予備成型装置、及び空気ばねの製造方法
【課題】筒状未加硫ゴム成型体を容易に予備成型して製品精度を高めることのできる予備成型装置の提供。
【解決手段】上型6及び下型7で成型用型5を構成する。成型用型5とブラダー9との間に筒状未加硫ゴム成型体3を配置する。複数のプレート11、18を放射状に設けて成型用型5を構成し、外部から筒状未加硫ゴム成型体3を目視可能とする。上型6を上下動させるシリンダ8を設ける。ブラダー9とこれに給排気する給排気部10を設ける。ブラダー9に給排気しながら、上型6と下型7とを型締めする。予備成型する際に、筒状未加硫ゴム成型体3に不具合を生じていないことを目視によって確認する。
【解決手段】上型6及び下型7で成型用型5を構成する。成型用型5とブラダー9との間に筒状未加硫ゴム成型体3を配置する。複数のプレート11、18を放射状に設けて成型用型5を構成し、外部から筒状未加硫ゴム成型体3を目視可能とする。上型6を上下動させるシリンダ8を設ける。ブラダー9とこれに給排気する給排気部10を設ける。ブラダー9に給排気しながら、上型6と下型7とを型締めする。予備成型する際に、筒状未加硫ゴム成型体3に不具合を生じていないことを目視によって確認する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば鉄道車両用空気ばねのダイヤフラムを製造する際に使用する予備成型装置、及び空気ばねの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、鉄道車両などに装備される空気ばねは、筒状のゴム膜に耐圧補強用の補強コード層を埋設してダイヤフラムを構成し、このダイヤフラムの両端に金具を止着した構造とされる。この空気ばねは、ダイヤフラムの内部に空気を封入することにより、防振装置として機能し、さらに、封入する空気量を調節することにより、車高調整装置として機能する(例えば特許文献1参照)。
【0003】
図12に、特許文献1に記載の空気ばねを示す。図12に示す空気ばねは、鉄道車両用として採用されることの多い形式の空気ばねであり、ダイヤフラム101の上下端に金具102、103が止着されている。この空気ばねのダイヤフラム101は、下端を上向きに押し込むようにして、中央部を径方向外向きに十分に膨出させた形状とされ、空気ばねの高さを低く設定しつつ大きな変位を許容するようになっている。
【0004】
空気ばねのダイヤフラムを製造するには、まず、補強コード層を埋設しつつ筒状未加硫ゴム成型体を成型し、この筒状未加硫ゴム成型体を加硫金型にセットして、内側にブラダーと称する風船状のゴム膜を配置する。このブラダーに蒸気などを給入して膨らませて、筒状未加硫ゴム成型体を加温・加圧することにより、筒状未加硫ゴム成型体を加硫成形してダイヤフラムを製造することができる。
【0005】
ただ、図12に示すようなダイヤフラムを製造する場合、筒状未加硫ゴム成型体を製品形状に近い形状に成型しようとすると、中央部が大きく膨出する曲面状である分、補強コード層の巻き付け作業などが難しくなりやすい。一方、成型しやすい形状に成型した未加硫ゴム成型体を加硫金型にセットして、そのまま加硫成形しようとすると、加硫成形時における筒状未加硫ゴム成型体の形状変化が大きい分、補強コード層のずれが生じるなど、製品精度が悪くなりやすい。
【0006】
これに対して、筒状未加硫ゴム成型体を比較的に成型しやすい形状に成型した後、これを加硫金型にセットして、加圧しない程度にブラダーを緩やかに膨らませることにより、一旦、筒状未加硫ゴム成型体を製品形状に近い形状に予備成型(シェーピング)することが考えられる。この予備成型した筒状未加硫ゴム成型体を所定の条件で加温・加圧して加硫成形することにより、筒状未加硫ゴム成型体の成型を容易にしつつ、ダイヤフラムの製品精度を高めることが期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−89029号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、加硫金型を用いて筒状未加硫ゴム成型体を予備成型する際、加硫金型と筒状未加硫ゴム成型体、あるいは、ブラダーと筒状未加硫ゴム成型体との間にエアーが残存することがある。この残存エアーは、加硫成形時のゴムの流れを阻害して、製品に表面荒れ不良を生じさせるおそれがある。また、製品の外観がきれいに形成されている場合には、例えば補強コード層に皺が生じていたとしても、そのような製品内部の不具合を見落とすおそれがある。
【0009】
このような予備成型による不具合は、ブラダーの内圧や給気・排気、型締めのタイミングなどの予備成型条件を様々に変化させ、トライアンドエラーで予備成型条件を適正に設定することにより防止することができる。
【0010】
しかしながら、残存エアーによる表面荒れ不良は加硫後でないと発見できないため、トライアンドエラーによる予備成型条件の設定に手間と時間がかかりやすい。しかも、加硫金型で覆われたブラダーや筒状未加硫ゴム成型体の挙動を正確に把握するのは難しく、金型内の挙動を解析して、皺などの不具合を生じる原因を解明することも容易ではない。
【0011】
本発明は、筒状未加硫ゴム成型体を容易に予備成型して製品精度を高めることのできる予備成型装置、及び空気ばねの製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明に係る予備成型装置は、上型及び下型からなる成型用型と、上型及び/又は下型を上下動させる駆動部と、型締め状態で成型用型の内側に位置するブラダーと、このブラダーに給排気する給排気部とを備え、成型用型とブラダーとの間に筒状未加硫ゴム成型体を配置可能としたものであり、その成型用型を、筒状未加硫ゴム成型体を外部から目視可能としたものである。
【0013】
上記構成によれば、成型用型の外部から筒状未加硫ゴム成型体を目視可能とするので、予備成型する際に、筒状未加硫ゴム成型体の表面や内部に不具合を生じていないことを目視によって確認することができる。これにより、残存エアーや補強コード層の皺などの不具合を生じさせることなく、筒状未加硫ゴム成型体を確実に予備成型することができる。さらに、筒状未加硫ゴム成型体の挙動を目視しながら予備成型のシミュレーションをすることができ、予備成型条件の設定をも容易に行うことができる。
【0014】
この予備成型装置を用いて筒状未加硫ゴム成型体を予備成型するには、所定のタイミングでブラダーにエアーや蒸気を給排気しながら、所定のタイミングで上型と下型とを型締めすればよい。
【0015】
また、外部から筒状未加硫ゴム成型体を目視可能にするための構成として、成型用型に複数のプレートを互いに間隔をあけて放射状に設け、このプレートの板面を成型用型の上下方向及び径方向と平行に設定し、プレートの内側縁を予備成型後の筒状未加硫ゴム成型体の断面形状に対応する形状に設定した構成を例示できる。
【0016】
この構成によれば、成型用型に複数のプレートを放射状に設けるので、成型用型が、プレート間から筒状未加硫ゴム成型体を視認可能なスパイダー状の疑似モールドを構成する。この疑似モールドは、複数のプレート間に間隔をあけたものであるが、予備成型においては、加硫成形のように強く加圧する必要がないので、複数のプレートによって筒状未加硫ゴム成型体の外面を押えて型付けすることができる。
【0017】
これにより、筒状未加硫ゴム成型体を予備成型しながら、筒状未加硫ゴム成型体の挙動をプレート間から視認することができる。しかも、プレート間に露出する筒状未加硫ゴム成型体を手で触ることができるので、残存エアーの有無をより簡単に確認することができる。
【0018】
なお、外部から筒状未加硫ゴム成型体を目視可能とするための別の構成として、成型用型をガラスやアクリルなどの透視可能な素材によって形成したものや、網状に形成したものを例示できる。特に、成型用型を網状に形成したものは、上記のスパイダー状の疑似モールドと同様、筒状未加硫ゴム成型体を手で触ることができる。
【0019】
また、本発明は、筒状未加硫ゴム成型体を成型し、さらに、筒状未加硫ゴム成型体を予備成型した後、筒状未加硫ゴム成型体をダイヤフラムに加硫成形する空気ばね用ダイヤフラムの製造方法を提供する。具体的には、外部から筒状未加硫ゴム成型体を目視可能な成型用型を備えた予備成型装置を用いて筒状未加硫ゴム成型体を予備成型することにより、予備成型する際に筒状未加硫ゴム成型体に欠陥を生じていないことを確認する。
【0020】
この構成によれば、筒状未加硫ゴム成型体を目視しながら予備成型するので、加硫成形する前に、残存エアーや補強コード層の皺などの不具合の有無を容易に確認することができる。これにより、欠陥のない筒状未加硫ゴム成型体をダイヤフラムに加硫成形することができ、ダイヤフラムの製品精度を容易に高めることができる。
【0021】
なお、ブラダーへの蒸気の給入によって加温して残存エアーを膨らませることにより、エアーを逃がしやすくすると共に、残存エアーを見やすくして、その確認を容易にすることができる。また、予備成型装置で予備成型する際に予備加熱することにより、加硫成形における加硫時間を短縮することができる。
【0022】
また、本発明は、上記の製造方法とは別の空気ばね用ダイヤフラムの製造方法を提供する。具体的には、外部から筒状未加硫ゴム成型体を目視可能な成型用型を備えた予備成型装置を用いて予備成型条件設定用の筒状未加硫ゴム成型体を予備成型することにより、筒状未加硫ゴム成型体の予備成型条件を予め設定し、この予備成型条件に基づき、加硫成形用金型を用いて他の筒状未加硫ゴム成型体を予備成型する。
【0023】
この構成によれば、予備成型条件設定用の筒状未加硫ゴム成型体を目視しながら予備成型して、予備成型のシミュレーションをするので、予備成型条件の設定を容易かつ正確にすることができる。これにより、加硫成形用金型を用いて他の筒状未加硫ゴム成型体を予備成型する際に、適正に設定した予備成型条件を用いることができ、予備成型において不具合が生じるのを防止して、ダイヤフラムの製品精度を容易に高めることができる。
【0024】
ここで、予備成型条件としては、ブラダーの内圧や給気・排気、型締めのタイミングなどである。なお、予備成型装置の成型用型の動作を加硫金型の動作と同じにすることにより、加硫金型内で予備成型する際の予備成型条件を正確に設定することができる。
【0025】
また、本発明は、上記の製造方法で製造したダイヤフラムに金具を止着して空気ばねを製造する空気ばねの製造方法を提供する。この構成によれば、上記の空気ばね用ダイヤフラムの製造方法を採用することによる効果と同じ効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0026】
以上のとおり、本発明によると、成型用型の外部から筒状未加硫ゴム成型体を目視できるので、筒状未加硫ゴム成型体に不具合を生じていないことを確認しながら、予備成型あるいは予備成型のシミュレーションをすることができる。これにより、残存エアーや補強コード層の皺などの不具合を生じさせることなく、筒状未加硫ゴム成型体を予備成型し、あるいは、予備成型条件を適正な条件に設定することができ、空気ばね用ダイヤフラム及び空気ばねの製品精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る予備成型装置の断面図
【図2】成型用型の断面図
【図3】成型用型の平面図の上半分を示す図
【図4】予備成型時の成型用型の断面図
【図5】筒状未加硫ゴム成型体からダイヤフラムに至るまでの形状変化を示す図
【図6】予備成型時の成型用型の動作を示す図
【図7】別の形態の筒状未加硫ゴム成型体及びダイヤフラムを示す図で、(a)は筒状未加硫ゴム成型体の断面図、(b)はダイヤフラムの断面図
【図8】さらに別の形態の筒状未加硫ゴム成型体及びダイヤフラムを示す図で、(a)は筒状未加硫ゴム成型体の断面図、(b)はダイヤフラムの断面図
【図9】可動式の下側ビードクランプを備えた形態の成型用型の挟持状態を示す断面図
【図10】可動式の下側ビードクランプを備えた形態の成型用型の開放状態を示す断面図
【図11】可動式の下側ビードクランプを備えた別の形態の成型用型の断面図
【図12】従来の空気ばねの断面図
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係る予備成型装置、及び空気ばねの製造方法を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【0029】
図1〜図4に示すように、予備成型装置1は、例えば鉄道車両用空気ばねのダイヤフラム2に加硫成形される筒状未加硫ゴム成型体3を製品形状に近い形状に予備成型するためのものであり、フレーム4と、フレーム4に支持されて成型用型5を構成する上型6及び下型7と、上型6を上下動させる駆動部としてのシリンダ8と、型締め状態で成型用型5の内側に位置するブラダー9と、ブラダー9に給排気する給排気部10とを備えている。
【0030】
成型用型5は、上型6を上動させることにより、上型6と下型7とが離間され、上型6を下動させることにより、上型6と下型7とが接触して型締め状態とされる。この成型用型5は、スパイダー状の疑似モールドを構成し、内側のブラダー9との間に筒状未加硫ゴム成型体3を配置可能とされると共に、この筒状未加硫ゴム成型体3を成型用型5の外部から目視可能とされる。
【0031】
上型6は、成型用型5の中心軸を中心とする放射状に互いに間隔をあけて設けられた複数の上型プレート11と、上型プレート11の外端側に固定された上型リング12と、上型リング12よりも小径で上型プレート11の内端側に固定されたリング状の上側ビードクランプ13とからなる。この上型6は、上型リング12の内側に上側ビードクランプ13が位置し、上型リング12及び上側ビードクランプ13が水平で同心円状かつ同程度の高さとされる。
【0032】
上型プレート11は、例えば鋼製で上方に膨らんだ半円形の帯板状とされ、その板面を成型用型5の上下方向及び径方向と平行にして配置される。この上型プレート11は、内側縁が予備成型後の未加硫ゴム成型体3の断面形状に対応する形状に設定され、筒状未加硫ゴム成型体3を予備成型する際にその外面側を押えつつ、隣接する上型プレート11との間から筒状未加硫ゴム成型体3を目視可能とされる。
【0033】
上型リング12は、例えば鋼製で断面略長方形のリング状とされ、型締め状態で、下面側に形成された凸部が下型7の後述する下型リング19の凹部と噛み合って、上型6及び下型7の中心軸を合わせるようになっている。
【0034】
上側ビードクランプ13は、例えば鋼製のリング状とされ、上面側部分が外周側に突出して上型プレート11に固定されている。上側ビードクランプ13の下面側部分は、内周側に突出し、この下面側部分に上側ブラダーホルダー14を着脱自在にねじ止めして、上側ビードクランプ13の上面側部分と上側ビードホルダー14の外周部との間に筒状未加硫ゴム成型体3の小径側ビード部3aを挟持するようになっている。
【0035】
上側ブラダーホルダー14は、上側ビードクランプ13と同程度の外径のドーナツ板状のホルダー本体15と、ホルダー本体15と外周部との間にブラダー9の上端部を挟持する挟持板16とからなる。この上側ブラダーホルダー14は、ホルダー本体15が上側ビードクランプ13に着脱自在にねじ止めされ、挟持板16がホルダー本体15の中央穴に下面側から嵌って位置決めされつつ着脱自在にねじ止めされる。
【0036】
ホルダー本体15の上面側には、シリンダ8のピストンロッド17の先端が着脱自在にねじ止めされている。シリンダ8は、成型用型5の上方で、フレーム4に装着された例えば油圧シリンダとされ、上側ブラダーホルダー14を介して上型5を上下動させるようになっている。
【0037】
下型7は、上型プレート11と周方向の位置を合わせて設けられた複数の下型プレート18と、下型プレート18の上端側に固定された下型リング19と、下型プレート18の下端側に固定されたリング状の下側ビードクランプ20と、これらを支持する型基台21とからなる。この下型7は、下型リング19及び下側ビードクランプ20が水平に配されて、下型リング19の下方に下側ビードクランプ20が位置し、この下側ビードクランプ20が型基台21の上面外周部に着脱自在にねじ止めされている。
【0038】
下型プレート18は、例えば鋼製で鉛直方向に配された平板状とされ、その板面を成型用型5の上下方向及び径方向と平行にして配置される。この下型プレート18は、内側縁が予備成型後の未加硫ゴム成型体3の断面形状に対応する形状に設定され、筒状未加硫ゴム成型体3を予備成型する際にその外面側を押えつつ、隣接する下型プレート18との間から筒状未加硫ゴム成型体3を目視可能とされる。
【0039】
下側リング19は、例えば鋼製で断面略長方形のリング状とされ、型締め状態で、上面側に形成された凹部が上型6の上型リング12の凹部と噛み合って、上型6及び下型7の中心軸を合わせるようになっている。
【0040】
下側ビードクランプ20は、例えば鋼製のリング状とされて、下面側の内周部に凹部が形成されている。この凹部に筒状未加硫ゴム成型体3の大径側ビード部3bを配置しつつ、下側ビードクランプ20を型基台21の上面外周部にねじ止めすることにより、下側ビードクランプ20と型基台21との間に筒状未加硫ゴム成型体3の大径側ビード部3bを挟持するようになっている。下側ビードクランプ20は、上側ビードクランプ13よりも大径に設定されており、予備成型装置1が両端部の径の異なる筒状未加硫ゴム成型体3を予備成型する。
【0041】
型基台21は、フレーム4に載置されるベースプレート22と、ベースプレート22に立設された内筒部23と、内筒部23の上端から径方向外向きに突出する上面板24と、ベースプレート22、内筒部23及び上面板24で三方を囲まれた空間に設けられた複数枚の補強板25とからなり、上面板24の外周部に下側ビードクランプ20が着脱自在にねじ止めされる。
【0042】
型基台21の内筒部23の内側には、ブラダー9の下端部を保持するための下側ブラダーホルダー26が設けられている。下側ブラダーホルダー26は、円板の中央部を下向きに突出させた形状のホルダー本体27と、ホルダー本体27の外周部の下面側に着脱自在にねじ止めされる挟持リング28とからなり、ホルダー本体27と挟持リング28との間にブラダー9の下端部を挟持するようになっている。
【0043】
ホルダー本体27の中央部下面側には、ベースプレート22の中央穴29を貫通するようにして、ブラダー用シリンダ30のピストンロッド31の先端が接続されている。ブラダー用シリンダ30は、成型用型5の下方で、フレーム4に装着された例えば油圧シリンダとされ、下側ブラダーホルダー26を上下動させるようになっている。ベースプレート22の中央穴29は、挟持リング28の内径と同程度の大きさとされ、下側ブラダーホルダー26が下動して下限位置に達した際、挟持リング28が中央穴29の周縁部に接触して下側ブラダーホルダー26の下動を規制するようになっている。
【0044】
ブラダー9は、補強された筒状のゴム膜とされ、このブラダー9と上側ブラダーホルダー14と下側ブラダーホルダー26とで囲まれた空間にエアー及び蒸気を給入して、筒状未加硫ゴム成型体3を加温加圧して高精度に予備成型するようになっている。ブラダー9の内部に給入されるエアー及び蒸気は、ベースプレート22の中央穴29を通って下側ブラダーホルダー26に接続されたホース32を介して、フレーム4の外部に設けられた給排気部10から給入される。
【0045】
次に、上記の予備成型装置を用いて筒状未加硫ゴム成型体を予備成型する工程を有する空気ばねの製造方法を説明する。
【0046】
図5に示すように、まず、一端がフレア状に広がった円筒状の筒状未加硫ゴム成型体3を成型して(図5(a))、一旦、この筒状未加硫ゴム成型体3を小径側ビード部3aが下側に位置するように配置する(図5(b))。次いで、小径側ビード部3aが上側に位置するよう小径側ビード部3a及び大径側ビード部3bを相対的に移動させて筒状未加硫ゴム成型体3の表裏を予反転し、上側に位置する小径側ビード部3aから一旦上向きに突出して下側の大径側ビード部3bに向かうよう折り返された状態とする(図5(c))。
【0047】
上記の予備成型装置1を用いて、成型用型5の外部から筒状未加硫ゴム3を目視して筒状未加硫ゴム成型体3に欠陥を生じていないことを確認しつつ、筒状未加硫ゴム成型体3を製品形状に近い形状に予備成型する(図5(d))。この筒状未加硫ゴム成型体3を加硫成形して、上側の小径側ビード部2aと下側の大径側ビード部2bとの間が上向きかつ径方向外向きに膨出するダイヤフラム2を得る(図5(e))。
【0048】
その後、ダイヤフラム2に金具を止着すると共に、大径側ビード部2bが上側に位置するように上下方向を反転させて、両端部の径が異なる例えば鉄道車両用とされる空気ばねを得る。
【0049】
次に、筒状未加硫ゴム成型体を予備成型する手順をより詳しく説明する。まず、ブラダー用シリンダ30で下側ブラダーホルダー26を上動させて内筒部23から上方に露出させる。ホルダー本体27に挟持リング28をねじ止めして、ホルダー本体27と挟持リング28との間にブラダー9の下端部を挟持した後、ブラダー用シリンダ30で下側ブラダーホルダー26を下動させて内筒部23に収容する。
【0050】
上側ブラダーホルダー14のホルダー本体15に挟持板16をねじ止めして、ホルダー本体15と挟持板16との間にブラダー9の上端部を挟持し、さらに、ホルダー本体15にシリンダ8のピストンロッド17の先端をねじ止めする。
【0051】
型基台21の上面外周部に二つ割りの下型7の下側ビードクランプ20をねじ止めして、予めブラダー9の外側に配置しておいた筒状未加硫ゴム成型体3の大径側ビード部3bを挟持する。また、上側ブラダーホルダー14に二つ割りの上型6の上側ビードクランプ13をねじ止めして、筒状未加硫ゴム成型体3の小径側ビード部3aを挟持する。以上の手順により、上型6、下型7、ブラダー9及び筒状未加硫ゴム成型体3が装着される。
【0052】
次いで、図6(a)に示すように、シリンダ8で上型6と共に上側ブラダーホルダー14を所定位置まで上動させてブラダー9を伸ばし、給排気部10からブラダー9の内部に、例えば、常温又は30℃〜50℃程度に加温したエアーや、60℃〜80℃程度の蒸気を給入して、ブラダー9の内圧を0.001MPa〜0.1MPa程度に設定する。
【0053】
図6(b)に示すように、上型6を所望の移動量だけ下動させてブラダー9の上端部を押し下げた後、下動させた上型6を一旦上動させて、その上下動を適宜繰り返すと共に、ブラダー9への給排気を適宜繰り返して、筒状未加硫ゴム成型体3とブラダー9との間のエアーを排出する。
【0054】
さらに、上型6を一定の速度で、あるいは適宜速度を変化させつつ下動させて、ブラダー9の上端部を押し下げると共に、エアーや蒸気の給排気によってブラダー9の内圧を上型6の位置に応じて所望の内圧に設定する。この上型6を下動させる速度及びタイミングとブラダー9の内圧と給排気のタイミングとを調整することにより、筒状未加硫ゴム成型体3とブラダー9との間の残存エアーを排出すると共に、補強コード層の皺などの不具合が発生するのを防止する。
【0055】
上型6を下動させる速度及びタイミングとブラダー9の内圧と給排気のタイミングは、予備成型条件として記録しておき、別の筒状未加硫ゴム成型体3を予備成型する際に反映する。
【0056】
図6(c)に示すように、上型6を下動させて型締め状態とした後、さらにブラダー9に給気して、筒状未加硫ゴム成型体3を製品形状に近い形に予備成型する。なお、筒状未加硫ゴム成型体3は、成型用型5の上型プレート11及び下型プレート18によって外面の一部を押えられるが、加硫成形における程に強く加圧しないので、押えられる部位と他の部位とで過度の凹凸を生じさせることなく予備成型される。
【0057】
図6(a)〜図6(c)の各状態において、隣接する上型プレート11や下型プレート18の間から、成型用型5の内側の筒状未加硫ゴム成型体3の挙動を目視し、さらに、図6(c)の状態において、必要に応じて筒状未加硫ゴム成型体3を手で触る。この目視と手で触ることにより、残存エアーや補強コード層の皺などの欠陥がないことを確認すると共に、その様な欠陥が生じている場合には、その不良品を排除する。
【0058】
ブラダー9の内圧を所望の圧力に設定する手法としては、ブラダー9から排気しながら上型6を下動させると共に、上型6の位置に応じて適宜給排気してブラダー9の内圧を設定圧力に設定する手法を採用可能である。また、上記手法以外にも、上型6が初期位置、中間位置及び型締め位置のいずれか又は複数の位置にあるときに給排気して、ブラダー9の内圧を設定圧力に設定する手法や、上端部を押し下げてブラダー9の内圧が設定圧力以上になったときに排気することにより、上型6が初期位置から型締め位置に至るまで、ブラダー9を一定の内圧に設定する手法、なども採用可能である。
【0059】
また、ブラダー9に給入するエアーや蒸気などの気体は、上型6を途中まで下動させた時点や型締め後に、その種類を適宜切り替えるのがよい。ブラダー9の内部に蒸気を給入して筒状未加硫ゴム成型体3を例えば60℃〜80℃に加温することにより、予備成型をスムーズにすると共に、残存エアーを膨張させて、残存エアーの排除とその確認を容易にすることができる。
【0060】
ここで、ブラダー9の内圧の設定を具体的に例示する。まず、上型6が初期位置にある状態で(ストローク:0mm)、ブラダー9にエアーを給気して内圧を0.05MPaに設定した後、内圧を0.02MPaに減圧する。次いで、ブラダー9の内圧を0.02MPaに設定したまま、上型6を速度10mm/secで下動させ、型締め状態に至るまでの途中で(ストローク:300mm)、ブラダー9にエアーを給気して内圧を0.03MPaに設定する。さらに、ブラダー9の内圧を0.03MPaに設定したまま、上型6を速度5mm/secで下限まで下動させて型締めし(ストローク:500mm)、ブラダー9に蒸気を給気して内圧を0.08MPaに設定する。
【0061】
上記構成によれば、予備成型装置1を用いて予備成型する際、成型用型5の外部から筒状未加硫ゴム成型体3を目視することができ、さらに、手で触れることができる。これにより、筒状未加硫ゴム成型体3の挙動を確認しながら、上型6を下動させる速度、そのタイミング、ブラダー9の内圧、及び給排気のタイミングなどの予備成型条件を短時間で適切に設定することができる。しかも、残存エアーや補強コード層に生じた皺などの欠陥を生じた場合には、その不良品を加硫成形する前に排除することができる。
【0062】
また、成型用型5の外部から筒状未加硫ゴム成型体3の挙動を目視できるので、製品の寸法や、コード角度、厚さなどを安定させることができる。また、ブラダー9に蒸気を給気することにより、筒状未加硫ゴム成型体3を予備加熱することができ、本加硫時間の短縮を図ることができる。
【0063】
特に、未加硫状態での予反転工程を適宜組み合わせることにより、比較的に成型しやすい形状の筒状未加硫ゴム成型体3を製品形状に近い形状に予備成型するのをより容易にすることができる。これにより、鉄道車両用空気ばねのように、製品形状に近い形状では補強コード層の成型が困難であるような場合であっても、筒状未加硫ゴム成型体3の成型を容易にしつつ、加硫成形時の過度の変形による不具合を防止して品質の向上を図ることができる。
【0064】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内において、適宜変更を加えることができる。例えば、上記の予備成型装置1を用いて予備成型条件設定用の筒状未加硫ゴム3を予備成型することにより、上型6を下動させる速度、そのタイミング、ブラダー9の内圧、及び給排気のタイミングなどの予備成型条件を予め設定するようにしてもよい。この予備成型条件に基づき、加硫成形用金型を用いて他の筒状未加硫ゴム成型体3を精度よく予備成型することができる。
【0065】
この場合、予備成型装置1と加硫成形用金型とを同じ動作をするようにしておくことにより、予備成型装置1で設定した予備成型条件をそのまま加硫成形用金型による予備成型に用いることができる。なお、予備成型した予備成型条件設定用の筒状未加硫ゴム3は、そのまま加硫成形用金型にセットして加硫成型すればよい。
【0066】
予備成型装置1で予備成型する筒状未加硫ゴム成型体は、鉄道車両用空気ばねのダイヤフラム2に加硫成形するものに限らず、他の用途の製品に加硫成形するものであってもよい。また、予備成型する前に予反転する工程を設けることなく予備成型するものであってもよい。
【0067】
また、図7、図8に示すように、筒状未加硫ゴム成型体は、両端部の径が異なるものに限らず、両端部の径が同径の筒状未加硫ゴム成型体33、34を樽状のダイヤフラム35や略円錐台状のダイヤフラム36に予備成型するものであってもよい。
【0068】
また、図9、図10、図11に示すように、筒状未加硫ゴム成型体3の大径側ビード部3bを挟持するための構成として、リング状の下側ビードクランプ20を型基台21の上面外周部にねじ止めする代わりに、周方向に例えば2〜6分割して設けた下側ビードクランプ37を略径方向に移動させるようにしてもよい。
【0069】
図9、図10に示す成型用型38は、リンク機構39を介して、シリンダ40によって下側ビードクランプ37の分割体を略径方向に移動させるものであり、図10に示すように、下側ビードクランプ37を斜め上かつ径方向外向きに移動させて型基台41との間を開放するようになっている。この成型用型38は、型基台41の上面側に大径側ビード部3bを配置した後(図10参照)、下側ビードクランプ37を斜め下かつ径方向内向きに移動させることにより、型基台41との間に大径側ビード部3bを挟持するようになっている(図9参照)。
【0070】
また、図11に示す成型用型42は、図9、図10の成型用型38とほぼ同じ構成であるが、シリンダ40に代えて、レバー43を操作して手動によって下側ビードクランプ37を移動させるようにしている。
【0071】
また、上型プレート11及び下型プレート18を設けた成型用型5に代えて、網状の成型用型を採用することにより、外部から筒状未加硫ゴム成型体3を目視可能かつ手で触れることができるようにしてもよく、成型用型をガラスやアクリルなどの透視可能な素材から形成してもよい。また、上型6を上下動させるだけでなく、下型7を上下動させるようにしてもよく、上型6及び下型7の両方を上下動させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0072】
1 予備成型装置
2、35、36 ダイヤフラム
3、33、34 筒状未加硫ゴム成型体
5、38、42 成型用型
6 上型
7 下型
8 シリンダ(駆動部)
9 ブラダー
10 給排気部
11 上型プレート
12 上型リング
13 上側ビードクランプ
18 下型プレート
19 下型リング
20、37 下側ビードクランプ
21、41 型基台
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば鉄道車両用空気ばねのダイヤフラムを製造する際に使用する予備成型装置、及び空気ばねの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、鉄道車両などに装備される空気ばねは、筒状のゴム膜に耐圧補強用の補強コード層を埋設してダイヤフラムを構成し、このダイヤフラムの両端に金具を止着した構造とされる。この空気ばねは、ダイヤフラムの内部に空気を封入することにより、防振装置として機能し、さらに、封入する空気量を調節することにより、車高調整装置として機能する(例えば特許文献1参照)。
【0003】
図12に、特許文献1に記載の空気ばねを示す。図12に示す空気ばねは、鉄道車両用として採用されることの多い形式の空気ばねであり、ダイヤフラム101の上下端に金具102、103が止着されている。この空気ばねのダイヤフラム101は、下端を上向きに押し込むようにして、中央部を径方向外向きに十分に膨出させた形状とされ、空気ばねの高さを低く設定しつつ大きな変位を許容するようになっている。
【0004】
空気ばねのダイヤフラムを製造するには、まず、補強コード層を埋設しつつ筒状未加硫ゴム成型体を成型し、この筒状未加硫ゴム成型体を加硫金型にセットして、内側にブラダーと称する風船状のゴム膜を配置する。このブラダーに蒸気などを給入して膨らませて、筒状未加硫ゴム成型体を加温・加圧することにより、筒状未加硫ゴム成型体を加硫成形してダイヤフラムを製造することができる。
【0005】
ただ、図12に示すようなダイヤフラムを製造する場合、筒状未加硫ゴム成型体を製品形状に近い形状に成型しようとすると、中央部が大きく膨出する曲面状である分、補強コード層の巻き付け作業などが難しくなりやすい。一方、成型しやすい形状に成型した未加硫ゴム成型体を加硫金型にセットして、そのまま加硫成形しようとすると、加硫成形時における筒状未加硫ゴム成型体の形状変化が大きい分、補強コード層のずれが生じるなど、製品精度が悪くなりやすい。
【0006】
これに対して、筒状未加硫ゴム成型体を比較的に成型しやすい形状に成型した後、これを加硫金型にセットして、加圧しない程度にブラダーを緩やかに膨らませることにより、一旦、筒状未加硫ゴム成型体を製品形状に近い形状に予備成型(シェーピング)することが考えられる。この予備成型した筒状未加硫ゴム成型体を所定の条件で加温・加圧して加硫成形することにより、筒状未加硫ゴム成型体の成型を容易にしつつ、ダイヤフラムの製品精度を高めることが期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−89029号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、加硫金型を用いて筒状未加硫ゴム成型体を予備成型する際、加硫金型と筒状未加硫ゴム成型体、あるいは、ブラダーと筒状未加硫ゴム成型体との間にエアーが残存することがある。この残存エアーは、加硫成形時のゴムの流れを阻害して、製品に表面荒れ不良を生じさせるおそれがある。また、製品の外観がきれいに形成されている場合には、例えば補強コード層に皺が生じていたとしても、そのような製品内部の不具合を見落とすおそれがある。
【0009】
このような予備成型による不具合は、ブラダーの内圧や給気・排気、型締めのタイミングなどの予備成型条件を様々に変化させ、トライアンドエラーで予備成型条件を適正に設定することにより防止することができる。
【0010】
しかしながら、残存エアーによる表面荒れ不良は加硫後でないと発見できないため、トライアンドエラーによる予備成型条件の設定に手間と時間がかかりやすい。しかも、加硫金型で覆われたブラダーや筒状未加硫ゴム成型体の挙動を正確に把握するのは難しく、金型内の挙動を解析して、皺などの不具合を生じる原因を解明することも容易ではない。
【0011】
本発明は、筒状未加硫ゴム成型体を容易に予備成型して製品精度を高めることのできる予備成型装置、及び空気ばねの製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明に係る予備成型装置は、上型及び下型からなる成型用型と、上型及び/又は下型を上下動させる駆動部と、型締め状態で成型用型の内側に位置するブラダーと、このブラダーに給排気する給排気部とを備え、成型用型とブラダーとの間に筒状未加硫ゴム成型体を配置可能としたものであり、その成型用型を、筒状未加硫ゴム成型体を外部から目視可能としたものである。
【0013】
上記構成によれば、成型用型の外部から筒状未加硫ゴム成型体を目視可能とするので、予備成型する際に、筒状未加硫ゴム成型体の表面や内部に不具合を生じていないことを目視によって確認することができる。これにより、残存エアーや補強コード層の皺などの不具合を生じさせることなく、筒状未加硫ゴム成型体を確実に予備成型することができる。さらに、筒状未加硫ゴム成型体の挙動を目視しながら予備成型のシミュレーションをすることができ、予備成型条件の設定をも容易に行うことができる。
【0014】
この予備成型装置を用いて筒状未加硫ゴム成型体を予備成型するには、所定のタイミングでブラダーにエアーや蒸気を給排気しながら、所定のタイミングで上型と下型とを型締めすればよい。
【0015】
また、外部から筒状未加硫ゴム成型体を目視可能にするための構成として、成型用型に複数のプレートを互いに間隔をあけて放射状に設け、このプレートの板面を成型用型の上下方向及び径方向と平行に設定し、プレートの内側縁を予備成型後の筒状未加硫ゴム成型体の断面形状に対応する形状に設定した構成を例示できる。
【0016】
この構成によれば、成型用型に複数のプレートを放射状に設けるので、成型用型が、プレート間から筒状未加硫ゴム成型体を視認可能なスパイダー状の疑似モールドを構成する。この疑似モールドは、複数のプレート間に間隔をあけたものであるが、予備成型においては、加硫成形のように強く加圧する必要がないので、複数のプレートによって筒状未加硫ゴム成型体の外面を押えて型付けすることができる。
【0017】
これにより、筒状未加硫ゴム成型体を予備成型しながら、筒状未加硫ゴム成型体の挙動をプレート間から視認することができる。しかも、プレート間に露出する筒状未加硫ゴム成型体を手で触ることができるので、残存エアーの有無をより簡単に確認することができる。
【0018】
なお、外部から筒状未加硫ゴム成型体を目視可能とするための別の構成として、成型用型をガラスやアクリルなどの透視可能な素材によって形成したものや、網状に形成したものを例示できる。特に、成型用型を網状に形成したものは、上記のスパイダー状の疑似モールドと同様、筒状未加硫ゴム成型体を手で触ることができる。
【0019】
また、本発明は、筒状未加硫ゴム成型体を成型し、さらに、筒状未加硫ゴム成型体を予備成型した後、筒状未加硫ゴム成型体をダイヤフラムに加硫成形する空気ばね用ダイヤフラムの製造方法を提供する。具体的には、外部から筒状未加硫ゴム成型体を目視可能な成型用型を備えた予備成型装置を用いて筒状未加硫ゴム成型体を予備成型することにより、予備成型する際に筒状未加硫ゴム成型体に欠陥を生じていないことを確認する。
【0020】
この構成によれば、筒状未加硫ゴム成型体を目視しながら予備成型するので、加硫成形する前に、残存エアーや補強コード層の皺などの不具合の有無を容易に確認することができる。これにより、欠陥のない筒状未加硫ゴム成型体をダイヤフラムに加硫成形することができ、ダイヤフラムの製品精度を容易に高めることができる。
【0021】
なお、ブラダーへの蒸気の給入によって加温して残存エアーを膨らませることにより、エアーを逃がしやすくすると共に、残存エアーを見やすくして、その確認を容易にすることができる。また、予備成型装置で予備成型する際に予備加熱することにより、加硫成形における加硫時間を短縮することができる。
【0022】
また、本発明は、上記の製造方法とは別の空気ばね用ダイヤフラムの製造方法を提供する。具体的には、外部から筒状未加硫ゴム成型体を目視可能な成型用型を備えた予備成型装置を用いて予備成型条件設定用の筒状未加硫ゴム成型体を予備成型することにより、筒状未加硫ゴム成型体の予備成型条件を予め設定し、この予備成型条件に基づき、加硫成形用金型を用いて他の筒状未加硫ゴム成型体を予備成型する。
【0023】
この構成によれば、予備成型条件設定用の筒状未加硫ゴム成型体を目視しながら予備成型して、予備成型のシミュレーションをするので、予備成型条件の設定を容易かつ正確にすることができる。これにより、加硫成形用金型を用いて他の筒状未加硫ゴム成型体を予備成型する際に、適正に設定した予備成型条件を用いることができ、予備成型において不具合が生じるのを防止して、ダイヤフラムの製品精度を容易に高めることができる。
【0024】
ここで、予備成型条件としては、ブラダーの内圧や給気・排気、型締めのタイミングなどである。なお、予備成型装置の成型用型の動作を加硫金型の動作と同じにすることにより、加硫金型内で予備成型する際の予備成型条件を正確に設定することができる。
【0025】
また、本発明は、上記の製造方法で製造したダイヤフラムに金具を止着して空気ばねを製造する空気ばねの製造方法を提供する。この構成によれば、上記の空気ばね用ダイヤフラムの製造方法を採用することによる効果と同じ効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0026】
以上のとおり、本発明によると、成型用型の外部から筒状未加硫ゴム成型体を目視できるので、筒状未加硫ゴム成型体に不具合を生じていないことを確認しながら、予備成型あるいは予備成型のシミュレーションをすることができる。これにより、残存エアーや補強コード層の皺などの不具合を生じさせることなく、筒状未加硫ゴム成型体を予備成型し、あるいは、予備成型条件を適正な条件に設定することができ、空気ばね用ダイヤフラム及び空気ばねの製品精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る予備成型装置の断面図
【図2】成型用型の断面図
【図3】成型用型の平面図の上半分を示す図
【図4】予備成型時の成型用型の断面図
【図5】筒状未加硫ゴム成型体からダイヤフラムに至るまでの形状変化を示す図
【図6】予備成型時の成型用型の動作を示す図
【図7】別の形態の筒状未加硫ゴム成型体及びダイヤフラムを示す図で、(a)は筒状未加硫ゴム成型体の断面図、(b)はダイヤフラムの断面図
【図8】さらに別の形態の筒状未加硫ゴム成型体及びダイヤフラムを示す図で、(a)は筒状未加硫ゴム成型体の断面図、(b)はダイヤフラムの断面図
【図9】可動式の下側ビードクランプを備えた形態の成型用型の挟持状態を示す断面図
【図10】可動式の下側ビードクランプを備えた形態の成型用型の開放状態を示す断面図
【図11】可動式の下側ビードクランプを備えた別の形態の成型用型の断面図
【図12】従来の空気ばねの断面図
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係る予備成型装置、及び空気ばねの製造方法を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【0029】
図1〜図4に示すように、予備成型装置1は、例えば鉄道車両用空気ばねのダイヤフラム2に加硫成形される筒状未加硫ゴム成型体3を製品形状に近い形状に予備成型するためのものであり、フレーム4と、フレーム4に支持されて成型用型5を構成する上型6及び下型7と、上型6を上下動させる駆動部としてのシリンダ8と、型締め状態で成型用型5の内側に位置するブラダー9と、ブラダー9に給排気する給排気部10とを備えている。
【0030】
成型用型5は、上型6を上動させることにより、上型6と下型7とが離間され、上型6を下動させることにより、上型6と下型7とが接触して型締め状態とされる。この成型用型5は、スパイダー状の疑似モールドを構成し、内側のブラダー9との間に筒状未加硫ゴム成型体3を配置可能とされると共に、この筒状未加硫ゴム成型体3を成型用型5の外部から目視可能とされる。
【0031】
上型6は、成型用型5の中心軸を中心とする放射状に互いに間隔をあけて設けられた複数の上型プレート11と、上型プレート11の外端側に固定された上型リング12と、上型リング12よりも小径で上型プレート11の内端側に固定されたリング状の上側ビードクランプ13とからなる。この上型6は、上型リング12の内側に上側ビードクランプ13が位置し、上型リング12及び上側ビードクランプ13が水平で同心円状かつ同程度の高さとされる。
【0032】
上型プレート11は、例えば鋼製で上方に膨らんだ半円形の帯板状とされ、その板面を成型用型5の上下方向及び径方向と平行にして配置される。この上型プレート11は、内側縁が予備成型後の未加硫ゴム成型体3の断面形状に対応する形状に設定され、筒状未加硫ゴム成型体3を予備成型する際にその外面側を押えつつ、隣接する上型プレート11との間から筒状未加硫ゴム成型体3を目視可能とされる。
【0033】
上型リング12は、例えば鋼製で断面略長方形のリング状とされ、型締め状態で、下面側に形成された凸部が下型7の後述する下型リング19の凹部と噛み合って、上型6及び下型7の中心軸を合わせるようになっている。
【0034】
上側ビードクランプ13は、例えば鋼製のリング状とされ、上面側部分が外周側に突出して上型プレート11に固定されている。上側ビードクランプ13の下面側部分は、内周側に突出し、この下面側部分に上側ブラダーホルダー14を着脱自在にねじ止めして、上側ビードクランプ13の上面側部分と上側ビードホルダー14の外周部との間に筒状未加硫ゴム成型体3の小径側ビード部3aを挟持するようになっている。
【0035】
上側ブラダーホルダー14は、上側ビードクランプ13と同程度の外径のドーナツ板状のホルダー本体15と、ホルダー本体15と外周部との間にブラダー9の上端部を挟持する挟持板16とからなる。この上側ブラダーホルダー14は、ホルダー本体15が上側ビードクランプ13に着脱自在にねじ止めされ、挟持板16がホルダー本体15の中央穴に下面側から嵌って位置決めされつつ着脱自在にねじ止めされる。
【0036】
ホルダー本体15の上面側には、シリンダ8のピストンロッド17の先端が着脱自在にねじ止めされている。シリンダ8は、成型用型5の上方で、フレーム4に装着された例えば油圧シリンダとされ、上側ブラダーホルダー14を介して上型5を上下動させるようになっている。
【0037】
下型7は、上型プレート11と周方向の位置を合わせて設けられた複数の下型プレート18と、下型プレート18の上端側に固定された下型リング19と、下型プレート18の下端側に固定されたリング状の下側ビードクランプ20と、これらを支持する型基台21とからなる。この下型7は、下型リング19及び下側ビードクランプ20が水平に配されて、下型リング19の下方に下側ビードクランプ20が位置し、この下側ビードクランプ20が型基台21の上面外周部に着脱自在にねじ止めされている。
【0038】
下型プレート18は、例えば鋼製で鉛直方向に配された平板状とされ、その板面を成型用型5の上下方向及び径方向と平行にして配置される。この下型プレート18は、内側縁が予備成型後の未加硫ゴム成型体3の断面形状に対応する形状に設定され、筒状未加硫ゴム成型体3を予備成型する際にその外面側を押えつつ、隣接する下型プレート18との間から筒状未加硫ゴム成型体3を目視可能とされる。
【0039】
下側リング19は、例えば鋼製で断面略長方形のリング状とされ、型締め状態で、上面側に形成された凹部が上型6の上型リング12の凹部と噛み合って、上型6及び下型7の中心軸を合わせるようになっている。
【0040】
下側ビードクランプ20は、例えば鋼製のリング状とされて、下面側の内周部に凹部が形成されている。この凹部に筒状未加硫ゴム成型体3の大径側ビード部3bを配置しつつ、下側ビードクランプ20を型基台21の上面外周部にねじ止めすることにより、下側ビードクランプ20と型基台21との間に筒状未加硫ゴム成型体3の大径側ビード部3bを挟持するようになっている。下側ビードクランプ20は、上側ビードクランプ13よりも大径に設定されており、予備成型装置1が両端部の径の異なる筒状未加硫ゴム成型体3を予備成型する。
【0041】
型基台21は、フレーム4に載置されるベースプレート22と、ベースプレート22に立設された内筒部23と、内筒部23の上端から径方向外向きに突出する上面板24と、ベースプレート22、内筒部23及び上面板24で三方を囲まれた空間に設けられた複数枚の補強板25とからなり、上面板24の外周部に下側ビードクランプ20が着脱自在にねじ止めされる。
【0042】
型基台21の内筒部23の内側には、ブラダー9の下端部を保持するための下側ブラダーホルダー26が設けられている。下側ブラダーホルダー26は、円板の中央部を下向きに突出させた形状のホルダー本体27と、ホルダー本体27の外周部の下面側に着脱自在にねじ止めされる挟持リング28とからなり、ホルダー本体27と挟持リング28との間にブラダー9の下端部を挟持するようになっている。
【0043】
ホルダー本体27の中央部下面側には、ベースプレート22の中央穴29を貫通するようにして、ブラダー用シリンダ30のピストンロッド31の先端が接続されている。ブラダー用シリンダ30は、成型用型5の下方で、フレーム4に装着された例えば油圧シリンダとされ、下側ブラダーホルダー26を上下動させるようになっている。ベースプレート22の中央穴29は、挟持リング28の内径と同程度の大きさとされ、下側ブラダーホルダー26が下動して下限位置に達した際、挟持リング28が中央穴29の周縁部に接触して下側ブラダーホルダー26の下動を規制するようになっている。
【0044】
ブラダー9は、補強された筒状のゴム膜とされ、このブラダー9と上側ブラダーホルダー14と下側ブラダーホルダー26とで囲まれた空間にエアー及び蒸気を給入して、筒状未加硫ゴム成型体3を加温加圧して高精度に予備成型するようになっている。ブラダー9の内部に給入されるエアー及び蒸気は、ベースプレート22の中央穴29を通って下側ブラダーホルダー26に接続されたホース32を介して、フレーム4の外部に設けられた給排気部10から給入される。
【0045】
次に、上記の予備成型装置を用いて筒状未加硫ゴム成型体を予備成型する工程を有する空気ばねの製造方法を説明する。
【0046】
図5に示すように、まず、一端がフレア状に広がった円筒状の筒状未加硫ゴム成型体3を成型して(図5(a))、一旦、この筒状未加硫ゴム成型体3を小径側ビード部3aが下側に位置するように配置する(図5(b))。次いで、小径側ビード部3aが上側に位置するよう小径側ビード部3a及び大径側ビード部3bを相対的に移動させて筒状未加硫ゴム成型体3の表裏を予反転し、上側に位置する小径側ビード部3aから一旦上向きに突出して下側の大径側ビード部3bに向かうよう折り返された状態とする(図5(c))。
【0047】
上記の予備成型装置1を用いて、成型用型5の外部から筒状未加硫ゴム3を目視して筒状未加硫ゴム成型体3に欠陥を生じていないことを確認しつつ、筒状未加硫ゴム成型体3を製品形状に近い形状に予備成型する(図5(d))。この筒状未加硫ゴム成型体3を加硫成形して、上側の小径側ビード部2aと下側の大径側ビード部2bとの間が上向きかつ径方向外向きに膨出するダイヤフラム2を得る(図5(e))。
【0048】
その後、ダイヤフラム2に金具を止着すると共に、大径側ビード部2bが上側に位置するように上下方向を反転させて、両端部の径が異なる例えば鉄道車両用とされる空気ばねを得る。
【0049】
次に、筒状未加硫ゴム成型体を予備成型する手順をより詳しく説明する。まず、ブラダー用シリンダ30で下側ブラダーホルダー26を上動させて内筒部23から上方に露出させる。ホルダー本体27に挟持リング28をねじ止めして、ホルダー本体27と挟持リング28との間にブラダー9の下端部を挟持した後、ブラダー用シリンダ30で下側ブラダーホルダー26を下動させて内筒部23に収容する。
【0050】
上側ブラダーホルダー14のホルダー本体15に挟持板16をねじ止めして、ホルダー本体15と挟持板16との間にブラダー9の上端部を挟持し、さらに、ホルダー本体15にシリンダ8のピストンロッド17の先端をねじ止めする。
【0051】
型基台21の上面外周部に二つ割りの下型7の下側ビードクランプ20をねじ止めして、予めブラダー9の外側に配置しておいた筒状未加硫ゴム成型体3の大径側ビード部3bを挟持する。また、上側ブラダーホルダー14に二つ割りの上型6の上側ビードクランプ13をねじ止めして、筒状未加硫ゴム成型体3の小径側ビード部3aを挟持する。以上の手順により、上型6、下型7、ブラダー9及び筒状未加硫ゴム成型体3が装着される。
【0052】
次いで、図6(a)に示すように、シリンダ8で上型6と共に上側ブラダーホルダー14を所定位置まで上動させてブラダー9を伸ばし、給排気部10からブラダー9の内部に、例えば、常温又は30℃〜50℃程度に加温したエアーや、60℃〜80℃程度の蒸気を給入して、ブラダー9の内圧を0.001MPa〜0.1MPa程度に設定する。
【0053】
図6(b)に示すように、上型6を所望の移動量だけ下動させてブラダー9の上端部を押し下げた後、下動させた上型6を一旦上動させて、その上下動を適宜繰り返すと共に、ブラダー9への給排気を適宜繰り返して、筒状未加硫ゴム成型体3とブラダー9との間のエアーを排出する。
【0054】
さらに、上型6を一定の速度で、あるいは適宜速度を変化させつつ下動させて、ブラダー9の上端部を押し下げると共に、エアーや蒸気の給排気によってブラダー9の内圧を上型6の位置に応じて所望の内圧に設定する。この上型6を下動させる速度及びタイミングとブラダー9の内圧と給排気のタイミングとを調整することにより、筒状未加硫ゴム成型体3とブラダー9との間の残存エアーを排出すると共に、補強コード層の皺などの不具合が発生するのを防止する。
【0055】
上型6を下動させる速度及びタイミングとブラダー9の内圧と給排気のタイミングは、予備成型条件として記録しておき、別の筒状未加硫ゴム成型体3を予備成型する際に反映する。
【0056】
図6(c)に示すように、上型6を下動させて型締め状態とした後、さらにブラダー9に給気して、筒状未加硫ゴム成型体3を製品形状に近い形に予備成型する。なお、筒状未加硫ゴム成型体3は、成型用型5の上型プレート11及び下型プレート18によって外面の一部を押えられるが、加硫成形における程に強く加圧しないので、押えられる部位と他の部位とで過度の凹凸を生じさせることなく予備成型される。
【0057】
図6(a)〜図6(c)の各状態において、隣接する上型プレート11や下型プレート18の間から、成型用型5の内側の筒状未加硫ゴム成型体3の挙動を目視し、さらに、図6(c)の状態において、必要に応じて筒状未加硫ゴム成型体3を手で触る。この目視と手で触ることにより、残存エアーや補強コード層の皺などの欠陥がないことを確認すると共に、その様な欠陥が生じている場合には、その不良品を排除する。
【0058】
ブラダー9の内圧を所望の圧力に設定する手法としては、ブラダー9から排気しながら上型6を下動させると共に、上型6の位置に応じて適宜給排気してブラダー9の内圧を設定圧力に設定する手法を採用可能である。また、上記手法以外にも、上型6が初期位置、中間位置及び型締め位置のいずれか又は複数の位置にあるときに給排気して、ブラダー9の内圧を設定圧力に設定する手法や、上端部を押し下げてブラダー9の内圧が設定圧力以上になったときに排気することにより、上型6が初期位置から型締め位置に至るまで、ブラダー9を一定の内圧に設定する手法、なども採用可能である。
【0059】
また、ブラダー9に給入するエアーや蒸気などの気体は、上型6を途中まで下動させた時点や型締め後に、その種類を適宜切り替えるのがよい。ブラダー9の内部に蒸気を給入して筒状未加硫ゴム成型体3を例えば60℃〜80℃に加温することにより、予備成型をスムーズにすると共に、残存エアーを膨張させて、残存エアーの排除とその確認を容易にすることができる。
【0060】
ここで、ブラダー9の内圧の設定を具体的に例示する。まず、上型6が初期位置にある状態で(ストローク:0mm)、ブラダー9にエアーを給気して内圧を0.05MPaに設定した後、内圧を0.02MPaに減圧する。次いで、ブラダー9の内圧を0.02MPaに設定したまま、上型6を速度10mm/secで下動させ、型締め状態に至るまでの途中で(ストローク:300mm)、ブラダー9にエアーを給気して内圧を0.03MPaに設定する。さらに、ブラダー9の内圧を0.03MPaに設定したまま、上型6を速度5mm/secで下限まで下動させて型締めし(ストローク:500mm)、ブラダー9に蒸気を給気して内圧を0.08MPaに設定する。
【0061】
上記構成によれば、予備成型装置1を用いて予備成型する際、成型用型5の外部から筒状未加硫ゴム成型体3を目視することができ、さらに、手で触れることができる。これにより、筒状未加硫ゴム成型体3の挙動を確認しながら、上型6を下動させる速度、そのタイミング、ブラダー9の内圧、及び給排気のタイミングなどの予備成型条件を短時間で適切に設定することができる。しかも、残存エアーや補強コード層に生じた皺などの欠陥を生じた場合には、その不良品を加硫成形する前に排除することができる。
【0062】
また、成型用型5の外部から筒状未加硫ゴム成型体3の挙動を目視できるので、製品の寸法や、コード角度、厚さなどを安定させることができる。また、ブラダー9に蒸気を給気することにより、筒状未加硫ゴム成型体3を予備加熱することができ、本加硫時間の短縮を図ることができる。
【0063】
特に、未加硫状態での予反転工程を適宜組み合わせることにより、比較的に成型しやすい形状の筒状未加硫ゴム成型体3を製品形状に近い形状に予備成型するのをより容易にすることができる。これにより、鉄道車両用空気ばねのように、製品形状に近い形状では補強コード層の成型が困難であるような場合であっても、筒状未加硫ゴム成型体3の成型を容易にしつつ、加硫成形時の過度の変形による不具合を防止して品質の向上を図ることができる。
【0064】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内において、適宜変更を加えることができる。例えば、上記の予備成型装置1を用いて予備成型条件設定用の筒状未加硫ゴム3を予備成型することにより、上型6を下動させる速度、そのタイミング、ブラダー9の内圧、及び給排気のタイミングなどの予備成型条件を予め設定するようにしてもよい。この予備成型条件に基づき、加硫成形用金型を用いて他の筒状未加硫ゴム成型体3を精度よく予備成型することができる。
【0065】
この場合、予備成型装置1と加硫成形用金型とを同じ動作をするようにしておくことにより、予備成型装置1で設定した予備成型条件をそのまま加硫成形用金型による予備成型に用いることができる。なお、予備成型した予備成型条件設定用の筒状未加硫ゴム3は、そのまま加硫成形用金型にセットして加硫成型すればよい。
【0066】
予備成型装置1で予備成型する筒状未加硫ゴム成型体は、鉄道車両用空気ばねのダイヤフラム2に加硫成形するものに限らず、他の用途の製品に加硫成形するものであってもよい。また、予備成型する前に予反転する工程を設けることなく予備成型するものであってもよい。
【0067】
また、図7、図8に示すように、筒状未加硫ゴム成型体は、両端部の径が異なるものに限らず、両端部の径が同径の筒状未加硫ゴム成型体33、34を樽状のダイヤフラム35や略円錐台状のダイヤフラム36に予備成型するものであってもよい。
【0068】
また、図9、図10、図11に示すように、筒状未加硫ゴム成型体3の大径側ビード部3bを挟持するための構成として、リング状の下側ビードクランプ20を型基台21の上面外周部にねじ止めする代わりに、周方向に例えば2〜6分割して設けた下側ビードクランプ37を略径方向に移動させるようにしてもよい。
【0069】
図9、図10に示す成型用型38は、リンク機構39を介して、シリンダ40によって下側ビードクランプ37の分割体を略径方向に移動させるものであり、図10に示すように、下側ビードクランプ37を斜め上かつ径方向外向きに移動させて型基台41との間を開放するようになっている。この成型用型38は、型基台41の上面側に大径側ビード部3bを配置した後(図10参照)、下側ビードクランプ37を斜め下かつ径方向内向きに移動させることにより、型基台41との間に大径側ビード部3bを挟持するようになっている(図9参照)。
【0070】
また、図11に示す成型用型42は、図9、図10の成型用型38とほぼ同じ構成であるが、シリンダ40に代えて、レバー43を操作して手動によって下側ビードクランプ37を移動させるようにしている。
【0071】
また、上型プレート11及び下型プレート18を設けた成型用型5に代えて、網状の成型用型を採用することにより、外部から筒状未加硫ゴム成型体3を目視可能かつ手で触れることができるようにしてもよく、成型用型をガラスやアクリルなどの透視可能な素材から形成してもよい。また、上型6を上下動させるだけでなく、下型7を上下動させるようにしてもよく、上型6及び下型7の両方を上下動させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0072】
1 予備成型装置
2、35、36 ダイヤフラム
3、33、34 筒状未加硫ゴム成型体
5、38、42 成型用型
6 上型
7 下型
8 シリンダ(駆動部)
9 ブラダー
10 給排気部
11 上型プレート
12 上型リング
13 上側ビードクランプ
18 下型プレート
19 下型リング
20、37 下側ビードクランプ
21、41 型基台
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上型及び下型からなる成型用型と、上型及び/又は下型を上下動させる駆動部と、型締め状態で成型用型の内側に位置するブラダーと、該ブラダーに給排気する給排気部とを備え、前記成型用型とブラダーとの間に筒状未加硫ゴム成型体を配置可能とされ、前記成型用型は、前記筒状未加硫ゴム成型体を外部から目視可能とされたことを特徴とする予備成型装置。
【請求項2】
前記成型用型に、複数のプレートが互いに間隔をあけて放射状に設けられ、該プレートは、板面を成型用型の上下方向及び径方向と平行に設定され、前記プレートの内側縁が、予備成型後の筒状未加硫ゴム成型体の断面形状に対応する形状に設定されたことを特徴とする請求項1に記載の予備成型装置。
【請求項3】
筒状未加硫ゴム成型体を成型し、さらに、前記筒状未加硫ゴム成型体を予備成型した後、前記筒状未加硫ゴム成型体をダイヤフラムに加硫成形する空気ばね用ダイヤフラムの製造方法であって、
外部から筒状未加硫ゴム成型体を目視可能な成型用型を備えた予備成型装置を用いて前記筒状未加硫ゴム成型体を予備成型することにより、予備成型する際に前記筒状未加硫ゴム成型体に欠陥を生じていないことを確認することを特徴とする空気ばね用ダイヤフラムの製造方法。
【請求項4】
筒状未加硫ゴム成型体を成型し、さらに、前記筒状未加硫ゴム成型体を予備成型した後、前記筒状未加硫ゴム成型体をダイヤフラムに加硫成形する空気ばね用ダイヤフラムの製造方法であって、
外部から筒状未加硫ゴム成型体を目視可能な成型用型を備えた予備成型装置を用いて予備成型条件設定用の筒状未加硫ゴム成型体を予備成型することにより、筒状未加硫ゴム成型体の予備成型条件を予め設定し、該予備成型条件に基づき、加硫成形用金型を用いて他の筒状未加硫ゴム成型体を予備成型することを特徴とする空気ばね用ダイヤフラムの製造方法。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の製造方法で製造したダイヤフラムに金具を止着して空気ばねを製造することを特徴とする空気ばねの製造方法。
【請求項1】
上型及び下型からなる成型用型と、上型及び/又は下型を上下動させる駆動部と、型締め状態で成型用型の内側に位置するブラダーと、該ブラダーに給排気する給排気部とを備え、前記成型用型とブラダーとの間に筒状未加硫ゴム成型体を配置可能とされ、前記成型用型は、前記筒状未加硫ゴム成型体を外部から目視可能とされたことを特徴とする予備成型装置。
【請求項2】
前記成型用型に、複数のプレートが互いに間隔をあけて放射状に設けられ、該プレートは、板面を成型用型の上下方向及び径方向と平行に設定され、前記プレートの内側縁が、予備成型後の筒状未加硫ゴム成型体の断面形状に対応する形状に設定されたことを特徴とする請求項1に記載の予備成型装置。
【請求項3】
筒状未加硫ゴム成型体を成型し、さらに、前記筒状未加硫ゴム成型体を予備成型した後、前記筒状未加硫ゴム成型体をダイヤフラムに加硫成形する空気ばね用ダイヤフラムの製造方法であって、
外部から筒状未加硫ゴム成型体を目視可能な成型用型を備えた予備成型装置を用いて前記筒状未加硫ゴム成型体を予備成型することにより、予備成型する際に前記筒状未加硫ゴム成型体に欠陥を生じていないことを確認することを特徴とする空気ばね用ダイヤフラムの製造方法。
【請求項4】
筒状未加硫ゴム成型体を成型し、さらに、前記筒状未加硫ゴム成型体を予備成型した後、前記筒状未加硫ゴム成型体をダイヤフラムに加硫成形する空気ばね用ダイヤフラムの製造方法であって、
外部から筒状未加硫ゴム成型体を目視可能な成型用型を備えた予備成型装置を用いて予備成型条件設定用の筒状未加硫ゴム成型体を予備成型することにより、筒状未加硫ゴム成型体の予備成型条件を予め設定し、該予備成型条件に基づき、加硫成形用金型を用いて他の筒状未加硫ゴム成型体を予備成型することを特徴とする空気ばね用ダイヤフラムの製造方法。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の製造方法で製造したダイヤフラムに金具を止着して空気ばねを製造することを特徴とする空気ばねの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−16826(P2012−16826A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−153677(P2010−153677)
【出願日】平成22年7月6日(2010.7.6)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月6日(2010.7.6)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】
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