説明

乳酸菌含有有用組成物及びその製造方法

【課題】 乳酸菌と酵母を良好な状態で作用できるようにした有用組成物及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 食パン類、麺類、菓子類、揚げ物類及び豆腐から選ばれた1種又は2種以上の食品の製造時に植物性乳酸菌(Lactobacillus fermentum JS菌(韓国寄託番号KCCM−10499)を添加した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は乳酸菌を含有し、又は乳酸菌および酵母を含有した乳酸菌含有有用組成物及び該有用組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
乳酸菌を製造時に添加して醗酵培養することにより有用な食品を得ることが行われている(例えば特許文献1参照)
【特許文献1】特開2003−47398号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが従来の乳酸菌は、高温になると死滅してしまうため、高温を伴う食品の製造においては食品に乳酸菌を添加することができなかった。 また有機堆肥製造時おいても、醗酵温度が高温度に達するため従来の乳酸菌は使用できなかった。土壌改良に乳酸菌や酵母菌などの微生物と米糠等を利用する理論は知られていたが、微生物の特徴を生かして土壌を最高の状態に改良する方法は未だ不十分な状態であった。
本発明は、上記従来の状況に鑑みてなされたもので、乳酸菌と酵母を良好な状態で作用できるようにした有用組成物及びその製造方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1,2の発明は、食パン類、麺類、菓子類、揚げ物類及び豆腐から選ばれた1種又は2種以上の食品の製造時に植物性乳酸菌(Lactobacillus fermentum JS菌(韓国寄託番号KCCM−10499)以下同じ)を添加したことを特徴とする乳酸菌含有食品及びその製造方法である。
【0005】
請求項3,4の発明は、納豆の製造時に納豆菌(Bacillus subtilis)と植物性乳酸菌(Latobacillus fermentum JS菌)を同時に接種し、同時に培養したことを特徴とする乳酸菌含有納豆及びその製造方法である。
【0006】
請求項5,6の発明は、キノコの廃菌床及び米糠、フスマ、豆かす、油粕を混合した菌体培地に植物性乳酸菌(Lactobacillus fermentum JS菌)と、酵母菌(Saccharomyces cerevisiae菌)を添加して醗酵培養したことを特徴とする乳酸菌含有飼料及びその製造方法である。
【0007】
請求項7の発明は、請求6項に記載された乳酸菌含有飼料の製造方法において、菌体培地に植物性乳酸菌(Lactobacillus fermentum JS菌)及び酵母菌(Saccharomyces cerevisiae菌)を菌体培地量の0.5%〜1%混合して、45℃〜60℃で1日〜3日日間醗酵培養する工程を含むことを特徴とする乳酸菌含有飼料の製造方法である。
【0008】
請求項8,9の発明は、家畜糞及び木粉の混合物に植物性乳酸菌(Lactobacillus fermentum JS菌)と酵母菌(Saccharomyces cerevisiae菌)を添加して醗酵培養したことを特徴とする乳酸菌含有有機堆肥及びその製造方法である。
【0009】
請求項10の発明は、請求項9に記載された乳酸菌含有有機肥料の製造方法において、家畜糞50%と木粉50%を混合したものに植物性乳酸菌(Lactobacillus fermentum JS菌)と酵母菌(Saccharomyces cerevisiae菌)を0.5%〜1%を混合して15日〜30日間醗酵培養する工程を含むことを特徴とする乳酸菌含有有機堆肥の製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る植物性乳酸菌(Lactobacillus fermentum JS菌(韓国寄託番号KCCM−10499)以下同じ)は、表1の耐酸性評価結果、及び表2の耐熱性評価結果に示すように、耐酸性及び耐熱性に優れている。従って、高温を伴う食品や飼料の製造においても乳酸菌を添加することができる。また醗酵温度が高温度に達する有機堆肥製造時おいても乳酸菌を使用できる。
【0011】
【表1】

【0012】
【表2】

【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
〔乳酸菌含有食品及びその製造方法〕
乳酸菌麺、乳酸菌蕎麦麺の場合は、生菌数が1×108cfu/gである植物性乳酸菌(Lactobacillus fermentum JS菌)を小麦粉または蕎麦粉量に対して1〜3%混合して、通常の方法により製造する。このようにして製造した蕎麦麺では、製造後の乾燥した状態で、乳酸菌数が2.5×107 cfu/gであり、3〜5分間煮たあとの麺では乳酸菌数が2.7×106cfu/gとなった。従ってこの乳酸菌が生きている乳酸菌含有麺を食べれば、健康にとても有益な作用が起きる。
【0014】
各種食パン類や揚げ物、菓子類の場合は、生菌数が1×107cfu/g である乳酸菌(Lactobacillus fermentum JS菌)を材料量の1〜3%混合して3〜5時間醗酵した後、通常の方法により製造する。このようにして製造した場合、 製造後の製品内の乳酸菌数は5×105cfu/gとなる。
【0015】
乳酸菌含有豆腐の場合は、生菌数が1×107cfu/gである乳酸菌(Lactobacillus fermentum JS)を材料豆量の1〜3%程度混合して、通常の方法により豆腐を製造する。このようにして製造した場合、豆腐内に1.3×106cfu/gの乳酸菌が存在する乳酸菌含有豆腐を得ることができる。
【0016】
〔乳酸菌含有納豆及びその製造方法〕
本発明者の識見によれば、煮た豆に納豆菌(Bacillus subtilis菌)と植物性酸菌(Lactobacillus fermentum JS菌)を同時に接種して40℃〜45℃で3日〜5日間共存培養すれば、納豆菌 (Bacillus subtilis)の数は2.5×108cfu/gになり、乳酸菌(Lactobacillus fermentum JS菌)の数は2.7×108cfu/gになる。このような納豆菌や乳酸菌が含まれた納豆やなべ料理等を食べると、納豆菌と乳酸菌の有益な作用が同時に起こるため人体にとても有益である。また、納豆の匂いも著しく低下するため、納豆の匂いを嫌う人も食べ易くなる。
【0017】
上述の方法で製造した乳酸菌含有食品の具体例の成分分析結果(乳酸菌数)を表3に示す。
【0018】
【表3】

【0019】
〔乳酸菌含有飼料及びその製造方法〕
キノコの廃菌床及び米糠、フスマ、豆かす、油粕を混合した菌体培地に植物性乳酸菌(Lactobacillus fermentum JS菌)及び酵母菌(Saccharomyces cerevisiae菌)を菌体培地量の0.5%〜1%混合して、45℃〜60℃で1日〜3日日間醗酵培養する。
【0020】
例えば、各種キノコの廃菌床1,000kgに、米糠40kg、フスマ20kg、豆かす20kg、油粕10kg、乳酸菌(Lactobacillus fermentum JS菌)数が1×107cfu/gである原料粉末を材料量の0.5%〜1%、酵母(Saccharomyces cerevisiae) 菌数が2×106cfu/gである原料粉末を材料量0.5%〜1%程度混合して45℃〜60℃で1日〜3日間醗酵させれば、乳酸菌数が3.2×107cfu/g、酵母菌数が4.2×108cfu/gとなる乳酸菌醗酵飼料を製造することが出来る。
【0021】
本発明は各種キノコの培地をそのまま使うのではなく、キノコの生産が終わった廃菌床を使うため、廃棄物利用としても有用な組成物が提供できる。
【0022】
肥育牛の飼育用醗酵飼料の製造方法の具体例は表4〜7に示す通りである。
【0023】
【表4】

【0024】
乳酸菌,酵母菌粉末 5.45kgを水 5.5リットルに溶解したものを飼料材料と混合後、45℃〜60℃で1日〜3日間醗酵させる。
【0025】
【表5】

【0026】
【表6】

【0027】
【表7】

【0028】
上述の方法で製造した具体例飼料の成分分析結果(乳酸菌数、酵母菌数)は表8,9に示す通りである。
【0029】
【表8】

【0030】
【表9】

【0031】
上述の方法で製造した飼料が与えられた牛の糞の成分分析結果(乳酸菌数、酵母菌数)は表10に示す通りである。
【0032】
【表10】

【0033】
配合飼料だけで24ヶ月飼育する場合には、韓牛一等級の肉が60〜70%生産されるのに対して、上記に記載した乳酸菌の醗酵飼料をもって肥育牛を24ヶ月飼育すれば、一等級の肉が92%以上生産される。また、抗生剤を使用する必要が全くなく、飼料費も30%以上節減でき、牛糞の悪臭が80〜90%以上低下されて悪臭防止法に触れることなく飼育することができる。しかも、ハエや蚊などの害虫の発生が抑制されて、環境にやさしい畜産ができる。これは、牛糞にハエや蚊が卵を産むと、牛糞の中にいる乳酸菌が乳酸を分泌して、卵の殻を溶かしてしまい、ハエや蚊の発生を抑制するためである。
【0034】
乳牛に本乳酸菌醗酵飼料を給与すると、種付率が70%から90%になり、牛乳生産量が20〜30%増加する。
【0035】
本乳酸菌醗酵飼料10〜20%を配合飼料に混合して肥育豚に給与すれば、豚糞の悪臭が60〜70%以上減少される。また、鶏を飼育する時、乳酸菌の醗酵飼料を配合飼料に5〜10%程度に混合して給与すれば、鶏糞の悪臭が50〜60%以上減少する。
【0036】
また、豚や鶏を飼養する場合も、抗生剤を使用する必要が全くなく飼料費も節約できる。
【0037】
〔乳酸菌含有堆肥及びその製造方法〕
乳酸菌含有有機堆肥は、家畜糞50%、木粉または各種キノコ廃菌床50%の材料に、乳酸菌(Lactobacillus fermentum JS菌)数1×107cfu/g、酵母菌(Saccharomyces cerevisiae)数2×106cfu/gの粉末を材料量の0.5%〜1%加え、水で薄めて混合し、15日〜30日間を醗酵させることにより製造できる。このようにして醗酵が終った有機堆肥には乳酸菌数が2.5×106cfu/g、酵母菌数が3.4×105cfu/g存在する。
【0038】
上述の方法で製造された有機堆肥の具体例の成分分析結果(乳酸菌数、酵母菌数)は表11,12に示す通りである。
【0039】
【表11】

【0040】
【表12】

【0041】
乳酸菌含有有機堆肥を土壌中に混入すると農作物の炭疽病、菌核病、疫病、半枯死病、青枯死病などに卓越な効果があることが立証された。そして土壌中に生息する害虫の発生も抑制する。
【0042】
土壌中に害虫が卵を産むと乳酸菌が乳酸を分泌して卵の殻を溶かしてしまい、害虫の発生を根絶する。乳酸菌の有機堆肥を土壌に用いれば農薬を使う必要がなくなり、無公害農産物を生産することができる。乳酸菌の有機堆肥を使った土壌に、トマト、スイカ、唐辛子、キュウリなどを試験栽培した結果、植物性ホルモンや農薬を用いなくても炭疽病、菌核病、疫病、半枯死病、青枯死病などが発生しなかった。
【0043】
それに栽培状態は品質、収穫量ともにとても良好であって、このことから病原菌や害虫が寄生しにくいことが分かった。ちなみに乳酸菌の有機堆肥を使わずに従来の化学肥料を用いた所では定期的な追肥と薬剤散布が必要であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食パン類、麺類、菓子類、揚げ物類及び豆腐から選ばれた1種又は2種以上の食品の製造時に植物性乳酸菌(ラクトバチルス ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)JS菌(韓国寄託番号KCCM−10499)以下同じ)を添加したことを特徴とする乳酸菌含有食品。
【請求項2】
食パン類、麺類、菓子類、揚げ物類及び豆腐から選ばれた1種又は2種以上の食品の製造時に植物性乳酸菌(Lactobacillus fermentum JS菌)を添加する工程を含むことを特徴とする乳酸菌含有食品の製造方法。
【請求項3】
納豆の製造時に納豆菌(Bacillus subtilis)と植物性乳酸菌(Latobacillus fermentum JS菌)を同時に接種し、同時に培養したことを特徴とする乳酸菌含有納豆。
【請求項4】
納豆の製造時に納豆菌(Bacillus subtilis)と植物性乳酸菌(Latobacillus fermentum JS菌)を同時に接種し、同時に培養する工程を含むことを特徴とする乳酸菌含有納豆の製造方法。
【請求項5】
キノコの廃菌床及び米糠、フスマ、豆かす、油粕を混合した菌体培地に植物性乳酸菌(Lactobacillus fermentum JS菌)と、酵母菌(Saccharomyces cerevisiae菌)を添加して醗酵培養したことを特徴とする乳酸菌含有飼料。
【請求項6】
キノコの廃菌床及び米糠、フスマ、豆かす、油粕を混合した菌体培地に植物性乳酸菌(Lactobacillus fermentum JS菌)と、酵母菌(Saccharomyces cerevisiae菌)を添加して醗酵培養する工程を含むことを特徴とする乳酸菌含有飼料の製造方法。
【請求項7】
請求6項に記載された乳酸菌含有飼料の製造方法において、菌体培地に植物性乳酸菌(Lactobacillus fermentum JS菌)及び酵母菌(Saccharomyces cerevisiae菌)を菌体培地量の0.5%〜1%混合して、45℃〜60℃で1日〜3日日間醗酵培養する工程を含むことを特徴とする乳酸菌含有飼料の製造方法。
【請求項8】
家畜糞及び木粉の混合物に植物性乳酸菌(Lactobacillus fermentum JS菌)と酵母菌(Saccharomyces cerevisiae菌)を添加して醗酵培養することを特徴とする乳酸菌含有有機堆肥。
【請求項9】
家畜糞及び木粉の混合物に植物性乳酸菌(Lactobacillus fermentum JS菌)と酵母菌(Saccharomyces cerevisiae菌)を添加して醗酵培養する工程を含むことを特徴とする乳酸菌含有有機堆肥の製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載された乳酸菌含有有機肥料の製造方法において、家畜糞50%と木粉50%を混合したものに植物性乳酸菌(Lactobacillus fermentum JS菌)と酵母菌(Saccharomyces cerevisiae菌)を0.5%〜1%を混合して15日〜30日間醗酵培養する工程を含むことを特徴とする乳酸菌含有有機堆肥の製造方法。

【公開番号】特開2009−11227(P2009−11227A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−176372(P2007−176372)
【出願日】平成19年7月4日(2007.7.4)
【出願人】(507227234)
【出願人】(390027454)協全商事株式会社 (13)
【出願人】(502128442)株式会社鎌田工業 (8)
【Fターム(参考)】