説明

二置換アミノジフルオロスルフィニウム塩、その調製プロセスおよびデオキソフッ素化試薬としての使用方法

本発明は式(I)


によって表される二置換アミノジフルオロスルフィニウム塩に関する。同物質を調製する方法、およびデオキソフッ素化試薬として使用する方法もまた提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
フッ素化化合物は、製薬および農薬に非常に重要である。なぜなら、フッ素化されていない類似体と比較したとき、フッ素化分子が有利な化学的および/または生物学的なプロファイル、例えば、改善された安定性、親油性、生物学的利用能を示す場合があるからである。
【0002】
したがって、分子にフッ素原子を導入する、安全で、選択的かつ効率的な方法に対する必要性は増加している。一般的には、一般にデオキソフッ素化反応と呼ばれる、アルコールからフルオリドを、またカルボニル官能基からgem−ジフルオリドを生成する変換が行われる。
【0003】
SFがデオキソフッ素化反応を行うことは公知であるが、実際上、この非常に有毒なガスの取り扱いは広範囲な安全対策を必要とする。SFを使用する反応は、しばしば、圧力下で試みられ、高温(通常100℃)を必要とし、望まない副生物をもたらす。これらの安全問題を回避する試みにおいて、様々な代替フッ素化剤が開発された。液体ジエチルアミノ硫黄トリフルオリド(DAST)が開発された(Middleton,W.J.J.Org.Chem.1975,40,574)ものの、その後、この液体は熱的に不安定で、非常に爆発性があることが確認された(Messina,P.A.;Mange,K.C.;Middleton,W.J.J.FluorineChem.1989,42,137)。また、蒸留による精製を必要とするので、液体DASTの製造は問題になる。この精製ステップは有害で、広範囲な安全対策および特殊な設備を要求する。これが、この比較的高価な試薬における主要なコスト要因となっている。
【0004】
より安全な試薬を開発するために、ビス(2−メトキシエチル)アミノ硫黄トリフルオリド(Deoxo−Fluor(R))が開発された(Lal,G.S.;Pez,G.P.;Pesaresi,R.J.;Prozonic,F.M.;Cheng,H.J.Org.Chem.1999,71,7048)。DASTおよびDeoxo−Fluor(R)が同一の分解温度を有することが示差走査熱量測定法(DSC)によって報告された。しかし、DASTはいくぶんより大きい発熱を伴ってより速やかに分解する。
【0005】
Deoxo−Fluor(R)はDASTの十分な代替品であり、実際にDASTほど爆発性はないが、DASTを使用することが必要である場合がある。したがって、また、前述の安全問題に加えて、DAST、Deoxo−Fluor(R)および関連するジアルキルアミノ硫黄トリフルオリド試薬の使用に関連して他の深刻な問題がある。前記試薬は湿度の高い環境で扱うのは困難な発煙性液体であり、水と激しく反応する。そのために、このような試薬は大規模フッ素化プロセスに向いていない。この液体は、また経時的に変色し、保管時に分解することがわかったので、満足な使用のためには時に再蒸留を必要とする。さらに、これらの爆発性のために、厳しい輸送の制約および保管および取り扱いに関して厳しい法規定を必要とする。
【0006】
ジアルキルアミノ硫黄トリフルオリドの塩誘導体は30年以上にわたって公知である。Markovskiiらは、最初にジアルキルアミノジフルオロスルフィニウム塩の例を報告した(Markovskii,L.N.;Pashinnik,V.E.;Saenko,E.P.Zh.Org.Khim.1977,13,1116)。彼らは、対応するテトラフルオロボレート塩を生成する、ジエチルアミノ硫黄トリフルオリドまたはそのジメチルアミノ、ピペリジノもしくはモルホリノ類似体の1つとのBF・EtOの反
応について述べている。その後、Cowleyら(Cowley,A.H.;Pagel,D.J.;Walker,M.L.J.Am.Chem.Soc.1978,100,7065)ならびにMewsおよびHenle(Mews,R.;Henle,H.J.FluorineChem.1979,14,495)は、他のルイス酸を使用し、ジエチルアミノ硫黄トリフルオリドをBF、PFおよびAsFと接触させることにより、対応するジメチルアミノジフルオロスルフィニウム塩を形成することができると報告した。ジアルキルアミノスルフィニウム塩の構造は、Pauerらのさらなる研究でより理解され(Pauer,F.;Erhart,M.;Mews,R.;Stalke,D.Z.Naturforsch.,B:Chem.Sci.1990,45,271)、ここで彼らは、ジメチルアミノジフルオロスルフィニウムヘキサフルオロアルセネートの結晶構造を解明した。最近、別のジアルキルアミノスルフィニウム塩が発見され、Pashinnikら(Pashinnik,V.E.;Martynyuk,E.G.;Shermolovich,Y.G.Ukr.Khim.Zh.2002,68,83)は、モルホリノ硫黄トリフルオリドがSeFと反応しモルホリノジフルオロスルフィニウムペンタフルオロセレナートを形成すると報告した。いくつかのジアルキルアミノスルフィニウム塩が単離され特性評価されたが、化学反応性に関してほとんど不明である。しかし、デオキソフッ素化反応における塩の使用の一例は、10年以上前にPashinnikらによって報告され(Bezuglov,V.V.;Pashinnik,V.E.;Tovstenko,V.I.;Markovskii,L.N.;Freimanis,Y.A.;Serkov,I.V.Russ.J.Bioorg.Chem.1996,22,688)、そこで、モルホリノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラートとのプロスタグランジン中のアリル型アルコールのアセトニトリル中の反応が報告された。
【0007】
したがって、安価で、相対的に容易に製造することができる安全で効果的なフッ素化剤に対する必要性が依然としてあることは明らかである。
【0008】
本発明者らは以下の報告を発表した:Beaulieu,F.;Beauregard,L.−P.;Courchesne,G.;Couturier,M.;LaFlamme,F.;L’Heureux,A.Org.Lett.2009,11,5052;L’Heureux,A.;Beaulieu,F.;Bennett,C.;Bill,D.R.;Clayton,S.;LaFlamme,F.;Mirmehrabi,M.;Tadayon,S.;Tovell,D.;Couturier,MJ.Org.Chem.2010,75,3401。文中に、本発明に関する詳細の一部が示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の一態様において、下記式によって表される二置換アミノジフルオロスルフィニウム塩の単離した固体が提供される。
【化1】

[式中、RおよびRは、アルキル、アリール、アラルキル、ヘテロ環およびヘテロアリールからなる群から独立して選択され、その各々は、置換されていてもよく、またはRおよびRはともに、N、SおよびOから選択される1つ以上のヘテロ原子を含んでいてもよい、炭素数4〜6個のアルキレン鎖を形成し;また、Xは対イオンである。但し
、前記二置換アミノジフルオロスルフィニウム塩は、
ジメチルアミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラート、
ジエチルアミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラート(針状、融点74−76℃)、
ピペリジノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラート(針状、融点92−94℃)、
モルホリノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラート(角柱状、融点104−106℃)以外であり:また
およびRがいずれもジメチルである場合、Xは、SbF、PFおよびAsF以外であり、またRおよびRが、これらと結合している窒素とともにモルホリノ残基を形成する場合、XはSeF以外である。]
【0010】
一態様において、下記式によって表される二置換アミノジフルオロスルフィニウムトリフルオロメタンスルホナート塩の単離した固体が提供される。
【化2】

[式中、RおよびRは、アルキル、アリール、アラルキル、ヘテロ環およびヘテロアリールからなる群から独立して選択され、その各々は、置換されていてもよく;または、RおよびRはともに、N、SおよびOから選択される1つ以上のヘテロ原子を含んでいてもよい、置換されていてもよい炭素数4〜6のアルキレン鎖を形成する。]
【0011】
一態様において、下記式によって表される二置換アミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラート塩の単離した固体が提供される。
【化3】

[式中、RおよびRは、アルキル、アリール、アラルキル、ヘテロ環およびヘテロアリールからなる群から独立して選択され、その各々は置換されていてもよく、またはRおよびRはともに、N、SおよびOから選択される1つ以上のヘテロ原子を含んでいてもよい、置換されていてもよい炭素数4〜6のアルキレン鎖を形成する。ただし、
ジメチルアミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラート、
ジエチルアミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラート(針状;融点74−76℃)、
ピペリジノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラート(針状;融点92−94℃)および
モルホリノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラート(角柱状;融点104−106℃)を除く。]
【0012】
一態様において、ジエチルアミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラートのII、III、IV、VおよびVI型形態が提供される。
【0013】
一態様において、モルホリノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラートのII型形態が提供される。
【0014】
一態様において、本願明細書において定義されるジエチルアミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラートの少なくとも2種の形態を含むジエチルアミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラートの混合物が提供される。
【0015】
さらなる態様において、下記式によって表される二置換アミノジフルオロスルフィニウム塩の単離した固体を調製する方法であって、式RNSFの二置換アミノ硫黄トリフルオリドを強いブレーンステッド酸と接触させることを含む方法が提供される。
【化4】

[式中、RおよびRは、アルキル、アリール、アラルキル、ヘテロ環およびヘテロアリールからなる群から独立して選択され、その各々は置換されていてもよく;または、RおよびRはともに、N、SおよびOから選択される1つ以上のヘテロ原子を含んでいてもよい、置換されていてもよい炭素数4〜6のアルキレン鎖を形成し;また、Xは強いブレーンステッド酸の共役塩基である。]
【0016】
一態様において、下記式によって表される二置換アミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラート塩の単離した固体を調製する方法であって、式RNSFの未精製二置換アミノ硫黄トリフルオリドをBFまたはHBFの供給源と接触させることを含む方法が提供される。
【化5】

[式中、RおよびRは本願明細書において定義される通りである。]
【0017】
さらなる態様において、−OH基、=O基、−COOH基及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの官能基を含む化合物のデオキソフッ素化のための方法であって、下記式によって表される二置換アミノジフルオロスルフィニウム塩およびイオン性フルオリドの外因性フルオリド供給源と前記化合物を接触させることを含む方法が提供される。
【化6】

[式中、RおよびRは、アルキル、アリール、アラルキル、ヘテロ環およびヘテロアリールからなる群から独立して選択され、その各々は置換されていてもよく、またはR
およびRはともに、N、SおよびOから選択される1つ以上のヘテロ原子を含んでいてもよい、置換されていてもよい炭素数4〜6のアルキレン鎖を形成し;また、Xは対イオンである。]
【0018】
さらなる態様において、−OH基、=O基、−COOH基及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1個の官能基を含む化合物のデオキソフッ素化のための方法であって、下記式によって表される二置換アミノジフルオロスルフィニウム塩および塩基と前記化合物を接触させることを含む方法が提供される。
【化7】

[式中、RおよびRは、アルキル、アリール、アラルキル、ヘテロ環およびヘテロアリールからなる群から独立して選択され、その各々は置換されていてもよく、またはRおよびRはともに、N、SおよびOから選択される1つ以上のヘテロ原子を含んでいてもよい、置換されていてもよい炭素数4〜6のアルキレン鎖を形成し;また、Xは対イオンである。]
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1a】図1aは、先行技術文献に記載されている多形のXRDである。
【図1b】図1b〜1fは、本願開示の実施形態による異なる形態のXRDである。
【図1c】図1b〜1fは、本願開示の実施形態による異なる形態のXRDである。
【図1d】図1b〜1fは、本願開示の実施形態による異なる形態のXRDである。
【図1e】図1b〜1fは、本願開示の実施形態による異なる形態のXRDである。
【図1f】図1b〜1fは、本願開示の実施形態による異なる形態のXRDである。
【図2】本願開示の一実施形態による新規の多形のXRDである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
用語「アルキル」は、1〜18個の炭素原子、好ましくは1〜12個の炭素原子、より好ましくは1〜10個の炭素原子、最も好ましくは1〜6個の炭素原子を有する、直鎖、分枝または環状(多環を含む)の炭化水素部分を表し、環状部分は少なくとも3個の炭素原子、好ましくは最大18個の炭素原子を含み、これらの各々は、置換されていてもよい。例としては、これらに限定されないが、置換されていてもよい、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert−ペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、ネオヘキシル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルおよびシクロヘキシルを含む。本願明細書において使用される用語「アルキル」は、1つ以上の水素原子がハロゲンと置換されたアルキル(すなわちハロゲン化アルキル)を包含することを意味する。例としては、これらに限定されないが、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、フルオロメチル、トリクロロメチル、ジクロロメチル、クロロメチル、トリフルオロエチル、ジフルオロエチル、フルオロエチル、トリクロロエチル、ジクロロエチル、クロロエチル、クロロフルオロメチル、クロロジフルオロメチル、ジクロロフルオロエチルを包含し、これらは置換されていてもよい。
【0021】
用語「アルキレン」は二価の「アルキル」基を表す。
【0022】
用語「アルケニル」は、鎖中に1つ以上の二重結合を有し、置換されていてもよい2〜
12個の炭素のアルキル鎖を表す。
【0023】
用語「アルキニル」は、鎖中に1つ以上の三重結合を有し、置換されていてもよい、2〜12個の炭素のアルキル鎖を表す。
【0024】
用語「アルコキシ」は、酸素原子を介して隣接する原子に共有結合で結合されているアルキルを表す。例としては、これらに限定されないが、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、ブトキシ、tert−ブチルオキシ、シクロプロピルオキシ、シクロブチルオキシ、シクロペンチルオキシおよびシクロヘキシルオキシを包含する。
【0025】
用語「アルキルチオ」は、硫黄原子を介して隣接する原子に共有結合で結合されているアルキルを表す。例としては、これらに限定されないが、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、ブチルチオ、tert−ブチルチオ、シクロプロピルチオ、シクロブチルチオ、シクロペンチルチオおよびシクロヘキシルチオを包含する。
【0026】
用語「アルキルアミノ」は、窒素原子を介して隣接する原子に共有結合で結合され、モノアルキルアミノ、またはアルキル基が同一もしくは相異なるジアルキルアミノであってもよいアルキル基を表す。例としては、これらに限定されないが、メチルアミノ、エチルアミノ、プロピルアミノ、イソプロピルアミノ、ブチルアミノ、tert−ブチルアミノ、シクロプロピルアミノ、シクロブチルアミノ、シクロペンチルアミノおよびシクロヘキシルアミノを包含する。
【0027】
用語「アラルキル」は、C1−6アルキルによって隣接する原子に結合されているアリール基を表す。例としては、これらに限定されないが、ベンジル、ベンズヒドリル、トリチル、フェネチル、3−フェニルプロピル、2−フェニルプロピル、4−フェニルブチルおよびナフチルメチルを包含する。
【0028】
用語「アリール」は、6〜10個の炭素原子を有する、少なくとも1個のベンゼノイド型環(すなわち、単環または多環であってもよい)を含有する炭素環部分を表し、1つ以上の置換基で置換されていてもよい。例としては、これらに限定されないが、フェニル、トリル、ジメチルフェニル、アミノフェニル、アニリニル、ナフチル、アントリル、フェナントリルまたはビフェニルを包含する。
【0029】
用語「ヘテロ環」は、三〜十員環の、置換されていてもよい、飽和、不飽和の環状部位を表し、ここで前記環状部位は、酸素(O)、硫黄(S)または窒素(N)から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含む。実施形態は、三〜六員環または五〜六員環のヘテロ環を包含する。ヘテロ環は単環または多環式の環であってもよい。例としては、これらに限定されないが、アジリジン、オキシラン、チイラン、ピロリジン、テトラヒドロフラン、ジヒドロフラン、テトラヒドロチオフェン、ピペリジン、テトラヒドロピラン、チアン、アゼパン、オキセパンおよびチエパンを包含する。ヘテロ環は、インダンならびにジ−ヒドロキノリンおよびテトラ−ヒドロキノリン、ジ−テトラ−ヒドロイソキノリンおよびテトラ−ヒドロイソキノリンならびにベンゾアゼピンを包含するベンゾ縮合環などの、他の環との融合によって形式的に誘導される環系を包含する。
【0030】
用語「ヘテロアリール」は、置換されていてもよい、五〜十二員環の芳香族環部位を表し、ここで前記環状部位は、酸素(O)、硫黄(S)または窒素(N)から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含む。実施形態は、五〜六員単環または十〜十二員多環のヘテロアリールを包含する。例としては、これらに限定されないが、ピロール、フラン、チオフェン、ピリジン、アゼピン、インドール、イソインドール、キノリンおよびイソキノリンを含む。
【0031】
用語「対イオン」は、電気的な中性を維持するために二置換アミノジフルオロスルフィニウム部分に伴うイオンを包含することを意味する。対イオンは、BF、SbF、PF、AsF、SeFなどのフッ化物イオンアクセプタ―と式RNSFの二置換アミノ硫黄トリフルオリドとの反応から得ることができ、ここで、RおよびRは本願明細書において定義された通りである。本願明細書において使用される対イオンの例としては、これらに限定されないが、BF、SbF、PF、AsF、SeFを包含する。対イオンはまた強いブレーンステッド酸の共役塩基であってもよい。一実施形態において、ブレーンステッド酸は、HBFエーテラート、HBFジメチルエーテル錯体を包含するトリフルオロメタンスルホン酸(TfOH)またはテトラフルオロホウ酸である。
【0032】
式RNSFの二置換アミノ硫黄トリフルオリドに関する用語「未精製」は、粗反応混合物、例えば式RNSFの前記化合物を調製する場合に得られた、未蒸留試薬を意味する。
【0033】
用語「独立して」は、置換基が各項目に対して、同じまたは異なる定義であってもよいことを意味する。
【0034】
本願明細書において使用される用語「置換基」または表現「置換されていてもよい」に固有の置換基は、これらに限定されないが、第一級および第二級アミノ、アミジノ、アミド、アジド、シアノ、グアニド、ニトロ、ニトロソ、ウレア、硫酸、亜硫酸、スルホン酸、スルホンアミド、リン酸、ホスホン酸、アルキルチオまたはアルキルアミノ、アルケンチオまたはアルケンアミノ、アルキンチオまたはアルキンアミノ、保護されたヒドロキシ基、保護されたアミノ基、−COOH基のエステルまたはアミド誘導体、ケタールおよびヘミケタールなどの保護された=O基、ハロゲン、アルコキシ、アミノを意味する。
【0035】
用語「外因性の促進剤」は、デオキソフッ素化反応に寄与する化学添加物を意味する。例としては、外因性のフッ化物供給源または塩基(有機または無機)を包含する。
【0036】
一実施形態において、本願明細書において述べられるデオキソフッ素化試薬は、熱的安定性の増加、大気中の湿気に対する安定性の増加という特徴の少なくとも1つを提供し、輸送の制約はそれほど厳しくない。
【0037】
一実施形態において、本願明細書において述べられるデオキソフッ素化試薬を製造する方法は、コスト効率、蒸留に対する必要性の回避という特徴の少なくともの1つを提供し、デオキソフッ素化試薬は、単純な濾過によって単離することができる。
【0038】
一実施形態において、デオキソフッ素化を行うために本願明細書において述べられる試薬の使用は、無水条件下でフッ素化反応の間、遊離HFの生成がなく、脱離副生物の形成がより少なく、熱的な安全性の観点から使用がより安全という特徴の少なくとも1つを提供する。
【0039】
一実施形態において、新規の二置換アミノジフルオロスルフィニウム塩および/または多形の型が提供される。これらは、驚くべきことに、通常の貯蔵/処理条件下において保管および/または熱的に安定であることが見出された。
【0040】
一実施形態において、二置換アミノジフルオロスルフィニウム塩は固体として単離される。さらなる実施形態において、二置換アミノジフルオロスルフィニウム塩は結晶性固体として単離される。本願開示による二置換アミノジフルオロスルフィニウム塩は互変異性
体を含んでいてもよい。二置換アミノジフルオロスルフィニウム塩は、単離したまたは単離していない単一の互変異性体、またはあらゆる比率のこれらの混合物を含む。
【0041】
一実施形態において、下記式によって表される二置換アミノジフルオロスルフィニウムトリフルオロメタンスルホナート塩の単離した固体が提供される。さらなる実施形態において、RおよびRはともに、N、SおよびOから選択される1つ以上のヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数4〜6のアルキレン鎖を形成する。
【化8】

[式中、RおよびRは、アルキル、アリール、アラルキル、ヘテロ環およびヘテロアリールからなる群から独立して選択され、その各々は置換されていてもよい。]
【0042】
さらなる実施形態において、本願明細書において定義される二置換アミノジフルオロスルフィニウム塩の全生成時に、
およびRは、アルキル、アリール、アラルキル、ヘテロ環およびヘテロアリールからなる群から独立して選択され、その各々は置換されていてもよく、
およびRはともに、NおよびOから選択される1つ以上のヘテロ原子を含んでいてもよい、炭素数4〜6のアルキレン鎖を形成する。
【0043】
およびRは、同一または異なっていてもよく、また1〜3個の炭素原子のアルキル、6〜10個の炭素原子のアリール、ヘテロ原子が窒素(N)である六員ヘテロアリールであり;
およびRは、同一または異なっていてもよく、またメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、フェニル、ピリジニル、2−メトキシエチルであり、RおよびRはいずれもメチルであり、RおよびRはいずれもエチルであり、RおよびRはいずれも2−メトキシエチルであり、
はメチルであり、Rはフェニルであり;Rはメチルであり、Rはピリジニルであり、Rはメチルであり、Rはベンジルであり、
およびRは、これらが結合している窒素原子とともに、
【化9】

を形成する。
【0044】
本出願人は、下記に述べるように、DASTがテトラフルオロホウ酸などの強いブレーンステッド酸と発熱的に反応し、ジアルキルアミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラートおよびHFを与えることを観察した。この発見は、ジアルキルアミノジフルオロスルフィニウム塩の調製のための新規の方法を構成する。その限りにおいて、先に報告されたジアルキルアミノジフルオロスルフィニウム塩を、BF、PF、AsF、SeF、SbFのフッ素化によって調製し、塩の種類を対応する対アニオンに限定した。有利なことに、他の種類の対イオンはこの手法によって入手可能である。下記の別の
実施例においては、ジエチルアミノジフルオロスルフィニウムトリフルオロメタンスルホナート塩は、DASTをトリフル酸と接触させることにより容易に調製することができる。本出願人はまた、トリフラート塩を生成するためにトリフル酸の代わりにトリフル酸無水物を使用することができることを見出した。
【0045】
一実施形態において、下記式によって表される二置換アミノジフルオロスルフィニウム塩の単離した固体を調製する方法が提供され、式RNSFの二置換アミノ硫黄トリフルオリドを強いブレーンステッド酸と接触させることを含む。
【化10】

[式中、RおよびRは本願明細書において定義される通りであり、Xは強いブレーンステッド酸の共役塩基である。]
【0046】
一実施形態において、下記式によって表される二置換アミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラート塩の単離した固体を調製する方法が提供され、式RNSFの二置換アミノ硫黄トリフルオリドをテトラフルオロホウ酸の供給源と接触させることを含む。
【化11】

[式中、RおよびRは本願明細書において定義される通りである。]
【0047】
一実施形態において、下記式によって表される二置換アミノジフルオロスルフィニウムトリフルオロメタンスルホナート塩の単離した固体を調製する方法が提供され、式RNSFの二置換アミノ硫黄トリフルオリドをトリフルオロメタンスルホン酸と接触させることを含む。
【化12】

[式中、RおよびRは本願明細書において定義される通りである。]
【0048】
一実施形態において、BFまたはHBFの供給源と未精製DAST試薬等とを接触させることを含む、結晶性二置換アミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラートを調製する方法が提供される。一実施形態において、結晶性生成物は濾過によって単離することができる。結晶性生成物の単離により、DAST試薬のような、時間の浪費、コスト、危険な蒸留の必要性がなくなると考えられる。そのような誘導体は、取り扱いと製造の両方の見地から望ましい。
【0049】
一実施形態において、BFの供給源はBFガスまたはBFエーテラート、BFテトラヒドロフラン錯体およびBFアセトニトリル錯体からなる群から選択される錯体である。HBFの供給源は、HBFエーテラートおよびHBFジメチルエーテル錯体からなる群から選択される錯体であってもよい。
【0050】
一実施形態において、下記式によって表される二置換アミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラート塩の単離した固体を調製する方法であって、式RNSFの未精製二置換アミノ硫黄トリフルオリドをBFまたはHBFの供給源と接触させることを含む方法が提供される。さらなる実施形態において、二置換アミノ硫黄トリフルオリドは、二置換トリメチルシリルアミンおよびSFから、または対応する二置換アミン、三置換アミンおよびSFから調製される。
【化13】

[式中、RおよびRは本願明細書において定義される通りである。]
【0051】
一実施形態において、本願明細書において記載される二置換アミノジフルオロスルフィニウム塩は、ハロゲン化炭素溶媒、エーテル溶媒またはこれらの混合物の存在中で調製される。
【0052】
一実施形態において、本願明細書において記載される二置換アミノジフルオロスルフィニウム塩は、二置換アミノ硫黄トリフルオリドの粗反応混合物からワンポットプロセスで調製される。
【0053】
さらなる実施形態において、−OH基、=O基、−COOH基及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1個の官能基を含む化合物のデオキソフッ素化のための方法であって、下記式によって表される二置換アミノジフルオロスルフィニウム塩と前記−OH基、=O基、−COOH基からなる群から選択される少なくとも1個の官能基を含む化合物をイオン性フッ化物の外因性のフッ化物供給源とともに接触させることを含む方法が提供される。
【化14】

[式中、RおよびRは、アルキル、アリール、アラルキル、ヘテロ環およびヘテロアリールからなる群から独立して選択され、その各々は置換されていてもよい;また、Xは対イオンである。]
【0054】
さらなる実施形態において、−OH基、−COOH基及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1個の官能基を含む化合物のデオキソフッ素化のための方法であって、下記式によって表される二置換アミノジフルオロスルフィニウム塩と前記−OH基、−COOH基からなる群から選択される少なくとも1個の官能基を含む化合物を塩
基とともに接触させることを含む方法が提供される。
【化15】

[式中、RおよびRは、アルキル、アリール、アラルキル、ヘテロ環およびヘテロアリールからなる群から独立して選択され、その各々は置換されていてもよい;また、Xは対イオンである。]
【0055】
一実施形態において、反応は、ハロゲン化炭素、エーテル、エステル、ニトリル、芳香族およびこれらの混合物によって構成される群において選択される非プロトン性溶媒の存在中で行われる。さらなる実施形態において、反応は無水条件、および不活性雰囲気下に行われる。フッ化物の外因性の供給源には、好ましくは、三フッ化水素トリエチルアミン、ピリジニウムポリ(フッ化水素)およびテトラブチルアンモニウムビフルオリドなどの、アミンまたはアンモニウム塩とのフッ化水素の錯体である。塩基は、DBU(1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、DBN(1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン、DABCO(1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、Hunig塩基(エチルジイソプロピルアミン)、テトラメチルグアニジン、イミダゾールおよびアルカリ水素化物からなる群から選択することができる。
【0056】
外因性の促進剤の存在中で、二置換アミノジフルオロスルフィニウム塩は、−OH基、=O基、−COOH基及びその組み合わせからなる群から選択される少なくとも1個の官能基を含む化合物のデオキソフッ素化のための方法において有用であることがわかった。
【0057】
デオキソフッ素化という用語は、当業者に公知であり、−OH基、=O基および−COOH基及びその組み合わせからなる群から選択される少なくとも1個の官能基を含む化合物のための本発明において適用された場合、C−O結合のC−F結合による置換、またはC=O二重結合の2個のC−F結合による置換を意味する。
【0058】
本願明細書において使用されるデオキソフッ素化で使用される化合物は、特に限定されない。それらの化合物は下記一般式によって表すことができる。
【化16】

[式中、Ra、Rb、RcおよびRdはそれぞれ独立してあるHまたは基アルキル、アルケン、アルキン、アリール、アラルキル、ヘテロ環およびヘテロアリールであり、その各々は、置換されていてもよく、またはRaおよびRcはともに結合して、各々が置換されていてもよい環状アルキルまたはヘテロ環を形成し、または、RbおよびRdはともに結合して、各々が置換されていてもよい環状アルキルまたはヘテロ環を形成する。]
【0059】
下記一般式において、RaおよびRcがともに結合してヘテロ環を形成する場合、サッカライド誘導体のヘミアセタールなどのヘミアセタールおよびヘミケタール形態を包含することも意味する。
【化17】

【0060】
本願明細書において記載されるデオキソフッ素化条件で行う場合、上述の化合物は、通常、化合物に存在する活性な官能基に着目すると、下記式に示す化合物、もしくはこれらの組み合わせのフッ素化官能基を生じさせる。
【化18】

【0061】
デオキソフッ素化反応のための本開示の方法による一実施形態において、その反応は、イオン性フッ化物の外因性のフッ化物供給源の存在中に行われた。一実施形態において、イオン性フッ化物の供給源は触媒量からほぼ化学量論より多い量で使用される。一実施形態においては、1.1当量、1.2当量、1.5当量、2当量以上などの化学量論量が必要とされる。イオン性フッ化物の外因性のフッ化物供給源の例としては、3HF−EtNおよび9HF−ピリジン(Olah試薬)などのポリフッ化水素第三級アミンまたはポリフッ化水素N−ヘテロ芳香族アミンを包含する。
【0062】
一実施形態において、少なくとも1個の−OH基を含む化合物のデオキソフッ素化反応は、イオン性フッ化物の外因性のフッ化物供給源の存在中に行われる。
【0063】
一実施形態において、デオキソフッ素化反応を行う化合物は、アリル型アルコール以外、好ましくはアリル型アルコール含有プロスタグランジン誘導体以外である。
【0064】
一実施形態において、アルデヒドの少なくとも1個の=O基を含む化合物のデオキソフッ素化反応は、イオン性フッ化物の外因性のフッ化物供給源の存在中に行われる。
【0065】
一実施形態において、ケトンの少なくとも1個の=O基を含む化合物のデオキソフッ素化反応は、イオン性フッ化物の外因性のフッ化物供給源の存在中に行われる。
【0066】
一実施形態において、少なくとも1個の−COOH基を含む化合物のデオキソフッ素化反応は、イオン性フッ化物の外因性のフッ化物供給源の存在中に行われる。
【0067】
本願明細書に開示したデオキソフッ素化反応のための一実施形態によると、反応は、塩基の存在中に行われた。一実施形態において、塩基は触媒量からほぼ化学量論より多い量で使用される。一実施形態においては、1.1当量、1.2当量、1.5当量、2当量以上などの化学量論量が必要とされる。有機塩基の例は、1,3−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン(DBU)、1,3−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン(DBN)、ならびに1,1,3,3−テトラメチルグアニジン、ジイソプロピルエチルアミン(Hunig塩基)、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン(DABCO)、イミダゾールを含む。無機塩基の例は水素化ナトリウムを含む。
【0068】
一実施形態において、少なくとも1個の−OH基を含む化合物のデオキソフッ素化反応
は、有機塩基の存在中に行われる。
【0069】
一実施形態において、少なくとも1個の−COOH基を含む化合物のデオキソフッ素化反応は、有機塩基の存在中に行われる。
【0070】
以下の実施例は本発明を例証するためにのみ与えられ、その最も広範囲の意味において、本発明の範囲のいかなる限定をも構成すると見なされるべきでない。
【0071】
<実施例1>
<ジエチルアミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラート塩の調製:方法A>
無水ジエチルエーテル(100mL)中のジエチルアミノ硫黄トリフルオリド(8.2mL、62mmol)の氷冷溶液に、窒素下に5℃未満の反応温度を保ちながら、未希釈の三フッ化ホウ素エーテラート(6.6mL、62mmol)を15分間にわたって、滴下して添加する。生じた懸濁液は、同一の温度でさらに1時間撹拌し、次いで室温に暖め、窒素雰囲気下で濾過する。固体物質を、ジエチルエーテル(2x50mL)で2度すすぎ、次いで、真空下に乾燥して、ジエチルアミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラート(11.7g、82%)をオフホワイト色の吸湿性固体として得る。1.60gの粗生成物を温1,2−ジクロロエタン(DCE)50mL中に溶解し、速やかに5分にわたり室温に冷却し、次いで速やかに0℃に冷却して、オフホワイト色の針状結晶(I型形態)1.34g(84%)を得る。融点72−76℃;粗生成物5.0gを徐々に1時間にわたり室温に冷却しながら、沸騰1,2−ジクロロエタン50mL中で再結晶化し白色結晶フレーク(II型形態)4.6g(92%)を得る。融点83−84℃;HNMR(CDCN,300MHz)δ3.87(m,4H),1.35(t,J=7.2Hz,6H);19FNMR(CDCN,282MHz)δ12.9(m,2F),−151.1(s,4F);13CNMR(CDCN,75MHz)δ45.5,12.6.
【0072】
プロセスを単純化し、1,2−ジクロロエタン(DCE)中での再結晶化前に、粗ジエチルアミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラートをエーテルから濾過する必要性を回避しようと努力して、本発明者らは、直接DCE溶媒中での反応を実施し、次いで、混合物を加熱して確実に溶解し、続いて生成物を結晶化することに成功した。(方法B)。次に、プロセスをさらに改善し、揮発性ジエチルエーテルの使用を回避するために、本発明者らは、BFエーテラートをBFテトラヒドロフラン錯体(BF−THF)に置き換えた。この内容において、塩は反応混合物からゆっくり結晶化し、粗反応混合物の再結晶化は行わなかった。(方法C)。
【0073】
<実施例2>
<ジエチルアミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラート塩の調製:方法B>
無水1,2−ジクロロエタン(150mL)中のジエチルアミノ硫黄トリフルオリド(8.2mL、62mmol)の溶液に、窒素下に室温で、30℃未満に反応温度を保ちながら、未希釈の三フッ化ホウ素エーテラート(6.6mL、62mmol)を15分間にわたって、滴下して添加する。生じた懸濁液を加熱し還流し、次いで、徐々に室温に冷却する(供給後、固形分が60℃で現われる)。懸濁液をさらに2時間撹拌し、次いで、窒素雰囲気下に濾過する。固体物質は、1,2−ジクロロエタン(2x25mL)で2度すすぎ、次いで、真空下に乾燥して、ジエチルアミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラート(12.6g、89%)を無色のフレーク(III型形態)として得る;融点83−84℃。
【0074】
<実施例3>
<ジエチルアミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラート塩の調製:方法C>
無水1,2−ジクロロエタン(150mL)中のジエチルアミノ硫黄トリフルオリド(8.2mL、62mmol)の溶液に、窒素下に室温で、30℃未満に反応温度を保ちながら、未希釈の三フッ化ホウ素テトラヒドロフラン錯体(6.8mL、62mmol)を45分間にわたって、滴下して添加する。BF−THFおよそ4mLを添加した後、結晶化が生じる。懸濁液をさらに30分撹拌し、次いで、窒素雰囲気下に濾過する。固体物質は、ジエチルエーテル(2x50mL)で2度すすぎ、次いで、真空下に乾燥して、ジエチルアミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラート(12.1g、85%)を無色角柱(IV型形態)として得る;融点83−85℃。
【0075】
上述の調製の方法はすべて、市販のジエチルアミノ硫黄トリフルオリド(DAST)を使用した。後者の試薬は既知の爆発物であり、この不安定な液体の精製には危険な蒸留を必要とする。精製が困難なこの方法は広範囲の安全対策を必要とし、この比較的高価な試薬に対して主要なコスト要因である。DASTの代わりに、本発明者らは、比較的安価で安定した出発物質(方法D)としてN,N−ジエチルトリメチルシリルアミンを使用するワンポットプロセスにおいてジエチルアミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラートを調製することができることを見出した。DASTはこの調製の方法において中間体であるが、DASTの蒸留は必要とせず、本発明者らは、驚くべきことに、プロセスにおいて生じた副生物が、ジエチルアミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラート塩の形成を妨害しないことを見出した。したがって、この新規の調製法は、より安全でコスト効率的に後者の製造を可能にする。これは、代替試薬(第二級アミンおよび塩基などの)の使用および/または処理技法(連続流動プロセスなどの)を使用するといった、粗製で蒸留しない二置換のアミノ硫黄トリフルオリドを製造する他の潜在的な方法を包含するものである。
【0076】
<実施例4>
<ジエチルアミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラート塩の調製:方法D>
マグネティックスターラー、温度プローブ、泡発生器および窒素入口を備えた5Lのフランジ、首付きフラスコに、ジクロロメタン(150mL)を添加し、次いで、−78℃に冷却した。温度を−65℃未満に保ちながら四フッ化硫黄(70g、0.65mol)を液面下に導入した。生じた溶液に、温度を−60℃未満に保ちながらジクロロメタン(42mL)中のジエチルアミノトリメチルシラン(90g、0.62mol)の溶液を滴下して添加した。生じた溶液をゆっくり室温に暖め、一晩撹拌した。生じた溶液に、ジクロロメタン(558mL)、続いて三フッ化ホウ素テトラヒドロフラン錯体(68mL、0.61mol)を、温度を15〜25℃の間に保ちながら30分にわたり滴下して添加した。懸濁液をさらに60分撹拌し、次いで、窒素の雰囲気下に濾過した。固体物質をジエチルエーテル(3×150mL)ですすぎ、次いで、真空下に乾燥し、オフホワイト色の水晶板(V型形態)として、1(126g、89%)を得た:融点83−85℃。トライアル試験において、ジエチルアミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラート(2.00g)を加熱して溶融し、次いで、1,2−ジクロロエタンを添加し、生じた混合物をさらに加熱して還流し、2相の液状混合物を得た。後者を室温に冷却し、生じた固体物質は濾過によって単離し、真空下に乾燥し、1(1.98g、99%)をオフホワイト色の結晶立方体(VI型形態)として得た:融点83−85℃。
【0077】
<特性評価>
本出願人は、ジエチルアミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラート塩が、ジエチルエーテル中のDASTとBFエーテラートとの反応で溶液から直接結晶化することを観察した。塩は水分に非常に敏感であるが、濾過可能である。低水分の固体を得ようと努力して、前述の塩を最初に1,2−ジクロロエタン中で再結晶化し、それによって、急速冷却すると72−76℃で溶融する針状物が得られた。これはMarkovskiiが発表した結果(Zh.Org.Khim.1977,13,1116)と一致してい
る。よりゆっくりと冷却しながら還流1,2−ジクロロエタン中で第2の結晶化を試みたが、前述の針状物を供給した場合でさえ、同一の形態にならなかった。しかし、83−84℃のより高融点でより高密度でより高純度の生成物が得られる(実施例1;II型形態)。驚くべきことに、ジエチルアミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラート塩(実施例2−4)を生成するために使用された続く方法のすべてにおいて、観察された融点はすべて、83−85℃の範囲にあったが、結晶の全体的な物理的外観はすべて互いに異なっていた。図1a−1fに示される、様々な結晶(I−VI型形態)の粉末X線回折(XRD)データは粉末X線回折装置(Bruker−axs,model D8 advance)を使用して得られ、これは以下のパラメータにて得た。
(電圧40kV、電流40.0mA、スキャン範囲(2θ)5〜35度、スキャンステップサイズ0.01度、走査時間33分、VANTEC検出器および散乱防止スリット1mmを有し、表1に示す角度2θ、d−線およびほぼその値での相対強度のリストを提供した。
【表1】

【0078】
前述のXRDにより明確に異なる形態の生成を確認した。Markovskiiは融点74−76℃の針状物(I型形態と呼ばれる。図1aに示した)を得たことを報告したが、新規の形態はすべて83−85℃の範囲の、より高い融点を有している。物理的な外観の他に、本出願人は、いくつかの形態がより十分な取り扱い適性を示し他ほど吸湿性ではないことを観察した。大気中の水分に対するII、IV、VおよびVI型形態の相対的安定性を評価するために、これらの形態250mgを25平方センチメートルのガラス表面に均一に分散し、20℃で23%の相対湿度に暴露した。30分後、加水分解量を測定するために、試料をNMRによって分析した。VI型形態は、これらの条件下に1.14%のみ加水分解されたので、驚くべきことに大気中の水分に対して安定であり、一方II、
IVおよびV型は2.97%、10.03%および16.29%、加水分解された。さらに、VI型は容易に扱うことができ、保管して安定であり得る。
【0079】
<実施例5>
<VI型多形へのジエチルアミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラートの再結晶化>
1,2−ジクロロエタン(250mL)中のジエチルアミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラート(50.0g)の懸濁液を、塩が完全に溶融するまで、加熱し還流した。生じた相状の液体混合物を、65℃に冷却し、その温度でVI型の種(5.0g)を一度に添加した。次いで、反応混合物を室温に冷却し、2.5時間撹拌した。生じた固体物質を濾過によって単離し、真空下に乾燥して、オフホワイト色の結晶立方体(VI型形態)としてジエチルアミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラート(54.1g、98%)を得た:融点83−85℃。
【0080】
<実施例6>
<モルホリノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラート塩の調製(方法A)>
無水ジエチルエーテル(100mL)中のモルホリノ硫黄トリフルオリド(4.9mL、40mmol)の氷冷溶液に、窒素下に室温で、5℃未満に反応温度を保ちながら、無水ジエチルエーテル(25mL)中の三フッ化ホウ素エーテラート(4.2mL、40mmol)の溶液を60分間にわたって、滴下して添加する。生じた懸濁液は同一の温度でさらに1時間撹拌し、次いで室温に暖め、窒素の雰囲気下に濾過する。固体物質をジエチルエーテル(2x50mL)で2度すすぎ、次いで、真空下に乾燥して、白色固形物としてモルホリノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラート(7.3g、75%)を得る;融点122−125℃;HNMR(CDCN、300MHz)δ3.90−3.85(分、8時間);19FNMR(CDCN、282MHz)δ10.2(s、2F)および−151.3(s、4F);13CNMR(CDCN、75MHz)δ65.7および48.3(br).
【0081】
<実施例7>
<モルホリノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラート塩の調製(方法B)>
マグネティックスターラー、温度プローブ、泡発生器および窒素入口を備えた10Lのフランジ、首付きフラスコに、ジクロロメタン(750mL)を添加し、次いで、−78℃に冷却した。温度を−65℃未満に保ちながら四フッ化硫黄(321g、2.97mol)を液面下に導入した。生じた溶液に、温度を−60℃未満に保ちながら、ジクロロメタン(210mL)中のN−トリメチルシリルモルホリン(455g、2.86mol)の溶液を滴下して添加した。生じた溶液をゆっくり室温に暖め、一晩撹拌した。生じた溶液に、温度を25℃未満に保ちながらジクロロメタン(2.79L)、続いて三フッ化ホウ素テトラヒドロフラン錯体(315mL、2.85mol)を180分にわたって滴下して添加した。懸濁液をさらに60分撹拌し、次いで、窒素の雰囲気下に濾過した。固体物質はジエチルエーテル(3×750mL)ですすぎ、次いで、真空下に乾燥し、オフホワイト色の結晶として、1(635g、92%)を得た:融点124−127℃。
【0082】
<特性評価>
モルホリノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラート塩は、出発物質として市販のモルホリノ硫黄トリフルオリド(MOST)を使用して調製することができる(方法A)。しかし、後者の試薬は既知の爆発物であり、この不安定な液体の精製は危険な蒸留を必要とする。精製のこの面倒な方法は広範囲の安全対策を必要とし、この比較的高価な試薬の主要なコスト要因である。MOSTを使用する代わりに、本発明者らは、比較的安価で安定な出発物質としてNトリメチルシリルモルホリンを使用して、ワンポットプロセスでモルホリノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラートを調製することがで
きることを見出した(方法B)。MOSTはこの調製の方法において中間体であるが、MOSTの蒸留は必要とせず、本発明者らが驚くべきことに、プロセスにおいて生じた副生物は、ジエチルアミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラート塩の形成を妨害しないことを見出した。したがって、この新規の調製の方法は、より安全でコスト効率的に、ジエチルアミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラート塩の製造を可能にする。
【0083】
モルホリノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラートを調製するために使用される2つの方法は、予想外に、Markovskii(104−106℃)によって報告された融点より著しく高い融点(122〜127℃)を有する結晶性物質を与えた。このことは新規の多形相の明らかな徴候を構成し、この物質は取り扱いやすく保管安定性があることを見出した。粉末X線回折計(Bruker−axs,model D8 advance)を使用して新規の多形相の粉末X線回折(XRD)データが得られ、これは以下のパラメータにより得た。
(電圧40kV、電流40.0mA、スキャン範囲(2θ)5〜35度、スキャンステップサイズ0.01度、走査時間33分、VANTEC検出器および散乱防止スリット1mmにて、表2に示す角度2θ、d−線およびほぼその値での相対強度のリストを得た。
【表2】

【0084】
<実施例8>
<ビス(2−メトキシエチル)アミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラート塩の調製>
無水ジエチルエーテル(200mL)中のビス(2−メトキシエチル)アミノ硫黄トリフルオリド(16.7mL、90.4mmol)の氷冷溶液に、窒素下に5℃未満に反応温度を保ちながら、無水ジエチルエーテル(50mL)中の三フッ化ホウ素エーテラート(9.5mL、90.4mmol)の溶液を15分間にわたって、滴下して添加する。生じた懸濁液は、同一の温度でさらに1時間撹拌し、次いで室温に暖め、窒素雰囲気下で濾過する。固体物質をジエチルエーテル(2x100mL)で2度すすぎ、次いで、真空下に乾燥して、ビス(2−メトキシエチル)アミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラート(20.36g、78%)をオフホワイト色の吸湿性固体として得た;融点35−38℃;HNMR(CDCN)4.07(分、4時間)、3.60(分、4時間)、3.43(s、6時間);19FNMR(CDCN)10.22(s、2F)および−151.47(s、4F);13CNMR(CDCN)67.08、58.92、51.53.
【0085】
<実施例9>
<テトラフルオロボラート塩の調製(ジメチルアミノジフルオロスルフィニウム)>
無水ジエチルエーテル(50mL)中のジエチルアミノ硫黄トリフルオリド(5.0g、38mmol)の氷冷溶液に、窒素下に5℃未満の反応温度を保ちながら、未希釈の三フッ化ホウ素エーテラート(4.0mL、38mmol)を15分間にわたって、滴下して添加する。生じた懸濁液は、同一の温度でさらに1時間撹拌し、次いで室温に暖め、窒素雰囲気下で濾過する。固体物質をジエチルエーテル(2x25mL)で2度すすぎ、次いで、真空下に乾燥してジメチルアミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラート(5.17g、68%)を白色固形物として得た;融点159−162℃;HNMR(CDCN)3.41(t,J=7.5Hz,6H);19FNMR(CDCN)12.14(m,J=7.9Hz,2F),−151.54(m,4F);13CNMR(CDCN)38.78(br).
【0086】
<実施例10>
<ピロリジノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラート塩の調製>
<ステップ1>
ジエチルエーテル(500mL)中のピロリジン(167mL、2.00mol)の氷冷溶液に、ジエチルエーテル(100mL)中のクロロトリメチルシラン(127mL、1.00mol)の溶液を1時間にわたって、滴下して添加した。固形分は濾過によって除去し、ジエチルエーテル(100mL)で洗浄した。濾液は真空中で濃縮し次いで、大気圧で蒸留して、N−トリメチルシリルピロリジン(104g、73%)を無色の液体として得た:沸点139−140°C;HNMR(CDCl)0.09(s,9H),1.74(m,4H),2.91(m,4H);13CNMR(CDCl)3.50,28.26,48.33.
【0087】
<ステップ2>
マグネティックスターラー、温度プローブ、泡発生器および窒素入口を備えた5Lのフランジ、首付きフラスコに、ジクロロメタン(150mL)を添加し、次いで、−78℃に冷却した。温度を−65℃未満に保ちながら四フッ化硫黄(70g、0.65mol)を液面下に導入した。生じた溶液に、温度を−60℃未満に保ちながら、ジクロロメタン(42mL)中のN−トリメチルシリルピロリジン(90g、0.62mol)の溶液を滴下して添加した。生じた溶液を室温にゆっくり暖め、一晩撹拌した。25℃未満に温度を保ちながら、生じた溶液に、ジクロロメタン(558mL)、続いて三フッ化ホウ素テトラヒドロフラン錯体(69mL、0.63mol)を60分にわたり滴下して添加した。懸濁液をさらに60分撹拌し、次いで、窒素の雰囲気下に濾過した。固体物質はジエチ
ルエーテル(3×150mL)ですすぎ、次いで、真空下に乾燥して、ピロリジノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラート(121g、85%)をベージュ色の結晶として得た:融点105−113°C:HNMR(CDCN)4.10−3.98(m,4H),2.19−2.12(m,4H);19FNMR(CDCN)12.09(q,J=7.6Hz),−151.26(s);13CNMR(CDCN)53.12,25.86.
【0088】
<実施例11>
<N−メチル−N−フェニルアミノジフルオロスルフィニウムN−メチル−N−フェニルアミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラート塩の調製>
<ステップ1>
−78℃に冷却したジエチルエーテル(600mL)中のN−メチルアニリン(80g、0.75mol)の撹拌した溶液に、温度を−60℃未満に保ちながら、n−ブチルリチウム(ヘキサン中の2.4M、342mL、0.82mol)を添加した。生じたスラリーを1時間撹拌し、次いでクロロトリメチルシラン(114mL、0.90mol)を、−70℃未満に温度を保ちながら添加した。この反応物を一晩室温に暖め、次いで濾過して沈澱した白色固形物を除去した。濾液は真空下に濃縮し、次いで、高真空下で蒸留して、N−トリメチルシリル−N−メチルアニリン(126g、94%)を無色/淡黄色の液体として得た:沸点48℃/0.6mmHg;HNMR(CDCl)0.33(s,9H),2.95(s,3H),6.85(t,1H,7Hz),6.94(d,2H,8Hz),7.27(t,2H,9Hz).
【0089】
<ステップ2>
マグネティックスターラー、温度プローブ、泡発生器および窒素入口を備えた5Lのフランジ、首付きフラスコに、ジクロロメタン(150mL)を添加し、次いで、−78℃に冷却した。温度を−65℃未満に保ちながら四フッ化硫黄(57.1g、0.53mol)を液面下に導入した。生じた溶液に、−70℃未満に温度を保ちながら、ジクロロメタン中(42mL)のN−トリメチルシリル−N−メチルアニリン(91.2g、0.51mol)の溶液を滴下して添加した。生じた溶液を室温にゆっくり暖め、一晩撹拌した。生じた溶液に、ジクロロメタン(558mL)、続いて三フッ化ホウ素テトラヒドロフラン錯体(56mL、0.51mol)を、25℃未満に温度を保ちながら滴下して70分にわたって添加した。懸濁液はさらに60分撹拌し、次いで、窒素の雰囲気下に濾過した。固体物質をジエチルエーテル(3×150mL)ですすぎ、次いで、真空下に乾燥して、N−メチル−N−フェニルアミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラート(124g、93%)を濃い灰色の結晶として得た:融点144−150℃;1HNMR(CDCN)7.74−7.49(m,5H),3.92−3.75(m,3H);19FNMR(CDCN)14.33(s),−150.41(s);13CNMR(CDCN)132.82,131.46,128.02,122.74,43.82.
【0090】
<実施例12>
<N−ベンジル−N−メチルアミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラート塩の調製>
<ステップ1>
−78℃に冷却したジエチルエーテル(500mL)中のN−メチルベンジルアミン(100mL、93.9g、0.77mol)の撹拌した溶液に、温度を−60℃未満に保ちながら、n−ブチルリチウム(ヘキサン中の2.4M、355mL、0.85mol)を添加した。生じたスラリーを1時間撹拌し、次いで−70℃未満に温度を保ちながらクロロトリメチルシラン(118mL、0.93mol)を添加した。この反応物を一晩室温に暖め、次いで濾過して沈澱した白色固形物を除去した。濾液は真空下に濃縮し、次いで、高真空蒸留して、N−トリメチルシリル−N−メチルベンジルアミン(102g、9
4%)を無色の液体として得た:沸点54℃/0.5mmHg;HNMR(CDCl)0.19(s,9H),2.37(s,3H),3.90(2,2H)7.22−7.39(m,5H)
【0091】
<ステップ2>
マグネティックスターラー、温度プローブ、泡発生器および窒素入口を備えた5Lのフランジ、首付きフラスコに、ジクロロメタン(150mL)を添加し、次いで、−78℃に冷却した。温度を−65℃未満に保ちながら四フッ化硫黄(53.7g、0.50mmol)を液面下に導入した。生じた溶液に、−70℃未満の温度を保ちながら、ジクロロメタン(42mL)中のN−トリメチルシリル−N−メチルベンジルアミン(92.4g、0.48mol)の溶液を滴下して添加した。生じた溶液を室温にゆっくり暖め、一晩撹拌した。生じた溶液に、ジクロロメタン(558mL)、続いて三フッ化ホウ素テトラヒドロフラン錯体(52.7mL、0.48mol)を、25℃未満に温度を保ちながら、70分にわたり滴下して添加した。この溶液を−78℃に冷却し、固体を沈澱させ、次いで、窒素の雰囲気下に濾過した。固体物質をジエチルエーテル(3×150mL)ですすぎ、次いで、真空下に乾燥して、N−ベンジル−N−メチルアミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラート(93g、73%)をベージュ色の結晶として得た:融点59−62℃:HNMR(CDCN)7.57−7.40(brm)5.07−4.94(brm),3.31−3.16(brm);19FNMR(CDCN)14.13(s)−150.85(s);13CNMR(CDCN)130.46,130.32,129.92,55.07,35.87.
【0092】
<実施例13>
<N−メチル−N−(2−ピリジル)アミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラート塩の調製>
<ステップ1>
−78℃に冷却したジエチルエーテル(120mL)中の2−メチルアミノピリジン(19.5g、0.18mol)の撹拌した溶液に、−70℃未満に温度を保ちながら、n−ブチルリチウム(ヘキサン中の2.4M、85mL、0.20mol)を添加した。生じたスラリーを1時間撹拌し、次いで、クロロトリメチルシラン(28.2mL、0.22mol)を−70℃未満に温度を保ちながら添加した。この反応物を一晩室温に暖め、次いで濾過して沈澱した白色固形物を除去した。濾液は真空下に濃縮し、次いで、高真空下で蒸留して、N−トリメチルシリル−N−メチル−2−アミノピリジンを無色の液体として得た:沸点50℃/0.5mmHg;HNMR(CDCl)0.33(s,9H),2.86(s,3H),6.51(d,1H,8Hz),6.62(m,1H),7.49(m,1H),8.12(m,1H);13CNMR(CDCl)0.00,30.91,105.03,111.38,136.05,145.94,160.74
【0093】
<ステップ2>
マグネティックスターラー、温度プローブ、泡発生器および窒素入口を備えた5Lのフランジ、首付きフラスコに、ジクロロメタン(150mL)を添加し、次いで、−78℃に冷却した。温度を−65℃未満に保ちながら四フッ化硫黄(23.7g、0.22mol)を液面下に導入した。生じた溶液に、−70℃未満に温度を保ちながらジクロロメタン(42mL)中のN−トリメチルシリル−N−メチル−2−アミノピリジン(38.0g、0.21mol)の溶液を滴下して添加した。生じた溶液を室温にゆっくり暖め、一晩撹拌した。生じた溶液に、ジクロロメタン(500mL)、続いて三フッ化ホウ素テトラヒドロフラン錯体(23.3mL、0.21mol)を21℃未満に温度を保ちながら、35分にわたり滴下して添加した。懸濁液はさらに60分撹拌し、次いで窒素の雰囲気下に濾過した。固体物質はジエチルエーテル(3×150mL)ですすぎ、次いで、真空下に乾燥してN−メチル−N−(2−ピリジル)アミノジフルオロスルフィニウムテトラ
フルオロボラート(43.6g、78%)を白色結晶として得た:融点80−86℃;HNMR(CDCN)8.40(d,J=4.6Hz,1H),8.21(t,J=8.0Hz,1H),7.59(dd,J=7.6,5.6Hz,1H),7.44(d,J=8.3Hz,1H),3.75(s,3H);19FNMR(CDCN)−9.11(s),−151.23(s);13CNMR(CDCN)148.70,146.98,143.76,124.94,112.12,33.80.
【0094】
驚くべきことに、本出願人は、DASTがテトラフルオロホウ酸などの強いブレーンステッド酸と発熱的に反応し、ジアルキルアミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラートおよび下記に述べるHFを与えることを観察した。この発見は、ジアルキルアミノジフルオロスルフィニウム塩の調製のための新規の方法を構成する。その限りにおいて、先に報告されたジアルキルアミノジフルオロスルフィニウム塩すべてを、BF、PF、AsF、SeF、SbFのフッ素化によって調製し、塩の種類を対応する対アニオンに限定した。ここで、他の型の対イオンはこの新規のブレーンステッド酸交換法によって入手可能である。下記に述べた別の実施例において、ジエチルアミノジフルオロスルフィニウムトリフルオロメタンスルホナート塩は、トリフル酸とDASTを接触させることにより容易に調製することができる。本出願人はまた、トリフラート塩を生成するためにトリフル酸の代わりにトリフル酸無水物を使用することができることを見出した。
【0095】
<実施例14>
<ジエチルアミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラート塩の調製(方法E)>
無水ジエチルエーテル(50mL)中のジエチルアミノ硫黄トリフルオリド(4.1mL、31mmol)の溶液に、窒素下に室温で、30℃未満に反応温度を保ちながら、未希釈のテトラフルオロホウ酸酸性のジエチルエーテル錯体(4.2mL、31mmol)を30分間にわたって、滴下して添加する。添加を始めて直に沈澱が生じる。生じた懸濁液をさらに20分撹拌し、次いで、窒素の雰囲気下に濾過する。固体物質をジエチルエーテル(2x25mL)で2度すすぎ、次いで、真空下に乾燥して、ジエチルアミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラート(6.7g、96%)をオフホワイト色の固体として得た;融点77−84℃。
【0096】
<実施例15>
<ジエチルアミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラート塩の調製(方法F)>
マグネティックスターラー、温度プローブ、泡発生器および窒素入口を備えた3Lのフランジ、首付きフラスコに、ジクロロメタン(150mL)を添加し、次いで、−78℃に冷却した。温度を−65℃未満に保ちながら四フッ化硫黄(69.7g、0.65mmol)を液面下に導入した。生じた溶液に、−70℃未満に温度を保ちながらジクロロメタン(42mL)中のジエチルアミノトリメチルシラン(90.1g、0.62mol)の溶液を滴下して添加した。生じた溶液を室温にゆっくり暖め、一晩撹拌した。生じた溶液に、ジクロロメタン(558mL)、続いてテトラフルオロホウ酸ジエチルエーテル錯体(85mL、0.62mol)を、16〜19℃の間に温度を保ちながら65分にわたり滴下して添加した。懸濁液はさらに60分撹拌し、次いで、窒素の雰囲気下に濾過した。固体物質はジエチルエーテル(3×150mL)ですすぎ、次いで、真空下に乾燥して、非常に薄い褐色の結晶としてジエチルアミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラート(76g、54%)を得た:融点84−86℃。
【0097】
<実施例16>
<ジエチルアミノジフルオロスルフィニウムトリフルオロメタンスルホナート塩の調製(方法A−トリフルオロメタンスルホン酸を使用する。)>
無水ジエチルエーテル(30mL)中のジエチルアミノ硫黄トリフルオリド(2.45mL、18.6mmol)の溶液に、窒素下に、未希釈のトリフルオロメタンスルホン酸(1.65mL、18.6mmol)を5分間にわたって、滴下して添加する。生じた懸濁液を同一の温度でさらに30分間撹拌し、次いで、窒素の雰囲気下に濾過する。固体物質をジエチルエーテル(2x20mL)で2度すすぎ、次いで、真空下に乾燥して、ジエチルアミノジフルオロスルフィニウムトリフルオロメタンスルホナート(4.4g、81%)を白色固形物として得た;融点97−101℃;HNMR(CDCN,300MHz)δ3.91(m,4H),1.38(t,J=7.0Hz,6H);19FNMR(CDCN,282MHz)δ12.5(s,2F),−79.8(s,3F);13CNMR(CDCN,75MHz)δ121.4(q,J=320.0Hz),48.3(br),12.4.
【0098】
<実施例17>
<ジエチルアミノジフルオロスルフィニウムトリフルオロメタンスルホナート塩の調製(方法B−トリフル酸無水物から)>
無水1,2−ジクロロエタン(16mL)中のジエチルアミノ硫黄トリフルオリド(1.64mL、12.4mmol)の氷冷溶液に、窒素下に、未希釈のトリフルオロメタンスルホン無水物(2.09mL、12.4mmol)を10分間にわたって、滴下して添加する。生じた懸濁液を窒素の雰囲気下に濾過する。固体物質を、ジエチルエーテル(2x10mL)で2度すすぎ、次いで、真空下に乾燥して、白色固形物としてジエチルアミノジフルオロスルフィニウムトリフルオロメタンスルホナート(3.15g、74%)を得た;融点109−111℃。
【0099】
<実施例18>
<モルホリノジフルオロスルフィニウムトリフルオロメタンスルホナート塩の調製>
無水ジエチルエーテル(25mL)中のモルホリノ硫黄トリフルオリド(2.1mL、17.1mmol)の溶液に、室温で窒素下に、ジエチルエーテル(10mL)中のトリフルオロメタンスルホン酸(1.5mL、17.1mmol)の溶液を30分間にわたって、滴下して添加する。生じた懸濁液を同一の温度でさらに90分間撹拌し、次いで、窒素の雰囲気下に濾過する。固体物質は、ジエチルエーテル(2x20mL)で2度すすぎ、次いで、真空下に乾燥して、ジエチルアミノジフルオロスルフィニウムトリフルオロメタンスルホナート(4.24g、81%)を白色固形物として得る;融点85−87℃;HNMR(CDCN);19FNMR(CDCN).HNMR(CDCN,300MHz)δ4.11−3.98(m,8H)19FNMR(CDCN,282MHz)δ9.9(s,2F),−79.6(s,3F);13CNMR(CDCN,75MHz)δ123.5(d,J=320.8Hz),65.7,48.2(br).
【0100】
<安全性調査>
ジアルキルアミノ硫黄トリフルオリドの爆発性は知られているため、様々な二置換アミノジフルオロスルフィニウム塩の熱的安定性をDSC(示差走査熱量測定法)によって評価した。Lalの説明において、DASTは、報告によれば、140℃で分解して1700J/gを放出し、一方、Deoxo−Fluorは1100J/gのエネルギーで140℃で分解する。報告されたDSC値が一定でないので、種々の二置換アミノジフルオロスルフィニウム塩を試験するために使用したのと同一の装置でDASTおよびDeoxo−Fluorを再度試験した。それにより、DASTは、155℃で非常に鋭いピークおよび1641J/gの放出を示した。それに比べて、ジエチルアミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラートのTmaxは205℃であり、発熱性の分解熱は1260J/gであった。一般に、分解中に生じるより高い分解温度およびより低い発熱性の熱量は、より安定した化合物であることを示し、より大きい安全性を提供する。モルホリノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラートはわずか773J/gしか放出せずTm
axが243℃で一層安定である。この結果は、158℃のTmaxで1031J/gを放出する、Deoxo−Fluorに比較して優れている。さらに、XtalFluor−EおよびXtalFluor−Mのどちらも、90℃に設定した等温DSCで、試験した時間枠(すなわち5000分)中に観察可能な分解を示さなかった。同一の温度で、DASTおよびDeoxo−Fluorは300および1800分以内にそれぞれ分解すると報告された。様々な塩のDSC値を表3に要約する。
【表3】

【0101】
より厳密な熱的安全性評価を急速加熱試験(ARC)によって行い、ジエチルアミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラートおよびモルホリノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラートの結果を、DASTおよびDeoxo−Fluorの市販の入手可能な試料と比較した。それにより、DASTおよびDeoxo−Fluorのどちらも、60℃設定の加速分解でそのまま分解を開始したが、ジエチルアミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラートおよびモルホリノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラートの開始は、それぞれ119℃および141℃で検出され、安全性が著しく増加したことを示した。
【0102】
歴史的背景を述べると、Pashinnikらの報告によれば、アセトニトリル中のモルホリノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラートを使用するアリル型アルコールのデオキソフッ素化は、85%収率で対応するフッ化物をエピマーの混合物として与える。大局的見地からそのような塩の潜在的な範囲を評価するために、試薬および溶媒のこの組み合わせを、代替アルコールについて試みた。意外にも、ゲラニオールは扱いにくい混合物をもたらしたが、しかしヒドロシナミルアルコールはアセトニトリルを用いるRitter型反応を経由して、主要な生成物(実施例30)としてN−アセチル−3−フェニルプロピルアミンを与えた。このように、アセトニトリルはこれらの反応条件下では両立困難である。しかしながら、溶媒としてジクロロメタンを使用することによって、本発明者らは、32%収率と芳しくないとはいえ、驚くべきことに、ジエチルアミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラートがヒドロシナミルアルコールを所望のフッ化物に変換することを見出した(実施例31)。驚くべきことに、外因性のフッ化物供給源の添加は、アルコールのフッ素化を非常に改善した。例えば、ジクロロメタン中のジエチルアミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラートおよびトリエチルアミントリヒドロフルオリドの試薬の組み合わせは、1−フルオロ−3−フェニルプロパン(実施例32)に78%変換した。振り返ると、これらの結果は、二置換アミノジフルオロスルフィニウム塩のみを用いる反応が、所望のフッ素化生成物への変換のために十分なフッ化物イオンを与えないが、外因性のフッ化物の添加はこの欠陥に打ち勝つことができることを示す。基質、フッ素化試薬(二置換アミノジフルオロスルフィニウム塩および促進剤(トリエチルアミントリヒドロフルオリド)の添加の順序は、アルコールから対応するフッ化物への変換において重要な要因であることを、本発明者らは観察した。実際、トリエチルアミントリヒドロフルオリドを最後に添加した場合、所望のフルオリドへの変換はわずかに39%(実施例33)の増加である。しかしながら、最後に基質が添加される場合、その変換率は84%(実施例34)に増加する。
【0103】
<実施例30>
<アセトニトリル中のモルホリノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラートを使用する3−フェニルプロパノールのデオキソフッ素化反応>
アセトニトリル(3.0mL)中のモルホリノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラート(362mg、1.5mmol)の撹拌した懸濁液に、室温で、3−フェニルプロパノール(131μL、1.0mmol)を添加した。1.5時間の後、反応混合物を5%重炭酸ナトリウム水溶液で室温にてクエンチし、15分間撹拌して、生じた混合物を2度ジクロロメタンを使用して抽出した。有機相を合わせ、硫酸マグネシウム上で乾燥し、シリカゲルのパッドに通して濾過した。溶媒を蒸発させ、生じた粗物質はシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーによってDCM/MeOH(100/1)を使用して精製し、3−フェニルプロパノール(25mg、19%)およびN−アセチル−3−フェニルプロピルアミン(33mg、25%)を透明な油として得た。N−アセチル−3−フェニルプロピルアミンの特性評価は以下の通り。
HNMR(CDCl3,300MHz)δ7.31−7.08(m,5H),5.60(brs,1H),3.25(q,J=6.8Hz,2H),2.63(t,J=7.7Hz,2H),1.91(s,3H),1.76(m,2H);13CNMR(CDCl
3,75MHz)δ170.1,141.4,128.5,128.3,126.0,38.3,33.3,31.1,23.3.
【0104】
<実施例31>
<ジクロロメタン中のジエチルアミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラートを使用する3−フェニルプロパノールのデオキソフッ素化反応>
ジクロロメタン(3.0mL)中のジエチルアミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラート(687mg、3.0mmol)の懸濁液に、室温で窒素下に、3−フェニルプロパノール(262μL、2.0mmol)を添加した。反応混合物を30分間撹拌し、次いで、HPLC(内標準としてm−キシレンを使用して)によって分析し、1−フルオロ−3−フェニルプロパンへの32%の変換を示した。生成物は基準試料と比較して同定した。HNMR(CDCl,300MHz)δ7.34−7.19(m,5H),4.47(dt,H−F=47.3Hz,H−H=5.9Hz,2H),2.76(t,7.3Hz,2H),2.11−1.95(m,2H);19FNMR(CDCl,282MHz)δ−220.6(tt,H−F=47.6Hz,H−F=23.0Hz,2F);13CNMR(CDCl,75MHz)δ141.2,128.6,128.6,126.1,83.2(d,C−F=165.4Hz),32.2(d,C−F=20.2Hz),31.4(d,C−F=5.6Hz)
【0105】
<実施例32>
<ジクロロメタン中のジエチルアミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラートおよびトリエチルアミントリヒドロフルオリドを使用する3−フェニルプロパノールのデオキソフッ素化反応(添加順序A)>
ジクロロメタン(3.0mL)中の3−フェニルプロパノール(262μL、2.0mmol)およびトリエチルアミントリヒドロフルオリド(326μL、2.0mmol)の溶液に、室温で窒素下にて、ジエチルアミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラート(687mg、3.0mmol)を添加した。反応混合物を60分間撹拌し、次いで、HPLC(内標準としてm−キシレンを使用して)によって分析して、1−フルオロ−3−フェニルプロパンへの78%の変換を確認した。生成物は基準試料と比較して同定した。
【0106】
<実施例33>
<ジクロロメタン中のジエチルアミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラートおよびトリエチルアミントリヒドロフルオリドを使用する3−フェニルプロパノールのデオキソフッ素化反応(添加順序B)>
ジクロロメタン(3.0mL)中のジエチルアミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラート(687mg、3.0mmol)およびトリエチルアミントリヒドロフルオリド(326μL、2.0mmol)の懸濁液に、室温で窒素下にて、3−フェニルプロパノール(262μL、2.0mmol)を添加した。反応混合物を30分間撹拌し、次いで、HPLC(内標準としてm−キシレンを使用して)によって分析して、1−フルオロ−3−フェニルプロパンへの84%の変換を確認した。生成物は基準試料と比較して同定した。
【0107】
<実施例34>
<ジクロロメタン中のジエチルアミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラートおよびトリエチルアミントリヒドロフルオリドを使用する3−フェニルプロパノールのデオキソフッ素化反応(添加順序C)>
ジクロロメタン(3.0mL)中のジエチルアミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラート(687mg、3.0mmol)および3−フェニルプロパノール(262μL、2.0mmol)の懸濁液に、室温で窒素下にて、トリエチルアミントリヒドロ
フルオリド(326μL、2.0mmol)を添加した。反応混合物を15分間撹拌し、次いで、HPLC(内標準としてm−キシレンを使用して)によって分析して、1−フルオロ−3−フェニルプロパンへの39%の変換を確認した。生成物は基準試料と比較して同定した。アルコールのフッ素化に対する促進剤の作用は、HF:TEA比率の変化によって評価した。4−フェニル−2−ブタノールのフッ素化によって例示すると、1HF:TEA、2HF:TEAおよび3HF:TEA促進剤すべてが、所望の転換を可能にしたが、2HF:TEAがより変換率が高かった。
【0108】
<実施例35>
<モルホリノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラートおよび3HF・TEAを使用する4−フェニル−2−ブタノールのデオキソフッ素化反応>
ジクロロメタン(3.0mL)中のモルホリノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラート(362mg、1.5mmol)およびトリエチルアミントリヒドロフルオリド(326μL、2.0mmol)の懸濁液に、室温で窒素下にて、4−フェニル−2−ブタノール(155μL、1.0mmol)を添加した。反応混合物を30分間撹拌し、次いで、HPLC(内標準としてm−キシレンを使用して)によって分析して、2−フルオロ−4−フェニルプロパンへの71%の変換を認めた。生成物は基準試料と比較して同定した。HNMR(CDCl,300MHz)δ7.35−7.11(m,5H),4.62(dm,H−F=48.4Hz,1H),2.89−2.49(m,2H),2.14−1.63(m,2H),1.31(dd,H−F=23.8Hz,H−H=6.3Hz,3H);19FNMR(CDCl,282MHz)δ−174.4(m,1F);13CNMR(CDCl,75MHz)δ141.4,128.3,125.9,89.9(d,C−F=165.2Hz),38.6(d,C−F=20.6Hz),31.3(d,C−F=5.2Hz)20.9(d,C−F=21.3Hz).
【0109】
<実施例36>
<モルホリノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラートおよび2HF・TEAを使用する4−フェニル−2−ブタノールのデオキソフッ素化反応>
ジクロロメタン(3.0mL)中のモルホリノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラート(362mg、1.5mmol)、トリエチルアミントリヒドロフルオリド(326μL、2.0mmol)およびトリエチルアミン(139μL、1.0mmol)の懸濁液に、室温で窒素下にて、4−フェニル−2−ブタノール(155μL、1.0mmol)を添加した。反応混合物を30分間撹拌し、次いで、HPLC(内標準としてm−キシレンを使用して)によって分析して、2−フルオロ−4−フェニルプロパンへの81%の変換を確認した。生成物は基準試料と比較して同定した。
【0110】
<実施例37>
<モルホリノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラートおよび1HF・TEAを使用する4−フェニル−2−ブタノールのデオキソフッ素化反応>
ジクロロメタン(3.0mL)中のモルホリノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラート(362mg、1.5mmol)、トリエチルアミントリヒドロフルオリド(326μL、2.0mmol)およびトリエチルアミン(557μL、4.0mmol)の懸濁液に、室温で窒素下にて、4−フェニル−2−ブタノール(155μL、1.0mmol)を添加した。反応混合物を30分間撹拌し、次いで、HPLC(内標準としてm−キシレンを使用して)によって分析して、2−フルオロ−4−フェニルプロパンへの57%の変換を認めた。生成物は基準試料と比較して同定した。テトラブチルアンモニウムビフルオリドおよびフッ化水素ピリジン(HF〜70%とピリジン〜30%との混合物)などのイオン性フッ化物の他の供給源も、アルコールのデオキソフッ素化を促進することが見出された。
【0111】
<実施例38>
<ジエチルアミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボレートおよびテトラブチルアンモニウムビフルオリドを使用するシクロオクタノールのデオキソフッ素化反応>
ジクロロメタン(3.0mL)中のジエチルアミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラート(344mg、1.5mmol)およびテトラブチルアンモニウムビフルオリド(422mg、1.5mmol)の氷冷懸濁液に、窒素下で、シクロオクタノール(132μL、1.0mmol)を添加した。反応混合物を室温に温め、4時間撹拌する。反応混合物を飽和水性塩化アンモニウム溶液で室温にてクエンチし、15分間撹拌し、生じた混合物を2度ジクロロメタンを使用して抽出する。有機相は合わせて、硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過し濃縮した。ペンタンを使用して、粗生成物をシリカゲルのパッドに通して、シクロオクテンと混合した表題化合物(80mg、62%)(それぞれ2.3:1の比率)を透明な油として得る。主要な化合物:1HNMR(CDCl,300MHz)δ4.63(dm,2JH−F=45.9Hz,1H),1.96−1.42(m,16H);19FNMR(CDCl,282MHz)δ−159.7(brs,1F);13CNMR(CDCl3,75MHz)δ95.0(d,1JC−F=163.4Hz),32.3(d,2JC−F=21.7Hz),27.4,25.3,22.2(d,3JC−F=9.8Hz).
【0112】
<実施例39>
<ジエチルアミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラートおよびフッ化水素ピリジンを使用するシクロオクタナールのデオキソフッ素化反応>
室温のNalgen瓶内のジクロロメタン(3.0mL)中のジエチルアミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラート(344mg、1.5mmol)の撹拌した懸濁液に、Olah試薬(HF〜70%とピリジン〜30%との混合物78μL、HF3mmol)およびシクロオクタノール(132μL、1mmol)を連続的に添加した。17時間の後、反応混合物を、5%水性重炭酸ナトリウム溶液で室温でクエンチし、15分間撹拌し、生じた混合物を2度ジクロロメタンを使用して抽出する。有機相を合わせられ、硫酸マグネシウム上で乾燥し、シリカゲルのパッドに通して濾過する。溶媒は蒸発させ、シクロオクテンおよびシクロオクタノールと混合した表題化合物(58mg、44%)(それぞれ1:0.44:0.28の比率)を透明な油として得る。主要な生成物:HNMR(CDCl,300MHz)δ4.63(dm,H−F=45.9Hz,1H),1.96−1.42(m,16H);19FNMR(CDCl,282MHz)δ−159.7(brs,1F);13CNMR(CDCl,75MHz)δ95.0(d,C−F=163.4Hz),32.3(d,C−F=21.7Hz),27.4,25.3,22.2(d,C−F=9.8Hz).
【0113】
様々な添加剤の調査中に、本発明者らは、驚くべきことに、DBUがまたアルコールデオキソフッ素化を促進することができることを見出した。振り返ってみると、フッ素化に対するこの有利な効果は、塩基が必要なフッ化物の放出を促進するという点で合理的に説明でき、この状況において、フッ化物の外因性の供給源は必要としない。フルオリド供給源促進剤の場合と同様に、本発明者らは、基質、フッ素化試薬(二置換アミノジフルオロスルフィニウム塩)および塩基促進剤の添加の順序が、対応するフルオリドへのアルコールの変換における重要な要因であることを観察した。例えば、フッ素化試薬が最後に添加される場合、所望のフッ化物への3−フェニルプロパノールの変換率は92%である。しかし、3−フェニルプロパノールが最後に添加される場合、対応するフッ化物への変換率は76%である。
【0114】
<実施例40>
<ジエチルアミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラートおよびDBUを使用
する3−フェニルプロパノールのデオキソフッ素化反応(添加順序A)>
ジクロロメタン(1.5mL)中の3−フェニルプロパノール(132μL、1.0mmol)およびDBU(224μL、1.5mmol)の溶液に、室温で窒素下にて、ジエチルアミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラート(344mg、1.5mmol)を添加した。反応混合物を17時間撹拌し、次いで、HPLC(内標準としてm−キシレンを使用して)によって分析して、1−フルオロ−3−フェニルプロパンへの92%の変換を確認した。生成物は基準試料と比較して同定した。
【0115】
<実施例41>
<ジエチルアミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラートおよびDBUを使用する3−フェニルプロパノールのデオキソフッ素化反応(添加順序B)>
ジクロロメタン(1.5mL)中のジエチルアミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラート(344mg、1.5mmol)およびDBU(224μL、1.5mmol)の懸濁液に、室温で窒素下にて、3−フェニルプロパノール(132μL、1.0mmol)を添加した。反応混合物を19時間撹拌し、次いで、HPLC(内標準としてm−キシレンを使用)によって分析して、1−フルオロ−3−フェニルプロパンへの76%の変換を確認した。生成物は基準試料と比較して同定した。様々な添加剤の調査中に、本発明者らはまた、多種多様な有機および無機塩基もまたアルコールのデオキソフッ素化を促進することができることを見出した(実施例42−48;表4)。
【0116】
<様々な塩基促進剤を使用するアルコールのフッ素化のための手順(実施例42−48)>
ジクロロメタン(3.0mL)中のシクロオクタノール(132μL、1.0mmol)および塩基(1.5mmol)の氷冷溶液に、窒素下で、ジエチルアミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラート(344mg、1.5mmol)を添加した。反応混合物を室温に温め、18時間撹拌する。反応混合物を10%水性HCl溶液で室温にてクエンチし、15分間撹拌して、生じた混合物を2度ジクロロメタンを使用して抽出する。有機相を合わせ、硫酸マグネシウム上で乾燥し、シリカゲルのパッドに通して濾過し、濃縮して、シクロオクテンと混合したフルオロシクロオクタンを透明な油として得た(収率および生成物分布について、次表参照)。
【表4】

<様々な塩基促進剤を用いるシクロオクタノールのデオキソフッ素化反応>
【0117】
ジエチルアミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラートのみではカルボニルをフッ素化できなかった。例えば、4−t−ブチルシクロヘキサンオンをジクロロメタン
中のジエチルアミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラートで処理した場合、4−t−ブチル−1,1−ジフルオロシクロヘキサンへの検出可能な変換は室温で4日後にさえ観察されなかった。しかしながら、カルボニルのフッ素化は、3HF・TEA、2HF・TEAおよびテトラブチルアンモニウムビフルオリドおよびOlah試薬などの外因性のフッ化物イオン促進剤の存在によって促進された。
【0118】
<実施例49>
<ジエチルアミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラートおよび3HF・TEAを使用する4−t−ブチルシクロヘキサンオンのデオキソフッ素化反応>
ジクロロメタン(10mL)中のジエチルアミノスルフィニウムテトラフルオロボラート(593mg、2.6mmol)の懸濁液に、室温で、4−tert−ブチルシクロヘキサンオン(200mg、1.3mmol)およびトリエチルアミントリヒドロフルオリド(266μL、1.3mmol)を添加する。反応混合物を4時間撹拌し、次いで、重炭酸ナトリウムの水溶液(5%)を添加し、撹拌は30分間継続する。有機相は単離し硫酸マグネシウムで乾燥する。その溶液をペンタン(10mL)で希釈し、溶液はシリカゲルのパッドに通してペンタン溶出する。溶媒を真空内で蒸発させ、対応するフッ化ビニルの3%と混合した、4−t−ブチル−1,1−ジフルオロシクロヘキサン(120mg、53%)を透明な液体として得た。主要な化合物:HNMR(CDCl)2.09−1.95(m,2H),1.76−1.67(m,2H),1.65−1.51(m,2H),1.30−1.15(m,2H),1.02−0.97(s,1H),0.80(s,9H);19FNMR(CDCl)−91.9(d,J=232.6Hz,1F),−103.5(dm,J=232.6Hz,1F).
【0119】
DASTおよびDeoxo−Fluor(R)に優るジエチルアミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラートのさらなる利点は、4−t−ブチルシクロヘキサンオンのデオキソフッ素化において明らかになった。通常、ケトンのデオキソフッ素化において観察される主要な副反応は、対応するフッ化ビニルの生成である。実際、4−t−ブチルシクロヘキサンオンとの、DAST/HFおよびDeoxo−Fluor(R)/HFの反応は33%および19%のフッ化ビニル副生物をもたらすと報告されたが、同一の基質を使用して、ジエチルアミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラート/3HFEtNは、3%未満のフッ化ビニルと、より高い選択性を示した。
【0120】
本発明者らは、驚くべきことに、カルボニル基質、フッ素化試薬(二置換アミノジフルオロスルフィニウム塩)および促進剤(トリエチルアミントリヒドロフルオリド)を任意の添加順序で添加することができ、カルボニルのジェミナルジフッ素化の生成を可能にすることを観察した。
【0121】
<実施例50>
<ジエチルアミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラートおよびトリエチルアミントリヒドロフルオリドを使用する4−エトキシカルボニルシクロヘキサノンのデオキソフッ素化反応(添加順序A)>
ジクロロメタン(2.0mL)中の4−カルベトキシ−シクロヘキサノン(159μL、1.0mmol)およびトリエチルアミントリヒドロフルオリド(163μL、1.0mmol)の溶液に、室温で窒素下にて、1.5時間にわたり分割してジエチルアミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラート(344mg、1.5mmol)を添加した。反応混合物を、15時間撹拌し、次いで、5%水性重炭酸ナトリウム溶液でクエンチし、15分間撹拌し、生じた混合物を、ジクロロメタンを用いて抽出した。有機相は合わせ、硫酸マグネシウム上で乾燥し、シリカゲルのパッドに通して濾過した。溶媒は蒸発させ、4−カルベトキシ−1,1−ジフルオロシクロヘキサン(71%)、4−カルベトキシ−1−フルオロシクロヘキサ−1−エン(6%)および4−カルベトキシ−シクロヘ
キサノン(23%)を含む144mgの混合物を透明な油として得た。主要な化合物:HNMR(CDCl,300MHz)δ4.11(q,J=7.0Hz,2H),2.53−1.61(m,9H),1.23(t,J=7.0Hz,3H);19FNMR(CDCl,282MHz)δ−94.3(d,F−F=237.5Hz,1F),−99.8(d,F−F=237.4Hz,1F);13CNMR(CDCl,75MHz)δ174.2,127.2(t,C−F=241.6Hz),60.5,40.5,32.5(t,C−F=24.3Hz),25.0,14.1.
【0122】
<実施例51>
<ジエチルアミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラートおよびトリエチルアミントリヒドロフルオリドを使用する4−エトキシカルボニルシクロヘキサノンのデオキソフッ素化反応(添加順序B)>
ジクロロメタン(1.5mL)中のジエチルアミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラート(344mg、1.5mmol)およびトリエチルアミントリヒドロフルオリド(163μL、1.0mmol)の懸濁液に、室温で窒素下にて、ジクロロメタン(1.5mL)中の4−カルベトキシ−シクロヘキサノン(159μL、1.0mmol)の溶液を1.5時間にわたって滴下し添加する。反応混合物を15時間撹拌し、5%水性重炭酸ナトリウム溶液でクエンチし、次いで、15分間撹拌し、生じた混合物はジクロロメタンを使用して抽出した。有機相を合わせ、硫酸マグネシウム上で乾燥し、シリカゲルのパッドに通して濾過した。溶媒は蒸発させ、4−カルベトキシ−1,1−ジフルオロシクロヘキサン(77%)、4−カルベトキシ−1−フルオロシクロヘキサ−1−エン(5%)、および4−カルベトキシ−シクロヘキサノン(18%)を含む混合物150mgを透明な油として得た。
【0123】
<実施例52>
<ジエチルアミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラートおよびトリエチルアミントリヒドロフルオリドを使用する4−エトキシカルボニルシクロヘキサノンのデオキソフッ素化反応(添加順序C)>
ジクロロメタン(1.5mL)中のジエチルアミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラート(344mg、1.5mmol)および4−カルベトキシ−シクロヘキサノン(159μL、1.0mmol)の懸濁液に、室温で窒素下に、ジクロロメタン(0.5mL)中のトリエチルアミントリヒドロフルオリド(163μL、1.0mmol)の溶液を1.5時間にわたって滴下して添加する。反応混合物を15時間撹拌し、次いで、5%水性重炭酸ナトリウム溶液でクエンチし15分間撹拌し、生じた混合物はジクロロメタンを使用して抽出した。有機相を合わせ、硫酸マグネシウム上で乾燥し、シリカゲルのパッドに通して濾過した。溶媒は蒸発させ、4−カルベトキシ−1,1−ジフルオロシクロヘキサン(69%)、4−カルベトキシ−1−フルオロシクロヘキサ−1−エン(4%)および4−カルベトキシ−シクロヘキサノン(27%)を含む混合物147mgを、透明な油として得た。
【0124】
<実施例53>
<ジエチルアミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラートおよびテトラブチルアンモニウムビフルオリドを使用する4−エトキシカルボニルシクロヘキサノンのデオキソフッ素化反応>
ジクロロメタン(3.0mL)中のジエチルアミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラート(458mg、2.0mmol)およびテトラブチルアンモニウムビフルオリド(463mg、2.0mmol)の氷冷懸濁液に、窒素下で、4−エトキシカルボニルシクロヘキサノン(159μL、1.0mmol)を添加した。反応混合物を室温に温め、4時間撹拌する。反応混合物は飽和水性塩化アンモニウム溶液で室温にてクエンチし、15分間撹拌し、生じた混合物を、2度ジクロロメタンを使用して抽出する。有機相
を合わせ、硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過し濃縮した。粗生成物はペンタンを使用して、シリカゲルのパッドに通し、1−エトキシカルボニル−4,4−ジフルオロシクロヘキサン(130mg、68%)を透明な油として得る。
【0125】
<実施例54>
<ジエチルアミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラートおよび2HF・TEAを使用する4−t−ブチルシクロヘキサノンのデオキソフッ素化反応>
ジクロロメタン(3.0mL)中のジエチルアミノスルフィニウムテトラフルオロボラート(344mg、1.5mmol)、トリエチルアミントリヒドロフルオリド(326μL、2.0mmol)およびトリエチルアミン(139μL、1.0mmol)の混合物に、室温で、4−tert−ブチルシクロヘキサノン(154mg、1.0mmol)を添加する。反応混合物を22時間撹拌し、次いで、重炭酸ナトリウム(5%)の水溶液を添加し、撹拌は15分間継続する。相を分離し、水層はジクロロメタンを使用して2度抽出する。有機相を合わせ、マグネシウム硫酸塩で乾燥する。この溶液をシリカゲルのパッドに通してジクロロメタンで溶出する。溶媒を真空内で蒸発させ、対応するフッ化ビニル0.8%と混合した、4−t−ブチル−1,1−ジフルオロシクロヘキサン(160mg、91%)を、透明な液体として得る。
【0126】
<実施例55>
<ジエチルアミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラートおよびOlah試薬を使用するヒドロシンナムアルデヒドのデオキソフッ素化反応>
Nalgen瓶内において、3−フェニルプロピオンアルデヒド(132μL、1.0mmol)およびOlah試薬(〜70%HFおよび〜30%ピリジンの混合物、78μL、HF3mmol)を室温でジクロロメタン(3.0mL)に添加する。15分後、ジエチルアミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラート(344mg、1.5mmol)を添加し、撹拌を継続する。17.5時間の後、反応混合物を5%水性重炭酸ナトリウム溶液で室温にてクエンチし、15分間撹拌し、生じた混合物を2度ジクロロメタンを使用して抽出する。有機相を合わせ、10%HClで洗浄する。有機相を硫酸マグネシウム上で乾燥し、シリカゲルのパッドに通して濾過する。溶媒を蒸発させ、3−フェニルプロピオンアルデヒドと混合した表題化合物(121mg、78%)(それぞれ4.3:1の比率)を透明な油として得る。主要な生成物:HNMR(CDCl,300MHz)δ7.38−7.22(m,5H),5.65(tt,H−F=56.7Hz,H−H=4.4Hz,1H),2.82(t,J=7.7Hz,2H),2.20(m,2H).19FNMR(CDCl,282MHz)δ−117.5(dt,H−F=56.7Hz,H−F=16.9Hz,1F);13CNMR(CDCl,75MHz)δ140.2,128.9,128.6,126.7,117.0(t,C−F=238.9Hz),35.9(t,C−F=20.5Hz),28.7(t,C−F=6.1Hz).
【0127】
促進剤を使用するデオキソフッ素化反応は、様々な条件下で様々な基質に適用しうる。ある場合に、より低い温度で反応を開始させると脱離副生物が減少するが、他の場合には、高温度で反応を行うと変換率が向上する。この方法の範囲は、アルデヒド、ヘミアセタールおよびカルボン酸を包含するが、これらに限定されない。
【0128】
<実施例56>
<(R)−N−Cbz−3−ヒドロキシピロリジンのデオキソフッ素化反応(−78℃で開始する)>
−78℃で冷却したジクロロメタン(3.0mL)中の(R)−N−Cbz−3−ヒドロキシピロリジン(221mg、1.0mmol)の溶液に、DBU(224μL、1.5mmol)およびジエチルアミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラート(
344mg、1.5mmol)を連続的に添加する。30分間窒素下に撹拌した後、室温に反応混合物を暖め、24時間撹拌する。反応混合物を5%水性重炭酸ナトリウム溶液でクエンチし、15分間撹拌し、生じた混合物をジクロロメタンで2度抽出する。有機相を合わせ、硫酸マグネシウム上で乾燥し、シリカゲルのパッドに通して濾過する。溶媒を蒸発させ、生じた粗物質は、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィーによってヘキサン/EtOAc(3/1)を使用して精製し、N−Cbz−2,5−ジヒドロピロール(それぞれ6.9:1の比率)と混合した表題化合物(192mg、86%)を透明な油として得る。主要な生成物:HNMR(CDCl,300MHz)δ7.37−7.26(m,5H),5.15(d,H−F=52.5Hz,1H),5.08(s,2H),3.79−3.46(m,4H),2.24−1.91(m,2H);19FNMR(CDCl,282MHz)δ−177.8(m,1F);13CNMR(CDCl,75MHz)δ154.9,136.9,128.7,128.2,128.1,93.0(d,C−F=176.8Hz),92.2(d,C−F=176.2Hz),67.1,53.0(d,C−F=27.1Hz),52.7(d,C−F=27.1Hz),44.2,43.8,32.4(d,C−F=57.6Hz),32.1(d,C−F=57.6Hz).
【0129】
<実施例57>
<4−エトキシカルボニルシクロヘキサノンのデオキソフッ素化反応(還流DCE中)>
1,2−ジクロロエタン(2.0mL)中のトリエチルアミントリヒドロフルオリド(163μL、1.0mmol)の溶液に、室温でモルホリノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラート(362mg、1.5mmol)、続いて、4−カルベトキシ−シクロヘキサノン(159μL、1.0mmol)を添加し、反応混合物は加熱して還流する。2時間後、反応混合物を室温に冷却し15分間撹拌して、5%水性重炭酸ナトリウム溶液でクエンチし、生じた混合物は2度ジクロロメタンを使用して抽出する。有機相を合わせ、硫酸マグネシウム上で乾燥し、シリカゲルのパッドに通して濾過する。溶媒を蒸発させ、生じた粗物質はシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーによってペンタンを使用して精製し、4−カルベトキシ−1−フルオロシクロヘキサ−1−エンと混合した表題化合物(166mg、86%)(それぞれ15:1の比率)を透明な油として得る。
【0130】
<実施例58>
<3−フェニルプロピオンアルデヒドのデオキソフッ素化反応>
ジクロロメタン(3.0mL)中のトリエチルアミントリヒドロフルオリド(326μL、2.0mmol)の溶液に、室温で、ジエチルアミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラート(344mg、1.5mmol)および3−フェニルプロピオンアルデヒド(132μL、1.0mmol)を連続的に添加した。2時間後、反応混合物を5%水性重炭酸ナトリウム溶液で室温にてクエンチし、15分間撹拌し生じた混合物を、2度ジクロロメタンを使用して抽出した。有機相を合わせ、硫酸マグネシウム上で乾燥し、シリカゲルのパッドに通して濾過した。溶媒は蒸発させ、生じた粗物質はシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーによってペンタンを使用して精製し、表題化合物(119mg、76%)を透明な油として得た。;HNMR(CDCl,300MHz)δ7.38−7.22(m,5H),5.65(tt,H−F=56.7Hz,H−H=4.4Hz,1H),2.82(t,J=7.7Hz,2H),2.20(m,2H).19FNMR(CDCl,282MHz)δ−117.5(dt,H−F=56.7Hz,H−F=16.9Hz,1F);13CNMR(CDCl,75MHz)δ140.2,128.9,128.6,126.7,117.0(t,C−F=238.9Hz),35.9(t,C−F=20.5Hz),28.7(t,C−F=6.1Hz).
【0131】
<実施例59>
<2,3,4,6−テトラ−O−ベンジル−D−グルコピラノースのデオキソフッ素化反応>
ジクロロメタン(0.5mL)中の2,3,4,6−テトラ−O−ベンジル−D−グルコピラノース(100mg、0.18mmol)およびDBU(44μL、0.28mmol)の溶液に、室温で窒素下で、ジエチルアミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラート(68mg、0.28mmol)を添加する。90分の撹拌の後、反応混合物を5%水性重炭酸ナトリウム溶液で室温にてクエンチし、15分間撹拌し、生じた混合物をジクロロメタンを使用して2度抽出する。有機相を合わせ、硫酸マグネシウム上で乾燥し、シリカゲルのパッドに通して濾過する。溶媒は蒸発させ、2,3,4,6−テトラ−O−ベンジル−D−グルコピラノシルフルオリドを発泡体として得た(96mg、96%、それぞれ1.1:1の比率のβ:αアノマー)。HNMR(CDCl,300MHz)δ7.47−7.15(m,20H),5.61(dd,H−F=53.2Hz,H−H=2.3Hz,0.48H,αアノマー),5.31(dd,H−F=51.8Hz,H−H=6.4Hz,0.52H,βアノマー),5.07−4.48(m,8H),4.11−3.54(m,6H);19FNMR(CDCl,282MHz)δ−138.0(dd,F−H=53.4Hz,F−H=10.6Hz,β−F),−149.44(dd,F−H=54.4Hz,F−H=25.8Hz,α−F);13CNMR(CDCl,75MHz)δ138.5,138.3,138.1,137.9,137.5,128.6,128.5,128.2,128.1,128.0,127.9,127.8,112.8(d,C−F=215.2Hz,βアノマー),108.6(d,C−F=228.7Hz,αアノマー),83.6,83.4,81.7,81.5,81.4,79.5,79.2,77.5,77.1,77.0,77.7,75.9,75.5,75.2,75.0,74.9,74.8,74.5,73.6,73.5,72.7,68.4,67.8.
【0132】
<実施例60>
<ジエチルアミノスルフィニウムテトラフルオロボラートおよびトリエチルアミントリヒドロフルオリドを使用する3−フェニルプロパン酸のデオキソフッ素化反応>
ジクロロメタン(10mL)中のジエチルアミノスルフィニウムテトラフルオロボラート(750mg、3.3mmol)の懸濁液に、室温で、3−フェニルプロパン酸(245mg、1.6mmol)およびトリエチルアミントリヒドロフルオリド(266μL、1.6mmol)を添加した。反応混合物を24時間撹拌し、次いで、重炭酸ナトリウム(5%)の水溶液を添加し、撹拌は30分間継続した。有機相は単離し、硫酸マグネシウムで乾燥した。その溶液はペンタン(10mL)で希釈し、溶液をシリカゲルのパッドに通してペンタンで溶出した。溶媒を真空中で蒸発させ、3−フェニルプロパノイルフルオリド(168mg、68%)を透明な液体として得た。HNMR(CDCl,300MHz)δ7.30−7.17(m,5H),2.96(t,J=7.6Hz,2H),2.79(t,J=7.6Hz,2H);19FNMR(CDCl,282MHz)δ44.8(s,1F);13CNMR(CDCl,75MHz)δ163.0(d,C−F=180.2Hz),139.1,128.9,128.5,127.0,34.7(d,C−F=50.7Hz),30.2.
【0133】
<実施例61>
<ジエチルアミノスルフィニウムテトラフルオロボラートおよびDBUを使用する安息香酸のデオキソフッ素化反応>
ジクロロメタン(3.0mL)中のジエチルアミノスルフィニウムテトラフルオロボラート(344mg、1.5mmol)の懸濁液に、室温で、安息香酸(122mg、1.0mmol)およびDBU(224μL、1.5mmol)を添加する。反応混合物を4時間撹拌し、次いで、HClの10%水溶液を添加し、撹拌は15分間継続した。生じた混合物はジクロロメタンを使用して2度抽出した。有機相を合わせ、硫酸マグネシウム上
で乾燥し、濾過し濃縮した。粗物質をペンタンで希釈し、溶液はシリカゲルのパッドに通してペンタンで溶出した。溶媒を真空中で蒸発させ、フッ化ベンゾイル(90mg、74%)を透明な液体として得た。HNMR(CDCl,300MHz)δ7.94(d,J=7.8,2H),7.62(t,J=7.3Hz,1H),7.43(t,J=8.2Hz,2H);19FNMR(CDCl,282MHz)δ17.5(s,1F);13CNMR(CDCl,75MHz)δ157.3(d,C−F=344.3Hz),135.5,131.5(d,C−F=4.0Hz),129.2,125.0(d,C−F=60.4Hz).ジクロロメタンおよび1,2−ジクロロエタンに加えて、他の種類の溶媒をデオキソフッ素化反応において使用することができる。表5および6に示す以下の実施例中にて使用した溶媒も含むが、これらに限定されるものではない。
【0134】
<種々の溶媒中でのアルコールのフッ素化のための手順(実施例62−67)>
溶媒(3.0mL)中のジエチルアミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラート(344mg、1.5mmol)、トリエチルアミントリヒドロフルオリド(326μL、2.0mmol)およびトリエチルアミン(139μL、1.0mmol)の混合物に、室温で窒素下にて、シクロオクタノール(132μL、1.0mmol)を添加する。反応混合物を24時間撹拌し、次いで、5%水性重炭酸ナトリウム溶液でクエンチし、15分間撹拌し生じた混合物を、ペンタンを使用して抽出した。有機相を合わせ、硫酸マグネシウム上で乾燥し、シリカゲルのパッドに通して濾過した。溶媒は蒸発させ、シクロオクテンと混合したフルオロシクロオクタンを透明な油として得た。(収率および生成物分布については以下の表を参照)。
【表5】

【0135】
<種々の溶媒中でのカルボニルのフッ素化のための手順(実施例68−69)>
ジエチルアミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラート(458mg、2.0mmol)およびトリエチルアミントリヒドロフルオリド(163μL、1.0mmol)の溶媒(2.0mL)中の混合物に、室温で窒素下にて、4−エトキシカルボニルシクロヘキサノン(159μL、1.0mmol)を添加した。反応混合物を23時間撹拌し、次いで、5%水性重炭酸ナトリウム溶液でクエンチし、15分間撹拌し、生じた混合物を、ペンタンを使用して抽出した。有機相を合わせ、硫酸マグネシウム上で乾燥し、シリカゲルのパッドに通して濾過した。溶媒は蒸発させた。4−カルベトキシ−1−フルオロシクロヘキサ−1−エンと混合した4−カルベトキシ−1,1−ジフルオロシクロヘキサンを透明な油として得た(収率および生成物分布については以下の表を参照)。
【表6】

【0136】
下記手順のどちらかに従い、表7および8に要約したEtN・3HFで促進された場合、前述のアミノジフルオロスルフィニウム塩はすべて、アルコールおよびカルボニルのデオキソフッ素化を実施することができた。
【0137】
<アルコールのフッ素化のための手順(実施例74−84)>
ジクロロメタン(3.0mL)中の二置換アミノジフルオロスルフィニウム塩(1.5mmol)、トリエチルアミントリヒドロフルオリド(326μL、2.0mmol)およびトリエチルアミン(139μL、1.0mmol))の懸濁液に、室温で窒素下にて、シクロオクタノール(132μL、1.0mmol)を添加した。反応混合物は19時間撹拌し、次いで、5%水性重炭酸ナトリウム溶液でクエンチし、15分間撹拌して、生じた混合物を、ジクロロメタンを使用して抽出した。有機相を合わせ、硫酸マグネシウム上で乾燥し、シリカゲルのパッドに通して濾過した。溶媒は蒸発させ、シクロオクテンと混合したフルオロシクロオクタンを透明な油として得た。(収率および生成物分布については以下の表を参照)。
【表7】

【0138】
<カルボニルのフッ素化のための手順(実施例85−96)>
ジクロロメタン(2.0mL)中の二置換アミノジフルオロスルフィニウム塩(2.0mmol)およびトリエチルアミントリヒドロフルオリド(163μL、1.0mmol)の懸濁液に、室温で窒素下で、4−エトキシカルボニル−シクロヘキサノン(159μL、1.0mmol)を添加した。反応物混合物を20時間撹拌し、次いで、5%水性重
炭酸ナトリウム溶液でクエンチし、15分間撹拌し、生じた混合物を、ジクロロメタンを使用して抽出した。有機相を合わせ、硫酸マグネシウム上で乾燥し、シリカゲルのパッドに通して濾過した。溶媒は蒸発させ、4−エトキシカルボニル−1−フルオロシクロヘキサ−1−エンと混合した4−カルベトキシ−1,1−ジフルオロシクロヘキサンを透明な油として得た(収率および生成物分布については以下の表を参照)。
【表8】

【0139】
これらの研究に基づくと、二置換アミノジフルオロスルフィニウム塩は、フルオリドによる求核性な置換に対してアルコールおよびカルボン酸を活性化することにおいて特に効率的である。さらには、他の型の求核試薬を使用することができよう。この文脈において、カルボン酸の活性化、続いてアミンとの置換は、ペプチドおよび/またはアミドをもたらす。同様に、アルコールの活性化、続いてカルボン酸、アジドまたは別の求核試薬との置換は、Mitsonobu反応の代用として役立つ。二置換アミノジフルオロスルフィニウム塩がまた環状脱水プロセスを促進すると期待される。
【0140】
本発明を特定の実施形態に関連して記載したが、さらなる変形が可能であり、本出願が、一般に、本願発明の原理に従う、本願発明のいかなる方法の変更、使用または改作をも包含するように意図され、本発明が関連する技術分野内の公知または慣行に属し、先に述べたまたは特許請求の範囲において述べる本質的特徴に適用され得るような本願発明の開示からの逸脱をも包含することが理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式によって表される二置換アミノジフルオロスルフィニウム塩の単離した固体。
【化1】

[式中、RおよびRは、アルキル、アリール、アラルキル、ヘテロ環およびヘテロアリールからなる群から独立して選択され、その各々は、置換されていてもよく、またはRおよびRはともに、N、SおよびOから選択される1つ以上のヘテロ原子を含んでいてもよい、炭素数4〜6のアルキレン鎖を形成し;また、Xは対イオンである。但し、前記二置換アミノジフルオロスルフィニウム塩は、
ジメチルアミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラート、
ジエチルアミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラート(針状、融点74−76℃)、
ピペリジノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラート(針状、融点92−94℃)、
モルホリノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラート(角柱状、融点104−106℃)
以外であり:またRおよびRがいずれもジメチルである場合、Xは、SbF、PFおよびAsF以外であり、またRおよびRが、これらと結合している窒素とともにモルホリノ残基を形成する場合、XはSeF以外である。]
【請求項2】
前記RおよびRは、RおよびRはともにメチル基、RおよびRはともにエチル基、RおよびRはともに2−メトキシエチル基、RはメチルおよびRはフェニル、RはメチルおよびRはピリジニル、RはメチルおよびRはベンジル、RおよびRは、それらが結合されている窒素原子とともに下記式のいずれかの構造を形成するもののいずれかから選択される、
請求項1に記載の二置換アミノジフルオロスルフィニウム塩。
【化2】

【請求項3】
下記式によって表される二置換アミノジフルオロスルフィニウムトリフルオロメタンスルホナート塩の単離した固体。
【化3】

[式中、RおよびRは、アルキル、アリール、アラルキル、ヘテロ環およびヘテロアリールからなる群から独立して選択され、その各々は、置換されていてもよく、またはR
およびRはともにN、SおよびOから選択される1つ以上のヘテロ原子を含んでいてもよい、置換されていてもよい炭素数4〜6のアルキレン鎖を形成する。]
【請求項4】
下記式によって表される二置換アミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラート塩の単離した固体。
【化4】

[式中、RおよびRは、アルキル、アリール、アラルキル、ヘテロ環およびヘテロアリールからなる群から独立して選択され、その各々は、置換されていてもよく、またはRおよびRはともにN、SおよびOから選択される1つ以上のヘテロ原子を含んでいてもよい、置換されていてもよい炭素数4〜6のアルキレン鎖を形成する。ただし、ジメチルアミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラート、
ジエチルアミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラート(針状;融点74−76℃)、
ピペリジノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラート(針状;融点92−94℃)および
モルホリノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラート(角柱状;融点104−106℃)を除く。]
【請求項5】
VANTEC検出器を備えたBruker−axs,model D8 advance回折計により得たXRDデータが以下の表の値を示す、ジエチルアミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラートII型形態。
【表1】

【請求項6】
前記VANTEC検出器を備えたBruker−axs,model D8 advance回折計により得たXRDデータが以下の表の値を示す、ジエチルアミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラートIII型形態。
【表2】

【請求項7】
前記VANTEC検出器を備えたBruker−axs,model D8 advance回折計により得たXRDデータが以下の表の値を示す、ジエチルアミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラートIV型形態。
【表3】

【請求項8】
前記VANTEC検出器を備えたBruker−axs,model D8 advance回折計により得たXRDデータが以下の表の値を示す、ジエチルアミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラートV型形態。
【表4】

【請求項9】
前記VANTEC検出器を備えたBruker−axs,model D8 advance回折計により得たXRDデータが以下表の値を示す、ジエチルアミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラートVI型形態。
【表5】

【請求項10】
前記VANTEC検出器を備えたBruker−axs,model D8 advance回折計により得たXRDデータが以下の表の値を示す、モルホリノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラートII型形態。
【表6】

【請求項11】
請求項5〜9のいずれか一項に定義されるジエチルアミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラートの少なくとも2種の形態を含むジエチルアミノジフルオロスルフィニウムテトラフルオロボラートの混合物。
【請求項12】
下記式によって表される二置換アミノジフルオロスルフィニウム塩の単離した固体を調製する方法であって、式RNSFの未精製二置換アミノ硫黄トリフルオリドをBFまたはHBFの供給源と接触させることを含む方法。
【化5】

[式中、RおよびRは、アルキル、アリール、アラルキル、ヘテロ環およびヘテロアリールからなる群から独立して選択され、その各々は、置換されていてもよい、またはRおよびRはともにN、SおよびOから選択される1つ以上のヘテロ原子を含んでいてもよい、置換されていてもよい炭素数4〜6のアルキレン鎖を形成する。]
【請求項13】
前記未精製二置換アミノ硫黄トリフルオリドが粗反応混合物である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記方法が同一の反応容器内でワンポットプロセスにて行われる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記粗製で未精製の二置換アミノ硫黄トリフルオリドが二置換トリメチルシリルアミンおよびSFから調製される、請求項12〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記粗製で未精製の二置換アミノ硫黄トリフルオリドが対応する二置換アミン、三置換アミンおよびSFから調製される、請求項12〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記反応が、ハロゲン化炭素溶媒、エーテル溶媒またはこれらの混合物の存在中に行われる、請求項12〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記BFの供給源がBFガスまたはBFエーテラート、BFテトラヒドロフラン錯体およびBFアセトニトリル錯体からなる群から選択される錯体である、請求項12〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記HBFの供給源がHBFエーテラートおよびHBFジメチルエーテル錯体からなる群から選択される錯体である、請求項12〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記反応が、無水条件および不活性雰囲気下に行われる、請求項12〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
下記式によって表される二置換アミノジフルオロスルフィニウム塩の単離した固体を調製する方法であって、前記式RNSFの二置換アミノ硫黄トリフルオリドを強いブレーンステッド酸と接触させることを含む方法。
【化6】

[式中、RおよびRは、アルキル、アリール、アラルキル、ヘテロ環およびヘテロアリールからなる群から独立して選択され、その各々は置換されていてもよく;または、RおよびRはともに、N、SおよびOから選択される1つ以上のヘテロ原子を含んでいてもよい、置換されていてもよい炭素数4〜6のアルキレン鎖を形成し;また、Xは強いブレーンステッド酸の共役塩基である。]
【請求項22】
前記強いブレーンステッド酸が、HBFエーテラート、HBFジメチルエーテル錯体およびトリフル酸からなる群から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記反応が、ハロゲン化炭素溶媒、エーテル溶媒またはこれらの混合物の存在中に行われる、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記反応が、無水条件および不活性雰囲気下に行われる、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
−OH基、=O基、−COOH基及びその組み合わせからなる群から選択される少なくとも1個の官能基を含む化合物のデオキソフッ素化のための方法であって、下記式によって表される二置換アミノジフルオロスルフィニウム塩およびイオン性フルオリドの外因性フルオリド供給源と、前記化合物とを接触させることを含む方法。
【化7】

[式中、RおよびRは、アルキル、アリール、アラルキル、ヘテロ環およびヘテロアリールからなる群から独立して選択され、その各々は置換されていてもよく、またはRおよびRはともに、N、SおよびOから選択される1つ以上のヘテロ原子を含んでいてもよい、置換されていてもよい炭素数4〜6のアルキレン鎖を形成し;また、Xは対イオンである。]
【請求項26】
−OH基、−COOH基及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1個の官能基を含む化合物のデオキソフッ素化のための方法であって、下記式によって表される二置換アミノジフルオロスルフィニウム塩および塩基と、前記化合物とを接触させることを含む方法。
【化8】

[式中、RおよびRは、アルキル、アリール、アラルキル、ヘテロ環およびヘテロアリールからなる群から独立して選択され、その各々は置換されていてもよく、またはRおよびRはともに、N、SおよびOから選択される1つ以上のヘテロ原子を含んでいてもよい、置換されていてもよい炭素数4〜6のアルキレン鎖を形成し;また、Xは対イオンである。]
【請求項27】
前記反応がハロゲン化炭素、エーテル、エステル、ニトリル、芳香族およびこれらの混合物によって構成される群において選択される非プロトン性溶媒の存在中に行われる、請求項25または26に記載の方法。
【請求項28】
前記反応が、フッ素化が無水条件および不活性雰囲気下に行われる、請求項25または26に記載の方法。
【請求項29】
前記外因性フルオリド供給源がアミンまたはアンモニウム塩とフッ化水素からなる錯体である、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
前記外因性フルオリド供給源が、三フッ化水素トリエチルアミン、ピリジニウムポリ(フッ化水素)およびテトラブチルアンモニウムビフルオリドからなる群から選択される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記塩基がDBU、DBN、DABCO、Hunig塩基、テトラメチルグアニジン、イミダゾールおよびアルカリ水素化物からなる群から選択される、請求項26に記載の方
法。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図1d】
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【図1e】
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【図1f】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−530075(P2012−530075A)
【公表日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−515303(P2012−515303)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【国際出願番号】PCT/CA2010/000959
【国際公開番号】WO2010/145037
【国際公開日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【出願人】(511308370)オメガケム インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】