説明

二酸化炭素回収装置

【課題】熱損失を抑制した二酸化炭素回収装置を提供すること目的とする。
【解決手段】本発明に係る二酸化炭素回収装置は、二酸化炭素を含む排ガスと、所定の温度を挟んで可逆的に二酸化炭素を吸収又は放出する吸収液とを接触させ、排ガス中の二酸化炭素を吸収液に吸収させる吸収器と、吸収器で二酸化炭素を吸収した吸収液を加熱して吸収液中の二酸化炭素を放出させる再生器と、再生器で再生された吸収液を、吸収器に還流させる還流配管系と、吸収液の少なくとも一部を導入して、この導入した吸収液に蓄積する固形分を除去し、この固形分を除去した後の吸収液を吸収液の導入箇所近傍へ返送するろ過器と、再生器の底部から吸収液を導入して加熱し、加熱後の吸収液を再生器へ戻す再加熱器と、を具備し、ろ過器は、再生器から再加熱器への排出経路上に配置されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電システム等での化石燃料(例えば、石炭等)の燃焼排ガスに含まれる二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、地球温暖化の観点から、温室効果ガス排出を抑制することが世界的に取り組まれている。そのひとつに温室効果ガスである二酸化炭素の排出抑制がある。二酸化炭素の排出抑制のために、自然エネルギー利用や、原子力発電の推進、省エネルギー、発電効率高効率化などの発電システムに関する取組みが積極的に執り行われている。
【0003】
また、現行の発電技術の改良改善による二酸化炭素排出方法として、発電量の大部分を占める化石燃料を用いる燃焼排ガスから二酸化炭素を回収する技術が開発されている。この燃焼排ガスに含まれる二酸化炭素を回収するガスの分離精製技術には、固体吸着剤を用いる吸着法およびその派生技術である圧力スイング吸着法や温度スイング吸着法、アルカリ金属塩液を用いる熱アルカリ法、微細な孔径を有する有機高分子や無機素材を用いる膜分離法などが存在する。その中でも、世界的に最も注力されているものとして、アルカノールアミンを主剤とした吸収液の化学吸収作用を用いるアミン法がある。
【0004】
アミン法とは、アルカノールアミンを主剤とした吸収液(以下、吸収液)に二酸化炭素を吸収させる吸収操作と、二酸化炭素を吸収した吸収液を昇温操作することにより、吸収液中に保持される二酸化炭素を放出させ吸収液の再生操作とを行うものである。この吸収液の再生操作には、系外から熱を供給する必要がある。
【0005】
アミン法における二酸化炭素回収に必要なエネルギーは、主に再生操作のための熱である。化石燃料の燃焼排ガスを二酸化炭素回収の処理対象とした場合、吸収液の再生操作のための熱源として化石燃料の燃焼熱を用いるケースが多い。このため、二酸化炭素回収の処理に必要な熱量が小さい装置構成が求められる。
【0006】
また、石炭等を燃料に用いた場合、燃焼排ガス中には、硫黄酸化物、煤塵等が混入している。これら硫黄酸化物、煤塵等は、通常、除去プロセスにより除去されるが、微量に残存するこれら硫黄酸化物、煤塵等の微量成分が吸収液に蓄積し、熱交換器や輸送機器の汚損、吸収液特性の変化などの影響を及ぼす可能性がある。また、吸収液の劣化生成物や構造材の腐食生成物も同様の影響を及ぼす可能がある。このため、上述した吸収液に蓄積する不純物(微量成分)は、速やかな除去が必要である。また、除去に伴う吸収液の損失や、熱損失が少ない技術の確立が必要となっている。
【0007】
上記の問題を解決するために、二酸化炭素回収装置内にろ過膜装置を設け、ろ過膜装置回収の不純物含有液を加熱濃縮する蒸発器を配し、二酸化炭素回収装置の吸収液中に蓄積する固形分を除去する方法(特許文献1)や、二酸化炭素回収装置内に陰イオン交換樹脂塔を設け、その前段に小液分離器を配し、吸収液中の固形分と陰イオン不純物を除去する方法(特許文献2)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−207123号公報
【特許文献2】特開2008−238113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1には、ろ過膜装置における運用が明示されておらず、100℃以上の高温になる再生塔から排出される吸収液のもつ熱エネルギーを損失するという課題がある。また、前記高温環境下において、使用するろ過膜素材に関する明示が無く、選定する素材によっては、膜素材からの溶出物によって、吸収液中に不純物を溶出させるという課題がある。
【0010】
特許文献2では、イオン性の不純物を陰イオン交換樹脂によって除去する方法が記載されている。しかし、イオン交換樹脂のイオン交換基は、劣化によりアミノ基を有する陰イオン交換基に由来する陽イオン不純物が溶出することが知られている。このため、通常陰イオン交換樹脂の後段には陽イオン交換樹脂等による陽イオン不純物対策が施されるが、高濃度のアルカノールアミンを含有するアルカリ環境となる吸収液下におけるその運用方法に課題がある。
【0011】
更に、特許文献2では、アルカノールアミンの酸化劣化生成物に起因する有機酸除去のために陰イオン交換樹脂塔が設けられているが、陰イオン交換樹脂がもつイオン交換基は、熱や酸化劣化耐性が低いことが知られている。このため、アルカノールアミンが酸化劣化する環境下における陰イオン交換樹脂の利用には、アミノ基を有する陰イオン交換基に由来する陽イオンの溶出が起こり、吸収液中に不純物を増加されるという課題がある。また、上記不純物により吸収液の循環経路上に配置されている熱交換器等の機器が汚損され、熱損失が発生する可能性がある。
【0012】
本発明は、熱損失を抑制した二酸化炭素回収装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る二酸化炭素回収装置は、二酸化炭素を含む排ガスと、所定の温度を挟んで可逆的に二酸化炭素を吸収又は放出する吸収液とを接触させ、排ガス中の二酸化炭素を吸収液に吸収させる吸収器と、吸収器で二酸化炭素を吸収した吸収液を加熱して吸収液中の二酸化炭素を放出させる再生器と、再生器で再生された吸収液を、吸収器に還流させる還流配管系と、吸収液の少なくとも一部を導入して、この導入した吸収液に蓄積する固形分を除去し、この固形分を除去した後の吸収液を吸収液の導入箇所近傍へ返送するろ過器と、再生器の底部から吸収液を導入して加熱し、加熱後の吸収液を再生器へ戻す再加熱器と、を具備し、ろ過器は、再生器から再加熱器への排出経路上に配置されていることを特徴とする。
【0014】
前記ろ過器は、微粒子状のろ材をメッシュで保持したもので構成することができる。
【0015】
微粒子状のろ材やメッシュは、ニッケル基合金からなるものが適している。
【0016】
微粒子状のろ材をメッシュで保持したろ過器を、ニッケル基合金で構成した場合、吸収液から補足される固形分より比重が重くなるため、逆洗した場合、ろ材と補足された固形分を比重差により分離し、ろ材を回収し、再度ろ過器に導入して繰り返し使用することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、熱損失を抑制した二酸化炭素回収装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1の実施形態に係る二酸化炭素回収装置の構成を示した図である。
【図2】第2の実施形態に係る二酸化炭素回収装置の構成を示した図である。
【図3】第3の実施形態に係る二酸化炭素回収装置の構成を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1に示すように、第1の実施形態に係る二酸化炭素回収装置1は、吸収器101、排ガス冷却器102、熱交換器103、再生器104、リボイラ105(再加熱器)、吸収液冷却器106、ろ過器107、熱交換器108、ポンプ109、ポンプ110および排ガス冷却器111を具備する。
【0020】
吸収器101には、図示しない発電装置での石炭燃焼プロセスに由来する二酸化炭素を含有する排ガス(被処理ガス)が排ガス導入経路201から導入される。この排ガスは、脱硝、除塵、脱硫、冷却等の処理が施された後、排ガス導入経路201を介して、吸収器101の下部へ導入される。吸収器101は、導入される排ガスと、二酸化炭素を吸収する吸収液とを接触させ、排ガスに含有する二酸化炭素を吸収液に吸収させる。
【0021】
吸収液は、吸収器101の上部から供給され、吸収器101の下部から導入される排ガスと向流接触させる。吸収液に二酸化炭素を吸収された後の排ガスは、吸収器101上部の排ガス導出経路202から排出される。排ガス冷却器102は、排ガス導出経路202から排出される排ガスを冷却する。排ガス冷却器102には、公知の技術を用いればよい。
【0022】
吸収液は、例えば、アルカノールアミンを含有する水溶液が使用でき、その組成や種類等は特に限定されない。吸収器101の運用温度は、吸収液の組成や種類および吸収液の再生度合いによって任意に設定すればよく、例えば、内部の吸収液の温度が30℃から70℃程度の範囲となるように運用する。吸収器101で排ガスに含まれる二酸化炭素を吸収した吸収液は、吸収液排出経路203から排出され、ポンプ110により再生器104の上部へ導入される。
【0023】
再生器104では、吸収器101から導入される二酸化炭素吸収後の吸収液を加熱して吸収液から二酸化炭素を放出させ、吸収液を再生する。吸収液の加熱には、リボイラ105が用いられる。リボイラ105は、再生器104に底部から吸収液導入経路206を介して導入される吸収液を加熱する。加熱後の吸収液は、吸収液排出経路207を介して再生器104へ戻される。
【0024】
再生器104の運用温度は、吸収液の種類や組成、吸収液の二酸化炭素保持量などから、任意に設定すればよく、例えば、吸収液の温度が100℃から200℃の範囲となるように運用する。加熱により吸収液より放出された二酸化炭素を含むガス(二酸化炭素含有ガス)は、再生器104上部の二酸化炭素含有ガス排出経路205から排出される。排ガス冷却器111は、二酸化炭素含有ガス排出経路205から排出される二酸化炭素含有ガスを冷却する。排ガス冷却器111には、公知の技術を用いればよい。
【0025】
再生器104で二酸化炭素を放出した吸収液は、吸収液排出経路204から排出され、ポンプ109により吸収器101の上部へ導入される。吸収液冷却器106は、吸収液排出経路204を介して吸収器101へ導入される吸収液を任意に設定された温度まで冷却する。吸収器101へ導入された吸収液は、吸収器101における二酸化炭素吸収媒体として再利用される。
【0026】
熱交換器103は、吸収液排出経路203を流れる吸収液(低温)と、吸収液排出経路204を流れる吸収液(高温)との間で熱交換を行う。すなわち、熱交換器103は、吸収器101へ導入される吸収液を冷却し、再生器104へ導入される吸収液を加熱する。
【0027】
吸収液導入経路206を流れる吸収液の少なくとも一部は、吸収液導入経路209を介して被ろ過液としてろ過器107へ導入される。排ガス導入経路201を介して吸収器101へ導入される排ガスは、吸収器101へ導入される前に電気集塵器等の処理による除塵や、硫黄酸化物の除去のため、脱硫処理が施されている。しかし、これらの処理で残存する微量の除塵や、硫黄酸化物成分(微量成分)が排ガスに混入し、その一部は吸収液内に蓄積する。また、吸収液の酸化劣化生成物や構造材からの溶出物など、様々な不純物が吸収液内に蓄積する。これらの吸収液に蓄積した微量成分や不純物うち、固形分は、熱交換器や輸送機器の汚損や、吸収液特性の変化などの影響を及ぼす可能性があるため、速やかに除去する必要がある。
【0028】
ろ過器107は、100℃から200℃で運用されている高温の吸収液に蓄積する固形分をろ過により除去する。ろ過器107により固形分がろ過された吸収液は、吸収液排出経路208を介して、吸収液導入経路206へ戻される。ろ過器107は、フッ素樹脂製の中空糸膜(分離膜)を備えている。この中空糸膜により吸収液中に蓄積する固形分が除去される。フッ素樹脂製の中空糸膜は、例えば、PTFE製のMF膜など、高温(当該温度域)のアルカリ環境下でも使用可能な素材である。
【0029】
ろ過器107の温度は、再生器104での吸収液の温度に併せて運用をする。ろ過器107から排出されるろ過後の吸収液は、吸収液導入経路209を介して導入される吸収液と、温度および二酸化炭素含有量が略同一もしくは近い箇所へ返送することが望ましい。
【0030】
熱交換器108は、熱交換器108を洗浄する逆洗液が導入される逆洗水導入経路210を流れる逆洗水と、逆洗水排出経路211を流れる逆洗水との間で熱交換を行う。すなわち、熱交換器108は、ろ過器107へ導入される逆洗水を加熱し、ろ過器107から排出される逆洗水を冷却する。
【0031】
熱交換器108を具備することにより、吸収液導入経路209からろ過器107へ導入される吸収液の熱損失を抑制できる。ろ過器107は、2以上を並列配置し、逆洗水をろ過器107へ導入する際は、導入経路を切り替えて使用することが望ましい。
【0032】
上述したように、吸収液に蓄積した微量成分や不純物うち、固形分は、熱交換器や輸送機器の汚損や、吸収液特性の変化などの影響を及ぼす可能性があるため、速やかに除去する必要がある。この第1の実施形態に係る二酸化炭素回収装置1は、この固形分を除去するろ過器107を具備し、固形分を除去しているので、熱交換器103や吸収液の導入・排出経路や、これら経路上に配置された吸収液冷却器106、ポンプ109、110等の機器の汚損を抑制できる。また、機器の汚損を抑制できるので、熱交換器103やリボイラ105等における熱交換効率の低下を抑制できる。
【0033】
ろ過器107の温度を再生器104の吸収液の温度に併せて運用し、ろ過器107から排出されるろ過後の吸収液を、吸収液導入経路209を介して導入される吸収液と、温度が略同一もしくは近い箇所へ返送している。このため、吸収液の温度低下を抑制した状態で固形物を除去でき、熱損失を抑制できる。
【0034】
熱交換器108を洗浄する逆洗液が導入される逆洗水導入経路210を流れる逆洗水と、逆洗水排出経路211を流れる逆洗水との間で熱交換を行う熱交換器108を具備するので、ろ過後の逆洗工程において、ろ過器107が保有する熱量の損失を抑制できる。
【0035】
以上のように、この第1の実施形態に係る二酸化炭素回収装置1によれば、吸収液に蓄積する固形分を、熱損失を抑制して除去することができる。このため、熱エネルギーの消費を抑制して効率よく適切に排ガスに含まれる二酸化炭素を回収できる。
【0036】
(第2の実施形態)
図2は、第2の実施形態に係る二酸化炭素回収装置2の構成を示した図である。以下、図2を参照して、二酸化炭素回収装置2の構成について説明する。図1で説明した構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0037】
二酸化炭素回収装置2は、吸収器101、排ガス冷却器102、熱交換器103、再生器104、リボイラ105(再加熱器)、吸収液冷却器106、ろ過器107A、熱交換器108、ポンプ109、ポンプ110、排ガス冷却器111および分離器112を具備する。
【0038】
ろ過器107Aは、吸収液に蓄積される固形分を除去する微粒子状のろ材と、このろ材を囲むメッシュとを備える。ろ材およびメッシュの材質は、耐熱、耐アルカリ性に優れるニッケル基合金である。この第2の実施形態では、吸収液導入経路209および逆洗水導入経路210を、吸収液排出経路203上に配している。この際も、ろ過器107Aから排出されるろ過後の吸収液は、吸収液導入経路209を介して導入される吸収液と、温度および二酸化炭素含有量が略同一もしくは近い箇所へ返送することが望ましい。
【0039】
分離器112は、ろ過器107Aの逆洗時に、逆洗水排出経路211を介して導入される逆洗水に含まれる固形物と微粒子状のろ材とを分離する。ニッケル基合金で構成されるろ材は、固形分に比べて比重が大きいため固液分離装置である分離器112により分離される。この分離器112で分離されたろ材は回収され、ろ材循環経路212を介してろ過器107Aにおいて再びろ過器107Aを構成して繰り返し用いられる。
【0040】
上述のように、この第2の実施形態では、吸収液導入経路209および逆洗水導入経路210を吸収液排出経路203上に配している。このように、ろ過器107Aでのろ過対象を二酸化炭素吸収済みの吸収液とし、排ガスから吸収液に蓄積される固形分を速やかに除去している。このため、吸収液排出経路203、熱交換器103や吸収液排出経路203上に配置されたポンプ110などの機器の汚損を抑制できる。
【0041】
ろ過器107Aから排出される逆洗液に含まれるろ材を分離器112により分離回収する。このため、分離器112により分離回収したろ材を再利用でき、廃棄物発生量を抑制できる。
【0042】
以上のように、この第2の実施形態に係る二酸化炭素回収装置2によれば、排ガスに含まれる固形分を速やかに除去することで、不純物である固形分が二酸化炭素回収装置2全体に拡散することを抑制して機器の汚損を抑制できる。このため、熱エネルギーの消費を抑制して効率よく適切に排ガスに含まれる二酸化炭素を回収できる。さらに、固形分の除去に使用したろ材を再利用することで、廃棄物発生量を抑制できる。
【0043】
(第3の実施形態)
図3は、第3の実施形態に係る二酸化炭素回収装置3の構成を示した図である。以下、図3を参照して、二酸化炭素回収装置3の構成について説明する。図1で説明した構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0044】
第3の実施形態に係る二酸化炭素回収装置3は、吸収器101、排ガス冷却器102、熱交換器103、再生器104、リボイラ105(再加熱器)、吸収液冷却器106、ろ過器107、熱交換器108、ポンプ109、ポンプ110、排ガス冷却器111、酸素供給部113および脱酸素部114を具備する。
【0045】
酸素供給部113は、吸収液導入経路209を流れる吸収液へ酸素を含有するガス(酸素含有ガス)を、酸素含有ガス供給経路214を介して供給する。酸素供給部113による吸収液への酸素の供給には、ラインミキサーや微細な気泡(例えば、マイクロバブル発生器等)などの、ガス溶解を促進させる技術を用いればよい。
【0046】
脱酸素部114は、ろ過器107の後段に配置され、ろ過器107から排出されるろ過後の吸収液中に含まれる酸素を除去する。脱酸素部114における酸素の除去には、不活性ガスによる置換処理や槽内の減圧操作やガス分離膜等の吸収液組成への影響が小さい公知の脱酸素技術を用いればよい。脱酸素部114で含有する酸素を除去された吸収液は、脱酸素ろ液排出経路215を介して吸収液排出経路204に戻される。
【0047】
吸収液に蓄積する不純物には、排ガス導入経路201から導入される排ガスに含まれる微量の除塵や、硫黄酸化物成分の他、吸収液を用いた二酸化炭素回収装置3の運用により生成する有機酸や構造材からの溶出物がある。この有機酸は、排ガスに含まれる酸素および構造材から溶出する鉄イオンを主とする金属イオンにより、吸収液が酸化分解されることで生成される。
【0048】
鉄イオンは、酸素の存在下、吸収液の酸化分解を加速させることが知られている。この鉄イオンを、速やかに除去することにより、吸収液の酸化分解により生成される劣化生成物および吸収液の消費量増加の抑制、および吸収液組成の維持が期待できる。このため、この第3の実施形態に係る二酸化炭素回収装置3は、酸素供給部113から吸収液中に酸素含有ガスを供給し、系内の酸素分圧を向上させることによって、鉄イオンの酸化鉄形成を促進させ、形成された酸化鉄を後段のろ過器107で除去している。
【0049】
酸素供給によって酸化鉄(固形物)となった鉄イオン由来の不純物は、ろ過器107にて除去され、吸収液内の鉄イオン濃度が低減する。このため、吸収液の酸化による劣化を抑制できる。
【0050】
また、この第3の実施形態では、吸収液導入経路209および脱酸素ろ液排出経路215を、熱交換器103の後段の吸収液排出経路204に配している。熱交換器103の後段を流れる吸収液の温度は、再生器104内の吸収液の温度に比べて低いため、酸素含有ガスを溶解するのに適している。また、二酸化炭素吸収済み吸収液や、再生器104内を循環する経路上に配置する場合に比べ、再生器104から二酸化炭素含有ガス排出経路205を介して排出される二酸化炭素含有ガスに混入する酸素量を抑制できる。
【0051】
なお、第1の実施形態と同様に、ろ過器107から排出されるろ過後の吸収液は、吸収液導入経路209を介して導入される吸収液と、温度および二酸化炭素含有量が略同一もしくは近い箇所へ返送することが望ましい。
【0052】
以上のように、この第3の実施形態に係る二酸化炭素回収装置3によれば、排ガスに含まれる固形分を除去するとともに、系内に生成する鉄イオン分を除去することにより、吸収液の劣化とそれに伴う不純物の生成、および吸収液の消費量を抑制できる。また、排ガスに含まれる固形分および鉄イオンを速やかに除去することで、不純物が二酸化炭素回収装置3全体に拡散することを抑制して機器の汚損を抑制できる。このため、熱エネルギーの消費を抑制して効率よく適切に排ガスに含まれる二酸化炭素を回収できる。
【0053】
(その他の実施形態)
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0054】
具体的には、第1の実施形態に係る二酸化炭素回収装置1または第3の実施形態に係る二酸化炭素回収装置3が具備するろ過器107を、第2の実施形態が具備するろ過器107Aに変更してもよい。この際、酸素供給部113をろ過器107Aの後段に配置してもよい。また、第1ないし第3の実施形態に係る二酸化炭素回収装置1ないし二酸化炭素回収装置3が具備するろ過器107またはろ過器107の配置位置を他の実施形態における配置位置に変更してもよい。
【符号の説明】
【0055】
1〜3…二酸化炭素回収装置、101…吸収器、102,111…排ガス冷却器、103…熱交換器、104…再生器、105…リボイラ(再加熱器)、106…吸収液冷却器、107…ろ過器、108…熱交換器、109,110…ポンプ、112…分離器、113…酸素供給部、114…脱酸素部、201…排ガス導入経路、202…排ガス導出経路、203…吸収液排出経路、204…吸収液排出経路、205…二酸化炭素含有ガス排出経路、206…吸収液導入経路、207…吸収液排出経路、208…吸収液排出経路、209…吸収液導入経路、210…逆洗水導入経路、211…逆洗水排出経路、212…ろ材循環経路、213…固形分排出経路、214…酸素含有ガス供給経路、215…脱酸素ろ液排出経路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素を含む排ガスと、所定の温度を挟んで可逆的に二酸化炭素を吸収又は放出する吸収液とを接触させ、前記排ガス中の二酸化炭素を前記吸収液に吸収させる吸収器と、
前記吸収器で二酸化炭素を吸収した前記吸収液を加熱して前記吸収液中の二酸化炭素を放出させる再生器と、
前記再生器で再生された吸収液を、前記吸収器に還流させる還流配管系と、
前記吸収液の少なくとも一部を導入して、この導入した前記吸収液に蓄積する固形分を除去し、この固形分を除去した後の吸収液を前記吸収液の導入箇所近傍へ返送するろ過器と、
前記再生器の底部から前記吸収液を導入して加熱し、加熱後の吸収液を前記再生器へ戻す再加熱器と、
を具備し、
前記ろ過器は、前記再生器から前記再加熱器への排出経路上に配置されていることを特徴とする二酸化炭素回収装置。
【請求項2】
前記ろ過器は、微粒子状のろ材をメッシュで保持したものからなることを特徴とする請求項1に記載の二酸化炭素回収装置。
【請求項3】
前記ろ材及び前記メッシュは、ニッケル基合金であることを特徴とする請求項2に記載の二酸化炭素回収装置。
【請求項4】
前記固形分と前記ろ材とを分離する分離器をさらに具備し、前記分離器により分離された前記ろ材を再利用することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の二酸化炭素回収装置。
【請求項5】
前記ろ過器を洗浄する逆洗液の導入経路および排出経路を流れるそれぞれの逆洗液との間で熱交換を行う熱交換器をさらに具備することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の二酸化炭素回収装置。
【請求項6】
前記ろ過器への導入される前記吸収液へ酸素を含有するガスを供給する酸素供給部をさらに具備することを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の二酸化炭素回収装置。
【請求項7】
前記ろ過器から排出される前記吸収液に含まれる酸素を取り除く脱酸素部をさらに具備することを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の二酸化炭素回収装置。
【請求項8】
少なくとも2以上の前記ろ過器を並列に配置したことを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の二酸化炭素回収装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−86216(P2012−86216A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262343(P2011−262343)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【分割の表示】特願2009−208839(P2009−208839)の分割
【原出願日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】