説明

二軸延伸ポリエステルフィルム

【課題】レンズ層などの無溶剤系電離放射線硬化樹脂に対しても易接着性が優れ、かつ、帯電防止性を高度に併せ持つ二軸延伸ポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】分子中に3級アミノ基を有する鎖延長剤の3級アミノ基を4級化した化合物とポリカーボネートポリオールとを構成成分単位として含むポリウレタン樹脂(A)とカチオン性高分子帯電防止剤(B)とを含有する塗布層を少なくともフィルムの片面に有することを特徴とする二軸延伸ポリエステルフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば液晶ディスプレイ用の光学部材の基材フィルムとして好適に用いられる二軸延伸ポリエステルフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、急激に数量が伸びている液晶ディスプレイ装置は、光源からの光を視認側に集光し、かつ均一な面光源とする役割を果すバックライトユニットと、印加電圧を表示画素毎に調整し赤・緑・青の光を制御された光量表示させる液晶セル層ユニットの大きく分けて2つのユニットによって構成されている。
【0003】
このうち、バックライトユニットは赤・緑・青の波長領域に発光特性を有する蛍光体を用いた冷陰極管光源を視認側から見て側面に配置し、光を視認側に効率よく導く役割を有する導光板、視認側に導かれた光をディスプレイ面内に均一に分散する拡散フィルム、ディスプレイの側面側に向いている光を視認側に集光し、ディスプレイの輝度を向上させるプリズムシートによって構成される。
【0004】
一般的な液晶ディスプレイでは、導光板の上に通常、下拡散と呼称される拡散板を1枚配置し、その上に2枚のプリズムシートをそれぞれ集光方向が縦横方向および左右方向となるよう配置し、さらにその上に通常、上拡散と呼称される拡散板を1枚配置することでバックライトユニットは構成されている。近年は、この構成以外にも、例えば更なる集光性や拡散性を求める目的や、あるいはプリズムシートや拡散板の枚数を減らしてバックライトユニットの厚みを薄くする目的、あるいはコストダウンを計る目的等で、様々なプリズムシートと拡散板との組合せのバリエーションが考えられている。
【0005】
ところで上記のバックライトユニットに必要なプリズムシートは、細かい三角錐や、三角柱を横に並べたプリズム形状を有するもの、あるいは半球状のマイクロレンズ形状などのレンズ単位を多数有するもの(以降、これらのプリズム単位を有する層を総称してレンズ層、レンズ層を有するシートをレンズシートと称する)だが、これらの作成には通常、無溶剤型の電離放射線硬化樹脂が使われる。この樹脂が無溶剤であるのは、三角錐や半球状の形状を模った鋳型を多数有するロールに流動性のある無溶剤型硬化樹脂を流し込み、これを基材フィルムに押し当てると同時に、裏面より紫外線等の電離放射線を照射して樹脂を硬化させ、ロールから基材フィルムを剥がすことによって作成するため、このプロセスには溶剤を乾燥する工程が無いことがその理由である。
【0006】
ところで、レンズシートや拡散板などの光学部材フィルムは、その表面のキズや汚れから保護するために、通常、ポリオレフィン系フィルム(ポリエチレンフィルムやEVAフィルムなど)を被着させて保護をする。そしてこれらの光学部材フィルムをバックライトユニットに組み込む際に、保護用のフィルムを剥離する。ところがこの際に剥離帯電が発生することが多く、時に極めて多くの静電気が発生し、作業性を悪化させることが多かったのみならず、塵埃を引き寄せることでバックライトユニットに異物が混入する原因ともなっており、改善が求められていた。
【0007】
一方で、レンズシートや拡散板の基材フィルムとしてよく用いられるポリエステルフィルムは、通常二軸延伸されていて表面が高度に配向結晶化しているために、一般的に接着性に劣ることが多い。このため、フィルム表面には様々な易接着層を付与して、接着性の改良が提案されている。しかし、前述した無溶剤型の電離放射線硬化樹脂は、有機溶剤を含まないため、ポリエステルフィルム上の易接着層への浸透、膨潤効果が低く、一般的に用いられている易接着層では接着性が不十分となりやすい。
【0008】
上記の問題点に関連して我々は、特許文献1、2において、カチオンポリマーを含む塗布層を有し、かつタルミ量の少ない、コーターでの走行性の良好なポリエステルフィルムを提案した。さらにこれらの中で、拡散層やレンズ層との接着性向上のため、塗布層にはカチオンポリマーと共に、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリウレタンのバインダーを添加することを提案した。
【0009】
特許文献1、2においては、上記の帯電防止性や拡散層やレンズ層との接着性向上に対しては一応の効果を有する。しかし、液晶ディスプレイが使用される環境は苛酷である場合があり、特許文献1、2に記載されているような帯電防止性を維持しつつ、さらに強固な接着性を有する基材フィルムが市場から求められている。
【0010】
【特許文献1】特開2008−81551号公報
【特許文献2】特開2008−81552号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであって、その解決課題は、レンズ層などの無溶剤系電離放射線硬化樹脂に対しても易接着性が優れ、かつ、帯電防止性を高度に併せ持つ二軸延伸ポリエステルフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記の課題に関して鋭意検討を重ねた結果、特定の種類の化合物を含有する塗布層を設けることにより、上記課題が解決されることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明の要旨は、分子中に3級アミノ基を有する鎖延長剤の3級アミノ基を4級化した化合物とポリカーボネートポリオールとを構成成分単位として含むポリウレタン樹脂(A)とカチオン性高分子帯電防止剤(B)とを含有する塗布層を少なくともフィルムの片面に有することを特徴とする二軸延伸ポリエステルフィルムに存する。
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明における二軸延伸ポリエステルフィルムは、そのポリエステルの構成成分として、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートなどの芳香族ポリエステル、あるいはこれらの樹脂の構成成分を主成分とする共重合体よりなるものなどが挙げられる。
【0015】
ポリエステルが共重合ポリエステルの場合には、第三成分の含有量が10モル%以下の共重合体であることが好ましい。かかる共重合ポリエステルのジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸等から選ばれる一種または二種以上が挙げられる。また、グリコール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物等から選ばれる一種または二種以上が挙げられる。なお、こうした共重合成分の使用量が10モル%を超えると、フィルムの耐熱性、機械的強度、耐溶剤性などの低下が顕著となる。
【0016】
上記ポリエステルの中でも、ポリエチレンテレフタレートを構成成分としたもの、あるいはその共重合ポリエステルを用いたフィルムが、基材フィルムとしての特性とコストとのバランス点で好適である。
【0017】
なお、上記のポリエステルは、従来公知の方法で、例えばジカルボン酸とジオールとの反応で直接低重合度ポリエステルを得るか、ジカルボン酸の低級アルキルエステルとジオールとを従来公知のエステル交換触媒で反応させた後、重合触媒の存在下で重合を行う方法で得ることができる。重合触媒としては、アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物、チタン化合物、アルミニウム化合物、鉄化合物等公知の触媒を使用してよいが、アンチモン化合物の量をゼロまたはアンチモンとして100ppm以下とすることにより、フィルムのくすみを低減させる方法も好ましく用いることができる。またこれらの重合は、溶融状態で所望の重合度まで重合することも可能であるし、固相重合を併用することもできる。
特にポリエステルに含まれるオリゴマーの量を減らすためには、固相重合を併用することが好ましい。
【0018】
ポリエステルフィルムに用いるポリエステルの固有粘度は、0.40〜0.90dl/g、さらには0.45〜0.85dl/gであることが好ましい。固有粘度が低すぎると、フィルムの機械的強度が低下する傾向にある。また、固有粘度が高すぎると、フィルムの製膜時における溶融押出工程での負荷が大きく、生産性が低下する傾向にある。
【0019】
本発明での二軸延伸フィルムの製膜方法としては、通常知られている逐次二軸延伸法や同時二軸延伸法を採用でき、特に制限はない。例えば逐次二軸延伸法の一例を挙げれば、まず溶融押出によって得られたシートを、ロール延伸法により、70〜145℃で2〜6倍に長手方向に延伸して、一軸延伸ポリエステルフィルムを得て、次いで、テンター内で先の延伸方向とは直角方向に80〜160℃で2〜6倍に延伸し、さらに、150〜250℃で1〜600秒間熱処理を行うことで二軸延伸フィルムが得られる。さらにこの際、熱処理のゾーンおよび/または熱処理出口のクーリングゾーンにおいて、縦方向および/または横方向に0.1〜20%弛緩する方法も好ましく用いることができる。
【0020】
本発明における二軸延伸ポリエステルフィルムは、2層以上のポリエステルが共押出法で積層された積層フィルムであってもよい。フィルムが3層以上の場合には、フィルムは2つの最表層と、それ自体が積層構成であってもよい中間層によって構成されるが、この2つの最表層の厚みは、各々、通常1μm以上、好ましくは2μm以上とし、一方で、フィルム総厚みの通常1/4以下、好ましくは1/10以下とすることができる。
【0021】
本発明における二軸延伸ポリエステルフィルムは、フィラーをあえて添加しないで透明性を高めることも可能であるし、フィルムとしての滑り性の確保や、製膜工程や後加工での傷発生防止のために、フィラーとして無機微粒子あるいは有機微粒子をフィルム中に添加するか、あるいは析出させることも可能である。フィルム中にフィラーを添加しない場合には、後述する塗布層中に微粒子を添加することで、フィルムの滑り性を確保や傷防止を図ることができる。
【0022】
ポリエステルフィルム中に添加するフィラーとしては特に限定されるものではないが、例示するならば、酸化ケイ素、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、アルミナなどの無機微粒子、あるいは架橋アクリル樹脂、架橋ポリスチレン樹脂などの架橋有機高分子微粒子を挙げることができる。これらのなかでも、高度な透明性を得るために、屈折率が比較的ポリエステルに近く、二軸延伸ポリエステルフィルム中でのボイド形成が少ない、無定形シリカ粒子を使用することが好ましい。これらの微粒子は、平均粒径として通常0.02〜5μmの範囲のものを、一種あるいは二種以上を併用して用いることができる。またその添加量は、通常0.0005〜1.0重量%の範囲である。
【0023】
これらの微粒子は、ポリエステルフィルムが単層構成である場合には、フィルム全体に添加されるが、ポリエステルフィルムが3層以上の積層構成である場合には、中間層には微粒子を添加せずに、両表層だけに微粒子を添加することで、ポリエステルフィルムの透明性を維持しつつ、しかも滑り性を確保することが容易となるため好ましい。特にフィルム厚みが厚い場合(例えば100μm以上)には、両表層だけに微粒子を添加することが有効である。
【0024】
また、フィルム加工中の熱履歴などにより、ポリエステルフィルム中に含有しているオリゴマーがフィルムの表面に析出し、これが異物となったりフィルムの透明性を悪化させたりすることを防ぐため、低オリゴマー化したポリエステルを用いることが可能である。
オリゴマー量を低減したポリエステルとしては、前述した固相重合を併用して重合したポリエステル、あるいは熱水処理や水蒸気処理を用いたポリエステル等を用いることができる。フィルムが単層構成の場合にはフィルム全体に用い、フィルムは多層構造の場合には、両表層だけに低オリゴマー化したポリエステルを用いることもできる。
【0025】
さらに、本発明における二軸延伸ポリエステルフィルム中には、上記の微粒子以外に必要に応じて従来から公知の酸化防止剤、熱安定剤、潤滑剤、蛍光増白剤、染料、顔料、紫外線吸収剤、近赤外線吸収剤等の1種あるいは2種以上の添加剤を添加することができる。これらの添加剤は、ポリエステルフィルムが3層以上の積層構成であってその中間層に添加することが、フィルム表面に添加剤が析出するのを防ぐことができる点で好ましい。
【0026】
本発明における二軸延伸ポリエステルフィルムの厚みは特に限定されるわけではないが、通常35〜350μm、特に50〜250μmの範囲であることが好ましい。
【0027】
本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムは、少なくとも片面に、下記成分a1)、a2)を構成単位として含むポリウレタン樹脂(A)とカチオン性高分子帯電防止剤(B)とを含有する塗布層を有することが必要である。
【0028】
a1)ポリカーボネートポリオール
a2)分子中に3級アミノ基を有する鎖延長剤の3級アミノ基を4級化した化合物
【0029】
本発明のポリウレタン樹脂(A)は、ポリオールとしてポリカーボネート単位を含むことが必要である。ポリカーボネートポリオールを含むポリウレタン樹脂を用いることで、特に無溶剤型の電離放射線硬化樹脂で構成されたレンズ層等との接着性および耐湿熱接着性が良好となる。この理由は定かではないが、無溶剤型のレンズ層との接着には、溶剤による塗布層への浸透・膨潤効果が低いと推定されるため、ポリウレタン樹脂のソフトセグメントを構成するポリオール部には、十分な柔軟性と極性を有する官能基とを合わせ持つことが接着性の向上に寄与すると推測され、加えて湿熱条件下においても耐加水分解性に優れていることが理由で、ポリカーボネートポリオールがその両者に適していると推測している。
【0030】
本発明のポリウレタン樹脂(A)で使用するa1)は、例えばジエチルカーボネートなどの低級ジアルキレンカーボネートや、あるいはジフェニルカーボネートなどの炭酸エステルと、ジオールとのエステル交換反応を用いるか、ジオールに直接ホスゲンを反応させることで得られるものが挙げられる。本発明では、ジオールとして、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3,3−ジメチロールヘプタン等を用いたポリカーボネートポリオールを使用することができる。これらのポリカーボネートポリオールのなかでも、ジオールとして1,6−ヘキサンジオールを用いたものが、特に無溶剤型の電離放射線硬化樹脂で構成されたレンズ層との接着性が良好であり、しかも工業的に入手しやすい点で好ましい。
【0031】
また、上記のポリカーボネートジオールは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の数平均分子量で、300〜4000であることが好ましい。さらに、これらのポリカーボネートポリオールの添加量は、ポリウレタン樹脂(A)に対して40〜80重量%の範囲で選ぶことができる。
【0032】
本発明のポリウレタン樹脂(A)で使用するポリイソシアネートには、公知の脂肪族、脂環族、芳香族等のポリイソシアネートを挙げることができる。
【0033】
脂肪族ポリイソシアネートの具体例として、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、1,4−ブタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート、3−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート等を挙げることができる。
【0034】
脂環族ポリイソシアネートの具体例としては、例えば、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、4,4’−シクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等を挙げることができる。
【0035】
芳香族ポリイソシアネートの具体例としては、例えば、トリレンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4’−ジベンジルジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0036】
またこれらのポリイソシアネートは単独で使用してもよいが、2種以上混合して使用することもできる。
【0037】
上記のポリイソシアネートの中でも、ポリイソシアネートが脂環族である場合には、特に無溶剤型の電離放射線硬化樹脂で構成されたレンズ層等との接着性が良好となるため、好ましい。この理由は定かではないが、レンズ層との接着のためには、ポリウレタン樹脂はある程度の柔らかさが必要であり、かつ耐湿熱接着性を向上させるためには、逆にポリウレタン樹脂にはある程度の硬さが必要となり、脂環族ポリイソシアネートはこの両者の中間的な特徴を有し、両者のバランスが良好になるものと推定している。
【0038】
本発明で用いるポリウレタン樹脂(A)は、接着性の向上のため、上記のa1(ポリカーボネートポリオール)と共に、ポリオール成分としてポリオキシアルキレングリコールを共存させることができる。ポリウレタン(A)に含有させるポリオキシアルキレングリコールの具体例としては、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシブタンジオール、ポリオキシエチレングリコール−ポリオキシプロピレングリコールブロック共重合体等を挙げることができる。
【0039】
またこれらのポリオキシアルキレングリコールの分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリオキシエチレングリコール換算の数平均分子量で、200〜3000であることが好ましい。さらに、これらのポリオキシアルキレングリコールの添加量は、ポリウレタン樹脂(A)に対して3〜10重量%の範囲で選ぶことができる。
【0040】
本発明においては、ポリウレタン樹脂(A)は、a2(分子中に3級アミノ基を有する鎖延長剤の3級アミノ基を4級化した化合物)を構成単位として含むことが必要である。これによりポリウレタン樹脂(A)は自己乳化性となり、特に乳化剤を添加しなくとも、水を主体とする媒体中で安定した分散体となすことが可能となる。また、ポリウレタン樹脂(A)は、後述するカチオン性高分子帯電防止剤(B)と同じカチオン性高分子であるので、両者を混合しても、分子間のイオン凝集が発生しない。
【0041】
本発明のポリウレタン樹脂(A)で使用する鎖延長剤としては、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン等のN−アルキルジアルカノールアミン、N−メチルジアミノエチルアミン、N−エチルジアミノエチルアミン等のN−アルキルジアミノアルキルアミン、トリエタノールアミン等を挙げることができる。これらの3級アミノ基を有する鎖延長剤は単独または2種以上併用して用いることができる。また、これらの鎖延長剤の添加量は、ポリウレタン樹脂(A)に対して5〜15重量%の範囲から選ぶことができる。
【0042】
本発明においては、上記ポリウレタン樹脂に導入された上記3級アミノ基を有する鎖延長剤を、酸で中和するか、あるいは4級化剤で4級化した化合物を含むカチオン性ポリウレタン樹脂とする必要がある。3級アミノ基を酸で中和する場合には、酸として、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、リンゴ酸、マロン酸、アジピン酸等の有機酸、および塩酸、燐酸、硝酸等の無機酸を挙げることができる。これらの酸は単独または2種以上併用して用いることができる。また、3級アミノ基を4級化剤で4級化する場合には、4級化剤として、ベンジルクロライド、メチルクロライド等のハロゲン化アルキル、硫酸ジメチル、硫酸ジエチル等の硫酸エステル等を挙げることができる。これらの4級化剤は単独または2種以上併用して用いることができる。
【0043】
本発明で用いるポリウレタン樹脂(A)は、ポリイソシアネートとポリカーボネートポリオールと分子中に3級アミノ基を有する鎖延長剤を添加して反応させた後、4級化させることで得られるが、初めから4級化された化合物を鎖延長剤として反応させることもできる。
【0044】
本発明における二軸延伸ポリエステルフィルムは、その少なくとも片面に有する塗布層にカチオン性高分子帯電防止剤(B)を含むことが必要である。
【0045】
前述したように、ポリウレタン樹脂(A)とカチオン性高分子帯電防止剤(B)とは、同じカチオン性高分子であるので、両者を混合した塗布剤には、分子間のイオン凝集が発生しない。また帯電防止剤としてカチオン性高分子を用いるので、アニオン性やノニオン性の帯電防止剤よりも良好な帯電防止性能や、フィルム延伸後の塗膜の透明性を得やすい点で好ましい。また低分子帯電防止剤でしばしば問題となる転着現象も生じることはない。
【0046】
本発明で用いるカチオン性高分子帯電防止剤(B)は、4級化された窒素を含むユニットを繰り返し単位として含有するポリマーが好適であるが、特に下記式(I)または(II)式で示される主鎖にピロリジニウム環を有するユニットを主たる繰り返し単位として含有するカチオンポリマーであることが、優れた帯電防止性能が得られる点で好ましい。
【0047】
【化1】

【0048】
【化2】

【0049】
上記(I)式あるいは(II)式の構造において、R、Rは、炭素数が1〜4のアルキル基もしくは水素であることが好ましく、これらは同一基でもよいし異なっていてもよい。またR、Rのアルキル基は、ヒドロキシル基、アミド基、アミノ基、エーテル基で置換されていてもよい。さらに、RとRとが化学的に結合していて、環構造を有するものであってもよい。また、(I)式あるいは(II)式のXは、ハロゲンイオン、硝酸イオン、メタンスルホン酸イオン、エタンスルホン酸イオン、モノメチル硫酸イオン、モノエチル硫酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、トリクロロ酢酸イオンの何れかである。
【0050】
上述の、主鎖にピロリジニウム環を有するユニットを主たる繰り返し単位として含有するカチオンポリマーの中でも、特に(I)式の構造で、Xが塩素イオンである場合には、帯電防止性能が優れると同時に、帯電防止性能の湿度依存性が小さく、低湿度下でも帯電防止性能の低下が少なくなる点で好ましい。また、帯電性易接着にハロゲンイオンを使用できない場合においては、塩素イオンの代わりにメタンスルホン酸あるいはモノメチル硫酸イオンを使用することで、塩素イオンの場合に近い帯電防止性能を得ることができる。
【0051】
(I)式のユニットを繰り返し単位とするポリマーは、次の(III)式で示されるジアリルアンモニウム塩を単量体として、水を主とする媒体中で、ラジカル重合で閉環させながら重合することで得られる。また、(II)式のユニットを繰り返し単位とするポリマーは、(III)式の単量体を、二酸化硫黄を媒体とする系で環化重合させることにより得られる。
【0052】
【化3】

【0053】
また、(I)式または(II)式に示すユニットを繰り返し単位とするポリマーは、単一のユニットから構成されるホモポリマーである場合が、より良好な帯電防止性能を得ることができるが、後述するように、カチオンポリマーを含む塗布液をポリエステルフィルムに塗布した後に、さらにポリエステルフィルムを延伸する場合に、塗布層の透明性を改善するために、(I)式または(II)式で示されるユニットの0.1〜50モル%が、共重合可能な他の成分で置き換えられてもよい。
【0054】
共重合成分として用いる単量体成分としては、(III)式のジアリルアンモニウム塩と共重合可能な炭素−炭素不飽和結合を有する化合物を1種あるいは2種以上を選ぶことが
できる。
【0055】
これらは具体的には、アクリル酸およびその塩、メタクリル酸およびその塩、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、マレイン酸およびその塩あるいは無水マレイン酸、フマル酸およびその塩あるいは無水フマル酸、モノアリルアミンおよびその4級化物、アクリルニトリル、酢酸ビニル、スチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシエチルジアルキルアミンおよびその4級化物、(メタ)アクリロイルオキシプロピルジアルキルアミンおよびその4級化物、(メタ)アクリロイルアミノエチルジアルキルアミンおよびその4級化物、(メタ)アクリロイルアミノプロピルジアルキルアミンおよびその4級化物などを例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0056】
本発明の塗布層中のカチオン性高分子帯電防止剤(B)は、上記(I)または(II)式で示される主鎖にピロリジニウム環を繰り返し単位として含有するカチオンポリマーの代わりに、例えば(IV)式または(V)式で示されるユニットを繰り返し単位とするカチオンポリマーであってもよい。
【0057】
【化4】

【0058】
【化5】

【0059】
(IV)式あるいは(V)式の構造において、R、Rはそれぞれ水素またはメチル基であり、R、Rは、それぞれが炭素数2〜6のアルキル基であることが好ましく、またR、R、R、R10、R11、R12はメチル基あるいはヒドロキシエチル基もしくは水素であり、これらは同一基でもよいし異なっていてもよい。さらに(IV)式あるいは(V)式のXは、ハロゲンイオン、硝酸イオン、メタンスルホン酸イオン、エタンスルホン酸イオン、モノメチル硫酸イオン、モノエチル硫酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、トリクロロ酢酸イオンの何れかである。
【0060】
(IV)式あるいは(V)式で示されるユニットを繰り返し単位とするカチオンポリマーは、例えば、それぞれのユニットが対応するアクリル酸モノマーまたはメタクリル酸モノマーを、水を主とする媒体中でラジカル重合することで得ることができるが、これに限定されるわけではない。
【0061】
本発明で用いるカチオンポリマーの平均分子量(数平均分子量)は、通常1000〜500000、さらには5000〜100000の範囲であることが好ましい。平均分子量が1000未満であると、フィルムを巻き取った時に重なり合う面にカチオンポリマーが転着したり、ブロッキングしたりするなどの原因となり、逆に平均分子量が500000を超えると、これを含む塗布液の粘度が高くなり、フィルム面に均一に塗布することが困難となることがある。
【0062】
本発明における二軸延伸ポリエステルフィルムの塗布層は、前述のポリウレタン樹脂(A)と、カチオン性高分子帯電防止剤(B)とを含有することが必要であるが、その重量比(A)/(B)は、40/60〜90/10の範囲が好ましく、さらに好ましくは50/50〜80/20の範囲である。重量比(A)/(B)が40/60よりも小さい場合には、塗布層の帯電防止効果は十分であるが、レンズ層などの接着性が不十分となる傾向にある。一方で90/10よりも大きい場合には、塗布層の接着性は十分であるが、帯電防止効果が不十分となる傾向にある。
【0063】
また、塗布層中のポリウレタン樹脂(A)とカチオン性高分子帯電防止剤(B)との重量合計は、通常50重量%以上、好ましくは70重量%以上であり、最大で100%であってもよい。
【0064】
本発明における二軸延伸ポリエステルフィルムの塗布層は、前述のポリウレタン樹脂(A)およびカチオン性高分子帯電防止剤(B)の他に、塗膜の耐熱性や耐湿性、耐ブロッキング性の向上などを目的として、架橋剤を添加することができる。この架橋剤には、メチロール化あるいはアルコキシメチロール化したメラミン系化合物やベンゾグアナミン系化合物、もしくは尿素系化合物、もしくはアクリルアミド系化合物の他、エポキシ系化合物、イソシアネート系化合物、カルボジイミド系化合物、オキサゾリン系化合物、シランカップリング剤系化合物、チタンカップリング剤系化合物などから選ばれた少なくとも1種類を含有させることが好ましい。これらの架橋剤の添加量は、塗布層全体に対して通常1〜50重量%、好ましくは3〜40重量%の割合とすることができる。
【0065】
本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムは、塗布層表面の滑り性の付与や耐ブロッキング性の向上を目的として、無機や有機の微粒子を添加することができる。この微粒子としては、シリカ、アルミナ、酸化チタン、シリカ−アルミナ複合体、シリカ−酸化チタン複合体、架橋アクリル樹脂、架橋ポリスチレン樹脂などの微粒子、あるいは酸化スズ、インジウム−スズ複合酸化物微粒子、アンチモン−スズ複合酸化物微粒子などの導電性微粒子から選ばれた少なくとも1種以上を含有させることが好ましい。添加する微粒子は、平均粒子径が5〜200nmであることが好ましく、その添加量も塗布層全体に対して10重量%以下であることが好ましい。
【0066】
本発明における二軸延伸ポリエステルフィルムの塗布層には、界面活性剤を添加することができる。この界面活性剤には、塗布液のヌレ性の改善を目的に、アルキレンオキサイド付加重合物で置換されたアセチレグリコール誘導体などのノニオン系界面活性剤を好ましく用いることができる。また、フィルムと共に塗布層が延伸される工程での塗布層の透明性の維持を目的として、グリセリンのポリアルキレンオキサイド付加物、あるいはポリグリセリンのポリアルキレンオキサイド付加物などを用いることができる。
【0067】
その他塗布層には、必要に応じて上記で述べた成分以外に、例えば、消泡剤、増粘剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、発泡剤、染料、顔料等を添加することもできる。これらの添加剤は単独で用いてもよいが、必要に応じて二種以上を併用してもよい。
【0068】
また本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムの塗布層には、ポリウレタン樹脂(A)を含むことが必要だが、これ以外のバインダー樹脂として、例えばポリエステル樹脂、アクリル樹脂、(A)以外のポリウレタン樹脂等を、本発明の効果を損なわない範囲で共存させることもできる。
【0069】
本発明における二軸延伸ポリエステルフィルムの塗布層は、その塗工量としては、乾燥・固化された後の、あるいは二軸延伸・熱固定等を施された後の最終的な乾燥皮膜として、0.005〜1.0g/m、さらには0.01〜0.5g/mの範囲とするのが好ましい。この塗工量が0.005g/m未満では、帯電防止性能や接着性が不十分となることがあり、1.0g/mを超える場合には、もはや帯電防止性能や接着性は飽和しており、逆にブロッキングの発生等の弊害が発生しやすくなる傾向がある。
【0070】
本発明における二軸延伸ポリエステルフィルムの塗布層は、通常、主として水を媒体とした塗布液としてポリエステルフィルム上に塗工される。塗工されるポリエステルフィルムは、予め二軸延伸されたものでもよいが、塗工した後に少なくとも一方向に延伸され、さらに熱固定をする、いわゆるインラインコーティング法を用いることが好ましい。インラインコーティング法によれば、通常200℃以上の高温でポリエステルフィルムと塗布層が同時に熱固定されるため、塗布層の熱架橋反応が十分に進行すると共に、ポリエステルフィルムとの密着性がさらに向上する。
【0071】
また塗布液は、その保存安定性の向上、あるいは塗布性や塗布膜特性の改善を目的に、水以外に、通常10重量%以下の量で水との相溶性のある有機溶剤の1種または2種以上を加えることが可能である。この有機溶剤としては、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、グリセリン等のアルコール類、エチルセルソルブ、t−ブチルセルソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラハイドロフラン等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ジメチルエタノールアミン、トリメタノールアミン等のアミン類、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類等を例示することができる。
【0072】
ポリエステルフィルムに塗布液を塗布する方法としては、例えば、原崎勇次著、槙書店、1979年発行、「コーティング方式」に示されるような塗布技術を用いることができる。具体的には、エアドクターコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、含浸コーター、リバースロールコーター、トランスファロールコーター、グラビアコーター、キスロールコーター、キャストコーター、スプレイコーター、カーテンコーター、カレンダコーター、押出コーター、バーコーター等のような技術が挙げられる。
【0073】
なお、塗布剤のフィルムへの塗布性、接着性を改良するため、塗布前にフィルムに化学処理やコロナ放電処理、プラズマ処理等を施してもよい。
【0074】
本発明の上記塗布層の表面固有抵抗値は、通常1×1012Ω以下、好ましくは1×1011Ω以下、さらに好ましくは1×1010Ω以下であり、下限は特に限定されないが、通常1×10Ωである。表面固有抵抗値が1×1012Ωを超える場合には、塗布層上にさらに積層したレンズ層や光拡散層などの機能層の表面にも、帯電防止性能を有効に発揮させることができないことある。
【0075】
本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムの塗布層面上には、公知の光拡散層やレンズ層などの光学機能層を好ましく設けることができる。この場合には、二軸延伸ポリエステルフィルムを基材フィルムとして、その両面に本発明で用いた塗布層を有するものを好ましく用いることができる。そして、基材フィルムの両面に光拡散層やレンズ層を設けてもよいし、片面に光拡散層を設け反対面にレンズ層を設けてもよい。また、二軸延伸フィルムの片面には本発明の塗布層を設けて、その反対面には他の塗布層を設けることも可能である。
【0076】
またこれらの他に、赤外線吸収層などの光学機能層やハードコート層、写真感光層や粘着剤層などの合成樹脂バインダーを含む機能層や、酸化金属等の蒸着膜などを、本発明の二軸延伸ポリエステルフィルム塗布層面上に設けることも可能である。
【発明の効果】
【0077】
本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムは、接着性と帯電防止性を高度に併せ持っているため、例えば拡散板やレンズシートなどの光学部材の基材フィルムとして用いた場合には、塗布層の帯電防止性に優れており、かつレンズ層として用いられる無溶剤系電離放射線硬化樹脂に対しても、十分な接着性を得られるものである。さらに、この帯電防止易接着層上に設けられた光拡散層やレンズ層の表面有抵抗値が低くなり、保護用に被着したEVAシートの剥離時にも静電気の発生が低減されるため、本発明の工業的価値は高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0078】
以下、本発明の構成および効果を実施例により具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、種々の諸物性、特性は以下のように測定、または定義されたものである。また、特にことわりのない限り、「部」とあるのは「重量部」を表す。
【0079】
(1)ポリエステルの固有粘度の測定
ポリエステル1gを精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合溶媒100mlを加えて溶解させ、30℃で測定した。
【0080】
(2)ポリエステルフィルムに用いるフィラー(微粒子)の平均子粒径(d50:μm)
遠心沈降式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所社製SA−CP3型)を使用して測定した等価球形分布における積算(重量基準)50%の値を平均子粒径とした。
【0081】
(3)塗布層に用いる微粒子の平均粒子径(nm)
微粒子の分散液を、マイクロトラックUPA(日機装社製)にて、個数平均の50%平均径を測定して、これを平均粒子径(nm)とした。
【0082】
(4)表面固有抵抗値(Ω)
日本ヒューレット・パッカード社製高抵抗測定器 HP4339B、および測定電極 HP16008Bを使用し、23℃、50%RHの測定雰囲気下で、印加電圧100Vで1分後の塗布層の表面固有抵抗値(Ω)を測定した。
【0083】
(5)フィルムヘーズ(%)
JIS K7136に準じて、ヘーズ測定装置(村上色彩技術研究所製HAZE METER HM−150)を使用して、フィルムヘーズ(%)を測定した。
【0084】
(6)光拡散層の形成
作成した二軸延伸ポリエステルフィルムの一方の塗布層表面に、下記に示す光拡散層形成用の塗布液を、フィルムの片面に乾燥・硬化後の塗布量で7g/mになるようにリバースグラビア方式で塗布した。その後、100℃で2分間乾燥および硬化をさせて光拡散層を作成した。
【0085】
<光拡散層形成用塗布液の組成>
アクリル樹脂(三菱レイヨン社製 商品名TF−8):20重量部
メチルエチルケトン:40重量部
トルエン:40重量部
シリコーン樹脂微粒子(GE東芝シリコーン社製 商品名トスパール130):5.4重量部
【0086】
(7)光拡散層との常態(23℃、50%RH)接着性
上記(6)で作成した光拡散層に、基材フィルムに達する碁盤目のクロスカット(2mmの升目を25個)を施し、その上に18mm幅のテープ(ニチバン株式会社製セロテープ(登録商標)CT−18)を貼り付け、180度の剥離角度で急速にはがした後、剥離面を観察して、升目25個中の剥離個数を数えて、次の基準のランクに分類した。なお、○以上が実用限界である。
◎:剥離個数が0個
○:剥離個数が1個以上5個未満
△:剥離面積が5個以上10個未満
×:剥離面積が10個以上
【0087】
(8)光拡散層との耐湿熱接着性(60℃、95%RH)
上記(6)で作成した拡散層を有するポリエステルフィルムを、60℃、95%RHの環境下1000時間処理した。このポリエステルフィルムを常態環境(23℃、50%RH)で24時間放置した後、(7)と同様に常態接着性を評価した。(○以上が実用限界である)
【0088】
(9)レンズ層の形成
プリズム型のレンズ(50μmピッチ、頂角65°)の逆形状が形成されたレンズ層成型用金型ロールと、これに対向するゴムロールとの間に、前記(6)項で作成した片面に拡散層が付与されたポリエステルフィルムを導き、拡散層とは反対側の塗布層面が金型ロールに接するようにしてニップした。そして金型ロールと塗布層面とが接触する部分に、下記の無溶剤系紫外線硬化樹脂組成物を供給して、金型ロールを回転させた。こうしてポリエステルフィルムの片方の塗布層面に、レンズ層を成型すると同時に、レンズ層とは反対側(拡散層側)から、高圧水銀ランプ(160W/cm)2灯を10cmの位置より紫外線照射した。(この際にPETフィルム表面に照射される紫外線の照射量は500mj/cmであった。)紫外線照射によりレンズ層を構成する樹脂を重合硬化させた後、金型ロールから剥がして、レンズ層を作成した。
【0089】
<レンズ層形成用塗布液の組成>
フェノキシエチルアクリレート(大阪有機化学工業社製 商品名 ビスコート#192):50重量部
ビスフェノールA−ジエポキシ−アクリレート(共栄社油脂化学工業社製 商品名 エポキシエステル3000A):50重量部
2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(チバガイギー社製 商品名 ダロキュア1173):1.5重量部
【0090】
(10)レンズ層との常態接着性(23℃、50%RH)
上記(9)のレンズ層に、基材フィルムまで達する碁盤目のクロスカット(2mmの升目を25個)を施し、その上に18mmのテープ(ニチバン株式会社製セロテープ(登録商標)CT−18)を貼り付け、180度の剥離角度で急速に剥がした後、剥離面を観察して、升目25個中の剥離個数を数えて、次の基準のランクに分類する。なお、○以上が実用限界である。
◎:剥離個数が0個
○:剥離個数が1個以上5個未満
△:剥離面積が5個以上10個未満
×:剥離面積が10個以上
【0091】
(11)レンズ層との耐湿熱接着性(60℃、95%RH)
上記(9)で作成したレンズ層を有するポリエステルフィルムを、60℃、95%RHの環境下1000時間処理した。このポリエステルフィルムを常態環境(23℃、50%RH)で24時間放置した後、(10)と同様に常態接着性を評価した。(△以上が実用限界である)
【0092】
(12)EVAとの剥離帯電テスト
拡散層とレンズ層との両方に、EVAシートを圧着して保護したシートを、23℃、50%RHの環境下で、重さ1.88kgのゴムローラーで被着していたEVAシートの上を10往復転がした。この後ゴムローラーを転がした方のEVAシートを、500mm/分のスピードで剥がした。剥がした直後の拡散層あるいはレンズ層を、穴あけパンチでくりぬいたコピー用紙の小片(直径約5mm)を少量散らした机上に3cmの距離に近づけて、コピー紙の小片を吸い寄せる様子を観察し、下記の基準で剥離帯電の強さを評価した。
○:コピー紙の小片を全く吸い寄せない
△:コピー紙の小片を極僅かに吸い寄せる
×:コピー紙の小片を多く吸い寄せる
【0093】
以下の実施例および比較例において使用したポリエステルは、次のようにして準備したものである。
<ポリエステル(1)の製造方法>
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部とを出発原料とし、触媒として酢酸マグネシウム・四水塩0.09重量部を反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とした。4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた。この反応混合物にエチルアシッドフォスフェート0.04部を添加した後、エチレングリコール溶液とした酸化ゲルマニウムを、ゲルマニウム金属としてポリマー中100ppmとなるように加えて、4時間重縮合反応を行った。すなわち、温度を230℃から徐々に昇温し280℃とした。
一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとした。反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、極限粘度0.65に相当する時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させた。得られたポリエステル(1)の極限粘度は0.65であった。
【0094】
<ポリエステル(2)の製造方法>
ポリエステル(1)を、あらかじめ160℃で予備結晶化させた後、温度220℃の窒素雰囲気下で固相重合し、極限粘度0.75ポリエステル(2)を得た。
【0095】
<ポリエステル(3)の製造方法>
ポリエステル(1)の製造方法において、エチルアシッドフォスフェート0.04部を添加後、平均粒子径2.2μmのエチレングリコールに分散させた無定形シリカ粒子を0.2部、エチレングリコール溶液とした酸化ゲルマニウムを、ゲルマニウム金属としてポリマー中100ppmとなるように加えて、極限粘度0.65に相当する時点で重縮合反応を停止した以外は、ポリエステル(1)の製造方法と同様の方法を用いてポリエステル(3)を得た。得られたポリエステル(3)は、極限粘度0.65であった。
【0096】
実施例1〜6および比較例1〜4:
ポリエステル(2)、(3)をそれぞれ90%、10%の割合で混合した混合原料を最外層(表層)の原料とし、ポリエステル(1)を中間層の原料として、2台の押出機に各々を供給し、各々285℃で溶融した後、40℃に設定した冷却ロール上に、2種3層(表層/中間層/表層)の層構成で共押出しした後、冷却・固化させて未延伸シートを得た。次いで、ロール周速差を利用してフィルム温度85℃で縦方向に3.3倍延伸した。この縦延伸フィルムの両表面に、別表の水性塗布液を各々バーコート方式で塗布した。この後テンターに導き、120℃で乾燥・予熱を行って幅方向に3.8倍延伸し、さらに220℃で熱処理を行った後、180℃の冷却ゾーンで幅方向に4%弛緩し、表裏に各々異なる組成の塗布層を有する厚さ188μm(表層各4μm、中間層180μm)の積層ポリエステルフィルムを得た。
【0097】
次に、ポリエステルフィルムの片方の塗布層上に、各々拡散層を塗工した。次いで拡散層とは反対面にある塗布層にレンズ層を塗工した。こうして片面拡散層、片面レンズ層が塗工された積層ポリエステルフィルムの表裏を、EVAシート(厚み50μm)で挟むように重ねて、これをニップロールで圧着し、拡散層表面とレンズ層表面の両方に被着させた。
【0098】
下記表1に、各々のフィルムに用いた塗布層の組成、および塗布層を有する二軸延伸ポリエステルフィルムの評価結果を示す。
【0099】
比較例5:
実施例1において、ポリウレタン樹脂A1の代わりに、ポリカーボネートポリオール構造を有するアニオン系水性ポリウレタン(三井化学ポリウレタン社製 商品名 タケラック W−6010)を用いて塗布液を配合した。塗布液は直ちに沈殿が発生してしまい、フィルムに塗布することができなかった。
【0100】
下記の表1中、各塗布層を構成する化合物は以下のとおりである。
・ポリウレタン樹脂A1:
1,6−ヘキサンジオールとジエチルカーボネートとの反応により得られるポリカーボネートポリオール(GCPでの数平均分子量約1000)を76.7重量部と、ポリエチレングリコール(第一工業製薬社製、商品名PEG600、分子量600)を6.4重量部と、トリメチロールプロパンを2.0重量部と、N−メチル−N,N−ジエタノールアミンを19.9重量部と、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを84.0重量部と、MEK87重量部を反応容器に取り、70〜75℃で反応を行い、ウレタンプレポリマーを得た。このウレタンプレポリマーにジメチル硫酸を16.8重量部添加し、50〜60℃で反応させて、カチオン性ウレタンポリマーを得た。これに水623重量部を添加して乳化させた後、MEKを回収することにより、ポリウレタン樹脂3の水分散体を得た。
【0101】
・ポリウレタン樹脂A2:
1,6−ヘキサンジオールとジエチルカーボネートとの反応により得られるポリカーボネートポリオール(GCPでの数平均分子量約1000)を76.7重量部と、ポリエチレングリコール(第一工業製薬社製、商品名PEG600、分子量600)を6.4重量部と、トリメチロールプロパンを2.0重量部と、N−メチル−N,N−ジエタノールアミンを19.9重量部と、ヘキサメチレンジイソシアネートを57.7重量部と、MEK87重量部を反応容器に取り、70〜75℃で反応を行い、ウレタンプレポリマーを得た。このウレタンプレポリマーにジメチル硫酸を16.8重量部添加し、50〜60℃で反応させて、カチオン性ウレタンポリマーを得た。これに水623重量部を添加して乳化させた後、MEKを回収することにより、ポリウレタン樹脂3の水分散体を得た。
【0102】
・ポリウレタン樹脂A3:
1,6−ヘキサンジオールとジエチルカーボネートとの反応により得られるポリカーボネートポリオール(GCPでの数平均分子量約分子量1000)を78.0重量部と、ポリエチレングリコール(第一工業製薬社製、商品名PEG600、分子量600)を4.6重量部と、トリメチロールプロパンを1.9重量部と、N−メチル−N,N−ジエタノールアミンを9.1重量部と、イソホロンジイソシアネートを49.0重量部と、MEK70重量部を反応容器に取り、70〜75℃で反応を行い、ウレタンプレポリマーを得た。得られたウレタンプレポリマーにジメチル硫酸を9.2重量部添加し、50〜60℃で反応させて、カチオン性ウレタンプレポリマーを得た。これに水353重量部を添加して乳化した後、MEKを回収することにより、ポリウレタン樹脂2の水分散体を得た。
【0103】
・ポリウレタン樹脂A4:
1,6−ヘキサンジオールとジエチルカーボネートとの反応により得られるポリカーボネートポリオール(GCPでの数平均分子量約1000)を76.7重量部と、ポリエチレングリコール(第一工業製薬社製、商品名PEG600、分子量600)を6.4重量部と、トリメチロールプロパンを2.0重量部と、N−メチル−N,N−ジエタノールアミンを19.9重量部と、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートを86.7重量部と、MEK87重量部を反応容器に取り、70〜75℃で反応を行い、ウレタンプレポリマーを得た。このウレタンプレポリマーにジメチル硫酸を16.8重量部添加し、50〜60℃で反応させて、カチオン性ウレタンポリマーを得た。これに水623重量部を添加して乳化させた後、MEKを回収することにより、ポリウレタン樹脂3の水分散体を得た。
【0104】
・ポリウレタン樹脂A5:
ポリテトラメチレングリコール(三菱化学社製、商品名PTMG1000、分子量1000)を300重量部と、ポリエチレングリコール(第一工業製薬社製、商品名PEG600、分子量600)を6.0重量部と、トリメチロールプロパンを2.5重量部と、N−メチル−N,N−ジエタノールアミンを16.0重量部と、イソホロンジイソシアネートを71.7重量部と、MEK89重量部を反応容器に取り、70〜75℃で反応を行い、ウレタンプレポリマーを得た。このウレタンプレポリマーにジメチル硫酸13.4重量部を添加し、50〜60℃で反応させて、カチオン性ウレタンポリマーを得た。これに水457重量部を添加して乳化した後、MEKを回収することにより、ポリウレタン樹脂4の水分散体を得た。
【0105】
・アクリルバインダーAc:水性アクリル樹脂(日本カーバイド工業社製 商品名ニカゾール 酸価6mgKOH/g)
【0106】
・カチオン性高分子帯電防止剤B1:ジアリルジメチルアンモニウムクロライドを用いた4級アンモニウム塩含有カチオンポリマー ((I)式のピロリジニウム環含有ポリマー)平均分子量約30000
【0107】
・カチオン性高分子帯電防止剤B2:ポリ(トリメチルアンモニウムエチルメタクリレート)モノメチル硫酸塩のホモポリマー ((V式)のカチオンポリマー)
【0108】
・架橋剤C1:2−イソプロペニル−2−オキサゾリンとアクリル系モノマーとの共重合ポリマー型架橋剤水溶液(日本触媒社製 商品名 エポクロスWS−500)、オキサゾリン基量=4.5mmol/g
【0109】
・架橋剤C2:メトキシメチロールメラミン(大日本インキ化学工業社製ベッカミンJ101)、官能基(メトキシメチロール基)量=18mmol/g
【0110】
・微粒子D:コロイダルシリカ微粒子(平均粒径0.07μm)
・添加剤E:ジグリセリン骨格へのポリエチレンオキサイド付加物(平均分子量450)
【0111】
【表1】

【0112】
(*注)(A)/(B)比率とは、塗布層中の「ポリウレタン樹脂(A)/カチオン性高分子帯電防止剤(B)」(重量比)を表す。
【0113】
【表2】

【0114】
実施例1〜6は、本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムの要件を満たしているので、拡散層およびレンズ層との接着性が、常態(23℃、50%RH)でも、湿熱下(60℃、95%RH)でも良好である。またそれと同時に、塗布層の表面固有抵抗値が低いため、保護用に被着したEVAシートの剥離時に静電気はほとんど発生しない。そのなかでも、塗布層のポリウレタン樹脂(A)に、脂環族のポリイソシアネートを使用した実施例3および4は、他のポリイソシアネートを使用した実施例1および2と比べて、レンズとの耐湿熱接着性に優れている。これに対して比較例1では、塗布層にポリカーボネートポリオールを含まないポリウレタン樹脂が用いられているため、拡散層やレンズ層との特に湿熱条件下での接着性が不十分である。比較例2では、塗布層が本発明のポリウレタン樹脂(A)を含まないため、やはり拡散層やレンズ層との特に耐湿熱下での接着性が不十分である。比較例3では、塗布層にポリウレタン樹脂(A)が存在しないため、拡散層やレンズ層との接着性を有さない。また比較例4では、塗布層にカチオン性高分子帯電防止剤(B)が存在しないので、帯電防止性能が不十分である。比較例5では、用いたポリウレタン樹脂が、分子中に3級アミノ基を有する鎖延長剤の3級アミノ基を4級化した化合物を含んでいないため、カチオン性高分子帯電防止剤との混合によりイオン凝集が生じて沈殿した。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムは、例えば、優れた接着性と帯電防止性を併せ持つことを必要とする用途に、好適に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子中に3級アミノ基を有する鎖延長剤の3級アミノ基を4級化した化合物とポリカーボネートポリオールとを構成成分単位として含むポリウレタン樹脂(A)とカチオン性高分子帯電防止剤(B)とを含有する塗布層を少なくともフィルムの片面に有することを特徴とする二軸延伸ポリエステルフィルム。

【公開番号】特開2010−89304(P2010−89304A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−259721(P2008−259721)
【出願日】平成20年10月6日(2008.10.6)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】