説明

二重冗長式サーボ弁

サーボ弁は、別個のサーボ弁アセンブリの別個の弁部材を作動させる一つのモーターを有する。弁部材のそれぞれは、個別の油圧流体源からの油圧流体の流量を制御する。各弁部材に対して、他の弁部材が、弁部材の異物詰まりなどにより動作不能に陥った場合でも動作する能力を与えるために、各サーボ弁アセンブリは、それぞれに、異物詰まり対処機能を提供する圧力アセンブリを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二重冗長式サーボ弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のサーボ弁は、比較的低い電力制御入力信号を比較的大きな機械的動力に変換する。例えば、動作中においては、圧力をかけられた流体は、直接駆動型のサーボ弁に入り、制御入力信号に基づいて流体アクチュエータを駆動し、航空機に使われるような可変形状部品を動作させる。
【0003】
典型的な直接駆動型サーボ弁は、筐体やスプールのような弁部材、モーター、及びセンサを有する。
【0004】
上記筐体には、流体経路が形成され、この流体経路内に、上記弁部材が配置されている。
【0005】
上記経路内の流体の流量を制御するために、上記モーターは、流体経路内の弁部材において、開状態位置と閉状態位置間の切り替え動作をすることができるように形成されている。
【0006】
センサは、流体経路内の弁部材の位置、及び、モーターのローターアセンブリの回転方位を検出するように形成されている。
【0007】
動作中、電気制御器は、命令信号をユーザー入力機器から受信する。ユーザー入力機器は、上記制御器を指示して、ある特定な様式(例えば、流量を増大させる、流量を減少させる、流量を停止する、等)でサーボ弁を動作させる。
【0008】
制御器は、また、センサから位置信号を受信するので、制御器は、流体経路内の弁部材の現在位置を決定することが可能である。
【0009】
次に、制御器は、命令信号と位置信号に基づいて、制御信号をモーターに送信し、ローターアセンブリの回転方位を制御する。その結果、ローターアセンブリは、弁部材を流体経路内の任意の位置へと動かし、よって、流体アクチュエーターに対する相対的な流体の流量を制御できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
弁部材のそれぞれは、個別の油圧流体源からの油圧流体の流量を制御し、流体アクチュエーターに対して、冗長な制御能力を提供する。各弁部材に対して、他の弁部材が、油圧流体中において運ばれた破砕物により引き起こされる弁部材の異物詰まりなどにより動作不能に陥った場合でも動作する能力を与えるために、各サーボ弁アセンブリは、それぞれに、異物詰まり対処機能の提供を可能とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の実施例は、別個の、或いは、冗長のサーボ弁アセンブリの別個の弁部材を作動させる一つのモーターを備えるサーボ弁に関する。
【発明の効果】
【0012】
弁部材のそれぞれは、個別の油圧流体源からの油圧流体の流量を制御し、流体アクチュエーターに対して、冗長な制御能力を提供する。各弁部材に対して、他の弁部材が、油圧流体中において運ばれた破砕物により引き起こされる弁部材の異物詰まりなどにより動作不能に陥った場合でも動作する能力を与えるために、各サーボ弁アセンブリは、それぞれに、異物詰まり対処機能を提供する圧力アセンブリを有する。
【0013】
或る構成において、上記圧力アセンブリは、上記弁部材に形成された流路内に配置される一組のピストンとして形成される。
【0014】
ここで、上記弁部材流路中に対応する行き止まり部への圧力をかけることにより、各ピストンには、予備圧力負荷が掛けられる。両方の弁部材がそれぞれの流体流路内において平行移動可能である場合、上記ピストンにおける弁部材駆動部により発生する力は、上記行き止まり部におけるピストンによりかけられる上記予備圧力負荷よりも小さい。
【0015】
従って、ローターアセンブリの回転により、それぞれ対応する流体流路内において、各弁部材が平行移動する。
【0016】
弁部材の1つがサーボ弁アセンブリの流体流路内において平行移動できない場合(即ち、詰まってしまった場合)、この詰まってしまった弁部材のピストンの一つにおける弁部材駆動部により発生する力は、対応する行き止まり部におけるピストンによりもたらされる力よりも大きい。
【0017】
従って、ローターアセンブリの回転により、詰まってない方の弁部材は、その対応する流体流路内において平行移動をおこない、弁部材駆動部は、予備圧力負荷をかけられたピストンのうちの一つを行き止まり部に対して相対的に変位させる。
【0018】
このように、サーボ弁の第二サーボ弁アセンブリの弁部材が詰まってしまった場合でも、上記圧力アセンブリにより、サーボ弁の複数のサーボ弁アセンブリのうちの一つは、継続的に動作することが可能である。
【0019】
或る構成において、サーボ弁は、第一端部及び第二端部が形成されているローター軸を有するモーターを有し、上記第二端部は、上記第一端部の反対側に位置する。
【0020】
上記サーボ弁は、第一流体流路が形成された第一筐体と上記第一流体流路内に配置された第一弁部材を有する第一サーボ弁アセンブリを有する。
【0021】
上記第一弁部材は、第一予備圧力負荷を第一行き止まり部へかけるように形成される第一圧力アセンブリを有する。
【0022】
さらに、上記サーボ弁は、第二流体流路が形成された第二筐体と上記第二流体流路内に配置された第二弁部材を有する第二サーボ弁アセンブリを有する。
【0023】
上記第二弁部材は、第二予備圧力負荷を第二行き止まり部へかけるように形成される第二圧力アセンブリを有する。
【0024】
上記第一弁部材が、上記第一流体流路内において平行移動可能であり、かつ、上記第二弁部材が、上記第二流体流路内において平行移動可能である場合、上記モーターは、上記ローター軸が上記第一圧力アセンブリと第二圧力アセンブリに対して第一の力をかけるように構成される。
【0025】
この場合、上記第一の力は、上記第一圧力アセンブリによりかけられる第一予備圧力負荷または上記第二圧力アセンブリによりかけられる第二予備圧力負荷と同じか、若しくは小さい。
【0026】
また、上記モーターは、上記第一弁部材、または第二弁部材の一方が、上記第一流体流路または第二流体流路の対応するいずれかの流路内にて平行移動できない場合、ローター軸から、より大きな力が上記第一圧力アセンブリ、もしくは第二圧力アセンブリに対してかけられるように構成される。
【0027】
この場合、上記、より大きな力は、上記第一圧力アセンブリによりかけられる第一予備圧力負荷または上記第二圧力アセンブリによりかけられる第二予備圧力負荷よりも大きい。
【0028】
或る構成において、サーボ弁は、第一端部及び第二端部が形成されているローター軸を有するモーターを有し、上記第二端部は、上記第一端部の反対側に位置する。
【0029】
上記サーボ弁は、第一流体流路が形成された第一筐体と上記第一流体流路内に配置された第一弁部材を有する第一サーボ弁アセンブリを有する。
【0030】
上記第一弁部材は、第一予備圧力負荷を第一行き止まり部へかけるように形成される第一圧力アセンブリを有する。
【0031】
さらに、上記サーボ弁は、第二流体流路が形成された第二筐体と上記第二流体流路内に配置された第二弁部材を有する第二サーボ弁アセンブリを有する。
【0032】
上記第二弁部材は、第二予備圧力負荷を第二行き止まり部へかけるように形成される第二圧力アセンブリを有する。
【0033】
上記サーボ弁は、上記第一弁アセンブリに担持された第一変位センサを有し、この第一変位センサは、上記第一流体流路内における上記第一弁部材の相対位置を示す位置信号を発生するように形成される。
【0034】
また、上記サーボ弁は、上記第二弁アセンブリに担持された第二変位センサを有し、この第二変位センサは、上記第二流体流路内における上記第二弁部材の相対位置を示す位置信号を発生するように形成される。
【0035】
上記サーボ弁は、上記第一変位センサと電気的に通信する制御器を有して構成される。
【0036】
上記制御器は、ユーザー入力機器からの命令信号を受信し、上記第一変位センサからの第一位置信号を受信し、上記第二変位センサからの第二位置信号を受信し、命令信号を第一位置信号及び第二位置信号と比較する。
【0037】
命令信号と第一位置信号との差、及び、命令信号と第二位置信号との差を検出すると、制御器は、制御信号をモーターに送信して、上記第一弁部材及び第二弁部材を命令位置に位置させる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
前述の、また、その他の目的、特徴、及び、利点は、添付の図面に描写されるように、以下に述べる本発明の特定の実施例の説明により明らかになるであろう。全ての図面に渡って、同様の参照符号は、同様の部品を示すものである。図面は必ずしも、縮尺が合っているわけではなく、本発明の種々の実施例において、主要部を描写する時、強調をおこなっている。
【0039】
【図1】本発明の実施例に従った、サーボ弁の概略図である。
【図2】図1のローターアセンブリ、弁部材、及び圧力アセンブリの概略図である。
【図3】図2の線3−3におけるローターアセンブリの断面図である。
【図4】本発明の実施例に従った、サーボ弁の概略変形図である
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明の実施例は、複数の別個のサーボ弁アセンブリにおける複数の別個の弁部材を作動する一つのモーターを有するサーボ弁に関する。
【0041】
弁部材のそれぞれは、個別の油圧流体源からの油圧流体の流量を制御する。油圧流体中に流れる固形物により弁部材の詰まりなどが原因となって、他の弁部材が動作不能になった場合、各弁部材に動作能力を与えるために、各サーボ弁アセンブリは、自らに、異物詰まり対処機能を与えるための圧力アセンブリを有する。
【0042】
ある構成において、上記圧力アセンブリは、弁部材に形成される流路内に配置され、弁部材の行き止まり部に圧力をかけることにより、事前に導入した一組のピストンとして形成される。両方の弁部材が、それぞれの流体流路内において平行移動をおこなうことができる場合、上記ピストン上の弁部材駆動部により発生する力は、弁部材の行き止まり部上のピストンによりかけられる事前の負荷力よりも小さい。
【0043】
従って、ローターアセンブリの回転により、各弁部材がそれぞれの流体流路内において平行移動する。
【0044】
サーボ弁アセンブリの流体流路内において、一方の弁部材が平行移動できない場合、(即ち、一方の弁部材が詰まった場合)、この詰まった弁部材のピストン上の弁部材駆動部により発生する力は、弁部材の行き止まり部上のピストンにより与えられた力よりも大きい。
【0045】
よって、ローターアセンブリの回転により、異物詰まりが起こってない方の弁部材は、対応する流路内で平行移動し、それにより、異物詰まりが起こった方の弁部材に対して相対的に、この弁部材駆動部分が、事前に負荷をかけられているピストンの一つを、圧縮する。
【0046】
よって、この圧力アセンブリにより、サーボ弁の第2サーボ弁アセンブリのある弁部材が詰まってしまった場合においても、サーボ弁のサーボ弁アセンブリの一つは動作を続けることが可能である。
【0047】
図1は、サーボ弁24の構成を示すものである。サーボ弁24は、二つのサーボ弁アセンブリ26−1、26−2、直接駆動型サーボ弁モーター28のようなモーター、2つの、線形可変変位変動子(LVDT)のような変位センサ30−1及び30−2、及び、プロセッサとメモリのような制御器31を有する。
【0048】
上記2つのサーボ弁アセンブリ26−1及び26−2の動作を制御するために、制御器31は、直接駆動型サーボ弁モーター28を動作するように形成される。
【0049】
各サーボ弁アセンブリ26−1、及び26−2は、筐体32−1、32−2を有しており、これらにより、流体流路34−1、34−2が形成されている。
【0050】
各筐体32−1、32−2は、図2に示すようなスリーブ35、及び、対応する流体流路34−1、34−2内に配置されるスプールのような弁部材36−1、36−2を有する。
【0051】
各弁部材36−1、36−2は、対応する圧縮流体源37−1、37−2から、対応する流体流路34−1、34−2を介して油圧または流体アクチュエーター33へと流れる流体量を計測するように形成される。
【0052】
よって、各サーボ弁アセンブリ26−1、26−2は、流体アクチュエーター33に対して、冗長な制御を行う。
【0053】
この場合においては、第一サーボ弁アセンブリ26−1は、流体アクチュエーター33の第一部分33−1の制御を行い、第二サーボ弁アセンブリ26−2は、流体アクチュエーター33の第二部分33−2の制御を行う。
【0054】
各筐体32−1、32−2は、それぞれ対応する流体流路34−1、34−2内における弁部材36−1、36−2の位置を制御するのに使用する弁制御ポートを有する。例えば、第一筐体32−1を参照すると、この筐体32−1は、流体流路34−1への供給入力部38−1を有する。この流体流路34−1を介して、流体源37−1は、圧力をかけた油圧流体を流し込む。
【0055】
筐体32−1は、また、第一及び第二制御出力部40−1及び42−1を有し、これにより、圧力をかけた流体は、流体流路34−1から流体アクチュエーター33に向かって流し込まれる。筐体32−1は、さらに、戻り出力部44−1を有し、これにより、上記圧力をかけた流体は、流体源37−1のリザーバーへと流し込まれる。
【0056】
図1に示すように、直接駆動型サーボ弁モーター28は、固定子60とローターアセンブリ62を有する。固定子60は、第一及び第二弁アセンブリ筐体32−1及び32−2に対して位置が固定されており、一方、ローターアセンブリ62は、固定子60のコイル64に流れる電流に反応して、固定子60に対して、ある角度位置に回転するように形成される。
【0057】
例えば、それぞれ対応する流体流路34−1及び34−2内における弁部材36−1及び36−2を全閉位置と全開位置の間で駆動するために、ローターアセンブリ62は、制限された円弧範囲(例えば、±20°の範囲)で回転するように形成されている。
【0058】
ローターアセンブリ62は、第一弁部材36−1に担持される第一端部70と第二弁部材36−2に担持され、かつ、第一端部70とは反対側にある第二端部72を有するローター軸68を有する。
【0059】
各端部70及び72は、弁部材駆動部74−1及び74−2を有しており、それぞれ、ローター軸68の回転動作をそれぞれ対応する弁部材36−1及び36−2に与えて、各弁部材36−1及び36−2がそれぞれ対応する流体流路34−1及び34−2内において長手方向に平行移動(75)するように形成されていて、よって、弁制御ポートを介する流体の流量を調整する。
【0060】
例えば、ローター軸62は、弁部材駆動部74−1及び74−2を有しており、これらは、上記ローター軸の両端のいずれかに配置されており、弁部材36−1及び36−2に担持されている。
【0061】
ある構成において、図3に示すように、また、第一サーボ弁アセンブリ26−1を参照すると、弁部材駆動部74−1は、タングステンカーバイト材料で形成されるボールのような偏心駆動要素76−1を有し、これは、ローター軸68の回転軸78からずれた位置に結合されている。
【0062】
使用中、直接駆動型サーボ弁モーター28は、それぞれ対応する弁部材駆動部74−1及び74−2を介して、約100ポンドの力をそれぞれの弁部材36−1及び36−2に供給するように形成されている。
【0063】
図1及び図2に戻って、サーボ弁アセンブリ26−1及び26−2のそれぞれは、各サーボ弁アセンブリ26−1及び26−2に異物詰まり対処機能を与えるための圧力アセンブリ46−1及び46−2を有している。詳細については、以下に記述する。
【0064】
図2に示すように、また、理解しやすいように、第一サーボ弁アセンブリ26−1を参照すると、弁部材36−1により、弁部材36−1の長手方向の軸49−1に延びる流路50が形成されている。
【0065】
流路50は、圧縮流体源37−1と流体のやりとりを行うように配置される。例えば、図1に示すように、流体源37−1は、筐体32−1の供給入力部38−1に連結されており、圧力をかけた流体を第一弁部材36−1内に形成された第一流路部51−1、及び、第一弁部材36−1内に形成された第二流路部53−1に供給する。
【0066】
各流路部51−1及び53−1には、それぞれ、行き止まり部57−1及び59−1が形成されている。ある構成において、各行き止まり部57−1及び59−1は、それぞれ対応する流路部51−1及び53−1の直径が減少した部分に対応する。
【0067】
理解しやすいように、図1及び2の第一サーボ弁アセンブリ26−1を参照すると、圧力アセンブリ46−1は、第一流路部51−1内に配置される第一ピストン56−1と第二流路部53−1内に配置される第二ピストン58−1を有する。
【0068】
第一流路部及び第二流路部51−1及び53−1内にある圧力をかけられた流体は、各ピストン56−1及び58−1の頭部61−1及び63−1に対して負荷をかけ、ピストンを、弁部材36−1内の各々対応する行き止まり部57−1及び59−1に対して、予め押し付ける。
【0069】
ある構成において、各ピストン56−1及び58−1は、それぞれ対応する行き止まり部57−1及び59−1に対して、約50ポンドの力を、予めかけた状態にしている。
【0070】
ある構成において、弁部材36−1及び36−2がそれぞれの流体流路34−1及び34−2内において平行移動可能である場合、圧力アセンブリ46−1及び46−2は、弁部材駆動部74−1及び74−2とそれぞれ対応する弁部材36−1及び36−2間で負荷の移動を行うように形成されている。
【0071】
例えば、動作中、制御器31は、ユーザー入力デバイスから、命令信号90を受け取る。それにより、制御器31は、ある特定の形式(例えば、流量を増やす、流量を減らす、流量をゼロにする等)でサーボ弁アセンブリ26−1、26−2の動作を行う。
【0072】
制御器31は、また、変位センサ30−1及び30−2のそれぞれから、位置信号92−1及び92−2を受信し、よって、制御器31は、流体流路34−1及び34−2内の各弁部材36−1及び36−2のそれぞれの現在位置を決定することができる。
【0073】
この制御器31は、命令信号90を位置信号92−1及び92−2と比較し、制御器が命令信号90と位置信号92−1及び92−2の間に差を検出した場合、制御器31は、制御信号94をモーター28に送信する。
【0074】
固定子60を介して制御器31から受信した制御信号94を受信すると、ローターアセンブリ62は、固定子60に対して相対的に回転する。
【0075】
ローターアセンブリ62の回転により、弁部材駆動部74−1及び74−2のそれぞれが、弁部材36−1及び36−2内で回転し、弁部材36−1及び36−2に付随している第一ピストン56−1及び56−2か、または、同じく弁部材36−1及び36−2に付随している第二ピストン58−1及び58−2に圧力負荷がかかる。どちらのピストンに圧力負荷がかかるかは、ローターアセンブリ62の回転方向に依存する。
【0076】
弁部材36−1及び36−2がそれぞれ対応する流体流路34−1及び34−2内で平行移動可能である場合、弁部材36−1及び36−2に付随する第一ピストン56−1及び56−2、または、同じく弁部材36−1及び36−2に付随する第二ピストン58−1及び58−2における弁部材駆動部74−1及び74−2により発生する力は、弁部材駆動部74−1、74−2上にあるピストン56−1、及び56−2、58−1及び58−2により発生する力と比較して、実質的に等しいか、またはそれよりも小さい。
【0077】
従って、弁部材駆動部74−1及び74−2が、それぞれ対応する弁部材36−1及び36−2内で回転すると、その回転により、それぞれ対応する流体流路34−1及び34−2内において、弁部材36−1及び36−2を横方向に水平移動(75)する。
【0078】
このような横方向の水平移動により、加圧流体源37−1、及び37−2からそれぞれ対応する流体アクチュエータ33−1及び33−2へと流れる流体の流量を調整する。
【0079】
ある構成において、圧力アセンブリ46−1及び46−2は、各サーボ弁アセンブリ26−1及び26−2に対して、異物詰まり対処機能を持たせるように形成されるものであり、これにより、この弁部材が、対応する流路34−1、または34−2内において、平行移動することができたくなった場合、弁部材36−1及び36−2のうちの一つに含まれる弁部材駆動部74−1若しくは74−2の回転が可能となる。
【0080】
例えば、流体流路34−1において比較的大きな破片粒子が弁部材36−1と対応するスリーブ35の間につっかえてしまい、弁部材36−1が流体流路34−1に沿って長手方向に平行移動できず、事実上、スリーブ35内に詰まってしまった場合を考えよう。
【0081】
固定子60を介して制御器31から受信した制御信号94に対応して、ローターアセンブリ62は、固定子60に対して相対的に回転する。
【0082】
ローターアセンブリ62の回転により、弁部材駆動部74−1、及び74−2がそれぞれ対応する弁部材36−1及び36−2内で回転し、弁部材36−1及び36−2に付随する第一ピストン56−1及び56−2、あるいは、同じく弁部材36−1及び36−2に付随する第二ピストン58−1及び58−2に圧力負荷が発生する。どちらのピストンに負荷が発生するかは、ローターアセンブリ62の回転方向に依存する。
【0083】
第二弁部材36−2が、流体流路34−2内において平行移動可能である場合、弁部材36−1及び36−2に付随する第一ピストン56−2、または、第二ピストン58−2上の弁部材駆動部74−2により発生する力は、対応する行き止まり部57−2あるいは59−2上のピストン56−2あるいは58−2により発生する力より小さいか、あるいは実質的に等しい。
【0084】
しかしながら、第一弁部材36−1は、流体流路34−1内において、平行移動することができないので、弁部材駆動部74−1が弁部材36−1内で回転すると、弁部材駆動部74−1が第一ピストン56−1上、若しくは第二ピストン58−1上に発生する力は、対応する行き止まり部57−1または、59−1上の第一ピストン56−1または第二ピストン58−1により予めもたらされる圧力負荷より大きくなる。
【0085】
従って、弁部材駆動部74−1は、第一ピストン56−1あるいは第二ピストン58−1を変位し、ローター62は回転を続けることが可能となり、よって、ローター62は、第二サーボ弁アセンブリ32−2の第二弁部材36−2の位置を制御することが可能となる。
【0086】
このように、本例においては、第一弁部材36−1が動作不能になった場合、圧力アセンブリ46−1は、第二サーボ弁アセンブリが動作を継続することを可能にし、流体アクチュエーター33を制御することが可能になる。
【0087】
或る構成において、変位センサ30−1及び30−2は、また、どちらの弁部材36−1、36−2が動作不良になったか、あるいは詰まってしまったかを特定する機能を制御器31に対して提供する。
【0088】
例えば、動作中、制御器31が制御信号94をモーター28に対して送信すると、制御器31は、それぞれ対応する変位センサ30−1、30−2から位置信号100−1、100−2を受信する。
【0089】
次に、制御器31は、位置信号100−1及び100−2を、弁部材の反応解析モデルと比較し、特定の弁部材36−1あるいは36−2が平行移動をしたか、あるいは平行移動しなかったかを検出する。
【0090】
弁部材の反応に関する解析モデルは、種々の方法で構築することが可能であるが、ある構成においては、解析モデルは、命令信号90と位置信号100−1及び100−2間の誤差の経時的な減少に関するものである。
【0091】
第一サーボ弁アセンブリ26−1を例にとると、制御器31が位置信号100−1と解析モデルを比較した場合、制御器31が命令信号90と位置信号100−1の間の誤差が経時的に減少したことを検出した(即ち、制御信号90と位置信号100−1の間の誤差が、50msecから100msecの時間幅でゼロになった)、と仮定しよう。
【0092】
従って、制御器31は、第一流体流路34−1において、第一弁部材36−1が平行移動したことを検出する。
【0093】
一方、今度は、制御器31が位置信号100−1と解析モデルを比較した場合、制御器31は、命令信号90と位置信号100−1の間の誤差が実質的に一定か、もしくは減少しない場合を仮定しよう。
【0094】
このような減少しない誤差は、サーボ弁アセンブリ26−1内における弁部材36−1の実際の位置が、ユーザー入力機器から供給される弁部材36−1の命令位置と対応しないことを示している。
【0095】
この場合、上記の誤差が相対的に一定であるので、制御器31は、第一流体流路34−1内において、第一弁部材36−1が平行移動しなかったと検出する。
【0096】
或る構成において、制御器31は、動作不能状態のサーボ弁アセンブリ内の圧力の調整が可能なように形成されており、これにより、圧力アセンブリ46のピストン56及び58は、流路50内を自由に動くことが可能となり、これにより、モーター20と弁部材駆動部74−1及び74−2が、圧力アセンブリ46に予めかけた圧力負荷を越えるような十分な圧力負荷を発生しなければならない、という条件を無くすか、或いは最小限にすることができる。
【0097】
上記の例を続けて、制御器31が第一弁部材36−1が平行移動しなかったことを検出した場合、圧力アセンブリ46−1により発生した第一予備圧力負荷を取り除くため、制御器31は、流体源37−1から第一サーボ弁アセンブリ26−1までの供給管にある弁を作動させて供給圧力を止め、かつ、油圧流体を供給入力部38−1から戻り入力部44−1へと逃がし、よって、流路50からの油圧流体圧力を除去し、かつ、異物詰まりが起こった第一弁部材46−1のピストン56−1及び58−1上の圧力を除去する。
【0098】
本発明の種々の実施例の特定の例を説明したが、当該技術の当業者は、添付した請求項に定義した発明の本質と範囲を逸脱することなく、形状や詳細に関する種々の変更が可能であるということは理解できるであろう。
【0099】
例えば、上に示したように、第一流路部51及び第二流路部53内に含まれる圧力をかけられた流体は、ピストン56及び58のそれぞれに圧力負荷を発生し、かつ、これにより、ピストン56及び58は、弁部材36内にある対応する行き止まり部57、59に対して予備圧力負荷を発生する。この説明は単なる例示にすぎない。
【0100】
或る構成においては、弁部材36の流路50内に配置されたバネ材により、ピストン56及び58は、予備圧力負荷を弁部材36内の行き止まり部57及び59に対して発生する。
【0101】
上に示したように、変位センサ30−1及び30−2は、線形可変変位変動子(LVDT)として形成されてもよい。
【0102】
或る構成においては、変位センサ30−1及び30−2のそれぞれは、複数の線形可変変位変動子(LVDT)にて形成されてもよい。
【0103】
例えば、変位センサ30−1及び30−2のそれぞれは、3個の別個の線形可変変位変動子(LVDT)を有し、サーボ弁アセンブリ26−1及び26−2内における弁部材36−1及び36−2の位置を検出する。
【0104】
変位センサ30として、複数の線形可変変位変動子(LVDT)を使用することにより、変位計測の冗長度をもたせることができる。
【0105】
上に示したように、変位センサ30−1、及び30−2は、弁部材36−1及び36−2に結合されており、サーボ弁アセンブリ26−1及び26−2内において、弁部材36−1及び36−2の位置を検出する。上記の記述は単なる例示にすぎない。
【0106】
或る構成においては、図4に示すように、回転センサ30’は、直接駆動サーボ弁モーター28上に配置されている。
【0107】
例えば、図4に示すように、ホール効果センサのような回転センサ30’は、固定子60上に配置される第一センサ要素、及び、ローターアセンブリ62上に配置される第二要素を有してもよい。
【0108】
第二要素に対する第一要素の相対的な動きにより、回転センサ30’は、サーボ弁アセンブリ26−1及び26−2内における弁部材36−1及び36−2の位置を示す信号を発生する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一端部及び第二端部が形成されたローター軸を有し、上記第二端部は上記第一端部の反対側にある、モーターと、
第一流体流路が形成された第一筐体及び、上記第一流体流路内に形成された第一弁部材を有する第一サーボ弁アセンブリであり、この第一弁部材は、上記第一弁部材に形成された行き止まり部に第一予備圧力負荷をかけるように形成された第一圧力アセンブリを有する第一サーボ弁アセンブリと、
第二流体流路が形成された第二筐体及び、上記第二流体流路に配置された第二弁部材を有する第二サーボ弁アセンブリであり、この第二弁部材は、第二予備圧力負荷を上記第二弁部材内に形成された行き止まり部にかけるように形成された第二圧力アセンブリを有する第二サーボ弁アセンブリ、とを有して成るサーボ弁であり、
上記モーターは、ローター軸が、(i)上記第一弁部材が上記第一流体流路内において平行移動可能であり、上記第二弁部材が上記第二流体流路内において平行移動可能である場合、第一の力を上記第一圧力アセンブリ及び第二圧力アセンブリに対してかけ、この場合、第一の力は、上記第一圧力アセンブリによりかけられた上記第一予備圧力負荷、及び上記第二圧力アセンブリによりかけられた第二予備圧力負荷より小さいかもしくは等しいものであり、(ii)上記第一弁部材及び第二弁部材のうちの一つが対応する第一流体流路もしくは第二流体流路のいずれかにおいて平行移動可能でない場合、第二の力を、上記第一圧力アセンブリ及び第二圧力アセンブリのいずれかにかけるものであり、この場合、上記第二の力は、上記第一圧力アセンブリによりかけられた上記第一予備圧力負荷、及び上記第二圧力アセンブリによりかけられた第二予備圧力負荷のいずれかよりも大きいことが特徴である、サーボ弁。
【請求項2】
上記第一弁部材には、上記第一弁部材の長手方向軸にそって延びる第一弁部材流路が形成されており、
上記ローターの第一端部は、上記第一弁部材の上記第一弁部材流路内に配置された第一弁部材駆動部を有して形成され、
上記第一圧力アセンブリは、
上記第一弁部材の第一弁部材流路内に配置され、かつ、第一圧縮流体源と流体が通じているように配置された第一ピストンであり、この第一ピストンは、上記第一圧縮流体源により発生された第一予備圧力負荷を上記第一弁部材内の第一行き止まり部にかけるように形成された第一ピストンと、
上記第一弁部材の第一弁部材流路内に配置され、かつ、第一圧縮流体源と流体が通じているように配置された第二ピストンであり、この第二ピストンは、上記第一圧縮流体源により発生された第一予備圧力負荷を上記第一弁部材内の第二行き止まり部にかけるように形成された第二ピストンとを有して成るものであり、上記第二ピストンは、上記第一ピストンと反対側に存在するものである、請求項1に記載のサーボ弁。
【請求項3】
上記第二弁部材には、上記第二弁部材の長手方向軸にそって延びる第二弁部材流路が形成されており、
上記ローターの第二端部は、上記第二弁部材の上記第二弁部材流路内に配置された第二弁部材駆動部を有して形成され、
上記第二圧力アセンブリは、
上記第二弁部材の第二弁部材流路内に配置され、かつ、第二圧縮流体源と流体が通じているように配置された第一ピストンであり、この第一ピストンは、上記第二圧縮流体源により発生された第二予備圧力負荷を上記第二弁部材内の第一行き止まり部にかけるように形成された第一ピストンと、
上記第二弁部材の第二弁部材流路内に配置され、かつ、第二圧縮流体源と流体が通じているように配置された第二ピストンであり、この第二ピストンは、上記第二圧縮流体源により発生された第二予備圧力負荷を上記第二弁部材内の第二行き止まり部にかけるように形成された第二ピストンとを有して成るものであり、上記第二ピストンは、上記第一ピストンと反対側に存在するものである、請求項1に記載のサーボ弁。
【請求項4】
上記第一弁アセンブリに担持された第一変位センサであり、この第一変位センサは、上記第一流体流路内における上記第一弁部材の相対位置を示す位置信号を発生するように形成されたものである、第一変位センサと、
上記第二弁アセンブリに担持された第二変位センサであり、この第二変位センサは、上記第二流体流路内における上記第二弁部材の相対位置を示す位置信号を発生するように形成されたものである、第二変位センサとを有する、請求項1に記載のサーボ弁。
【請求項5】
上記第一変位センサ、第二変位センサ、及びモーターと電気的に通信する制御器を有してなるサーボ弁であり、上記制御器は、
ユーザー入力機器からの命令信号を受信し、
上記第一変位センサからの第一位置信号を受信し、上記第二変位センサからの第二位置信号を受信し、
命令信号を第一位置信号及び第二位置信号と比較し、
命令信号と第一位置信号との差、及び、命令信号と第二位置信号との差を検出すると、制御信号をモーターに送信して、上記第一弁部材及び第二弁部材を命令位置に位置させる、請求項4に記載のサーボ弁。
【請求項6】
上記制御器は、上記第一変位センサから位置信号を受信し、
上記第一変位センサからの位置信号を上記第一弁部材の反応の解析モデルと比較し、
上記第一変位センサからの位置信号が上記第一弁部材からの反応の解析モデルと対応する場合、上記第一流体流路内に配置される上記第一弁部材が平行移動したことを検出し、
上記第一変位センサからの位置信号が上記第一弁部材からの反応の解析モデルと対応しない場合、上記第一流体流路内に配置される上記第一弁部材が平行移動しなかったことを検出するように形成された、請求項5に記載のサーボ弁。
【請求項7】
上記第一流体流路内に配置される上記第一弁部材が平行移動しないことを検出した場合、上記制御器は、上記第一圧力アセンブリに対して、上記第一弁部材内の第一行き止まり部からの第一予備圧力負荷を除去させるように指示するように形成される、請求項6に記載のサーボ弁。
【請求項8】
上記制御器は、上記第二変位センサから位置信号を受信し、
上記第二変位センサからの位置信号を上記第二弁部材の反応の解析モデルと比較し、
上記第二変位センサからの位置信号が上記第二弁部材からの反応の解析モデルと対応する場合、上記第二流体流路内に配置される上記第二弁部材が平行移動したことを検出し、
上記第二変位センサからの位置信号が上記第二弁部材からの反応の解析モデルと対応しない場合、上記第二流体流路内に配置される上記第二弁部材が平行移動しなかったことを検出するように形成された、請求項5に記載のサーボ弁。
【請求項9】
上記第二流体流路内に配置される上記第二弁部材が平行移動しないことを検出した場合、制御器は、上記第二圧力アセンブリに対して、上記第二弁部材内の第二行き止まり部からの第二予備圧力負荷を除去させるように指示するように形成される、請求項8に記載のサーボ弁。
【請求項10】
上記第一変位センサは、少なくとも2つの線形可変変位変動子を有して構成される、請求項4に記載のサーボ弁。
【請求項11】
上記第二変位センサは、少なくとも2つの線形可変変位変動子を有して構成される、請求項4に記載のサーボ弁。

【図2】
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【図3】
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【図1】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−504985(P2011−504985A)
【公表日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−534985(P2010−534985)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【国際出願番号】PCT/US2008/074759
【国際公開番号】WO2009/070358
【国際公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(510119887)ウッドウォード エイチアールティー インコーポレイティド (8)
【Fターム(参考)】