説明

乳酸塩生成促進剤、並びに該生成促進剤を配合してなる皮膚化粧料

【課題】多価アルコールなどの保湿剤を用いた外的付加成分による擬似的な潤い付与ではなく、皮膚が本来有する自然(天然)保湿因子である乳酸塩、中でも乳酸マグネシウム自体の生成を増加させることで、潤いのある肌状態へと導く皮膚化粧料の提供。
【解決手段】尿素と、硫酸化多糖類、好ましくは、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、並びに、これらの塩からなる群から選ばれる少なくとも1種、とを含有してなる乳酸塩生成促進剤、並びに、該促進剤を含有してなる皮膚化粧料とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳酸塩生成促進剤、並びに該生成促進剤を配合してなる皮膚化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚は、紫外線、乾燥などの外的要因により、日々ダメージを受け続けている。これらダメージが蓄積すると、赤ちゃん肌に例えられるような木目細やかな潤いのある肌状態が失われ、カサついた潤いのない肌状態となり、結果的に肌荒れ状態となる。
【0003】
従来より、カサついた潤いのない肌状態を改善する手段としては、グリセリン、1,3−ブチレングリコールなどの多価アルコール;ソルビトール、マルチトール、キシリトール、エリスリトールなどの糖アルコール;単糖類、多糖類、ヒアルロン酸、コラーゲン、植物エキスなどの種々の保湿剤により潤いを付与する試みがなされている。例えば、植物抽出物とヒアルロン酸などの保湿剤とを含有する皮膚外用剤(例えば、特許文献1を参照)、特定の植物エキスと多価アルコールとを含有する皮膚外用剤(例えば、特許文献2を参照)などが提案されている。
【0004】
しかしながら、これら保湿剤は、瞬時に潤いを与えることができる反面、擬似的な外的付加成分であるため、潤い効果を高めるべく保湿剤を高配合とするとべたつき感などの使用感が悪くなるといった問題がある。また、べたつき感を低減すべく低配合とすると十分な潤いが付与できないといった問題もあった。
【0005】
一方、皮膚中には、セリン、グリシン、アラニン、スレオニンなどのアミノ酸類;乳酸マグネシウム、乳酸カリウム、乳酸ナトリウムなどの乳酸塩;尿素;クエン酸ナトリウムなどのクエン酸塩;ピロリドンカルボン酸ナトリウムなどのピロリドンカルボン酸塩などの自然(天然)保湿因子(Natural Moisturizing Factor:NMF)と称される水分を保持する物質が存在している。そして、これら物質は、紫外線、乾燥などのダメージによる水分喪失を抑え、潤いのある肌状態を保つ機能が備わっている。中でも乳酸塩は、皮膚中のpHにも影響を与え、水分保持機能に優れた自然(天然)保湿因子であると言われている。
【0006】
そこで、上記した自然(天然)保湿因子を化粧品に配合し潤いを付与する試みもなされている。例えば、特定の菌床抽出物と天然保湿因子とを含有する皮膚外用剤(例えば、特許文献3を参照)、多価アルコールと天然保湿因子とを含有するスキンケア組成物(例えば、特許文献4を参照)などが提案されている。
【0007】
しかしながら、これら試み拠って潤いをある程度付与することはできるものの、上記した保湿剤同様に擬似的な潤いであるため、使用感の悪化や十分な効果が期待できないといった問題があった。
【0008】
このように従来から用いられている潤いを付与する手段は、外的付加成分による擬似的な潤い付与であり、皮膚が本来有する水分保持機能を高めるものではない。従って、今後求められる機能・試みは、皮膚が本来有する水分保持機能を高める試み、即ち、乳酸塩自体の生成を増加させることによって潤いのある肌状態を保つ機能を有する皮膚化粧料を開発することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−119155号公報
【特許文献2】特開2002−154921号公報
【特許文献3】特開2006−282596号公報
【特許文献4】特表2006−526570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、多価アルコールなどの保湿剤を用いた外的付加成分による擬似的な潤い付与ではなく、皮膚が本来有する自然(天然)保湿因子である乳酸塩自体の生成を増加させることで、潤いのある肌状態へと導く皮膚化粧料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
即ち、本発明は、
〔1〕尿素と、硫酸化多糖類とを含有してなる乳酸塩生成促進剤、
〔2〕硫酸化多糖類が、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、並びに、これらの塩からなる群から選ばれる少なくとも1種である前記〔1〕に記載の乳酸塩生成促進剤、
〔3〕前記〔1〕又は〔2〕に記載の乳酸塩生成促進剤を配合してなる皮膚化粧料、並びに
〔4〕肌荒れ改善用化粧料であることを特徴とする前記〔3〕に記載の皮膚化粧料
に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の乳酸塩生成促進剤は、有効成分として尿素と硫酸化多糖類とを含有するから、皮膚中の乳酸塩、中でも乳酸マグネシウムの生成を相乗的に促進することができる。
【0013】
また、本発明の皮膚化粧料は、乳酸塩生成促進剤として尿素と硫酸化多糖類とを含有するから、皮膚中の乳酸塩の生成を相乗的に促進し、経皮水分損失(TWL)を抑えることから、カサつきを抑えて潤いのある肌状態へと導くことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】皮膚保湿性効果の試験結果を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る乳酸塩生成促進剤について詳述する。本発明の乳酸塩生成促進剤は、有効成分として、尿素と硫酸化多糖類とを含有する。
【0016】
尿素は、化粧品や医薬部外品に通常用いられるものであれば特に限定されない。その市販品としては、例えば、プロティキュートUアルファ(商品名,一丸ファルコス社製);ハイグロプレックスHHG、セフプラントコンプレックス(商品名,何れも寿ケミカル社製);HYDROVITON24(商品名,シムライズ);UGL Complex(商品名,日光ケミカルズ社製)などを例示することができる。
【0017】
硫酸化多糖類とは、例えば、構成する単糖が、アセチル基などの修飾基を有していてもよい、D−グルコサミン、D−ガラクトサミン、D−グルクロン酸、L−イズロン酸、D−ガラクツロン酸、D−グルコース、D−ガラクトース、D−キシロースなどからなり、これらの1種又は2種以上を繰り返し構成される多糖類を硫酸化したものである。また、本発明に用いられる硫酸化多糖類には、天然において既に硫酸基を有している多糖類を、更に硫酸化して得られる多硫酸化多糖類も包含される。
【0018】
具体的な硫酸化多糖類としては、例えば、ヘパリン、ヘパラン硫酸、キチン硫酸、キトサン硫酸、ケタラン硫酸、デルマタン硫酸、ペクチン硫酸、ガラクタン硫酸、ポリグルコース硫酸、コンドロイチン硫酸、硫酸化トレハロース、フコイダン、並びに、これらを更に硫酸化して得られる多硫酸化物などを例示することができる。これら成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いることもできる。
【0019】
また、本発明では、上記した硫酸化多糖類、並びに、更に硫酸化して得られる多硫酸化物の塩として用いることもできる。用いられる塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩などを例示することができる。
【0020】
好適な硫酸化多糖類としては、所望の効果を発揮するの観点から、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、並びに、これらの塩を用いることが好ましい。尚、本発明に用いられる硫酸化多糖類は、市販品をそのまま使用することができる。コンドロイチン硫酸塩の市販品としては、例えば、コンドロイチン硫酸ナトリウム(商品名,和光純薬工業社製)、デルマタン硫酸塩の市販品としては、例えば、Chondroitin sulfate B sodium salt(商品名,シグマ アルドリッチ ジャパン社製)などを例示することができる。
【0021】
本発明に係る乳酸塩生成促進剤において、尿素と硫酸化多糖類の含有量は、特に限定されないが、乳酸塩の生成を相乗的に促進する観点から、重量比(尿素/硫酸化多糖類)で1/1〜1/10、好ましくは1/1〜1/5、より好ましくは1/1〜1/2となるように配合する。
【0022】
かかる尿素と硫酸化多糖類とを併用することにより発揮される乳酸塩の生成促進効果は、個々の乳酸塩の生成促進効果と対比して、単なる相加的効果ではなく、予想できない程度の生成促進効果を奏するものであるから、経皮水分損失を抑えることができ、潤いのある肌状態へと導くことができる。
【0023】
上述した本発明の乳酸塩生成促進剤は、皮膚化粧料に配合して用いることができる。具体的には、ローション、エッセンス、クリーム、乳液、ジェルなどの種々の剤型に適用することができ、化粧水、乳液、スキンクリーム、美容液、洗顔剤、アフターシェーブローションなどの皮膚化粧料に用いることができる。中でも、カサつきを抑えて潤いのある肌状態へと導くことから、肌荒れを改善する皮膚化粧料として好適に用いることができる。
【0024】
本発明の乳酸塩生成促進剤を用いて皮膚化粧料を調製する場合、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、上記した成分の他、化粧品や医薬部外品に通常用いられる成分、例えば、油脂、ロウ類、炭化水素、シリコーン類、脂肪酸エステル、高級アルコール、高級脂肪酸などの油性成分;非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤の各種界面活性剤;低級アルコール、多価アルコール、糖類、ステロール類などのアルコール類;粘度鉱物、水溶性多糖類などの増粘性高分子;抗酸化剤;紫外線吸収剤;金属イオン封鎖剤;被膜形成性高分子化合物、無機顔料、粉体、色素、顔料、染料、ビタミン類、アミノ酸類、収斂剤、美白剤、動植物抽出物、酸、アルカリなどの添加成分;水などを目的に応じて適宜任意に配合することができる。
【0025】
具体的には、油性成分としては、例えば、オリーブ油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、アボカド油などの油脂;カルナバロウ、キャンデリラロウ、ホホバ油、ミツロウ、ラノリンなどのロウ類;流動パラフィン、パラフィン、ワセリン、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、スクワレン、スクワランなどの炭化水素;メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルシクロポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、オクタメチルシクロペンタシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサンなどのシリコーン類;ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸2−オクチルドデシル、2−エチルヘキサン酸セチル、パルミチン酸2−エチルヘキシル、ジ−2−エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセロール、オレイン酸2−オクチルドデシル、トリイソステアリン酸グリセロール、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセロール、オレイン酸2−オクチルドデシル、リンゴ酸ジイソステアリル、トリイソステアリン酸グリセロール、2−エチルヘキサン酸ジグリセリドなどの脂肪酸エステル;セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、オレイルアルコールなどの高級アルコール類;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸などの高級脂肪酸などを例示することができる。
【0026】
界面活性剤としては、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ヒマシ油、硬化ヒマシ油およびこれらのアルキレンオキシド付加物、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェノール、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルホルムアルデヒド縮合物、ポリオキシエチレンステロールおよびその誘導体、ポリオキシエチレンラノリンおよびその誘導体、ポリオキシエチレンミツロウ誘導体、シュガーエステル類などの非イオン界面活性剤;高級脂肪酸石鹸、アルキル硫酸エステル塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、アルキルエーテルリン酸エステル、アルキルエーテルカルボン酸塩、アシルメチルタウリン塩、N−アシル−N−メチル−β−アラニン塩、N−アシルグリシン塩、N−アシルグルタミン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルカルボン酸塩、アルキルフェニルエーテルスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸およびその塩、N−アシルサルコシンおよびその塩、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド硫酸塩などの陰イオン界面活性剤;アルキルアミン塩、脂肪酸アミドアミン塩、エステル含有3級アミン塩などのアミン塩、モノアルキル型4級アンモニウム塩、ジアルキル型4級アンモニウム塩、トリアルキル型4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム型4級アンモニウム塩などのアルキル4級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩などの環式4級アンモニウム塩、塩化ベンゼエトニウムなどの陽イオン界面活性剤;アルキルグリシン塩、カルボキシメチルグリシン塩、N−アシルアミノエチル−N−2−ヒドロキシエチルグリシン塩などのグリシン型両性界面活性剤、アルキルアミノプロピオン酸塩、アルキルイミノジプロピオン酸塩などのアミノプロピオン酸型両性界面活性剤、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタインなどのアミノ酢酸ベタイン型両性界面活性剤、アルキルヒドロキシスルホベタインなどのスルホベタイン型両性界面活性剤などの両性界面活性剤を例示することができる。
【0027】
アルコール類としては、例えば、エタノール、イソプロパノール、ブタノールなどの低級アルコール;1,3−ブタンジオール,グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオール、1,2−ノナンジオール、1,2−デカンジオールなどの多価アルコール類;ソルビトール、マンニトール、グルコース、ショ糖、キシリトール、ラクトース、トレハロースなどの糖類;コレステロール、フィトステロールなどのステロール類などを例示することができる。
【0028】
増粘性高分子としては、例えば、ベントナイト、スメクタイトの他、バイデライト系、ノントロナイト系、サポナイト系、ヘクトライト系、ソーコナイト系、スチーブンサイト系などの粘度鉱物;カラギーナン、グアーガム、キサンタンガム、アラビアガム、カラヤガム、トラガントガム、デキストラン、アミロース、アミロペクチン、アガロース、プルラン、ペクチン酸ナトリウム、アルギン酸、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどを例示することができる。
【0029】
抗酸化剤としては、例えば、アスコルビン酸および/又はその誘導体、トリテルペン類、トコフェロール、酢酸トコフェロール、アスタキサンチン、コエンザイムQ10、、白金コロイドなどを例示することができる。
【0030】
上記、アスコルビン酸の誘導体の具体例としては、例えば、アスコルビン酸の1価金属塩であるアスコルビン酸ナトリウム塩、アスコルビン酸カリウム塩、2価金属塩であるアスコルビン酸マグネシウム塩、アスコルビン酸カルシウム塩、3価金属塩であるアスコルビン酸アルミニウム塩;アスコルビン酸リン酸エステルの1価金属塩であるアスコルビン酸リン酸エステルナトリウム塩、アスコルビン酸リン酸エステルカリウム塩、2価金属塩であるアスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム塩、アスコルビン酸リン酸エステルカルシウム塩、3価金属塩であるアスコルビン酸リン酸エステルアルミニウム塩;アスコルビン酸硫酸エステルの1価金属塩であるアスコルビン酸硫酸エステルナトリウム塩、アスコルビン酸硫酸エステルカリウム塩、2価金属塩であるアスコルビン酸硫酸エステルマグネシウム塩、アスコルビン酸硫酸エステルカルシウム塩、3価金属塩であるアスコルビン酸硫酸エステルアルミニウム塩などを例示することができる。
【0031】
また、トリテルペン類としては、例えば、スクアレン、サポニン、リモニン、カメリアゲニン、ホパン、ラノステロール、ファシクロール、ウルソール酸、オレオノール酸、ベツリン酸などを例示することができる。
【0032】
紫外線吸収剤としては、例えば、パラアミノ安息香酸、パラアミノ安息香酸モノグリセリンエステルなどの安息香酸系紫外線吸収剤;アントラニル酸メチル、ホモメンチル−N−アセチルアントラニレートなどのアントラニル酸系紫外線吸収剤;サリチル酸メチルなどのサリチル酸系紫外線吸収剤;パラメトキシケイ皮酸オクチル、エチル−4−イソプロピルシンナメートなどのケイ皮酸系紫外線吸収剤;2,4−ジヒドロキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系紫外線吸収剤;アミルサリシレート、メンチルサリシレート、ベンジルサリシレートなどのサリチル酸系紫外線吸収剤;ウロカニン酸、ウロカニン酸エチルなどのウロカニン酸系紫外線吸収剤などを例示することができる。
【0033】
金属イオン封鎖剤としては、例えば、エデト酸塩、リン酸、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、アラニン、シュウ酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸、1,2−ジアミノシクロヘキサン−四酢酸、N−オキシエチルエチレンジアミン−三酢酸、エチレングリコールビス−四酢酸、エチレンジアミン−四プロピオン酸、1−ヒドロキシヘキサン−1,1−ジホスホン酸、ホスホノ酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、1,2−シクロヘキサンジアミン四酢酸、エチレンジアミン二酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸などを例示することができる。
【0034】
本発明の皮膚化粧料への乳酸塩生成促進剤の配合量は、所望の効果が充分に付与されるのであれば特に限定されないが、化粧料中、0.1〜5重量%が好ましく、より好ましくは0.5〜3重量%である。0.1重量未満の場合、乳酸塩の生成促進効果に劣り、潤いのある肌状態へと導くことに劣り、また、5重量%超えて配合した場合、それ以上の効果が望めないばかりか、使用感が劣るため好ましくない。
【実施例】
【0035】
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。尚、配合量は、特記しない限り「重量%」を表す。また、測定は、室温23℃、湿度60%の条件下で行った。
【0036】
(試料の調製)
表1および表2に記した組成に従い、実施例1〜4および比較例1〜4の各試料を調製し、下記評価に供した。
【0037】
(試験例1:乳酸塩生成促進効果試験)
被験者10名の上腕内側部に1cm四方の目印を計10箇所(片腕5箇所×2:両腕分)をつけた。次いで、比較対照とする1箇所(片腕)を除く箇所に、実施例および比較例の各試料を50μL塗布し、馴染ませた後30分間放置し乾燥した。30分放置後、テープストリッピングを1回行い、角質を剥がした後、水50μLで抽出し、ODS−HPLCを用いて乳酸マグネシウムの定量分析を行った。
尚、資料と塗布していない比較対照箇所も上記同様に抽出し、定量分析を行った。
【0038】
(HPLC測定条件)
機器:SHIMADZU classLC−10
カラム:Intertsil ODS−3
カラム温度:45℃
流速:0.4mL/min
注入量:20μL
検出:210nm
移動層:0.1M NHPO+HPO(pH2.5)
【0039】
乳酸塩生成促進率(%)は、比較対照における乳酸塩の定量値(両腕2箇所の平均値)を乳酸マグネシウムの生成率100%とし、各試料塗布部における乳酸マグネシウムの定量値を算出した。尚、各乳酸塩生成促進率(%)は、被験者10名の平均値から算出し、下記算定基準に従って評価した。結果を表1および表2に併記する。
【0040】
◎;乳酸塩生成促進率が、200%以上
○;乳酸塩生成促進率が、150%以上〜200%未満
△;乳酸塩生成促進率が、100%以上〜150%未満
×;乳酸塩生成促進率が、50%以上〜100%未満
【0041】
(試験例2:経皮水分損失(TWL)抑制効果試験)
実施例および比較例の各試料の約1mLづつを、朝晩2回、被験者10名に4週間連続塗布し、塗布前および連続塗布後のTWL値を、皮膚水分蒸散量測定装置(TEWAMETER TM210型;Courage+Khazaka electronic社製)にて測定した。TWL値の低減率を下記の如く算出し、経皮水分損失抑制効果を下記の評価基準に従って評価した。結果を表1および表2に併記する。
【0042】
TWL値の低減率は、試料塗布前後のTWL値、即ち、試料塗布前のTWL値(T)および試料塗布後のTWL値(T)を次式に代入して算出した。尚、TWL値の低減率が20%以上の場合を「有効」として評価した。

TWL値の低減率(%)=(1−T/T)×100
【0043】
<評価基準>
◎;10名中9名以上が「有効」
○;10名中6〜8名が「有効」
△;10名中3〜5名が「有効」
×;10名中2名以下が「有効」
【0044】
(試験例3;皮膚保湿性効果試験)
実施例および比較例の各試料の皮膚保湿性効果について、10名の被験者により評価した。すなわち、各被験者の顔面を、洗顔料を用いて温水で洗浄し、温度21±2℃,湿度50±5%の恒温恒湿室にて15分間安静にさせ、額部を対象として皮膚水分量を皮表角層水分量測定装置(SKICON−200EX型;アイ・ビイ・エス社製)にて測定した。測定は、皮膚水分量の初期値を測定し、30分後に実施例および比較例の各試料を塗布し、塗布後30分後,3時間後,6時間後の各皮膚水分量を測定し、その平均値を採用した。結果を図1に示す。
【0045】
(試験例4:肌荒れ改善効果試験)
実施例および比較例の各試料の約1mLづつを、朝晩2回、肌荒れに悩む女性被験者10名に4週間連続して塗布し、4週間後の肌状態をマイクロスコープにて観察し、肌荒れの改善効果を下記の評価基準に従って評価した。結果を表1および表2に併記する。
【0046】
<評価基準>
◎;全く落屑がなく、網目状の細かなキメが認められる正常な肌に改善された
○;網目状のキメが認められるほぼ正常な肌に改善された
△;やや改善された
×;明らかに落屑があり全く改善されていない
【0047】
【表1】

【0048】
【表2】

【0049】
表1および表2に示された結果から、本発明の乳酸塩生成促進剤は、有効成分として尿素と硫酸化多糖類とを含有するから、皮膚中の乳酸マグネシウムの生成を相乗的に促進することができ、経皮水分損失(TWL)を抑え、カサつきを抑えて潤いのある肌状態へと導き、荒れ肌を改善するという効果を奏していることが分かる。
【0050】
以下、本発明に係る皮膚外用剤組成物の配合例を示す。尚、含有量は重量%である。
【0051】
(配合例1;エモリエントローション)
エタノール 5.0
POE(50)硬化ヒマシ油 1.0
グリセリン 15.0
1,3−ブチレングリコール 1.5
1,2−オクタンジオール 0.1
尿素 0.3
コンドロイチン硫酸ナトリウム 0.3
コエンザイムQ10 0.01
クエン酸 0.05
クエン酸ナトリウム 0.1
メチルパラベン 0.3
香料 適 量
紫外線吸収剤 適 量
精製水 残 部
合 計 100.0
【0052】
(配合例2;エモリエント乳液)
流動パラフィン 15.0
ミツロウ 2.0
ラノリン 1.5
セスキオレイン酸ソルビタン 2.5
ポリオキシエチレンソルビタンモノオレイン酸エステル 1.0
1,2−ヘキサンジオール 1.0
尿素 0.5
1,2−オクタンジオール 0.05
グリセリン 10.0
デルマタン硫酸ナトリウム 0.5
1,3−ブチレングリコール 3.0
キサンタンガム 0.5
コエンザイムQ10 0.03
香料 適 量
紫外線吸収剤 適 量
精製水 残 部
合 計 100.0
【0053】
(配合例3;エモリエントクリーム)
ステアリルアルコール 5.0
ステアリン酸 2.0
ワセリン 5.0
スクワラン 5.0
トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリル 1.0
ホホバ油 1.0
オリーブ油 1.0
1,3−ブチレングリコール 3.0
1,2−ペンタンジオール 3.0
1,2−オクタンジオール 0.05
グリセリン 10.0
尿素 1.0
コンドロイチン硫酸ナトリウム 1.0
コエンザイムQ10 0.03
プロピレングリコールモノステアリン酸エステル 2.5
ポリオキシエチレンセチルエーテル 3.0
トリエタノールアミン 1.0
メチルパラベン 0.15
プロピルパラベン 0.1
香料 適 量
酸化防止剤 適 量
精製水 残 部
合 計 100.0
【0054】
(配合例4;マッサージクリーム)
固形パラフィン 5.0
ミツロウ 8.0
ワセリン 8.0
流動パラフィン 30.0
トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリル 1.0
ホホバ油 1.0
オリーブ油 1.0
1,2−オクタンジオール 0.15
グリセリン 10.0
尿素 0.25
コエンザイムQ10 0.03
デルマタン硫酸ナトリウム 0.5
ポリオキシエチレンソルビタンモノラウリン酸エステル 2.0
モノステアリン酸グリセリル 1.6
メチルパラベン 0.15
プロピルパラベン 0.15
香料 適 量
酸化防止剤 適 量
精製水 残 部
合 計 100.0

【特許請求の範囲】
【請求項1】
尿素と、硫酸化多糖類とを含有してなる乳酸塩生成促進剤。
【請求項2】
硫酸化多糖類が、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、並びに、これらの塩からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の乳酸塩生成促進剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の乳酸塩生成促進剤を配合してなる皮膚化粧料。
【請求項4】
肌荒れ改善用化粧料であることを特徴とする請求項3に記載の皮膚化粧料。

【図1】
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【公開番号】特開2010−189327(P2010−189327A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−36021(P2009−36021)
【出願日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(390011442)株式会社マンダム (305)
【Fターム(参考)】