二次電池とその製造方法
【課題】電池缶と発電要素群の電気的隔絶(絶縁)のための絶縁カバーを、発電要素群や絶縁カバーにしわやよじれ、擦れなどを生じさせることなく、なおかつ低コストに電池缶と発電要素群の間に介在させることで、量産性に優れる二次電池を得ること。
【解決手段】本発明の二次電池は、開口部を持つ直方体状の電池缶と、前記電池缶の開口部を封止する電池蓋と、前記電池缶と前記電池蓋とで画定された空間内に配置される発電要素群と、前記電池缶と前記発電要素群との間を電気的に絶縁する絶縁カバーとを有し、前記絶縁カバーは、前記電池缶の開口部に対向し四辺を有する底面部と、前記底面部の四辺のうち少なくとも対向する二辺に沿って形成される側面部と、前記発電要素群の前記電池缶への挿入に応じて前記底面部と前記側面部との境界が折れ曲がるように設けられた折れ曲がり部とを有する。
【解決手段】本発明の二次電池は、開口部を持つ直方体状の電池缶と、前記電池缶の開口部を封止する電池蓋と、前記電池缶と前記電池蓋とで画定された空間内に配置される発電要素群と、前記電池缶と前記発電要素群との間を電気的に絶縁する絶縁カバーとを有し、前記絶縁カバーは、前記電池缶の開口部に対向し四辺を有する底面部と、前記底面部の四辺のうち少なくとも対向する二辺に沿って形成される側面部と、前記発電要素群の前記電池缶への挿入に応じて前記底面部と前記側面部との境界が折れ曲がるように設けられた折れ曲がり部とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は二次電池(以下単に電池ともいう)及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地球環境保護の社会動向を受け、ハイブリッド車や電気自動車等の車両駆動用電池の実用化,普及が必要である。車両駆動用電池の構造として、発電要素たる正極,負極双方のシート(正負極板)と、正負極板を分離するセパレータと、電解液とが、金属製や樹脂製の密閉容器内に収容され、発電要素の両極とそれぞれ接合された外部端子を設けたものが知られている。
【0003】
これまでの電池は、外観が円柱状をなしたものが多かった。ところが、車両用電池では、出力や容量の向上を図るために数十から百超の個数の電池をまとめ、組電池としてひとつの車両に搭載することから、実装密度に優れる角形状のもの(角形電池)が検討されるようになっている。
【0004】
従来の角形電池において、本発明に関係する電池缶と発電要素群の電気的隔絶(絶縁)の具体的な方法が、例えば次に示す各文献により既知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4296522号公報
【特許文献2】特許第3413907号公報
【特許文献3】特開2009−170137号公報
【特許文献4】特開2007−226989号公報
【特許文献5】特開2005−302529号公報
【0006】
上記特許文献1では、電池缶と発電要素群との間に袋状絶縁フィルムを配した。
【0007】
上記特許文献2では、発電要素群を一枚の連続部材を折り曲げて形成した一対のばね片を有する板ばねに挟み込み、電池内で加圧した。
【0008】
上記特許文献3では、予め展開形状に形成された絶縁カバーで発電要素群を被覆して電池缶に収容した。
【0009】
上記特許文献4では、予め展開形状に形成された絶縁カバーで発電要素群を被覆して電池缶に収容した。
【0010】
上記特許文献5では、正極の外面および底面をシート状のセパレータおよび負極材で連続してU字状に覆い電池缶に収容した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記従来技術はそれぞれ次のような問題点がある。
【0012】
特許文献1によれば、絶縁カバーは予め展開形状をなしており、発電要素群をその中に位置させた後、各折り曲げ部を折り曲げてから重ね部を溶着して袋状とする(特許文献1の0019,0020段落および図6,図7に記載)工程の後、これらを電池缶に収容する(特許文献1の0026,0027段落および図8Aから図8Cに記載)ので、多くの工程を要してコスト高となり、なおかつ絶縁カバーや発電要素群にしわやよじれ、擦れなどを生じさせず、また仕上がり品質をばらつかせることなく組み立てることが難しい。
【0013】
特許文献2によれば、発電要素群主面に圧縮力を与える板ばね形状のステンレス材で発電要素群および樹脂材を外側から覆い、それらを電池缶に収容する(特許文献2の0019,0020段落に記載)ので、ステンレス材が電池缶と直接擦れ合うこととなり、それにより生じた金属の擦れ粉が電池内に侵入する可能性がある。この擦れ粉は電池の信頼性を大きく低下させるので、確実に防止する必要がある。また、板ばね形状のステンレス材は予めプレス等の方法により所定形状に曲げ加工しておく必要があるので、電池の組立工程が多くコスト高となる。
【0014】
特許文献3および特許文献4によれば、展開形状に形成された絶縁カバーを予め所定形状に折り曲げてから、形成された空間に発電要素群を収める(特許文献3の0037,0038段落,特許文献4の0014段落および図3に記載)。このため、電池の量産過程において薄い樹脂製の絶縁カバーの折り曲げ後の形状がうまく定まらず、ゆがみや折れ曲がりなどを生じて発電要素群を良好に収容することが難しい。また、発電要素群を絶縁カバーに収容した後これらを電池缶に改めて収容する(特許文献3の0039段落,特許文献4の0014段落および図4に記載)ため、薄膜の積層構造である発電要素群とやはり薄膜からなる絶縁カバーの電池缶に対する位置決めが難しく、電池缶内にうまく収容することが難しい。
【0015】
特許文献5によれば、正極材の底面をセパレータのみならずその外面に負極材を配してU字状に覆ってから電池缶に収容するため、負極材と電池缶が直接接触することとなり、すなわち負極材を含む発電要素群と電池缶との完全な絶縁が難しい。またセパレータがU字状であるため発電要素群の電池短側面側には絶縁手段が施されないため、絶縁が難しい。また正極材とそれをU字状に覆うセパレータおよび負極材が予めユニットを構成する(特許文献5の0018に記載)ため、これらを形成した後に電池缶に収容することとなり、上記したと同様の理由から電池缶内にうまく収容することが難しい。
【0016】
本発明は上記事案に鑑み、安価で仕上がり品質にばらつきを生じることのない、量産性に優れる二次電池を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するため、本発明の二次電池は、開口部を持つ直方体状の電池缶と、前記電池缶の開口部を封止する電池蓋と、前記電池缶と前記電池蓋とで画定された空間内に配置される発電要素群と、前記電池缶と前記発電要素群との間を電気的に絶縁する絶縁カバーとを有し、前記絶縁カバーは、前記電池缶の開口部に対向し四辺を有する底面部と、前記底面部の四辺のうち少なくとも対向する二辺に沿って形成される側面部と、前記発電要素群の前記電池缶への挿入に応じて前記底面部と前記側面部との境界が折れ曲がるように設けられた折れ曲がり部とを有する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、絶縁カバーを、専用の樹脂注型金型を用いて立体成型することなく、単なるシート状樹脂素材から取得できるので、絶縁カバー製造コストを低く抑えることができ、結果的に絶縁カバーを含む電池コストを低く抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1(a)】第1の実施形態の電池の製造過程を示す斜視図である。
【図1(b)】第1の実施形態の電池の製造過程を示す斜視図である。
【図1(c)】第1の実施形態の電池の製造過程を示す斜視図である。
【図1(d)】第1の実施形態の電池の製造過程を示す斜視図である。
【図2(a)】第1の実施形態の絶縁カバーの斜視図である。
【図2(b)】第1の実施形態の絶縁カバーの電池缶への収容後の形状を示す断面斜視図である。
【図3(a)】第2の実施形態の絶縁カバーの斜視図である。
【図3(b)】第2の実施形態の絶縁カバーの電池缶への収容時の状態を示す部分A―A断面図である。
【図4(a)】第3の実施形態の絶縁カバーの斜視図である。
【図4(b)】第3の実施形態の絶縁カバーの電池缶への収容後の形状を示す断面斜視図である。
【図5(a)】第4の実施形態の絶縁カバーの斜視図である。
【図5(b)】第4の実施形態の絶縁カバーの電池缶への収容後の形状を示す断面斜視図である。
【図6(a)】第5の実施形態の絶縁カバーの斜視図である。
【図6(b)】第5の実施形態の絶縁カバーの電池缶への収容後の形状を示す断面斜視図である。
【図7(a)】第6の実施形態の絶縁カバーの斜視図である。
【図7(b)】第6の実施形態の絶縁カバーの電池缶への収容後の形状を示す断面斜視図である。
【図8(a)】第7の実施形態の絶縁カバーの斜視図である。
【図8(b)】第7の実施形態の絶縁カバーの電池缶への収容時の状態を示すB―B断面図である。
【図9】発電要素群である捲回体の構成を示す斜視図である。
【図10】発電要素群である積層体の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を適用した電池の実施の形態について説明する。
【0021】
本発明の電池は、図1(a)に見られるように、一面が開口した略矩形状の電池缶1と、電池缶1の開口面(開口部)11を封止する電池蓋3とを備えている。電池蓋3は、輪郭が電池缶1の開口面11輪郭に合致する平板状に形成されている。電池缶1,電池蓋3の材質には、共にアルミニウム合金が用いられている。
【0022】
電池蓋3には、貫通孔を通じてシール材13,接続板5A(正極),接続板5B(負極)、および外部端子4A(正極),外部端子4B(負極)が挿着されいずれも電池蓋3と機械的に一体化されている。また、接続板5A,接続板5Bと外部端子4A,外部端子4Bは直接接しており、電気的に導通している。シール材13は、材質としてポリフェニレンサルファイド(PPS)やポリブチレンテレフタレート(PBT)、あるいはペルフルオロアルコキシフッ素(PFA)等の絶縁性樹脂が用いられている。正極となる接続板5Aと外部端子4Aは、材質としてアルミニウム合金が用いられている。また負極となる接続板5Bと外部端子4Bは、材質として銅合金が用いられている。
【0023】
電池缶1と電池蓋3で画定される空間内には、正極板6E,負極板6Dとそれらの極性分離のためのセパレータ6Cが共に扁平状に捲回された発電要素群6が、電解液が浸潤した状態で配置されている。発電要素群6は、集電箔を有する正極板6E,負極板6Dが捲回または積層されたものである。両端部には、正負極集電箔上に活物質合剤が塗工されず集電箔が露出している未塗工部6A(正極),未塗工部6B(負極)が露出している。未塗工部6A,未塗工部6Bは発電要素群6の中で互いに反対側に位置している。未塗工部6A,未塗工部6Bの一表面には接続板5A,5Bが配置され、束ねられた各層の未塗工部6A,未塗工部6Bと共に接合部で機械的および電気的に接合されている。接合には超音波接合法が用いられている。未塗工部6A,未塗工部6Bは正極板6E,負極板6Dの活物質合剤の塗工部6Fよりも活物質合剤の厚さ分だけ薄いので、接合により各層同士を密着させた結果塗工部6Fよりも全体厚さが小さくなっている。
【0024】
電池缶1と発電要素群6の間には、発電要素群6と電池缶1を電気的に絶縁する絶縁カバー7が配されている。絶縁カバー7はシート状で、図2(a)からも明らかなように、初期の形状は電池缶1の展開形状に略合致している。各面の境界にはほぼ直線状の薄肉部7Aが形成されている。絶縁カバー7は、材質としてポリプロピレン(PP),PPS,PBT,PFA、あるいはそれらの複合体などが用いられている。薄肉部7Aは、シート状の樹脂素材に対してプレスを施すことで形成されている。
【0025】
<製造>
電池は、電池蓋3にシール材13,接続板5A,接続板5B,外部端子4A,外部端子4Bを固定する準備ステップ,正極板6E,負極板6Dを捲回して形状を整え、発電要素群6を形成する電極形成ステップ,発電要素群6の未塗工部6A,未塗工部6Bの各層と接続板5A,5Bを密着させて電気的および機械的に接合する接合ステップ,接合ステップを終えた発電要素群6を電池缶1に収容し、電池缶1と電池蓋3とを溶接接合する封止ステップ、を経て製造される。以下、それぞれのステップを説明する。
【0026】
<準備ステップ>
準備ステップでは、貫通孔が設けられた電池蓋3に対し、貫通孔にはシール材13,外部端子4A,外部端子4Bを挿入し、挿入した外部端子4A,外部端子4Bの電池内側となる先端部に正極の接続板5A,負極の接続板5Bに予め設けた貫通孔を通して、同部をかしめて固定する。これにより、外部端子4A,外部端子4Bと接続板5A,接続板5Bとは直接接するため電気的に導通状態となり、これらと電池蓋3とは絶縁性のシール材13を介して接するため電気的に絶縁の状態となって、いずれもが機械的に固定される。外部端子4A,外部端子4Bと接続板5A,接続板5Bとの電気的,機械的接続信頼性を高めるために、かしめ部の両者界面にさらに溶接を施す場合もある。
【0027】
<電極形成ステップ>
電極形成ステップにおいて、発電要素群6は、正極板6Eおよび負極板6Dをセパレータ6Cを介在させて捲回することで形成する。図9に示すように、セパレータ6C,負極板6D,セパレータ6C,正極板6Eの順に積層し、負極側から断面長円状になるよう捲回する。このとき、正極板6Eの未塗工部6Aと負極板6Dの未塗工部6Bとが互いに反対側に露出するようにする。また、捲き始め部分および巻き終わり部分には、セパレータ6Cのみを2〜3周程度捲回し、形状の安定化を図る。
【0028】
発電要素群6を構成する正極板6Eは、正極集電箔としてアルミニウム箔を用いる。アルミニウム箔の両面には、正極活物質としてマンガン酸リチウム等のリチウム含有遷移金属複酸化物を含む正極活物質合剤が略均等かつ略均一に塗着されている。正極活物質合剤には、正極活物質以外に、炭素材料等の導電材およびポリフッ化ビニリデン(以下、PVDFと略記する。)等のバインダ(結着材)が配合されている。アルミニウム箔への正極活物質合剤の塗工時には、N−メチルピロリドン(以下、NMPと略記する)等の分散溶媒で粘度調整される。このとき、アルミニウム箔の長寸方向一側の側縁に正極活物質合剤を塗工しない未塗工部6Aを形成する。すなわち、未塗工部6Aでは、アルミニウム箔が露出している。正極板6Eは、乾燥後ロールプレスで密度を調整している。
【0029】
一方、負極板6Dは、負極集電箔として銅箔を用いる。銅箔の両面には、負極活物質としてリチウムイオンを可逆に吸蔵、放出可能な黒鉛等の炭素材を含む負極活物質合剤が略均等かつ略均一に塗着されている。負極活物質合剤には、負極活物質以外に、アセチレンブラック等の導電材やPVDF等のバインダが配合されている。
【0030】
銅箔への負極活物質合剤の塗工時には、NMP等の分散溶媒で粘度調整される。このとき、銅箔の長寸方向一側の側縁に負極活物質合剤の塗工されない未塗工部6Bが形成される。すなわち、未塗工部6Bでは銅箔が露出している。負極板6Dは、乾燥後ロールプレスで密度を調整している。なお、負極板6Dの長さは、正極板6Eおよび負極板6Dを捲回したときに、捲回最内周および最外周で捲回方向に正極板6Eが負極板6Dからはみ出すことがないように、正極板6Eの長さより長く設定している。
【0031】
<接合ステップ>
準備ステップで構成した部分アセンブリと電極形成ステップで構成した発電要素群6を用意し、両者を位置決めしてから未塗工部6Bの各層を発電要素群6の厚さ方向中心部に寄せて密着させる。加えて接続板5A,接続板5Bを最表面に接触させ、加圧すると共に超音波振動を加えて未塗工部6Bの各層と接続板5A,接続板5Bを一括接合する。これにより発電要素群6と外部端子4A,外部端子4Bとが、接続板5A,接続板5Bを介して電気的および機械的に接合される。これらは正極側,負極側共に行われる。
【0032】
<封止ステップ>
まず、図1(a)のように準備ステップおよび接合ステップを経た構造体,絶縁カバー7,電池缶1を配する。このとき絶縁カバー7は電池缶1の開口面11の領域内に底面7B全域が包含されるよう、また発電要素群6は絶縁カバー7への投影が絶縁カバー7の底面7Bに包含されるようそれぞれ位置決めされる。この状態から発電要素群6(および一体化された各部品)と電池缶1との距離を小さくする方向に、そのいずれかを相対移動させる。ここでは移動するのが発電要素群6,電池缶1のいずれであるかを特に限定しない。絶縁カバー7が発電要素群6,電池缶1の双方に接触する瞬間を経た後も相対移動を続けると、図1(b)のように発電要素群6は次第に電池缶1に内挿され、伴って絶縁カバー7は薄肉部7Aで折れ曲がる。相対移動がさらに進行すると図1(c)のようになり、絶縁カバー7は電池缶1の内面に沿うように立体状を呈し、同時に発電要素群6と電池缶1の各対向部分に介在する格好となる。この状態において絶縁カバー7は、図2(b)のように曲げ剛性が周囲よりも小さい薄肉部7Aが集中的に曲がり、その他の部分はほぼ平面を維持することとなる。また薄肉部7Aは、絶縁カバー7の発電要素に対向する面からノッチを導入することにより形成されることで、例えばその反対面にノッチを導入して形成した場合に起こり得る、電池缶1の開口部のエッジに引っかかるといった不具合を生じることなくスムーズに内挿できる。最終的には図1(d)のように電池缶1と電池蓋3とが接触し、発電要素群6が完全に収容される。
【0033】
上述したように、絶縁カバー7は薄肉部7Aで折れ曲がる構造を有している。すなわち、絶縁カバー7は、電池缶1の開口面11(開口部)に対向し四辺を有する底面7B(底面部)と、この底面部の四辺に沿って形成される2つの長側面7G,2つの短側面7H(まとめて側面部という)と、発電要素群6の電池缶1への挿入に応じて前述の底面部と側面部との境界が折れ曲がるように設けられた折れ曲がり部により構成される。
【0034】
次に、電池蓋3と電池缶1の外周端を合わせ、合わせ面に隙間を生じぬよう治具により加圧する。電池蓋3と電池缶1の外縁の合わせ面に向けてレーザービームを照射し、該合わせ面に沿って全周にわたり走査して、電池缶1と電池蓋3を溶接する。
【0035】
その後、注液口20から電解液を注液する。電解液として本例では、エチレンカーボネート等の炭酸エステル系の有機溶媒に6フッ化リン酸リチウム(LiPF6)等のリチウム塩が溶解された非水電解液を用いている。発電要素の内周部分まで均等かつ効率的に電解液を含浸させるために、電池缶1内圧力を予め電池外周の圧力よりも相対的に低く設定される。注液後、注液口20を注液栓22で密栓し注液口20と注液栓22との合わせ面外周をレーザービーム溶接して気密封止する。
【0036】
(作用等)
続いて、本実施形態の電池の作用等について説明する。
【0037】
[1]本実施形態の電池では、絶縁カバー7を、専用の樹脂注型金型を用いて立体成型することなく、単なるシート状樹脂素材から取得できるので、絶縁カバー7製造コストを低減でき、結果的に絶縁カバー7を用いる電池コストを低減することができる。
【0038】
[2]本実施形態の電池では、封止ステップにおいて、発電要素群6と電池缶1の距離の相対変化により自動的に絶縁カバー7が折りたたまれ所定の立体形状となるので、特段の治具を要することなく発電要素群6および絶縁カバー7を電池缶1に収容することができ、電池製造コストを低減することができる。
【0039】
[3]本実施形態の電池では、封止ステップにおいて、介在する絶縁カバー7の電池缶1側の各面が電池缶1の開口面11エッジを摺動しながら、また摺動面の反対の面は発電要素群6表面を修道することなく密着しながら発電要素群6を電池缶1に収容できるので、発電要素群6が電池缶1の開口面11エッジで損傷することを防止できる。また発電要素群6の電池缶1へ進入に伴って絶縁カバー7が次第に角度を狭めるので、発電要素群6の見かけの厚さが電池缶1の開口幅より大きい場合でも容易に収容することができる。
【0040】
続いて、図3(a)(b)は第2の実施形態の絶縁カバー7の斜視図と電池缶1への収容後の状態を示すA―A断面図である。
【0041】
本実施形態では、絶縁カバー7の底面7Bに凹凸部7Cが設けられている。本発明では絶縁カバー7の薄肉部7Aが折れ曲がるに必要な荷重が発電要素群6に圧縮荷重として直接作用するので、発電要素群6各部にかかる応力を分散させて局所的な変形を抑え、損傷を防止するためには、絶縁カバー7の底面7Bが曲がることなく平面を維持する必要がある。凹凸部7Cにより、底面7Bの曲げ剛性が第1の実施形態よりも向上し、薄肉部7Aとの曲げ剛性の差がさらに大きくなるので、電池缶1への内挿時に底面7Bの変形を小さく抑えることができる。したがって、発電要素群6の損傷を防止することができる。
【0042】
なお、図3(b)では、薄肉部7Aは発電要素群6に対向する面の一部を凹とする構成を採用しているため、薄肉部7Aの位置がより折れ曲がりやすくなる効果を有する。
【0043】
なお、上記のとおり本実施形態の趣旨は、絶縁カバー7底面7Bの曲げ剛性を相対的に向上させることにあるので、形態は図示したものに囚われず、例えば底面7Bのみを厚く形成する、ヤング率の高い別材料を複合させる、など種々の構成が適用できる。
【0044】
続いて、図4(a)(b)は第3の実施形態の絶縁カバー7の斜視図と電池缶1の表示を除した電池の断面図である。
【0045】
本実施形態では、絶縁カバー7のうち、発電要素群6の塗工部6F表面と対向する面が予め存在せず、一方接続板5A,5Bと対向する面は予め両端にリブ(壁面)7Dを有する立体状に加工形成されている。図4(b)でわかるように、折りたたまれ電池缶1に収容された後は絶縁カバー7は接続板5A,接続板5Bと電池缶1との間、および未塗工部6A,未塗工部6Bと電池缶1との間のみをカバーする格好となる。<電極形成ステップ>で説明したように、発電要素群6の塗工部6F表面は絶縁性のセパレータ6Cで覆われており外部との絶縁が確保されている。セパレータ6Cによる絶縁のマージンが十分である場合にはこのように絶縁カバー7形状を簡略化し、他の絶縁手段が存在しない接続板5A,接続板5Bと電池缶1との間、および未塗工部6A,未塗工部6Bと電池缶1との間のみをカバーする構成としてもよい。本実施形態により、絶縁カバー7の体積が低減して重量が軽減するので、結果的に電池重量の軽量化が図られる。リブ7Dは、シート状の樹脂素材を予め折り曲げて形成する場合と、シート状の素材を用いずに自在形状が得られる樹脂の注型により絶縁カバー7全体を形成する場合がある。
【0046】
続いて、図5(a)(b)は第4の実施形態の絶縁カバー7の斜視図と電池缶1の表示を除した電池の断面図である。
【0047】
本実施形態では、絶縁カバー7は発電要素群6の塗工部6Fに対向する2面の両端にリブ7Dが形成されている。図5(b)でわかるように、折りたたまれ電池缶1に収容された後はリブ7Dが接続板5A,5B側まで延伸して結果的に電池缶1と発電要素群6が対向する全ての面に絶縁カバー7が介在することとなる。リブ7Dは第3の実施形態で述べたと同様の方法で設けられる。
【0048】
続いて、図6(a)(b)は第5の実施形態の絶縁カバー7の斜視図と電池缶1の表示を除した電池の断面図である。
【0049】
本実施形態では、図6(a)でわかるように絶縁カバー7の短側面7H側には面に垂直なリブ7Dが予め設けられている。図6(b)でわかるように、折りたたまれて電池缶1に収容された後はリブ7Dの部分は2枚の絶縁カバー7が重なって、これまでの実施形態で見られた折り曲げられた2面の絶縁カバー7の間の僅かな隙間がなくなっている。この形態により、絶縁カバー7の長側面7G側と短側面7H側の間(電池缶1コーナー部)の隙間がなくなることから、例えば未塗工部6A,未塗工部6Bの各層から部分的にはみ出した箔片などが隙間に入り込んで電池缶1に接触するなどといった不具合も防止することができ、絶縁効果をより確実なものとすることができる。
【0050】
なお、2枚の絶縁カバー7が重なっている構成は短側面7Hの一部に短側面7Hに対して略垂直なリブ7D(壁面)を有し、短側面7Hと電池缶1との間に壁面が介在するものである。本実施形態によれば、リブ7Dよりも電池缶1側に別の面の絶縁カバー7が重なっているので、発電要素群6および絶縁カバー7を電池缶1に収容する工程でリブ7Dが電池缶1の開口面11に引っかかることなくスムーズに収容することができる。
【0051】
また、図6(a)(b)では短側面7Hにリブ7Dを設けたが、短側面7Hではなく長側面7Gにのみリブ7Dを設けた場合であっても、長側面7Gと電池缶1との間に壁面を介在させることができ、上記と同様の効果を得られる。
【0052】
続いて、図7(a)(b)は第6の実施形態の絶縁カバー7の斜視図と電池缶1の表示を除した電池の断面図である。
【0053】
本実施形態では、図7(a)でわかるように絶縁カバー7の短側面7H側には部分的にリブ7Dが設けられており、一方長側面7G側は部分的に切り欠き状になっている。折りたたまれて電池缶1に収容された後は、図7(b)でわかるように短側面7H側のリブ7Dが長側面7G側の切り欠き部に回り込み、それら両者は重なることなく収容されている。電池缶1内部でそれらが重なることにより、電池に余剰な厚さが必要になり、薄型化の妨げになる場合、あるいはそれらが重なることにより電池内部の熱伝導性(放熱性)が低下することが問題となる場合には、このような形態を採ることにより解決を図ることができる。
【0054】
続いて、図8(a)(b)は第7の実施形態の絶縁カバー7の斜視図と電池缶1への収容後の形状を示すB―B断面図である。
【0055】
本実施形態では、絶縁カバー7の、発電要素群6の塗工部6Fと対向する面(長側面7G)に複数の貫通孔9が形成されている。また各貫通孔9の周囲には発電要素側に凸の厚肉部10が形成されている。折りたたまれて電池缶1に収容された後は、図8(b)でわかるように厚肉部10が発電要素群6を加圧している(図8(b)ではそのことをわかりやすく表現するため、厚肉部10と発電要素群6を一部交差させている)。ここで各貫通孔9は、絶縁カバー7と電池缶1の間および絶縁カバー7と発電要素群6の間の電解液の疎通を可能にし、直接電池機能に作用しない遊離液を低減させる。一方厚肉部10は、発電要素群6に対して適性な面圧を付与する。厚肉部10は絶縁カバー7と同材質であり、可撓性を有する樹脂素材であるため、電池缶1と発電要素群6との隙間が異なっていてもその隙間に応じて両者の間に介在することができる。この結果、発電要素群6は適切な面圧が付与されることで、やむを得ず発生し電池効率を低下させる各層の間の隙間が押し潰されて低減し、電池効率を高く維持することが可能になる。また発電要素群6の厚さがやむを得ずばらついても、厚肉部10の可撓性によりそれを吸収することができる。
【0056】
なおこれまでは、電池としてリチウムイオン二次電池を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、二次電池一般に適用することができる。また、正極活物質としてマンガン酸リチウム、負極活物質として黒鉛をそれぞれ例示したが、本発明はこれらに制限されるものではなく、通常リチウムイオン二次電池に用いられる活物質を用いることもできる。正極活物質としては、リチウムイオンを挿入・脱離可能な材料であり、予め十分な量のリチウムイオンを挿入したリチウム遷移金属複合酸化物を用いればよく、リチウム遷移金属複合酸化物の結晶中のリチウムや遷移金属の一部をそれら以外の元素で置換あるいはドープした材料を使用するようにしてもよい。さらに、結晶構造についても特に制限はなく、スピネル系,層状系,オリビン系のいずれの結晶構造を有していてもよい。一方、黒鉛以外の負極活物質としては、例えば、コークスや非晶質炭素等の炭素材を挙げることができ、その粒子形状においても、鱗片状,球状,繊維状,塊状等、特に制限されるものではない。
【0057】
またさらに、本発明は、本実施形態で例示した導電材やバインダについても特に限定されず、通常リチウムイオン二次電池に用いられているいずれのものも使用可能である。本実施形態以外で用いることのできるバインダとしては、ポリテトラフルオロエチレン,ポリエチレン,ポリスチレン,ポリブタジエン,ブチルゴム,ニトリルゴム,スチレン/ブタジエンゴム,多硫化ゴム,ニトロセルロース,シアノエチルセルロース,各種ラテックス,アクリロニトリル,フッ化ビニル,フッ化ビニリデン,フッ化プロピレン,フッ化クロロプレン等の重合体およびこれらの混合体等を挙げることができる。
【0058】
またさらに、本実施形態では、エチレンカーボネート等の炭酸エチレン系有機溶媒にLiPF6を溶解した非水電解液を例示したが、一般的なリチウム塩を電解質とし、これを有機溶媒に溶解した非水電解液を用いてもよく、本発明は用いられるリチウム塩や有機溶媒には特に制限されるものではない。例えば、電解質としては、LiClO4,LiAsF6,LiBF4,LiB(C6H5)4,CH3SO3Li,CF3SO3Li等やこれらの混合物を用いることができる。また、有機溶媒としてはジエチルカーボネート,プロピレンカーボネート,1,2−ジエトキシエタン,γ−ブチロラクトン,スルホラン,プロピオニトリル等、または、これらの2種以上を混合した混合溶媒を用いることができる。
【0059】
またさらに、本実施形態では発電要素群6として正極板6E,負極板6Dを捲回して形成する例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、正極板6E,負極板6Dを積層して形成することも可能である。図10に示すように、積層式の発電要素群6では、矩形状の正極板6Eと、矩形状の負極板6Dとが、矩形状のセパレータ6Cを介して交互に積層されている。このとき、未塗工部6A,未塗工部6Bが発電要素群6の両端面にそれぞれ位置するように積層されている。このような積層式の発電要素群6でも、上述した本実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0060】
またさらに、シール材13は予め別体の部品ではなくインサート成型により形成してもよい。電池缶1と外部端子4A,外部端子4Bとを一定の間隔に保持する金型を用い、金型に形成した隙間にPPSやPBTなどの樹脂材料をインサート成型することでシール材13を形成してもよい。インサート成型により、電池蓋3と外部端子4A,外部端子4Bとの相対位置が固定され、両者間の絶縁が確保され、かつ気密が確立される。
【符号の説明】
【0061】
1 電池缶
3 電池蓋
4A 外部端子(正極)
4B 外部端子(負極)
5A 接続板(正極)
5B 接続板(負極)
6 発電要素群
6A 未塗工部(正極)
6B 未塗工部(負極)
6C セパレータ
6D 負極板
6E 正極板
6F 塗工部
7 絶縁カバー
7A 薄肉部
7B 底面
7C 凹凸部
7D リブ
7G 長側面
7H 短側面
8A 接合部(正極)
8B 接合部(負極)
9 貫通孔
10 厚肉部
11 開口面
13 シール材
20 注液口
22 注液栓
【技術分野】
【0001】
本発明は二次電池(以下単に電池ともいう)及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地球環境保護の社会動向を受け、ハイブリッド車や電気自動車等の車両駆動用電池の実用化,普及が必要である。車両駆動用電池の構造として、発電要素たる正極,負極双方のシート(正負極板)と、正負極板を分離するセパレータと、電解液とが、金属製や樹脂製の密閉容器内に収容され、発電要素の両極とそれぞれ接合された外部端子を設けたものが知られている。
【0003】
これまでの電池は、外観が円柱状をなしたものが多かった。ところが、車両用電池では、出力や容量の向上を図るために数十から百超の個数の電池をまとめ、組電池としてひとつの車両に搭載することから、実装密度に優れる角形状のもの(角形電池)が検討されるようになっている。
【0004】
従来の角形電池において、本発明に関係する電池缶と発電要素群の電気的隔絶(絶縁)の具体的な方法が、例えば次に示す各文献により既知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4296522号公報
【特許文献2】特許第3413907号公報
【特許文献3】特開2009−170137号公報
【特許文献4】特開2007−226989号公報
【特許文献5】特開2005−302529号公報
【0006】
上記特許文献1では、電池缶と発電要素群との間に袋状絶縁フィルムを配した。
【0007】
上記特許文献2では、発電要素群を一枚の連続部材を折り曲げて形成した一対のばね片を有する板ばねに挟み込み、電池内で加圧した。
【0008】
上記特許文献3では、予め展開形状に形成された絶縁カバーで発電要素群を被覆して電池缶に収容した。
【0009】
上記特許文献4では、予め展開形状に形成された絶縁カバーで発電要素群を被覆して電池缶に収容した。
【0010】
上記特許文献5では、正極の外面および底面をシート状のセパレータおよび負極材で連続してU字状に覆い電池缶に収容した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記従来技術はそれぞれ次のような問題点がある。
【0012】
特許文献1によれば、絶縁カバーは予め展開形状をなしており、発電要素群をその中に位置させた後、各折り曲げ部を折り曲げてから重ね部を溶着して袋状とする(特許文献1の0019,0020段落および図6,図7に記載)工程の後、これらを電池缶に収容する(特許文献1の0026,0027段落および図8Aから図8Cに記載)ので、多くの工程を要してコスト高となり、なおかつ絶縁カバーや発電要素群にしわやよじれ、擦れなどを生じさせず、また仕上がり品質をばらつかせることなく組み立てることが難しい。
【0013】
特許文献2によれば、発電要素群主面に圧縮力を与える板ばね形状のステンレス材で発電要素群および樹脂材を外側から覆い、それらを電池缶に収容する(特許文献2の0019,0020段落に記載)ので、ステンレス材が電池缶と直接擦れ合うこととなり、それにより生じた金属の擦れ粉が電池内に侵入する可能性がある。この擦れ粉は電池の信頼性を大きく低下させるので、確実に防止する必要がある。また、板ばね形状のステンレス材は予めプレス等の方法により所定形状に曲げ加工しておく必要があるので、電池の組立工程が多くコスト高となる。
【0014】
特許文献3および特許文献4によれば、展開形状に形成された絶縁カバーを予め所定形状に折り曲げてから、形成された空間に発電要素群を収める(特許文献3の0037,0038段落,特許文献4の0014段落および図3に記載)。このため、電池の量産過程において薄い樹脂製の絶縁カバーの折り曲げ後の形状がうまく定まらず、ゆがみや折れ曲がりなどを生じて発電要素群を良好に収容することが難しい。また、発電要素群を絶縁カバーに収容した後これらを電池缶に改めて収容する(特許文献3の0039段落,特許文献4の0014段落および図4に記載)ため、薄膜の積層構造である発電要素群とやはり薄膜からなる絶縁カバーの電池缶に対する位置決めが難しく、電池缶内にうまく収容することが難しい。
【0015】
特許文献5によれば、正極材の底面をセパレータのみならずその外面に負極材を配してU字状に覆ってから電池缶に収容するため、負極材と電池缶が直接接触することとなり、すなわち負極材を含む発電要素群と電池缶との完全な絶縁が難しい。またセパレータがU字状であるため発電要素群の電池短側面側には絶縁手段が施されないため、絶縁が難しい。また正極材とそれをU字状に覆うセパレータおよび負極材が予めユニットを構成する(特許文献5の0018に記載)ため、これらを形成した後に電池缶に収容することとなり、上記したと同様の理由から電池缶内にうまく収容することが難しい。
【0016】
本発明は上記事案に鑑み、安価で仕上がり品質にばらつきを生じることのない、量産性に優れる二次電池を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するため、本発明の二次電池は、開口部を持つ直方体状の電池缶と、前記電池缶の開口部を封止する電池蓋と、前記電池缶と前記電池蓋とで画定された空間内に配置される発電要素群と、前記電池缶と前記発電要素群との間を電気的に絶縁する絶縁カバーとを有し、前記絶縁カバーは、前記電池缶の開口部に対向し四辺を有する底面部と、前記底面部の四辺のうち少なくとも対向する二辺に沿って形成される側面部と、前記発電要素群の前記電池缶への挿入に応じて前記底面部と前記側面部との境界が折れ曲がるように設けられた折れ曲がり部とを有する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、絶縁カバーを、専用の樹脂注型金型を用いて立体成型することなく、単なるシート状樹脂素材から取得できるので、絶縁カバー製造コストを低く抑えることができ、結果的に絶縁カバーを含む電池コストを低く抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1(a)】第1の実施形態の電池の製造過程を示す斜視図である。
【図1(b)】第1の実施形態の電池の製造過程を示す斜視図である。
【図1(c)】第1の実施形態の電池の製造過程を示す斜視図である。
【図1(d)】第1の実施形態の電池の製造過程を示す斜視図である。
【図2(a)】第1の実施形態の絶縁カバーの斜視図である。
【図2(b)】第1の実施形態の絶縁カバーの電池缶への収容後の形状を示す断面斜視図である。
【図3(a)】第2の実施形態の絶縁カバーの斜視図である。
【図3(b)】第2の実施形態の絶縁カバーの電池缶への収容時の状態を示す部分A―A断面図である。
【図4(a)】第3の実施形態の絶縁カバーの斜視図である。
【図4(b)】第3の実施形態の絶縁カバーの電池缶への収容後の形状を示す断面斜視図である。
【図5(a)】第4の実施形態の絶縁カバーの斜視図である。
【図5(b)】第4の実施形態の絶縁カバーの電池缶への収容後の形状を示す断面斜視図である。
【図6(a)】第5の実施形態の絶縁カバーの斜視図である。
【図6(b)】第5の実施形態の絶縁カバーの電池缶への収容後の形状を示す断面斜視図である。
【図7(a)】第6の実施形態の絶縁カバーの斜視図である。
【図7(b)】第6の実施形態の絶縁カバーの電池缶への収容後の形状を示す断面斜視図である。
【図8(a)】第7の実施形態の絶縁カバーの斜視図である。
【図8(b)】第7の実施形態の絶縁カバーの電池缶への収容時の状態を示すB―B断面図である。
【図9】発電要素群である捲回体の構成を示す斜視図である。
【図10】発電要素群である積層体の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を適用した電池の実施の形態について説明する。
【0021】
本発明の電池は、図1(a)に見られるように、一面が開口した略矩形状の電池缶1と、電池缶1の開口面(開口部)11を封止する電池蓋3とを備えている。電池蓋3は、輪郭が電池缶1の開口面11輪郭に合致する平板状に形成されている。電池缶1,電池蓋3の材質には、共にアルミニウム合金が用いられている。
【0022】
電池蓋3には、貫通孔を通じてシール材13,接続板5A(正極),接続板5B(負極)、および外部端子4A(正極),外部端子4B(負極)が挿着されいずれも電池蓋3と機械的に一体化されている。また、接続板5A,接続板5Bと外部端子4A,外部端子4Bは直接接しており、電気的に導通している。シール材13は、材質としてポリフェニレンサルファイド(PPS)やポリブチレンテレフタレート(PBT)、あるいはペルフルオロアルコキシフッ素(PFA)等の絶縁性樹脂が用いられている。正極となる接続板5Aと外部端子4Aは、材質としてアルミニウム合金が用いられている。また負極となる接続板5Bと外部端子4Bは、材質として銅合金が用いられている。
【0023】
電池缶1と電池蓋3で画定される空間内には、正極板6E,負極板6Dとそれらの極性分離のためのセパレータ6Cが共に扁平状に捲回された発電要素群6が、電解液が浸潤した状態で配置されている。発電要素群6は、集電箔を有する正極板6E,負極板6Dが捲回または積層されたものである。両端部には、正負極集電箔上に活物質合剤が塗工されず集電箔が露出している未塗工部6A(正極),未塗工部6B(負極)が露出している。未塗工部6A,未塗工部6Bは発電要素群6の中で互いに反対側に位置している。未塗工部6A,未塗工部6Bの一表面には接続板5A,5Bが配置され、束ねられた各層の未塗工部6A,未塗工部6Bと共に接合部で機械的および電気的に接合されている。接合には超音波接合法が用いられている。未塗工部6A,未塗工部6Bは正極板6E,負極板6Dの活物質合剤の塗工部6Fよりも活物質合剤の厚さ分だけ薄いので、接合により各層同士を密着させた結果塗工部6Fよりも全体厚さが小さくなっている。
【0024】
電池缶1と発電要素群6の間には、発電要素群6と電池缶1を電気的に絶縁する絶縁カバー7が配されている。絶縁カバー7はシート状で、図2(a)からも明らかなように、初期の形状は電池缶1の展開形状に略合致している。各面の境界にはほぼ直線状の薄肉部7Aが形成されている。絶縁カバー7は、材質としてポリプロピレン(PP),PPS,PBT,PFA、あるいはそれらの複合体などが用いられている。薄肉部7Aは、シート状の樹脂素材に対してプレスを施すことで形成されている。
【0025】
<製造>
電池は、電池蓋3にシール材13,接続板5A,接続板5B,外部端子4A,外部端子4Bを固定する準備ステップ,正極板6E,負極板6Dを捲回して形状を整え、発電要素群6を形成する電極形成ステップ,発電要素群6の未塗工部6A,未塗工部6Bの各層と接続板5A,5Bを密着させて電気的および機械的に接合する接合ステップ,接合ステップを終えた発電要素群6を電池缶1に収容し、電池缶1と電池蓋3とを溶接接合する封止ステップ、を経て製造される。以下、それぞれのステップを説明する。
【0026】
<準備ステップ>
準備ステップでは、貫通孔が設けられた電池蓋3に対し、貫通孔にはシール材13,外部端子4A,外部端子4Bを挿入し、挿入した外部端子4A,外部端子4Bの電池内側となる先端部に正極の接続板5A,負極の接続板5Bに予め設けた貫通孔を通して、同部をかしめて固定する。これにより、外部端子4A,外部端子4Bと接続板5A,接続板5Bとは直接接するため電気的に導通状態となり、これらと電池蓋3とは絶縁性のシール材13を介して接するため電気的に絶縁の状態となって、いずれもが機械的に固定される。外部端子4A,外部端子4Bと接続板5A,接続板5Bとの電気的,機械的接続信頼性を高めるために、かしめ部の両者界面にさらに溶接を施す場合もある。
【0027】
<電極形成ステップ>
電極形成ステップにおいて、発電要素群6は、正極板6Eおよび負極板6Dをセパレータ6Cを介在させて捲回することで形成する。図9に示すように、セパレータ6C,負極板6D,セパレータ6C,正極板6Eの順に積層し、負極側から断面長円状になるよう捲回する。このとき、正極板6Eの未塗工部6Aと負極板6Dの未塗工部6Bとが互いに反対側に露出するようにする。また、捲き始め部分および巻き終わり部分には、セパレータ6Cのみを2〜3周程度捲回し、形状の安定化を図る。
【0028】
発電要素群6を構成する正極板6Eは、正極集電箔としてアルミニウム箔を用いる。アルミニウム箔の両面には、正極活物質としてマンガン酸リチウム等のリチウム含有遷移金属複酸化物を含む正極活物質合剤が略均等かつ略均一に塗着されている。正極活物質合剤には、正極活物質以外に、炭素材料等の導電材およびポリフッ化ビニリデン(以下、PVDFと略記する。)等のバインダ(結着材)が配合されている。アルミニウム箔への正極活物質合剤の塗工時には、N−メチルピロリドン(以下、NMPと略記する)等の分散溶媒で粘度調整される。このとき、アルミニウム箔の長寸方向一側の側縁に正極活物質合剤を塗工しない未塗工部6Aを形成する。すなわち、未塗工部6Aでは、アルミニウム箔が露出している。正極板6Eは、乾燥後ロールプレスで密度を調整している。
【0029】
一方、負極板6Dは、負極集電箔として銅箔を用いる。銅箔の両面には、負極活物質としてリチウムイオンを可逆に吸蔵、放出可能な黒鉛等の炭素材を含む負極活物質合剤が略均等かつ略均一に塗着されている。負極活物質合剤には、負極活物質以外に、アセチレンブラック等の導電材やPVDF等のバインダが配合されている。
【0030】
銅箔への負極活物質合剤の塗工時には、NMP等の分散溶媒で粘度調整される。このとき、銅箔の長寸方向一側の側縁に負極活物質合剤の塗工されない未塗工部6Bが形成される。すなわち、未塗工部6Bでは銅箔が露出している。負極板6Dは、乾燥後ロールプレスで密度を調整している。なお、負極板6Dの長さは、正極板6Eおよび負極板6Dを捲回したときに、捲回最内周および最外周で捲回方向に正極板6Eが負極板6Dからはみ出すことがないように、正極板6Eの長さより長く設定している。
【0031】
<接合ステップ>
準備ステップで構成した部分アセンブリと電極形成ステップで構成した発電要素群6を用意し、両者を位置決めしてから未塗工部6Bの各層を発電要素群6の厚さ方向中心部に寄せて密着させる。加えて接続板5A,接続板5Bを最表面に接触させ、加圧すると共に超音波振動を加えて未塗工部6Bの各層と接続板5A,接続板5Bを一括接合する。これにより発電要素群6と外部端子4A,外部端子4Bとが、接続板5A,接続板5Bを介して電気的および機械的に接合される。これらは正極側,負極側共に行われる。
【0032】
<封止ステップ>
まず、図1(a)のように準備ステップおよび接合ステップを経た構造体,絶縁カバー7,電池缶1を配する。このとき絶縁カバー7は電池缶1の開口面11の領域内に底面7B全域が包含されるよう、また発電要素群6は絶縁カバー7への投影が絶縁カバー7の底面7Bに包含されるようそれぞれ位置決めされる。この状態から発電要素群6(および一体化された各部品)と電池缶1との距離を小さくする方向に、そのいずれかを相対移動させる。ここでは移動するのが発電要素群6,電池缶1のいずれであるかを特に限定しない。絶縁カバー7が発電要素群6,電池缶1の双方に接触する瞬間を経た後も相対移動を続けると、図1(b)のように発電要素群6は次第に電池缶1に内挿され、伴って絶縁カバー7は薄肉部7Aで折れ曲がる。相対移動がさらに進行すると図1(c)のようになり、絶縁カバー7は電池缶1の内面に沿うように立体状を呈し、同時に発電要素群6と電池缶1の各対向部分に介在する格好となる。この状態において絶縁カバー7は、図2(b)のように曲げ剛性が周囲よりも小さい薄肉部7Aが集中的に曲がり、その他の部分はほぼ平面を維持することとなる。また薄肉部7Aは、絶縁カバー7の発電要素に対向する面からノッチを導入することにより形成されることで、例えばその反対面にノッチを導入して形成した場合に起こり得る、電池缶1の開口部のエッジに引っかかるといった不具合を生じることなくスムーズに内挿できる。最終的には図1(d)のように電池缶1と電池蓋3とが接触し、発電要素群6が完全に収容される。
【0033】
上述したように、絶縁カバー7は薄肉部7Aで折れ曲がる構造を有している。すなわち、絶縁カバー7は、電池缶1の開口面11(開口部)に対向し四辺を有する底面7B(底面部)と、この底面部の四辺に沿って形成される2つの長側面7G,2つの短側面7H(まとめて側面部という)と、発電要素群6の電池缶1への挿入に応じて前述の底面部と側面部との境界が折れ曲がるように設けられた折れ曲がり部により構成される。
【0034】
次に、電池蓋3と電池缶1の外周端を合わせ、合わせ面に隙間を生じぬよう治具により加圧する。電池蓋3と電池缶1の外縁の合わせ面に向けてレーザービームを照射し、該合わせ面に沿って全周にわたり走査して、電池缶1と電池蓋3を溶接する。
【0035】
その後、注液口20から電解液を注液する。電解液として本例では、エチレンカーボネート等の炭酸エステル系の有機溶媒に6フッ化リン酸リチウム(LiPF6)等のリチウム塩が溶解された非水電解液を用いている。発電要素の内周部分まで均等かつ効率的に電解液を含浸させるために、電池缶1内圧力を予め電池外周の圧力よりも相対的に低く設定される。注液後、注液口20を注液栓22で密栓し注液口20と注液栓22との合わせ面外周をレーザービーム溶接して気密封止する。
【0036】
(作用等)
続いて、本実施形態の電池の作用等について説明する。
【0037】
[1]本実施形態の電池では、絶縁カバー7を、専用の樹脂注型金型を用いて立体成型することなく、単なるシート状樹脂素材から取得できるので、絶縁カバー7製造コストを低減でき、結果的に絶縁カバー7を用いる電池コストを低減することができる。
【0038】
[2]本実施形態の電池では、封止ステップにおいて、発電要素群6と電池缶1の距離の相対変化により自動的に絶縁カバー7が折りたたまれ所定の立体形状となるので、特段の治具を要することなく発電要素群6および絶縁カバー7を電池缶1に収容することができ、電池製造コストを低減することができる。
【0039】
[3]本実施形態の電池では、封止ステップにおいて、介在する絶縁カバー7の電池缶1側の各面が電池缶1の開口面11エッジを摺動しながら、また摺動面の反対の面は発電要素群6表面を修道することなく密着しながら発電要素群6を電池缶1に収容できるので、発電要素群6が電池缶1の開口面11エッジで損傷することを防止できる。また発電要素群6の電池缶1へ進入に伴って絶縁カバー7が次第に角度を狭めるので、発電要素群6の見かけの厚さが電池缶1の開口幅より大きい場合でも容易に収容することができる。
【0040】
続いて、図3(a)(b)は第2の実施形態の絶縁カバー7の斜視図と電池缶1への収容後の状態を示すA―A断面図である。
【0041】
本実施形態では、絶縁カバー7の底面7Bに凹凸部7Cが設けられている。本発明では絶縁カバー7の薄肉部7Aが折れ曲がるに必要な荷重が発電要素群6に圧縮荷重として直接作用するので、発電要素群6各部にかかる応力を分散させて局所的な変形を抑え、損傷を防止するためには、絶縁カバー7の底面7Bが曲がることなく平面を維持する必要がある。凹凸部7Cにより、底面7Bの曲げ剛性が第1の実施形態よりも向上し、薄肉部7Aとの曲げ剛性の差がさらに大きくなるので、電池缶1への内挿時に底面7Bの変形を小さく抑えることができる。したがって、発電要素群6の損傷を防止することができる。
【0042】
なお、図3(b)では、薄肉部7Aは発電要素群6に対向する面の一部を凹とする構成を採用しているため、薄肉部7Aの位置がより折れ曲がりやすくなる効果を有する。
【0043】
なお、上記のとおり本実施形態の趣旨は、絶縁カバー7底面7Bの曲げ剛性を相対的に向上させることにあるので、形態は図示したものに囚われず、例えば底面7Bのみを厚く形成する、ヤング率の高い別材料を複合させる、など種々の構成が適用できる。
【0044】
続いて、図4(a)(b)は第3の実施形態の絶縁カバー7の斜視図と電池缶1の表示を除した電池の断面図である。
【0045】
本実施形態では、絶縁カバー7のうち、発電要素群6の塗工部6F表面と対向する面が予め存在せず、一方接続板5A,5Bと対向する面は予め両端にリブ(壁面)7Dを有する立体状に加工形成されている。図4(b)でわかるように、折りたたまれ電池缶1に収容された後は絶縁カバー7は接続板5A,接続板5Bと電池缶1との間、および未塗工部6A,未塗工部6Bと電池缶1との間のみをカバーする格好となる。<電極形成ステップ>で説明したように、発電要素群6の塗工部6F表面は絶縁性のセパレータ6Cで覆われており外部との絶縁が確保されている。セパレータ6Cによる絶縁のマージンが十分である場合にはこのように絶縁カバー7形状を簡略化し、他の絶縁手段が存在しない接続板5A,接続板5Bと電池缶1との間、および未塗工部6A,未塗工部6Bと電池缶1との間のみをカバーする構成としてもよい。本実施形態により、絶縁カバー7の体積が低減して重量が軽減するので、結果的に電池重量の軽量化が図られる。リブ7Dは、シート状の樹脂素材を予め折り曲げて形成する場合と、シート状の素材を用いずに自在形状が得られる樹脂の注型により絶縁カバー7全体を形成する場合がある。
【0046】
続いて、図5(a)(b)は第4の実施形態の絶縁カバー7の斜視図と電池缶1の表示を除した電池の断面図である。
【0047】
本実施形態では、絶縁カバー7は発電要素群6の塗工部6Fに対向する2面の両端にリブ7Dが形成されている。図5(b)でわかるように、折りたたまれ電池缶1に収容された後はリブ7Dが接続板5A,5B側まで延伸して結果的に電池缶1と発電要素群6が対向する全ての面に絶縁カバー7が介在することとなる。リブ7Dは第3の実施形態で述べたと同様の方法で設けられる。
【0048】
続いて、図6(a)(b)は第5の実施形態の絶縁カバー7の斜視図と電池缶1の表示を除した電池の断面図である。
【0049】
本実施形態では、図6(a)でわかるように絶縁カバー7の短側面7H側には面に垂直なリブ7Dが予め設けられている。図6(b)でわかるように、折りたたまれて電池缶1に収容された後はリブ7Dの部分は2枚の絶縁カバー7が重なって、これまでの実施形態で見られた折り曲げられた2面の絶縁カバー7の間の僅かな隙間がなくなっている。この形態により、絶縁カバー7の長側面7G側と短側面7H側の間(電池缶1コーナー部)の隙間がなくなることから、例えば未塗工部6A,未塗工部6Bの各層から部分的にはみ出した箔片などが隙間に入り込んで電池缶1に接触するなどといった不具合も防止することができ、絶縁効果をより確実なものとすることができる。
【0050】
なお、2枚の絶縁カバー7が重なっている構成は短側面7Hの一部に短側面7Hに対して略垂直なリブ7D(壁面)を有し、短側面7Hと電池缶1との間に壁面が介在するものである。本実施形態によれば、リブ7Dよりも電池缶1側に別の面の絶縁カバー7が重なっているので、発電要素群6および絶縁カバー7を電池缶1に収容する工程でリブ7Dが電池缶1の開口面11に引っかかることなくスムーズに収容することができる。
【0051】
また、図6(a)(b)では短側面7Hにリブ7Dを設けたが、短側面7Hではなく長側面7Gにのみリブ7Dを設けた場合であっても、長側面7Gと電池缶1との間に壁面を介在させることができ、上記と同様の効果を得られる。
【0052】
続いて、図7(a)(b)は第6の実施形態の絶縁カバー7の斜視図と電池缶1の表示を除した電池の断面図である。
【0053】
本実施形態では、図7(a)でわかるように絶縁カバー7の短側面7H側には部分的にリブ7Dが設けられており、一方長側面7G側は部分的に切り欠き状になっている。折りたたまれて電池缶1に収容された後は、図7(b)でわかるように短側面7H側のリブ7Dが長側面7G側の切り欠き部に回り込み、それら両者は重なることなく収容されている。電池缶1内部でそれらが重なることにより、電池に余剰な厚さが必要になり、薄型化の妨げになる場合、あるいはそれらが重なることにより電池内部の熱伝導性(放熱性)が低下することが問題となる場合には、このような形態を採ることにより解決を図ることができる。
【0054】
続いて、図8(a)(b)は第7の実施形態の絶縁カバー7の斜視図と電池缶1への収容後の形状を示すB―B断面図である。
【0055】
本実施形態では、絶縁カバー7の、発電要素群6の塗工部6Fと対向する面(長側面7G)に複数の貫通孔9が形成されている。また各貫通孔9の周囲には発電要素側に凸の厚肉部10が形成されている。折りたたまれて電池缶1に収容された後は、図8(b)でわかるように厚肉部10が発電要素群6を加圧している(図8(b)ではそのことをわかりやすく表現するため、厚肉部10と発電要素群6を一部交差させている)。ここで各貫通孔9は、絶縁カバー7と電池缶1の間および絶縁カバー7と発電要素群6の間の電解液の疎通を可能にし、直接電池機能に作用しない遊離液を低減させる。一方厚肉部10は、発電要素群6に対して適性な面圧を付与する。厚肉部10は絶縁カバー7と同材質であり、可撓性を有する樹脂素材であるため、電池缶1と発電要素群6との隙間が異なっていてもその隙間に応じて両者の間に介在することができる。この結果、発電要素群6は適切な面圧が付与されることで、やむを得ず発生し電池効率を低下させる各層の間の隙間が押し潰されて低減し、電池効率を高く維持することが可能になる。また発電要素群6の厚さがやむを得ずばらついても、厚肉部10の可撓性によりそれを吸収することができる。
【0056】
なおこれまでは、電池としてリチウムイオン二次電池を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、二次電池一般に適用することができる。また、正極活物質としてマンガン酸リチウム、負極活物質として黒鉛をそれぞれ例示したが、本発明はこれらに制限されるものではなく、通常リチウムイオン二次電池に用いられる活物質を用いることもできる。正極活物質としては、リチウムイオンを挿入・脱離可能な材料であり、予め十分な量のリチウムイオンを挿入したリチウム遷移金属複合酸化物を用いればよく、リチウム遷移金属複合酸化物の結晶中のリチウムや遷移金属の一部をそれら以外の元素で置換あるいはドープした材料を使用するようにしてもよい。さらに、結晶構造についても特に制限はなく、スピネル系,層状系,オリビン系のいずれの結晶構造を有していてもよい。一方、黒鉛以外の負極活物質としては、例えば、コークスや非晶質炭素等の炭素材を挙げることができ、その粒子形状においても、鱗片状,球状,繊維状,塊状等、特に制限されるものではない。
【0057】
またさらに、本発明は、本実施形態で例示した導電材やバインダについても特に限定されず、通常リチウムイオン二次電池に用いられているいずれのものも使用可能である。本実施形態以外で用いることのできるバインダとしては、ポリテトラフルオロエチレン,ポリエチレン,ポリスチレン,ポリブタジエン,ブチルゴム,ニトリルゴム,スチレン/ブタジエンゴム,多硫化ゴム,ニトロセルロース,シアノエチルセルロース,各種ラテックス,アクリロニトリル,フッ化ビニル,フッ化ビニリデン,フッ化プロピレン,フッ化クロロプレン等の重合体およびこれらの混合体等を挙げることができる。
【0058】
またさらに、本実施形態では、エチレンカーボネート等の炭酸エチレン系有機溶媒にLiPF6を溶解した非水電解液を例示したが、一般的なリチウム塩を電解質とし、これを有機溶媒に溶解した非水電解液を用いてもよく、本発明は用いられるリチウム塩や有機溶媒には特に制限されるものではない。例えば、電解質としては、LiClO4,LiAsF6,LiBF4,LiB(C6H5)4,CH3SO3Li,CF3SO3Li等やこれらの混合物を用いることができる。また、有機溶媒としてはジエチルカーボネート,プロピレンカーボネート,1,2−ジエトキシエタン,γ−ブチロラクトン,スルホラン,プロピオニトリル等、または、これらの2種以上を混合した混合溶媒を用いることができる。
【0059】
またさらに、本実施形態では発電要素群6として正極板6E,負極板6Dを捲回して形成する例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、正極板6E,負極板6Dを積層して形成することも可能である。図10に示すように、積層式の発電要素群6では、矩形状の正極板6Eと、矩形状の負極板6Dとが、矩形状のセパレータ6Cを介して交互に積層されている。このとき、未塗工部6A,未塗工部6Bが発電要素群6の両端面にそれぞれ位置するように積層されている。このような積層式の発電要素群6でも、上述した本実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0060】
またさらに、シール材13は予め別体の部品ではなくインサート成型により形成してもよい。電池缶1と外部端子4A,外部端子4Bとを一定の間隔に保持する金型を用い、金型に形成した隙間にPPSやPBTなどの樹脂材料をインサート成型することでシール材13を形成してもよい。インサート成型により、電池蓋3と外部端子4A,外部端子4Bとの相対位置が固定され、両者間の絶縁が確保され、かつ気密が確立される。
【符号の説明】
【0061】
1 電池缶
3 電池蓋
4A 外部端子(正極)
4B 外部端子(負極)
5A 接続板(正極)
5B 接続板(負極)
6 発電要素群
6A 未塗工部(正極)
6B 未塗工部(負極)
6C セパレータ
6D 負極板
6E 正極板
6F 塗工部
7 絶縁カバー
7A 薄肉部
7B 底面
7C 凹凸部
7D リブ
7G 長側面
7H 短側面
8A 接合部(正極)
8B 接合部(負極)
9 貫通孔
10 厚肉部
11 開口面
13 シール材
20 注液口
22 注液栓
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を持つ直方体状の電池缶と、
前記電池缶の開口部を封止する電池蓋と、
前記電池缶と前記電池蓋とで画定された空間内に配置される発電要素群と、
前記電池缶と前記発電要素群との間を電気的に絶縁する絶縁カバーとを有し、
前記絶縁カバーは、前記電池缶の開口部に対向し四辺を有する底面部と、前記底面部の四辺のうち少なくとも対向する二辺に沿って形成される側面部と、前記発電要素群の前記電池缶への挿入に応じて前記底面部と前記側面部との境界が折れ曲がるように設けられた折れ曲がり部とを有することを特徴とする二次電池。
【請求項2】
請求項1に記載の二次電池であって、
前記絶縁カバーは前記折れ曲がり部を規定するための直線状の薄肉部を備えることを特徴とする二次電池。
【請求項3】
請求項2に記載の二次電池であって、
前記薄肉部は前記発電要素群に対向する面の一部を凹とすることで形成されていることを特徴とする二次電池。
【請求項4】
請求項1に記載の二次電池であって、
前記絶縁カバーにおいて、前記底面部は他の部分よりも曲げ剛性が高いことを特徴とする二次電池。
【請求項5】
請求項1に記載の二次電池であって、
前記絶縁カバーにおいて、前記底面部は前記側面部の厚さが前記側面部よりも厚いことで他の部分よりも曲げ剛性が高いことを特徴とする二次電池。
【請求項6】
請求項1に記載の二次電池であって、
前記絶縁カバーにおいて、前記底面部は凹凸面を有することで他の部分よりも曲げ剛性が高いことを特徴とする二次電池。
【請求項7】
請求項1に記載の二次電池であって、
前記側面部の一部に前記側面部に対して略垂直な壁面を有し、前記側面部と前記電池缶との間に前記壁面が介在することを特徴とする二次電池。
【請求項8】
請求項1に記載の二次電池であって、
前記側面部の一部に貫通孔を有することを特徴とする二次電池。
【請求項9】
請求項1に記載の二次電池であって、
前記側面部の一部に前記発電要素群に向かって凸な部分を有することを特徴とする二次電池。
【請求項10】
開口部を持つ直方体状の電池缶と、
前記電池缶の開口部を封止する電池蓋と、
前記電池缶と前記電池蓋とで画定された空間内に配置される発電要素群と、
前記電池缶と前記発電要素群との間を電気的に絶縁し、前記電池缶の開口部に対向し四辺を有する底面部と、前記底面部の四辺のうち少なくとも対向する二辺に沿って形成される側面部とを有する絶縁カバーとを備えた二次電池の製造方法であって、
前記発電要素群が前記絶縁カバーを押圧することにより、前記底面部と前記側面部との境界が折れ曲がり、前記絶縁カバーとともに前記発電要素群を前記電池缶に収容するステップを有することを特徴とする二次電池の製造方法。
【請求項1】
開口部を持つ直方体状の電池缶と、
前記電池缶の開口部を封止する電池蓋と、
前記電池缶と前記電池蓋とで画定された空間内に配置される発電要素群と、
前記電池缶と前記発電要素群との間を電気的に絶縁する絶縁カバーとを有し、
前記絶縁カバーは、前記電池缶の開口部に対向し四辺を有する底面部と、前記底面部の四辺のうち少なくとも対向する二辺に沿って形成される側面部と、前記発電要素群の前記電池缶への挿入に応じて前記底面部と前記側面部との境界が折れ曲がるように設けられた折れ曲がり部とを有することを特徴とする二次電池。
【請求項2】
請求項1に記載の二次電池であって、
前記絶縁カバーは前記折れ曲がり部を規定するための直線状の薄肉部を備えることを特徴とする二次電池。
【請求項3】
請求項2に記載の二次電池であって、
前記薄肉部は前記発電要素群に対向する面の一部を凹とすることで形成されていることを特徴とする二次電池。
【請求項4】
請求項1に記載の二次電池であって、
前記絶縁カバーにおいて、前記底面部は他の部分よりも曲げ剛性が高いことを特徴とする二次電池。
【請求項5】
請求項1に記載の二次電池であって、
前記絶縁カバーにおいて、前記底面部は前記側面部の厚さが前記側面部よりも厚いことで他の部分よりも曲げ剛性が高いことを特徴とする二次電池。
【請求項6】
請求項1に記載の二次電池であって、
前記絶縁カバーにおいて、前記底面部は凹凸面を有することで他の部分よりも曲げ剛性が高いことを特徴とする二次電池。
【請求項7】
請求項1に記載の二次電池であって、
前記側面部の一部に前記側面部に対して略垂直な壁面を有し、前記側面部と前記電池缶との間に前記壁面が介在することを特徴とする二次電池。
【請求項8】
請求項1に記載の二次電池であって、
前記側面部の一部に貫通孔を有することを特徴とする二次電池。
【請求項9】
請求項1に記載の二次電池であって、
前記側面部の一部に前記発電要素群に向かって凸な部分を有することを特徴とする二次電池。
【請求項10】
開口部を持つ直方体状の電池缶と、
前記電池缶の開口部を封止する電池蓋と、
前記電池缶と前記電池蓋とで画定された空間内に配置される発電要素群と、
前記電池缶と前記発電要素群との間を電気的に絶縁し、前記電池缶の開口部に対向し四辺を有する底面部と、前記底面部の四辺のうち少なくとも対向する二辺に沿って形成される側面部とを有する絶縁カバーとを備えた二次電池の製造方法であって、
前記発電要素群が前記絶縁カバーを押圧することにより、前記底面部と前記側面部との境界が折れ曲がり、前記絶縁カバーとともに前記発電要素群を前記電池缶に収容するステップを有することを特徴とする二次電池の製造方法。
【図1(a)】
【図1(b)】
【図1(c)】
【図1(d)】
【図2(a)】
【図2(b)】
【図3(a)】
【図3(b)】
【図4(a)】
【図4(b)】
【図5(a)】
【図5(b)】
【図6(a)】
【図6(b)】
【図7(a)】
【図7(b)】
【図8(a)】
【図8(b)】
【図9】
【図10】
【図1(b)】
【図1(c)】
【図1(d)】
【図2(a)】
【図2(b)】
【図3(a)】
【図3(b)】
【図4(a)】
【図4(b)】
【図5(a)】
【図5(b)】
【図6(a)】
【図6(b)】
【図7(a)】
【図7(b)】
【図8(a)】
【図8(b)】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2011−198663(P2011−198663A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−65413(P2010−65413)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(505083999)日立ビークルエナジー株式会社 (438)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(505083999)日立ビークルエナジー株式会社 (438)
【Fターム(参考)】
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