説明

二極性位置特異的特徴を有する粒子およびその調製プロセス

本発明は、二極性位置特異的特徴を有する粒子およびその調製プロセスに関する。本発明の目的は、表面特徴が同一でない空間的に特異的な2つの部位を表面上に有する二極性位置特異的特徴を有する粒子を提供することである。表面シートの1つの配位カチオンに付着したオルガニルまたはオルガノヘテリル基を有する非対称の粘土前駆体を位置特異的に処理することによって調製された粒子が、表面特徴が同一でない空間的に特異的な2つの部位を表面上に有する二極性位置特異的特徴を有する粒子を提供することが見いだされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二極性位置特異的特徴を有する粒子およびその調製プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
明細書全体にわたる先行技術に関しての議論はいずれも、先行技術が広く知られていることまたは先行技術がこの分野における一般的な常識の一部を形成することを認めるものとして考慮されるべきではない。
【0003】
露出した表面化学基の非対称の分布を有する粒子は、多様な分野において非常に多くの用途を有する可能性があるといわれている。このような非対称の粒子は、液−液または気−液界面から脱着するために実質的に高いエネルギー供給を必要とし、その結果として、このような粒子は、濃度または粒子の含量およびこの粒子によって形成されるエマルションの寿命という観点において、等方的に分布した表面化学基を有する粒子と比較すると、エマルションおよび/またはフォーム安定剤としてより効率が高いと予測される。このような非対称の粒子は、電/磁場において自身を配向する能力を有し、二重機能性の目的でまたは刺激応答性の装置において使用され、超特定のアセンブリ等のための遮断を構築する際に使用されることが予測される。
【0004】
このような二極性の表面特徴を有する粒子を合成する計画は、2つのカテゴリー、すなわち(a)単一層による方法、および(b)バルクによる方法に大きく分類できる。
【0005】
単一層による方法は位置選択的な表面の改変方法であって、この方法においては、均質な粒子の2分の1が保護され、露出した表面上において制御された反応が実行される。報告されている計画は、(i)一方の半球の表面を改変している間他方の半球を一時的にマスクし、(ii)粒子が面を遮蔽することによって面が保護されるように反応性の指向性磁束または磁場を使用し、(iii)マイクロコンタクトプリンティングを行い、(iv)手順の途中で粒子が回転できないと想定して、界面において反応性の媒体と部分的に接触させるものである。
【0006】
典型的には、単一層によるアプローチにおいて、異方的に分布した表面化学基を有する粒子は、表面異方性を有さない前駆体粒子から位置選択的な表面の改変によって調製される。上記の計画を使用するこのような粒子の設計および合成の例は、非特許文献1の論評の中に記載されている。過去に使用されたアプローチの1つが特許文献1(Th. Goldschmidt AG、1987)中に開示されており、これには、100ミクロン未満のサイズのエマルションを安定化または不安定化させるための粒子であって、親水性基および疎水性基が非統計的な様式で異方的に分布するように一方の側面には親水性基を、他方の側面には疎水性基を有するような断片を含む粒子が記載されている。このような断片を得るための方法の1つは、中空微小球体を共有することによるものである。記載された方法のいずれにおいても、前駆体材料は、例えばシリカ、アルミナ、中空微小球体、ミクロゲル、炭素およびデンプン等の表面基の均質の分布を有する。1:1粘土等の非対称の粒子から開始するプロセスは記載されていない。
【0007】
さらに、このような非対称の粒子を調製するための単一層による方法は、典型的には、気−液、液−液または固−気界面において前駆体粒子を集合させることによって開始する。次いで、界面における粒子が、界面の一方の側面から位置選択的に処理される。したがって、このような方法のスケールアップは、どのような界面の領域が発生する可能性があるかによって制限される。さらに、処理の位置選択性を確実にするために、界面における粒子の回転が抑止されている必要がある。
【0008】
二極性の表面特徴を有する粒子を合成するためのバルクによる方法が2、3通り報告されている。アプローチの1つにおいては、事前に形成されたコアシェルナノ粒子を相分離させ、同時にまたは続いて、1つの成分と化学反応させる。例えば、銀−シリカ(Ag−SiO)コアシェルナノ粒子が、銀に対する強い酸化剤である分子ヨウ素との反応を受ける。この結果として、銀のコアがシリカのシェルに付着したままでシェルから相分離し、雪だるまのような粒子を形成している。別の例において、二極性の表面特徴を有するナノ粒子が、前駆体の表面上における単一の粒子の制御された核形成および成長に基づいて合成されている。別の例においては、ボトムアップ式のアプローチを使用して超分子の粒子(デンドリマー)が合成されており、フラクタルのような編成を保有する巨大分子が合成されている。
【0009】
しかし、従来のバルクによる方法においては二極性の表面特徴を有する粒子の収率は比較的低く、こうした方法は実験室規模での調製においてのみ適切である。さらに、従来の方法は、比較的、より高価である。二極性位置特異的特徴を有する粒子を費用対効果の大きな様式によって大規模に製造することに適応できる信頼できる方法はない。
【0010】
一方、前駆体材料として粘土を用いた有機粘土または有機−無機ハイブリッド材料を製造するための方法がいくつか知られている。しかし、このような有機変性粘土粒子の二極性の表面特徴に関する報告はない。
【0011】
非特許文献2には、カオリナイトのグラフト化誘導体の合成が記載されている。カオリナイトの内部表面の水酸基をアルコールでエステル化し、ジメチルスルホキシド層間挿入された粘土で開始するものである。これらのプロセスにおいては、予備的に層間挿入されたカオリナイトを使用することが必須である。非特許文献3には、カオリナイトの層の間の表面をプロパンジオールを用いてエステル交換することによって有機変性することが記載されている。メトキシ変性されたカオリナイトを出発原料として使用し、プロパンジオールと反応させてヒドロキシプロポキシ変性されたカオリナイトを調製する。これらの先行技術文献には、出発原料として1:1粘土が記載されている。しかし、グラフト化剤は炭素原子4個未満の小さな有機分子であり、したがって、得られる粒子は、非統計的な様式で異方的に分布した親水性および疎水性基を有していない。
【0012】
他の文献では、粘土粒子等の無機粒子の被覆が報告されている。例えば特許文献2または特許文献3等の文献においては、このような被覆は、被覆の材料に依存して極性または無極性であることができる。これらの公報においては、粘土は単に担体として作用する。被覆された粒子についての開示の別の例は特許文献4であり、粘土粒子(カオリナイト)が開示され、粘土粒子は、まず最初に有機ジアミンで被覆され、次いで脂肪酸で被覆されることによって、有機性の非極性の媒体および中間の極性の材料において全般的に適用することができる疎水性で親有機性の粒子状の材料を提供する。このような処理によれば粒子は非極性の媒体において使用するのに適切なものとなるが、極性の媒体中では分散することができないために、粒子は極性の材料において使用するのには不適切となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第4,715,986号明細書
【特許文献2】英国特許第867,752号明細書
【特許文献3】欧州特許第927,748号明細書
【特許文献4】米国特許第3,211,565号明細書
【特許文献5】米国特許第3,211,556号明細書
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Perro、J. Material Chem.、2005年、15、3745〜3760頁ページ
【非特許文献2】GardolinskiおよびLagaly、Clay Minerals、2005年、40、537〜546頁
【非特許文献3】ItagakiおよびKuroda、J Material Chem.、2003年、13、1064〜1068頁
【非特許文献4】B. P. Binks、Europhys Lett、1991年、16、53
【非特許文献5】B. P. Binks、Curr、Opin、Colloid、Interface Sci、2000年、7、21
【非特許文献6】B. P. Binks、J Phys Chem Chem Phys、2000年、2、2959
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従来技術における制限を考慮して、本発明の目的の1つは、従来技術における不利な点の少なくとも1つを克服するもしくは改良すること、または有用な代案を提供することである。
【0016】
本発明の別の目的は、表面特徴が同一でない空間的に特異的な2つの領域を表面上に有する二極性位置特異的特徴を有する粒子を提供することである。
【0017】
本発明のさらに別の目的は、上記特異的な表面の一方が親水性であり、特異的な表面の他方が疎水性である、空間的に特異的な2つの領域を表面上に有する二極性位置特異的特徴を有する粒子を提供することである。
【0018】
本発明のさらに別の目的は、比較的低濃度で乳化することができる、二極性位置特異的特徴を有する粒子を提供することである。
【0019】
本発明のさらに別の目的は、比較的低い粒子含量において比較的より安定なエマルションを提供することができる、二極性位置特異的特徴を有する粒子を提供することである。
【0020】
本発明のさらに別の目的は、表面特徴が同一でない空間的に特異的な2つの領域を表面上に有する二極性位置特異的特徴を有する粒子を大規模に製造するために使用することができる、信頼できる製造プロセスを提供することである。
【0021】
本発明のさらに別の目的は、水中油型エマルションの調製において使用するのに適切な、HLBの高い界面活性剤の特性に類似する特性を有する粒子を提供することである。
【0022】
ナノサイズまたはマイクロサイズの粒子はエマルションを安定化させることができ、界面活性剤を含まないエマルションを形成できることが知られている。しかし、このようなエマルションは、固体粒子を比較的高い含量で要求する。さらに、エマルションは比較的安定ではない。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明者は、予想外にも、表面シートの1つの配位カチオンに付着したオルガニルまたはオルガノヘテリル基を有する非対称の粘土前駆体を位置特異的に処理することによって調製された粒子が、表面特徴が同一でない空間的に特異的な2つの領域を表面上に有する二極性位置特異的特徴を有する粒子を提供することを見いだした。
【0024】
本発明によれば、前駆体が非対称の1:1または2:1:1粘土粒子であり、粘土粒子が交互の四面体および八面体シートを有し、1つの外部表面平面が四面体シートで終結し、別の外部表面平面が八面体シートで終結しており、3個を超える炭素原子を有しオルガニルまたはオルガノヘテリル基から選択される化学基が表面シートの1つの外側側面上にある配位カチオンに付着している、二極性位置特異的特徴を有する粒子が提供される。
【0025】
本発明の別の態様によれば、前駆体が非対称の1:1または2:1:1粘土粒子であり、粘土粒子が交互の四面体および八面体シートを有し、1つの外部表面平面が四面体シートで終結し、別の外部表面平面が八面体シートで終結している、二極性位置特異的特徴を有する粒子を調製するためのプロセスであって、
a.前駆体を鉱酸で処理するステップと、
b.アルカリを添加することによってpHを8より上に上げるステップと、
c.C10〜C22カルボン酸のアルカリ金属塩を50から150℃の温度において添加するステップと、
d.鉱酸を添加することによってpHを7より下に下げるステップと、
e.二極性位置特異的特徴を有する粒子を含む固体生成物を分離するステップと、
を含むプロセスが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】(A)カオリナイト、(B)シリカおよび(C)アルミナのフーリエ変換赤外(FTIR)の差スペクトルである。3つの粒子はいずれも、本発明によるオレイン酸と反応した。
【図2】未処理のカオリナイト粒子および本発明の位置選択的に処理された粒子のX線スペクトルであり、層間の空間において差異が生じていないことを呈示する。図面において、位置選択的なサンプルはTSとして指し示され、左側のY軸の目盛りによって示され、一方、未処理の粒子はUTとして指し示され、右側のY軸の目盛りによって示される。
【発明を実施するための形態】
【0027】
[前駆体]
本発明による二極性位置特異的特徴を有する粒子の前駆体は、好ましくは、交互の四面体および八面体シートを有し、外側表面平面が四面体および八面体シートで終結している、非対称の1:1または2:1:1粘土粒子である。1:1粘土の粒子が前駆体として特に好ましい。
【0028】
本発明において好ましい1:1粘土は、カオリナイトおよび蛇紋石サブグループの鉱物を含む。カオリナイトサブグループに含まれる種は、カオリナイト、ディッカイト、ハロイサイトおよびナクライトである。カオリナイトサブグループの、すなわちカオリナイト、ディッカイト、ハロイサイドまたはナクライトから選択される1:1粘土が特に好ましい。
【0029】
蛇紋石サブグループに含まれる種は、クリソライト、リザダイト、およびアメサイトである。
【0030】
本発明において好ましい2:1:1粘土は、緑泥石群の鉱物を含む。緑泥石は、鉱物学者によっては2:2粘土とも称される。緑泥石は、2:1粘土と同様に、特に結合の弱い水滑石のような層を四面体層の間に有する四面体−八面体−四面体シートを含む。
【0031】
四面体シートは、好ましくは、ケイ素の配位四面体カチオンを含む。四面体シートは、ケイ素以外の、同一有形に置換された配位四面体カチオンも含んでもよい。同一有形に置換された配位四面体カチオンは、アルミニウム、鉄またはホウ素のカチオンを含むが、これらに限定されない。
【0032】
八面体シートは、好ましくは、アルミニウムの配位八面体カチオンを含む。八面体シートは、アルミニウム以外の、同一有形に置換された配位八面体カチオンも含んでもよい。同一有形に置換された配位八面体カチオンは、マグネシウムまたは鉄のカチオンを含む。
【0033】
化学基は、外部表面シートの1つの外側側面上にある配位カチオンに付着していることが好ましい。したがって、化学基は、四面体シートの外側側面上にある配位カチオンに付着している。または、化学基は、八面体シートの外側側面上にある配位カチオンに付着している。好ましい態様によれば、四面体表面シートの外側側面上にある配位カチオンに付着した化学基が八面体表面シートの外側側面上にある配位カチオンに付着した化学基と同一でないという条件で、四面体および八面体表面シートの各々の外側側面上にある配位カチオンは化学基に付着している。
【0034】
化学基は、好ましくは、四面体もしくは八面体シートの表面でないか、または表面シートの内側上にある配位カチオンに付着していない。
【0035】
[オルガニルまたはオルガノヘテリル基]
本明細書中において使用されるオルガニル基という用語は、官能基の種類にかかわらず、炭素原子において遊離原子価を1つ有する任意の有機置換基を意味する。有機置換基という用語は、1つまたは複数の炭素原子を含むあらゆる化学基を含む。
【0036】
本明細書中において使用されるオルガノヘテリル基という用語は、炭素以外の原子において遊離原子価を有する炭素を含有する任意の1価の基を意味する。用語オルガノヘテリル基は、オルガノシリルおよびオルガノシロキサニル化学基を含む。好ましい態様によれば、オルガノヘテリル基は、酸素、窒素、硫黄、リン、またはケイ素から選択される原子において遊離の原子価を満たすことによって配位カチオンに付着している。
【0037】
化学基は、3個を超える炭素原子を有し、好ましくは−R、−O−R、−SO−R、−N(X)−R、−O−PO(X)−R、−O−C(O)−R、−Si(X)−R、および−O−Si(X)−Rから選択され、XおよびXがH、−(CH−CH、Cl、Br、Iからなる群より選択され、nは0から15であり、−Rはオルガニル基である。
【0038】
本発明によれば、オルガニルまたはオルガノヘテリル基は、表面シートの1つの外側側面上にある配位カチオンに付着している。1個を超えるオルガニルまたはオルガノヘテリル基が表面シートの1つに付着することができると構想されている。オルガニルまたはオルガノヘテリル基は、四面体表面シートの配位カチオンに付着していてよい。または、オルガニルまたはオルガノヘテリル基は、八面体表面シートの配位カチオンに付着していてもよい。表面シートの1つの外側側面上にある配位カチオンに化学基が付着した後、他の表面シートの外側側面上にある配位カチオンが第2の化学基に付着する。第2の化学基は、任意の化学的部分であることができる。好ましくは、第2の化学基は、無機化学基またはオルガニルもしくはオルガノヘテリル化学基から選択される。第2の化学基の非限定的な例のいくつかは、−NO、−NH、−SO、−SO、−CH、および−CH−CHを含む。
【0039】
好ましくは、四面体表面シートの配位カチオンは、酸素において遊離の原子価を有するシランであるオルガノヘテリル基に付着している。
【0040】
[二極性位置特異的特徴を有する粒子]
四面体または八面体表面シートの配位カチオンにオルガニルまたはオルガノヘテリル基が付着しているために異方的に分布した表面化学基を有する二極性位置特異的特徴を有する粒子は、それ以外の粒子とは表面特徴が異なる少なくとも1つの空間的に特異的な領域を表面上に有する。二極性位置特異的特徴を有する粒子は、表面特徴が同一でない2つの特異的な領域を表面上に有していてもよい。特に好ましくは、粒子は、表面特徴が特異的である空間的に特異的な2つの外側面を有する。特定のオルガニルおよび/またはオルガノヘテリル基を選択し、これらを四面体および/または八面体表面シートの配位カチオンに選択的に付着させることによって、多様な種類の異方性の特徴を、二極性位置特異的特徴を有する粒子の表面に付与することが可能であることが構想されている。表面特徴の異方性または非対称性は、疎水性、電気の電荷密度、色、蛍光、ピエゾ応答、および磁気特性を含むが、これらに限定されない。
【0041】
[異方性の疎水性を有する粒子]
好ましくは、粒子は、特異的な外側面の一方が親水性であり、特異的な外側面の他方が疎水性である、表面特徴が特異的である空間的に特異的な2つの外側面を有する。
【0042】
−R基は−Rであり、X−Rの形態である親分子の任意の1つが10〜60ergs/cmの範囲の表面エネルギーを有し、XはH、OH、フェニル、O−CH、Cl、BrまたはIから選択される。理論に制限されるものではないが、親分子X−Rの表面エネルギーが10〜60ergs/cmであり、オルガニル基−Rまたは−Rを含有するオルガノヘテリル基が表面シートの1つの配位カチオンに付着している場合に、二極性位置特異的特徴を有する粒子の表面には疎水性の特徴が選択的に付与されていると考えられる。
【0043】
または、−R基は−Rであり、X−Rの形態である親分子の任意の1つがpH7においてゼロ未満またはゼロに等しい分配係数またはlogDの値を有し、XはH、OH、フェニル、O−CH、Cl、BrまたはIから選択される。
【0044】
本明細書中において使用されるLogDという用語は、所与の温度、通常25℃において、オクタノール中における(イオン化していないおよびイオン化した)あらゆる種の分子の平衡濃度と、水相中における同種の分子の平衡濃度との比率を意味する。logDは、イオン化した種が分子の中性の形態としても考慮されるLogPとは異なる。
【0045】
好ましい態様によれば、一方の表面シートの外側側面上にある配位カチオンは−Rが−Rである化学基に付着しており、他方の表面シートの外側側面上にある配位カチオンは−Rが−Rである基に付着している。
【0046】
好ましくは、オルガニルまたはオルガノヘテリル基は、3個を超える、より好ましくは8個を超える、最も好ましくは20個を超える炭素原子を有する。理論に制限されるものではないが、表面の疎水性は炭素原子の数の増加と共に増大すると考えられる。オルガニルまたはオルガノヘテリル基における炭素原子の数は、好ましくは8〜30、より好ましくは10〜22、最も好ましくは12〜18、またはさらには14〜18である。
【0047】
小さなオルガニルまたはオルガノヘテリル基を使用することについて、これらの基は外側表面上にだけでなく層間の空間の内側に結合できるほど小さいために好ましくない。層間の空間の内側への結合は、特に、3個またはそれ未満の炭素原子を有するオルガニルまたはオルガノヘテリル基の場合に起こる。
【0048】
1つの表面が疎水性の特性を有し残りの表面が親水性の特性を有する本発明による粒子は、気−固、気−液、液−液および固−液界面等の界面において粒子が凝集することを伴ういくつかの用途において有用である。本発明の二極性位置特異的特徴を有する粒子は、フォームおよびエマルションを安定化させるために特に有用である。
【0049】
これらの粒子は、HLBの高い界面活性剤の代わりとして特に適切であり、粒子がまず最初に油相中に次いで水相中に懸濁されたかまたは逆であるかにかかわらず、水中油型エマルションを形成することができる。極性または無極性のいずれか一方の極性のみを有する粒子(それぞれ、未処理の粘土または有機粘土等)は、結果として、連続相に粒子がまず最初に分散するようなエマルションになるであろう(非特許文献4で報告されている通り)。特定の理論のいずれにも縛られるものではないが、分子界面活性剤の系に関しては、エマルションの形成の性質は充填の程度に依存し、そして次に充填の程度によってエマルションの曲率の性質が決定されることが既知である。界面における分子界面活性剤の充填は分子上の疎水性および親水性基の関数であり、通常は親水性親油性バランス(HLB)数として表される。HLB数の高い界面活性剤は、その大きな親水性基による水の相への接触を最大にするために、結果として常に水中油型エマルションになるであろう。したがって、分子の幾何学的配置は、これらの界面活性剤によって形成されたエマルションの性質を決定する際に重要な役割を果たす。
【0050】
一方、本発明の粒子は、その固有の幾何学的配置のためにHLB数の高い界面活性剤の類似体粒子になると構想することができる。補足説明として、これらの粒子の寸法は、X−Y次元において好ましくは100〜1000nm、好ましくは400nm〜600nm、Z方向は100nm〜500nm、好ましくは150nmを超えるが250nm未満である。脂肪酸と反応した後、表面の1つが変性されて疎水性になる。脂肪酸と反応したために生まれるこの疎水性の層の寸法(すなわち厚み)は、上記脂肪酸のテイルの長さに依存している。例えば、C18脂肪酸は、典型的には、約2〜3nmの厚み(炭化水素基の直鎖編成に基づいて計算される)を与える。この結果として、粒子の側面の1つは極めて薄い炭化水素層を有し、一方それ以外の粒子は親水性のままとなる。これはHLBの高い界面活性剤の系に類似する幾何学的配置であり、この幾何学的配置は、理論によれば、粒子の最初の濡れ性に関係なく水中油型エマルションとなる要因である。
【0051】
本発明の二極性位置特異的特徴を有する粒子は、同じ粒子含量において未処理の粒子と比較して比較的より安定なエマルションを提供し、安定なエマルションを得るために比較的低い粒子含量を要求し、乳化剤として有用である。本発明の粒子を使用して得られたエマルションの他の利点は、
a.電解質の存在に対する比較的高い許容性、
b.触感を損なうことなく水中油型エマルションに比較的多くの油相を配合できるためにより多くの非水性の活性成分を運搬できる融通性、
c.同じ粒子含量における未処理の粒子と比較して比較的高い粘度および降伏応力、
d.界面活性剤の比較的低い濃度におけるエマルションの形成、および界面活性剤を含まないエマルションを作ることができる可能性
を含む。
【0052】
本発明の別の態様によれば、水、油、および本発明の二極性位置特異的特徴を有する粒子を含む水中油型エマルションが提供される。二極性位置特異的特徴を有する粒子は、好ましくはエマルションの0.1〜99重量%、より好ましくは1〜30重量%、最も好ましくは1〜15重量%である。
【0053】
本発明による位置選択的に選択される粒子は、比較的より安定な気−液フォームを提供する。
【0054】
[異方性色を有する粒子]
−R基は−Rであり、X−Rの形態である親分子の任意の1つが、極性または非極性の溶媒中で200nm〜700nmの波長において少なくとも1つの吸収ピークを有する。二極性の位置特異的な色の特徴を有する粒子は、有利には、分散相の不純物を調査するためのセンサとして使用することができる。
【0055】
[異方性蛍光を有する粒子]
−R基はRであり、X−Rの形態である親分子の任意の1つが、極性または非極性の溶媒中で200nm〜700nmの波長において少なくとも1つの発光ピークを有する。
【0056】
[異方性の電気の電荷密度を有する粒子]
−R基は−Rであり、X−Rの形態である親分子の任意の1つが、0.1μohm cmを超える抵抗率を有する。
【0057】
[異方性のピエゾ反応の特徴を有する粒子]
−R基は−Rであり、X−Rの形態である親分子の任意の1つが、1,2,m,222,mm2,4,−4,422,4mm,−42m,3,32,3m,6,−6,622,6mm,−62m,23,−43mから選択される圧電性の結晶分類を有する。
【0058】
[磁気特性]
−R基は−Rであり、X−Rの形態である親分子の任意の1つが常磁性または反磁性である。
【0059】
本発明による二極性位置特異的特徴を有する粒子の好ましい例のいくつかを以下に示す。
【0060】
[プロセス]
オルガニルまたはオルガノヘテリル化学基が四面体または八面体表面シートのいずれかの外側側面上にある配位カチオンに選択的に付着しているような任意の化学反応または一連の反応を、前駆体が非対称の粘土である場合に、本発明による二極性位置特異的特徴を有する粒子を調製するために使用することができる。反応の選択性は、必須の特色である。同じオルガニルまたはオルガノヘテリル基が両方の、すなわち八面体および四面体表面シートの配位カチオンに付着しているような化学反応または一連の反応は、本発明の範囲から除外される。
【0061】
当然のことながら、当業者は、オルガニルまたはオルガノヘテリル化学基を表面シートの1つの配位カチオンに選択的に付着させることによって本発明の二極性位置特異的特徴を有する粒子を調製するために、任意の反応または一連の反応を選出してもよい。
【0062】
グリニャール試薬または有機リチウム化合物を、四面体表面シートの配位カチオンへのオルガニル基の反応体付着物として使用することができる。
【0063】
ある態様によれば、二極性位置特異的特徴を有する粒子を調製するためのプロセスであって、
a.前駆体の粘土を鉱酸で処理するステップと、
b.アルカリを添加することによってpHを8より上に上げるステップと、
c.C10〜C22カロボキシ酸のアルカリ金属塩を50から150℃の温度において添加するステップと、
d.鉱酸を添加することによってpHを7より下に下げるステップと、
e.二極性位置特異的特徴を有する粒子を含む固体生成物を分離するステップと
を含むプロセスが提供される。
【0064】
カルボン酸は、好ましくは、炭素原子8〜30個、より好ましくは12〜18個、最も好ましくは14〜16個を有する。本発明によるカルボン酸は、飽和または不飽和であってよい。不飽和の酸が特に好ましい。使用することができるカルボン酸のいくつかの非限定的な例は、オレイン酸およびリノール酸を含む。
【0065】
この反応においては、オルガノヘテリル基(酸素において遊離の原子価を有する脂肪酸)は、八面体シートの配位カチオンに付着している。
【0066】
(実施例)
本発明を実施例を使って示す。実施例は例示することのみを目的とし、本発明の範囲を何ら限定するものではない。
【0067】
[実施例1:エマルションの挙動]
(位置選択的な粒子を調製するプロセス)
カオリナイトを前駆体として使用した。カオリナイト(実験室グレードのカオリナイト、例えばLoba)1グラムを0.1N塩酸(例えばEmerck)100mlに添加し、混合物をバスソニケーター(例えばエルマトランスソニック(Elma Transsonic)460/H超音波処理器)中において15分間にわたって超音波処理した。これに続き、この混合物を卓上用のマグネティックスターラーによって常時撹拌しているところに、水酸化ナトリウムのペレット0.4gを添加した。水酸化ナトリウムのペレットが溶解した後、pHメーター(例えばOrion、型式720A番)を使用して系のpHを測定したところ、11.5であった。過剰のオレイン酸ナトリウム(純度99%、例えばLoba)を反応混合物に添加して、濃度を90g/lとした。反応混合物を90℃において2時間にわたって常時撹拌し、一晩(12時間)保持して平衡とした。次に、未反応の石けんをその遊離脂肪酸に変換するために、系のpHを、1N HClを滴下することによって6.5に調整した。極微量の未反応の石けんを除去するために、反応混合物を遠心分離し、沈澱した粘土を水およびアセトンで繰り返し洗浄した。二極性位置特異的特徴を有する粒子を得るために、反応した粘土を、熱風処理機中で55℃において2時間にわたって乾燥させる。当然のことながら、本発明のプロセスは界面の領域に依存するものではなく、したがってスケールアップが比較的容易である。
【0068】
本発明の粒子を、さらに、先行技術中に開示されている被覆された粒子と比較した。特許文献5に開示される被覆された粘土(カオリナイト)材料を、特許文献5に記載されるように合成した。材料をさらに下記の実験に使用した。
【0069】
[位置選択的に処理された粒子の特徴の決定]
(赤外測定)
上述したものと同じ手順に従う独立した反応を、カオリナイトの代わりにアルミナ(クロマトグラフィーグレード、例えばS. D Fine−chem)およびシリカ(アエロジル(Aerosil)200、例えばDegussa)を用いて同様に実行した。アエロジル200(例えばDegussa)およびクロマトグラフィーグレードのアルミナ、Al(例えばS. D Fine−chem)をそれぞれ模範のシリカおよびアルミナ表面として使用した。3つの基質の差IRスペクトルを図1中に示す。
【0070】
次に、図1中に示されるカオリナイトおよびアルミナから得られたスペクトルについて、1710cm−1におけるオレイン酸の−COOH振動ピークは、1550〜1570cm−1および1460〜1470cm−1における新しい一組の大きなピークによって置き換えられた。1650〜1550cm−1付近の非対称の伸縮および1400cm−1付近の対称の伸縮バンドは、カルボン酸アニオンに特有の特徴である。このことは、新しいオレイン酸アルミニウム化合物がカルボン酸アニオンを経てカオリナイトおよびアルミナ表面の両者の上に形成されたことを示す。また、カオリナイトおよびアルミナの両者について得られた2つの新しいピークが互いに近くに位置することが見いだされ、このことは、オレイン酸の中の−COOHとアルミナまたはカオリナイトの両者の表面上にあるAl+3との間に二座のカルボン酸塩錯体または架橋結合(−COO−Al+3)環境が形成されたことを示唆する。
【0071】
上述のピークに加えて、カオリナイトおよびアルミナについて2950〜2850cm−1の間に別の新しい一組のピークが現れる。これらのピークはC−H伸縮の特徴である。メチレン基の非対称および対称の伸縮は、2926および2853cm−1付近でそれぞれ生じる。これらのバンドの位置は、脂肪族炭化水素系列において±10cm−1を超えて変動しない。カオリナイトについて2917および2849cm−1ならびにアルミナについて2924および2953におけるピークの出現は、オレイン酸の炭化水素鎖のメチレン基に由来する。このことは、さらに、反応がアルミナおよびカオリナイトの両者の表面上において確かに生じたことを示す。一方、反応したシリカは、特徴のないスペクトルを示す。カルボン酸アニオンおよびメチレンの両者の伸縮の振動数は、とりわけシリカの場合には存在しない。このことは、シリカはオレイン酸との反応に関係しなかったことを示す。したがって、上述のプロセスにおいて、オルガノヘテリル基(酸素において遊離の原子価を有する脂肪酸)は、八面体シートの配位カチオン、すなわちアルミニウムに付着している。
【0072】
[乳化の研究]
(エマルションの調製およびエマルションの安定性の評価)
粒子0.1gを目盛り付きの50mLターソン(Tarson)遠心分離管の中に入れ、脱イオン水(Millipore)5mlをその中に添加した。混合物を45分間にわたってソニケーターバス(SS Microsupersonics)中において超音波処理した。次いで、LLPO(軽質流動パラフィン油、Raj Petrochemicalsより供給)5mlを水−粒子混合物に添加し、得られる混合物をUltra Turrax T25ホモジナイザーを使用して10分間にわたって約6500rpmにおいて均質化した。乳化した油の体積を、最初と24時間後に記録した。加速安定性試験を、低速および高速遠心分離(LSCおよびHSC)にエマルションを供することによって実行した。遠心分離をレミ(Remi)遠心分離機中において約500rpmにおいて1分間にわたって(LSC)、さらに4000rpmにおいて1分間にわたって(HSC)実施した。乳化した油の体積を、LSCおよびHSCの後で記録した。
【0073】
エマルションを、エマルションの約2重量%の粒子濃度ならびにエマルションのそれぞれ約49重量%の油および水を使用して調製した。エマルションを、本発明の二極性位置特異的特徴を有する粒子(実施例1)、未反応のカオリナイト(比較例1−A)、有機粘土(English India China Clayから得られた、アミノシラン処理された含水粘土によって処理されたアムシャイン−カオリナイト(Amshine−Kaolinite))(比較例1−B)および疎水性シリカ(デグサアエロジル(Degussa Aerosil) R974)(比較例1−C)を使用して生成した。
【0074】
【表1】

【0075】
未処理の粒子および有機粘土を含むエマルションは比較的不安定であるが、一方、比較的安定である疎水性シリカを含むエマルションは、粒子サイズが小さいために疎水性シリカとして形成するのが至極困難であり、潜在的に呼吸器系にとって有害であり、容易に取り扱うことができない。さらに、疎水性であるため、シリカを混合してエマルションを形成することは至極困難である。結果から、本発明の二極性位置特異的特徴を有する粒子は、エマルションに比較的高い安定性を付与し、それと同時に取り扱いおよび加工が容易であることが明らかである。
【0076】
[電解質の存在下におけるエマルションの安定性]
電解質の濃度を変え、本発明による二極性位置特異的特徴を有する粒子(実施例2〜4)を使用して、エマルションを形成した。比較例2−A〜4−Aは、二極性位置特異的特徴を有する粒子の代わりに未処理の粘土粒子を使用したことを除いては実施例2〜4と同一であった。
【0077】
【表2】

【0078】
結果から、本発明による二極性位置特異的特徴を有する粒子は、比較的多くの電解質の存在を許容できるエマルションを形成すると判断することができる。
【0079】
[界面活性剤の存在下におけるエマルションの安定性]
以下の実施例はいずれも、エマルションの1重量%の粒子含量である。油および水は両方ともエマルションの約49.5体積%である。界面活性剤はエマルションの1重量%である。
【0080】
【表3】

【0081】
界面活性剤の非存在下において、本発明の二極性位置特異的特徴を有する粒子を使用してエマルションを形成することができることが既に示されている。上記の結果から、粒子が同じ含量である場合に、本発明の二極性位置特異的特徴を有する粒子を使用して形成されたエマルションは、未処理の粒子を使用して形成された対応するエマルションと比較して比較的より安定であることが明らかである。
【0082】
[乳化することができる油の種類]
エマルションを、エマルションの約2重量%の粒子濃度ならびにエマルションのそれぞれ約49重量%の油および水を使用して調製した。エマルションを、本発明の二極性位置特異的特徴を有する粒子(実施例8および9)、未反応のカオリナイト(比較例8−Aおよび9−A)、有機粘土(English India China Clayから得られた、アミノシラン処理された含水粘土によって処理されたアムシャイン−カオリナイト)(比較例8−Bおよび9−B)および疎水性シリカ(デグサアエロジルR974)(比較例8−Cおよび9−C)を使用して生成した。使用した油およびその表面張力を、エマルションの安定性に関する結果と共に以下の表に示す。
【0083】
【表4】

【0084】
結果から、本発明による二極性位置特異的特徴を有する粒子が、広い範囲の表面張力の値を有する油と共にエマルションを提供したことが明らかである。本発明の二極性位置特異的特徴を有する粒子によって作られたエマルションは、従来技術の粒子を使用して作られたエマルションと比較して比較的より安定である。
【0085】
[エマルションの粘度]
エマルションを、エマルションの10重量%の二極性位置特異的特徴を有する粒子ならびにエマルションのそれぞれ約45重量%の油(軽質流動パラフィン油)および水を使用して調製した(実施例10)。実施例10に対応する比較例10−Aを、未処理の粒子を使用して作製した。
【0086】
エマルションは試験管の中で作製した。次いで、試験管を水平な位置に配置し、試験管から流れ出たエマルションの量および試験管の中に残存する量を15分後に記録した。結果を以下の表に示す。
【0087】
【表5】

【0088】
結果から、本発明の二極性位置特異的特徴を有する粒子を使用して作られたエマルションは、対応する未処理の粒子を使用して作られたエマルションと比較して比較的高い降伏応力および粘性の特徴を有することが明らかである。
【0089】
[フォームの発生および安定性]
フォームの発生および安定性を、二極性位置特異的特徴を有する粒子(実施例11)および未処理の粒子(比較例11−A)を使用して発生させたフォームについて評価した。フォームを、粒子2gを脱イオン水10mLに添加し、高速ホモジナイザー(ウルトラトラックスメイク(Ultratrax make))の中で6400rpmにおいて10分間にわたって混合物を撹拌することによって調製した。フォームの最初の体積を、撹拌を停止した後で測定した(t=0)。さらに、フォームの体積をt=15分においても測定した。結果を以下の表に示す。
【0090】
【表6】

【0091】
結果から、本発明の二極性位置特異的特徴を有する粒子は、未処理の粒子と比較して比較的大きな体積のフォームを発生させることができ、さらに、比較的高い安定性を有するフォームを提供することができることが明らかである。
【0092】
(実施例2:均質な粒子および二極性の粒子の比較) 上記で説明したように、理想的に二極性である粒子は、界面活性剤の粒子状の類似体のように挙動するであろうという理由から、上述のように分散媒体に依存するような状態を呈示しないことが予期される。実験の後で粒子が二極性であるか均質であるかの立証を実行した。
【0093】
[実験プロトコール]
粒子0.1gを目盛り付きの50mLターソン遠心分離管の中に入れ、脱イオン水(Millipore)5mlをその中に添加した。混合物をソニケーターバス(SS Microsupersonics)中において超音波処理した。次いで、LLPO(軽質流動パラフィン油、Raj Petrochemicalsより供給)5mlを水−粒子混合物に添加し、得られる混合物をウルトラトゥラックスT25ホモジナイザーを使用して10分間にわたって約6500rpmにおいて均質化した。
【0094】
別の一組の実験において、粒子をまず最初に水相中に分散させる代わりに、粒子を油中に分散させ、その後で水を添加した。それ以外の手順は同じである。
【0095】
両方の場合において、連続相の性質を決定するために、油相を蛍光性の染料であるナイルレッド(2.24 10−6mM)でドープした。この微量の染料を添加しても表面張力(0.05mNm−1)等の油相の特性は変化しないことが確かめられた。相の性質を決定するために、蛍光顕微鏡検査を使用した。
【0096】
[結果]
これら4つの系の蛍光顕微鏡写真を以下に与える(表7)。これらの顕微鏡写真から、本発明の粒子によって形成されたエマルションは粒子の最初の濡れ性に関係なく常に水中油型エマルションになることが観察される。
【0097】
一方、未反応の粒子および特許文献4を使用して調製された粒子によって形成されたエマルションは、粒子の最初の濡れ性に依存して転相を呈する。未反応の粒子および他の均質な粒子によるこの挙動は、非特許文献6中で以前になされた観察と類似しており、2つの異なる相から界面に近づく場合に粒子が遭遇する接触角における差異、すなわち接触角ヒステリシスを考慮して説明することができる。均質な粒子が油相から界面に近づく場合には均質な粒子は前進接触角(水の中に向かって測定される)に遭遇し、一方、均質な粒子が水の相から近づく場合には後退接触角が確立される(水の相から測定される)。
【0098】
本発明の粒子の寸法についての特徴は、X−Y寸法で約500nm以下であり、Z方向で約200nm以下であった。オレイン酸との反応後、約2から3nm以下(炭化水素基の直鎖編成に基づいて計算された)のオレイン酸層があるために、表面の1つが変性して疎水性になる。
【0099】
この結果として、粒子の側面の1つは極めて薄い炭化水素層を有し、一方それ以外の粒子は親水性のままとなる。これはHLBの高い界面活性剤の系に類似する幾何学的配置であり、この幾何学的配置が、恐らくは、粒子の最初の濡れ性に関係なく水中油型エマルションとなる要因であろう。
【0100】
【表7】

【0101】
上記の表中に示されるように、本発明による粒子は、粒子をまず最初に水の中に懸濁することによって開始し、次いで油相と混合させるか、またはまず最初に油の中に懸濁し、次いで水と混合させる乳化プロセスにかかわらず、水中油型エマルションを形成する。未処理の粒子または被覆された粒子(特許文献4の粒子と同様)は連続相を有するエマルションを形成し、連続相は粒子をまず最初に分散させる相である。
【0102】
このことから、先行技術中に開示される未処理の粒子および被覆された粒子は二極性ではなく均質であり、一方、本発明による粒子は偽りなく二極性であることが呈示される。
【0103】
(実施例3:面間隔d)
オルガニルまたはオルガノヘテロイル基が外側表面上のみに存在し層間の空間の中には存在しないことを示すために、X線回折測定(例えばシーメンス(Siemens) D500)を実行した。
【0104】
使用した粒子は、実施例1の位置選択的な粒子および未処理のカオリナイト粘土であった。
【0105】
粘土の格子の内側にあるオレイン酸のインターカレーションの程度を考察するために、反応した粘土のサンプルに対してX線回折測定を実行して、反応の際のオレイン酸の望ましくないインターカレーションを調べた。
【0106】
インターカレーションすると、典型的には7.4Åであるカオリナイトにおける面間隔dが増加する。反応したカオリナイトと未反応のカオリナイトとのX線回折図形を図2中に提示する。未加工のカオリナイトに特徴的なd001ピークが2θ=12.6°において観察され(非常に濃く、シャープで幅が狭い)、これはカオリナイトに特有であることが一般的に知られている0.74nmに対応する。未反応の粒子と本発明の粒子との間に差異は観察されず、このことは、面間隔dにおいてオレイン酸のインターカレーションが全く存在しないことであることを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前駆体が非対称の1:1または2:1:1粘土粒子であり、前記粘土粒子が交互の四面体および八面体シートを有し、1つの外部表面平面が前記四面体シートで終結し、別の外部表面平面が前記八面体シートで終結しており、3個を超える炭素原子を有しオルガニルまたはオルガノヘテリル化学基から選択される化学基が表面シートの1つの外側側面上にある配位カチオンに付着している、二極性位置特異的特徴を有する粒子。
【請求項2】
前記化学基が四面体表面シートの外側側面上にある配位カチオンに付着している請求項1に記載の二極性位置特異的特徴を有する粒子。
【請求項3】
前記化学基が八面体表面シートの外側側面上にある配位カチオンに付着している請求項1に記載の二極性位置特異的特徴を有する粒子。
【請求項4】
前記四面体表面シートの外側側面上にある配位カチオンに付着した化学基が前記八面体表面シートの外側側面上にある配位カチオンに付着した化学基と同一でないという条件で、前記四面体および前記八面体表面シートの各々の外側側面上にある配位カチオンが前記化学基に付着している、請求項1から3のいずれか一項に記載の二極性位置特異的特徴を有する粒子。
【請求項5】
前記オルガノヘテリル基が、酸素、窒素、硫黄、リン、またはケイ素から選択される原子において遊離の原子価を満たすことによって前記配位カチオンに付着している、請求項1から4のいずれか一項に記載の二極性位置特異的特徴を有する粒子。
【請求項6】
前記化学基が−R、−O−R、−SO−R、−N(X)−R、−O−PO(X)−R、−O−C(O)−R、−Si(X)−R、および−O−Si(X)−Rから選択され、−Rがオルガニルまたはオルガノヘテリル基であり、XおよびXがH、フェニル、−(CH−CH、Cl、Br、I、または−Rと同じであっても同じでなくてもよいオルガニルもしくはオルガノヘテリル基からなる群より選択され、nが0から15である、請求項1から5のいずれか一項に記載の二極性位置特異的特徴を有する粒子。
【請求項7】
前記化学基が8個を超える炭素原子を有する、請求項6に記載の二極性位置特異的特徴を有する粒子。
【請求項8】
前記−Rが−Rであり、X−Rの形態である親分子の任意の1つが10から60ergs/cmの範囲の表面エネルギーを有し、XがH、OH、フェニル、−CH、O−CH、Cl、BrまたはIから選択される、請求項1から7のいずれか一項に記載の二極性位置特異的特徴を有する粒子。
【請求項9】
前記−Rが−Rであり、X−Rの形態である親分子の任意の1つがpH7においてゼロ未満またはゼロに等しい分配係数またはlogDの値を有し、XがH、OH、フェニル、−CH、O−CH、Cl、BrまたはIから選択される、請求項1から7に記載の二極性位置特異的特徴を有する粒子。
【請求項10】
一方の表面シートの外側側面上にある配位カチオンが−Rが−Rである化学基に付着しており、他方の表面シートの外側側面上にある配位カチオンが−Rが−Rである基に付着している、請求項8または9に記載の二極性位置特異的特徴を有する粒子。
【請求項11】
前記粒子が、特異的な表面特徴を有する空間的に特異的な2つの外側面を有する、請求項1から10のいずれか一項に記載の二極性位置特異的特徴を有する粒子。
【請求項12】
前記特異的な外側面の一方が親水性で前記特異的な外側面の他方が疎水性である、請求項1から11のいずれか一項に記載の二極性位置特異的特徴を有する粒子。
【請求項13】
前記−Rが−Rであり、X−Rの形態である親分子の任意の1つが、極性または非極性の溶媒中で200nmから700nmの波長において少なくとも1つの吸収ピークを有し、XがH、OH、フェニル、−CH、O−CH、Cl、BrまたはIから選択される、請求項1から12のいずれか一項に記載の二極性位置特異的特徴を有する粒子。
【請求項14】
前記−RがRであり、X−Rの形態である親分子の任意の1つが、極性または非極性の溶媒中で200nmから700nmの波長において少なくとも1つの発光ピークを有し、XがH、OH、フェニル、−CH、O−CH、Cl、BrまたはIから選択される、請求項1から13のいずれか一項に記載の二極性位置特異的特徴を有する粒子。
【請求項15】
四面体表面シートの前記配位カチオンが、酸素において遊離の原子価を有するC10〜C22カルボン酸であるオルガノヘテリル基に付着している、二極性位置特異的特徴を有する粒子。
【請求項16】
四面体表面シートの前記配位カチオンが、酸素において遊離の原子価を有するシランであるオルガノヘテリル基に付着している、二極性位置特異的特徴を有する粒子。
【請求項17】
前記1:1粘土がカオリナイト、ハロイサイト、ディッカイト、またはナクライトから選択される、請求項1から16のいずれか一項に記載の二極性位置特異的特徴を有する粒子。
【請求項18】
前駆体が非対称の1:1または2:1:1粘土粒子であり、前記粘土粒子が交互の四面体および八面体シートを有し、1つの外部表面平面が前記四面体シートで終結し、別の外部表面平面が前記八面体シートで終結している、二極性位置特異的特徴を有する粒子を調製するためのプロセスであって、
a.前駆体と鉱酸とを接触させるステップと、
b.アルカリを添加することによってpHを8より上に上げるステップと、
c.C10〜C22カルボン酸のアルカリ金属塩を50から150℃の温度において添加するステップと、
d.鉱酸を添加することによってpHを7より下に下げるステップと、
e.二極性位置特異的特徴を有する粒子を含む固体生成物を分離するステップと、
を含むプロセス。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−520590(P2011−520590A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−501245(P2011−501245)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【国際出願番号】PCT/EP2009/053707
【国際公開番号】WO2009/118421
【国際公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(590003065)ユニリーバー・ナームローゼ・ベンノートシヤープ (494)
【Fターム(参考)】