説明

乗用型農作業機

【課題】乗用型農作業機における走行機体の骨組みを、簡単な構造でありながら強度的に優れた構造と成す。
【解決手段】走行機体1は、前後方向に延びる左右のサイドフレーム12と、左右サイドフレーム12をその前部において連結する左右長手のフロントフレーム13と、左右サイドフレーム12をその後部において連結する左右長手のリアフレーム14とを有している。サイドフレーム12のうち後半部は後ろに行くほど高さが高くなった傾斜部12aになっており、サイドフレーム12の後端が前記リアフレーム14に突き合わさっていると共に、リアフレーム14はリア支柱33で下方から支持されている。リア支柱33の上端はリアフレーム14に溶接で固着されている。リアフレーム14はサイドフレーム12の左右外側に突出しており、このため施肥装置や人の支持安定性に優れている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、乗用型田植機のような乗用型農作業機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
乗用型田植機は前輪及び後輪で支持された走行機体を有しており、走行機体の後部に苗植装置を高さ調節可能に取り付けている。そして、走行機体には座席と操縦ハンドルとが配置されていると共にエンジンが搭載されており、エンジンからの動力によって走行と作業(例えば苗植)が行われる。そして、走行機体は鋼管やチャンネル材等の鋼材で骨組み(シャーシ)を構成しているのが一般的であり、一般に骨組みの主要部材として前後方向に長く延びる左右のサイドフレームを有しており、左右のサイドフレームを横長の部材で連結している。
【0003】
そして、特許文献1では、左右のサイドフレームをその後半部が後ろに行くに従って高さが高くなるよう側面視で屈曲した形態として、左右サイドフレームの前部を左右横長のフロントフレーム及びパンパーで連結する一方、左右のサイドフレームの後端はそれぞれリアアクスルから立ち上がったリア支柱の上部側面に固着している。更に、左右のリア支柱はこれらに一体に繋がったリアフレームを有している(従って、左右のリア支柱とリアフレームとは1本の鋼材を曲げることで構成されている。)。また、左右のリア支柱の上端にはブラケットを固着し、このブラケットで施肥装置を支持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3804926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
仮に、サイドフレームがその全長にわたって水平姿勢であると、リア支柱は上向きに大きく突出するためリア支柱による他の部材の支持強度が低くなるのみならず、左右サイドフレームの後端を別の部材で連結しないと骨組み全体の剛性が低くなるという問題がある。これに対して特許文献1のようにサイドフレームの後半部を傾斜させると、サイドフレームとリアフレームとリア支柱とがほぼ近い部位において繋がっているため、骨組みは全体として立体構造になって高い剛性を得ることができる。
【0006】
しかし、特許文献1は上記のような利点を有する反面、リアフレームと左右のリア支柱とが1本の鋼材で構成されているため加工が厄介であるという問題があった。また、走行機体の後部は運転者が苗継ぎ作業をするために苗植装置の左右巾寸法と同じ程度の巾寸法を有する車体カバーが配置されていると共に、左右長手の施肥装置を配置していることも多く、これら車体カバーや施肥装置はリア支柱の左右外側に広がる状態で延びているが、特許文献1では、リア支柱とリアフレームとが一体構造であるため、リアフレームは左右のリア支柱の間に位置しているに過ぎず、このため、車体カバーや施肥装置を安定して支持するためには別に頑丈な支持部材が必要になるという問題があった。
【0007】
本願発明はこのような現状に鑑みなされたものであり、走行機体の骨組み構造に改良が施された乗用型農作業機を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明は多面的な広がりを持っている。第1の発明(第1の構成:請求項1の発明)は上位概念を成すもので、この第1の発明では、前輪及び後輪で支持されていると共にエンジンを搭載した走行機体と、前記走行機体の後ろ側に配置された作業装置とを有しており、前記走行機体は、前後方向に延びる左右のサイドフレームと、前記左右サイドフレームをその前部において連結する左右長手のフロントフレームと、前記左右サイドフレームをその後部において連結する左右長手のリアフレームとを有しており、前記サイドフレームとフロントフレームとリアフレームとで走行機体のおおまかな骨組みが構成されている。
【0009】
そして、第1の発明において、前記サイドフレームのうち後端側の適宜範囲は後ろに行くほど高さが高くなった傾斜部になっており、前記サイドフレームの後端が前記リアフレームに突き合わさっていると共に、前記リアフレームはリア支柱で下方から支持されており、前記リア支柱の上端をリアフレームに固着している。第2の発明(第2の構成:請求項2の発明)は第1の発明を好適に展開したものであり、この第2の発明では、前記リアフレームはサイドフレームの左右外側に張り出している。
【0010】
第3の発明(第3の構成:請求項3の発明)は第1の発明又は第2の発明を展開したものであり、この発明では、前記リア支柱は左右サイドフレームの内側に2本配置されており、前記2本のリア支柱に前記作業装置を昇降するためのリンクが回動自在に連結され、前記リアフレームに前記リンクを回動操作するためのシリンダが連結されている。
【0011】
第4の発明(第4の構成:請求項4の発明)は第1〜第3の発明を展開したものであり、この発明では、前記エンジンはクランク軸が手前に位置すると共にシリンダボアが側面視で傾斜した姿勢になっており、このエンジンを側面視において前記サイドフレームにおける傾斜部の略下方に位置するように配置しており、更に、前記エンジンの上方には燃料タンクを配置し、燃料タンクの上方には座席を配置している。
【0012】
第5の発明(第5の構成:請求項5の発明)は請求項1〜4の発明を展開したものであり、この発明は、前記リアフレームの略下方に配置されているリアアクスルを有しており、前記リアアクスルは、後ろ向きに突出した左右の張り出し部を有する略左右対称の形態であって前記左右張り出し部から横向き突出した後ろ車軸に前記後輪が取り付けられており、前記リアアクスルとサイドフレームとは概ね同じ左右間隔に設定されている一方、前記リア支柱は、リアアクスルにおける張り出し部の付け根部の内角部から立ち上がっている。
【発明の効果】
【0013】
本願各発明では、サイドフレームとリアフレームとリア支柱とは別々の部材から成っており、サイドフレームと後端とリア支柱の上端とはリアフレームに突き合わさっている。従って、特許文献1のように1本の部材を曲げてリアフレームとリア支柱とを構成する構造に比べて部材の加工が容易である。
【0014】
また、リアフレームはリア支柱に制約されることなく長さを自由に設定できるため、第2の発明のようにリアフレームを左右サイドフレームの左右外側に張り出す構成とすることを自在に行える。従って、例えば田植機を例に取ると車体カバーや施肥装置をリアフレームで安定的に支持することができるのであり、よって、人や装置の支持機能に優れた走行機体を、構造を過度に複雑化することなく実現することができる。
【0015】
さて、特許文献1では、左右のリア支柱に上下一対のリンクを連結して、このリンク部材の先端部に苗植装置を連結し、更に、リンクとリアフレームとを油圧シリンダで連結している。従って、油圧シリンダを伸縮させるとタンク部材が回動して苗植装置が昇降する。そして、特許文献1では後輪か取り付くリアアクスルでリア支柱を支持しており、この構成を採用すると頑丈な構造のリアアクスルを走行機体の構造部材(骨組み)に兼用できて走行機体の構造の簡単化に貢献できる。他方、左右のリア支柱の間隔は骨組み剛性確保という点からリア支柱の位置とは関係なく設定するのが好ましいと言えるが、特許文献1ではサイドフレームはリア支柱の側面に固定しているのでサイドフレームの左右位置がリア支柱の位置に制約されるといった問題がある。
【0016】
これに対して本願発明ではサイドフレームはリアフレームに固着しているため、サイドフレームの左右位置がリア支柱の位置に制約を受けることはないのであり、このためサイドフレームの位置について設計の自由性が格段に向上する。従って、第3の発明のようにサイドフレームをリア支柱の左右外側に配置することを何らの困難なく実現できる。そして、本願の第3の発明では、第5の発明のようにリアアクスルを走行機体の構造材(骨組み)に兼用した場合であっても左右サイドフレームの間隔を広げることができるため、リア支柱によるリンクの支持態様を大きく変えることなくサイドフレームによる支持安定性を向上させることができる。
【0017】
走行機体にはエンジンが搭載されている。乗用型田植機についてエンジンの搭載位置を見ると、特許文献1のように前輪の車軸よりも前に配置したタイプと、例えば特許第2600971号公報に開示されているように前輪の車軸は後輪の車軸との間の位置に配置したタイプとがある。そして、特許第2600971号公報の場合は車体フレームの上にエンジンを配置して、エンジンの上に燃料タンクを配置し、更に燃料タンクの上に座席を配置しているが、この構成では車体フレームは高さを相当に低くせねばならないため車体カバーを支持するために別のスペーサ部材が必要になる問題や、リア支柱は車体フレームから上向きに立ち上がるため支持強度を高くするには頑丈な構造にせねばならないといった問題が生じる。
【0018】
これに対して本願の第4発明を採用すると、エンジンはサイドフレームの傾斜部の略下方に配置されているためサイドフレームの高さは従来よも高くして車体カバーを直接に支持することが可能になり、これによって走行機体の構造の簡素化に貢献できる。また、側面視でエンジンは後傾姿勢になっているため重心が高くなるのを防止できるのであり、その結果、座席と燃料タンクとエンジンとを上下に重なるように配置してスペースの有効利用を図りつつ、エンジンをできるだけ大型化することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】田植機の側面図である。
【図2】田植機の平面図である。
【図3】田植機を手前側から見た斜視図である。
【図4】走行機体の概略側面図である。
【図5】走行機体の骨組みを示す斜視図である。
【図6】走行機体の平面図である。
【図7】走行機体の要部の側面図である。
【図8】走行機体の部分的な底面図である。
【図9】走行機体を後ろから見た部分的な斜視図である。
【図10】ミッションケースとリアアクスルとの関係を示す斜視図である。
【図11】苗植装置昇降用リンク機構を示す斜視図である。
【図12】ミッションケースとフロントフレームとの関係を示す分離斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は乗用型田植機(以下、単に「田植機」と略す)に適用している。以下の説明では、方向を特定するために「前後」「左右」の文言を使用するが、これらの文言は、特に断らない限り、前進方向を向いて着座した運転者の向きを基準にしている。
【0021】
(1).田植機の概要
まず、田植機の概要を説明する。図1〜3から容易に理解できるように、田植機は主要部分として走行機体1と苗植装置2とを有しており、走行機体1は左右の前輪3と後輪4とで支持されている。走行機体1は、運転者が腰掛ける背もたれ付き座席5とその前方に配置された操縦ハンドル6とを有している。座席5と操縦ハンドル6は走行機体1の左右中間位置に配置されている。操縦ハンドル6はボンネット7で覆われた操縦機構部8に設けられている。また、座席5の前方で左右両側には予備苗台9を設けており、座席5の後ろには施肥装置10を設けている。
【0022】
例えば図1及び図から理解できるように、走行機体1は、前後方向に延びる左右のサイドフレーム12と、左右のサイドフレーム12をその前端寄り部位において連結したフロントフレーム13と、左右サイドフレーム12の後端に連結された左右長手のリアフレーム14とを有している。これらサイドフレーム12とフロントフレーム13とリアフレーム14とにより、走行機体1の中核を成す車体フレーム(シャーシ)が構成されている。図4や図5に示すように、サイドフレーム12の前端にはパンパー15を固着している。
【0023】
サイドフレーム12は、ほぼ前後中間部を境にして略前半部は略水平姿勢になって後半部は後傾姿勢となるように屈曲している。すなわち、サイドフレーム12の後半部は、後ろに行くほど高さが高くなる傾斜部12aになっている。
【0024】
例えば図5から理解できるように、フロントフレーム13とバンパー15とで受け板16を吊支し、受け板16にバッテリー17を載せている。図面では省略しているが、受け板16の左右外側にはバランサー(重り)を配置できるように配慮されている。
【0025】
例えば図5に示すように、左右のサイドフレーム12には左右横長で外向きに突出した外向き枝フレーム18が溶接によって固着されており、手前に位置した2本の外向き枝フレーム18に予備苗台9が固定されている。バンパー15は前端の外向き枝フレーム18にも固着されている。また、サイドフレーム12の左右外側には前後方向に延びる補助フレーム19が平面視で平行に配置されており、補助フレーム19は外向き枝フレーム18とリアフレーム14とに溶接されている。従って、リアフレーム14はサイドフレーム12の左右外側に突出している。また、後輪4はサイドフレーム12と補助フレーム19との間に位置している。
【0026】
例えば図1から理解できるように、側面視でサイドフレーム12における傾斜部12aの下方に位置した部位にはエンジン21が配置されており、エンジン21の手前でかつサイドフレーム12より低い位置にはギア群を内蔵したミッションケース22が配置されている。エンジン21は、クランク軸23が左右方向に延びる姿勢で配置されており、動力はプーリ及びベルト24でミッションケース22の内部に伝達される。ミッションケース22の前部の左右側面にはフロントアクスル装置25が取り付けられており、フロントアクスル装置25で前輪3が回転自在に支持されている。例えば図1に示すように、前輪3が取り付く前車軸を符号26で示している。
【0027】
例えば図2から理解できるように、エンジン21は走行機体1の縦長中心線に沿った位置に配置されている(すなわち、走行機体1の左右中間部に配置されている)。また、例えば図1,図4,図7から理解できるようちに、エンジン21はクランク軸23が手前に位置すると共にシリンダボアは後傾した姿勢で配置されている。
【0028】
座席5は、走行機体1のほぼ左右中間部の位置でかつ側面視では概ねサイドフレーム12における傾斜部12aの前半部の上方に位置している。そして、図1,2から理解できるように、平面視でエンジン21の前部は座席5と重なり合っており、平面視と側面視でエンジン21は座席5の後ろに大きくはみ出している。正確に述べると、エンジン21は、後ろ半分程度かそれ以上の割合で座席5の後ろにはみ出している。
【0029】
座席5とエンジン21との間には燃料タンク27が配置されている。燃料タンク27の前端は座席5の前端よりもやや後ろに位置している一方、燃料タンク27の後端は座席5の後端よりもやや後ろに位置している。座席5は、前後移動調節可能とすることができるが、この場合は、当然ながら座席5と燃料タンク27との相対的な前後位置は変化し得る。
【0030】
座席5の後ろには施肥装置10が配置されている。施肥装置10は、植付け条数と同じ数のホッパーを備えており、ホッパーの肥料は送風機の送り作用により、ホースで圃場に投下される。例えば図4から理解できるように、施肥装置10はリアフレーム14で支持されている。エンジン21の斜め後ろにはリアアクスルケース30が配置されており、リアアクスルケース30から左右に突出した後ろ車軸31に後輪4を相対回転不能に固定している。なお、泥土が深い圃場の場合は後ろ車軸31に補助輪を取り付けることがある。
【0031】
リアアクスルケース30とリアフレーム14とは左右2本のリア支柱33で連結されている。リア支柱33は側面視において鉛直線に対してやや前傾した姿勢になっている。例えば図5や図11から理解できるように、リアフレーム14に平面視Y形のトップリンク34がその前端を中心にして上下回動するように連結されている一方、左右のリア支柱33には前後に延びる平行な部材を主材とするロアリンク35がその前端を中心にして回動するように連結されており、トップリンク34とロアリンク35の後端にはリアリンク36が相対回動可能に連結されている。
【0032】
走行機体1のうち人が載る部分は一体構造の車体カバー(車体カバー)で覆われている。例えば図5に示すように、左右のサイドフレーム12は操縦ハンドル6の下方の部分において中間フレーム38で連結されており、また、左右のサイドフレーム12には、中間フレーム38の後ろで座席5よりも前の位置において内向きに突出した内向き枝フレーム39が固着されている。そして、車体カバー37の床部は、サイドフレーム12や中間フレーム38、内向き枝フレーム39,外向き枝フレーム18などで支持されている。
【0033】
例えば図1から理解できるように、苗植装置2はリアリンク36に取り付けられている。リアリンク36は前後長手のメインメンバーと左右長手の連結杆40とを有しており、連結杆40とリアフレーム14とに油圧シリンダ41が相対回動自在に連結されている。従って、油圧シリンダ41を伸縮させると苗植装置2が昇降する。
【0034】
図1及び図2から理解できるように、苗植装置2は、ロータリー式の4個の植付け装置42、4本のベルトを有する苗載台43、フロート44、整地ロータ45などを有している。本実施形態は4個の植付け装置を有する4条植田植機であり、従来のものと同様に2個の植付け装置42が1セットになっている。苗植装置2の構造は本願発明と直接の関係はないので、苗植装置2の詳細な説明は省略する。
【0035】
本願発明のおおよその構成は以上の説明から理解できていると思われるが、更に、走行機体1の詳細を説明する。
【0036】
(2).走行機体の骨組み(略上部)
まず、走行機体1の骨組みを説明する。既述のとおり、本実施形態では左右のサイドフレーム12とフロントフレーム13とリアフレーム14とで本体フレームが構成されているが、更に、ミッションケース22及びリアアクスルケース30の両者は、走行機体1の骨組みを構成する構造部材としても機能している。
【0037】
すなわち、既述のように、リアアクスルケース30はリアフレーム14とリア支柱33を介して連結されており、また、例えば図8に示すようにミッションケース22とリアアクスルケース30とがジョイント部材47を介して連結されており、更に、例えば図16に示すように、ミッションケース22は上下フロントブラケット48,49を介してフロントフレーム13に連結されている。
【0038】
このように、本実施形態は、ミッションケース22とリアアクスルケース30とを走行機体1の骨組み部材として利用している点を一つの特徴としている。更に述べると、ミッションケース22やリアアクスルケース30は多数のギア類を回転自在に支持する機能からして頑丈な構造になっており、このような頑丈な構造のミッションケース22とリアアクスルケース30とを骨組み部材に兼用しているのであり、このため、簡素な構造でありながら高い支持強度を確保することができる。
【0039】
更に、走行機体1の骨組みを詳述する。まずサイドフレーム12について述べる。サイドフレーム12は断面角形の鋼管から成っており、既述のとおり後半部は傾斜部12aになっている。傾斜部12aの傾斜角度はエンジン21の傾斜角度と略同じになっており、側面視でエンジン21は概ねサイドフレーム12の傾斜部12aの下方に位置している。
【0040】
苗植装置2の荷重はリンク35,36を支点にして油圧シリンダ41に対して引っ張り荷重として作用する。しかして、油圧シリンダ41はリアフレーム14に連結されているため、油圧シリンダ41に作用した引っ張り荷重はリアフレーム14をリア支柱33に上方から押圧するように作用する。すなわち、苗植装置2の荷重の一部はリア支柱33に対して軸方向の圧縮荷重として作用する。従って、リア支柱33は過度に頑丈な構造とすることなく高い支持機能を有する。特に、本実施形態のようにリア支柱33を前傾姿勢にすると、苗植装置2の荷重がリア支柱33に対して下向きの圧縮荷重として作用する割合を大きくできて好適である。
【0041】
リアフレーム12の断面形状は上下方向に長い角形になっているが、これは下向き荷重に対する剛性を高くするためである。リアフレーム14は丸パイプを採用しているが、これは主としてサイドフレーム12とリア支柱33との取り付けの容易性(突き合わせの方向性を無くす)のためである。当然ながら、サイドフレーム12及びリアフレーム14とも他の断面形状を採用することも可能である。
【0042】
例えば図5から理解できるように、補助フレーム19の後端はリアフレーム14に固着された前後長手のエンドステー50に固着されている。また、補助フレーム19は、その前部と後部とは水平姿勢で両者の間には下向きに凹んだ上向き開口コの字形の段落ち部19aを有する形態であり、図3に示すように、段落ち部19aの下端部に昇降用踏み板51を設けている。
【0043】
図5に示すように、左右サイドフレーム12における傾斜部12aの先端寄り部位は、上水平部と左右足部とを有する門形のセンターフレーム52で連結されている。センターフレーム52の上端には後ろ向きに延びる左右2本の中間ステー53が固着されており、中間ステー53に座席5が取り付けられている。座席5は前向きに倒すことができ、座席5を前に倒すと燃料タンク27の注入口が表れる。
【0044】
センターフレーム52とリアフレーム14との間には、左右長手で上向き開口溝形の後部支持バー55が配置されており、後部支持バー55に中間ステー53が上から重なって両者は溶接されている。後部支持バー55の左右両端は補助フレーム19にも溶接されている。更に、後部支持バー55は、図5に示す中間足材56を介してサイドフレーム12の傾斜部12aで支持されている。車体カバー37の肩部は、後部支持バー55,リアフレーム14,補助フレーム19で支持されている。
【0045】
(3).走行機体の骨組み(略下部)
例えば図8に明示するように、ミッションケース22はおおよそ前後に長い形態になっており、大雑把には左右2つのメインメンバーを重ねてボルト群で共締めした構造になっている。ミッションケース22の前部には左右外側に突出した凸部22bを設けており、凸部22bにフロントアクスル25が取り付けられている。ミッションケース22における後部の左側面にはHST(静油圧式無断変速機)58が取り付けられており、エンジン21からの動力がHST58の入力軸に既述のベルト24で伝達される。HST58のトラニオン(制御部材)59は、例えば図6,図7に示すアクセルペダル60の動きに連動して動く。
【0046】
例えば図10に示すように、ジョイント部材47は丸パイプを使用しており、その前端には平面視略コの字形の第1ブラケット61が溶接されており、この第1ブラケット61がミッションケース22の後端にボルトで固定されている。従って、ミッションケース22の後端には、第1ブラケット61が嵌合する受け部を形成している。また、同じく図10に示すように、ジョイント部材47の後端には平板状の第2ブラケット62が溶接されている一方、リアアクスルケース30には第2ブラケット62が重なる角形ボス部30cが形成されており、第2ブラケット62を角形ボス部30cにボルトで固定している。
【0047】
図9に明示するように、リアアクスルケース30の左右両端部は後ろ向きに突出した張り出し部30aになっており、左右の張り出し部30aから後ろ車軸31が左右外向きに突出している。例えば図8に明示するように、ミッションケース22における前部の左凸部22aから走行ドライブ軸64が後ろ向きに延びており、後輪4の駆動動力は走行ドライブ軸64を介してリアアクスルケース30の内部に伝達されている。
【0048】
例えば図7から容易に理解できるように、左右サイドフレーム12の間隔はリアアクスルケース30の左右長さと概ね同じ程度の寸法に設定されている。他方、例えば図5に示すように、リア支柱33の左右間隔は左右サイドフレーム12の間隔よりも小さくなっている。そして、図9に明示すように、リアアクスルケース30のうち後ろ向きの張り出し部30aの付け根箇所に段部30bを形成し、この段部30bにボルトで締結したリアブラケット65にリア支柱33が固定されている。図9に示すように、リアフレーム14には油圧シリンダ41(図1参照)を連結するシリンダ用ブラケット66が溶接されている。
【0049】
次に、ミッションケース22とフロントフレーム13との連結構造を説明する。図12に示すように、フロントフレーム13の後面には後ろ向きに延びる上フロントブラケット48が溶接されており、上フロントブラケット48の下方には中間フロントブラケット49と下フロントブラケット68とが配置されている。そして、上フロントブラケット48と中間フロントブラケット49とを固着し、パワーステアリンング67の下部が中間フロントブラケット49と下フロントブラケット68とに固定さており、更に、中間フロントブラケット49と下フロントブラケット68の後端はミッションケース22の前端部にボルトで締結されている。中間フロントブラケット49と下フロントブラケット68はミッションケース22の前端部を左右両側から挟む構造になっている。
【0050】
(3).エンジンと動力系統の概略
既述のとおりエンジン21は側面視傾斜姿勢で配置されており、例えば図7に示すように、エンジン21のクランク軸23はHST58の入力軸77よりもやや高い高さに位置している。エンジン21は、ジョイント部材47とリアアクスル30とで支持されている。すなわち、まず、図10に示すように、リアアクスルケース30のうち角形ボス部30cの左右両側に後部受け板79を締結しており、左右の後部受け部79で防振ゴム80を介して後ろ支持板81が支持されている。後ろ支持板81にエンジン21の本体(クランクケース)がボルトで締結されている。
【0051】
また、図10から理解できるように、ジョイント部材47の第1ブラケット61には左右長手で板材製の前部受け部83が溶接されており、前部受け部83に左右2個の防振ゴム80を介して左右長手の前支持板が支持されており、前支持板にエンジン本体の前部がボルトで締結されている。図11に示すように、リアアクスルケース30の下端部には、図1に表示した整地ロータ45を駆動するための整地駆動軸88が突出している。敢えて説明するまでもないが、整地駆動軸88と整地ロータ45とは自在継手で連結されている。
【0052】
例えば図8と図10に示すように、ミッションケース22のうちHST58と反対側の右側面には、昇降用油圧シリンダ41やパワーステアリング69を駆動するための油圧ポンプ89が配置されている。また、図8に示すように、リアアクスルケース30の前部でかつ右寄り部位には株間調節装置90が配置されており、図9に示すように、株間調節装置90から植付軸(PTO軸)91が後ろ向きに突出していると共に施肥駆動軸92が上向きに突出している。
【0053】
燃料タンク27の下面は、前端寄りの一部は略水平状になっていてそれより後ろの大部分は側面視で後傾している。燃料タンク12の下面の傾斜角度は、サイドフレーム12における傾斜部12aの角度及びエンジン21の傾斜角度と略同じになっている。燃料タンク27の上面は基本的には水平状になっており、上面と前面とが連なる上前角部は側面視で面取り状にカットされている。
【0054】
(4).まとめ
以上のように、本実施形態の田植機は、エンジン21が傾斜姿勢で配置されている点やサイドフレーム12の後部が傾斜部12aになっているなど、本願発明の構成が具体化されている。その結果、発明の効果の欄に記載した諸効果が発揮される。また、上述の説明でも触れているが、本実施形態は従来にない多くの改良点を有している。この点を更に説明しておく。
【産業上の利用可能性】
【0055】
以上の説明のとおり、本願発明は田植機等の乗用型農作業機に具体化することができて高い有用性を有している。従って、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0056】
1 走行機体
2 苗植装置
3 前輪
4 後輪
5 座席
6 操縦ハンドル
10 施肥装置
12 サイドフレーム
13 フロントフレーム
14 リアフレーム
19 補助フレーム
21 エンジン(ガソリンエンジン)
22 変速装置が内蔵されたミッションケース
23 クランク軸
24 ベルト
27 燃料タンク
33 リア支柱
37 車体カバー
47 ジョイント部材
48,49 フロントブラケット
58 HST

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪及び後輪で支持されていると共にエンジンを搭載した走行機体と、前記走行機体の後ろ側に配置された作業装置とを有しており、前記走行機体は、前後方向に延びる左右のサイドフレームと、前記左右サイドフレームをその前部において連結する左右長手のフロントフレームと、前記左右サイドフレームをその後部において連結する左右長手のリアフレームとを有しており、前記サイドフレームとフロントフレームとリアフレームとで走行機体のおおまかな骨組みが構成されている、という構成であって、更に、
前記サイドフレームのうち後端側の適宜範囲は後ろに行くほど高さが高くなった傾斜部になっており、前記サイドフレームの後端が前記リアフレームに突き合わさっていると共に、前記リアフレームはリア支柱で下方から支持されており、前記リア支柱の上端をリアフレームに固着している、
乗用型農作業機。
【請求項2】
前記リアフレームはサイドフレームの左右外側に張り出している、
請求項1に記載した乗用型農作業機。
【請求項3】
前記リア支柱は左右サイドフレームの内側に2本配置されており、前記2本のリア支柱に前記作業装置を昇降するためのリンクが回動自在に連結され、前記リアフレームに前記リンクを回動操作するためのシリンダが連結されている、
請求項1又は2に記載した乗用型農作業機。
【請求項4】
前記エンジンはクランク軸が手前に位置すると共にシリンダボアが側面視で傾斜した姿勢になっており、このエンジンを側面視において前記サイドフレームにおける傾斜部の略下方に位置するように配置しており、更に、前記エンジンの上方には燃料タンクを配置し、燃料タンクの上方には座席を配置している、
請求項に1〜3のうちのいずれかに記載した乗用型農作業機。
【請求項5】
前記リアフレームの略下方に配置されているリアアクスルを有しており、前記リアアクスルは、後ろ向きに突出した左右の張り出し部を有する略左右対称の形態であって前記左右張り出し部から横向き突出した後ろ車軸に前記後輪が取り付けられており、前記リアアクスルとサイドフレームとは概ね同じ左右間隔に設定されている一方、前記リア支柱は、リアアクスルにおける張り出し部の付け根部の内角部から立ち上がっている、
請求項1〜4のうちのいずれかに記載した乗用型農作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−213644(P2010−213644A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−65733(P2009−65733)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】