説明

二相鋼板の製造方法

【解決手段】
約1340−1425Fの均熱及び850−920Fの保持を含む時間/温度サイクルを用いて作られた二相鋼板であり、鋼は、重量%にて、炭素:0.02−0.20、アルミニウム:0.010−0.150、チタン:0.01以下、珪素:0.5以下、リン:0.060以下、イオウ:0.030以下、マンガン:1.5−2.40、クロム:0.03−1.50、モリブデン:0.03−1.50で、かつ、マンガン、クロム及びモリブデンの量は、(Mn+6Cr+10Mo)≧3.5%以上である。鋼板は、亜鉛めっき又はガルバニーリングの連続ラインで処理されるストリップの形態が好ましく、得られた製品は、フェライトとマルテンサイトを主体とする組織である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
二相を有する亜鉛めっき鋼ストリップは、等温均熱と保持の2段階の熱的工程を利用して作製される。鋼ストリップは、コーティング用槽に入れられるとき、金属の溶融温度に近い温度である。
【背景技術】
【0002】
亜鉛めっき法により、鋼ストリップが熱処理され、金属コーティングされることは、本発明よりも前から広く知られており、また、開発も進んでいる。一般的に、冷延鋼板は、内部臨界領域(intercritical regime)(Ac1点とAc3点の間)に加熱され、一部はオーステナイトを形成し、次に、オーステナイトの一部がマルテンサイトに変態するように冷却されて、フェライトとマルテンサイトのミクロ組織が形成される。マルテンサイトの生成を促進するために、鋼の中に、Mn、Si、Cr、Moのような合金元素が含められる。これを行なうための具体的方法が種々提案されており、その1つに、オオミヤらに付与された米国特許6,312,536号に記載されたものがある。オオミヤらの特許では、冷延鋼板は溶融亜鉛めっき用の基材として用いられ、鋼板は、処理条件下にて、主にフェライトとマルテンサイトで構成されるミクロ組織の形成に有益であると考えられる特定の組成を有している。
【0003】
オオミヤらの特許によると、二相を有する亜鉛めっき鋼板は、冷延鋼板を780℃(1436°F)以上の温度で、一般的には、10−40秒間保持する均熱処理の後、5℃/秒以上、より一般的には20−40℃/秒以上の冷却速度で冷却し、その後、460℃(860°F)の温度の亜鉛めっき浴でめっきが施される。オオミヤらの特許によると、鋼は重量%にて以下の組成を有する。
【0004】
炭素:0.02−0.20 アルミニウム:0.010−0.150
チタン:0.01以下 珪素:0.04以下
燐:0.060以下 イオウ:0.030以下
マンガン:1.5−2.40 クロム:0.03−1.50
モリブデン:0.03−1.50
但し、マンガン、クロム、モリブデンの含有量は次の関係を有している。
3Mn+6Cr+Mo≦8.1%、及び
Mn+6Cr+10Mo≧3.5%
【0005】
オオミヤらの特許では、最初の熱処理(均熱処理)工程は780℃(1436°F)以上の温度で実施されることは明白である。オオミヤらの特許の第5欄64−67行、第6欄2−4行を参照すると、“所望の組織を得て加工性を安定させる為には、Ac1点よりも約50℃高温の780℃以上に鋼板を加熱することが必要である。……所望のフェライト+オーステナイトミクロ組織を得るには、加熱は10秒以上行なうべきである。”と記載されている。この特許は、さらに、めっき浴温度(通常440−470℃、即ち824−878°F)まで、1℃/秒以上の平均速度で冷却し、めっき処理が施される。めっき後、5℃/秒以上の速度で冷却し、フェライトとマルテンサイトを主体とする所望のミクロ組織が得られる。所望により、最終冷却前の金属コーティング後に、めっきされた鋼板を、合金化処理(ガルバニーリング(galvannealing)と称されることもある)において、加熱し、冷却することもできる。
【0006】
オオミヤらの特許は、高温の均熱処理工程を行なうことなく二相組織製品を得られることを認識していないし、低温の均熱処理工程の後に特定の保持工程を実施することによって所望のミクロ組織を形成できることを認識していない。
【0007】
<発明の要旨>
これに対し、本発明者は、オオミヤらの特許における上記技術とは異なり、最初の熱処理温度を780℃(1436°F)又はそれより高い温度に維持する必要がなく、また、最初の熱処理(均熱処理)において、Ac1点+45°F(但し、1340°F(727℃)以上)乃至Ac1点+135°F(但し、1425°F(775℃)以下)の範囲内に維持することにより、所望の二相ミクロ組織が得られることを見い出したものである。
本発明の残りの処理を行なうことにより、780℃以上の温度に維持する必要はない。これは、オオミヤらの特許とは異なる。なお、この明細書では、便宜上、最初の熱処理を“均熱(soak)”と称することにする。しかし、本発明の処理工程は、オオミヤらの特許と比べて、均熱処理の温度が低温であることにのみ特徴があるのではなく、均熱処理温度が(Ac1点+45°F)乃至1425°F、通常は1340−1420°Fの範囲で行われ、その後の保持工程(holding step)と称される、850−920°F(454−493℃)の範囲での略等温熱処理と関連づけられなければならない。保持工程では、鋼板は、850−920°F(454−493℃)の温度(なお、この明細書の中で885°F±35°Fとして記載されることもある)で、20−100秒間保持した後、室温(周囲温度)に冷却される。室温への冷却は、5℃/秒以上の冷却速度で行われる。前述したように、オオミヤらの特許には、保持工程及び保持温度について何の記載もなく、それら熱処理における時間については何の記載もないことは留意されるべきである。更にまた、オオミヤらの特許で規定された鋼は、オオミヤらが提案したより高温の均熱処理温度範囲(例えば、1475°F)で均熱処理され、更に本明細書に記載した保持工程(850−920°F)を含む熱サイクルで処理されたとしても、その結果として得られる鋼は、フェライト−マルテンサイトを主体とする所望のミクロ組織ではなく、相当量のベイナイト及び/又はパーライトを含むものであった。
【0008】
本明細書では、均熱工程の低温限界値として“Ac1点+45°F(但し、1340°F(727℃)以上”を示しているが、これは、組成Aをもつ略全ての鋼のAc1点は、1295°F以上だからである。
【0009】
本発明の鋼板は、オオミヤらの特許と同様な組成を有する。
炭素:0.02−0.20 アルミニウム:0.010−0.150
チタン:0.01以下 珪素:0.04以下
燐:0.060以下 イオウ:0.030以下
マンガン:1.5−2.40 クロム:0.03−1.50
モリブデン:0.03−1.50
但し、マンガン、クロム、モリブデンの含有量は次の関係を有している。
Mn+6Cr+10Mo:3.5%以上
【0010】
本発明にあっては、珪素の含有量を、0.5%まで含めることもできるし、炭素の含有量は、好適には0.03−0.12%であり、オオミヤらの特許もまたこの炭素範囲を用いている。この組成物は、以降、組成Aと称する。
【0011】
本発明は、二相鋼板の製造方法に関するものであり、鋼板を、Ac1点+45°F(但し、1340°F(727℃)以上)から、Ac1点+135°F(但し、1425°F(775℃)以下)の範囲の温度で20−90秒間均熱処理し、1℃/秒以上の速度で454−493℃の温度まで冷却し、850−920°F(454−493℃)の温度で20−100秒間保持する工程を有している。なお、亜鉛めっき浴の温度も454−493℃(850−920°F)の範囲にあるので、保持工程は、溶融めっきの前、又は溶融めっきと同時に開始することができる。鋼板が亜鉛めっきされていると否とに拘わらず、鋼板は、保持工程の後、直ちに、5℃/秒以上の速度で室温まで冷却される。或いはまた、鋼板がコーティングされた後、鋼板を公知の方法で亜鉛めっきすることもできる。例えば、鋼板を、通常は約960°F以下の温度で約5−20秒間加熱し、次に5℃/秒以上の速度で冷却する。図6は、本願のガルバニールの熱サイクル及び亜鉛めっきの熱サイクルを、比較の為に示している。
【0012】
実際の溶融めっきはほぼ従来の要領で実施される。即ち、鋼板は溶融亜鉛めっき金属と約5秒間接触させられる。なお、より短い時間で十分な場合でも、より長い時間接触させることもできるが、結果の向上を期待することはできない。鋼ストリップの厚さは、一般的に、約0.7mm〜約2.5mmであり、コーティングは、一般的には約10μmである。保持工程及びコーティング工程の後、コーティングされた鋼板は、室温まで冷却されるか、又は公知の如くガルバニールされる(galvannealed)。上記の処理工程の後、フェライトとマルテンサイトを主体とするミクロ組織を有する製品が得られる。
【0013】
商業的には、一般的に1000〜6000フィート長の鋼ストリップのコイルを用いることにより、略連続的に溶融亜鉛めっきが行われる。本発明において、工程の制御をより容易に行なうことができるのは、均熱工程が低温で行われることによるだけでなく、鋼ストリップは溶融亜鉛浴に出入りするするときも同じ温度に維持され、溶融亜鉛の温度上昇及び製造を制限する熱伝達(鋼ストリップと亜鉛槽との間で起こる)は殆ど生じないことによる。
【0014】
本発明は、特に、ストリップ供給設備及び亜鉛めっき槽を有する、鋼ストリップの連続亜鉛めっきラインに適用されるものであって、組成Aを有する鋼ストリップの冷延コイルを亜鉛めっきラインの加熱ゾーンへ供給し、鋼ストリップを前記加熱ゾーンの中を連続的に通過させて、鋼ストリップをAc1点+45°F(但し、1340°F(727℃)以上)からAc1点+135°F(但し、1425°F(775℃)以下)の温度範囲に加熱し、鋼ストリップを均熱ゾーンの中を通過させて、Ac1点+45°F(但し、1340°F(727℃)以上)からAc1点+135°F(但し、1425°F(775℃)以下)の温度範囲に鋼ストリップを20−90秒間維持し、鋼ストリップを冷却ゾーンの中を通過させて1℃/秒以上の冷却速度で鋼ストリップを冷却し、鋼ストリップの温度が885°F±35°Fでかつ亜鉛めっき槽温度の±30°F(好適には槽温度の±20°F、より好適には槽温度の±10°F)まで下がったときに、鋼ストリップの冷却を中止し、鋼ストリップを亜鉛めっき槽温度の±30°F(好適には槽温度の±20°F、より好適には槽温度の±10°F)の範囲内で20−100秒間保持し、鋼ストリップを亜鉛めっき槽の中を通過させ、必要に応じてコーティングされたストリップをガルバニーリングした後、鋼ストリップを室温に冷却するものである。亜鉛めっき槽は、一般的には870°F(850−920°F)であり、保持ゾーンの領域の入口、又は保持ゾーンの出口近傍、又は保持ゾーンの任意位置、又は保持ゾーンの直ぐ後の位置に配置されることができる。亜鉛めっき槽の中での滞留時間は、通常は3−6秒間であるが、多少の変動は許容され、特に上限側は10秒まで許容される。上記の如く、鋼ストリップは、亜鉛槽に均熱され、亜鉛槽から取り出され、公知の方法で加熱された後、室温に冷却され、所望により、ガルバニールコーティング(galvannel coating)が形成される。
【0015】
<発明の詳細な説明>
<実施例1>
図1に示す一般的な熱サイクルに基づいて処理し、均熱温度を変えて、鋼板の試料を作製した。一方の試料群は、図示の曲線に従って処理され、880°Fで35秒間保持し、他方の試料群は、880°Fで70秒間保持した。試料は、上記の組成Aからなる冷延鋼板であり、具体的には、重量%にて、C:0.67%、Mn:1.81%、Cr:0.18%及びMo:0.19重量%である。他の元素含有物は、典型的には、低炭素のAlキルド鋼と同様である。均熱温度は、1330〜1510°Fの範囲内で20°Fずつ変化させた。冷却後、試料の機械的性質及びミクロ組織を調べた。得られた試料の最大抗張力(UTS)を、均熱温度及び保持時間の関数として、図2に示している。この特定の材料の場合、目標とする最低UTSは600MPaであり、このUTSは、両方の保持時間の場合とも、約1350°F〜1450°Fの均熱温度の範囲内で得られた。
【0016】
実施例1の目標は、フェライト−マルテンサイトを主体とするミクロ組織を得ることである。降伏比、即ち降伏強さの最大抗張力に対する比は、ミクロ組織が二相フェライト−マルテンサイトであるか否かに拘わらず示している。実施例1の処理条件では、フェライト−マルテンサイトのミクロ組織となるのは、降伏比が0.5以下のときである。降伏比が約0.5より大きい場合、ミクロ組織の中に、例えばベイナイト、パーライト及び/又はFe3Cのような他の有害な構成物が相当量の割合で存在すると考えられる。図3は、保持ゾーンでの保持時間が35秒と70秒の両方の試料について、降伏比を均熱温度の関数として示している。保持時間が35秒と70秒の両曲線とも、約1350〜1430°Fの温度範囲に亘って、約0.45という非常に低い降伏比が得られ、この均熱温度範囲で最適な二相特性を示していることに留意されるべきである。この1350〜1430°Fの温度範囲で均熱した鋼試料について金属組織分析を行なったところ、フェライト−マルテンサイトミクロ組織が確認された。金属組織をポイントカウンティング法(point counting techniques)によって定量分析したところ、マルテンサイト量は、均熱温度が1390°Fで、880°Fでの保持時間が70秒のものは14.5%、880°Fでの保持時間が30秒のものは13.5%であり、ミクロ組織中に他の構成物は観察されなかった。(なお、像は、Leperaエッチング法を用いて作成し、ここでは、フェライトがライトグレー、マルテンサイトが白、パーライト及びベイナイトは黒くエッチングされる)。均熱温度が約1350°Fより低い場合、炭化物の溶解が不十分となり、冷却中のマルテンサイト生成が制限される結果、ミクロ組織中に炭化鉄(Fe3C)が残存しているものと考えられる。
【0017】
しかしながら、予想外だったのは、均熱温度が約1430°Fを越えると、ミクロ組織中にベイナイトが出現したことである。例えば、均熱温度が1510°Fで、880°Fでの保持時間が70秒の鋼試料の金属組織を分析すると、ベイナイト含有量が8.5%であることがわかった。これらの結果は、オオミヤらの特許と著しく異なる。オオミヤらの特許によれば、この均熱温度範囲、即ち必然的に1436°F以上では、フェライト−マルテンサイトミクロ組織が得られることになっている。これに対し、本発明では、アニーリングの均熱温度が、オオミヤらの特許が奨める範囲にあり、保持ゾーンの温度が880°F近傍のとき、ミクロ組織中に相当量のベイナイトが存在することを示している。この実施例における鋼試料の場合、フェライト−マルテンサイトのミクロ組織を得るためのアニーリングの温度範囲は、約1350〜1430°Fである。表1は、均熱温度が異なるこの実施例について、熱処理条件と、降伏比と、ミクロ組織の構成との関係をまとめたものである。
【0018】
【表1】

【0019】
<実施例2>
組成Aを有する異なる冷延鋼板を、実施例1及び図1に示した熱サイクルと同じ条件で処理した。この鋼もまた、組成Aの範囲内にあり、重量%にて、0.12%C、1.96%Mn、0.24%Cr及び0.18%Moを含有し、残部は、代表的な低炭素Alキルド鋼と同様である。先の実施例と同じように、材料の機械的特性を測定した。880°Fでの保持時間が70秒の鋼について、降伏比に対する均熱温度の影響を図4に示している。この曲線は、図3の曲線と同様な形状を示し、金属組織の分析結果は、先の実施例の場合と同様、異なる均熱温度で起こる金属現象が同じであることを示した。また、先の実施例で示したように、フェライト−マルテンサイトを主体とするミクロ組織を得るのに必要なアニーリングの均熱温度の範囲は、保持温度が約880°Fのとき、約1350〜1425°Fである。
【0020】
<実施例3>
先の2つの実施例と同様、組成Aを有する第3の冷延鋼板を、図1に示す熱サイクル条件に基づいて処理した。この鋼は、重量%で、C:0.076、Mn:1.89、Cr:0.10、Mo:0.094及びSi:0.34を含有し、残部は、代表的な低炭素鋼と同様である。他の実施例の場合と同じ様に、アニーリングの後、機械的性質とミクロ組織を調べた。図5は、この材料の降伏比を、保持時間が70秒の場合の均熱温度の関数として示している。この実施例でも、先の実施例と同様な形状の曲線が観察され、同じアニーリング温度範囲で、フェライト−マルテンサイト二相のミクロ組織が得られた。しかしながら、この実施例の曲線は、先の実施例と比べて、約30°F右側へ移動していることに留意されるべきである。これは、この鋼はSiの含有量が多いため、先の2つの実施例の鋼と比べて、Ac1温度が高いという事実による。表2は、各鋼がフェライト−マルテンサイトを生成するのに必要な均熱温度範囲を、Andrewsによる夫々のAcl温度と共に示している。アニーリングの望ましい範囲は、図示の如く、Acl温度の関数として示される。この情報に基づくと、一般的には、二相生成に必要な均熱温度範囲は、特定の鋼組成に依存している、即ち、熱サイクルにおける保持工程の温度が880°Fの近傍(885°F±35°F)にあるとき、ACl+45°F(但し、1340°F(727℃)以上)から、ACl+135°F(但し、1425°F(775℃)以下)の範囲内である。
【0021】
【表2】

【0022】
<実施例4>
表3は、炭素含有量が、先の実施例よりも少ない2種類の鋼について機械的特性を示している。これらは、図1に示されるように処理され、個々の均熱温度は、1365、1400及び1475°Fであり、880°Fでの保持時間は70秒である。また、実施例3に記載したAclから計算した各々の鋼について、二相組織を生成するのに必要な予想均熱温度を示している。夫々の鋼の所望の均熱温度範囲内である1365°Fと1400°Fの両温度とも、フェライト−マルテンサイトのミクロ組織の低降伏比特性が観察されたことは留意されるべきである。また、均熱温度が本発明の範囲外である1475°Fの鋼の場合、ミクロ組織中にベイナイトが存在するため、降伏比が極めて高い。
【0023】
【表3】

【0024】
<実施例5>
先の実施例は、実験室での結果に基づくものであるが、実機試験(mill trials)でも、上記の熱処理条件は、溶融亜鉛めっき製品及びガルバニーリングされた二相鋼製品の製造のための条件であることを示した。表4は、ガルバニーリングされた鋼の実機試験の結果を示している。表に示された鋼は、実質的に同じ組成であり、Acl温度も略同様であることに留意されるべきである。Acl温度から、二相形成の均熱温度は、約1350〜1440°Fであると算出される。さらに、処理に関しては、保持工程の温度と時間は、どの鋼も略一定であるので、材料間の主たる処理変数はアニーリング(均熱)温度である。また、表には、機械的特性が、対応する降伏比と共に示されている。鋼1乃至鋼4は、本発明の均熱温度範囲内で処理され、降伏比は0.5よりも小さかった。金属組織を調べたところ、鋼1乃至鋼4のミクロ組織にはフェライト−マルテンサイトが存在し、マルテンサイトの含有量は約15%であった。鋼5は、好ましい均熱温度の範囲から外れる温度で処理したもので、降伏比は約0.61という比較的高い値を示した。金属組織を分析したところ、この材料中のベイナイト含有量は11%であった。同様な結果は、亜鉛めっきとガルバニール処理にも観察された。
【0025】
【表4】

【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一般的な熱サイクルを示す図である。
【図2】実施例1に関するもので、最大抗張力を均熱温度及び保持時間の関数として示す図である。
【図3】降伏比を均熱温度の関数として示す図である。
【図4】実施例2に記載の条件下で、降伏比に対する均熱温度の影響を示す図である。
【図5】実施例3に記載の条件下で、降伏比の他のグラフを示している。
【図6】本発明の熱サイクルのパラダイムを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
初期組織が二相である鋼板を製造する方法であって、鋼板の組成は、重量%にて、炭素:0.02〜0.20、アルミニウム:0.010〜0.150、チタン:0.01以下、珪素:0.5以下、リン:0.060以下、イオウ:0.030以下、マンガン:1.5〜2.40、クロム:0.03〜1.50、モリブデン:0.03〜1.50で、かつ、マンガン、クロム及びモリブデンの量は、(Mn+6Cr+10Mo)≧3.5%であり、Ac1+45°F(但し、1340°F(727℃)以上)から、Ac1+135°F(但し1425°F(775℃)以下)の範囲内の温度にて、鋼板を20〜90秒間均熱する工程、鋼板を1℃/秒以上の冷却速度で850〜920°Fの範囲まで冷却する工程、鋼板を850〜920°Fの温度範囲で20〜100秒間保持する工程、を含んでいる方法。
【請求項2】
鋼板は鋼ストリップであり、前記方法は1000フィート以上の鋼ストリップに対して連続的に行われる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
保持工程の前、又は保持工程の間、又は保持工程の直後に、850〜920°Fの温度の溶融亜鉛めっき金属槽の中で、鋼板をコーティングすることを含んでいる請求項1に記載の方法。
【請求項4】
コーティング中の鋼板の温度は、鋼ストリップと溶融金属との熱伝達を最小にするために、溶融金属温度の±20°Fの範囲内に維持される請求項3に記載の方法。
【請求項5】
鋼板は、5℃/秒以上の冷却速度で室温まで冷却された後、フェライトとマルテンサイトの二相を主体とするミクロ組織が出現する請求項1に記載の方法。
【請求項6】
鋼板をガルバニーリングし、それによってコーティングされた鋼板を5℃/秒以上の冷却速度で冷却することを含んでおり、冷却後、フェライトとマルテンサイトの二相を主体とするミクロ組織が出現する請求項1に記載の方法。
【請求項7】
鋼の炭層量は0.03〜0.12%である請求項1に記載の方法。
【請求項8】
亜鉛めっき槽を含む亜鉛めっきラインにて、鋼ストリップを略連続的に亜鉛めっきする方法であって、鋼ストリップの組成は、重量%にて、炭素:0.02〜0.20、アルミニウム:0.010〜0.150、チタン:0.01以下、珪素:0.5以下、リン:0.060以下、イオウ:0.030以下、マンガン:1.5〜2.40、クロム:0.03〜1.50、モリブデン:0.03〜1.50で、かつ、マンガン、クロム及びモリブデンの量は、(Mn+6Cr+10Mo)≧3.5%であり、前記組成を有する鋼ストリップのコイルを亜鉛めっきラインの加熱ゾーンへ供給する工程、鋼ストリップを前記加熱ゾーンの中を連続的に通過させて、鋼ストリップを1340〜1425°Fの温度に加熱する工程、鋼ストリップを均熱ゾーンの中を通過させて、鋼ストリップを1340〜1420°Fの温度で20〜90秒間維持する工程、鋼ストリップを冷却ゾーンの中を通過させて1℃/秒よりも速い冷却速度で鋼ストリップを冷却する工程、鋼ストリップの温度が亜鉛めっき槽温度の±30°Fまで下がったときに、鋼ストリップの冷却を中止する工程、鋼ストリップを、850〜920°Fで、かつ、亜鉛めっき槽温度±30°Fの温度で20〜100秒間保持する工程、鋼ストリップを亜鉛めっき槽の中を通過させる工程、鋼ストリップを室温に冷却する工程を有している方法。
【請求項9】
鋼ストリップが亜鉛めっき槽に滞留する時間は、3〜6秒である請求項8に記載の方法。
【請求項10】
冷却ゾーンでの冷却は、5〜40°F/秒の速度で行われる請求項8に記載の方法。
【請求項11】
鋼ストリップは、亜鉛めっき槽の温度±10°Fの温度で亜鉛めっき槽に入れられる請求項8に記載の方法。
【請求項12】
鋼ストリップは、冷却の中止後直ちに、亜鉛めっき槽に送られる請求項8に記載の方法。
【請求項13】
鋼ストリップは、20〜100秒間の保持工程の終了間近に、亜鉛めっき槽に送られる請求項8に記載の方法。
【請求項14】
亜鉛めっきされた鋼ストリップのミクロ組織は、フェライト−マルテンサイトを主体とし、他の形態の構成物は5%よりも少ない請求項8に記載の方法。
【請求項15】
鋼ストリップの炭層量は0.03〜0.12重量%である請求項8に記載の方法。
【請求項16】
鋼ストリップは、室温まで冷却される前に、ガルバニーリングされる請求項8に記載の方法。
【請求項17】
マルテンサイトとフェライトを主体とするミクロ組織を有する、亜鉛めっきされた鋼ストリップを製造する方法であって、鋼の組成は、重量%にて、炭素:0.02〜0.20、アルミニウム:0.010〜0.150、チタン:0.01以下、珪素:0.5以下、リン:0.060以下、イオウ:0.030以下、マンガン:1.5〜2.40、クロム:0.03〜1.50、モリブデン:0.03〜1.50であり、鋼ストリップを、Ac1+45°F(但し、1340°F(727℃)以上)から、Ac1+135°F(但し1425°F(775℃)以下)の範囲内の温度で20秒以上均熱する工程、鋼ストリップを1℃/秒以上の冷却速度で冷却する工程、鋼ストリップを亜鉛めっき槽の中で2〜9秒間滞留するように亜鉛めっき槽を通過させ、鋼ストリップを885°F±35°Fの温度で20〜100秒間保持して鋼ストリップにコーティングを形成する工程、コーティングされた鋼ストリップを室温まで冷却する工程、を有している方法。
【請求項18】
鋼ストリップを室温まで冷却する工程の前に、鋼ストリップをガルバニーリングすることを含んでいる請求項17に記載の方法。
【請求項19】
鋼ストリップが亜鉛めっき槽に滞留する間、鋼ストリップは、亜鉛めっき槽温度の20°F以内である請求項17に記載の方法。
【請求項20】
鋼ストリップが亜鉛めっき槽に滞留する間、鋼ストリップは、亜鉛めっき槽温度の10°F以内である請求項17に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2006−508255(P2006−508255A)
【公表日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−510354(P2005−510354)
【出願日】平成15年11月4日(2003.11.4)
【国際出願番号】PCT/US2003/035095
【国際公開番号】WO2004/048634
【国際公開日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【出願人】(503413857)ユーイーシー テクノロジーズ エルエルシー (1)
【Fターム(参考)】