説明

二層型紫外線防御化粧料

【課題】優れた紫外線防御効果を有しながらも、べたつきやきしみがなく、使用後の肌柔軟効果、保湿感、エモリエント感に優れ、静置時には二層に分離し、使用時の再分散性及び保存安定性が良好な二層型紫外線防御化粧料を提供すること。
【構成】(a)リゾリン脂質 0.1〜10質量%、(b)油剤 1〜20質量%、(c)アセチル化ヒアルロン酸ナトリウム 0.001〜5質量%、(d)紫外線防御粉体 0.5〜10質量%(e)水を配合する二層型紫外線防御化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二層型紫外線防御化粧料に関し、更に詳しくは、特定量のリゾリン脂質、油剤、アセチル化ヒアルロン酸ナトリウム、紫外線防御粉体と水を含有することにより、優れた紫外線防御効果を有し、べたつきやきしみがなく、肌へのなじみが良好で、使用後の肌柔軟効果、保湿感、エモリエント感にも優れ、静置時には二層に分離する外観の審美性にも優れ、使用時の再分散性、並びに保存安定性の良好な二層型紫外線防御化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、日焼けを防止する化粧料として、紫外線吸収剤や微粒子酸化チタンや微粒子酸化亜鉛等の紫外線遮蔽効果を有する粉体を配合した紫外線防御化粧料が種々知られており、その機能故に、消費者にとっては、なくてはならない化粧料の1つであるが、より高い紫外線防御効果を期待し、紫外線吸収剤や紫外線遮蔽粉体を多く配合すると、塗布時の伸び広がりが重くなる、きしむ、べたつく等の使用感上の問題が生ずる場合があった。
また一方、化粧料の剤型の広がりの1つとして、使用前の静置時には二層で、使用時に軽く振盪して混ぜ合わせ、単一層として使用する二層型化粧料がある。二層型化粧料には、更に、二種の液体層からなるもの、液体層と粉体層からなるもの等色々なタイプのものがある。
液体層と粉体層からなる二層型化粧料の代表的なもので、水性の液体層と収斂効果を有する粉体層からなるカラミンローションは、使用時は水々しく、使用後はさらさらとした感触の仕上がりが好まれ、多数の商品が上市されている。しかしながら、このタイプの化粧料は、長期間静置すると、粉体が容器底面で固化し、振蘯しても再分散しないケ−キングと呼ばれる現象を起こし易い。これを防止する技術として、特定の水溶性高分子と粉体を含有する方法(例えば、特許文献1参照)、疎水性粉末と揮発性油分及び/又はエステル油を含有する方法(例えば、特許文献2参照)等の提案がなされているが、水溶性高分子を配合したものでは、後肌がべたつく場合があり、疎水性粉末を配合したものでは、使用時にきしみ感を感じる場合があった。
【0003】
更に、二種の液体層からなる二層型化粧料にもいくつかのタイプがあり、一方が油層、もう一方が水層で、使用時に軽く振蘯する事により乳化させて使用するものがある(例えば、特許文献3参照)。このタイプの二層型化粧料は、軽く振蘯するだけの単純混合により一時的に乳化させているために、短時間で元の二層状態に戻ってしまう。すなわち、使用時の乳化滴が不安定で、その粒径も大きく不均一なため、肌へのなじみが悪く、使用後の肌柔軟効果やエモリエント効果を十分に付与することはできなかった。
この為、片方の層が既に乳化された層で、もう一方が水層である二層型化粧料があるが、このタイプの検討はあまりなされておらず、満足なものは得られていない。例えば、特定の糖誘導体の塩を含有し、乳化層と水層とに分離させる方法(例えば、特許文献4参照。)が提案されているが、この方法では、紫外線防御効果を付与するために、親水性で粒径の小さい紫外線防御粉体を多量に配合すると、水層において粉体が凝集を起こし、十分な紫外線防御効果が期待できない。更に、粉体が大量に配合されるため、二層分離を促進させる目的として糖誘導の塩であるイオン性物質も多量に配合する必要がある。イオン性物質を多量に配合した場合、乳化層においては、電解質が乳化界面の合一を引き起こすため、乳化滴の破壊が生じ、十分な保存安定性を確保することが困難であった。
【0004】
【特許文献1】特開2002−249417号公報(第1−8頁)
【特許文献2】特開平7−267843号公報(第1−4頁)
【特許文献3】特開平4−112811号公報(第1−3頁)
【特許文献4】特開2003−137728号公報(第1−6頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、優れた紫外線防御効果を有しながらも、水々しく、べたつきやきしみのない良好な使用感で、使用後の肌柔軟効果、保湿感、エモリエント感に優れ、静置時には二層に分離し、使用時の再分散性及び保存安定性が良好な乳化層を含む二層型紫外線防御化粧料を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる実情に鑑み、本発明者は上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、特定量のリゾリン脂質と油剤とアセチル化ヒアルロン酸ナトリウムと紫外線防御粉体と、水を配合し、且つ、二層型の化粧料とすることにより、紫外線防御効果を有しながらも、べたつきやきしみがなく、使用後の肌柔軟効果、保湿感、エモリエント感に優れ、使用性、及び保存安定性が良好な使用感に優れ、静置時には、無色透明な水層の上層と、疎水化処理された紫外線防御粉体を内包した乳化層との二層に分離する外観の審美性に優れ、使用時の再分散性及び保存安定性が良好な二層型紫外線防御化粧料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、次の成分(a)〜(e);
(a)リゾリン脂質 0.1〜10質量%
(b)油剤 1〜20質量%
(c)アセチル化ヒアルロン酸ナトリウム 0.001〜5質量%
(d)紫外線防御粉体 0.5〜10質量%
(e)水
を配合することを特徴とする二層型紫外線防御化粧料を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の二層型紫外線防御化粧料は、紫外線防御効果を有しながらも、べたつきやきしみがなく、使用後の肌柔軟効果、保湿感、エモリエント感に優れ、使用性、及び保存安定性が良好な使用感に優れ、静置時の外観の審美性に優れ、使用時の再分散性及び保存安定性が良好である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の構成について説明する。
本発明に用いられる成分(a)のリゾリン脂質は、成分(b)の油剤を乳化するための乳化剤として配合されるものであり、等電点がpH3.0付近と、リゾ化処理されていないリン脂質に比較し低いものである。一般的に、リン脂質による乳化物は、イオン性物質の共存下において優れた保存安定性を示すことが知られているが、成分(a)のリゾリン脂質を用いた乳化物は、リゾ化処理を行うことにより、更に高濃度イオン性物質の共存下においても優れた保存安定性が得られる。
【0009】
本発明に用いられる成分(a)のリゾリン脂質は特に限定されないが、具体的に例示すれば、大豆由来リゾリン脂質、大豆由来水素添加リゾリン脂質、卵黄由来リゾリン脂質、卵黄由来水素添加リゾリン脂質が挙げられ、なかでも、保存安定性の観点から、大豆由来水素添加リゾリン脂質、卵黄由来水素添加リゾリン脂質が好ましく、更に、リゾ化率が60%以上であり、且つホスファジジルコリンの純度(以下、「PC純度」とする)が20%以上のものが好ましい。これらのリゾリン脂質は必要に応じて一種、又は二種以上用いることができる。
【0010】
本発明に用いられる成分(a)のリゾリン脂質の配合量は、0.1〜10質量%(以下、単に「%」とする)であり、より好ましくは1〜5%である。この配合量が0.1%未満の場合は、保存安定性を十分得ることができず、10%を超える場合には、べたつきを強く感じてしまい、好ましくない。
【0011】
本発明に用いられる成分(b)の油剤は、エモリエント感の付与と、使用後の肌柔軟効果を付与することを目的として配合されるものである。本発明に用いられる油剤は、特に限定されるものではないが、具体的には、動植物由来の油剤としては、アボガド油、アマニ油、アーモンド油、オリーブ油、キョウニン油、鯨ロウ、硬化油、小麦胚芽油、ゴマ油、コメ胚芽油、コメヌカ油、サフラワー油、シアバター、大豆油、トウモロコシ油、ヒマシ油、硬化ヒマシ油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、ミツロウ、ミンク油、綿実油、ヤシ油、硬化ヤシ油、ラノリン;炭化水素油として、スクワラン、スクワレン、流動パラフィン、プリスタン、ポリイソブチレン等;高級脂肪酸としては、ステアリン酸、ベヘン酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、イソステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸等;ステリン類としてはコレステロール、フィトステロール等;エステル油としては、イソステアリン酸イソセチル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、2−エチルヘキサン酸セチル、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、オクタン酸セチル、オレイン酸オレイル、オレイン酸オクチルドデシル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、コハク酸−2−エチルヘキシル、ステアリン酸イソセチル、ステアリン酸ブチル、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、ヒドロキシステアリン酸コレステリル、(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸−2−オクチルドデシルエステル、リンゴ酸ジイソステアリル等;グリセライド油としては、トリイソステアリン酸グリセライド、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセライド、モノステアリン酸グリセライド、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセライド等;シリコーン油としては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等の鎖状のものや、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等の環状のものを挙げる事ができる。
なかでも、エモリエント感の付与や使用後の肌柔軟効果を付与する効果の点から、アボガド油、オリーブ油、小麦胚芽油、ゴマ油、ホホバ油、マカデミアナッツ油等の植物性油、スクワラン、流動パラフィン等の炭化水素油、コレステロール、フィトステロール等のステリン類、ヒドロキシステアリン酸コレステリル等のエステル油、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリライド、トリオクタン酸グリセリル等のトリグリセライド類、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等のシリコーン油が好ましく、より好ましくは、アボガド油、オリーブ油、小麦胚芽油、ゴマ油、ホホバ油、マカデミアナッツ油等の植物性油、スクワラン、流動パラフィン等の炭化水素油、コレステロール、フィトステロール等のステリン類である。
また、本発明における紫外線防御効果を更に向上させるために、成分(b)の油剤として、メトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル、4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,4,6−トリアニリノ−p−(カルボ−2’−エチル−ヘキシル−1’−オキシ)−1,3,5−トリアジン、シア脂、カンゾウフラボノイド等の油溶性有機紫外線吸収剤を総油剤量に対し、1〜10%配合することが好ましい。これらの油剤は必要に応じて一種、又は二種以上用いることができる。
【0012】
本発明に用いられる成分(b)の油剤の配合量は、1〜20%であり、より好ましくは2〜10%である。この範囲であれば、べたつくことがなく、エモリエント感や使用後の肌柔軟効果を付与する効果に優れ、また、成分(b)中に油溶性有機紫外線吸収剤を含む場合は、より紫外線防御効果に優れたものが得られる。
【0013】
本発明に用いられる成分(c)のアセチル化ヒアルロン酸ナトリウムは、ヒアルロン酸ナトリウムをアセチル化したもので、疎水基であるアセチル基の導入により、親水性と疎水性の両方の性質を兼備するため、アセチル化されていないヒアルロン酸ナトリウムと比較して曳糸性が低下し、べたつきを低減させることができる。また、一部疎水面のある角質層表面との密着性が良好になり、肌へのなじみも向上させることができる。そして、ヒアルロン酸ナトリウムと比較して、肌を覆う遮蔽効果が向上し、肌に多くの水分を保持することが可能となり、保湿感、使用後の肌柔軟効果も向上する。更に、アセチル化ヒアルロン酸ナトリウムは、その高分子の作用として乳化層における乳化滴を軟凝集させることで乳化層と水層の二層への分離を促進させるだけではなく、イオン性物質としても作用し、その塩析効果によっても疎水性粉体を内包した乳化層と水層の二層に分離促進させ、再分散性、保存安定性を向上させる効果に優れるものである。
【0014】
本発明に用いられる成分(c)のアセチル化ヒアルロン酸ナトリウムは、ヒアルロン酸ナトリウムをアセチル化したものであれば、その製法や由来等は問わないが、平均分子量5000〜100万で、その最小構成単位であるグルクロン酸とN−アセチルグルコサミンの二糖中におけるN−アセチル基を除いた平均アセチル基置換数が2.0〜4.0のものが、保湿感と使用後の肌柔軟効果の付与、二層分離性及び再分散性、保存安定性上より好ましく、市販品としては、微生物による発酵法により得られたアセチル化ヒアルロン酸ナトリウム(資生堂ファインケミカル事業部)等がある。
【0015】
本発明に用いられる成分(c)のアセチル化ヒアルロン酸ナトリウム配合量は、0.001〜5%であり、より好ましくは0.01〜1%である。この配合量が0.001%未満では、保湿感や使用後の肌柔軟効果が十分ではなく、また、乳化層と水層の二層に分離させ、且つ再分散性を付与する効果も十分ではない。5%を超えるとべたつきを強く感じてしまい、好ましくない。
【0016】
本発明に用いられる成分(d)の紫外線防御粉体は、紫外線防御効果とべたつきのない感触を付与する目的で配合される。本発明に用いられる紫外線防御粉体は、紫外線防御効果の面から、平均粒径が10〜200nmのものが好ましいが、形状や粒子構造等は、特に限定はなく、球状、略球状、板状の何れのものでも用いることができ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化鉄等を、一種、又は二種以上用いることができる。更に、成分(d)の紫外線防御粉体は、乳化層の油相中に内包、分散させるために、通常公知の表面処理剤であるシリコーン類、フッ素化合物類、金属石鹸類、ロウ、界面活性剤、油脂、炭化水素等を通常公知の方法により表面処理して疎水化処理して用いる。これらの紫外線防御効果のある粉体を疎水化処理し、油剤中に均一分散させて、水を添加して乳化を行うことで、きしみ感や伸び広がりが重くなる等の使用性の防止や粉体の凝集による紫外線防御効果の低下を防ぐことができる。
【0017】
本発明に用いられる成分(d)の紫外線防御粉体は、分離時に乳化層の油相中に分散するので、成分(d)を含む乳化層は、水層との比重差により、下層となる。
【0018】
本発明に用いられる成分(d)の紫外線防御粉体の配合量は、0.5〜10%であり、より好ましくは2〜5%である。この範囲であれば、べたつきがなく、紫外線防御効果も十分で、また、粉特有のきしみを感じることもなく肌に馴染み、保湿感及びエモリエント感も十分感じられるものが得られる。
【0019】
本発明に用いられる成分(e)の水は、乳化層含む二層型紫外線防御化粧料を構成する上で必須の成分で、べたつきのなさ、保湿感の付与等に寄与する。
【0020】
本発明は上記特定量のリゾリン脂質と油剤とアセチル化ヒアルロン酸ナトリウムと紫外線防御粉体と、水とを組み合わせることにより、二層型紫外線防御化粧料とすることを可能とするものである。
即ち、紫外線防御効果のある粉体を疎水化処理し、油剤中に均一分散させて、水を添加することで乳化を行い、更には水溶性高分子であるアセチル化ヒアルロン酸ナトリウムを介してリゾリン脂質を含む乳化滴を軟凝集させることで、乳化滴の界面同士が接触する面積が小さくなり、合一が起りにくくなるのである。よって、長期間放置後(1年以上)も良好な再分散性と保存安定性を実現することが可能となる。これにより、一般に水性成分により得られるとされる保湿感と油性成分により得られるとされるエモリエント感という、相反する官能特性を有し、外観的にも二層という審美性に優れた特徴のある化粧料の実現を可能としたのである。つまり、意図的に二層型にし、振蘯した後の良好な使用感は、単一層の化粧料にはない使用感である。
【0021】
本発明の二層型紫外線防御化粧料には、上述した成分の他に、通常化粧料に用いられる成分として、上述以外のリン脂質も含めた乳化剤、紫外線防御粉体以外の粉体、アセチル化ヒアルロン酸ナトリウム以外の水溶性高分子、水溶性紫外線吸収剤、アルコール類、ポリオール類等の水性成分、酸化防止剤、香料、防腐剤、着色剤、美容剤等を本発明の効果を損なわない範囲にて配合することができる。
【0022】
本発明の二層型紫外線防御化粧料の用途は特に限定されず、例えば、化粧水、美容液、ボディローション、化粧下地、ファンデーション等が挙げられる。
【実施例】
【0023】
次に実施例を挙げて、本発明を更に説明するが、本発明はこれによって何ら限定されるものではない。
【0024】
実施例1〜14及び比較例1〜4:美容液
下記表1及び、表2に示す組成の美容液を下記製法により調製し、(1)外観、(2)きしみのなさ、(3)べたつきのなさ、(4)使用後の肌柔軟効果、(5)保湿感、(6)エモリエント感、(7)再分散性、(8)保存安定性、(9)紫外線防御効果の評価項目について、下記の方法により評価し、結果を併せて表1及び表2に示した。
【0025】
【表1】

【0026】
【表2】

【0027】
(製法)
A:成分(1)〜(7)を70℃で均一に混合する。
B:成分(13)の一部を70℃に加熱する。
C:AにBを添加し、乳化し、冷却する。
D:Cに成分(13)の一部で膨潤した成分(10)、及び成分(11)、(12)を添加し、混合する。
E:Dに成分(13)の残部で膨潤した成分(8)、(9)を添加、混合し美容液を得た。
【0028】
[評価方法:(1)外観]
実施例1〜14及び比較例1〜4の各美容液を室温にて1日静置し、外観を目視にて、下記の(イ)3段階判定基準に従って判定した。
(イ)3段階判定基準
(評 価) :(判定)
上層が無色透明な二層に分離 : ○
二層に分離するが上層が白濁 : △
二層に分離しなかった : ×
【0029】
[評価方法:(2)〜(6)の使用感]
化粧歴10年以上の女性20名をパネルに、実施例1〜14及び比較例1〜4の各美容液を使用してもらい、(2)きしみのなさ、(3)べたつきのなさ、(4)使用後の肌柔軟効果、(5)保湿感、(6)エモリエント感の各項目について、以下の(ニ)5段階評価基準にて官能評価し、更に全パネルの評点の平均値を(ホ)4段階判定基準を用いて判定した。
(ニ)5段階評価基準
(評 価) :(評点)
非常に良好 : 5点
良好 : 4点
普通 : 3点
不良 : 2点
非常に不良 : 1点
(ホ)4段階判定基準
(全パネルの評点の平均値) :(判定)
平均点4.5以上 : ◎
平均点3.5以上4.5未満: ○
平均点2.5以上3.5未満: △
平均点2.5未満 : ×
【0030】
[評価方法:(7)再分散性]
実施例1〜14及び比較例1〜4の各美容液を25℃の恒温槽で1ヶ月間保存し、1ヶ月静置後の各試料を10回振蘯した時の再分散性について以下の(ハ)3段階判定基準に従って判定した。
(ハ)3段階判定基準
(評 価) :(判定)
再分散し単一層になる : ○
一部再分散する : △
再分散しない : ×
【0031】
[評価方法:(8)保存安定性]
実施例1〜14及び比較例1〜4の各美容液を40℃恒温槽で1ヶ月間保存し、調製直後の状態を基準として、乳化滴の破壊による油浮きの状態を目視により、以下の(ロ)4段階判定基準に従って判定した。
(ロ)4段階判定基準
(評 価) :(判定)
変化なし : ◎
乳化滴の破壊は僅かにあるが、液層表面に油浮きは殆ど見られない: ○
液層表面にやや油浮きが見られる : △
液層表面に油浮きが見られる : ×
【0032】
[評価方法:(9)紫外線防御効果]
紫外線防御効果の評価方法は、日本化粧品工業連合会の定める「SPF測定法基準(1999年改訂版)」を基準とした以下の方法を用いて測定した。
<被験者の選定> 被験者は、下記の肌タイプ分類のA〜Fに該当する18才以上の健康な男女とした。ただし、問診を行ない、光線過敏症を有する人や、皮膚の光感受性に関与するような薬物(抗炎症剤、降圧剤など)を服用している人は除いた。
尚、肌タイプの分類は春から夏にかけて、30分から45分日光浴した後の皮膚反応に基づいて行った。
肌タイプ
A.非常に日焼け(赤くなる)しやすいが、決して黒くならない。
B.容易に日焼け(赤くなる)し、微かに黒くなる。
C.日焼け(赤くなる)した後、いつも黒くなる。
D.あまり日焼け(赤くなる)せず、すぐに黒くなる。
E.めったに日焼け(赤くなる)せず、非常に黒くなる。
F.決して日焼け(赤くなる)せず、非常に黒くなる。
<被験部位>
被験部位は、背部とし、その皮膚に色素沈着や母斑などがなくほぼ均一な皮膚色をしている部位を選択した。
<被験者数>
10名とした。
<試料塗布>
試料塗布量は2μL/cmとし、塗布面積は20cmとした。
<光源>
光源は、放射されるUVB領域の紫外線が、波長290〜320nmにおいて太陽光に近似した連続スペクトルである、キセノンアークソーラーシミュレーターを用いた。また、波長290nm以下の紫外線は、適切なフィルターを用いて可能な限り除去した。
<MED(最小紅斑量)>
MEDとは、照射後16〜24時間で、照射により、ほぼ全域に微かな紅斑が認められる最小の紫外線量をいい、MEDの判定は、照射終了時から16〜24時間後に充分明るい部屋で行った。
<SPFの算定方法と及び判定基準>
試料無塗布部、および試料塗布部で求められたMEDを用いて、次式に従いSPFを求めた。
SPF=試料塗布部のMED/試料無塗布部のMED
このようにして求めた各被験者のSPFを算術平均値し、以下の判定基準に従って、判定した。
判定基準
(SPFの算術平均値) :(判定)
10以上 : ○
5〜10未満 : △
5未満 : ×
【0033】
上記表1、表2の結果から明らかなように、本発明品である実施例1〜14の美容液は、比較例1〜4美容液に比較して、優れた紫外線防御効果を有し、べたつきやきしみがなく、使用後の肌柔軟効果、保湿感、エモリエント感に優れ、静置時には二層に分離し、使用時の再分散性及び保存安定性が良好な二層型の美容液であった。一方、リゾ化されていないリン脂質を配合した比較例1は、保存安定性に劣っていた。次に、油剤を配合していない比較例2は、エモリエント感に劣っていた。また、更に、微粒子酸化チタンを乳化層の油剤中に内包させなかった比較例3は、再分散性に劣っていた。更に、疎水基が導入されていないヒアルロン酸ナトリウムを配合した比較例4は、二層に分離しなかった。
【0034】
実施例15:化粧水
(成分) (%)
1.卵黄由来水素添加リゾリン脂質(注7) 0.1
2.グリセリン 0.5
3.1,3−ブチレングリコール 0.5
4.ジメチルポリシロキサン(6mPa・s) 0.5
5.パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル 1.5
6.シリコーン処理微粒子酸化亜鉛(注8) 2.5
7.アセチル化ヒアルロン酸ナトリウム(注9) 0.5
8.ヒドロキシエチルセルロース 0.02
9.エタノール 10
10.香料 適量
11.ゼニアオイエキス 0.1
12.精製水 残量
注7:リゾ化率68% PC純度30%
注8:16%シリコーン処理超微粒子酸化亜鉛ZnO350(住友大阪セメント社製 平均粒径30nm)
注9:平均分子量20万 アセチル基置換数3.0
【0035】
(製法)
A:成分(1)〜(6)を70℃で均一に混合する。
B:成分(12)の一部を70℃に加熱する。
C:AにBを添加し、乳化する。
D:Cを冷却する。
E:Dに成分(9)〜(11)を添加し、混合する。
F:Eに(12)の残部で膨潤した成分(7)、(8)を添加、混合し化粧水を得た。
【0036】
実施例15の化粧水は、優れた紫外線防御効果を有し、べたつきやきしみがなく、使用後の肌柔軟効果、保湿感、エモリエント感に優れ、静置時には二層に分離し、使用時の再分散性及び保存安定性が良好な二層型の化粧水であった。
【0037】
実施例16:ボディローション
(成分) (%)
1.大豆由来水素添加リゾリン脂質(注10) 0.3
2.グリセリン 1
3.1,3−ブチレングリコール 2
4.オリーブ油 1
5.パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル 2
6.シリコーン処理微粒子酸化チタン(注11) 2
7.アセチル化ヒアルロン酸ナトリウム(注12) 1
8.スクレロチウムガム 0.05
9.エタノール 10
10.香料 適量
11.l−メントール 0.02
12.精製水 残量
注10:リゾ化率88% PC純度80%
注11:20%シリコーン処理微粒子酸化チタンMT−100S(テイカ社製 平均粒径15nm)
注12:平均分子量5000 アセチル基置換数3.5
【0038】
(製法)
A:成分(1)〜(6)を70℃で均一に混合する。
B:成分(12)の一部を70℃に加熱する。
C:AにBを添加し、乳化する。
D:Cを冷却する。
E:Dに成分(9)〜(11)を添加し、混合する。
F:Eに(12)の残部で膨潤した成分(7)、(8)を添加、混合しボディローションを得た。
【0039】
実施例16のボディローションは、優れた紫外線防御効果を有し、べたつきやきしみがなく、使用後の肌柔軟効果、保湿感、エモリエント感に優れ、静置時には二層に分離し、使用時の再分散性及び保存安定性が良好な二層型のボディローションであった。
【0040】
実施例17:ファンデーション
(成分) (%)
1.大豆由来水素添加リゾリン脂質(注1) 1
2.フィトステロール 0.05
3.グリセリン 2
4.1,3−ブチレングリコール 3
5.スクワラン 1
6.パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル 2
7.シリコーン処理微粒子酸化チタン(注3) 3
8.デカメチルシクロペンタシロキサン 1
9.セタノール 0.5
10.酸化チタン 4
11.タルク 1
12.ベンガラ 0.1
13.黄酸化鉄 0.7
14.黒酸化鉄 0.02
15.κ−カラギーナン 0.05
16.塩化カルシウム 0.2
17.アセチル化ヒアルロン酸ナトリウム(注4) 1
18.エタノール 10
19.精製水 残量
【0041】
(製法)
A:成分(1)〜(3)、(4)の一部、(5)〜(9)を70℃で均一に混合する。
B:成分(19)の一部を70℃に加熱する。
C:AにBを添加し、乳化する。
D:Cを冷却する。
E:成分(4)の残部と成分(10)〜(14)をローラーで混合する。
F:DにEと、成分(19)の一部に膨潤した成分(15)、及び成分(18)を添加し、混合する。
G:Fに成分(16)、及び成分(19)の残部で膨潤した成分(17)を添加、混合しファンデーションを得た。
【0042】
実施例17のファンデーションは、優れた紫外線防御効果を有し、べたつきやきしみがなく、使用後の肌柔軟効果、保湿感、エモリエント感に優れ、静置時には二層に分離し、使用時の再分散性及び保存安定性が良好な二層型のファンデーションであった。
【0043】
実施例18:化粧下地
(成分) (%)
1.大豆由来水素添加リゾリン脂質(注13) 1
2.グリセリン 3
3.1,3−ブチレングリコール 1
4.デカメチルシクロペンタシロキサン 2
5.パラメトキシケイ皮酸−2−エチルヘキシル 3
6.流動パラフィン 2
7.シリコーン処理微粒子酸化亜鉛(注8) 3
8.アセチル化ヒアルロン酸ナトリウム(注14) 0.5
9.2−フェニルベンズイミダゾール−5−スルホン酸 3
10.エタノール 10
11.精製水 残量
注13:リゾ化率90% PC純度70%
注14:平均分子量40万 アセチル置換数3.2
【0044】
(製法)
A:成分(1)〜(7)を70℃で均一に混合する。
B:成分(11)の一部を70℃に加熱する。
C:AにBを添加し、乳化する。
D:Cを冷却する。
E:Dに成分(11)の一部で溶解した成分(9)及び成分(10)を添加し、混合する。
F:Eに成分(11)の残部で膨潤した成分(8)を添加、混合し化粧下地を得た。
【0045】
実施例18の化粧下地は、優れた紫外線防御効果を有しながらも、べたつきやきしみがなく、使用後の肌柔軟効果、保湿感、エモリエント感に優れ、静置時には二層に分離し、使用時の再分散性及び保存安定性が良好な二層型の化粧下地であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(a)〜(e);
(a)リゾリン脂質 0.1〜10質量%
(b)油剤 1〜20質量%
(c)アセチル化ヒアルロン酸ナトリウム 0.001〜5質量%
(d)紫外線防御粉体 0.5〜10質量%
(e)水
を配合することを特徴とする二層型紫外線防御化粧料。
【請求項2】
成分(b)中に、油溶性有機紫外線吸収剤を総油剤量の1〜10質量%配合することを特徴とする請求項1記載の二層型紫外線防御化粧料。
【請求項3】
成分(c)が、平均分子量5000〜100万で、その最小構成単位であるグルクロン酸とN−アセチルグルコサミンの二糖中におけるN−アセチル基を除いた平均アセチル基置換数が、2.0〜4.0であることを特徴とする請求項1又は2記載の二層型紫外線防御化粧料。
【請求項4】
成分(d)の平均粒径が、10〜200nmであり、疎水化処理された粉体が内包された乳化物を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかの項記載の二層型紫外線防御化粧料。
【請求項5】
静置時、上層が無色透明な水層で、下層は粉体が内包された乳化層であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかの項記載の二層型紫外線防御化粧料。

【公開番号】特開2006−306842(P2006−306842A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−84335(P2006−84335)
【出願日】平成18年3月25日(2006.3.25)
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)
【Fターム(参考)】