説明

二次加工性に優れた二軸配向ポリエステルフィルム

【課題】 二次加工でのフィルムのたるみが少ないため、それによるトラブルが無く、安定して二次加工が可能となる。特に、フィルムとして幅広ミルロールの端縁部に相当するスリットロールあっても、コーターの条件調整などが不要となる印刷、コーティングなど二次加工性に優れた二軸配向ポリエステルフィルムを提供すること。
【解決手段】 実質的にポリエチレンテレフタレートを主成分とするポリエステル樹脂からなる逐次二軸延伸フィルムであって、該フィルムからなるロールの表層からフィルムを巻き出し、長手方向に測定した際のたるみ率が0.04%以下となることを特徴とする二軸配向ポリエステルフィルム。
たるみ率=(最大値−最小値)÷平均値×100

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷、コーティング、ラミネートなど二次加工性に優れた二軸配向ポリエステルフィルムに関する。詳しくは、帯電防止コート、離型コート、反射防止コートなど精密な機能性コーティングを行う際に、たるみによるバタツキや蛇行、更にはシワなどが発生することのない安定した加工適性を有する二軸配向ポリエステルフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、二軸配向ポリエステルフィルムは優れた透明性、寸法安定性、耐薬品性から各種工業用基材フィルムとして多く利用されている。かかる二軸配向ポリエステルフィルムは一般に回転速度の異なるロール間で長手方向に延伸された後に、テンター内でフィルム端部を把持された状態で幅方向に延伸され、テンター内で熱固定される逐次二軸延伸法によって製造され、一旦広幅長尺のミルロールとして巻き取られる。ところが、得られたフィルムの幅方向においてミルロールの端部際では長手方向のフィルム長さが短く、中央部では長手方向のフィルム長さが長いといった幅方向において長手方向のフィルム長さが異なるといった事態が生じることが従来より知られている。これについては、テンター出口で観察すると幅方向において端位置より中央部の方がたるんでいることで確認することができる。この現象は特にミルロールの端部際において顕著であり、中央部では比較的幅方向におけるフィルム長さの差は小さくなる傾向を有する。従って、上記ミルロールからスリットしてスリットロールを得る際には、ミルロールの端縁際に相当するスリットロールにおいて特に幅方向において長手方向のフィルム長さの差が大きく、巻き取りの際に幅方向において長手方向に長い箇所には張力が掛からず、たるみが発生してフィルム走行時に蛇行やバタツキとなる現象が生じる。更にたるみが大きい場合は流れシワや折れシワとなってしまう問題を有していた。
【0003】
一方、ミルロールの中央部と端部の長さの違いを少なくし、フィルムの平面生を挙げる技術が知られている。例えば、二軸延伸後に熱固定した二軸配向ポリエステルフィルムを、毎秒100℃以下の冷却速度で徐冷することによりフィルムの平面性を向上させ、たるみを低減するという技術が知られていた(例えば特許文献1等参照)。しかし、かかる従来技術は目的とするフィルムが得られないという問題点があった。
【0004】
また、端だるみの度合いに応じてたるんでいる端側のレール幅を調整するにより左右でたるみなく均一するという技術が知られていた(例えば特許文献2等参照)。しかし、かかる従来技術は幅広からなるミルロールの端部に相当するスリットロールのたるみは解決されていない。さらには、レール幅を調整するために、熱収縮率などフィルムの物性値が変わり、目的とするフィルムが得られないという問題点があった。
【0005】
また、テンターで熱処理後冷却するに際し、少なくとも、120℃以上、160℃以下の空気を毎秒2m以上の風速で吹き付ける第1室を3秒以上かけて通過させた後、雰囲気温度が35℃以上80℃以下に制御された第2室を2秒以上かけて通過させることによりフィルム平面性向上したるみが低減するという技術が知られていた(例えば特許文献3等参照)。しかし、かかる従来技術は目的とするフィルムが得られないという問題点があった。
【0006】
また、ポリエステルフィルムの端部の縦延伸点手前30〜1000mmの位置を遠赤外線ヒータ又は近赤外線ヒータで加熱によりボーイング現象の抑制と幅方向の熱収縮率差を低減するという技術が知られていた(例えば特許文献4等参照)。しかし、かかる従来技術は端部加熱位置が狭く、たるみの改善には効果がないという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭51−102073号公報
【特許文献2】特開昭54−73873号公報
【特許文献3】特開平9−277373号公報
【特許文献4】特開2002−172696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
また、上記技術などにより製膜後、テンターから出てきたフィルムをミルロールとしてたるみによって生産性を阻害することなく巻き取ることができ、またミルロールのフィルムを客先の要望の幅、長さに合わせてスリットしてスリットロールとして巻き取る際も、同様にトラブルなく巻き取ることが出来るようになり、またこのスリットロールを用いて通常の精密な機能性コーティングを行っても、フィルムが蛇行する、ばたつくなどの現象が起こらず、微妙な塗工むらや傷を起こすことはなかった。
しかしながら、このようなトラブルなく巻き取ることができたスリットロールを用いても、精密な機能性コーティングを行うと、フィルムが蛇行する、ばたつくなどの現象が起こる場合があり、微妙な塗工むらや傷を起こすことが分かってきた。このような現象が起こった場合には、張力、ロールの角度、位置などの調整を行いながら二次加工を行うか、使用を断念していた。
また、この現象はミルロールの端部に近いほど起こりやすいことも見出した。
【0009】
本発明者らは、これら今までにない現象を詳細に検討した結果、スリットロールとして蛇行なく巻きとることができるものであっても、ミルロール端部からスリットしたものは幅方向において、長手方向のフィルム長さが僅かに異なるため、走行中にフィルムのたるみが生じ、これらの現象が起こっていることを突き止めた。
【0010】
本発明は、かかる従来技術の課題を背景になされたものである。すなわち、本発明の目的は、二次加工でのフィルム走行時のフィルムのたるみが少ないため、それによるトラブルが無く、安定して二次加工が可能となる。特に、フィルムとして幅広ミルロールの端縁部に相当するスリットロールあっても、コーターの条件調整などが不要となる印刷、コーティング、ラミネートなど二次加工性に優れた二軸配向ポリエステルフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は上記課題を達成するために鋭意検討した結果、本発明の完成に至った。すなわち本発明の第1の発明によれば、実質的にポリエチレンテレフタレートを主成分とするポリエステル樹脂からなる逐次二軸延伸フィルムであって、該フィルムからなるロールの表層からフィルムを巻き出し、長手方向に測定した際のたるみ率が0.04%以下となることを特徴とする二軸配向ポリエステルフィルムである。この場合において、実質的にポリエチレンテレフタレートを主成分とするポリエステル樹脂からなる逐次二軸延伸フィルムを製膜するにおいて、長手方向に延伸する直前にフィルム端部を加熱することが好適である。
【0012】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、マイクロ波透過型分子配向計で測定した主軸配向角度の最大値が20度以上であることを特徴とする二軸配向ポリエステルフィルムである。
【0013】
また、本発明の第3の発明によれば、第1と第2の発明において、マイクロ波透過型分子配向計で測定した主軸配向角の向きが全て同方向であることを特徴とする二軸配向ポリエステルフィルムである。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、印刷、コーティング、ラミネートなど二次加工性に優れた二軸配向ポリエステルフィルムにおいて、二次加工でのフィルム走行時のたるみが少ないため、それによるたるみによるバタツキや蛇行、更にはシワなどの発生等のトラブルが無く、安定した二次加工が可能となる。特に、フィルムとして幅広ミルロールの端縁部に相当するスリットロールを使用したものであっても、印刷機やコーターなどの二次加工機の条件調整が不要とすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に使用されるポリエステルとは,ポリエチレンテフタレート、ポリブチレンテフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル類であり、これらの混合物あるいは共重合ポリエステルでも構わない。前記ポリエステルは、上記ポリエステル以外に本発明の効果を損なわない範囲で、有機もしくは無機の滑剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤などの添加物を含むポリエステル組成物を用いることができる。
【0016】
本発明におけるポリエステルを押出機に代表される周知の溶融押出装置に供給し、前記ポリエステルの軟化点以上の温度で加熱溶融する。溶融した該組成物は、Tダイなどのスリット状ダイから押し出し、冷却ロール上に密着せしめ冷却固化し、実質的に無配向のポリエステルフィルム(以下、CA原反という)を得る。上記樹脂の押出しは、単層または積層としてもかまわない。その後、CA原反を複数のロール間に供給することにより、連続的に長手方向に延伸した一軸延伸フィルムを得る。すなわち 低周速回転に設定した複数のロール(以下、ロール群という)と高周速回転に設定したロール群を通過させることにより、各ロール群の速度差によってフィルムに張力を与えて長手方向に延伸する。
【0017】
この際の縦延伸倍率としては2倍以上が好ましく、特には2.5倍以上が好ましい。2倍未満では、縦方向の厚み斑が問題となったり、引き続き行う幅方向の延伸倍率を高くした場合に一方向に裂けやすくなったり、また破断伸度、強度がアンバランスになるなどといった問題が生じる場合がある。縦延伸倍率の上限としては安定した生産を可能とするためには現実的面からは4.5倍程度、特には4倍であるが、特に限定はされない。
【0018】
長手方向延伸時の温度としては80〜140℃が好ましく、100〜120℃が特に好ましい。80℃未満では延伸温度が低すぎて延伸残が発生し問題となる。また延伸応力も大きく、回転ロールのモーター負荷が上がり、モーター仕様上限を超えてしまうといった問題が生じる場合がある。また、140℃を超えると、未延伸フィルム原反を長手方向延伸する際に回転ロールへ融着することや、長手延伸後にフィルムが蛇行し、引き続き行う幅方向延伸でのクリップから外れて破断するといった問題が生じる場合があるが、特に限定はされない。
【0019】
一般的には、ポリエステル樹脂の押出し後のCA原反は端部の厚みを中央部より厚くすることでクリップで把持しやすくしている。本発明では、長手方向への延伸に際して、低周速回転に設定されたロール群の最終のロールと高周速回転に設定されたロール群の最初のロールとの間の延伸区間の直前にフィルム端部を加熱する手段を配設することが好ましい。フィルム端部を加熱する手段を配設し、実質的に加熱する位置はCA原反の端面からCA原反幅の12%にあたる距離だけ離れた位置より中央側の位置が好ましく、より好ましくは15%であり、さらに好ましくは20%である。上記位置より端部側であるとたるみ改善への効果が得られないことがある。
また、実質的に加熱する位置はCA原反の端面から原反幅の33%にあたる距離だけ離れた位置より端部側の位置が好ましく、より好ましくは30%であり、さらに好ましくは25%であり、上記を越えるとたるみ改善効果が飽和したり、たるみ改善効果が無くなる場合があることがある。従来、ボーイング低減のために、厚くなった端部分のみより強く加熱する方法は知られていたが、たるみ低減のためには厚くなった部分のみでなくその内側の平坦部分も含めて加熱することが必要である。この理由としては、一軸延伸後のフィルムの幅方向における長手方向の収縮応力を出来る限り均一化しておくことがたるみ改善には必要であると推定している。
【0020】
前記フィルム端部の加熱手段は、フィルムの表裏面の片面あるいは両面いずれに位置させてもよい。
【0021】
前記フィルム端部の加熱手段としては 熱風、所望の温度と幅が分割して設置可能とするロールやパートロール、さらには近赤外線ヒータ、遠赤外線ヒータ 等種々の熱源を使用することができる。また、幅方向にフィルム全体を加熱することができる長尺のヒータの中央部に遮蔽板を設置してもよく、特に限定されるものではない。
【0022】
該フィルム端部の端部フィルム温度の上限は好ましくは10℃(対中央部)となるようにすることが好ましく、より好ましくは7℃(対中央部)であり、さらに好ましくは5℃(対中央)である。上記を越えるとフィルム自体が軟化しロールに粘着することがある。端部フィルム温度の下限は好ましくは2℃(対中央部)となるようにすることが好ましく、より好ましくは3℃(対中央部)であり、さらに好ましくは4℃(対中央部)である。上記を下回ると、本発明に至るたるみ改善への効果が得られないことがある。
ここでいう中央部とは、フィルムの両端面から同じ距離となる位置を意味する。
【0023】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、長手方向への延伸手段として一段延伸、二段以上で延伸する多段延伸のどちらでもよく、特に限定されるものではない。
【0024】
上記方法で得られた該一軸延伸フィルムは、通常の予熱、幅方向延伸、熱固定、冷却を行う横延伸装置を用いて二軸配向したフィルムを得る。この際、前記二軸配向ポリエステルフィルムは横延伸条件や熱固定条件の影響を受けるので、適宜公知の方法で条件を選択し所望の物性とすることができる。上記延伸条件の好ましくは、下記の工程にて行うことができる。例えば、上記樹脂組成を構成する重合体組成物が有するガラス転移温度以上、融点以下の温度で予熱を行う。また、延伸倍率としては、二軸延伸の場合は延伸後の面積倍率が延伸前の面積に対して2〜30倍、好ましくは9〜16倍である。本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの厚みは12μmから250μmであるが、特に限定されない。
【0025】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムには、目的に応じて例えばコロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理、薬品処理等の従来公知の方法による表面処理や、公知のアンカー処理剤を用いたアンカー処理等が施されても良い。また、帯電防止用コート剤として例えば、アルキルスルホン酸、グリセリンエステル、ポリグリセリンエステル等であり、帯電防止性を付与できるものであれば特に限定されない。コート方法は、従来公知の方法であるリバースロールコーティング法、ロールナイフコーティング法、ダイコーティング法、グラビアコーティング法等であり、特に限定はされない。さらには、インラインでのコーティングによるコートであってもかまわない。
【0026】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムからなるミルロール幅の下限は好ましくは3000mmであり、より好ましくは4000mmであり、さらに好ましくは5000mmである。上記未満であると、フィルムの幅方向においてミルロールの端部際では長手方向のフィルム長さが短く、中央部では長手方向のフィルム長さが長いといった幅方向において長手方向のフィルム長さが異なるといった現象が発現しにくくなることがある。ミルロール幅の上限は好ましくは9000mmであり、より好ましくは7000mmであり、さらに好ましくは6000mmである。上記を越えるとミルロールの端部際と中央部での長手方向の長さの差が大きすぎて生産性が悪化することがあるが、ミルロール幅については特に限定はされない。
【0027】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムからなるミルロールからスリットされるスリットロール幅の下限は好ましくは500mmであり、より好ましくは700mmであり、さらに好ましくは1300mmである。上記未満であると、幅方向において長手方向のフィルム長さの差が小さくなり、たるみが発生しにくくなることがある。スリットロール幅の上限は好ましくは2500mmであり、より好ましくは2200mmであり、さらに好ましくは1800mmである。上記を越えると、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの効果が得られないことがあるが、ミルロールからスリットされるスリットロール幅については特に限定されない。
【0028】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムからなるミルロールからスリットされるスリットロール長さの下限は好ましくは500mであり、より好ましくは2000mである。上記未満であるとスリットロールの巻き芯部の影響を受けやすくなり、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの効果が得られないことがあるが、スリットロール長さについては特に限定されない。
【0029】
本発明の実質的にポリエチレンテレフタレートを主成分とするポリエステル樹脂からなる逐次二軸延伸フィルムであって、該フィルムからなるスリットロールの表層からフィルムを巻き出し、長手方向に測定した際のたるみ率は好ましくは0.04%以下であり、たるみ率の下限は好ましくは0%である。たるみが発生してフィルム走行時に蛇行やバタツキとなる現象が生じる。たるみ率が0.04%を超えると二次加工時のフィルム走行時にたるみが発生し、フィルム蛇行やバタツキ、折れシワが発生することがある。
【0030】
従来の技術では、製膜直後のフィルムを巻き取ったミルロールでのたるみ防止の改善が主眼であり、ミルロールでのたるみ問題はほぼ解決されていたが、これは、ミルロールでは強いテンションで巻き取られるために、微細なたるみは引き延ばされており、本発明でいうたるみが見えなかったことと、たるみが大きくても巻き取り後保管したフィルムの僅かな巻締まりなどにより、通常の機能性コーティングなどの二次加工での問題が顕在化しなかったものと考えられる。しかし、より精密な機能性コーティングといった二次加工において問題が発生してくることが分かってきた。
【0031】
なお、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムのマイクロ波透過型分子配向計で測定した主軸配向角度は好ましくは20度以上であり、より好ましくは25度以上であり、さらに好ましくは28度以上である。20度以上では本発明の効果が特に顕著に得られる。
主軸配向角度の上限は本発明において特に限定しないが、上限の好ましくは45度であり、より好ましくは40度であり、さらに好ましくは38度である。45度を超えると二次加工においてコート後の乾燥工程での熱収縮時に歪みが生じるなどの問題が生じることがある。また、上記フィルムの全幅方向における主軸配向角の向きについては、全て同方向であることが好ましい。
【実施例】
【0032】
次に本発明フィルムの製造方法の一例を説明するが、これはあくまで具体例であり、本発明内容を拘束するものではない。
以下に本発明に用いた各物性、特性の測定、評価方法について記載する。
【0033】
(1)たるみ率
直径600mm以上に巻き取ったスリットロールにおいて、まずは該スリットロールの表層にシワや巻きズレさらにはエアー溜りや打痕、押し後のない綺麗な表層が得られるように準備する。引き続き、該スリットロール表層に幅方向に50mmピッチで該スリットロールの端から画鋲等の針でフィルムが数枚貫通される程度に穴を開け、該スリットロールの表層から長手方向(ロール周方向)に針穴間隔が3m以上得られる様にフィルム全幅をシワが無いようにサンプリングする。その後、得られたサンプルの長手方向の針穴間隔を平面台上にてサンプルが平面になるようにすること以外は不必要となる張力をかけることなく、それぞれメジャーにて測定した。長手方向の針穴間隔は3m以上で測定され、メジャーの目盛りの読取りは0.1mmの位までとし、その最大値と最小値と平均値から次式によりたるみ率を求め、少数点以下第4位を四捨五入して表記した。
【0034】
たるみ率=(最大値−最小値)÷平均値×100
【0035】
(2)主軸配向角度
長手方向140mm×幅方向100mmの寸法で切り出したものを測定サンプルとし、マイクロ波分子配向計を用いて主軸配向角度を測定した。マイクロ波分子配向計としては、王子計測機器(株)の分子配向計MOA−6004を用いた。スリットロールの全幅方向にて最も大きい値を最大値として求めた。
【0036】
(3)極限粘度
チップサンプル0.1gを精秤し、25mlのフェノール/テトラクロロエタン=6/4(質量比)の混合溶媒に溶解し、オストワルド粘度計を用いて30℃で0.4g/dlの濃度の溶液の流下時間を測定し、それらの時間比率から、Hugginsの式を用いて、Hugginsの定数が0.38であると仮定して算出した。なお、測定は3回行い、その平均値を求めた。
【0037】
(4)二次加工適性
岡崎機械(株)社製の3ヘッドコーターを使用して、巻出し張力200N/m、速度100m/分にてシリコンコート加工を実施した。フィルム走行時の蛇行やたるみによるバタツキ、シワ発生状況について観察し、二次加工適性として下記のように分類評価した。
○:全く問題なく、安定した加工ができる。
△:若干、張力やロール平行など条件調整が必要であるが、なんとか加工できる。
×:条件調整しても、蛇行またはたるみまたはシワが収束せず、加工中止。
【0038】
(5)フィルム温度
optris社のCT−SF15−C3(小型・高精度非接触温度計)を使用し、CA原反の幅方向における中央部およびフィルム端部は加熱幅の中央位置を測定箇所とした。また上記温度計は縦延伸装置における低速回転最終ロールからフィルムが通過した直後、またはIRヒーター等の加熱手段装置を設置した場合は該加熱手段装置をフィルムが通過した直後に設置し、フィルムまでの距離は200mmにてフィルム温度を測定した。
【0039】
(実施例1)
十分に乾燥した無機滑剤を0.1重量%含むポリエチレンテフタレートペレット(極限粘度0.62dl/g)を押し出し機に供給し、285℃で溶融し、Tダイよりフィルム状に押し出し、直流高電圧を印加した電極を用いて冷却ロールに静電密着させ冷却固化せしめて厚さ350μmの実質的無配向のポリエステルフィルム(以下CA原反とする)を得た。この実質的に無配向のポリエステルフィルムを低速回転に設定されたロール群と高速回転に設定されたロール郡を具備する縦延伸装置に導いた。なお、前記載の縦延伸装置においては、低速回転最終ロールが幅方向において温度とその温度となる幅を所望に設定可能とする誘電加熱装置を具備したロールを使用した。該誘電加熱装置を具備したロールの温度およびCA原反両端部への加熱幅を調整することにより、CA原反両端部の加熱幅を15%対CA原反幅で、+7℃(対中央)となるように加熱した後、縦方向に90℃で3.5倍延伸した。次いでテンターにおいて横方向に4.2倍に延伸した後、3%の弛緩処理を行いつつ225℃にて熱処理を行い、厚さ25μmとなる二軸配向ポリエステルフィルムを得た。前記載の二軸配向ポリエステルフィルムは一旦、幅5000mmで長さ10000mの長尺広幅のミルロールに巻き取った後、端縁部から幅100mmを耳部として、幅1300mmで長さ2000mのスリットロールを得た。
【0040】
(実施例2)
誘電加熱装置を具備したロールのCA原反両端部への加熱幅および該加熱幅の温度を調整することにより、CA原反両端部の加熱幅を20%対CA原反幅で、+5℃(対中央)となるように加熱した後、縦方向に100℃で3.2倍延伸したこと以外は実施例1と同様にして二軸配向ポリエステルフィルムからなるスリットロールを得た。
【0041】
(実施例3)
テンターにて横延伸後、5%の弛緩処理を行いつつ235℃にて熱処理したこと以外は実施例1と同様にして二軸配向ポリエステルフィルムからなるスリットロールを得た。
【0042】
(実施例4)
Tダイよりフィルム状に押し出し、直流高電圧を印加した電極を用いて冷却ロールに静電密着させ冷却固化せしめて厚さ1100μmの実質的無配向のポリエステルフィルム(以下CA原反とする)とし、75μmとしたこと以外は実施例1と同様にして二軸配向ポリエステルフィルムからなるスリットロールを得た。
【0043】
(比較例1)
縦延伸装置の低速回転最終ロールは幅方向において温度とその温度となる幅を所望に設定可能とする誘電加熱装置を具備したロールを使用せず、加熱することをしなかったこと以外は実施例1と同様にして二軸配向ポリエステルフィルムからなるスリットロールを得た。
【0044】
(比較例2)
縦延伸装置の誘電加熱装置を具備したロールのCA原反両端部への加熱幅および該加熱幅の温度を調整することにより、CA原反両端部の加熱幅を7%対CA原反幅で、+7℃(対中央)となるように加熱したこと以外は実施例1と同様にして二軸配向ポリエステルフィルムからなるスリットロールを得た。
【0045】
(比較例3)
縦延伸装置の低速回転最終ロールに誘電加熱装置を具備したロールを使用することなく、低速回転最終ロール手前に近赤外線ヒーター(IRヒーター)を5%対CA原反幅となるように両端部に設置し、+7℃(対中央)となるようにCA原反端部を加熱したこと以外は実施例1と同様にして二軸配向ポリエステルフィルムからなるスリットロールを得た。
【0046】
上記結果を表1に示す。
【0047】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の二次加工性に優れた二軸配向ポリエステルフィルムは、印刷、コーティング、ラミネートなど二次加工性に優れた二軸配向ポリエステルフィルムに関するものであり、帯電防止コート、離型コート、反射防止コートなど精密な機能性コーティングを行う際に、たるみによるバタツキや蛇行、更にはシワなどが発生することのない安定した加工適性が得られることから、幅広い用途分野に利用することができ、産業界に寄与することが大である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的にポリエチレンテレフタレートを主成分とするポリエステル樹脂からなる逐次二軸延伸フィルムであって、該フィルムからなるロールの表層からフィルムを巻き出し、長手方向に測定した際のたるみ率が0.04%以下となることを特徴とする二軸配向ポリエステルフィルム。
たるみ率=(最大値−最小値)÷平均値×100
【請求項2】
請求項1記載の二軸延伸ポリエステルフィルムであって、マイクロ波透過型分子配向計で測定した主軸配向角度の最大値が20度以上であることを特徴とする二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項3】
請求項1〜2記載の二軸配向ポリエステルフィルムであって、マイクロ波透過型分子配向計で測定した主軸配向角度の向きが全て同方向であることを特徴とする二軸配向ポリエステルフィルム。

【公開番号】特開2013−107316(P2013−107316A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254860(P2011−254860)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000003160)東洋紡株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】