説明

乗客コンベヤの欄干照明装置

【課題】 自動運転式の乗客コンベヤにあって、停止して欄干照明装置が消灯状態であっても、省電力のための一時停止であるか、又は使用不可能な状態であるか、容易に判断できる乗客コンベヤの欄干照明装置を提供することを目的とする。また、連続運転式の乗客コンベヤにあっては、使用可能な状態であるか否か、容易に判断できる態様で欄干照明装置を消灯して、省電力を図るようにした乗客コンベヤの欄干照明装置を提供する。
【解決手段】 乗客9が踏段4に乗降する両乗降部付近の欄干5を照明する乗降部欄干照明灯7と、両乗降部を除いた中間部の欄干を照明する中間部欄干照明灯8に分け、乗降部欄干照明灯7は、省電力のための一時停止も含めて乗客コンベヤ3の運転中は常時点灯させ、中間部欄干照明灯8は、乗客9を搬送している間点灯させるようにしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、乗客コンベヤの運転状況に応じて欄干照明灯を点滅させる乗客コンベヤの欄干照明装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の乗客コンベヤの欄干照明は、乗客がいないときは自動的に運転を停止させる自動運転式の乗客コンベヤにあっては、運転の停止と共に消灯し、始動と共に点灯するようにしていた(例えば、特許文献1参照)。
また、乗客の有無に関係なく運転される連続運転式の乗客コンベヤにあっては、欄干照明は運転中継続して点灯されていた。
【0003】
【特許文献1】特開平4−313592号公報(段落番号14〜18、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のとおり、従来の乗客コンベヤの欄干照明装置は、自動運転式の乗客コンベヤにあっては、運転の停止と共に消灯するので、消灯状態では、省電力のための一時停止であるか、使用不可能な状態で停止しているのか、利用者には一見して識別できない、という問題があった。
また、連続運転式の乗客コンベヤにあっては、乗客の有無に関係なく連続運転され、欄干照明は継続して点灯されたままとなるので、省電力が図れない、という問題があった。
【0005】
この発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、自動運転式の乗客コンベヤにあって、停止して欄干照明装置が消灯状態であっても、省電力のための一時停止であるか、又は使用不可能な状態であるか、容易に識別できる乗客コンベヤの欄干照明装置を提供することを目的とする。
また、連続運転式の乗客コンベヤにあっては、使用可能な状態であるか否か、容易に判断できる態様で欄干照明装置を消灯して、省電力を図るようにした乗客コンベヤの欄干照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る乗客コンベヤの欄干照明装置は、乗客が踏段に乗降する両乗降部付近の欄干を照明する乗降部欄干照明灯と、両乗降部を除いた中間部の欄干を照明する中間部欄干照明灯に分け、乗降部欄干照明灯は、省電力のための一時停止も含めて乗客コンベヤの運転中は常時点灯させ、中間部欄干照明灯は、乗客を搬送している間点灯させるようにしたものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明は上記のとおり構成されているので、以下の効果を奏する。
乗客コンベヤの運転中は、乗降部欄干照明灯が常時点灯しているので、利用客は、遠方からでも、使用可能な乗客コンベヤであることを認識することができる。仮に、乗客コンベヤが自動運転中であって、乗客が途絶えたために一時停止している時であっても、乗客コンベヤが使用可能であるか否か、乗降部欄干照明灯の点灯によって容易に認識することができる、という効果を奏する。
また、乗客を搬送している間は、乗降部欄干照明灯と中間部欄干照明灯の双方が点灯するので、乗客コンベヤの搬送路全体が照明される、という効果を奏する。
更に、乗客を搬送していない時は、中間部欄干照明灯は消灯されるので、省電力を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照して、この発明の実施の形態について説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一符号を付し、説明の重複を省いた。
実施の形態1.
図1から図6は、この発明の実施の形態1を示す。図1は、乗客コンベヤであるエスカレータの側面図である。エスカレータ3は、1階1と2階2の間に跨設されていて、ここでは上昇運転されているものとする。踏段4は無端状に連結されており、エスカレータ制御盤19によって制御される駆動機18に駆動されて循環移動して乗客9を搬送する。踏段4の両側には欄干5が立設されており、欄干5の頂部には踏段4と同じ速度で移動する移動手摺6が設けられている。乗客9が踏段4に乗る下部の乗降部付近の欄干5には、下部乗降部欄干照明灯7dが欄干に取り付けられている。同様に、乗客9が踏段4から降りる上部の乗降部付近の欄干5には、上部乗降部欄干照明灯7uが欄干5に取り付けられている。以下、総称する場合は乗降部欄干照明灯7とする。両乗降部を除く中間の欄干5には中間部欄干照明灯8が取り付けられている。以下、乗降部欄干照明灯7と中間部欄干照明灯8を総称する場合は、欄干照明灯7、8とする。
【0009】
また、上下の乗降部の手摺引込口の下部には、下部乗客検出手段10dと上部乗客検出手段10uがそれぞれ設けられている。以下、総称する場合は乗客検出手段10とする。乗客検出手段10は乗客9が一定の範囲に近付くと作動するようになっている。
更に、上下の乗降部付近の外側板には操作盤11が取り付けられている。この操作盤11は、図5に詳細を示したとおり、エスカレータを上昇運転、下降運転及び運転を停止させるための運転スイッチ11aと、エスカレータを緊急に停止させる非常停止スイッチ11bと、欄干照明灯7、8をON/OFFする照明灯スイッチ11cと、中間部欄干照明灯8の自動点灯/消灯を有効とする自動消灯スイッチ11dが取り付けられていて、それぞれエスカレータ制御盤19、更には照明灯制御装置20へ入力される。
【0010】
即ち、照明灯スイッチ11cがONになると、乗降部欄干照明灯7が点灯する。エスカレータ3の運転中は「ON」に操作されて常時点灯する。
中間部欄干照明灯8は、照明灯スイッチ11cがONにされ、かつ、自動消灯スイッチ11dが「有効」にされている場合に、乗込み側の乗客検出手段10(この実施の形態1では、下部乗客検出手段10d)が乗客9を検出すると点灯し、乗客9を搬送し終えるのに必要な搬送時間が経過した後消灯する。搬送時間の経過前に下部乗客検出手段10dが後続の乗客9を検出すると、この後続の乗客9を搬送し終えるのに必要な搬送時間が経過するまで中間部欄干照明灯8の消灯は遅延する。
乗客検出手段10が、通過客を乗客9と誤検出するのを防止するために、各1階1及び2階2の乗場には、誘導柵12が立設されている。
【0011】
図2は、図1のII−II線断面を矢視した断面図であって、中間部欄干照明灯8部分の詳細を示す。欄干5は透明ガラスでできており、下部デッキボード17内に固定されて立設され、頂部に上部デッキボード16が取り付けられている。この上部デッキボード16の上部には、移動手摺6を支持し案内するガードレールが取り付けられている。上部デッキボード16には、欄干照明灯7、8が取り付けられている。図では、中間部欄干照明灯8を示し、ランプ8aと照明カバー8bとからなる。
【0012】
図3は、下部乗客検出手段10dの動作位置を示す下部乗場の平面図である。図において、下部乗客検出手段10dは、左右の手摺引込口の下部に取り付けられており、一般の通行客を乗客9と誤検出するのを防止し、かつ、乗客9を速やかに検出するため、取付位置からL1前方の位置で乗客9を検出する。
図4によって下部乗客検出手段10dの動作を説明する。同図(a)に示したとおり下部乗客検出手段10dから超音波が発信される。この超音波は円錐形のホーンから発せられて、第3図に示したとおり扇形に拡幅する。その反射波が同図(b)のとおり再度下部乗客検出手段10dによって受信される。発信から受信までの時間差tを、同図(c)に示したとおり内蔵のクロックパルスから読み取って距離を演算する。即ち、音速をCとして距離L=(t×C)/2を求めることができる。下部乗客検出手段10dは、求めた距離L=L1のときに作動して乗客9を検出する。
上部乗客検出手段10uについても同様である。
【0013】
図5は、エスカレータの欄干照明装置の電気回路を示すブロック図である。
エスカレータ制御盤19には、操作盤11の非常停止スイッチ11bからの信号又はチェーン安全装置(図示しない。)等からの信号によって、駆動機18を緊急に停止させる安全回路と、操作盤11からの信号によって駆動機18の運転方向を定める運転方向回路と、同様に駆動機18を始動させ、又は停止させる始動・停止回路が組み込まれている。
更に、照明灯制御装置20も組み込まれている。この照明灯制御装置20は、マイコンで構成されていて、CPU21と、図6に示す動作をするプログラムが格納されたROM22と、一時的なデータが格納されるRAM23と、外部装置との信号の授受を行う入出力装置24とからなる。
【0014】
即ち、入出力装置24には、操作盤11の照明灯スイッチ11cからの信号、自動消灯スイッチ11dからの信号、運転スイッチ11aからの信号及び乗客検出手段10からの信号が入力される。更に、入出力装置24から乗降部欄干照明灯7及び中間部欄干照明灯8へ信号が出力されて点灯、消灯が行われる。
【0015】
次に、乗客コンベヤの欄干照明装置の動作について述べる。
1. 運転スイッチ11aが「UP」又は「DOWN」、照明灯スイッチ11cが「ON」で自動消灯スイッチ11dが「有効」の場合
この場合は、図6の流れ図に示す動作をする。即ち、手順S11で、照明灯スイッチ11cが「ON」であることによって、乗降部欄干照明灯7が点灯する。この時点では中間部欄干照明灯8は点灯していない。手順S12で、下部乗客検出手段10dが乗客9を検出したか調べる。検出していない場合は、手順S13へ移り、中間部欄干照明灯8を消灯したままとなり、手順S12へ移って乗客9を待つ。
【0016】
手順S12で、下部乗客検出手段10dが乗客9を検出すると、手順S14へ移り、中間部欄干照明灯8を点灯させる。手順S15で、マイコンに内蔵されているタイマを使って計時動作を開始する。手順S16で、下部乗客検出手段10dが後続の乗客9を検出したか調べる。検出された場合は、手順S17へ移り、先に乗客9が検出されてからのタイマの計時値をリセットし、手順S15で改めて計時動作を開始する。
手順S16で、後続の乗客9が検出されなかった場合は、手順S18へ移り、計時値が予め設定された搬送時間以上になったか調べる。
【0017】
ここで、搬送時間は、踏段4が1階1の乗場から2階2の乗場まで移動するのに要する時間に、乗客9が1階1で下部乗客検出手段10dによって検出されてから踏段4に乗るまでに通常必要とする予測時間を加算し、更に余裕時間を加えた合計時間である。エスカレータ3が自動運転式の場合は、乗客9の検出によって始動し、搬送し終えると自動停止する自動運転時間と同期させてもよい。
手順S18で、計時値が搬送時間に達していない場合は、手順S16へ戻る。計時値が搬送時間に達した場合は、中間部欄干照明灯8を消灯させて手順S12へ戻り、以下動作を繰り返す。
【0018】
2. 運転スイッチ11aが「UP」又は「DOWN」、照明灯スイッチ11cが「ON」で自動消灯スイッチ11dが「無効」の場合
乗降部欄干照明灯7は点灯する。中間部欄干照明灯8は、乗降部欄干照明灯7と同じ動作となり、点灯し続ける。
3. 運転スイッチ11aが「UP」又は「DOWN」、照明灯スイッチ11cが「OFF」の場合
乗降部欄干照明灯7は消灯する。中間部欄干照明灯8も、自動消灯スイッチ11dには関係なく照明灯スイッチ11cによって回路を遮断されて消灯したままとなる。
4. 運転スイッチ11aが「停止」の場合
エスカレータ3は停止するが、乗降部欄干照明灯7及び中間部欄干照明灯8は、照明灯スイッチ11c及び自動消灯スイッチ11dによって制御されて上記の動作をする。
【0019】
上記実施の形態1によれば、エスカレータ3の運転中は、乗降部欄干照明灯7が常時点灯しているので、利用客は、遠方からでも使用可能なエスカレータ3を認識することができる。仮に、エスカレータ3が自動運転方式であって、乗客9が途絶えたために一時的に停止している時であっても、エスカレータ3が使用可能であるか否か、乗降部欄干照明灯7の点灯によって容易に識別することができる。
また、乗客9を搬送している間は、乗降部欄干照明灯7と中間部欄干照明灯8の双方が点灯するので、エスカレータ3の搬送路全体が照明され、欄干照明灯7、8の有効利用が可能となる。
更に、乗客9を搬送していない時は、中間部欄干照明灯8は消灯されるので、省電力を図ることができる。
更にまた、誘導柵12を設置したので、乗客を適所に誘導することができ、乗客検出手段10による誤検出を防止することができる。
更にまた、運転スイッチ11aに無関係に照明灯スイッチ11cによって乗降部欄干照明灯7、更には中間部欄干照明灯8を点灯、消灯させることができるので、欄干照明灯7、8の点検が容易である。
【0020】
なお、上記実施の形態1では、1階1から2階2へ上昇するものとして下部乗降部欄干照明灯7d及び上部乗降部欄干照明灯7uの双方を点灯させるようにしたが、照明灯スイッチ11cが「ON」になると、乗客9が乗り込む下部乗降部欄干照明灯7dのみ点灯するようにし、上部乗降部欄干照明灯7uは、中間部欄干照明灯8と共に点滅させるようにしてもよい。これによって、利用可能なエスカレータ3の乗込み側の乗場のみが容易に分るようになる。
また、エスカレータ3が下降運転される場合も同様である。
更に、上記実施の形態1では、乗客コンベヤとしてエスカレータ3を例示したが、移動歩道であっても同様である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明の実施の形態1における欄干照明装置が取り付けられたエスカレータの側面図。
【図2】図1のII−II線断面を矢視した断面図。
【図3】この発明の実施の形態1における下部乗場の平面図。
【図4】下部乗客検出手段10dの動作の説明用図。
【図5】この発明の実施の形態1におけるエスカレータの欄干照明装置の電気回路を示すブロック図。
【図6】この発明の実施の形態1におけるエスカレータの欄干照明装置の動作を示す流れ図。
【符号の説明】
【0022】
1 下階、 2 上階、 3 エスカレータ、 4 踏段、 5 欄干、 6 移動手摺、 7d 下部乗降部欄干照明灯、 7u 上部乗降部欄干照明灯、 8 中間部欄干照明灯、 9 乗客、 10d 下部乗客検出手段、 10u 上部乗客検出手段、 11 操作盤、 11a 運転スイッチ、 11b 非常停止スイッチ、 11c 照明灯スイッチ、 11d 自動消灯スイッチ、 12 誘導柵、 15 ガードレール、 16 上部デッキボード、 17 下部デッキボード、 18 駆動機、 19 エスカレータ制御盤、 20 照明灯制御装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
循環移動して乗客を搬送する踏段の両側に立設された欄干を照明する乗客コンベヤの欄干照明装置において、上記乗客が上記踏段に乗降する両乗降部付近の上記欄干を照明する乗降部欄干照明灯と、上記両乗降部を除く中間の上記欄干を照明する中間部欄干照明灯と、上記乗客コンベヤの運転中は上記乗降部欄干照明灯を常時点灯させる乗降部欄干照明点灯手段と、上記乗客が上記踏段に乗っている間上記中間部欄干照明灯を点灯させる中間部欄干照明点灯手段とを備えた乗客コンベヤの欄干照明装置。
【請求項2】
中間部欄干照明点灯手段は、乗降部に設置された乗客検出手段が乗客を検出すると中間部欄干照明灯を点灯させ、上記乗客を搬送し終えるのに必要な搬送時間が経過すると上記中間部欄干照明灯を消灯させ、上記乗客検出手段が上記搬送時間の経過前に後続の上記乗客を検出すると、この後続の上記乗客を搬送し終えるのに必要な搬送時間が経過するまで上記中間部欄干照明灯の消灯を遅延させるものとした請求項1に記載の乗客コンベヤの欄干照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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