサ部及びこれらを連結する連結部を有する第1可撓性絶縁フィルムと、このフィルムの一主面に形成され前記センサ部及び連結部上にそれぞれ配置された複数の第1接点セル及びこれらセルに連接する第1配線部を有する第1配線パターン層と、前記第1可撓性絶縁フィルムとほぼ同一形状の複数のセンサ部及びこれらを連結する連結部を有する第2可撓性絶縁フィルムと、前記第2可撓性絶縁フィルムの前記第1配線パターン層に対向する一主面に前記第1配線パターン層とほぼ同一のパターンをもって形成され複数の第2接点セル及びこれらセルに連接する第2配線部を有する第2配線パターン層と、前記第1及び第2絶縁フィルム相互間に介在され相対する前記各第1及び第2接点セルの複数対にそれぞれ対向する複数のスイッチ用貫通孔を有する絶縁スペーサとを備え、前記各可撓性絶縁フィルムのセンサ部及び複数対の第1及び第2接点セルによって複数のスイッチセルが構成され、前記複数のスイッチセルは1列当たり複数のスイッチセルを有する複数列のスイッチセル列を構成するようにほぼ縦横に配置され、前記連結部の前記第1及び第2配線部は前記複数列のスイッチセル列がつづら折状パターンに織り込まれるように前記複数のスイッチセルを一連につなぎ合せていることを特徴とする乗員検知センサ。
【請求項3】
請求項1に記載の乗員検知センサにおいて、前記各可撓性絶縁フィルムのセンサ部及び複数対の第1及び第2接点セルによって複数のスイッチセルが構成され、前記複数のスイッチセルは1列当たり複数のスイッチセルを有する複数列のスイッチセル列を構成するようにほぼ縦横に配置され、前記連結部の前記第1及び第2配線部は前記複数列のスイッチセル列がつづら折状パターンに織り込まれるように前記複数のスイッチセルを一連につなぎ合せていることを特徴とする乗員検知センサ。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の乗員検知センサにおいて、隣り合う前記スイッチセル列における一方のセル列のセルが他方のセル列のセル間に位置するように配置されていることを特徴とする乗員検知センサ。
【請求項5】
請求項2乃至請求項4のいずれか一の請求項に記載の乗員検知センサにおいて、隣り合う前記スイッチセル列における一方のセル列の一セルと他方のセル列の一セルとの間に絶縁性の補助連結部を設けたことを特徴とする乗員検知センサ。
【請求項6】
請求項5に記載の乗員検知センサにおいて、前記補助連結部は前記第1及び第2可撓性絶縁フィルム及び前記スペーサから選択された少なくとも1つの部材のパターンニングにより形成されていることを特徴とする乗員検知センサ。
【請求項7】
請求項1又は請求項3乃至請求項6項のいずれか一の請求項に記載の乗員検知センサにおいて、前記通気孔は、前記第1及び第2可撓性絶縁フィルム及び前記スペーサの一部を前記スイッチセルの外周の一部側方に突出された突出部に設けられ、前記エアー通路が前記通気孔に連通されるように延長されていることを特徴とする乗員検知センサ。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7項のいずれか一の請求項に記載の乗員検知センサにおいて、前記第1及び第2可撓性絶縁フィルムのいずれか一方の外面に粘着膜が接着され、前記いずれか一方の絶縁フィルムが前記粘着膜によってスイッチ被装着体に直接接着されることを特徴とする乗員検知センサ。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−32150(P2006−32150A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−209893(P2004−209893)
【出願日】平成16年7月16日(2004.7.16)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】