説明

二酸化炭素利用による熱生産方法、逐次発熱温度制御方法、熱生産システム、温度調節装置および融雪装置

【課題】COを積極的に利用して何らかの価値を生産し、かつCO消費にもなるような熱生産システムを提供すること。
【解決手段】伝熱性容器内において、もしくは外部との熱伝導可能な閉空間内において、消石灰に二酸化炭素および水を加えることによって、二酸化炭素を消費するとともに熱を生産する二酸化炭素利用による熱生産方法であって、該二酸化炭素として、廃棄物として産生され回収されたものを用いることを特徴とする、二酸化炭素利用による熱生産方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は二酸化炭素利用による熱生産方法、逐次発熱温度制御方法、熱生産システム、温度調節装置および融雪装置に係り、特に、二酸化炭素を有効に消費しつつ効率的に熱を生産できる、殊に逐次発熱を可能とする、二酸化炭素利用による熱生産方法、熱生産システム等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
産業界においても一般社会においても、熱の生産は未だに化石燃料等の燃焼により行われる場合が多い。燃焼による熱生産では、COの排出が避けられない。しかし、地球温暖化の危機意識が世界的に高まる中、CO排出をできる限り抑制するために、自然エネルギー利用に関する研究開発および実際の利用が活発になってきている。
【0003】
一方、排出されたCOの消費は、海洋および陸上の動植物、つまり海中の動植物による固定や、水陸両圏域の植物等が行う光合成による固定に頼る比率が大きく、消費量に比べて排出量が相当上回っているのが現状である。
【0004】
なお、COの分離・回収技術であれば、従来多くの技術的提案がなされてはいる。たとえば後掲特許文献1は、二酸化炭素を含んだガスから効率的に二酸化炭素のみを分離することを目的として、二酸化炭素を含んだガスを、冷却器によって設定された一定の温度および圧力雰囲気の下で、吸着部材と接触させ、ガスに含まれる二酸化炭素を吸着部材の表面に凝縮固定させることで、ガスから二酸化炭素を分離し、冷却器は、二酸化炭素吸着時には二酸化炭素の昇華点以下の熱を供給し、吸着した二酸化炭素の放出時には二酸化炭素の昇華点以上の熱を供給する、という二酸化炭素分離技術を開示するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−54928号公報「二酸化炭素分離方法及びその装置並びにシステム」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、CO排出量の減量はある程度は可能ではあるものの、これを無害消費することは、上述の通り自然界の動植物等にその多くを頼っており、世界的に、人間の生産活動全体におけるCOの利用は少ない現状である。もっとも、上述の特許文献開示技術がその一端を示すように、我が国の生産活動におけるCO回収・分離技術は比較的高水準を達成しているといえる。
【0007】
しかしそれでも、回収されたCOの処分は、大深度地下貯留等、大規模処分方法が実施研究中ではあるが、COの積極的な利用・消費については、未だに充分な検討が開始されていない。
【0008】
そこで本発明が解決しようとする課題は、COを積極的に利用して何らかの価値を生産し、かつCO消費にもなるような画期的な熱生産システム、熱生産方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明者は上記課題について鋭意検討した結果、生産活動により回収されたCOと、水酸化カルシウムCa(OH)とを接触反応させ、消化反応熱エネルギーを利用して、100℃程度もの反応熱を繰り返し発熱させて、熱エネルギーを取り出せることを見出した。しかも最高発熱温度を制御すれば、反応が安定化するまで相当長期間に亘って発熱させることができた。
【0010】
つまりこの現象は、発熱温度の制御およびCO量の制御等によって、CaCOとなって安定化するまでの長期間に亘り発熱を繰り返すことができる、ということである。このような研究によって上記課題を解決できることに想到し、本発明に至った。すなわち、上記課題を解決するための手段として本願で特許請求される発明、もしくは少なくとも開示される発明は、以下の通りである。
【0011】
(1) 伝熱性容器内において、もしくは外部との熱伝導可能な閉空間内において、消石灰に二酸化炭素および水を加えることによって、二酸化炭素を消費するとともに熱を生産する二酸化炭素利用による熱生産方法であって、該二酸化炭素として、廃棄物として産生され回収されたものを用いることを特徴とする、二酸化炭素利用による熱生産方法。
(2) 前記消石灰100重量部に対して、前記二酸化炭素を38重量部以上90重量部以下用いることを特徴とする、(1)に記載の二酸化炭素利用による熱生産方法。
(3) 前記消石灰100重量部に対して、前記水を1重量部以上10重量部以下用いることを特徴とする、(1)に記載の二酸化炭素利用による熱生産方法。
(4) 前記消石灰100重量部に対して、前記二酸化炭素を1回当たり1.0重量部以上27.5重量部以下用いることによって、熱生産を2回以上行えることを特徴とする、(1)に記載の二酸化炭素利用による熱生産方法。
(5) 前記消石灰100重量部に対して、前記二酸化炭素を1回当たり1.0重量部以上27.5重量部以下用い、10回以上の熱生産を行うことによって、熱生産最高発熱温度合計を770℃以上とすることが可能であることを特徴とする、(1)に記載の二酸化炭素利用による熱生産方法。
【0012】
(6) 前記消石灰100重量部に対して、前記二酸化炭素を1回当たり4重量部以上28重量部以下用いることによって、90℃以上100℃以下の熱生産を2回以上行えることを特徴とする、(1)に記載の二酸化炭素利用による熱生産方法。
(7) 前記消石灰100重量部に対して、前記二酸化炭素を1回当たり4.5重量部以上11.0重量部以下用いることによって、100℃の熱生産を2回以上行えることを特徴とする、(1)に記載の二酸化炭素利用による熱生産方法。
(8) 伝熱性容器内において、もしくは外部との熱伝導可能な閉空間内において、消石灰に二酸化炭素および水を加えることによって、二酸化炭素を消費するとともに熱を生産する二酸化炭素利用による逐次発熱温度制御方法であって、該二酸化炭素として廃棄物として産生され回収されたものを用いることを特徴とする、二酸化炭素利用による逐次発熱温度制御方法。
(9) ともに伝熱性容器内もしくは外部との熱伝導可能な閉空間内に設けられた反応用消石灰部と、反応用水部と、伝熱性容器内もしくは外部との熱伝導可能な閉空間内に設けられるかまたは伝熱性容器内もしくは外部との熱伝導可能な閉空間内に二酸化炭素を供給可能なように付設された反応用二酸化炭素部とを備え、該反応用消石灰部が提供する消石灰と、該反応用二酸化炭素部が提供する二酸化炭素と、および該反応用水部が提供する水とが反応することによって、二酸化炭素が消費されるとともに熱が生産される二酸化炭素利用による熱生産システムであって、該反応用二酸化炭素部として容器充填された二酸化炭素供給体を用いることを特徴とする、二酸化炭素利用による熱生産システム。
【0013】
(10) ともに伝熱性容器内もしくは外部との熱伝導可能な閉空間内に設けられた反応用消石灰部と、反応用水部と、伝熱性容器内もしくは外部との熱伝導可能な閉空間内に設けられるかまたは伝熱性容器内もしくは外部との熱伝導可能な閉空間内に二酸化炭素を供給可能なように付設された反応用二酸化炭素部とを備え、該反応用消石灰部が提供する消石灰と、該反応用二酸化炭素部が提供する二酸化炭素と、および該反応用水部が提供する水とが反応することによって、二酸化炭素が消費されるとともに熱が生産される二酸化炭素利用による熱生産システムであって、該反応用二酸化炭素部として廃棄物として産生され回収されて容器充填された二酸化炭素供給体を用いることを特徴とする、二酸化炭素利用による熱生産システム。
(11) (9)または(10)に記載の二酸化炭素利用による熱生産システムを用いた、温度調節装置。
(12) (9)または(10)に記載の二酸化炭素利用による熱生産システムを用いた、暖房装置。
(13) (9)または(10)に記載の二酸化炭素利用による熱生産システムを用いた、融雪装置。
【発明の効果】
【0014】
本発明の二酸化炭素利用による熱生産方法等は上述のように構成されるため、これによれば、COを積極的に利用して熱を生産でき、しかも一度だけではなく相当回数に亘っての逐次発熱を行うことができ、かつCOを有効に消費し、CO排出量の削減にも貢献できる。さらに具体的な効果については、後述実施形態の説明においても、随時述べる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本願発明者による研究結果に基づき、本発明をより詳細に説明する。もっとも、説明される各例に本発明が限定されるものではない。
<主として、上記発明(1)に関して>
上記発明(1)は次のとおりである。
伝熱性容器内において、もしくは外部との熱伝導可能な閉空間内において、消石灰に二酸化炭素および水を加えることによって、二酸化炭素を消費するとともに熱を生産する二酸化炭素利用による熱生産方法であって、該二酸化炭素として、廃棄物として産生され回収されたものを用いることを特徴とする、二酸化炭素利用による熱生産方法。
【0016】
(1)−1 伝熱容器
伝熱容器は熱伝導性に優れ,最高発熱温度に耐えることを条件とし、ポリプロピレン製(耐熱120℃程度〜ー10℃)、スチ−ル、アルミ、蒸着アルミ等の一般的な市販品でよい。ただし消石灰発熱は含水量により最高発熱温度差に大きな範囲が出るためPP(ポリプロピレン)容器等は、所定の耐熱性が必要である。生石灰発熱から消石灰まで連続して発熱させる場合は、金属性容器を除き、容器焼損保護および放熱等を考慮して、容器外面に放熱膜を装備したものとすることが望ましい。
【0017】
消石灰発熱最高温度は153℃を観測したが、伝熱容器の外面が水などの液体に接している限り、焼損などの影響はない。ただし金属性発熱容器以外は、発熱容器上部と発熱体((消石灰(水酸化カルシウム))が直接、接触しないこととし、30mm程度以上の空間を設けることが望ましい。
【0018】
(1)−2 消石灰
消石灰Ca(OH)は生石灰CaOと水を反応させることによって水和後の生成物Ca(OH)となる。生成された消石灰は、一般的に水和による残存含水分を含む総称物であり、通常は残存含水分を含む。工業的な製造方法には乾式法と湿式法があり、水和水分量により適宜、特徴の違う消石灰(Ca(OH))を得ることができる。
【0019】
(1)−3 水
一般的に消石灰(水酸化カルシウム Ca(OH))は再発熱(熱生産)しないとの固定観念がある。ちなみに農業用70消石灰肥料がそれに該当する。確かに消石灰の熱生産においては、生石灰の水和発熱とは違い、水との反応では発熱しないが、消石灰Ca(OH)が絶対乾燥状態でなければ、二酸化炭素COの消化反応により高温発熱せしめることができる。絶対乾燥状態での消石灰は二酸化炭素を反応させても消化反応(発熱)を起さない。よって熱生産には水を添加すること、または、生石灰の水和後の消石灰残存含水により消化反応(発熱)を励起する。
【0020】
(1)−4 水の添加量
水量添加量により発熱温度、発熱形態は大きく変化する。あわせてCO消費量も大きく変化する。水分量調整法には、生石灰重量を一定量とし水和反応水量を調整する水和調整法(乾式製法)と、理論配合で製造した消石灰に水を後添加する後添加調整法等方法がある。上記の熱生産の確認には、高純度試薬消石灰(水酸化カルシウム 99.9% 関東化学株式会社製)、および鹿1級(水酸化カルシウム95.0% 関東化学株式会社製)の2種を用い、少量の水を添加することと合わせてCOと反応させることにより熱生産すること、発熱形態が違うことを確認した。
【0021】
(1)−5 二酸化炭素
二酸化炭素としては、一般消火器等に使用され期限回収された産廃未使用COボンベを使用するが、生産活動にて回収された二酸化炭素も使用できる。また、一般的な市販工業用二酸化炭素ボンベの使用もでき、容器充填された二酸化炭素であればよい。本研究では、廃棄消火器のCO 60g型ボンベ 250本 を使用した。
【0022】
(1)−6 温度制御可能容器
温度制御ができる容器は、閉空間としなければ、消化反応により生成された水(水蒸気)が大気放散する。したがって、発熱温度を制御するためには、反応水不足とそれによる発現温度の予測困難および制御困難を招かないよう、閉空間とする。
【0023】
(1)−7 CO消費の再生可能なエネルギー
消石灰Ca(OH)は二酸化炭素COと反応することにより炭酸カルシウム(CaCO)となり自然界に存在する石灰石、ホタテ貝殻等と同一性質となる。ただしホタテ貝類等消石灰は生石灰製造時、加焼されているため、構造がアラゴナイトから石灰石同様カルサイトに構造が変化している。消石灰Ca(OH)は炭酸水素水酸化カルシウムとなり、再度加焼(廃木材燃焼、不要木材等)することにより酸化水酸化カルシウム(CaO)に再生できるため、国内鉱物で唯一自給生産できる再生可能エネルギーとなる。
【0024】
<主として、上記発明(2)に関して>
上記発明(2)は次のとおりである。
(2) 前記消石灰100重量部に対して、前記二酸化炭素を38重量部以上90重量部以下用いることを特徴とする、(1)に記載の二酸化炭素利用による熱生産方法。
【0025】
理論上は、生石灰1mol 56g+水1mol 18=1mol 74.0g の消石灰を生成する。消化反応、二酸化炭素COは 1mol44g必要となる。また計算上、消石灰 100.0gの反応に必要なCO量は59.46gとなる。
【0026】
(2)−1 二酸化炭素重量
前記消石灰Ca(OH)に水と二酸化炭素を加えること(反応)によって容易に熱生産できるが、CO量と水分量により発現する最高発熱温度に大きな差が出る。熱生産面からは最小量のCO使用量が望ましく、100℃程度の逐次発熱をさせる場合、水分量の決定も併せて必要である。実験による消石灰Ca(OH) 100gの平衡安定化に使用したCO使用量は、常温(室温)で38.27g〜89.92g程度の使用量を示し、広範囲となった。
【0027】
実用的な熱生産には、消石灰100gに対し平衡安定化までのCO総使用量は30重量部以上90重量以下、とすべきであるが、できればCO使用量は、計算上60g以下が望ましい。つまり、計算上、消石灰100.0gの反応に必要なCO量は、9.46gとなる。理想は100g消石灰に対し59.5g程度のCOの消費(固着安定化)であり、使用量と消費量(固着安定化)が同一であれば最良の状態である。
【0028】
熱生産では使用CO量を増大させても、発熱に長時間を要し、消費(固着安定化)するCOは少量となるような消石灰配合が存在する。また、残留未消化生石灰分が多い消石灰(CaO(OH))の場合には、CO使用量は増大し、初回発熱は高温に到達せず、反応に消費(固着安定化)するCOは少量となる。熱生産消費(固着安定化)以外のCO使用量は無駄となるが、これを解消するには、当該容器に別な検体容器を接続し、2次COで消化反応させ、大気放出を最小限にすればよい。
【0029】
(2)−2 逐次発熱温度制御
最高発熱温度100℃を2回程度以上生産するための熱生産方法としては、逐次発熱平衡安定化作用を利用し、COの最小消費量で逐次発熱を励起させて温度制御すればよい。温度制御用と最高温度発現用の消石灰Ca(OH)は、別調合とする。よって、多種消石灰検体の内から、最高発熱温度100℃を2回程度の熱生産ができる逐次発熱温度制御検体の範囲を特定する必要がある。また水分が多過ぎる場合には、100℃以上の発熱を発現できず、逐次発熱反応は起こるものの発現温度にばらつきが出て、温度制御は不可能である。100℃(5回)程度の逐次発熱温度制御では、CO量範囲と水分量範囲は特定される。
【0030】
(2)−3 安定化までの最小CO消費検体
なお実験では、100+33.4(この表記については、後述する表示例の説明を参照のこと。)と100+38.1の各50g混合検体合計100gが、CO使用総量として45.6g、CO消費量(固着)38.7gを示した。
【0031】
(2)−4 発熱終了後の検体質量
消石灰100gあたりの、CO量使用後、発熱後の質量を計測したところ、ほぼ約142〜145g程度であり、42g〜45g程度の増加を示した。この質量42g〜45g増加分は、消石灰Ca(OH)が炭酸化する前の原石100gに含まれる42g程度のCO量にほぼ近似する量である。
【0032】
CaCO原石(ホタテ貝殻、石灰石等)は、100gあたり約38〜44g程度のCOを含有するため、消石灰Ca(OH)の平衡安定化には同程度、またはそれ以上のCO量でCaCO安定化(固着)する。COの消費(固着安定化量)は産地により多少成分に違いが見られるが、石灰石1mol100gあたり42g(42%)程度のCO量である。したがって、CO消費量合計として、100g消石灰で42.0g程度のCOを消費(固着安定化量)することができる。
【0033】
なお、後述する最良安定化、最小CO消費量(発現温度差 1.0℃以下)の例では38.2gであり、ほぼ一般的なCaCO安定化(原石)の数値を示し、反応後の検体総重量増加量とCO消費量とも一致することが確認された。
【0034】
<主として、上記発明(3)に関して>
上記発明(3)は次のとおりである。
(3) 前記消石灰100重量部に対して、前記水を1重量部以上10重量部以下用いることを特徴とする、(1)に記載の二酸化炭素利用による熱生産方法。
【0035】
(3)−1 消石灰製造に使用する水量
理論的には、生石灰1mol 56g+水1mol 18g=1mol 74.0g の消石灰を生成する。計算上、生石灰100g使用には反応水32.1gが必要となる。
(3)−2 試薬消石灰に使用する水量
1mol 74gで、7gの加水が最大の効果を得られる水量として算出され、生石灰100g検体では9.5gとなる。
【0036】
既に述べたように、消石灰でも、水酸化カルシウムが絶対乾燥状態であれば、二酸化炭素を反応させても消化反応(発熱)は生じない。また、高純度99.9%水酸化カルシウム試薬や、鹿1級95.0%水酸化カルシウム試薬でも、水の添加なしでは熱生産(発熱)しない。少量の水と二酸化炭素を用いると、消石灰は短時間で消化反応(発熱)を起こす。また、同じ検体でも水量の変化により熱生産(発熱温度)、安定化速度等を大きく変えることができる。
【0037】
(3)−3 購入試薬
下記に示す市販の消石灰を用いて、熱生産可能であることを確認した。なお、このうち、家庭園芸用消石灰には自然含水分があるため、加水していない。
〈ア〉高純度99.9%消石灰(水酸化カルシウム試薬) 3N
Ca(OH) min 99.9%
〈イ〉鹿1級95.0%消石灰(水酸化カルシウム試薬)
Ca(OH) min95%
〈ウ〉家庭園芸用消石灰(肥料用水酸化カルシウム)
70消石灰(Ca(OH) 70%)
*発熱実験は、CaO水和時の残存水分があるため、無加水である。
【0038】
(3)−4 水酸化カルシウム100gに加水する水範囲
消石灰の空隙率は42%であり、空隙体積の約50%に相当する水分量に調節すると反応率は最大となることから、計算上、水酸化カルシウム 1mol 74gで≒7gの加水が最大反応率水量として算出とされ、100g検体では9.5gとなる。高純度試薬消石灰(水酸化カルシウム 99.9% 関東化学株式会社製)、および鹿1級(水酸化カルシウム95.0% 関東化学株式会社製)の2種を用い、少量の水を添加することで消化反応発熱することと熱生産の違いを確認した。
【0039】
(3)−5 消石灰の空隙体積
消石灰の空隙率は42%である。
Ca(OH)の空隙率 0.42
Ca(OH)の体積 33.22 cm3/mol
Ca(OH)の空隙体積 13.9524 cm3/mol
【0040】
(3)−6 理論水量
Ca(OH)の空隙体積の50%水量
1mol74g対し水酸化カルシウム74gでは約7.0gの加水が最大反応率水量として算出とされる。したがって、Ca(OH)74gに対し約7gの加水が最適と判断された。また、水酸化カルシウム100gでは9.5gの加水が最大反応率水量として算出とされる。なお、理論量以下水量とは、消石灰製造時のCO100gに対し水32.1g以下の場合と、絶対乾燥状態における理論基準水量以下とする。ただし純度95%試薬は、参考として基準水量以下でも実験し、計算結果に含めた。
【0041】
(3)−7 その他
上述の試験結果より、高温熱生産には水酸化カルシウムの純度だけでなく水分が重要であることがわかった。また、高純度試薬 99.9%、鹿1級試薬 95%においても水分添加量によって、逐次発熱温度と発熱(熱生産合計)結果には幅があった。また、鹿1級95%試薬検体も水分量によって、100℃以上の発熱(熱生産)できることがわかった。また、一般的な農業用消石灰(家庭園芸肥料 70消石灰)も、100℃以上の熱生産(発熱)と逐次安定化発熱することがわかった。
【0042】
(3)−8 自作水酸化カルシウムの製造
一般的に流通しているJIS生石灰を使用し、消石灰の最適配合を決定する必要があるため、水分量と配合を確認するため自作水酸化カルシウムの製造をした。JIS規格生石灰(JIS R9001特号規格)を使用し、消石灰を自作し最適配合(水分)を決定する実験を行った。その結果、発熱温度100℃での逐次発熱制御する場合の水範囲と、最高温度を発現するための水量範囲とは異なることを確認した。
【0043】
発熱最高温度を100℃とするところでCO2添加をストップすると、温度上昇が止まり制御状態になる。実験では、100℃(102.3℃を含め)の温度を、5回繰り返し発現させること、すなわち逐次発熱制御を行うことができた。
【0044】
(3)−9 発熱温度100℃の逐次発熱制御をする場合の水量範囲
生石灰100gと水和反応水50g以上で製造した消石灰では、100℃の2回以上の逐次発現は難しく、また温度範囲にバラツキが出て、発熱温度予測に難点があった。高温発熱100℃の逐次発熱制御を2回以上(4〜5回程度)できる検体は、同重量が100g+36g(以下、単に「100+36」等のようにも表記する。)、ないしは100g+40g程度までの、一部JIS消石灰と、混合検体消石灰であった。
【0045】
(3)−10 温度制御用水分量の調整
発熱温度100℃の温度制御を前提としての消石灰100g当りの水分量は、限定される。逐次発熱温度を制御するには、JIS消石灰製品を基準とすれば、消石灰の製造条件、性状、特に水分量が関係するため、その範囲を特定する必要がある。温度制御できる自作消石灰の水分量の調整は、生石灰重量を一定量とし反応水量を計量調整する水和法(乾式製法)と、製造した消石灰に水を計量して後添加する後添加法で実験した。
【0046】
後添加法を採用するのは、高純度試薬消石灰(純度99.9%)、鹿1級(純度95.0%)や絶対乾燥状態消石灰において、加水なしではCOと消化反応(発熱)しないことと、水分微調整が必要となるからである。また後添加法による最高発熱温度100℃以上の逐次発熱制御をする場合、100+36製造の消石灰100gに対しての3.0g程度の加水条件、また、100+39の条件を用いることによっても、温度制御が可能となった。なお、それ以外の検体では、目標温度到達後、COをストップしても温度上昇したり、COを増大しても目標温度に到達せずに逆に温度低下することもあった。
【0047】
(3)−11 温度制御
消石灰水分量の調整により、温度利用の形態に応じて、低温域〜高温域での熱選択利用、制御が可能となる。水分量の調整された消石灰では、任意の温度制御(10℃程度以上5℃単位程度)が可能となる。逐次発熱の温度制御のために、水分量の調整された消石灰にCOを注入する場合は、温度設定に応じた量を自動注入する方式を可能とする構造の装置・方法を採ることが望ましい。そのため、親子遠隔無接点方式(乾電池式)電磁バルブ開閉装置(0.5秒、1秒、3秒、5秒間隔)を用い、CO注入を繰り返し、設定温度でCOをストップするシステムを構成した。遠隔無接点方式は、無線方式(経産省 認定品を使用)を採用し、半径100m以内の電磁バルブ開閉操作が可能であり、シーケンス制御およびフィードバック制御との組み合わせができる。
【0048】
(3)−12 逐次発熱に於ける発生水(蒸気)処理
消石灰の消化発熱反応により水(水蒸気)が生成されるが、開空間に自由放散させた場合、逐次発熱に於ける温度制御はできない。反応の際発生する水(蒸気)は後の発熱に大いに関係する。したがって、逐次発熱温度制御する場合は閉空間容器とすることによって、逐次発熱現象100℃(5回)程度を継続発現させることができる。
【0049】
<主として、上記発明(4)に関して>
上記発明(4)は次のとおりである。
(4) 前記消石灰100重量部に対して、前記二酸化炭素を1回当たり1.0重量部以上27.5重量部以下用いることによって、熱生産を2回以上行えることを特徴とする、(1)に記載の二酸化炭素利用による熱生産方法。
【0050】
(4)−1 消石灰の仕様
消石灰はCOとの消化反応により熱生産(発熱)する。また逐次反応は平衡安定化まで繰り返す。二酸化炭素の使用による熱生産(発熱)は、水酸化カルシウムの化学平衡作用のため毎回同量ではなく、CO使用範囲は水酸化カルシウムの製造条件等にもより変化する。
【0051】
本発明による熱生産には、高純度水酸化カルシウムではなく、農家等が通常使用するような一般的に市販されている製品と、JIS生石灰を利用した自家製造消石灰の使用が、より望ましい。熱生産の回数は、自由発熱の場合は、10回〜12回程度で平衡安定化の兆候(微温発熱)を示し、発熱温度も検体温度+数度程度(または微温)の微量増加傾向となる。なお、平衡安定化の進度は発熱前の検体と発熱後を比較し、検体PHの低下計測と増加重量によって、大体判断することができる。
【0052】
(4)−2 熱生産範囲
消石灰100gでの熱生産の範囲は、安定化までの最高発熱温度合計740℃〜770℃程度が可能である。また、熱生産発熱温度合計(最高発熱温度−発熱前検体温度)としては、550℃程度の温度範囲が可能である。またCOと検体の接触を遮断すれば、平衡安定化は遅延し、長期間未使用後であっても再発熱利用できる。
【0053】
(4)−3 熱生産の利用
最高生産温度を上限80℃として制御すると、100℃の場合と比べて、逐次発熱の回数を増やすことができる。たとえば、100℃として制御した場合は、5回の発熱であるところ、最高発熱温度を80℃として制御した場合、最高80℃程度の発熱(熱生産)を7回は行うことができ、これを利用することができる。つまり、制御温度を低下させると、1回当りCO利用量(注入量)と消費量(固着安定化)が少なくなって、発熱回数を増すことができる。すなわち、水酸化カルシウムの平衡安定化数値の範囲内で温度制御することによって、温度利用範囲を格段に拡大することができる。
【0054】
<主として、上記発明(5)に関して>
上記発明(5)は次のとおりである。
(5) 前記消石灰100重量部に対して、前記二酸化炭素を1回当たり1.0重量部以上27.5重量部以下用い、10回以上の熱生産を行うことによって、熱生産最高発熱温度合計を770℃以上とすることが可能であることを特徴とする、(1)に記載の二酸化炭素利用による熱生産方法。
【0055】
消石灰100重量部に対して二酸化炭素を1回当たり4.0g重量部以上重量部27.14g以下用いることによって、消石灰で90℃以上100℃以下の熱生産を2回以上行うことができた。また、水分を調整した自作消石灰を用いて100℃の発熱制御ができる二酸化炭素量は、1回当たり4.5g重量部以上重量部11.0g以下であることを確認した。なお、家庭園芸用消石灰も高温熱生産は可能だが、最高発熱までの発現時間は他検体に比べ長くなる結果だった。
【0056】
<主として、上記発明(8)に関して>
上記発明(8)は次のとおりである。
(8) 伝熱性容器内において、もしくは外部との熱伝導可能な閉空間内において、消石灰に二酸化炭素および水を加えることによって、二酸化炭素を消費するとともに熱を生産する二酸化炭素利用による逐次発熱温度制御方法であって、該二酸化炭素として廃棄物として産生され回収されたものを用いることを特徴とする、二酸化炭素利用による逐次発熱温度制御方法。
【0057】
逐次発熱温度の熱生産温度は、CO使用量、消石灰製造時の反応水量、および水の後添加よりに大きく左右されるため、発現最高温度は自由に制御することができる。なお、以上述べてきた逐次発熱温度制御方法とは、平衡安定化作用を利用して消石灰の含水分量を上記方法にて調合し、希望発熱温度に対し消石灰を一定量化するとともに、二酸化炭素量の増減により、目的とする発熱温度を100℃程度以下とし、て逐次発熱温度を制御することである。
【0058】
<主として、上記発明(9)および(10)に関して>
上記発明(9)は次のとおりである。
ともに伝熱性容器内もしくは外部との熱伝導可能な閉空間内に設けられた反応用消石灰部と、反応用水部と、伝熱性容器内もしくは外部との熱伝導可能な閉空間内に設けられるかまたは伝熱性容器内もしくは外部との熱伝導可能な閉空間内に二酸化炭素を供給可能なように付設された反応用二酸化炭素部とを備え、該反応用消石灰部が提供する消石灰と、該反応用二酸化炭素部が提供する二酸化炭素と、および該反応用水部が提供する水とが反応することによって、二酸化炭素が消費されるとともに熱が生産される二酸化炭素利用による熱生産システムであって、該反応用二酸化炭素部として容器充填された二酸化炭素供給体を用いることを特徴とする、二酸化炭素利用による熱生産システム。
【0059】
本発明の二酸化炭素利用による熱生産システムを用いることによって、温度調節装置、暖房装置、融雪装置などを構成することができる。
【0060】
なお、以上説明したことと一部重複するが、実際の利用に関して補足する。
〔1〕COの種類について
廃棄消火器ボンベ、ドライアイス、ビール、コーラ、入浴剤等、COであればすべて利用可能である。
〔2〕最高発熱温度
本願出願までに、実験により、最高発熱温度153℃を確認済みである。
〔3〕温度制御
たとえば、最高温度100℃、90℃、80℃、いずれでも制御可能である。
【0061】
〔4〕発熱回数
水分調整された消石灰を用い、最高温度100℃の場合は5回、80℃では7回程度可能である。その後は、平衡安定化状態に近くなる。つまり、逐次発熱回数は、制御温度による。
〔5〕消石灰の種類
純度(水分含有量)により、1回の発熱をより高温でできればよい最高発熱用と、数回に亘る発熱が可能な逐次発熱温度制御用とを使い分けることが可能である。
【0062】
〔6〕CO2の量
消石灰100gあたり45g程度を消費し(固着)安定化する。
〔7〕発熱可能回数の残数確認方法
重量変化計測とアルカリ度測定により、判断可能である。
〔8〕なお、反応により安定化したもの(CaCO)、および消石灰であっても絶対乾燥状態のものは発熱しない。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明によれば、削減すべき対象として世界的な問題となっているCOを再生可能なエネルギーとして有効利用することができる。また、消石灰を再生可能なエネルギーとして用いることができる。しかも本発明方法等による熱生産は一回だけでなく逐次発熱が可能なものであり、あらゆる産業分野はもちろん、人類社会全般に亘って広く利用することができ、産業上利用性が極めて高い発明である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝熱性容器内において、もしくは外部との熱伝導可能な閉空間内において、消石灰に二酸化炭素および水を加えることによって、二酸化炭素を消費するとともに熱を生産する二酸化炭素利用による熱生産方法であって、該二酸化炭素として、廃棄物として産生され回収されたものを用いることを特徴とする、二酸化炭素利用による熱生産方法。
【請求項2】
前記消石灰100重量部に対して、前記二酸化炭素を38重量部以上90重量部以下用いることを特徴とする、請求項1に記載の二酸化炭素利用による熱生産方法。
【請求項3】
前記消石灰100重量部に対して、前記水を1重量部以上10重量部以下用いることを特徴とする、請求項1に記載の二酸化炭素利用による熱生産方法。
【請求項4】
前記消石灰100重量部に対して、前記二酸化炭素を1回当たり1.0重量部以上27.5重量部以下用いることによって、熱生産を2回以上行えることを特徴とする、請求項1に記載の二酸化炭素利用による熱生産方法。
【請求項5】
前記消石灰100重量部に対して、前記二酸化炭素を1回当たり1.0重量部以上27.5重量部以下用い、10回以上の熱生産を行うことによって、熱生産最高発熱温度合計を770℃以上とすることが可能であることを特徴とする、請求項1に記載の二酸化炭素利用による熱生産方法。
【請求項6】
前記消石灰100重量部に対して、前記二酸化炭素を1回当たり4重量部以上28重量部以下用いることによって、90℃以上100℃以下の熱生産を2回以上行えることを特徴とする、請求項1に記載の二酸化炭素利用による熱生産方法。
【請求項7】
前記消石灰100重量部に対して、前記二酸化炭素を1回当たり4.5重量部以上11.0重量部以下用いることによって、100℃の熱生産を2回以上行えることを特徴とする、請求項1に記載の二酸化炭素利用による熱生産方法。
【請求項8】
伝熱性容器内において、もしくは外部との熱伝導可能な閉空間内において、消石灰に二酸化炭素および水を加えることによって、二酸化炭素を消費するとともに熱を生産する二酸化炭素利用による逐次発熱温度制御方法であって、該二酸化炭素として廃棄物として産生され回収されたものを用いることを特徴とする、二酸化炭素利用による逐次発熱温度制御方法。
【請求項9】
ともに伝熱性容器内もしくは外部との熱伝導可能な閉空間内に設けられた反応用消石灰部と、反応用水部と、伝熱性容器内もしくは外部との熱伝導可能な閉空間内に設けられるかまたは伝熱性容器内もしくは外部との熱伝導可能な閉空間内に二酸化炭素を供給可能なように付設された反応用二酸化炭素部とを備え、該反応用消石灰部が提供する消石灰と、該反応用二酸化炭素部が提供する二酸化炭素と、および該反応用水部が提供する水とが反応することによって、二酸化炭素が消費されるとともに熱が生産される二酸化炭素利用による熱生産システムであって、該反応用二酸化炭素部として容器充填された二酸化炭素供給体を用いることを特徴とする、二酸化炭素利用による熱生産システム。
【請求項10】
ともに伝熱性容器内もしくは外部との熱伝導可能な閉空間内に設けられた反応用消石灰部と、反応用水部と、伝熱性容器内もしくは外部との熱伝導可能な閉空間内に設けられるかまたは伝熱性容器内もしくは外部との熱伝導可能な閉空間内に二酸化炭素を供給可能なように付設された反応用二酸化炭素部とを備え、該反応用消石灰部が提供する消石灰と、該反応用二酸化炭素部が提供する二酸化炭素と、および該反応用水部が提供する水とが反応することによって、二酸化炭素が消費されるとともに熱が生産される二酸化炭素利用による熱生産システムであって、該反応用二酸化炭素部として廃棄物として産生され回収されて容器充填された二酸化炭素供給体を用いることを特徴とする、二酸化炭素利用による熱生産システム。
【請求項11】
請求項9または10に記載の二酸化炭素利用による熱生産システムを用いた、温度調節装置。
【請求項12】
請求項9または10に記載の二酸化炭素利用による熱生産システムを用いた、暖房装置。
【請求項13】
請求項9または10に記載の二酸化炭素利用による熱生産システムを用いた、融雪装置。

【公開番号】特開2011−213779(P2011−213779A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−80971(P2010−80971)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(310000598)
【Fターム(参考)】