説明

二層材塗布用ノズル及び多層材塗布用ノズル並びに二層材の塗布方法及び多層材の塗布方法

【課題】二層材塗布用ノズルにおいて、安定して一定の幅及び厚さで密着性良く上層材及び下層材を塗布でき、上層材と下層材との間に空気を巻き込まないこと。
【解決手段】二層材塗布用ノズル1においては、ノズル本体2の一方の側面と下層材カバー3との間に下層材スペーサー3Bを挟み込むことによって、二層材塗布用ノズル1の下端近傍に所定の開口幅及び所定の開口厚さを有する下層材スリット3Aが設けられ、ノズル本体2の他方の側面と上層材カバー4との間に上層材スペーサー4Bを挟み込むことによって、二層材塗布用ノズル1の下端近傍に所定の開口幅及び所定の開口厚さを有する上層材スリット4Aが設けられる。そして、下層材スリット3Aからは下層材Pdが、上層材スリット4Aからは上層材Puが、間に空気を巻き込むことなく、互いに密着した状態で押し出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柔軟性を有する下層部と剛性を有する上層部とからなる補強性と制振性と耐歪み性に優れた二層型鋼板補強材を始めとする二層型塗布材を効率的に塗布するための二層材塗布用ノズル、及び二層型塗布材にさらに中間層が加わった多層型塗布材を効率的に塗布するための多層材塗布用ノズル、並びに二層材の塗布方法及び多層材の塗布方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、乗用車等の車両の車体パネルは、燃費向上のための車両軽量化及び対人保護を目的として薄くなる傾向にあり、車体パネルの板厚が薄くなるにしたがって車体パネルの張り剛性や耐デント性が低下する。これに対して、従来は車体パネルの裏側にパネル補強材と称される熱硬化型のエポキシ樹脂製のシートを貼付け施工し、乾燥炉で加熱硬化させて補強していた。しかし、かかるシート状の補強材は人手で施工されており、自動化の障害になり工程時間の短縮を阻害するという問題を有していた。そこで、特許文献1に示されるように、ロボットによる自動化の可能な塗装式の鋼板補強材が開発されている。
【0003】
特許文献1に示される発明においては、二層の塗布材からなり、中間層は1液熱硬化型エポキシ・ウレタン塗料であり、拘束層は1液熱硬化型エポキシ塗料であって、1液熱硬化型エポキシ・ウレタン塗料は加熱により発泡する塗料である塗布型鋼板補強材を用いることによって、必要な部位へ必要量の補強材の施工を可能にするとともに、施工を塗装ロボットや自動塗装機で行うことができ、加熱硬化時の補強材の収縮による鋼板の歪みを防止でき、さらなる鋼板補強効果が得られるとしている。
【0004】
このような塗布材を自動的に塗布するための塗布用ノズルとしては、例えば、特許文献2に示される本発明者の発明にかかる塗布ノズル等がある。この塗布ノズルにおいては、内部空間に溜まった塗料がスリット状の間隔を有する扇台形状のノズル通路より吐き出され、幅を広げつつフィルム状に吐き出される。これによって、幅広く一定厚さのフィルム状塗膜が容易に形成される。
【0005】
このような塗布用ノズルを用いて、上述した特許文献1に示されるような二層の塗布材を塗布する方法について、図16及び図17を参照して説明する。図16(a)〜(g)は従来例1にかかる二層の塗布材の塗布方法を示す説明図である。図17(a)〜(f)は従来例2にかかる二層の塗布材の塗布方法を示す説明図である。
【0006】
図16(a)に示されるように、従来例1にかかる塗布方法においては、下層材Pdを押し出す塗布ノズル50Aと上層材Puを押し出す塗布ノズル50Bとを、塗布する基材表面Gに移動方向に塗布ノズル50A,50Bのスリットが直角になるように接近させて、まず塗布ノズル50Aの下端のスリットから下層材Pdを押し出しながら、図16(b),(c)に示されるように塗布ノズル50A,50Bを移動させ、所定範囲まで塗布したら、図16(d)に示されるように、塗布ノズル50Aからの下層材Pdの押し出しを停止して、次に塗布する上層材Puの厚さ分だけ塗布ノズル50A,50Bを上昇させる。
【0007】
そして、図16(e)に示されるように、所定位置まで塗布ノズル50A,50Bを移動させ、塗布ノズル50Bの下端のスリットから上層材Puを押し出しながら、図16(f),(g)に示されるように塗布ノズル50A,50Bを移動させ、所定範囲まで塗布する。しかし、このような従来例1にかかる塗布方法では、塗布ノズル50A,50Bを所定の塗布範囲に亘って往復移動させる必要があり、二層の塗布材の塗布工程に時間が掛かるという問題がある。
【0008】
そこで、図17(a)に示されるように、従来例2にかかる塗布方法においては、下層材Pdを押し出す塗布ノズル52Aと上層材Puを押し出す塗布ノズル52Bとを、下端のスリット高さに段差を付けて設置し、まず図17(b)に示されるように塗布ノズル52Aから下層材Pdを押し出しながら移動し、続く塗布ノズル52Bを上層材Puの厚さ分だけ塗布ノズル50Aより高くした状態で、図17(c),(d)に示されるように塗布ノズル52Bから上層材Puを押し出しながら移動する。
【0009】
そして、所定範囲まで塗布したら、まず塗布ノズル52Aからの下層材Pdの押し出しを停止し、次に図17(e)に示されるように、塗布ノズル52Bからの上層材Puの押し出しを停止する。このようにして、図17(f)に示されるように、従来例1に比較して約半分の時間で二層の塗布材を基材表面Gに塗布することができる。
【特許文献1】特開2001−162222号公報
【特許文献2】特開平11−179243号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記特許文献2にかかる塗布ノズルを用いた場合には、圧力によって上層材Pu及び下層材Pdの押し出される幅(図16及び図17において紙面に垂直な方向の長さ)が変化するため、安定して一定の幅で塗布することが困難であり、また気泡を巻き込んで塗装表面にシワが発生し基材表面Gとの間に空気が存在することとなるため、基材表面Gとの密着性が悪く、防錆性に問題が生ずる。さらに、上記従来例2の塗布方法においては、下層材Pdと上層材Puの間にも空気が巻き込まれるため、加熱焼付けの際に膨れを生じてしまうという問題点があった。
【0011】
そこで、本発明は、安定して一定の幅及び厚さで密着性良く上層材及び下層材を塗布することができるとともに、上層材と下層材との間に空気を巻き込むことがなく、加熱焼付けの際に膨れを生じることがない二層材塗布用ノズル、及び安定して一定の幅及び厚さで密着性良く上層材、中間層材及び下層材を塗布することができるとともに、これらの塗布材料の間に空気を巻き込むことがなく、加熱焼付けの際に膨れを生じることがない多層材塗布用ノズル、並びに二層材の塗布方法及び多層材の塗布方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1の発明にかかる二層材塗布用ノズルは、基材表面に塗布される下層材と該下層材の上に塗布される上層材とからなる二層型塗布材を効率的に塗布するための二層材塗布用ノズルであって、前記下層材が注入される下層材注入口と、前記上層材が注入される上層材注入口と、前記下層材注入口に連通している所定の幅を有する下層材溜りと、前記上層材注入口に連通している所定の幅を有する上層材溜りと、前記下層材溜りに連通しており前記下層材が所定の厚さと前記下層材溜りの所定の幅または該所定の幅より狭い幅で押し出される下層材スリットと、前記上層材溜りに連通しており前記上層材が所定の厚さと前記上層材溜りの所定の幅または該所定の幅より狭い幅で押し出される上層材スリットとを具備し、前記下層材スリットの先端と前記上層材スリットの先端とは前記二層材塗布用ノズルのノズル口または該ノズル口から内部に入った位置に近接して設けられ、前記下層材スリットから押し出される前記下層材と前記上層材スリットから押し出される前記上層材とが密着した状態で前記ノズル口から押し出されるものである。
【0013】
ここで、下層材溜りについての「所定の幅」と上層材溜りについての「所定の幅」とは、必ずしも同一の幅を意味するものではない。同様に、下層材スリットについての「所定の厚さ」と上層材スリットについての「所定の厚さ」とは、必ずしも同一の厚さを意味するものではない。
【0014】
請求項2の発明にかかる二層材塗布用ノズルは、請求項1の構成において、前記下層材注入口と前記上層材注入口が上面に、前記下層材溜りが一方の側面に、前記上層材溜りが他方の側面に設けられたノズル本体と、前記下層材スリットの所定の厚さに相当する厚さを有する下層材スペーサーと、前記上層材スリットの所定の厚さに相当する厚さを有する上層材スペーサーと、下層材カバーと上層材カバーとを具備し、前記ノズル本体の一方の側面に前記下層材スペーサーを挟んで前記下層材カバーが着脱可能に取付けられ、前記ノズル本体の他方の側面に前記上層材スペーサーを挟んで前記上層材カバーが着脱可能に取付けられてなるものである。
【0015】
請求項3の発明にかかる二層材塗布用ノズルは、請求項1または請求項2の構成において、前記下層材注入口と前記下層材溜りの間には前記下層材溜りの幅以下の幅を有する下層材溝部が設けられており、前記下層材溝部と前記下層材溜りとの間は複数の通路で連通しており、前記上層材注入口と前記上層材溜りの間には前記上層材溜りの幅以下の幅を有する上層材溝部が設けられており、前記上層材溝部と前記上層材溜りとの間は複数の通路で連通しているものである。
【0016】
請求項4の発明にかかる二層材の塗布方法は、基材表面に塗布される下層材と該下層材の上に塗布される上層材とからなる二層型塗布材を効率的に塗布するための二層材の塗布方法であって、前記下層材を圧力を掛けて所定の幅及び所定の厚さの開口を有するスリットを通して押し出す工程と、前記上層材を外部への押し出し口でまたは該外部への押し出し口の手前で前記下層材の上面に密着させながら圧力を掛けて所定の幅及び所定の厚さの開口を有するスリットを通して押し出す工程と、前記密着した下層材及び上層材を前記外部への押し出し口から押し出しながら前記下層材の下面を前記基材表面に密着させる工程とを具備するものである。
【0017】
ここで、下層材についての「所定の幅」及び「所定の厚さ」と上層材についての「所定の幅」及び「所定の厚さ」とは必ずしも同一の幅または同一の厚さを意味するものではない。
【0018】
請求項5の発明にかかる多層材塗布用ノズルは、基材表面に塗布される下層材と該下層材の上に塗布される1または2以上の中間層材と該中間層材の上に塗布される上層材とからなる三層以上の多層型塗布材を効率的に塗布するための多層材塗布用ノズルであって、前記下層材が注入される下層材注入口と、前記1または2以上の中間層材が注入される1または2以上の中間層材注入口と、前記上層材が注入される上層材注入口と、前記下層材注入口に連通している所定の幅を有する下層材溜りと、前記1または2以上の中間層材注入口にそれぞれ連通している所定の幅を有する1または2以上の中間層材溜りと、前記上層材注入口に連通している所定の幅を有する上層材溜りと、前記下層材溜りに連通しており前記下層材が前記所定の幅または該所定の幅より狭い幅と所定の厚さで押し出される下層材スリットと、前記1または2以上の中間層材溜りにそれぞれ連通しており前記1または2以上の中間層材がそれぞれ前記所定の幅または該所定の幅より狭い幅と所定の厚さで押し出される1または2以上の中間層材スリットと、前記上層材溜りに連通しており前記上層材が前記所定の幅または該所定の幅より狭い幅と所定の厚さで押し出される上層材スリットとを具備し、前記下層材スリットの先端と前記1または2以上の中間層材スリットの先端と前記上層材スリットの先端とは前記多層材塗布用ノズルのノズル口または該ノズル口から内部に入った位置に近接して設けられ、前記下層材スリットから押し出される前記下層材と前記1または2以上の中間層材スリットから押し出される前記1または2以上の中間層材と前記上層材スリットから押し出される前記上層材とが密着した状態で前記ノズル口から押し出されるものである。
【0019】
ここで、下層材溜りについての「所定の幅」と中間層材溜りについての「所定の幅」と上層材溜りについての「所定の幅」とは、必ずしも同一の幅を意味するものではない。同様に、下層材スリットについての「所定の厚さ」と中間層材スリットについての「所定の厚さ」と上層材スリットについての「所定の厚さ」とは、必ずしも同一の厚さを意味するものではない。
【0020】
請求項6の発明にかかる多層材塗布用ノズルは、請求項5の構成において、前記中間層材スリットと平行な方向に前記中間層材の層の数に1を加えた数に分割され、前記下層材注入口と前記1または2以上の中間層材注入口と前記上層材注入口が上面に、前記下層材溜りが一方の側面に、前記上層材溜りが他方の側面に、前記1または2以上の中間層材溜りが1または2以上の分割面の一方に、それぞれ設けられたノズル本体と、前記下層材スリットの所定の厚さに相当する厚さを有する下層材スペーサーと、前記1または2以上の中間層材スリットの所定の厚さに相当する厚さを有する1または2以上の中間層材スペーサーと、前記上層材スリットの所定の厚さに相当する厚さを有する上層材スペーサーと、下層材カバーと上層材カバーとを具備し、前記分割されたノズル本体の1または2以上の分割面に前記1または2以上の中間層材スペーサーを挟んで前記ノズル本体が分割可能に組み付けられ、前記ノズル本体の一方の側面に前記下層材スペーサーを挟んで前記下層材カバーが着脱可能に取付けられ、前記ノズル本体の他方の側面に前記上層材スペーサーを挟んで前記上層材カバーが着脱可能に取付けられてなるものである。
【0021】
請求項7の発明にかかる多層材塗布用ノズルは、請求項5または請求項6の構成において、前記下層材注入口と前記下層材溜りの間には前記下層材溜りの幅以下の幅を有する下層材溝部が設けられており、前記下層材溝部と前記下層材溜りとの間は複数の通路で連通しており、前記1または2以上の中間層材注入口と前記1または2以上の中間層材溜りの間にはそれぞれ前記中間層材溜りの幅以下の幅を有する中間層材溝部が設けられており、前記中間層材溝部と前記中間層材溜りとの間は複数の通路で連通しており、前記上層材注入口と前記上層材溜りの間には前記上層材溜りの幅以下の幅を有する上層材溝部が設けられており、前記上層材溝部と前記上層材溜りとの間は複数の通路で連通しているものである。
【0022】
請求項8の発明にかかる二層材塗布用ノズルまたは多層材塗布用ノズルは、請求項1乃至請求項3または請求項5乃至請求項7のいずれか1つの構成において、前記基材表面の塗布方向に垂直な湾曲形状に沿って前記ノズル本体の先端を始めとする先端部分が長手方向(幅方向)に湾曲しているものである。
【0023】
請求項9の発明にかかる多層材の塗布方法は、基材表面に塗布される下層材と該下層材の上に塗布される1または2以上の中間層材と該中間層材の上に塗布される上層材とからなる三層以上の多層型塗布材を効率的に塗布するための多層材の塗布方法であって、前記下層材を圧力を掛けて所定の幅及び所定の厚さの開口を有するスリットを通して押し出す工程と、前記1または2以上の中間層材を外部への押し出し口でまたは該外部への押し出し口の手前で前記下層材の上面に密着させながら圧力を掛けて所定の幅及び所定の厚さの開口を有するスリットを通して押し出す工程と、前記上層材を前記外部への押し出し口でまたは外部への前記押し出し口の手前で前記1または2以上の中間層材の上面に密着させながら圧力を掛けて所定の幅及び所定の厚さの開口を有するスリットを通して押し出す工程と、前記密着した下層材、1または2以上の中間層材及び上層材を前記外部への押し出し口から押し出しながら前記下層材の下面を前記基材表面に密着させる工程とを具備するものである。
【0024】
ここで、下層材についての「所定の幅」及び「所定の厚さ」と、1または2以上の中間層材についての「所定の幅」及び「所定の厚さ」と、上層材についての「所定の幅」及び「所定の厚さ」とは、必ずしも同一の幅または同一の厚さを意味するものではない。
【発明の効果】
【0025】
請求項1の発明にかかる二層材塗布用ノズルは、下層材が注入される下層材注入口と、上層材が注入される上層材注入口と、下層材注入口に連通している所定の幅を有する下層材溜りと、上層材注入口に連通している所定の幅を有する上層材溜りと、下層材溜りに連通しており下層材が所定の厚さと下層材溜りの所定の幅または該所定の幅より狭い幅で押し出される下層材スリットと、上層材溜りに連通しており上層材が所定の厚さと上層材溜りの所定の幅または該所定の幅より狭い幅で押し出される上層材スリットとを具備し、下層材スリットの先端と上層材スリットの先端とは二層材塗布用ノズルのノズル口またはノズル口から内部に入った位置に近接して設けられ、下層材スリットから押し出される下層材と前記上層材スリットから押し出される上層材とが密着した状態でノズル口から押し出される。
【0026】
このような構造を有することによって、本発明にかかる二層材塗布用ノズルにおいては、下層材注入口に注入された下層材が一旦下層材溜りにおいて所定の幅に拡げられ、その後下層材溜りと同じ幅以下の幅を有する下層材スリットから押し出されるため、下層材注入口における注入圧力が変動しても、常に所定の幅及び所定の厚さで安定して塗布される。この点については、上層材についても全く同様である。そして、下層材スリットの先端と上層材スリットの先端とがノズル口またはノズル口から内部に入った位置に近接して設けられており、下層材と上層材とが密着した状態でノズル口から押し出されるために、下層材と上層材との間に空気が巻き込まれることがない。したがって、塗布工程の後に加熱焼付け工程がある場合でも、膨れを生ずることがない。
【0027】
このようにして、安定して一定の幅及び厚さで密着性良く上層材及び下層材を塗布することができるとともに、上層材と下層材との間に空気を巻き込むことがなく、加熱焼付けの際に膨れを生じることがない二層材塗布用ノズルとなる。
【0028】
請求項2の発明にかかる二層材塗布用ノズルは、下層材注入口と上層材注入口が上面に、下層材溜りが一方の側面に、上層材溜りが他方の側面に設けられたノズル本体と、下層材スリットの所定の厚さに相当する厚さを有する下層材スペーサーと、上層材スリットの所定の厚さに相当する厚さを有する上層材スペーサーと、下層材カバーと上層材カバーとを具備し、ノズル本体の一方の側面に下層材スペーサーを挟んで下層材カバーが着脱可能に取付けられ、ノズル本体の他方の側面に上層材スペーサーを挟んで上層材カバーが着脱可能に取付けられてなる。
【0029】
ここで、上述の如く、下層材スリットの先端と上層材スリットの先端とは近接して設けられているのであるから、ノズル本体は一方の側面と他方の側面とが先端に行くにしたがって接近するテーパ形状を有している。また、下層材カバーと上層材カバーとを着脱可能に取付ける方法としては、複数本のねじによるねじ止めや複数本のボルトによるボルト締め固定、等がある。
【0030】
このように下層材カバーと上層材カバーとが着脱可能に取付けられることによって、二層材塗布用ノズル内の下層材または上層材の通路に異物が混入して塗布パターンに乱れが生じた場合には、下層材カバーまたは上層材カバーを取外すことによって容易に異物を除去することができ、メンテナンスが容易であり、安定した塗布パターンを確保することができる。
【0031】
このようにして、安定して一定の幅及び厚さで密着性良く上層材及び下層材を塗布することができ、上層材と下層材との間に空気を巻き込むことがなく、加熱焼付けの際に膨れを生じることがないだけでなく、メンテナンスも容易な二層材塗布用ノズルとなる。
【0032】
請求項3の発明にかかる二層材塗布用ノズルは、下層材注入口と下層材溜りの間には下層材溜りの幅以下の幅を有する下層材溝部が設けられており、下層材溝部と下層材溜りとの間は複数の通路で連通しており、上層材注入口と上層材溜りの間には上層材溜りの幅以下の幅を有する上層材溝部が設けられており、上層材溝部と上層材溜りとの間は複数の通路で連通している。
【0033】
これによって、下層材注入口及び上層材注入口から圧入された下層材及び上層材は、それぞれ一旦幅を有する下層材溝部及び上層材溝部に流れ込んで、そこからそれぞれ複数の通路を通過して下層材溜り及び上層材溜りに流れ込むため、流れが整えられるとともに圧力が均一になり、下層材溜り及び上層材溜りと同一の幅以下の幅を有する下層材スリットの先端及び上層材スリットの先端から、常に均一な幅及び厚さで押し出される。
【0034】
このようにして、安定して一定の幅及び厚さで密着性良く上層材及び下層材を塗布することができ、上層材と下層材との間に空気を巻き込むことがなく、加熱焼付けの際に膨れを生じることがない二層材塗布用ノズルとなる。
【0035】
請求項4の発明にかかる二層材の塗布方法は、下層材を圧力を掛けて所定の幅及び所定の厚さの開口を有するスリットを通して押し出す工程と、上層材を外部への押し出し口でまたは外部への押し出し口の手前で下層材の上面に密着させながら圧力を掛けて所定の幅及び所定の厚さの開口を有するスリットを通して押し出す工程と、密着した下層材及び上層材を外部への押し出し口から押し出しながら下層材の下面を基材表面に密着させる工程とを具備する。
【0036】
これによって、上層材は外部への押し出し口において、またはその手前で下層材の上面に密着するため下層材と上層材との間に空気が巻き込まれることがない。そして、下層材も上層材もそれぞれ所定の幅及び所定の厚さの開口を有するスリットを通して圧力を掛けて押し出されるため、それぞれ所定の幅及び所定の厚さでスリットから押し出され、安定した幅及び厚さで押し出される。さらに、下層材の下面を基材表面に密着させることによって、基材表面との間にも空気が巻き込まれることはない。
【0037】
このようにして、安定して一定の幅及び厚さで密着性良く上層材及び下層材を塗布することができ、上層材と下層材との間に空気を巻き込むことがなく、加熱焼付けの際に膨れを生じることがない二層材の塗布方法となる。
【0038】
請求項5の発明にかかる多層材塗布用ノズルは、下層材が注入される下層材注入口と、1または2以上の中間層材が注入される1または2以上の中間層材注入口と、上層材が注入される上層材注入口と、下層材注入口に連通している所定の幅を有する下層材溜りと、1または2以上の中間層材注入口にそれぞれ連通している所定の幅を有する1または2以上の中間層材溜りと、上層材注入口に連通している所定の幅を有する上層材溜りと、下層材溜りに連通しており下層材が所定の幅または該所定の幅より狭い幅と所定の厚さで押し出される下層材スリットと、1または2以上の中間層材溜りにそれぞれ連通しており1または2以上の中間層材がそれぞれ所定の幅または該所定の幅より狭い幅と所定の厚さで押し出される1または2以上の中間層材スリットと、上層材溜りに連通しており上層材が所定の幅または該所定の幅より狭い幅と所定の厚さで押し出される上層材スリットとを具備し、下層材スリットの先端と1または2以上の中間層材スリットの先端と上層材スリットの先端とは多層材塗布用ノズルのノズル口またはノズル口から内部に入った位置に近接して設けられ、下層材スリットから押し出される下層材と1または2以上の中間層材スリットから押し出される1または2以上の中間層材と上層材スリットから押し出される上層材とが密着した状態でノズル口から押し出される。
【0039】
このような構造を有することによって、本発明にかかる多層材塗布用ノズルにおいては、下層材注入口に注入された下層材が一旦下層材溜りにおいて所定の幅に拡げられ、その後下層材溜りと同じ幅以下の幅を有する下層材スリットから押し出されるため、下層材注入口における注入圧力が変動しても、常に所定の幅及び所定の厚さで安定して塗布される。この点については、中間層材・上層材についても全く同様である。
【0040】
そして、下層材スリットの先端と中間層材スリットの先端と上層材スリットの先端とがノズル口またはノズル口から内部に入った位置に近接して設けられており、下層材と中間層材と上層材とが密着した状態でノズル口から押し出されるために、下層材と中間層材と上層材との間に空気が巻き込まれることがない。したがって、塗布工程の後に加熱焼付け工程がある場合でも、これらの層の間に膨れを生ずることがない。
【0041】
このようにして、安定して一定の幅及び厚さで密着性良く上層材、中間層材及び下層材を塗布することができるとともに、これらの塗布材料の間に空気を巻き込むことがなく、加熱焼付けの際に膨れを生じることがない多層材塗布用ノズルとなる。
【0042】
請求項6の発明にかかる多層材塗布用ノズルは、中間層材スリットと平行な方向に中間層材の層の数に1を加えた数に分割され、下層材注入口と1または2以上の中間層材注入口と上層材注入口が上面に、下層材溜りが一方の側面に、上層材溜りが他方の側面に、1または2以上の中間層材溜りが1または2以上の分割面の一方に、それぞれ設けられたノズル本体と、下層材スリットの所定の厚さに相当する厚さを有する下層材スペーサーと、1または2以上の中間層材スリットの所定の厚さに相当する厚さを有する1または2以上の中間層材スペーサーと、上層材スリットの所定の厚さに相当する厚さを有する上層材スペーサーと、下層材カバーと上層材カバーとを具備し、分割されたノズル本体の1または2以上の分割面に1または2以上の中間層材スペーサーを挟んでノズル本体が分割可能に組み付けられ、ノズル本体の一方の側面に下層材スペーサーを挟んで下層材カバーが着脱可能に取付けられ、ノズル本体の他方の側面に上層材スペーサーを挟んで上層材カバーが着脱可能に取付けられてなる。
【0043】
ここで、上述の如く、下層材スリットの先端と中間層材スリットの先端と上層材スリットの先端とは近接して設けられているのであるから、ノズル本体は一方の側面と他方の側面とが先端に行くにしたがって接近するテーパ形状を有している。また、ノズル本体を分割可能に組み付け、下層材カバーと上層材カバーとを着脱可能に取付ける方法としては、複数本のねじによるねじ止めや複数本のボルトによるボルト締め固定、等がある。
【0044】
このようにノズル本体が分割可能に組み付けられ、下層材カバーと上層材カバーとが着脱可能に取付けられることによって、多層材塗布用ノズル内の下層材、中間層材または上層材の通路に異物が混入して塗布パターンに乱れが生じた場合には、ノズル本体を分割し、または下層材カバー若しくは上層材カバーを取外すことによって、容易に異物を除去することができ、メンテナンスが容易であり、安定した塗布パターンを確保することができる。
【0045】
このようにして、安定して一定の幅及び厚さで密着性良く上層材、中間層材及び下層材を塗布することができるとともに、これらの塗布材料の間に空気を巻き込むことがなく、加熱焼付けの際に膨れを生じることがないだけでなく、メンテナンスが容易な多層材塗布用ノズルとなる。
【0046】
請求項7の発明にかかる多層材塗布用ノズルは、下層材注入口と下層材溜りの間には下層材溜りの幅以下の幅を有する下層材溝部が設けられており、下層材溝部と下層材溜りとの間は複数の通路で連通しており、1または2以上の中間層材注入口と1または2以上の中間層材溜りの間にはそれぞれ中間層材溜りの幅以下の幅を有する中間層材溝部が設けられており、中間層材溝部と中間層材溜りとの間は複数の通路で連通しており、上層材注入口と上層材溜りの間には上層材溜りの幅以下の幅を有する上層材溝部が設けられており、上層材溝部と上層材溜りとの間は複数の通路で連通している。
【0047】
これによって、下層材注入口、中間層材注入口及び上層材注入口から圧入された下層材、中間層材及び上層材は、それぞれ一旦幅を有する下層材溝部、中間層材溝部及び上層材溝部に流れ込んで、そこからそれぞれ複数の通路を通過して下層材溜り、中間層材溜り及び上層材溜りに流れ込むため、流れが整えられるとともに圧力が均一になり、下層材溜り、中間層材溜り及び上層材溜りと同一の幅以下の幅を有する下層材スリットの先端、中間層材スリットの先端及び上層材スリットの先端から、常に均一な幅及び厚さで押し出される。
【0048】
このようにして、安定して一定の幅及び厚さで密着性良く上層材、中間層材及び下層材を塗布することができるとともに、これらの塗布材料の間に空気を巻き込むことがなく、加熱焼付けの際に膨れを生じることがない多層材塗布用ノズルとなる。
【0049】
請求項8の発明にかかる二層材塗布用ノズルまたは多層材塗布用ノズルは、基材表面の塗布方向に垂直な湾曲形状に沿ってノズル本体の先端を始めとする先端部分が長手方向(幅方向)に湾曲している。
【0050】
基材表面が塗布方向に沿って湾曲しているような場合には、先端部分が長手方向(幅方向)に直線状の二層材塗布用ノズルまたは多層材塗布用ノズルを用いて、上層材及び下層材または上層材、中間層材及び下層材を押し出しながら、塗布方向に二層材塗布用ノズルまたは多層材塗布用ノズルを移動させながら基材表面に対して常に垂直になるように回動させることによって、密着性良く塗布することができる。
【0051】
これに対して、基材表面が塗布方向に垂直な方向に沿って湾曲しているような場合には、本発明にかかる基材表面の塗布方向に垂直な湾曲形状に沿ってノズル本体の先端(ノズル口)を始めとする先端部分が長手方向(幅方向)に湾曲している二層材塗布用ノズルまたは多層材塗布用ノズルを用いて、塗布を実施する。これによって、基材表面と先端部分との間隔を、先端部分の幅方向全長に亘って一定とすることができるため、良好な密着性を損なうことなく、基材表面に上層材及び下層材または上層材、中間層材及び下層材を塗布することができる。
【0052】
このようにして、湾曲した基材表面に対しても、安定して一定の幅及び厚さで上層材及び下層材または上層材、中間層材及び下層材を塗布することができるとともに、これらの塗布材料の間に空気を巻き込むことがなく、焼付けの際に膨れを生じることがない二層材塗布用ノズルまたは多層材塗布用ノズルとなる。
【0053】
請求項9の発明にかかる多層材の塗布方法は、下層材を圧力を掛けて所定の幅及び所定の厚さの開口を有するスリットを通して押し出す工程と、1または2以上の中間層材を外部への押し出し口でまたは外部への押し出し口の手前で下層材の上面に密着させながら圧力を掛けて所定の幅及び所定の厚さの開口を有するスリットを通して押し出す工程と、上層材を外部への押し出し口でまたは外部への押し出し口の手前で1または2以上の中間層材の上面に密着させながら圧力を掛けて所定の幅及び所定の厚さの開口を有するスリットを通して押し出す工程と、密着した下層材、1または2以上の中間層材及び上層材を外部への押し出し口から押し出しながら下層材の下面を基材表面に密着させる工程とを具備する。
【0054】
これによって、中間層材は外部への押し出し口において、またはその手前で下層材の上面に密着するため下層材と中間層材との間に空気が巻き込まれることがない。また、上層材は外部への押し出し口において、またはその手前で中間層材の上面に密着するため中間層材と上層材との間に空気が巻き込まれることがない。そして、下層材も中間層材も上層材もそれぞれ所定の幅及び所定の厚さの開口を有するスリットを通して圧力を掛けて押し出されるため、それぞれ所定の幅及び所定の厚さでスリットから押し出され、安定した幅及び厚さで押し出される。さらに、下層材の下面を基材表面に密着させることによって、基材表面との間にも空気が巻き込まれることはない。
【0055】
このようにして、安定して一定の幅及び厚さで密着性良く上層材、中間層材及び下層材を塗布することができるとともに、これらの塗布材料の間に空気を巻き込むことがなく、加熱焼付けの際に膨れを生じることがない多層材の塗布方法となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0056】
以下、本発明の実施の形態にかかる二層材塗布用ノズル及び多層材塗布用ノズル並びに二層材の塗布方法及び多層材の塗布方法について、図面を参照しつつ説明する。
【0057】
実施の形態1
まず、本発明の実施の形態1にかかる二層材塗布用ノズル及び二層材の塗布方法について、図1乃至図5を参照して説明する。
【0058】
図1(a)は本発明の実施の形態1にかかる二層材塗布用ノズルの全体構造を下から見て示す斜視図、(b)は本発明の実施の形態1にかかる二層材塗布用ノズルの全体構造及び塗布された二層材を示す斜視図である。図2は本発明の実施の形態1にかかる二層材塗布用ノズルの他方の側面を分解して示す分解斜視図である。図3(a)は図2のA矢視にかかる左側面図、(b)は図2のB矢視にかかる右側面図である。
【0059】
図4(a)〜(f)は本発明の実施の形態1にかかる二層材塗布用ノズルによる二層材の塗布方法を示す説明図である。図5(a)は本発明の実施の形態1にかかる二層材塗布用ノズルの塗布方向に湾曲した基材表面への塗布方法を示す説明図、(b)は二層材塗布用ノズルの塗布方向と垂直な方向に湾曲した基材表面用の本発明の実施の形態1にかかる二層材塗布用ノズルの第1変形例を示す説明図、(c)は本発明の実施の形態1にかかる二層材塗布用ノズルの第2変形例を示す説明図である。
【0060】
図1(a)に示されるように、本実施の形態1にかかる二層材塗布用ノズル1は、ノズル本体2と、ノズル本体2の一方の側面に3本の六角穴付きボルト5で締付け固定される下層材カバー3と、ノズル本体2の一方の側面と下層材カバー3との間に挟み込まれる下層材スペーサー3Bと、ノズル本体2の他方の側面に3本の六角穴付きボルト5で締付け固定される上層材カバー4と、ノズル本体2の他方の側面と上層材カバー4との間に挟み込まれる上層材スペーサー4Bとから構成されている。
【0061】
本実施の形態1にかかる二層材塗布用ノズル1においては、これらの構成部品としてのノズル本体2、下層材カバー3、下層材スペーサー3B、上層材カバー4、上層材スペーサー4Bの材質として耐摩耗性の観点から超硬合金タングステンカーバイドを用いているが、用途等に応じてその他の金属等、例えばステンレス鋼や炭素鋼、黄銅、真鍮、アルミニウム及びその合金等、を用いても構わない。
【0062】
図1(a)に示されるように、ノズル本体2の一方の側面と下層材カバー3との間に下層材スペーサー3Bを挟み込むことによって、二層材塗布用ノズル1の下端近傍(ノズル口8)に所定の開口幅及び所定の開口厚さを有する下層材スリット3Aが設けられ、ノズル本体2の他方の側面と上層材カバー4との間に上層材スペーサー4Bを挟み込むことによって、二層材塗布用ノズル1の下端近傍(ノズル口8)に所定の開口幅及び所定の開口厚さを有する上層材スリット4Aが設けられる。そして、図1(a)に想像線で示されるように、下層材スリット3Aからは下層材Pdが、上層材スリット4Aからは上層材Puが、互いに密着した状態で押し出される。
【0063】
ここで、図1(a),(b)に示されるように、上層材スリット4Aの下端は下層材スリット3Aの下端よりも下層材スリット3Aの開口厚さ(約1mm)分だけ上方にある。これによって、下層材スリット3Aから押し出された下層材Pdと上層材スリット4Aから押し出された上層材Puとがスムーズに密着して一体となって押し出される。
【0064】
さらに、図1(b)に示されるように、本実施の形態1にかかる二層材塗布用ノズル1においては、ノズル本体2の上面に設けられた下層材注入口6Cに下層材注入管3Cを介して塗装ロボットの下層材塗装ガン3Dが接続されており、同様にノズル本体2の上面に設けられた上層材注入口7Cに上層材注入管4Cを介して塗装ロボットの上層材塗装ガン4Dが接続されている。また、下層材塗装ガン3Dには下層材圧入管3Eが、上層材塗装ガン4Dには上層材圧入管4Eが、それぞれ接続されている。
【0065】
そして、図示しない塗装ガン開閉エア用ソレノイドバルブを動作させて、まず下層材塗装ガン3Dを開いて、図1(a)に想像線で示されるように下層材スリット3Aから下層材Pdを押し出しながら二層材塗布用ノズル1を移動させ、少し遅れて上層材塗装ガン4Dを開いて、図1(a)に想像線で示されるように上層材スリット4Aから上層材Puを押し出しながら、さらに二層材塗布用ノズル1を移動させる。
【0066】
所定の範囲まで塗布し終わったら、塗装ガン開閉エア用ソレノイドバルブを動作させて、まず上層材塗装ガン4Dを閉じて、少し遅れて下層材塗装ガン3Dを閉じることによって、図1(b)に示されるように、矩形に塗布された下層材Pdの四方約3mmずつを露出させた状態で、上層材Puが下層材Pdの上に密着した状態で矩形に塗布された二層材の塗布が完成する。
【0067】
本実施の形態1においては、二層材塗布用ノズル1によって塗布される二層材として、車両用パネルの制振・補強等に使用される二層型の塗布型鋼板補強材を用いた例について示している。即ち、上層材Puは剛性に優れ、主として鋼板を補強する拘束層としての役割を担い、下層材Pdは柔軟性と接着性に優れ、主として鋼板と上層材Puを接着させるとともに歪みを防止する接着・緩衝層としての役割を担っている。そして、下層材Pdは約1mmの厚さに塗布され、上層材Puはその2倍の約2mmの厚さに塗布される。
【0068】
したがって、上層材Puが直接鋼板に接触する状態に塗布されると、下層材Pdが歪みを防止する接着・緩衝層としての役割を果たせなくなるので、そのような事態を防止するために上層材スリット4Aの幅も下層材スリット3Aより左右それぞれ3mmずつ短くし、塗装のタイミングも上述の如く下層材Pdが上層材Puよりも先に塗布され、後に塗布を完了するように制御して、上層材Puが直接鋼板に触れることなく確実に下層材Pdを介して上層材Puが塗布されるようにしている。
【0069】
次に、本実施の形態1にかかる二層材塗布用ノズル1の内部構造について、図2を参照して説明する。
【0070】
図2に示されるように、ノズル本体2の他方の側面には上層材Puの流通経路が穿設されている。上の溝即ち上層材溝部7Bはノズル本体2の上面に設けられた上層材注入口7Cに連通するものであり、上層材注入口7Cから上の溝7Bに流れ込んだ上層材Puは、二つの通路に分かれて下の溝、即ち上層材溜り7Aの幅一杯に拡がり、上層材スペーサー4B(厚さ約2mm)に設けられた上層材スリット4A(幅約64mm)から押し出される。
【0071】
図2に示されるように、この上層材スペーサー4Bを間に挟んで、上層材カバー4を3本の六角穴付きボルト5でノズル本体2の他方の側面に締付け固定することによって、上層材注入口7Cに連通する所定の開口幅(約64mm)及び開口厚さ(約2mm)を有する上層材スリット4Aが形成される。
【0072】
二層材塗布用ノズル1の反対側の側面、即ち一方の側面の内部構造も図2に示されるものと同様であり、異なるのは下の溝即ち下層材溜り6Aの幅(約70mm)と、下層材スペーサー3Bの厚さ(約1mm)及び下層材スリット3Aの幅(約70mm)である。これらの下層材スリット3Aの先端及び上層材スリット4Aの先端が近接して設けられることによって、ノズル口8が形成される。
【0073】
なお、本実施の形態1においては、上層材カバー4を(及び下層材カバー3も)3本の六角穴付きボルト5でノズル本体2に締付け固定しているが、これは各部品の寸法精度が高く、液漏れが起こり難いからであって、各部品の寸法精度がもう少し劣る場合には、より多くの六角穴付きボルト5で締付け固定して液漏れを確実に防止する必要がある。本実施の形態1におけるように、必要最小限の六角穴付きボルト5で締付け固定できることによって、外観が良くなるとともに、メンテナンスの際の効率も向上するという作用効果が得られる。
【0074】
次に、本実施の形態1にかかる二層材塗布用ノズル1の各部の構造について、図3を参照してさらに詳細に説明する。
【0075】
図3(a)に破線で示されるように、二層材塗布用ノズル1の図2におけるA矢視、即ちノズル本体2の他方の側面から見た場合には、上層材注入口7Cに連通する上の溝即ち上層材溝部7Bが手前側に来て、上層材溝部7Bに注入された上層材Puは、二つの流れに分かれて下の溝、即ち上層材溜り7Aに流れ込むことによって、流れが整えられて上層材溜り7Aの幅一杯に拡がる。
【0076】
同様に、図3(b)に破線で示されるように、二層材塗布用ノズル1の図2におけるB矢視、即ちノズル本体2の一方の側面から見た場合には、下層材注入口6Cに連通する上の溝即ち下層材溝部6Bが手前側に来て、下層材溝部6Bに注入された下層材Pdは、二つの流れに分かれて下の溝、即ち下層材溜り6Aに流れ込むことによって、流れが整えられて下層材溜り6Aの幅一杯に拡がる。
【0077】
そして、圧力を掛けられた下層材Pd及び上層材Puがそれぞれ下層材圧入管3E及び上層材圧入管4Eから下層材塗装ガン3D及び上層材塗装ガン4Dに入り、内部の開閉バルブで堰き止められているため、図示しない塗装ガン開閉エア用ソレノイドバルブを動作させて、下層材塗装ガン3D及び上層材塗装ガン4D内部の開閉バルブを開くことによって、下層材Pdが厚さ約1mm,幅約70mmで下層材スリット3Aから、上層材Puが厚さ約2mm,幅約64mmで上層材スリット4Aから押し出される。
【0078】
次に、本実施の形態1にかかる二層材塗布用ノズル1による下層材Pd及び上層材Puの塗布方法について、図4を参照してさらに詳細に説明する。
【0079】
まず、図4(a)に示されるように、基材表面Gに二層材塗布用ノズル1の先端をほぼ下層材スリット3Aの厚さ(約1mm)だけ離れるように接近させる。続いて、図4(b)に示されるように、図示しない塗装ガン開閉エア用ソレノイドバルブを動作させて下層材塗装ガン3D内部の開閉バルブを開き、下層材Pdを下層材スリット3Aから押し出して、基材表面Gに密着させながら二層材塗布用ノズル1を図示右方向へ移動させる。
【0080】
そして、所定距離(約3mm)だけ移動した時点で、図4(c)に示されるように、図示しない塗装ガン開閉エア用ソレノイドバルブを動作させて上層材塗装ガン4D内部の開閉バルブを開き、上層材Puを下層材Pdに密着させながら上層材スリット4Aから押し出して、さらに二層材塗布用ノズル1を図示右方向へ移動させる。
【0081】
図4(d)に示されるように、上層材Puを所定の長さだけ塗布した時点で上層材塗装ガン4D内部の開閉バルブを閉じて上層材Puの押し出しを停止し、さらにそこから所定距離(約3mm)だけ移動した時点で、図4(e)に示されるように、下層材塗装ガン3D内部の開閉バルブを閉じて下層材Pdの押し出しを停止する。そして、二層材塗布用ノズル1を上昇させると、図4(f)に示されるように、上層材Pu及び下層材Pdが糸を引くようなこともなく、綺麗に二層材塗布用ノズル1から分離して、上層材Pu及び下層材Pdの基材表面Gへの塗布が完了する。
【0082】
このようにして、本実施の形態1にかかる二層材塗布用ノズル1及び二層材の塗布方法においては、安定して一定の幅及び厚さで密着性良く上層材Pu及び下層材Pdを塗布することができ、上層材Puと下層材Pdとの間に空気を巻き込むことがなく、下層材Pdと基材表面Gとの密着性も良好で、後工程における加熱焼付けの際に膨れを生じることがない。また、図2に示されるように、分解可能に構成されているため、異物が混入した際等におけるメンテナンスも容易である。
【0083】
次に、二層材を塗布する基材表面が湾曲している場合の塗布方法及び二層材塗布用ノズルについて、図5を参照して説明する。上述したように、本実施の形態1にかかる上層材Pu及び下層材Pdは、車両用パネルの制振・補強等に使用される二層型の塗布型鋼板補強材であり、車両のドアパネル鋼板や車両ボディー底面等に塗布されるものであるため、基材表面が湾曲している場合も多い。
【0084】
図5(a)に示されるように、基材表面G1が塗布方向に沿って湾曲しているような場合には、本実施の形態1にかかる二層材塗布用ノズル1を用いて、上層材Pu及び下層材Pdを押し出しながら、塗布方向に二層材塗布用ノズル1を移動させながら基材表面G1に対して常に垂直になるように回動させることによって、密着性良く塗布することができる。
【0085】
これに対して、図5(b)に示されるように、基材表面G2が塗布方向に垂直な方向に沿って湾曲しているような場合には、本実施の形態1の第1の変形例にかかる二層材塗布用ノズル21Aを用いて、上層材Pu及び下層材Pdの塗布を実施する。図5(b)に示されるように、この第1の変形例にかかる二層材塗布用ノズル21Aは、先端部分24aが基材表面G2の湾曲形状に沿って湾曲しており、その他の部分の構成は上述した本実施の形態1にかかる二層材塗布用ノズル1と同様である。
【0086】
したがって、この第1の変形例にかかる二層材塗布用ノズル21Aにおいては、基材表面G2と先端部分24aとの間隔を、先端部分24aの幅方向全長に亘って一定とすることができるため、良好な密着性を損なうことなく、基材表面G2に上層材Pu及び下層材Pdを塗布することができる。
【0087】
同様に、図5(c)に示されるように、基材表面G3が塗布方向に垂直な方向に沿って左右非対称に湾曲しているような場合にも、本実施の形態1の第2の変形例にかかる二層材塗布用ノズル21Bを用いて、上層材Pu及び下層材Pdの塗布を実施する。図5(c)に示されるように、この第2の変形例にかかる二層材塗布用ノズル21Bは、先端部分24bが基材表面G3の湾曲形状に沿って湾曲しており、したがって基材表面G3と先端部分24bとの間隔を幅方向全長に亘って一定とすることができ、良好な密着性を損なうことなく、基材表面G3に上層材Pu及び下層材Pdを塗布することができる。
【0088】
実施の形態2
次に、本発明の実施の形態2にかかる二層材塗布用ノズル及び二層材の塗布方法について、図6乃至図9を参照して説明する。
【0089】
図6は本発明の実施の形態2にかかる二層材塗布用ノズルの全体構造及び塗布された二層材を示す斜視図である。図7(a)は本発明の実施の形態2にかかる二層材塗布用ノズルの正面図、(b)は底面図である。図8(a)は図6のC矢視にかかる左側面図、(b)は図6のD矢視にかかる右側面図である。図9(a)〜(f)は本発明の実施の形態2にかかる二層材塗布用ノズルによる二層材の塗布方法を示す説明図である。
【0090】
図6に示されるように、本実施の形態2にかかる二層材塗布用ノズル11も、上層材Pu及び下層材Pdを密着させて塗布するための塗布用ノズルであるが、実施の形態1にかかる二層材塗布用ノズル1と異なるのは、ノズル本体12の上面に設けられている下層材注入口16C及び上層材注入口17Cが、実施の形態1の二層材塗布用ノズル1においては塗布方向と垂直な方向即ちノズルの幅方向に配列されていたのに対して、本実施の形態2にかかる二層材塗布用ノズル11においては、塗布方向即ちノズルの厚さ方向に沿って配列されている点である。
【0091】
したがって、図6に示されるように、本実施の形態2にかかる二層材塗布用ノズル11は、ノズル本体12の厚さ(塗布方向の長さ)が実施の形態1の二層材塗布用ノズル1よりも大きくなっている。その他の部分の構成は、内部構造を除いて、実施の形態1の二層材塗布用ノズル1と同様である。
【0092】
即ち、本実施の形態2にかかる二層材塗布用ノズル11は、ノズル本体12と、ノズル本体12の一方の側面に3本の六角穴付きボルト15で締付け固定される下層材カバー13と、ノズル本体12の一方の側面と下層材カバー13との間に挟み込まれる下層材スペーサー13Bと、ノズル本体12の他方の側面に3本の六角穴付きボルト15で締付け固定される上層材カバー14と、ノズル本体12の他方の側面と上層材カバー14との間に挟み込まれる上層材スペーサー14Bとから構成されている。
【0093】
本実施の形態2にかかる二層材塗布用ノズル11においては、これらの構成部品としてのノズル本体12、下層材カバー13、下層材スペーサー13B、上層材カバー14、上層材スペーサー14Bの材質として耐摩耗性の観点から超硬合金タングステンカーバイドを用いているが、用途等に応じてその他の金属等、例えばステンレス鋼や炭素鋼、黄銅、真鍮、アルミニウム及びその合金等、を用いても構わない。
【0094】
そして、ノズル本体12の上面の下層材注入口16C及び上層材注入口17Cには、それぞれ下層材注入管13C及び上層材注入管14Cを介して塗装ロボットの下層材塗装ガン13D及び上層材塗装ガン14Dが接続されている。また、下層材塗装ガン13Dには下層材圧入管13Eが、上層材塗装ガン14Dには上層材圧入管14Eが、それぞれ接続されている。
【0095】
本実施の形態2においても、二層材塗布用ノズル11によって塗布される二層材として、車両用パネルの制振・補強等に使用される二層型の塗布型鋼板補強材(上層材Pu及び下層材Pd)を用いた例について説明しているため、図6に示されるように、下層材Pdが上層材Puよりも四方に3mmずつ長い矩形に塗布されるようにしている。
【0096】
次に、二層材塗布用ノズル11のより詳細な構成について、図7を参照して説明する。図7(a)の正面図に示されるように、本実施の形態2にかかる二層材塗布用ノズル11においては、下層材注入口16C及び上層材注入口17Cがノズルの厚さ方向に沿って配列されていることから、その下の流路である上の溝即ち下層材溝部16B及び上層材溝部17B、並びに下の溝即ち下層材溜り16A及び上層材溜り17Aは、ノズル本体12内に概略左右対称に設けられている。
【0097】
図7(a)及び図7(b)に示されるように、下層材スペーサー13Bを間に挟んで、下層材カバー13を3本の六角穴付きボルト15でノズル本体12の一方の側面に締付け固定して、下層材注入口16Cに連通する所定の開口幅(約70mm)及び開口厚さ(約1mm)を有する下層材スリット13Aが形成される。同様に、上層材スペーサー14Bを間に挟んで、上層材カバー14を3本の六角穴付きボルト15でノズル本体12の他方の側面に締付け固定することによって、上層材注入口17Cに連通する所定の開口幅(約64mm)及び開口厚さ(約2mm)を有する上層材スリット14Aが形成される。
【0098】
ここで、図7(a)に示されるように、上層材スリット14Aの下端は下層材スリット13Aの下端よりも下層材スリット13Aの開口厚さ(約1mm)分だけ上方にある。これによって、下層材スリット13Aから押し出された下層材Pdと上層材スリット14Aから押し出された上層材Puとがスムーズに密着して一体となって押し出される。
【0099】
次に、二層材塗布用ノズル11の内部構造について、図8を参照してさらに詳細に説明する。
【0100】
図8(a)に示される図6のC矢視、即ち左側面は本発明におけるノズル本体12の他方の側面であり、上層材スペーサー14Bを間に挟んで上層材カバー14が取付けられている側である。図8(a)に破線で示されるように、上層材注入口17Cは上層材溝部17Bに連通しており、さらに4本の通路を介して上層材溜り17Aに連通している。したがって、上層材溝部17Bに注入された上層材Puは、4つの流れに分かれて上層材溜り17Aに流れ込むことによって、流れが整えられて上層材溜り17Aの幅一杯に拡がる。
【0101】
一方、図8(b)に示される図6のD矢視、即ち右側面は本発明におけるノズル本体12の一方の側面であり、下層材スペーサー13Bを間に挟んで下層材カバー13が取付けられている側である。図8(b)に破線で示されるように、下層材注入口16Cは下層材溝部16Bに連通しており、さらに4本の通路を介して下層材溜り16Aに連通している。したがって、下層材溝部16Bに注入された下層材Pdは、4つの流れに分かれて下層材溜り16Aに流れ込むことによって、流れが整えられて下層材溜り16Aの幅一杯に拡がる。
【0102】
そして、圧力を掛けられた下層材Pd及び上層材Puがそれぞれ下層材圧入管13E及び上層材圧入管14Eから下層材塗装ガン13D及び上層材塗装ガン14Dに入り、内部の開閉バルブで堰き止められているため、図示しない塗装ガン開閉エア用ソレノイドバルブを動作させて、下層材塗装ガン13D及び上層材塗装ガン14D内部の開閉バルブを開くことによって、下層材Pdが厚さ約1mm,幅約70mmで下層材スリット13Aから、上層材Puが厚さ約2mm,幅約64mmで上層材スリット14Aから押し出される。
【0103】
次に、本実施の形態2にかかる二層材塗布用ノズル11による下層材Pd及び上層材Puの塗布方法について、図9を参照してさらに詳細に説明する。
【0104】
まず、図9(a)に示されるように、基材表面Gに二層材塗布用ノズル11の先端をほぼ下層材スリット13Aの厚さ(約1mm)だけ離れるように接近させる。続いて、図9(b)に示されるように、図示しない塗装ガン開閉エア用ソレノイドバルブを動作させて下層材塗装ガン13D内部の開閉バルブを開き、下層材Pdを下層材スリット13Aから押し出して、基材表面Gに密着させながら二層材塗布用ノズル11を図示右方向へ移動させる。
【0105】
そして、所定距離(約3mm)だけ移動した時点で、図9(c)に示されるように、図示しない塗装ガン開閉エア用ソレノイドバルブを動作させて上層材塗装ガン14D内部の開閉バルブを開き、上層材Puを下層材Pdに密着させながら上層材スリット14Aから押し出して、さらに二層材塗布用ノズル11を図示右方向へ移動させる。
【0106】
図9(d)に示されるように、上層材Puを所定の長さだけ塗布した時点で上層材塗装ガン14D内部の開閉バルブを閉じて上層材Puの押し出しを停止し、さらにそこから所定距離(約3mm)だけ移動した時点で、図9(e)に示されるように、下層材塗装ガン13D内部の開閉バルブを閉じて下層材Pdの押し出しを停止する。そして、二層材塗布用ノズル11を上昇させると、図9(f)に示されるように、上層材Pu及び下層材Pdが糸を引くようなこともなく、綺麗に二層材塗布用ノズル11から分離して、上層材Pu及び下層材Pdの基材表面Gへの塗布が完了する。
【0107】
このようにして、本実施の形態2にかかる二層材塗布用ノズル11及び二層材の塗布方法においては、安定して一定の幅及び厚さで密着性良く上層材Pu及び下層材Pdを塗布することができ、上層材Puと下層材Pdとの間に空気を巻き込むことがなく、下層材Pdと基材表面Gとの密着性も良好で、後工程における加熱焼付けの際に膨れを生じることがない。また、実施の形態1にかかる二層材塗布用ノズル1と同様に、片側僅か3本の六角穴付きボルト15によって分解可能に構成されているため、異物が混入した際等におけるメンテナンスも容易である。
【0108】
本実施の形態2にかかる二層材塗布用ノズル11は、その構造上必然的に塗布方向の長さ即ち厚さが大きくなるため、図5(a)に示されるような塗布方向に沿って湾曲している基材表面への塗布に関しては、多少実施の形態1にかかる二層材塗布用ノズル1よりも不利な点がある。その反面、実施の形態1にかかる二層材塗布用ノズル1よりも内部に余裕があるため、内部通路をより容易に構成できるという長所を有している。
【0109】
実施の形態3
次に、本発明の実施の形態3にかかる二層材塗布用ノズル及び二層材の塗布方法について、図10乃至図12を参照して説明する。
【0110】
図10(a)は本発明の実施の形態3にかかる二層材塗布用ノズルの全体構造を下から見て示す斜視図、(b)は本発明の実施の形態3にかかる二層材塗布用ノズルの全体構造及び塗布された二層材を示す斜視図である。図11(a)は図10のE矢視にかかる左側面図、(b)は図10のF矢視にかかる右側面図である。図12(a)〜(f)は本発明の実施の形態3にかかる二層材塗布用ノズルによる二層材の塗布方法を示す説明図である。
【0111】
図10に示されるように、本実施の形態3にかかる二層材塗布用ノズル31は、全体的な構造は実施の形態1の二層材塗布用ノズル1と類似している。異なるのは、第1に、図10(a)に示されるように、下層材スリット33Aの先端及び上層材スリット34Aの先端が二層材塗布用ノズル31のノズル口38よりも内部に引っ込んでおり、ノズル口38から押し出されるときには既に下層材Pdと上層材Puとが密着した状態になっている点である。第2に、図10(b)に示されるように、下層材スリット33Aの開口幅と開口厚さとが、上層材スリット34Aの開口幅及び開口厚さとほぼ同一となっている点である。したがって、上層材Puは下層材Pdと同じ幅、同じ長さ、同じ厚さに塗布される。
【0112】
そして、第3に、図11(a),(b)に示されるように、下層材スリット33Aの開口幅及び上層材スリット34Aの開口幅が、下層材溜り36Aの幅及び上層材溜り37Aの幅よりもそれぞれ狭くなっている点である。
【0113】
上記実施の形態1及び実施の形態2においては、下層材スリットの開口幅及び上層材スリットの開口幅は下層材溜りの幅及び上層材溜りの幅と同一としていたが、本実施の形態3にかかる二層材塗布用ノズル31においては、下層材スリット33A及び上層材スリット34Aの開口幅を下層材溜り36A及び上層材溜り37Aの幅よりもそれぞれ狭くすることによって、注入圧力が変動しても、常に所定の幅及び所定の厚さで安定して塗布される。
【0114】
その他の点については、本実施の形態3にかかる二層材塗布用ノズル31は、図10に示されるように、上記実施の形態1にかかる二層材塗布用ノズル1と同様の構成を有している。
【0115】
即ち、本実施の形態3にかかる二層材塗布用ノズル31は、ノズル本体32と、ノズル本体32の一方の側面に3本の六角穴付きボルト35で締付け固定される下層材カバー33と、ノズル本体32の一方の側面と下層材カバー33との間に挟み込まれる下層材スペーサー33Bと、ノズル本体32の他方の側面に3本の六角穴付きボルト35で締付け固定される上層材カバー34と、ノズル本体32の他方の側面と上層材カバー34との間に挟み込まれる上層材スペーサー34Bとから構成されている。
【0116】
本実施の形態3にかかる二層材塗布用ノズル31においては、これらの構成部品としてのノズル本体32、下層材カバー33、下層材スペーサー33B、上層材カバー34、上層材スペーサー34Bの材質として耐摩耗性の観点から超硬合金タングステンカーバイドを用いているが、用途等に応じてその他の金属等、例えばステンレス鋼や炭素鋼、黄銅、真鍮、アルミニウム及びその合金等、を用いても構わない。
【0117】
そして、ノズル本体32の上面の下層材注入口36C及び上層材注入口37Cには、それぞれ下層材注入管33C及び上層材注入管34Cを介して塗装ロボットの下層材塗装ガン33D及び上層材塗装ガン34Dが接続されている。また、下層材塗装ガン33Dには下層材圧入管33Eが、上層材塗装ガン34Dには上層材圧入管34Eが、それぞれ接続されている。
【0118】
ここで、図10(a),(b)に示されるように、上層材スリット34Aの下端は下層材スリット33Aの下端よりも下層材スリット33Aの開口厚さ(約2mm)分だけ上方にある。これによって、下層材スリット33Aから押し出された下層材Pdと上層材スリット34Aから押し出された上層材Puとがスムーズに密着して、一体となってノズル口38から押し出される。
【0119】
次に、二層材塗布用ノズル31の内部構造について、図11を参照してさらに詳細に説明する。
【0120】
図11(a)に示される図10(a)のE矢視、即ち左側面は本発明におけるノズル本体32の他方の側面であり、上層材スペーサー34Bを間に挟んで上層材カバー34が取付けられている側である。図11(a)に破線で示されるように、上層材注入口37Cは上層材溝部37Bに連通しており、さらに3本の通路を介して上層材溜り37Aに連通している。したがって、上層材溝部37Bに注入された上層材Puは、3つの流れに分かれて上層材溜り37Aに流れ込むことによって、流れが整えられて上層材溜り37Aの幅一杯に拡がる。
【0121】
一方、図11(b)に示される図10(a)のF矢視、即ち右側面は本発明におけるノズル本体32の一方の側面であり、下層材スペーサー33Bを間に挟んで下層材カバー33が取付けられている側である。図11(b)に破線で示されるように、下層材注入口36Cは下層材溝部36Bに連通しており、さらに3本の通路を介して下層材溜り36Aに連通している。したがって、下層材溝部36Bに注入された下層材Pdは、3つの流れに分かれて下層材溜り36Aに流れ込むことによって、流れが整えられて下層材溜り36Aの幅一杯に拡がる。
【0122】
そして、圧力を掛けられた下層材Pd及び上層材Puがそれぞれ下層材圧入管33E及び上層材圧入管34Eから下層材塗装ガン33D及び上層材塗装ガン34Dに入り、内部の開閉バルブで堰き止められているため、図示しない塗装ガン開閉エア用ソレノイドバルブを動作させて、下層材塗装ガン33D及び上層材塗装ガン34D内部の開閉バルブを開くことによって、下層材Pd及び上層材Puが厚さ約2mm,幅約64mmで下層材スリット13A及び上層材スリット14Aから押し出される。
【0123】
次に、本実施の形態3にかかる二層材塗布用ノズル31による下層材Pd及び上層材Puの塗布方法について、図12を参照してさらに詳細に説明する。
【0124】
まず、図12(a)に示されるように、基材表面Gに二層材塗布用ノズル31の先端をほぼ下層材スリット33Aの厚さ(約2mm)だけ離れるように接近させる。続いて、図12(b)に示されるように、図示しない塗装ガン開閉エア用ソレノイドバルブを動作させて、下層材塗装ガン33D内部の開閉バルブ及び上層材塗装ガン34D内部の開閉バルブを開き、下層材Pdを下層材スリット33Aから押し出すとともに上層材Puを下層材Pdに密着させながら上層材スリット34Aから押し出して、下層材Pdの下面を基材表面Gに密着させながら二層材塗布用ノズル31を図示右方向へ移動させる。
【0125】
これによって、図12(c)に示されるように、ノズル口38から下層材Pd及び上層材Puが一体となって押し出されて、基材表面G上に塗布されて行く。そして、図12(d)に示されるように下層材Pd及び上層材Puを所定の長さだけ塗布した時点で、図12(e)に示されるように、下層材塗装ガン33D内部の開閉バルブ及び上層材塗装ガン34D内部の開閉バルブを閉じて、下層材Pd及び上層材Puの押し出しを停止する。そして、二層材塗布用ノズル31を上昇させると、図12(f)に示されるように、上層材Pu及び下層材Pdが糸を引くようなこともなく、綺麗に二層材塗布用ノズル31から分離して、上層材Pu及び下層材Pdの基材表面Gへの塗布が完了する。
【0126】
このようにして、本実施の形態3にかかる二層材塗布用ノズル31及び二層材の塗布方法においては、安定して一定の幅及び厚さで密着性良く上層材Pu及び下層材Pdを塗布することができ、上層材Puと下層材Pdとの間に空気を巻き込むことがなく、下層材Pdと基材表面Gとの密着性も良好で、後工程における加熱焼付けの際に膨れを生じることがない。また、実施の形態1にかかる二層材塗布用ノズル1と同様に、片側僅か3本の六角穴付きボルト35によって分解可能に構成されているため、異物が混入した際等におけるメンテナンスも容易である。
【0127】
実施の形態4
次に、本発明の実施の形態4にかかる多層材塗布用ノズル及び多層材の塗布方法について、図13乃至図15を参照して説明する。
【0128】
図13は本発明の実施の形態4にかかる多層材塗布用ノズルの全体構造及び塗布された三層材を示す斜視図である。図14は本発明の実施の形態4にかかる多層材塗布用ノズルの他方の側面及びノズル本体を分解して示す分解斜視図である。図15(a)〜(f)は本発明の実施の形態4にかかる多層材塗布用ノズルによる三層材の塗布方法を示す説明図である。
【0129】
図13に示されるように、本実施の形態4にかかる多層材塗布用ノズル41は、上記実施の形態1乃至実施の形態3における上層材Pu及び下層材Pdに加えて、その間に挟み込まれる中間層材Pmをも同時に塗布するための、三層材塗布用ノズルである。
【0130】
即ち、図14の分解図に示されるように、下層材Pdを押し出すための下層材スリット43Aは最下端に開口しており、下層材スリット43Aの開口厚さ(約1mm)の分だけ高い位置に、中間層材Pmを押し出すための中間層材スリット45Aが設けられ、さらに中間層材スリット45Aの開口厚さ(約1mm)の分だけ高い位置に、上層材Puを押し出すための上層材スリット44Aが設けられている。
【0131】
図13に示されるように、中間層材Pmを押し出す中間層材スリット45Aを設けるために、ノズル本体42は本体構成部42A,42Bに2分割され、本体構成部42Aの上面に下層材注入口46C及び中間層材注入口48Cが設けられており、本体構成部42Bの上面に上層材注入口47Cが設けられている。これらの下層材注入口46C、中間層材注入口48C及び上層材注入口47Cは、ノズル本体42の上面に塗布方向に沿って直線的に配列されている。
【0132】
図13に示されるように、本実施の形態4にかかる多層材塗布用ノズル41は、本体構成部42A,42Bに2分割され2本の六角穴付きボルト45で締付け固定されるノズル本体42と、本体構成部42A,42Bの間に挟み込まれる中間層材スペーサー45Bと、ノズル本体42の一方の側面に3本の六角穴付きボルト45で締付け固定される下層材カバー43と、ノズル本体42の一方の側面と下層材カバー43との間に挟み込まれる下層材スペーサー43Bと、ノズル本体42の他方の側面に3本の六角穴付きボルト45で締付け固定される上層材カバー44と、ノズル本体42の他方の側面と上層材カバー44との間に挟み込まれる上層材スペーサー44Bとから構成されている。
【0133】
本実施の形態4にかかる多層材塗布用ノズル41においては、これらの構成部品としての本体構成部42A,42B、下層材カバー43、下層材スペーサー43B、上層材カバー44、上層材スペーサー44B、中間層材スペーサー45Bの材質として、耐摩耗性の観点から超硬合金タングステンカーバイドを用いているが、用途等に応じてその他の金属等、例えばステンレス鋼や炭素鋼、黄銅、真鍮、アルミニウム及びその合金等、を用いても構わない。
【0134】
そして、ノズル本体42の上面の下層材注入口46C、中間層材注入口48C及び上層材注入口47Cには、それぞれ下層材注入管43C、中間層材注入管45C及び上層材注入管44Cを介して、塗装ロボットの下層材塗装ガン43D、中間層材塗装ガン45D及び上層材塗装ガン44Dが接続されている。また、下層材塗装ガン43Dには下層材圧入管43Eが、中間層材塗装ガン45Dには中間層材圧入管45Eが、上層材塗装ガン44Dには上層材圧入管44Eが、それぞれ接続されている。
【0135】
本実施の形態4においては、多層材塗布用ノズル41によって塗布される多層材として、車両用パネルの制振・補強等に使用される三層型の塗布型鋼板補強材(上層材Pu、中間層材Pm及び下層材Pd)を用いた例について説明しているため、図13に示されるように、下層材Pdが上層材Pu及び中間層材Pmよりも四方に3mmずつ長い矩形に塗布されるようにしている。
【0136】
ここで、図13及び図15(a)に示されるように、中間層材スリット45Aの下端は下層材スリット43Aの下端よりも下層材スリット43Aの開口厚さ(約1mm)分だけ上方にあり、上層材スリット44Aの下端は中間層材スリット45Aの下端よりも中間層材スリット45Aの開口厚さ(約1mm)分だけ上方にある。これによって、下層材スリット43Aから押し出された下層材Pdと中間層材スリット45Aから押し出された中間層材Pmと上層材スリット44Aから押し出された上層材Puとがスムーズに密着して一体となって押し出される。
【0137】
次に、本実施の形態4にかかる多層材塗布用ノズル41の内部構造について、図14を参照して説明する。
【0138】
図14に示されるように、ノズル本体42を構成する本体構成部42Aの分割面には中間層材Pmの流通経路が穿設されている。上の溝即ち中間層材溝部48Bはノズル本体42の本体構成部42Aの上面に設けられた中間層材注入口48Cに連通するものであり、中間層材注入口48Cから中間層材溝部48Bに流れ込んだ中間層材Pmは、4つの通路に分かれて下の溝、即ち中間層材溜り48Aの幅一杯に拡がり、中間層材スペーサー45B(厚さ約1mm)に設けられた中間層材スリット45A(幅約64mm)から押し出される。
【0139】
さらに、ノズル本体42を構成する本体構成部42Bの他方の側面には、上層材Puの流通経路が穿設されている。上の溝即ち上層材溝部47Bはノズル本体42の本体構成部42Bの上面に設けられた上層材注入口47Cに連通するものであり、上層材注入口47Cから上層材溝部47Bに流れ込んだ上層材Puは、4つの通路に分かれて下の溝、即ち上層材溜り47Aの幅一杯に拡がり、上層材スペーサー44B(厚さ約2mm)に設けられた上層材スリット44A(幅約64mm)から押し出される。
【0140】
多層材塗布用ノズル41の反対側の側面、即ち一方の側面の内部構造も図14に示されるものと同様であり、異なるのは下の溝即ち下層材溜り46Aの幅(約70mm)と、下層材スペーサー43Bの厚さ(約1mm)及び下層材スリット43Aの幅(約70mm)である。
【0141】
次に、本実施の形態4にかかる多層材塗布用ノズル41による下層材Pd、中間層材Pm及び上層材Puの塗布方法について、図15を参照して説明する。
【0142】
まず、図15(a)に示されるように、基材表面Gに多層材塗布用ノズル41の先端をほぼ下層材スリット43Aの厚さ(約1mm)だけ離れるように接近させて、図示しない塗装ガン開閉エア用ソレノイドバルブを動作させて下層材塗装ガン43D内部の開閉バルブを開き、下層材Pdを下層材スリット43Aから押し出して、基材表面Gに密着させながら多層材塗布用ノズル41を図示右方向へ移動させる。
【0143】
そして、所定距離(約3mm)だけ移動した時点で、図15(b)に示されるように、図示しない塗装ガン開閉エア用ソレノイドバルブを動作させて中間層材塗装ガン45D内部の開閉バルブを開き、中間層材Pmを下層材Pdに密着させながら中間層材スリット45Aから押し出して、多層材塗布用ノズル11を図示右方向へ移動させ、さらに、図15(c)に示されるように、図示しない塗装ガン開閉エア用ソレノイドバルブを動作させて上層材塗装ガン44D内部の開閉バルブを開き、上層材Puを中間層材Pmに密着させながら上層材スリット44Aから押し出して、さらに多層材塗布用ノズル41を図示右方向へ移動させる。
【0144】
図15(d)に示されるように、中間層材Pm及び上層材Puを所定の長さだけ塗布した時点で中間層材塗装ガン45D及び上層材塗装ガン44D内部の開閉バルブを閉じて中間層材Pm及び上層材Puの押し出しを停止し、さらにそこから所定距離(約3mm)だけ移動した時点で、図15(e)に示されるように、下層材塗装ガン43D内部の開閉バルブを閉じて下層材Pdの押し出しを停止する。そして、多層材塗布用ノズル41を上昇させると、図15(f)に示されるように、上層材Pu、中間層材Pm及び下層材Pdが糸を引くようなこともなく、綺麗に多層材塗布用ノズル41から分離して、上層材Pu、中間層材Pm及び下層材Pdの基材表面Gへの塗布が完了する。
【0145】
このようにして、本実施の形態4にかかる多層材塗布用ノズル41及び多層材の塗布方法においては、安定して一定の幅及び厚さで密着性良く上層材Pu、中間層材Pm及び下層材Pdを塗布することができ、上層材Puと中間層材Pmと下層材Pdとの間に空気を巻き込むことがなく、下層材Pdと基材表面Gとの密着性も良好で、後工程における加熱焼付けの際に膨れを生じることがない。
【0146】
また、上述した二層材塗布用ノズル1,11,31と同様に、ノズル本体42は僅か2本の六角穴付きボルト45によって、また下層材カバー43及び上層材カバー44はそれぞれ僅か3本の六角穴付きボルト45によって分解可能に構成されているため、異物が混入した際等におけるメンテナンスも容易である。
【0147】
上記各実施の形態においては、塗布する二層材及び多層材として車両用パネルの制振・補強等に使用される塗布型鋼板補強材を用いた例について説明しているが、これに限られるものではなく、組成・粘性等の異なる種々の二層材及び多層材を塗布するために用いることができる。
【0148】
二層材塗布用ノズル及び多層材塗布用ノズルのその他の部分の構成、形状、材質、大きさ、製造方法等についても、二層材の塗布方法及び多層材の塗布方法のその他の工程についても、上記各実施の形態に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0149】
【図1】図1(a)は本発明の実施の形態1にかかる二層材塗布用ノズルの全体構造を下から見て示す斜視図、(b)は本発明の実施の形態1にかかる二層材塗布用ノズルの全体構造及び塗布された二層材を示す斜視図である。
【図2】図2は本発明の実施の形態1にかかる二層材塗布用ノズルの他方の側面を分解して示す分解斜視図である。
【図3】図3(a)は図2のA矢視にかかる左側面図、(b)は図2のB矢視にかかる右側面図である。
【図4】図4(a)〜(f)は本発明の実施の形態1にかかる二層材塗布用ノズルによる二層材の塗布方法を示す説明図である。
【図5】図5(a)は本発明の実施の形態1にかかる二層材塗布用ノズルの塗布方向に湾曲した基材表面への塗布方法を示す説明図、(b)は二層材塗布用ノズルの塗布方向と垂直な方向に湾曲した基材表面用の本発明の実施の形態1にかかる二層材塗布用ノズルの第1変形例を示す説明図、(c)は本発明の実施の形態1にかかる二層材塗布用ノズルの第2変形例を示す説明図である。
【図6】図6は本発明の実施の形態2にかかる二層材塗布用ノズルの全体構造及び塗布された二層材を示す斜視図である。
【図7】図7(a)は本発明の実施の形態2にかかる二層材塗布用ノズルの正面図、(b)は底面図である。
【図8】図8(a)は図6のC矢視にかかる左側面図、(b)は図6のD矢視にかかる右側面図である。
【図9】図9(a)〜(f)は本発明の実施の形態2にかかる二層材塗布用ノズルによる二層材の塗布方法を示す説明図である。
【図10】図10(a)は本発明の実施の形態3にかかる二層材塗布用ノズルの全体構造を下から見て示す斜視図、(b)は本発明の実施の形態3にかかる二層材塗布用ノズルの全体構造及び塗布された二層材を示す斜視図である。
【図11】図11(a)は図10のE矢視にかかる左側面図、(b)は図10のF矢視にかかる右側面図である。
【図12】図12(a)〜(f)は本発明の実施の形態3にかかる二層材塗布用ノズルによる二層材の塗布方法を示す説明図である。
【図13】図13は本発明の実施の形態4にかかる多層材塗布用ノズルの全体構造及び塗布された三層材を示す斜視図である。
【図14】図14は本発明の実施の形態4にかかる多層材塗布用ノズルの他方の側面及びノズル本体を分解して示す分解斜視図である。
【図15】図15(a)〜(f)は本発明の実施の形態4にかかる多層材塗布用ノズルによる三層材の塗布方法を示す説明図である。
【図16】図16(a)〜(g)は従来例1にかかる二層の塗布材の塗布方法を示す説明図である。
【図17】図17(a)〜(f)は従来例2にかかる二層の塗布材の塗布方法を示す説明図である。
【符号の説明】
【0150】
1,11,21A,21B,31 二層材塗布用ノズル
2,12,22A,22B,32,42 ノズル本体
3,13,33,43 下層材カバー
3A,13A,33A,43A 下層材スリット
3B,13B,33B,43B 下層材スペーサー
4,14,24A,24B,34,44 上層材カバー
4A,14A,34A,44A 上層材スリット
4B,14B,34B,44B 上層材スペーサー
6A,16A,36A 下層材溜り
6B,16B,36B 下層材溝部
6C,16C,36C,46C 下層材注入口
7A,17A,37A,47A 上層材溜り
7B,17B,37B 上層材溝部
7C,17C,37C,47C 上層材注入口
8,18,38 ノズル口
41 多層材塗布用ノズル
45A 中間層材スリット
45B 中間層材スペーサー
48A 中間層材溜り
48B 中間層材溝部
48C 中間層材注入口
G,G1,G2,G3 基材表面
Pd 下層材
Pm 中間層材
Pu 上層材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材表面に塗布される下層材と該下層材の上に塗布される上層材とからなる二層型塗布材を効率的に塗布するための二層材塗布用ノズルであって、
前記下層材が注入される下層材注入口と、
前記上層材が注入される上層材注入口と、
前記下層材注入口に連通している所定の幅を有する下層材溜りと、
前記上層材注入口に連通している所定の幅を有する上層材溜りと、
前記下層材溜りに連通しており前記下層材が所定の厚さと前記下層材溜りの所定の幅または該所定の幅より狭い幅で押し出される下層材スリットと、
前記上層材溜りに連通しており前記上層材が所定の厚さと前記上層材溜りの所定の幅または該所定の幅より狭い幅で押し出される上層材スリットとを具備し、
前記下層材スリットの先端と前記上層材スリットの先端とは前記二層材塗布用ノズルのノズル口または該ノズル口から内部に入った位置に近接して設けられ、
前記下層材スリットから押し出される前記下層材と前記上層材スリットから押し出される前記上層材とが密着した状態で前記ノズル口から押し出されることを特徴とする二層材塗布用ノズル。
【請求項2】
前記下層材注入口と前記上層材注入口が上面に、前記下層材溜りが一方の側面に、前記上層材溜りが他方の側面に設けられたノズル本体と、
前記下層材スリットの所定の厚さに相当する厚さを有する下層材スペーサーと、
前記上層材スリットの所定の厚さに相当する厚さを有する上層材スペーサーと、
下層材カバーと上層材カバーとを具備し、
前記ノズル本体の一方の側面に前記下層材スペーサーを挟んで前記下層材カバーが着脱可能に取付けられ、前記ノズル本体の他方の側面に前記上層材スペーサーを挟んで前記上層材カバーが着脱可能に取付けられてなることを特徴とする請求項1に記載の二層材塗布用ノズル。
【請求項3】
前記下層材注入口と前記下層材溜りの間には前記下層材溜りの幅以下の幅を有する下層材溝部が設けられており、前記下層材溝部と前記下層材溜りとの間は複数の通路で連通しており、
前記上層材注入口と前記上層材溜りの間には前記上層材溜りの幅以下の幅を有する上層材溝部が設けられており、前記上層材溝部と前記上層材溜りとの間は複数の通路で連通していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の二層材塗布用ノズル。
【請求項4】
基材表面に塗布される下層材と該下層材の上に塗布される上層材とからなる二層型塗布材を効率的に塗布するための二層材の塗布方法であって、
前記下層材を圧力を掛けて所定の幅及び所定の厚さの開口を有するスリットを通して押し出す工程と、
前記上層材を外部への押し出し口でまたは該外部への押し出し口の手前で前記下層材の上面に密着させながら圧力を掛けて所定の幅及び所定の厚さの開口を有するスリットを通して押し出す工程と、
前記密着した下層材及び上層材を前記外部への押し出し口から押し出しながら前記下層材の下面を前記基材表面に密着させる工程と
を具備することを特徴とする二層材の塗布方法。
【請求項5】
基材表面に塗布される下層材と該下層材の上に塗布される1または2以上の中間層材と該中間層材の上に塗布される上層材とからなる三層以上の多層型塗布材を効率的に塗布するための多層材塗布用ノズルであって、
前記下層材が注入される下層材注入口と、
前記1または2以上の中間層材が注入される1または2以上の中間層材注入口と、
前記上層材が注入される上層材注入口と、
前記下層材注入口に連通している所定の幅を有する下層材溜りと、
前記1または2以上の中間層材注入口にそれぞれ連通している所定の幅を有する1または2以上の中間層材溜りと、
前記上層材注入口に連通している所定の幅を有する上層材溜りと、
前記下層材溜りに連通しており前記下層材が前記所定の幅または該所定の幅より狭い幅と所定の厚さで押し出される下層材スリットと、
前記1または2以上の中間層材溜りにそれぞれ連通しており前記1または2以上の中間層材がそれぞれ前記所定の幅または該所定の幅より狭い幅と所定の厚さで押し出される1または2以上の中間層材スリットと、
前記上層材溜りに連通しており前記上層材が前記所定の幅または該所定の幅より狭い幅と所定の厚さで押し出される上層材スリットとを具備し、
前記下層材スリットの先端と前記1または2以上の中間層材スリットの先端と前記上層材スリットの先端とは前記多層材塗布用ノズルのノズル口または該ノズル口から内部に入った位置に近接して設けられ、
前記下層材スリットから押し出される前記下層材と前記1または2以上の中間層材スリットから押し出される前記1または2以上の中間層材と前記上層材スリットから押し出される前記上層材とが密着した状態で前記ノズル口から押し出されることを特徴とする多層材塗布用ノズル。
【請求項6】
前記中間層材スリットと平行な方向に前記中間層材の層の数に1を加えた数に分割され、前記下層材注入口と前記1または2以上の中間層材注入口と前記上層材注入口が上面に、前記下層材溜りが一方の側面に、前記上層材溜りが他方の側面に、前記1または2以上の中間層材溜りが1または2以上の分割面の一方に、それぞれ設けられたノズル本体と、
前記下層材スリットの所定の厚さに相当する厚さを有する下層材スペーサーと、
前記1または2以上の中間層材スリットの所定の厚さに相当する厚さを有する1または2以上の中間層材スペーサーと、
前記上層材スリットの所定の厚さに相当する厚さを有する上層材スペーサーと、
下層材カバーと上層材カバーとを具備し、
前記分割されたノズル本体の1または2以上の分割面に前記1または2以上の中間層材スペーサーを挟んで前記ノズル本体が分割可能に組み付けられ、前記ノズル本体の一方の側面に前記下層材スペーサーを挟んで前記下層材カバーが着脱可能に取付けられ、前記ノズル本体の他方の側面に前記上層材スペーサーを挟んで前記上層材カバーが着脱可能に取付けられてなることを特徴とする請求項5に記載の多層材塗布用ノズル。
【請求項7】
前記下層材注入口と前記下層材溜りの間には前記下層材溜りの幅以下の幅を有する下層材溝部が設けられており、前記下層材溝部と前記下層材溜りとの間は複数の通路で連通しており、
前記1または2以上の中間層材注入口と前記1または2以上の中間層材溜りの間にはそれぞれ前記中間層材溜りの幅以下の幅を有する中間層材溝部が設けられており、前記中間層材溝部と前記中間層材溜りとの間は複数の通路で連通しており、
前記上層材注入口と前記上層材溜りの間には前記上層材溜りの幅以下の幅を有する上層材溝部が設けられており、前記上層材溝部と前記上層材溜りとの間は複数の通路で連通していることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の多層材塗布用ノズル。
【請求項8】
前記基材表面の塗布方向に垂直な湾曲形状に沿って前記ノズル本体の先端を始めとする先端部分が長手方向(幅方向)に湾曲していることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載の二層材塗布用ノズルまたは請求項5乃至請求項7のいずれか1つに記載の多層材塗布用ノズル。
【請求項9】
基材表面に塗布される下層材と該下層材の上に塗布される1または2以上の中間層材と該中間層材の上に塗布される上層材とからなる三層以上の多層型塗布材を効率的に塗布するための多層材の塗布方法であって、
前記下層材を圧力を掛けて所定の幅及び所定の厚さの開口を有するスリットを通して押し出す工程と、
前記1または2以上の中間層材を外部への押し出し口でまたは該外部への押し出し口の手前で前記下層材の上面に密着させながら圧力を掛けて所定の幅及び所定の厚さの開口を有するスリットを通して押し出す工程と、
前記上層材を前記外部への押し出し口でまたは外部への前記押し出し口の手前で前記1または2以上の中間層材の上面に密着させながら圧力を掛けて所定の幅及び所定の厚さの開口を有するスリットを通して押し出す工程と、
前記密着した下層材、1または2以上の中間層材及び上層材を前記外部への押し出し口から押し出しながら前記下層材の下面を前記基材表面に密着させる工程と
を具備することを特徴とする多層材の塗布方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2007−144325(P2007−144325A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−343406(P2005−343406)
【出願日】平成17年11月29日(2005.11.29)
【出願人】(000100780)アイシン化工株式会社 (171)
【Fターム(参考)】